JP2004177928A - 画像形成装置および画像形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】現像器内のトナーの状態を表すパラメータが所定のしきい値に達したときに濃度制御処理を実行する。トナー消費量を表す指標となるドットカウント値(露光ビームにより形成したドット数の積算値)およびトナーの疲労度を表す指標となる現像ローラ回転時間の2つのパラメータそれぞれについて、濃度制御処理実行のきっかけとなるしきい値(破線で示す)を設定している。これらのパラメータの組み合わせにより表される点の軌跡dが各破線と交差するタイミング(▲1▼〜▲6▼)で濃度制御処理を実行する。
【選択図】 図7
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、像担持体に静電潜像を形成するとともに、トナーを収容した現像器に現像バイアスを与えて該トナーを前記像担持体表面に付与することで、前記静電潜像を顕像化してトナー像を形成する画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を応用した複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置では、装置の個体差、経時変化や、温湿度など装置の周囲環境の変化に起因してトナー像の画像濃度が異なることがある。そこで、従来より、画像濃度の安定化を図るための種々の技術が提案されている。このような技術としては、例えば像担持体上にテスト用の小画像(パッチ画像)を形成し、そのパッチ画像の濃度に基づいて、画像の濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化する技術がある。この技術は、濃度制御因子を種々に変更設定しながら像担持体上に所定のトナー像を形成するとともに、像担持体上のトナー像、もしくは該トナー像を中間転写媒体などの他の転写体に転写してなるトナー像をパッチ画像としてその画像濃度を検出し、そのパッチ画像濃度が予め設定された目標濃度と一致するように濃度制御因子を調節することで、所望の画像濃度を得ようとするものである。
【0003】
このような濃度制御因子の調節は、その管理の容易さから、一定の時間毎に、あるいは画像形成枚数が一定枚数に達する毎に実行されるのが一般的である。これに対し、装置特性の経時変化の実態に鑑みより適切な濃度制御を行うべく、画像形成枚数に応じて濃度制御処理(濃度制御因子の最適化処理)を実行する間隔を異ならせているものがある(例えば、特許文献1参照)。すなわち、この画像形成装置では、画像形成枚数が少なく現像器が新しい場合(初期)および画像形成枚数が多く現像器の劣化が進んでいるとみられる場合(性能劣化期)には、画像濃度の変化が激しいことから比較的短いインターバルで濃度制御処理を実行する。その一方、画像形成枚数が中程度で画像濃度の安定している期間(安定期)には、濃度制御処理のインターバルを長くする。こうすることで、画像濃度の安定した画像形成を可能にするとともに、濃度制御処理に伴う時間およびトナーのロスの低減を図っている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−186769号公報(図3)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報でも指摘されているように、画像濃度の経時変化の程度は一様ではなく、装置の稼動状況によって濃度変化の程度は異なっている。したがって、一定時間または一定枚数毎に濃度制御因子の調節を行うのみでは安定した画像濃度を得られない場合がある。すなわち、濃度制御因子の再調節を行うより先に画像濃度が大きく変化してしまったり、濃度制御因子の調節を行うことでその前後において形成される画像の濃度が大きく異なってしまうことがある。
【0006】
また、画像濃度は画像の形成枚数の増加とともに次第に変化してゆくが、その変化の程度には、形成された画像の枚数のみならずその内容も影響を及ぼしている。例えば、塗りつぶしを多用したり、文字数が多いなどの理由により比較的高濃度となっている画像と、細線や少ない文字数で構成された比較的低濃度の画像とでは、画像形成枚数は同じであっても消費されるトナーの量は大きく相違しており、この相違に伴って画像濃度の経時変化の程度も異なったものとなる。
【0007】
したがって、上記公報に記載されたように、画像形成枚数に応じて濃度制御処理の実行タイミングを異ならせるだけでは十分とはいえず、濃度変化の少ない安定した画像を形成するためには、画像濃度の経時変化に即してより適切なタイミングで濃度制御因子の最適化処理を実行することが求められる。
【0008】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、適切なタイミングで濃度制御因子の最適化処理を実行し、画質の良好なトナー像を安定して形成することのできる画像形成装置および画像形成方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するため、静電潜像を担持可能に構成された像担持体と、その内部にトナーを収容し、該トナーを前記像担持体の表面に向けて搬送する現像器と、前記現像器に所定の現像バイアスを与えて前記トナーを前記像担持体に移動させることで前記像担持体表面に形成された前記静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する像形成手段と、前記現像器内に収容されているトナーの状態に関するトナー状態情報を記憶する記憶手段とを備え、装置の稼動状況に応じて前記トナー状態情報を更新記憶するとともに、前記トナー状態情報が所定の制御開始条件に達したときに、パッチ画像としてのトナー像を形成し、該パッチ画像のトナー濃度に基づいて画像濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化することで画像濃度を制御することを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明では、現像器内のトナーの状態を表す情報に基づいて濃度制御因子の最適化を行うようにしている。すなわち、経時的に変化してゆく現像器内のトナーの状態は、随時更新されるトナー状態情報によって把握することができる。そして、そのトナー状態情報が所定の条件、つまり制御開始条件を満たすに至ったときに濃度制御因子の最適化を実行するようにすることで、現像器内のトナーの状態に応じた適切なタイミングで濃度制御因子の調節を行うことができる。その結果、この画像形成装置では、画質の良好な画像を安定して形成することができる。
【0011】
なお、濃度制御因子の最適化処理については、できるだけ頻繁にこれを実行することで画像濃度の変化をより小さく抑えることができる。しかし、その頻度をあまりに多くしすぎると、その処理のためにユーザの待ち時間が増加したり、画像形成に寄与せずに消費されるトナーの量が多くなってランニングコストが上昇するなどの問題を生じる。したがって、濃度制御因子の最適化処理は、上記のような問題が生じず、しかも画像濃度の変化があまり目立たないという2つの要求を満足するタイミングで実行されるのが望ましい。
【0012】
そこで、この制御開始条件は、例えば次のようにして定めることができる。すなわち、トナー状態情報の変化に対する画像濃度の変化を実験等により予め求め、画像濃度の変化がその許容範囲の上限または下限に達するときのトナー状態情報を制御開始条件とすればよい。こうすることにより、画像濃度の変動がその許容範囲を超えてしまうより先に濃度制御因子の最適化が実施されることとなり、画像濃度の変化を所定の範囲内に抑えながら、併せて時間およびトナーのロスを低減することが可能となる。
【0013】
また、前記パッチ画像のトナー濃度が所定の濃度目標値とほぼ一致するように前記濃度制御因子を設定することで前記濃度制御因子を最適化する画像形成装置においては、前記トナー状態情報に応じて前記パッチ画像の濃度目標値を変更設定するようにしてもよい。このように構成された発明では、トナーの状態変化によって形成される画像の濃度も変動することに鑑みて、トナー状態情報に応じてパッチ画像の濃度目標値を変更設定する。つまり、そのときのトナーの状態に応じた濃度目標値が随時設定されるので、トナーの状態変化によらず濃度の安定した画像を形成することができる。
【0014】
そして、例えば、前記濃度目標値が変更されたときに前記濃度制御因子の最適化を実行して、前記パッチ画像のトナー濃度が変更後の濃度目標値とほぼ一致するように前記濃度制御因子を設定するようにする、つまり、トナー状態情報に基づく濃度目標値の変更が必要になったときを制御開始条件とすれば、濃度目標値が変更されて濃度制御因子の再調整が必要となるタイミングで、濃度制御因子の最適化を確実に実行することが可能となる。さらに、濃度目標値の変更がない、あるいはその変化量が所定値以下である場合には濃度制御因子の最適化を実行しないようにすれば、その実行回数は必要最少限に抑えられ、トナーおよび時間のロスを低減することができる。
