JP2004193034A - 燃料電池用電極、燃料電池及びその電極表面活性方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】カーボンナノホーンのような特殊で高価な材料を用いることく、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面を活性に維持でき、反応効率の低下を抑制できるようにする。
【解決手段】触媒を担持した電極2表面に塩化物イオンを含ませることにより、カーボンナノホーンのような特殊で高価な材料を用いることなく、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極2表面の触媒の表面に活性な箇所を維持でき、燃料電池1としての反応効率の低下を抑制できるようにした。特に、電極反応で重要なことは、電極2表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極2のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないので、塩化物イオンは電極2表面に存在すれば十分である。
【選択図】 図1
【解決手段】触媒を担持した電極2表面に塩化物イオンを含ませることにより、カーボンナノホーンのような特殊で高価な材料を用いることなく、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極2表面の触媒の表面に活性な箇所を維持でき、燃料電池1としての反応効率の低下を抑制できるようにした。特に、電極反応で重要なことは、電極2表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極2のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないので、塩化物イオンは電極2表面に存在すれば十分である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極、燃料電池及びその電極表面活性方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、次世代エネルギー源として、燃料電池が注目されている。この燃料電池は、基本的には、各々触媒を有する燃料極と酸素極との2つの電極を電解質層を介して備え、供給された燃料を燃料極で酸化し、酸素極で酸素を還元することにより、電極間に電気を発生させることを原理としている。
【0003】
この場合、燃料電池は使用される電解質の違いにより、幾つかの種類に分類されるが、その一つとして、例えば、水素を直接燃料とする固体高分子型(PEFC)のものがある。このPEFCは、比較的低温で利用できるものの、燃料となる水素の貯蔵方法等に関して難点がある。
【0004】
これに対して、例えば、液体燃料であるメタノールから改質した水素を用いる方法は、水素を直接用いる方法の問題点を抑制でき、有力な方法となる。さらには、メタノール燃料を電極上で直接反応させる直接型燃料電池(DMFC)が特に注目されている。エタノール燃料を用いるものに関しても同様である。直接型燃料電池によれば、改質器が不要であり、小型・軽量化が可能なため、携帯電話、PDFなどの携帯機器用電源として期待されている。
【0005】
このようなメタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池の場合、触媒としては、メタノール燃料又はエタノール燃料に対する触媒作用が大きい白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を用いるようにしたものが多い(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
この際、電極部において触媒反応を効率よくするためには、触媒と溶液との接触面積が大きいことが重要であるため、表面積を広くすることができるカーボンナノホーン等に白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒を付着させる方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−16588号公報
【特許文献2】
特開2001−256982公報
【特許文献3】
特表平11−510311号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノホーンを利用する方法によれば、表面積を広く取れる利点が期待されるが、カーボンナノホーンという特殊な材料を作成するためには、レーザ光を用いる特殊な専用装置が必要であり、1g当り1,000円〜50,000円程度で販売される極めて高価なものになり、かつ、製造可能な量も極めて限られており、高価な材料とならざるを得ない。
【0009】
また、触媒として、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を用い、電極材料上に触媒を担持させて用いる場合、Pt表面には自然生成被膜が存在し、反応を阻害してしまう性質がある。
【0010】
さらに、メタノール燃料やエタノール燃料を用いると、生成物に起因する被毒(例えば、メタノールが白金触媒上で酸化される時、白金に吸着した一酸化炭素を生じ、これが白金を被毒する)により触媒表面の活性が低下してしまい、結局、反応効率が低下し、使用に伴い出力電圧が低下していく現象は避けられない。この点に関しては、白金の表面から一酸化炭素を速やかに除去するために、白金−ルテニウム系が最も高活性触媒であることが知られているが(例えば、特許文献1参照)、上述したような自然生成被膜の存在による不具合を生じ、不十分である。
【0011】
本発明の目的は、カーボンナノホーンのような特殊で高価な材料を用いることなく、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面を活性に維持することができ、反応効率の低下を抑制できるようにすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の燃料電池用電極は、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含む。
