JP2004176035A - ラジカル発生剤及び感光性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明のラジカル発生剤は、1分子中にナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)からなる。本発明の感光性樹脂組成物は、本発明に係るラジカル発生剤を必須成分として含有する。本発明の感光性樹脂組成物は、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いられる。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジカル発生剤、当該ラジカル発生剤を含有する感光性樹脂組成物、及び当該感光性樹脂組成物を用いて作製した印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料に関し、詳しくは、特に耐熱性が高く、硬化後の製品中には独立の成分として残存せず、温和な条件で合成可能なラジカル発生剤、当該ラジカル発生剤を含有する感光性樹脂組成物、及び当該感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されている、高耐熱性、高安定性である印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
紫外線等の放射線の照射によって硬化するか又は溶解性が変化する感光性樹脂は、一般に、露光部の溶解性が良好なもの(ポジ型)と、未露光部の溶解性が良好なもの(ネガ型)の2種に分類される。ネガ型の場合、感光性樹脂自体が露光により硬化し不溶になることから、感光性樹脂が基材上に残存し機能膜として製品の一部となる場合が多い。ネガ型の感光性樹脂は、例えば塗料、印刷インキ、接着剤、印刷原版等に用いられてきたが、近年、プリント配線板の配線保護用のソルダーレジストや、層間絶縁膜、カラーフィルターの画素形成用レジスト等にまで用途が広がってきている。
【0003】
一般に多く用いられるネガ型の感光性樹脂の一つに、エチレン性不飽和結合を一つ以上有する化合物、光照射によりラジカルを発生させる光ラジカル開始剤、及び、必要に応じて、現像性や塗膜の柔軟性等を付与する高分子化合物、無機フィラー、顔料等を配合した樹脂組成物がある。この組成物に放射線を照射すると、エチレン性不飽和結合を有する化合物がラジカル反応により結合し、大分子量化して硬化する。この硬化反応の際に、架橋反応により3次元網目構造が発達することにより、得られる硬化物の硬度、強度、密着性、耐溶剤性、耐熱性が向上する。
【0004】
光ラジカル開始剤は、自己開裂型と水素引き抜き型に概ね分類される。前者の場合、特定波長の光(電磁波又は放射線)を吸収することで、その波長に対応した部位の結合が切断され、その際に分断された各々の部位にラジカルが発生し、そこからラジカル反応が始まる。後者の場合、ある特定の波長の光を吸収し励起状態になると、周囲にある水素ドナーから水素を引き抜き、その際に引き抜いた方、引き抜かれた方の各々にラジカルが発生する。
【0005】
一般に自己開裂型は、感度やラジカル発生効率は良好なものの、熱に対して不安定であり、これを含有する感光性樹脂組成物の耐熱性、安定性、保存性等に問題がある。一方、水素引き抜き型は、水素ドナーが励起された開始剤の近傍に存在する必要がある事や、水素を引き抜く際のエネルギー障壁の大きさによってラジカル発生効率が決まるため、感度は比較的低いが、励起状態になり水素を引き抜かないとラジカルが発生しないため、樹脂組成物の安定性、保存性は高い。
【0006】
プリント配線板の表面被覆に用いられるソルダーレジストには、耐熱性や難燃性付与のため有機顔料やフィラーを混合されていたり、カラーフィルターの画素形成用レジストには、色表示のための顔料が混合されている。これらの顔料は光を吸収する成分であることから、感光性樹脂の感度を高めるために、主に自己開裂型の光ラジカル開始剤を用い、しかもラジカル反応に充分利用されない分を見込んで多量に混合させている。ここで、ラジカル反応に利用されない分には、照射によっても開裂しなかった未反応の開始剤と、開裂によりラジカル化しても固相での反応ゆえに被反応物との接近が阻害されて失活する分とがある。
【0007】
露光後の硬化物中には、開始剤由来の残存物が多量に存在するが、そのうち未開裂の光ラジカル開始剤は、露光後にも反応性を残していることから製品を変質させる。また、未開裂の光ラジカル開始剤、及び、開裂したがラジカル反応で消費されずに失活した分解物は、マトリックスの架橋構造に結合しておらず、独立した成分として製品中に存在することから膜物性を阻害する。そのため、開始剤由来の残存物をそのまま放置すると、耐光性の悪化、着色や退色、塗膜のはがれやクラックの発生等を引き起こし、最終製品、例えば電子部品用の層間絶縁膜やソルダーレジスト、カラーフィルター用画素形成用レジストの信頼性を低下させる原因になるという問題がある。
【0008】
自己開裂型の光ラジカル開始剤は昇華性が強く、熱により分解するため、露光、現像後の製品を百数十℃以上の温度でポストベークすることにより製品から除去することができる。しかしながら、ポストベーク時に開始剤由来の昇華物が加熱装置内に多量に付着し、それが硬化により得られた製品上に落下して製品不良の原因となり、問題となっていた。また、加熱装置の周囲では雰囲気中に開始剤の分解物等が含まれるため、作業安全性の観点からも問題があった。
【0009】
ポストベークの条件を、より高温で、より長時間にすることによってラジカル開始剤由来の残存物をより多く除去することが可能であるが、固体中からの揮発の為、完全に除去することは困難である。より多くのラジカル開始剤由来の不純物を除去する為に条件を厳しくすると、その条件が、かえって製品不良を起こす原因となる。
【0010】
一方、剥離膜として用いられる電子部材の加工用レジスト及びドライフィルムレジスト等も、同様の放射線による硬化システムが用いられている。加工用レジストは、最終的には剥離され製品には残らないが、その銅配線形成等の加工工程において、加工に用いる塩化第二鉄や塩化第二銅等の薬液中にレジスト膜から開始剤由来の残存物が溶出し、薬液の寿命を短くするという問題があった。
【0011】
さらに、建築物の壁紙や壁の表面を保護する保護膜用塗料として、感光性樹脂が用いられる際には、シックハウス症候群対策等の観点から、建材全体から出て来る溶媒成分や臭気成分の削減が求められているが、揮発性の高い開始剤を用いることで、塗膜硬化後も臭気が発生するという問題があった。
【0012】
これらの問題点から、ポストベーク時や光硬化後に揮発せず、しかも、塗膜中に独立して残存するラジカル発生剤由来の成分が実質的にないような、ラジカル発生剤及び樹脂組成物が望まれている。
【0013】
これらを解決する手段として、ESACURE KIP 150(商品名)(日本シイベルヘグナー株式会社製)等は、ポリマー骨格の側鎖に光ラジカル発生部位を導入している。このようにすれば光ラジカル発生剤は一分子内に複数のラジカル発生部位を有するため、当該分子内のどこか1箇所がラジカル化して塗膜のマトリックスと結合していれば、同じ分子内にある未反応のラジカル発生部位もポリマー骨格を介してマトリックスに結合するので、ポストベーク時に揮発せず、塗膜中を移動する事も無いため、最終製品での信頼性を低下させることが少ない。
【0014】
しかしながら、この場合、側鎖に導入されている光ラジカル発生部位が自己開裂型であり、加熱によって容易に分解してラジカルを発生させてしまうため、これを含有する感光性樹脂組成物の耐熱性、安定性、保存性等に問題があることに変わりない。また、ラジカル発生部位のうち開裂後にポリマー骨格に残る部分はマトリックス構造と結合しているが、光ラジカル反応及びポストベークによりポリマー骨格から開裂した分解物の一部は、ラジカル反応で消費されずに失活してマトリックスから独立して残存するため、そのまま放置すると塗膜物性に悪影響を与え、また、ポストベークを行っても完全に昇華除去させることが困難である。
【0015】
また、国際公開WO98/58912号公報、特開2002−3559号公報では、マレイミド基を有する(メタ)アクリレートが提案されている。これらは、マレイミドが電磁波を吸収することで、ビニルエーテルとは電子受容体として反応し、ラジカルを発生させる。また、水素を引き抜くことでもラジカルを発生させることができる(ラジカル重合ハンドブック 株式会社エヌ・ティー・エス刊 1999年 312ページ)。しかし、マレイミドはエチレン性2重結合を有するため、マレイミド基と(メタ)アクリル基を両方有するモノマーをラジカル重合すると、架橋反応が進行しゲル化してしまう。そのため、国際公開WO98/58912号公報や特開2002−3559号公報では、マレイミド基にシクロヘキシル基等の置換基を導入し、立体障害によりマレイミド基の反応性を低下させることにより、上記の課題を克服している。しかしながら、その反面マレイミド部位の反応性が低下するため、ラジカル反応開始効率も低下するという問題があった。また、酸無水物とアミンを反応させてマレイミド基を形成する反応は脱水反応で行なうため、触媒を用いずに効率よく反応させるためには100℃以上の高い温度が必要であり、マレイミド基の形成時に直接エチレン性不飽和結合の導入を行なおうとすると、エチレン性不飽和結合の重合が起こってしまうという合成上の問題があった。また、無水酢酸等の脱水触媒を用いて脱水反応を行なうこともできるが、コスト増の原因となると共に、その後の精製工程が複雑になる等、いずれにしろ合成上に問題があった。
【0016】
また、S.Jonssonらは、マレイミド基を両末端に有した化合物の光反応性架橋剤をProc.RadTech 96(North America Nashville 377ページ 1996年)で提唱している。これは、ビニルエーテルと速やかに反応するが、マレイミド基であるため、前述のように合成上に問題があった。
【0017】
さらに、工業材料 2002年7月号 P.107〜P.111には、マレイミド部位を有する化合物のUV吸収スペクトルが記載されており、それによれば、無置換のマレイミド化合物は、350nm以上には吸収を持たない。その為、一般的に用いられる露光光源である、高圧水銀ランプの主要な発光波長である365nm、405nm、436nmに吸収を持たず、これらの光に対しては、マレイミド基は何の変化も起こさないことが予測される。
【0018】
この為、マレイミド基は上記の波長に対して感度を持たない為、マレイミドを光硬化に用いるには、露光を、350nm以下に発光を有する光源によって行なわなくてはならないという問題があった。また、高圧水銀灯は365nm未満の波長も発光するが、通常フィルターでカットする領域である。フィルターでカットしなくても、発光強度が小さい為、365nmに吸収を有するラジカル発生剤に比べて、同じランプを使った場合に露光時間が非常に長くなると言う問題もあった。
【0019】
一方、1999年久保らにより、N−メチル−1,8−ナフタルイミドとp−キシレン等の芳香族化合物をアセトニトリル溶液中でメタノール存在下紫外線を照射すると、高収率でナフタルイミドと芳香族化合物の反応物が得られると報告されている(p.175 Chemistry Letters 1999)。その中で、その反応のメカニズムとして、紫外線により1重項励起されたナフタルイミドが芳香族化合物とエキサイプレックスを形成し、その後、水素を引き抜くことによりラジカルを発生し、ナフタルイミドと芳香族化合物の間で結合が形成されると記載されている。しかしながら、この文献では溶液中での反応であると共に、ナフタルイミドと一部の低分子の芳香族化合物との反応のみしか記載されていない。
【0020】
また、ナフタルイミド部位を2つ有した化合物については、医薬品用途では、WO9402466号公報に開示されており、電子写真用の感光体用途では特開平7−160020号公報、特開2001―117247号公報に、電子輸送材料として開示されている。しかしながら、前者の用途では、医薬品として用いられており、後者の用途では、発明は感光体となっているものの、ナフタルイミド化合物はあくまでも電荷輸送剤として機能しており、光の照射により電荷を発生する化合物は別に配合されており、ナフタルイミド化合物の光ラジカル開始剤としての機能や、架橋反応性には全く言及されていない。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、その第一の目的は、塗膜中に独立して残存することなく、硬化した塗膜中に化学的に安定した状態で存在し、耐熱性が高く、安定性、保存性が高く、且つ、比較的温和な条件で合成することができ、生産性の高いラジカル発生剤を提供することにある。
【0022】
