JP2004186484A - 半導体発光素子および光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システム - Google Patents
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Abstract
【課題】圧縮歪みのGaInNAs系量子井戸活性層を用いた半導体発光素子において、設計の自由度を大きくして量子井戸活性層の歪みを軽減させて、温度特性が良く低しきい値である半導体発光素子を提供する。
【解決手段】GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層(バリア層)とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【選択図】 図2
【解決手段】GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層(バリア層)とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子および光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network)などのユーザーに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
このような光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく、整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の半導体レーザが必要であり、ユーザーに近い領域で普及させるためには、低コストの通信システムであることが絶対条件である。
【0004】
1.3μm帯,1.55μm帯の波長帯では、InP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると、動作電流が3倍にも増加するという大きな欠点を持っている。従って、冷却素子を使わない低コストのシステムを実現するためには、温度特性の良好な長波長帯半導体レーザの開発が極めて重要である。
【0005】
最近、GaAs基板上に1.3μm帯の半導体レーザを形成できる材料系が注目され、(Ga)InAs量子ドット、GaAsSbやGaInNAs(例えば特許文献1参照。)が研究されている。特に、GaInNAsは、レーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる材料として注目されている。なお、GaInNAs系材料とは、P,Sb,Al等の他のIII−V族元素を含んでいる場合もある。
【0006】
GaInNAsは、窒素(N)と他のV族元素を含んだIII−V族混晶半導体である。すなわち、GaInNAsは、GaAsより格子定数が大きいGaInAsに窒素(N)を添加することで格子定数をGaAsに格子整合させることが可能であり、更にバンドギャップエネルギーが小さくなり、1.3μm,1.55μm帯での発光が可能な材料である。
【0007】
例えば非特許文献1では、近藤らにより、GaInNAsのバンドラインナップが計算されている。GaInNAsは、窒素(N)の添加によりバンドギャップエネルギーが小さくなるが、伝導帯と価電子帯ともにエネルギーが下がり、GaInP,AlGaAs、GaAs等のGaAs格子整合系材料に対して伝導帯のバンド不連続が極めて大きくなり、このため、高特性温度半導体レーザが実現できると予想されている。実際に、In組成10%のとき窒素組成は約3%で1.3μm帯を形成できるが、窒素組成が大きいほどしきい値電流密度が急激に上昇するという問題がある。図1は、発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図であり、横軸は窒素組成割合(%)を示し、縦軸はしきい値電流密度を示している。図1に示すようにしきい値電流密度が窒素組成増加に伴って急激に上昇する理由は、GaInNAs層の結晶性が窒素組成増加に伴い劣化するためである。このため、In組成を大きくして窒素組成を少なくする方法が取られており(例えば特許文献2,特許文献3参照。)、基板に対して2%程度以上と大きな圧縮歪を有したGaInNAs系量子井戸活性層が用いられている。これにより、半導体レーザのしきい値電流密度が1kA/cm2以下の低い値であって、かつ、環境温度が室温から80℃になっても動作電流がわずか1.3倍にしか増加せず、特性温度が200Kを越える良好なレーザが報告されている(例えば非特許文献2参照。)。なお、障壁層にはGaAs層が用いられている。圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた場合、障壁層にはGaAsが良く用いられている。
【0008】
しかし、このように大きな圧縮歪を有している場合、二次元成長から三次元成長に変わる実質的な臨界膜厚に近い厚さを成長させる必要があり、このための工夫が必要である。従来では、低温成長法(例えば特許文献2参照。)や、Sbを添加しサーファクタント的な効果を得る方法(例えば特許文献3参照。)が提案されているが、結晶欠陥の発生を抑えるために量子井戸数の制限があるなど、デバイス設計の制限が生じる。
【0009】
これを改善する方法として、基板より格子定数が小さいGadIn1−dNePfAs1−e−f系材料(例えば特許文献4参照。)、GaNPAsまたはGaNAs層(例えば特許文献5参照。)、GaNAs層(例えば特許文献3参照。)を障壁層として、活性層の歪を低減(補償)する歪補償構造が提案されている。
【0010】
GaAsに対して窒素(N)を添加すると、格子定数が小さくなる。また、GaNAsはGaInNAs系量子井戸活性層との伝導帯バンド不連続が小さくなり量子準位エネルギーが下がるので、発振波長を長波長化する効果がある。しかしながら、同じ理由(GaInNAs系量子井戸層との伝導帯バンド不連続が小さくなる。)で、電子のオーバーフローが増え、温度特性が悪くなるという欠点がある。
【0011】
また、GaAsに対してPを添加すると、格子定数が小さくなるとともに、バンドギャップが大きくなり、伝導帯のエネルギーは大きくなる。よって、GaNPAsを障壁層とした場合、PとNの組成を調整することで、伝導帯のエネルギーをGaAsとGaInNAsとの接合のそれと同程度にすることが可能となる。しかしながら、P及びNの添加は、ともに格子定数をGaAsよりも小さくするので、伝導帯バンド不連続と歪み量との両方を独立に制御することはできない。このため、引張り歪量が大きくなってしまい、GaInNAs系量子井戸活性層との歪差が大きすぎるために良好な界面が得られないなどの問題が生じる。これにより、デバイス設計の自由度が制限されてしまうという問題が生じる。
【0012】
この場合、Inを添加すると格子定数を大きくすることが可能となる。しかしながら、GadIn1−dNePfAs1−e−f系材料でGaAsよりも格子定数が小さい歪み補償層を形成する場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続を制御することが困難であることがわかった。具体的には、価電子帯バンド不連続をGaAs障壁層との接合に比べて小さくすることが困難であることがわかった。よって、デバイス設計の自由度が制限されてしまうことがわかった。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−37355号公報
【0014】
【非特許文献1】
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)pp.1273−1275
【0015】
【特許文献2】
特開2000−332363号公報
【0016】
【特許文献3】
特開2002−118329号公報
【0017】
【非特許文献2】
Jpn.J.Appl.Pyys.Vol.39(2000) pp.3403−3405
【0018】
【特許文献4】
特開平10−126004号公報
【0019】
【特許文献5】
特開平10−145003号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、圧縮歪みのGaInNAs系量子井戸活性層を用いた半導体発光素子において、設計の自由度を大きくして量子井戸活性層の歪みを軽減させて、温度特性が良く低しきい値である半導体発光素子および光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層には、同時に窒素(N)も含まれていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaNPAsSb、GaPAsSb、GaInNPAsSb、または、GaInPAsSbであることを特徴としている。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaPAsSb、AlGaPAsSb、GaInPAsSb、または、AlGaInPAsSbであることを特徴としている。
【0026】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、前記量子井戸活性層は、多重量子井戸活性層であることを特徴としている。
【0027】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴としている。
【0028】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュールである。
【0029】
また、請求項9記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュールである。
【0030】
また、請求項10記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光通信システムである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0033】
GaAsに対してPを1%添加した材料では、バンドギャップは11.7meV程度大きくなる。すなわち、伝導帯は7meV上がり、価電子帯は4.7meV下がる(A.G.Thompson等による文献「Pys.Rev.146(1966) p601」、Su−Huai Wei等による文献「Appl. Pyys.Lett.Vol.72 (1998) p2011」などを参照)。また、GaAs,GaPの格子定数は、それぞれ、5.65325オングストローム,5.4495オングストロームであるので、GaAsに対してP1%当たり0.0360%の引張り歪みとなる。
【0034】
GaAsに対してNを1%添加した材料では、バンドギャップは156meV小さくなり、かつ伝導帯は175meV、価電子帯は19meV下がる(Kitatani等による文献「16th Semiconductor LaserSymposium」を参照)。また閃亜鉛構造のGaNの格子定数は4.5オングストロームであるので、GaAsに対してN1%当たり0.204%の引張り歪みとなる。
【0035】
GaAsに対してInを1%添加した材料では、バンドギャップは15meV程度小さくなる。Inを添加すると価電子帯エネルギーは上がるが、GaAsとInAsとでわずか60meVであり、バンドギャップ低下分のほとんどは伝導帯が下がることによっている(Yu.F.Biryulin等による文献「Sov.Pys.Semicond.17(1983) p68」、Su−HuaiWei等による文献「Appl. Pyys.Lett.Vol.72 (1998) p2011」などを参照)。また、InAsの格子定数は6.058オングストロームであるので、GaAsに対してIn1%当たり0.0716%の圧縮歪みとなる。
【0036】
