JP2004169073A - 耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板 - Google Patents
耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】Pbを一切含有することなく、かつPbフリー半田との間に良好な濡れ性を備え、しかもホイスカーを一切発生しない、表面処理鋼板を提供する。
【解決手段】鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するSn−Bi合金めっき鋼板において、該Sn−Bi合金めっき皮膜のBi濃度を1mass%以上57mass%以下とするとともに、Bi濃度を皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減させる。
【選択図】 なし
【解決手段】鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するSn−Bi合金めっき鋼板において、該Sn−Bi合金めっき皮膜のBi濃度を1mass%以上57mass%以下とするとともに、Bi濃度を皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減させる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半田濡れ性に優れたSn系表面処理鋼板であって、特にPbを全く含有せずかつホイスカーを発生しない、家電製品等の部品に用いて好適な、Sn−Bi合金めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家電製品のシャーシや部品ケース等には、冷間圧延鋼板が用いられることが多い。これらシャーシや部品ケースに用いられた鋼板は、その設置先において、各種部品と半田により接合される場合がある。この半田接合を良好に行うために、鋼板には半田との濡れ性を向上させる表面処理が施されるのが通例である。この表面処理として、例えばPb−Sn合金めっき皮膜は、鋼板に良好な半田濡れ性を付与し、またホイスカーを発生しないため、この皮膜をめっきした鋼板は、従来家電製品等に広く用いられてきた。
【0003】
ここで、ホイスカーとは、SnやZnなどの金属より自然に発生、成長するひげ状結晶のことである。このホイスカーが成長して他の部品に接触するか、あるいは振動や空気流などにより折れて電気回路上に落下すると、回路の短絡の原因になる。従って、家電製品等には、ホイスカーを発生しない表面処理を施した鋼板を用いる必要がある。
【0004】
ところで、近年、廃棄された工業製品の部品に含まれるPbが、雨などに曝される事により溶出し、土壌汚染の原因となることが指摘されている。また、Pbで汚染された地下水を飲用することによりPbが人体に蓄積され、疼痛、知能障害、精神不安定などの中毒症状を引き起こす。このため、世界的にPbの使用を規制しようとする機運が高まってきており、Pbを含有する製品の代替品開発が産業上非常に重要となってきている。
【0005】
これまで半田にはSn−Pb合金が用いられてきたが、上記の理由から、Pbを含まない半田、つまりPbフリー半田として、Sn−Ag−Cu系等の合金が開発され、用いられるようになってきている。前述のように、半田との間で良好な濡れ性が必要とされる鋼板には、Pb−Sn合金めっき皮膜を形成した鋼板が用いられてきたが、Pbを含有する半田とともに、このPbを含有する表面処理鋼板もその代替が求められている。すなわち、皮膜中にPbを含まず、Pbフリー半田とも良好な濡れ性を備え、かつホイスカーの発生の無い表面処理鋼板が必要とされている。特に、Pbフリー半田は、Pb−Sn半田に比べ融点が高くなっているものが多く、従来以上に優れた半田濡れ性が、表面処理鋼板に要求される。
【0006】
Pbを含まずかつ半田濡れ性のある表面処理を施した鋼板としては、特許文献1に、鋼板側から順にNiめっき、SnめっきおよびZnめっきを施した後、加熱処理によって該めっき層を合金化させ、Sn−Zn、Zn−Ni、Sn−NiおよびFe−Ni合金を主体とする皮膜を形成させ、さらにクロメート皮膜を付着させたことを特徴とする耐ホイスカー性並びに半田濡れ性に優れた表面処理鋼板が開示されている。ここで、耐ホイスカー性に優れるとは、ホイスカーを発生しないことである。
しかし、この鋼板は、耐ホイスカー性は良いものの、Pbフリー半田との濡れ性に劣り、前記の要求を満足するものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に、めっき膜厚方向に合金成分の含有率が増加するように濃度勾配を有しているリード表面に、Sn合金めっき膜が形成されかつ曲げ加工された半導体装置が開示されている。ここでは、合金成分の含有率が下層で1wt%以下、上層で1wt%以上と、規定されている。また、実施の形態の例として、上記の組成の上層と下層との間に中間層を有する構造が示されている。しかしながら、これらの下層の組成では十分な耐ホイスカー性が発揮できない。さらに、上層についても合金成分の含有率が1〜3wt%の場合は耐ホイスカー性に劣り、一方で57wt%を超えると半田濡れ性が悪化する。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−183796号公報