本発明の第二の目的は、上記本発明に係るラジカル発生剤を用いて、ラジカル重合後に開始剤の分解物が遊離せず、耐熱性が高く、実用的な波長に対し感度が高く、露光時に臭気の発生がなく、安定性、保存性が高く、且つ、合成上有利な感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0023】
本発明の第三の目的は、上記本発明に係る感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されていて、高耐熱性、高安定性である製品を提供することにある。
【0024】
本発明は、これらの目的のうち少なくともひとつを解決するものである。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明に係るラジカル発生剤は、1分子中に下記式(1)
【0026】
【化3】
【0027】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又は置換基であり、互いに結合した環構造であってもよい。)
で表されるナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)からなることを特徴とする。
【0028】
ナフタルイミド構造含有基によるラジカル発生機構は、ナフタルイミド構造が電磁波や放射線等の光を吸収することによってラジカルを発生させるものと推定される。
【0029】
本発明に係るラジカル発生剤は、上記ナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、放射線等を照射して励起させることによりラジカル反応を起こしたり、ラジカル重合を開始したり、高分子を架橋することもできる。ナフタルイミド構造含有基は、自己開裂型よりも安定性が高い水素引き抜き型であり、しかも耐熱性が良好なナフタレン骨格を有するため、耐熱性、安定性、保存性が高いラジカル発生剤を得ることができる。
【0030】
さらに、π結合が多く連結していることから吸収波長がマレイミドよりも長波長化している為、高圧水銀灯の主要な発光波長である365nmの波長に対し吸収を持ちやすく、感度が良好である。
【0031】
また、本発明に係るラジカル発生剤は、エチレン性不飽和結合だけでなく芳香環等種々の化合物とも反応可能であり、エチレン性不飽和結合を有さない樹脂組成物であっても、高分子を架橋したり或いはラジカル反応をすることができる。従って、本発明に係るラジカル発生剤は、一般的な光ラジカル重合開始剤として用いられるほか、例えば芳香族ポリマーを含有する樹脂組成物の架橋剤として用いて硬化後の耐溶剤性を向上させることが可能である。
【0032】
また、本発明に係るラジカル発生剤は、ラジカル発生部位として機能するナフタルイミド構造含有基を一分子内に2つ以上有するため、一分子内に含まれる複数のナフタルイミド構造含有基のうち、どこか1箇所でもラジカルを発生させて重合体等反応物と結合を形成していれば、当該分子に含まれる未反応のラジカル発生部位も全て重合体等反応物の化学構造の一部となる。ラジカル発生剤が重合体等反応物の化学構造の一部となるため、ラジカル発生剤の分子内に未反応部位が残っても、重合体等反応物中に個々の未反応部位は遊離の形で残存せず、ポストベーク時に揮発しない。しかも、化合物(a)は未反応のまま残存しても、ラジカル発生部位が耐熱性の高いナフタルイミド構造を有しているので、揮発性の分解物が生成しない。
【0033】
従って、作業安全性の問題や、耐光性の悪化や、着色や退色、塗膜のはがれやクラックの発生等、最終製品の信頼性を低下させる問題や、薬液寿命を短くする問題や、臭気が発生する問題も全て解決することができる。
【0034】
さらに、マレイミド構造を形成する反応は、加熱や触媒等により脱水縮合反応をしないと形成されず、そのため合成上様々な問題があったが、ナフタルイミド構造を形成する反応は脱水縮合反応が進行しやすく、マレイミド構造に比べて合成が非常に簡便であり、溶媒溶解性も良好なことから、合成上有利である。そのため、収率、反応速度、管理面、コスト面を含めて生産性が上がる。
【0035】
前記式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、置換基を有していてもよい有機基、又はそれらが互いに結合した環構造であることが、原料調達の容易性、合成の簡便性の点から好ましい。
【0036】
実用的な感度を得るために、露光光源のいずれかの発光波長における前記化合物(a)のモル吸光係数は、0.1以上であることが好ましい。
【0037】
また、前記化合物(a)の最大モル吸光係数εMAXは、2000以上であることが好ましい。ナフタルイミド部位のラジカル発生メカニズムは、π−π*遷移が重要であると推測されるが、一般に最大モル吸光係数εMAXが2000以上の場合にはπ−π*遷移が起こっていることが多い。
【0038】
前記化合物(a)は、少なくとも157nm、193nm、248nm、365nm、405nm、436nmのいずれかの波長に吸収を有することが、照射光源の発光波長と重なり、露光波長として利用するのに便利であることから好ましい。
【0039】
前記化合物(a)の90%熱分解温度は、50℃以上であることが、樹脂組成物の保存安定性の点から好ましい。
【0040】
前記化合物(a)は、モノマー等の重合成分に対する溶解性が高いほど開始剤としての作用が向上し、感度が高くなるので、化合物(a)の20℃におけるアクリル酸メチルに対する飽和濃度が、0.01mol/L以上であることが好ましい。
【0041】
上記課題を解決するための本発明に係る感光性樹脂組成物は、1分子中に下記式(1)
【0042】
【化4】
【0043】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、置換基であり、互いに結合して閉環していてもよい。)
で表されるナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)を必須成分として含有することを特徴とする。
【0044】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記本発明に係るラジカル発生剤を含有しており、化合物(a)のナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、光を照射して励起させることによりラジカル化し、感光性樹脂組成物中でラジカル反応を起こさせる。感光性樹脂組成物中のラジカル反応性化合物は、当該化合物の種類によってラジカル重合や、ラジカル発生剤である化合物(a)とのラジカル二量化反応や、ラジカル性架橋反応等、さまざまなラジカル反応を引き起こし、感光性樹脂組成物を硬化させたり、溶解性を変化させたりする。
【0045】
本発明に係る感光性樹脂組成物において、ナフタルイミド構造含有基によって発生したラジカルは、エチレン性不飽和結合だけでなく芳香環等種々の化合物とも反応可能なため、エチレン性不飽和結合を有さない感光性樹脂組成物であっても、高分子を架橋したりラジカル反応をすることができ、必須成分の化合物(a)を含有すれば、エチレン性不飽和結合を有さない感光性樹脂組成物であっても、硬化及び/又は溶解性の変化を引き起こすことができる。さらに、2つ以上有するナフタルイミド構造含有基のうちどこか1箇所に発生したラジカルが感光性樹脂組成物と結合することにより、感光性樹脂組成物の化学構造の一部となる。そのため、ラジカル発生剤が感光性樹脂組成物中に遊離の形で残存することがない。その結果、最終製品の信頼性を低下させる問題も解決する。
【0046】
さらに、ラジカル発生剤として機能する化合物(a)が、マレイミド構造に比べて合成が非常に簡便であり、合成上有利であるため、収率、反応速度、管理面、コスト面を含めて生産性が上がる。
【0047】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、硬化反応性化合物としてエチレン性不飽和結合を有する化合物(b)を含んでもよい。該化合物(b)は、ラジカル重合可能な硬化反応性化合物として従来から広く利用されており、応用範囲が広い。
【0048】
ラジカルの発生効率を向上させて感度を高めるために、本発明の樹脂組成物には水素供与体を更に配合することが好ましい。
【0049】
本発明に係る感光性樹脂組成物にエチレン性不飽和結合を有する化合物(b)を配合する場合には、化合物(a)の量を感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1重量%以上の割合とすることが、光照射による樹脂組成物の硬化速度が遅くなったり、発生するラジカルの量が少ないため架橋密度が低くなり、塗膜の強度や塗膜のガラス転移温度が低下することを防ぐ点から好ましい。
【0050】
前記感光性樹脂組成物に含有される前記化合物(a)以外の成分は、照射光源の発光波長と前記化合物(a)の吸収波長が重なる波長領域における透過率が20%以上であることが、前記化合物(a)に充分な光を到達させて感度を上げる点から好ましい。
【0051】
前記感光性樹脂組成物を、パターン形成材料(レジスト)、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いることは、製品や膜の高耐熱性、高安定性の点から好ましい。また、露光時の臭気の発生がない為、作業環境が向上する。
【0052】
上記課題を解決するための本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料は、前記感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されていることを特徴とする。
【0053】
本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料は、高耐熱性、高安定性の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されているため、製品や膜としても高耐熱性、高安定性であり、そのため生産の歩留まりも高いというメリットがある。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下において本発明を詳しく説明する。なお本発明において光には、感光性化合物のラジカル発生部位をラジカル化し又は感光性樹脂組成物にラジカル反応を引き起こさせることが可能な可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。樹脂組成物の光硬化には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。
【0055】
先ず、本発明に係るラジカル発生剤について説明する。本発明に係るラジカル発生剤は、1分子中に下記式(1)
【0056】
【化5】
【0057】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又は置換基であり、互いに結合した環構造であってもよい。)
で表されるナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)からなることを特徴とする。
【0058】
上記化合物(a)は、一分子内にあるナフタルイミド構造が同一のものでも良いし、2種以上のナフタルイミド構造が一分子内に混在していても良い。
【0059】
ナフタルイミド構造含有基によるラジカル発生機構は、ナフタルイミド構造が電磁波や放射線等の光を吸収することによってラジカルを発生させるものと推定される。
【0060】
本発明に係るラジカル発生剤は、上記ナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、光を照射して励起させることによりラジカル反応を起こしたり、ラジカル重合を開始したり、高分子を架橋することもできる。
【0061】
上記式(1)で表されるナフタルイミド構造含有基のうち、式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又は置換基であり、互いに結合した環構造であってもよい。
【0062】
上記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、置換基を有していてもよい有機基、又はそれらが互いに結合した環構造が挙げられ、置換基を有していてもよい有機基としては、例えば、飽和又は不飽和アルキル基、飽和又は不飽和ハロゲン化アルキル基、又はフェニル基、ナフチル基等の芳香族基、アリル基、等が挙げられる。
【0063】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6が、水酸基又は上記例示の置換基である場合には、原料調達の容易性、合成の簡便性の点から好ましい。
【0064】