以上より、GaAsに、N、及び/またはP、及び/またはInを添加したGadIn1−dNePfAs1−e−f系材料(特開平10−126004号公報を参照)で、GaAsよりも格子定数が小さい歪み補償層を形成する場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまうことがわかった。例えばGaAsにPを1%添加して引張り歪みとすると、価電子帯は4.7meV下がるが、これをInで補償するためにはInを8%程度添加する必要があり、圧縮歪みとなってしまう。また、GaAsにNを1%添加して引張り歪みとすると、価電子帯は19meV下がるが、これをInで補償するためにはInを32%程度添加する必要があり、圧縮歪みとなってしまう。
【0037】
ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると、特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。また、量子井戸活性層と障壁層とからなるGaInNAs系量子井戸活性層の周囲は、ほとんどの場合、GaAs層が用いられている。この場合、障壁層の価電子帯エネルギーがGaAsのそれより低くなっていると、井戸層へのホール注入の障壁となってしまい、ホールが注入されにくくなるという問題が生じる。
【0038】
一方、山田らによる文献「信学技報TECHNICAL REPORT OFIEICE, LQE99−133(2000−02)」には、GaAs基板上に成長したGaAsSb量子井戸活性層を用いた1.3μm帯半導体レーザが報告されている。GaAsとGaAs0.64Sb0.36との伝導帯バンド不連続は35meV程度と見積もられており、価電子帯バンド不連続は430meVとなり、Sb添加でのバンドギャップ減少分のほとんどは価電子帯エネルギーが高くなること(Sb1%当たり12meV)によっていることがわかる。また、Sb添加は格子定数を大きくする。従って、本願の発明者は、GaAsに対して引っ張り歪みを有する材料にSbを添加すると、価電子帯バンド不連続増加分を補償することができるということを見出した。なお、GaSbの格子定数は6.094オングストロームであるので、GaAsに対してSb1%当たり0.0780%の圧縮歪みとなる。
【0039】
GaAsに対して引っ張り歪みを有する材料としては、GaAsに対して少なくともNまたはPの一方を添加する必要がある。Pを添加せずにNとSbを添加したGa(In)NAsSb引っ張り歪み層では、GaNAs障壁層と同様に伝導帯バンド不連続が小さくなるので、半導体レーザの温度特性が悪くなってしまう。なお、Ga(In)NAsSbにAlを添加すると、格子定数をほとんど変えずに伝導帯エネルギーを高める効果があるが、Nを含んだ材料は、600℃以下のような低温成長が必要であり、Alを含んだ層の成長には好ましくなく、AlとNを同時に含まないことが望ましい。
【0040】
以上より、圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた構造において、GaAsに少なくともPとSbを同時に添加した材料を障壁層とすると、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることがなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることがないひずみ補償量子井戸活性層構造を得ることができる。
【0041】
なお、上述した第1の実施形態の半導体発光素子において、障壁層には同時にNも含ませることができる。
【0042】
前述した文献「Jpn.J.Appl.Pyys.Vol.39(2000)pp.3403−3405」には、GaAs障壁層を用いた二重量子井戸活性層により特性温度が200K以上と良好な温度特性を有した端面発光型半導体レーザが示されており、GaInNAs系量子井戸活性層と障壁層との伝導帯バンド不連続をこれ以上大きくしなくとも使用可能な用途は充分にある。逆に、障壁層の伝導帯エネルギーを更に増加させると、量子準位が大きくなり短波長化してしまうので、GaInNAs系量子井戸活性層の窒素組成を増加させる必要があり、結晶性低下の問題が生じる可能性がある。障壁層へのNの添加は、主に伝導帯エネルギーを下げるので、ほぼ独立に伝導帯バンド不連続をコントロールでき、これを補償できるので好ましい。
【0043】
さらに、障壁層と量子井戸活性層の界面の結晶性は重要である。GaInNAs系材料をMOCVD法で成長する場合は、Nの原料の供給量はAsの原料の供給量に対してモル比(「N原料」/(「N原料」+「As原料」))が0.9を超えるほど大きくしなければならず、Nの原料は多量に供給する必要があり、原料供給のON,OFF時の制御性、つまり界面の制御性を良くすることは難かしい。また、MBE法で成長する場合は、N原料をRF等で活性化させて供給するため、原料供給のON,OFFを急峻に行うことは容易ではなく、MOCVD法と同様に界面の制御性を良くすることは難かしい。しかしながら、障壁層にもNが添加された構造にすると、この界面で原料供給のON,OFFを行なう必要がなく、良好な界面を制御して得ることが容易となる。
【0044】
また、上述した第1の実施形態の半導体発光素子において、障壁層は、具体的には、GaNPAsSb、GaPAsSb、GaInNPAsSb、あるいは、GaInPAsSbなどで構成することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0046】
PとSbを同時に含んだ障壁層は、GaAsSb系圧縮歪み量子井戸活性層を用いた場合でも有効である。前述したように、GaAs(障壁層)とGaAs0.64Sb0.36(圧縮歪み量子井戸活性層)との伝導帯バンド不連続は35meV程度と見積もられており、価電子帯バンド不連続は430meVとなり、Sb添加でのバンドギャップ減少分のほとんどは価電子帯エネルギーが高くなること(Sb1%当たり12meV)によっていることがわかる。従って、GaAs障壁層とした場合、電子のオーバーフローが大きく温度特性が極めて悪い。さらに、価電子帯バンド不連続が極めて大きく、多重量子井戸活性層ではホールの注入の不均一が問題となっており、障壁層をp型にしたp型変調ドープ構造とすることで改善が図られている(文献「信学技報TECHNICAL REPORT OF IEICE, LQE99−133(2000−02)」)。
【0047】
GaAsへのPの添加は、伝導帯バンド不連続を大きくし、また、GaAsへのSb添加は、価電子帯バンド不連続を小さくする効果があり、さらに、互いに格子定数変化を補償するので好ましい。これにより、GaAs障壁層を用いた場合に比べて伝導帯バンド不連続を大きくでき、かつ価電子帯バンド不連続を小さくできる接合が可能となり、電子のオーバーフローを低減し、かつホールの注入効率を向上させることができる。
【0048】
上述した第2の実施形態の半導体発光素子において、障壁層は、具体的には、GaPAsSb、AlGaPAsSb、GaInPAsSb、あるいは、AlGaInPAsSbなどで構成することができる。
【0049】
また、上述した第1,第2の半導体発光素子において、量子井戸活性層は、例えば多重量子井戸活性層とすることができる。
【0050】
ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると、特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。GaAsにP及び/またはNを添加してGaAsよりも格子定数の小さい材料を形成した場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまう。Inの添加は小さくする効果があるが、その効果はわずかである。これに対し、本発明のようにSbを添加することで充分な効果を得ることができる。
【0051】
また、GaAsSb系量子井戸活性層の場合も障壁層にSbを添加することで、GaAs障壁層に比べて価電子帯バンド不連続を低減でき、各井戸層への正孔注入が均一になる。
【0052】
また、上述した第1,第2の半導体発光素子は、具体的には、面発光型半導体レーザとして構成することができる。
【0053】
安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の半導体レーザであって、温度特性が良く冷却素子を使用しない半導体レーザが必要であり、これには、面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直キャビティ面発光型半導体レーザ素子)が極めて有望である。面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)は端面発光型レーザに比べて、低価格化,低消費電力化,小型化,2次元集積化に向き、実際に、GaAs基板上に形成できる0.85μm帯では、すでに高速LANである1Gbit/秒のイーサネットなどで実用化されている。GaInNAs系材料またはGaAsSb系材料を活性層にしているので、これらの波長に対応できる。
【0054】
また、面発光レーザは端面発光型レーザと比べて、共振器長が極端に短く、利得領域が小さいので、大きな活性層利得を必要とする。素子の特性を良好にするためには、量子井戸活性層の数を複数にして利得を増加させる必要がある。本発明のように歪み補償層を設けることで、活性層の数を増やすことができ、低しきい値電流動作し、高出力であり、温度特性が良い面発光レーザを実現できる。なお、MOCVD法で形成すると面発光レーザの半導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗を低減できるので、低電圧駆動が可能となり、好ましい。
【0055】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送信モジュールを構成することができる。
【0056】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0057】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送受信モジュールを構成することができる。
【0058】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0059】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光通信システムを構成することができる。
【0060】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0062】
(第1の実施例)
図2は本発明の第1の実施例のGaInNAs端面発光型半導体レーザを示す図である。なお、図2の例では、リッジストライプ型レーザとなっている。また、図2のGaInNAs端面発光型半導体レーザは、層構造としてはSCH−SQW(Separate Confinement Heterostructure Single Quantum Well)構造である。
【0063】
図2の例では、面方位(100)のn−GaAs基板上に、Seドープn−GaAsバッファ層,Seドープn−AlGaAs下部クラッド層,アンドープGaAs下部光ガイド層,活性層,アンドープGaAs上部光ガイド層,Znドープp−AlGaAs上部クラッド層,Znドープp−GaAsコンタクト層が順次成長されている。
【0064】
ここで、活性層は、圧縮歪みを有する1層のGaInNAs量子井戸活性層(井戸層)と、その上下に形成された引張り歪みを有するGaPAsSb障壁層(バリア層)とからなっている。井戸層のIn組成xは35%,窒素組成は0.8%とした。また、井戸層の厚さは8nmとした。成長方法はMOCVD法で行った。キャリアガスには、H2を用いた。また、原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン),PH3(フォスフィン)を用い、そして窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適している。この第1の実施例では、GaInNAs層を550℃で成長した。特に歪みの大きい量子井戸層を成長する場合は例えば500℃〜600℃程度の低温成長が好ましい。GaPAsSb障壁層もGaInNAs層と同じ550℃で成長した。
