JP2004179171A - 配線基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縦糸1aおよび横糸1bを織って成るガラスクロス1を複数積層するとともにこの積層したガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を含浸させて成る絶縁層3の上下面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士を絶縁層3に設けた貫通導体6を介して電気的に接続して成り、ガラスクロス1は、縦糸1Aおよび横糸1Bに囲まれた隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.10〜2%であり、かつ開口7bが上下に重ならないように積層されていることを特徴とする配線基板。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子や抵抗器等の電子部品を搭載するための配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子や抵抗器等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板として、撚糸である縦糸および横糸を両者の軸方向のなす角度が直角方向となるように織って成るガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層と銅箔から成る配線導体とを交互に複数積層して成るプリント基板が知られている。このようなプリント基板は、まず絶縁層表面に被着した銅箔をエッチングして所定パターンの配線導体を形成し、次に配線導体が形成された絶縁層を熱硬化性樹脂から成る接着材を間に挟んで複数枚積層圧着して積層基板を製作し、次にドリルで積層基板の表裏を貫通するスルーホールを形成し、しかる後、スルーホールの内面に銅めっきを被着して上下に位置する配線導体間を電気的に接続するスルーホール導体を形成することによって製作される。
【0003】
なお通常、各絶縁層は、1枚のガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成り、種々の径の撚糸を選択することにより所望の厚みのガラスクロスを得るとともにこれに熱硬化性樹脂を含浸させることにより、所望の厚みとなる。
【0004】
近年、電子機器は、その高密度化に伴って半導体素子も年々高集積化されてきており、半導体素子を搭載する配線基板の配線導体に対する密度向上の要求も益々高まってきている。しかしながら、上述のプリント基板は、積層基板を表裏を貫通するスルーホール構造をとるため、配線導体の密度を向上させることが困難であるという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、スルーホール構造に代えて、各絶縁層毎に貫通孔を形成し、この貫通孔に導体を充填して上下の各配線導体間を接続したインナービアホール構造が実用化されている。このようなインナービアホール構造では貫通孔の径が200μm以下と微細加工が要求され、ドリルでは200μm以下の小径の穿孔は難しいことから、レーザで貫通孔を穿孔することが一般的に行なわれている。
【0006】
しかしながら、絶縁層を構成するガラスクロスは、撚糸を縦・横に織った構造となっており、ガラスクロスを上面視したときに、縦・横の撚糸が重なっている部分と、どちらか一方の撚糸が存在している部分と、撚糸が存在しない部分、すなわち縦・横の撚糸により囲まれた隙間の3種類の部分が混在しているとともに、その隙間の開口の全面積がガラスクロスの面積の5〜12%となっており、このようなガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層にレーザを用いて貫通孔を穿孔した場合、縦・横の撚糸が重なっている撚糸の密な部分では貫通孔の内部径や出射径が小さくなり、撚糸の存在しない隙間部分では貫通孔の内部径や出射径が大きくなり、均一な内部径や出射径を有する貫通孔を穿孔できないという問題点があった。
【0007】
このような問題点を解決するために、複数の絶縁層を積層して基板を製作する際に、上下に位置する各絶縁層に含まれるガラスクロスの織り目位置が互いに異なるように、絶縁層を積層することが提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−76548号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のガラスクロスは、その隙間の開口の全面積がガラスクロスの面積の5〜12%と開口の全面積の割合が大きいことから、上下に位置する各絶縁層に含まれるガラスクロスの織り目位置が互いに異なるように積層したとしても、依然として撚糸の密な部分と疎な部分が存在してしまい、基板にレーザを用いて貫通孔を穿孔する場合、均一な内部径や出射径を有する貫通孔を穿孔することが困難であり、貫通孔に導電性材料を充填して貫通導体を形成した場合に、貫通導体の抵抗が部分的に高くなったり、断線してしまうという問題点があった。
