JP2004179011A - 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 - Google Patents
絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004179011A JP2004179011A JP2002344736A JP2002344736A JP2004179011A JP 2004179011 A JP2004179011 A JP 2004179011A JP 2002344736 A JP2002344736 A JP 2002344736A JP 2002344736 A JP2002344736 A JP 2002344736A JP 2004179011 A JP2004179011 A JP 2004179011A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- insulating film
- liquid crystal
- crystal polymer
- layer
- wiring board
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01L—SEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
- H01L2224/00—Indexing scheme for arrangements for connecting or disconnecting semiconductor or solid-state bodies and methods related thereto as covered by H01L24/00
- H01L2224/01—Means for bonding being attached to, or being formed on, the surface to be connected, e.g. chip-to-package, die-attach, "first-level" interconnects; Manufacturing methods related thereto
- H01L2224/10—Bump connectors; Manufacturing methods related thereto
- H01L2224/15—Structure, shape, material or disposition of the bump connectors after the connecting process
- H01L2224/16—Structure, shape, material or disposition of the bump connectors after the connecting process of an individual bump connector
- H01L2224/161—Disposition
- H01L2224/16151—Disposition the bump connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive
- H01L2224/16221—Disposition the bump connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive the body and the item being stacked
- H01L2224/16225—Disposition the bump connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive the body and the item being stacked the item being non-metallic, e.g. insulating substrate with or without metallisation
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01L—SEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
- H01L2224/00—Indexing scheme for arrangements for connecting or disconnecting semiconductor or solid-state bodies and methods related thereto as covered by H01L24/00
- H01L2224/01—Means for bonding being attached to, or being formed on, the surface to be connected, e.g. chip-to-package, die-attach, "first-level" interconnects; Manufacturing methods related thereto
- H01L2224/26—Layer connectors, e.g. plate connectors, solder or adhesive layers; Manufacturing methods related thereto
- H01L2224/31—Structure, shape, material or disposition of the layer connectors after the connecting process
- H01L2224/32—Structure, shape, material or disposition of the layer connectors after the connecting process of an individual layer connector
- H01L2224/321—Disposition
- H01L2224/32151—Disposition the layer connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive
- H01L2224/32221—Disposition the layer connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive the body and the item being stacked
- H01L2224/32225—Disposition the layer connector connecting between a semiconductor or solid-state body and an item not being a semiconductor or solid-state body, e.g. chip-to-substrate, chip-to-passive the body and the item being stacked the item being non-metallic, e.g. insulating substrate with or without metallisation
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01L—SEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
- H01L2224/00—Indexing scheme for arrangements for connecting or disconnecting semiconductor or solid-state bodies and methods related thereto as covered by H01L24/00
- H01L2224/73—Means for bonding being of different types provided for in two or more of groups H01L2224/10, H01L2224/18, H01L2224/26, H01L2224/34, H01L2224/42, H01L2224/50, H01L2224/63, H01L2224/71
- H01L2224/732—Location after the connecting process
- H01L2224/73201—Location after the connecting process on the same surface
- H01L2224/73203—Bump and layer connectors
- H01L2224/73204—Bump and layer connectors the bump connector being embedded into the layer connector
-
- H—ELECTRICITY
- H01—ELECTRIC ELEMENTS
- H01L—SEMICONDUCTOR DEVICES NOT COVERED BY CLASS H10
- H01L2924/00—Indexing scheme for arrangements or methods for connecting or disconnecting semiconductor or solid-state bodies as covered by H01L24/00
- H01L2924/15—Details of package parts other than the semiconductor or other solid state devices to be connected
- H01L2924/151—Die mounting substrate
- H01L2924/153—Connection portion
- H01L2924/1531—Connection portion the connection portion being formed only on the surface of the substrate opposite to the die mounting surface
- H01L2924/15311—Connection portion the connection portion being formed only on the surface of the substrate opposite to the die mounting surface being a ball array, e.g. BGA
Landscapes
- Laminated Bodies (AREA)
- Production Of Multi-Layered Print Wiring Board (AREA)
- Insulating Bodies (AREA)
Abstract
【課題】有機材料から成る絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板において、配線の高密度化や絶縁信頼性・導通信頼性をともに満足させることができない。
【解決手段】液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層2を有して成り、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率が0.15%以下である。
【選択図】 図3
【解決手段】液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層2を有して成り、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率が0.15%以下である。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種AV機器や家電機器・通信機器・コンピュータやその周辺機器等の電子機器に使用される絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関し、特に液晶ポリマーを一部に用いた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子等の能動部品や容量素子・抵抗素子等の受動部品を多数搭載して所定の電子回路を構成した混成集積回路を形成するための多層配線基板は、通常、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムにドリルによって上下に貫通孔を形成し、この貫通孔内部および絶縁層表面に複数の配線導体を形成した配線基板を、多数積層することによって形成されている。
【0003】
一般に、現在の電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量・高性能・高機能・高品質・高信頼性が要求されており、このような電子機器に搭載される混成集積回路等の電子部品も小型・高密度化が要求されるようになってきており、このような高密度化の要求に応えるために、電子部品を構成する多層配線基板も、配線導体の微細化や絶縁層の薄層化・貫通孔の微細化が必要となってきている。このため、近年、貫通孔を微細化するために、ドリル加工より微細加工が可能なレーザ加工が用いられるようになってきた。
【0004】
しかしながら、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムは、ガラスクロスをレーザにより穿設加工することが困難なために貫通孔の微細化には限界があり、また、ガラスクロスの厚みが不均一のために均一な孔径の貫通孔を形成することが困難であるという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、アラミド樹脂繊維で製作した不織布にエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムや、ポリイミドフィルムにエポキシ系接着剤を塗布して成る絶縁フィルムを絶縁層に用いた多層配線基板が提案されている。
【0006】
しかしながら、アラミド不織布やポリイミドフィルムを用いた絶縁フィルムは吸湿性が高く、吸湿した状態で半田リフローを行なうと半田リフローの熱により吸湿した水分が気化してガスが発生し、絶縁層間で剥離してしまう等の問題点を有していた。
【0007】
このような問題点を解決するために、多層配線基板の絶縁層の材料として液晶ポリマーを用いることが検討されている。液晶ポリマーから成る層は、剛直な分子で構成されているとともに分子同士がある程度規則的に並んだ構成をしており分子間力が強いことから、高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性を示し、ガラスクロスのような強化材を用いる必要がなく、また、微細加工性にも優れるという特徴を有している。さらに、高周波領域においても、低誘電率・低誘電正接であり高周波特性に優れるという特徴を有している。
【0008】
このような液晶ポリマーの特徴を活かし、特開平8−97565号公報には、回路層が第1の液晶ポリマーを含み、この回路層間に第1の液晶ポリマーの融点よりも低い融点を有する第2の液晶ポリマーを含む接着剤層を挿入して成る多層プリント回路基板が提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−97565号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−97565号公報に提案された多層プリント回路基板は、回路層同士を間に液晶ポリマーを含む接着剤層を挿入して熱圧着により接着する際、液晶ポリマー分子が剛直であるとともにある程度分子が規則正しく配向して分子間力が強くなっているために分子が動き難く、回路層の液晶ポリマーと接着剤層の液晶ポリマーの表面のごく一部の分子だけしか絡み合うことができないために密着性が悪く、高温バイアス試験において層間で剥離して絶縁不良が発生してしまうという問題点を有していた。