【0065】
そして、フォトリソグラフィとエッチング技術により幅3μmのストライプ領域以外をp−AlGaAs層の途中まで除去し、リッジ構造を形成した。そして、このリッジ構造上に、p側電極を、電流注入部となる部分を除去した絶縁膜を介して形成した。また、基板の裏面には、n側電極を形成した。
【0066】
この第1の実施例では、GaAs光ガイド層とGaInNAs量子井戸活性層との間にGaPAsSb障壁層が形成されている。障壁層がGaPAsである場合はGaAsとGaPAsとの間に価電子帯バンド不連続が形成されるが、Sbが適量添加されていることで価電子帯バンド不連続が低減されており、ホール注入の障害はない。一方、Pが添加されていることで伝導帯バンド不連続は大きくなり、有効質量が小さいためにオーバーフローしやすい電子が量子井戸中に効果的に閉じ込められるようになった。これにより、単一量子井戸構造であるが極めて温度特性が良好になった。更に、歪み補償構造となっており、歪みの低減効果により素子の信頼性が向上した。
【0067】
上述の例では、MOCVD法での成長の例を示したが、MBE法等他の成長方法を用いることもできる。また、窒素の原料にDMHyを用いたが、活性化した窒素やNH3等他の窒素化合物を用いることもできる。また、積層構造として、単一量子井戸構造(SQW)の例を示したが、多重量子井戸構造を用いることもできる。また、各層の組成厚さ等は必要に応じて設定できる。また、クラッド層には、AlGaAs系材料と同様にワイドギャップのAlGaInP系材料を用いることもできる。また、レーザの構造も他の構造にしてもかまわない。
【0068】
(第2の実施例)
図3は本発明の第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【0069】
この第2の実施例における面発光型半導体レーザ素子は、3インチの大きさの面方位(100)のn−GaAs基板上に、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さでn−AlxGa1−xAs(x=0.9)とn−GaAsを交互に35周期積層した周期構造からなるn−半導体分布ブラッグ反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に下部反射鏡ともいう)が形成されている。そして、その上に、アンドープ下部GaAsスペーサ層,4層のGaInNAs井戸層と5層のGaNPAsSb障壁層(バリア層)からなる多重量子井戸活性層,アンドープ上部GaAsスペーサ層が形成されている。そして、その上に、p−半導体分布ブラッグ反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に上部反射鏡ともいう)が形成されている。
【0070】
上部反射鏡は、Cドープのp−AlxGa1−xAs(x=0.9)とp−GaAsをそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(例えば、25周期)で構成されている。なお、上部反射鏡中の活性層に近い位置には、AlAsからなる被選択酸化層が例えば30nmの厚さで設けられている。また、上部反射鏡の最上部のGaAs層は、電極とのコンタクトを取るコンタクト層を兼ねている。
【0071】
この第2の実施例では、活性層内の井戸層のIn組成xは37%,窒素組成は0.5%とした。また、井戸層は、厚さが7nmであり、GaAs基板に対して約2.5%の圧縮歪(高歪)を有していた。また、GaNPAsSb障壁層は、20nmの厚さとし、GaAs基板に対して0.2%の引張り歪みを有し、かつ伝導帯,価電子帯ともにGaAsを障壁層として用いた場合とほぼ同じになるような組成に調整した。具体的に、GaNPAsSb障壁層のP組成は21%、N組成は0.8%、Sb組成は9.2%とした。概念的には以下のように説明できる。すなわち、GaAsに対してPを添加すると、GaInNAs量子井戸との伝導帯,価電子帯バンド不連続が大きくなる形で引張り歪みとなる。このGaPAsに更にNを添加すると、主に伝導帯バンド不連続が小さくなる形で更に引張り歪みとなる。そして、このGaNPAsに更にSbを添加すると、価電子帯バンド不連続が小さくなる形で引張り歪み量を小さくする。これにより、GaAs基板に対して引張り歪みを有し、かつ伝導帯,価電子帯ともにGaAsを障壁層として用いた場合と同じになるように設計できる。したがって、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることのない歪補償構造を形成できる。
【0072】
成長方法はMOCVD法で行なった。キャリアガスには、H2を用いた。また、GaInNAs活性層の原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン)を用い、そして窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適しており,特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成長する場合好ましい原料である。この第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の活性層のように歪が大きい場合は、非平衡となる低温成長が好ましい。この第2の実施例では、GaInNAs層は540℃で成長させた。
【0073】
この第2の実施例では、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAlxOy電流狭さく部を形成した。そして、次にポリイミドでエッチング部を埋め込んで平坦化し、pコンタクト部と光出射部のある上部反射鏡上のポリイミドを除去し、pコンタクト層上の光出射部以外にp側電極を形成し、また、基板の裏面にn側電極を形成した。
【0074】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。また、歪み補償構造を採用しているので、大きな圧縮歪みを有した活性層を用いていても結晶欠陥発生することなく井戸数を増やすことができ、更に伝導帯,価電子帯ともにバンド不連続を、GaAs障壁層を用いた時と同程度にコントロールできたので、温度特性は良好であり、高温まで動作した。
【0075】
また、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さくを行ったので、しきい値電流は低かった。被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに酸化してAl酸化膜となることで屈折率が小さくなり、凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流は低減される。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
【0076】
GaInNAs等の窒素と他のV族を含んだ半導体層の作製にはMBE法が主に用いられていたが、原理的に高真空中での成長なので原料供給量を大きくできない。すなわち、原料供給量を大きくすると、排気系に負担がかかるというデメリットがある。高真空排気系の排気ポンプを必要とするが、MBEチャンバー内の残留原料等を除去するなどのために排気系に負担がかかり故障しやすいことからスループットは悪い。
【0077】
面発光型半導体レーザ素子は、レーザ光を発生する少なくとも1層の活性層を含んだ活性領域を半導体多層膜反射鏡で挟んで構成されている。端面発光型レーザの結晶成長層の厚さが3μm程度であるのに対して、例えば1.3μm波長帯の面発光型半導体レーザ素子では、結晶成長層の厚さとして10μmを超える厚さが必要になるが、MBE法では高真空を必要とすることから原料供給量を高くすることができず、成長速度は1μm/時程度であり、10μmの厚さを成長するには原料供給量を変えるための成長中断時間を設けないとしても最低10時間かかる。
【0078】
活性領域の厚さは全体に比べて通常ごくわずかであり(10%以下)、ほとんどが多層膜反射鏡を構成する層である。半導体多層膜反射鏡は、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)で低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して(例えば20〜40ペア)形成されている。GaAs基板上の面発光型半導体レーザ素子では、AlGaAs系材料を用いAl組成を変えて低屈折率層(Al組成大)と高屈折率層(Al組成小)としている。しかし実際には、特にp側は各層のヘテロ障壁により抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層との間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して多層膜反射鏡の抵抗を低減している。
【0079】
このように、面発光型半導体レーザ素子は、100層を超える組成の異なる半導体層を成長しなければならない他に、多層膜反射鏡の低屈折率層と高屈折率層との間にも中間層を設けるなど、瞬時に原料供給量を制御する必要がある素子である。しかし、MBE法では、原料供給量を原料セルの温度を変えて制御しており、臨機応変に組成をコントロールすることができない。よって、MBE法により成長した半導体多層膜反射鏡は、抵抗を低くするのは困難であり動作電圧が高い。
【0080】
一方、MOCVD法は、原料ガス流量を制御するだけで良く、瞬時に組成をコントロールできるとともに、MBE法のような高真空を必要とせず、また成長速度を例えば3μm/時以上と高くでき、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。
【0081】
なお、この第2の実施例では、障壁層として、GaNPAsSbを用いたが、GaAsよりも格子定数が小さいGaPAsSb,GaInNPAsSb,GaInPAsSbのいずれかを用いることもできる。また、量子井戸活性層として、GaInNAsを用いたが、GaAsよりも格子定数の大きいGaInNAsSb,GaInNPAs,GaInNPAsSbを用いることもできる。また、1.3μm帯よりは短波長となってしまうが、Nを含まないGaInAsでもIn組成を大きくして例えば波長1.1μm以上とした場合においては、従来障壁層としてGaAsが用いられているので、本発明により同様な効果が得られる。
【0082】
このように、この第2の実施例によれば、低抵抗,低消費電力で低コストの1.3μm帯の面発光型半導体レーザ素子を実現できる。
【0083】
(第3の実施例)
図4は本発明の第3の実施例の1.3μm帯GaAsSb面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【0084】
この第3の実施例が第2の実施例と違うところは、量子井戸活性層としてGaAsSb(Sb組成36%)、障壁層(バリア層)としてGaPAsSb(P組成39%、Sb組成18%)を用いた点である。井戸数は2とした。また、障壁層はGaAs基板にほぼ格子整合している。この第3の実施例では、GaAs障壁層を用いた場合に比べて伝導帯バンド不連続は255meV大きくなり、価電子帯バンド不連続は33meV小さくなった。これにより、温度特性は良好になり、更にしきい値電流は小さくなった。この第3の実施例では、量子井戸活性層としてGaAsSbを用いたが、In,Al,Pをわずかに含んでいてもかまわない。
【0085】
(第4の実施例)
図5は本発明の第4の実施例の面発光レーザアレイを示す図(上面図)である。
【0086】
この第4の実施例の面発光レーザアレイは、第2の実施例の面発光レーザが10素子、1次元に並んだものとなっている。これは、2次元に集積させてもかまわない。ただし、第4の実施例の面発光レーザアレイは、第2の実施例と導電型p,nが逆になっている。すなわち、第4の実施例の面発光レーザアレイでは、上面にn側個別電極が形成され、基板裏面にp側共通電極が形成されている。これはアノードコモンとして高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路を用いることができるので、複数の素子により同時により多くのデータを伝送することができるからである。これにより、同時により多くのデータを伝送する並列伝送が可能となる。