【0015】
また、トナーの状態は、新品の状態から寿命が尽きるに至るまで、次第に変化してゆくが、その状態変化に対する画像濃度の変化は必ずしも一様ではない。そこで、前記トナー状態情報に対して複数の前記制御開始条件が設定され、しかも、前記トナー状態情報の変化に対する画像濃度の変化率が大きいときには前記変化率が小さいときよりも高い頻度で前記濃度制御因子の最適化が実行されるように、前記複数の制御開始条件が設定されるようにしてもよい。
【0016】
こうすることにより、画像濃度の変化率が大きい状態では比較的高い頻度で濃度制御因子の最適化を実行して画像濃度の変化を効果的に抑制することができる一方、画像濃度の変化が小さい状態ではその頻度を低くしてトナーのロスを抑えることができる。
【0017】
また、所定の表面電位に帯電された前記像担持体の表面を光ビームで露光することにより前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段をさらに備える場合には、前記トナー状態情報として、前記光ビームの露光により前記像担持体の表面に形成したドット数と、前記現像器の稼動時間とを用いるとともに、前記ドット数および前記稼動時間の少なくとも一方が所定のしきい値に達したことを前記制御開始条件とするようにしてもよい。
【0018】
トナー像を形成すべく現像器から像担持体へ移動するトナーの量は、静電潜像として像担持体上に形成したドットの数が多いほど大きくなる。したがって、このドット数からおおよそのトナー消費量を見積もることができる。また、現像器内に残存するトナーの特性は使用につれて次第に変化してゆくが、現像器の稼動時間の長短からその特性変化の程度を推定することができる。そこで、これらの情報から現像器内のトナー残量およびその特性を推定することが可能である。また、これらの情報は装置の使用を重ねるにつれて積算されて増加してゆく性質を有する。したがって、これらの情報に対してそのしきい値を予め定めておき、使用につれて積算されてゆくこれらの情報がそのしきい値に達したときに濃度制御因子の最適化を実行することにより、その実行タイミングは現像器内のトナーの状態に即したものとなる。
【0019】
ここで、前記現像器が、その表面にトナーを担持しながら所定の方向に回転することで前記像担持体との対向位置に該トナーを搬送するトナー担持体を備えている装置においては、前記トナー担持体の回転時間を前記現像器の稼動時間とすることができる。現像器の稼動に伴うトナー特性の経時変化は、主にトナー担持体上へのトナーの付着・剥離が繰り返されることによって起こるものである。したがって、トナー担持体の回転時間をもって現像器の稼動時間を表すことで、トナーの状態をより正確に反映したトナー状態情報とすることができる。
【0020】
また、複数のトナー状態情報の各々について濃度目標値を対応させた目標値対応情報を予め設定しておき、装置の稼動状況に応じたトナー状態情報が所定のしきい値に達したときに、該トナー状態情報に対応する濃度目標値に変更設定してもよい。ところで、濃度目標値が全く変動しない、あるいは変動値が小さい場合には、濃度変動は小さい。したがって、これらのタイミングでの濃度制御因子の最適化(濃度制御処理)を省いたとしても、画像濃度の変動はほとんど無視できる程度である。また、これを省くことで、トナー消費量が抑えられ、現像器寿命の延長やユーザの待ち時間の低減などを図ることが可能となる。したがって、前記しきい値に達したときの該トナー状態情報に対応する濃度目標値と、前記しきい値に達する前の濃度目標値との差が所定の変動値以上であることを前記制御開始条件とすることができる。また、装置の稼動状況に応じたトナー状態情報が所定のしきい値に達したとしても、前記しきい値に達したときの該トナー状態情報に対応する濃度目標値と、前記しきい値に達する前の濃度目標値との差が所定の変動値未満であるときには、濃度制御因子の最適化を行わないようにすることもできる。なお、その変動値としては、例えば光学濃度で0.03以下に設定することができる。
【0021】
また、互いに異なる複数色のトナーを用いてカラー画像を形成し、また前記複数色のうちのブラック色のトナーを用いて単色画像を形成する画像形成装置では、前記ブラック色についての前記目標値対応情報と、前記ブラック色以外の前記目標値対応情報とが互いに相違するように構成することができる。これは、ブラック色のトナー状態の変動に伴う濃度変動が、それ以外の色のトナー状態の変動に伴う濃度変動と相違することに起因する。このように色毎に前記目標値対応情報を設定することで、より適正な濃度目標値に変更設定することができる。その結果、濃度制御因子の最適化をより適正なタイミングで行うことができる。
【0022】
また、互いに異なる複数色のトナーを用いてカラー画像を形成する画像形成装置においては、前記複数色のうち最も選択消費が激しい色を基準色として前記目標値対応情報を予め設定する一方、その他の色の前記目標値対応情報を前記基準色の前記目標値対応情報と一致させるように構成してもよい。このように選択消費が最も激しい色を基準に目標値対応情報を設定することで濃度制御因子の最適化をより適正なタイミングで行うことができる。
【0023】
また、このような画像形成装置では、前記現像器内に収容された前記トナーの初期状態に応じて前記制御開始条件を変更設定するようにしてもよい。現像器内に収容されたトナーの特性は現像器の各個体間で同一であるとは限らず、例えば製造上のばらつきのため現像器毎に微妙に異なっていることがあり、これに起因して画像濃度の変化の程度も異なっている。そこで、例えば、濃度変化が大きく出易い傾向のあるトナーを収容した現像器を使用する場合には比較的早いタイミングで濃度制御因子の最適化を実行するようにする一方、濃度変化の出にくいトナーを使用するときにはその実行頻度を減らすというように、トナーの初期状態に応じたタイミングで濃度制御因子の最適化を行うことが可能となる。
【0024】
ここでいう「初期状態」は、現像器にトナーが充填された時点でのトナーの諸特性を指しており、新たに製造された現像器においては製造時に充填されたトナーの特性を表すものであるほか、使用済み現像器にトナーが再充填されて再使用に供される場合には、その再充填されたトナーの特性を表すものである。このようなトナーの初期状態、すなわちその粒径分布や帯電性などの諸特性は、トナーの製造時に実測することで求めることができる。
【0025】
また、この画像形成装置では、前記現像器は、装置本体に対して着脱可能に構成されるとともに、前記記憶手段の少なくとも一部として機能する記憶素子を備えるようにしてもよい。こうすることで、内部のトナー状態に関する情報の管理が容易となり、現像器の消耗状況の管理や交換の際のメンテナンスの便宜を図ることができる。
【0026】
また、この発明にかかる画像形成方法は、像担持体の表面に静電潜像を形成し、トナーを収容する現像器に所定の現像バイアスを与えて前記トナーを前記像担持体に移動させることで前記静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する画像形成方法であって、上記目的を達成するため、装置の稼動状況に応じて、前記現像器内に収容されているトナーの状態に関するトナー状態情報を更新するとともに、前記トナー状態情報が所定の制御開始条件に達したときには、パッチ画像としてのトナー像を形成し、該パッチ画像のトナー濃度に基づいて画像濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化して画像濃度を制御することを特徴としている。
【0027】
このように構成された発明では、上記した画像形成装置と同様に、濃度制御因子の最適化処理の実行タイミングが現像器内のトナーの状態に基づいて決まる。そのため、トナーの状態に応じた適切なタイミングで濃度制御因子の最適化を行うことができ、こうして最適化された条件の下で画像形成を行うことにより、画質の良好なトナー像を安定して形成することが可能である。
【0028】
また、この画像形成方法において、所定の表面電位に帯電された前記像担持体の表面を光ビームで露光することにより前記像担持体の表面に静電潜像を形成する場合には、上記装置と同様に、前記トナー状態情報として、前記光ビームの露光により前記像担持体の表面に形成したドット数と、前記現像器の稼動時間とを用いるとともに、前記ドット数および前記稼動時間の少なくとも一方が所定のしきい値に達したことを前記制御開始条件とするようにしてもよい。こうすることで、現像器内のトナー残量およびその特性に応じた適切なタイミングで濃度制御因子の最適化を行うことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてフルカラー画像を形成したり、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置である。この画像形成装置では、ユーザからの画像形成要求に応じてホストコンピュータなどの外部装置から画像信号がメインコントローラ11に与えられると、このメインコントローラ11からの指令に応じて本発明の「像形成手段」として機能するエンジンコントローラ10がエンジン部EGの各部を制御してシートSに画像信号に対応する画像を形成する。