【0011】
また、回路層の導体箔と液晶ポリマーを熱融着により接着する際、液晶ポリマー分子が動き難いために導体箔表面の微細な凹部に入ることができず、その結果、十分なアンカー効果を発揮することができず、導体箔と液晶ポリマーとの密着性が悪くなって、高温高湿下において両者間で剥離して導体箔が断線してしまうという問題点も有していた。
【0012】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、絶縁性・導通信頼性に優れた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を提供することに有る。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の絶縁フィルムは、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有して成り、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の前記層方向における収縮率が0.15%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の絶縁フィルムによれば、絶縁フィルムを液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有する構成とし、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルムを用いて配線基板を製作した場合、絶縁フィルムの熱膨張係数が配線導体の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルムと配線導体との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルムと配線導体間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルムにクラックが発生して配線導体が断線してしまうことがない。また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、また、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。さらに、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体が断線してしまうということもない。また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルムの層方向における貫通導体の位置精度が低下したり、貫通導体の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体と貫通導体との導通信頼性に優れた多層配線基板を製作することができる。
【0015】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みが絶縁フィルムの厚みの40〜90%であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みを絶縁フィルムの厚みの40〜90%とした場合には、温度サイクル試験等の際に絶縁フィルムに熱応力が印加されたとしても、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層を良好に拘束して絶縁フィルム全体の熱膨張や収縮を小さなものとすることができる。
【0017】
さらに、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層を水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2とした場合には、液晶ポリマー層表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と熱硬化性樹脂から成る被覆層とが良好に絡み合って結合し、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0019】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaが0.05〜5μmであることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層の上下面が熱硬化性樹脂から成る被覆層と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0021】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、被覆層は粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、被覆層を粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有するものとした場合には、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、無機絶縁粉末が被覆層の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、多層化する際の加熱プレスによって層方向における貫通導体の位置ずれや貫通導体の直径のばらつき、さらには被覆層の厚みばらつきを低減することができ、より寸法安定性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0023】
さらに、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、無機絶縁粉末はその形状が略球状であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、無機絶縁粉末の形状を略球状とした場合には、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂へ充填する際に充填性や混練性が良好となり、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂から成る被覆層へ一様に分布させることができ、その結果、被覆層の熱膨張係数や収縮率がより均一な絶縁フィルムとすることができる。
【0025】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、熱硬化性樹脂を熱硬化性ポリフェニレンエーテルとした場合には、熱硬化性ポリフェニレンエーテルが耐熱性に優れるとともに寸法安定性に優れることから、温度サイクル信頼性に優れるとともに、配線導体を接着する際の位置精度の良好な絶縁フィルムとすることができる。
【0027】
本発明の多層配線基板は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体が配設された上記の絶縁フィルムを複数積層して成るとともに、この絶縁フィルムを挟んで上下に位置する配線導体間を絶縁フィルムに形成された貫通導体を介して電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0028】
本発明の多層配線基板によれば、多層配線基板を上記の絶縁フィルムを用いて形成したことから、耐湿性・導通信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に本発明の絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の絶縁フィルムの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は図1の絶縁フィルムを用いて製作した本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。なお、図2は、本発明の多層配線基板に半導体素子等の電子部品を搭載して混成集積回路とした場合の例を示している。また、図3は、図2に示す多層配線基板の配線導体の幅方向の要部拡大断面図である。
【0030】
これらの図において1は液晶ポリマー層、2は熱硬化性樹脂から成る被覆層で、主にこれらで本発明の絶縁フィルム3が構成されている。また、4は配線導体、5は貫通導体、7は半導体素子等の電子部品で、主に絶縁フィルム3と配線導体4と貫通導体5とで本発明の多層配線基板6が構成されている。なお、本例の多層配線基板6では、絶縁フィルム3を4層積層して成るものを示している。
【0031】
絶縁フィルム3は、液晶ポリマー層1と、その上下面に被着形成された熱硬化性樹脂から成る被覆層2とから構成されており、これを用いて多層配線基板6を形成した場合、配線導体4や多層配線基板6に搭載される電子部品7の支持体としての機能を有する。
【0032】
なお、ここで液晶ポリマーとは、溶融状態あるいは溶液状態において、液晶性を示すポリマーあるいは光学的に複屈折する性質を有するポリマーを指し、一般に溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーや溶融時に液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマー、あるいは、熱変形温度で分類される1型・2型・3型すべての液晶ポリマーを含むものであり、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、温度サイクル信頼性・半田耐熱性・加工性の観点からは230〜420℃の温度、特に270〜380℃の温度に融点を有するものが好ましい。
【0033】
絶縁フィルム3は、これを用いて多層配線基板6を製作する際に、配線導体4と熱膨張係数を近いものとし、絶縁フィルム3と配線導体4との剥離や絶縁フィルム3のクラックに対する耐性をより高いものにするという観点からは、上下面に平行な方向、すなわち層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃とすることが重要である。
【0034】
また、絶縁フィルム3は、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルム3の層方向における貫通導体5の位置精度が低下したり、貫通導体5の直径にばらつきが生じることを防止するという観点からは、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としておく必要があり、そして、本発明の絶縁フィルム3においてはこのことが重要である。
【0035】
本発明の絶縁フィルム3によれば、絶縁フィルム3の層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルム3を用いて配線基板6を製作した場合、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルム3と配線導体4との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルム3と配線導体4間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルム3にクラックが発生して配線導体4が断線してしまうということがない。
【0036】
また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルム3を多層化した場合においても、絶縁フィルム3同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム3間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。
【0037】
さらに、絶縁フィルム3表面に配線導体4を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体4表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルム3と配線導体4との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体4が断線してしまうということもない。
【0038】
また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の絶縁フィルム3の上下面に平行な方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルム3に配線導体4および貫通導体5を配設するとともに絶縁フィルム3を多層化して多層配線基板6を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルム3の上下面に平行な方向における貫通導体5の位置精度が低下したり、貫通導体5の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体4と貫通導体5との導通信頼性に優れた多層配線基板6を製作することができる。
【0039】
なお、絶縁フィルム3の熱膨張係数が3×10−6/℃未満となると、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4よりも小さくなりすぎて絶縁フィルム3と配線導体4間で剥離が生じ易くなる傾向があり、40×10−6/℃を超えると、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4よりも大きくなりすぎて絶縁フィルム3に熱膨張差によるクラックが生じる傾向にある。したがって、絶縁フィルム3は、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であることが重要である。
【0040】
また、絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率が0.15%を超えると、上下面と平行な方向における貫通導体5の位置精度の低下や貫通導体5の直径のばらつきを防止することが困難となり、高温高湿下で貫通導体5の抵抗が上昇する傾向にある。したがって、絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率は0.15%以下であることが重要である。さらに、絶縁フィルム3を4層以上積層して多層配線基板6を製作する場合には、貫通導体5の高温高湿下での導通信頼性の観点からは0.1%以下としておくことがより好ましい。
【0041】
なお、ここで絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率とは、絶縁フィルム3のみを190〜270℃の任意の温度で3〜180分間の範囲で加熱した時に、層方向における任意の2点間の寸法変化量を加熱前の寸法で除した値を意味し、定量可能なものである。この収縮率は2軸延伸法やインフレーション法で液晶ポリマー層1を製作する際に圧力や昇温速度を適宜調整することにより、また、液晶ポリマー層1の上下面に被覆層2を形成する際に液晶ポリマー層1の表面処理雰囲気や時間を適宜調整することにより、さらに、被覆層2を液晶ポリマー層1の上下面に形成した後、被覆層2を加熱・乾燥する際の温度や時間を適宜調整することにより、所望の値とすることができる。
【0042】