【0013】
従って、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含むことにより、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面の触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、燃料電池としての反応効率の低下を抑制させることができる。特に、電極反応で重要なことは、電極表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないので、塩化物イオンは電極表面に存在すれば十分である。
【0014】
請求項2記載の発明の燃料電池用電極は、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含み、炭素系材料を主成分とする。
【0015】
従って、基本的には請求項1記載の発明と同様であるが、特に、電極表面にのみ触媒と塩化物イオンとが存在すればよく、カーボンペーパー等の安価な炭素系材料を使用することが可能となる。
【0016】
これらの発明において、塩化物イオンはその存在が保証されればよく、例えば、100ppm以上存在すれば十分である。即ち、塩化物イオンは僅かであっても電極表面に存在すれば効果があるが、実際の製品としての評価能力を考慮すると、例えば、一般的なXMA(X線マイクロアナライザー)、IMA(イオンマイクロアナライザー)、Auger(オージェ分光分析)等の表面分析方式の分析感度が100ppm程度であり、このような分析感度の表面分析方式で製品評価を行えるようにするためである。また、100ppm以上の存在とすれば、例えば燃料に添加する塩化物イオンの添加量の管理も複雑にならずに済む。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の燃料電池用電極において、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒を担持する。
【0018】
従って、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を触媒として用いると、メタノール燃料やエタノール燃料に対する触媒作用が大きいため、反応を促進させる上で好ましく、この際、これらの金属触媒はその表面に数十Åの酸化物を生成するが、塩化物イオンの攻撃により酸化物を剥離させることができ、活性な触媒面(金属面)を露出させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明の燃料電池は、請求項1ないし3の何れか一記載の燃料電池用電極を備える。
【0020】
従って、請求項1ないし3の何れか一記載の発明と同様な作用を奏する。
【0021】
請求項5記載の発明の燃料電池は、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、前記燃料に塩化物イオンを含む。
【0022】
従って、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、燃料に塩化物イオンを含むことで、電池使用時にこのような燃料を燃料電池用電極に供給させるだけで、電極の触媒表面を活性させることができ、その電極表面は簡単に効率的な反応を継続させることができる。
【0023】
請求項6記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法は、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄するようにした。
【0024】
従って、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄することにより、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。
【0025】
請求項7記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法は、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池の燃料電池用電極に対して、前記燃料中に塩化物イオンを含ませて供給するようにした。
【0026】
従って、塩化物イオンを含む燃料を燃料電池用電極に対して供給するだけで、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。ここに、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるので、一旦、塩化物イオンを含む燃料を用いた後であれば、その後は、塩化物イオンを含まない従来通りの燃料を用いることも可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。本発明が適用される燃料電池としては、各種例があるが、本実施の形態では、その一例として、例えば特許文献2に例示されるメタノール直接型燃料電池への適用例として説明する。
【0028】
図1はメタノール直接型燃料電池の原理的構成例を示す縦断正面図、図2はその水平断面図である。本実施の形態のメタノール直接型燃料電池1は、各々触媒を有する燃料極2と酸素極3とを対向配置させ、これらの電極2,3間に電解質層4を介在させることにより化学反応を起こして電気を発生させるように構成された反応部5と、この反応部5の両側を支持するセパレータ6,7とにより構成されている。ここに、セパレータ6は燃料であるメタノール燃料を燃料極2に供給するためのもので、図2に示すように複数の四角形状の溝を平行に形成した流路8を有する。また、セパレータ6の溝以外の部分(凸部)は燃料極2に直接当接しているとともに、カーボン含有樹脂等により導体として構成されており、燃料極2に対して外部引出し端子(負極側端子)として機能し得る。セパレータ7も基本的には同様であり、空気を酸素極3に供給するためのもので、図2に示すように複数の四角形状の溝を平行に形成した流路9を有する。また、セパレータ7の溝以外の部分(凸部)は酸素極3に直接当接しているとともに、カーボン含有樹脂等により導体として構成されており、酸素極3に対して外部引出し端子(正極側端子)として機能し得る。
