JP2004156994A - 金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体および遷移金属晶析体の定量方法 - Google Patents

金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体および遷移金属晶析体の定量方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で金属アルミニウム試料をアルコールに溶解させて、遷移金属固溶体または遷移金属晶析体を定量できる方法を提供する。
【解決手段】本発明の定量方法は、ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を金属換算で1ppm以上好ましくは40ppm以下含むアルコールに金属アルミニウム試料を接触させて溶解させ、アルミニウム成分を溶解させ、溶解後の液相部の遷移金属成分含有量から遷移金属固溶体を定量し、遷移金属成分含有量から遷移金属晶析体を定量する。例えばアルコールは、芳香族アルコールまたは炭素数1〜8の一価の脂肪族アルコールである。溶解後の溶解混合物はアルミニウム成分含有量1%以下まで希釈し、孔径0.15μmを超え0.5μm以下のフィルターで濾過した後、孔径0.15μm以下のフィルターで濾過して液相部と溶解残渣を得る。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体および遷移金属晶析体の定量方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属アルミニウム試料に含まれる遷移金属成分は、アルミニウム成分と固溶した状態の遷移金属固溶体として存在するか、あるいは、アルミニウム成分と固溶することなく晶析した状態の遷移金属晶析体として存在することが知られている。かかる遷移金属固溶体や遷移金属晶析体を定量する方法として、非特許文献1(「軽金属」第47巻第1号第15頁〜第20頁)および非特許文献2(Fresenius Z.Anal.Chem.,Vol.319,pp286−292(1984))には、溶媒として添加物を含有しない無添加のアルコールを単独で用い、このアルコールに金属アルミニウム試料を接触させて溶解させ、得られた溶解混合物の液相部の遷移金属成分の含有量、溶解残渣の遷移金属成分の含有量をそれぞれ求める方法が開示されている。かかる方法によれば、遷移金属固溶体はアルミニウム成分と共にアルコールに溶解するので、液相部の遷移金属成分の含有量から遷移金属固溶体を定量することができる。また、遷移金属晶析体はアルコールに溶解することなく、溶解残渣となるので、溶解残渣中の遷移金属成分の含有量から遷移金属晶析体を定量することができる。
【0003】
しかし、かかる従来の分離定量方法では、金属アルミニウム試料をアルコールに溶解させるために長時間を要するという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開平5−25070号公報
【非特許文献1】「軽金属」第47巻第1号第15頁〜第20頁
【非特許文献2】Fresenius Z.Anal.Chem.,Vol.319,pp286−292(1984)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者は、短時間で金属アルミニウム試料をアルコールに溶解させて、遷移金属固溶体または遷移金属晶析体を定量できる方法を開発するべく鋭意検討した結果、アルコールに対して金属換算で1ppm以上のガリウム化合物またはインジウム化合物を含むアルコールに金属アルミニウム試料を接触させると、遷移金属晶析体を溶解させることなく、遷移金属固溶体をアルミニウム成分と共に速やかに溶解させ得ることを見出し、本発明に至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を金属換算で1ppm以上含むアルコールに金属アルミニウム試料を接触させて、金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を溶解させることなく、金属アルミニウム試料中のアルミニウム成分および遷移金属固溶体を溶解させ、溶解後の溶解混合物の液相部の遷移金属成分の含有量から金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体を定量することを特徴とする金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体の定量方法を提供するものである。