また、液晶ポリマー層1は、層としての物性を損なわない範囲内で、熱安定性を改善するための酸化防止剤や耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル・高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数や収縮率を調整するため、および/または機械的強度を向上するための酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材を含有してもよい。
【0043】
なお、上記の充填材等の粒子形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは略球状が好ましい。また、粒子径は、通常0.1〜15μm程度であり、液晶ポリマー層1の厚みよりも小さい。
【0044】
また、液晶ポリマー層1の厚みは、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層1が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層2を良好に拘束して絶縁フィルム3全体の熱膨張や収縮を小さなものとするという観点からは、絶縁フィルム3の厚みの40〜90%としておくことが好ましい。
【0045】
液晶ポリマー層1の厚みが絶縁フィルム3の厚みの40%未満であると液晶ポリマー層1が被覆層2の熱膨張や収縮を拘束することが困難となり、例えばこの絶縁フィルム3を用いて多層配線基板6を製作した際に、絶縁フィルム3の熱膨張係数や収縮率が配線導体4の値よりも大きくなり、これらの熱膨張差や収縮差による応力により絶縁フィルム3にクラックが発生し易くなる傾向にある。また、液晶ポリマー層1の厚みが90%を超えると、被覆層2の熱膨張が絶縁フィルム3の熱膨張に寄与する効果が小さくなって絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4の熱膨張係数よりも小さくなり、これらの熱膨張差により配線導体4の剥離を生じ易くなる傾向にある。したがって、液晶ポリマー層1の厚みは絶縁フィルム3の厚みの40〜90%としておくことが好ましく、特に多層配線基板6を製作し電子部品7を実装したときの接続信頼性の観点からは50〜85%の範囲としておくことが好ましい。
【0046】
また、液晶ポリマー層1は、被覆層2との密着性を良好とするために、その表面をバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・プラズマ処理・コロナ処理・紫外線処理・薬品処理等の方法を用いて水との接触角が3〜65゜であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2となるように処理しておくことが好ましい。
【0047】
液晶ポリマー層1に対する水の濡れ性は、液晶ポリマー層1の上下面の水素結合可能な活性基の存在する割合と相関関係にあり、液晶ポリマー層1の上下面を水との接触角が3〜65°とすることにより、被覆層2が液晶ポリマー層1の上下面と強い分子間力で結合して、液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性をさらに良好なものとなすことができ、その結果、高温バイアス試験においても両者間で剥離することのない絶縁フィルム3とすることができる。
【0048】
液晶ポリマー層1は、水との接触角が3°より小さいと、被覆層2が液晶ポリマー層1上に極端に広がってしまって位置精度が低下し、絶縁フィルム3を複数枚重ねるとともに加熱・加圧して多層化する際に、絶縁フィルム3の表面に形成される配線導体4や内部に形成される貫通導体5の位置がずれて断線し易くなる傾向があり、また、65°を超えると液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性が低下して両者間で剥離し易くなる傾向がある。したがって、液晶ポリマー層1の上下面の水との接触角は3〜65°の範囲としておくことが好ましい。
【0049】
なお、接触角を評価するための水は、JIS K 0050「化学分析方法通則」に規定される蒸留法もしくはイオン交換法によって精製した水、または逆浸透法・拘留法・イオン交換法等を組み合わせた方法によって精製した水を示す。
【0050】
また、液晶ポリマー層1は、表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と被覆層2とが良好に絡み合って結合し、両者の密着をさらに強固なものとするという観点からは、その表面エネルギーを45〜80mJ/m2とすることが好ましい。
【0051】
液晶ポリマー層1の上下面の表面エネルギーが45mJ/m2未満であると、液晶ポリマー層1表面の分子層が十分に活性化されず、被覆層2と良好に絡み合って結合することが困難となる傾向があり、80mJ/m2を超えると液晶ポリマー層1の表面が非常に反応性が高くなって空気中の酸素と反応してその表面に強度の弱い酸化物が形成され、その結果、液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性が低下して両者間で剥離し易く成る傾向がある。したがって、液晶ポリマー層1の表面エネルギーを45〜80mJ/m2とすることが好ましい。
【0052】
さらに、液晶ポリマー層1は、その表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとしておくことが好ましい。表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層1の上下面が被覆層2と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層1と被覆層2とがより強固に密着したものとすることができる。
【0053】
なお、算術平均粗さRaは、半田リフローの際に液晶ポリマー層1と被覆層2との剥離を防止するという観点からは0.05μm以上であることが好ましく、表面に被覆層2を形成する際に空気のかみ込みを防止するという観点からは5μm以下であることが好ましい。したがって、液晶ポリマー層1は、その表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとすることが好ましい。
【0054】
次に、被覆層2は、熱硬化性樹脂から成り、後述する配線導体4を被着形成する際の接着剤の機能を有するとともに、絶縁フィルム3を用いて多層配線基板6を構成する際に、絶縁フィルム3同士を積層する際の接着剤の役目を果たす。
【0055】
このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やシアネート樹脂・フェノール樹脂・ポリイミド樹脂・熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂・ビスマレイミドトリアジン樹脂等の加熱により硬化反応する樹脂が用いられ、とりわけ温度サイクル信頼性や配線導体4を接着する際の位置精度の観点からは、アリル変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0056】
また、被覆層2は、弾性率を調整するためのゴム成分や熱安定性を改善するための酸化防止剤、耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数や収縮率を調整したり機械的強度を向上するための酸化アルミニウムや酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材、あるいは、充填材との親和性を高めこれらの接合性向上と機械的強度を高めるためのシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。
【0057】
特に絶縁フィルム3を積層・加圧して多層配線基板6を形成する際に、被覆層2の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、貫通導体5の位置ずれや被覆層2の厚みばらつきを防止するという観点からは、被覆層2は充填材として10体積%以上の無機絶縁粉末を含有することが好ましい。また、液晶ポリマー層1との接着界面および配線導体4との接着界面での半田リフロー時の剥離を防止するという観点からは、無機絶縁粉末の含有量を70体積%以下とすることが好ましい。したがって、熱硬化性樹脂から成る被覆層2は10〜70体積%の無機絶縁粉末を含有させておくことが好ましい。
【0058】
なお、上記の無機絶縁粉末の形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性や熱膨張係数および収縮率の均一性の観点からは、粒子径が0.1〜2μmであって、形状は略球状であることが好ましい。
【0059】
このような絶縁フィルム3は、例えば粒径が0.1〜2μm程度の酸化珪素等の無機絶縁粉末に、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂と溶剤・可塑剤・分散剤等を添加して得たペーストを、プラズマ処理により水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2となるように表面処理した、融点が230〜420℃の液晶ポリマー層1の上下面に従来周知のドクタブレード法等のシート成型法を採用して被覆層2を形成した後、あるいは上記のペースト中に液晶ポリマー層1を浸漬し垂直に引き上げることによって液晶ポリマー層1の表面に被覆層2を形成した後、これを60〜100℃の温度で5分〜3時間加熱・乾燥することにより製作される。
【0060】
なお、絶縁フィルム3の厚みは絶縁信頼性を確保するという観点からは10〜300μmであることが好ましく、また、高耐熱性・低吸湿性・高寸法安定性を確保するという観点からは液晶ポリマー層1の厚みを絶縁フィルム3の厚みの40〜90%の範囲としておくことが好ましい。
【0061】
また、本発明の多層配線基板6は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体4が配設された絶縁フィルム3を複数積層して成るとともに、この絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁フィルム3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続することにより形成されている。
【0062】
配線導体4は、その厚みが2〜30μmで銅・金等の良導電性の金属箔から成り、多層配線基板6に搭載される電子部品7を外部電気回路(図示せず)に電気的に接続する機能を有する。
【0063】
このような配線導体4は、絶縁フィルム3を複数積層する際、配線導体4の周囲にボイドが発生するのを防止するという観点からは、図3の要部拡大断面図に示すように、被覆層2に少なくとも配線導体4の表面と被覆層2の表面とが平坦となるように埋設されていることが好ましい。また、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%としておくと、配線導体4周囲の被覆層2の樹脂盛り上がりを生じさせず平坦化することができるとともに配線導体4と被覆層2の間に挟まれる空気の排出を容易にして気泡の巻き込みを防止することができる。なお、乾燥状態での気孔率が40体積%を超えると、複数積層した絶縁フィルム3を加圧・加熱硬化した後に被覆層2内に気孔が残存し、この気孔が空気中の水分を吸着して絶縁性が低下してしまうおそれがあるので、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%の範囲としておくことが好ましい。
【0064】
このような被覆層2の乾燥状態での気孔率は、被覆層2を液晶ポリマー層1の表面上に塗布し乾燥する際に、乾燥温度や昇温速度等の乾燥条件を適宜調整することにより所望の値とすることができる。
【0065】
さらに、絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることが好ましい。絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることにより、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、配線導体4を被覆層2に容易に埋設して配線導体4を埋設した後の被覆層2表面をほぼ平坦にすることができ、積層の際に空気をかみ込んで絶縁性を低下させることのない多層配線基板6とすることができる。なお、気泡をかみ込むことなく埋設するという観点からは、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95°以上とすることが好ましく、配線導体2を微細化するという観点からは150°以下とすることが好ましい。
【0066】
また、絶縁フィルム3の層間において、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1との間に位置する被覆層2の厚みx(μm)が、上下の液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μm(ただし、8μm≦T≦70μm、1μm≦t≦32μm)であることが好ましい。
【0067】
液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1間の熱硬化性樹脂から成る被覆層2の厚みx(μm)を3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmとすることにより、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1間の距離および配線導体4の長さの長い底辺と隣接する液晶ポリマー層1間の距離の差をt(μm)未満と小さくすることができ、被覆層2の厚みが大きく異なることから生じる多層配線基板6の反りを防止することができる。したがって、配線導体4の台形状の上底側表面と液晶ポリマー層1の間に位置する、被覆層2の厚みx(μm)を、液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmの範囲とすることが好ましい。
【0068】
このような配線導体4は、絶縁フィルム3となる前駆体シートに、公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法によりパターン形成した、例えば銅から成る金属箔を転写法等により被着形成することにより形成される。先ず、支持体と成るフィルム上に銅から成る金属箔を接着剤を介して接着した金属箔転写用フィルムを用意し、次に、フィルム上の金属箔を公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法を使用してパターン状にエッチングする。この時、パターンの表面側の側面は、フィルム側の側面に較べてエッチング液に接する時間が長いためにエッチングされやすく、パターンの幅方向の断面形状を台形状とすることができる。なお、台形の形状は、エッチング液の濃度やエッチング時間を調整することにより短い底辺と側辺とのなす角度を95〜150°の台形状とすることができる。
【0069】
そして、この金属箔転写用フィルムを絶縁フィルム3と成る前駆体シートに積層し、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスした後、支持体と成るフィルムを剥離除去して金属箔を絶縁フィルム3と成る前駆体シート表面に転写させることにより、台形状の上底側が被覆層2に埋設された配線導体4を形成することができる。
【0070】
