JP2004184365A - 塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、そして過塩素酸イオンに対して、塩素イオンの選択透過性が高い塩素イオン選択性材料を提供する。
【解決手段】トリ長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンA、トリ長鎖アルキルアンモニウム基(但し、各アルキルの合計炭素原子数は、上記置換スチレンAの各アルキルの合計炭素原子数とは相違する)を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンB、そして親水性基を有するアルケン化合物の共重合体からなる塩素イオン選択透過性材料。
【選択図】 図7
【解決手段】トリ長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンA、トリ長鎖アルキルアンモニウム基(但し、各アルキルの合計炭素原子数は、上記置換スチレンAの各アルキルの合計炭素原子数とは相違する)を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンB、そして親水性基を有するアルケン化合物の共重合体からなる塩素イオン選択透過性材料。
【選択図】 図7
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサに関する。本発明は特に、血液や尿などの生体液に含まれる塩素イオン量の高精度の分析を、予め妨害イオンを除去する必要なく可能にする塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査の分野において、血液や尿などの生体液に含まれているナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン等の電解質の量(あるいは活量)を測定する手段としてイオン電極法が一般的に用いられている。
【0003】
上記のイオンの測定の内、塩素イオンの電極法による測定については、塩素イオンを選択的に透過させる膜状の塩素イオン選択性材料を用いて、電極に接触させるイオンを可能な限り、塩素イオンに限るような工夫がなされている。すなわち、電極法による塩素イオンの測定においては、作動電極面に塩素イオン以外のイオン(妨害イオン)が接触していると、その妨害イオンの影響によって、測定値に誤差が発生するためである。塩素イオン選択性材料としては、これまでに各種の化合物が開発されている。
【0004】
特許文献1には、電極法による塩素イオンの測定に好ましく用いられる塩素イオン選択性材料として、ポリ塩化ビニルなどのような高分子物質と、エーテル基を有する長鎖アルキル基を少なくとも一つ備えたテトラ形第4級アンモニウム化合物、そして可塑剤として機能するアルキルアルコールの組合せが記載されている。
【0005】
特許文献2には、特に電極法による塩素イオンの測定に好ましく用いられる塩素イオン選択性材料として、二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖を有する直鎖状重合体が記載されている。そして、この直鎖重合体の製造に際して、オレフィン化合物あるいは2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性基を有する重合性化合物を共重合させることができることの記載がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−312762号公報
【特許文献2】
特許第2504513号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これまでに開発されてきた塩素イオン選択性材料のなかでは、特許文献2に記載されている二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖を有する直鎖状重合体及び、この直鎖状重合体の製造時に2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性基を有する重合性化合物を共重合させることにより得られる、側鎖として、二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖と親水性側鎖とが直鎖状重合体に備えられた化合物が塩素イオン選択性と物理的強度との点において優れている。すなわち、この化合物は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン(HCO3 −)、臭素イオン(B−)、そしてヨウ素イオン(I−)などに対する塩素イオン(Cl−)の選択透過性が高いという長所があるため、塩素イオンの分析に有利に利用できる。しかしながら、上記の化合物も、同じく妨害イオンである過塩素酸イオン(ClO4 −)に対しては、塩素イオン(Cl−)の選択透過性が不充分であるという欠点がある。
【0008】
