JP2004154122A - 乳酸発酵オカラおよびそれを含有する食品並びに乳酸発酵オカラの製造法 - Google Patents

乳酸発酵オカラおよびそれを含有する食品並びに乳酸発酵オカラの製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】オカラ中の重要な栄養成分である食物繊維含量を低下させずに、オカラの雑菌汚染の進行を防止し保存性を増し食味と食感を改善した乳酸菌発酵オカラおよびそれを含有する飲食品の提供。
【解決手段】本発明はオカラを植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵してなる乳酸発酵オカラおよびそれを含んでなる飲食品である。乳酸発酵オカラの製造法も開示される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食物繊維量を低下させることなく食感と食味を改善し保存性を高めた乳酸発酵オカラおよびそれを含有する食品、乳酸醗酵オカラを含んでなる血清コレステロール低下剤、並びに乳酸発酵オカラの製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、オカラ(一般に豆腐滓、オカラと呼ばれる)は「卯の花」など食材として利用されてきたが、食生活の変化により食材としてのオカラ消費は減少し産業廃棄物として社会問題となっている。
【0003】
オカラは食物繊維などの生理的機能性栄養成分に富み栄養成分強化用の飲食品素材として期待される。
【0004】
食物繊維は第6の栄養素と呼ばれ、便秘、肥満、糖尿病、高脂血症、大腸ガン、高コレステロール血症などのいわゆる生活習慣病予防及び改善に有効であると考えられているが、通常の食事では不足がちで、おいしく食べられる良質の食物繊維強化用食品への要求が多いが、現在これを満たすものはない。
【0005】
オカラを栄養成分強化用の飲食品素材の利用する際に問題となるのは、オカラが極めて速く雑菌汚染を受け増殖し腐敗する点、大豆特有の臭み、飲食品に利用した場合に食感が悪い点である。
【0006】
現在、オカラを腐敗させず保存するために乾燥して乾燥オカラに加工することも行われているが、乾燥オカラは生オカラより乾燥によって組織が硬くなり、ざらつきが増加し、脂肪の酸化による異臭発生など問題が多い。
【0007】
また、小規模であるがオカラを直接配合したクッキーやパンなども製造されているが、ざらつきなどの食感や大豆の青臭い独特の食味の点で受け入れられていないのが現状である。
【0008】
オカラの処理技術としては、特開平10−155466号公報(特許文献1)に豆類の利用残さを乳酸発酵させて得られた上澄み液を乳酸菌飲料として提供する技術が開示され、特開平9−140334号公報(特許文献2)に大豆由来の飼料に小麦の破砕物等を添加して乳酸発酵させて発酵飼料を作製する技術が開示されている。しかしながら、オカラの食感と食味を改善するとともに保存性を高める技術は未だ知られていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−155466号公報
【特許文献2】
特開平9−140334号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、オカラ中の重要な栄養成分である食物繊維含量を低下させずに、オカラの雑菌汚染の進行を防止し保存性を増し食味と食感を改善した乳酸菌発酵オカラおよびそれを含有する食品の提供をその目的とする。
【0011】
