JP2004171658A - 垂直磁気記録媒体用基板および垂直磁気記録媒体並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い平坦性・パターニング精度・機械的強度を有するパターンド垂直磁気記録媒体およびこれを可能とする垂直磁気記録媒体用基板並びにこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】アルミまたはガラスの非磁性基体の支持層1の上に、密着層2を介して凹凸パターンを有する表面層3を設ける。この密着層2は、金属含有誘導体化合物と高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物とを含む、有機・無機ハイブリッド組成物である。ここで金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zn、NiおよびCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物であり、高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基を含有し、かつ、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー、オリゴマーまたはポリマー成分を主成分とする化合物である。
【選択図】 図1
【解決手段】アルミまたはガラスの非磁性基体の支持層1の上に、密着層2を介して凹凸パターンを有する表面層3を設ける。この密着層2は、金属含有誘導体化合物と高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物とを含む、有機・無機ハイブリッド組成物である。ここで金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zn、NiおよびCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物であり、高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基を含有し、かつ、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー、オリゴマーまたはポリマー成分を主成分とする化合物である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録媒体用基板および垂直磁気記録媒体並びにそれらの製造方法に関し、より詳細には、平坦性、パターニング精度および機械的強度に優れた垂直磁気記録媒体およびそれを可能とする垂直磁気記録媒体用基板並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、磁気記録媒体はサーボライタによって書き込まれたサーボ信号によりアドレス情報が与えられる。従って、高記録密度化を目的として記録トラック幅の狭小化を行う場合には、サーボ信号やトラックの高精度化が必要となってくる。そのためにはサーボライタと媒体駆動装置との間の高い位置精度が求められるために装置が高価格となることに加え、サーボライタによるサーボ信号の書き込みには媒体1枚につき数分間を要し、これらの制限は、磁気ディスクの量産性向上の障害となっている。
【0003】
このような問題点を克服するために、サーボ信号やトラックを予め媒体に備えるようにすることが提案されており、例えば、射出成型方法により金型のサーボパターンを基板表面に転写したプラスチック製の基板を用いた記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、さらなる高記録密度化のために、従来の連続膜型の磁気記録層にかえて、記録ビットが物理的に分離されたパターンド記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。典型的なパターンド媒体の作製方法は以下の通りである。
【0005】
まず、基板に連続膜磁気記録層を成膜し、その上にレジストを塗布して電子線リソグラフィによりパターンを描画する。次に、マスク膜を成膜した後レジストを除去し、マスクされていない部分をRIE(Reactive Ion Etching)により取り除いた後にマスク膜を除去する。このような工程により、パターニングされた磁気記録層が得られる。
【0006】
このような方法により作製されたパターンド記録媒体は高記録密度化が達成されるものの、上述したような複雑な工程を必要とされるために生産性が低いという問題点がある。
【0007】
これに対して、より生産性に優れた記録媒体の作製方法としては、あらかじめ凹凸パターン化された基板のパターン内に磁性材料を埋め込むことでパターンド記録媒体とする方法がある。そのような基板としては、射出成型によってパターニングを施したプラスチック基板があり、射出成型によって簡便かつ安価にサーボパターン或いはピットパターンを形成することが可能である。
【0008】
射出成型によってプラスチック基板にパターニングを施す方法には、以下の2つの大きな問題があった。
【0009】
その1つは、高精度なパターンを転写しようとする場合には、金型温度と型締め圧を高く設定する必要があり、金型温度を高くすると、基板を金型から取り出して室温まで冷却させる際の温度差が大きくなって熱応力が基板に残留し基板の平坦性を低下させてしまうという問題がある。このことは、型締め圧を高くした場合についても同様である。すなわち、基板の平坦性を向上させることと基板に微細なパターンを転写させることとが両立しない。
【0010】
他の1つは、プラスチックという材料は、磁気記録媒体用基板として一般的に用いられているアルミやガラスに比ベて凹凸パターンの形成が容易である反面、その機械的強度が低く基板の薄型化が困難であるという問題である。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−6535号公報
【0012】
【特許文献2】
特開2001−110050号公報
【0013】
【特許文献3】
特開2000−393833号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2000−315315号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために、射出成型により基板を作製すると同時に基板表面のパターニングを行うのではなく、適度な機械強度をもつアルミやガラスなどの基板表面をプラスチック・コーティングした後に、スタンパを用いてパターン転写する手法が提案されている(特許文献3および特許文献4参照)。この方法によれば、充分な機械的強度を担保しつつ平坦かつ微細なパターンを備えた基板の作製が可能となり、基板表面に凹凸パターンを有するパターンド媒体が比較的容易に作製可能となるとともに、基板の薄型化も可能となる。
【0016】
しかしながら、アルミ基板やガラス基板に熱可塑性プラスチックをコーティングしてスタンパによる転写を行った場合、コーティングした表面層と基板との熱膨張・収縮係数の違い(熱特性)から膜はがれが起こり、パターン不良が発生してしまうという問題が生じる。
【0017】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、平坦性、パターニング精度および機械的強度に優れた凹凸パターンド垂直磁気記録媒体用基板およびその製造方法、並びに、その基板を用いた垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも第1の層と第2の層と第3の層とを順次積層させた垂直磁気記録媒体用基板であって、前記第3の層は熱可塑性樹脂からなり、前記第1の層は前記第3の層に比較して高い機械的強度と高い変性温度とを有し、前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層とを密着させる化合物からなることを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第1の層は、アルミまたはガラスの非磁性基体であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層の熱膨張・熱収縮率との間に位置する熱膨張・熱収縮率を有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第2の層は、金属含有誘導体化合物と高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物とを含む、有機・無機ハイブリッド組成物からなり、前記金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zn、NiおよびCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物であり、前記高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基を含有し、かつ、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー、オリゴマーまたはポリマー成分を主成分とする化合物であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第3の層は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、その他のポリエステル系またはポリオレフィン系材料からなることを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第3の層の表面には、所望の凹凸パターンが設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明は、垂直磁気記録媒体であって、請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板の第3の層の凹凸パターンの凹部にのみ磁気記録層が埋め込まれて備えられていることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板を製造するための方法であって、前記第2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で、予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写することを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の垂直磁気記録媒体を製造するための方法であって、前記第1の層の上に設けられた前記2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写し、前記凹凸パターンを有する第3の層の全面に磁性材料膜を成膜した後に前記第3の層の凸部の上面まで前記磁性材料膜を研磨して前記凹部にのみ磁気記録層を形成することを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の垂直磁気記録媒体用基板の構造例を説明するための断面図で、この基板は少なくとも3つの層を積層させた構造を有し、この図では支持層1と密着層2と表面層3とを順次積層させた3層構造の場合を示している。ここで、支持層1の素材は機械強度の高い無機材料(例えばアルミやガラス)とされ、表面層3は一般的な熱可塑性樹脂からなる薄膜である。密着層2は、支持層1と表面層3との間の密着性を高めるための有機・無機ハイブリッド薄膜層であり、この密着層2の熱膨張・収縮率は、支持層1と表面層3の熱膨張・収縮率の間の値を有している。すなわち、密着層2を支持層1と表面層3との間に設けることにより、支持層1と表面層3との間の剥離やクラックの発生が抑制され、磁気記録媒体としての耐久性が向上することとなる。なお、支持層1は、いわゆる「層」である必要はなく、充分な機械的強度を有するある程度の厚みをもった「基板」であってもよい。以下の説明においては、支持層1はいわゆる「基板」であるものとして説明する。また、支持層1の表面の平坦度は、概ね10μm以下であることが好ましい。