また、上記の互いに結合した環構造であってもよいとは、シクロヘキシル基等の脂肪族性の環構造だけでなく、例えば、R1、R2に芳香環が結合してアントラセン構造をとるものや、R2、R3に芳香環が結合してフェナントレン構造をとるものや、同様にしてピレン構造をとるものやペリレン構造をとるもの等、R1、R2、R3、R4、R5及びR6においてナフタレン環に結合してナフタレンより大きい縮合環炭化水素となっているものも、イミド環が6員環構造になっていれば、本発明のナフタルイミド構造含有基に含まれる。また、環構造は芳香族性の縮合環であっても、脂肪族性の環構造であっても良く、さらに環構成原子としてC以外の異種原子を含んでいても良い。
【0065】
感光性樹脂組成物に配合する時の溶解性を向上させる点から、化合物(a)に導入される置換基としては、炭素数1〜15の飽和及び不飽和アルキル基、アルコキシ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基等が好ましい。
【0066】
上記化合物(a)において2つ以上のナフタルイミド構造含有基のNが結合する部分をXで表すと、化合物(a)は下記式(2)で表すことができる。
【0067】
【化6】
【0068】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は式(1)と同じであり、Xはn価の化学構造、nは2以上の整数である)
上記式(1)に含まれる化学構造Xは2価以上のいかなる化学構造を持つものでも良いが、代表的には有機基である。有機基としては、例えば、直鎖、及び/又は分岐、及び/又は環状の飽和、不飽和の多価アルキル基、アリール基、アリル基、等が挙げられ、その内部に単結合、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミノ結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、カーボネート結合等の結合を1つ以上有しても良い。
【0069】
2価以上の化学構造であって有機基以外のものとしては、例えば、シロキサン、シラン、ボラジン等が挙げられる。
【0070】
特に、価格や入手のしやすさ、合成の簡便さ、溶解性の観点からは、直鎖、又は分岐の多価アルキル基が好ましく、その内部にエステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を含むものがさらに好ましい。また、耐熱性の観点からは、飽和または不飽和の環状構造を有するような直鎖、又は分岐の多価アルキル基が好ましく、その内部にエステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合を含むものがさらに好ましい。
【0071】
本発明に係るラジカル発生剤は、ナフタルイミド構造含有基を2つ以上有するが、ラジカル重合性化合物又はラジカル重合以外のラジカル反応性化合物を3次元架橋する点からは3つ以上が好ましく、さらにラジカル発生剤がポリマー骨格に式(1)のナフタルイミド構造含有基をペンダント状に複数有する構造であって、感光性樹脂組成物中でメインポリマーとして用いられる場合には、達成したい重合度と同程度量のナフタルイミド構造を有することが好ましいが、用いる材料系や最終塗膜の物性等を考慮し、適宜、最適値を選択できる。
【0072】
上記ラジカル発生剤は、π結合が多く連結していることから吸収波長がマレイミドよりも長波長化している為、高圧水銀灯の主要な発光波長である365nmの波長に対し吸収を持ちやすく、感度が良好である。
【0073】
感度を向上させるためには、化合物(a)の構造中に含まれるナフタルイミド骨格が放射線によって励起し、ラジカルを発生させ易い化学構造となるように置換基R1乃至R6及び中心構造Xを選定することが有効と考えられる。
【0074】
実用的な感度を得るためには、上記式(1)のR1、R2、R3、R4、R5及びR6の置換基を組み合わせ、化合物(a)の吸収波長の一部が、プロセスにおける露光光源(照射光源)に含まれるいずれかの波長の発光波長と重なる様にするのが好ましく、特に、化合物(a)の吸収極大が、該吸収極大に最も近い発光波長の値の±20%以内に入ることが好ましく、±10%以内に入ることがさらに好ましい。
【0075】
同じく感度の点から、プロセスにおける露光光源(照射光源)の発光のいずれかの波長において、化合物(a)のモル吸光係数が0.1以上であることが好ましい。ここでモル吸光係数εとは、Lambert−Beerの法則から導き出される関係で、以下の式で表される。
【0076】
A=εcb
A=吸光度
b=試料中の光路長(cm)
c=溶質の濃度(mol/L)
通常、同じ濃度の溶液を用い、同じ光路長のセルによって、入射波長を変化させながら吸光度の変化を記録すると、波長によって吸光度が変化し、測定対象とされる化合物に固有の波長において最大モル吸光係数εMAXを示す。上記露光波長における前記化合物(a)のモル吸光係数が0.1以上とは、当該化合物(a)を用いて露光を行う際に採用する波長のいずれかで測定した時のモル吸光係数が0.1以上と言う意味であり、最大モル吸光係数εMAXが0.1以上と言う意味ではない。
【0077】
また、ナフタルイミド化合物の最大モル吸光係数の点から考えると、ナフタルイミド化合物の励起状態は、π−π*遷移によるものと考えられる。この励起状態を経る事で、ラジカルが発生していると考えられるので、ナフタルイミドが、π−π*遷移を起こすことが重要である。有機化合物のスペクトルによる同定法第5版(R.M.Silverstein 1993)によれば、π−π*遷移は、10,000以上のモル吸光係数によって特徴付けられるとあるが、実際は、フェノールの様にモル吸光係数が数千程度でもπ−π*遷移を起こすものもあるので、ナフタルイミドの最大モル吸光係数が2,000以上であれば、ラジカルの発生や架橋反応をしやすいと考えられる。従って、化合物(a)の最大モル吸光係数εMAXは2000以上であることが好ましい。
【0078】
一般的な高圧水銀ランプの場合、365nm(i線)、405nm(h線)、436nm(g線)の3つの大きな発光があるが、実際は、333nm等にも発光があるため、これらの波長付近に化合物(a)の吸収極大があれば良い。また、F2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)等で照射を行なう場合には、これらの波長付近に吸収を有していればよい。具体的には、365nm付近の吸収極大は365±73nmの範囲に入るのが好ましく、365±37nmの範囲に入るのがさらに好ましい。
【0079】
上記した汎用性の高い露光光源の主要な発光波長である157nm、193nm、248nm、365nm、405nm、436nmのいずれかの波長の少なくとも一つと重なる領域に吸収波長が重なる場合には、露光波長として利用するのに便利であり、その波長におけるモル吸光係数が0.1以上であることが特に好ましい。
【0080】
所望の波長に対して吸収波長をシフトさせる為に、どのような置換基を導入したら良いかという指針として、Interpretation of the Ultraviolet Spectra of Natural Products (A.I.Scott 1964)や、有機化合物のスペクトルによる同定法 第5版(R.M.Silverstein 1993)に記載の表を参考にすることができる。
【0081】
本発明のラジカル発生剤は、水素引き抜き型であることから、ただ加熱しただけではラジカルを発生させにくく、また、基本骨格がナフタルイミド骨格であることから加熱による分解を起こしにくい。従って、耐熱性に優れており、感光性樹脂組成物に配合した時に該樹脂組成物の保存安定性が良好であり、最終的に得られる硬化膜の安定性も向上し、塗膜の耐光性悪化、着色や退色、塗膜の剥がれやクラックを防止することができる。
【0082】
耐熱性の点から、本発明に係るラジカル発生剤は、前記化合物(a)の90%熱分解温度が50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。
【0083】
ここで、90%熱分解温度とは、後述の本発明の実施例と同様の手法で、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期の重量の90%になった温度のことを言う。同様に95%熱分解温度とはサンプル重量が初期重量の95%になった時の温度である。
【0084】
上記化合物(a)は、塗布適性、硬化後の透明性、露光時の感度等を向上させる点から、感光性樹脂組成物に配合する時の溶解性が高いことが好ましい。
【0085】
塗布時の塗工適性の点からは、化合物(a)は溶剤に対する溶解性が高いことが好ましく、具体的には、使用する溶剤、特に後述する汎用溶剤のいずれかに対する化合物(a)の溶解性が0.1重量%以上であることが好ましい。
【0086】
また、溶剤を用いて透明に溶解した感光性樹脂組成物であっても、その中に含有される固形分同士の相溶性が低い場合には、塗工時に溶剤が揮発すると乾燥中の塗膜内で析出物が生じ、充分な透明性が得られない。そのため、光学部材のように透明性が高い塗膜又は成形体が要求される場合には、感光性樹脂組成物中の他の固形成分、特に後述する化合物(b)のような重合性化合物、その中でもモノマー成分との相溶性が高い化合物(a)を用いることが好ましい。高い透明性が求められる場合には、感光性樹脂組成物を硬化させて形成した塗膜の膜厚が10μmの時に、全光線透過率(JIS K7105)が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0087】
化合物(a)の重合性化合物に対する溶解性が高い場合には、開始剤としての作用が向上するので、露光時の感度にも優れる。この点から、モノマー成分の代表としてアクリル酸メチルを用いて溶解性を評価したときに、化合物(a)の20℃におけるアクリル酸メチルに対する飽和濃度が、0.01mol/L以上であることが好ましい。
【0088】
化合物(a)の溶解性又は相溶性は、ナフタルイミド環に置換基を導入することによって向上させることができる。この観点からは、ナフタルイミド環の置換基として、炭素数1〜15の飽和又は不飽和アルキル基、アルコキシ基、ブロモ基、クロロ基、フルオロ基等が好ましい。また、上記式(2)のXの構造を変更するか又はXに置換基を導入することでも、化合物(a)の溶解性又は相溶性を向上させることができる。化合物(a)のナフタルイミド環又はX部分に導入される置換基又は施される構造変更は、溶解させたい溶剤又は相溶させたい他の固形成分によって種々選択される。例えば、置換基としてカルボキシル基を選択した場合には、水や有機極性溶剤に溶解し易くなり、エステルを導入した場合には、エステル結合を有する溶剤や化合物への溶解性が向上する。
【0089】
上記式(1)のような1,8−ナフタルイミド化合物は、一般にナフタレンの1位と8位に置換基を有し、それらが無水物となって結合している1,8−ナフタル酸無水物から合成される。イミド結合は、まず無水物とアミンが付加反応し、アミド酸が形成された後、加熱や触媒等により脱水縮合反応をすることで形成されるのが一般的である。フタル酸無水物やマレイン酸無水物の様に酸無水物が5員環構造を有する場合は、上記のような2段階で反応が進行し、加熱や触媒等により脱水縮合反応をしないとイミドが形成されず、そのため合成上様々な問題がある。これに対して、1,8−ナフタル酸無水物は、6員環の無水物構造を有しているため、1級のアミンと付加反応をすると脱水反応が進行しやすい。6員環構造は5員環構造よりもゆがみが少なくエネルギー的に安定であり、6員環構造の場合、アミド酸よりもイミドの方が安定である為と考えられる。これらの事から、ナフタルイミド構造はマレイミド構造に比べ合成が非常に簡便であり、合成上有利である。従って、化合物(a)からなる光ラジカル発生剤は、収率、反応速度、管理面、コスト面を含めて生産性も高い。
【0090】
本発明におけるナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)は、公知の種々の手法を用いて合成することができる。具体的に例示すると、ナフタル酸無水物とジアミン、トリアミン、テトラアミン等、複数のアミノ基を有する化合物とを反応させる手法や、ナフタル酸無水物にアミノアルコールを反応させて、N−ヒドロキシアルキル(アリル)ナフタルイミドを合成した後、多価カルボン酸と脱水縮合させる手法や、N−ヒドロキシアルキル(アリル)ナフタルイミドを合成した後、多価カルボン酸クロライドと反応させる手法や、ナフタル酸無水物とアミノ酸を反応させ、N―カルボキシアルキル(アリル)ナフタルイミドを合成し、その後塩化チオニル等で処理し酸クロライド化した後に、多価アミンや多価アルコールと反応させる手法等が挙げられるが、特に限定されない。
【0091】