【0007】
また本発明は、ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を金属換算で1ppm以上含むアルコールに、金属アルミニウム試料を接触させて、金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を溶解させることなく、金属アルミニウム試料中のアルミニウム成分および遷移金属固溶体を溶解させ、溶解後の溶解混合物の溶解残渣の遷移金属成分の含有量から金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を定量することを特徴とする金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体の定量方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の定量方法は、金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体または遷移金属晶析体を定量する方法である。本発明の定量方法は、例えば純度99.9%以上の金属アルミニウム試料に適用される。
【0009】
金属アルミニウム試料に遷移金属が含まれていると、この遷移金属は遷移金属固溶体として存在するか、あるいは、遷移金属晶析体として存在する。遷移金属固溶体は、遷移金属がアルミニウム成分に固溶したものである。遷移金属晶析体は、アルミニウム成分とは固溶することなく晶析した状態の金属または化合物であって、通常は粒径0.2μm以上5μm以下程度の粒子となって金属アルミニウム試料中に存在する。
【0010】
遷移金属としては、例えば鉄、マンガン、銅、クロム、チタン、亜鉛、バナジウム、ニッケル、ジルコニウムなどが挙げられ、本発明の定量方法は、鉄、マンガンなどである場合に好ましく適用される。かかる遷移金属は、金属アルミニウムの製造原料から持ち込まれ、不可避的に存在するものであってもよいし、製造過程で混入したものであってもよいし、例えば高純度に精製された金属アルミニウムに意図的に添加(ドープ)されたものであってもよい。本発明の定量方法は、かかる遷移金属固溶体を例えば0.7ppm以上300ppm以下程度、遷移金属晶析体を通常0.3ppm以上300ppm以下程度それぞれ含有する金属アルミニウム試料に適用することができる。
【0011】
金属アルミニウム試料の形状は薄片状であることが、アルコールとの接触面積が大きくなって、より速やかに溶解する点で好ましい。金属アルミニウムは、金属製のカッターを用いて薄片状に切断して用いてもよいが、例えば炭化ケイ素などのセラミクス製のカッターを用いて薄片状に切断して用いることが、カッターの金属成分による汚染を防止できて好ましい。
【0012】
金属アルミニウム試料は通常、予め表面を洗浄してから溶解することが、表面に付着した油分、金属成分などの影響や、表面に形成された酸化被膜の影響を避け得る点で、好ましい。金属アルミニウム試料の表面を洗浄するには、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸の水溶液、メタノール、エタノール、アセトンなどの有機溶剤などで洗浄すればよい。例えば有機溶剤で洗浄して油分を除いた後、無機酸の水溶液で洗浄して金属成分を除去し、表面に残留する無機酸を純水で洗浄したのち、有機溶剤で洗浄し乾燥させることで、洗浄できる。金属アルミニウム試料は、乾燥後、直ちに溶解されることが、表面への水分、汚染物質の付着や、酸化被膜の形成による影響を少なくし得る点で、好ましい。
【0013】
本発明の定量方法では、かかる金属アルミニウム試料をアルコールに溶解させる。アルコールとしては、例えばフェノール、ベンジルアルコールなどの芳香族アルコールを用いてもよいが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどの炭素数1〜8の一価の脂肪族アルコール、さらにはイソプロパノールが好ましく用いられる。
【0014】
アルコールの使用量は金属アルミニウム試料に対して通常10質量倍以上200質量倍以下、好ましくは20質量倍以上100質量倍以下程度である。10質量倍未満では、金属アルミニウム試料の全量を溶解させることが困難となったり、溶解させるために長時間を要する傾向にある。200質量倍を超えると、溶解後の操作が困難となる傾向にある。
【0015】