【0030】
このエンジン部EGでは、感光体2が図1の矢印方向D1に回転自在に設けられている。また、この感光体2の周りにその回転方向D1に沿って、帯電ユニット3、ロータリー現像ユニット4およびクリーニング部5がそれぞれ配置されている。帯電ユニット3は帯電制御部103から帯電バイアスが印加されており、感光体2の外周面を所定の表面電位に均一に帯電させる。
【0031】
そして、この帯電ユニット3によって帯電された感光体2の外周面に向けて露光ユニット6から光ビームLが照射される。この露光ユニット6は、本発明の「露光手段」として機能するものであり、露光制御部102から与えられる制御指令に応じて光ビームLを感光体2上に露光して画像信号に対応する静電潜像を形成する。例えば、ホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介してメインコントローラ11のCPU111に画像信号が与えられると、エンジンコントローラ10のCPU101が露光制御部102に対し所定のタイミングで画像信号に対応した制御信号を出力し、これに応じて露光ユニット6から光ビームLが感光体2上に照射されて、画像信号に対応する静電潜像が感光体2上に形成される。また、必要に応じて後述するパッチ画像を形成する場合には、予め設定された所定パターンのパッチ画像信号に対応した制御信号がCPU101から露光制御部102に与えられ、該パターンに対応する静電潜像が感光体2上に形成される。このように、この実施形態では、感光体2が本発明の「像担持体」として機能する。
【0032】
こうして形成された静電潜像は現像ユニット4によってトナー現像される。すなわち、この実施形態では、現像ユニット4は、軸中心に回転自在に設けられた支持フレーム40、図示を省略する回転駆動部、支持フレーム40に対して着脱自在に構成されてそれぞれの色のトナーを内蔵するイエロー用の現像器4Y、シアン用の現像器4C、マゼンタ用の現像器4M、およびブラック用の現像器4Kを備えている。この現像ユニット4は、図2に示すように、現像器制御部104により制御されている。そして、この現像器制御部104からの制御指令に基づいて、現像ユニット4が回転駆動されるとともにこれらの現像器4Y、4C、4M、4Kが選択的に感光体2と対向する所定の現像位置に位置決めされて、選択された色のトナーを感光体2の表面に付与する。これによって、感光体2上の静電潜像が選択トナー色で顕像化される。なお、図1は、イエロー用の現像器4Yが現像位置に位置決めされた状態を示している。
【0033】
これらの現像器4Y、4C、4M、4Kはいずれも同一構造を有している。したがって、ここでは、現像器4Kの構成について図3を参照しながらさらに詳しく説明するが、その他の現像器4Y、4C、4Mについてもその構造および機能は同じである。
【0034】
図3は、この画像形成装置の現像器を示す断面図である。この現像器4Kでは、その内部にトナーTを収容するハウジング41に供給ローラ43および現像ローラ44が軸着されており、当該現像器4Kが上記した現像位置に位置決めされると、本発明の「トナー担持体」として機能する現像ローラ44が感光体2と当接してまたは所定のギャップを隔てて対向位置決めされるとともに、これらのローラ43、44が本体側に設けられた回転駆動部(図示省略)と係合されて所定の方向に回転する。この現像ローラ44は、後述する現像バイアスを印加されるべく銅、ステンレス、アルミニウム等の金属または合金により円筒状に形成されている。そして、2つのローラ43、44が接触しながら回転することでブラックトナーが現像ローラ44の表面に擦り付けられて所定厚みのトナー層が現像ローラ44表面に形成される。
【0035】
また、この現像器4Kでは、現像ローラ44の表面に形成されるトナー層の厚みを所定厚みに規制するための規制ブレード45が配置されている。この規制ブレード45は、ステンレスやリン青銅などの板状部材451と、板状部材451の先端部に取り付けられたゴムや樹脂部材などの弾性部材452とで構成されている。この板状部材451の後端部はハウジング41に固着されており、現像ローラ44の回転方向D3において、板状部材451の先端部に取り付けられた弾性部材452が板状部材451の後端部よりも上流側に位置するように配設されている。そして、その弾性部材452が現像ローラ44表面に弾性的に当接して現像ローラ44の表面に形成されるトナー層を最終的に所定の厚みに規制する。
【0036】
なお、現像ローラ44表面のトナー層を構成する各トナー粒子は、供給ローラ43、規制ブレード45と摩擦されたことによって帯電しており、ここではトナーが負に帯電するものとして以下説明するが、装置各部の電位を適宜変更することで正に帯電するトナーも使用可能である。
【0037】
このようにして現像ローラ44の表面に形成されたトナー層は、現像ローラ44の回転によって順次、その表面に静電潜像が形成されている感光体2との対向位置に搬送される。そして、現像器制御部104からの現像バイアスが現像ローラ44に印加されると、現像ローラ44上に担持されたトナーは、感光体2の表面各部にその表面電位に応じて部分的に付着し、こうして感光体2上の静電潜像が当該トナー色のトナー像として顕像化される。また、感光体2に移行せず、現像ローラ44に残ったトナーはさらに下流側に搬送され、供給ローラ43によって掻き落とされる。
【0038】
現像ローラ44に与える現像バイアスとしては、直流電圧、もしくは直流電圧に交流電圧を重畳したものを用いることができるが、特に感光体2と現像ローラ44とを離間配置し、両者の間でトナーを飛翔させることでトナー現像を行う非接触現像方式の画像形成装置では、効率よくトナーを飛翔させるために直流電圧に対して正弦波、三角波、矩形波等の交流電圧を重畳した電圧波形とすることが好ましい。このような直流電圧の大きさおよび交流電圧の振幅、周波数、デューティ比等については任意であるが、以下、本明細書においては、現像バイアスが交流成分を有すると否とにかかわらず、その直流成分(平均値)を直流現像バイアスVavgと称することとする。
【0039】
また、図2に示すように、各現像器4Y、4C、4M、4Kには該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの特性などに関するデータを記憶するメモリ91〜94がそれぞれ設けられている。これらのメモリ91〜94は、本発明の「記憶手段」として機能するものである。さらに、各現像器4Y、4C、4M、4Kにはコネクタ49Y、49C、49M、49Kがそれぞれ設けられている。そして、必要に応じて、これらが選択的に本体側に設けられたコネクタ108と接続され、インターフェース105を介してCPU101と各メモリ91〜94との間でデータの送受を行って該現像器に関する消耗品管理等の各種情報の管理を行っている。なお、この実施形態では本体側コネクタ108と各現像器側のコネクタ49K等とが機械的に嵌合することで相互にデータ送受を行っているが、例えば無線通信等の電磁的手段を用いて非接触にてデータ送受を行うようにしてもよい。また、各現像器4Y、4C、4M、4Kに固有のデータを記憶するメモリ91〜94は、電源オフ状態や該現像器が本体から取り外された状態でもそのデータを保存できる不揮発性メモリであることが望ましく、このような不揮発性メモリとしては例えばフラッシュメモリや強誘電体メモリ、EEPROMなどを用いることができる。
【0040】
図1に戻って、装置構成の説明を続ける。上記のようにして現像ユニット4で現像されたトナー像は、一次転写領域TR1で転写ユニット7の中間転写ベルト71上に一次転写される。転写ユニット7は、複数のローラ72〜75に掛け渡された中間転写ベルト71と、ローラ73を回転駆動することで中間転写ベルト71を所定の回転方向D2に回転させる駆動部(図示省略)とを備えている。さらに、中間転写ベルト71を挟んでローラ73と対向する位置には、該ベルト71表面に対して不図示の電磁クラッチにより当接・離間移動可能に構成された二次転写ローラ78が設けられている。そして、カラー画像をシートSに転写する場合には、感光体2上に形成される各色のトナー像を中間転写ベルト71上に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、カセット8から取り出されて中間転写ベルト71と二次転写ローラ78との間の二次転写領域TR2に搬送されてくるシートS上にカラー画像を二次転写する。また、こうしてカラー画像が形成されたシートSは定着ユニット9を経由して装置本体の上面部に設けられた排出トレイ部に搬送される。
【0041】
なお、中間転写ベルト71へトナー像を一次転写した後の感光体2は、不図示の除電手段によりその表面電位がリセットされ、さらに、その表面に残留したトナーがクリーニング部5により除去された後、帯電ユニット3により次の帯電を受ける。
【0042】
