JP2004177771A - ポジ型感光性組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質を含み、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー又はビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーのいずれかを含有してなる。
Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、波長700〜1,100nmのレーザー光に露光感応して該感応部がアルカリ現像液に可溶になる赤外波長域レーザー感応性を有するアルカリ可溶性のポジ型感光性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学変化以外の変化によって露光部の現像液に対する溶解度を増大させることによりポジ画像を形成する方法として、ポジ型感光性組成物を波長700〜1,100nmのレーザー光により焼付ける方法が注目されている。例えば特開平10−268512号公報、特開平11−194504号公報、特開平11−223936号公報、特開平11−84657号公報、特開平11−174681号公報、特開平11−231515号公報、WO97/39894、WO98/42507、特開2002−189294等に開示されている。
【0003】
上記の各文献に記載された平版印刷版の塗膜を形成しているポジ型感光性組成物は、赤外吸収色素等の赤外光を吸収して熱に変換する物質と、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂とを主な感光層成分とし、赤外レーザー光露光で発生した熱によって、分子の主鎖又は側鎖の部分が切断されてアルカリ可溶性が一層高まる低分子になるコンフォメーション変化を起こするともに、一部はアブレーション樹脂のコンフォメーション変化等の物理変化を起こして現像液に対する溶解度を増大させるものである。
【0004】
他方、グラビア印刷ロールの製版方法の一つとして、被製版ロールの硫酸銅メッキ面に感光膜を塗布形成しレーザーにより画像を焼き付けてから現像し食刻しレジスト剥離してクロムメッキする、いわゆるエッチング法が行なわれている。従来のエッチング法では、被製版ロールにネガ型の感光膜を塗布し塗布膜を室温で乾固してネガ型感光膜とし、アルゴンイオンレーザーにより焼付けを行なっている。
【0005】
これに対し、ポジ型感光膜を形成して波長700〜1,100nmのレーザー光により焼付けすることはグラビア印刷ロールの製版では行なわれていなかった。
波長700〜1,100nmのレーザー光を高出力できる半導体レーザーやYAGレーザー等を用いポジ型感光膜を用いる高解像度のグラビア製版システムは、実用されておらず、アルゴンイオンレーザーを用いる場合に比べて、装置の小型化、製版作業時の環境光等の面から、その実現が強く望まれている。
アルゴンイオンレーザー光のビーム径と波長700〜1,100nmのレーザー光のビーム径が同じ大きさであるならば、レーザーの解像度は、ネガ型よりもポジ型の方が高解像度になりかつ処理時間が大幅に短縮できる。
又、ポジ型感光性組成物の感光膜を赤外波長域のレーザーでポジ画像を焼き付ける方が、ネガ型感光性組成物の感光膜をアルゴンイオンレーザーでネガ画像を焼き付けるよりもパターンの切れが良い。これは、ポジ型感光性組成物とネガ型感光性組成物との組成の相違によるパターンの切れの差と考えられる。
カナダのクレオサイテックス社の高出力半導体レーザーヘッドは、赤外波長域のレーザーを放射するもので、オフセット印刷機に搭載されポジ型感光性組成物への照射が行なわれ良好な現像を行ない得るものであり世界的に実用されている。
【0006】
そこで、グラビア印刷ロールの製版方法の一つとしてのエッチング法について、ノボラック樹脂とシアニン色素を配合したポジ型感光性組成物の原液を作り、この原液を溶剤で薄めたポジ型感光剤をグラビア用被製版ロールの硫酸銅メッキ面に塗布形成し、クレオサイテックス社の高出力半導体レーザーヘッドを搭載した露光装置(株式会社シンク・ラボラトリー製)により赤外波長域のレーザーを照射してポジ画像を焼き付けてから現像するテストしたところ、感光膜が全面的に離脱し満足なレジスト画像が一つも得られなかった。
【0007】
これに対し、例えば、200φmmの被製版ロールを25r.p.mの低速度で回転させてスパイラルスキャン方式でネガ型感光膜を塗布して液垂れが起こらなくなる時間(約5分)を経過させ、さらに塗布完了から15分経過後に回転を止めた時点で成膜として、レーザーにより画像を焼き付けてから現像すると、問題なく良好なパターンが切れる。
【0008】