本発明は、豆腐製造現場など微生物汚染を嫌う環境で、オカラ中の栄養成分である食物繊維含量を低下させずにオカラの雑菌汚染の進行を防止し、保存性を増し食味と食感が改善された乳酸菌発酵オカラを衛生的に、かつ効率的に製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、オカラの食感が改善されるとともに、その生理的機能性がほとんど損なわれていない乳酸発酵オカラを含んでなる血清コレステロールを低下させる組成物および血清コレステロール低下用食品を提供することをその目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、大豆を湿式磨砕した呉が豆乳を絞る直前まで約98〜l05℃に加熱されているため、製造直後のオカラの雑菌汚染が少ないこと、汚染菌が耐熱性芽胞を有する好気性のバチルス属が大部分であることを見出した。本発明者らはまた、オカラ発生直後に速やかに乳酸菌を接種し乳酸菌増殖に適する低酸素条件で発酵し適当な植物細胞分解酵素を作用させることによって、雑菌増殖を防止しながら食物繊維量を減少させずにオカラの食味と食感を大幅に改善でき食品に利用できることを見出した。
【0014】
本発明者らはまた、植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵したオカラをラットに投与したところ、優れた血清コレステロール低下作用およびコレステロール排出促進作用を有することを見いだした。本発明者等は更に、このような乳酸発酵が食物繊維等に由来するオカラの生理的機能性に影響をほとんど与えないこと、および食中毒原因菌による汚染がないことを確認した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0015】
本発明による乳酸発酵オカラは、オカラを植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵してなるものである。
【0016】
本発明による食品は、本発明による乳酸発酵オカラを含有してなるものである。
【0017】
本発明による乳酸発酵オカラは、オカラ中の有効栄養成分である食物繊維含量を減少させることなく雑菌増殖が抑制され保存性が高められている点、およびオカラを直接食品に添加するとき問題となるざらついた食感や大豆特有の風味が軽減されている点で有利である。本発明による乳酸発酵オカラはまた、オカラの食物繊維等に由来する生理的機能性はほとんど維持されている点でも有利である。このため、本発明による乳酸発酵オカラは食品の食感、食味を損なうことなく生理的機能性を有する食物繊維として食品に添加することができる。
【0018】
本発明による乳酸発酵オカラの製造法は、密封可能な容器内に充填されたオカラに乳酸菌を接種した後、容器を密封し、オカラの乳酸発酵を行う乳酸発酵工程と、必要であれば容器に密封されたオカラを殺菌する殺菌工程とを含んでなる方法である。
【0019】
本発明による製造法によれば、オカラの食物繊維量を低下させることなく食感と食味を改善するとともに雑菌汚染されやすいオカラを極めて衛生的に処理することができる。本発明による製造法では、密閉容器に充填されたオカラをそのまま流通させることができることから作業の効率化の点で有利である。本発明による製造法では、容器密閉時に乳酸菌が接種され、乳酸発酵が密封された容器内で行われることから、周辺への微生物汚染を防止できるため、豆腐製造現場等の微生物汚染が問題となる環境でも乳酸発酵オカラを安全に製造することができる。
【0020】
本発明による血清コレステロール低下剤および血清コレステロール低下用食品は本発明による乳酸発酵オカラを含んでなるものである。本発明による血清コレステロール低下剤および血清コレステロール低下用食品は、血清コレステロール低下により治療できる疾患の治療剤としても用いることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
乳酸発酵オカラの原料となるオカラは、大豆から豆腐を製造する際の豆乳の絞り滓を用いることができ、好ましくは、呉を豆乳とオカラに分離する絞り機から出た直後のオカラを用いることができる。原料として使用できるオカラとしては、豆腐用オカラ、油揚げ生地用オカラ、高野豆腐用オカラ、飲用豆乳用オカラ、および乾燥オカラが挙げられる。原料オカラは必要に応じて磨砕、粉砕、あるいは殺菌処理を行うことができる。
【0022】
オカラの乳酸発酵は、オカラに乳酸菌を接種し乳酸発酵させることにより行うことができる。
【0023】
