JP2004182483A - 酸化亜鉛超微粒子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた吸光あるいは発光特性を有し、且つ有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を簡便な方法で製造する方法を提供する。
【解決手段】アルコール中に溶解した亜鉛化合物を、塩基性物質の存在下に加水分解させることにより酸化亜鉛微結晶を生成させ、該微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させて酸化亜鉛超微粒子を得る。
【選択図】 なし
【解決手段】アルコール中に溶解した亜鉛化合物を、塩基性物質の存在下に加水分解させることにより酸化亜鉛微結晶を生成させ、該微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させて酸化亜鉛超微粒子を得る。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化亜鉛超微粒子の製造方法に関する。詳しくは酸化亜鉛微結晶の量子効果により制御された吸光あるいは発光特性、有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を簡便な方法で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛は、紫外域に吸収能を有するため紫外線吸収剤としての利用が古くから検討されている。しかしながらこのような無機化合物は粒子形状であるため、従来から可視光域での高透明性を維持しつつ、紫外線防御を行うのは困難とされてきた。可視光域での高透明性を維持しながらその紫外線域での遮蔽能を有効に発現させるためには、組成物を超微粒子化して高分散状態にし、可視光線の散乱を防ぐ必要がある。よって、このような超微粒子を用いる場合にはその超微粒子の凝集を防ぎ、分散状態を安定に保つことが必要不可欠である。
【0003】
また酸化亜鉛は蛍光体としても利用されており、酸化亜鉛微結晶の粒径を制御して凝集を抑制する手法は産業上、非常に重要である。
このような酸化亜鉛超微粒子を製造する方法として、例えば、酸素バブリングしたオクチルアミンにジエチル亜鉛を溶解したデカンを加えた溶液を200℃に加熱したトリオクチルホスフィンオキシド(以下TOPOと略記)中に一気に注入することで、結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子を合成する方法が開示されている(非特許文献1参照)。このようにして合成した酸化亜鉛超微粒子はTOPOにより凝集が抑制され、クロロホルムやヘキサンのような有機溶媒に対して良好に溶解し、分散状態を安定に保つことができる。しかしながらこの合成方法では、毒性の高いジアルキル亜鉛の様な有機金属化合物を用いる必要があり、また空気中で自然発火する程危険なジエチル亜鉛を、酸素と共に200℃の溶媒に一気に注入するという非常に危険な操作を行うことから、工業的に実施するのは困難であった。
【0004】
一方、低温で比較的安全に実施可能な酸化亜鉛超微粒子の合成方法として、酢酸亜鉛をエタノールに溶解した溶液に、0℃で水酸化リチウムを加えることにより酸化亜鉛超微粒子を合成する方法が開示されている(非特許文献2及び3参照)。しかし、この合成手法では粒子間の凝集を十分に抑制することができず、また、超微粒子を精製・単離すると著しくその分散性が悪くなるという問題点があった。
【0005】
【非特許文献1】
ムーンサブ シム(Moonsub Shim)ら著,「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),(米国),123巻,2001年,p.11651−11654
【非特許文献2】
ルボミル スパンヘル(Lubomir Spanhel)ら著,「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),(米国),113巻,1991年,p.2826−2833
【非特許文献3】
エリック エー. ミュレンカンプ(Eric A. Meulenkamp)ら著,「ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー ビー」(J.Phys.Chem.B)(米国),102巻,1998年,p.5566−5572
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は量子効果により制御された吸光あるいは発光特性を有し、且つ凝集が抑制され有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を、安全に簡便な方法で製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、亜鉛化合物のアルコール溶液を塩基性物質の存在下に加水分解させて酸化亜鉛微結晶生成させた後に、該微結晶にホスフィンオキシド類を接触させることにより、酸化亜鉛微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させて凝集を抑制できることを見出した。この方法によれば、ホスフィンオキシド類が配位子として酸化亜鉛超微粒子に含まれることにより、優れた吸光・発光特性、良好な有機溶媒への溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を、従来とは異なり安全かつ簡便に製造することができる。さらに、この方法によって得られる酸化亜鉛超微粒子は、上述したオクチルアミンにジエチル亜鉛を溶解したデカンを加えた溶液を200℃に加熱したTOPO中に一気に注入する方法により得られた微粒子と比較して、薄膜化等を行う際に結晶化しやすいアミン類を含んでいない点や高温により一部分解したようなホスフィンオキシド類を含まないという点で優れる。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、アルコール中に溶解した亜鉛化合物を、塩基性物質の存在下に加水分解させることにより酸化亜鉛微結晶を生成させ、該微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させることを特徴とする、酸化亜鉛超微粒子の製造方法、に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
[酸化亜鉛微結晶の製造方法]
本発明の酸化亜鉛超微粒子の製造方法では、まず亜鉛化合物をアルコール中に溶解させた溶液とし、この系内に塩基性物質を存在させることにより、亜鉛化合物の加水分解を行って、酸化亜鉛微結晶を生成させる。
【0010】
ここで用いられる亜鉛化合物としては、例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート等のβ−ジケトン錯体、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、過塩素酸亜鉛等の無機酸亜鉛などが挙げられる。中でもアルコール中での酸化亜鉛微結晶の安定性の点で炭素数2〜8のカルボン酸亜鉛が好ましく、特に、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛が好ましい。
【0011】