そこで、膜面を高温に加熱操作するバーニングを行い密着力を付与することが必要であると考えられた。バーニングを行なう必要があるのは、ポジ型感光性組成物の銅メッキ面又は銅合金メッキ面に対する密着性が乏しいことに起因して造膜されない状態が生じているものと考えられ、造膜後にバーニングを行なうと、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の水素結合を強めて密着性を高められると考えられるからである。
【0009】
又、オフセット印刷版ではバーニングを行なわなくても良好な感光膜が形成されるのに、グラビア版用の被製版ロールへの感光膜の形成にバーニングを行なう必要があるのは、オフセット印刷版では感光膜を形成する基材が薄いアルミニウム板であり密着性が良いのに対して、グラビア版用の被製版ロールでは硫酸銅メッキ面であり硫酸銅メッキ面に対する密着性が極めて悪い相性に起因しているものと考えられた。
【0010】
ところが、前記作成したノボラック樹脂とシアニン色素を配合したポジ型感光性組成物を被製版ロールに塗布し膜面温度が60℃になるように30分間バーニングを行なってからレーザー露光して現像したところ現像が不良となった。
多数回のテストを繰り返した結果、成膜したときのMEK,IPA,PM等の合計の溶剤残留濃度がおよそ6%以上であるとレーザーにより画像を焼き付けることができないことが判明した。
そこで、膜面温度が130℃になるように30分間バーニングを行なったところ、溶剤濃度が2%になったが、非画線部も含め全面的に離脱する現像不良が起きた。
バーニングを行なってもなお現像不良が起きる原因としては、ポジ型感光性組成物の硫酸銅メッキに対する密着性が低過ぎることが考えられた。
【0011】
そこで、ポジ型感光性組成物を使用する場合には、溶剤残留濃度を6%以下にするため、好ましくは3%以下にするため、並びに、必要十分な密着力を付与するために、感光膜の塗布後にバーニングが必要的に行なうこととして、さらに、密着剤としてシランカップリング剤を入れて感光膜の密着力の増大を図った結果、露光・現像がやや良好に行なえるようになった。
具体的には、例えば200φmmの被製版ロールを25r.p.mの低速度で回転させてポジ型感光剤を塗布し、液垂れが生じないように回転を続行して自然乾燥条件下で5分経過させて液垂れが起こらなくなる状態に溶剤が気化した乾燥度合いの感光膜をセットし、その後に、130℃で30分間バーニングしたときの溶剤残留濃度は2%未満であり、レーザーにより画像を焼き付けることができ現像ができた。
【0012】
しかしながら、膜に対する密着性が最良とは言えず露光・現像がやや良好の域から越えなかった。
又、膜面温度を130℃にすると、バーニングとその後の冷却に100分以上の時間を要し、多量の熱エネルギーを必要とし、ランニングコストが高くつき、これでは実用性に乏しいことが分かった。
又、膜面温度を130℃にすると、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の水素結合が強まって現像しにくくなるとともに、シアニン色素に変性を来して感度低下する。
【0013】
グラビア用被製版ロールは、ロール基材がアルミニウムのものと鉄製のものとがあり、その上、ロール径が相違しているとともにロール径が相違すると肉厚が全て異なってくるので、比熱容量の相違によりヒーターで同じ時間だけ加熱しても熱がロール基材へ伝わり膜面温度が常に130℃に加熱されるものではなく様々に異なった温度に加熱されるバラツキが生じるので、温度を下げて比熱容量の問題を無くすことが重要であると考えた。
溶剤濃度を6%以下にするためのバーニングは、溶剤離れが良い組成を選択することにより膜面温度を130℃よりもはるかに低い温度にして行なっても達成できると考えた。
加熱時間を短くしていくテストを行い、膜面のバーニング温度を80℃〜100℃に下げて50分間バーニングしたところ、溶剤濃度が6%以下になったことを確認したが、現像不良という結果になった。原因として、上記のシランカップリング剤では、必要十分な密着力が得られないと結論付けた。
【0014】
次いで、密着剤としてシランカップリング剤に変えて硬化促進剤であるイミダゾールを入れて見たが、シランカップリング剤の場合と特に変わりはなく、膜面のバーニング温度もシランカップリング剤の場合と同じであった。
【0015】
引き続いて、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質からなるポジ型感光性組成物の原液に対して各種密着剤を替えて添加して室温25℃にて硫酸銅メッキロールに感光膜を形成し現像するテストを行なったところ、チタン有機化合物を添加したポジ型感光性組成物の感光膜については、バーニング温度を著しく低下させることができた。