【0029】
これにより、基本的には、燃料極2に流路8を介してメタノール燃料を直接供給してメタノールを酸化する一方、酸素極3には流路9を介して空気を供給して空気中の酸素を還元することにより、電極2,3間に電気を発生させるものである。
【0030】
即ち、流路8にメタノール燃料(メタノール水溶液又は気体のメタノール+水)を送ると、燃料極2にはメタノール(CH3OH)及び水(H2O)が供給される。また、流路9に空気(空気に限らず酸素分子を含んでいればよい)を送ると、酸素極3には酸素が供給される。これにより、燃料極2では、触媒の作用により、反応が生じ、電子が生成される。生成された電子は、燃料極2から、セパレータ6、配線10、負荷11、配線12、セパレータ7を通り、酸素極3に移動する。この過程で、移動する電子が負荷11で仕事を行う。
【0031】
一方、燃料極2で生成された水素イオンは、燃料極2から電解質層4を通り、酸素極3へ移動する。この水素イオンは、流路9により供給される酸素と、配線12を通ってきた電子とで、酸素極3の触媒の作用で反応が生じ、水を生成する。
【0032】
これらの過程で生成された二酸化炭素は流路8から排出され、水は流路9から排出される。
【0033】
ここに、特に図示しないが、電極2,3は何れもその内側表面(対向面)側に触媒を担持している。この触媒としては、本実施の形態では、例えば、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒が用いられている。例えば、燃料極2の触媒に白金又は白金合金を用いると、メタノールの酸化促進作用に優れているため、燃料極2でメタノールを効率よく酸化することができる。特に、白金−ルテニウム(Pt−Ru)合金を用いれば、メタノールの酸化促進作用に優れる上に、触媒毒による被毒も受け難く、より好ましい。
【0034】
また、電極2,3においてこのような触媒を担持する担持体としては、例えば、カーボンペーパーのような炭素系材料を主成分とするものが好ましい。これは、安価である上に、触媒を炭素系材料に担持させると、燃料極2の導電性が向上し、燃料電池1としての内部抵抗が低下し、電池出力が向上するためである。
【0035】
このような基本的構成による場合、触媒である白金の表面には、自然生成被膜が存在し、反応を阻害する性質がある。また、メタノール燃料を用いる場合、生成部に起因する被毒により触媒表面の活性が低下し、結局、反応効率が低下し、出力電圧が低下してしまう不具合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、電極、特に燃料極2に触媒として用いられる白金(Pt)系の表面を活性に保つために、この燃料極2の表面に塩化物イオンが含まれるようにしたものである。実際的には、燃料極2の表面を分析した場合に、100ppm以上の塩化物イオンが検出されるようにこの塩化物イオンが含まれていればよい。このような塩化物イオンを電極表面に含むことにより、白金系触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、反応効率の低下を抑制することができる。特に、白金系の金属触媒は、Pt表面に数十Åの酸化物を生成するが、Pt表面に塩化物イオンを含むことにより、これらの酸化物は塩化物イオンの攻撃によりPt表面から剥離され、活性な金属面が露出する。Pt表面に存在し得る自然生成被膜に関しても同様であり、塩化物イオンの攻撃によりPt表面から剥離され、活性な金属面が露出する。このようにして、燃料極2の表面側の触媒表面が活性に維持される。
【0037】
ちなみに、燃料電池に関する提案例である特許文献3によれば、その第19頁に白金ルテニウム金属性粉末を形成する上で、白金塩とルテニウム塩を塩酸に入れたスラリーを形成し、クロロ白金酸結晶を溶解することでクロロ白金酸ヘキサ水和物塩を生成する一方、ペンタクロロアクオルテニウムのカリウム塩からルテニウム塩を生成させる、等の如く、塩化物に関する記載がある。しかしながら、特許文献3中の第21頁中には、洗浄によりいかなる溶解した塩化物も除去される、と記載され、さらには、塩化物の材料が材料の合着を最小限に抑えるのに必要な結合剤ではあるが、後で除去されねばならないことを見出した、旨も記載されている。白金(Pt)触媒に関しては、一般的には、この特許文献3中に記載された上記のような考えが常識であると理解されている。このような常識に対して、本発明では、塩化物イオンを積極的に存在させて一部のPt酸化物も除去することにより、反応効率をよくするようにしたものである。つまり、触媒であるPtの一部の表面には、極めて薄い透明な酸化物が存在し、この酸化物を除去すればもっと反応効率が向上することを、本発明者は見出したものである。
【0038】
ところで、電極反応で重要なことは、電極表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないことである。電極、特に燃料極2の表面に塩化物イオンが存在することの証明(保証)として、種々の分析方法が考えられるが、できるだけ電極表面のみの情報が得られる評価方法が望ましい。具体的には、一般的なXMA(X線マイクロアナライザー)、IMA(イオンマイクロアナライザー)、Auger(オージェ分光分析)等の表面分析法が望ましい。
【0039】
また、電極表面に含まれる塩化物イオンの量としては、塩化物イオンはその存在が保証されればよく、例えば、100ppm以上存在すれば十分である。即ち、塩化物イオンは僅かであっても電極表面に存在すれば効果があるが、実際の製品としての評価能力を考慮すると、上述のXMA,IMA,Auger分光法等が好適であるが、その分析感度が100ppmである点を考慮すると、このような分析感度の表面分析方式で製品評価を行える100ppm以上が妥当な量となる。また、100ppm以上の存在とすれば、例えば燃料に添加する塩化物イオンの添加量の管理も、100ppm以下とする場合のように複雑にならずに済む。
【0040】
ところで、このように電極、特に燃料極2の触媒表面に塩化物イオンを含ませて活性させる方法としては、最も単純には、製造段階において、燃料極2の表面を塩化物イオンを含む溶液で洗浄すればよい(酸洗い)。
【0041】