【0010】
また、各絶縁層が1枚のガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成ることから、絶縁層の厚みが厚い場合、ガラスクロスを構成する撚糸の径も大きなものとなり、開口の全面積が大きくなるとともに撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差がより大きなものとなってしまうという問題点もあった。さらに、絶縁層の厚みが薄い場合、ガラスクロス1枚のみではその剛性が低下して、大型のLSI等の半導体素子を配線基板に実装した際に、半導体素子の動作時に半導体素子と配線基板との熱膨張係数の相違に起因して大きな応力が発生し、この応力によって半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうという問題点もあった。
【0011】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、微細な貫通導体を有する高密度な配線基板において、レーザ加工で径が均一な貫通孔が形成でき貫通導体の電気的接続信頼性に優れるとともに、半導体素子を良好に実装できる配線基板を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の配線基板は、縦糸および横糸を織って成るガラスクロスを複数積層するとともにこの積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層の上下面に配線導体を形成し、絶縁層を挟んで上下に位置する配線導体同士を絶縁層に設けた貫通導体を介して電気的に接続して成り、ガラスクロスは、縦糸および横糸に囲まれた隙間の開口の全面積がガラスクロスの面積の0.01〜2%であり、かつ開口が上下に重ならないように積層されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロスを複数積層するとともにこの積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層の上下面に配線導体を形成し、絶縁層を挟んで上下に位置する配線導体同士を絶縁層に設けた貫通導体を介して電気的に接続して成ることから、絶縁層の厚みが厚い場合においてもガラスクロスを構成する撚糸の径を大きなものとする必要はなく、その結果、ガラスクロスの隙間の開口の全面積が大きくなることはなく、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差が大きなものとなることはない。
【0014】
また、ガラスクロスは、その隙間の開口の全面積がガラスクロスの面積の0.01〜2%であり、かつ開口が上下に重ならないように積層されていることから、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差がより小さなものとなり、配線基板にレーザを用いて貫通孔を穿孔する際、均一な内部径や出射径を有する貫通孔を穿孔することができ、貫通孔に導電性材料を充填して貫通導体を形成した場合に、貫通導体の抵抗が部分的に高くなったり、断線してしまうということはない。
【0015】
さらに、絶縁層はガラスクロスを複数積層するとともにこの積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成ることから、絶縁層が薄い場合でも複数のガラスクロスを積層したほうが絶縁層の剛性の低下を減少させることができ、その結果、大型のLSI等の半導体素子を配線基板に実装した際、半導体素子の動作時に半導体素子と配線基板との熱膨張係数の相違に起因して大きな応力が発生しても、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうことはない。
【0016】