チタン有機化合物を添加したポジ型感光性組成物の感光膜の場合は、バーニング温度が46℃でも良好に成膜できて、感度が良好になり現像が容易に行なえた。
しかし、バーニング処理を行なわないテストでは、良好な成膜ができず現像不良となった。
【0016】
バーニング温度を50℃付近に低下させることができても、バーニングを必要とすることは、バーニング後に冷却を行うことが必要であること、バーニング及びその後の冷却に時間とエネルギーがかかること、装置ラインがバーニング装置の分だけ長くなり、設備費とランニングコストが高くなることが不利となり問題となっている。
又、バーニングを行なうことは、現像時にレジストが薄くなりピンホールが生じる一因になっている。
従って、バーニングを必要としないポジ型感光膜の開発が強く要望されている。
【0017】
硫酸銅メッキ板に上記のバーニングを必要としないポジ型感光剤を塗布し、室温25℃で送風を行なわない自然乾燥条件で15分経過させたときの溶剤残留濃度は11%、25時間経過させたときの溶剤残留濃度は9%であった。45r.p.mで回転する被製版ロールにポジ型感光剤を塗布し10分間経過後に測定した結果では溶剤残留濃度は7%までしか下がらないことが分った。
これでは、ポジ型感光剤の原液に密着性助剤を含ませた改質を行ない、その結果を現像により確認しようにも、溶剤残留濃度を6%よりも大幅に低減できないから、バーニングを必要としないポジ型感光膜のレーザーによる画像焼付が不能であった。
そこで、本願発明者は、バーニングを必要としないポジ型感光膜の実用化を開発テーマとし、バーニングに依らないで密着剤の添加によりポジ型感光膜自体の密着性を向上できるポジ型感光膜の開発と、バーニングに依らないで短時間かつ容易に溶剤残留濃度を6%よりも大幅に低減できる成膜乾燥技術の開発とを概念的に区別して、二つの課題を同時に解決するべく研究を続行した。
【0018】
塗布膜は空気に触れて表面から乾燥していくので、時間が経過し表面が乾燥すればするほど拡散性が低下するものと考えられる。他方、塗布膜が液垂れしなくなった後は、膜表面を強制的に負圧にして残留溶剤を空気中へ拡散させることが残留溶剤を効果的に低減できると考えられる。
そこで、塗布膜が液垂れしなくなった後、被製版ロールを高速回転させて見たところ、短時間で溶剤残留濃度を3%以下まで下げられることを見い出した。
【0019】
この知見に基づいて、バーニングを行なわなくても極めて短時間に溶剤濃度を6%以下に低減できる技術として、被製版ロールをスパイラルスキャン方式のコーティング装置に水平に両端支持して所要の低速度で回転させ、上端から感光剤が涌き出るパイプを被製版ロールの一端に僅少なギャップを有するように位置させ、感光剤をコーティングに必要な量だけ湧き出させるようにして、該パイプを被製版ロールの一端から他端まで移動してスパイラルスキャン方式で隙間が開かないようにかつオーバーラップが僅少であるようにしてテスト感光液を均一に塗布しその後回転を続行して液垂れが起こらなくなる状態に溶剤が気化した乾燥度合いの感光膜をセットし、その後に、コーティング装置において又はレーザー露光装置等に移して、該被製版ロールを所要の高速度で所要時間回転させて空気と摩擦させることにより感光膜中の残留溶剤を空気中へ拡散離脱させてレーザーによる画像焼付性が発現し得る低い溶剤残留濃度の成膜を得る技術を確立した。
200φmmの試験ロールに感光液を均一に塗布し塗布終了から5分間25r.p.mで回転を続行した後回転停止し、5分間待って、液垂れについて観察し、肉眼で液垂れが生じなかったことを確認して、試験ロールを100r.p.mで20分間回転して停止し、感光膜中の溶剤残留濃度を測定したところ、2.3%であった。
【0020】
しかるに、バーニングを行なわなくても極めて短時間に溶剤濃度を6%以下に低減できる技術を開発したことで、種々の密着性助剤を添加してバーニングを行なわなくても必要十分な密着力を有するポジ型感光剤について、ポジ型感光性組成物の改質を試みた。
その結果、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質からなるポジ型感光性組成物の原液に、セルロース誘導体とチタンアルコキシド、チタンアシレート、又はチタンキレートの少なくともいずれか一のチタン有機化合物を含ませてテストした結果、バーニング処理を行なうと現像が不良になり、バーニング処理を行なわないと現像が優良になり、最良のレジストパターンが得られた。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、湿度がたまたま極めて低い日にテストしたところ、現像を行なうと、感光膜が全面的に離脱してしまった。ポジ型感光剤は、一般的に60%以上の高湿度のときに白化現象を生じて造膜できないという湿度依存性があることが知られているが、湿度が25%位と極めて低いときにも密着性が消失するという、湿度依存性があることが判明した。