単純な例として、1モルの塩酸にカーボン電極を1分間浸漬させ、蒸留水で10秒間洗浄後、電極表面をXMAで分析したところ、0.1%程度の塩化物イオンの存在が確認されたものである。
【0042】
もっとも、このような洗浄方法の場合、初期にこのような洗浄による表面処理を行っても、使用に従い触媒表面が不活性になることは避けられないので、より現実的には、燃料を直接注入する直接型燃料電池1の特徴を活かして、その燃料そのものに塩化物イオンを適量添加した状態で、この燃料を燃料極2に供給することでその表面を活性にする方法が有効と考えられる。塩化物イオンは水にしか溶解しない性質があるが、燃料であるメタノールやエタノールが水に対して混合する性質があるので、メタノール燃料やエタノール燃料中に塩化物イオンを溶解させることは可能である。このように、燃料極2に供給される燃料そのものに触媒表面を活性させるための塩化物イオンを添加することにより、常に、確実に燃料極2の触媒表面に塩化物イオンを供給させることができ、その触媒表面を活性にすることができる。
【0043】
これらの場合、塩化物イオンを含む材料としては、例えば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を用いればよい。これらは水に対する溶解率が高く、塩化物イオンの水に対する乖離率も大きく、価格も安価であり、極めて有効な材料といえる。
【0044】
ところで、塩化物イオンが添加された燃料は、少なくとも最初に用いればよく、その後は、塩化物イオンが添加されていない従来通りの燃料を用いるようにしてもよい。これは、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるためである。
【0045】
いま、一例として、市販の粉末カーボン5gをメノー乳鉢に入れ、Pt−Ru触媒1gを入れて粉砕混合させ、その後、板状に成形して電極に供した。このような電極を備え、メタノール燃料を燃料とするメタノール直接型燃料電池として構成した(比較例)。一方、同一構成のメタノール直接型燃料電池に関して、塩酸と塩化ナトリウム及び塩化カリウムを各々0.1N溶液作成し、メタノール:塩化物イオン溶液を溶液比で10:1となるように混合して、塩化物イオンが添加されたメタノール燃料を用いるメタノール直接型燃料電池とした(実施例)。単なるカーボン粉末とPt−Ru触媒を用いただけの比較例の燃料電池では出力が300mW/cm2であったが、塩化物イオンが添加されることにより電極を酸処理する実施例の燃料電池では出力が400〜500mW/cm2となったものである。
【0046】
なお、上述の説明では、メタノール直接型燃料電池1への適用例として説明したが、エタノール直接型燃料電池にも同様に適用でき、かつ、同様な効果が得られる。また、燃料極の触媒表面に塩化物イオンを含ませる点に関しては、直接型燃料電池に限らず、固体高分子型燃料電池等に適用しても同様の効果が得られる。
【0047】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の燃料電池用電極によれば、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含むので、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面の触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、燃料電池としての反応効率の低下を抑制させることができる。
【0048】
請求項2記載の発明の燃料電池用電極によれば、基本的には請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるが、特に、電極表面にのみ触媒と塩化物イオンとが存在すればよく、カーボンペーパー等の安価な炭素系材料を使用することが可能となる。
【0049】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の燃料電池用電極において、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を触媒として用いると、メタノール燃料やエタノール燃料に対する触媒作用が大きいため、反応を促進させる上で好ましく、この際、これらの金属触媒はその表面に数十Åの酸化物を生成するが、塩化物イオンの攻撃により酸化物を剥離させることができ、活性な触媒面を露出させることができる。
【0050】
請求項4記載の発明の燃料電池によれば、請求項1ないし3の何れか一記載の発明と同様な効果を得ることができる。
【0051】
請求項5記載の発明の燃料電池によれば、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、燃料に塩化物イオンを含むようにしたので、電池使用時にこのような燃料を燃料電池用電極に供給させるだけで、電極の触媒表面を活性させることができ、その電極表面は簡単に効率的な反応を継続させることができる。
【0052】
請求項6記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法によれば、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄することにより、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。
【0053】
請求項7記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法によれば、塩化物イオンを含む燃料を燃料電池用電極に対して供給するだけで、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。この際、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるので、一旦、塩化物イオンを含む燃料を用いた後であれば、その後は、塩化物イオンを含まない従来通りの燃料を用いることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のメタノール直接型燃料電池の原理的構成例を示す縦断正面図である。