【特許文献2】
特開2000−174191号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、Pbを一切含有することなく、かつPbフリー半田との間に良好な濡れ性を備え、しかもホイスカーを一切発生しない、表面処理鋼板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
さて、Sn−Znを主体とするめっき層にクロメート処理を行う上記従来技術では、Pbフリー半田に対して濡れ性を満足させることは困難であった。そこで、発明者らは、表面処理鋼板における上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Sn−Bi合金めっき皮膜を形成し、最表層および最下層の合金成分の含有率を限定することが、Pbフリー半田との濡れ性をもたらし、優れた耐ホイスカー性を備えるのに有効であることを新規に見出し、この発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するSn−Bi合金めっき鋼板において、該Sn−Bi合金めっき皮膜のBi濃度が1mass%以上57mass%以下であり、かつBi濃度が該めっき皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減することを特徴とする耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。
【0012】
(2)前記合金めっき皮膜の表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最表層のBi濃度が3mass%以上57mass%以下および、前記合金めっき皮膜の鋼板表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の構成を詳細に説明する。
この発明では、まず鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するところに特徴がある。このSn−Bi合金めっき皮膜によって、半田濡れ性は格段に向上する。すなわち、SnにBiを共晶組成である57mass%以下の範囲で添加することにより、その融点を下げることができる。一般に、めっき皮膜は融点が低いほど良好な半田濡れ性を示すため、このBiによる低融点化は有効である。
【0014】
また、Sn−Zn合金皮膜などは保存中および接合時に合金中のZnが容易に酸化され、その酸化皮膜が半田濡れ性に悪影響を及ぼすが、Sn−Bi合金皮膜にはそのような欠点が無いことも有利である。さらに、BiにはPbのような毒性は無く、環境問題への対応という点においても、Sn−Bi合金は優れている。
【0015】
特に、Sn−Bi合金皮膜は、そのBi濃度が1mass%以上57mass%以下の範囲内にて、該めっき皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減することが肝要である。この理由を以下に述べる。
すなわち、良好な半田濡れ性や耐ホイスカー性のためには、皮膜中のBi濃度は57mass%以下の範囲内において高いことが好ましいが、Sn中のBi濃度の増加とともに、固溶強化により合金の硬さは上昇し、脆くなる。そして、脆い皮膜を有する鋼板を塑性加工すると皮膜にひび割れを生じ、素地の鋼が露出して耐食性が低下し、さらに皮膜が脆いと半田接合後の接合強度も低下することになる。逆に、皮膜中のBi濃度が低すぎると、ホイスカーの発生を抑制する効果や半田濡れ性が十分に得られない。そこで、この発明では、皮膜の最表層のBi濃度が高くかつ最下層のBi濃度が低くなる、濃度勾配を付与することにより、半田濡れ性および耐ホイスカー性を改善しつつ皮膜の靭性を確保することを達成した。
【0016】
ここで、Sn−Bi合金皮膜のBi濃度が1mass%未満では、十分な耐ホイスカー性が得られず、一方57mass%を超えると、融点が上昇して半田濡れ性が悪化する。
【0017】
なお、この発明に従う、Sn−Bi合金皮膜がホイスカー発生を抑制するのは、合金元素として添加されたBi原子がSn原子の拡散を阻害するためであると考えられる。
【0018】
さらに、上記Sn−Bi合金皮膜のBi濃度に上記勾配を設けるに際し、該皮膜の表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最表層のBi濃度が3mass%以上57mass%以下および、前記合金めっき皮膜の鋼板表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下であることが好ましい。なぜなら、最表層のBi濃度が3mass%未満では、十分な耐ホイスカー性が得られず、同濃度が57mass%を超えると、融点が上昇して半田濡れ性が悪化するからである。一方、最下層では、Bi濃度が3mass%を超えると十分な靭性が得られず、同濃度が1mass%未満では耐ホイスカー性が低下するからである。
【0019】
なお、合金めっき皮膜の各層の厚さとその部分におけるBi濃度は、Arイオン等によるスパッタリングとオージェ電子分光分析を組み合わせることにより測定することができる。
