JP2004197595A - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】車両の減速走行中において、フューエルカット装置によるフューエルカット作動が終了してエンジンへの燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が抑制される車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【解決手段】フューエルカット復帰判定手段104により、エンジン12への燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段110により自動変速機16が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段112によりエンジン12の出力が低下させられるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【選択図】 図7
【解決手段】フューエルカット復帰判定手段104により、エンジン12への燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段110により自動変速機16が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段112によりエンジン12の出力が低下させられるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の減速走行中に実行されるエンジンへの燃料供給の遮断の終了すなわちそのエンジンへの燃料供給への復帰すなわち燃料供給の再開が実行されたときに発生するショックや音を低減することができる車両用自動変速機の変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フューエルカット装置により車両の減速走行中に実行されるエンジンへの燃料供給の遮断の終了すなわちそのエンジンへの燃料供給の再開がなるべく行われないように、ダウンシフト変速を実行してエンジン回転速度を上昇させることにより燃料カットの継続期間を長くして、燃費の向上を図る車両用自動変速機の変速制御装置が知られている。たとえば、特許文献1の車両用自動変速機の変速制御装置がそれである。また、特許文献2によれば、そのエンジンへの燃料供給の再開時には、エンジンへの燃料噴射量を漸増制御してそのエンジンへの燃料供給が再開されたときのエンジン出力トルク急増によるショックを軽減する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8− 11591号公報
【特許文献2】特開平1−267335号公報
【特許文献3】特開平2− 23240号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載の車両用自動変速機の変速制御装置においては、燃料カットの継続期間を長くするだけであるので、燃料供給の再開に伴うショックや音が発生するという問題がある。これに対して、上記特許文献2に開示されている技術は有効に用いられるが、エアコン等の補機稼働時のアイドル回転速度の上昇時には、前記燃料噴射量の漸増制御による効果が充分得られなくなる場合があった。特に、自動変速機に一方向クラッチが用いられている車両に対しては、エンジンへの燃料供給の再開後に自動変速機が駆動状態となって、その一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音に対しては上記燃料噴射量の漸増制御による効果が充分に得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の減速走行中において、フューエルカット装置によるフューエルカット作動が終了してエンジンへの燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が抑制される車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 減速走行時にエンジン回転速度が所定値を越えると、エンジンに供給される燃料を遮断するフューエルカット装置と、自動変速機とを備えた車両用自動変速機の変速制御装置であって、(b) 前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動からエンジンへの燃料供給が再開されたことを判定するフューエルカット復帰判定手段と、(c) 前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された際に前記自動変速機が駆動状態となるか否かを予測する駆動状態予測手段と、(d) 前記駆動状態予測手段により前記自動変速機が駆動状態となると予測されると、前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下手段とを、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、フューエルカット復帰判定手段により、エンジンへの燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段により前記自動変速機が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段により前記エンジンの出力が低下させられるので、エンジンへの燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機の駆動状態となってその一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記エンジン出力低下手段は、前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された後に、前記駆動状態予測手段により前記自動変速機がその一方向クラッチの係合で駆動状態になると予測されると、前記エンジン出力の低下を実行するものである。このようにすれば、エンジンへの燃料供給の再開後に、車両が自動変速機の駆動状態となってその一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0009】
また、好適には、前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を変更する目標アイドル回転速度変更手段を備え、前記エンジン出力低下手段は、前記目標アイドル回転速度変更手段により前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を小さくなるように変更することにより、前記エンジン出力を低下するものである。このようにすれば、目標アイドル回転速度変更手段により小さくなるように変更された目標アイドル回転速度に基づいて、エンジン出力低下手段によりエンジン出力が低下させられる。
【0010】
また、好適には、(a) 前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動の終了を予測するフューエルカット終了予測手段と、(b) 前記フューエルカット終了予測手段により前記フューエルカット作動の終了が予測されると、前記自動変速機のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置を解放させるエンジンブレーキ要素解放手段とを、含むものである。このようにすれば、フューエルカット終了予測手段により前記フューエルカット作動の終了が予測されると、エンジンブレーキ要素解放手段によって前記自動変速機のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、エンジンへの燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が防止される。また、フューエルカット作動状態の終了が予測された以降にエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、フューエルカット作動が充分長く継続され、燃費向上に効果がある。
【0011】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えており、ポンプ翼車20とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26を備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチで、完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、車両の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン翼車24をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させられる。
【0013】
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置40、およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置42、第3遊星歯車装置44を備えている遊星歯車式の変速機で、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング38に選択的に連結され、逆方向(入力軸22と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング38に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置42のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置44のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸22に選択的に連結され、その入力軸22に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止されるようになっている。第2遊星歯車装置42のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置44のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、第3遊星歯車装置44のキャリアCA3は、出力軸46に一体的に連結されている。
【0014】
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図4参照)の操作位置(ポジション)に応じて6つの前進変速段(1st〜6th)および1つの後進変速段(Rev)が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1変速段〜第6変速段を意味しており、第1変速段「1st」から第6変速段「6th」へ向かうに従って変速比γ(=入力軸22の回転速度NIN/出力軸46の回転速度NOUT)は小さくなり、第4変速段「4th」の変速比は1.0である。また、図2において「○」は係合、空欄は解放を表し、「(○)」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「●」は動力伝達に関与しない係合を表している。
【0015】