【0087】
(第5の実施例)
図6は本発明の第5の実施例の光送信モジュールを示す図であり、第5の実施例の光送信モジュールは、第4の実施例の面発光レーザアレイチップとシリカファイバーとを組み合わせたものとなっている。この第5の実施例では、面発光レーザアレイチップからのレーザ光が光ファイバーに入力され伝送される。ここで、光ファイバーには、シングルモードファイバーを用いている。同時により多くのデータを伝送するために、複数の半導体レーザが集積したレーザアレイを用いた並列伝送が試みられている。この第5の実施例では、シングルモード高出力面発光レーザを用いているので、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
【0088】
さらに、本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いると、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現できる他に、これを用いた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく高温まで冷却なしで使えるシステムを実現できる。
【0089】
この第5の実施例では、面発光型半導体レーザ素子と光ファイバーとを1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光型半導体レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより、伝送速度を更に増大することが可能となる。
【0090】
(第6の実施例)
図7は本発明の第6の実施例の光送受信モジュールを示す図であり、この第6の実施例の光送受信モジュールは、第2の実施例の面発光型半導体レーザ素子と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。
【0091】
本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ素子は低コストであるので、図7に示すように、送信用の面発光型半導体レーザ素子(1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、本発明に係るGaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、動作電圧が低いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
【0092】
さらに、1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光型半導体レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。
【0093】
本発明の面発光型半導体レーザ素子を用いた光通信システムとしては、光ファイバーを用いた長距離通信に用いることができるのみならず、LAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらには、ボード間のデータ伝送、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等、光インターコネクションとして短距離通信に用いることができる。
【0094】
近年LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると(例えばコンピュータシステムのボード間、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると)、超高速コンピュータシステムが可能となる。
【0095】
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に面発光型半導体レーザ素子は端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき、2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
【0096】
以上説明したように、窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs系材料またはGaAsSb系材料によると、GaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用でき、また、本発明を採用することにより、実用レベルの高性能の1.3μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらにこれらの素子を用いると、冷却素子不要で低コストの光ファイバー通信システム、光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であるので(すなわち、圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた構造において、GaAsに少なくともPとSbを同時に添加した材料を障壁層とすることにより)、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることがなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることがない歪補償量子井戸活性層構造を得ることができ、設計の自由度が向上し、温度特性が良好で高温まで動作し、かつ信頼性の高い半導体発光素子を提供することができる。
【0098】
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層には、同時に窒素(N)も含まれており、窒素(N)の添加は主に伝導帯エネルギーを下げるので、P,Sbとはほぼ独立に伝導帯バンド不連続をコントロールでき、更にP添加により伝導帯エネルギーが増加して量子準位が大きくなり短波長化してしまうことを補償できるので好ましい。よって、より設計の自由度が向上し、温度特性が良好で高温まで動作し、かつ信頼性の高い半導体発光素子を提供することができる。更に、N原料の切り替え時の制御は、MOCVD法でもMBE法でも難しいが、障壁層にもNが添加された構造であると、この界面でN原料供給のON,OFFの必要がなく、良好な界面を制御して得ることが容易となる。
【0099】
また、請求項4乃至請求項5記載の発明によれば、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であり、PとSbを同時に含んだ障壁層はGaAsSb系圧縮歪み量子井戸活性層を用いた場合でも有効である。GaAsへのPの添加は伝導帯バンド不連続を大きくし、Sb添加は価電子帯バンド不連続を小さくする効果があり、更に、互いに格子定数変化を補償するので好ましい。これにより、GaAs障壁層を用いた場合に比べて、伝導帯バンド不連続を大きく、かつ価電子帯バンド不連続を小さくできる接合が可能となり、電子のオーバーフローを低減し、かつホールの注入効率を向上できるので、温度特性が良好でしきい値電流の小さい半導体発光素子を提供することができる。
【0100】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、前記量子井戸活性層は、多重量子井戸活性層であること特徴としている。ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。GaAsにP及び(または)Nを添加してGaAsより格子定数の小さい材料を形成した場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまう。Inの添加は、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続を小さくする効果があるが、その効果はわずかである。本発明のように障壁層にSbを添加することで、充分な効果を得ることができる。また、GaAsSb系量子井戸活性層の場合も障壁層にSbを添加することで、GaAs障壁層に比べて価電子帯バンド不連続を低減でき、各井戸層への正孔注入が均一になり、しきい値が低減する。
【0101】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであり、面発光型半導体レーザは端面発光型半導体レーザに比べて、低価格化,低消費電力化,小型化,2次元集積化に向く。ここで、GaInNAs系材料またはGaAsSb系材料を活性層にしているので、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の波長に対応できる。また、面発光型半導体レーザは、端面発光型レーザと比べて共振器長が極端に短く、利得領域が小さいので、大きな活性層利得を必要とする。素子の特性を良好にするためには量子井戸活性層の数を複数にして利得を増加させる必要がある。本発明のように伝導帯や価電子帯のバンド不連続を制御した歪補償層を設けたので、井戸層を多重化することが可能となり、低しきい値電流動作し、高出力であり、温度特性が良い面発光型半導体レーザを実現できる。なお、MOCVD法で形成すると、面発光型半導体レーザの半導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗を低減できるので、低電圧駆動が可能となり、好ましい。これにより、安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図ることができる。
【0102】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光送信モジュールであるので、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0103】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光送受信モジュールであるので、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0104】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光通信システムであるので、冷却素子が不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図である。
【図2】第1の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図3】第2の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図4】第3の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図5】第4の実施例の面発光レーザアレイを示す図である。
【図6】第5の実施例の光送信モジュールを示す図である。
【図7】第6の実施例の光送受信モジュールを示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子および光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの爆発的普及に見られるように、扱われる情報量が飛躍的に増大しており、今後さらに加速すると考えられる。このため、幹線系のみならず、各家庭やオフィスといった加入者系やLAN(Local Area Network)などのユーザーに近い伝送路、さらには各機器間や機器内の配線へも光ファイバーが導入され、光による大容量情報伝送技術が極めて重要となる。
【0003】