【0020】
また、上記Sn−Bi合金皮膜は、その付着量が2g/m2(0.3μm厚)以上であることが好ましい。なぜなら、皮膜の付着量が2g/m2(0.3μm厚)未満であると、半田との十分な濡れ性が得られないためである。一般に、半田と可溶性皮膜との濡れ性は、皮膜の付着量にも依存し、ある程度までは付着量が多いほど濡れ性は良く、少なすぎると必要な濡れ性を確保できないため、2g/m2(0.3μm厚)以上が好ましい。一方、付着量の上限は特に規定する必要はないが、多すぎても利点は無く、製造コストが過大になるため、30g/m2(4.5μm厚)以下とすることが好ましい。
【0021】
次に、この発明の表面処理鋼板を製造する方法の一例を、具体的に説明する。まず、めっき原板には、任意の寸法の鋼板を用いることができる。必要に応じて脱脂、酸洗等の前処理を鋼板に施し、めっき原板とする。また、処理後の鋼板表面の導電性を損なわない限り、Niめっき等の下地めっきを施しておいても良い。鋼成分についても特に規定しないが、家電製品等の部品に用いる場合、通常の曲げ、プレス等の塑性加工が可能な延性を有する成分系である必要がある。
【0022】
次いで、めっき原板にSn−Bi合金皮膜を形成するが、この皮膜は必要に応じて鋼板の両面に形成すること、および片面にのみ形成することのいずれも可能である。両面に形成する場合は、皮膜の合金組成および付着量をそれぞれ両面で等しくすることも、異なる値にすることも可能である。片面にのみ形成する場合、この発明による合金皮膜の特性を損なわない限り、もう一方の面に任意の皮膜を形成することが可能である。勿論片面をこの発明による合金皮膜とし、もう一方の面は皮膜を形成しなくとも良い。
【0023】
ここで、めっき原板に合金皮膜を形成するに当り、電気めっき法は電流密度および通電時間を制御することによって、正確に所望の付着量の皮膜を得ることができるため、この発明の鋼板におけるSn−Bi合金皮膜は、電気めっき法により形成することが好ましい。
以下、電気めっき法(合金めっき法)を用いる場合について、具体的に説明する。
【0024】
すなわち、この発明のSn−Bi合金皮膜の形成は、酸性または中性の、公知のめっき浴を用いて行うことができる。酸性浴としては、有機スルホン酸浴などの有機酸浴および硫酸浴などの無機酸浴のいずれも用いることができるが、アルカンスルホン酸浴などの有機スルホン酸浴を用いることが、推奨される。特に好適なのは、メタンスルホン酸洛である。2価のSnイオンと3価のBiイオンとを適量含む、上記のいずれかの浴を、めっき浴として用いる。なお、所望の皮膜組成を得るために必要な、浴中のSnイオンとBiイオンとの質量比は、浴および添加剤の種類により異なるため、適宜調整する必要がある。
【0025】
これらのめっき浴には、必要に応じて光沢剤等の添加剤を適量加えて用いることができる。さらに、これらのめっき浴には、Sn、BiおよびSn−Bi合金のいずれかを可溶性アノードとして用いる他に、Ptにより被覆したTiなどの不溶性アノードも用いることができる。一方のカソードは、めっき原板である。
また、めっき浴の温度については特に規定しないが、添加剤を用いる場合は、添加剤が変成しないような温度域に浴温を保つ必要がある。
【0026】
以上のめっき浴を用いて電気めっきを行い、上述したこの発明に従うSn−Bi合金皮膜を形成するには、電流密度をめっき時間とともに減少させ、めっき終期の電流密度の平均値をめっき初期の電流密度の平均値の0.05〜50%に制御することが好ましい。
すなわち、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時の電流密度との間には、電流密度が小さいほど皮膜中のBi濃度が高く、一方電流密度が大きいほど皮膜中のBi濃度が低くなる、関係が成立する。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行うとき、めっき初期の電流密度を大きくし、めっき終期の電流密度を小さくすれば、鋼板素地近傍のBi濃度が低く、皮膜表面近傍のBi濃度が高い、めっき皮膜を形成することができる。このとき、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の0.05%以上50%以下であることが好ましい。
【0027】
なぜなら、皮膜の最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下となるようにめっき初期の電流密度を設定した場合、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の0.05%未満であれば、皮膜の最表層のBi濃度が57mass%より大きくなり、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の50%より大きくなると、最表層のBi濃度が3mass%未満になるからである。
【0028】
なお、上記のめっき初期とは、皮膜の最下層、すなわち鋼板の表面から少なくとも0.045μm厚にわたるめっき層部分を形成する期間である。また、めっき終期とは、皮膜の最表層、すなわちめっき表面から少なくとも0.045μm厚にわたるめっき層部分を形成する期間である。