亜鉛化合物を溶解させるアルコールとしては、通常、炭素数1〜10のアルコールが用いられ、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール等の1価アルコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の2価アルコールなどが挙げられる。中でも亜鉛化合物の溶解性の点で、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコールが好ましく、これらの中でも特にエタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0012】
亜鉛化合物を加水分解させる塩基性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の周期表第1〜2族から選ばれる元素の水酸化物(又はその水和物)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。中でも、アルコールへの溶解性の点で水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の周期表第1〜2族元素の水酸化物(又はその水和物)、アンモニアが好ましい。
【0013】
この塩基性物質の使用量は亜鉛化合物1モルに対し、通常、下限が0.1モル以上、好ましくは0.5モル以上、であり、上限が、通常、10モル以下、好ましくは、2モル以下である。
加水分解時に使用する水量は、加水分解に必要な量を確保できる程度使用すればよく、例えば原料の水和物中に含まれる水やアルコール中に不純物として含まれる水程度の量で十分である。添加量が多すぎると、得られる酸化亜鉛微結晶の粒径が大きくなりアルコール中に分散しなくなる場合がある。
【0014】
加水分解時の温度は、通常、下限が−20℃以上、好ましくは−10℃以上、であり、上限が、通常、100℃以下、好ましくは、50℃以下である。
また加水分解の時間は、通常、下限が1分以上、好ましくは5分以上、であり、上限が、通常、24時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0015】
[酸化亜鉛微結晶]
本発明に用いられる半導体結晶は、量子効果により制御されるエキシトン吸発光帯をその吸発光スペクトルに有するものであるのが好ましい。また、発光帯はエキシトン発光帯だけでなく、例えば酸素欠陥のような構造欠陥により生じた準位由来の発光帯を持つ場合もある。応用上特に有用な吸発光波長範囲は遠紫外〜赤外領域の光であり、その下限値は、通常150nm以上、好ましくは180nm以上、更に好ましくは200nm以上、最も好ましくは220nm以上であり、上限値は、通常10000nm以下、好ましくは8000nm以下、更に好ましくは6000nm以下、最も好ましくは4000nm以下の範囲である。前記エキシトン吸発光帯の波長は、現象論的には該半導体結晶の粒径に依存する。
【0016】
かかる半導体結晶の粒径は、数平均粒径として、通常0.5nm以上20nm以下であり、量子効果による吸発光波長の制御性の点で好ましくは、下限値が1nm以上、更に好ましくは2nm以上、最も好ましくは3nm以上であり、上限値が好ましくは15nm以下、更に好ましくは12nm以下、最も好ましくは10nm以下とする。この数平均粒径の決定には、与えられた半導体超微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察像より測定される数値を用いる。即ち、観察される半導体結晶の粒子像と同面積の円の直径を該粒子像の粒径と定義する。こうして決定される粒径を用い、例えば公知の画像データの統計処理手法により該数平均粒径を算出するが、かかる統計処理に使用する半導体結晶の粒子像の数(統計処理データ数)は可及的多いことが当然望ましく、本発明においては、再現性の点で無作為に選ばれた該粒子像の個数として最低でも50個以上、好ましくは80個以上、更に好ましくは100個以上とする。
【0017】
該数平均粒径が大きすぎると、凝集性が極端に増大したり量子効果によるエキシトン吸発光の制御性が低下する場合があり、一方該数平均粒径が小さすぎると半導体結晶粒子の独立した結晶としての機能(例えば発光能を与えるバンド構造の形成)が低下したり、製造時の単離収率が極端に低下する場合があり、いずれも好ましくない。なお、半導体結晶が含有する元素の原子番号が小さくTEM観察における電子線によるコントラストが得にくい場合には、半導体超微粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による観察や溶液での光散乱や中性子散乱測定に元素分析等の組成分析結果を組み合わせても粒径を見積もることができる。
【0018】
該半導体結晶の粒径分布に制限はないが、半導体結晶のエキシトン吸発光帯を利用する場合、かかる分布を変えることで吸発光帯波長幅を変化させることができる。なお、かかる波長幅を狭くする必要がある場合には該粒径分布を狭くするが、通常、標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、最も好ましくは±10%以内とする。この標準偏差の範囲を超えた粒径分布の場合、エキシトン吸発光帯の波長幅を狭くする目的を十分に達成することが困難となる。
【0019】
[酸化亜鉛微結晶へのホスフィンオキシド類の配位]
本発明の酸化亜鉛超微粒子は、上記酸化亜鉛微結晶の表面にホスフィンオキシド類が配位した構造を有する。
本発明において用いられるホスフィンオキシド類は下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化1】
R1R2R3P=O (1)
一般式(1)中、R1,R2,及びR3はいずれも独立に炭素数20以下のアルキル基またはアリール基を表す。かかるアルキル基の炭素数の下限は通常1以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、最も好ましくは6以上であり、上限は通常20以下、好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、最も好ましくは10以下である。具体的にはイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が例示でき、中でもヘキシル基、オクチル基、及びデシル基が好適である。該アルキル基の分子量が小さすぎる場合には酸化亜鉛微結晶間の距離が近づきすぎるため粒子の凝集を抑止できない場合があり、逆に該アルキル基の分子量が高すぎる場合には後述するホスフィンオキシド類の配位力が著しく低下する場合がある。一方前記の一般式(1)におけるアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、クミル基等が例示できる。
【0021】
また、前期ホスフィンオキシドのアルキル基またはアリール基にハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基のような置換基の付いたホスフィンオキシドの誘導体が用いられる場合もある。
かかるホスフィンオキシド類の酸化亜鉛微結晶への配位機構と実際に超微粒子において存在している化学構造は未だ完全に理解されていないが、ホスフィンオキシド類の酸素原子の亜鉛原子への配位結合あるいは共有結合等の何らかの化学結合により、1つの超微粒子においてその表面層を成す有機構造として導入され、その結果、超微粒子どうしの凝集を防ぐ効果があると推測される。ホスフィンオキシド類の配位力を高めるためには、酸素原子の電子供与性を低減しないものが好ましい。なお、酸化亜鉛微結晶粒子の表面に結合したホスフィンオキシド類は、必ずしもその分子構造がそのまま保たれていなくてもよい。
