JP2004166934A - 体表面心電計 - Google Patents

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広雅 豊栖
Yasuhiro Toyosu
康弘 豊栖
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Abstract

【課題】簡単な構造で、0Vラインの変動を少なくしながら、多数の測定部位から正確に心電位を検出して高精度な電位分布図を作成する。
【解決手段】体表面心電計は、体表面に誘導される心電位を電極1で検出して体表面電位分布図を表示する。電極1は、体表面の複数ヶ所に押圧される複数本の導電ロッド12と、導電ロッド12を出入りできるように装着している電極本体13と、導電ロッド12を弾性的に押し出す弾性押出材14とを備えるロッド電極10を備える。導電ロッド12は、ロッド部12Bと、このロッド部12Bの先端部に連結されて体表面に接触する接触電極12Aとを備える。接触電極12Aの体表面に接触する接触面12aは、ロッド部12Bの横断面よりも大きい外形であって、その面積を15mmよりも大きく、隣の接触電極12Aとの中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしている。
【選択図】 図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、心臓電気現象を明確に捉えるため、心臓に近い体表面の多くの点から心電位を測定し、測定した心電位を演算してある時間の体表面電位図を表示する体表面心電計に関する。
【0002】
【従来の技術】
体表面心電計は、心臓に近い体表面の100〜500点に複数の電極を配設し、すべての電極から同時に心電位を採取し、採取した複数点の心電位から総合的に心臓の電気現象を判断する体表面電位分布図を作成する。
【0003】
体表面心電計は、例えば図1に示すように、ある時間における心臓付近の体表面に誘導される電位分布図を作成する。電位分布図は、心臓電気現象の体表面における電位の分布図である。電位分布図は、すべての電極で測定された心電位信号を基にして、コンピュータ等の演算回路で演算して求められる。すなわち、ある時間における各電極が検出する心電位を、コンピュータのメモリに記憶させ、各電極の心電位に基づいて、等電位線を計算し、等電位線を、例えば、数十マイクロボルトピッチ毎にモニタテレビやプリンター等に表示するものである。
【0004】
この構造の体表面心電計は、従来の心電計に比較して精密に心臓の電気現象を検査できる。ただ、体表面心電計は、多数の電極から同時に心電位を検出する必要があるので、全ての電極から正確に安定して心電位を検出するのが極めて難しい。それは、全ての電極を体表面に電気的に低抵抗な状態で、しかも安定して接触させることが難しいからである。
【0005】
現在市販されている体表面心電計は、電極と体表面との接触抵抗を小さくするために、皮膚に導電ペーストを塗布する。導電ペーストは、電極と体表面との間に介在されて、電極と体表面との接触抵抗を小さくする。この構造の電極は、体表面に正常に接着できるかぎり、低抵抗な状態で体表面に誘導される心電位を検出できる。しかしながら、100個以上からなる全ての電極を剥離しないように体表面に接着するのは、現実には相当に難しく、いずれかの電極が体表面から剥離すると正確に心電位を検出できなくなる。さらにこの電極は、100個以上もの全ての電極を使い捨てにするので、一人の患者の心電測定するときのランニングコストが極めて高くなる欠点もある。
【0006】
このような欠点を解消する電極として、金属ロッドを体表面に弾性的に押圧する電極が開発されている。この電極は、金属ロッドを体表面に独立して押圧して体表面に誘導される心電位を検出する。この電極は、導電ペーストを使用しないで心電位を検出することができる。金属ロッドが体表面に連続して押圧されると、金属ロッドと体表面との間に汗のような導電性の液体が介在するようになって、電極である金属ロッドを体表面に電気的に接触させるからである。体表面に押圧される電極は、皮膚の表面に表出するわずかな導電性の液体を介して電気的に接続される。人間の皮膚には汗腺があって、ここから導電性の液体である汗が染み出している。ただ、人間の皮膚表面は均一に導電性の液体が染みだしているのではない。汗腺の近傍では導電性の液体が多く、汗腺から離れた部分では導電性の液体量が少なくなる。このため、皮膚の表面は金属ロッドが接触する部位によって接触抵抗が変動する。皮膚の部分的な接触抵抗の変動は極めて大きく、桁のオーダで変動する。
【0007】
このため、体表面の局部に複数の金属ロッドを電極として押圧すると、ある電極は低い接触抵抗で体表面に電気接続されるが、ある電極は極めて高い接触抵抗で体表面に接触することになる。高い接触抵抗で体表面に接触する電極は、体表面に誘導される心電位を正確に検出できない。電極と体表面との接触抵抗が、心電位を増幅する初段アンプの入力インピーダンスに比較して充分に低いとき、接触抵抗は心電位の検出誤差の原因とはならない。しかしながら、初段アンプの入力インピーダンスに対して、接触抵抗が無視できない程度に大きくなると、心電位を検出する誤差となる。それは、初段アンプの入力インピーダンスが、電極に誘導される心電位を減衰させるからである。たとえば、電極と体表面の接触抵抗が、初段アンプの入力インピーダンスの1/10になると、電極に誘導された心電位は10%減衰して初段アンプに入力される。このため、電極で検出した心電位は90%に低下することになり、正確に心電位を検出できなくなる。初段アンプは、入力インピーダンスができる限り大きくなるように設計されるが、接触抵抗が大きくなると、接触抵抗に対して充分に大きくできないことがある。接触部位によっては、電極と体表面との接触抵抗が桁のオーダで変動するので、接触部位によっては、電極の接触抵抗が初段アンプの入力インピーダンスの数十%よりも大きくなることがある。この状態になると、初段アンプの実質的な入力電圧が正確な心電位よりも低くなって、正確な電位分布図を作成できなくなる。
【0008】
さらに、電極である金属ロッドが体表面の心電位を正確に検出するのを難しくする原因として、電極と体表面との間に発生する局部電池がある。困ったことに、局部電池の発生電圧は心電位に比較して極めて大きい。導電性の液体に金属が接触する電池ができるので、金属電極を体表面に接触させるかぎり、接触部分で局部電池が発生するのを原理的に解消できない。局部電池の発生電圧は、金属ロッドの材質と、導電性の液体により特定される。したがって、金属ロッドの材質により局部電池の電圧は変動する。たとえば、電極金属にステンレスを使用すると、局部電池の電圧は数百mVと極めて大きくなる。局部電池は直流電圧であるから、変化しない限り心電位から分離できる。しかしながら、局部電池の発生電圧をつねに一定にするのは現実に極めて難しい。局部電池の電圧は、心電位に比較して数十倍ないし百倍と極めて大きいので、わずかな局部電池の電圧変化は、心電位の0Vラインを変動させて検出誤差となる。局部電池の発生電圧が変動して0Vラインが変動すると、心電位の変化と識別できなくなるからである。局部電池の電圧変動が、心電位の電圧変動に比較して充分に遅い場合、極めて低い周波数成分を除去するローカットフィルターで除去できる。ローカットフィルターは、心電位を減衰させないように、遮断周波数を心電位に含まれる最低周波数成分に比較して充分に低く設計される。このローカットフィルターは、0Vラインの変動が心電位に近い周波数まで速くなると、遮断できずに通過させる。このため、このような0Vラインの変動は、心電位から分離できなくなって測定誤差となる。このため、電極と体表面の間に発生する局部電池は、その電圧を変動させることなく、いかにして一定に保持できるかが極めて大切である。
【0009】