アルコールは、精製されていることが好ましく、また乾燥されていることが溶解時間をより短縮できる点で好ましい。精製は、精留などの通常の方法により行うことができる。また、精製された高純度のアルコールが市販されているので、これを用いてもよい。乾燥は、通常の脱水方法、例えば乾燥剤を添加する方法などによって、行うことができる。また、アルコールに予めアルミニウムアルコキシドを含有させると、アルミニウムアルコキシドが水分を吸収するのでアルコールを乾燥させることができ、また、水分を吸収した後のアルミニウムアルコキシドは除去することなく、そのまま本発明の定量方法に用いることができるので、好ましい。アルミニウムアルコキシドは、アルミニウムと上記アルコールとの化合物である。
【0016】
さらに、アルコールに、あらかじめ、アルミニウムアルコキシドが含まれていると、金属アルミニウム試料がより速やかに溶解するため、好ましい。アルコールに予めアルミニウムアルコキシドを含有させておく場合、その含有量は質量分率で0.1%以上2%以下、さらには1%以下程度であることが好ましい。0.1%未満では、金属アルミニウム試料がより速やかに溶解しない傾向にある。また2%を超えるアルミニウムアルコキシドを予め含有させても、それに見合って溶解速度が向上せず、また、アルミニウムアルコキシドに含まれる痕跡量の金属成分によりブランク値が上昇して定量下限が上昇するおそれがある。
【0017】
アルミニウムアルコキシドを予め含有させた場合のアルコールの使用量は、アルミニウムアルコキシドに含まれる痕跡量の金属成分の影響を避けるために、金属アルミニウム試料に対して100質量倍以下とすることが好ましい。
【0018】
本発明の定量方法では、アルコールに、ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を存在せしめる。ガリウム化合物としては、例えばガリウムメトキサイド、ガリウムエトキサイド、ガリウムイソプロポキサイドなどのガリウムアルコキサイド、ガリウムフェノキサイドなどのガリウムアリロキサイド、ガリウムフォルメート、ガリウムアセテートなどのガリウムカルボキシレート、ガリウムアセチルアセトネート、無水塩化ガリウムなどのガリウム無水ハロゲン化物などが挙げられる。インジウム化合物としては、例えばインジウムメトキサイド、インジウムエトキサイド、インジウムイソプロポキサイドなどのインジウムアルコキサイド、インジウムフェノキサイドなどのインジウムアリロキサイド、インジウムフォルメート、インジウムアセテートなどのインジウムカルボキシレート、インジウムアセチルアセトネート、無水塩化インジウムなどのインジウム無水ハロゲン化物などが挙げられる。かかるガリウム化合物またはインジウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、または2種以上を組み合わせて用いてもよく、ガリウム化合物とインジウム化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0019】
ガリウム化合物、インジウム化合物は金属換算で1ppm以上、好ましくは3ppm以上、通常は40ppm以下、好ましくは10ppm以下存在せしめる。1ppm以下であると、速やかに溶解し難くなる傾向にある。また40ppmを超えて存在せしめても、それに見合って溶解速度が向上しないし、また溶解後の溶解混合物にガリウム化合物やインジウム化合物に起因する析出物が生ずるおそれがある。
【0020】
アルコール中にガリウム化合物やインジウム化合物を含有させるには、例えばアルコールにガリウム化合物やインジウム化合物を直接添加すればよい。ガリウム化合物やインジウム化合物は、金属アルミニウム試料を溶解させる前に添加してもよいし、金属アルミニウム試料をアルコールに接触させた後に添加してもよい。
【0021】
アルコールに金属アルミニウム試料を接触させるには、例えば金属アルミニウム試料をアルコールに浸漬すればよい。溶解温度は、通常50℃以上であり、より短い時間で溶解させ得る点で、高いほどよいが、通常はアルコールの沸点以下であり、沸騰還流下に接触させてもよい。溶解に要する時間は金属アルミニウム試料の形状、純度、含有される遷移金属の種類や含有量などにより異なるが、例えば厚みが1〜2mm程度の薄片状の金属アルミニウム試料の場合、通常は0.5時間以上4時間以下程度である。
【0022】