このような光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく、整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の半導体レーザが必要であり、ユーザーに近い領域で普及させるためには、低コストの通信システムであることが絶対条件である。
【0004】
1.3μm帯,1.55μm帯の波長帯では、InP基板上の材料系が一般的であり、端面発光型レーザでは実績がある。しかし、この従来の長波長帯半導体レーザでは、環境温度が室温から80℃になると、動作電流が3倍にも増加するという大きな欠点を持っている。従って、冷却素子を使わない低コストのシステムを実現するためには、温度特性の良好な長波長帯半導体レーザの開発が極めて重要である。
【0005】
最近、GaAs基板上に1.3μm帯の半導体レーザを形成できる材料系が注目され、(Ga)InAs量子ドット、GaAsSbやGaInNAs(例えば特許文献1参照。)が研究されている。特に、GaInNAsは、レーザ特性の温度依存性を極めて小さくすることができる材料として注目されている。なお、GaInNAs系材料とは、P,Sb,Al等の他のIII−V族元素を含んでいる場合もある。
【0006】
GaInNAsは、窒素(N)と他のV族元素を含んだIII−V族混晶半導体である。すなわち、GaInNAsは、GaAsより格子定数が大きいGaInAsに窒素(N)を添加することで格子定数をGaAsに格子整合させることが可能であり、更にバンドギャップエネルギーが小さくなり、1.3μm,1.55μm帯での発光が可能な材料である。
【0007】
例えば非特許文献1では、近藤らにより、GaInNAsのバンドラインナップが計算されている。GaInNAsは、窒素(N)の添加によりバンドギャップエネルギーが小さくなるが、伝導帯と価電子帯ともにエネルギーが下がり、GaInP,AlGaAs、GaAs等のGaAs格子整合系材料に対して伝導帯のバンド不連続が極めて大きくなり、このため、高特性温度半導体レーザが実現できると予想されている。実際に、In組成10%のとき窒素組成は約3%で1.3μm帯を形成できるが、窒素組成が大きいほどしきい値電流密度が急激に上昇するという問題がある。図1は、発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図であり、横軸は窒素組成割合(%)を示し、縦軸はしきい値電流密度を示している。図1に示すようにしきい値電流密度が窒素組成増加に伴って急激に上昇する理由は、GaInNAs層の結晶性が窒素組成増加に伴い劣化するためである。このため、In組成を大きくして窒素組成を少なくする方法が取られており(例えば特許文献2,特許文献3参照。)、基板に対して2%程度以上と大きな圧縮歪を有したGaInNAs系量子井戸活性層が用いられている。これにより、半導体レーザのしきい値電流密度が1kA/cm2以下の低い値であって、かつ、環境温度が室温から80℃になっても動作電流がわずか1.3倍にしか増加せず、特性温度が200Kを越える良好なレーザが報告されている(例えば非特許文献2参照。)。なお、障壁層にはGaAs層が用いられている。圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた場合、障壁層にはGaAsが良く用いられている。
【0008】
しかし、このように大きな圧縮歪を有している場合、二次元成長から三次元成長に変わる実質的な臨界膜厚に近い厚さを成長させる必要があり、このための工夫が必要である。従来では、低温成長法(例えば特許文献2参照。)や、Sbを添加しサーファクタント的な効果を得る方法(例えば特許文献3参照。)が提案されているが、結晶欠陥の発生を抑えるために量子井戸数の制限があるなど、デバイス設計の制限が生じる。
【0009】
これを改善する方法として、基板より格子定数が小さいGadIn1−dNePfAs1−e−f系材料(例えば特許文献4参照。)、GaNPAsまたはGaNAs層(例えば特許文献5参照。)、GaNAs層(例えば特許文献3参照。)を障壁層として、活性層の歪を低減(補償)する歪補償構造が提案されている。
【0010】
GaAsに対して窒素(N)を添加すると、格子定数が小さくなる。また、GaNAsはGaInNAs系量子井戸活性層との伝導帯バンド不連続が小さくなり量子準位エネルギーが下がるので、発振波長を長波長化する効果がある。しかしながら、同じ理由(GaInNAs系量子井戸層との伝導帯バンド不連続が小さくなる。)で、電子のオーバーフローが増え、温度特性が悪くなるという欠点がある。
【0011】
また、GaAsに対してPを添加すると、格子定数が小さくなるとともに、バンドギャップが大きくなり、伝導帯のエネルギーは大きくなる。よって、GaNPAsを障壁層とした場合、PとNの組成を調整することで、伝導帯のエネルギーをGaAsとGaInNAsとの接合のそれと同程度にすることが可能となる。しかしながら、P及びNの添加は、ともに格子定数をGaAsよりも小さくするので、伝導帯バンド不連続と歪み量との両方を独立に制御することはできない。このため、引張り歪量が大きくなってしまい、GaInNAs系量子井戸活性層との歪差が大きすぎるために良好な界面が得られないなどの問題が生じる。これにより、デバイス設計の自由度が制限されてしまうという問題が生じる。
【0012】
この場合、Inを添加すると格子定数を大きくすることが可能となる。しかしながら、GadIn1−dNePfAs1−e−f系材料でGaAsよりも格子定数が小さい歪み補償層を形成する場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続を制御することが困難であることがわかった。具体的には、価電子帯バンド不連続をGaAs障壁層との接合に比べて小さくすることが困難であることがわかった。よって、デバイス設計の自由度が制限されてしまうことがわかった。
【0013】
【特許文献1】
特開平6−37355号公報
【0014】
【非特許文献1】
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996)pp.1273−1275
【0015】
【特許文献2】
特開2000−332363号公報
【0016】
【特許文献3】
特開2002−118329号公報
【0017】
【非特許文献2】
Jpn.J.Appl.Pyys.Vol.39(2000) pp.3403−3405
【0018】
【特許文献4】
特開平10−126004号公報
【0019】
【特許文献5】
特開平10−145003号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、圧縮歪みのGaInNAs系量子井戸活性層を用いた半導体発光素子において、設計の自由度を大きくして量子井戸活性層の歪みを軽減させて、温度特性が良く低しきい値である半導体発光素子および光送信モジュールおよび光送受信モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0022】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層には、同時に窒素(N)も含まれていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaNPAsSb、GaPAsSb、GaInNPAsSb、または、GaInPAsSbであることを特徴としている。
【0024】
また、請求項4記載の発明は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0025】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaPAsSb、AlGaPAsSb、GaInPAsSb、または、AlGaInPAsSbであることを特徴としている。
【0026】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、前記量子井戸活性層は、多重量子井戸活性層であることを特徴としている。
【0027】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴としている。
【0028】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュールである。
【0029】
また、請求項9記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュールである。
【0030】
また、請求項10記載の発明は、請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光通信システムである。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0032】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0033】
GaAsに対してPを1%添加した材料では、バンドギャップは11.7meV程度大きくなる。すなわち、伝導帯は7meV上がり、価電子帯は4.7meV下がる(A.G.Thompson等による文献「Pys.Rev.146(1966) p601」、Su−Huai Wei等による文献「Appl. Pyys.Lett.Vol.72 (1998) p2011」などを参照)。また、GaAs,GaPの格子定数は、それぞれ、5.65325オングストローム,5.4495オングストロームであるので、GaAsに対してP1%当たり0.0360%の引張り歪みとなる。
【0034】
GaAsに対してNを1%添加した材料では、バンドギャップは156meV小さくなり、かつ伝導帯は175meV、価電子帯は19meV下がる(Kitatani等による文献「16th Semiconductor LaserSymposium」を参照)。また閃亜鉛構造のGaNの格子定数は4.5オングストロームであるので、GaAsに対してN1%当たり0.204%の引張り歪みとなる。
【0035】
GaAsに対してInを1%添加した材料では、バンドギャップは15meV程度小さくなる。Inを添加すると価電子帯エネルギーは上がるが、GaAsとInAsとでわずか60meVであり、バンドギャップ低下分のほとんどは伝導帯が下がることによっている(Yu.F.Biryulin等による文献「Sov.Pys.Semicond.17(1983) p68」、Su−HuaiWei等による文献「Appl. Pyys.Lett.Vol.72 (1998) p2011」などを参照)。また、InAsの格子定数は6.058オングストロームであるので、GaAsに対してIn1%当たり0.0716%の圧縮歪みとなる。
【0036】
以上より、GaAsに、N、及び/またはP、及び/またはInを添加したGadIn1−dNePfAs1−e−f系材料(特開平10−126004号公報を参照)で、GaAsよりも格子定数が小さい歪み補償層を形成する場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまうことがわかった。例えばGaAsにPを1%添加して引張り歪みとすると、価電子帯は4.7meV下がるが、これをInで補償するためにはInを8%程度添加する必要があり、圧縮歪みとなってしまう。また、GaAsにNを1%添加して引張り歪みとすると、価電子帯は19meV下がるが、これをInで補償するためにはInを32%程度添加する必要があり、圧縮歪みとなってしまう。
【0037】
ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると、特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。また、量子井戸活性層と障壁層とからなるGaInNAs系量子井戸活性層の周囲は、ほとんどの場合、GaAs層が用いられている。この場合、障壁層の価電子帯エネルギーがGaAsのそれより低くなっていると、井戸層へのホール注入の障壁となってしまい、ホールが注入されにくくなるという問題が生じる。
【0038】