図3の油圧制御回路98は、上記変速用のソレノイド弁Sol1〜Sol5、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧を制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、油圧制御回路98内の作動油は、ロックアップクラッチ26へも供給されるとともに、自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。
【0016】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセルペダル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセルペダル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDLを制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸46の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)84に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン86から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
【0017】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ26のスリップ制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
【0018】
上記エンジン12の出力制御については、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図5に示す関係から実際のアクセルペダル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセルペダル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン12の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン12のクランク軸18をクランキングする。
【0019】
また、上記ロックアップクラッチ26のスリップ制御については、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの回転速度差(スリップ量)NSLP(=NE−NT)を目標回転速度差(目標スリップ量)NSLP *に制御するためにロックアップクラッチ26の前記差圧ΔPを制御するソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを出力する。このスリップ制御のうちの減速走行時スリップ制御は、たとえば、スロットル弁開度θTHが略零で惰性走行(減速走行)する前進走行時において生じる駆動輪側からの逆入力をエンジン12側へ伝達する変速段、すなわちエンジンブレーキ作用が得られる変速段で行われ、タービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEは、ソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを用いたフィードバック制御により回転速度差NSLPが目標回転速度差NSLP *たとえば−50rpmに略一致された状態で車両の減速にしたがって緩やかに減少させられる。このようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NT付近まで引き上げられるため、エンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカット領域(車速範囲)が拡大されて燃費が向上する。
【0020】
また、前記自動変速機14の変速制御については、図4に示すシフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて、例えば図6に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定しすなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行する。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、4つのレバーポジション「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、または「S(シーケンシャル)」へ手動操作されるようになっている。「R」ポジションは後進走行位置で、「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、「D」ポジションは自動変速による前進走行位置で、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置であり、シフトレバー72がどのレバーポジションへ操作されているかが前記レバーポジションセンサ74によって検出される。また、レバーポジション「R」、「N」、「D(S)」は車両の前後方向(図4の上方が車両前側)に沿って設けられており、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブがシフトレバー72の前後操作に伴って機械的に作動させられることにより、油圧回路が切り換えられるようになっており、「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放される。
【0021】
また、前進走行位置である「D」ポジションまたは「S」ポジションへ操作された場合は、同じくシフトレバー72の操作に従ってマニュアルバルブにより油圧回路が切り換えられることにより前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」で変速しながら前進走行することが可能となる。シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。すなわち、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、油圧制御回路98を切り換えて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の何れかの前進変速段を成立させるのである。図6の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って、変速比(=入力回転速度NIN/出力回転速度NOUT)が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「6」は第1速ギヤ段「1st」〜第5速ギヤ段「6th」を意味している。なお、第1変速段「1st」〜第4変速段「4th」では、一方向クラッチF0〜F3が係合されることによって各変速段が成立させられているので、車両の減速走行時にはニュートラル状態とならないように、エンジンブレーキ作用が得られるために図2に示した「(○)」に対応するクラッチC或いはブレーキB(以下エンジンブレーキ要素)を係合する。車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用が得られることによって、車両の制動力が高められる一方で、上記ニュートラル状態となることで図示しない駆動輪と入力軸22が切り離された状態となりタービン回転速度NTとともにエンジン回転速度NEが一時的に低下させられないようにして、フューエルカット装置によるフューエルカット状態ができるだけ長く継続されてフューエルカットによる燃費効果が得られる。
【0022】
シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してマニュアル変速モードを成立させる。「S」ポジションは、車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、油圧回路は「D」ポジションの時と同じであるが、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の間で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるマニュアル変速モードを電気的に成立させるのである。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる6つの変速レンジ「D」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図6の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
【0023】
図7は、上記電子制御装置90の制御機能の要部すなわちフューエルカット復帰時の自動変速機16の制御方法を説明する機能ブロック線図である。
【0024】
フューエルカット制御手段102は、エンジン回転速度NEやアクセルペダル操作量Accなどに基づいて燃料供給の必要がないか否かを判断して燃費を向上させるために、エンジン12への燃料供給を停止する指令をフューエルカット装置100に出力する。たとえば、アクセルペダル操作量ACCが略零である減速走行時であり且つエンジン12の回転速度NEが予め決められた所定値(フューエルカット復帰回転速度NEFC)たとえば回転速度800rpmを下回らない場合に、フューエルカットが作動されるようにエンジン12への燃料供給を停止する指令を出力する。しかし、そのフューエルカット復帰回転速度NEFC以下までエンジン12の回転速度NEが低下させられると、フューエルカットが作動されないように燃料供給停止指令の出力を中止する。このようにフューエルカット状態が解除させられると、燃料噴射装置92による燃料供給が再開されてエンジン12が速やかに起動される。フューエルカット復帰判定手段104は、たとえば上記フューエルカット制御手段102の出力信号に基づいて、フューエルカット状態から復帰したか否かすなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92による燃料供給が再開されたか否かを判定する。
【0025】
フューエルカット終了予測手段106は、減速走行中でフューエルカットが継続され且つ減速走行時スリップ制御が行われている状態において、車両の減速に伴って低下されるエンジン回転速度NEが、前記フューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの残りの回転速度ΔNE(=NE−NEFC)或いはフューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの時間tFCが予め決められた所定の判定値になったか否かに基づいてフューエルカット状態がまもなく終了(解除)されるか否かを予測(判定)する。
【0026】
エンジンブレーキ要素解放手段108は、車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用を発生させるために係合されている図2に示した「(○)」に対応するクラッチC或いはブレーキB(エンジンブレーキ用係合要素)の係合圧を解放するための指令値SPEBを、油圧制御回路へ出力する。たとえば第2速ギヤ段「2nd」での減速走行中の場合は、クラッチC4或いはブレーキB2を解放させることによってエンジンブレーキ作用が得られないようにする。エンジン回転速度NEは、上記エンジンブレーキ用係合要素の解放が行われると、タービン回転速度NTの低下に追随して、エンジンブレーキ時の車両の減速に伴うエンジン回転速度NEの低下量よりも大きな低下量で低下することになる。なお、上記エンジンブレーキ用係合要素の解放に際してはその係合圧を漸減させてもよい。