金属アルミニウム試料の接触、溶解は通常、乾燥不活性ガス雰囲気下で行われる。乾燥不活性ガス雰囲気下で金属アルミニウム試料をアルコールに接触させるには、例えば乾燥窒素ガス、乾燥アルゴンガス、乾燥空気などの不活性で実質的に水分を含まない乾燥不活性ガスを通気しながら、あるいは乾燥不活性ガスでシールされた環境下で溶解させればよい。乾燥不活性ガスは、例えばシリカゲル、モレキュラーシーブなどと接触させて乾燥させた不活性ガスを乾燥後直ちに用いてもよい。また、例えばボンベに充填されて供給される窒素ガス、アルゴンガスなどは通常、十分に乾燥された状態で充填されているので、かかるボンベから供給される不活性ガスをそのまま用いてもよい。
【0023】
金属アルミニウム試料を溶解することで溶解混合物を得るが、かかる溶解混合物には、アルミニウム成分、ガリウム化合物やインジウム化合物の他、遷移金属固溶体が溶解された遷移金属成分が液相部に含まれている。また、遷移金属晶析体は、溶解することなく、溶解残渣として粒子状のまま含まれている。
【0024】
本発明の遷移金属固溶体の定量方法では、かかる溶解混合物の液相部の遷移金属成分の含有量を求める。液相部の遷移金属成分含有量は、例えば溶解混合物を濾過し、濾過残渣として溶解残渣を分離して、濾液として液相部を得、得られた液相部の遷移金属成分含有量を求めればよい。また、本発明の遷移金属晶析体の定量方法では、かかる溶解残渣の遷移金属成分の含有量を求める。溶解残渣の遷移金属成分含有量は、例えば溶解混合物を濾過し、濾液として液相部を分離して、濾過残渣として溶解残渣を得、得られた溶解残渣の遷移金属成分含有量を求めればよい。
【0025】
溶解混合物を濾過するには、通常と同様に、例えばフィルターで濾過すればよい。フィルターの孔径は通常0.15μm以下であり、好ましくは0.01μm以上である。0.15μmを超えると、溶解残渣がフィルターを通過してしまうおそれがある。また、0.01μm未満では、フィルターの入手が困難となったり、濾過に長時間を要する傾向にある。フィルターとしては、例えばフッ素樹脂製メンブレンフィルター、陽極酸化被膜製フィルターなどを用いることができる。
【0026】
用いたアルコールの種類、使用量、予めアルコールにアルミニウムアルコキシドを含有させた場合にはその含有量などによっては、溶解後の溶解混合物をそのまま孔径0.15μm以下のフィルターで濾過すると、濾過に長時間を要することもあるので、あらかじめ、溶解後の溶解混合物を孔径が0.15μmを超え0.5μm以下のフィルターで濾過したのちに、孔径0.15μm以下のフィルターで濾過することが、濾過に要する時間を短縮できて好ましい。孔径0.5μmを超えるフィルターであらかじめ濾過したのでは、溶解残渣の大部分がフィルターを通過してしまって、0.15μm以下のフィルターによる濾過に要する時間を短縮できないことがある。
【0027】
また、濾過される溶解混合物のアルミニウム成分の含有量は質量分率で1%以下であることが、濾過に要する時間が短くなる点で好ましい。金属アルミニウム試料およびアルコールの使用量、アルコールにアルミニウムアルコキシドをあらかじめ含有させる場合にはその含有量などによっては、アルミニウム成分の含有量が1%を超える場合もあるが、この場合には、溶解混合物をアルコールで希釈して、アルミニウム成分の含有量を1%以下としてから濾過すればよい。希釈に用いられるアルコールとしては、前記したと同様のものが挙げられる。
【0028】
なお、濾過後のフィルターの濾過残渣には、液相部が残留して付着しているが、この付着している液相部は、アルコールで洗浄することで除去でき、洗浄後の洗液は、濾液に加えられる。洗浄に用いられるアルコールとしては、前記したと同様のものが挙げられる。
【0029】
濾過により、濾過後の濾液として液相部が得ることができ、また、濾過残渣として溶解残渣を得ることができる。なお、濾過は、上記したと同様に乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0030】
濾液として得た液相部に含有される遷移金属成分の含有量を求め、この含有量から、金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体を定量することができる。液相部の遷移金属成分含有量は通常の方法、例えば得られた液相部に塩酸、硝酸などの無機酸を加えたのち加熱してアルコールを蒸発させ、次いで塩酸、硝酸などの無機酸を加え、加熱して残渣を溶解させて溶液とし、この溶液に含まれる遷移金属成分を誘導結合プラズマ−原子発光(ICP−AES)分析法、誘導結合プラズマ−質量(ICP−MS)分析法、原子吸光(AAS)分析法などの方法により定量する方法によって、求めることができる。また、得られた液相部に酸、硝酸などの無機酸を加えた後の溶液をそのまま用いて、このよう益虫の遷移金属成分をICP−AES分析法などの方法で定量してもよい。