【図2】その水平断面図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2,3 電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池用電極、燃料電池及びその電極表面活性方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、次世代エネルギー源として、燃料電池が注目されている。この燃料電池は、基本的には、各々触媒を有する燃料極と酸素極との2つの電極を電解質層を介して備え、供給された燃料を燃料極で酸化し、酸素極で酸素を還元することにより、電極間に電気を発生させることを原理としている。
【0003】
この場合、燃料電池は使用される電解質の違いにより、幾つかの種類に分類されるが、その一つとして、例えば、水素を直接燃料とする固体高分子型(PEFC)のものがある。このPEFCは、比較的低温で利用できるものの、燃料となる水素の貯蔵方法等に関して難点がある。
【0004】
これに対して、例えば、液体燃料であるメタノールから改質した水素を用いる方法は、水素を直接用いる方法の問題点を抑制でき、有力な方法となる。さらには、メタノール燃料を電極上で直接反応させる直接型燃料電池(DMFC)が特に注目されている。エタノール燃料を用いるものに関しても同様である。直接型燃料電池によれば、改質器が不要であり、小型・軽量化が可能なため、携帯電話、PDFなどの携帯機器用電源として期待されている。
【0005】
このようなメタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池の場合、触媒としては、メタノール燃料又はエタノール燃料に対する触媒作用が大きい白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を用いるようにしたものが多い(例えば、特許文献1,2参照)。
【0006】
この際、電極部において触媒反応を効率よくするためには、触媒と溶液との接触面積が大きいことが重要であるため、表面積を広くすることができるカーボンナノホーン等に白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒を付着させる方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−16588号公報
【特許文献2】
特開2001−256982公報
【特許文献3】
特表平11−510311号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノホーンを利用する方法によれば、表面積を広く取れる利点が期待されるが、カーボンナノホーンという特殊な材料を作成するためには、レーザ光を用いる特殊な専用装置が必要であり、1g当り1,000円〜50,000円程度で販売される極めて高価なものになり、かつ、製造可能な量も極めて限られており、高価な材料とならざるを得ない。
【0009】
また、触媒として、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を用い、電極材料上に触媒を担持させて用いる場合、Pt表面には自然生成被膜が存在し、反応を阻害してしまう性質がある。
【0010】
さらに、メタノール燃料やエタノール燃料を用いると、生成物に起因する被毒(例えば、メタノールが白金触媒上で酸化される時、白金に吸着した一酸化炭素を生じ、これが白金を被毒する)により触媒表面の活性が低下してしまい、結局、反応効率が低下し、使用に伴い出力電圧が低下していく現象は避けられない。この点に関しては、白金の表面から一酸化炭素を速やかに除去するために、白金−ルテニウム系が最も高活性触媒であることが知られているが(例えば、特許文献1参照)、上述したような自然生成被膜の存在による不具合を生じ、不十分である。
【0011】
本発明の目的は、カーボンナノホーンのような特殊で高価な材料を用いることなく、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面を活性に維持することができ、反応効率の低下を抑制できるようにすることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の燃料電池用電極は、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含む。
【0013】
従って、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含むことにより、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面の触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、燃料電池としての反応効率の低下を抑制させることができる。特に、電極反応で重要なことは、電極表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないので、塩化物イオンは電極表面に存在すれば十分である。
【0014】
請求項2記載の発明の燃料電池用電極は、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含み、炭素系材料を主成分とする。
【0015】
従って、基本的には請求項1記載の発明と同様であるが、特に、電極表面にのみ触媒と塩化物イオンとが存在すればよく、カーボンペーパー等の安価な炭素系材料を使用することが可能となる。
【0016】
これらの発明において、塩化物イオンはその存在が保証されればよく、例えば、100ppm以上存在すれば十分である。即ち、塩化物イオンは僅かであっても電極表面に存在すれば効果があるが、実際の製品としての評価能力を考慮すると、例えば、一般的なXMA(X線マイクロアナライザー)、IMA(イオンマイクロアナライザー)、Auger(オージェ分光分析)等の表面分析方式の分析感度が100ppm程度であり、このような分析感度の表面分析方式で製品評価を行えるようにするためである。また、100ppm以上の存在とすれば、例えば燃料に添加する塩化物イオンの添加量の管理も複雑にならずに済む。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の燃料電池用電極において、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒を担持する。