一方、山田らによる文献「信学技報TECHNICAL REPORT OFIEICE, LQE99−133(2000−02)」には、GaAs基板上に成長したGaAsSb量子井戸活性層を用いた1.3μm帯半導体レーザが報告されている。GaAsとGaAs0.64Sb0.36との伝導帯バンド不連続は35meV程度と見積もられており、価電子帯バンド不連続は430meVとなり、Sb添加でのバンドギャップ減少分のほとんどは価電子帯エネルギーが高くなること(Sb1%当たり12meV)によっていることがわかる。また、Sb添加は格子定数を大きくする。従って、本願の発明者は、GaAsに対して引っ張り歪みを有する材料にSbを添加すると、価電子帯バンド不連続増加分を補償することができるということを見出した。なお、GaSbの格子定数は6.094オングストロームであるので、GaAsに対してSb1%当たり0.0780%の圧縮歪みとなる。
【0039】
GaAsに対して引っ張り歪みを有する材料としては、GaAsに対して少なくともNまたはPの一方を添加する必要がある。Pを添加せずにNとSbを添加したGa(In)NAsSb引っ張り歪み層では、GaNAs障壁層と同様に伝導帯バンド不連続が小さくなるので、半導体レーザの温度特性が悪くなってしまう。なお、Ga(In)NAsSbにAlを添加すると、格子定数をほとんど変えずに伝導帯エネルギーを高める効果があるが、Nを含んだ材料は、600℃以下のような低温成長が必要であり、Alを含んだ層の成長には好ましくなく、AlとNを同時に含まないことが望ましい。
【0040】
以上より、圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた構造において、GaAsに少なくともPとSbを同時に添加した材料を障壁層とすると、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることがなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることがないひずみ補償量子井戸活性層構造を得ることができる。
【0041】
なお、上述した第1の実施形態の半導体発光素子において、障壁層には同時にNも含ませることができる。
【0042】
前述した文献「Jpn.J.Appl.Pyys.Vol.39(2000)pp.3403−3405」には、GaAs障壁層を用いた二重量子井戸活性層により特性温度が200K以上と良好な温度特性を有した端面発光型半導体レーザが示されており、GaInNAs系量子井戸活性層と障壁層との伝導帯バンド不連続をこれ以上大きくしなくとも使用可能な用途は充分にある。逆に、障壁層の伝導帯エネルギーを更に増加させると、量子準位が大きくなり短波長化してしまうので、GaInNAs系量子井戸活性層の窒素組成を増加させる必要があり、結晶性低下の問題が生じる可能性がある。障壁層へのNの添加は、主に伝導帯エネルギーを下げるので、ほぼ独立に伝導帯バンド不連続をコントロールでき、これを補償できるので好ましい。
【0043】
さらに、障壁層と量子井戸活性層の界面の結晶性は重要である。GaInNAs系材料をMOCVD法で成長する場合は、Nの原料の供給量はAsの原料の供給量に対してモル比(「N原料」/(「N原料」+「As原料」))が0.9を超えるほど大きくしなければならず、Nの原料は多量に供給する必要があり、原料供給のON,OFF時の制御性、つまり界面の制御性を良くすることは難かしい。また、MBE法で成長する場合は、N原料をRF等で活性化させて供給するため、原料供給のON,OFFを急峻に行うことは容易ではなく、MOCVD法と同様に界面の制御性を良くすることは難かしい。しかしながら、障壁層にもNが添加された構造にすると、この界面で原料供給のON,OFFを行なう必要がなく、良好な界面を制御して得ることが容易となる。
【0044】
また、上述した第1の実施形態の半導体発光素子において、障壁層は、具体的には、GaNPAsSb、GaPAsSb、GaInNPAsSb、あるいは、GaInPAsSbなどで構成することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態は、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、障壁層が、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴としている。
【0046】
PとSbを同時に含んだ障壁層は、GaAsSb系圧縮歪み量子井戸活性層を用いた場合でも有効である。前述したように、GaAs(障壁層)とGaAs0.64Sb0.36(圧縮歪み量子井戸活性層)との伝導帯バンド不連続は35meV程度と見積もられており、価電子帯バンド不連続は430meVとなり、Sb添加でのバンドギャップ減少分のほとんどは価電子帯エネルギーが高くなること(Sb1%当たり12meV)によっていることがわかる。従って、GaAs障壁層とした場合、電子のオーバーフローが大きく温度特性が極めて悪い。さらに、価電子帯バンド不連続が極めて大きく、多重量子井戸活性層ではホールの注入の不均一が問題となっており、障壁層をp型にしたp型変調ドープ構造とすることで改善が図られている(文献「信学技報TECHNICAL REPORT OF IEICE, LQE99−133(2000−02)」)。
【0047】
GaAsへのPの添加は、伝導帯バンド不連続を大きくし、また、GaAsへのSb添加は、価電子帯バンド不連続を小さくする効果があり、さらに、互いに格子定数変化を補償するので好ましい。これにより、GaAs障壁層を用いた場合に比べて伝導帯バンド不連続を大きくでき、かつ価電子帯バンド不連続を小さくできる接合が可能となり、電子のオーバーフローを低減し、かつホールの注入効率を向上させることができる。
【0048】
上述した第2の実施形態の半導体発光素子において、障壁層は、具体的には、GaPAsSb、AlGaPAsSb、GaInPAsSb、あるいは、AlGaInPAsSbなどで構成することができる。
【0049】
また、上述した第1,第2の半導体発光素子において、量子井戸活性層は、例えば多重量子井戸活性層とすることができる。
【0050】
ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると、特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。GaAsにP及び/またはNを添加してGaAsよりも格子定数の小さい材料を形成した場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまう。Inの添加は小さくする効果があるが、その効果はわずかである。これに対し、本発明のようにSbを添加することで充分な効果を得ることができる。
【0051】
また、GaAsSb系量子井戸活性層の場合も障壁層にSbを添加することで、GaAs障壁層に比べて価電子帯バンド不連続を低減でき、各井戸層への正孔注入が均一になる。
【0052】
また、上述した第1,第2の半導体発光素子は、具体的には、面発光型半導体レーザとして構成することができる。
【0053】
安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図るためには、光源として、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の半導体レーザであって、温度特性が良く冷却素子を使用しない半導体レーザが必要であり、これには、面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直キャビティ面発光型半導体レーザ素子)が極めて有望である。面発光型半導体レーザ素子(面発光レーザ)は端面発光型レーザに比べて、低価格化,低消費電力化,小型化,2次元集積化に向き、実際に、GaAs基板上に形成できる0.85μm帯では、すでに高速LANである1Gbit/秒のイーサネットなどで実用化されている。GaInNAs系材料またはGaAsSb系材料を活性層にしているので、これらの波長に対応できる。
【0054】
また、面発光レーザは端面発光型レーザと比べて、共振器長が極端に短く、利得領域が小さいので、大きな活性層利得を必要とする。素子の特性を良好にするためには、量子井戸活性層の数を複数にして利得を増加させる必要がある。本発明のように歪み補償層を設けることで、活性層の数を増やすことができ、低しきい値電流動作し、高出力であり、温度特性が良い面発光レーザを実現できる。なお、MOCVD法で形成すると面発光レーザの半導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗を低減できるので、低電圧駆動が可能となり、好ましい。
【0055】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送信モジュールを構成することができる。
【0056】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0057】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光送受信モジュールを構成することができる。
【0058】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0059】
また、上述した本発明の面発光レーザを光源として用いた光通信システムを構成することができる。
【0060】
上述したように、本発明の面発光レーザは、低抵抗で駆動電圧が低く、低しきい値電流動作し、温度特性が良いので、この面発光レーザを用いることによって、冷却素子が不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0061】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面を用いて詳細に説明する。
【0062】
(第1の実施例)
図2は本発明の第1の実施例のGaInNAs端面発光型半導体レーザを示す図である。なお、図2の例では、リッジストライプ型レーザとなっている。また、図2のGaInNAs端面発光型半導体レーザは、層構造としてはSCH−SQW(Separate Confinement Heterostructure Single Quantum Well)構造である。
【0063】
図2の例では、面方位(100)のn−GaAs基板上に、Seドープn−GaAsバッファ層,Seドープn−AlGaAs下部クラッド層,アンドープGaAs下部光ガイド層,活性層,アンドープGaAs上部光ガイド層,Znドープp−AlGaAs上部クラッド層,Znドープp−GaAsコンタクト層が順次成長されている。
【0064】
ここで、活性層は、圧縮歪みを有する1層のGaInNAs量子井戸活性層(井戸層)と、その上下に形成された引張り歪みを有するGaPAsSb障壁層(バリア層)とからなっている。井戸層のIn組成xは35%,窒素組成は0.8%とした。また、井戸層の厚さは8nmとした。成長方法はMOCVD法で行った。キャリアガスには、H2を用いた。また、原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン),PH3(フォスフィン)を用い、そして窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適している。この第1の実施例では、GaInNAs層を550℃で成長した。特に歪みの大きい量子井戸層を成長する場合は例えば500℃〜600℃程度の低温成長が好ましい。GaPAsSb障壁層もGaInNAs層と同じ550℃で成長した。
【0065】
そして、フォトリソグラフィとエッチング技術により幅3μmのストライプ領域以外をp−AlGaAs層の途中まで除去し、リッジ構造を形成した。そして、このリッジ構造上に、p側電極を、電流注入部となる部分を除去した絶縁膜を介して形成した。また、基板の裏面には、n側電極を形成した。
【0066】