【0022】
前記一般式(1)で表されるホスフィンオキシド類として、具体的にはトリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(以下、TOPOと略)、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシドが例示され、中でもTOPOは最も好適に用いられる。なお、複数種のホスフィンオキシド類を併用しても構わない。前記のアルコール中で生成した酸化亜鉛微結晶表面にホスフィンオキシド類を配位させる方法に特に制限はないが、アルコール中で酸化亜鉛微結晶が生成した後に、系内にホスフィンオキシド類を添加する方法が好適に用いられる。
【0023】
一方で、上記非特許文献3に記載のようにアルコール中で生成した酸化亜鉛微結晶にヘキサン等の炭化水素類を加えると白沈が生じ、酸化亜鉛微結晶を固体として得ることも可能である。この固体とホスフィンオキシド類をトルエン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類等の溶媒中で混合することにより接触させても構わない。また、溶媒を介さない状態で直接接触させることにより配位させることもできる。
【0024】
酸化亜鉛微結晶にホスフィンオキシド類を配位させる際に用いるホスフィンオキシド類の量は、酸化亜鉛微結晶中の亜鉛のモル数に対して、下限が、通常1倍以上、好ましくは2倍以上、最も好ましくは3倍以上であり、上限は、通常30倍以下、好ましくは20倍以下、最も好ましくは15倍以下である。
ホスフィンオキシド類を酸化亜鉛微結晶に配位させる際の温度は、下限が、通常−10℃以上、好ましくは0℃以上、最も好ましくは0℃以上であり、上限が、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、最も好ましくは100℃以下とする。また、接触時間は、下限が、通常1分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上であり、上限が、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、更に好ましくは6時間以下である。接触温度や時間を調節することで酸化亜鉛超微粒子の粒径を制御することが可能であり、例えば、より高い接触温度を選択すれば、低い接触温度のときよりも大きな酸化亜鉛超微粒子を得られる場合がある。
【0025】
[酸化亜鉛超微粒子の精製方法]
上述した方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、反応系より抜き出した後そのまま使用しても良いが、該超微粒子中の酸化亜鉛結晶の構成比を挙げる方法として、ホスフィンオキシド類の溶解度は高いが生成した酸化亜鉛超微粒子の溶解度は低い溶剤、例えばトリアルキルホスフィンオキシドに対してはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類等と混合する方法がある。この場合、超微粒子が析出した懸濁液が生成するので、遠心分離等の分離方法により、精製された酸化亜鉛超微粒子を分離する。
【0026】
[酸化亜鉛超微粒子]
上記の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、ホスフィンオキシド類を配位子として有する酸化亜鉛超微粒子である。ホスフィンオキシド類を配位子として含有することによって、粒子間の凝集による粗大粒子の生成を避けることができ、有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性が得られる。
【0027】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子の粒子の大きさは、汎用的な透過型電子顕微鏡(TEM)で観察される平均粒子直径として、下限が、通常1nm以上、好ましくは2nm以上であり、上限が、通常300nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20nm以下である。平均粒径が大きすぎると可視光線の透過率が散乱によって低下する。一方、平均粒径が小さすぎると工業的に製造することが困難であり実用的でない。ただし、TEMで観察される粒子径は超微粒子中の酸化亜鉛結晶部分が観察されているものであり、実際には結晶の表面にはホスフィンオキシド類等の有機成分が結合している。
【0028】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子中のホスフィンオキシド類含有量は、該超微粒子の粒径あるいは表面積にもよるが、後述する単離精製工程を経て十分に精製された酸化亜鉛超微粒子の状態で、下限が、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、最も好ましくは20重量%以上、上限が、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、最も好ましくは60重量%以下である。該ホスフィンオキシド類含量は、例えば窒素ガス等の不活性気体気流下での熱重量分析や元素分析等を組み合わせることにより測定される。
【0029】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、ホスフィンオキシド類以外にも後述する亜鉛源由来のカルボン酸類等の有機化合物や原料溶液に使用した溶媒成分等に由来する有機成分を通常含有している。かかる有機成分は、後述する精製工程を経た後も本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子に残留しているものである。従って、かかる有機成分は、本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛微結晶との配位結合や共有結合等の何らかの化学結合を成している場合だけでなく、ファンデアワールス力、疎水相互作用、水素結合、あるいはクーロン力等の任意の引力相互作用で可逆的に吸着している場合もありえる。
【0030】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子には、必要に応じて微量のドープ物質(故意に添加する不純物の意味)として例えばAl、Mn、Cu、Zn、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等の元素を加えてもよい。
【0031】
【実施例】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、市販の試薬を精製を加えず使用した。
【0032】
また、酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液の吸光スペクトルはヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて光路長1cmの石英製セルを用いて室温で測定した。発光スペクトルは(株)日立製作所製 F4500型分光蛍光光度計にて、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フォトマル電圧400V、スペクトル補正モードの条件で、光路長1cmの石英セルを用いて室温で測定した。