【0018】
従って、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を触媒として用いると、メタノール燃料やエタノール燃料に対する触媒作用が大きいため、反応を促進させる上で好ましく、この際、これらの金属触媒はその表面に数十Åの酸化物を生成するが、塩化物イオンの攻撃により酸化物を剥離させることができ、活性な触媒面(金属面)を露出させることができる。
【0019】
請求項4記載の発明の燃料電池は、請求項1ないし3の何れか一記載の燃料電池用電極を備える。
【0020】
従って、請求項1ないし3の何れか一記載の発明と同様な作用を奏する。
【0021】
請求項5記載の発明の燃料電池は、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、前記燃料に塩化物イオンを含む。
【0022】
従って、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、燃料に塩化物イオンを含むことで、電池使用時にこのような燃料を燃料電池用電極に供給させるだけで、電極の触媒表面を活性させることができ、その電極表面は簡単に効率的な反応を継続させることができる。
【0023】
請求項6記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法は、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄するようにした。
【0024】
従って、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄することにより、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。
【0025】
請求項7記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法は、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池の燃料電池用電極に対して、前記燃料中に塩化物イオンを含ませて供給するようにした。
【0026】
従って、塩化物イオンを含む燃料を燃料電池用電極に対して供給するだけで、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。ここに、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるので、一旦、塩化物イオンを含む燃料を用いた後であれば、その後は、塩化物イオンを含まない従来通りの燃料を用いることも可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。本発明が適用される燃料電池としては、各種例があるが、本実施の形態では、その一例として、例えば特許文献2に例示されるメタノール直接型燃料電池への適用例として説明する。
【0028】
図1はメタノール直接型燃料電池の原理的構成例を示す縦断正面図、図2はその水平断面図である。本実施の形態のメタノール直接型燃料電池1は、各々触媒を有する燃料極2と酸素極3とを対向配置させ、これらの電極2,3間に電解質層4を介在させることにより化学反応を起こして電気を発生させるように構成された反応部5と、この反応部5の両側を支持するセパレータ6,7とにより構成されている。ここに、セパレータ6は燃料であるメタノール燃料を燃料極2に供給するためのもので、図2に示すように複数の四角形状の溝を平行に形成した流路8を有する。また、セパレータ6の溝以外の部分(凸部)は燃料極2に直接当接しているとともに、カーボン含有樹脂等により導体として構成されており、燃料極2に対して外部引出し端子(負極側端子)として機能し得る。セパレータ7も基本的には同様であり、空気を酸素極3に供給するためのもので、図2に示すように複数の四角形状の溝を平行に形成した流路9を有する。また、セパレータ7の溝以外の部分(凸部)は酸素極3に直接当接しているとともに、カーボン含有樹脂等により導体として構成されており、酸素極3に対して外部引出し端子(正極側端子)として機能し得る。
【0029】
これにより、基本的には、燃料極2に流路8を介してメタノール燃料を直接供給してメタノールを酸化する一方、酸素極3には流路9を介して空気を供給して空気中の酸素を還元することにより、電極2,3間に電気を発生させるものである。
【0030】
即ち、流路8にメタノール燃料(メタノール水溶液又は気体のメタノール+水)を送ると、燃料極2にはメタノール(CH3OH)及び水(H2O)が供給される。また、流路9に空気(空気に限らず酸素分子を含んでいればよい)を送ると、酸素極3には酸素が供給される。これにより、燃料極2では、触媒の作用により、反応が生じ、電子が生成される。生成された電子は、燃料極2から、セパレータ6、配線10、負荷11、配線12、セパレータ7を通り、酸素極3に移動する。この過程で、移動する電子が負荷11で仕事を行う。
【0031】
一方、燃料極2で生成された水素イオンは、燃料極2から電解質層4を通り、酸素極3へ移動する。この水素イオンは、流路9により供給される酸素と、配線12を通ってきた電子とで、酸素極3の触媒の作用で反応が生じ、水を生成する。
【0032】
これらの過程で生成された二酸化炭素は流路8から排出され、水は流路9から排出される。
【0033】
ここに、特に図示しないが、電極2,3は何れもその内側表面(対向面)側に触媒を担持している。この触媒としては、本実施の形態では、例えば、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒が用いられている。例えば、燃料極2の触媒に白金又は白金合金を用いると、メタノールの酸化促進作用に優れているため、燃料極2でメタノールを効率よく酸化することができる。特に、白金−ルテニウム(Pt−Ru)合金を用いれば、メタノールの酸化促進作用に優れる上に、触媒毒による被毒も受け難く、より好ましい。
【0034】