この第1の実施例では、GaAs光ガイド層とGaInNAs量子井戸活性層との間にGaPAsSb障壁層が形成されている。障壁層がGaPAsである場合はGaAsとGaPAsとの間に価電子帯バンド不連続が形成されるが、Sbが適量添加されていることで価電子帯バンド不連続が低減されており、ホール注入の障害はない。一方、Pが添加されていることで伝導帯バンド不連続は大きくなり、有効質量が小さいためにオーバーフローしやすい電子が量子井戸中に効果的に閉じ込められるようになった。これにより、単一量子井戸構造であるが極めて温度特性が良好になった。更に、歪み補償構造となっており、歪みの低減効果により素子の信頼性が向上した。
【0067】
上述の例では、MOCVD法での成長の例を示したが、MBE法等他の成長方法を用いることもできる。また、窒素の原料にDMHyを用いたが、活性化した窒素やNH3等他の窒素化合物を用いることもできる。また、積層構造として、単一量子井戸構造(SQW)の例を示したが、多重量子井戸構造を用いることもできる。また、各層の組成厚さ等は必要に応じて設定できる。また、クラッド層には、AlGaAs系材料と同様にワイドギャップのAlGaInP系材料を用いることもできる。また、レーザの構造も他の構造にしてもかまわない。
【0068】
(第2の実施例)
図3は本発明の第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【0069】
この第2の実施例における面発光型半導体レーザ素子は、3インチの大きさの面方位(100)のn−GaAs基板上に、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さでn−AlxGa1−xAs(x=0.9)とn−GaAsを交互に35周期積層した周期構造からなるn−半導体分布ブラッグ反射鏡(下部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に下部反射鏡ともいう)が形成されている。そして、その上に、アンドープ下部GaAsスペーサ層,4層のGaInNAs井戸層と5層のGaNPAsSb障壁層(バリア層)からなる多重量子井戸活性層,アンドープ上部GaAsスペーサ層が形成されている。そして、その上に、p−半導体分布ブラッグ反射鏡(上部半導体分布ブラッグ反射鏡:単に上部反射鏡ともいう)が形成されている。
【0070】
上部反射鏡は、Cドープのp−AlxGa1−xAs(x=0.9)とp−GaAsをそれぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さで交互に積層した周期構造(例えば、25周期)で構成されている。なお、上部反射鏡中の活性層に近い位置には、AlAsからなる被選択酸化層が例えば30nmの厚さで設けられている。また、上部反射鏡の最上部のGaAs層は、電極とのコンタクトを取るコンタクト層を兼ねている。
【0071】
この第2の実施例では、活性層内の井戸層のIn組成xは37%,窒素組成は0.5%とした。また、井戸層は、厚さが7nmであり、GaAs基板に対して約2.5%の圧縮歪(高歪)を有していた。また、GaNPAsSb障壁層は、20nmの厚さとし、GaAs基板に対して0.2%の引張り歪みを有し、かつ伝導帯,価電子帯ともにGaAsを障壁層として用いた場合とほぼ同じになるような組成に調整した。具体的に、GaNPAsSb障壁層のP組成は21%、N組成は0.8%、Sb組成は9.2%とした。概念的には以下のように説明できる。すなわち、GaAsに対してPを添加すると、GaInNAs量子井戸との伝導帯,価電子帯バンド不連続が大きくなる形で引張り歪みとなる。このGaPAsに更にNを添加すると、主に伝導帯バンド不連続が小さくなる形で更に引張り歪みとなる。そして、このGaNPAsに更にSbを添加すると、価電子帯バンド不連続が小さくなる形で引張り歪み量を小さくする。これにより、GaAs基板に対して引張り歪みを有し、かつ伝導帯,価電子帯ともにGaAsを障壁層として用いた場合と同じになるように設計できる。したがって、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることのない歪補償構造を形成できる。
【0072】
成長方法はMOCVD法で行なった。キャリアガスには、H2を用いた。また、GaInNAs活性層の原料には、TMG(トリメチルガリウム),TMI(トリメチルインジウム),AsH3(アルシン)を用い、そして窒素の原料には、DMHy(ジメチルヒドラジン)を用いた。DMHyは低温で分解するので、600℃以下のような低温成長に適しており,特に低温成長の必要な歪みの大きい量子井戸層を成長する場合好ましい原料である。この第2の実施例のGaInNAs面発光型半導体レーザ素子の活性層のように歪が大きい場合は、非平衡となる低温成長が好ましい。この第2の実施例では、GaInNAs層は540℃で成長させた。
【0073】
この第2の実施例では、所定の大きさのメサを少なくともp−AlAs被選択酸化層の側面を露出させて形成し、側面の現れたAlAsを水蒸気で側面から酸化してAlxOy電流狭さく部を形成した。そして、次にポリイミドでエッチング部を埋め込んで平坦化し、pコンタクト部と光出射部のある上部反射鏡上のポリイミドを除去し、pコンタクト層上の光出射部以外にp側電極を形成し、また、基板の裏面にn側電極を形成した。
【0074】
作製した面発光型半導体レーザ素子の発振波長は約1.3μmであった。GaInNAsを活性層に用いたので、GaAs基板上に長波長帯の面発光型半導体レーザ素子を形成できた。また、歪み補償構造を採用しているので、大きな圧縮歪みを有した活性層を用いていても結晶欠陥発生することなく井戸数を増やすことができ、更に伝導帯,価電子帯ともにバンド不連続を、GaAs障壁層を用いた時と同程度にコントロールできたので、温度特性は良好であり、高温まで動作した。
【0075】
また、AlとAsを主成分とした被選択酸化層の選択酸化により電流狭さくを行ったので、しきい値電流は低かった。被選択酸化層を選択酸化したAl酸化膜からなる電流狭さく層を用いた電流狭さく構造によると、電流狭さく層を活性層に近づけて形成することで電流の広がりを抑えられ、大気に触れない微小領域に効率良くキャリアを閉じ込めることができる。さらに酸化してAl酸化膜となることで屈折率が小さくなり、凸レンズの効果でキャリアの閉じ込められた微小領域に効率良く光を閉じ込めることができ、極めて効率が良くなり、しきい値電流は低減される。また、容易に電流狭さく構造を形成できることから、製造コストを低減できる。
【0076】
GaInNAs等の窒素と他のV族を含んだ半導体層の作製にはMBE法が主に用いられていたが、原理的に高真空中での成長なので原料供給量を大きくできない。すなわち、原料供給量を大きくすると、排気系に負担がかかるというデメリットがある。高真空排気系の排気ポンプを必要とするが、MBEチャンバー内の残留原料等を除去するなどのために排気系に負担がかかり故障しやすいことからスループットは悪い。
【0077】
面発光型半導体レーザ素子は、レーザ光を発生する少なくとも1層の活性層を含んだ活性領域を半導体多層膜反射鏡で挟んで構成されている。端面発光型レーザの結晶成長層の厚さが3μm程度であるのに対して、例えば1.3μm波長帯の面発光型半導体レーザ素子では、結晶成長層の厚さとして10μmを超える厚さが必要になるが、MBE法では高真空を必要とすることから原料供給量を高くすることができず、成長速度は1μm/時程度であり、10μmの厚さを成長するには原料供給量を変えるための成長中断時間を設けないとしても最低10時間かかる。
【0078】
活性領域の厚さは全体に比べて通常ごくわずかであり(10%以下)、ほとんどが多層膜反射鏡を構成する層である。半導体多層膜反射鏡は、それぞれの媒質内における発振波長の1/4倍の厚さ(λ/4の厚さ)で低屈折率層と高屈折率層を交互に積層して(例えば20〜40ペア)形成されている。GaAs基板上の面発光型半導体レーザ素子では、AlGaAs系材料を用いAl組成を変えて低屈折率層(Al組成大)と高屈折率層(Al組成小)としている。しかし実際には、特にp側は各層のヘテロ障壁により抵抗が大きくなるので、低屈折率層と高屈折率層との間に、Al組成が両者の間となる中間層を挿入して多層膜反射鏡の抵抗を低減している。
【0079】
このように、面発光型半導体レーザ素子は、100層を超える組成の異なる半導体層を成長しなければならない他に、多層膜反射鏡の低屈折率層と高屈折率層との間にも中間層を設けるなど、瞬時に原料供給量を制御する必要がある素子である。しかし、MBE法では、原料供給量を原料セルの温度を変えて制御しており、臨機応変に組成をコントロールすることができない。よって、MBE法により成長した半導体多層膜反射鏡は、抵抗を低くするのは困難であり動作電圧が高い。
【0080】
一方、MOCVD法は、原料ガス流量を制御するだけで良く、瞬時に組成をコントロールできるとともに、MBE法のような高真空を必要とせず、また成長速度を例えば3μm/時以上と高くでき、容易にスループットを上げられることから、極めて量産に適した成長方法である。
【0081】
なお、この第2の実施例では、障壁層として、GaNPAsSbを用いたが、GaAsよりも格子定数が小さいGaPAsSb,GaInNPAsSb,GaInPAsSbのいずれかを用いることもできる。また、量子井戸活性層として、GaInNAsを用いたが、GaAsよりも格子定数の大きいGaInNAsSb,GaInNPAs,GaInNPAsSbを用いることもできる。また、1.3μm帯よりは短波長となってしまうが、Nを含まないGaInAsでもIn組成を大きくして例えば波長1.1μm以上とした場合においては、従来障壁層としてGaAsが用いられているので、本発明により同様な効果が得られる。
【0082】
このように、この第2の実施例によれば、低抵抗,低消費電力で低コストの1.3μm帯の面発光型半導体レーザ素子を実現できる。
【0083】
(第3の実施例)
図4は本発明の第3の実施例の1.3μm帯GaAsSb面発光型半導体レーザ素子を示す図である。
【0084】
この第3の実施例が第2の実施例と違うところは、量子井戸活性層としてGaAsSb(Sb組成36%)、障壁層(バリア層)としてGaPAsSb(P組成39%、Sb組成18%)を用いた点である。井戸数は2とした。また、障壁層はGaAs基板にほぼ格子整合している。この第3の実施例では、GaAs障壁層を用いた場合に比べて伝導帯バンド不連続は255meV大きくなり、価電子帯バンド不連続は33meV小さくなった。これにより、温度特性は良好になり、更にしきい値電流は小さくなった。この第3の実施例では、量子井戸活性層としてGaAsSbを用いたが、In,Al,Pをわずかに含んでいてもかまわない。
【0085】
(第4の実施例)
図5は本発明の第4の実施例の面発光レーザアレイを示す図(上面図)である。
【0086】
この第4の実施例の面発光レーザアレイは、第2の実施例の面発光レーザが10素子、1次元に並んだものとなっている。これは、2次元に集積させてもかまわない。ただし、第4の実施例の面発光レーザアレイは、第2の実施例と導電型p,nが逆になっている。すなわち、第4の実施例の面発光レーザアレイでは、上面にn側個別電極が形成され、基板裏面にp側共通電極が形成されている。これはアノードコモンとして高速動作が可能なバイポーラトランジスタ駆動回路を用いることができるので、複数の素子により同時により多くのデータを伝送することができるからである。これにより、同時により多くのデータを伝送する並列伝送が可能となる。
【0087】
(第5の実施例)
図6は本発明の第5の実施例の光送信モジュールを示す図であり、第5の実施例の光送信モジュールは、第4の実施例の面発光レーザアレイチップとシリカファイバーとを組み合わせたものとなっている。この第5の実施例では、面発光レーザアレイチップからのレーザ光が光ファイバーに入力され伝送される。ここで、光ファイバーには、シングルモードファイバーを用いている。同時により多くのデータを伝送するために、複数の半導体レーザが集積したレーザアレイを用いた並列伝送が試みられている。この第5の実施例では、シングルモード高出力面発光レーザを用いているので、高速な並列伝送が可能となり、従来よりも多くのデータを同時に伝送できるようになった。