【0027】
駆動状態予測手段110は、フューエルカット復帰判定手段104によってフューエルカット状態から復帰すなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92による燃料供給が再開されたと判定されると、エンジン12による車両の駆動状態すなわち自動変速機16のそのときのギヤ段を達成するための一方向クラッチの係合状態となってエンジン12の出力トルクTEが図示しない駆動輪へ伝達されるか否かを、エンジン12への燃料供給が再開させられることによって上昇させられるタービン回転速度NTが減速走行中の実際の車速Vに対応する出力軸46の回転速度NOUTと現在のギヤ段の変速比γから算出される推定タービン回転速度NTP(=γ×NOUT)以上となるか否かに基づいて予測する。
【0028】
エンジン出力低下手段112は、アイドル回転速度制御手段114と目標アイドル回転速度変更手段116とを備えており、その目標アイドル回転速度を一時的に小さく設定することで、フューエルカット状態から復帰したときのエンジン回転速度NEの増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下させる。この結果、前記自動変速機16の一方向クラッチが係合させられるときのショックや音の発生を緩和することができる。
【0029】
上記アイドル回転速度制御手段114は、エンジン12のアイドル回転速度NEIDLと目標アイドル回転速度NEIDL *とが一致するようにISC(アイドル回転速度制御)バルブ53によって電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御する。前記目標アイドル回転速度変更手段116は、前記アイドル回転速度制御手段114によって制御されるアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *を一時的に変更する。たとえば、目標アイドル回転速度NEIDL *を変更前の値NEIDL1 *に比較して小さな値NEIDL2 *に一時的に変更すれば、エンジン12がフューエルカット状態から復帰したことによるエンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少される。
【0030】
図8および図9は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機16の制御作動を説明するフローチャートおよびタイムチャートである。本実施例では、アクセルペダルが非操作の減速走行であって、自動変速機16が第2速ギヤ段であるときの車両減速走行中の作動が説明されている。
【0031】
図8において、前記フューエルカット終了予測手段106に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、減速走行中且つロックアップクラッチ26のスリップ制御中でフューエルカットが継続されている状態において、車両の減速に伴って低下させられるエンジン回転速度NEが前記フューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの残りの回転速度ΔNE(NE−NEFC)が予め決められた判定値になったか否かに基づいてフューエルカット状態がまもなく終了(解除)されることすなわち前記ロックアップクラッチ26によるスリップ制御がまもなく終了されることが予測(判定)される。たとえば上記ΔNEが100rpm程度に設定され、エンジン回転速度センサ58からの信号によって検出されたエンジン12の回転速度NEとたとえば800rpmに設定されたフューエルカット復帰回転速度NEFCとの差が略100rpmとなったところすなわちエンジン12の回転速度NEが略900rpmとなったことに基づいてフューエルカット終了の予測がされる(図9のt1時点)。このS1はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。
【0032】
上記S1の判断が肯定されると、前記エンジンブレーキ要素解放手段108に対応するS2において、車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用を得るために係合されている図2に示した「(○)」に対応する油圧式摩擦係合装置たとえばクラッチC4或いはブレーキB2(エンジンブレーキ用係合要素)の係合圧が解放されるための指令値SPEBがt1時点より油圧制御回路へ出力される。このときの指令値SPEBはt1時点より緩やかに漸減(スイープダウン)させられ、クラッチC4或いはブレーキB2の解放ショックが緩和されている。この結果、エンジン回転速度NEは、タービン回転速度NTの低下に追随して、図9の2点鎖線に示した前記推定タービン回転速度NTPの低下量よりも大きな低下量で低下させられる。
【0033】
次いで前記フューエルカット復帰判定手段104に対応するS3において、前記フューエルカット制御手段102の出力信号に基づいて、フューエルカット状態から復帰したか否かすなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92によるエンジンへの燃料供給が再開されたか否かが判定される。このS3はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。図9のt2時点はS3の判断が肯定されてエンジン12が起動させられた状態を示している。
【0034】
上記S3の判断が肯定されると、前記駆動状態予測手段110に対応するS4において、エンジン12による車両の駆動状態すなわち自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられエンジン12の出力トルクTEが図示しない駆動輪へ伝達される状態か否かが、エンジン12への燃料供給により上昇させられるタービン回転速度NTが減速走行中の実際の車速Vに対応する出力軸46の回転速度NOUTが現在のギヤ段の変速比γから算出される推定タービン回転速度NTP(=γ×NOUT)以上となるか否かに基づいて予測される(t3時点)。たとえば第2速ギヤ段「2nd」での減速走行中の場合は、一方向クラッチF0が係合させられるか否かが、タービン回転速度センサ76からの信号によって検出されたタービン回転速度NTと車速センサ66からの信号によって検出された出力軸46の回転速度NOUTとに基づいて判定式NT≧NOUT×γ2(γ2は第2速ギヤ段の変速比)が成立するか否かに基づいて予測される。エンジン12による車両の駆動状態になるか否かが予測されることで、上記一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が予測されることになる。このS4はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。図9のt4時点は、上記一方向クラッチF0の係合が予測される予測点を示している。
【0035】
上記S4の判断が肯定されると前記目標アイドル回転速度変更手段116に対応するS5において、前記アイドル回転速度制御手段114によって制御されるアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *が一時的に変更される。ここでは、前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が緩和されるように、エンジン12への燃料供給が再開されたときのエンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少されてエンジン出力トルクTEが一時的に低下させられるように、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmに比較して所定値より低い値NEIDL2 *たとえば600rpmに一時的に変更される(図9のt3時点乃至t5時点)。
【0036】
次いで前記アイドル回転速度制御手段114に対応するS6において、エンジン12の実際のアイドル回転速度NEIDLと上記S5において変更された目標アイドル回転速度NEIDL2 *とが一致するように、前記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52に設けられているISC(アイドル回転速度制御)バルブ53によって電子スロットル弁56の全閉時の吸気量が制御される。図9に示す破線は、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmの場合であり、実線は変更後の値NEIDL2 *たとえば600rpmの場合を示している。この結果、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が緩和される。図9に示すように、t4時点すなわち前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられエンジン12による駆動状態となった時点以降の出力トルクTOUTも減少させられている。
【0037】
上述のように、本実施例によれば、フューエルカット復帰判定手段104(S3)により、エンジン12への燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段110(S4)により自動変速機16が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段112(S5、S6)によりエンジン12の出力が低下させられるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0038】
また、本実施例によれば、エンジン出力低下手段112(S5、S6)は、フューエルカット復帰判定手段104(S3)によりエンジン12への燃料供給が再開されたと判定された後に、駆動状態予測手段110(S4)により自動変速機16がその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合はクラッチF0の係合で駆動状態になると予測されると、エンジン出力トルクTEの低下を実行するものなので、エンジン12への燃料供給の再開後にエンジン12による車両の駆動状態となり自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられる場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0039】
また、本実施例によれば、エンジン出力低下手段112(S5、S6)は、目標アイドル回転速度変更手段116(S5)によりエンジン12のアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *を小さくなるように変更するものなので、目標アイドル回転速度変更手段116により小さくなるように変更された目標アイドル回転速度NEIDL2 *に基づいて、エンジン出力低下手段112(アイドル回転速度制御手段114(S6))によりエンジン出力トルクTEが好適に低下させられる。
【0040】
また、本実施例によれば、フューエルカット終了予測手段106(S1)によりフューエルカット作動の終了が予測されると、エンジンブレーキ要素解放手段108(S2)によって自動変速機16のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置たとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合はクラッチC4或いはブレーキB2が解放されるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が防止される。また、フューエルカット作動状態の終了が予測された以降にエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、フューエルカット作動が充分長く継続され、燃費向上に効果がある。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0042】