上記合成方法における原料としては、1,8−ナフタル酸無水物、4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物等の酸無水物の他に、その誘導体を用いても良い。ナフタル酸無水物の誘導体としては、最終的に得たい化合物(a)の置換基R1乃至R6がすでに導入されたものを用いてもよい。また、式(1)の置換基R1〜R6は、イミド化反応を行う前に導入しても良いし、イミド化反応後に導入しても良い。
【0092】
ナフタルイミド構造含有基を2つ有する化合物(a)を合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明の合成方法として特に限定されるものではない。また、類似の手法や公知の手法を用いてナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物を合成することが出来る。
【0093】
先ず、1,8−ナフタル酸無水物をN,N,−ジメチルホルムアミドに投入し攪拌する。そこへ1,12−ジアミノドデカンをナフタル酸無水物と1/2モル滴下し、室温で1〜15時間程度、攪拌する。この時、用いる反応溶媒は、ジメチルホルムアミドに限定されず、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。反応溶媒としては、有機極性溶媒等、最終生成物が溶解する溶媒が好ましい。ナフタル酸無水物は溶解性に乏しく一般の溶媒には、溶解し難いので、アミンと反応することで溶解するようになる場合が多い。
【0094】
1,8−ナフタル酸無水物は、室温でアミンと混合し攪拌するのみでイミド結合を形成する場合がある。さらに反応を加速させるために、室温〜200℃までの範囲で温度を加えても良い。また、反応の際に発生する水を除去するために、トルエン等の共沸溶媒を混合させて用いても良い。
【0095】
このように、数時間攪拌された反応液の溶媒を留去、または、水等に投入することで除去し、固体を取り出す。これを、所望の溶媒にて再結晶を行なうことで、N−置換ナフタルイミド化合物、すなわち、この場合は式(1)で表されるナフタルイミド構造含有基を2つ有する化合物(a)を得ることができる。精製の方法は、再結晶に限定されず、昇華精製やカラムクロマトグライフィー等、公知のあらゆる方法が用いることが可能であるが、コストの観点から再結晶が好ましい。
【0096】
ここで用いる酸無水物は1,8−ナフタル酸無水物だけでなく、目的に応じて4位にブロモ基を有した4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物のように予め置換基が導入されたものを用いても良い。
【0097】
また、ここで用いるアミノ化合物は、化合物(a)に導入すべきナフタルイミド構造含有基の数に応じて、アミノ化合物が有するアミノ基(−NH2)の数を選択すれば良い。
【0098】
ナフタルイミド構造含有基を2つ有する化合物の場合には、ジアミノ化合物を用いることができる。具体的には、3,5−ジアミノ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジアミノビフェニル、3,4−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,3−ジアミノ−4−ヒドロキシピリジン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,4−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノ安息香酸、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’,5,5’−テトラカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3−カルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−カルボキシ−4−アミノフェニル)プロパン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−、2,2’−)ジアミノジフェニルスルフィド、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、o−トリジン,o−トリジンスルホン、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジエチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス−(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4−ジアミノメシチレン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、ビス−{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス{4−(4’−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス{4−(3’−アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、2,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,12−ジアミノドデカン、2−(2−アミノエトキシ)エチルアミン等が挙げられるが特に限定されない。
【0099】
ナフタルイミド構造含有基を3つ有する化合物(a)の場合には、トリアミノ化合物、ナフタルイミド構造含有基を4つ有する化合物(a)の場合には、テトラアミノ化合物を用いて、ナフタルイミドを2つ有する化合物の場合と同様にして、化合物(a)を合成できる。また、合成時のナフタル酸無水物とアミノ化合物の仕込み比を変化させることで、アミノ化合物のアミノ基の数よりナフタルイミド基の導入量が少ない化合物(a)を合成することも出来る。
【0100】
上記の手法以外の合成手法として、ナフタル酸無水物にアミノアルコールを反応させて、N−ヒドロキシアルキル(アリル)ナフタルイミドを合成した後、多価カルボン酸と脱水縮合させる手法を具体的に例示するが、本発明の合成方法として特に限定されるものではない。
【0101】
先ず、1,8−ナフタル酸無水物をN,N,−ジメチルホルムアミドに投入し攪拌する。そこへ2−アミノエタノールをナフタル酸無水物と等モル滴下し、室温で1〜15時間程度、攪拌する。この時、用いる反応溶媒は、ジメチルホルムアミドに限定されず、有機極性溶媒等、最終生成物が溶解する溶媒であればよく、それらは単独で用いても2種以上を混合させても良い。ナフタル酸無水物は溶解性に乏しく一般の溶媒には、溶解し難いので、アミンと反応することで溶解するようになる場合が多い。
【0102】
1,8−ナフタル酸無水物は、室温でアミンと混合し攪拌するのみでイミド結合を形成する場合がある。さらに反応を加速させるために、室温〜200℃までの範囲で温度を加えても良い。また、反応の際に発生する水を除去するために、トルエン等の共沸溶媒を混合させて用いても良い。
【0103】
1,8−ナフタル酸無水物に2−アミノエタノールを反応させて合成した、N−2―ヒドロキシエチルナフタルイミドは、種々の方法で化合物(a)とすることができる。以下に代表例を示すが本発明はこれに限定されない。
【0104】
N−2―ヒドロキシエチルナフタルイミドと、1.2モル等量の4−ジメチルアミノピリジンを、脱水したトルエン等の溶媒に溶解させる。そこに、0.6モル等量のサクシニルクロライドを徐々に滴下し、1〜15時間室温で攪拌する。分液ろうとで、1NHClで処理し、4−ジメチルアミノピリジンを水層に移動させる。水層と油層に分離した後、油層を、さらに、飽和NaHCO3溶液を用い処理し、未反応のサクシニルクロライド由来のコハク酸を水層に移動させ、油層と水層を分離する。このようにして、得られた油層を硫酸マグネシウム等の適当な脱水剤で脱水し、ろ過を行なう。このろ液から溶媒を留去した物を再結晶して目的物を得る。
【0105】
以上の操作の他に、酸触媒によるジカルボン酸との脱水縮合による方法でも同様の化合物を得ることができる。
【0106】
また、特開平5−19505号公報に開示されているようなN−カルボキシアルキルナフタルイミドを用いて、公知の方法でアミドや、エステル、ウレアを合成しても、化合物(a)を得ることが出来る。
【0107】
先に述べた様に、ここで用いる酸無水物は1,8−ナフタル酸無水物だけでなく、目的に応じて4位にブロモ基を有した4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物のように予め置換基が導入されたものを用いても良い。
【0108】
また、ここで用いるアミン化合物も2−アミノエタノールに限定されず目的に応じて、種々のアミン化合物を用いることができる。例えば、プロパノールアミン、ヘキサノールアミン等のオキシアルキルアミン、エトキシエタノールアミン、プロポキシプロパノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等の置換オキシアルキルアミン等、が挙げられる。
【0109】
このようにして得られる本発明に係るラジカル発生剤は、上記ナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、電磁波や放射線等の光を照射して励起させることによりラジカル反応を起こすことができる。ナフタルイミド構造含有基は、自己開裂型ではなく水素引き抜き型であり、しかも耐熱性が良好なナフタレン骨格を有するため、耐熱性、安定性、保存性が高い光ラジカル発生剤を得ることができる。
【0110】
また、ナフタルイミド構造含有基によって発生したラジカルは水素引抜きのメカニズムを経るため、エチレン性不飽和結合等の一般的なラジカル重合性基だけでなく、芳香環等種々の化合物とも反応可能なため、例えばキシレンのような低分子量の芳香族化合物と反応したり或いはPETのような芳香族部位を有する高分子を架橋することができる。また、ラジカル発生部位として機能するナフタルイミド構造含有基を2つ以上有するため、一分子内の2つ以上のナフタルイミド含有基が他の分子と結合して3次元架橋構造を形成することもできる。従って、化合物(a)であるラジカル発生剤は、一般的な光ラジカル重合開始剤として用いられるほか、例えば芳香族ポリマーを含有する樹脂組成物の架橋剤として用いて硬化後の耐溶剤性を向上させることが可能である。
【0111】
また、ラジカル発生剤の一分子内に含まれる複数のナフタルイミド構造含有基(ラジカル発生部位)のうち、どこか1箇所でもラジカルを発生させて重合体等反応物と結合を形成していれば、当該分子に含まれる未反応のラジカル発生部位も全て重合体等反応物の化学構造の一部となる。そのため、ラジカル発生剤の分子内に未反応部位が残っても、個々の未反応部位は重合体等反応物中に遊離の形で残存せず、ポストベーク時に揮発しない。しかも、ラジカル発生部位は未反応のまま残存しても水素引き抜き型であると共に、耐熱性の高いナフタルイミド構造を有しているから、硬化後の塗膜中で揮発性の分解物を生成することがない。そのため、本発明のラジカル発生剤由来の残存物は、塗膜の変質を引き起こしにくい。このように、本発明のラジカル発生剤由来の残存物は、感光性樹脂組成物の硬化塗膜中においてマトリックスと結合し、且つ、化学的に安定した形で存在し、耐熱性、耐候性、安定性を損なわない。
【0112】
従って、本発明の光ラジカル重合開始剤由来の残存物は、作業安全性の問題や、耐光性の悪化、着色や退色の発生、塗膜のはがれやクラックの発生等の最終製品の信頼性を低下させる問題や、薬液寿命を短くする問題や、臭気が発生する問題を引き起こさない。
【0113】
また、マレイミド構造を形成する反応は、加熱や触媒等により脱水縮合反応を促進させないと形成されず、そのため合成上様々な問題があったが、ナフタルイミド構造を形成する反応ではマレイミドに比べて脱水縮合反応が速やかに進行し、合成が非常に簡便であり、合成上有利である。そのため、収率、反応速度、管理面、コスト面を含めて生産性が上がる。
【0114】
次に、本発明に係る感光性樹脂組成物について説明する。
【0115】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上述した式(1)で表されるナフタルイミド構造含有基を2つ以上有する化合物(a)を必須成分として含有することを特徴とし、必要に応じてラジカル反応性化合物又はその他の硬化反応性化合物、高分子量のバインダー成分、水素供与体、化合物(a)以外のラジカル発生剤、又は、その他の成分を含有してもよい。
【0116】
本発明に係る感光性樹脂組成物(以下、単に、樹脂組成物とする。)は、上記化合物(a)からなるラジカル発生剤のナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、電磁波や放射線等の光を照射して励起させることによりラジカル化し、樹脂組成物中でラジカル反応を起こさせる。樹脂組成物中のラジカル反応性化合物は、当該化合物の種類によってラジカル重合や、ラジカル発生剤である化合物(a)とのラジカル二量化反応や、ラジカル性架橋反応等、さまざまなラジカル反応を引き起こし、樹脂組成物を硬化させたり、溶解性を変化させたりする。