【0033】
実施例1:酸化亜鉛微結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子の合成(その1)
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(関東化学(株);0.2219g)とエタノール(純正化学(株);10mL)を加え、90℃で20分間加熱還流した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(キシダ化学;0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながらゆっくりと滴下した。数mL滴下した時点で溶液は無色透明となった。すべて滴下した後、アイスバスを外して室温で1時間撹拌した。そこへ、TOPO(STREM社;純度90%;4g)を加え、さらに1時間撹拌した。ここで、反応液から少量液を抜き出し、エタノールで希釈して吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子由来の吸収スペクトルが観察され、エキシトン吸収帯のピーク位置を313nmに持っていた。この様にして得た反応液をロータリーエバポレーターで30℃、1時間という条件で濃縮した。ここへ、メタノール(純正化学(株);80mL)を加えると白濁し、10分間撹拌後、遠心分離(3000rpm)により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(67.7mg)を得た。この白色固体はクロロホルム(純正化学(株))、トルエン(純正化学(株))、n−ヘキサン(純正化学(株))等に溶解し(白色固体1mgに対し溶媒2mL)、濁りのない無色透明な液を与えた。この溶液の吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が313nmに存在した。また、254nmで励起した発光スペクトルを測定したところ、発光強度が最大となる波長は508nmであった。
【0034】
この白色固体(29.3mg)をトルエン(2mL)に溶解し、そこへメタノール(25mL)を加えると白濁し、遠心分離により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(22mg)を得た。この白色固体を前記同様クロロホルムに溶解すると無色透明な液が得られ、吸光スペクトルを測定したところ、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が313nmに存在した。酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯の波長はその粒径に依存し、通常より小さい粒径である程短波長側、より大きい粒径である程長波長側にエキシトン吸収帯が現れる。反応液中の酸化亜鉛超微粒子の吸光スペクトルのピーク位置とメタノールによる精製後の吸光スペクトルのピーク位置が同じであることから、ここで得られた酸化亜鉛超微粒子は精製過程における粒子の凝集・成長が全く見られず、また良好な溶媒溶解性も保つことが分かった。これは、TOPOが酸化亜鉛微結晶の表面に配位しており、粒子間の凝集を抑制しているためと考えられる。
【0035】
また、ここで得た酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液を数日間放置しておいても、沈殿等が生じたり、溶液が濁るようなことはなかった。
実施例2:酸化亜鉛微結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子の合成(その2)
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(0.2219g)とエタノール(純正化学(株);10mL)を加え、90℃で30分間加熱還流した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながら一気に加えた。1分間撹拌後、TOPO(4g)を加え、アイスバス中で30分間撹拌した。その後アイスバスを外し室温でさらに30分間撹拌した。この様にして得た反応液をロータリーエバポレーターで30℃、1時間という条件で濃縮した。ここへ、メタノール(純正化学;80mL)を加えると白濁し、10分間撹拌後、遠心分離(3000rpm)により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き、白沈をクロロホルムに溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルター(ADVANTEC社DISMIC−25HP)で濾過した後に窒素フローによって溶媒を除去し、真空乾燥により乾燥させ、白色固体(74mg)を得た。この白色固体をn−ヘキサンに溶解すると濁りのない無色透明な液を与えた。この溶液の吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が269nmに存在した。また、254nmで励起した発光スペクトルを測定したところ、発光強度が最大となる波長は457nmであった。前記実施例1のときに比べ、エキシトン吸収帯のピーク位置が短波長側に存在していることから、ここで得られた酸化亜鉛超微粒子は実施例1で得たものに比べて粒径が小さいと思われる。これは、酸化亜鉛微結晶がより小さな段階でTOPOと接触したために、その状態で粒子の凝集が抑制され、得られた酸化亜鉛超微粒子が実施例1のものに比べて小さいものとなったと考えられる。
【0036】
また、ここで得た酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液を数日間放置しておいても、沈殿等が生じたり、溶液が濁るようなことはなかった。
比較例1:酸化亜鉛微結晶の合成
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製4口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(0.2219g)とエタノール(10mL)を加え、90℃で20分間加熱した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながらゆっくりと滴下した。数mL滴下した時点で溶液は無色透明となった。すべて滴下した後、室温で1時間撹拌した。そこへ、n−hexane(80mL)を加ると白濁し、遠心分離により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(76.6mg)を得た。この白色固体(1mg)にクロロホルム(2mL)、トルエン(2mL)、エタノール(2mL)をそれぞれ加え、超音波分散器にかけたが、すべての溶媒の場合で溶液は白濁し、透明になることはなかった。クロロホルム、トルエン溶液それぞれを孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、その濾液の吸光スペクトルを測定したが、酸化亜鉛超微粒子由来のスペクトルは全く見られなかった。