本発明の主たる課題は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン、臭素イオン、そしてヨウ素イオンなどに対する塩素イオンの選択透過性が高く、さらに同じく妨害イオンである過塩素酸イオンに対しても、塩素イオンの選択透過性が高い塩素イオン選択性材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トリ長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンA、トリ長鎖アルキルアンモニウム基(但し、各アルキルの合計炭素原子数は、上記置換スチレンAの各アルキルの合計炭素原子数とは相違する)を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンB、そして親水性基を有するアルケン化合物の共重合体からなる塩素イオン選択透過性材料にある。
【0010】
本発明はまた、膜の形態にある上記の塩素イオン選択透過性材料にもある。
【0011】
本発明は、上記の膜状の塩素イオン選択透過性材料が装着された塩素イオンセンサにもある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい態様を次に記載する。
(1)上記置換スチレンA及び上記置換スチレンBの各々のアルキルの炭素原子数が8乃至16の範囲にある。
(2)上記親水性基を有するアルケン化合物が炭素原子数が2乃至6のアルケン化合物である。
(3)上記置換スチレンAのアルキルの合計炭素原子数が、上記スチレンBのアルキルの合計炭素原子数よりも大きい(好ましくは、3乃至10の範囲の数値で大きい)。
(4)上記置換スチレンAと上記スチレンBとのモル比が、99:1乃至55:45(スチレンA:スチレンB、特に好ましくは95:5乃至70:30)の範囲にある。
【0013】
(5)上記置換スチレンAと上記スチレンBとの合計モル数と上記親水性基を有するアルケン化合物のモル数との比が、99:1乃至80:20(特に好ましくは、95:5乃至90:10)の範囲にある。
(6)上記の塩素イオン選択透過性材料のゲル−液晶間相転移温度が10℃乃至80℃(特に好ましくは20℃乃至30℃)の範囲にある。
(7)膜の断面に沿って上下方向に、置換スチレンAの長鎖アルキルを含む置換基、置換スチレンBの長鎖アルキルを含む置換基、そしてアルケン化合物の親水性基のそれぞれが伸びている。
【0014】
本発明の塩素イオン選択透過性材料は、膜状にて用いることが望ましく、そのような塩素イオン選択透過性材料膜は、たとえば、下記の方法により製造することができる。
【0015】
まず、前記の置換スチレンA、前記の置換スチレンB、そして前記のアルケン化合物を用意し、これらを混合して、混合液を調製する。そして、この混合液をスピンコートなどの塗膜形成方法を利用して、ガラス基板などの基板の表面に均一に塗布する。次に、得られた塗膜に電子線照射などのエネルギー付与操作を行い混合物塗膜内で共重合を発生させる。このエネルギー付与後、共重合を充分に進行させるためにエージングを行なって、本発明に従う塩素イオン選択透過性材料膜を得る。
【0016】
上記のようにして得られた本発明の塩素イオン選択透過性材料膜は、その後、別に用意した塩素イオンセンサに装着する。
【0017】
塩素イオンセンサとしては、図1に示す円筒型のイオンセンサがある。図1において、1は電極筒を、2は塩素イオン選択透過性材料膜を、3は内部液を、4は試料電極を、5は試料溶液(サンプル液)、6は参照電極をそれぞれ表わす。このような構成の円筒型のイオンセンサは既に知られている。
【0018】
あるいは、電界効果トランジスタを用いた塩素イオンセンサを利用することもできる。電解トランジスタ型の塩素イオンセンサの構成例を図2に示す。図2において、7はシリコン基板を、8は塩素イオン選択透過性材料膜ゲート部を、9はソース部を、10はドレイン部を、11は窒化ケイ素(Si3N4)膜を、12は二酸化ケイ素(SiO2)膜を、そして13は金属アルミニウム電極を、それぞれ表わす。このような構成の電界効果トランジスタ型のイオンセンサは既に知られている。
【0019】
前記のようにして製造した本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定によりえられた膜の内部の分子構造、そして同様な方法で得た長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンのホモポリマーの膜の内部の分子構造、および二種類の長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンの共重合により得た膜の内部の分子構造に関する情報を図3と図4に示す。なお、図3において、Rは、置換スチレンについている長鎖アルキル基を意味する。そして、図4において、PS−3C12N+は、トリ(トリデシル)メチルアンモニウム塩がベンゼン環に付いたスチレンの単独重合体を意味し、PS−3C10N+はトリ(ウンデシル)メチルアンモニウム塩がベンゼン環に付いたスチレンの単独重合体を意味し、PS−3C12N+/PS−3C10N+はそれらの共重合体を意味し、そしてPS−3C12N+/PS−3C10N+/2HEAAは、それらの二種の置換スチレン化合物とアクリル酸の2−ヒドロキシエチルエステルとから得た共重合体(本発明の塩素イオン選択透過性材料)を意味する。
【0020】