また、ローラ75の近傍には、クリーナ76、濃度センサ60および垂直同期センサ77が配置されている。これらのうち、クリーナ76は図示を省略する電磁クラッチによってローラ75に対して近接・離間移動可能となっている。そして、ローラ75側に移動した状態でクリーナ76のブレードがローラ75に掛け渡された中間転写ベルト71の表面に当接し、二次転写後に中間転写ベルト71の外周面に残留付着しているトナーを除去する。また、垂直同期センサ77は、中間転写ベルト71の基準位置を検出するためのセンサであり、中間転写ベルト71の回転駆動に関連して出力される同期信号、つまり垂直同期信号Vsyncを得るための垂直同期センサとして機能する。そして、この装置では、各部の動作タイミングを揃えるとともに各色で形成されるトナー像を正確に重ね合わせるために、装置各部の動作はこの垂直同期信号Vsyncに基づいて制御される。さらに、濃度センサ60は中間転写ベルト71の表面に対向して設けられており、後述するようにして中間転写ベルト71の外周面に形成されるパッチ画像の光学濃度を測定する。
【0043】
なお、図2において、符号113はホストコンピュータなどの外部装置よりインターフェース112を介して与えられた画像を記憶するためにメインコントローラ11に設けられた画像メモリであり、符号106はCPU101が実行する演算プログラムやエンジン部EGを制御するための制御データなどを記憶するためのROM、また符号107はCPU101における演算結果やその他のデータを一時的に記憶するRAMである。
【0044】
このように構成された画像形成装置では、画像濃度の経時変化を抑制して安定した画像を形成するために、所定のタイミングで濃度制御処理を実行している。具体的には、画像濃度に影響を与える濃度制御因子として、現像ローラ44に印加する直流現像バイアスVavgおよび露光ビームLの単位面積あたりのエネルギー(以下、単に「露光エネルギー」という)Eを用い、これらを様々に変化させながら所定パターンのパッチ画像を形成して、その画像濃度が濃度目標値とほぼ一致するような直流現像バイアスVavgおよび露光エネルギーEを求めることで、これらの濃度制御因子を最適化している。この濃度制御処理、つまり濃度制御因子の最適化処理について以下に詳述する。
【0045】
この画像形成装置では、次のようなタイミング:
(a)装置の電源が投入された直後;
(b)先の濃度制御処理から長時間経過しているとき;
(c)露光ビームLにより感光体2上に形成したドット数と現像ローラ44の回転時間とが各現像器毎にカウントされており、これらのカウント値が所定のしきい値に達したとき;
(d)現像器が交換されたとき;
濃度制御処理を実行する。
【0046】
ここで、現像器が交換されると、直ちに濃度制御処理を実行するようにしてもよい。しかしながら、次の点を考慮すると、現像器交換(d)に加えて、さらに所定条件が満足された場合に限って濃度制御処理を実行するようにしてもよい。すなわち、先に取り出されたものと異なる現像器が装着されたとき、現像器の特性ばらつきに伴う画像濃度の変動を抑制するため、濃度制御処理を行う必要がある。そこで、各現像器4Y、4C、4M、4Kに取り付けられたメモリ91〜94に記憶される各種情報、例えば該現像器の製造ロットや使用履歴、内蔵トナーの特性などに関する情報に基づき、装着された現像器が先に装着されていたものと同一か否かを判断する。そして、異なる場合には濃度制御処理を実行することができる。一方、装着された現像器がもともと当該装置本体に装着されていたものである場合には、濃度制御処理は必ずしも必要でない。特に、ユーザによりいったん取り出された現像器がすぐに再装着されたような場合には、濃度制御処理を行う必要がないばかりか、トナーや処理時間の無駄となるので、むしろ再調整をしない方が好ましい。
【0047】
しかし、現像器が取り出された状態で長時間放置されていた場合など、先に濃度調整処理を行ってから長時間が経過している場合には、気温や湿度など装置の周囲環境が大きく変わっている可能性があるので、この場合、装着された現像器がたとえ先に取り出された現像器と同じものであったとしても、濃度制御処理を行うのが好ましい。したがって、これらを踏まえて本実施形態では、次のタイミング:
(d-1)現像器が交換され、しかも取出/装着前後で現像器が異なるとき;
(d-2)取出/装着前後で現像器が同一であっても、前回の濃度制御処理から所定時間だけ経過しているとき;
濃度制御処理を実行している。
【0048】
(e)新品の感光体2が装着されたとき;
ここで、感光体2が交換された場合も、現像器の場合と同様にして、交換前後で感光体が同一であるか否かを判断し、その異同に応じて濃度制御処理の実行タイミングを設定するようにしてもよい。
【0049】
このように、図1の画像形成装置では、種々のタイミングで濃度制御処理が実行されるが、この明細書では、条件(c)について以下に詳述する。
【0050】
図4は画像形成枚数に対する画像濃度の変化を例示する図であり、図5は濃度制御処理を実行するタイミングの設定原理を示す図である。また、図6はドットカウント値と現像ローラ回転時間との関係を示す図であり、図7は濃度制御処理を実行するタイミングを示す図である。
【0051】
この種の画像形成装置では、濃度制御因子を一定としたまま多数枚の画像形成を行うと、画像形成枚数の増加とともに画像濃度も次第に変化してゆく。このような濃度変化が生じる原因の一つは、次のようなものと考えられる。すなわち、現像器内に収容されているトナーは、その粒径や帯電性などの諸特性が一様であることが望ましいが、実際にはある程度のばらつきがあり現像器内には様々な粒径や帯電性を有するトナー粒子が混在している。このようなばらつきを有するトナーを用いて画像形成を行うと、トナーの選択消費、つまり特定の特性を有するトナー粒子ばかりが選択的に消費される一方、他のトナー粒子があまり消費されず現像器内に残るという現象が起こる。その結果、画像形成枚数の増加とともに現像器内のトナー特性の分布の状態が変化し、これに伴って画像濃度も変化してしまう。
【0052】
ここでは、その代表的な例として、図4に示すように、画像形成枚数の増加とともに画像濃度が増加する場合について検討する。通常の画像形成装置における画像形成枚数と画像濃度との間では、図4に示すように、その初期(画像形成枚数が少ないとき)に画像濃度の変動が大きく、画像形成枚数の増加とともに次第にその変動が小さくなるという関係を示すことが一般的である。
【0053】
さらに、印字デューティ、つまり画像1枚分に相当する領域のうち実際にトナーが付着している部分が占める面積の比率が大きいほど初期の濃度変動は顕著となる。これは、画像形成枚数が同じであっても、印字デューティが大きければトナーの消費量が多くなり、現像器内のトナー特性がより急速に変化するからと考えられる。
【0054】
このような画像形成装置において、画像濃度の変化を小さく抑えるためには、画像濃度の変化がその許容範囲を超えてしまう前に新たに濃度制御処理を実行し、濃度制御因子を最適な状態に再調整することが必要である。例えば、図5に示すように、当初の画像濃度が濃度D0である装置では、濃度制御因子の再調整を行わなければ、曲線aに示すように画像濃度は次第に上昇してゆく。しかし、画像濃度がその許容範囲ΔDの上限濃度D1まで上昇するより先に濃度制御因子の再調整を行えば、画像濃度は当初の濃度D0に引き戻される。図5の例では、画像形成枚数が、画像濃度が上限濃度D1となる枚数N1、N2に達したときまたはそれより前に濃度制御因子の再調整を行うことで、画像濃度の変化をその許容範囲ΔDの範囲内に抑えることが可能となる。
【0055】
ところで、上記では画像形成枚数と画像濃度との関係について説明したが、この関係は厳密には印字デューティが一定の場合にのみ成り立つ関係である。実際の画像形成装置では、形成される画像毎に印字デューティは異なっており、したがって、濃度制御因子の最適化を行うタイミングを画像形成枚数のみに基づいて決定するのは好ましくない。
【0056】
図6は、現像ローラ回転時間と露光ビームLにより形成したドット数のカウント値との対応関係を示している。ここで、現像ローラ回転時間は、形成した画像ののべ長さに対応しているから、おおよその画像形成枚数を表すものと考えることができる。また、1ドットあたりのトナー付着量がほぼ一定であるとすれば、ドットカウント値はおおよそのトナー消費量を表すものと考えることができる。例えば、印字デューティが5%(文字のみで構成された書類の平均的な印字デューティとされる値)と一定であれば、画像形成枚数とトナー消費量とはほぼ比例する(直線b)。一方、印字デューティがこれより大きく、例えば20%であれば直線の傾きはより大きくなり(直線a)、印字デューティが小さく、例えば1%であれば直線の傾きは小さくなる(直線c)。
【0057】
なお、実際の画像形成動作においては、様々な印字デューティを有する画像が混在しているため、現像ローラ回転時間とドットカウント値との組み合わせを表す点の軌跡はこのような直線関係となるとは限らず、より一般的には複雑な軌跡を描きながら原点から右上方に向かう曲線となる。これらの値は積算値であるから、その軌跡が下方や左方に進むことはあり得ない。ただし、画像信号が無地(何も印刷しない)の画像に対応したものや、いずれかのトナー色を全く使用しないものであった場合には、当該トナー色についてはドットカウント値は増加せず現像ローラ回転時間のみが加算されることとなり、この場合の軌跡は横軸に平行な直線となる。