また、電極2,3においてこのような触媒を担持する担持体としては、例えば、カーボンペーパーのような炭素系材料を主成分とするものが好ましい。これは、安価である上に、触媒を炭素系材料に担持させると、燃料極2の導電性が向上し、燃料電池1としての内部抵抗が低下し、電池出力が向上するためである。
【0035】
このような基本的構成による場合、触媒である白金の表面には、自然生成被膜が存在し、反応を阻害する性質がある。また、メタノール燃料を用いる場合、生成部に起因する被毒により触媒表面の活性が低下し、結局、反応効率が低下し、出力電圧が低下してしまう不具合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態では、電極、特に燃料極2に触媒として用いられる白金(Pt)系の表面を活性に保つために、この燃料極2の表面に塩化物イオンが含まれるようにしたものである。実際的には、燃料極2の表面を分析した場合に、100ppm以上の塩化物イオンが検出されるようにこの塩化物イオンが含まれていればよい。このような塩化物イオンを電極表面に含むことにより、白金系触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、反応効率の低下を抑制することができる。特に、白金系の金属触媒は、Pt表面に数十Åの酸化物を生成するが、Pt表面に塩化物イオンを含むことにより、これらの酸化物は塩化物イオンの攻撃によりPt表面から剥離され、活性な金属面が露出する。Pt表面に存在し得る自然生成被膜に関しても同様であり、塩化物イオンの攻撃によりPt表面から剥離され、活性な金属面が露出する。このようにして、燃料極2の表面側の触媒表面が活性に維持される。
【0037】
ちなみに、燃料電池に関する提案例である特許文献3によれば、その第19頁に白金ルテニウム金属性粉末を形成する上で、白金塩とルテニウム塩を塩酸に入れたスラリーを形成し、クロロ白金酸結晶を溶解することでクロロ白金酸ヘキサ水和物塩を生成する一方、ペンタクロロアクオルテニウムのカリウム塩からルテニウム塩を生成させる、等の如く、塩化物に関する記載がある。しかしながら、特許文献3中の第21頁中には、洗浄によりいかなる溶解した塩化物も除去される、と記載され、さらには、塩化物の材料が材料の合着を最小限に抑えるのに必要な結合剤ではあるが、後で除去されねばならないことを見出した、旨も記載されている。白金(Pt)触媒に関しては、一般的には、この特許文献3中に記載された上記のような考えが常識であると理解されている。このような常識に対して、本発明では、塩化物イオンを積極的に存在させて一部のPt酸化物も除去することにより、反応効率をよくするようにしたものである。つまり、触媒であるPtの一部の表面には、極めて薄い透明な酸化物が存在し、この酸化物を除去すればもっと反応効率が向上することを、本発明者は見出したものである。
【0038】
ところで、電極反応で重要なことは、電極表面に存在する触媒のみが反応に寄与し、電極のバルク(内部)に存在する触媒は反応に寄与しないことである。電極、特に燃料極2の表面に塩化物イオンが存在することの証明(保証)として、種々の分析方法が考えられるが、できるだけ電極表面のみの情報が得られる評価方法が望ましい。具体的には、一般的なXMA(X線マイクロアナライザー)、IMA(イオンマイクロアナライザー)、Auger(オージェ分光分析)等の表面分析法が望ましい。
【0039】
また、電極表面に含まれる塩化物イオンの量としては、塩化物イオンはその存在が保証されればよく、例えば、100ppm以上存在すれば十分である。即ち、塩化物イオンは僅かであっても電極表面に存在すれば効果があるが、実際の製品としての評価能力を考慮すると、上述のXMA,IMA,Auger分光法等が好適であるが、その分析感度が100ppmである点を考慮すると、このような分析感度の表面分析方式で製品評価を行える100ppm以上が妥当な量となる。また、100ppm以上の存在とすれば、例えば燃料に添加する塩化物イオンの添加量の管理も、100ppm以下とする場合のように複雑にならずに済む。
【0040】
ところで、このように電極、特に燃料極2の触媒表面に塩化物イオンを含ませて活性させる方法としては、最も単純には、製造段階において、燃料極2の表面を塩化物イオンを含む溶液で洗浄すればよい(酸洗い)。
【0041】
単純な例として、1モルの塩酸にカーボン電極を1分間浸漬させ、蒸留水で10秒間洗浄後、電極表面をXMAで分析したところ、0.1%程度の塩化物イオンの存在が確認されたものである。
【0042】
もっとも、このような洗浄方法の場合、初期にこのような洗浄による表面処理を行っても、使用に従い触媒表面が不活性になることは避けられないので、より現実的には、燃料を直接注入する直接型燃料電池1の特徴を活かして、その燃料そのものに塩化物イオンを適量添加した状態で、この燃料を燃料極2に供給することでその表面を活性にする方法が有効と考えられる。塩化物イオンは水にしか溶解しない性質があるが、燃料であるメタノールやエタノールが水に対して混合する性質があるので、メタノール燃料やエタノール燃料中に塩化物イオンを溶解させることは可能である。このように、燃料極2に供給される燃料そのものに触媒表面を活性させるための塩化物イオンを添加することにより、常に、確実に燃料極2の触媒表面に塩化物イオンを供給させることができ、その触媒表面を活性にすることができる。
【0043】
これらの場合、塩化物イオンを含む材料としては、例えば、塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム等を用いればよい。これらは水に対する溶解率が高く、塩化物イオンの水に対する乖離率も大きく、価格も安価であり、極めて有効な材料といえる。
【0044】
ところで、塩化物イオンが添加された燃料は、少なくとも最初に用いればよく、その後は、塩化物イオンが添加されていない従来通りの燃料を用いるようにしてもよい。これは、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるためである。
【0045】