まず、原料オカラを清潔な容器に入れ、速やかに乳酸菌を添加し、使用する乳酸菌の発酵に適した環境にする。オカラに接種する乳酸菌としては、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バチルス属(Bacillus)に属するホモ型、ビフィズス型、またはヘテロ型乳酸発酵を行う細菌が挙げられ、好ましくはこれらの細菌から発酵によって食物繊維含量を低下させないものを選択することができる。ラクトバチルス属細菌、特にLactobacillus casei 、が風味改善の点から最も好ましい。乳酸菌は、原料オカラ100重量部に対し、0.005〜20重量部の量で接種することができる。接種に当たっては菌体粉末をそのまま接種しても、豆乳等の適当な液体培地で増菌させたものを接種してもよい。
【0024】
乳酸発酵は、容器に物理的な蓋をして雑菌の進入を防止しながら約10℃〜約60℃の環境下で約5〜約72時間発酵を行うことにより実施することができる。乳酸発酵を行う容器は、袋状、筒状などの形状のものを使用することができ、オカラを効果的に乳酸発酵させる観点から密封可能な容器であることが好ましい。密封可能な容器としては、真空ヒートシーラーにより密封可能なナイロン袋が挙げられる。容器の物理的な蓋としては、ヒートシーラーを用いた溶融シール、ねじ蓋、アルミホイルなどが挙げられ、接種乳酸菌の酸素要求性や使用発酵容器に好ましいものを適宜選択できる。
【0025】
オカラの乳酸発酵に当たっては植物細胞壁分解酵素を添加することができる。植物細胞壁分解酵素としては、すでに公知の市販されている食品向け酵素製剤から、酵素反応によって食物繊維含量を低下させないものを選択して使用することができ、グルカナーゼ(例えば、エンド‐β‐グルカナーゼ、エキソ‐β‐グルカナーゼ)、アラバナーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、およびこれらの組み合わせから選択して使用することができる。植物細胞壁分解酵素は、原料オカラ100重量部に対し、0.01〜20重量部の量で添加することができる。
【0026】
植物細胞壁分解酵素の存在下でオカラを乳酸発酵させることにより、オカラの乳酸発酵を極めて効率的に進行させることができることから(試験例1)、食中毒原因菌を含む雑菌の繁殖を効果的に抑制することができるとともに、オカラの処理時間を短縮することができる。また、植物細胞壁分解酵素の存在下でオカラを乳酸発酵させることにより、オカラの食物繊維含量を大きく減少させずに、ヘミセルロース含量を顕著に減少させることができることから(試験例2)、オカラの生理的機能性に重要な食物繊維含量を低下させずに、オカラの食味と食感を改善することができる。実際に、本発明による乳酸発酵オカラをラットに投与した場合でもオカラの食物繊維等に由来する生理的機能性は損なわれない(試験例3)。
【0027】
乳酸発酵が終了したとき、乳酸の生成によってオカラのpHは3〜5.5に低下し、発酵終了後オカラは必要に応じて磨砕や粉砕を行うこともできる。
【0028】
乳酸発酵後のオカラは雑菌汚染の進行を受けないが、接種乳酸菌が残存するため、例えば、約60℃〜約120℃、約5分〜約120分間の殺菌処理あるいは乾燥処理を行うことが好ましい。
【0029】
乳酸発酵オカラは、常温、冷蔵、冷凍によって保存ができるが、品質的安定性の点から冷凍保存が好ましい。
【0030】
こうして得られた乳酸発酵オカラは、大豆特有の生臭さが軽減し食味が改善され、オカラ粒子の角がとれざらつきが軽減し食感が改善されたにもかかわらず、食物繊維が約20部〜約50部と高含量であるため、飲食品に容易に添加可能で且つ少量の添加量で食物繊維の生理的機能性が発揮できる。
【0031】
本発明による乳酸発酵オカラは、非発酵オカラおよび植物細胞壁分解酵素の非存在下での乳酸発酵オカラと比較して、ヘミセルロース含量が減少している。本発明による乳酸発酵オカラのヘミセルロース含量は、例えば、16重量%以下であり、好ましくは14重量%以下、より好ましくは12重量%以下、最も好ましくは10重量%以下である。
【0032】