また、図4に示した各種の重合体材料は、いずれも液晶性を示す。それらの液晶性重合体材料のゲル−スメクチック相転移温度とスメクチック相−等方性液体転移温度とを下記の表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の断面と平面に沿って見た高分子鎖の配列状況を図5と図6に示す。特に断面に沿って高分子鎖の側鎖が規則的に配列しているのがわかる。
【0023】
図7にグラフとして、PS−3C12N+重合体膜、PS−3C10N+重合体膜、PS−3C12N+/2HEAA共重合体膜(1:1、モル比)、そしてそしてPS−3C12N+/PS−3C10N+/2HEAA共重合体膜(9:1:0.5、モル比、本発明の塩素イオン選択透過性材料膜)のそれぞれの各種陰イオンの塩素イオンに対する選択係数(logKCl,X)を示す。本発明の塩素イオン選択透過性材料膜が炭酸イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンのみならず、過塩素酸イオンに対しても高い選択性を示すことが分る。
【0024】
本発明の塩素イオン選択透過性材料の代表的な重合体は、下記の式で表わすことができる。
【0025】
【化1】
【0026】
上記の式において、RとR’は長鎖アルキル基であり、Yは対アニオン、そしてm、p、rは、それぞれ前述の各モノマー単位のモル比に対応する数値を意味する。
【0027】
【実施例】
【0028】
[実施例1]
(1)トリ(トリデシル)メチルアンモニウム塩基をペンダント側鎖として有するスチレンモノマー[PS−3C12N+]、トリ(ウンデシル)メチルアンモニウム塩基をペンダント側鎖として有するスチレンモノマー[PS−3C10N+]、そしてアクリル酸の2−ヒドロキシエチルエステル[2HEAA]を重量比で、9:1:0.5に混合して混合液を調製する。
(2)上記混合液を、スピンナー塗布機上に配置したガラス基板(1分間当り100回転にて回転させておく)の上にピペットで約100μL滴下させる。これにより、膜厚100〜150μmの混合液膜が形成される。
(3)ガラス基板上の混合液膜に対して、窒素雰囲気下にて、電子線(加速電圧150KV、5〜20mA電流)を15〜20秒間照射する。
(4)照射後、ガラス基板上の混合液膜を、大気/室温下にて2週間放置して、重合を進行させる。
(5)重合により形成された重合体膜をピンセットを用いてガラス基板から剥離させて、本発明の塩素イオン選択透過性材料を得る。
【0029】
【発明の効果】
本発明の塩素イオン選択性材料は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン、臭素イオン、そしてヨウ素イオンなどに対する塩素イオンの選択透過性が高く、そして同じく妨害イオンである過塩素酸イオンに対しても、塩素イオンの選択透過性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒型のイオンセンサの構成例を示す図である。
【図2】電界効果トランジスタを用いた塩素イオンセンサの構成例を示す図である。
【図3】各種の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定によりえられた膜の内部の分子構造の情報(膜強度)を示す図である。
【図4】各種の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定結果を示す図である。
【図5】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の断面に沿って見た高分子鎖の配列状況を示すモデル図である。
【図6】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の平面に沿って見た高分子鎖の配列状況を示すモデル図である。
【図7】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜における、各種陰イオンの塩素イオンに対する選択係数(logKCl,X)を示すグラフである。
【符号の説明】
1 電極筒
2 塩素イオン選択透過性材料膜
3 内部液
4 試料電極
5 試料溶液(サンプル液)
6 参照電極
7 シリコン基板
8 塩素イオン選択透過性材料膜ゲート部
9 ソース部
10 ドレイン部
11 窒化ケイ素(Si3N4)膜
12 二酸化ケイ素(SiO2)膜
13 金属アルミニウム電極
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサに関する。本発明は特に、血液や尿などの生体液に含まれる塩素イオン量の高精度の分析を、予め妨害イオンを除去する必要なく可能にする塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査の分野において、血液や尿などの生体液に含まれているナトリウムイオン、カリウムイオン、塩素イオン等の電解質の量(あるいは活量)を測定する手段としてイオン電極法が一般的に用いられている。
【0003】
上記のイオンの測定の内、塩素イオンの電極法による測定については、塩素イオンを選択的に透過させる膜状の塩素イオン選択性材料を用いて、電極に接触させるイオンを可能な限り、塩素イオンに限るような工夫がなされている。すなわち、電極法による塩素イオンの測定においては、作動電極面に塩素イオン以外のイオン(妨害イオン)が接触していると、その妨害イオンの影響によって、測定値に誤差が発生するためである。塩素イオン選択性材料としては、これまでに各種の化合物が開発されている。