また、エタノール溶液に関してはその吸光スペクトルから微量の酸化亜鉛超微粒子が溶解していることが確認されたが、もとの反応液に比べてその溶解性は著しく損なわれていることは明白であった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、優れた吸光あるいは発光特性、並びに有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を簡便な方法で製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化亜鉛超微粒子の製造方法に関する。詳しくは酸化亜鉛微結晶の量子効果により制御された吸光あるいは発光特性、有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を簡便な方法で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛は、紫外域に吸収能を有するため紫外線吸収剤としての利用が古くから検討されている。しかしながらこのような無機化合物は粒子形状であるため、従来から可視光域での高透明性を維持しつつ、紫外線防御を行うのは困難とされてきた。可視光域での高透明性を維持しながらその紫外線域での遮蔽能を有効に発現させるためには、組成物を超微粒子化して高分散状態にし、可視光線の散乱を防ぐ必要がある。よって、このような超微粒子を用いる場合にはその超微粒子の凝集を防ぎ、分散状態を安定に保つことが必要不可欠である。
【0003】
また酸化亜鉛は蛍光体としても利用されており、酸化亜鉛微結晶の粒径を制御して凝集を抑制する手法は産業上、非常に重要である。
このような酸化亜鉛超微粒子を製造する方法として、例えば、酸素バブリングしたオクチルアミンにジエチル亜鉛を溶解したデカンを加えた溶液を200℃に加熱したトリオクチルホスフィンオキシド(以下TOPOと略記)中に一気に注入することで、結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子を合成する方法が開示されている(非特許文献1参照)。このようにして合成した酸化亜鉛超微粒子はTOPOにより凝集が抑制され、クロロホルムやヘキサンのような有機溶媒に対して良好に溶解し、分散状態を安定に保つことができる。しかしながらこの合成方法では、毒性の高いジアルキル亜鉛の様な有機金属化合物を用いる必要があり、また空気中で自然発火する程危険なジエチル亜鉛を、酸素と共に200℃の溶媒に一気に注入するという非常に危険な操作を行うことから、工業的に実施するのは困難であった。
【0004】
一方、低温で比較的安全に実施可能な酸化亜鉛超微粒子の合成方法として、酢酸亜鉛をエタノールに溶解した溶液に、0℃で水酸化リチウムを加えることにより酸化亜鉛超微粒子を合成する方法が開示されている(非特許文献2及び3参照)。しかし、この合成手法では粒子間の凝集を十分に抑制することができず、また、超微粒子を精製・単離すると著しくその分散性が悪くなるという問題点があった。
【0005】
【非特許文献1】
ムーンサブ シム(Moonsub Shim)ら著,「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),(米国),123巻,2001年,p.11651−11654
【非特許文献2】
ルボミル スパンヘル(Lubomir Spanhel)ら著,「ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.),(米国),113巻,1991年,p.2826−2833
【非特許文献3】
エリック エー. ミュレンカンプ(Eric A. Meulenkamp)ら著,「ジャーナル オブ フィジカル ケミストリー ビー」(J.Phys.Chem.B)(米国),102巻,1998年,p.5566−5572
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は量子効果により制御された吸光あるいは発光特性を有し、且つ凝集が抑制され有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を、安全に簡便な方法で製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、亜鉛化合物のアルコール溶液を塩基性物質の存在下に加水分解させて酸化亜鉛微結晶生成させた後に、該微結晶にホスフィンオキシド類を接触させることにより、酸化亜鉛微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させて凝集を抑制できることを見出した。この方法によれば、ホスフィンオキシド類が配位子として酸化亜鉛超微粒子に含まれることにより、優れた吸光・発光特性、良好な有機溶媒への溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を、従来とは異なり安全かつ簡便に製造することができる。さらに、この方法によって得られる酸化亜鉛超微粒子は、上述したオクチルアミンにジエチル亜鉛を溶解したデカンを加えた溶液を200℃に加熱したTOPO中に一気に注入する方法により得られた微粒子と比較して、薄膜化等を行う際に結晶化しやすいアミン類を含んでいない点や高温により一部分解したようなホスフィンオキシド類を含まないという点で優れる。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、アルコール中に溶解した亜鉛化合物を、塩基性物質の存在下に加水分解させることにより酸化亜鉛微結晶を生成させ、該微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させることを特徴とする、酸化亜鉛超微粒子の製造方法、に存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき詳細に説明する。
[酸化亜鉛微結晶の製造方法]
本発明の酸化亜鉛超微粒子の製造方法では、まず亜鉛化合物をアルコール中に溶解させた溶液とし、この系内に塩基性物質を存在させることにより、亜鉛化合物の加水分解を行って、酸化亜鉛微結晶を生成させる。
【0010】
ここで用いられる亜鉛化合物としては、例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等のカルボン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナート、亜鉛ヘキサフルオロアセチルアセトナート等のβ−ジケトン錯体、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、過塩素酸亜鉛等の無機酸亜鉛などが挙げられる。中でもアルコール中での酸化亜鉛微結晶の安定性の点で炭素数2〜8のカルボン酸亜鉛が好ましく、特に、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛が好ましい。
【0011】
亜鉛化合物を溶解させるアルコールとしては、通常、炭素数1〜10のアルコールが用いられ、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール等の1価アルコール、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の2価アルコールなどが挙げられる。中でも亜鉛化合物の溶解性の点で、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコールが好ましく、これらの中でも特にエタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0012】