また、本発明の配線基板は、上記構成において、前記積層したガラスクロスのうち上下に接するものは、上側の前記縦糸の軸方向と下側の前記縦糸の軸方向とのなす角度が15〜75度となるように積層されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロスの縦糸および横糸の軸方向の弾性率と、縦糸および横糸の交点間を結ぶ方向の弾性率との差が大きいが、積層したガラスクロスのうち上下に接するものは、上側の縦糸の軸方向と下側の縦糸の軸方向とのなす角度を15〜75度となるように積層した場合には、絶縁層の方向毎の弾性率の差異を小さくすることでき、その結果、配線基板に大型のLSI等の半導体素子を実装した時に発生する応力による配線基板の変形を抑制でき、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうということをより有効に防止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図、図2は図1に示す配線基板を構成するガラスクロスの平面図であり、上側のガラスクロスと下側のガラスクロスとの位置関係が明確となるように、下側のガラスクロスの輪郭を実線で示してある。これらの図において、1はガラスクロス、2は熱硬化性樹脂、3は絶縁層、4は配線導体、5は貫通孔、6は貫通導体、7aは隙間、7bは開口である。
【0019】
本発明の配線基板は、縦糸1aおよび横糸1bを両者の軸方向が略垂直となるように織って成るガラスクロス1を複数積層するとともにこの積層したガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を含浸させて成る絶縁層3の上下面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士を絶縁層3に設けた貫通導体6を介して電気的に接続して成るものであり、図1にはこのような配線基板を4層積層して成る積層配線基板の例を示している。
【0020】
絶縁層3は、その厚みが50〜150μmであり、配線導体4を支持するとともに上下に位置する配線導体4間の絶縁を保持する機能を有し、複数枚のガラスクロス1にエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂2を含浸させて成る。なお、絶縁層3の厚みが50μm未満であると配線基板の剛性が低下して、配線基板が撓みやすくなる傾向があり、150μmを超えると絶縁層3の厚みが不要に厚いものとなり配線基板の軽量化が困難となる傾向がある。従って、絶縁層3は、その厚みを50〜150μmとすることが好ましい。
【0021】
ガラスクロス1は、その織り方により平織、綾織、朱子織等の種類があり、図2には、縦・横糸1a・1bが1本毎に上下に交差して成る平織の平面図を示している。ガラスクロス1は、その厚みが10〜50μmであり、厚みが10μmより薄くなると縦糸1aおよび横糸1bが非常に細くなり均等に織ることが難しくなるので硬化後に絶縁層3が反ってしまう傾向にあり、50μmより厚いと絶縁層3が不要に厚くなり配線基板の軽量化が困難となる傾向がある。従って、ガラスクロス1の厚みは10〜50μmであることが好ましい。
【0022】
そして本発明の配線基板は、ガラスクロス1を複数積層するとともにこの積層したガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を含浸させて成る絶縁層3の上下面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士を絶縁層3に設けた貫通導体6を介して電気的に接続して成り、ガラスクロス1は、縦糸1aおよび横糸に囲まれた隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%であり、かつ開口7bが上下に重ならないように積層されている。そして、本発明においては、ガラスクロス1の隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%であり、かつこの開口7bが上下に重ならないように積層されていることが重要である。
【0023】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロス1を複数積層するとともにこの積層したガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を含浸させて成る絶縁層3の上下面に配線導体4を形成し、絶縁層3を挟んで上下に位置する配線導体4同士を絶縁層1に設けた貫通導体6を介して電気的に接続して成ることから、絶縁層3の厚みが厚い場合においてもガラスクロス1を構成する撚糸の縦糸1aや横糸1bの径を大きなものとする必要はなく、その結果、ガラスクロス1の隙間7aの開口7bの全面積が大きくなることはなく、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差が大きなものとなることはない。