【0029】
密着層2を構成する有機・無機ハイブリッド材料は、高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物と金属含有誘導体化合物とを含む有機・無機ハイブリッド組成物である。
【0030】
この金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zr、NiまたはCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレート、またはキレート化合物であり、その構造は以下の化学式1または2で表される。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
なお、これらの化学式において、Mは、Al、Ti、Zr、Si、In、Zr、NiまたはCuを表す。また、R1〜R7は、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはアシル基である。さらに、化学式1におけるR1〜R4の任意の2つは結合して環を形成し、化学式2におけるR5〜R7の任意の2つは結合して環を形成する。
【0034】
また、高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基より選択される官能基を含有し、末端に放射線重合(紫外線重合や可視重合など)または熱重合機構を有する(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー成分を主成分としたもので、高分子組成物の重量を基準として80重量%以上、好ましくは85〜95重量%含有されている。
【0035】
ここで、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有するモノマー成分の例としては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの多価アルコールや、(メタ)アクリル酸のエステル、フマール酸、マレイン酸、エステルなどの重合物や、ビスフェノールAタイプまたはノボラックタイプからなるエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0036】
この高分子誘導体化合物は、親水性を示す水酸基、カルボキシル基およびアミノ基より選ばれる官能基を含有しているため、基板表面層に対して不可侵である溶剤(代表的には水またはアルコール系溶剤など)に対して可溶となる。また、成膜可能な高分子組成物およびこれらの高分子組成物の溶剤系に対しても可溶である。
【0037】
以下に、密着層2を得るための工程例を説明する。
【0038】
上述の高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を含有しているため、金属含有誘導体化合物との間で脱アルコール縮合または水素結合形成による架橋反応を起こす。この架橋反応に加え、放射線重合(紫外線硬化重合または可視硬化重合など)や熱重合反応により、末端反応基である(メタ)アクリロイル基を重合させる。なお、この重合プロセスにおいては、末端反応基同士を先ず光反応させることが好ましい。
【0039】
これに次いで、高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物を80〜160℃に加熱し、化学式1および化学式2で表記される金属含有誘導体化合物によりさらに架橋反応させる。好ましくは、この架橋反応は、100℃以上でかつ基板の変性点(変性温度)以下の温度とし、基板に対する悪影響が生じない条件で行う。ここで、変性点とは、基板としての機械強度や結晶状態が変質する温度を意味し、例えば、融点やガラス転移点等が該当する。これにより、密着層2の膜特性が向上するとともに、後工程で成膜される磁性膜などの無機膜と基板との密着性も向上する。
【0040】
なお、この架橋反応において、高分子誘導体化合物の水酸基、カルボキシル基またはアミノ基と、金属含有誘導体化合物である金属アルコキシド、フェノキシド、アシレート、キレート化合物と、の間で生じる脱アルコール縮合反応に基づく架橋反応を併用することとすれば、光学的、化学的、物理的、機械的な諸特性に優れかつ後工程での耐性にも優れた密着層2を得ることができる。
【0041】
以下に、本発明の垂直磁気記録媒体用基板に使用可能な、活性官能基を有しかつ末端に(メタ)アクリロイル基を有した放射線重合および/または熱重合可能な化合物の一例を示す。
(単官能化合物)
・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
・2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート
・ε−カプロラクトン−β−ヒドロキシエチルアクリレート
・ポリカプロラクトンアクリレート
・N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
(2官能化合物)
・ポリウレタンジアクリレート
・ビスフエノールA−エピクロルヒドリン型エポキシジアクリレート
・ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート
・脂環型エポキシジアクリレート
・エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート
・ポリプロビレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート
・フタル酸ジグリシジルエステルジアクリレート
・末端水酸基含有ポリプタジエンエポキシ付加物
・(ブロム化)ピスフェノールA型のエポキシジアクリレート及びノボラック型のポリマー
(3官能以上の化合物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート
・トリメチロールプロパン・プロピレンオキサイド付加物トリアクリレート
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・グリセロールポリグリシジルエーテルポリアクリレート
上記はあくまでも例示であって、これらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
これらの化合物は単独もしくは混合して使用可能であり、一般に、混合して使用した方が良好な膜特性が得られる。なお、さらに他のモノマーやオリゴマーなどとも併用して使用してもよい。また、これらを重合または共重合化して末端に反応基である(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーないしはポリマーを用いることとしてもよい。
【0043】
従来の放射線重合型の極性モノマーは基板表面を侵食することがあったが、本発明で用いる化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基が導入されているため、基板表面の侵食などの化学的悪影響は抑制される。また、放射線重合性樹脂としては、カチオン重合型の水酸基含有エポキシ樹脂やチオール化合物も有効である。
【0044】
上述の高分子誘導体化合物を含む高分子組成物は、有機・無機ハイブリッド組成物の重量を基準として、40〜99重量%、好ましくは50〜95重量%含有されている。また、この高分子誘導体化合物は、高分子組成物中に80重量%以上、好ましくは85〜95重量%含有されている。
【0045】
このような濃度範囲が選択されるのは、以下のような理由による。すなわち、高分子誘導体化合物中に20重量%以上の水酸基、カルボキシル基およびアミノ基の官能基が含まれている場合、この高分子誘導体化合物を含む高分子組成物は、基板表面を侵食しない水やアルコール系の溶剤または混合溶剤などに容易に溶解するため、塗布がし易く高い成膜性が得られる。一方、高分子誘導体化合物中の官能基が多すぎると、親水性の官能基が残基として残り易くなり、金属含有誘導体化合物で架橋させてもなお残基が過剰な状態となり、密着層2の親水性が高くなって耐性などに悪影響を及ぼす結果となってしまう。
【0046】
また、高分子誘導体化合物中の水酸基、カルボキシル基およびアミノ基が2重量%以下の場合は、有機・無機ハイブリッド組成物は基板表面に悪影響のない溶剤系に対する溶解性が極めて低下することに加え、金属アルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物と、高分子誘導体化合物の官能基との架橋効果が低減してしまい、放射線架橋剤と併用しても所定の膜特性が得られなくなってしまう。
【0047】