【0029】
また、上記の方法の他に、この発明に従うSn−Bi合金皮膜を形成する方法としては、以下の方法も採用することができる。
すなわち、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時のめっき浴の攪拌速度との間には、めっき浴の攪拌速度が大きいほど皮膜中のBi濃度は高く、攪拌速度が小さいほど皮膜中のBi濃度は低くなる関係がある。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行う際、めっき初期の攪拌速度を小さくし、めっき終期の攪拌速度を大きくすれば、鋼板素地近傍にBi濃度が低く、皮膜の表面近傍にBi濃度の高い、めっき皮膜を形成することができる。
【0030】
さらに、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時のめっき浴温との間には、めっき浴温が高いほど皮膜中のBi濃度が高く、一方めっき浴温が低いほど皮膜中のBi濃度が低くなる、関係がある。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行う際、めっき初期の浴温を低くし、めっき終期の浴温を高くすれば、素地近傍にBi濃度が低く、かつ表面近傍にBi濃度の高い、めっき皮膜を形成することができる。
【0031】
【実施例】
厚さ0.2mmの冷間圧延鋼板に、脱脂および酸洗の前処理を施し、鋼板両面にSn−Bi合金電気めっきを施した。その際、合金めっき層中のBi濃度を、最表層から最下層にかけて漸減させる方法として、前述の方法のうち、めっき初期の電流密度の平均値を大きくし、めっき終期の電流密度の平均値を小さくする方法を用いた。なお、めっき浴は、メタンスルホン酸浴(浴温:40℃)を用い、アノードにはSnを用いた。そのめっき浴の組成を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
また、比較として、この発明の請求範囲外の条件の表面処理鋼板を作製した。さらに、比較として、Biを含まない点以外は実施例と同じメタンスルホン酸浴を用いた電気めっきにより、Sn皮膜を形成した表面処理鋼板を作製した。これらの発明例および比較例について、めっき初期および終期の電流密度の平均値を、表2に示す。なお、形成した合金めっき層の深さ方向の組成は、オージェ電子分光分析によって調査した。皮膜の付着量と、最表層および最下層のBi濃度を、表3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
かくして得られた各表面処理鋼板について、以下に示す半田濡れ性および耐ホイスカー性の評価を行った。
(半田濡れ性評価)
メニスコグラフ法により半田濡れ性を評価した。このメニスコグラフ法は、垂直に吊り下げた試験片にかかる力を検出しながら、試験片を溶融半田浴に浸漬し、力の時間変化を読み取る試験法である。すなわち、浸漬した直後は半田の表面張力により上向きの力がかかるが、濡れが進行するにしたがって上向きの力が減少し、やがて半田が濡れ上がり、下向きの力がかかるようになる。浸漬を開始してから上向きの力が零になるまでの時間をゼロクロスタイムとし、濡れ性の指標とする。すなわち、ゼロクロスタイムが短いほど半田濡れ性が良いということになる。半田には、PbフリーのSn−3.5mass%Ag−0.75mass%Cu合金を使用し、試料に非活性フラックスを塗布してから試験を行った。半田浴温は245℃、浸漬深さは3mm、浸漬速度は5mm/sである。半田濡れ性の評価結果はゼロクロスタイムで示し、ゼロクロスタイムが15s以上である場合は、「×」の評価としている。
【0037】
(耐ホイスカー性評価)
耐ホイスカー性評価は、恒温恒湿試験により行った。すなわち、80℃、85%RHの環境下に300時間試料を曝した後、表面を走査型電子顕微鏡により観察し、ホイスカー発生の有無を確認した。耐ホイスカー性については、ホイスカーが発生しない場合を合格「〇」、ホイスカーが発生した場合を不合格「×」としている。
【0038】
以上の評価結果を表4に示すように、発明例はいずれも半田濡れ性、耐ホイスカー性および曲げ加工性の全てにおいて良好な特性を示している。これに対し、比較例1、3および4は半田濡れ性は良好なものの、耐ホイスカー性が劣っている。これは、比較例1で最下層のBi濃度が足りないため、比較例3および4でBiを含まないためである。比較例2では、耐ホイスカー性は良好であるが、半田濡れ性が劣っている。これは、Bi濃度が大きすぎるためである。
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
この発明によって、特に家電製品に用いられるSn系表面処理鋼板、特にPbフリー半田に対する濡れ性が良好で、かつ耐ホイスカー性に優れるSn系表面処理鋼板を提供することが可能になった。
【発明の属する技術分野】
この発明は、半田濡れ性に優れたSn系表面処理鋼板であって、特にPbを全く含有せずかつホイスカーを発生しない、家電製品等の部品に用いて好適な、Sn−Bi合金めっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