局部電池による0Vラインの変動は、体表面に表出する汗のような導電性の液体が原因で発生する。この液体は電極と体表面との接触抵抗を低下させるものであるから、これがないと金属ロッドを体表面に押圧しても心電位を検出できない。このことから、体表面に浸出する導電性の液体は、電極の接触抵抗を小さくして心電位を正確に検出できるようにする一方、局部電池を発生させて0Vラインを狂わせる原因となる。すなわち、導電性の液体は必要なものではあるが、これがあるために、0Vラインが変動して心電位の検出を難しくする。このことが、体表面に誘導される心電位を正確に検出するのを極めて難しくしている。この状態は、たとえば、多量の汗をかいた後に、汗が乾燥して高い濃度になったときに、心電位の正確な検出を極めて難しくすることからも明らかである。汗の濃度が高くなると、局部電池の現象が甚だしくなって、0Vラインの変動を激しくして心電位を検出できなくする。さらに困ったことに、局部電池に起因する0Vラインの変動を少なくすることと、電極の接触抵抗を小さくして測定誤差を少なくすることは、測定できるかどうかの限界に近い状態にある。このため、多数の電極を体表面に押圧する状態で、全ての電極に検出される心電位の0Vライン変動を無視できる程度に少なくしながら、電極と体表面との接触抵抗を初段アンプの入力インピーダンスに比較して充分に低くするのは極めて難しい。したがって、電極である多数の金属で体表面を押圧して、全ての電極から正確に心電位を検出するのは本当に難しい。
【0010】
さらに、体表面心電計は、100ヶ所以上の多数の部位の心電位を検出するので、全ての部位から正確に心電位を検出できないかぎり、高精度な体表面電位分布図が作成できない。電極数が多くなると、全ての電極から同時に正確に心電位を検出するのは急激に難しくなる。このタイプの体表面心電計は、多数の電極があるにもかかわらず、全ての電極の0Vラインの変動を制限しながら電極の接触状態を低く安定させることが極めて大切である。このことが実現できないと、高精度な電位分布図を作成する体表面心電計は実用化できない。いずれかの電極がつねに不安定な体表面心電計は、どこかに正確に検出できない領域があるので、いつまでたっても高精度な電位分布図を作成できない。
【0011】
この問題を解消できないために、現在実用化されている体表面心電計は、体表面に導電ペーストを塗布し、導電ペーストでもって電極を体表面に電気的に接触させている。しかしながら、この構造の体表面心電計は、ランニングコストが余りにも高額であるために、健康診断のように多数の患者の診断には使用できない。ちなみに、現在の体表面心電計は保険点数が1500点もあって、保険を使用しての検査費用は15000円と極めて高額である。さらに、1人の患者の測定に時間がかかることも、健康診断等における使用を難しくしている。体表面に導電ペーストを介して、100個以上もの電極を患者の特定された位置に装着して体表面電位分布図を作成するからである。この方法では、ひとりの患者の測定時間を短くすることができない。このことによっても健康診断の使用を難しくしている。心臓疾患の検査に限ったことではないが、全ての疾患の検査は、できる限り早期発見することが大切であるから、体表面心電計は、いかにして安価に、さらに迅速に、しかも正確に電位分布図を測定できるかが特に大切である。
【0012】
この問題を解決することを目的として、1ヶ所の心電位を測定するのに、複数本の針電極を使用する体表面心電計が開発されている(特許文献1参照)。この体表面心電計は、4本の針電極を並列に接続して、各々を独立して体表面に押圧させる。この電極は、針電極を並列に接続しているので、いずれかの針電極が体表面の心電位を検出すると、他の針電極が心電位を正確に検出できなくとも心電位を測定できる。このため、ひとつの金属ロッドを体表面に押圧する電極に比較して、安定して心電位を検出できる。
【0013】
【特許文献1】
特公平2−9811号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この電極は、構造が複雑で製造コストが高くなる欠点がある。さらに、この電極を現実に製作して、多数の患者の心電位を検出した結果、この構造では、0Vラインの変動を理想的な状態まで抑制するのが難しいことが判明した。100ヶ所以上の心電位を検出するとき、いずれかの電極の0Vラインが変動して、全ての心電位から正確に心電位を検出するのに時間がかかる弊害がある。
【0015】
この現象を究明するために膨大な実験を繰り返したが、どうしても0Vラインが変動する原因を究明できなかった。種々の構造の電極を試作して体表面に押圧し、さらに体表面に導電ペーストを塗布して心電位を検出しても、0Vラインの変動を少なくできなかった。さらに、膨大な実験を繰り返した結果、0Vラインが変動する原因が、針電極と体表面との相対運動によることを究明した。心電位を測定する患者は、呼吸するので体表面が上下に移動する。呼吸により体表面が上下に移動すると、電極と体表面とが相対的に運動して、0Vラインを変動させる。呼吸を停止して心電位を検出すると、0Vラインの変動は少なくなった。しかしながら、呼吸を停止すると患者は次第に緊張して、体表面には筋電位が誘導されるようになる。体表面に誘導される筋電位は、心電位に比較して充分に小さい電圧ではなく、また不規則に変動する信号であるから、これが発生すると心電位を狂わせる原因となる。さらに、呼吸を停止しても、電極の0Vラインの変動を好ましい状態までは少なくできなかった。その原因を究明するために、より子細に電極と体表面の動きを観察した結果、心臓の鼓動で体表面がわずかに動き、この動きに針電極が追随できないことが、0Vラインを狂わせる原因ともなることを究明した。
【0016】
電極と体表面との相対運動が0Vラインを変動させる原因であるなら、針電極をスムーズに移動させることで解消できる。このことを実現するために、針電極とこれを保持する部分の摺動抵抗を小さくするために、テフロン(登録商標)樹脂等を使用して電極を試作した。しかしながら、針電極の摺動抵抗をできるかぎり小さくなるように設計していても、これを皆無にすることはできない。針電極が体表面に対して相対運動するのは、針電極が摩擦抵抗を受けながら移動するからである。また、体表面である皮膚の表面にクッション性があるからである。体表面が上下に運動するとき、針電極は最初に大きな最大摩擦抵抗を受け、移動するようになると動摩擦抵抗となって最大摩擦抵抗よりも小さくなる。すなわち、針電極の摩擦抵抗は、針電極の動き始めに大きく、動き始めると小さくなって変動する。さらに、皮膚にクッション性があるので、体表面はクッションを介して針電極を押圧する状態となる。この状態にある針電極は、体表面が上下に移動するときに、体表面と一緒には上下に移動しないで、移動と停止を繰り返して段階的に移動する。針電極が体表面に押されて、最大摩擦抵抗を越えると移動を開始し、移動するようになると小さい動摩擦抵抗により大きく移動して停止する。その後、この動作を繰り返して、移動と停止とを繰り返すようになる。この状態は、針電極の摩擦抵抗が大きくなるにしたがって甚だしくなる。
【0017】
本発明は、さらにこの弊害を解消することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、簡単な構造で、0Vラインの変動を少なくしながら、多数の測定部位から正確に心電位を検出して高精度な電位分布図を作成できる体表面心電計を提供することにあるる
また、本発明の他の大切な目的は、ひとりの患者の検査費用を極めて安価にできると共に、測定時間を短くして速やかに電位分布図を作成できる体表面心電計を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の体表面心電計は、患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する電極1と、電極1で検出される心電位から体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部2とを備える。電極1は、患者の体表面の複数ヶ所に押圧される複数本の導電ロッド12と、導電ロッド12を出入りできるように装着している電極本体13と、この電極本体13から導電ロッド12を弾性的に押し出す弾性押出材14とを備えるロッド電極10を備える。導電ロッド12は、電極本体13に出入りできるように連結しているロッド部12Bと、このロッド部12Bの先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極12Aとを備える。さらに、接触電極12Aの体表面に接触する接触面12aは、ロッド部12Bの横断面よりも大きい外形であって、その面積を15mmよりも大きく、隣の接触電極12Aとの中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしている。ただし、本明細書において、接触電極12Aの接触面12aの面積とは、接触電極12Aを体表面側から見た平面投影面積を意味するものとする。