【0024】
また、ガラスクロス1の隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%であり、かつ開口7bが上下に重ならないように積層されていることから、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差がより小さなものとなり、配線基板にレーザを用いて貫通孔5を穿孔する際、均一な内部径や出射径を有する貫通孔5を穿孔することができ、貫通孔5に導電性材料を充填して貫通導体6を形成した場合に、貫通導体6の抵抗が部分的に高くなったり、断線してしまうということはない。
【0025】
さらに、絶縁層3はガラスクロス1を複数積層するとともにこの積層したガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を含浸させたて成ることから、絶縁層3が薄い場合でも複数のガラスクロス1を積層したほうが絶縁層3の剛性の低下を減少させることができ、その結果、大型のLSI等の半導体素子(図示せず)を配線基板に実装した際、半導体素子の動作時に半導体素子と配線基板との熱膨張係数の相違に起因して大きな応力が発生しても、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうことはない。
【0026】
なお、ガラスクロス1における隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01%より小さいとガラスクロス1に熱硬化性樹脂2を良好に含浸できず、絶縁層3の絶縁性が低下してしまう傾向にあり、2%を超えると隙間7aに貫通孔5を穿孔する確率が高くなり、均一な径の貫通孔5を穿孔できなくなる傾向にある。従って、ガラスクロス1の隙間7aの開口7bの全面積をガラスクロス1の面積の0.01〜2%とすることが重要である。
【0027】
このような開口7bの全面積は、ガラスクロス1を高圧水流処理やロールによる加圧処理等により扁平加工することにより、ガラスクロス1における隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%となるように調製される。
【0028】
なお、ガラスクロス1の表面には、熱硬化性樹脂2との密着性を向上するために、シランカップリング処理がなされている。また、これらのガラスクロス1は通常Eガラスと呼ばれるガラスが使用されているが、DガラスやSガラス・高誘電率ガラスなどを用いて良い。
【0029】
また、本発明の配線基板においては、ガラスクロス1を上側の縦糸の軸方向と下側の縦糸の軸方向とのなす角度が15〜75度となるように積層することが好ましい。
【0030】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロス1の縦糸1aおよび横糸1bの軸方向の弾性率と、縦糸1aおよび横糸1bの交点間を結ぶ方向の弾性率との差が大きいが、ガラスクロス1を上側の縦糸1aの軸方向と下側の縦糸1aの軸方向とのなす角度が15〜75度となるように積層していることから、絶縁層3の方向における弾性率の差異を小さくすることでき、その結果、配線基板に大型のLSI等の半導体素子を実装した時に発生する応力による配線基板の変形を抑制でき、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうということを有効に防止することができる。
【0031】
なお、上側の縦糸1aの軸方向と下側の縦糸1aの軸方向とのなす角度が15度未満あるいは75度を超えると、ガラスクロス1の縦糸1aおよび横糸1bの軸方向とその斜め方向との弾性率の差が大きなものとなり、配線基板に大型のLSI等の半導体素子を実装した時に発生する応力により配線基板が変形し、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまう危険性が大きなものとなる傾向がある。従って、上側の縦糸の軸方向と下側の縦糸の軸方向とのなす角度を15〜75度の範囲とすることが好ましい。
【0032】
また、絶縁層3を構成する熱硬化性樹脂2としては、150〜200℃の温度で硬化するエポキシ樹脂やビスマレイミドトリアジン樹脂・変性ポリフェニレンエーテル樹脂等の熱硬化性樹脂2が用いられる。なお、熱硬化性樹脂2をガラスクロス1に良好に含浸するために、界面活性剤や無機フィラー等を添加しても良い。
【0033】