家電製品のシャーシや部品ケース等には、冷間圧延鋼板が用いられることが多い。これらシャーシや部品ケースに用いられた鋼板は、その設置先において、各種部品と半田により接合される場合がある。この半田接合を良好に行うために、鋼板には半田との濡れ性を向上させる表面処理が施されるのが通例である。この表面処理として、例えばPb−Sn合金めっき皮膜は、鋼板に良好な半田濡れ性を付与し、またホイスカーを発生しないため、この皮膜をめっきした鋼板は、従来家電製品等に広く用いられてきた。
【0003】
ここで、ホイスカーとは、SnやZnなどの金属より自然に発生、成長するひげ状結晶のことである。このホイスカーが成長して他の部品に接触するか、あるいは振動や空気流などにより折れて電気回路上に落下すると、回路の短絡の原因になる。従って、家電製品等には、ホイスカーを発生しない表面処理を施した鋼板を用いる必要がある。
【0004】
ところで、近年、廃棄された工業製品の部品に含まれるPbが、雨などに曝される事により溶出し、土壌汚染の原因となることが指摘されている。また、Pbで汚染された地下水を飲用することによりPbが人体に蓄積され、疼痛、知能障害、精神不安定などの中毒症状を引き起こす。このため、世界的にPbの使用を規制しようとする機運が高まってきており、Pbを含有する製品の代替品開発が産業上非常に重要となってきている。
【0005】
これまで半田にはSn−Pb合金が用いられてきたが、上記の理由から、Pbを含まない半田、つまりPbフリー半田として、Sn−Ag−Cu系等の合金が開発され、用いられるようになってきている。前述のように、半田との間で良好な濡れ性が必要とされる鋼板には、Pb−Sn合金めっき皮膜を形成した鋼板が用いられてきたが、Pbを含有する半田とともに、このPbを含有する表面処理鋼板もその代替が求められている。すなわち、皮膜中にPbを含まず、Pbフリー半田とも良好な濡れ性を備え、かつホイスカーの発生の無い表面処理鋼板が必要とされている。特に、Pbフリー半田は、Pb−Sn半田に比べ融点が高くなっているものが多く、従来以上に優れた半田濡れ性が、表面処理鋼板に要求される。
【0006】
Pbを含まずかつ半田濡れ性のある表面処理を施した鋼板としては、特許文献1に、鋼板側から順にNiめっき、SnめっきおよびZnめっきを施した後、加熱処理によって該めっき層を合金化させ、Sn−Zn、Zn−Ni、Sn−NiおよびFe−Ni合金を主体とする皮膜を形成させ、さらにクロメート皮膜を付着させたことを特徴とする耐ホイスカー性並びに半田濡れ性に優れた表面処理鋼板が開示されている。ここで、耐ホイスカー性に優れるとは、ホイスカーを発生しないことである。
しかし、この鋼板は、耐ホイスカー性は良いものの、Pbフリー半田との濡れ性に劣り、前記の要求を満足するものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に、めっき膜厚方向に合金成分の含有率が増加するように濃度勾配を有しているリード表面に、Sn合金めっき膜が形成されかつ曲げ加工された半導体装置が開示されている。ここでは、合金成分の含有率が下層で1wt%以下、上層で1wt%以上と、規定されている。また、実施の形態の例として、上記の組成の上層と下層との間に中間層を有する構造が示されている。しかしながら、これらの下層の組成では十分な耐ホイスカー性が発揮できない。さらに、上層についても合金成分の含有率が1〜3wt%の場合は耐ホイスカー性に劣り、一方で57wt%を超えると半田濡れ性が悪化する。
【0008】
【特許文献1】
特開平3−183796号公報
【特許文献2】
特開2000−174191号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、Pbを一切含有することなく、かつPbフリー半田との間に良好な濡れ性を備え、しかもホイスカーを一切発生しない、表面処理鋼板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
さて、Sn−Znを主体とするめっき層にクロメート処理を行う上記従来技術では、Pbフリー半田に対して濡れ性を満足させることは困難であった。そこで、発明者らは、表面処理鋼板における上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Sn−Bi合金めっき皮膜を形成し、最表層および最下層の合金成分の含有率を限定することが、Pbフリー半田との濡れ性をもたらし、優れた耐ホイスカー性を備えるのに有効であることを新規に見出し、この発明を完成するに到った。
【0011】
すなわち、この発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するSn−Bi合金めっき鋼板において、該Sn−Bi合金めっき皮膜のBi濃度が1mass%以上57mass%以下であり、かつBi濃度が該めっき皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減することを特徴とする耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。
【0012】