本発明による乳酸発酵オカラは、非発酵オカラおよび植物細胞壁分解酵素の非存在下での乳酸発酵オカラと比較して、食物繊維含量が同等であるか、あるいは大きく減少していない。本発明による乳酸発酵オカラの食物繊維含量は、例えば、20〜50重量%であり、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上、最も好ましくは30重量%以上である。
【0033】
本発明による乳酸発酵オカラの例としては、ヘミセルロース含量が16重量%以下であり、かつ食物繊維含量が20重量%以上のものが挙げられ、好ましくは、ヘミセルロース含量が14重量%以下であり、かつ食物繊維含量が25重量%以上のもの、より好ましくは、ヘミセルロース含量が12重量%以下であり、かつ食物繊維含量が30重量%以上のもの、最も好ましくはヘミセルロース含量が10重量%以下であり、かつ食物繊維含量が30重量%以上のものである。
【0034】
本発明による乳酸発酵オカラは、血清コレステロール値を低下させ、コレステロール排出促進作用を有する(試験例3)。従って、本発明による乳酸発酵オカラは血清コレステロール低下剤および血清コレステロール低下用食品として用いることができる。血清コレステロール値の増大は高脂血症(例えば、高コレステロール血症)、動脈硬化症(例えば、心筋梗塞のような動脈硬化性心疾患や脳梗塞のような動脈硬化性脳血管疾患)、脂肪肝および脂肪肝の進行による肝硬変、胆石症、並びにガン(例えば、大腸ガン)等の疾患と密接に関連している。従って、本発明による乳酸発酵オカラは血清コレステロール低下により治療できる疾患の治療剤として用いることができる。なお、本明細書において「治療」とは「予防」を含む意味で用いられるものとする。
【0035】
本発明による乳酸発酵オカラを医薬の有効成分として用いる場合には、通常行われている方法に従って、薬学上許容される製剤用添加物(例えば、賦形剤、補助剤、添加剤)を用いて経口投与に適した製剤とすることができる。
【0036】
本発明による乳酸発酵オカラはそのまま飲食に供することができるが、ジュース、乳酸菌飲料、ゼリー飲料等の飲料や、アイスクリーム、ヨーグルト、パン、羊羹、ゼリー、クッキー、スポンジケーキ、ビスケット等の食品に添加して提供することもできる。本発明による乳酸発酵オカラはオカラのざらつきが軽減されているため、添加される食品は特に限定されない。なお、本明細書において「食品」とは「飲料」を含む意味で用いられるものとする。
【0037】
前述のように本発明による乳酸発酵オカラは血清コレステロール低下作用およびコレステロール排出促進作用を有する。従って、本発明による乳酸発酵オカラそのもの、あるいは本発明による乳酸発酵オカラを配合した食品を、血清コレステロールが高めの消費者やコレステロールが気になる消費者に適した食品あるいはコレステロールが高めの消費者やコレステロールが気になる消費者の食生活の改善に役立つ食品として提供することができる。
【0038】
【実施例】
以下の例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0039】
実施例1:乳酸発酵オカラの製造
オカラ圧搾機から出たての水分80重量部、固形分20重量部の原料オカラ2kg(100重量部)を24cm×36cmのナイロン袋に入れ、予め乳酸菌ラクトバチルスカゼイLBC81株(協和ハイフーズ)を接種し温度30℃で24時間培養した豆乳1重量部(乾燥菌体換算で0.04重量部の乳酸菌を含む)とビスコザイムL(ノボザイムズ社製)0.1重量部を均一に添加し、袋中の空気を除くように真空ヒートシーラーを用いてシールした。ビスコザイムLは、アラバナーゼ、セルラーゼ、β‐グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、キシラナーゼ等の様々なカルボヒドラーゼからなる複合酵素剤である。
【0040】
シール密封したナイロン袋を温度30℃の恒温槽内で24時間培養し、その後温度80℃の水槽中に30分間袋ごと浸漬して殺菌を行った。次いで、冷水槽中で冷却して乳酸発酵オカラを得た。
【0041】