【0004】
特許文献1には、電極法による塩素イオンの測定に好ましく用いられる塩素イオン選択性材料として、ポリ塩化ビニルなどのような高分子物質と、エーテル基を有する長鎖アルキル基を少なくとも一つ備えたテトラ形第4級アンモニウム化合物、そして可塑剤として機能するアルキルアルコールの組合せが記載されている。
【0005】
特許文献2には、特に電極法による塩素イオンの測定に好ましく用いられる塩素イオン選択性材料として、二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖を有する直鎖状重合体が記載されている。そして、この直鎖重合体の製造に際して、オレフィン化合物あるいは2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性基を有する重合性化合物を共重合させることができることの記載がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−312762号公報
【特許文献2】
特許第2504513号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
これまでに開発されてきた塩素イオン選択性材料のなかでは、特許文献2に記載されている二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖を有する直鎖状重合体及び、この直鎖状重合体の製造時に2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの親水性基を有する重合性化合物を共重合させることにより得られる、側鎖として、二以上の長鎖アルキル基を有するアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いた側鎖と親水性側鎖とが直鎖状重合体に備えられた化合物が塩素イオン選択性と物理的強度との点において優れている。すなわち、この化合物は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン(HCO3 −)、臭素イオン(B−)、そしてヨウ素イオン(I−)などに対する塩素イオン(Cl−)の選択透過性が高いという長所があるため、塩素イオンの分析に有利に利用できる。しかしながら、上記の化合物も、同じく妨害イオンである過塩素酸イオン(ClO4 −)に対しては、塩素イオン(Cl−)の選択透過性が不充分であるという欠点がある。
【0008】
本発明の主たる課題は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン、臭素イオン、そしてヨウ素イオンなどに対する塩素イオンの選択透過性が高く、さらに同じく妨害イオンである過塩素酸イオンに対しても、塩素イオンの選択透過性が高い塩素イオン選択性材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トリ長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンA、トリ長鎖アルキルアンモニウム基(但し、各アルキルの合計炭素原子数は、上記置換スチレンAの各アルキルの合計炭素原子数とは相違する)を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンB、そして親水性基を有するアルケン化合物の共重合体からなる塩素イオン選択透過性材料にある。
【0010】
本発明はまた、膜の形態にある上記の塩素イオン選択透過性材料にもある。
【0011】
本発明は、上記の膜状の塩素イオン選択透過性材料が装着された塩素イオンセンサにもある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい態様を次に記載する。
(1)上記置換スチレンA及び上記置換スチレンBの各々のアルキルの炭素原子数が8乃至16の範囲にある。
(2)上記親水性基を有するアルケン化合物が炭素原子数が2乃至6のアルケン化合物である。
(3)上記置換スチレンAのアルキルの合計炭素原子数が、上記スチレンBのアルキルの合計炭素原子数よりも大きい(好ましくは、3乃至10の範囲の数値で大きい)。
(4)上記置換スチレンAと上記スチレンBとのモル比が、99:1乃至55:45(スチレンA:スチレンB、特に好ましくは95:5乃至70:30)の範囲にある。
【0013】
(5)上記置換スチレンAと上記スチレンBとの合計モル数と上記親水性基を有するアルケン化合物のモル数との比が、99:1乃至80:20(特に好ましくは、95:5乃至90:10)の範囲にある。
(6)上記の塩素イオン選択透過性材料のゲル−液晶間相転移温度が10℃乃至80℃(特に好ましくは20℃乃至30℃)の範囲にある。
(7)膜の断面に沿って上下方向に、置換スチレンAの長鎖アルキルを含む置換基、置換スチレンBの長鎖アルキルを含む置換基、そしてアルケン化合物の親水性基のそれぞれが伸びている。
【0014】
本発明の塩素イオン選択透過性材料は、膜状にて用いることが望ましく、そのような塩素イオン選択透過性材料膜は、たとえば、下記の方法により製造することができる。
【0015】