【0117】
ここで、架橋とは、架橋結合を生成することをいい、架橋結合とは、鎖状に結合した原子からなる分子のうちの任意の2原子間に橋をかけるようにして形成された結合をいい、この場合の結合は、同一分子内でも他分子間でも良い(化学辞典 東京化学同人 p.1082)。
【0118】
エチレン性不飽和結合を有する化合物(b)は、ラジカル重合可能な硬化反応性化合物として従来から広く利用されており、応用範囲が広いことから、本発明においても好適に用いられる。エチレン性不飽和結合を有する化合物(b)としては、エチレン性不飽和結合を1つ又は2つ以上有する化合物、及び、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合と共に他の官能基を有する化合物を用いることができ、例えば、アミド系モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香族ビニル化合物を挙げることができる。
【0119】
アミド系モノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン等のアミド化合物がある。
【0120】
(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヘキサヒドロフタルイミドエチルアクリレート、コハクイミドエチルアクリレート等のイミドアクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノールのアルキレンオキシド付加物のアクリレート類及びそのハロゲン核置換体;エチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート等の、グリコールのモノまたはジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールおよびそのアルキレンオキサイドの(メタ)アクリル酸エステル化物、イソシアヌール酸EO変性ジまたはトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0121】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオールと有機ポリイソシアネートの反応物に対して、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを反応させた反応物等が挙げられる。
【0122】
ここで、ポリオールとしては、低分子量ポリオール、ポリエチレングリコール及びポリエステルポリオール等があり、低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール等が挙げられ、ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールとしては、これら低分子量ポリオール及び/又はポリエーテルポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分との反応物が挙げられる。
【0123】
また、上記ポリオールと反応させる有機ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0124】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキシド付加物等のポリオールと、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びテレフタル酸等の二塩基酸又はその無水物等の酸成分とからの反応物等が挙げられる。
【0125】
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸を付加反応させたもので、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、フェノールあるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテルのジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加反応体等が挙げられる。
【0126】
化合物(b)は、ラジカル重合性化合物又はラジカル重合以外のラジカル反応性化合物を3次元架橋する点からはエチレン性不飽和結合を2個以上、特に3個以上有することが好ましい。
【0127】
また、感光性樹脂組成物を、電子部材やカラーフィルター等の用途で露光によりパターンを形成するレジストとして用いる場合には、感光性樹脂組成物のアルカリ現像性を向上させる為に、化合物(b)としてカルボキシル基やフェノール性水酸基、スルホン酸基、水酸基等のアルカリ可溶性や、親水性の官能基を有すものを用いても良い。
【0128】
本発明の感光性樹脂組成物には、当該組成物の未硬化状態での成膜性及び硬化後の塗膜物性を調節するために、バインダー成分として高分子化合物を配合しても良い。高分子化合物としては、公知のあらゆる高分子化合物を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート;酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル又はビニル化合物の重合体及び共重合体;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のアセタール樹脂;シリコーン樹脂;フェノキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂等に代表されるエポキシ樹脂;ポリウレタン等のウレタン樹脂;フェノール樹脂;ケトン樹脂;キシレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリベンゾオキサゾール樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ノボラック樹脂;ポリカルボジイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリノルボルネン等の脂環式高分子;シロキサン系高分子等の公知のあらゆる高分子化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
必須成分である化合物(a)が有するナフタルイミド構造含有基によって発生したラジカルは、エチレン性不飽和結合だけでなく、芳香環等種々の化合物の反応も進行するため、エチレン性不飽和結合を有する化合物が存在しない系でも、硬化、及び/または溶解性の変化を引き起こすことができる。従って化合物(a)は、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有する感光性樹脂組成物を通常のラジカル重合反応により硬化させるだけでなく、例えば、ポリスチレンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の一般的には非重合性の芳香族ポリマーを含有する感光性樹脂組成物を架橋反応により硬化させて、耐溶剤性、耐熱性、硬度、強度、密着性等の膜物性を向上させることができる。
【0130】
そのため、感光性樹脂組成物を調製するために化合物(a)と混合する高分子量の硬化反応性バインダー成分としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物等の一般的なラジカル重合性化合物ばかりでなく、公知のあらゆる高分子化合物を用いることができる。
【0131】
また、化合物(a)自体がラジカル反応性化合物として機能する場合には、ラジカル反応性化合物を混合しなくても感光性樹脂組成物を調製することができる。従って、この場合には、高分子量の非反応性バインダー成分を用いることも可能であり、バインダー成分を全く用いなくてもよい。
【0132】
これらの高分子化合物は、単独で用いても、2種以上を組合わせて用いても良い。バインダー成分である高分子化合物は、感光性樹脂組成物の用途にもよるが重量平均分子量が通常、10,000,000以下であることが好ましい。分子量が大きすぎると、溶解性や加工特性の悪化を招く。
【0133】
本発明に係る樹脂組成物中における化合物(a)の量は、感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1重量%以上であることが、光照射による樹脂組成物の硬化速度が遅くなったり、発生するラジカルの量が少ないため架橋密度が低くなり、塗膜の強度や塗膜のガラス転移温度が低下することを防ぐ点から好ましく、感度や塗膜の物性の点から、1重量%以上であることが更に好ましい。この場合、目的に応じて諸物性を考慮の上、化合物(b)及び/又は上記高分子化合物に対する化合物(a)の混合割合は適宜選択できる。なお、感光性樹脂組成物の固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0134】
また、硬化反応性化合物として、化合物(b)と共に他のラジカル反応性化合物を組み合わせて用いる場合には、組み合わせるラジカル反応性化合物の種類及び量に応じて化合物(a)の量を適宜調節する。
【0135】
本発明の感光性樹脂組成物が化合物(b)を含む場合、充分な光硬化性を得るために化合物(b)は、感光性樹脂組成物の固形分全体の1重量%以上であることが好ましい。感光性樹脂組成物は、化合物(b)以外の高分子量のバインダー成分を含んでいても良く、その場合には用途に応じて、樹脂組成物全体の固形分の1重量%以上97重量%以下が好ましい。エチレン性不飽和結合を含まない高分子量バインダー成分が97重量%よりも多い場合は、光による硬化性が低下しやすい。
【0136】
また、化合物(a)は水素引き抜き型のラジカル発生剤であるので、よりラジカルの発生効率が向上し感度が良くなる点から、本発明の樹脂組成物中に水素供与体が含まれていることが好ましい。水素供与体の水素供与性基としては、アルキル基のように炭素に直接水素がついている官能基や、一般に水素供与性基として用いられているアミン、チオール、水酸基又はエーテル結合を有する有機基等が挙げられる。特に、水素を供与しやすいチオール、アミン、水酸基、及び、エーテル結合を有する有機基が感度の点から好ましい。エーテル結合は、該エーテル結合の隣りの炭化水素構造(アルカン、アルケン)の水素が引き抜かれ易いと言われている。従って、エーテル結合を含む水素供与基は、そのような水素を有する構造であることが好ましい。
【0137】
水素供与体に含まれる水素供与性基の配合割合は、感度の点からは、樹脂組成物に含まれているナフタルイミド部位のモル数と同じかそれ以上が好ましいが、感度と最終的に得られる塗膜の物性との関係により、適宜、適正な値を選択できる。
【0138】
本発明の感光性樹脂組成物を光により硬化させる際には、ラジカル反応を促進するために、必要に応じて化合物(a)と共に、その他の光ラジカル発生剤を使用しても良い。化合物(a)と共に他の光ラジカル発生剤を併用する場合には、該他の光ラジカル発生剤が分解物を生じさせ、硬化膜の変色や物性、分解物の揮発、感光性樹脂組成物の安定性、保存性等の問題を起こす可能性がある。しかしながら、化合物(a)の併用によって他の光ラジカル発生剤の使用量を少なくすることができるので、他の光ラジカル発生剤しか用いない場合と比べて、上記諸問題は発生し難く、仮に発生したとしても程度が軽いので、充分なラジカル反応性を引き出しながらも、光ラジカル発生剤による問題を実用的に許容できる程度に抑えることができる。
【0139】
その他の光ラジカル発生剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン等のアセトフェノン;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン及び2−アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン及び2,4−ジイソピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のモノアシルホスフィンオキシドあるいはビスアシルホスフィンオキシド;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;並びにキサントン類等が挙げられる。
【0140】
これらの光ラジカル発生剤は単独で使用することも、安息香酸系、アミン系等の光重合開始促進剤と組み合わせて使用することもできる。これら光ラジカル発生剤の好ましい配合割合は、樹脂組成物全体に対して0.1重量%以上35重量%以下で、より好ましくは、1重量%以上10重量%以下である。