さらに、絶縁層3の表面には配線導体4が埋入されている。配線導体4は、配線基板に搭載される半導体素子等の電子部品の各電極を外部電気回路基板(図示せず)に電気的に接続する導電路の一部としての機能を有し、幅が20〜200μm、厚みが5〜50μmで、銅やアルミニウム・ニッケル・銀・金等の金属箔から成り、特に加工性および安価という観点からは銅箔から成ることが好ましい。配線導体4の幅が20μm未満となると配線導体4の変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、200μmを超えると高密度配線が形成できなくなる傾向がある。また、配線導体4の厚みが5μm未満になると配線導体4の強度が低下し変形や断線が発生しやすくなる傾向があり、50μmを超えると絶縁層3への埋入が困難となる傾向がある。従って、配線導体4は、その幅を20〜200μm、厚みを5〜50μmとすることが好ましい。
【0034】
また、絶縁層3には、その上面から下面にかけて貫通導体6が複数個配設されている。貫通導体6は、絶縁層1の上下に位置する配線導体2間を電気的に接続する機能を有し、その直径が30〜100μmであり、絶縁層3に設けた貫通孔5に錫を主成分とする金属粉末とトリアジン系熱硬化性樹脂等とから成る導電性材料を埋め込み熱硬化することにより形成されている。なお、貫通導体5の直径が30μm未満になるとその加工が困難となる傾向があり、100μmを超えると高密度配線が形成できなくなる傾向がある。従って、貫通導体4は、その直径を30〜100μmとすることが好ましい。
【0035】
なお、本発明の配線基板においては、ガラスクロス1の隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%であり、かつ開口7bが上下に重ならないように積層されていることから、直径が30〜100μmの範囲で、均一な直径の貫通孔5を形成することができる。
【0036】
また、導電性材料の金属粉末5の含有量は80〜95重量%が好ましい。金属粉末5の含有量が80重量%より少ないと、トリアジン系熱硬化性樹脂により金属粉末5同士の接続が妨げられ導通抵抗が上昇してしまう傾向があり、95重量%を超えると導電性材料の粘度が上がり過ぎて良好に埋め込みできない傾向がある。従って、導電性材料の金属粉末の含有量は80〜95重量%が好ましい。
【0037】
さらに、絶縁層3の一方の最外層表面に形成された配線導体4の一部は、電子部品(図示せず)の各電極に半田バンプ(図示せず)を介して接合される電子部品接続用の実装用電極11aを形成し、絶縁層3の他方の最外層表面に形成された配線導体2の一部は、外部電気回路基板(図示せず)の各電極に導体バンプ(図示せず)を介して接続される外部接続用の実装用電極11bを形成している。
【0038】
なお、実装用電極11a・11bの表面には、その酸化腐蝕を防止するとともに半田バンプ(図示せず)との接続を良好とするために、半田との濡れ性が良好で耐腐蝕性に優れたニッケル−金等のめっき層が被着されている。
【0039】
また、最外層の絶縁層3および実装用電極11a・11bには、必要に応じて実装用電極11a・11bの中央部を露出させる開口を有する耐半田樹脂層12が被着されている。耐半田樹脂層12は、その厚みが10〜50μmであり、例えばアクリル変性エポキシ樹脂等の感光性樹脂と光開始剤等とから成る混合物に30〜70重量%のシリカやタルク等の無機粉末フィラーを含有させた絶縁材料から成り、隣接する実装用電極11a・11b同士が半田バンプ(図示せず)により電気的に短絡することを防止するとともに、実装用電極11a・11bと絶縁層3との接合強度を向上させる機能を有する。
【0040】
このような耐半田樹脂層12は、感光性樹脂と光開始剤と無機粉末フィラーとから成る未硬化樹脂フィルムを最外層の絶縁層3表面に被着させる、あるいは、熱硬化性樹脂と無機粉末フィラーとから成る未硬化樹脂ワニスを最外層の絶縁層3表面に塗布するとともに乾燥し、しかる後、露光・現像により開口部を形成し、これをUV硬化および熱硬化させることにより形成される。
【0041】
なお、配線基板は、以下に述べる方法により製作される。まず、例えば、厚みが50μmのガラスクロス1にエポキシ樹脂や変性ポリフェニレン樹脂等から成る熱硬化樹脂2前駆体を含浸させたプリプレグを、ガラスクロス1の開口7bが上下に重ならないように2枚貼り合わせてプレス平坦化することにより絶縁層3となる絶縁シートを製作し、次に、絶縁シートの所定の位置に炭酸ガスレーザやYAGレーザ等の従来周知の方法を採用して直径が30〜100μmの貫通孔5を穿設する。
【0042】