まず、前記の置換スチレンA、前記の置換スチレンB、そして前記のアルケン化合物を用意し、これらを混合して、混合液を調製する。そして、この混合液をスピンコートなどの塗膜形成方法を利用して、ガラス基板などの基板の表面に均一に塗布する。次に、得られた塗膜に電子線照射などのエネルギー付与操作を行い混合物塗膜内で共重合を発生させる。このエネルギー付与後、共重合を充分に進行させるためにエージングを行なって、本発明に従う塩素イオン選択透過性材料膜を得る。
【0016】
上記のようにして得られた本発明の塩素イオン選択透過性材料膜は、その後、別に用意した塩素イオンセンサに装着する。
【0017】
塩素イオンセンサとしては、図1に示す円筒型のイオンセンサがある。図1において、1は電極筒を、2は塩素イオン選択透過性材料膜を、3は内部液を、4は試料電極を、5は試料溶液(サンプル液)、6は参照電極をそれぞれ表わす。このような構成の円筒型のイオンセンサは既に知られている。
【0018】
あるいは、電界効果トランジスタを用いた塩素イオンセンサを利用することもできる。電解トランジスタ型の塩素イオンセンサの構成例を図2に示す。図2において、7はシリコン基板を、8は塩素イオン選択透過性材料膜ゲート部を、9はソース部を、10はドレイン部を、11は窒化ケイ素(Si3N4)膜を、12は二酸化ケイ素(SiO2)膜を、そして13は金属アルミニウム電極を、それぞれ表わす。このような構成の電界効果トランジスタ型のイオンセンサは既に知られている。
【0019】
前記のようにして製造した本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定によりえられた膜の内部の分子構造、そして同様な方法で得た長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンのホモポリマーの膜の内部の分子構造、および二種類の長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンの共重合により得た膜の内部の分子構造に関する情報を図3と図4に示す。なお、図3において、Rは、置換スチレンについている長鎖アルキル基を意味する。そして、図4において、PS−3C12N+は、トリ(トリデシル)メチルアンモニウム塩がベンゼン環に付いたスチレンの単独重合体を意味し、PS−3C10N+はトリ(ウンデシル)メチルアンモニウム塩がベンゼン環に付いたスチレンの単独重合体を意味し、PS−3C12N+/PS−3C10N+はそれらの共重合体を意味し、そしてPS−3C12N+/PS−3C10N+/2HEAAは、それらの二種の置換スチレン化合物とアクリル酸の2−ヒドロキシエチルエステルとから得た共重合体(本発明の塩素イオン選択透過性材料)を意味する。
【0020】
また、図4に示した各種の重合体材料は、いずれも液晶性を示す。それらの液晶性重合体材料のゲル−スメクチック相転移温度とスメクチック相−等方性液体転移温度とを下記の表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の断面と平面に沿って見た高分子鎖の配列状況を図5と図6に示す。特に断面に沿って高分子鎖の側鎖が規則的に配列しているのがわかる。
【0023】
図7にグラフとして、PS−3C12N+重合体膜、PS−3C10N+重合体膜、PS−3C12N+/2HEAA共重合体膜(1:1、モル比)、そしてそしてPS−3C12N+/PS−3C10N+/2HEAA共重合体膜(9:1:0.5、モル比、本発明の塩素イオン選択透過性材料膜)のそれぞれの各種陰イオンの塩素イオンに対する選択係数(logKCl,X)を示す。本発明の塩素イオン選択透過性材料膜が炭酸イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンのみならず、過塩素酸イオンに対しても高い選択性を示すことが分る。
【0024】
本発明の塩素イオン選択透過性材料の代表的な重合体は、下記の式で表わすことができる。
【0025】
【化1】
【0026】
上記の式において、RとR’は長鎖アルキル基であり、Yは対アニオン、そしてm、p、rは、それぞれ前述の各モノマー単位のモル比に対応する数値を意味する。
【0027】
【実施例】
【0028】
[実施例1]
(1)トリ(トリデシル)メチルアンモニウム塩基をペンダント側鎖として有するスチレンモノマー[PS−3C12N+]、トリ(ウンデシル)メチルアンモニウム塩基をペンダント側鎖として有するスチレンモノマー[PS−3C10N+]、そしてアクリル酸の2−ヒドロキシエチルエステル[2HEAA]を重量比で、9:1:0.5に混合して混合液を調製する。
(2)上記混合液を、スピンナー塗布機上に配置したガラス基板(1分間当り100回転にて回転させておく)の上にピペットで約100μL滴下させる。これにより、膜厚100〜150μmの混合液膜が形成される。
(3)ガラス基板上の混合液膜に対して、窒素雰囲気下にて、電子線(加速電圧150KV、5〜20mA電流)を15〜20秒間照射する。
(4)照射後、ガラス基板上の混合液膜を、大気/室温下にて2週間放置して、重合を進行させる。
(5)重合により形成された重合体膜をピンセットを用いてガラス基板から剥離させて、本発明の塩素イオン選択透過性材料を得る。
【0029】
【発明の効果】