(2)前記合金めっき皮膜の表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最表層のBi濃度が3mass%以上57mass%以下および、前記合金めっき皮膜の鋼板表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の構成を詳細に説明する。
この発明では、まず鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するところに特徴がある。このSn−Bi合金めっき皮膜によって、半田濡れ性は格段に向上する。すなわち、SnにBiを共晶組成である57mass%以下の範囲で添加することにより、その融点を下げることができる。一般に、めっき皮膜は融点が低いほど良好な半田濡れ性を示すため、このBiによる低融点化は有効である。
【0014】
また、Sn−Zn合金皮膜などは保存中および接合時に合金中のZnが容易に酸化され、その酸化皮膜が半田濡れ性に悪影響を及ぼすが、Sn−Bi合金皮膜にはそのような欠点が無いことも有利である。さらに、BiにはPbのような毒性は無く、環境問題への対応という点においても、Sn−Bi合金は優れている。
【0015】
特に、Sn−Bi合金皮膜は、そのBi濃度が1mass%以上57mass%以下の範囲内にて、該めっき皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減することが肝要である。この理由を以下に述べる。
すなわち、良好な半田濡れ性や耐ホイスカー性のためには、皮膜中のBi濃度は57mass%以下の範囲内において高いことが好ましいが、Sn中のBi濃度の増加とともに、固溶強化により合金の硬さは上昇し、脆くなる。そして、脆い皮膜を有する鋼板を塑性加工すると皮膜にひび割れを生じ、素地の鋼が露出して耐食性が低下し、さらに皮膜が脆いと半田接合後の接合強度も低下することになる。逆に、皮膜中のBi濃度が低すぎると、ホイスカーの発生を抑制する効果や半田濡れ性が十分に得られない。そこで、この発明では、皮膜の最表層のBi濃度が高くかつ最下層のBi濃度が低くなる、濃度勾配を付与することにより、半田濡れ性および耐ホイスカー性を改善しつつ皮膜の靭性を確保することを達成した。
【0016】
ここで、Sn−Bi合金皮膜のBi濃度が1mass%未満では、十分な耐ホイスカー性が得られず、一方57mass%を超えると、融点が上昇して半田濡れ性が悪化する。
【0017】
なお、この発明に従う、Sn−Bi合金皮膜がホイスカー発生を抑制するのは、合金元素として添加されたBi原子がSn原子の拡散を阻害するためであると考えられる。
【0018】
さらに、上記Sn−Bi合金皮膜のBi濃度に上記勾配を設けるに際し、該皮膜の表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最表層のBi濃度が3mass%以上57mass%以下および、前記合金めっき皮膜の鋼板表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下であることが好ましい。なぜなら、最表層のBi濃度が3mass%未満では、十分な耐ホイスカー性が得られず、同濃度が57mass%を超えると、融点が上昇して半田濡れ性が悪化するからである。一方、最下層では、Bi濃度が3mass%を超えると十分な靭性が得られず、同濃度が1mass%未満では耐ホイスカー性が低下するからである。
【0019】
なお、合金めっき皮膜の各層の厚さとその部分におけるBi濃度は、Arイオン等によるスパッタリングとオージェ電子分光分析を組み合わせることにより測定することができる。
【0020】
また、上記Sn−Bi合金皮膜は、その付着量が2g/m2(0.3μm厚)以上であることが好ましい。なぜなら、皮膜の付着量が2g/m2(0.3μm厚)未満であると、半田との十分な濡れ性が得られないためである。一般に、半田と可溶性皮膜との濡れ性は、皮膜の付着量にも依存し、ある程度までは付着量が多いほど濡れ性は良く、少なすぎると必要な濡れ性を確保できないため、2g/m2(0.3μm厚)以上が好ましい。一方、付着量の上限は特に規定する必要はないが、多すぎても利点は無く、製造コストが過大になるため、30g/m2(4.5μm厚)以下とすることが好ましい。
【0021】
次に、この発明の表面処理鋼板を製造する方法の一例を、具体的に説明する。まず、めっき原板には、任意の寸法の鋼板を用いることができる。必要に応じて脱脂、酸洗等の前処理を鋼板に施し、めっき原板とする。また、処理後の鋼板表面の導電性を損なわない限り、Niめっき等の下地めっきを施しておいても良い。鋼成分についても特に規定しないが、家電製品等の部品に用いる場合、通常の曲げ、プレス等の塑性加工が可能な延性を有する成分系である必要がある。
【0022】
次いで、めっき原板にSn−Bi合金皮膜を形成するが、この皮膜は必要に応じて鋼板の両面に形成すること、および片面にのみ形成することのいずれも可能である。両面に形成する場合は、皮膜の合金組成および付着量をそれぞれ両面で等しくすることも、異なる値にすることも可能である。片面にのみ形成する場合、この発明による合金皮膜の特性を損なわない限り、もう一方の面に任意の皮膜を形成することが可能である。勿論片面をこの発明による合金皮膜とし、もう一方の面は皮膜を形成しなくとも良い。