AOACの食品中食物繊維定量法であるプロスキー法に準じた市販定量キット(シグマ・アルドリッチ社)を用いて原料オカラと乳酸発酵オカラの食物繊維含量を測定した結果、原料オカラ36%(オカラ固形物あたり)、乳酸発酵オカラ35%(乳酸発酵オカラ固形物あたり)であった。
【0042】
この時の菌数変化を表1に示す。オカラ圧搾機から出たての原料オカラの生菌数、耐熱性菌数、乳酸菌数を測定した。また、原料オカラをそのままナイロン袋に入れそのまま室温で24時間放置した放置オカラとナイロン袋で温度30℃の恒温槽内で24時間乳酸発酵した乳酸発酵オカラの生菌数、耐熱性菌数、乳酸菌数を測定した。
【0043】
生菌数は、段階希釈液を標準寒天培地(日水)を用いて混釈法(37℃、24時間培養)で測定し、耐熱性菌数はl0倍希釈液を80℃、20分間加熱後、段階希釈し生菌数と同様に標準寒天培地(日水)を用いて混釈法(37℃、24時間培養)で測定した。
【0044】
乳酸菌数は、段階希釈液をBCP加プレートカウンティングアガール(日水)を用いて混釈法(37℃、24時間培養)で測定し、表1にオカラ1g当たりの菌数を対数値として示す。
【0045】
【表1】
Figure 2004154122
このように原料オカラの菌数は低く生菌数の大部分が耐熱性菌数であるが、そのまま24時間室温放置したオカラでは生菌数が著しく増加しその大部分が枯草菌をはじめとする耐熱性菌である。
【0046】
しかし乳酸発酵オカラでは、生菌数は24時間室温放置したオカラと同程度まで増加したが、その大部分は乳酸菌であり耐熱性菌の増加は少なかった。この結果から乳酸発酵によって乳酸菌が増加し耐熱性菌を中心とした雑菌汚染を防止することが可能であることがわかる。
【0047】
また得られた乳酸発酵オカラは、大腸菌群、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌等の食中毒原因菌の汚染は認められておらず、乳酸発酵後4日経過後であっても乳酸発酵オカラはこれらの食中毒原因菌により汚染されていなかった(データ省略)。
【0048】
80℃、30分の殺菌工程を省略した場合であっても、乳酸発酵後4日経過後の乳酸発酵オカラは大腸菌群、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌等の食中毒原因菌の汚染は認められなかった(データ省略)。
【0049】
次に、実施例1で得られた乳酸発酵オカラを用いて各種の飲食品を作った。なお、以下の実施例の部及び%は、重量部及び重量%を示す。
【0050】
実施例2:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(1)
下記の配合で強力小麦粉3部に乳酸発酵オカラ1部添加してバターロールを作った。
(配合組成)
強力粉 300部
ドライイースト 2.5部
砂糖 3部
湯(40℃) 50部
乳酸発酵オカラ l00部
砂糖 30部
食塩 4.5部
牛乳 100部
卵 0.5個
バター 30部
実施例1の乳酸発酵オカラを添加して得られたバターロールは通常品に較べて食感に差がなく、発酵処理を行わない生オカラを添加したものに較べて著しく食感と風味が改善された。
【0051】
また、被験者30名に通常パン(上記配合組成の乳酸発酵オカラを除いたもの)、生オカラパン(上記配合組成の乳酸発酵オカラを生オカラに置き換えたもの)、乳酸発酵オカラパン(上記配合組成)を試食させ、風味、外観、食感、総合について、1(好ましくない)、2(やや好ましくない)、3(普通)、4(やや好ましい)、5(好ましい)の5段階評価をした。
【0052】
その結果を第2表に示す。なお、表中の数値は各項目の30名の評価点の合計で30(最悪)〜150(最高)として示される。
【0053】
【表2】
Figure 2004154122
【0054】
実施例3:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(2)
下記の配合で小豆生あん、グラニュー糖、水を加え、加熱しながら撹拌し糖度50%まで練ってあんを作った。
(配合組成)
小豆生あん 300部
グラニュー糖 200部
水 100部
乳酸発酵オカラ 100部