本発明の塩素イオン選択性材料は、塩素イオンに対する妨害イオンとなる炭酸イオン、臭素イオン、そしてヨウ素イオンなどに対する塩素イオンの選択透過性が高く、そして同じく妨害イオンである過塩素酸イオンに対しても、塩素イオンの選択透過性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】円筒型のイオンセンサの構成例を示す図である。
【図2】電界効果トランジスタを用いた塩素イオンセンサの構成例を示す図である。
【図3】各種の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定によりえられた膜の内部の分子構造の情報(膜強度)を示す図である。
【図4】各種の塩素イオン選択透過性材料膜の散乱X線回折測定結果を示す図である。
【図5】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の断面に沿って見た高分子鎖の配列状況を示すモデル図である。
【図6】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜の平面に沿って見た高分子鎖の配列状況を示すモデル図である。
【図7】本発明の塩素イオン選択透過性材料膜における、各種陰イオンの塩素イオンに対する選択係数(logKCl,X)を示すグラフである。
【符号の説明】
1 電極筒
2 塩素イオン選択透過性材料膜
3 内部液
4 試料電極
5 試料溶液(サンプル液)
6 参照電極
7 シリコン基板
8 塩素イオン選択透過性材料膜ゲート部
9 ソース部
10 ドレイン部
11 窒化ケイ素(Si3N4)膜
12 二酸化ケイ素(SiO2)膜
13 金属アルミニウム電極
Claims (10)
- トリ長鎖アルキルアンモニウム基を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンA、トリ長鎖アルキルアンモニウム基(但し、各アルキルの合計炭素原子数は、上記置換スチレンAの各アルキルの合計炭素原子数とは相違する)を含む置換基がベンゼン環に付いたスチレンB、そして親水性基を有するアルケン化合物の共重合体からなる塩素イオン選択透過性材料。
- 上記置換スチレンA及び上記置換スチレンBの各々のアルキルの炭素原子数が8乃至16の範囲にある請求項1に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 上記親水性基を有するアルケン化合物が炭素原子数が2乃至6のアルケン化合物である請求項1もしくは2に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 上記置換スチレンAのアルキルの合計炭素原子数が、上記スチレンBのアルキルの合計炭素原子数よりも大きい請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 上記置換スチレンAと上記スチレンBとのモル比が、99:1乃至55:45(スチレンA:スチレンB)の範囲にある請求項4に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 上記置換スチレンAと上記スチレンBとの合計モル数と上記親水性基を有するアルケン化合物のモル数との比が、99:1乃至80:20の範囲にある請求項1乃至5のうちのいずれかの項に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- ゲル−液晶間相転移温度が10℃乃至80℃の範囲にある請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 膜の形態にある請求項1乃至7のうちのいずれかの項に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 膜の断面に沿って上下方向に、置換スチレンAの長鎖アルキルを含む置換基、置換スチレンBの長鎖アルキルを含む置換基、そしてアルケン化合物の親水性基のそれぞれが伸びている請求項8に記載の塩素イオン選択透過性材料。
- 請求項8もしくは9の膜状の塩素イオン選択透過性材料が装着された塩素イオンセンサ。
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JP2002354796A JP2004184365A (ja) | 2002-12-06 | 2002-12-06 | 塩素イオン選択透過性材料および塩素イオンセンサ |
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2002
- 2002-12-06 JP JP2002354796A patent/JP2004184365A/ja not_active Abandoned
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EP2040067A2 (en) | 2007-09-19 | 2009-03-25 | Hitachi High-Technologies Corporation | Anion concentration measuring device and element |
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