次に、架橋剤として作用する金属含有誘導体化合物である金属アルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物について説明する。金属含有誘導体化合物の中心金属としては、Al、Ti、Si、Zr、In、Zn、NiおよびCuなどが挙げられる。これらはいずれも従来法により容易にアルコキシド、フェノキシドまたはキレート化することができる。これらの化合物は、水分や高分子中に活性水素原子を有する基、特に水酸基やカルボキシル基またはアミノ基とエステル交換による縮合化をして架橋形成を行うことができる。特に金属アルコキシドは激しい加水分解性を示し、置換アルキル、アリール基の炭素数が大きくなるに従い反応速度は遅くなり、tert−>sec−>n−の順に変化する。また、フェノキシドは一般にアルコキシドより反応速度は遅くなる。更に、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸ジエチルなどのジケトンやケトエステルなどによりキレート化合物を形成することでその反応性を制御できる。
【0048】
このような高分子誘導体化合物の架橋剤としては、金属アルコキシド、フェノキシド、アシレート、キレート化合物の何れの化合物も適するが、特に好適なものとしては、金属アルコキシド、フェノキシド等では金属がTi、Al、Zr、Cuであり、炭素数nが2〜6のものが好ましく、或いはその複合化合物系であってもよい。また、キレート化合物としてはジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)またはSi、Zrの同キレート、ジノルマルブトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)またはInの同キレートなどが挙げられる。
【0049】
金属アルコキシド、フェノキシドまたはキレート化合物である金属含有誘導体化合物は、有機・無機ハイブリッド組成物中に1〜60重量%含まれている。金属含有誘導体化合物が多くなると支持層1(基板)の表面上でクラックが発生したりする。また少ないと架橋密度が低下して膜の耐性も低下する。
【0050】
密着層2を形成する工程は、先ず、上述した高分子誘導体化合物を有する高分子組成物と金属含有誘導体化合物とを溶剤に加え、支持層1に塗布する。この溶剤としては、支持層1の表面を侵食しない水またはアルコール系(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、nまたはイソブタノールなど)またはこれらの混合溶剤を用いる。この溶剤に上述の混合物を目的の膜厚と平滑性を得るために濃度をコントロールして溶解させる。塗布方法としてはスピンコート法、ロールコート法、ディッピング法などを単独でまたは併用して使用することもできる。こうして均一かつ高平坦な膜が得られる。
【0051】
その後、放射線照射(電子線硬化、紫外線硬化または可視硬化など)または熱硬化により、末端に(メタ)アクリロイル基を有する高分子誘導体化合物に重合反応を起こさせる。好ましい重合方法は照射量を制御した紫外線硬化である。ここで、高分子誘導体化合物の重合を開始させるには、光などにより直接励起する方法と、間接的に重合開始剤を使用してフリーラジカルを発生させる方法とがある。本発明においては何れの方法も有効であるが、重合開始剤を添加する方法を用いたほうがより安定な膜特性が得られる。
【0052】
重合開始剤としては、カルボニル化合物に代表される分解型をはじめ、水素引き抜き型、開環型、イオン型などがある。更に、促進剤を併用して反応性を上げることもでき、これらを複合化して反応性をコントロールでき、適正に組み合わせて使用することができる。開始剤の濃度は高分子誘導体化合物に対して約7%以下が望ましく有効である。
【0053】
高分子誘導体化合物を重合させた後、高分子誘導体化合物の官能基(水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基)と金属含有誘導体化合物との間で架橋反応を起こさせる。架橋温度は80〜160℃、好ましくは90〜150℃とされる。
【0054】
得られる膜の厚さは0.05〜1.0μmとされ、好ましくは0.1〜0.5μmとされる。これは、0.05μm未満では基板表面の耐熱性向上などの効果が薄れることとなってしまう一方、1.0μmを超えると表面平坦性および基板に形成されているバンプや案内溝の形状などに悪影響を与えるためである。また、膜の平均表面粗さは1nm以下の平滑な薄膜である。表面粗さは小さければ小さい方が良く、表面粗さが1nm以上になると磁気ヘッドとの衝突が起こり易くなるなどの理由から好ましくない。
【0055】
このようにして得られた密着層2は、ガラス転移温度が160℃以上の膜であり、かつ、化学的、物理的、機械的強度に優れた薄膜である。また、密着層2を形成する際に支持層1表面を侵食するなどの悪影響を与えることはない。
【0056】
パターニングが施される表面層3は熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、その他ポリエステル系、ポリオレフィン系の材料が挙げられる。そして、表面層3は凹凸形状を有している。
【0057】
図2は、凹凸パターンを有する表面層3の形成方法を説明するための図で、密着層2の全面にプラスチックコーティングして表面層3を形成し、その後、表面層3の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で、予め所望のパターンが設けられたスタンパ4を押し付けることにより凹凸形状を転写する。密着層2の全面に表面層3を形成する方法としては、スピンコート法やディップ法などがある。
【0058】
すなわち、本発明の垂直磁気記録媒体用基板は、支持層1(またはアルミ基板やガラス基板)の表面に、高分子誘導体化合物含有高分子組成物と金属含有誘導体化合物との組成物である有機・無機ハイブリッド組成物の密着層2を設けてプラスチックコーティングして表面層3を形成し、このプラスチックコート基板に対してスタンパ4を用いて表面層3にスタンパ4のパターンを転写したものである。これにより、機械的強度を担保しつつ平坦かつ微細なパターンを備えた垂直磁気記録媒体用基板が得られ、基板の表面層の凹凸を利用して予めサーボ信号情報を記録させた磁気記録媒体やパターンド媒体などが容易に得られることとなるとともに基板の薄型化も可能となる。
【0059】
図3は、本発明の垂直磁気記録媒体用基板を用いたパターンド垂直磁気記録媒体の構成例を説明するための断面図で、垂直磁気記録媒体用基板の表面層3の凹凸パターンの凹の部分にのみ下地層5と磁気記録層6とが順次積層され、保護膜7と液体潤滑層8は基板の全面を覆うかたちで設けられている。
【0060】
下地層5としては、例えば、六方最密充填構造をとる金属或いはその合金材料であるものか、若しくは、面心立方格子構造をとる金属或いはその合金材料が好ましく用いられる。六方最密充填構造をとる金属としては、例えばTi、Zr、Ru、Zn、Tc、Reなどがあり、面心立方格子構造をとる金属としては、Cu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Ni、Coなどが挙げられる。下地層5の厚みは薄い方が好ましいが、充分な結晶成長を担保するためには3nm以上であることが好ましい。なお、単層の膜ではなく異なる材料を複数積層することも可能である。
【0061】
磁気記録層6には、一般的なCoCrPt系材料のほか、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く非磁性の粒界をもつ構造を取り、その非磁性粒界が非磁性非金属であるグラニュラー磁気記録層、TbCo等のRE−TM系合金或いはCo/PtやCo/Pdの多層積層膜を用いることができる。なお、垂直磁気記録媒体として用いるためには、強磁性の結晶粒は膜面に対して垂直異方性をもつことが必要である。
【0062】
保護膜7には、例えばカーボンを主体とする薄膜が用いられ、液体潤滑材層8には、例えばパーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を用いることができる。
【0063】
これらの下地層5、磁気記録層6、保護膜7の形成方法としては、一般に磁気記録媒体の作製に用いられる様々な成膜技術が応用可能であり、例えば、真空蒸着法、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法などを用いることができる。また、液体潤滑層8の形成方法としては、例えば、ディップ法やスピンコート法などを用いることができる。
【0064】
以下に本発明の実施例を記す。
【0065】
(実施例1)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有する。
高分子組成物:
・グリセロールポリグリシジルエーテルポリアクリレート(35Wt%)
ペンタエリスリトールトリアクリレート
・DPHA(10wt%)
・2−ヒドロ−2−フェノキシプロピルアクリレート(10wt%)
金属含有誘導体化合物:
・テトラ−i−プロポキシチタンTPT(33wt%)
重合開始剤:
・イルガーキュアー651(1wt%)
・セイカオールBBI(1wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール70wt%と水30wt%の混合溶剤で固形分10wt%に希釈し、スピンコート法により、支持層1の両面に0.8μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一に膜形成した。
【0066】
次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、更に105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して硬化させ、膜厚0.06μmの密着層2を得た。なお、このときのガラスディスクの平坦性は1μmであり、支持層1と密着層2の界面の平坦度も1μmであった。
【0067】
表面層3として、へキサンに溶解したPMMAをスピンコート法により密着層2上に50nm形成した。PMMAの濃度は0.5wt%とした。その後、真空加圧装置に導入し、ガラスディスクとスタンパを130℃になるまで加熱し、スタンパにより圧力12MPaで型押しした。そのまま100℃まで冷却した後に離型し、真空加圧装置から取り出した。なお、スタンパには電子ビームリソグラフィを用いて、φ100nm、高さ50nmの円筒形パターンが形成されている。
【0068】
この基板を非磁性基体として、この基板を洗浄後スパッタ装置内に導入し、Ni15Fe27Crターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeCr層を15nm成膜した。続いてRuターゲットを用い、Arガス圧30mTorr下でRu層を15nm成膜し、NiFeCr/Ru積層下地層とした。その後、Co20Cr10Ptターゲットを用いてCoCrPt磁気記録層をArガス圧5mTorr下で25nm成膜した。その後スパッタ装置から取り出した。