【0141】
本発明に係る感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
【0142】
これら任意成分の配合割合は、樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜95重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、95重量%を越えると、樹脂組成物量が少なく樹脂組成物の特性が最終生成物に反映されにくい。
【0143】
照射光源の発光を吸収してしまうような成分を感光性樹脂組成物中に多量に配合する場合には、化合物(a)に光が充分到達しなくなり、感度が低下する。そのため、樹脂組成物の感度を重視する点から、露光光源の発光波長と樹脂組成物に混合されている化合物(a)の吸収波長が重なる波長領域における、化合物(a)以外の成分の透過率が20%以上であることが好ましい。
【0144】
また、本発明に係る感光性樹脂組成物は、溶剤を用いて適切な濃度に希釈しても良い。溶剤としては各種の汎用溶剤、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、修酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。また、反応性希釈剤として、常温で液体のエチレン性不飽和化合物等、反応性基を構造中に有するような化合物を溶剤として用いても良い。これらの溶媒は単独もしくは組み合わせて用いられる。また、これら溶剤は、通常例えば孔径0.05μm〜0.2μm程度のフィルター等、既知の種々の方法で不純物を濾過して用いても良い。
【0145】
樹脂組成物は、必須成分である化合物(a)に、必要に応じて化合物(b)等の硬化反応性化合物、高分子量のバインダー成分等の任意成分を場合や用途に応じて攪拌等して混合することにより調製できる。
【0146】
このようにして得られる本発明に係る感光性樹脂組成物は、パターン形成材料(レジスト)、コーティング材、印刷インキ、接着剤、充填剤、成形材料、3次元造形等、光の照射によって硬化したり又は溶解性が変化する材料が用いられている公知の全ての分野・製品に利用できるが、特に、耐熱性が必要で高度の信頼性を要求される、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料を形成するのに適している。
【0147】
例えば、カラーフィルターの場合には、画素部、当該画素部の境界に設けられる遮光部(ブラックマトリックス)、保護膜、セルギャップを維持するためのスペーサーを上記感光性樹脂組成物の硬化物により形成することができる。
【0148】
電子部品の場合には、例えば、半導体装置のアンダーフィル剤、封止剤、等が例示できる。
【0149】
層間絶縁膜としては、耐熱性、絶縁信頼性が要求されるビルドアップ基板用の層間絶縁膜や燃料電池における層間絶縁膜、自動車部品や家電製品の絶縁コーティング、等を上記感光性樹脂組成物の硬化物により形成することができる。
【0150】
また、配線保護膜としては、プリント配線板の表面の配線保護層であるソルダーレジストや、電線の表面被覆、等が例示できる。
【0151】
光学部材の場合には、各種光学レンズのオーバーコートや、反射防止膜、光導波路、分波装置等の光回路部品、レリーフ型、及び体積型のホログラム、等が例示できる。
【0152】
建築材料の場合には、壁紙、壁材、床材その他の揮発成分の少ない表皮材料、接着・粘着材料、インキ等が例示できる。
【0153】
本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜ホログラム又は建築材料は、高耐熱性、高安定性の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されているため、高耐熱性、高安定性であり、そのため生産の歩留まりも高いというメリットがある。
【0154】
【実施例】
1.製造例
(製造例1)(ポリ−4−メチルスチレンの合成)
攪拌機を取りつけた500mLのセパラブルフラスコに酢酸エチル30mLを入れ、窒素を100mL/minで流しながら、60℃のオイルバスにつけ攪拌した。そこへ、AIBN(2,2'−アゾビスイソブチロニトリル)400mgを溶かした4−メチルスチレン50gを滴下した。7時間攪拌を続けた後、反応液を酢酸エチルで適当に希釈し、エタノールに滴下することで再沈殿を行ない精製し、42.3gの目的物(高分子1)を得た。
【0155】
(製造例2)(4−メチルスチレンとハイドロキシスチレンの共重合体の合成)
製造例1と同様の手法で、原料を4−メチルスチレン41.3g(0.35mol)と4−アセトキシスチレン24.3g(0.15mol)の混合系にして重合を行なった。再沈殿精製の後、得られた高分子を、テトラヒドロフランに溶解させ、そこへ、NaOH飽和メタノール溶液を適量滴下することで脱保護をし、その後、再沈殿によって精製しアルカリ可溶性高分子1を42.9g得た。
【0156】
(製造例3)(エポキシ基含有アクリルポリマーの合成)
攪拌機を取りつけた500mLのセパラブルフラスコに、乾燥させた酢酸エチルを150ml入れ、窒素を100mL/minで流しながら60℃のオイルバスに浸漬し攪拌した。そこへ、AIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)200mgを溶かし込んだメチルメタクリレート(MMA)30.1g(0.3mol)と、グリシジルメタクリレート(GMA)14.2g(0.1mol)の混合溶液を、徐々に滴下した。滴下終了から4時間後に反応を終了し、n−ヘキサンで再沈殿することにより、エポキシ基含有アクリルポリマーを42.3g得た。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、150000であり、NMRによる共重合比はGMA:MMA=1:2.6であった。
【0157】
(製造例4)
1Lのなす型フラスコに、1,8−ナフタル酸無水物19.8g(0.1mol)とN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)500mLと触媒量のピリジンを入れ、攪拌した。そこに、2−アミノエタノール6.7g(0.11mol)を滴下し、室温で15時間攪拌した。ロータリーエバポレーターによって、DMFを留去し、メタノールによって再結晶をし、N−2−ヒドロキシエチルナフタルイミドの針状結晶を22.5g得た(前駆体化合物1)。
【0158】
【化7】
【0159】
(製造例5)
使用原料の酸無水物を、4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物に変更した以外は、製造例4と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は製造例4と同じモル数で仕込んだ(前駆体化合物2)。
【0160】
【化8】
【0161】
(製造例6)
1Lのなす型フラスコに、1,8−ナフタル酸無水物19.8g(0.1mol)とDMF500mLと触媒量のピリジンを入れ、攪拌した。そこに、β−アラニン8.9g(0.1mol)を添加し、室温で4時間攪拌した後、130℃で5時間攪拌した。ロータリーエバポレーターによってDMFを留去し、メタノールによって再結晶をし、N−2−カルボキシエチルナフタルイミドの結晶を20.9g得た(前駆体化合物3)。
【0162】
【化9】
【0163】
(製造例7)
前駆体化合物1(N−2−ヒドロキシエチルナフタルイミド)9.6g(40mmol)と、4−ジメチルアミノピリジン5.4g(44mmol)を1Lの3つ口フラスコに投入し、中央部の口に塩化カルシウム管をつけ、残りの2つはシリコンWキャップ(商品名:アズワン社製)で、密閉する。そこへ予め脱水されたテトラヒドロフラン(THF)500mlをシリンジを用い、投入し室温で攪拌する。そこへ、アクリル酸クロライド4.0g(44mmol)を滴下し、室温で10時間攪拌する。その後、反応液を分液ろうとで、1N HClで処理し、4−ジメチルアミノピリジンを水層に移動させた。水層と油層に分離した後、油層を更に飽和NaHCO3溶液を用い処理し、未反応のアクリル酸クロライド由来のアクリル酸を水層に移動させ、油層と水層を分離した。このようにして、得られた油層を硫酸マグネシウム等の適当な脱水剤で脱水し、ろ過を行なった。このろ液から溶媒を留去した物をクロロホルム−酢酸エチル混合溶媒で再結晶して目的物を10.3g得た。(前駆体化合物4)
【0164】
【化10】
【0165】
2.ラジカル発生剤の調製
(実施例1)
1Lのなす型フラスコに、1,8−ナフタル酸無水物19.8g(0.1mol)とN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)500mLと触媒量のピリジンを入れ、攪拌した。そこに、1,12−ジアミノドデカン10.2g(0.5mol)を投入し、130℃で5時間攪拌した。ロータリーエバポレーターによってDMFを留去し、テトラヒドロフランによって再結晶をし、目的物の針状結晶を25.5g得た(化合物1)。
【0166】
【化11】
【0167】
(実施例2)
使用原料の酸無水物を、4−クロロ−1,8−ナフタル酸無水物に変更した以外は実施例1と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は実施例1と同じモル数で仕込んだ。(化合物2)
【0168】
【化12】
【0169】
(実施例3)
化合物2 3.2g(5mmol)を、1Lの三つ口フラスコに投入し、乾燥させたイソプロピルアルコール500mLに溶解させ、室温で攪拌させた。そこへ、乾燥させたイソプロピルアルコール200mLに1gの金属ナトリウムを反応させて得られた、ナトリウムイソプロポキシドのイソプロピルアルコール溶液を、徐々に滴下しながらTLC(薄層クロマトグラフィー)で反応の経過を追跡し、原料である化合物2のスポットが消失するまで滴下を続け、化合物2のスポットが消失した時点で反応を終了させる。反応液を純水5Lに投入し、析出物を乾燥後、カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物3を得た。
【0170】
【化13】
【0171】
(実施例4)
使用原料の酸無水物を、4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物に変更した以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は実施例1と同じモル数で仕込んだ(化合物4)。
【0172】
【化14】
【0173】
(実施例5)
使用原料のジアミンを、ジエチレントリアミンに変更し、反応温度を40℃にした以外は、実施例1及び4と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は実施例1と同じモル数で仕込んだ。(化合物5、化合物6)
【0174】
【化15】
【0175】
(実施例6)
前駆体化合物1(N−2−ヒドロキシエチルナフタルイミド)9.6g(40mmol)と、4−ジメチルアミノピリジン5.4g(44mmol)を1Lの3つ口フラスコに投入し、中央部の口に塩化カルシウム管をつけ、残りの2つはシリコンWキャップ(商品名:アズワン社製)で、密閉する。そこへ予め脱水されたテトラヒドロフラン(THF)500mLをシリンジを用い、投入し室温で攪拌する。そこへ、予め10mLの脱水されたTHFに溶解してあったコハク酸クロライド(サクシニルクロライド)を3.4g(22mmol)を滴下し、室温で10時間攪拌する。その後、反応液を分液ろうとで、1NHClで処理し、4−ジメチルアミノピリジンを水層に移動させた。水層と油層に分離した後、油層を、さらに、飽和NaHCO3溶液を用い処理し、未反応のコハク酸クロライド由来のコハク酸を水層に移動させ、油層と水層を分離した。このようにして、得られた油層を硫酸マグネシウム等の適当な脱水剤で脱水し、ろ過を行なった。このろ液から溶媒を留去した物をクロロホルム−酢酸エチル混合溶媒で再結晶して目的物を9.4g得た。(化合物7)
【0176】
【化16】
【0177】
(実施例7)
使用原料の化合物を、4−ブロモ−1,8−ナフタル酸無水物由来の前駆体化合物2に変更した以外は、実施例6と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は実施例6と同じモル数で仕込んだ。(化合物8)
【0178】
【化17】
【0179】
(実施例8)