この配合組成であんを試作したところ、生オカラを添加したあんに較べ乳酸発酵オカラを添加したあんはなめらかでテリがあり、ざらつきが少なく良好な食感を示した。
【0055】
実施例4:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(3)
下記の配合で寒天、小豆こしあん、グラニュー糖、水を加え加熱溶解し、流し缶に入れ固めて水羊羹を作った。
(配合組成)
グラニュー糖 75部
水 500部
塩 少量
寒天 4部
小豆こしあん 350部
乳酸発酵オカラ 50部
この配合組成で水羊羹を試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加した水羊羹はなめらかで光沢があり、ざらつきが少なく良好な食感を示した。
【0056】
実施例5:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(4)
下記の配合で生地を作り200℃のオーブン中で焼成してスポンジケーキを作った。
(配合組成)
鶏卵 140部
グラニュー糖 50部
薄力粉 100部
コーンスターチ 10部
バター 30部
乳酸発酵オカラ 20部
この配合組成でスポンジケーキを試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加したスポンジケーキはきめが細かく弾力のある良好な食感を示した。
【0057】
実施例6:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(5)
下記の配合で牛乳にグラニュー糖を生加えて加熱溶解後、水に浸けておいたゼラチンを絞ってから加え溶解した。
乳酸発酵オカラを加え撹拌しながら容器を冷水上で冷やし、冷凍庫に入れ半固形状になったときに生クリームを添加し、冷却しながら良く撹拌をしてアイスクリームを作った。
(配合組成)
牛乳 220部
グラニュー糖 80部
ゼラチン 2部
生クリーム 20部
バニラエッセンス 少量
乳酸発酵オカラ 40部
この配合組成でアイスクリームを試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加したアイスクリームはざらつきが少なくオカラ特有の風味が軽減され良好な食感を示した。
【0058】
実施例7:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(6)
下記の配合で、家庭用製麺機を用いてうどんを作り、熱湯中でゆで冷水中で洗浄し、ゆでうどんを作った。
【0059】
(配合組成)
中力粉 100部
食塩 2部
水 30部
乳酸発酵オカラ 10部
この配合組成でうどんを作りゆでてゆでうどんを試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加したゆでうどんは、麺の肌がなめらかで腰のある良好な食感を示した。
【0060】
実施例8:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(7)
下記の配合で、コーンポタージュスープを作った。
(配合組成)
スイートコーン 400部
タマネギ 100部
バター 50部
薄力粉 30部
スープストック 1000部
牛乳 1000部
食塩 20部
乳酸発酵オカラ 100部
コショウ 少量
化学調味料 少量
この配合組成でコーンポタージュスープを試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加したコーンポタージュスープは、スープのざらつきが少なくオカラ特有の風味が軽減され良好な風味と食感を示した。
【0061】
実施例9:乳酸発酵オカラ含有飲食品の製造(8)
下記の配合で、市販100%グレープフルーツジュースに添加、ミキサーを用いて均質化して食物繊維入り果汁飲料を作った。
(配合組成)
グレープフルーツジュース 100部
乳酸発酵オカラ 5部
この配合組成で食物繊維入り果汁飲料を試作したところ、生オカラを添加したものに較べ乳酸発酵オカラを添加した食物繊維入り果汁飲料は沈殿しにくく良好な食感を示した。
【0062】