前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、たとえばISC弁が設けられておらず前記電子スロットル弁56によりアイドル回転速度が制御される場合には、前記電子スロットル弁56のエンジン12の起動時の目標開度θTH *を所定値θTH1 *からその所定値より低い値θTH2 *に一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。上記所定値θTH1 *はアクセルペダル操作量Accが略零の場合にエンジン12が起動されるように予め設定された目標開度θTH *の所定値である。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0043】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記点火装置94によりエンジン12の起動時の点火時期を一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。たとえば点火時期が最大トルク点火時期となるようにフィードバック制御されている場合は、点火時期を予め設定された値にしたがって一時的に進角或いは遅角させることでエンジン出力トルクTEを減少させる。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0044】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記燃料噴射弁92を制御してエンジン12の起動時の燃料噴射量を予め設定された値にしたがって一時的に減少することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0045】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記エンジン12に備えられている吸気弁或いは排気弁のリフト量、開角或いは開閉時期を一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。たとえばエンジン12にはクランク軸の回転に同期して、吸気弁および排気弁を開閉駆動させるよく知られた動弁機構が備えられており、その動弁機構の型式にはOHV型、OHC型、DOHC型のような種類があり、たとえばDOHC型では、エンジンのクランク軸の回転をクランク軸プーリ、タイミングベルト、カム軸プーリ、カム軸、吸気弁或いは排気弁に取り付けられたロッカアーム或いは弁リフタを介して吸気弁或いは排気弁が開閉駆動されている。このような型式のエンジンにおいては、上記ロッカアーム或いはカム軸プーリに可変機構を備え付けたり、吸気弁用カム軸と排気弁用カム軸の同期のタイミングが可変となるように少なくとも一方のカム軸に可変機構を備え付けたり、或いはカム軸の特性(プロファイル形状)を可変(切り換え)したりして、弁のリフト量、開角或いは開閉時期が可変されることで、エンジン回転速度NEが変化させられる。すなわち弁のリフト量、開角或いは開閉時期がエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させるように予め設定された値にしたがって変更されればよい。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0046】
また、前記アイドル回転速度制御手段114および前記目標アイドル回転速度変更手段116、前記電子スロットル弁56の目標開度θTH *の変更、前記点火装置94による点火時期の変更、前記燃料噴射弁92の制御による燃料噴射量の変更、前記エンジン12に備えられている吸気弁或いは排気弁のリフト量、開角或いは開閉時期の変更は、2つ以上が同時に実行されてエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてもよい。
【0047】
また、前述の実施例では、減速走行中の自動変速機16の制御作動として第2速ギヤ段の場合を説明したが、第1速ギヤ段、第3速ギヤ段、第4速ギヤ段等の減速走行時に自動変速機16のクラッチC或いはブレーキBの油圧式摩擦係合装置がエンジンブレーキ作用のために係合される変速段であればよい。たとえば第4速ギヤ段においてはクラッチC4がエンジンブレーキ作用のために係合されるので図8のステップS2においてそのクラッチC4の係合圧が低下されてクラッチC4が解放される。
【0048】
また、前述の実施例では、自動変速機16は、3組の遊星歯車装置40、42、44の組み合わせから成る、前進6速の変速機であったが、エンジンブレーキ作用のためにクラッチC或いはブレーキBの油圧式摩擦係合装置が係合される型式の変速機であればよく、自動変速機16を構成する遊星歯車装置の組数は3組とは異なる数であってもよいし、また前進5速の変速機、前進4速の変速機等であっても差し支えない。また、自動変速機16は、クラッチ或いはブレーキの油圧式摩擦係合装置や一方向クラッチで構成された変速部たとえば前後進切換或いは前進2段等の変速機と、変速比が無段階に連続的に変化させられる無段変速機とで構成されてもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、図8のステップS5において、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmから変更後の値NEIDL2 *たとえば600rpmに変更されたが、変更前の目標アイドル回転速度NEIDL1 *は車両の状態たとえばエンジンの暖気中であるとかエアコン等の補機の使用中であるとかに応じて好適に設定されればよい。また、変更後の目標アイドル回転速度NEIDL2 *は変更前の目標アイドル回転速度NEIDL1 *に比較して小さな値であればよい。また、その変更前の値NEIDL1 *から変更後の値NEIDL2 *に一時的に変更する変更期間は図9のt3時点乃至t5時点であったが、変更開始はt2時点乃至t4時点であればよく、その変更期間は少なくともt4時点まで実行されればよい。
【0050】
また、前述の実施例では、フューエルカット復帰回転速度NEFCは800rpmに設定されていたが、車両の状態に応じて好適に設定されればよい。たとえば、アイドル回転速度NEIDLに応じて好適に設定されればよい。
【0051】
また、前述の実施例では、前記フューエルカット終了予測手段106に対応するステップS1において、フューエルカット状態がまもなく終了(解除)されることすなわち前記ロックアップクラッチ26によるスリップ制御がまもなく終了されることとしたが、ロックアップクラッチ26によるスリップ制御はt1時点乃至t2時点で好適に終了されればよい。
【0052】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の変速制御装置が適用された車両用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の自動変速機の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合、解放状態を説明する図である。
【図3】図1の実施例の車両に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図4】図3のシフトレバーを具体的に示す斜視図である。
【図5】図3の電子制御装置によって行われるスロットル制御で用いられるアクセルペダル操作量Accとスロットル弁開度θTHとの関係の一例を示す図である。
【図6】図3の電子制御装置によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(マップ)の一例を示す図である。
【図7】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわちすなわちフューエルカット復帰時の自動変速機の制御方法を説明する機能ブロック線図である。
【図8】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機の制御作動を説明するフローチャートである。
【図9】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機の制御作動を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
10:車両用駆動装置
12:エンジン
100:フューエルカット装置
104:フューエルカット復帰判定手段
106:フューエルカット終了予測手段
108:エンジンブレーキ要素解放手段
110:駆動状態予測手段
112:エンジン出力低下手段
116:目標アイドル回転速度変更手段
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の減速走行中に実行されるエンジンへの燃料供給の遮断の終了すなわちそのエンジンへの燃料供給への復帰すなわち燃料供給の再開が実行されたときに発生するショックや音を低減することができる車両用自動変速機の変速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フューエルカット装置により車両の減速走行中に実行されるエンジンへの燃料供給の遮断の終了すなわちそのエンジンへの燃料供給の再開がなるべく行われないように、ダウンシフト変速を実行してエンジン回転速度を上昇させることにより燃料カットの継続期間を長くして、燃費の向上を図る車両用自動変速機の変速制御装置が知られている。たとえば、特許文献1の車両用自動変速機の変速制御装置がそれである。また、特許文献2によれば、そのエンジンへの燃料供給の再開時には、エンジンへの燃料噴射量を漸増制御してそのエンジンへの燃料供給が再開されたときのエンジン出力トルク急増によるショックを軽減する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8− 11591号公報
【特許文献2】特開平1−267335号公報
【特許文献3】特開平2− 23240号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特許文献1に記載の車両用自動変速機の変速制御装置においては、燃料カットの継続期間を長くするだけであるので、燃料供給の再開に伴うショックや音が発生するという問題がある。これに対して、上記特許文献2に開示されている技術は有効に用いられるが、エアコン等の補機稼働時のアイドル回転速度の上昇時には、前記燃料噴射量の漸増制御による効果が充分得られなくなる場合があった。特に、自動変速機に一方向クラッチが用いられている車両に対しては、エンジンへの燃料供給の再開後に自動変速機が駆動状態となって、その一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音に対しては上記燃料噴射量の漸増制御による効果が充分に得られないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、車両の減速走行中において、フューエルカット装置によるフューエルカット作動が終了してエンジンへの燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が抑制される車両用自動変速機の変速制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 減速走行時にエンジン回転速度が所定値を越えると、エンジンに供給される燃料を遮断するフューエルカット装置と、自動変速機とを備えた車両用自動変速機の変速制御装置であって、(b) 前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動からエンジンへの燃料供給が再開されたことを判定するフューエルカット復帰判定手段と、(c) 前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された際に前記自動変速機が駆動状態となるか否かを予測する駆動状態予測手段と、(d) 前記駆動状態予測手段により前記自動変速機が駆動状態となると予測されると、前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下手段とを、含むことにある。