【0069】
次に、ダイヤモンドスラリを用い、基板表面層凸部の最表面まで研磨することにより、凸部上のNiFeCr/Ru/CoCrPt各層を全て除去した。なお、研磨量はレーザ変位計でモニターし、変位量の変化が急激に落ちたところを終点とした。
【0070】
これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、カーボンターゲットを用いてArガス圧8mTorr下でカーボンからなる保護層6nmを成膜後、真空装置から取り出した。
【0071】
その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成し、垂直パターンド媒体とした。なお、下地層、磁気記録層、保護層の成膜は、DCマグネトロンスパッタリング法で行った。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0072】
(実施例2)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有した。
高分子組成物:
・グリセロールポリグリシジルエーテルボリアクリレート(25wt%)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(20wt%)
ネオペンチルグリコールジアクリレート(5wt%)
2−ヒドロー3−フェノキシプロピルアクリレート(7wt%)
金属含有誘導体化合物:
チタンテトラノルマルブトキシドTBT(40Wt%)
重合開始剤:
・イルガーキユアー1174(1.8wt%)
・セイカオールBBI(1.2wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール65wt%と水35wt%の混合溶剤で固形分330wt%に希釈し、スピンコート法により、基板の両面に0.9μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一な膜形成した。次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、その後105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して硬化させ、膜厚0.1μmの密着層2を得た。以下実施例1と同様の方法により表面層3をその密着層2上に50nm形成した。
【0073】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0074】
(実施例3)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有した。
高分子組成物:
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(35wt%)
オリゴエステルポリアクリレート(15wt%)
フタル酸エポキシアクリレート(15wt%)
金属含有誘導体化合物:
・ジルコンテトライソプロポキド化合物(32wt%)
重合開始剤:
イルガーキュアー1174(1wt%)
セイクオールBBI(1wt%)
KAYACURE2−EAQ(1wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール65wt%と水35wt%の混合溶剤で固形分30wt%に希釈し、スピンコート法により、基板の両面に0.9μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一に膜形成した。次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、その後、105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して、硬化させて密着層2を得た。以下実施例1同様の方法によりに表面層3をその密着層2上に50nm形成した。
【0075】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0076】
(比較例1)
本発明の比較例として、熱可塑性樹脂材料としては実施例1と同様なPMMAを用い、外径65mm、内径20mmの円盤形状のディスクを射出成型により形成するが、この際、実施例1と同様なパターンを備えた金型を用いて表面にパターンを形成した。なお、射出成型の際の樹脂温度は300℃とし、基板の厚さを、0.6〜1.2mmまで変化させた。
【0077】
(比較例2)
支持層として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、密着層を設けずに直接、表面層としてへキサンに溶解したPMMAをスピンコート法により、その支持層上に50nm形成した。PMMAの濃度は0.5wt%とした。その後、真空加圧装置に導入し、ガラスディスクとスタンパを130℃になるまで加熱し、スタンパにより圧力12MPaで型押しした。そのまま100℃まで冷却した後離型し、真空加圧装置から取り出した。なお、実施例1と同様に、スタンパには電子ビームリソグラフィを用いて、φ100nm、高さ50nmの円筒形パターンが形成した。
【0078】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。しかしながら、磁性層形成後の基板の膜剥離を確認したところ、全ての基板にパターンの膜剥離が発生していることがわかった。
【0079】
(比較例3)
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、Ni15Fe27Crターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeCr層を15nm成膜した。続いてRuターゲットを用い、Arガス圧30mTorr下でRu層を15nm成膜し、NiFeCr/Ru積層下地層とした。さらに、Co20Cr10Ptターゲットを用いてCoCrPt磁気記録層をArガス圧5mTorr下で20nm成膜した。引き続いて、カーボンターゲットを用いてArガス圧8mTorr下でカーボンからなる保護層6nmを成膜後、真空装置から取り出した。その後、パープルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成し、垂直媒体とした。なお、下地層、磁気記録層、保護層の成膜は、DCマグネトロンスパッタリング法で行った。
【0080】
このようにして得られた実施例1〜3および比較例1〜3の各基板の平坦度およびパターンの転写率について評価した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
ここで、平坦度は、基板中心から半径方向へ11mmから30mmまでの直線領域に関して基板表面形状の変位量を非接触光学式表面粗さ計にて真直度を導出した。1つの基板について、円周方向に90°おきに4箇所の測定を行い、その中で最大の真直度をその基板面の平坦度とした。また、転写率は、パターンの設計値φ100nm×深さ50nmに対して、±5%以内の誤差を合格その他は不合格とし、パターン100個について評価し、合格したパターンの割合を転写率とした。なお、評価にはAFM(原子間力顕微鏡)を用いた。
【0083】
また、表1には、媒体の保磁力とGlide Height(G.H.)特性について評価した結果も併せて示されている。ここで、保磁力はVSMを用いて測定し、得られたM−Hループより求めた。G.H.試験は、媒体を回転させ、その上に試験用のヘッドを飛ばし、媒体表面の突起、パーティクル、ウネリなどを検知するものである。試験条件は、周速7m/sec、G.H.12.5nmとし、各々100枚を評価して合格率を求めた。
【0084】
実施例1〜3の基板の平坦度は、ガラスディスクの平坦性をそのまま反映し、1μmであり、転写率は膜剥離なしに100%であった。また、実施例1の基板の保磁力は2560Oe、G.H.試験特性の合格率は49%、実施例2の基板の保磁力は2620Oe、G.H.試験特性の合格率は53%、実施例3の基板の保磁力は2720Oe、G.H.試験特性の合格率は52%であった。
【0085】
これに対して、比較例1の射出成型で作製したプラスチック基板は、板厚を厚くすると平坦度が小さくなる傾向が見られるが、板厚1.2mmとした最も平坦性に優れるものでも、実施例1〜3の基板に比べると非常に大きい。転写率は実施例1〜3の基板では100%の高確率であるのに比ベ、全ての板厚で80〜84%に留まっている。また、比較例2の基板は、平坦度はガラスディスクの平坦性をそのまま反映して1μmであったものの、パターンの一部に膜剥離が起こってしまっていたため、転写率は70〜100%であった。さらに、比較例3の基板の保磁力は410Oe、G.H.試験特性の合格率は50%であった。磁気記録層が連続膜になっている比較例1の基板の保磁力は小さく、粒間の相互作用が非常に大きくなっていることがわかる。
【0086】
以上より、本発明によれば、平坦性に優れ、かつパターンの転写性にも優れた基板が作製できることがわかる。また、射出成型により作製された、全て熱可塑性樹脂からなる基板では困難である薄型化が可能であることもわかる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アルミまたはガラスの非磁性基体の支持層の上に密着層を介して凹凸パターンを有する表面層を設ける構成としたので、高い平坦性・パターニング精度・機械的強度を有するパターンド垂直磁気記録媒体およびこれを可能とする垂直磁気記録媒体用基板並びにこれらの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直磁気記録媒体用基板の構造例を説明するための断面図である。
【図2】本発明の垂直磁気記録媒体用基板が備える凹凸パターンを有する表面層の形成方法を説明するための図である。
【図3】本発明の垂直磁気記録媒体用基板を用いたパターンド垂直磁気記録媒体の構成例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 支持層
2 密着層
3 表面層
4 スタンパ
5 下地層
6 磁気記録層
7 保護膜
8 液体潤滑層