試験例1:植物細胞壁分解酵素の乳酸発酵への効果
オカラ圧搾機から出たての水分80重量部、固形分20重量部の原料オカラ500gを密閉ガラス容器に充填した。次いでガラス容器中のオカラに下記(1)〜(4)を加え、温度30℃の恒温槽内で培養した。
(1)豆乳25ml
(2)乳酸菌ラクトバチルスカゼイLBC81株(協和ハイフーズ)を接種し、温度30℃、24時間培養した豆乳25ml(0.2gの菌体を含む)
(3)豆乳25mlとビスコザイムL(ノボザイムズ社製)500μl
(4)乳酸菌ラクトバチルスカゼイLBC81株(協和ハイフーズ)を接種し、温度30℃、24時間培養した豆乳25ml(0.2gの菌体を含む)とビスコザイムL(ノボザイムズ社製)500μl
乳酸発酵開始から0日目、1日目、および2日目のオカラのpHと乳酸濃度は表3の通りであった。
【0063】
【表3】
Figure 2004154122
乳酸菌とともに植物細胞壁分解酵素を添加すると、酵素単独添加あるいは菌単独添加の場合と比較して、非常に多くの乳酸が生成することが示された。
【0064】
試験例2:乳酸発酵によるオカラ中成分の変化
非発酵オカラ、オカラ常在菌による発酵オカラ、および乳酸発酵オカラにつき、水分、タンパク質、アンモニア、脂質、総食物繊維、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、全糖、還元糖、および乳酸の含有量を測定した。乳酸発酵オカラは、オカラ圧搾機から出たての原料オカラ500gに5000ppmのショ糖溶液25mlに懸濁したラクトバチルスカゼイLBC81株(協和ハイフーズ)0.2gとビスコザイムL(ノボザイムズ)500μlを噴霧し、混合した後、混合したオカラをパウチ袋に入れ、脱気シールした後、37℃で24時間インキュベートすることにより製造した。常在菌発酵オカラは、ラクトバチルスカゼイLBC81株とビスコザイムLを添加しない以外は上記の方法と同様にして製造した。水分は、加熱乾燥法により測定した。タンパク質およびアンモニアの定量はケルダール法に従って行った。脂質の定量はソックスレー抽出法に従って行った。総食物繊維の定量はDIETARY FIBER, TOTAL,TDF−700A(SIGMA)を用いて酵素・重量法に従って行った。ADF(Acid Detergent Fiber)とNDF(Neutral Detergent Fiber)の定量はVan Soestらのdetergent fiber法(Van Soest,P.J., J.Assoc.Off.Anal.Chem.,46,825−829(1963); Van Soest,P.J.,J.Assoc.Off.Anal.Chem.,46,829−835(1963))に従って行った。なお、NDF法で定量されるものは、植物の細胞壁成分のセルロース、ヘミセルロース、リグニンの総量に相当するとされている。また、ADF法で定量されるものは、セルロースとリグニンの総量に相当するとされている。したがって別に定量したリグニン量とADF量とNDF量とから、セルロース量、ヘミセルロース量を算出できる。しかし、NDF法は、中性界面活性剤溶液の処理中に可溶性画分が流失されるため、NDF中のヘミセルロースは主として不溶性画分となる。全糖の定量はフェノール硫酸法に従って行った。還元糖の定量はソモギー・ネルソン法に従って行った。乳酸の定量はデタミナーLAキット(協和メディックス社)を用いて酵素法に従って行った。結果は表4に示される通りであった。
【0065】
【表4】
Figure 2004154122
植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵させる事により、腸管内での機能性作用が期待される総食物繊維を大きく減少させることなく、食物繊維の中でもヘミセルロースを顕著に減少させることができることが明らかとなった。セルロースと結合して存在するヘミセルロースの分解が、乳酸発酵オカラの食感の改善に寄与していると考えられる。
【0066】
試験例3:乳酸発酵オカラによる生理的機能性への影響