【0007】
【発明の効果】
このようにすれば、フューエルカット復帰判定手段により、エンジンへの燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段により前記自動変速機が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段により前記エンジンの出力が低下させられるので、エンジンへの燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機の駆動状態となってその一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0008】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記エンジン出力低下手段は、前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された後に、前記駆動状態予測手段により前記自動変速機がその一方向クラッチの係合で駆動状態になると予測されると、前記エンジン出力の低下を実行するものである。このようにすれば、エンジンへの燃料供給の再開後に、車両が自動変速機の駆動状態となってその一方向クラッチが係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0009】
また、好適には、前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を変更する目標アイドル回転速度変更手段を備え、前記エンジン出力低下手段は、前記目標アイドル回転速度変更手段により前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を小さくなるように変更することにより、前記エンジン出力を低下するものである。このようにすれば、目標アイドル回転速度変更手段により小さくなるように変更された目標アイドル回転速度に基づいて、エンジン出力低下手段によりエンジン出力が低下させられる。
【0010】
また、好適には、(a) 前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動の終了を予測するフューエルカット終了予測手段と、(b) 前記フューエルカット終了予測手段により前記フューエルカット作動の終了が予測されると、前記自動変速機のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置を解放させるエンジンブレーキ要素解放手段とを、含むものである。このようにすれば、フューエルカット終了予測手段により前記フューエルカット作動の終了が予測されると、エンジンブレーキ要素解放手段によって前記自動変速機のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、エンジンへの燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が防止される。また、フューエルカット作動状態の終了が予測された以降にエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、フューエルカット作動が充分長く継続され、燃費向上に効果がある。
【0011】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置としてのトルクコンバータ14を経て自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えており、ポンプ翼車20とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26を備えている。ロックアップクラッチ26は、係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPにより摩擦係合させられる油圧式摩擦クラッチで、完全係合させられることにより、ポンプ翼車20およびタービン翼車24は一体回転させられる。また、所定のスリップ状態で係合するように差圧ΔPすなわち係合トルクがフィードバック制御されることにより、車両の駆動(パワーオン)時には例えば50rpm程度の所定のスリップ量でタービン翼車24をポンプ翼車20に対して追従回転させる一方、車両の非駆動(パワーオフ)時には例えば−50rpm程度の所定のスリップ量でポンプ翼車20をタービン翼車24に対して追従回転させられる。
【0013】
自動変速機16は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置40、およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置42、第3遊星歯車装置44を備えている遊星歯車式の変速機で、第1遊星歯車装置40のサンギヤS1はクラッチC3を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF2およびブレーキB3を介してハウジング38に選択的に連結され、逆方向(入力軸22と反対方向)の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のキャリアCA1は、ブレーキB1を介してハウジング38に選択的に連結されるとともに、そのブレーキB1と並列に設けられた一方向クラッチF1により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。第1遊星歯車装置40のリングギヤR1は、第2遊星歯車装置42のリングギヤR2と一体的に連結されており、ブレーキB2を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっている。第2遊星歯車装置42のサンギヤS2は、第3遊星歯車装置44のサンギヤS3と一体的に連結されており、クラッチC4を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、一方向クラッチF0およびクラッチC1を介して入力軸22に選択的に連結され、その入力軸22に対して相対的に逆方向へ回転することが阻止されるようになっている。第2遊星歯車装置42のキャリアCA2は、第3遊星歯車装置44のリングギヤR3と一体的に連結されており、クラッチC2を介して入力軸22に選択的に連結されるとともに、ブレーキB4を介してハウジング38に選択的に連結されるようになっており、更にブレーキB4と並列に設けられた一方向クラッチF3により、常に逆方向の回転が阻止されるようになっている。そして、第3遊星歯車装置44のキャリアCA3は、出力軸46に一体的に連結されている。
【0014】
上記クラッチC1〜C4、およびブレーキB1〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)は、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路98(図3参照)のソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁や図示しないマニュアルバルブによって油圧回路が切り換えられることにより、例えば図2に示すように係合、解放状態が切り換えられ、シフトレバー72(図4参照)の操作位置(ポジション)に応じて6つの前進変速段(1st〜6th)および1つの後進変速段(Rev)が成立させられる。図2の「1st」〜「6th」は前進の第1変速段〜第6変速段を意味しており、第1変速段「1st」から第6変速段「6th」へ向かうに従って変速比γ(=入力軸22の回転速度NIN/出力軸46の回転速度NOUT)は小さくなり、第4変速段「4th」の変速比は1.0である。また、図2において「○」は係合、空欄は解放を表し、「(○)」はエンジンブレーキ時の係合を表し、「●」は動力伝達に関与しない係合を表している。
【0015】
図3の油圧制御回路98は、上記変速用のソレノイド弁Sol1〜Sol5、リニアソレノイド弁SL1、SL2の他に、主にロックアップ油圧すなわち前記係合側油室32内の油圧と解放側油室34内の油圧との差圧ΔPを制御するリニアソレノイド弁SLU、主にライン油圧を制御するリニアソレノイド弁SLTを備えており、油圧制御回路98内の作動油は、ロックアップクラッチ26へも供給されるとともに、自動変速機16等の各部の潤滑にも使用される。
【0016】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に設けられた制御系統を説明するブロック線図で、アクセルペダル50の操作量Accがアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、アクセル操作部材に相当し、アクセルペダル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によってアクセルペダル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDLを制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC(アイドル回転速度制御)バルブ53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TAを検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力軸46の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TWを検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸22の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOILを検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)84に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン86から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
【0017】
電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ26のスリップ制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。
【0018】