亜鉛化合物を加水分解させる塩基性物質としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の周期表第1〜2族から選ばれる元素の水酸化物(又はその水和物)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、アンモニア等の塩基性物質が挙げられる。中でも、アルコールへの溶解性の点で水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の周期表第1〜2族元素の水酸化物(又はその水和物)、アンモニアが好ましい。
【0013】
この塩基性物質の使用量は亜鉛化合物1モルに対し、通常、下限が0.1モル以上、好ましくは0.5モル以上、であり、上限が、通常、10モル以下、好ましくは、2モル以下である。
加水分解時に使用する水量は、加水分解に必要な量を確保できる程度使用すればよく、例えば原料の水和物中に含まれる水やアルコール中に不純物として含まれる水程度の量で十分である。添加量が多すぎると、得られる酸化亜鉛微結晶の粒径が大きくなりアルコール中に分散しなくなる場合がある。
【0014】
加水分解時の温度は、通常、下限が−20℃以上、好ましくは−10℃以上、であり、上限が、通常、100℃以下、好ましくは、50℃以下である。
また加水分解の時間は、通常、下限が1分以上、好ましくは5分以上、であり、上限が、通常、24時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0015】
[酸化亜鉛微結晶]
本発明に用いられる半導体結晶は、量子効果により制御されるエキシトン吸発光帯をその吸発光スペクトルに有するものであるのが好ましい。また、発光帯はエキシトン発光帯だけでなく、例えば酸素欠陥のような構造欠陥により生じた準位由来の発光帯を持つ場合もある。応用上特に有用な吸発光波長範囲は遠紫外〜赤外領域の光であり、その下限値は、通常150nm以上、好ましくは180nm以上、更に好ましくは200nm以上、最も好ましくは220nm以上であり、上限値は、通常10000nm以下、好ましくは8000nm以下、更に好ましくは6000nm以下、最も好ましくは4000nm以下の範囲である。前記エキシトン吸発光帯の波長は、現象論的には該半導体結晶の粒径に依存する。
【0016】
かかる半導体結晶の粒径は、数平均粒径として、通常0.5nm以上20nm以下であり、量子効果による吸発光波長の制御性の点で好ましくは、下限値が1nm以上、更に好ましくは2nm以上、最も好ましくは3nm以上であり、上限値が好ましくは15nm以下、更に好ましくは12nm以下、最も好ましくは10nm以下とする。この数平均粒径の決定には、与えられた半導体超微粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)観察像より測定される数値を用いる。即ち、観察される半導体結晶の粒子像と同面積の円の直径を該粒子像の粒径と定義する。こうして決定される粒径を用い、例えば公知の画像データの統計処理手法により該数平均粒径を算出するが、かかる統計処理に使用する半導体結晶の粒子像の数(統計処理データ数)は可及的多いことが当然望ましく、本発明においては、再現性の点で無作為に選ばれた該粒子像の個数として最低でも50個以上、好ましくは80個以上、更に好ましくは100個以上とする。
【0017】
該数平均粒径が大きすぎると、凝集性が極端に増大したり量子効果によるエキシトン吸発光の制御性が低下する場合があり、一方該数平均粒径が小さすぎると半導体結晶粒子の独立した結晶としての機能(例えば発光能を与えるバンド構造の形成)が低下したり、製造時の単離収率が極端に低下する場合があり、いずれも好ましくない。なお、半導体結晶が含有する元素の原子番号が小さくTEM観察における電子線によるコントラストが得にくい場合には、半導体超微粒子の原子間力顕微鏡(AFM)による観察や溶液での光散乱や中性子散乱測定に元素分析等の組成分析結果を組み合わせても粒径を見積もることができる。
【0018】
該半導体結晶の粒径分布に制限はないが、半導体結晶のエキシトン吸発光帯を利用する場合、かかる分布を変えることで吸発光帯波長幅を変化させることができる。なお、かかる波長幅を狭くする必要がある場合には該粒径分布を狭くするが、通常、標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内、最も好ましくは±10%以内とする。この標準偏差の範囲を超えた粒径分布の場合、エキシトン吸発光帯の波長幅を狭くする目的を十分に達成することが困難となる。
【0019】
[酸化亜鉛微結晶へのホスフィンオキシド類の配位]
本発明の酸化亜鉛超微粒子は、上記酸化亜鉛微結晶の表面にホスフィンオキシド類が配位した構造を有する。
本発明において用いられるホスフィンオキシド類は下記一般式(1)で表される。
【0020】
【化1】
R1R2R3P=O (1)
一般式(1)中、R1,R2,及びR3はいずれも独立に炭素数20以下のアルキル基またはアリール基を表す。かかるアルキル基の炭素数の下限は通常1以上、好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、最も好ましくは6以上であり、上限は通常20以下、好ましくは16以下、更に好ましくは12以下、最も好ましくは10以下である。具体的にはイソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等が例示でき、中でもヘキシル基、オクチル基、及びデシル基が好適である。該アルキル基の分子量が小さすぎる場合には酸化亜鉛微結晶間の距離が近づきすぎるため粒子の凝集を抑止できない場合があり、逆に該アルキル基の分子量が高すぎる場合には後述するホスフィンオキシド類の配位力が著しく低下する場合がある。一方前記の一般式(1)におけるアリール基としては、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、クミル基等が例示できる。
【0021】
また、前期ホスフィンオキシドのアルキル基またはアリール基にハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基のような置換基の付いたホスフィンオキシドの誘導体が用いられる場合もある。
かかるホスフィンオキシド類の酸化亜鉛微結晶への配位機構と実際に超微粒子において存在している化学構造は未だ完全に理解されていないが、ホスフィンオキシド類の酸素原子の亜鉛原子への配位結合あるいは共有結合等の何らかの化学結合により、1つの超微粒子においてその表面層を成す有機構造として導入され、その結果、超微粒子どうしの凝集を防ぐ効果があると推測される。ホスフィンオキシド類の配位力を高めるためには、酸素原子の電子供与性を低減しないものが好ましい。なお、酸化亜鉛微結晶粒子の表面に結合したホスフィンオキシド類は、必ずしもその分子構造がそのまま保たれていなくてもよい。
【0022】
前記一般式(1)で表されるホスフィンオキシド類として、具体的にはトリブチルホスフィンオキシド、トリヘキシルホスフィンオキシド、トリオクチルホスフィンオキシド(以下、TOPOと略)、トリデシルホスフィンオキシド等のトリアルキルホスフィンオキシドが例示され、中でもTOPOは最も好適に用いられる。なお、複数種のホスフィンオキシド類を併用しても構わない。前記のアルコール中で生成した酸化亜鉛微結晶表面にホスフィンオキシド類を配位させる方法に特に制限はないが、アルコール中で酸化亜鉛微結晶が生成した後に、系内にホスフィンオキシド類を添加する方法が好適に用いられる。