【0019】
導電ロッド12は、ロッド部12Bの横断面形状と接触電極12Aの接触面12aの外形を円形とし、接触面12aの外径をロッド部12Bの直径の2〜15倍、好ましくは3〜8倍とすることができる。導電ロッド12は、ロッド部12Bの外径を1.5〜6mmとして、接触面12aの外径を4〜20mmとすることができる。導電ロッド12は、金属ロッドとすることができる。
【0020】
接触電極12Aは、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀のいずれかとすることができる。接触電極12Aは、接触面12aの表面に金属メッキ層を設けることができる。接触面12aの金属メッキ層は、金、白金、銀、塩化銀、ニッケル、クローム、シンチュウ、鉛のいずれかとすることができる。
【0021】
接触電極12Aの接触面12aは、中央凸に湾曲する湾曲面とすることができる。接触面12aの湾曲面は、周縁の曲率半径を中央部分よりも小さくすることができる。湾曲面である接触面12aの中央部分の曲率半径は、10〜100mmとすることができる。湾曲面である接触面12aの周縁の曲率半径は、1〜20mmとすることができる。
【0022】
ロッド電極10は、複数の電極ユニット11で構成することができる。複数の電極ユニット11は、可動性部材15で連結することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための体表面心電計を例示するものであって、本発明は体表面心電計を下記のものに特定しない。
【0024】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解し易いように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲の欄」、および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0025】
本発明の一実施の形態である体表面心電計を図2ないし図4に示す。これらの図に示す体表面心電計は、患者の体表面の複数ヶ所に誘導される心電位を検出する電極1と、電極1に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部2とを備える。
【0026】
電極1は、図3と図4に示すように、ベッド3の上面に配設されて患者の体表面の下面に接触する下側電極1Bと、患者の上面に接触する上側電極1Aと、患者の体側に接触する体側電極1Cとを備える。下側電極1Bは、患者の体表面の下面の60%以上からほぼ全体に対向する領域に配設される。上側電極1Aも体表面の上面の60%以上からほぼ全体に対向する領域に配設される。体側電極1Cは、脇下の体側に対向して配設される。患者がベッド3に上向きに仰臥して体表面の心電位を検出するとき、下側電極1Bは患者の背中に接触し、体側電極1Cは体側に接触し、上側電極1Aは患者の胸に接触して体表面に誘導される心電位を検出する。患者が上下反転して下向きにベッド3に寝ると、下側電極1Bは患者の胸に接触し、上側電極1Aは患者の背中に接触する。
【0027】
図の体表面心電計は、上側電極1Aを導電ロッド12である金属ロッドを体表面に押圧するロッド電極10とし、下側電極1Bと体側電極1Cとをクッション電極20としている。体表面心電計は、体側電極のみをロッド電極とすることも、上側電極と体側電極、あるいは上側電極と下側電極をロッド電極とすることもできる。さらに、上側電極と下側電極と体側電極の全てをロッド電極とすることもできる。また、体表面心電計は、必ずしも電極を下側電極と体側電極と上側電極とに分離することなく、全体をひとつのロッド電極とすることもできる。
【0028】
ロッド電極10は、図3ないし図6に示すように、複数の電極ユニット11で構成している。これらの図に示すロッド電極10は、8個の電極ユニット11を備える。8個の電極ユニット11は、2列に4個ずつ配置している。各々の電極ユニット11は、図5の正面図と図6の底面図に示すように、紐状のゴム状弾性体である可動性部材15でもって連結されている。このように、複数の電極ユニット11で構成されるロッド電極10は、各電極ユニット11の姿勢を個々に変化できる構造として、理想的に複数の導電ロッド12を患者の胸に接触できる。それは、各電極ユニット11の下面を患者の胸面に沿う姿勢で配置できるからである。
【0029】
さらに、図5と図6に示すロッド電極10は、各列の電極ユニット11の下面に弾性変形プレート16を固定して、この弾性変形プレート16で4個の電極ユニット11を連結している。弾性変形プレート16は、曲げ方向に弾性を有する板材やシート材、たとえばゴム板や合成樹脂プレート等である。この弾性変形プレート16は、互いに隣接する電極ユニット11の間隔を所定の間隔に保持しながら各電極ユニット11の姿勢を患者の胸面に沿う状態に配置できる特長がある。さらに、この弾性変形プレート16は、左右の両側に位置する電極ユニット11を、図5の矢印で示す方向に傾斜させた状態において、両側の電極ユニット11が転倒するのを防止するはたらきもある。
【0030】
それぞれの電極ユニット11は、図7と図8に示すように、患者の体表面の複数ヶ所に押圧される複数本の導電ロッド12と、これらの導電ロッド12を出入りできるように装着している電極本体13と、この電極本体13から導電ロッド12を弾性的に押し出す弾性押出材14とを備える。
【0031】
図5ないし図8に示す電極ユニット11は、8本の導電ロッド12を備える。8本の導電ロッド12は、底面の形状を長方形とする電極ユニット11に、2列に4個ずつ配置している。これらの導電ロッド12は、等しい中心間隔(d)で配置されている。導電ロッド12の中心間隔(d)は、測定する領域の面積と、導電ロッド12の本数、すなわち測定するポイント数によって決定される。図のロッド電極10は、8個の電極ユニット11に各8本の導電ロッド12を配設しているので、全体では64本の導電ロッド12を備えている。このロッド電極10は、たとえば、中心間隔(d)を35mmとして、約600cmの領域の心電位を測定できる。ただ、ロッド電極は、電極ユニットの個数を2〜64とし、導電ロッドの本数、すなわち測定ポイント数を25〜500とし、測定領域を200〜900cmとし、中心間隔を10〜60mmとすることができる。たとえば、ロッド電極は、電極ユニットの数を3×5の15個、導電ロッドの本数を15×15の225本とし、導電ロッドの中心間隔を20mmとして、約800cmの領域の心電位を測定できる。
【0032】
さらに、ロッド電極は、配置される複数の導電ロッドの中心間隔(d)を、必ずしも全て等しくする必要はない。ロッド電極は、導電ロッドの中心間隔を、患者の上下方向と左右方向とで変更することができ、あるいは、部分的に変更することもできる。
【0033】
複数本の導電ロッド12は、電極本体13から体表面に向かって弾性的に突出しており、患者の体表面を独立して押圧する。これらの導電ロッド12は、電極本体13に出入りできるように連結しているロッド部12Bと、このロッド部12Bの先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極12Aとを備える。図の導電ロッド12は、ロッド部12Bを金属ロッドとしている。ロッド部12Bは、直径を1.5〜6mm、好ましくは3〜4mmとする金属線である。ロッド部12Bは、細すぎると曲がりやすく、太すぎると摺動抵抗が大きくなってスムーズに出入りさせるのが難しくなる。ロッド部12Bは、SUS304等のステンレス線、表面をメッキしているピアノ線等の曲がり難い金属線が適している。さらに、ロッド部は、円筒状として軽くすることもできる。ただし、ロッド部は、必ずしも金属製のロッドとする必要はなく、たとえば、硬質プラスチックロッドの表面や内面に導電膜をコーティングしたもの、あるいは導電性のあるカーボン繊維をロッド状に成形したものも使用できる。ロッド部12Bは、軸方向に移動できるように電極本体13に装着されて、弾性押出材14で体表面に向かって押圧される。
【0034】