なお、配線導体4の長さの短い底辺と対向する液晶ポリマー層1間の被覆層2の厚みx(μm)は、金属箔転写時のホットプレスの圧力を調整することにより所望の範囲とすることができる。また、配線導体4は被覆層2との密着性を高めるためにその表面にバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・薬品処理等の処理で表面を粗化しておくことが好ましい。
【0071】
また、絶縁フィルム3には、直径が20〜150μm程度の貫通導体5が形成されている。貫通導体5は、絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4を電気的に接続する機能を有し、絶縁フィルム3にレーザにより穿設加工を施すことにより貫通孔を形成した後、この貫通孔に銅・銀・金・半田等から成る導電性ペーストを従来周知のスクリーン印刷法により埋め込むことにより形成される。
【0072】
本発明の多層配線基板6によれば、絶縁フィルム3を液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層2を有したものとしたことから、液晶ポリマー層1が高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性であり、ガラスクロスのような強化材を用いなくとも絶縁フィルム3を構成することが可能となり、その結果、レーザによる穿設加工が容易となり微細で均一な貫通孔を形成できる。
【0073】
このような多層配線基板6は、上述したような方法で製作した絶縁フィルム3と成る前駆体シートの所望の位置に貫通導体5を形成した後、パターン形成した例えば銅の金属箔を、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスして転写し、これらを積層して最終的に温度が150〜300℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で30分〜24時間ホットプレスして完全硬化させることにより製作される。
【0074】
かくして本発明の多層配線基板6によれば、上記構成の多層配線基板6の上面に形成した配線導体4の一部から成る接続パッド8に半田等の導体バンプ8を介して半導体素子等の電子部品7を電気的に接続するとともに、多層配線基板6の下面に形成した配線導体4の一部から成る接続パッド8に半田等の導体バンプ9を形成することにより配線密度が高く絶縁性に優れた混成集積回路とすることができる。
【0075】
なお、本発明の多層配線基板6は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では4層の絶縁フィルム3を積層することによって多層配線基板6を製作したが、2層や3層、あるいは5層以上の絶縁フィルム3を積層して多層配線基板6を製作してもよい。また、本発明の多層配線基板6の上下表面に、1層や2層、あるいは3層以上の有機樹脂を主成分とする絶縁層から成るビルドアップ層やソルダーレジスト層10、あるいは多層配線基板6に電子部品7を搭載後、多層配線基板6と電子部品6との間にアンダーフィル材11を形成してもよい。
【0076】
【実施例】
次に本発明の絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を、以下の試料を用いて評価した。
(実施例1)
先ず、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂に平均粒径が0.6μmの球状溶融シリカをその含有量が40体積%となるように加え、これに溶剤としてトルエン、さらに有機樹脂の硬化を促進させるための触媒を添加し、1時間混合してワニスを調整した。次に、融点が290℃であるとともに、かつ層方向における熱膨張係数が−3×10−6〜16×10−6/℃の液晶ポリマー層の表面を、真空プラズマ装置を用いて、電圧を27kV、雰囲気をO2およびCF4(ガス流量をそれぞれ50〜200cm3/分の範囲で調整)とし、片面15〜35分の条件でプラズマ処理して、この液晶ポリマー層の上面に上記ワニスをドクターブレード法により塗布し、厚さが30μmの熱硬化性ポリフェニレンエーテル被覆層を成形した。そして、この液晶ポリマー層の下面にも同様に熱硬化性ポリフェニレンエーテル被覆層を成形し、上下面に平行な方向における種々の熱膨張係数と収縮率を有する絶縁フィルムを製作した。
【0077】
さらに、この絶縁フィルムに、UV−YAGレーザにより直径50μmの貫通孔を形成し、この貫通孔に銅粉末と有機バインダを含有する導体ペーストをスクリーン印刷により埋め込むことにより貫通導体を形成した。
【0078】
次に、厚さが9μmで、回路状に形成した銅箔が付いた転写用支持フィルムと、貫通導体が形成された絶縁フィルムとを位置合わせして真空積層機により5MPaの圧力で30秒加圧した後、転写用支持フィルムを剥離して配線導体を絶縁フィルム上に埋設した。最後に、この配線導体が形成された絶縁フィルムを4枚重ね合わせ、3MPaの圧力下で200℃の温度で5時間加熱処理して完全硬化させて多層配線基板を得た(試料No.1〜12)。
【0079】
(比較例)
比較例用として用いた多層配線基板は、まず、表面に銅箔を熱溶融により接着した融点が320℃の液晶ポリマー層にフォトレジストを用いて回路状の配線導体を形成し、次に、UV−YAGレーザにより直径50μmの貫通孔を形成し、さらにこの貫通孔に銅粉末と有機バインダを含有する導体ペーストをスクリーン印刷により埋め込むことにより貫通導体を形成して回路基板を作製した後、これらの回路基板を融点が280℃の液晶ポリマー層を間に挟んで1MPaの圧力下で285℃の温度で5分間加熱プレスすることにより製作した。
【0080】
導通信頼性の評価を行なうためのテスト基板として、その内部に多層配線基板の絶縁層を介して位置する上下2層の配線導体と両者を電気的に接続する貫通導体とでビアチェーンを形成したものとし、導通信頼性の評価は、温度が130℃、相対湿度が85%の条件で高温高湿試験を行ない、導通抵抗の試験前に対する変化率が15%未満を良、15%以上を否とした。表1に導通信頼性結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1からは、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数が3×10−6/℃未満の多層配線基板(試料No.1)および熱膨張係数が40×10−6/℃を超える多層配線基板(試料No.6、7)では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が12%以下と小さいが、240時間後で導通抵抗は変化率が16%以上と大きく、導通信頼性にやや劣る傾向があることがわかった。また、比較例の多層配線基板では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が19%と大きく劣化し導通信頼性に劣ることがわかった。
【0083】
それらに対し、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃の多層配線基板(試料No.2〜5)では、いずれも高温高湿試験168時間後で導通抵抗の変化率は10%以下と小さく、さらに240時間後でも導通抵抗の変化率は14%以下と小さく、導通信頼性に優れていた。しかし、熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であっても、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における収縮率が0.15%を超える多層配線基板(試料No.11、12)では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が13%以下と小さいが、240時間後で導通抵抗は変化率が16%以上と大きく、導通信頼性にやや劣る傾向があった。
【0084】
一方、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ、絶縁フィルムの層方向における収縮率が0.15%以下の多層配線基板(試料No.2〜5、8〜10)では、高温高湿試験240時間後でも導通抵抗は変化率が14%以下と小さく、導通信頼性において特に優れていることがわかった。
【0085】
(実施例2)
実施例2用として用いた多層配線基板は、液晶ポリマー層を、その絶縁フィルムに対する厚さが種々の割合になるように変更した以外は、実施例1用の多層配線基板と同様の方法で製作した(試料No.13〜18)。なお、絶縁フィルムの厚さが200μmとなるように、液晶ポリマー層と被覆層の厚さを調整した。また、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における熱膨張係数は3×10−6〜40×10−6/℃の範囲にあり、さらに、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の上下面に平行な方向における収縮率は0.15%以下であった。
【0086】
絶縁性の評価を行なうためのテスト基板として、直径が4000μmの円形の導体パターンを多層配線基板内に絶縁層を挟んで対向するように形成し、絶縁信頼性の評価は、試料を温度が130℃、相対湿度が85%の条件で、印加電圧5.5Vの高温バイアス試験を行ない、円形の導体パターン間の絶縁抵抗を測定し、試験前後の変化量を比較することにより評価した。絶縁信頼性の良否の判断は、絶縁抵抗が1.0×108Ω以上を良、1.0×108Ω未満を否とした。表2に絶縁信頼性結果を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2からは、液晶ポリマー層の絶縁フィルムに対する厚さの割合が40%未満の多層配線基板(試料No.13、14)および90%を超える多層配線基板(試料No.18)では、高温バイアス試験168時間後の絶縁抵抗は良好であるものの、240時間以上では絶縁抵抗が8.8×107Ω以下と劣化する傾向にあることがわかった。
【0089】
それらに対して本発明の多層配線基板である実施例(試料No.15〜17)では、高温バイアス試験240時間後でも2.1×108Ω以上であり、絶縁信頼性において特に優れていることがわかった。
【0090】
(実施例3)
実施例3用として用いた多層配線基板は、表面が種々の水との接触角および表面エネルギーを有する液晶ポリマー層に変更した以外は、実施例1用の多層配線基板と同様の方法で製作した(試料No.19〜27)。
【0091】
なお、密着性の評価は、多層配線基板を種々の温度の半田浴に20秒間浸漬し、これを5回繰り返した後、多層配線基板の外観を観察することにより密着性の評価を行なった。表3に密着性の評価結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3からは、液晶ポリマー層表面の水との接触角が3°未満の多層配線基板(試料No.19)および接触角が65°を超える多層配線基板(試料No.23)では、温度が260℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無かったが、温度条件の厳しい290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返した時点で、液晶ポリマー層と被覆層間で剥がれを生じることにより多層配線基板に膨れ部が発生し、密着性にやや劣る傾向があった。それらに対し、接触角が3〜65°の多層配線基板(試料No.20〜22)では、温度が290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無く、密着性に優れていた。しかし、接触角が3〜65°であっても、液晶ポリマー層の表面エネルギーが45mJ/m2未満の多層配線基板(試料No.24)および80mJ/m2以上の多層配線基板(試料No.27)では、温度が260℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無かったが、温度条件の厳しい290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返した時点で、液晶ポリマー層と被覆層間で剥がれを生じることにより多層配線基板に膨れ部が発生し、密着性にやや劣る傾向があった。一方、接触角が3〜65°であり、かつ、表面エネルギーが45〜80mJ/m2の多層配線基板(試料No.20〜22、25、26)では、温度が290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無く、密着性において特に優れていることがわかった。
【0094】
【発明の効果】
本発明の絶縁フィルムによれば、絶縁フィルムを液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有する構成とし、層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルムを用いて配線基板を製作した場合、絶縁フィルムの熱膨張係数が配線導体の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルムと配線導体との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルムと配線導体間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルムにクラックが発生して配線導体が断線してしまうことがない。また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、また、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。さらに、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体が断線してしまうということもない。また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルムの層方向における貫通導体の位置精度が低下したり、貫通導体の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体と貫通導体との導通信頼性に優れた多層配線基板を製作することができる。
【0095】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みを絶縁フィルムの厚みの40〜90%とした場合には、温度サイクル試験等の際に絶縁フィルムに熱応力が印加されたとしても、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層を良好に拘束して絶縁フィルム全体の熱膨張や収縮を小さなものとすることができる。
【0096】
さらに、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層を水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2とした場合には、液晶ポリマー層表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と熱硬化性樹脂から成る被覆層とが良好に絡み合って結合し、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0097】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層の上下面が熱硬化性樹脂から成る被覆層と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0098】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、被覆層を粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有するものとした場合には、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、無機絶縁粉末が被覆層の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、多層化する際の加熱プレスによって層方向における貫通導体の位置ずれや貫通導体の直径のばらつき、さらには被覆層の厚みばらつきを低減することができ、より寸法安定性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0099】