【0022】
そこで引き続き、種々の密着性助剤を添加してテストを行なった結果、密着性助剤として、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを混合添加した場合のケース、並びにビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーを混合添加した場合のケースにおいて、実験室内の室温を25℃、湿度については25%、30%、55%、60%に変えたそれぞれの条件において、25r.p.mで回転する200φmmの被製版ロールに塗布し、液垂れが生じないように回転を続行して自然乾燥条件下で5分経過させた後に100r.p.mで10分間回転して停止した。こうして、被製版ロールの硫酸銅メッキ面に対していずれも光沢があり非常に強い密着性を有する極めて硬質な感光膜を塗布形成した4本の試験ロールを得られた。膜厚は3.5〜3.8μmであった。溶剤残留濃度を測定したところ、いずれの試験ロールも2.3%であった。そして、赤外波長域のレーザーで画像焼付し現像したところ現像前の膜厚と比べて膜減りが殆どなく極めてシャープで残渣がないアルカリ可溶性のレジストパターンが得られた。そして、自然乾燥したレジストパターンは極めて硬質であることが確認できて、本願発明を開発するに至った。
【0023】
本願発明は、波長700〜1,100nmのレーザー光に露光感応して該感応部がアルカリ現像液に可溶になるポジ型感光性組成物に関し、塗布作業室内の湿度が25〜60%の範囲において塗布するときに被塗布対象に塗布してその後のバーニングが不要でアルミニウムに対して必要十分な密着性が得られるの勿論のこと、特にアルミニウムに比べて遥かに強い密着力が必要な銅又は硫酸銅メッキに対して必要十分な密着性が得られ、60〜70秒位の適切な時間で残渣が発生しない良好なアルカリ現像が行なえて、バーニング処理を行なわないことで高感度が保たれレジスト画像のエッジが露光の照射パターンの通りにシャープな輪郭で切れる極めて良好な現像が行なえて、膜減りが少なく膜減りに起因するピンホールの発生が少ない極めて良好な現像が行なえて、レジスト画像に光沢があり、そのまま印刷に供しても数千枚刷れる程の非常に硬いレジスト画像が得られ、感光膜形成後現像前の取り扱いにおける耐キズ性が向上し、レーザーによる画像焼付及び現像のラチチュードが秀逸しているポジ型感光性組成物を提供することを目的としている。
【0024】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質を含み、アルカリ可溶性樹脂として、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー又はビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーのいずれかを含有してなることを特徴とするポジ型感光性組成物である。
【0025】
【発明の実施の形態】
[請求項1]に記載の発明の実施の形態に係るポジ型感光性組成物は、フェノール性水酸基を有するか又はフェノール性水酸基を反応させたエポキシ樹脂を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有し赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質を含み、アルカリ可溶性樹脂として、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー又はビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーのいずれかを含有してなるものである。その他、現像促進剤や溶解抑止剤が含有されていてもよい。
【0026】
アルカリ可溶性有機高分子物質のポジ型感光性組成物における固形分含有割合は、80〜96重量%であるのが好ましく、90〜94重量%であるのが更に好ましい。光熱変換物質のポジ型感光性組成物における固形分含有割合は、1〜10重量%であるのが好ましく、2〜4重量%であるのが更に好ましい。
ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー又はビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーの固形分含有割合は、1〜10重量%であるのが好ましく、さらに2〜4重量%であるのが好ましい。