接触電極12Aは金属製で、体表面に弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する。接触電極12Aは、金属を切削加工し、あるいは鋳造し、あるいはまたプレス加工して製作される。金属製の接触電極12Aは、たとえば、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀等の金属で成形することができる。とくに、ステンレス、シンチュウ、鉛等の金属で成形される接触電極12Aは、錆びにくくできる特長がある。さらに、全体を金属で製作する接触電極12Aは、ロッド部12Bに対する荷重を大きくできるので、導電ロッド12の重心を接触電極12Aの重心に接近できる。とくに、この導電ロッド12は、上側電極1Aに使用すると、低重心にできるので、接触電極12Aを体の表面に安定して押圧できる特長がある。さらに、金属製の接触電極12Aは、安定して心電位を検出するために、接触面12aの表面、あるいは全面に金属メッキ層を設けることができる。金属メッキ層は、金メッキ、白金メッキ、銀メッキ、塩化銀メッキ、ニッケルメッキ、クロームメッキ、シンチュウメッキ、鉛メッキ等が使用できる。金メッキと白金メッキは、安定して体表面に電気的に接触できる特長がある。銀メッキと塩化銀メッキは、体表面に低抵抗な状態で安定して電気的に接触できる。ニッケルメッキとクロームメッキも安定して体表面に接触できる。シンチュウメッキと鉛メッキは表面が錆びるのを有効に防止できる。
【0035】
接触電極12Aの接触面12aの大きさと形状は、心電位を安定して検出するために大切である。接触電極12Aは、体表面に接触する接触面12aを、ロッド部12Bの横断面よりも大きい外形としている。接触電極12Aは、接触面12aの面積を15mmよりも大きく、隣の接触電極12Aとの中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしている。図の接触電極12Aは、体表面に接触する接触面12aを円形としている。接触面12aの外径は、小さ過ぎると体表面との接触面積が小さくなるので、安定して心電位を検出できなくなる。反対に大きすぎると、体表面の局部に誘導される心電位を正確に検出できなくなる。それは、大きな面積の電極が、体表面に誘導される心電位を短絡して同一電位にするからである。以上のことから、接触電極12Aの外径は、4〜20mm、好ましくは7〜15mm、さらに好ましくは8〜13mmとし、ロッド部12Bの直径の2〜15倍、好ましくは、3〜8倍とする。円形の接触電極12Aは、その中心を測定ポイントに位置させて、測定ポイント及びその周辺の心電位を安定して検出できる。ただ、接触電極は、必ずしも円形とする必要はなく、楕円形、長円形、多角形とすることもできる。多角形状である接触電極は、コーナー部分の角をとって湾曲させることにより、体表面に接触したときの感触をやわらげることができる。
【0036】
さらに、接触電極12Aは、体表面との接触面12aを中央凸に湾曲する湾曲面としている。このように、接触面12aが中央凸に湾曲している接触電極12Aは、体表面に対する角度が変わっても、体表面に常に広い面積で接触できる特長がある。ただ、接触面12aは、曲率半径が小さ過ぎても、体表面に接触する面積は小さくなる。図8の接触電極12Aは、接触面12aの中央部で曲率半径を大きくして、周縁部分になるにしたがって曲率半径を小さくしている。接触電極12Aは、接触面12aの中央部分の曲率半径を、10〜100mm、好ましくは12〜50mmとし、周縁部分の曲率半径を1〜20mmとしている。
【0037】
さらに、接触電極12Aの接触面12aの曲率半径は、体表面に押圧される部位によって変更することができる。たとえば、接触面の曲率半径を大きくすると、体表面との接触面積が大きくなって安定して心電位を検出できるが、この形状は体表面に押圧されて滑りやすくなる。上側電極は、患者の体側に近い部分に押圧される電極が滑りやすくなる傾向がある。体側が垂直に近い面となるからである。この弊害を避けるために、たとえば、体側に近い電極に装着する接触電極は、患者の胸の中央部分に接触する接触電極よりも、接触面の曲率半径を小さくして滑り難くすることができる。胸の中央部分の接触電極は、接触面の曲率半径を大きくして、安定して心電位を検出できるようにする。とくに、心電位は胸の中央部分で高い電圧となるので、この部分の電圧を正確に検出することが大切である。したがって、胸の中央部分に押圧される接触電極は、接触面の中央部分の曲率半径を大きくし、体側に近い部分に押圧される接触電極は中央部分の曲率半径を小さくして、滑り難くすることができる。
【0038】
さらに、接触電極は、図示しないが、体表面に対して垂直ないしほぼ垂直に押圧できるならば、接触面を平面とすることもできる。この接触電極も、15mmよりも大きく、隣の接触電極12Aとの中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくする。この接触電極は、たとえば、接触面の面積を15〜300mm、好ましくは30〜100mmとすることができる。この接触電極は、たとえば、胸の中央部分に配設して体表面に常に広い面積で接触させることができる。接触面が平面である接触電極も、好ましくは、周縁部分を1〜20mmの曲率半径で湾曲させて、体に接触させたときの感触をやわらげることができる。
【0039】
接触電極12Aは、脱着できるようにロッド部12Bに連結することができる。図8の接触電極12Aは、簡単に脱着できるように、ロッド部12Bを挿入する連結孔12bを設けており、この連結孔12bにロッド部12Bの先端部を入れて脱着できるように連結している。図8の接触電極12Aは、止ネジ17を介してロッド部12Bに脱着できるように連結している。この接触電極12Aは止ネジ17をねじ込む雌ネジ孔12cを半径方向に設けている。この接触電極12Aは、止ネジ17を緩めてロッド部12Bから取り外し、止ネジ17を締めてロッド部12Bに固定される。ただ、接触電極12Aを脱着できるようにロッド部12Bに連結する構造は、以上の構造に特定しない。接触電極は、機械的あるいは弾性的にロッド部に脱着自在に連結できる他の全ての構造とすることができる。このように、脱着できる接触電極12Aは、表面が汚れ、あるいは接触面12aの金属が酸化して変質し、あるいは表面に病原菌等が付着して不衛生になると、接触電極12Aを新しいものに交換できる特長がある。さらに、接触電極12Aは、必ずしも脱着できるようにロッド部12Bに連結する必要はなく、半田付けや溶着等によって外れないように固定することもできる。
【0040】
電極本体13は、図8において、下方を開口している箱形のケース50と、2枚の絶縁性の板材51とを備えている。2枚の板材51には、これを貫通して導電ロッド12のロッド部12Bを出入自在に挿通している。2枚の板材51は、互いに平行に配設されており、対向する位置に挿通孔51Aを開口して、これらの挿通孔51Aに導電ロッド12のロッド部12Bを挿通している。2枚の板材51は、間に配設された複数本の支柱52に固定されて所定の間隔に保持されている。ロッド部12Bは、その中間部分であって、2枚の板材51の間に位置して固定リング55を固定している。固定リング55は、挿通孔51Aよりも大きな外形を有し、挿通孔51Aの周縁部に当接して、導電ロッド12が電極本体13から抜けるのを阻止すると同時に、導電ロッド12の突出量を特定している。
【0041】
さらに、2枚の板材51には、電極本体13に出入りするロッド部12Bの摺動抵抗を小さくするために、ガイドプレート53を配設している。図8に示す電極本体13は、下方に位置する板材51の下面と、上方に位置する板材51の上面とにガイドプレート53を積層して固定している。ガイドプレート53は、導電ロッド12を貫通させるためのガイド孔53Aを開口しており、このガイド孔53Aに導電ロッド12を挿入している。ガイドプレート53のガイド孔53Aは、板材51に開口した挿通孔51Aに対向する位置に開口している。ガイド孔53Aは、挿通孔51Aの中央に位置して、挿通孔51Aよりも小さく開口しており、ロッド部12Bが挿通孔51Aの内面に接触することなく往復運動できるようにしている。ガイドプレート53には、ガイド孔53Aを摺動するロッド部12Bの摺動抵抗を小さくする材質のもの、たとえば、テフロン(登録商標)樹脂が使用できる。このように、摺動抵抗の小さなガイドプレート53のガイド孔53Aに沿って導電ロッド12を摺動させる構造は、電極本体13に出入りする導電ロッド12の摺動抵抗を小さくでき、導電ロッドを滑らかに往復運動できる。
【0042】