上記エンジン12の出力制御については、スロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射弁92を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94を制御し、アイドル回転速度制御のためにISCバルブ53を制御する。電子スロットル弁56の制御は、例えば図5に示す関係から実際のアクセルペダル操作量Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセルペダル操作量Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン12の始動時には、スタータ(電動モータ)96によってエンジン12のクランク軸18をクランキングする。
【0019】
また、上記ロックアップクラッチ26のスリップ制御については、タービン回転速度NTとエンジン回転速度NEとの回転速度差(スリップ量)NSLP(=NE−NT)を目標回転速度差(目標スリップ量)NSLP *に制御するためにロックアップクラッチ26の前記差圧ΔPを制御するソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを出力する。このスリップ制御のうちの減速走行時スリップ制御は、たとえば、スロットル弁開度θTHが略零で惰性走行(減速走行)する前進走行時において生じる駆動輪側からの逆入力をエンジン12側へ伝達する変速段、すなわちエンジンブレーキ作用が得られる変速段で行われ、タービン回転速度NTおよびエンジン回転速度NEは、ソレノイド弁SLU用の駆動信号SSLUを用いたフィードバック制御により回転速度差NSLPが目標回転速度差NSLP *たとえば−50rpmに略一致された状態で車両の減速にしたがって緩やかに減少させられる。このようにロックアップクラッチ26がスリップ係合させられると、エンジン回転速度NEがタービン回転速度NT付近まで引き上げられるため、エンジン12に対する燃料供給を停止するフューエルカット領域(車速範囲)が拡大されて燃費が向上する。
【0020】
また、前記自動変速機14の変速制御については、図4に示すシフトレバー72のレバーポジションPSHに応じて、例えば図6に示す予め記憶された変速線図(変速マップ)から実際のスロットル弁開度θTHおよび車速Vに基づいて自動変速機14の変速すべきギヤ段を決定しすなわち現在のギヤ段から変速先のギヤ段への変速判断を実行し、その決定されたギヤ段への変速作動を開始させる変速出力を実行する。シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、4つのレバーポジション「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、または「S(シーケンシャル)」へ手動操作されるようになっている。「R」ポジションは後進走行位置で、「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、「D」ポジションは自動変速による前進走行位置で、「S」ポジションは変速可能な高速側の変速段が異なる複数の変速レンジを切り換えることにより手動変速が可能な前進走行位置であり、シフトレバー72がどのレバーポジションへ操作されているかが前記レバーポジションセンサ74によって検出される。また、レバーポジション「R」、「N」、「D(S)」は車両の前後方向(図4の上方が車両前側)に沿って設けられており、シフトレバー72にケーブルやリンクなどを介して連結されたマニュアルバルブがシフトレバー72の前後操作に伴って機械的に作動させられることにより、油圧回路が切り換えられるようになっており、「R」ポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放される。
【0021】
また、前進走行位置である「D」ポジションまたは「S」ポジションへ操作された場合は、同じくシフトレバー72の操作に従ってマニュアルバルブにより油圧回路が切り換えられることにより前進用回路が機械的に成立させられ、前進変速段である第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」で変速しながら前進走行することが可能となる。シフトレバー72が「D」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断して自動変速モードを成立させ、第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の総ての前進変速段を用いて変速制御を行う。すなわち、駆動力変化などの変速ショックが発生したり摩擦材の耐久性が損なわれたりすることがないように、前記ソレノイド弁Sol1〜Sol5、およびリニアソレノイド弁SL1、SL2の励磁、非励磁をそれぞれ制御することにより、油圧制御回路98を切り換えて第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の何れかの前進変速段を成立させるのである。図6の実線はアップシフト線で、破線はダウンシフト線であり、車速Vが低くなったりスロットル弁開度θTHが大きくなったりするに従って、変速比(=入力回転速度NIN/出力回転速度NOUT)が大きい低速側のギヤ段に切り換えられるようになっており、図中の「1」〜「6」は第1速ギヤ段「1st」〜第5速ギヤ段「6th」を意味している。なお、第1変速段「1st」〜第4変速段「4th」では、一方向クラッチF0〜F3が係合されることによって各変速段が成立させられているので、車両の減速走行時にはニュートラル状態とならないように、エンジンブレーキ作用が得られるために図2に示した「(○)」に対応するクラッチC或いはブレーキB(以下エンジンブレーキ要素)を係合する。車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用が得られることによって、車両の制動力が高められる一方で、上記ニュートラル状態となることで図示しない駆動輪と入力軸22が切り離された状態となりタービン回転速度NTとともにエンジン回転速度NEが一時的に低下させられないようにして、フューエルカット装置によるフューエルカット状態ができるだけ長く継続されてフューエルカットによる燃費効果が得られる。
【0022】
シフトレバー72が「S」ポジションへ操作された場合は、そのことをレバーポジションセンサ74の信号から判断してマニュアル変速モードを成立させる。「S」ポジションは、車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、油圧回路は「D」ポジションの時と同じであるが、「D」ポジションで変速可能な変速範囲内すなわち第1変速段「1st」〜第6変速段「6th」の間で定められた複数の変速レンジを任意に選択できるマニュアル変速モードを電気的に成立させるのである。「S」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「(+)」、およびダウンシフト位置「(−)」が設けられており、シフトレバー72がそれ等のアップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」へ操作されると、そのことが前記アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82によって検出され、アップ指令RUPやダウン指令RDNに従って最高速段すなわち変速比が小さい高速側の変速範囲が異なる6つの変速レンジ「D」、「5」、「4」、「3」、「2」、「L」の何れかを電気的に成立させるとともに、各変速範囲内において例えば図6の変速マップに従って自動的に変速制御を行う。上記アップシフト位置「(+)」およびダウンシフト位置「(−)」は何れも不安定で、シフトレバー72はスプリング等の付勢手段により自動的に「S」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「(+)」またはダウンシフト位置「(−)」への操作回数或いは保持時間などに応じて変速レンジが変更される。
【0023】
図7は、上記電子制御装置90の制御機能の要部すなわちフューエルカット復帰時の自動変速機16の制御方法を説明する機能ブロック線図である。
【0024】
フューエルカット制御手段102は、エンジン回転速度NEやアクセルペダル操作量Accなどに基づいて燃料供給の必要がないか否かを判断して燃費を向上させるために、エンジン12への燃料供給を停止する指令をフューエルカット装置100に出力する。たとえば、アクセルペダル操作量ACCが略零である減速走行時であり且つエンジン12の回転速度NEが予め決められた所定値(フューエルカット復帰回転速度NEFC)たとえば回転速度800rpmを下回らない場合に、フューエルカットが作動されるようにエンジン12への燃料供給を停止する指令を出力する。しかし、そのフューエルカット復帰回転速度NEFC以下までエンジン12の回転速度NEが低下させられると、フューエルカットが作動されないように燃料供給停止指令の出力を中止する。このようにフューエルカット状態が解除させられると、燃料噴射装置92による燃料供給が再開されてエンジン12が速やかに起動される。フューエルカット復帰判定手段104は、たとえば上記フューエルカット制御手段102の出力信号に基づいて、フューエルカット状態から復帰したか否かすなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92による燃料供給が再開されたか否かを判定する。
【0025】
フューエルカット終了予測手段106は、減速走行中でフューエルカットが継続され且つ減速走行時スリップ制御が行われている状態において、車両の減速に伴って低下されるエンジン回転速度NEが、前記フューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの残りの回転速度ΔNE(=NE−NEFC)或いはフューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの時間tFCが予め決められた所定の判定値になったか否かに基づいてフューエルカット状態がまもなく終了(解除)されるか否かを予測(判定)する。
【0026】
エンジンブレーキ要素解放手段108は、車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用を発生させるために係合されている図2に示した「(○)」に対応するクラッチC或いはブレーキB(エンジンブレーキ用係合要素)の係合圧を解放するための指令値SPEBを、油圧制御回路へ出力する。たとえば第2速ギヤ段「2nd」での減速走行中の場合は、クラッチC4或いはブレーキB2を解放させることによってエンジンブレーキ作用が得られないようにする。エンジン回転速度NEは、上記エンジンブレーキ用係合要素の解放が行われると、タービン回転速度NTの低下に追随して、エンジンブレーキ時の車両の減速に伴うエンジン回転速度NEの低下量よりも大きな低下量で低下することになる。なお、上記エンジンブレーキ用係合要素の解放に際してはその係合圧を漸減させてもよい。
【0027】
駆動状態予測手段110は、フューエルカット復帰判定手段104によってフューエルカット状態から復帰すなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92による燃料供給が再開されたと判定されると、エンジン12による車両の駆動状態すなわち自動変速機16のそのときのギヤ段を達成するための一方向クラッチの係合状態となってエンジン12の出力トルクTEが図示しない駆動輪へ伝達されるか否かを、エンジン12への燃料供給が再開させられることによって上昇させられるタービン回転速度NTが減速走行中の実際の車速Vに対応する出力軸46の回転速度NOUTと現在のギヤ段の変速比γから算出される推定タービン回転速度NTP(=γ×NOUT)以上となるか否かに基づいて予測する。