【0058】
さらに、特に印字デューティが小さい画像を多数枚形成した場合には、現像器内のトナー疲労が問題となる。すなわち、先に述べたように、画像形成に使用されなかった帯電トナーは現像器内に回収されて現像ローラ44から剥離され、再び画像形成に供される。そのため、印字デューティの低い画像では使用されずに回収されるトナーの量が多くなり、このように帯電、剥離を繰り返すことによってトナーが疲労し、その特性が次第に変化してゆく。こうしてトナーの特性が変化するのに伴って、同じ条件で画像形成を行ってもその画像濃度は次第に変化してゆくこととなる。
【0059】
現像器内のトナー量およびその特性の変化は、装置の他の特性における経時変化、例えば感光体2の摩耗による特性変化等と比較してより短いサイクルで生じ、しかもその変化量が大きい。したがって、このようなトナー特性の変化は、画像形成装置における画像濃度の経時変化を引き起こす主要な原因の一つとなっている。
【0060】
以上のことから明らかなように、画像濃度をほぼ一定に保つためには、濃度制御因子の最適化をどのようなタイミングで実行するかがきわめて重要である。また、そのタイミングは、現像器内に残存しているトナーの状態に応じて決められるべきものである。しかしながら、画像形成枚数またはトナー消費量(もしくはトナー残量)のみに基づいてこのようなトナーの状態を精度よく把握することは困難である。そのため、よりトナーの状態を反映した情報に基づいて濃度制御処理の実行タイミングを決定する必要がある。従来の画像形成装置では、必ずしも適切なタイミングで濃度制御処理が行われておらず、その結果、画像濃度の変動が大きくなったり、トナーのロスが大きくなるなどの問題を生じることがあった。
【0061】
上記に鑑みて、この実施形態では、画像形成を行うときには、トナーの消費量を表す指標となる露光ビームLにより形成したドット数と、トナーの疲労度を表す指標となる現像ローラ44の回転時間とをカウントしてRAM107に記憶しておき、CPU101が、これらの値のいずれかが所定のしきい値に達したと判定したときに、後述する濃度制御処理を実行するようにしている。つまり、ドット数をカウントしておくことでおおよそのトナー残量を把握することができ、またトナー残量と現像ローラ回転時間との対応からトナー疲労の程度を把握することができるから、これらの組み合わせに基づいて濃度制御処理の実行タイミングを設定することで、トナーの状態に応じた適切なタイミングで濃度制御処理を行うことが可能となる。
【0062】
具体的には、図7の各破線に示すように、現像ローラ回転時間およびドットカウント値のそれぞれについていくつかのしきい値を予め定めておき、積算されてゆくこれらの値のうちいずれかがそのしきい値に達したときを「制御開始条件」として、この条件が満たされたときに濃度制御処理を実行する。この実施形態では、しきい値を以下のように定めた:現像ローラ回転時間については、1325(単位sec、以下同じ)、3975および6625;ドットカウント値については、1000000、2000000および6666666。
【0063】
このうち、現像ローラ回転時間のしきい値は、A4版用紙で連続印刷を行ったときの画像形成枚数に換算してそれぞれ1000枚、3000枚、5000枚に相当する値である。しかし、上記したように、現像器内のトナーの状態をより正確に反映しているのは現像ローラ回転時間であるから、このように画像形成枚数でなく現像ローラ回転時間で濃度制御処理の実行タイミングを管理することで、よりトナーの状態に応じた適切なタイミングでの濃度制御処理を行うことができる。
【0064】
また、この画像形成装置では、1ドットあたりの平均的なトナー消費量は約0.015mgである。すなわち、上記したドットカウント値のしきい値は、トナー消費量に換算してそれぞれ15g、30gおよび100gに相当する値として定めたものである。この数値には、トナー像を形成するトナーのほか、飛散やカブリにより消費されるトナーの量も算入されている。
【0065】
なお、図4に示したように、画像濃度の変動は現像器の使用初期に大きく、次第にその変動は小さくなる。そこで、上記しきい値は、図7に示すように、現像ローラ回転時間またはドットカウント値が小さいときには比較的小刻みとなる一方、これらの値が大きくなるにつれてその刻みが粗くなるように設定している。つまり、現像器の使用初期で濃度変動が大きいときには比較的高い頻度で濃度制御処理が実行されるのに対し、濃度変動が小さくなればその頻度が低下するように構成されている。このように、画像濃度の変動の程度に応じて濃度制御処理の開始条件となるしきい値の刻みを変えることによって、より適切なタイミングで濃度制御処理を実行し、画像濃度の安定とトナーロスの低減との両立を図ることができる。
【0066】
また、トナー残量が極端に少なくなったり、その特性が極端に低下してしまうと画像品質は急速に劣化する。そこで、この実施形態では、ドットカウント値がトナー消費量180gに相当する値120000000、または、現像ローラ回転時間が画像形成枚数8000枚に相当する値10600secに達したときには、CPU101が当該現像器の寿命が尽きたと判断し、図示を省略する表示部にトナーエンドを知らせる旨のメッセージを表示して、ユーザに当該現像器の交換を促すようにしている。
【0067】
これらトナーの状態を表す情報、すなわち本発明の「トナー状態情報」としての現像ローラ回転時間およびドットカウント値については、エンジンコントローラ10に設けられたRAM107に各現像器毎に個別に記憶しておき、必要に応じて行われるCPU101からのアクセスによって随時更新、読み出しが行われる。すなわち、この実施形態においては、RAM107が本発明の「記憶手段」として機能している。
【0068】
また、現像器交換の際には、現像器が取り外されるのに先立って各現像器4Y、4C、4M、4Kに設けられたメモリ91〜94にこれらの情報を書き込む一方、新たな現像器が装着されたときにはこれらのメモリに記憶された情報を読み出して用いることで、使用途中の現像器をいったん取り外して再度取り付けたり、他の装置に取り付けたりした場合でも当該現像器の使用履歴を適切に管理することができる。
【0069】
以上のように構成しているので、現像ローラ回転時間およびドットカウント値の組み合わせが例えば図7の曲線dに示すように推移した場合を考えると、この画像形成装置では、電源投入直後に実行されるもの以外に、しきい値を示す各破線と曲線dとの交点に相当する符号▲1▼〜▲6▼のそれぞれに対応するタイミングで濃度制御処理が実行される。そのため、現像器内のトナーの状態の変化に対応して適切なタイミングで濃度制御処理を行うことが可能となっている。
【0070】
図8はこの実施形態における濃度制御処理を示すフローチャートであり、図9は図8の処理において参照されるルックアップテーブルの例を示す図である。以下に、上記のようなタイミングで行う濃度制御処理の動作について、図8および図9を参照しつつ説明する。この濃度制御処理では、各トナー色毎に、現像器内に残存するトナーの特性に応じてパッチ画像の濃度目標値を設定するとともに、パッチ画像を形成してその濃度を検出し、その検出結果と設定した濃度目標値とに基づいて濃度制御因子の最適化を行っている。ここでは、その一例としてブラックトナー色での濃度制御処理について説明するが、他のトナー色についても同様の処理を行っている。
【0071】
この画像形成装置では、トナー製造上のばらつきに起因して、現像器内のトナーの諸特性、すなわち粒径分布や帯電性などが現像器の各個体毎に微妙に異なっていることに鑑み、製造段階でトナーの初期特性を実測し、これをいくつかのタイプに分類して各現像器に付している。ここでは、現像器内に充填されたトナーがどのタイプに該当しているかを示す情報を「トナー個性情報」と称する。このようなトナー特性のばらつきは、異なる製造設備で同一仕様にて製造されたトナー間で相互に異なるのはもちろん、同一の設備で製造されたものであってもその製造ロットによって異なる場合もある。
【0072】
このトナー個性情報は、トナーが現像器4Kに充填されたときに現像器内のメモリ94に書き込まれる。そして、当該現像器4Kが現像ユニット4に装着されたときにエンジンコントローラ10のCPU101がこの情報を読み出すことにより当該トナーの初期特性を把握することが可能となり、この初期特性に応じて装置各部の動作条件を設定することによって、トナーの製造ばらつきにかかわらず、より画質の優れた画像を安定して形成することができるようにしている。このように、この実施形態では、メモリ91〜94が本発明の「記憶素子」として機能している。
【0073】