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録媒体用基板および垂直磁気記録媒体並びにそれらの製造方法に関し、より詳細には、平坦性、パターニング精度および機械的強度に優れた垂直磁気記録媒体およびそれを可能とする垂直磁気記録媒体用基板並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、磁気記録媒体はサーボライタによって書き込まれたサーボ信号によりアドレス情報が与えられる。従って、高記録密度化を目的として記録トラック幅の狭小化を行う場合には、サーボ信号やトラックの高精度化が必要となってくる。そのためにはサーボライタと媒体駆動装置との間の高い位置精度が求められるために装置が高価格となることに加え、サーボライタによるサーボ信号の書き込みには媒体1枚につき数分間を要し、これらの制限は、磁気ディスクの量産性向上の障害となっている。
【0003】
このような問題点を克服するために、サーボ信号やトラックを予め媒体に備えるようにすることが提案されており、例えば、射出成型方法により金型のサーボパターンを基板表面に転写したプラスチック製の基板を用いた記録媒体が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
一方、さらなる高記録密度化のために、従来の連続膜型の磁気記録層にかえて、記録ビットが物理的に分離されたパターンド記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。典型的なパターンド媒体の作製方法は以下の通りである。
【0005】
まず、基板に連続膜磁気記録層を成膜し、その上にレジストを塗布して電子線リソグラフィによりパターンを描画する。次に、マスク膜を成膜した後レジストを除去し、マスクされていない部分をRIE(Reactive Ion Etching)により取り除いた後にマスク膜を除去する。このような工程により、パターニングされた磁気記録層が得られる。
【0006】
このような方法により作製されたパターンド記録媒体は高記録密度化が達成されるものの、上述したような複雑な工程を必要とされるために生産性が低いという問題点がある。
【0007】
これに対して、より生産性に優れた記録媒体の作製方法としては、あらかじめ凹凸パターン化された基板のパターン内に磁性材料を埋め込むことでパターンド記録媒体とする方法がある。そのような基板としては、射出成型によってパターニングを施したプラスチック基板があり、射出成型によって簡便かつ安価にサーボパターン或いはピットパターンを形成することが可能である。
【0008】
射出成型によってプラスチック基板にパターニングを施す方法には、以下の2つの大きな問題があった。
【0009】
その1つは、高精度なパターンを転写しようとする場合には、金型温度と型締め圧を高く設定する必要があり、金型温度を高くすると、基板を金型から取り出して室温まで冷却させる際の温度差が大きくなって熱応力が基板に残留し基板の平坦性を低下させてしまうという問題がある。このことは、型締め圧を高くした場合についても同様である。すなわち、基板の平坦性を向上させることと基板に微細なパターンを転写させることとが両立しない。
【0010】
他の1つは、プラスチックという材料は、磁気記録媒体用基板として一般的に用いられているアルミやガラスに比ベて凹凸パターンの形成が容易である反面、その機械的強度が低く基板の薄型化が困難であるという問題である。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−6535号公報
【0012】
【特許文献2】
特開2001−110050号公報
【0013】
【特許文献3】
特開2000−393833号公報
【0014】
【特許文献4】
特開2000−315315号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
このような問題を解決するために、射出成型により基板を作製すると同時に基板表面のパターニングを行うのではなく、適度な機械強度をもつアルミやガラスなどの基板表面をプラスチック・コーティングした後に、スタンパを用いてパターン転写する手法が提案されている(特許文献3および特許文献4参照)。この方法によれば、充分な機械的強度を担保しつつ平坦かつ微細なパターンを備えた基板の作製が可能となり、基板表面に凹凸パターンを有するパターンド媒体が比較的容易に作製可能となるとともに、基板の薄型化も可能となる。
【0016】
しかしながら、アルミ基板やガラス基板に熱可塑性プラスチックをコーティングしてスタンパによる転写を行った場合、コーティングした表面層と基板との熱膨張・収縮係数の違い(熱特性)から膜はがれが起こり、パターン不良が発生してしまうという問題が生じる。
【0017】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、平坦性、パターニング精度および機械的強度に優れた凹凸パターンド垂直磁気記録媒体用基板およびその製造方法、並びに、その基板を用いた垂直磁気記録媒体およびその製造方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも第1の層と第2の層と第3の層とを順次積層させた垂直磁気記録媒体用基板であって、前記第3の層は熱可塑性樹脂からなり、前記第1の層は前記第3の層に比較して高い機械的強度と高い変性温度とを有し、前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層とを密着させる化合物からなることを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第1の層は、アルミまたはガラスの非磁性基体であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層の熱膨張・熱収縮率との間に位置する熱膨張・熱収縮率を有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第2の層は、金属含有誘導体化合物と高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物とを含む、有機・無機ハイブリッド組成物からなり、前記金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zn、NiおよびCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物であり、前記高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基を含有し、かつ、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー、オリゴマーまたはポリマー成分を主成分とする化合物であることを特徴とする。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第3の層は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、その他のポリエステル系またはポリオレフィン系材料からなることを特徴とする。
【0023】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板において、前記第3の層の表面には、所望の凹凸パターンが設けられていることを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明は、垂直磁気記録媒体であって、請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板の第3の層の凹凸パターンの凹部にのみ磁気記録層が埋め込まれて備えられていることを特徴とする。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板を製造するための方法であって、前記第2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で、予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写することを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の垂直磁気記録媒体を製造するための方法であって、前記第1の層の上に設けられた前記2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写し、前記凹凸パターンを有する第3の層の全面に磁性材料膜を成膜した後に前記第3の層の凸部の上面まで前記磁性材料膜を研磨して前記凹部にのみ磁気記録層を形成することを特徴とする。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本発明の垂直磁気記録媒体用基板の構造例を説明するための断面図で、この基板は少なくとも3つの層を積層させた構造を有し、この図では支持層1と密着層2と表面層3とを順次積層させた3層構造の場合を示している。ここで、支持層1の素材は機械強度の高い無機材料(例えばアルミやガラス)とされ、表面層3は一般的な熱可塑性樹脂からなる薄膜である。密着層2は、支持層1と表面層3との間の密着性を高めるための有機・無機ハイブリッド薄膜層であり、この密着層2の熱膨張・収縮率は、支持層1と表面層3の熱膨張・収縮率の間の値を有している。すなわち、密着層2を支持層1と表面層3との間に設けることにより、支持層1と表面層3との間の剥離やクラックの発生が抑制され、磁気記録媒体としての耐久性が向上することとなる。なお、支持層1は、いわゆる「層」である必要はなく、充分な機械的強度を有するある程度の厚みをもった「基板」であってもよい。以下の説明においては、支持層1はいわゆる「基板」であるものとして説明する。また、支持層1の表面の平坦度は、概ね10μm以下であることが好ましい。
【0029】
密着層2を構成する有機・無機ハイブリッド材料は、高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物と金属含有誘導体化合物とを含む有機・無機ハイブリッド組成物である。
【0030】
この金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zr、NiまたはCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレート、またはキレート化合物であり、その構造は以下の化学式1または2で表される。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
なお、これらの化学式において、Mは、Al、Ti、Zr、Si、In、Zr、NiまたはCuを表す。また、R1〜R7は、炭素数1〜18のアルキル基、アリール基またはアシル基である。さらに、化学式1におけるR1〜R4の任意の2つは結合して環を形成し、化学式2におけるR5〜R7の任意の2つは結合して環を形成する。