そして、貫通孔5に従来周知のスクリーン印刷法を採用して、錫を主成分とする金属粉およびトリアジン系樹脂等の熱硬化性樹脂前駆体を含む導電性材料をスクリーン印刷法(圧入)で充填することによって貫通導体6を形成する。その後、別途準備した、表面に銅箔から成る配線導体4を絶縁シート上に所定のパターンに被着形成した、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の耐熱性樹脂から成るる転写シートを絶縁シートに、所定の貫通導体5と配線導体4とが接続するように位置合わせして重ね合わせ、これらを熱プレス機を用いて100〜150℃の温度で数分間プレスすることにより転写シートを絶縁シートに圧接して、配線導体4を絶縁シートに転写埋入し、最後に150〜200℃の温度で数時間加熱することにより製作される。
【0043】
あるいは必要に応じて、転写シートを剥離した絶縁シートを複数枚上下に重ね合わせ、熱プレス機を用いて150〜200℃の温度で数時間加熱プレスすることにより積層配線基板が製作される。
【0044】
かくして、本発明の配線基板によれば、ガラスクロス1の縦糸1aおよび横糸1bに囲まれた隙間7aの開口7bの全面積がガラスクロス1の面積の0.01〜2%であり、かつ開口7bが上下に重ならないように複数枚積層したことから、隙間7aの開口7bに貫通孔5を穿孔する確率が小さくできるとともに上下に連続することがないので、レーザ加工で均一な貫通孔5径が形成でき貫通導体6の抵抗が高くなることがない、また、薄いガラスクロス1を複数枚積層して絶縁層3を形成したので配線基板の剛性が向上し、半導体素子を配線基板に実装する際に薄い配線基板でも、反りや半田バンプの破壊のない接続信頼性に優れた配線基板とすることができる。
【0045】
なお、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば上述の実施例では本発明の配線基板を4層積層して成る積層配線基板の例を示したが、5層以上の配線基板を積層してもよい。
【0046】
【実施例】
本発明の配線基板の評価するために次に説明する配線基板を製作し、その絶縁層の絶縁抵抗および貫通導体の導通抵抗を評価した。
【0047】
まず、開口7bの全面積がガラスクロスの面積の0.008〜3%であり、厚みが50μmのガラスクロス1にエポキシ樹脂や変性ポリフェニレン樹脂等から成る熱硬化樹脂組成物2を含浸させたプリプレグを、ガラスクロス1の開口7bが上下に重ならないように2枚貼り合わせてプレス平坦化することにより絶縁シートを製作した。
【0048】
次に、絶縁シートの所定の位置に炭酸ガスレーザやYAGレーザ等の従来周知の方法を採用して直径が30〜100μmの貫通孔5を穿設した。そして、貫通孔5に従来周知のスクリーン印刷法を採用して、錫を主成分とする金属粉およびトリアジン系樹脂等の熱硬化性樹脂前駆体を含む導電性材料をスクリーン印刷法(圧入)で充填することによって貫通導体6を形成した。その後、別途準備した、表面に銅箔から成る配線導体4を絶縁シート上に所定のパターンに被着形成した、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等の耐熱性樹脂から成る転写シートを絶縁シートに、所定の貫通導体5と配線導体4とが接続するように位置合わせして重ね合わせ、これらを熱プレス機を用いて100〜150℃の温度で数分間プレスすることにより転写シートを絶縁シートに圧接して、配線導体4を絶縁シートに転写埋入した。
【0049】
しかる後、転写シートを絶縁シートから剥離するとともに転写シートを剥離した絶縁シートを複数枚上下に重ね合わせ、熱プレス機を用いて150〜200℃の温度で数時間加熱プレスして配線基板を製作した。絶縁層3の絶縁抵抗値および貫通導体5の導通抵抗値は、4端子測定で測定した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すように、ガラスクロス1の開口7bの全面積の比率が0.01%未満の場合(試料No.1)、絶縁層3の絶縁抵抗値が1013Ω未満となり絶縁性が低下することがわかった。また、2%より大きい場合(試料No.6)、均一な径の貫通孔が形成できず、貫通導体5の導通抵抗が10mΩ以上と高くなることがわかった。それに対して、ガラスクロス1の開口7bの全面積の比率を0.01〜2%の場合(試料No.2〜5)、絶縁層3の絶縁抵抗値が1013Ω以上、貫通導体5の導通抵抗が10mΩ未満となり絶縁抵抗性に優れ、導通抵抗が低い配線基板となることがわかった。
【0052】