より具体的には、この画像形成装置では、図9に例示するように、現像ローラ回転時間とドットカウント値に応じてパッチ画像の濃度目標値を設定するためのルックアップテーブルをROM106内に有しており、このテーブルをトナーのタイプ毎に用意しておくとともに、トナー個性情報に基づきそれらの中から1つを選択して用いることで、トナータイプに応じた濃度目標値が設定される。図9(a)は、「タイプ0」に該当するブラックトナーに対して定められた、後述する高濃度パッチ画像の濃度目標値を示しており、図9(b)は同じトナーにおいて後述する低濃度パッチ画像の濃度目標値を示している。また、この濃度目標値は、そのトナー色における最大濃度が1となるように正規化された値である。
【0074】
ここで、パッチ画像の濃度目標値を現像ローラ回転時間およびドットカウント値によって変更するのは以下の理由による。すなわち、後述するように、パッチ画像としてのトナー像の濃度は、中間転写ベルト71上に担持された状態で測定される。そのため、こうして測定されたトナー像の濃度と、最終的にシートS上に転写された画像の濃度とは若干のずれがある。ここで、トナーが選択消費されることによって現像器4K内のトナーの粒径分布が経時的に変化すると、トナー像を構成するトナーの粒径も変化するから、上記したずれ量は現像器4K内のトナーの状態によって変化することとなる。そこで、このずれを補正すべく、この実施形態では、現像ローラ回転時間およびドットカウント値から現像器内の残存トナーの状態を推定し、それに基づいてパッチ画像の濃度目標値を変えるようにしている。すなわち、同図に示すように、ルックアップテーブルには、現像ローラ回転時間およびドットカウント値(この実施形態では、これらが本発明の「トナー状態情報」に相当する)の各々について濃度目標値が対応して予め設定されており、このルックアップテーブルが本発明の「目標値対応情報」として機能している。もちろん、テーブル形式ではなく、関数形式で目標値対応情報を予め設定するようにしてもよいことは言うまでもない。この点については、後で説明する図13のルックアップテーブルについても全く同様である。
【0075】
この濃度目標値を変更する区切りは、濃度制御開始条件である現像ローラ回転時間、ドットカウント値のしきい値と一致するようにしている。そのため、これらの値がしきい値に達する度毎に、そのときのトナーの状態に応じた濃度目標値が新たに設定され、その濃度目標値に基づいて濃度制御因子の最適化が行われることとなる。ただし、図9のテーブルにおいては、互いに隣り合う欄の間で濃度目標値が同じ場合があり、この場合には新たに設定された濃度目標値は設定前の値と同一となる。
【0076】
この濃度制御処理では、図8に示すように、まず現像器4Kに付されたトナー個性情報に応じて1つのルックアップテーブルを選択し(ステップS1)、トナー状態情報、すなわち、その時点での現像ローラ回転時間とドットカウント値に基づいてそのテーブルを参照し、そのときの濃度目標値を設定する(ステップS2)。例えば、現像ローラ回転時間が2000sec、ドットカウント値が1500000カウントであれば、これらの組み合わせに相当する値、つまり高濃度パッチ画像について0.984、低濃度パッチ画像について0.181がこの場合の濃度目標値である。
【0077】
そして、露光エネルギーEを一定に保ちながら、直流現像バイアスVavgを多段階に変更設定しながら、各現像バイアスで、高濃度パッチ画像として例えばベタ画像を形成する(ステップS3)。こうして形成され中間転写ベルト71に転写されたパッチ画像が中間転写ベルト71の移動によって搬送され、濃度センサ60との対向位置に到達するタイミングで、各パッチ画像の光学濃度を濃度センサ60により検出する(ステップS4)。
【0078】
このようにして各現像バイアスでのパッチ画像の濃度がそれぞれ求まると、その検出結果と先に求めた濃度目標値とに基づき直流現像バイアスVavgの最適値を求める(ステップS5)。ここでは、例えば濃度目標値に最も近い濃度が得られたバイアス値をその最適値としてもよいし、また、検出結果から直流現像バイアスVavgと画像濃度との相関を求め、それに基づいて画像濃度が濃度目標値と一致するようなバイアス値を算出するようにしてもよい。
【0079】
こうして直流現像バイアスVavgの最適値が求まれば、次に露光エネルギーEの最適値を求める。まず、直流現像バイアスVavgを今求めた最適値に設定し(ステップS6)、露光エネルギーEを多段階に変更設定しながら、各エネルギーで、低濃度パッチ画像として例えば1オン10オフの細線画像を形成する(ステップS7)。そして、上記と同様にして、各パッチ画像の濃度を濃度センサ60により検出し(ステップS8)、その検出結果と先に求めた濃度目標値とに基づき露光エネルギーEの最適値を求める(ステップS9)。
【0080】
こうして求めた直流現像バイアスVavgおよび露光エネルギーEの最適値については、エンジンコントローラ10のRAM107に記憶しておき、これ以後ブラック色での画像形成を行う際にはこの値を呼び出し、これに基づいて直流現像バイアスVavgおよび露光エネルギーEを設定し、画像形成を行うことにより、画質の優れた画像を形成することができる。
【0081】
そして、このような濃度制御処理を、現像ローラ回転時間およびドットカウント値の変化に応じて適時実行することにより、画像濃度の変化が少なく安定した画像形成を行うことができる。
【0082】
上記のように構成された画像形成装置において、本発明の効果を検証すべく、多数枚の画像を連続して形成したときの画像濃度の変化を調べた。その結果の一例として、ブラックトナーを用いてベタ画像を形成したときの画像濃度変化を図10および図11に示す。
【0083】
図10は濃度制御処理を実施せず各印字デューティで画像形成を行ったときの画像濃度の変化を示すグラフである。また、図11は本発明による濃度制御処理を実施した場合および実施しない場合での画像濃度の変化を示すグラフである。これらの図において、縦軸の画像濃度は、最終的にシートS上に転写・定着された画像での光学濃度(OD値)でプロットしている。
【0084】
濃度制御処理を実施しない場合には、図10に示すように、ドットカウント値の増加とともにシート上OD値は当初急激に上昇し、その後上昇率は次第に小さくなってゆく。また、当初の濃度変化は印字デューティによって異なり、印字デューティが大きいほど大きくなっている。このような濃度変化の傾向は、現像ローラ回転時間を横軸としてプロットしても同様である。このように、濃度制御処理を行わなければ、画像濃度は経時的に大きく変化することとなる。
【0085】
次に、印字デューティを一定(例えば5%)としたときの、本発明による濃度制御処理の実施の有無による画像濃度の変化を比較する。図11の曲線eは、図10における印字デューティ5%の曲線に対応しており、濃度制御処理を実施しないときの画像濃度変化である。一方、本発明による濃度制御処理を実施すると、図11の曲線fに示すように、濃度変化がある程度以上に大きくならないうちに濃度制御処理が実行されて濃度制御因子が再調整されており、画像濃度の変化は一定範囲内に抑えられている。なお、図示を省略するものの、印字デューティを種々に変化させて同様の実験を行い、そのいずれの場合においても、上記のような濃度制御処理を実行することで画像濃度の変化を所定範囲内に抑えられることが確認された。
【0086】
図12は、濃度制御開始条件の他の設定方法を説明するチャートである。先に述べたように、現像器内のトナーの状態は現像ローラ回転時間およびドットカウント値から推定することができ、上記実施形態ではこれらの値のいずれかが、それぞれについて独立に設けられたしきい値に達したときに濃度制御処理を開始するようにしている。しかし、より厳密には、トナーの状態はこれら2つの情報の組み合わせとして表される。したがって、濃度制御開始条件はこれらの組み合わせに基づいて定めることが好ましい。
【0087】
例えば、現像ローラ回転時間とドットカウント値との組み合わせから得られる画像濃度を予め実験的に測定し、図12に示すように、(現像ローラ回転時間,ドットカウント値)で表される座標空間を、ほぼ同じ画像濃度を得られる組み合わせが同一領域に属するような複数の領域に区分しておく。そして、現在の現像ローラ回転時間およびドットカウント値に対応する点Qがこれらの領域間の境界線に達したときに濃度制御処理を開始するようにすれば、上記要求が達成される。ただし、このような判断を行うと処理が複雑となり、またより多くのメモリが必要となり装置コストの上昇を招く。したがって、例えば、画質に対する要求のより厳しい装置においては図12のチャートに基づいて濃度制御処理を実行する一方、より簡易的な装置では図7のしきい値に基づいて濃度制御処理を実行するというように、装置構成やその仕様に応じて適宜使い分けることが望ましい。
【0088】
なお、図12の括弧内に記した数字は、各領域における濃度目標値の例を示したものであり、図9(a)のテーブルの数値に対応するものである。このように、このチャートに基づいて濃度制御処理を実行するタイミングを設定する場合においても、そのときのトナーの状態に応じて濃度目標値を変更設定するようにすれば、画像濃度の変動をより小さく抑えることが可能である。
【0089】