スチレン−マレイミド共重合体(Mn=1600、共重合比=1.3:1、アルドリッチ製)11.7g(上記のモル比による1構成単位あたりの換算値の約50mmol)と前駆体化合物1(N−2−ヒドロキシエチルナフタルイミド)12.1g(50mmol)を、300mLのなすフラスコに入れ、予め乾燥させたテトラヒドロフラン100mLに溶解させた。そこへ触媒量の濃硫酸を滴下し、60℃で96時間撹拌した。その後、反応液をヘキサンに投入して再沈殿を行い、濾過、乾燥し、ナルタルイミド基を導入した目的物20.3gを得た。(化合物9)
【0180】
【化18】
【0181】
(実施例9)
実施例8の使用原料である前駆体化合物1を、前駆体化合物2に変更した以外は、実施例8と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は実施例8と同じモル数で仕込み、目的物21.1gを得た。(化合物10)
【0182】
【化19】
【0183】
(実施例10)
前駆体化合物4を3.0g(10mmol)とメタクリル酸メチル3.0g(30mmol)をクロロホルム50mLに溶解させ攪拌した。反応容器中に100mL/minで窒素を流しながらAIBN(2,2’−アゾビスブチロニトリル)を200mg投入し、50℃で14時間攪拌後、n−ヘキサンで再沈殿し、前駆体化合物4とメタクリル酸メチルの共重合体を、5.2g得た(化合物11)。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量はポリスチレン換算で39000であり、NMRによる重合比は、前駆体化合物4:メタクリル酸メチル=1:3.2であった。
【0184】
【化20】
【0185】
(実施例11)
8.1gのエポキシ基含有アクリルポリマー(製造例3)と5.4g(20mmol)の前駆体化合物3を、300mlの乾燥させたジメチルホルムアミド(DMF)に溶かし、トリエチルアミン1滴を加えた後、100℃で20時間攪拌した。反応液を、n−ヘキサンで再沈殿し、目的の化合物を12.7g得た(化合物12)。
【0186】
【化21】
【0187】
(比較例1)
上部にディーンスターク菅を取りつけた1Lのなす型フラスコに、マレイン酸無水物9.8g(0.1mol)とN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMF)400mLとトルエン100mLと触媒量のピリジンを入れ、攪拌した。そこに、1,12−ジアミノドデカン10.2g(0.5mol)を投入し、130℃で15時間、トルエンと共沸して来た水を除去しながら攪拌した。ロータリーエバポレーターによって、DMFを留去し、テトラヒドロフランによって再結晶をし、目的物を12.5g得た。(比較化合物1)
【0188】
【化22】
【0189】
(比較例2)
実施例8の使用原料である前駆体化合物1を、ドデカノールに変更した以外は、実施例8と同様の条件で反応を行った。なお、各原料は、実施例8と同じモル数で仕込み、目的物を12.2g得た。(比較化合物2)
【0190】
【化23】
【0191】
3.感光性樹脂組成物の調製
(実施例12〜23、比較例3〜6)
実施例1〜11で得られた化合物1〜12、比較例1、2で得られた比較化合物1、2、及び、光ラジカル発生剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ製)、及び、ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)の各々と、3官能アクリレート(商品名:M305、東亞合成製)とを、3官能アクリレートのエチレン性二重結合に対して、各化合物の光ラジカル発生部位がモル比(光ラジカル発生部位/エチレン性二重結合)で1/100になるように混合し、THFで溶解して、実施例12〜23の感光性樹脂組成物1〜12及び比較例3〜6の比較組成物1〜4を作製した。
【0192】
(実施例24)
実施例10で得られた化合物11と3官能アクリレート(商品名:M305、東亞合成製)を、重量ベースで等量混合し、THFで溶解して、感光性樹脂組成物13を作製した。
【0193】
(実施例25〜36、比較例7〜9)
上記実施例12〜23及び比較例3、4、6で得られた感光性樹脂組成物に、光ラジカル発生部位と等モルのトリエタノールアミンを水素供与体として添加し、実施例25〜36の感光性樹脂組成物14〜25及び比較例7〜9の比較組成物5〜7を作製した。
【0194】
(実施例37)
上記実施例24で得られた感光性樹脂組成物13に、光ラジカル発生部位と等モルのトリエタノールアミンを水素供与体として添加し、実施例37の感光性樹脂組成物26を作製した。
【0195】
4.評価試験
(1)耐熱性評価1
熱重量分析装置(パーキンエルマー社製TGA7)を用いて、10℃/min.の昇温条件で化合物1と、比較化合物1の熱分解温度を測定した。測定結果を図1に示す。この結果より、化合物1は200℃まではほとんど分解せず、300℃での重量減少が2%程度と非常に熱安定性が高いことがわかる。一方、比較化合物1は200℃で12%程度、300℃で20%程度重量減少することがわかった。
【0196】
(2)耐熱性評価2
差動型示差熱天秤(リガク製TG8120)を用いて窒素雰囲気下10℃/minの昇温速度で化合物1〜8、比較化合物1及び光ラジカル発生剤(商品名:イルガキュア907、チバスペシャルティケミカルズ製)の90%熱分解温度を測定した。測定結果を表1に示す。この結果より、化合物1〜8は、比較化合物であるマレイミド(比較化合物1)やIrg907に比べ熱分解点が高く、耐熱性が良好であることがわかる。
【0197】
【表1】
【0198】
(3)UV吸収評価
化合物1〜4及び7についての1.0×10−5mol/Lのアセトニトリル溶液を用い、UV吸収スペクトルを測定した。測定結果を図2、図3及び表2に示す。
【0199】
【表2】
【0200】
この結果よりナフタルイミドの芳香環部位に置換基を持たない化合物1及び7は溶液中では330nmに極大を持ち、その波長でのモル吸光係数から、π―π*遷移による励起であることが推察される。
【0201】
モル吸光係数によって、その吸収がどの遷移状態に対応する吸収かを見積もることが出来る。一般に、モル吸光係数が大きいほど、光を吸収しやすく、つまり励起されやすく、ラジカルの発生や架橋反応の進行がしやすい、つまり感度の点からは、露光波長におけるモル吸光係数が大きい分子の方が良い。
【0202】
また、ナフタルイミド基の4位に臭素を導入した化合物4、及び、塩素を導入した化合物2では、無置換の化合物に比べて極大波長が10nmほど長波長にシフトしており、高圧水銀灯の発光波長である365nmの波長での吸収が大きくなっている。さらに、ナフタルイミドの芳香環への置換基としてイソプロピルエーテル基を導入した化合物3では、吸収極大が365nmにあり、高圧水銀灯の発光波長である365nmに非常に大きな吸収を持つことがわかる。
【0203】
ナフタルイミドによるラジカルの生成は、水素引き抜きによるものと考えられる。一般に、水素引き抜きによるラジカルの生成は、カルボニル基の3重項励起状態によって引き起こされるといわれており、化合物が励起されても蛍光発光や熱失活に吸収したエネルギーを使ってしまう割合が多いと、ラジカルの発生効率が落ちると思われる。
【0204】
そのような水素引き抜き以外の失活過程の割合が少ない場合には、露光波長での吸収が大きければ大きいほど、感光性化合物は励起されやすくなる為、ラジカルの発生効率も向上すると考えられるので、化合物2、3及び4は無置換の化合物1及び7と比べて365nmの波長に対して感度が向上すると予想される。
【0205】
更に、あとに述べる種々の実験から、π−π*遷移の励起が観測されるような波長の電磁波が照射されている時と、いない時では、照射されている時の方がラジカルの発生効率が良好になっており、ナフタルイミド部位のラジカル発生メカニズムは、π−π*遷移が重要であると推測される。一般にπ−π*遷移は、モル吸光係数が2000以上の場合が多く、この値以上のモル吸光係数を有する化合物であれば、メカニズムから考慮するとラジカルの発生や架橋反応の進行がしやすいと考えられる。
【0206】
(4)硬化性評価1
製造例1で合成したポリ−4−メチルスチレン5.9gと、化合物1 1.4gをクロロホルムに溶解し、ガラス基板上にスピンコートで塗膜を形成した。
【0207】
上記塗膜に、手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)でh線換算で紫外線照射を行い、その後、塗膜が硬化しているか確認した。その際に、333nm、365nm,405nm、436nmの波長の光を通すフィルターを用いたものと、フィルターを用いず高圧水銀ランプの発光波長をそのまま用いて露光したものと2種類検討した。硬化性は、露光後の塗膜を24時間クロロホルム溶液に浸漬した後の塗膜の状態で判断した。
【0208】
結果を表3に示す。フィルター無しの場合は1000mJで、フィルターありの場合は5000mJで塗膜がクロロホルムに不溶になった。露光により、ポリ−4−メチルスチレンを、化合物1が架橋することで、塗膜の溶解性が低下し硬化したものと考えられる。
【0209】
また、フィルターの有無による硬化性の違いは、化合物1の紫外線吸収波長領域が360nm以下である為、その領域の波長の発光が大幅にカットされているフィルターありの方が、感度が低下したものと考えられる。
【0210】
つまり、ナフタルイミド化合物の吸収が、露光波長と重なっていればいるほど感度が上がると示唆される。また、この時カットされている波長領域のモル吸光係数が2000以上であることから、この領域ではπ−π*遷移が起こっていると考えられ、ラジカルの発生にπ−π*遷移が大きく関わっていると推測される。一方で、それよりも小さいモル吸光係数をもつn−π*遷移も起こっており、その吸収が、π−π*遷移の大きな吸収によって隠されている可能性もある。
【0211】
上記で作製した塗膜にライン/スペース:1mm/1mmのストライプマスクを通してフィルター無しで1000mJ露光した後、クロロホルムに浸漬することで、上記塗膜の良好なストライプパターンを得ることが出来た。
【0212】
また、同様にして、製造例2で重合したアルカリ可溶性高分子6.0gと化合物1 1.4gを混合して作製した塗膜も上記のマスクを通して露光した。その後、1NのNaOH水溶液に浸漬し未露光部を洗い流した所、良好なストライプパターンを得ることが出来た。
【0213】
【表3】
【0214】
(5)硬化性評価2
多官能モノマーとして、水酸基含有5官能アクリレート(商品名サートマーSR399、日本化薬製)、6官能アクリレート(商品名M400、東亞合成(株)製)を用い、化合物1を多官能モノマーの2重結合に対して、モル比で1/20混合した溶液を作製しガラス基板上にスピンコートした。比較の為に、化合物1を、比較化合物1、光ラジカル発生剤イルガキュア369(商品名)(チバスペシャルティケミカルズ製)及び、ベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)に置き換えた塗膜も作製した。
【0215】
上記塗膜に、手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)でh線換算で5000mJ/cm2照射を行い、その後、塗膜が硬化しているか確認した。硬化の程度は、露光後の塗膜を触指することで判定し、塗膜表面がべとつかず、充分硬い膜となっている場合を○、露光を行っても液状のままであったものを×とした。
【0216】
表4に評価結果を示す。化合物1は比較化合物1及びイルガキュア369と同様に多官能アクリレートを硬化できることから、ナフタルイミドがラジカル発生剤として機能していることが分かる。
【0217】
【表4】
【0218】
(6)硬化性評価3
感光性樹脂組成物1〜13及び比較組成物1〜4の各々を、クロムをスパッタしたガラス基板上にスピンコートし、塗膜を得た。
【0219】
上記塗膜にUV露光しながら、赤外分光装置で810cm-1のピークの減少量を経時的に記録し、2重結合の消失がどの程度進行しているか確認した。測定時のサンプル周囲の雰囲気は窒素置換した。UV露光装置は、ウシオ電機製UVスポットキュアSP−III型(標準反射鏡タイプ)を用い、UVランプは、ウシオ電機製USH−255BYを用いた。また、赤外分光装置は、BIO RAD製FT S6000を用いた。
【0220】
3官能アクリレートM305との相溶性、露光時の臭気、露光量に対する2重結合の減少量(反応率)、塗膜の着色について観察した結果を表5に示す。
【0221】
比較組成物2は、光ラジカル発生部位を持たない比較化合物2を用いているので、2重結合がほとんど反応してない。組成物1〜13はナフタルイミド部位を持つ化合物を用いており、該化合物がアクリルモノマーであるM305と相溶するものは反応性が高い。ナフタルイミド基含有化合物がM305と相溶していることで発生したラジカルの拡散が進行し反応していると考えられる。
【0222】