本願発明のポジ型感光性組成物は溶媒に薄めて使用する。溶媒の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、通常、重量比で1〜20倍程度の範囲である。
【0027】
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質としては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体、フェノール性水酸基を反応させたエポキシ樹脂を有するアルカリ可溶性エポキシ樹脂等、ほかに特開平11−231515に記載されているフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質をそっくり適用することができ、特に、ノボラック樹脂、又はポリビニルフェノール樹脂が好ましい。
【0028】
ノボラック樹脂は、フェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下でアルデヒド類、又は、ケトン類の少なくとも1種と重縮合させた樹脂である。特に、m−クレゾールとp−クレゾールと2,5−キシレノールと3,5−キシレノールとレゾルシノールとの混合フェノール類、又は、フェノールとm−クレゾールとp−クレゾールとの混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(MW)が、1,500〜10,000であるものが好ましい。
【0029】
レゾール樹脂は、ノボラック樹脂の重縮合における酸触媒に代えてアルカリ触媒を用いる以外は同様にして重縮合させた樹脂である。
ポリビニルフェノール樹脂は、例えば、ヒドロキシスチレン類の単独または2種以上を、ラジカル重合開始剤又はカチオン重合開始剤の存在下で重合させた樹脂である。ベンゼン環に炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有するヒドロキシスチレン類の重合体や無置換のベンゼン環のヒドロキシスチレン類の重合体が好ましい。
【0030】
光熱変換物質は、波長700〜1,100nmの赤外波長領域の一部又は全部に吸収帯を有し該赤外波長領域のレーザ光を吸収して熱分解する特性を有し、前記のフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の分子の熱切断によるアルカリ可溶性の低分子化・アブレーションに関与する。光熱変換物質の添加量の多少は、露光で発生する熱の過多と不足に関係し、又、赤外レーザー光の強弱は、露光部分に存在するアルカリ可溶性有機高分子物質の熱分解の過多と不足に関係するので適切な量に設定される。
【0031】
光熱変換物質は、波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有する有機又は無機の顔料や染料、有機色素、金属、金属酸化物、金属炭化物、金属硼化物等、特開平11−231515に記載されている光熱変換物質をそっくり適用することができ、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子等を含む複素環等がポリメチン(−CH=)n で結合された、広義の所謂シアニン系色素が代表的なものとして挙げられ、具体的には、例えば、キノリン系(所謂、シアニン系)、インドール系(所謂、インドシアニン系)、ベンゾチアゾール系(所謂、チオシアニン系)、イミノシクロヘキサジエン系(所謂、ポリメチン系)、ピリリウム系、チアピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、アズレニウム系等が挙げられ、中で、キノリン系、インドール系、ベンゾチアゾール系、イミノシクロヘキサジエン系、ピリリウム系、又はチアピリリウム系が好ましい。特に、フタロシアニンやシアニンが好ましい。
【0032】
密着剤として含まれるビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーは、下記の(I)式の構造で示される。
【0033】
【0034】
又、密着剤として含まれるビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーは、下記の(II)式の構造で示される。
【0035】
【0036】
溶媒としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はなく、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒を使用できる。
セロソルブ系溶媒には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等がある。