【0023】
ここで、めっき原板に合金皮膜を形成するに当り、電気めっき法は電流密度および通電時間を制御することによって、正確に所望の付着量の皮膜を得ることができるため、この発明の鋼板におけるSn−Bi合金皮膜は、電気めっき法により形成することが好ましい。
以下、電気めっき法(合金めっき法)を用いる場合について、具体的に説明する。
【0024】
すなわち、この発明のSn−Bi合金皮膜の形成は、酸性または中性の、公知のめっき浴を用いて行うことができる。酸性浴としては、有機スルホン酸浴などの有機酸浴および硫酸浴などの無機酸浴のいずれも用いることができるが、アルカンスルホン酸浴などの有機スルホン酸浴を用いることが、推奨される。特に好適なのは、メタンスルホン酸洛である。2価のSnイオンと3価のBiイオンとを適量含む、上記のいずれかの浴を、めっき浴として用いる。なお、所望の皮膜組成を得るために必要な、浴中のSnイオンとBiイオンとの質量比は、浴および添加剤の種類により異なるため、適宜調整する必要がある。
【0025】
これらのめっき浴には、必要に応じて光沢剤等の添加剤を適量加えて用いることができる。さらに、これらのめっき浴には、Sn、BiおよびSn−Bi合金のいずれかを可溶性アノードとして用いる他に、Ptにより被覆したTiなどの不溶性アノードも用いることができる。一方のカソードは、めっき原板である。
また、めっき浴の温度については特に規定しないが、添加剤を用いる場合は、添加剤が変成しないような温度域に浴温を保つ必要がある。
【0026】
以上のめっき浴を用いて電気めっきを行い、上述したこの発明に従うSn−Bi合金皮膜を形成するには、電流密度をめっき時間とともに減少させ、めっき終期の電流密度の平均値をめっき初期の電流密度の平均値の0.05〜50%に制御することが好ましい。
すなわち、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時の電流密度との間には、電流密度が小さいほど皮膜中のBi濃度が高く、一方電流密度が大きいほど皮膜中のBi濃度が低くなる、関係が成立する。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行うとき、めっき初期の電流密度を大きくし、めっき終期の電流密度を小さくすれば、鋼板素地近傍のBi濃度が低く、皮膜表面近傍のBi濃度が高い、めっき皮膜を形成することができる。このとき、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の0.05%以上50%以下であることが好ましい。
【0027】
なぜなら、皮膜の最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下となるようにめっき初期の電流密度を設定した場合、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の0.05%未満であれば、皮膜の最表層のBi濃度が57mass%より大きくなり、めっき終期の電流密度の平均値がめっき初期の電流密度の平均値の50%より大きくなると、最表層のBi濃度が3mass%未満になるからである。
【0028】
なお、上記のめっき初期とは、皮膜の最下層、すなわち鋼板の表面から少なくとも0.045μm厚にわたるめっき層部分を形成する期間である。また、めっき終期とは、皮膜の最表層、すなわちめっき表面から少なくとも0.045μm厚にわたるめっき層部分を形成する期間である。
【0029】
また、上記の方法の他に、この発明に従うSn−Bi合金皮膜を形成する方法としては、以下の方法も採用することができる。
すなわち、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時のめっき浴の攪拌速度との間には、めっき浴の攪拌速度が大きいほど皮膜中のBi濃度は高く、攪拌速度が小さいほど皮膜中のBi濃度は低くなる関係がある。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行う際、めっき初期の攪拌速度を小さくし、めっき終期の攪拌速度を大きくすれば、鋼板素地近傍にBi濃度が低く、皮膜の表面近傍にBi濃度の高い、めっき皮膜を形成することができる。
【0030】
さらに、めっき液中のBi濃度が一定のとき、めっき皮膜中のBi濃度とめっき処理時のめっき浴温との間には、めっき浴温が高いほど皮膜中のBi濃度が高く、一方めっき浴温が低いほど皮膜中のBi濃度が低くなる、関係がある。従って、鋼板にSn−Bi合金めっきを行う際、めっき初期の浴温を低くし、めっき終期の浴温を高くすれば、素地近傍にBi濃度が低く、かつ表面近傍にBi濃度の高い、めっき皮膜を形成することができる。
【0031】
【実施例】
厚さ0.2mmの冷間圧延鋼板に、脱脂および酸洗の前処理を施し、鋼板両面にSn−Bi合金電気めっきを施した。その際、合金めっき層中のBi濃度を、最表層から最下層にかけて漸減させる方法として、前述の方法のうち、めっき初期の電流密度の平均値を大きくし、めっき終期の電流密度の平均値を小さくする方法を用いた。なお、めっき浴は、メタンスルホン酸浴(浴温:40℃)を用い、アノードにはSnを用いた。そのめっき浴の組成を、表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