【0034】
また、高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基より選択される官能基を含有し、末端に放射線重合(紫外線重合や可視重合など)または熱重合機構を有する(メタ)アクリロイル基を有するモノマー、オリゴマーおよびポリマー成分を主成分としたもので、高分子組成物の重量を基準として80重量%以上、好ましくは85〜95重量%含有されている。
【0035】
ここで、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有するモノマー成分の例としては、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの多価アルコールや、(メタ)アクリル酸のエステル、フマール酸、マレイン酸、エステルなどの重合物や、ビスフェノールAタイプまたはノボラックタイプからなるエポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0036】
この高分子誘導体化合物は、親水性を示す水酸基、カルボキシル基およびアミノ基より選ばれる官能基を含有しているため、基板表面層に対して不可侵である溶剤(代表的には水またはアルコール系溶剤など)に対して可溶となる。また、成膜可能な高分子組成物およびこれらの高分子組成物の溶剤系に対しても可溶である。
【0037】
以下に、密着層2を得るための工程例を説明する。
【0038】
上述の高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を含有しているため、金属含有誘導体化合物との間で脱アルコール縮合または水素結合形成による架橋反応を起こす。この架橋反応に加え、放射線重合(紫外線硬化重合または可視硬化重合など)や熱重合反応により、末端反応基である(メタ)アクリロイル基を重合させる。なお、この重合プロセスにおいては、末端反応基同士を先ず光反応させることが好ましい。
【0039】
これに次いで、高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物を80〜160℃に加熱し、化学式1および化学式2で表記される金属含有誘導体化合物によりさらに架橋反応させる。好ましくは、この架橋反応は、100℃以上でかつ基板の変性点(変性温度)以下の温度とし、基板に対する悪影響が生じない条件で行う。ここで、変性点とは、基板としての機械強度や結晶状態が変質する温度を意味し、例えば、融点やガラス転移点等が該当する。これにより、密着層2の膜特性が向上するとともに、後工程で成膜される磁性膜などの無機膜と基板との密着性も向上する。
【0040】
なお、この架橋反応において、高分子誘導体化合物の水酸基、カルボキシル基またはアミノ基と、金属含有誘導体化合物である金属アルコキシド、フェノキシド、アシレート、キレート化合物と、の間で生じる脱アルコール縮合反応に基づく架橋反応を併用することとすれば、光学的、化学的、物理的、機械的な諸特性に優れかつ後工程での耐性にも優れた密着層2を得ることができる。
【0041】
以下に、本発明の垂直磁気記録媒体用基板に使用可能な、活性官能基を有しかつ末端に(メタ)アクリロイル基を有した放射線重合および/または熱重合可能な化合物の一例を示す。
(単官能化合物)
・2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート
・2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート
・ε−カプロラクトン−β−ヒドロキシエチルアクリレート
・ポリカプロラクトンアクリレート
・N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
(2官能化合物)
・ポリウレタンジアクリレート
・ビスフエノールA−エピクロルヒドリン型エポキシジアクリレート
・ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート
・脂環型エポキシジアクリレート
・エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート
・ポリプロビレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート
・フタル酸ジグリシジルエステルジアクリレート
・末端水酸基含有ポリプタジエンエポキシ付加物
・(ブロム化)ピスフェノールA型のエポキシジアクリレート及びノボラック型のポリマー
(3官能以上の化合物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート
・トリメチロールプロパン・プロピレンオキサイド付加物トリアクリレート
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・グリセロールポリグリシジルエーテルポリアクリレート
上記はあくまでも例示であって、これらの化合物に限定されるものではない。
【0042】
これらの化合物は単独もしくは混合して使用可能であり、一般に、混合して使用した方が良好な膜特性が得られる。なお、さらに他のモノマーやオリゴマーなどとも併用して使用してもよい。また、これらを重合または共重合化して末端に反応基である(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーないしはポリマーを用いることとしてもよい。
【0043】
従来の放射線重合型の極性モノマーは基板表面を侵食することがあったが、本発明で用いる化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基が導入されているため、基板表面の侵食などの化学的悪影響は抑制される。また、放射線重合性樹脂としては、カチオン重合型の水酸基含有エポキシ樹脂やチオール化合物も有効である。
【0044】
上述の高分子誘導体化合物を含む高分子組成物は、有機・無機ハイブリッド組成物の重量を基準として、40〜99重量%、好ましくは50〜95重量%含有されている。また、この高分子誘導体化合物は、高分子組成物中に80重量%以上、好ましくは85〜95重量%含有されている。
【0045】
このような濃度範囲が選択されるのは、以下のような理由による。すなわち、高分子誘導体化合物中に20重量%以上の水酸基、カルボキシル基およびアミノ基の官能基が含まれている場合、この高分子誘導体化合物を含む高分子組成物は、基板表面を侵食しない水やアルコール系の溶剤または混合溶剤などに容易に溶解するため、塗布がし易く高い成膜性が得られる。一方、高分子誘導体化合物中の官能基が多すぎると、親水性の官能基が残基として残り易くなり、金属含有誘導体化合物で架橋させてもなお残基が過剰な状態となり、密着層2の親水性が高くなって耐性などに悪影響を及ぼす結果となってしまう。
【0046】
また、高分子誘導体化合物中の水酸基、カルボキシル基およびアミノ基が2重量%以下の場合は、有機・無機ハイブリッド組成物は基板表面に悪影響のない溶剤系に対する溶解性が極めて低下することに加え、金属アルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物と、高分子誘導体化合物の官能基との架橋効果が低減してしまい、放射線架橋剤と併用しても所定の膜特性が得られなくなってしまう。
【0047】
次に、架橋剤として作用する金属含有誘導体化合物である金属アルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物について説明する。金属含有誘導体化合物の中心金属としては、Al、Ti、Si、Zr、In、Zn、NiおよびCuなどが挙げられる。これらはいずれも従来法により容易にアルコキシド、フェノキシドまたはキレート化することができる。これらの化合物は、水分や高分子中に活性水素原子を有する基、特に水酸基やカルボキシル基またはアミノ基とエステル交換による縮合化をして架橋形成を行うことができる。特に金属アルコキシドは激しい加水分解性を示し、置換アルキル、アリール基の炭素数が大きくなるに従い反応速度は遅くなり、tert−>sec−>n−の順に変化する。また、フェノキシドは一般にアルコキシドより反応速度は遅くなる。更に、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、マロン酸ジエチルなどのジケトンやケトエステルなどによりキレート化合物を形成することでその反応性を制御できる。
【0048】
このような高分子誘導体化合物の架橋剤としては、金属アルコキシド、フェノキシド、アシレート、キレート化合物の何れの化合物も適するが、特に好適なものとしては、金属アルコキシド、フェノキシド等では金属がTi、Al、Zr、Cuであり、炭素数nが2〜6のものが好ましく、或いはその複合化合物系であってもよい。また、キレート化合物としてはジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート)またはSi、Zrの同キレート、ジノルマルブトキシチタンビス(エチルアセトアセテート)またはInの同キレートなどが挙げられる。
【0049】
金属アルコキシド、フェノキシドまたはキレート化合物である金属含有誘導体化合物は、有機・無機ハイブリッド組成物中に1〜60重量%含まれている。金属含有誘導体化合物が多くなると支持層1(基板)の表面上でクラックが発生したりする。また少ないと架橋密度が低下して膜の耐性も低下する。
【0050】
密着層2を形成する工程は、先ず、上述した高分子誘導体化合物を有する高分子組成物と金属含有誘導体化合物とを溶剤に加え、支持層1に塗布する。この溶剤としては、支持層1の表面を侵食しない水またはアルコール系(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、nまたはイソブタノールなど)またはこれらの混合溶剤を用いる。この溶剤に上述の混合物を目的の膜厚と平滑性を得るために濃度をコントロールして溶解させる。塗布方法としてはスピンコート法、ロールコート法、ディッピング法などを単独でまたは併用して使用することもできる。こうして均一かつ高平坦な膜が得られる。
【0051】
その後、放射線照射(電子線硬化、紫外線硬化または可視硬化など)または熱硬化により、末端に(メタ)アクリロイル基を有する高分子誘導体化合物に重合反応を起こさせる。好ましい重合方法は照射量を制御した紫外線硬化である。ここで、高分子誘導体化合物の重合を開始させるには、光などにより直接励起する方法と、間接的に重合開始剤を使用してフリーラジカルを発生させる方法とがある。本発明においては何れの方法も有効であるが、重合開始剤を添加する方法を用いたほうがより安定な膜特性が得られる。