【0031】
濾過残渣として得た溶解残渣に含まれる遷移金属成分の含有量を求め、この含有量から、金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を定量することができる。溶解残渣に含まれる遷移金属成分は通常の方法、例えば濾過に用いたフィルターを塩酸、硝酸などの無機酸に浸漬し、加熱してフィルター上の濾過残渣(溶解残渣)を溶解し、得られた溶液に塩酸などの酸を加えて希釈した後、この溶液に含まれる遷移金属成分をICP−AES分析法、ICP−MS分析法、AAS分析法などの方法により定量する方法によって求めることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の定量方法によれば、金属アルミニウム試料を速やかにアルコールに溶解させて、金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体または遷移金属晶析体を定量することができる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0034】
実施例1
鉄含有量が11.4ppm〔ICP−AES分析法による定量値〕の金属アルミニウム試料〔サイズは10mm×12mm×1.5mm、質量は0.5g、純度は99.99%以上〕の表面を酸〔濃度20質量%の塩酸10容量部と濃度68質量%硝酸水溶液2容量部の混合酸〕に60℃1分間浸漬したのち、表面を水で洗浄し、アセトンでさらに洗浄し、大気中で80℃で5分間乾燥し、直ちに冷却し、フラスコに投入した。このフラスコにさらに、質量分率で0.3%のアルミニウムイソプロポキシド〔キシダ化学(株)製、1級〕および金属換算の質量分率で8ppmのガリウムイソプロポキシド((株)高純度化学研究所製、純度99.9%)をイソプロパノール〔関東化学(株)製、電子工業用〕に溶解させた溶液20gを投入した後、ボンベから供給した乾燥窒素ガスでこのフラスコをシールした。フラスコ内を乾燥窒素ガスで置換したのちも0.2〜0.3dm/分で乾燥窒素ガスを通気しながらイソプロパノールの沸点(約83℃)まで昇温し、イソプロパノールを還流させながら210分間約83℃を保持して金属アルミニウム試料を溶解させた。目視観察したところ、金属アルミニウム試料は、昇温開始後約60分で溶解し始め、溶解開始後約120分で完全に溶解した。
【0035】
溶解後の溶液を乾燥窒素ガス雰囲気下で冷却し、イソプロパノール約80gを加えたのち、孔径0.22μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターで濾過し、次いで孔径0.1μmのフッ素樹脂製メンブレンフィルターで濾過し、濾過後のフィルターをそれぞれイソプロパノール約40gで洗浄し、洗浄後の洗液(合計約80g)を濾液と併せて液相部約180gを得た。また、フィルター上には、それぞれ濾過残渣(溶解残渣)を得た。
【0036】
得られた濾液に濃度20質量%の塩酸15cmを加え、90℃に加熱してイソプロパノールを蒸発させ、濃度20質量%の塩酸15cmおよび濃度68質量%の硝酸水溶液3cmを加えたのち60℃で溶解し、さらに純水を加えて容積100cmとし、ICP−AES分析法にて濾液中の鉄の含有量を求め、得られた含有量から金属アルミニウム試料中の鉄固溶体の含有量を求めたところ、7.8ppmであった。
【0037】
また、濾過後のフィルターを濃度20質量%の塩酸5mmに浸漬し、さらに濃度30質量%の塩酸5cmおよび濃度68質量%の硝酸3cmを加えて濾過残渣を溶解した。溶解後の溶液を蒸発濃縮して1cmとし、濃度20質量%の塩酸を加えて容積を50cmとし、ICP−AES分析法にて鉄の含有量を求め、得られた含有量から金属アルミニウム試料中の鉄晶析体の含有量を求めたところ、4.3ppmであった。
【0038】
上記で用いたと同様の金属アルミニウム試料を用い、上記と同様の操作を行い、金属アルミニウム試料の鉄固溶体および鉄晶析体の含有量をそれぞれ求めたところ、7.7ppmおよび4.4ppmであった。
【0039】
比較例1
実施例1で用いたイソプロパノールに代えて、質量分率で0.5%のアルミニウムイソプロポキシドを含み、ガリウムイソプロポキシドを含まないイソプロパノール20gを用いる以外は、実施例1と同様に操作して金属アルミニウム試料を溶解させようとしたが、180分を超えても溶解は開始しなかった。