さらに、図8の電極本体13は、電極ユニット11を安定して胸面に配置するために、下方の板材51に重り56を固定している。この重り56は金属プレートで、鉛板や鉄板等が使用できる。金属プレートである重り56は、積層枚数を変更して重さを簡単に調整できる。このように、電極本体13の下部に重り56を固定する構造は、電極本体13の重心の位置を低くできるので、電極ユニット11を胸面に載置する状態で、電極ユニット11の姿勢を安定して保持できる特長がある。さらに、重り56を備える電極本体13は、導電ロッド12を安定して体表面に押圧できる特長もある。
【0043】
弾性押圧材14は、ロッド部12Bに挿通しているコイルスプリングで、2枚の板材51の間に配設している。このコイルスプリングは押バネで、下端を導電ロッド12の中間に、上端を上方の板材51にプリント印刷された銅膜等の導電層54に接続している。このコイルスプリングは、導電ロッド12を電極本体13から弾性的に押し出して、接触電極12Aを体表面に押圧する。ただ、コイルスプリングである弾性押圧材は、引張バネとすることもできる。引張バネである弾性押圧材は、図示しないが、上側の板材の上方で導電ロッドに挿通して、導電ロッドの上端に連結することもできる。この弾性押圧材は、上端を板材の上面から突出する導電ロッドの先端に、下端を板材にプリント印刷された銅膜等の導電層に接続する。
【0044】
コイルスプリングである弾性押圧材14は、導電ロッド12を導電層54に電気接続するリード線に併用している。コイルスプリングである弾性押圧材14は、バネ鋼鋼材、ピアノ線、ステンレス線、黄銅線、洋白線、りん青銅線、ベリリウム銅線等で製作される。とくに、銅を多く含有する線材で製造されたコイルスプリングは、導電性に優れているので、リード線に併用するコイルスプリングに適している。さらに、図8に示す導電ロッド12は、コイルスプリングに加えて、リード線57によっても板材51の導電層54に接続している。ただ、導電ロッドは、コイルスプリングとリード線のどちらか一方を介して導電層に接続することもできる。
【0045】
図8に示す導電ロッド12は、コイルスプリングである弾性押圧材14の下端とリード線57の下端を、ロッド部12Bの中間に固定された固定リング55に半田付けして接続している。ただ、コイルスプリングとリード線57の下端は、図9に示すように、連結筒58を介して導電ロッド12に連結することもできる。この連結筒58は、中心に導電ロッド12を挿通できる貫通孔58Aを開口しており、上面にコイルスプリングとリード線57の下端を半田付け等によって固定している。この連結筒58は、貫通孔58Aにロッド部12Bを挿入する状態で、止ネジ59がねじ込まれて導電ロッド12に連結される。このように、連結筒58を介して弾性押圧材14であるコイルスプリングやリード線57を導電ロッド12に連結する構造は、導電ロッド12を脱着自在に連結して、導電ロッド12を交換できる特長がある。
【0046】
図10は、上方の板材51の底面図を示す。この図に示す板材51は、銅膜等の導電層54をプリント印刷している。この導電層54は、引出線60を接続している。導電ロッド12に接続された引出線60は、図8に示すように1本のリード線61に集合されて、リード線61でもって演算回路2に接続される。
【0047】
複数の電極ユニット11で構成される上側電極1Aは、図3と図4に示すように、吊下機構4で吊り下げられて、患者の胸の所定の位置に配置される。これらの図に示す吊下機構4は、複数の電極ユニット11を水平の姿勢で吊り下げる上下台4Aと、この上下台4Aを水平の姿勢で上下、左右に移動させる支持台4Bとを備える。複数の電極ユニット11は、吊り紐18を介して上下台4Aから吊り下げられている。この上側電極1Aは、この上下台4Aを水平の姿勢で移動させて、複数の電極ユニット11からなるロッド電極10を所定の位置に配置する。患者の胸面に配置された上側電極1Aは、その自重により所定の位置に保持される。
【0048】
さらに、上側電極1Aは、図4と図5の鎖線で示すように、装着バンド40を介して複数の電極ユニット11からなるロッド電極10を患者にしっかりと装着することもできる。図5に示すロッド電極10は、各列の最も外側に位置する電極ユニット11に、伸縮性の装着バンド40を連結している。装着バンド40は、先端に連結具41を設けており、この連結具41を介して先端部をベッド3あるいは体側電極1Bの固定ケース31に連結できるようにしている。連結具41には、たとえば、フック等の引掛具が使用できる。この上側電極1Aは、図の鎖線で示すように、装着バンド40の先端の連結具41をベッド3の側縁あるいは体側電極1Bの固定ケース31に連結して患者に装着される。図5に示す装着バンド40は、図において左右の先端に連結具41としてフックを設けている。ただ、装着バンドは、端部を筒状に連結してこの筒部に連結ロッドを挿入し、この連結ロッドをベッド等に設けたフック等の引掛部に引っかけて連結することもできる。さらに、連結具には、必ずしもフックやロッドを使用することなく、面ファスナーやホック等も使用できる。この装着バンドは、一端をベッドや体側電極の固定ケースに固定した第1装着バンドと、上側電極の各列の最も外側に位置する電極ユニットに連結された第2装着バンドで構成し、各々の装着バンドを面ファスナーやホック等で連結する構造とすることもできる。この装着バンドは、互いの連結位置を変更して長さを調整できるので、上側電極を最適な押圧力で装着できる特長がある。さらに、フック等の連結具で装着される装着バンドも、中間で分割してこの分割部分を面ファスナーやホック等の連結部材で連結する構造として、長さを調整することができる。
【0049】
以上のロッド電極10は、複数の電極ユニット11で構成しているが、ロッド電極は、単一の電極本体から複数本の導電ロッドを突出させる構造とすることもできる。このロッド電極は、電極本体の下面を患者の胸面に沿う形状とすることができる。さらに、左右の両側部に配設される導電ロッドを、水平面に対して多少傾斜する姿勢で配置することもできる。
【0050】
クッション電極20を、図11ないし図13に示す。図11は下側電極1Bの斜視図を、図12は下側電極1Bの拡大断面図を、図13は体側電極1Cの断面図をそれぞれ示している。クッション電極20は、これらの図に示すように、表面または全体を絶縁材とする表面層21と、この表面層21に所定の間隔で配置している複数の局部電極22と、表面層21の裏面に配設されて、各々の局部電極22を弾性的に体表面に押圧する弾性押圧材23とを備える。
【0051】
図11に示す下側電極1Bは、6列に8個ずつ、全体で48個の局部電極22を配置している。さらに、図3と図13に示す体側電極1Cは、2列に6個ずつ、全体で12個の局部電極22を配置している。これらの局部電極22は、等しい中心間隔(d)で配置されている。局部電極22の中心間隔(d)は、たとえば、ロッド電極10である上側電極1Aの導電ロッド12の中心間隔(d)と等しくすることができる。ただ、下側電極1Bと体側電極1Cの局部電極22の中心間隔(d)は、種々に変更することもできる。
【0052】
図11ないし図13に示すクッション電極20は、表面層21を可撓性シート21Aとしており、この可撓性シート21Aに複数の局部電極22を固定している。可撓性シート21Aは、自由に変形できる合成皮革である。合成皮革は、表面をプラスチック層でコーティングしているので汗が染み込まず、また表面に付着した汗等の汚れを簡単に払拭できる特長がある。ただ、可撓性シート21Aには、合成皮革でないプラスチックシートも使用できる。また、布地や不織布も使用できる。さらにまた、可撓性シート21Aは、プラスチックシート、布地、不織布等を積層したシートとすることができる。可撓性シート21Aには、患者の体表面の凹凸に沿って変形できる可撓性のある全てのシートが使用できる。さらに、可撓性シート21Aは、好ましくは伸縮性のあるシートを使用する。伸縮性のあるシートは、凹凸のある体表面に沿って変形できる特長がある。ただ、可撓性シート21Aは、多少の遊びがある状態で弾性押圧材23の表面に配設して、体表面の凹凸に沿って変形できる。可撓性シート21Aは、弾性押圧材23の表面とその周囲を被覆している。さらに、可撓性シート21Aは弾性押圧材23の裏面も被覆して、裏面で連結することができる。
【0053】