以上のように、この実施形態では、各現像器毎に、現像ローラ回転時間と形成したドット数とをカウントしておき、これらのカウント値の組み合わせに基づいて、濃度制御因子を最適化するための濃度制御処理を実行している。これらのカウント値は当該現像器内に残存するトナーの状態を反映するものである。したがって、これらの値に基づいて濃度制御処理の実行タイミングを管理することにより、トナーの状態変化に伴う画像濃度の変化に対応して適切なタイミングで濃度制御処理を実行することができる。その結果、この画像形成装置では、画像濃度の変動を効果的に抑制し、画質の良好なトナー像を安定して形成することができる。
【0090】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記した実施形態では、濃度制御因子として直流現像バイアスVavgおよ露光エネルギーEを用いているが、画像濃度に影響を与える濃度制御因子としてはこれ以外にも、現像バイアスの交流振幅、帯電バイアス、現像ローラ44によるトナー搬送量などのパラメータが公知であり、本発明はこれらのパラメータを濃度制御因子とする画像形成装置に対しても適用が可能である。
【0091】
また、例えば、上記実施形態では、ドットカウント値および現像ローラ回転時間の値によって濃度制御処理を実行するタイミングを規定しているが、トナー状態情報としてはこれに限定されるものではなく、各時点での現像器内のトナーの状態を表す他の情報を用いてもよい。例えば、外部から与えられる画像信号を解析してトナー消費量を算出したり、現像器内のトナー残量を検知するトナー残量センサを備えた装置ではその検出結果からトナー残量を求め、こうして求めたトナー量をトナー状態情報の一つとして用いるようにしてもよい。また現像ローラ回転時間の代わりに、現像ローラ回転数を積算するようにしてもよい。
【0092】
また、濃度制御処理実行のきっかけとなるドットカウント値および現像ローラ回転時間のしきい値については、上記した例に限定するものではなく、使用するトナーの特性等に応じて適宜変更してよいことはいうまでもない。
【0093】
例えば、上記した実施形態では、図9に例示するルックアップテーブルに基づいて、(現像ローラ回転時間,ドットカウント値)の組み合わせで表されるトナーの状態が1つの欄から他の欄に移行するときには濃度目標値の変更があるか否かにかかわらず濃度制御処理を実行するようにしている。しかし、例えば図9(a)において、現像ローラ回転時間が「〜3975」の列に属する各欄のうち、ドットカウント値が「〜6666666」の欄と「〜12000000」の欄とでは、その濃度目標値はいずれも0.982と共通である。したがって、ドットカウント値がしきい値6666666を超えたとしても、現像ローラ回転時間が「〜3975」の列に属している限り濃度目標値の変更はない。濃度目標値の変更がないのは予想される画像濃度の変動も小さいと考えられるからであり(図4参照)、したがって、濃度制御処理の実行タイミングを次のようにしてもよい。
【0094】
すなわち、ドットカウント値あるいは現像ローラ回転時間がしきい値に達したとき、図9に例示するルックアップテーブルを参照して濃度目標値の変更があるか否かを判断し、その変更がある場合には上記実施形態と同様に濃度制御処理を実行する一方、変更のない場合またはその変化量が小さい(例えば0.001未満)場合には濃度制御処理を実行しないようにしてもよい。つまり、この変化量が本発明の「所定の変動値」に相当するものである。なお、その「所定の変動値」については、上記した0.001に限定されるものではなく、任意である。例えば後で詳述する図13に示すルックアップテーブルを用いた実施形態では、「所定の変動値」として、光学濃度(OD値)で0.003や0.002に設定されている。
【0095】
ここで、一例として、(現像ローラ回転時間,ドットカウント値)の組み合わせが図7に示す曲線dのように変化した場合を考えてみる。この場合、図9(a)を参照して、符号▲4▼〜▲6▼で示すタイミングでの濃度目標値の変更がないことから、これらのタイミングでの濃度制御処理が省かれることとなる。ここで、例えば図4に示すように、現像器の使用が進むと画像濃度の変動は少なくなるから、これらのタイミングでの濃度制御処理を省くことによる画像濃度の変動はさほど大きくならない。その一方、濃度制御処理の実行回数を削減することによってトナー消費量が抑えられ、現像器寿命の延長やユーザの待ち時間の低減を図ることが可能となる。
【0096】
また、上記実施形態では、トナーのタイプ毎にルックアップテーブルを用意し、パッチ画像の濃度目標値をトナータイプに合わせて変更するようにしているが、濃度制御処理を実行するタイミングはどのタイプのトナーについても同一としている。これに対して、トナータイプ毎に濃度制御処理の実行タイミングを異ならせるようにしてもよい。すなわち、ドットカウント値または現像ローラ回転時間のしきい値を各トナータイプ毎に個別に設定しておき、このしきい値に基づいて濃度制御処理を実行するタイミングを決めることによって、それぞれのタイプ毎に異なるタイミングで濃度制御処理が実行されるようにしてもよい。
【0097】
こうすることで、互いに異なる特性を有するトナーを選択的に使用して、画像濃度の安定した画像を形成することが可能となる。そのため、当該装置において使用可能なトナーの特性の幅が広くなり、ユーザにとってはトナー品種の選択自由度が高くなる一方、トナー供給者にとってはトナー特性に対する品質要求が緩和され、製造コストの低減や歩留まりの向上を図ることが可能となる。
【0098】
また、しきい値の個数については任意である。トナー色に対応してルックアップテーブルを作成するようにしてもよい。例えば、図13に示すようなルックアップテーブルに基づき以下のようにして濃度制御処理を実行するようにしてもよい。
【0099】
図13はルックアップテーブルの他の例を示す図である。同図(a)は「タイプ0」に該当するブラックトナーに対して定められた高濃度パッチ画像の濃度目標値を示しており、同図(b)は「タイプ0」に該当するマゼンタトナーに対して定められた高濃度パッチ画像の濃度目標値を示している。なお、この濃度目標値は、そのトナー色における最大濃度が1となるように正規化された値である。
【0100】
図9と図13との対比から明らかなように、次の点で大きく相違している。まず、この実施形態ではドットカウント値および現像ローラ回転時間のしきい値の個数を先の実施形態(図9)に比べて多くなっている。つまり、しきい値を増大させることできめ細かい制御が可能となっている。また、この実施形態では、マゼンタトナーは、トナー状態の変動に伴う濃度変動が大きいという特性を有していることから、該マゼンタトナーを基準色としてルックアップを作成している。すなわち、濃度目標値を固定値とした場合に、同図(b)に示すように、濃度変動値が光学濃度(OD値)で0.03を超えるところがしきい値となるように設定している。そして、他のカラー色、つまりイエローおよびシアンについてもマゼンタトナーと同様のルックアップテーブルを設けている。ここで、マゼンタトナーの濃度変動が大きい理由は、他の色に比べてトナーの選択消費が激しいからであると考えられる。なお、この選択消費は特に顔料の種類に依存していると考えられるため、これらの点を考慮してルックアップテーブルの基準色を決めるのが望ましい。
【0101】
一方、ブラックトナーについては、マゼンタトナーに比べてトナー状態の変動に伴う濃度変動が小さいため、同図(a)に示すように、濃度変動値が光学濃度(OD値)で0.02を超えるところがしきい値となるように設定している。このように、この実施形態では、カラー(マゼンタ、イエローおよびシアン)とブラックとでルックアップテーブルを相違させている。なお、ここでは、高濃度用パッチ画像についてのみ図示しているが、低濃度用パッチ画像についても、しきい値および濃度目標値の設定方針は同じである。
【0102】
また、上記のようにしきい値の設定数を増やした場合、濃度制御処理の実行タイミングを次のように制限するのが望ましい。その理由は以下のとおりである。ここで、先の実施形態と同様に、しきい値に達した際に濃度制御処理を無条件に実行すると、しきい値の増大に伴い濃度制御処理の実行頻度が増えてしまい、濃度変動が少ないにもかかわらず濃度制御処理が実行されてしまうという問題がある。また、ドットカウント値や現像ローラ回転時間は各色ごとに相違するのが一般的であり、全色が同じタイミングでしきい値に達することは稀である。したがって、この点からもしきい値に達するたびに濃度制御処理を実行することの弊害は大きい。そこで、特にしきい値の設定数を増やした場合には、ドットカウント値あるいは現像ローラ回転時間がしきい値に達したとき、濃度目標値の変更があるという条件がさらに加わった場合のみ濃度制御処理を実行するのが望ましい。すなわち、たとえドットカウント値あるいは現像ローラ回転時間がしきい値に達したとしても、濃度目標値が変更されていない場合には、光学濃度(OD値)は0.03未満であり、濃度変動は小さい。したがって、これらのタイミングでの濃度制御処理を省いたとしても、画像濃度の変動はほとんど無視できる程度である。また、濃度制御処理を省くことで、トナー消費量が抑えられ、現像器寿命の延長やユーザの待ち時間の低減を図ることが可能となる。
【0103】