プロピレングリコール系溶媒には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等がある。
エステル系溶媒には、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等がある。
アルコール系溶媒には、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等がある。
高極性溶媒には、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等がある。
その他、酢酸、あるいはこれらの混合溶媒、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0037】
現像促進剤は、例えば、ジカルボン酸又はアミン類又はグリコール類を微量添加することが好ましい。
溶解抑止剤は、ラクトン骨格を有する酸発色性色素が好ましく、露光部と非露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の時間差を増大させる目的で、アルカリ可溶性有機高分子物質と水素結合を形成して該高分子物質の溶解性を低下させる機能を有し、かつ、赤外領域の光を殆ど吸収せず、赤外領域の光で分解されない機能を有する。
その他の溶解抑止剤としては、スルホン酸エステル、燐酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、芳香族ジスルホン、カルボン酸無水物、芳香族ケトン、芳香族アルデヒド、芳香族アミン、芳香族エーテル等、チオラクトン骨格、N,N−ジアリールアミド骨格、ジアリールメチルイミノ骨格を有する酸発色性色素、スルホラクトン骨格を有する塩基発色性色素、非イオン性界面活性剤等があり、使用できる。
【0038】
本願発明のポジ型感光性組成物は、通常、前記各成分をセロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒等の溶媒に溶解した溶液として支持体表面であるグラビア印刷用の被製版ロールの銅メッキ面又は硫酸銅メッキ面に塗布した自然乾燥した後、高速回転して被製版ロールの表面で風を切り感光膜内における遠心力による質量作用と表面近傍が若干の負圧状態になることで溶剤残留濃度を6%以下に低減することにより、支持体表面に感光性組成物層が形成されたポジ型感光膜とされる。
【0039】
塗布方法として、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。塗布膜の厚さは1〜6μmの範囲とすることが好ましく、さらに3〜5μmとするのが好ましい。
【0040】
ポジ型感光性組成物層を画像露光する光源としては、波長700〜1,100nmの赤外レーザー光線を発生する半導体レーザーやYAGレーザーが好ましい。他に、ルビーレーザー、LED等の固体レーザーを用いることが出来る。
レーザー光源の光強度としては、2.0×106mJ/s・cm2以上とすることが好ましく、1.0×107mJ/s・cm2以上とすることが特に好ましい。
【0041】
本願発明のポジ型感光性組成物を用いて形成した感光膜に対して用いる現像液としては、無機アルカリ、Na、Kの塩、又は有機アルカリ、TMAH、又はコリン等、無機又は有機のアルカリからなる現像剤が好ましい。
【0042】
現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等により、通常、15〜45℃程度の温度、好ましくは27〜32℃で行なう。
【0043】
[現像ラチチュード]
現像ラチチュードとは、現像時に露光部が完全に除去される迄の時間と、現像時も未露光部の残膜率が十分に確保される時間の差があることをいう。
現像ラチチュードは、(1)膜の結合度合いが適度であり赤外レーザー光の露光により露光部分において分子の主鎖又は側鎖の部分が切断されてアルカリ可溶性が一層高まる低分子になるコンフォメーション変化等の物理変化とともに感光層飛散(アブレーション)を適切に生じて薄膜になりアルカリ現像液に短時間に溶解し得るように変化すること、(2)未露光部分は、温度、湿度に多少の変化があってもアルカリ現像液に溶解するまでに露光部分よりも比較的長い時間溶解せずに被塗布面に強く密着していること、によって得られる。
現像ラチチュードは、密着を強くする材料の密着力が強ければフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の弱い密着力に対して補強できるから、得られるというものではない。ポジ型感光性組成物における密着を強くする材料に起因する密着力の発現は、密着を強くする材料の種類と添加量によって相対的に決まってくる。