局部電極22は金属製で、体表面に弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する。局部電極22は、金属板をプレス加工して製作される。この局部電極22は、金属板の表面に金属メッキ層を設けている。金属メッキ層は、金メッキ、白金メッキ、銀メッキ、塩化銀メッキ、ニッケルメッキ、クロームメッキ、シンチュウメッキ、鉛メッキ等が使用できる。ただ、局部電極22は、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀等の金属板で成形して表面に金属メッキ層を設けない構造とすることもできる。とくに、ステンレス、シンチュウ、鉛等の金属で成形される局部電極22は、錆びにくくできる特長がある。
【0054】
図14の拡大断面図に示す局部電極22は、金属板をプレス加工して体表面との接触面24を中央凸に湾曲させてなる接触電極22Aと、可撓性シート21Aの裏面に配設されてなる固定部22Bとからなる。接触電極22Aと固定部22Bは、可撓性シート21Aを挟着するように連結されて、局部電極22を可撓性シート21Aに固定している。
【0055】
接触電極22Aは、体表面に接触する接触面24を円形としている。接触電極22Aの外径は、4〜20mm、好ましくは7〜15mm、さらに好ましくは8〜13mmとする。円形の接触電極22Aは、その中心を測定ポイントに位置させて、測定ポイント及びその周辺の心電位を安定して検出できる。さらに、接触電極22Aは、図14に示すように、好ましくは接触面24を中央凸に湾曲させる。このように、接触面24が中央凸に湾曲している接触電極22Aは、体表面に対する角度が変わっても、体表面に常に広い面積で接触できる特長がある。ただ、接触面24は、曲率半径が小さ過ぎても、体表面に接触する面積は小さくなる。図14の接触電極22Aは、接触面24の中央部で曲率半径を大きくして、周縁部分になるにしたがって曲率半径を小さくしている。接触電極22Aは、接触面24の中央部分の曲率半径を、10〜100mm、好ましくは12〜50mmとし、周縁部分の曲率半径を1〜20mmとしている。
【0056】
接触電極22Aは、可撓性シート21Aを貫通する連結凸部25を有する。この連結凸部25は、可撓性シート21Aを貫通して、可撓性シート21Aの内面で固定部22Bに連結される。図14の接触電極22Aは、連結凸部25を別の金属板で製作している。この連結凸部25は、筒部25Aの一端に鍔25Bを設けた形状である。接触電極22Aは、周縁部分を内側にかしめる状態で鍔25Bの周縁部分を挟着している。連結凸部25は、接触電極22Aのかしめられた周縁部分に鍔25Bの周縁部分が挟着されて、接触電極22Aに固定されている。
【0057】
固定部22Bは、連結凸部25を貫通する貫通孔26を中心に設けている。貫通孔26に挿通された連結凸部25は、図14の矢印で示すように筒部25Aの下端を拡開するように変形して、固定部22Bに抜けないように連結される。図14の固定部22Bは、接触電極22Aの外形にほぼ等しい外形としている。この固定部22Bは、局部電極22を可撓性シート21Aに抜けないように固定できる。この形状の固定部22Bは、金属板をプレス成形して製作され、あるいはプラスチックを成形して製作される。
【0058】
局部電極22にはリード線27が接続される。リード線27は、半田付けして、あるいはスポット溶接して局部電極22に接続される。リード線27は、接触電極22Aと固定部22Bのいずれかに接続される。各々の局部電極22に接続しているリード線27は、図12と図13に示すように、弾性押圧材23の内部に配線される。弾性押圧材23の内部に配線されるリード線27は、弾性押圧材23が変形しても無理な力が作用して断線することがないように、好ましくは、多少は弛む状態で配線する。このように、弾性押圧材23の内部にリード線27を配線するクッション電極20は、表面をすっきりとした外観にできると共に、測定時にリード線27が邪魔になることなく安定して測定できる特長がある。さらに、局部電極22とリード線27の接続部分は、図14に示すように、接着剤28に埋設している。この構造は、リード線27の接続部分の断線を有効に防止できる。局部電極22は、弾性押圧材23が変形する毎に変位する。このときリード線27の接続部分が変形すると断線しやすくなる。図14に示すように、接続部を接着剤28に埋設する構造は、局部電極22が移動しても接続部は変形せず、この部分の断線を有効に防止できる。
【0059】
弾性押圧材23は、弾性変形するプラスチック発泡体である。プラスチック発泡体は、連続気泡を有するように発泡成形された軟質のウレタンフォームが適している。ただ、プラスチック発泡体には、軟質ポリ塩化ビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、エチレン酢酸ビニル発泡体等が使用できる。弾性押圧材23は、図12と図13に示すように、弾性係数の異なる複数の弾性変形プレート23Aを積層する構造とすることもできる。この弾性押圧材23は、局部電極22を固定する電極側には柔軟な弾性変形プレート23Aを積層して、局部電極22から離れた反対側には電極側の弾性変形プレート23Aよりも変形し難い弾性変形プレート23Aを積層する。この構造は、電極側の柔軟な弾性変形プレート23Aで局部電極22を体表面に押圧しながら、変形し難い弾性変形プレート23Aでしっかりと押圧できる。
【0060】
弾性押圧材23は、厚さを110〜130mmとする板状である。ただ弾性押圧材23は、その厚さを30〜200mmとすることもできる。また、弾性押圧材23は、上面を患者の体表面に沿って湾曲する形状とすることもできる。たとえば、人間の背中は、背骨に沿って多少は湾曲している。したがって、下側電極に配設される弾性押圧材は、背中に沿う形状に上面を湾曲させて、全ての局部電極を理想的に体表面に押圧できる。さらに、図示しないが、クッション電極を複数の領域に分割し、各領域に配設される弾性押圧材の厚さや形状を変更して、患者の体表面に沿わせることもできる。たとえば、下側電極を肩側と腰側の2つの領域に2分割し、肩側に配設される弾性押圧材を薄くして、腰側に配設される弾性押圧材を厚くすることもできる。さらに、弾性押圧材は、図示しないが、局部電極と対向する部分に突出部を設けて、この突出部で局部電極を体表面に押圧することもできる。さらにまた、弾性押圧材は、局部電極に対向する押圧部分を、他の部分よりも変形し難くして、この押圧部分で局部電極をしっかりと体表面に押圧することもできる。
【0061】
図13に示すクッション電極20の体側電極1Cは、押出スプリング30を介して固定ケース31に連結している。固定ケース31の周壁32と体側電極1Cとの間には数mmの隙間を設けて、体側電極1Cが固定ケース31からスムーズに出入りできるようにしている。体側電極1Cは、押出スプリング30で押圧される面に支持プレート33を固定している。この支持プレート33は、金属製あるいは硬質のプラスチック製の板材で、押出スプリング30で押圧されて体側電極1Cを体表面に向かって押し出す。この構造は、押出スプリング30で押し出される支持プレート33で体側電極1Cをしっかりと押圧しながら、弾性押圧材23で局部電極22を体表面に押圧できる。図13に示すクッション電極20は、弾性係数の異なる複数の弾性変形プレート23Aを積層した弾性押圧材23としている。ただ、クッション電極は、支持プレートと単層の弾性変形プレートで構成することもできる。このクッション電極は、たとえば、金属製あるいはプラスチック製の支持プレートの表面に柔軟な弾性変形プレートを積層して固定し、この弾性変形プレートで局部電極を体表面に押圧する。
【0062】
固定ケース31は、昇降機構34に連結されており、上下位置を変更できるように配置されている。昇降機構34は、固定ケース31の底面に固定されて体側電極1Cの背面側に突出する支持アーム34Aと、垂直の姿勢で配設されて支持アーム34Aを貫通しているガイドロッド34Bと、支持アーム34Aにねじ込まれて、支持アーム34Aをガイドロッド34Bに固定する固定ネジ34Cとを備える。この昇降機構34は、固定ネジ34Cを緩めた状態で、図13の矢印Aで示す支持アーム34Aの上下位置を調整し、固定ネジ34Cをねじ込んで支持アーム34Aを固定して体側電極1Cを最適な高さに固定する。さらに、昇降機構34は、図13の矢印Bで示す左右方向の位置を調整できるように、スライド機構35に連結している。このスライド機構35は、ガイドロッド34Bの下端が固定されたスライド台35Aと、このスライド台35Aを矢印Bで示す方向にスライドさせるガイドレール35Bと、スライド台35Aにねじ込まれて、スライド台35Aをガイドレール35Bに固定する固定ネジ35Cとを備える。このスライド機構35は、固定ネジ35Cを緩めた状態でスライド台35Aを矢印Bで示す方向にスライドさせて体側電極1Cと患者の体側との距離を調整し、固定ネジ35Cをねじ込んでスライド台35Aを固定して体側電極1Cの左右位置を固定する。したがって、体側電極1Cは、昇降機構34で上下位置が、スライド機構35で左右位置が調整されて、患者の体側の最適な位置に配置される。