【0023】
一方で、上記非特許文献3に記載のようにアルコール中で生成した酸化亜鉛微結晶にヘキサン等の炭化水素類を加えると白沈が生じ、酸化亜鉛微結晶を固体として得ることも可能である。この固体とホスフィンオキシド類をトルエン等の芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類等の溶媒中で混合することにより接触させても構わない。また、溶媒を介さない状態で直接接触させることにより配位させることもできる。
【0024】
酸化亜鉛微結晶にホスフィンオキシド類を配位させる際に用いるホスフィンオキシド類の量は、酸化亜鉛微結晶中の亜鉛のモル数に対して、下限が、通常1倍以上、好ましくは2倍以上、最も好ましくは3倍以上であり、上限は、通常30倍以下、好ましくは20倍以下、最も好ましくは15倍以下である。
ホスフィンオキシド類を酸化亜鉛微結晶に配位させる際の温度は、下限が、通常−10℃以上、好ましくは0℃以上、最も好ましくは0℃以上であり、上限が、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、最も好ましくは100℃以下とする。また、接触時間は、下限が、通常1分以上、好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上であり、上限が、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、更に好ましくは6時間以下である。接触温度や時間を調節することで酸化亜鉛超微粒子の粒径を制御することが可能であり、例えば、より高い接触温度を選択すれば、低い接触温度のときよりも大きな酸化亜鉛超微粒子を得られる場合がある。
【0025】
[酸化亜鉛超微粒子の精製方法]
上述した方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、反応系より抜き出した後そのまま使用しても良いが、該超微粒子中の酸化亜鉛結晶の構成比を挙げる方法として、ホスフィンオキシド類の溶解度は高いが生成した酸化亜鉛超微粒子の溶解度は低い溶剤、例えばトリアルキルホスフィンオキシドに対してはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類等と混合する方法がある。この場合、超微粒子が析出した懸濁液が生成するので、遠心分離等の分離方法により、精製された酸化亜鉛超微粒子を分離する。
【0026】
[酸化亜鉛超微粒子]
上記の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、ホスフィンオキシド類を配位子として有する酸化亜鉛超微粒子である。ホスフィンオキシド類を配位子として含有することによって、粒子間の凝集による粗大粒子の生成を避けることができ、有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性が得られる。
【0027】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子の粒子の大きさは、汎用的な透過型電子顕微鏡(TEM)で観察される平均粒子直径として、下限が、通常1nm以上、好ましくは2nm以上であり、上限が、通常300nm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは20nm以下である。平均粒径が大きすぎると可視光線の透過率が散乱によって低下する。一方、平均粒径が小さすぎると工業的に製造することが困難であり実用的でない。ただし、TEMで観察される粒子径は超微粒子中の酸化亜鉛結晶部分が観察されているものであり、実際には結晶の表面にはホスフィンオキシド類等の有機成分が結合している。
【0028】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子中のホスフィンオキシド類含有量は、該超微粒子の粒径あるいは表面積にもよるが、後述する単離精製工程を経て十分に精製された酸化亜鉛超微粒子の状態で、下限が、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上、最も好ましくは20重量%以上、上限が、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、最も好ましくは60重量%以下である。該ホスフィンオキシド類含量は、例えば窒素ガス等の不活性気体気流下での熱重量分析や元素分析等を組み合わせることにより測定される。
【0029】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子は、ホスフィンオキシド類以外にも後述する亜鉛源由来のカルボン酸類等の有機化合物や原料溶液に使用した溶媒成分等に由来する有機成分を通常含有している。かかる有機成分は、後述する精製工程を経た後も本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子に残留しているものである。従って、かかる有機成分は、本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛微結晶との配位結合や共有結合等の何らかの化学結合を成している場合だけでなく、ファンデアワールス力、疎水相互作用、水素結合、あるいはクーロン力等の任意の引力相互作用で可逆的に吸着している場合もありえる。
【0030】
本発明の製造方法により得られる酸化亜鉛超微粒子には、必要に応じて微量のドープ物質(故意に添加する不純物の意味)として例えばAl、Mn、Cu、Zn、Ag、Cl、Ce、Eu、Tb、Er等の元素を加えてもよい。
【0031】
【実施例】
以下に実施例により本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
なお、原料試薬は、特に記載がない限り、市販の試薬を精製を加えず使用した。
【0032】
また、酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液の吸光スペクトルはヒューレットパッカード社製HP8453型紫外・可視吸光光度計にて光路長1cmの石英製セルを用いて室温で測定した。発光スペクトルは(株)日立製作所製 F4500型分光蛍光光度計にて、励起側スリット5nm、蛍光側スリット5nm、フォトマル電圧400V、スペクトル補正モードの条件で、光路長1cmの石英セルを用いて室温で測定した。
【0033】
実施例1:酸化亜鉛微結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子の合成(その1)