例えば、密着を強くする材料としてチタンアルコキシドを選択し多量を添加したポジ型感光性組成物では、バーニング後の膜全体の強度・安定性・密着性が強くなり過ぎて赤外レーザー光の露光によるコンフォメーション変化等の物理変化や感光層飛散(アブレーション)が生じることがなく、現像を行なっても露光部分が現像液に殆ど溶解せず膜全体が膜減りしない。すなわち、現像ラチチュードが全く得られない。
添加する量を少しずつ少なくしていくと、膜減りが生じるようになり現像ラチチュードが得られる領域が僅かに生じるが、室温や湿度が僅かに相違するだけで現像ラチチュードがたちまち得られなくなる。
他方、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質にシランカップリング剤を添加しても強い密着力が得られず、露光部分のポジ型感光性組成物層がアルカリ現像液に溶解するのと、未露光部分のポジ型感光性組成物層がアルカリ現像液に溶解するのとが時間差なく同時に生じてしまい、現像が不可になる。
しかるに、25℃の室温、湿度25〜60%の条件下でビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを含むポジ型感光性組成物を作り、これを銅面や硫酸銅メッキ面に塗布しかつ残留溶剤濃度を6%以下にするときに60〜70秒位で残渣がないシャープなパターンが得られる良好な現像が行なえる。ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを固形分割合で3%前後含んでいるときが最も良好な現像ラチチュードを発現する。
アルミニウム面に対する現像ラチチュードは銅面や硫酸銅メッキ面に対する場合よりも一層強く発現する。
ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを含まず、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質とからなるポジ型感光性組成物は、アルミニウム面に対しては、25℃の室温、湿度50〜55%の条件下で塗布するときに現像ラチチュードが必要十分に発現したが、銅面や硫酸銅メッキ面に対しては現像ラチチュードは殆ど有しなかった。
又、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質を変性したものでは80〜100℃でバーニングすることにより現像ラチチュードを発現し、バーニングを行なわないときには現像ラチチュードを発現しなかった。
このように、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを含まないポジ型感光性組成物は現像ラチチュードが発現せず、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを含んだポジ型感光性組成物は現像ラチチュードが発現するということは、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーの強い密着力がフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性有機高分子物質の弱い密着力に対して適切に補強し、現像ラチチュードを発現している原因物質であることを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【実施例と比較例】
表1及び表2の実施例と、表3の比較例において使用したポジ型感光性組成物の原液は以下の4種類作った。なお、表1〜表3中の%値は、固形分に対する重量%である。
(a) 原液A・・・ノボラック樹脂と波長700〜1,100nmの赤外線領域の一部又は全部に吸収帯を有しレーザ光を吸収して熱分解する光ディスク用色素からなるもの、
このノボラック樹脂は、m−クレゾールとp−クレゾールと2,5−キシレノールと3,5−キシレノールとレゾルシノールとの混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体を使用した。
(b) 原液B・・・レゾール樹脂と上記光ディスク用色素からなる原液、
(c) 原液C・・・ポリビニルフェノール樹脂と上記光ディスク用色素からなる原液、
(d) 原液D・・・フェノール性水酸基を有するアクリル酸誘導体の共重合体と上記光ディスク用色素からなる原液、
【0048】