【0063】
さらに、図3と図13に示す体側電極1Cは、局部電極22を配置してなる体表面に対向する面の周縁部である4辺をカットして面取りしている。この構造の体側電極1Cは、局部電極22を体表面側に突出させる状態に配置して体表面に接触できる。このため、押圧面の周縁部が上側電極1Aや下側電極1Bに当接するのを有効に防止して、局部電極22で体側を確実に押圧できる。
【0064】
さらに、図11に示す下側電極1Bは、クッション電極20の正確な位置に患者を寝かせることができるように、位置決ライン36を表示している。この図に示すクッション電極20は、左右対称の位置にそれぞれ4本の位置決ライン36を互いに平行に表示している。これらの位置決ライン36は、患者が正しい測定位置についたときの肩や乳首や肋骨等の位置を表示しており、この位置決ライン36を基準にして患者を正確な位置に寝かせることができるようにしている。図11の下側電極1Bは、たとえば、中央の2本の位置決ライン36の間に患者の乳首が位置するように患者の上下位置を決めて、下側電極1Bを所定の位置に配設できるようにしている。このように、位置決ライン36を備えるクッション電極20は、常に患者を正確な位置に寝かせることができる。さらに、図示しないが、下側電極は、左右の位置を特定する位置決ラインを表示することもできる。さらに、クッション電極は、位置決ラインに代わって、患者の上下や左右の位置を特定できる点やマークを表示することもできる。
【0065】
図4に、電極1を患者に装着した状態を示す。この電極1は、下側電極1Bの上に患者が載り、体側電極1Cを患者の脇下の体側に押圧し、上側電極1Aを患者の上面の心臓に近い体表面に載置して、患者の背中と体側と胸とに配置される。ロッド電極10である上側電極1Aは、弾性押出材14が導電ロッド12を弾性的に押し出して接触電極12Aを体表面に押圧し、接触電極12Aでもって心電位を検出して、検出した心電位を演算回路に出力する。クッション電極20である下側電極1Bは、この上に患者が載ると、弾性押圧材23が各々の局部電極22を体表面に弾性的に押圧して、局部電極22でもって心電位を検出して、検出した心電位を演算回路に出力する。クッション電極20である体側電極1Cも、弾性押圧材23が各々の局部電極22を体表面に弾性的に押圧する。
【0066】
本発明の体表面心電計は、図2に示すように、演算表示部2が電極1に誘導される心電圧を演算して体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する。演算表示部2は、電極1に誘導される心電位から体表面に誘導される体表面電位分布図を演算する演算回路2Aと、この演算回路2Aで演算された体表面電位分布図を表示する外部出力装置2Bと、演算回路2Aに接続している操作スイッチ2Cとを備える。図において、外部出力装置2Bには、モニタテレビ2aとプリンター2bを使用している。
【0067】
演算回路2Aは、電極1から送られてくる電気信号を決められた方式に従って演算処理する。電極1は、体表面の複数ヶ所に誘導される心電位を検出し、検出した信号を演算回路2Aに送る。電位の測定は、所定の時間毎に行われ、測定する時間間隔は使用者が操作スイッチ2Cから演算回路2Aに入力する。したがって、演算回路2Aからの指令に基づき、電極1は各点の電位を測定し、電圧値をデータとして演算回路2Aに出力する。演算回路2Aは、一定時間おきに各電極1の測定電位から等電位点を演算し、これから等電位線の位置を算出する。得られた出力信号は外部出力装置2Bに送られ、外部出力装置2Bで等電位線を描き体表面の電位分布図を作成する。
【0068】
演算回路2Aは、入力された電位信号を演算し、等電位点を算出して等電位線を決定できるすべての装置が使用できる。演算回路2Aには、これらの処理を可能にするようカスタマイズされたICや電算機の他、汎用的なMPUやCPUを使用したコンピュータ、いわゆるマイクロコンピュータやパーソナル・コンピュータ、ワークステーション等が使用できる。
【0069】
さらに演算回路2Aは、電極1から送られてきた心電位の値を各時間毎に保持、記憶する記憶媒体を有する(図示せず)。記憶媒体には、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、レジスタ等の記憶素子や、ハードディスク等の固定記憶装置、光磁気ディスク、CD−R、DVD、フレキシブルディスク等の記憶媒体が使用できる。ただ、処理速度の向上を図るためには、アクセス速度の速いメモリ素子を使用することが好ましい。記憶媒体に記憶されたデータ、若しくは電極1から送られてきた電圧値に基づき、演算回路2Aは等電位点を算出し、等電位線を描くための線データを演算する。演算されたデータは外部出力装置2Bに送られる。
【0070】
外部出力装置2Bは、与えられた等電位線のデータに基づき、体表面電位分布図を表示する。外部出力装置2Bには、モニタテレビやプリンター、プロッタ等が複数使用できる。図において、外部出力装置2Bには、モニタテレビ2aとプリンター2bを使用している。使用者は、モニタテレビ2aを使用して体表面電位分布図を随時観測でき、一方でプリンター2bで所定の時間おきに電位分布図を印刷したり、あるいは所望の時間での電位分布図を印刷することができる。
【0071】
記憶媒体に保持されるデータは、体表面の各電位である必要はない。任意の時間における体表面電位分布図を記憶することもできる。例えば、演算回路2Aで演算された等電位線のデータを保持して、このデータを呼び出すことで各時間毎の体表面電位分布図を切り替えて表示することもできる。特に、演算前のデータでなく、演算後のデータを記憶しておくことは、演算に要する時間を省略できるので、外部出力装置に表示されるまでに要する時間を短縮し、より高速に体表面電位分布図を表示することができる。ただ、各点の電位値と等電位線の両方のデータを記憶することも、また演算回路2Aで演算途中のデータを保持しておくこともできるのはいうまでもない。
【0072】
体表面電位分布図の表示は、心電位をサンプリングする間隔や各時点での電位分布の表示を切り替える時間等を調整することによって精度を向上できる。より高速かつ詳細に表示するには、処理能力の高い高速なコンピュータや、画面表示用のチップ、RAM等を備えるいわゆるグラフィックアクセラレータ等を使用した描画が高速なコンピュータ等を、演算回路2Aに使用することで改善できる。
【0073】
【発明の効果】
本発明の体表面心電計は、電極を極めて簡単な構造としながら、0Vラインの変動を少なくして、多数の測定部位から正確に心電位を検出でき、高精度な電位分布図を作成できる特長がある。それは、本発明の体表面心電計が、電極本体から弾性的に押し出されて体表面に押圧される導電ロッドを、電極本体に出入りできるように連結しているロッド部と、このロッド部の先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極とで構成すると共に、接触電極の体表面に接触する接触面を、ロッド部の横断面よりも大きい外形であって、その面積を15mmよりも大きく、隣の接触電極との中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしているからである。この構造の導電ロッドは、ロッド部を細くしながら、接触電極の接触面を大きくしているので、体表面が移動するときに、接触面と体表面との相対運動を少なくできる。接触面積の広い接触面が体表面で強く押圧されることに加えて、細いロッド部が摩擦抵抗を小さくできるからである。摩擦抵抗は、原理的には圧力と面積の積で計算される。しかしながら、極めて圧力が弱い状態では、いかに圧力を低くしても、摩擦抵抗を著しく小さくできない。本発明は、ロッド部を細くすることにより導電ロッドの摺動面積を小さくして摩擦抵抗を小さくしている。このことは、接触面の面積を大きくすることと相乗して、接触面と体表面との相対運動を少なくする。体表面に弾性的に押圧される導電ロッドは、小さい摩擦抵抗でロッド部を摺動させると共に、広い接触面で強く体表面に押圧されて、体表面と一緒に運動する。このため、本発明の体表面心電計は、電極に誘導される測定電位の0Vラインの変動を極減し、多数の電極で安定して正確に心電位を検出できる特長が実現される。