なお、上記実施形態では、濃度(高濃度用/低濃度用)、トナー色、トナー個性情報などが相違したとしても、ルックアップテーブルのしきい値は共通させているため、濃度目標値が同一であるにもかかわらず、しきい値を設定する必要がある。しかしながら、ルックアップテーブルにおけるしきい値の共通化は必須事項ではなく、濃度目標値が変わるところをしきい値に設定してもよい。これによって、しきい値の設定数を低減させることができ、ひいてはルックアップテーブルの容量を減らすことができ、メモリの節約に大きく寄与する。
【0104】
また、上記した実施形態は、感光体2上で現像されたトナー像を一時的に担持する中間転写ベルト71を有する画像形成装置であるが、転写ドラムや転写ローラなど他の転写体を有する画像形成装置や、転写体を備えず感光体2上に形成されたトナー像を最終的な転写材であるシートSに直接転写するように構成された画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
【0105】
また、上記した実施形態は、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの4色のトナーを用いてフルカラー画像を形成可能に構成された画像形成装置であるが、使用するトナー色およびその色数はこれに限定されるものでなく任意であり、例えばブラックトナーのみを用いてモノクロ画像を形成する装置に対しても本発明を適用することが可能である。
【0106】
さらに、上記実施形態では、装置外部からの画像信号に基づき画像形成動作を実行するプリンタに本発明を適用しているが、ユーザの画像形成要求、例えばコピーボタンの押動に応じて装置内部で画像信号を作成し、その画像信号に基づき画像形成動作を実行する複写機や、通信回線を介して与えられた画像信号に基づき画像形成動作を実行するファクシミリ装置に対しても本発明を適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる画像形成装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】この画像形成装置の現像器を示す断面図である。
【図4】画像形成枚数に対する画像濃度の変化を例示する図である。
【図5】濃度制御処理を実行するタイミングの設定原理を示す図である。
【図6】ドットカウント値と現像ローラ回転時間との関係を示す図である。
【図7】濃度制御処理を実行するタイミングを示す図である。
【図8】この実施形態における濃度制御処理を示すフローチャートである。
【図9】ルックアップテーブルの例を示す図である。
【図10】各印字デューティでの画像の濃度変化を示すグラフである。
【図11】濃度制御処理を実施した場合の濃度変化を示すグラフである。
【図12】濃度制御開始条件の他の設定方法を説明するチャートである。
【図13】ルックアップテーブルの他の例を示す図である。
【符号の説明】
2…感光体(像担持体)、 4Y,4C,4M,4K…現像器、 6…露光ユニット(露光手段)、 10…エンジンコントローラ(像形成手段)、 44…現像ローラ(トナー担持体)、 91〜94…メモリ(記憶素子)、 107…RAM(記憶手段)
Claims (15)
- 静電潜像を担持可能に構成された像担持体と、
その内部にトナーを収容し、該トナーを前記像担持体の表面に向けて搬送する現像器と、
前記現像器に所定の現像バイアスを与えて前記トナーを前記像担持体に移動させることで前記像担持体表面に形成された前記静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する像形成手段と、
前記現像器内に収容されているトナーの状態に関するトナー状態情報を記憶する記憶手段と
を備え、
装置の稼動状況に応じて前記トナー状態情報を更新記憶するとともに、
前記トナー状態情報が所定の制御開始条件に達したときに、パッチ画像としてのトナー像を形成し、該パッチ画像のトナー濃度に基づいて画像濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化することで画像濃度を制御することを特徴とする画像形成装置。 - 前記パッチ画像のトナー濃度が所定の濃度目標値とほぼ一致するように前記濃度制御因子を設定することで前記濃度制御因子を最適化し、しかも、
前記トナー状態情報に応じて前記濃度目標値を変更設定する請求項1に記載の画像形成装置。 - 前記濃度目標値が変更されたときに、前記濃度制御因子の最適化を実行して、前記パッチ画像のトナー濃度が変更後の濃度目標値とほぼ一致するように前記濃度制御因子を設定する請求項2に記載の画像形成装置。
- 前記トナー状態情報に対して複数の前記制御開始条件が設定されており、しかも、
前記トナー状態情報の変化に対する画像濃度の変化率が大きいときには、前記変化率が小さいときよりも高い頻度で前記濃度制御因子の最適化が実行されるように、前記複数の制御開始条件が設定されている請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。 - 所定の表面電位に帯電された前記像担持体の表面を光ビームで露光することにより前記像担持体の表面に静電潜像を形成する露光手段をさらに備え、
前記トナー状態情報として、前記光ビームの露光により前記像担持体の表面に形成したドット数と、前記現像器の稼動時間とを用いるとともに、前記ドット数および前記稼動時間の少なくとも一方が所定のしきい値に達したことを前記制御開始条件とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。 - 前記現像器は、その表面にトナーを担持しながら所定の方向に回転することで前記像担持体との対向位置に該トナーを搬送するトナー担持体を備えており、
前記トナー担持体の回転時間を前記現像器の稼動時間とする請求項5に記載の画像形成装置。 - 複数のトナー状態情報の各々について濃度目標値を対応させた目標値対応情報が予め設定されており、
装置の稼動状況に応じたトナー状態情報が所定のしきい値に達し、しかも、
前記しきい値に達したときの該トナー状態情報に対応する濃度目標値と、前記しきい値に達する前の濃度目標値との差が所定の変動値以上であることを前記制御開始条件とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。 - 装置の稼動状況に応じたトナー状態情報が所定のしきい値に達したとしても、
前記しきい値に達したときの該トナー状態情報に対応する濃度目標値と、前記しきい値に達する前の濃度目標値との差が所定の変動値未満であるときには、濃度制御因子の最適化を行わない請求項7に記載の画像形成装置。 - 前記変動値は光学濃度で0.03以下である請求項8記載の画像形成装置。
- 互いに異なる複数色のトナーを用いてカラー画像を形成し、また前記複数色のうちブラック色のトナーを用いて単色画像を形成する請求項7ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記ブラック色についての前記目標値対応情報と、前記ブラック色以外の前記目標値対応情報とが互いに相違している画像形成装置。 - 互いに異なる複数色のトナーを用いてカラー画像を形成する請求項7ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記複数色のうち最も選択消費が激しい色を基準色として前記目標値対応情報が予め設定される一方、
その他の色の前記目標値対応情報が前記基準色の前記目標値対応情報と一致している画像形成装置。 - 前記現像器内に収容された前記トナーの初期状態に応じて前記制御開始条件を変更設定する請求項1ないし11のいずれかに記載の画像形成装置。
- 前記現像器は、装置本体に対して着脱可能に構成されるとともに、前記記憶手段の少なくとも一部として機能する記憶素子を備える請求項1ないし12のいずれかに記載の画像形成装置。
- 像担持体の表面に静電潜像を形成し、トナーを収容する現像器に所定の現像バイアスを与えて前記トナーを前記像担持体に移動させることで前記静電潜像をトナーにより顕像化してトナー像を形成する画像形成方法において、
装置の稼動状況に応じて、前記現像器内に収容されているトナーの状態に関するトナー状態情報を更新するとともに、
前記トナー状態情報が所定の制御開始条件に達したときには、パッチ画像としてのトナー像を形成し、該パッチ画像のトナー濃度に基づいて画像濃度に影響を与える濃度制御因子を最適化して画像濃度を制御することを特徴とする画像形成方法。 - 所定の表面電位に帯電された前記像担持体の表面を光ビームで露光することにより前記像担持体の表面に静電潜像を形成する請求項14に記載の画像形成方法において、
前記トナー状態情報として、前記光ビームの露光により前記像担持体の表面に形成したドット数と、前記現像器の稼動時間とを用いるとともに、前記ドット数および前記稼動時間の少なくとも一方が所定のしきい値に達したことを前記制御開始条件とする画像形成方法。
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