さらに、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、無機絶縁粉末の形状を略球状とした場合には、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂へ充填する際に充填性や混練性が良好となり、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂から成る被覆層へ一様に分布させることができ、その結果、被覆層の熱膨張係数や収縮率がより均一な絶縁フィルムとすることができる。
【0100】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、熱硬化性樹脂を熱硬化性ポリフェニレンエーテルとした場合には、熱硬化性ポリフェニレンエーテルが耐熱性に優れるとともに寸法安定性に優れることから、温度サイクル信頼性に優れるとともに、配線導体を接着する際の位置精度の良好な絶縁フィルムとすることができる。
【0101】
本発明の多層配線基板によれば、多層配線基板を上記の絶縁フィルムを用いて形成したことから、耐湿性・導通信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の絶縁フィルムの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す多層配線基板の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・液晶ポリマー層
2・・・・・・・・被覆層
3・・・・・・・・絶縁フィルム
4・・・・・・・・配線導体
5・・・・・・・・貫通導体
6・・・・・・・・多層配線基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種AV機器や家電機器・通信機器・コンピュータやその周辺機器等の電子機器に使用される絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関し、特に液晶ポリマーを一部に用いた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体素子等の能動部品や容量素子・抵抗素子等の受動部品を多数搭載して所定の電子回路を構成した混成集積回路を形成するための多層配線基板は、通常、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムにドリルによって上下に貫通孔を形成し、この貫通孔内部および絶縁層表面に複数の配線導体を形成した配線基板を、多数積層することによって形成されている。
【0003】
一般に、現在の電子機器は、移動体通信機器に代表されるように小型・薄型・軽量・高性能・高機能・高品質・高信頼性が要求されており、このような電子機器に搭載される混成集積回路等の電子部品も小型・高密度化が要求されるようになってきており、このような高密度化の要求に応えるために、電子部品を構成する多層配線基板も、配線導体の微細化や絶縁層の薄層化・貫通孔の微細化が必要となってきている。このため、近年、貫通孔を微細化するために、ドリル加工より微細加工が可能なレーザ加工が用いられるようになってきた。
【0004】
しかしながら、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムは、ガラスクロスをレーザにより穿設加工することが困難なために貫通孔の微細化には限界があり、また、ガラスクロスの厚みが不均一のために均一な孔径の貫通孔を形成することが困難であるという問題点を有していた。
【0005】
このような問題点を解決するために、アラミド樹脂繊維で製作した不織布にエポキシ樹脂を含浸させて成る絶縁フィルムや、ポリイミドフィルムにエポキシ系接着剤を塗布して成る絶縁フィルムを絶縁層に用いた多層配線基板が提案されている。
【0006】
しかしながら、アラミド不織布やポリイミドフィルムを用いた絶縁フィルムは吸湿性が高く、吸湿した状態で半田リフローを行なうと半田リフローの熱により吸湿した水分が気化してガスが発生し、絶縁層間で剥離してしまう等の問題点を有していた。
【0007】
このような問題点を解決するために、多層配線基板の絶縁層の材料として液晶ポリマーを用いることが検討されている。液晶ポリマーから成る層は、剛直な分子で構成されているとともに分子同士がある程度規則的に並んだ構成をしており分子間力が強いことから、高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性を示し、ガラスクロスのような強化材を用いる必要がなく、また、微細加工性にも優れるという特徴を有している。さらに、高周波領域においても、低誘電率・低誘電正接であり高周波特性に優れるという特徴を有している。
【0008】
このような液晶ポリマーの特徴を活かし、特開平8−97565号公報には、回路層が第1の液晶ポリマーを含み、この回路層間に第1の液晶ポリマーの融点よりも低い融点を有する第2の液晶ポリマーを含む接着剤層を挿入して成る多層プリント回路基板が提案されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平8−97565号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−97565号公報に提案された多層プリント回路基板は、回路層同士を間に液晶ポリマーを含む接着剤層を挿入して熱圧着により接着する際、液晶ポリマー分子が剛直であるとともにある程度分子が規則正しく配向して分子間力が強くなっているために分子が動き難く、回路層の液晶ポリマーと接着剤層の液晶ポリマーの表面のごく一部の分子だけしか絡み合うことができないために密着性が悪く、高温バイアス試験において層間で剥離して絶縁不良が発生してしまうという問題点を有していた。
【0011】
また、回路層の導体箔と液晶ポリマーを熱融着により接着する際、液晶ポリマー分子が動き難いために導体箔表面の微細な凹部に入ることができず、その結果、十分なアンカー効果を発揮することができず、導体箔と液晶ポリマーとの密着性が悪くなって、高温高湿下において両者間で剥離して導体箔が断線してしまうという問題点も有していた。
【0012】
本発明はかかる従来技術の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、絶縁性・導通信頼性に優れた絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を提供することに有る。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の絶縁フィルムは、液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有して成り、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の前記層方向における収縮率が0.15%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の絶縁フィルムによれば、絶縁フィルムを液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有する構成とし、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルムを用いて配線基板を製作した場合、絶縁フィルムの熱膨張係数が配線導体の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルムと配線導体との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルムと配線導体間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルムにクラックが発生して配線導体が断線してしまうことがない。また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、また、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。さらに、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体が断線してしまうということもない。また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルムの層方向における貫通導体の位置精度が低下したり、貫通導体の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体と貫通導体との導通信頼性に優れた多層配線基板を製作することができる。
【0015】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みが絶縁フィルムの厚みの40〜90%であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みを絶縁フィルムの厚みの40〜90%とした場合には、温度サイクル試験等の際に絶縁フィルムに熱応力が印加されたとしても、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層を良好に拘束して絶縁フィルム全体の熱膨張や収縮を小さなものとすることができる。
【0017】
さらに、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層を水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2とした場合には、液晶ポリマー層表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と熱硬化性樹脂から成る被覆層とが良好に絡み合って結合し、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0019】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaが0.05〜5μmであることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層の上下面が熱硬化性樹脂から成る被覆層と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0021】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、被覆層は粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有していることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、被覆層を粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有するものとした場合には、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、無機絶縁粉末が被覆層の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、多層化する際の加熱プレスによって層方向における貫通導体の位置ずれや貫通導体の直径のばらつき、さらには被覆層の厚みばらつきを低減することができ、より寸法安定性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0023】
さらに、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、無機絶縁粉末はその形状が略球状であることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、無機絶縁粉末の形状を略球状とした場合には、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂へ充填する際に充填性や混練性が良好となり、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂から成る被覆層へ一様に分布させることができ、その結果、被覆層の熱膨張係数や収縮率がより均一な絶縁フィルムとすることができる。
【0025】
また、本発明の絶縁フィルムは、上記構成において、熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、熱硬化性樹脂を熱硬化性ポリフェニレンエーテルとした場合には、熱硬化性ポリフェニレンエーテルが耐熱性に優れるとともに寸法安定性に優れることから、温度サイクル信頼性に優れるとともに、配線導体を接着する際の位置精度の良好な絶縁フィルムとすることができる。
【0027】
本発明の多層配線基板は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体が配設された上記の絶縁フィルムを複数積層して成るとともに、この絶縁フィルムを挟んで上下に位置する配線導体間を絶縁フィルムに形成された貫通導体を介して電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0028】
本発明の多層配線基板によれば、多層配線基板を上記の絶縁フィルムを用いて形成したことから、耐湿性・導通信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
次に本発明の絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の絶縁フィルムの実施の形態の一例を示す断面図であり、図2は図1の絶縁フィルムを用いて製作した本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。なお、図2は、本発明の多層配線基板に半導体素子等の電子部品を搭載して混成集積回路とした場合の例を示している。また、図3は、図2に示す多層配線基板の配線導体の幅方向の要部拡大断面図である。
【0030】
これらの図において1は液晶ポリマー層、2は熱硬化性樹脂から成る被覆層で、主にこれらで本発明の絶縁フィルム3が構成されている。また、4は配線導体、5は貫通導体、7は半導体素子等の電子部品で、主に絶縁フィルム3と配線導体4と貫通導体5とで本発明の多層配線基板6が構成されている。なお、本例の多層配線基板6では、絶縁フィルム3を4層積層して成るものを示している。
【0031】
絶縁フィルム3は、液晶ポリマー層1と、その上下面に被着形成された熱硬化性樹脂から成る被覆層2とから構成されており、これを用いて多層配線基板6を形成した場合、配線導体4や多層配線基板6に搭載される電子部品7の支持体としての機能を有する。
【0032】