実施例と比較例は、いずれも、ロール母材が鉄であり硫酸銅メッキされ鏡面研磨された200φmmの被製版ロールを、ポジ型感光性組成物中の溶剤がコーティング中に蒸発して溶剤の割合が変化することが回避されるファウンテンコーティング装置(除湿装置と加湿装置が付設されていて湿度を所望にコントロールできる装置)に両端チャックして25r.p.mで回転し、ワイピングクロスで十分に拭浄してから、上端からポジ型感光性組成物を溶剤(MEK)で所定濃度に薄めたテスト感光液が涌き出るパイプを被製版ロールの一端に約500μmのギャップを有するように位置させ、テスト感光液をコーティングに必要な量だけ湧き出させるようにして、該パイプを被製版ロールの一端から他端まで移動してスパイラルスキャン方式でテスト感光液を均一に塗布し塗布終了から5分間25r.p.mで回転を続行した後回転停止した。5分間待って、液垂れについて観察したところ、肉眼で液垂れが生じたことが観察できなかった。そして、膜厚測定をしたところ、ロールの下面部分と上面部分とで差異はなかった。もって、液垂れが生じなく状態に乾固した感光膜をセットできたことを確認した。
引き続いて、試験ロールを100r.p.mで20分間回転して停止し、感光膜中の溶剤残留濃度を測定したところ、2.9%であった。
続いて、試験ロールをクレオサイテックス社の高出力半導体レーザーヘッドを搭載した露光装置(株式会社シンク・ラボラトリー製)に取付けて該試験ロールに赤外波長域のレーザーを照射してポジ画像を焼き付け、次いで、試験ロールを現像装置に取付けて回転して現像槽を上昇させて残渣がなくなるまでの約40〜70秒間現像を行ない、その後水洗した。
顕微鏡により、レジスト画像のエッジの切れ及び残渣並びにレジストの表面状況・硬さについて観察して焼付感度、現像の良、不良、膜減り、現像ラチチュードを判断した。
【0049】
【発明の効果】
本願発明のポジ型感光性組成物は、赤外波長域のレーザー光に露光感応して該感応部が現像液に可溶になる赤外波長域レーザー感応性を有するアルカリ可溶性のポジ型感光性組成物であり、以下のような優れた効果を有する。
(1)被塗布対象に塗布して後バーニングすることが不適でありバーニングを行なわなくても必要十分な密着性が得られる適性を有する。光沢があり非常に硬い感光膜が得られる。
(2)作業室内の湿度が25〜60%になる晴れた日に塗布し、又は除湿装置及び加湿装置を用いて作業室内の湿度を25〜60%の範囲として塗布するときに必要十分な密着性が得られる。
(3)適切な時間で残渣が発生しない良好なアルカリ現像が行なえる。感光層成分が露光により実質的に化学変化を起こさないにもかかわらず、耐刷性、感度、現像ラチチュード(現像時に露光部が完全に除去される迄の時間と、現像時も未露光部の残膜率が十分に確保される時間の差)等の印刷版の基本性能を全て満足させることができる。
(4)感光層中の光熱変換物質によって過剰な熱が発生する高い露光エネルギーよりも低い露光エネルギーで画像露光を行なっても現像ラチチュードを広く取れるので感光層飛散が生ずる度合いが低く抑制されるから、感光層飛散(アブレーション)し、露光装置の光学系を汚染するという問題が生じない。
(5)バーニング処理を行なわないことで高感度が保たれレジスト画像のエッジが露光の照射パターンの通りにシャープな輪郭で切れる極めて良好な現像が行なえる。
(6)膜減りが殆ど生じない極めて良好な現像が行なえる。膜減りに起因するピンホールの発生を回避できる。
(7)レジスト画像に光沢があり、そのまま印刷に供して数千枚刷れる程の非常に硬いレジスト画像が得られ、感光膜形成後現像前の取り扱いにおける耐キズ性が向上する。
(8)レーザーによる画像焼付及び現像のラチチュードが秀逸している。
本願発明に係るポジ型感光性組成物は、グラビア印刷用の被製版ロールの硫酸銅メッキ面にポジ型感光膜を形成するのに好ましいが、これに限定されるものではなく、アルミニウム、亜鉛、鋼等の金属板、アルミニウム、亜鉛、銅、鉄、クロム、ニッケル等をメッキ又は蒸着した金属板、樹脂を塗布した紙、アルミニウム等の金属箔を貼着した紙、プラスチックフィルム、親水化処理したプラスチックフィルム、及びガラス板等に適用しても低温での密着性が良好であり、高感度が得られる。
従って、感光性平版印刷版、簡易校正印刷用プルーフ、配線板やグラビア用銅エッチングレジスト、フラットディスプレイ製造に用いられるカラーフィルター用レジスト、LSI製造用フォトレジスト等に好適に使用できる。
Claims (1)
- フェノール性水酸基を有するか又はフェノール性水酸基を反応させたエポキシ樹脂を有するアルカリ可溶性有機高分子物質と、画像露光光源の赤外線を吸収して熱に変換する光熱変換物質を含み、アルカリ可溶性樹脂として、ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー又はビニルピロリドン/カプロラクタム/ジメチルアミノエチルメタクリレートのターポリマーのいずれかを含有してなることを特徴とするポジ型感光性組成物。
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