【0052】
重合開始剤としては、カルボニル化合物に代表される分解型をはじめ、水素引き抜き型、開環型、イオン型などがある。更に、促進剤を併用して反応性を上げることもでき、これらを複合化して反応性をコントロールでき、適正に組み合わせて使用することができる。開始剤の濃度は高分子誘導体化合物に対して約7%以下が望ましく有効である。
【0053】
高分子誘導体化合物を重合させた後、高分子誘導体化合物の官能基(水酸基、カルボキシル基、またはアミノ基)と金属含有誘導体化合物との間で架橋反応を起こさせる。架橋温度は80〜160℃、好ましくは90〜150℃とされる。
【0054】
得られる膜の厚さは0.05〜1.0μmとされ、好ましくは0.1〜0.5μmとされる。これは、0.05μm未満では基板表面の耐熱性向上などの効果が薄れることとなってしまう一方、1.0μmを超えると表面平坦性および基板に形成されているバンプや案内溝の形状などに悪影響を与えるためである。また、膜の平均表面粗さは1nm以下の平滑な薄膜である。表面粗さは小さければ小さい方が良く、表面粗さが1nm以上になると磁気ヘッドとの衝突が起こり易くなるなどの理由から好ましくない。
【0055】
このようにして得られた密着層2は、ガラス転移温度が160℃以上の膜であり、かつ、化学的、物理的、機械的強度に優れた薄膜である。また、密着層2を形成する際に支持層1表面を侵食するなどの悪影響を与えることはない。
【0056】
パターニングが施される表面層3は熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、その他ポリエステル系、ポリオレフィン系の材料が挙げられる。そして、表面層3は凹凸形状を有している。
【0057】
図2は、凹凸パターンを有する表面層3の形成方法を説明するための図で、密着層2の全面にプラスチックコーティングして表面層3を形成し、その後、表面層3の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で、予め所望のパターンが設けられたスタンパ4を押し付けることにより凹凸形状を転写する。密着層2の全面に表面層3を形成する方法としては、スピンコート法やディップ法などがある。
【0058】
すなわち、本発明の垂直磁気記録媒体用基板は、支持層1(またはアルミ基板やガラス基板)の表面に、高分子誘導体化合物含有高分子組成物と金属含有誘導体化合物との組成物である有機・無機ハイブリッド組成物の密着層2を設けてプラスチックコーティングして表面層3を形成し、このプラスチックコート基板に対してスタンパ4を用いて表面層3にスタンパ4のパターンを転写したものである。これにより、機械的強度を担保しつつ平坦かつ微細なパターンを備えた垂直磁気記録媒体用基板が得られ、基板の表面層の凹凸を利用して予めサーボ信号情報を記録させた磁気記録媒体やパターンド媒体などが容易に得られることとなるとともに基板の薄型化も可能となる。
【0059】
図3は、本発明の垂直磁気記録媒体用基板を用いたパターンド垂直磁気記録媒体の構成例を説明するための断面図で、垂直磁気記録媒体用基板の表面層3の凹凸パターンの凹の部分にのみ下地層5と磁気記録層6とが順次積層され、保護膜7と液体潤滑層8は基板の全面を覆うかたちで設けられている。
【0060】
下地層5としては、例えば、六方最密充填構造をとる金属或いはその合金材料であるものか、若しくは、面心立方格子構造をとる金属或いはその合金材料が好ましく用いられる。六方最密充填構造をとる金属としては、例えばTi、Zr、Ru、Zn、Tc、Reなどがあり、面心立方格子構造をとる金属としては、Cu、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、Ni、Coなどが挙げられる。下地層5の厚みは薄い方が好ましいが、充分な結晶成長を担保するためには3nm以上であることが好ましい。なお、単層の膜ではなく異なる材料を複数積層することも可能である。
【0061】
磁気記録層6には、一般的なCoCrPt系材料のほか、強磁性を有する結晶粒とそれを取り巻く非磁性の粒界をもつ構造を取り、その非磁性粒界が非磁性非金属であるグラニュラー磁気記録層、TbCo等のRE−TM系合金或いはCo/PtやCo/Pdの多層積層膜を用いることができる。なお、垂直磁気記録媒体として用いるためには、強磁性の結晶粒は膜面に対して垂直異方性をもつことが必要である。
【0062】
保護膜7には、例えばカーボンを主体とする薄膜が用いられ、液体潤滑材層8には、例えばパーフルオロポリエーテル系の潤滑剤を用いることができる。
【0063】
これらの下地層5、磁気記録層6、保護膜7の形成方法としては、一般に磁気記録媒体の作製に用いられる様々な成膜技術が応用可能であり、例えば、真空蒸着法、DCスパッタリング法、RFスパッタリング法などを用いることができる。また、液体潤滑層8の形成方法としては、例えば、ディップ法やスピンコート法などを用いることができる。
【0064】
以下に本発明の実施例を記す。
【0065】
(実施例1)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有する。
高分子組成物:
・グリセロールポリグリシジルエーテルポリアクリレート(35Wt%)
ペンタエリスリトールトリアクリレート
・DPHA(10wt%)
・2−ヒドロ−2−フェノキシプロピルアクリレート(10wt%)
金属含有誘導体化合物:
・テトラ−i−プロポキシチタンTPT(33wt%)
重合開始剤:
・イルガーキュアー651(1wt%)
・セイカオールBBI(1wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール70wt%と水30wt%の混合溶剤で固形分10wt%に希釈し、スピンコート法により、支持層1の両面に0.8μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一に膜形成した。
【0066】
次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、更に105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して硬化させ、膜厚0.06μmの密着層2を得た。なお、このときのガラスディスクの平坦性は1μmであり、支持層1と密着層2の界面の平坦度も1μmであった。
【0067】
表面層3として、へキサンに溶解したPMMAをスピンコート法により密着層2上に50nm形成した。PMMAの濃度は0.5wt%とした。その後、真空加圧装置に導入し、ガラスディスクとスタンパを130℃になるまで加熱し、スタンパにより圧力12MPaで型押しした。そのまま100℃まで冷却した後に離型し、真空加圧装置から取り出した。なお、スタンパには電子ビームリソグラフィを用いて、φ100nm、高さ50nmの円筒形パターンが形成されている。
【0068】
この基板を非磁性基体として、この基板を洗浄後スパッタ装置内に導入し、Ni15Fe27Crターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeCr層を15nm成膜した。続いてRuターゲットを用い、Arガス圧30mTorr下でRu層を15nm成膜し、NiFeCr/Ru積層下地層とした。その後、Co20Cr10Ptターゲットを用いてCoCrPt磁気記録層をArガス圧5mTorr下で25nm成膜した。その後スパッタ装置から取り出した。
【0069】
次に、ダイヤモンドスラリを用い、基板表面層凸部の最表面まで研磨することにより、凸部上のNiFeCr/Ru/CoCrPt各層を全て除去した。なお、研磨量はレーザ変位計でモニターし、変位量の変化が急激に落ちたところを終点とした。
【0070】
これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、カーボンターゲットを用いてArガス圧8mTorr下でカーボンからなる保護層6nmを成膜後、真空装置から取り出した。
【0071】
その後、パーフルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成し、垂直パターンド媒体とした。なお、下地層、磁気記録層、保護層の成膜は、DCマグネトロンスパッタリング法で行った。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0072】
(実施例2)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有した。
高分子組成物:
・グリセロールポリグリシジルエーテルボリアクリレート(25wt%)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(20wt%)
ネオペンチルグリコールジアクリレート(5wt%)
2−ヒドロー3−フェノキシプロピルアクリレート(7wt%)
金属含有誘導体化合物:
チタンテトラノルマルブトキシドTBT(40Wt%)
重合開始剤:
・イルガーキユアー1174(1.8wt%)
・セイカオールBBI(1.2wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール65wt%と水35wt%の混合溶剤で固形分330wt%に希釈し、スピンコート法により、基板の両面に0.9μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一な膜形成した。次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、その後105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して硬化させ、膜厚0.1μmの密着層2を得た。以下実施例1と同様の方法により表面層3をその密着層2上に50nm形成した。
【0073】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0074】
(実施例3)
支持層1として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、支持層1に本発明の有機・無機ハイブリッド組成物からなる密着層2を設けた。有機・無機ハイブリッド組成物は、以下に示す組成を有した。
高分子組成物:
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(35wt%)
オリゴエステルポリアクリレート(15wt%)
フタル酸エポキシアクリレート(15wt%)
金属含有誘導体化合物:
・ジルコンテトライソプロポキド化合物(32wt%)
重合開始剤:
イルガーキュアー1174(1wt%)
セイクオールBBI(1wt%)
KAYACURE2−EAQ(1wt%)
以上の有機・無機ハイブリッド組成物を、イソプロピルアルコール65wt%と水35wt%の混合溶剤で固形分30wt%に希釈し、スピンコート法により、基板の両面に0.9μmになるように混合液と成膜条件を調整して、均一に膜形成した。次いで、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2のエネルギーで照射し、その後、105℃の真空オーブンで30分間加熱乾燥して、硬化させて密着層2を得た。以下実施例1同様の方法によりに表面層3をその密着層2上に50nm形成した。
【0075】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。磁性層形成後の基板を確認したところ、パターンの膜剥離は発生していなかった。
【0076】
(比較例1)
本発明の比較例として、熱可塑性樹脂材料としては実施例1と同様なPMMAを用い、外径65mm、内径20mmの円盤形状のディスクを射出成型により形成するが、この際、実施例1と同様なパターンを備えた金型を用いて表面にパターンを形成した。なお、射出成型の際の樹脂温度は300℃とし、基板の厚さを、0.6〜1.2mmまで変化させた。
【0077】
(比較例2)
支持層として、外径65mm、内径20mm、厚さ0.6mmの円盤状の非磁性基体のガラスディスクを用い、これを洗浄後に、密着層を設けずに直接、表面層としてへキサンに溶解したPMMAをスピンコート法により、その支持層上に50nm形成した。PMMAの濃度は0.5wt%とした。その後、真空加圧装置に導入し、ガラスディスクとスタンパを130℃になるまで加熱し、スタンパにより圧力12MPaで型押しした。そのまま100℃まで冷却した後離型し、真空加圧装置から取り出した。なお、実施例1と同様に、スタンパには電子ビームリソグラフィを用いて、φ100nm、高さ50nmの円筒形パターンが形成した。
【0078】
この基板を非磁性基体として、実施例1と同様の方法を用いて、下地層、磁性層、保護層および液体潤滑層を積層した。しかしながら、磁性層形成後の基板の膜剥離を確認したところ、全ての基板にパターンの膜剥離が発生していることがわかった。
【0079】
(比較例3)
非磁性基体として表面が平滑な化学強化ガラス基板を用い、これを洗浄後スパッタ装置内に導入し、Ni15Fe27Crターゲットを用い、Arガス圧5mTorr下でNiFeCr層を15nm成膜した。続いてRuターゲットを用い、Arガス圧30mTorr下でRu層を15nm成膜し、NiFeCr/Ru積層下地層とした。さらに、Co20Cr10Ptターゲットを用いてCoCrPt磁気記録層をArガス圧5mTorr下で20nm成膜した。引き続いて、カーボンターゲットを用いてArガス圧8mTorr下でカーボンからなる保護層6nmを成膜後、真空装置から取り出した。その後、パープルオロポリエーテルからなる液体潤滑材層2nmをディップ法により形成し、垂直媒体とした。なお、下地層、磁気記録層、保護層の成膜は、DCマグネトロンスパッタリング法で行った。
【0080】
このようにして得られた実施例1〜3および比較例1〜3の各基板の平坦度およびパターンの転写率について評価した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
ここで、平坦度は、基板中心から半径方向へ11mmから30mmまでの直線領域に関して基板表面形状の変位量を非接触光学式表面粗さ計にて真直度を導出した。1つの基板について、円周方向に90°おきに4箇所の測定を行い、その中で最大の真直度をその基板面の平坦度とした。また、転写率は、パターンの設計値φ100nm×深さ50nmに対して、±5%以内の誤差を合格その他は不合格とし、パターン100個について評価し、合格したパターンの割合を転写率とした。なお、評価にはAFM(原子間力顕微鏡)を用いた。
【0083】
また、表1には、媒体の保磁力とGlide Height(G.H.)特性について評価した結果も併せて示されている。ここで、保磁力はVSMを用いて測定し、得られたM−Hループより求めた。G.H.試験は、媒体を回転させ、その上に試験用のヘッドを飛ばし、媒体表面の突起、パーティクル、ウネリなどを検知するものである。試験条件は、周速7m/sec、G.H.12.5nmとし、各々100枚を評価して合格率を求めた。
【0084】
実施例1〜3の基板の平坦度は、ガラスディスクの平坦性をそのまま反映し、1μmであり、転写率は膜剥離なしに100%であった。また、実施例1の基板の保磁力は2560Oe、G.H.試験特性の合格率は49%、実施例2の基板の保磁力は2620Oe、G.H.試験特性の合格率は53%、実施例3の基板の保磁力は2720Oe、G.H.試験特性の合格率は52%であった。
【0085】
これに対して、比較例1の射出成型で作製したプラスチック基板は、板厚を厚くすると平坦度が小さくなる傾向が見られるが、板厚1.2mmとした最も平坦性に優れるものでも、実施例1〜3の基板に比べると非常に大きい。転写率は実施例1〜3の基板では100%の高確率であるのに比ベ、全ての板厚で80〜84%に留まっている。また、比較例2の基板は、平坦度はガラスディスクの平坦性をそのまま反映して1μmであったものの、パターンの一部に膜剥離が起こってしまっていたため、転写率は70〜100%であった。さらに、比較例3の基板の保磁力は410Oe、G.H.試験特性の合格率は50%であった。磁気記録層が連続膜になっている比較例1の基板の保磁力は小さく、粒間の相互作用が非常に大きくなっていることがわかる。
【0086】
以上より、本発明によれば、平坦性に優れ、かつパターンの転写性にも優れた基板が作製できることがわかる。また、射出成型により作製された、全て熱可塑性樹脂からなる基板では困難である薄型化が可能であることもわかる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、アルミまたはガラスの非磁性基体の支持層の上に密着層を介して凹凸パターンを有する表面層を設ける構成としたので、高い平坦性・パターニング精度・機械的強度を有するパターンド垂直磁気記録媒体およびこれを可能とする垂直磁気記録媒体用基板並びにこれらの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直磁気記録媒体用基板の構造例を説明するための断面図である。
【図2】本発明の垂直磁気記録媒体用基板が備える凹凸パターンを有する表面層の形成方法を説明するための図である。
【図3】本発明の垂直磁気記録媒体用基板を用いたパターンド垂直磁気記録媒体の構成例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1 支持層
2 密着層
3 表面層
4 スタンパ
5 下地層
6 磁気記録層
7 保護膜
8 液体潤滑層
Claims (9)
- 少なくとも第1の層と第2の層と第3の層とを順次積層させた垂直磁気記録媒体用基板であって、
前記第3の層は熱可塑性樹脂からなり、
前記第1の層は前記第3の層に比較して高い機械的強度と高い変性温度とを有し、
前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層とを密着させる化合物からなることを特徴とする垂直磁気記録媒体用基板。 - 前記第1の層は、アルミまたはガラスの非磁性基体であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体用基板。
- 前記第2の層は、前記第1の層と前記第3の層の熱膨張・熱収縮率との間の熱膨張・熱収縮率を有することを特徴とする請求項1または2に記載の垂直磁気記録媒体用基板。
- 前記第2の層は、金属含有誘導体化合物と高分子誘導体化合物を含有する高分子組成物とを含む、有機・無機ハイブリッド組成物からなり、前記金属含有誘導体化合物は、Al、Ti、Zr、Si、In、Zn、NiおよびCuよりなる群から選択される金属を中心金属とするアルコキシド、フェノキシド、アシレートまたはキレート化合物であり、
前記高分子誘導体化合物は、水酸基、カルボキシル基およびアミノ基から選択される官能基を含有し、かつ、末端に(メタ)アクリロイル基を有する、モノマー、オリゴマーまたはポリマー成分を主成分とする化合物であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板。 - 前記第3の層は、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、その他のポリエステル系またはポリオレフィン系材料からなることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板。
- 前記第3の層の表面には、所望の凹凸パターンが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の垂直磁気記録媒体用基板。
- 請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板の第3の層の凹凸パターンの凹部にのみ磁気記録層が埋め込まれて備えられていることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
- 請求項6に記載の垂直磁気記録媒体用基板を製造するための方法であって、
前記第2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、
前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で、予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写することを特徴とする垂直磁気記録媒体用基板の製造方法。 - 請求項7に記載の垂直磁気記録媒体を製造するための方法であって、
前記第1の層の上に設けられた前記2の層の全表面に前記第3の層をコーティングし、
前記第3の層の転移温度を越えない転移温度近傍での加熱下で予め所望のパターンが設けられたスタンパを押し付けて前記第3の層の表面に凹凸パターンを転写し、
前記凹凸パターンを有する第3の層の全面に磁性材料膜を成膜した後に前記第3の層の凸部の上面まで前記磁性材料膜を研磨して前記凹部にのみ磁気記録層を形成することを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
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