なお、ここで液晶ポリマーとは、溶融状態あるいは溶液状態において、液晶性を示すポリマーあるいは光学的に複屈折する性質を有するポリマーを指し、一般に溶液状態で液晶性を示すリオトロピック液晶ポリマーや溶融時に液晶性を示すサーモトロピック液晶ポリマー、あるいは、熱変形温度で分類される1型・2型・3型すべての液晶ポリマーを含むものであり、本発明に用いる液晶ポリマーとしては、温度サイクル信頼性・半田耐熱性・加工性の観点からは230〜420℃の温度、特に270〜380℃の温度に融点を有するものが好ましい。
【0033】
絶縁フィルム3は、これを用いて多層配線基板6を製作する際に、配線導体4と熱膨張係数を近いものとし、絶縁フィルム3と配線導体4との剥離や絶縁フィルム3のクラックに対する耐性をより高いものにするという観点からは、上下面に平行な方向、すなわち層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃とすることが重要である。
【0034】
また、絶縁フィルム3は、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルム3の層方向における貫通導体5の位置精度が低下したり、貫通導体5の直径にばらつきが生じることを防止するという観点からは、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としておく必要があり、そして、本発明の絶縁フィルム3においてはこのことが重要である。
【0035】
本発明の絶縁フィルム3によれば、絶縁フィルム3の層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルム3を用いて配線基板6を製作した場合、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルム3と配線導体4との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルム3と配線導体4間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルム3にクラックが発生して配線導体4が断線してしまうということがない。
【0036】
また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルム3を多層化した場合においても、絶縁フィルム3同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム3間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。
【0037】
さらに、絶縁フィルム3表面に配線導体4を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体4表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルム3と配線導体4との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体4が断線してしまうということもない。
【0038】
また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の絶縁フィルム3の上下面に平行な方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルム3に配線導体4および貫通導体5を配設するとともに絶縁フィルム3を多層化して多層配線基板6を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルム3の上下面に平行な方向における貫通導体5の位置精度が低下したり、貫通導体5の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体4と貫通導体5との導通信頼性に優れた多層配線基板6を製作することができる。
【0039】
なお、絶縁フィルム3の熱膨張係数が3×10−6/℃未満となると、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4よりも小さくなりすぎて絶縁フィルム3と配線導体4間で剥離が生じ易くなる傾向があり、40×10−6/℃を超えると、絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4よりも大きくなりすぎて絶縁フィルム3に熱膨張差によるクラックが生じる傾向にある。したがって、絶縁フィルム3は、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であることが重要である。
【0040】
また、絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率が0.15%を超えると、上下面と平行な方向における貫通導体5の位置精度の低下や貫通導体5の直径のばらつきを防止することが困難となり、高温高湿下で貫通導体5の抵抗が上昇する傾向にある。したがって、絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率は0.15%以下であることが重要である。さらに、絶縁フィルム3を4層以上積層して多層配線基板6を製作する場合には、貫通導体5の高温高湿下での導通信頼性の観点からは0.1%以下としておくことがより好ましい。
【0041】
なお、ここで絶縁フィルム3の190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率とは、絶縁フィルム3のみを190〜270℃の任意の温度で3〜180分間の範囲で加熱した時に、層方向における任意の2点間の寸法変化量を加熱前の寸法で除した値を意味し、定量可能なものである。この収縮率は2軸延伸法やインフレーション法で液晶ポリマー層1を製作する際に圧力や昇温速度を適宜調整することにより、また、液晶ポリマー層1の上下面に被覆層2を形成する際に液晶ポリマー層1の表面処理雰囲気や時間を適宜調整することにより、さらに、被覆層2を液晶ポリマー層1の上下面に形成した後、被覆層2を加熱・乾燥する際の温度や時間を適宜調整することにより、所望の値とすることができる。
【0042】
また、液晶ポリマー層1は、層としての物性を損なわない範囲内で、熱安定性を改善するための酸化防止剤や耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステル・高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数や収縮率を調整するため、および/または機械的強度を向上するための酸化アルミニウム・酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材を含有してもよい。
【0043】
なお、上記の充填材等の粒子形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性の観点からは略球状が好ましい。また、粒子径は、通常0.1〜15μm程度であり、液晶ポリマー層1の厚みよりも小さい。
【0044】
また、液晶ポリマー層1の厚みは、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層1が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層2を良好に拘束して絶縁フィルム3全体の熱膨張や収縮を小さなものとするという観点からは、絶縁フィルム3の厚みの40〜90%としておくことが好ましい。
【0045】
液晶ポリマー層1の厚みが絶縁フィルム3の厚みの40%未満であると液晶ポリマー層1が被覆層2の熱膨張や収縮を拘束することが困難となり、例えばこの絶縁フィルム3を用いて多層配線基板6を製作した際に、絶縁フィルム3の熱膨張係数や収縮率が配線導体4の値よりも大きくなり、これらの熱膨張差や収縮差による応力により絶縁フィルム3にクラックが発生し易くなる傾向にある。また、液晶ポリマー層1の厚みが90%を超えると、被覆層2の熱膨張が絶縁フィルム3の熱膨張に寄与する効果が小さくなって絶縁フィルム3の熱膨張係数が配線導体4の熱膨張係数よりも小さくなり、これらの熱膨張差により配線導体4の剥離を生じ易くなる傾向にある。したがって、液晶ポリマー層1の厚みは絶縁フィルム3の厚みの40〜90%としておくことが好ましく、特に多層配線基板6を製作し電子部品7を実装したときの接続信頼性の観点からは50〜85%の範囲としておくことが好ましい。
【0046】
また、液晶ポリマー層1は、被覆層2との密着性を良好とするために、その表面をバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・プラズマ処理・コロナ処理・紫外線処理・薬品処理等の方法を用いて水との接触角が3〜65゜であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2となるように処理しておくことが好ましい。
【0047】
液晶ポリマー層1に対する水の濡れ性は、液晶ポリマー層1の上下面の水素結合可能な活性基の存在する割合と相関関係にあり、液晶ポリマー層1の上下面を水との接触角が3〜65°とすることにより、被覆層2が液晶ポリマー層1の上下面と強い分子間力で結合して、液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性をさらに良好なものとなすことができ、その結果、高温バイアス試験においても両者間で剥離することのない絶縁フィルム3とすることができる。
【0048】
液晶ポリマー層1は、水との接触角が3°より小さいと、被覆層2が液晶ポリマー層1上に極端に広がってしまって位置精度が低下し、絶縁フィルム3を複数枚重ねるとともに加熱・加圧して多層化する際に、絶縁フィルム3の表面に形成される配線導体4や内部に形成される貫通導体5の位置がずれて断線し易くなる傾向があり、また、65°を超えると液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性が低下して両者間で剥離し易くなる傾向がある。したがって、液晶ポリマー層1の上下面の水との接触角は3〜65°の範囲としておくことが好ましい。
【0049】
なお、接触角を評価するための水は、JIS K 0050「化学分析方法通則」に規定される蒸留法もしくはイオン交換法によって精製した水、または逆浸透法・拘留法・イオン交換法等を組み合わせた方法によって精製した水を示す。
【0050】
また、液晶ポリマー層1は、表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と被覆層2とが良好に絡み合って結合し、両者の密着をさらに強固なものとするという観点からは、その表面エネルギーを45〜80mJ/m2とすることが好ましい。
【0051】
液晶ポリマー層1の上下面の表面エネルギーが45mJ/m2未満であると、液晶ポリマー層1表面の分子層が十分に活性化されず、被覆層2と良好に絡み合って結合することが困難となる傾向があり、80mJ/m2を超えると液晶ポリマー層1の表面が非常に反応性が高くなって空気中の酸素と反応してその表面に強度の弱い酸化物が形成され、その結果、液晶ポリマー層1と被覆層2との密着性が低下して両者間で剥離し易く成る傾向がある。したがって、液晶ポリマー層1の表面エネルギーを45〜80mJ/m2とすることが好ましい。
【0052】
さらに、液晶ポリマー層1は、その表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとしておくことが好ましい。表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層1の上下面が被覆層2と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層1と被覆層2とがより強固に密着したものとすることができる。
【0053】
なお、算術平均粗さRaは、半田リフローの際に液晶ポリマー層1と被覆層2との剥離を防止するという観点からは0.05μm以上であることが好ましく、表面に被覆層2を形成する際に空気のかみ込みを防止するという観点からは5μm以下であることが好ましい。したがって、液晶ポリマー層1は、その表面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとすることが好ましい。
【0054】
次に、被覆層2は、熱硬化性樹脂から成り、後述する配線導体4を被着形成する際の接着剤の機能を有するとともに、絶縁フィルム3を用いて多層配線基板6を構成する際に、絶縁フィルム3同士を積層する際の接着剤の役目を果たす。
【0055】
このような熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やシアネート樹脂・フェノール樹脂・ポリイミド樹脂・熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂・ビスマレイミドトリアジン樹脂等の加熱により硬化反応する樹脂が用いられ、とりわけ温度サイクル信頼性や配線導体4を接着する際の位置精度の観点からは、アリル変性ポリフェニレンエーテル等の熱硬化性ポリフェニレンエーテルを含有することが好ましい。
【0056】
また、被覆層2は、弾性率を調整するためのゴム成分や熱安定性を改善するための酸化防止剤、耐光性を改善するための紫外線吸収剤等の光安定剤、難燃性を付加するためのハロゲン系もしくはリン酸系の難燃性剤、アンチモン系化合物やホウ酸亜鉛・メタホウ酸バリウム・酸化ジルコニウム等の難燃助剤、潤滑性を改善するための高級脂肪酸や高級脂肪酸エステルや高級脂肪酸金属塩・フルオロカーボン系界面活性剤等の滑剤、熱膨張係数や収縮率を調整したり機械的強度を向上するための酸化アルミニウムや酸化珪素・酸化チタン・酸化バリウム・酸化ストロンチウム・酸化ジルコニウム・酸化カルシウム・ゼオライト・窒化珪素・窒化アルミニウム・炭化珪素・チタン酸カリウム・チタン酸バリウム・チタン酸ストロンチウム・チタン酸カルシウム・ホウ酸アルミニウム・スズ酸バリウム・ジルコン酸バリウム・ジルコン酸ストロンチウム等の充填材、あるいは、充填材との親和性を高めこれらの接合性向上と機械的強度を高めるためのシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤を含有してもよい。
【0057】
特に絶縁フィルム3を積層・加圧して多層配線基板6を形成する際に、被覆層2の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、貫通導体5の位置ずれや被覆層2の厚みばらつきを防止するという観点からは、被覆層2は充填材として10体積%以上の無機絶縁粉末を含有することが好ましい。また、液晶ポリマー層1との接着界面および配線導体4との接着界面での半田リフロー時の剥離を防止するという観点からは、無機絶縁粉末の含有量を70体積%以下とすることが好ましい。したがって、熱硬化性樹脂から成る被覆層2は10〜70体積%の無機絶縁粉末を含有させておくことが好ましい。
【0058】
なお、上記の無機絶縁粉末の形状は、略球状・針状・フレーク状等があり、充填性や熱膨張係数および収縮率の均一性の観点からは、粒子径が0.1〜2μmであって、形状は略球状であることが好ましい。
【0059】
このような絶縁フィルム3は、例えば粒径が0.1〜2μm程度の酸化珪素等の無機絶縁粉末に、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂と溶剤・可塑剤・分散剤等を添加して得たペーストを、プラズマ処理により水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2となるように表面処理した、融点が230〜420℃の液晶ポリマー層1の上下面に従来周知のドクタブレード法等のシート成型法を採用して被覆層2を形成した後、あるいは上記のペースト中に液晶ポリマー層1を浸漬し垂直に引き上げることによって液晶ポリマー層1の表面に被覆層2を形成した後、これを60〜100℃の温度で5分〜3時間加熱・乾燥することにより製作される。