また、ガラスクロス1を上側の縦糸1aの軸方向と下側の縦糸1aの軸方向とのなす角度が0〜90度となるように積層して、上記と同様にして試料を製作した。次に、配線基板の実装電極11a上に半田バンプを形成し、その半田バンプを介して上面に半導体素子を実装した。実装後の半導体素子と配線基板との剥れの有無を超音波探傷機で測定した。また別途、絶縁層3のみを加熱プレスして絶縁層3の縦糸1aの軸方向とこれと45度をなす方向の弾性率を測定した。その結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表2に示すように、上側の縦糸1aの軸方向と下側の縦糸1aの軸方向とのなす角度が15度未満および75度を超えた場合(試料No.7、8、14、15)、絶縁層3の縦糸方向とその45度方向の弾性率の差が20%以上と大きな値となることがわかった。それに対して、上側の縦糸1aの軸方向と下側の縦糸1aの軸方向とのなす角度が15〜75度の場合(試料No.9〜13)、絶縁層3の縦糸方向1aとその45度方向の弾性率の差が10%以下と小さな値となることがわかった。
【0055】
【発明の効果】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロスを複数積層するとともにこの積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層の上下面に配線導体を形成し、絶縁層を挟んで上下に位置する配線導体同士を絶縁層に設けた貫通導体を介して電気的に接続して成ることから、絶縁層の厚みが厚い場合においてもガラスクロスを構成する撚糸の径を大きなものとする必要はなく、その結果、ガラスクロスの隙間の開口の全面積が大きくなることはなく、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差が大きなものとなることはない。
【0056】
また、ガラスクロスの隙間の開口の全面積がガラスクロスの面積の0.01〜2%であり、かつ開口が上下に重ならないように積層されていることから、撚糸の密な部分と疎な部分との疎密差がより小さなものとなり、配線基板にレーザを用いて貫通孔を穿孔する際、均一な内部径や出射径を有する貫通孔を穿孔することができ、貫通孔に導電性材料を充填して貫通導体を形成した場合に、貫通導体の抵抗が部分的に高くなったり、断線してしまうということはない。
【0057】
さらに、絶縁層はガラスクロスを複数積層するとともにこの積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させたて成ることから、絶縁層が薄い場合でも複数のガラスクロスを積層したほうが絶縁層の剛性の低下を減少させることができ、その結果、大型のLSI等の半導体素子を配線基板に実装した際、半導体素子の動作時に半導体素子と配線基板との熱膨張係数の相違に起因して大きな応力が発生しても、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうことはない。
【0058】
本発明の配線基板によれば、ガラスクロスの縦糸および横糸の軸方向の弾性率と、縦糸および横糸の交点間を結ぶ方向の弾性率との差が大きいが、積層したガラスクロスのうち上下に接するものは、上側の縦糸の軸方向と下側の縦糸の軸方向とのなす角度を15〜75度となるように積層した場合には、絶縁層の方向毎の弾性率の差異を小さくすることでき、その結果、配線基板に大型のLSI等の半導体素子を実装した時に発生する応力による配線基板の変形を抑制でき、半導体素子が配線基板から剥がれてしまう、あるいは半導体素子が破壊されてしまうということを有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示すガラスクロスの平面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・ガラスクロス
1a・・・・・縦糸
1b・・・・・横糸
2・・・・・・・熱硬化性樹脂
3・・・・・・・絶縁層
4・・・・・・・配線導体
5・・・・・・・貫通孔
6・・・・・・・貫通導体
7a・・・・・・隙間
7b・・・・・・開口
Claims (2)
- 縦糸および横糸を織って成るガラスクロスを複数積層するとともに該積層したガラスクロスに熱硬化性樹脂を含浸させて成る絶縁層の上下面に配線導体を形成し、前記絶縁層を挟んで上下に位置する前記配線導体同士を前記絶縁層に設けた貫通導体を介して電気的に接続して成り、前記ガラスクロスは、前記縦糸および横糸に囲まれた隙間の開口の全面積が前記ガラスクロスの面積の0.01〜2%であり、かつ前記開口が上下に重ならないように積層されていることを特徴とする配線基板。
- 前記積層したガラスクロスのうち上下に接するものは、上側の前記縦糸の軸方向と下側の前記縦糸の軸方向とのなす角度が15〜75度となるように積層されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
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