また、比較として、この発明の請求範囲外の条件の表面処理鋼板を作製した。さらに、比較として、Biを含まない点以外は実施例と同じメタンスルホン酸浴を用いた電気めっきにより、Sn皮膜を形成した表面処理鋼板を作製した。これらの発明例および比較例について、めっき初期および終期の電流密度の平均値を、表2に示す。なお、形成した合金めっき層の深さ方向の組成は、オージェ電子分光分析によって調査した。皮膜の付着量と、最表層および最下層のBi濃度を、表3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
かくして得られた各表面処理鋼板について、以下に示す半田濡れ性および耐ホイスカー性の評価を行った。
(半田濡れ性評価)
メニスコグラフ法により半田濡れ性を評価した。このメニスコグラフ法は、垂直に吊り下げた試験片にかかる力を検出しながら、試験片を溶融半田浴に浸漬し、力の時間変化を読み取る試験法である。すなわち、浸漬した直後は半田の表面張力により上向きの力がかかるが、濡れが進行するにしたがって上向きの力が減少し、やがて半田が濡れ上がり、下向きの力がかかるようになる。浸漬を開始してから上向きの力が零になるまでの時間をゼロクロスタイムとし、濡れ性の指標とする。すなわち、ゼロクロスタイムが短いほど半田濡れ性が良いということになる。半田には、PbフリーのSn−3.5mass%Ag−0.75mass%Cu合金を使用し、試料に非活性フラックスを塗布してから試験を行った。半田浴温は245℃、浸漬深さは3mm、浸漬速度は5mm/sである。半田濡れ性の評価結果はゼロクロスタイムで示し、ゼロクロスタイムが15s以上である場合は、「×」の評価としている。
【0037】
(耐ホイスカー性評価)
耐ホイスカー性評価は、恒温恒湿試験により行った。すなわち、80℃、85%RHの環境下に300時間試料を曝した後、表面を走査型電子顕微鏡により観察し、ホイスカー発生の有無を確認した。耐ホイスカー性については、ホイスカーが発生しない場合を合格「〇」、ホイスカーが発生した場合を不合格「×」としている。
【0038】
以上の評価結果を表4に示すように、発明例はいずれも半田濡れ性、耐ホイスカー性および曲げ加工性の全てにおいて良好な特性を示している。これに対し、比較例1、3および4は半田濡れ性は良好なものの、耐ホイスカー性が劣っている。これは、比較例1で最下層のBi濃度が足りないため、比較例3および4でBiを含まないためである。比較例2では、耐ホイスカー性は良好であるが、半田濡れ性が劣っている。これは、Bi濃度が大きすぎるためである。
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
この発明によって、特に家電製品に用いられるSn系表面処理鋼板、特にPbフリー半田に対する濡れ性が良好で、かつ耐ホイスカー性に優れるSn系表面処理鋼板を提供することが可能になった。
Claims (2)
- 鋼板表面の少なくとも片面に、Sn−Bi合金めっき皮膜を有するSn−Bi合金めっき鋼板において、
該Sn−Bi合金めっき皮膜のBi濃度が1mass%以上57mass%以下であり、かつBi濃度が該めっき皮膜表面から鋼板表面に向かって漸減することを特徴とする耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。 - 前記合金めっき皮膜の表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最表層のBi濃度が3mass%以上57mass%以下および、前記合金めっき皮膜の鋼板表面から少なくとも0.045μm厚にわたる最下層のBi濃度が1mass%以上3mass%以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板。
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JP2002333862A JP2004169073A (ja) | 2002-11-18 | 2002-11-18 | 耐ホイスカー性および半田濡れ性に優れたSn−Bi合金めっき鋼板 |
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JP2007154260A (ja) * | 2005-12-05 | 2007-06-21 | Sumitomo Metal Mining Co Ltd | 鉛フリーめっき皮膜の形成方法 |
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2002
- 2002-11-18 JP JP2002333862A patent/JP2004169073A/ja active Pending
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JP4654895B2 (ja) * | 2005-12-05 | 2011-03-23 | 住友金属鉱山株式会社 | 鉛フリーめっき皮膜の形成方法 |
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