【0060】
なお、絶縁フィルム3の厚みは絶縁信頼性を確保するという観点からは10〜300μmであることが好ましく、また、高耐熱性・低吸湿性・高寸法安定性を確保するという観点からは液晶ポリマー層1の厚みを絶縁フィルム3の厚みの40〜90%の範囲としておくことが好ましい。
【0061】
また、本発明の多層配線基板6は、上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体4が配設された絶縁フィルム3を複数積層して成るとともに、この絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4間を絶縁フィルム3に形成された貫通導体5を介して電気的に接続することにより形成されている。
【0062】
配線導体4は、その厚みが2〜30μmで銅・金等の良導電性の金属箔から成り、多層配線基板6に搭載される電子部品7を外部電気回路(図示せず)に電気的に接続する機能を有する。
【0063】
このような配線導体4は、絶縁フィルム3を複数積層する際、配線導体4の周囲にボイドが発生するのを防止するという観点からは、図3の要部拡大断面図に示すように、被覆層2に少なくとも配線導体4の表面と被覆層2の表面とが平坦となるように埋設されていることが好ましい。また、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%としておくと、配線導体4周囲の被覆層2の樹脂盛り上がりを生じさせず平坦化することができるとともに配線導体4と被覆層2の間に挟まれる空気の排出を容易にして気泡の巻き込みを防止することができる。なお、乾燥状態での気孔率が40体積%を超えると、複数積層した絶縁フィルム3を加圧・加熱硬化した後に被覆層2内に気孔が残存し、この気孔が空気中の水分を吸着して絶縁性が低下してしまうおそれがあるので、被覆層2の乾燥状態での気孔率を3〜40体積%の範囲としておくことが好ましい。
【0064】
このような被覆層2の乾燥状態での気孔率は、被覆層2を液晶ポリマー層1の表面上に塗布し乾燥する際に、乾燥温度や昇温速度等の乾燥条件を適宜調整することにより所望の値とすることができる。
【0065】
さらに、絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることが好ましい。絶縁フィルム3に配設された配線導体4の幅方向の断面形状を、絶縁フィルム3側の底辺の長さが対向する底辺の長さよりも短い台形状とするとともに、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95〜150°とすることにより、配線導体4を被覆層2に埋設する際に、配線導体4を被覆層2に容易に埋設して配線導体4を埋設した後の被覆層2表面をほぼ平坦にすることができ、積層の際に空気をかみ込んで絶縁性を低下させることのない多層配線基板6とすることができる。なお、気泡をかみ込むことなく埋設するという観点からは、絶縁フィルム3側の底辺と側辺との成す角度を95°以上とすることが好ましく、配線導体2を微細化するという観点からは150°以下とすることが好ましい。
【0066】
また、絶縁フィルム3の層間において、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1との間に位置する被覆層2の厚みx(μm)が、上下の液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μm(ただし、8μm≦T≦70μm、1μm≦t≦32μm)であることが好ましい。
【0067】
液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1間の熱硬化性樹脂から成る被覆層2の厚みx(μm)を3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmとすることにより、配線導体4の長さの短い底辺と液晶ポリマー層1間の距離および配線導体4の長さの長い底辺と隣接する液晶ポリマー層1間の距離の差をt(μm)未満と小さくすることができ、被覆層2の厚みが大きく異なることから生じる多層配線基板6の反りを防止することができる。したがって、配線導体4の台形状の上底側表面と液晶ポリマー層1の間に位置する、被覆層2の厚みx(μm)を、液晶ポリマー層1間の距離をT(μm)、配線導体4の厚みをt(μm)としたときに、3μm≦0.5T−t≦x≦0.5T≦35μmの範囲とすることが好ましい。
【0068】
このような配線導体4は、絶縁フィルム3となる前駆体シートに、公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法によりパターン形成した、例えば銅から成る金属箔を転写法等により被着形成することにより形成される。先ず、支持体と成るフィルム上に銅から成る金属箔を接着剤を介して接着した金属箔転写用フィルムを用意し、次に、フィルム上の金属箔を公知のフォトレジストを用いたサブトラクティブ法を使用してパターン状にエッチングする。この時、パターンの表面側の側面は、フィルム側の側面に較べてエッチング液に接する時間が長いためにエッチングされやすく、パターンの幅方向の断面形状を台形状とすることができる。なお、台形の形状は、エッチング液の濃度やエッチング時間を調整することにより短い底辺と側辺とのなす角度を95〜150°の台形状とすることができる。
【0069】
そして、この金属箔転写用フィルムを絶縁フィルム3と成る前駆体シートに積層し、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスした後、支持体と成るフィルムを剥離除去して金属箔を絶縁フィルム3と成る前駆体シート表面に転写させることにより、台形状の上底側が被覆層2に埋設された配線導体4を形成することができる。
【0070】
なお、配線導体4の長さの短い底辺と対向する液晶ポリマー層1間の被覆層2の厚みx(μm)は、金属箔転写時のホットプレスの圧力を調整することにより所望の範囲とすることができる。また、配線導体4は被覆層2との密着性を高めるためにその表面にバフ研磨・ブラスト研磨・ブラシ研磨・薬品処理等の処理で表面を粗化しておくことが好ましい。
【0071】
また、絶縁フィルム3には、直径が20〜150μm程度の貫通導体5が形成されている。貫通導体5は、絶縁フィルム3を挟んで上下に位置する配線導体4を電気的に接続する機能を有し、絶縁フィルム3にレーザにより穿設加工を施すことにより貫通孔を形成した後、この貫通孔に銅・銀・金・半田等から成る導電性ペーストを従来周知のスクリーン印刷法により埋め込むことにより形成される。
【0072】
本発明の多層配線基板6によれば、絶縁フィルム3を液晶ポリマー層1の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層2を有したものとしたことから、液晶ポリマー層1が高耐熱性・高弾性率・高寸法安定性・低吸湿性であり、ガラスクロスのような強化材を用いなくとも絶縁フィルム3を構成することが可能となり、その結果、レーザによる穿設加工が容易となり微細で均一な貫通孔を形成できる。
【0073】
このような多層配線基板6は、上述したような方法で製作した絶縁フィルム3と成る前駆体シートの所望の位置に貫通導体5を形成した後、パターン形成した例えば銅の金属箔を、温度が100〜200℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で10分〜1時間ホットプレスして転写し、これらを積層して最終的に温度が150〜300℃で圧力が0.5〜10MPaの条件で30分〜24時間ホットプレスして完全硬化させることにより製作される。
【0074】
かくして本発明の多層配線基板6によれば、上記構成の多層配線基板6の上面に形成した配線導体4の一部から成る接続パッド8に半田等の導体バンプ8を介して半導体素子等の電子部品7を電気的に接続するとともに、多層配線基板6の下面に形成した配線導体4の一部から成る接続パッド8に半田等の導体バンプ9を形成することにより配線密度が高く絶縁性に優れた混成集積回路とすることができる。
【0075】
なお、本発明の多層配線基板6は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば、上述の実施例では4層の絶縁フィルム3を積層することによって多層配線基板6を製作したが、2層や3層、あるいは5層以上の絶縁フィルム3を積層して多層配線基板6を製作してもよい。また、本発明の多層配線基板6の上下表面に、1層や2層、あるいは3層以上の有機樹脂を主成分とする絶縁層から成るビルドアップ層やソルダーレジスト層10、あるいは多層配線基板6に電子部品7を搭載後、多層配線基板6と電子部品6との間にアンダーフィル材11を形成してもよい。
【0076】
【実施例】
次に本発明の絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板を、以下の試料を用いて評価した。
(実施例1)
先ず、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂に平均粒径が0.6μmの球状溶融シリカをその含有量が40体積%となるように加え、これに溶剤としてトルエン、さらに有機樹脂の硬化を促進させるための触媒を添加し、1時間混合してワニスを調整した。次に、融点が290℃であるとともに、かつ層方向における熱膨張係数が−3×10−6〜16×10−6/℃の液晶ポリマー層の表面を、真空プラズマ装置を用いて、電圧を27kV、雰囲気をO2およびCF4(ガス流量をそれぞれ50〜200cm3/分の範囲で調整)とし、片面15〜35分の条件でプラズマ処理して、この液晶ポリマー層の上面に上記ワニスをドクターブレード法により塗布し、厚さが30μmの熱硬化性ポリフェニレンエーテル被覆層を成形した。そして、この液晶ポリマー層の下面にも同様に熱硬化性ポリフェニレンエーテル被覆層を成形し、上下面に平行な方向における種々の熱膨張係数と収縮率を有する絶縁フィルムを製作した。
【0077】
さらに、この絶縁フィルムに、UV−YAGレーザにより直径50μmの貫通孔を形成し、この貫通孔に銅粉末と有機バインダを含有する導体ペーストをスクリーン印刷により埋め込むことにより貫通導体を形成した。
【0078】
次に、厚さが9μmで、回路状に形成した銅箔が付いた転写用支持フィルムと、貫通導体が形成された絶縁フィルムとを位置合わせして真空積層機により5MPaの圧力で30秒加圧した後、転写用支持フィルムを剥離して配線導体を絶縁フィルム上に埋設した。最後に、この配線導体が形成された絶縁フィルムを4枚重ね合わせ、3MPaの圧力下で200℃の温度で5時間加熱処理して完全硬化させて多層配線基板を得た(試料No.1〜12)。
【0079】
(比較例)
比較例用として用いた多層配線基板は、まず、表面に銅箔を熱溶融により接着した融点が320℃の液晶ポリマー層にフォトレジストを用いて回路状の配線導体を形成し、次に、UV−YAGレーザにより直径50μmの貫通孔を形成し、さらにこの貫通孔に銅粉末と有機バインダを含有する導体ペーストをスクリーン印刷により埋め込むことにより貫通導体を形成して回路基板を作製した後、これらの回路基板を融点が280℃の液晶ポリマー層を間に挟んで1MPaの圧力下で285℃の温度で5分間加熱プレスすることにより製作した。
【0080】
導通信頼性の評価を行なうためのテスト基板として、その内部に多層配線基板の絶縁層を介して位置する上下2層の配線導体と両者を電気的に接続する貫通導体とでビアチェーンを形成したものとし、導通信頼性の評価は、温度が130℃、相対湿度が85%の条件で高温高湿試験を行ない、導通抵抗の試験前に対する変化率が15%未満を良、15%以上を否とした。表1に導通信頼性結果を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1からは、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数が3×10−6/℃未満の多層配線基板(試料No.1)および熱膨張係数が40×10−6/℃を超える多層配線基板(試料No.6、7)では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が12%以下と小さいが、240時間後で導通抵抗は変化率が16%以上と大きく、導通信頼性にやや劣る傾向があることがわかった。また、比較例の多層配線基板では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が19%と大きく劣化し導通信頼性に劣ることがわかった。
【0083】
それらに対し、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃の多層配線基板(試料No.2〜5)では、いずれも高温高湿試験168時間後で導通抵抗の変化率は10%以下と小さく、さらに240時間後でも導通抵抗の変化率は14%以下と小さく、導通信頼性に優れていた。しかし、熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であっても、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における収縮率が0.15%を超える多層配線基板(試料No.11、12)では、高温高湿試験168時間後でも導通抵抗は変化率が13%以下と小さいが、240時間後で導通抵抗は変化率が16%以上と大きく、導通信頼性にやや劣る傾向があった。
【0084】
一方、絶縁フィルムの層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ、絶縁フィルムの層方向における収縮率が0.15%以下の多層配線基板(試料No.2〜5、8〜10)では、高温高湿試験240時間後でも導通抵抗は変化率が14%以下と小さく、導通信頼性において特に優れていることがわかった。
【0085】
(実施例2)
実施例2用として用いた多層配線基板は、液晶ポリマー層を、その絶縁フィルムに対する厚さが種々の割合になるように変更した以外は、実施例1用の多層配線基板と同様の方法で製作した(試料No.13〜18)。なお、絶縁フィルムの厚さが200μmとなるように、液晶ポリマー層と被覆層の厚さを調整した。また、絶縁フィルムの上下面に平行な方向における熱膨張係数は3×10−6〜40×10−6/℃の範囲にあり、さらに、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の上下面に平行な方向における収縮率は0.15%以下であった。
【0086】
絶縁性の評価を行なうためのテスト基板として、直径が4000μmの円形の導体パターンを多層配線基板内に絶縁層を挟んで対向するように形成し、絶縁信頼性の評価は、試料を温度が130℃、相対湿度が85%の条件で、印加電圧5.5Vの高温バイアス試験を行ない、円形の導体パターン間の絶縁抵抗を測定し、試験前後の変化量を比較することにより評価した。絶縁信頼性の良否の判断は、絶縁抵抗が1.0×108Ω以上を良、1.0×108Ω未満を否とした。表2に絶縁信頼性結果を示す。
【0087】
【表2】
【0088】
表2からは、液晶ポリマー層の絶縁フィルムに対する厚さの割合が40%未満の多層配線基板(試料No.13、14)および90%を超える多層配線基板(試料No.18)では、高温バイアス試験168時間後の絶縁抵抗は良好であるものの、240時間以上では絶縁抵抗が8.8×107Ω以下と劣化する傾向にあることがわかった。
【0089】
それらに対して本発明の多層配線基板である実施例(試料No.15〜17)では、高温バイアス試験240時間後でも2.1×108Ω以上であり、絶縁信頼性において特に優れていることがわかった。