また、比較組成物1は、マレイミド基を持つ比較化合物1を用いており、該比較化合物1はM305と相溶するものの反応がそれほど進んでいない。また、同じく水素引抜き型のラジカル発生剤であるベンゾフェノンも同様である。市販の光ラジカル発生剤であるIrg907は反応率が高く、反応が良好に進行しているが自己開裂型のラジカル発生剤であるため、塗膜中に不純物が残存する。
【0223】
また、露光波長における吸収が大きい化合物3は、置換基の異なる他の類似化合物に比べ、3官能モノマーM305との相溶性は良好なものの、露光波長への吸収に比べて、反応率は向上しなかった。
【0224】
これは、化合物3が蛍光を強く発光することによるものであると推察される。1.0×10−5mol/Lのアセトニトリル溶液にて、吸収極大波長で励起を行ない、蛍光の発光強度を測定した所、化合物3は化合物1や化合物2に対して10倍以上も蛍光の発光強度が強く、吸収したエネルギーの多くを蛍光として外部に放出していることが確認された。このことは吸収した光のエネルギーを充分ラジカル生成へ利用していない事を示していると思われる。その為、時間当りの反応率という観点においては蛍光の発光強度の小さいナフタルイミド化合物の方が好ましい。
【0225】
【表5】
【0226】
(7)硬化性評価4
製造例1で合成したポリ−4−メチルスチレン5.9gと化合物1 1.4gをクロロホルムに溶解し、ガラス基板上にスピンコートで塗膜を形成した。(Sample A)
上記塗膜を、UVを露光しながら、赤外分光装置(BIO RAD社製FTS6000)で1725cm-1のピークの増加量を経時で記録し、どの程度架橋反応が進行しているか確認した。
【0227】
UV露光装置はウシオ電機製UVスポットキュアSP-III型(標準反射鏡タイプ)を用い、UVランプは、USH−255BY (ウシオ電機製)を用いた。
【0228】
また、ナフタルイミド部位が水素引き抜き型ラジカル発生剤であるか確認するため、ナフタルイミド部位と等モルになるように、Sample Aの組成に更にn−ドデカノールを添加した塗膜も作製し同様の検討を行なった。(Sample B)
測定結果を図4に示す。この結果より、塗膜中にドデカノールを添加した系の方が約2倍、ピークの増加量が大きい事から、水素供与性基を塗膜中に含有した方が架橋反応がはやく進行していることがわかる。メカニズム的には炭素についた水素も引き抜かれるが、チオールや水酸基、アミノ基の場合、水素がより引き抜かれやすいため、ラジカルの発生効率が上昇し、感度が向上したものと考えられる。
【0229】
つまり、ナフタルイミド基は水素供与性基が共存した状態で、露光することで感度を高められると考えられる。
【0230】
(8)硬化性評価5
ナフタルイミド部位が水素引き抜き型ラジカル発生剤であることを確認するため、感光性樹脂組成物14〜26及び比較組成物5〜7各々を用い、上記の硬化性評価3と同じ手順で、3官能アクリレートM305との相溶性、露光時の臭気、露光量に対する2重結合の減少量(反応率)、塗膜の着色について観察した。結果を表6に示す。
【0231】
一部のサンプルを除き、トリエタノールアミンの添加により反応率が向上した。特に、低露光量での反応率の上昇が見受けられる。つまり、ナフタルイミド基は水素供与性基が共存した状態で、露光することで感度を高められると考えられる。
【0232】
【表6】
【0233】
(9)モノマー成分に対する溶解性
(メタ)アクリロイル系多官能モノマーを、ナフタルイミドによって光硬化させる場合に、マトリックスに対する溶解性と反応率との関係を確認するために、ナフタルイミド部位の構造が同じでスペーサー部位が異なる構造をもつ化合物1及び7について、上記の硬化性評価を行なった際のマトリックスである3官能モノマーM305(東亞合成製:商品名)に対する20℃における飽和濃度を求めた。さらに、溶解性の評価を一般化するために、アクリル酸メチルに対する20℃における飽和濃度も求めた。その結果を第7表に示す。
【0234】
【表7】
【0235】
この結果より、溶解性が良好なサンプルほど反応率が良好である事がわかる。つまり、ナフタルイミド部位が同じ構造の場合、イミド結合の窒素原子より伸びる側鎖の構造によってマトリックスへの溶解性が変化し、この溶解性を良好にすることで、低露光量でも高い反応率を得られると思われる。
【0236】
(10)アウトガス評価
上記の感光性組成物1、2、3、7及び比較組成物3を、ガラス基板上にスピンコートし50℃のホットプレート上で1分間加熱後、手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA-1200)で、高圧水銀灯によりh線換算で2000mJ/cm2の露光を行ない、厚さ25μmの塗膜を得た。
【0237】
その塗膜が形成されたガラス基板を、1cm×1.5cmの大きさに切り出し、250℃で1時間加熱時に発生したガスを、GC-MS(株式会社島津製作所製 QP-5000)を用いて分析した。
【0238】
その他の測定条件は以下の通りである。
【0239】
その結果、全てのサンプルにおいて、多官能モノマーM305由来の分解物が検出された。さらに、比較組成物3を用いた塗膜のみ、それ以外の光ラジカル発生剤由来の分解物と思われる芳香族化合物が数種類検出された。
【0240】
以上の事より、本発明のナフタルイミド化合物は、加熱によって開始剤由来の分解物をガスとして発生させる事がないことが明らかとなった。
【0241】
【発明の効果】
本発明に係るラジカル発生剤は、ナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、光を照射して励起させることによりラジカル反応を起こすことができる。ナフタルイミド構造含有基は、自己開裂型よりも安定性が高い水素引き抜き型であり、しかも耐熱性が良好なナフタレン骨格を有するため、耐熱性、安定性、保存性が高い光ラジカル発生剤を得ることができる。
【0242】
また、本発明に係るラジカル発生剤は、エチレン性不飽和結合だけでなく芳香環等種々の化合物とも反応可能であり、エチレン性不飽和結合を有さない樹脂組成物であっても、高分子を架橋したり或いはラジカル反応をすることができる。従って、本発明に係る光ラジカル発生剤は、一般的な光ラジカル重合開始剤として用いられるほか、例えば芳香族ポリマーを含有する樹脂組成物の架橋剤として用いて硬化後の耐溶剤性を向上させることが可能である。
【0243】
また、本発明に係るラジカル発生剤は、ラジカル発生部位として機能するナフタルイミド構造含有基を一分子内に2つ以上有するため、そのうちどこか1箇所に発生したラジカルが重合体等反応物と結合することにより、重合体等反応物の化学構造の一部となる。ラジカル発生剤が重合体等反応物の化学構造の一部となるため、ラジカル発生剤が未反応で残っても、重合体等反応物中に遊離の形で残存しない。しかも、ラジカル発生部位は未反応のまま残存しても水素引き抜き型であると共に、耐熱性の高いナフタルイミド構造を有しているから、硬化後の塗膜中で揮発性の分解物を生成することがない。そのため、ラジカル発生剤はポストベーク時に揮発せず、従来のように塗膜中に独立して残存することもない。その結果、作業安全性の問題や、耐光性の悪化や、着色や退色、塗膜のはがれやクラックの発生等、最終製品の信頼性を低下させる問題や、薬液寿命を短くする問題や、臭気が発生する問題も全て解決することができる。
【0244】
さらに、マレイミド構造を形成する反応は、加熱や触媒等により脱水縮合反応を促進させないと形成されず、そのため合成上様々な問題があったが、ナフタルイミド構造を形成する反応は、マレイミドのような5員環構造のイミドに比べて脱水縮合反応が速やかに進行し、合成が非常に簡便であり、溶媒溶解性も良好なことから、合成上有利である。そのため、収率、反応速度、管理面、コスト面を含めて生産性が上がる。
【0245】
本発明に係る感光性樹脂組成物は、上記化合物(a)からなる光ラジカル重合開始剤のナフタルイミド構造含有基が水素引き抜き型のラジカル発生部位として機能し、光を照射して励起させることによりラジカル化し、樹脂組成物中でラジカル反応を起こさせる。ナフタルイミド構造含有基によって発生したラジカルは、エチレン性不飽和結合だけでなく芳香環等種々の化合物とも反応可能なため、エチレン性不飽和結合を有さない樹脂組成物であっても、高分子を架橋したりラジカル反応をすることができ、硬化及び/又は溶解性の変化を引き起こすことができる。さらに、2つ以上有するナフタルイミド構造含有基のうちどこか1箇所に発生したラジカルが樹脂組成物と結合することにより樹脂組成物の化学構造の一部となる。そのため、ラジカル発生剤やその分解物が樹脂組成物中に遊離の形で残存することがない。その結果、最終製品の信頼性を低下させる問題も解決する。
【0246】
本発明に係る感光性樹脂組成物を、パターン形成材料(レジスト)、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いる場合には、製品や膜が高耐熱性、高安定性となる効果がある。また、露光時の臭気の発生がない為、作業環境が向上する。
【0247】
本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料は、高耐熱性、高安定性の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されているため、製品や膜としても高耐熱性、高安定性であり、そのため生産の歩留まりも高いというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱分解温度の測定結果を示すグラフである。
【図2】UV吸収スペクトル(化合物1、4、7)の測定結果を示すグラフである。
【図3】UV吸収スペクトル(化合物1、2、3、4)の測定結果を示すグラフである。
【図4】UV照射中の1725cm-1のピークの増加量を示すグラフである。
Claims (15)
- 前記式(1)においてR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、アミノ基、シアノ基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、ニトロ基、カルボキシル基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基、置換基を有していてもよい有機基、又はそれらが互いに結合した環構造である、請求項1に記載のラジカル発生剤。
- 露光光源のいずれかの発光波長における前記化合物(a)のモル吸光係数が0.1以上である、請求項1又は2に記載のラジカル発生剤。
- 前記化合物(a)の最大モル吸光係数εMAXが2000以上であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のラジカル発生剤。
- 前記化合物(a)が、少なくとも157nm、193nm、248nm、365nm、405nm、436nmのいずれかの波長に吸収を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のラジカル発生剤。
- 前記化合物(a)の90%熱分解温度が50℃以上であることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のラジカル発生剤。
- 前記化合物(a)の20℃におけるアクリル酸メチルに対する飽和濃度が、0.01mol/L以上であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のラジカル発生剤。
- エチレン性不飽和結合を有する化合物(b)をさらに含有する請求項8に記載の感光性樹脂組成物。
- 水素供与体をさらに含有する請求項8又は9に記載の感光性樹脂組成物。
- 前記化合物(a)を、感光性樹脂組成物の固形分全体の0.1重量%以上の割合で含有する請求項8乃至10のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記感光性樹脂組成物に含有される前記化合物(a)以外の成分は、照射光源の発光波長と前記化合物(a)の吸収波長が重なる波長領域における透過率が20%以上であることを特徴とする、請求項8乃至11のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- パターン形成材料として用いられる、請求項8乃至12のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いられる請求項8乃至13のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
- 前記請求項8乃至14のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料。
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