いま、一例として、市販の粉末カーボン5gをメノー乳鉢に入れ、Pt−Ru触媒1gを入れて粉砕混合させ、その後、板状に成形して電極に供した。このような電極を備え、メタノール燃料を燃料とするメタノール直接型燃料電池として構成した(比較例)。一方、同一構成のメタノール直接型燃料電池に関して、塩酸と塩化ナトリウム及び塩化カリウムを各々0.1N溶液作成し、メタノール:塩化物イオン溶液を溶液比で10:1となるように混合して、塩化物イオンが添加されたメタノール燃料を用いるメタノール直接型燃料電池とした(実施例)。単なるカーボン粉末とPt−Ru触媒を用いただけの比較例の燃料電池では出力が300mW/cm2であったが、塩化物イオンが添加されることにより電極を酸処理する実施例の燃料電池では出力が400〜500mW/cm2となったものである。
【0046】
なお、上述の説明では、メタノール直接型燃料電池1への適用例として説明したが、エタノール直接型燃料電池にも同様に適用でき、かつ、同様な効果が得られる。また、燃料極の触媒表面に塩化物イオンを含ませる点に関しては、直接型燃料電池に限らず、固体高分子型燃料電池等に適用しても同様の効果が得られる。
【0047】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の燃料電池用電極によれば、触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含むので、安価なカーボンを用いることができ、かつ、簡単に電極表面の触媒の表面に活性な箇所を維持することができ、燃料電池としての反応効率の低下を抑制させることができる。
【0048】
請求項2記載の発明の燃料電池用電極によれば、基本的には請求項1記載の発明と同様な効果を得ることができるが、特に、電極表面にのみ触媒と塩化物イオンとが存在すればよく、カーボンペーパー等の安価な炭素系材料を使用することが可能となる。
【0049】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の燃料電池用電極において、白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金を触媒として用いると、メタノール燃料やエタノール燃料に対する触媒作用が大きいため、反応を促進させる上で好ましく、この際、これらの金属触媒はその表面に数十Åの酸化物を生成するが、塩化物イオンの攻撃により酸化物を剥離させることができ、活性な触媒面を露出させることができる。
【0050】
請求項4記載の発明の燃料電池によれば、請求項1ないし3の何れか一記載の発明と同様な効果を得ることができる。
【0051】
請求項5記載の発明の燃料電池によれば、メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、燃料に塩化物イオンを含むようにしたので、電池使用時にこのような燃料を燃料電池用電極に供給させるだけで、電極の触媒表面を活性させることができ、その電極表面は簡単に効率的な反応を継続させることができる。
【0052】
請求項6記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法によれば、塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄することにより、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。
【0053】
請求項7記載の発明の燃料電池用電極の電極表面活性方法によれば、塩化物イオンを含む燃料を燃料電池用電極に対して供給するだけで、簡単・安価にして、燃料電池用電極の表面を活性にすることができる。この際、塩化物イオンは、一旦、電極表面に供給されれば、その後、燃料が消費されても、触媒表面に残存し、絶えず、触媒表面は活性に維持されるので、一旦、塩化物イオンを含む燃料を用いた後であれば、その後は、塩化物イオンを含まない従来通りの燃料を用いることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態のメタノール直接型燃料電池の原理的構成例を示す縦断正面図である。
【図2】その水平断面図である。
【符号の説明】
1 燃料電池
2,3 電極
Claims (7)
- 触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含むことを特徴とする燃料電池用電極。
- 触媒を担持した電極表面に塩化物イオンを含み、炭素系材料を主成分とすることを特徴とする燃料電池用電極。
- 白金(Pt)、白金−ルテニウム(Pt−Ru)或いはPt−Ru系合金による触媒を担持することを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池用電極。
- 請求項1ないし3の何れか一記載の燃料電池用電極を備えることを特徴とする燃料電池。
- メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池において、前記燃料に塩化物イオンを含むことを特徴とする燃料電池。
- 塩化物イオンを含む溶液で電極表面を洗浄するようにしたことを特徴とする燃料電池用電極の電極表面活性方法。
- メタノール燃料又はエタノール燃料を直接注入する直接型燃料電池の燃料電池用電極に対して、前記燃料中に塩化物イオンを含ませて供給するようにしたことを特徴とする燃料電池用電極の電極表面活性方法。
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EP2001068A1 (en) * | 2007-06-08 | 2008-12-10 | National Taiwan University of Science and Technology | Catalytic liquid fuel |
-
2002
- 2002-12-13 JP JP2002361717A patent/JP2004193034A/ja active Pending
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US8075644B2 (en) | 2006-06-09 | 2011-12-13 | National Taiwan University Of Science And Technology | Catalytic liquid fuel |
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