【0028】
エンジン出力低下手段112は、アイドル回転速度制御手段114と目標アイドル回転速度変更手段116とを備えており、その目標アイドル回転速度を一時的に小さく設定することで、フューエルカット状態から復帰したときのエンジン回転速度NEの増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下させる。この結果、前記自動変速機16の一方向クラッチが係合させられるときのショックや音の発生を緩和することができる。
【0029】
上記アイドル回転速度制御手段114は、エンジン12のアイドル回転速度NEIDLと目標アイドル回転速度NEIDL *とが一致するようにISC(アイドル回転速度制御)バルブ53によって電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御する。前記目標アイドル回転速度変更手段116は、前記アイドル回転速度制御手段114によって制御されるアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *を一時的に変更する。たとえば、目標アイドル回転速度NEIDL *を変更前の値NEIDL1 *に比較して小さな値NEIDL2 *に一時的に変更すれば、エンジン12がフューエルカット状態から復帰したことによるエンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少される。
【0030】
図8および図9は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機16の制御作動を説明するフローチャートおよびタイムチャートである。本実施例では、アクセルペダルが非操作の減速走行であって、自動変速機16が第2速ギヤ段であるときの車両減速走行中の作動が説明されている。
【0031】
図8において、前記フューエルカット終了予測手段106に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、減速走行中且つロックアップクラッチ26のスリップ制御中でフューエルカットが継続されている状態において、車両の減速に伴って低下させられるエンジン回転速度NEが前記フューエルカット復帰回転速度NEFCに到達するまでの残りの回転速度ΔNE(NE−NEFC)が予め決められた判定値になったか否かに基づいてフューエルカット状態がまもなく終了(解除)されることすなわち前記ロックアップクラッチ26によるスリップ制御がまもなく終了されることが予測(判定)される。たとえば上記ΔNEが100rpm程度に設定され、エンジン回転速度センサ58からの信号によって検出されたエンジン12の回転速度NEとたとえば800rpmに設定されたフューエルカット復帰回転速度NEFCとの差が略100rpmとなったところすなわちエンジン12の回転速度NEが略900rpmとなったことに基づいてフューエルカット終了の予測がされる(図9のt1時点)。このS1はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。
【0032】
上記S1の判断が肯定されると、前記エンジンブレーキ要素解放手段108に対応するS2において、車両の減速走行時にエンジンブレーキ作用を得るために係合されている図2に示した「(○)」に対応する油圧式摩擦係合装置たとえばクラッチC4或いはブレーキB2(エンジンブレーキ用係合要素)の係合圧が解放されるための指令値SPEBがt1時点より油圧制御回路へ出力される。このときの指令値SPEBはt1時点より緩やかに漸減(スイープダウン)させられ、クラッチC4或いはブレーキB2の解放ショックが緩和されている。この結果、エンジン回転速度NEは、タービン回転速度NTの低下に追随して、図9の2点鎖線に示した前記推定タービン回転速度NTPの低下量よりも大きな低下量で低下させられる。
【0033】
次いで前記フューエルカット復帰判定手段104に対応するS3において、前記フューエルカット制御手段102の出力信号に基づいて、フューエルカット状態から復帰したか否かすなわちフューエルカット状態が解除させられ燃料噴射装置92によるエンジンへの燃料供給が再開されたか否かが判定される。このS3はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。図9のt2時点はS3の判断が肯定されてエンジン12が起動させられた状態を示している。
【0034】
上記S3の判断が肯定されると、前記駆動状態予測手段110に対応するS4において、エンジン12による車両の駆動状態すなわち自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられエンジン12の出力トルクTEが図示しない駆動輪へ伝達される状態か否かが、エンジン12への燃料供給により上昇させられるタービン回転速度NTが減速走行中の実際の車速Vに対応する出力軸46の回転速度NOUTが現在のギヤ段の変速比γから算出される推定タービン回転速度NTP(=γ×NOUT)以上となるか否かに基づいて予測される(t3時点)。たとえば第2速ギヤ段「2nd」での減速走行中の場合は、一方向クラッチF0が係合させられるか否かが、タービン回転速度センサ76からの信号によって検出されたタービン回転速度NTと車速センサ66からの信号によって検出された出力軸46の回転速度NOUTとに基づいて判定式NT≧NOUT×γ2(γ2は第2速ギヤ段の変速比)が成立するか否かに基づいて予測される。エンジン12による車両の駆動状態になるか否かが予測されることで、上記一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が予測されることになる。このS4はその判断が肯定されるまで繰り返し実行される。図9のt4時点は、上記一方向クラッチF0の係合が予測される予測点を示している。
【0035】
上記S4の判断が肯定されると前記目標アイドル回転速度変更手段116に対応するS5において、前記アイドル回転速度制御手段114によって制御されるアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *が一時的に変更される。ここでは、前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が緩和されるように、エンジン12への燃料供給が再開されたときのエンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少されてエンジン出力トルクTEが一時的に低下させられるように、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmに比較して所定値より低い値NEIDL2 *たとえば600rpmに一時的に変更される(図9のt3時点乃至t5時点)。
【0036】
次いで前記アイドル回転速度制御手段114に対応するS6において、エンジン12の実際のアイドル回転速度NEIDLと上記S5において変更された目標アイドル回転速度NEIDL2 *とが一致するように、前記電子スロットル弁56をバイパスさせるバイパス通路52に設けられているISC(アイドル回転速度制御)バルブ53によって電子スロットル弁56の全閉時の吸気量が制御される。図9に示す破線は、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmの場合であり、実線は変更後の値NEIDL2 *たとえば600rpmの場合を示している。この結果、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられるときのショックや音の発生が緩和される。図9に示すように、t4時点すなわち前記自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられエンジン12による駆動状態となった時点以降の出力トルクTOUTも減少させられている。
【0037】
上述のように、本実施例によれば、フューエルカット復帰判定手段104(S3)により、エンジン12への燃料供給が再開されたことが判定された際に、駆動状態予測手段110(S4)により自動変速機16が駆動状態となると予測されると、エンジン出力低下手段112(S5、S6)によりエンジン12の出力が低下させられるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0038】
また、本実施例によれば、エンジン出力低下手段112(S5、S6)は、フューエルカット復帰判定手段104(S3)によりエンジン12への燃料供給が再開されたと判定された後に、駆動状態予測手段110(S4)により自動変速機16がその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合はクラッチF0の係合で駆動状態になると予測されると、エンジン出力トルクTEの低下を実行するものなので、エンジン12への燃料供給の再開後にエンジン12による車両の駆動状態となり自動変速機16の一方向クラッチF0が係合させられる場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0039】
また、本実施例によれば、エンジン出力低下手段112(S5、S6)は、目標アイドル回転速度変更手段116(S5)によりエンジン12のアイドル回転速度NEIDLの目標値である目標アイドル回転速度NEIDL *を小さくなるように変更するものなので、目標アイドル回転速度変更手段116により小さくなるように変更された目標アイドル回転速度NEIDL2 *に基づいて、エンジン出力低下手段112(アイドル回転速度制御手段114(S6))によりエンジン出力トルクTEが好適に低下させられる。
【0040】
また、本実施例によれば、フューエルカット終了予測手段106(S1)によりフューエルカット作動の終了が予測されると、エンジンブレーキ要素解放手段108(S2)によって自動変速機16のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置たとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合はクラッチC4或いはブレーキB2が解放されるので、エンジン12への燃料供給が再開されたことに伴うショックや音の発生が防止される。また、フューエルカット作動状態の終了が予測された以降にエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置が解放されるので、フューエルカット作動が充分長く継続され、燃費向上に効果がある。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0042】