【0040】
実施例2
実施例1で用いた金属アルミニウム試料に代えて、鉄含有量が9.0ppm(ICP−AES分析法による定量値)の金属アルミニウム試料〔サイズは10mm×12mm×1.5mm、質量は0.5g、純度は99.99%以上〕を用い、実施例1で用いたイソプロパノールに代えて、質量分率で0.5%のアルミニウムイソプロポキシドおよび金属換算の質量分率で5ppmのガリウムイソプロポキシドを含有するイソプロパノール20gを用いる以外は実施例1と同様に操作したところ、金属アルミニウム試料は昇温開始後20分で溶解し始め、溶解開始後約55分で完全に溶解した。溶解後、実施例1と同様に操作して定量したところ、この金属アルミニウム試料の鉄固溶体含有量は6.9ppmであり、鉄晶析体含有量は2.5ppmであった。
【0041】
上記で用いたと同様の金属アルミニウム試料を用い、上記と同様の操作を行い、金属アルミニウム試料の鉄固溶体および鉄晶析体の含有量を求めたところ、それぞれ6.3ppm、2.8ppmであった。
【0042】
実施例3
実施例2で用いたイソプロパノールに代えて、質量分率で0.5%のアルミニウムイソプロポキシドおよび金属換算の質量分率で8ppmのガリウムイソプロポキシドを含有するイソプロパノール20gを用いる以外は実施例2と同様に操作したところ、金属アルミニウム試料は、昇温開始後15分で溶解し始め、溶解開始後40分で完全に溶解した。溶解後の溶解混合物を実施例1と同様に操作することで、金属アルミニウム試料に含まれる鉄固溶体および鉄晶析体の含有量をそれぞれ定量することができる。
【0043】
以上の実施例1〜実施例3および比較例1の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 2004156994

Claims (8)

  1. ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を金属換算で1ppm以上含むアルコールに金属アルミニウム試料を接触させて、金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を溶解させることなく、金属アルミニウム試料中のアルミニウム成分および遷移金属固溶体を溶解させ、溶解後の溶解混合物の液相部の遷移金属成分の含有量から金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体を定量することを特徴とする金属アルミニウム試料中の遷移金属固溶体の定量方法。
  2. 溶解後の溶解混合物を濾過し、濾過残渣として溶解残渣を分離して、濾液として液相部を得、得られた液相部の遷移金属成分の含有量を求める請求項1に記載の定量方法。
  3. ガリウム化合物およびインジウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を金属換算で1ppm以上含むアルコールに、金属アルミニウム試料を接触させて、金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を溶解させることなく、金属アルミニウム試料中のアルミニウム成分および遷移金属固溶体を溶解させ、溶解後の溶解混合物の溶解残渣の遷移金属成分の含有量から金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体を定量することを特徴とする金属アルミニウム試料中の遷移金属晶析体の定量方法。
  4. 溶解後の溶解混合物を濾過し、濾液として液相部を分離して、濾過残渣として溶解残渣を得、得られた溶解残渣の遷移金属成分の含有量を求める請求項3に記載の定量方法。
  5. アルコールが、芳香族アルコールまたは炭素数1〜8の一価の脂肪族アルコールである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定量方法。
  6. 溶解後の溶解混合物を孔径0.15μm以下のフィルターで濾過する請求項2または請求項4に記載の定量方法。
  7. 溶解後の溶解混合物を孔径が0.15μmを超え0.5μm以下のフィルターで濾過したのちに、孔径0.15μm以下のフィルターで濾過する請求項6に記載の定量方法。
  8. 濾過される溶解混合物のアルミニウム成分含有量が質量分率で1%以下である請求項6または請求項7に記載の定量方法。
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