【0088】
さらに、本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いると、低コストで信頼性が高い光送信モジュールを実現できる他に、これを用いた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく高温まで冷却なしで使えるシステムを実現できる。
【0089】
この第5の実施例では、面発光型半導体レーザ素子と光ファイバーとを1対1に対応させたが、発振波長の異なる複数の面発光型半導体レーザ素子を1次元または2次元にアレイ状に配置して、波長多重送信することにより、伝送速度を更に増大することが可能となる。
【0090】
(第6の実施例)
図7は本発明の第6の実施例の光送受信モジュールを示す図であり、この第6の実施例の光送受信モジュールは、第2の実施例の面発光型半導体レーザ素子と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。
【0091】
本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ素子は低コストであるので、図7に示すように、送信用の面発光型半導体レーザ素子(1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた低コスト,高信頼性の光通信システムを実現できる。また、本発明に係るGaInNAsを用いた面発光型半導体レーザ素子は、温度特性が良いこと、動作電圧が低いこと、及び、低しきい値であることにより、発熱が少なく、高温まで冷却なしで使えるより低コストのシステムを実現できる。
【0092】
さらに、1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光型半導体レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。
【0093】
本発明の面発光型半導体レーザ素子を用いた光通信システムとしては、光ファイバーを用いた長距離通信に用いることができるのみならず、LAN(Local Area Network)などのコンピュータ等の機器間伝送、さらには、ボード間のデータ伝送、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等、光インターコネクションとして短距離通信に用いることができる。
【0094】
近年LSI等の処理性能は向上しているが、これらを接続する部分の伝送速度が今後ボトルネックとなる。システム内の信号接続を従来の電気接続から光インターコネクトに変えると(例えばコンピュータシステムのボード間、ボード内のLSI間、LSI内の素子間等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると)、超高速コンピュータシステムが可能となる。
【0095】
また、複数のコンピュータシステム等を本発明に係る光送信モジュールや光送受信モジュールを用いて接続すると、超高速ネットワークシステムが構築できる。特に面発光型半導体レーザ素子は端面発光型レーザに比べて桁違いに低消費電力化でき、2次元アレイ化が容易なので、並列伝送型の光通信システムに適している。
【0096】
以上説明したように、窒素を含んだ半導体層であるGaInNAs系材料またはGaAsSb系材料によると、GaAs基板を用いた0.85μm帯面発光型半導体レーザ素子などで実績のあるAl(Ga)As/(Al)GaAs系半導体多層膜分布ブラッグ反射鏡や、AlAsの選択酸化による電流狭さく構造が適用でき、また、本発明を採用することにより、実用レベルの高性能の1.3μm帯等の長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらにこれらの素子を用いると、冷却素子不要で低コストの光ファイバー通信システム、光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【0097】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1乃至請求項3記載の発明によれば、GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であるので(すなわち、圧縮歪みを有するGaInNAs系量子井戸活性層を用いた構造において、GaAsに少なくともPとSbを同時に添加した材料を障壁層とすることにより)、電子のオーバーフローが問題になるほど伝導帯バンド不連続を小さくすることがなく、かつホールの注入に障害が起きるほど価電子帯バンド不連続を大きくすることがない歪補償量子井戸活性層構造を得ることができ、設計の自由度が向上し、温度特性が良好で高温まで動作し、かつ信頼性の高い半導体発光素子を提供することができる。
【0098】
特に、請求項2記載の発明では、請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層には、同時に窒素(N)も含まれており、窒素(N)の添加は主に伝導帯エネルギーを下げるので、P,Sbとはほぼ独立に伝導帯バンド不連続をコントロールでき、更にP添加により伝導帯エネルギーが増加して量子準位が大きくなり短波長化してしまうことを補償できるので好ましい。よって、より設計の自由度が向上し、温度特性が良好で高温まで動作し、かつ信頼性の高い半導体発光素子を提供することができる。更に、N原料の切り替え時の制御は、MOCVD法でもMBE法でも難しいが、障壁層にもNが添加された構造であると、この界面でN原料供給のON,OFFの必要がなく、良好な界面を制御して得ることが容易となる。
【0099】
また、請求項4乃至請求項5記載の発明によれば、GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であり、PとSbを同時に含んだ障壁層はGaAsSb系圧縮歪み量子井戸活性層を用いた場合でも有効である。GaAsへのPの添加は伝導帯バンド不連続を大きくし、Sb添加は価電子帯バンド不連続を小さくする効果があり、更に、互いに格子定数変化を補償するので好ましい。これにより、GaAs障壁層を用いた場合に比べて、伝導帯バンド不連続を大きく、かつ価電子帯バンド不連続を小さくできる接合が可能となり、電子のオーバーフローを低減し、かつホールの注入効率を向上できるので、温度特性が良好でしきい値電流の小さい半導体発光素子を提供することができる。
【0100】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、前記量子井戸活性層は、多重量子井戸活性層であること特徴としている。ホール(正孔)の有効質量は電子の有効質量よりも大きく、ホールの注入均一性は障壁高さに敏感に依存する。そのため、価電子帯バンド不連続が大きくなると特に多重量子井戸構造の各井戸層に正孔を均一に注入することが困難となってしまい、しきい値電流の上昇など、デバイス特性に悪影響を与えてしまう。GaAsにP及び(または)Nを添加してGaAsより格子定数の小さい材料を形成した場合、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続は、GaAs障壁層に比べて大きくなってしまう。Inの添加は、GaInNAs系量子井戸活性層との価電子帯バンド不連続を小さくする効果があるが、その効果はわずかである。本発明のように障壁層にSbを添加することで、充分な効果を得ることができる。また、GaAsSb系量子井戸活性層の場合も障壁層にSbを添加することで、GaAs障壁層に比べて価電子帯バンド不連続を低減でき、各井戸層への正孔注入が均一になり、しきい値が低減する。
【0101】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであり、面発光型半導体レーザは端面発光型半導体レーザに比べて、低価格化,低消費電力化,小型化,2次元集積化に向く。ここで、GaInNAs系材料またはGaAsSb系材料を活性層にしているので、シリカファイバーの伝送ロスが小さく整合性が良い1.3μm帯,1.55μm帯の波長に対応できる。また、面発光型半導体レーザは、端面発光型レーザと比べて共振器長が極端に短く、利得領域が小さいので、大きな活性層利得を必要とする。素子の特性を良好にするためには量子井戸活性層の数を複数にして利得を増加させる必要がある。本発明のように伝導帯や価電子帯のバンド不連続を制御した歪補償層を設けたので、井戸層を多重化することが可能となり、低しきい値電流動作し、高出力であり、温度特性が良い面発光型半導体レーザを実現できる。なお、MOCVD法で形成すると、面発光型半導体レーザの半導体分布ブラッグ反射鏡の抵抗を低減できるので、低電圧駆動が可能となり、好ましい。これにより、安価で、距離を気にしないで、光ネットワーク,光配線の大容量化を図ることができる。
【0102】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光送信モジュールであるので、冷却素子が不要な低コストな光送信モジュールを実現することができる。
【0103】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光送受信モジュールであるので、冷却素子が不要な低コストな光送受信モジュールを実現することができる。
【0104】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項7記載の面発光型半導体レーザ素子を光源として用いた光通信システムであるので、冷却素子が不要な低コストな光ファイバー通信システム,光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明者が実験的に求めたしきい値電流密度の窒素組成依存性を示す図である。
【図2】第1の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図3】第2の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図4】第3の実施例の半導体発光素子を示す図である。
【図5】第4の実施例の面発光レーザアレイを示す図である。
【図6】第5の実施例の光送信モジュールを示す図である。
【図7】第6の実施例の光送受信モジュールを示す図である。
Claims (10)
- GaAs基板に対して圧縮歪を持つ窒素(N)と他のV族元素を同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層には、同時に窒素(N)も含まれていることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaNPAsSb、GaPAsSb、GaInNPAsSb、または、GaInPAsSbであることを特徴とする半導体発光素子。
- GaAs基板に対して圧縮歪を持つGa,As,Sbを同時に含んだ量子井戸活性層とその周囲に形成された障壁層とからなる活性層を有する半導体発光素子において、前記障壁層は、燐(P)とアンチモン(Sb)を同時に含むIII−V族混晶半導体であることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項4記載の半導体発光素子において、前記障壁層は、GaPAsSb、AlGaPAsSb、GaInPAsSb、または、AlGaInPAsSbであることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、前記量子井戸活性層は、多重量子井戸活性層であることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送信モジュール。
- 請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光送受信モジュール。
- 請求項7記載の半導体発光素子が光源として用いられていることを特徴とする光通信システム。
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