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(関東化学(株);0.2219g)とエタノール(純正化学(株);10mL)を加え、90℃で20分間加熱還流した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(キシダ化学;0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながらゆっくりと滴下した。数mL滴下した時点で溶液は無色透明となった。すべて滴下した後、アイスバスを外して室温で1時間撹拌した。そこへ、TOPO(STREM社;純度90%;4g)を加え、さらに1時間撹拌した。ここで、反応液から少量液を抜き出し、エタノールで希釈して吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子由来の吸収スペクトルが観察され、エキシトン吸収帯のピーク位置を313nmに持っていた。この様にして得た反応液をロータリーエバポレーターで30℃、1時間という条件で濃縮した。ここへ、メタノール(純正化学(株);80mL)を加えると白濁し、10分間撹拌後、遠心分離(3000rpm)により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(67.7mg)を得た。この白色固体はクロロホルム(純正化学(株))、トルエン(純正化学(株))、n−ヘキサン(純正化学(株))等に溶解し(白色固体1mgに対し溶媒2mL)、濁りのない無色透明な液を与えた。この溶液の吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が313nmに存在した。また、254nmで励起した発光スペクトルを測定したところ、発光強度が最大となる波長は508nmであった。
【0034】
この白色固体(29.3mg)をトルエン(2mL)に溶解し、そこへメタノール(25mL)を加えると白濁し、遠心分離により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(22mg)を得た。この白色固体を前記同様クロロホルムに溶解すると無色透明な液が得られ、吸光スペクトルを測定したところ、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が313nmに存在した。酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯の波長はその粒径に依存し、通常より小さい粒径である程短波長側、より大きい粒径である程長波長側にエキシトン吸収帯が現れる。反応液中の酸化亜鉛超微粒子の吸光スペクトルのピーク位置とメタノールによる精製後の吸光スペクトルのピーク位置が同じであることから、ここで得られた酸化亜鉛超微粒子は精製過程における粒子の凝集・成長が全く見られず、また良好な溶媒溶解性も保つことが分かった。これは、TOPOが酸化亜鉛微結晶の表面に配位しており、粒子間の凝集を抑制しているためと考えられる。
【0035】
また、ここで得た酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液を数日間放置しておいても、沈殿等が生じたり、溶液が濁るようなことはなかった。
実施例2:酸化亜鉛微結晶表面にTOPOが配位した酸化亜鉛超微粒子の合成(その2)
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製3口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(0.2219g)とエタノール(純正化学(株);10mL)を加え、90℃で30分間加熱還流した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながら一気に加えた。1分間撹拌後、TOPO(4g)を加え、アイスバス中で30分間撹拌した。その後アイスバスを外し室温でさらに30分間撹拌した。この様にして得た反応液をロータリーエバポレーターで30℃、1時間という条件で濃縮した。ここへ、メタノール(純正化学;80mL)を加えると白濁し、10分間撹拌後、遠心分離(3000rpm)により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き、白沈をクロロホルムに溶解し、孔径0.2μmのメンブランフィルター(ADVANTEC社DISMIC−25HP)で濾過した後に窒素フローによって溶媒を除去し、真空乾燥により乾燥させ、白色固体(74mg)を得た。この白色固体をn−ヘキサンに溶解すると濁りのない無色透明な液を与えた。この溶液の吸光スペクトルを測定すると、酸化亜鉛超微粒子のエキシトン吸収帯のピーク位置が269nmに存在した。また、254nmで励起した発光スペクトルを測定したところ、発光強度が最大となる波長は457nmであった。前記実施例1のときに比べ、エキシトン吸収帯のピーク位置が短波長側に存在していることから、ここで得られた酸化亜鉛超微粒子は実施例1で得たものに比べて粒径が小さいと思われる。これは、酸化亜鉛微結晶がより小さな段階でTOPOと接触したために、その状態で粒子の凝集が抑制され、得られた酸化亜鉛超微粒子が実施例1のものに比べて小さいものとなったと考えられる。
【0036】
また、ここで得た酸化亜鉛超微粒子を溶解した溶液を数日間放置しておいても、沈殿等が生じたり、溶液が濁るようなことはなかった。
比較例1:酸化亜鉛微結晶の合成
無色透明のパイレックス(登録商標)ガラス製4口フラスコに酢酸亜鉛二水和物(0.2219g)とエタノール(10mL)を加え、90℃で20分間加熱した。すると、酢酸亜鉛は完全に溶解し、溶液は無色透明となった。この溶液をアイスバスで0℃に冷却すると温度の低下と共に溶液が白濁した。ここへ、水酸化リチウム一水和物(0.0586g)をエタノール(10mL)に超音波をかけて溶解し、0℃で保存しておいたものを撹拌しながらゆっくりと滴下した。数mL滴下した時点で溶液は無色透明となった。すべて滴下した後、室温で1時間撹拌した。そこへ、n−hexane(80mL)を加ると白濁し、遠心分離により白沈が得られた。デカンテーションにより上澄み液を取り除き真空乾燥により乾燥させ、白色固体(76.6mg)を得た。この白色固体(1mg)にクロロホルム(2mL)、トルエン(2mL)、エタノール(2mL)をそれぞれ加え、超音波分散器にかけたが、すべての溶媒の場合で溶液は白濁し、透明になることはなかった。クロロホルム、トルエン溶液それぞれを孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、その濾液の吸光スペクトルを測定したが、酸化亜鉛超微粒子由来のスペクトルは全く見られなかった。また、エタノール溶液に関してはその吸光スペクトルから微量の酸化亜鉛超微粒子が溶解していることが確認されたが、もとの反応液に比べてその溶解性は著しく損なわれていることは明白であった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、優れた吸光あるいは発光特性、並びに有機溶媒への良好な溶解性及び安定な分散性を兼ね備えた酸化亜鉛超微粒子を簡便な方法で製造することができる。
Claims (4)
- アルコール中に溶解した亜鉛化合物を、塩基性物質の存在下に加水分解させることにより酸化亜鉛微結晶を生成させ、該微結晶の表面にホスフィンオキシド類を配位させることを特徴とする、酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
- 亜鉛化合物が、炭素数2〜8のカルボン酸亜鉛である請求項1に記載の酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
- 塩基性物質が、周期表第1〜2族から選ばれる元素の水酸化物である請求項1又は2に記載の酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
- ホスフィンオキシド類がトリアルキルホスフィンオキシドである請求項3に記載の酸化亜鉛超微粒子の製造方法。
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