【0090】
(実施例3)
実施例3用として用いた多層配線基板は、表面が種々の水との接触角および表面エネルギーを有する液晶ポリマー層に変更した以外は、実施例1用の多層配線基板と同様の方法で製作した(試料No.19〜27)。
【0091】
なお、密着性の評価は、多層配線基板を種々の温度の半田浴に20秒間浸漬し、これを5回繰り返した後、多層配線基板の外観を観察することにより密着性の評価を行なった。表3に密着性の評価結果を示す。
【0092】
【表3】
【0093】
表3からは、液晶ポリマー層表面の水との接触角が3°未満の多層配線基板(試料No.19)および接触角が65°を超える多層配線基板(試料No.23)では、温度が260℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無かったが、温度条件の厳しい290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返した時点で、液晶ポリマー層と被覆層間で剥がれを生じることにより多層配線基板に膨れ部が発生し、密着性にやや劣る傾向があった。それらに対し、接触角が3〜65°の多層配線基板(試料No.20〜22)では、温度が290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無く、密着性に優れていた。しかし、接触角が3〜65°であっても、液晶ポリマー層の表面エネルギーが45mJ/m2未満の多層配線基板(試料No.24)および80mJ/m2以上の多層配線基板(試料No.27)では、温度が260℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無かったが、温度条件の厳しい290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返した時点で、液晶ポリマー層と被覆層間で剥がれを生じることにより多層配線基板に膨れ部が発生し、密着性にやや劣る傾向があった。一方、接触角が3〜65°であり、かつ、表面エネルギーが45〜80mJ/m2の多層配線基板(試料No.20〜22、25、26)では、温度が290℃の半田浴への浸漬を5回繰り返しても多層配線基板の外観に変化は無く、密着性において特に優れていることがわかった。
【0094】
【発明の効果】
本発明の絶縁フィルムによれば、絶縁フィルムを液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有する構成とし、層方向における熱膨張係数を3×10−6〜40×10−6/℃としたことから、この絶縁フィルムを用いて配線基板を製作した場合、絶縁フィルムの熱膨張係数が配線導体の熱膨張係数に近似し、絶縁フィルムと配線導体との熱膨張差による応力を小さなものとすることができ、その結果、高温高湿下で絶縁フィルムと配線導体間で剥離したり、温度サイクル試験で絶縁フィルムにクラックが発生して配線導体が断線してしまうことがない。また、熱硬化性樹脂の分子が液晶ポリマー分子ほど剛直ではなく、また、規則正しい配向性も示さないことから分子が比較的動きやすく、その結果、絶縁フィルムを多層化した場合においても、絶縁フィルム同士の密着性が良好となり、高温バイアス試験において絶縁フィルム間で剥離して絶縁不良が発生してしまうこともない。さらに、絶縁フィルム表面に配線導体を配設した場合においても、熱硬化性樹脂の分子が配線導体表面の微細な凹部に入り込み十分なアンカー効果を発揮することができ、絶縁フィルムと配線導体との密着性が良好となり、その結果、高温高湿下で両者間で剥離して配線導体が断線してしまうということもない。また、190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の層方向における収縮率を0.15%以下としたことから、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、多層化する際の加熱プレスによって絶縁フィルムの層方向における貫通導体の位置精度が低下したり、貫通導体の直径にばらつきが生じることもなく、その結果、配線導体と貫通導体との導通信頼性に優れた多層配線基板を製作することができる。
【0095】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の厚みを絶縁フィルムの厚みの40〜90%とした場合には、温度サイクル試験等の際に絶縁フィルムに熱応力が印加されたとしても、小さな熱膨張係数と小さな収縮率を有する液晶ポリマー層が大きな熱膨張係数と大きな収縮率を有する被覆層を良好に拘束して絶縁フィルム全体の熱膨張や収縮を小さなものとすることができる。
【0096】
さらに、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層を水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2とした場合には、液晶ポリマー層表面の活性化された比較的熱運動しやすい分子層と熱硬化性樹脂から成る被覆層とが良好に絡み合って結合し、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0097】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、液晶ポリマー層の上下面の算術平均粗さRaを0.05〜5μmとした場合には、液晶ポリマー層の上下面が熱硬化性樹脂から成る被覆層と良好なアンカー効果を有する密着性の良好なものとなり、液晶ポリマー層と被覆層とがより強固に密着した絶縁フィルムとすることができる。
【0098】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、被覆層を粒子径が0.1〜2μmの無機絶縁粉末を10〜70体積%含有するものとした場合には、絶縁フィルムに配線導体および貫通導体を配設するとともに絶縁フィルムを多層化して多層配線基板を製作する場合においても、無機絶縁粉末が被覆層の流動性や加熱プレスによる収縮を抑制し、多層化する際の加熱プレスによって層方向における貫通導体の位置ずれや貫通導体の直径のばらつき、さらには被覆層の厚みばらつきを低減することができ、より寸法安定性に優れた絶縁フィルムとすることができる。
【0099】
さらに、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、無機絶縁粉末の形状を略球状とした場合には、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂へ充填する際に充填性や混練性が良好となり、無機絶縁粉末を熱硬化性樹脂から成る被覆層へ一様に分布させることができ、その結果、被覆層の熱膨張係数や収縮率がより均一な絶縁フィルムとすることができる。
【0100】
また、本発明の絶縁フィルムによれば、上記構成において、熱硬化性樹脂を熱硬化性ポリフェニレンエーテルとした場合には、熱硬化性ポリフェニレンエーテルが耐熱性に優れるとともに寸法安定性に優れることから、温度サイクル信頼性に優れるとともに、配線導体を接着する際の位置精度の良好な絶縁フィルムとすることができる。
【0101】
本発明の多層配線基板によれば、多層配線基板を上記の絶縁フィルムを用いて形成したことから、耐湿性・導通信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の絶縁フィルムの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図3】図2に示す多層配線基板の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・・・・・液晶ポリマー層
2・・・・・・・・被覆層
3・・・・・・・・絶縁フィルム
4・・・・・・・・配線導体
5・・・・・・・・貫通導体
6・・・・・・・・多層配線基板
Claims (8)
- 液晶ポリマー層の上下面に熱硬化性樹脂から成る被覆層を有して成り、層方向における熱膨張係数が3×10−6〜40×10−6/℃であり、かつ190〜270℃の温度で2〜180分間加熱した際の前記層方向における収縮率が0.15%以下であることを特徴とする絶縁フィルム。
- 前記液晶ポリマー層の厚みが40〜90%であることを特徴とする請求項1記載の絶縁フィルム。
- 前記液晶ポリマー層は、水との接触角が3〜65°であって、かつ表面エネルギーが45〜80mJ/m2であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の絶縁フィルム。
- 前記液晶ポリマー層の上下面は算術平均粗さRaが0.05〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の絶縁フィルム。
- 前記被覆層は、粒子径が0.1〜2μmである無機絶縁粉末を10〜70体積%含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の絶縁フィルム。
- 前記無機絶縁粉末は、その形状が略球状であることを特徴とする請求項5記載の絶縁フィルム。
- 前記熱硬化性樹脂が熱硬化性ポリフェニレンエーテルであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の絶縁フィルム。
- 上下面の少なくとも一方の面に金属箔から成る配線導体が配設された請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の絶縁フィルムを複数積層して成るとともに、該絶縁フィルムを挟んで上下に位置する前記配線導体間を前記絶縁フィルムに形成された貫通導体を介して電気的に接続したことを特徴とする多層配線基板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002344736A JP2004179011A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002344736A JP2004179011A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004179011A true JP2004179011A (ja) | 2004-06-24 |
Family
ID=32706092
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002344736A Pending JP2004179011A (ja) | 2002-11-27 | 2002-11-27 | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004179011A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006344570A (ja) * | 2004-08-06 | 2006-12-21 | Mitsubishi Gas Chem Co Inc | 絶縁化超微粉末および高誘電率樹脂複合材料 |
JP2021094734A (ja) * | 2019-12-16 | 2021-06-24 | 昭和電工マテリアルズ株式会社 | 積層フィルム、配線基板を製造する方法、及び半導体装置を製造する方法 |
-
2002
- 2002-11-27 JP JP2002344736A patent/JP2004179011A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006344570A (ja) * | 2004-08-06 | 2006-12-21 | Mitsubishi Gas Chem Co Inc | 絶縁化超微粉末および高誘電率樹脂複合材料 |
JP2021094734A (ja) * | 2019-12-16 | 2021-06-24 | 昭和電工マテリアルズ株式会社 | 積層フィルム、配線基板を製造する方法、及び半導体装置を製造する方法 |
JP7447459B2 (ja) | 2019-12-16 | 2024-03-12 | 株式会社レゾナック | 積層フィルム、配線基板を製造する方法、及び半導体装置を製造する方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2005072328A (ja) | 多層配線基板 | |
JP4462872B2 (ja) | 配線基板及びその製造方法 | |
JP2006191145A (ja) | 多層配線基板 | |
JP3872360B2 (ja) | 多層配線基板 | |
JP4025695B2 (ja) | 保護フィルム付き絶縁層及び配線基板の製造方法 | |
JP2002261453A (ja) | 多層配線基板 | |
JP3694673B2 (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004179011A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP4959066B2 (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2003069237A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP3878832B2 (ja) | 多層配線基板 | |
JP2004082554A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2003347454A (ja) | 多層配線基板 | |
JP2005050877A (ja) | 配線基板 | |
JP2004322482A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2006191146A (ja) | 多層配線基板の製造方法 | |
JP2004055405A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004090238A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004063529A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2003174264A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2002290055A (ja) | 多層配線基板 | |
JP2003062942A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004195807A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004235265A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 | |
JP2004244568A (ja) | 絶縁フィルムおよびこれを用いた多層配線基板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050413 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070822 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20080422 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080819 |