【0074】
さらに、本発明の体表面心電計は、体表面に押圧されると導電ロッドの接触面の面積を15mmよりも大きくしている。接触面の面積をこの範囲に特定する接触電極が体表面に押圧されると、接触面と体表面との間には、理想的な状態で導電性の液体が介在するようになり、電極と体表面との接触抵抗が小さくなる。それは、接触面が広い面積で体表面に接触して体表面の一部を被覆するので、ここに浸出する導電性の液体が乾燥されることなく、接触面と体表面との間に介在されるからである。さらに、接触面の面積を以上の範囲に特定している接触電極は、電極と体表面との接触領域に複数の汗腺が含まれ、各々の汗腺から浸出される導電性の液体が電極と体表面との接触抵抗を小さくする。低抵抗な状態で体表面に電気接触される接触電極は、極めて正確に高い精度で心電位を検出する。
【0075】
さらに、本発明の体表面心電計は、接触面の面積を、隣の接触電極との中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしているので、接触電極が体表面に誘導される心電位の分布を狂わせることがほとんどない。それは、最大面積を、中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしているので、隣の接触電極との間に充分な間隔ができるからである。したがって、本発明の体表面心電計は、多数の電極から正確に安定して心電位を検出することができ、検出した心電位から高精度な電位分布図を作成できる。
【0076】
さらにまた、本発明の体表面心電計は、ひとりの患者の検査費用を極めて安価にできると共に、測定時間を短くして、速やかに電位分布図を作成できる特長がある。それは、本発明の体表面心電計が、多数の電極を体表面に接着して固定する必要がなく、電極を装着して導電ロッドを体表面に押圧して、正確に心電位を検出できるからである。とくに、導電ロッドを体表面に押圧するので、従来の使い捨ての電極のように、使用する毎に廃棄する必要がなく、電極を繰り返し使用して、多数の患者の心電位を検出できる。このため、ランニングコストを著しく低減して、速やかに体表面電位分布図を作成できる。したがって、本発明の体表面心電計は、健康診断等に極めて便利に使用して、心臓疾患を早期に発見できる極めて優れた特長がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】心臓付近の体表面の電位分布図
【図2】本発明の一実施例にかかる体表面心電計のブロック線図
【図3】本発明の一実施例にかかる体表面心電計の概略斜視図
【図4】図3に示す体表面心電計の使用状態を示す概略横断面図
【図5】図3に示す体表面心電計の上側電極であるロッド電極の正面図
【図6】図5に示すロッド電極の底面図
【図7】ロッド電極の電極ユニットの斜視図
【図8】図7に示す電極ユニットの断面図
【図9】導電ロッドをコイルスプリング及びリード線に接続する一例を示す拡大断面図
【図10】図7に示す電極ユニットの上方の板材の底面図
【図11】図3に示す体表面心電計の下側電極であるクッション電極の斜視図
【図12】図11に示す下側電極の拡大断面図
【図13】図3に示す体表面心電計の体側電極であるクッション電極の垂直断面図
【図14】局部電極の拡大断面図
【符号の説明】
1…電極 1A…上側電極 1B…下側電極
1C…体側電極
2…演算表示部 2A…演算回路 2B…外部出力装置
2C…操作スイッチ
2a…モニタテレビ 2b…プリンター
3…ベッド
4…吊下機構 4A…上下台 4B…支持台
10…ロッド電極
11…電極ユニット
12…導電ロッド 12A…接触電極 12B…ロッド部
12a…接触面 12b…連結孔
12c…雌ネジ孔
13…電極本体
14…弾性押出材
15…可動性部材
16…弾性変形プレート
17…止ネジ
18…吊り紐
20…クッション電極
21…表面層 21A…可撓性シート
22…局部電極 22A…接触電極 22B…固定部
23…弾性押圧材 23A…弾性変形プレート
24…接触面
25…連結凸部 25A…筒部 25B…鍔
26…貫通孔
27…リード線
28…接着剤
30…押出スプリング
31…固定ケース
32…周壁
33…支持プレート
34…昇降機構 34A…支持アーム 34B…ガイドロッド
34C…固定ネジ
35…スライド機構 35A…スライド台 35B…ガイドレール
35C…固定ネジ
36…位置決ライン
40…装着バンド
41…連結具
50…ケース
51…板材 51A…挿通孔
52…支柱
53…ガイドプレート 53A…ガイド孔
54…導電層
55…固定リング
56…重り
57…リード線
58…連結筒 58A…貫通孔
59…止ネジ
60…引出線
61…リード線

Claims (14)

  1. 患者の体表面の複数ヶ所に独立して弾性的に押圧されて、体表面に誘導される心電位を検出する電極(1)と、電極(1)で検出される心電位から体表面に誘導される体表面電位分布図を表示する演算表示部(2)とを備える体表面心電計において、
    電極(1)が、患者の体表面の複数ヶ所に押圧される複数本の導電ロッド(12)と、導電ロッド(12)を出入りできるように装着している電極本体(13)と、この電極本体(13)から導電ロッド(12)を弾性的に押し出す弾性押出材(14)とを備えるロッド電極(10)を備え、
    導電ロッド(12)は、電極本体(13)に出入りできるように連結しているロッド部(12B)と、このロッド部(12B)の先端部に連結されて体表面に接触して体表面に誘導される心電位を検出する接触電極(12A)とを備えており、さらに接触電極(12A)の体表面に接触する接触面(12a)は、ロッド部(12B)の横断面よりも大きい外形であって、その面積を15mmよりも大きく、隣の接触電極(12A)との中心間隔(d)の半分の自乗(d/2)よりも小さくしてなることを特徴とする体表面心電計。
  2. 導電ロッド(12)のロッド部(12B)の横断面形状と接触電極(12A)の接触面(12a)の外形が円形で、接触面(12a)の外径がロッド部(12B)の直径の2〜15倍である請求項1に記載される体表面心電計。
  3. 導電ロッド(12)のロッド部(12B)の横断面形状と接触電極(12A)の接触面(12a)の外形が円形で、接触面(12a)の外径がロッド部(12B)の直径の3〜8倍である請求項1に記載される体表面心電計。
  4. 導電ロッド(12)のロッド部(12B)の外径が1.5〜6mmで、接触面(12a)の外径が4〜20mmである請求項1に記載される体表面心電計。
  5. 導電ロッド(12)が金属ロッドである請求項1に記載される体表面心電計。
  6. 接触電極(12A)が、ステンレス、シンチュウ、鉛、銀、塩化銀のいずれかである請求項1に記載される体表面心電計。
  7. 接触電極(12A)が、接触面(12a)の表面に金属メッキ層を設けている請求項1に記載される体表面心電計。
  8. 接触面(12a)の金属メッキ層が、金、白金、銀、塩化銀、ニッケル、クローム、シンチュウ、鉛のいずれかである請求項7に記載される体表面心電計。
  9. 接触電極(12A)の接触面(12a)が中央凸に湾曲する湾曲面である請求項1に記載される体表面心電計。
  10. 接触面(12a)の湾曲面が、周縁の曲率半径を中央部分よりも小さくしている請求項9に記載される体表面心電計。
  11. 湾曲面である接触面(12a)の中央部分の曲率半径が10〜100mmである請求項9または10に記載される体表面心電計。
  12. 湾曲面である接触面(12a)の周縁の曲率半径が1〜20mmである請求項9ないし11のいずれかに記載される体表面心電計。
  13. ロッド電極(10)を複数の電極ユニット(11)で構成してなる請求項1に記載される体表面心電計。
  14. 複数の電極ユニット(11)を可動性部材(15)で連結してなる請求項13に記載される体表面心電計。
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