前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、たとえばISC弁が設けられておらず前記電子スロットル弁56によりアイドル回転速度が制御される場合には、前記電子スロットル弁56のエンジン12の起動時の目標開度θTH *を所定値θTH1 *からその所定値より低い値θTH2 *に一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。上記所定値θTH1 *はアクセルペダル操作量Accが略零の場合にエンジン12が起動されるように予め設定された目標開度θTH *の所定値である。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0043】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記点火装置94によりエンジン12の起動時の点火時期を一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。たとえば点火時期が最大トルク点火時期となるようにフィードバック制御されている場合は、点火時期を予め設定された値にしたがって一時的に進角或いは遅角させることでエンジン出力トルクTEを減少させる。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0044】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記燃料噴射弁92を制御してエンジン12の起動時の燃料噴射量を予め設定された値にしたがって一時的に減少することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0045】
また、前述の実施例では、エンジン出力低下手段112(図8のステップS5およびS6)は、目標アイドル回転速度NEIDL *を所定値NEIDL1 *からその所定値より低い値NEIDL2 *に一時的に変更することでエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてエンジン出力トルクTEを低下したが、前記エンジン12に備えられている吸気弁或いは排気弁のリフト量、開角或いは開閉時期を一時的に変更することでエンジン出力トルクTEを低下してもよい。たとえばエンジン12にはクランク軸の回転に同期して、吸気弁および排気弁を開閉駆動させるよく知られた動弁機構が備えられており、その動弁機構の型式にはOHV型、OHC型、DOHC型のような種類があり、たとえばDOHC型では、エンジンのクランク軸の回転をクランク軸プーリ、タイミングベルト、カム軸プーリ、カム軸、吸気弁或いは排気弁に取り付けられたロッカアーム或いは弁リフタを介して吸気弁或いは排気弁が開閉駆動されている。このような型式のエンジンにおいては、上記ロッカアーム或いはカム軸プーリに可変機構を備え付けたり、吸気弁用カム軸と排気弁用カム軸の同期のタイミングが可変となるように少なくとも一方のカム軸に可変機構を備え付けたり、或いはカム軸の特性(プロファイル形状)を可変(切り換え)したりして、弁のリフト量、開角或いは開閉時期が可変されることで、エンジン回転速度NEが変化させられる。すなわち弁のリフト量、開角或いは開閉時期がエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させるように予め設定された値にしたがって変更されればよい。このようにすれば、エンジン12への燃料供給が再開されたことに際して、エンジン12の起動時の回転速度の増加量が減少させられてエンジン出力トルクTEが低下させられ、車両が自動変速機16の駆動状態となってその一方向クラッチたとえば第2速ギヤ段での減速走行中の場合は一方向クラッチF0が係合する場合に発生するショックや音が好適に抑制される。
【0046】
また、前記アイドル回転速度制御手段114および前記目標アイドル回転速度変更手段116、前記電子スロットル弁56の目標開度θTH *の変更、前記点火装置94による点火時期の変更、前記燃料噴射弁92の制御による燃料噴射量の変更、前記エンジン12に備えられている吸気弁或いは排気弁のリフト量、開角或いは開閉時期の変更は、2つ以上が同時に実行されてエンジン12の起動時の回転速度の増加量を減少させてもよい。
【0047】
また、前述の実施例では、減速走行中の自動変速機16の制御作動として第2速ギヤ段の場合を説明したが、第1速ギヤ段、第3速ギヤ段、第4速ギヤ段等の減速走行時に自動変速機16のクラッチC或いはブレーキBの油圧式摩擦係合装置がエンジンブレーキ作用のために係合される変速段であればよい。たとえば第4速ギヤ段においてはクラッチC4がエンジンブレーキ作用のために係合されるので図8のステップS2においてそのクラッチC4の係合圧が低下されてクラッチC4が解放される。
【0048】
また、前述の実施例では、自動変速機16は、3組の遊星歯車装置40、42、44の組み合わせから成る、前進6速の変速機であったが、エンジンブレーキ作用のためにクラッチC或いはブレーキBの油圧式摩擦係合装置が係合される型式の変速機であればよく、自動変速機16を構成する遊星歯車装置の組数は3組とは異なる数であってもよいし、また前進5速の変速機、前進4速の変速機等であっても差し支えない。また、自動変速機16は、クラッチ或いはブレーキの油圧式摩擦係合装置や一方向クラッチで構成された変速部たとえば前後進切換或いは前進2段等の変速機と、変速比が無段階に連続的に変化させられる無段変速機とで構成されてもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、図8のステップS5において、目標アイドル回転速度NEIDL *が変更前の値NEIDL1 *たとえば700rpmから変更後の値NEIDL2 *たとえば600rpmに変更されたが、変更前の目標アイドル回転速度NEIDL1 *は車両の状態たとえばエンジンの暖気中であるとかエアコン等の補機の使用中であるとかに応じて好適に設定されればよい。また、変更後の目標アイドル回転速度NEIDL2 *は変更前の目標アイドル回転速度NEIDL1 *に比較して小さな値であればよい。また、その変更前の値NEIDL1 *から変更後の値NEIDL2 *に一時的に変更する変更期間は図9のt3時点乃至t5時点であったが、変更開始はt2時点乃至t4時点であればよく、その変更期間は少なくともt4時点まで実行されればよい。
【0050】
また、前述の実施例では、フューエルカット復帰回転速度NEFCは800rpmに設定されていたが、車両の状態に応じて好適に設定されればよい。たとえば、アイドル回転速度NEIDLに応じて好適に設定されればよい。
【0051】
また、前述の実施例では、前記フューエルカット終了予測手段106に対応するステップS1において、フューエルカット状態がまもなく終了(解除)されることすなわち前記ロックアップクラッチ26によるスリップ制御がまもなく終了されることとしたが、ロックアップクラッチ26によるスリップ制御はt1時点乃至t2時点で好適に終了されればよい。
【0052】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の変速制御装置が適用された車両用駆動装置の骨子図である。
【図2】図1の自動変速機の各ギヤ段を成立させるためのクラッチおよびブレーキの係合、解放状態を説明する図である。
【図3】図1の実施例の車両に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図4】図3のシフトレバーを具体的に示す斜視図である。
【図5】図3の電子制御装置によって行われるスロットル制御で用いられるアクセルペダル操作量Accとスロットル弁開度θTHとの関係の一例を示す図である。
【図6】図3の電子制御装置によって行われる自動変速機の変速制御で用いられる変速線図(マップ)の一例を示す図である。
【図7】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわちすなわちフューエルカット復帰時の自動変速機の制御方法を説明する機能ブロック線図である。
【図8】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機の制御作動を説明するフローチャートである。
【図9】図3の電子制御装置の制御機能の要部すなわち車両の減速走行中においてフューエルカット復帰時の自動変速機の制御作動を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
10:車両用駆動装置
12:エンジン
100:フューエルカット装置
104:フューエルカット復帰判定手段
106:フューエルカット終了予測手段
108:エンジンブレーキ要素解放手段
110:駆動状態予測手段
112:エンジン出力低下手段
116:目標アイドル回転速度変更手段
Claims (4)
- 減速走行時にエンジン回転速度が所定値を越えると、エンジンに供給される燃料を遮断するフューエルカット装置と、自動変速機とを備えた車両用自動変速機の変速制御装置であって、
前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動からエンジンへの燃料供給が再開されたことを判定するフューエルカット復帰判定手段と、
前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された際に前記自動変速機が駆動状態となるか否かを予測する駆動状態予測手段と、
前記駆動状態予測手段により前記自動変速機が駆動状態となると予測されると、前記エンジンの出力を低下させるエンジン出力低下手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記エンジン出力低下手段は、前記フューエルカット復帰判定手段によりエンジンへの燃料供給が再開されたと判定された後に、前記駆動状態予測手段により前記自動変速機がその一方向クラッチの係合で駆動状態になると予測されると、前記エンジン出力の低下を実行するものである請求項1の車両用自動変速機の変速制御装置。
- 前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を変更する目標アイドル回転速度変更手段を備え、
前記エンジン出力低下手段は、前記目標アイドル回転速度変更手段により前記エンジンのアイドル回転速度の目標値を小さくなるように変更させることにより、前記エンジン出力を低下させるものである請求項1または2の車両用自動変速機の変速制御装置。 - 前記フューエルカット装置によるフューエルカット作動の終了を予測するフューエルカット終了予測手段と、
前記フューエルカット終了予測手段により前記フューエルカット作動の終了が予測されると、前記自動変速機のエンジンブレーキに関わる油圧式摩擦係合装置を解放させるエンジンブレーキ要素解放手段と
を、含むものである請求項1乃至3のいずれかの車両用自動変速機の変速制御装置。
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US7415349B2 (en) | 2006-08-22 | 2008-08-19 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Control device and control method for vehicle |
KR20140056780A (ko) * | 2012-10-31 | 2014-05-12 | 콘티넨탈 오토모티브 시스템 주식회사 | 자동변속기 장착 차량의 크로스 범프 저감시스템 및 그 저감방법 |
KR20170032979A (ko) * | 2015-09-16 | 2017-03-24 | 현대자동차주식회사 | 하이브리드 자동차의 엔진 제어 방법 |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002365042A patent/JP2004197595A/ja active Pending
Cited By (4)
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KR102153144B1 (ko) | 2015-09-16 | 2020-09-07 | 현대자동차주식회사 | 하이브리드 자동차의 엔진 제어 방법 |
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