4週齢のWistar系雄ラット24匹を1匹ずつ独立したステンレス製金網ケージに入れ、温度24℃、湿度55〜60%に維持された準閉鎖式環境制御飼育装置を用いて、8:00〜20:00までを暗期、20:00〜8:00までを明期とした環境下で対照試料を用いて7日間予備飼育を行った。対照飼料として、高脂肪飼料を用いた。その後、8日目に一群6匹、各群の総体重が等しくなるように、対照飼料、オカラ10%(w/w)添加飼料、試験例2に従って製造された常在菌発酵オカラ10%(w/w)添加飼料、試験例2に従って製造された乳酸発酵オカラ10%(w/w)添加飼料の4群に群分けし、予備飼育と同様の条件で25日間飼育した。予備飼育および本飼育ともに飼料および水は自由摂食とした。飼料組成は表5に示される通りであった。
【0067】
【表5】
Figure 2004154122
対照群は改変AIN−76配合に準じ、各種オカラ添加群はコーンスターチを一部置換して10%(w/w)添加となるように調整し、タンパク質と脂肪が対照飼料と等しくなるようにカゼインの一部を置換した。
【0068】
25日目にネンブタール腹腔内注射により麻酔後開腹し、心臓採血によって屠殺した。解剖時に心臓採血した血液は、遠心分離によって血清を分離後、コレステロールC−テストワコー(和光純薬工業)を用いて血清総コレステロールを測定した。
【0069】
一方、飼育中に生じた糞を毎日採取し、風送乾燥させた。送風乾燥した糞を粉末状にし、次いでエタノールを加えよく均質化した。これを90℃、120分間加温して抽出し、遠心分離(40,000×g、10分間)して上清を分離した後酵素法キットを用いて糞中コレステロール含量を測定した。
【0070】
また糞水分量については、各個体毎にプールした糞の水分を105℃常圧乾燥法により測定した。糞中窒素***量については、糞中の窒素含量をケルダール法により分析した。
【0071】
各測定項目は、測定値を平均値±標準誤差で示した。有意差の検定はJMP4.0.5J(SASインスティチュート)を用いて対照群と各実験群間で一元分散分析を行い、Studentのt検定により危険率5%での有意差を検定した。
【0072】
血清総コレステロール、遊離コレステロール、および総コレステロール***への影響は表6に示される通りであった。
【0073】
【表6】
Figure 2004154122
【0074】
血清総コレステロールは本発明による乳酸発酵オカラ投与群で低下する傾向を示し、また、糞中への総コレステロール***では、13日目までは有意に増加し、その後も対照群と比較して増加傾向を示した。
糞重量、糞水分、糞中窒素***量への影響は表7に示される通りであった。
【0075】
【表7】
Figure 2004154122
【0076】
各実験群で、食物繊維の効果による糞量の増加が確認され、また糞水分は対照群と比較して差がなかった。従って、オカラ特有の生理的機能性は保持されていることが明らかとなった。
【0077】
試験例4:各種微生物による乳酸発酵効果の確認
滅菌水9mlにオカラ1gを加え、3分間攪拌した。このうち1mlを9mlの滅菌水に加え、更に攪拌した(10希釈)。同様にして10倍希釈を行い、そのうち1mlを標準寒天培地(日水製薬)を用いて混釈法でプレーティングした。37℃で48時間インキュベート後、オカラ中の一般生菌数を計測した。また、同希釈倍率液をBCP加プレートカウントアガール(日水製薬)を用いて混釈法でプレーティングし、37℃で72時間インキュベートすることにより、オカラ常在の乳酸菌数を測定した。また、pHセンサー(堀場製作所)を用いてpHを測定した。乳酸量は、デタミナーLAキット(協和メディックス)を用いた比色法により測定した。
【0078】
次に、オカラ500gに、5000ppmショ糖溶液25mlでオカラ重量に対して0.04%(w/w)となるように溶解した乳酸菌製剤それぞれを噴霧した。乳酸菌製剤は、LBC81(Lactobacillus casei:協和ハイフーズ)、LPT10B(Lactobacillus plantarum:協和ハイフーズ)、ラクリスS(Bacillus coagulans:三共)、MY900(Streptococcus thermophilusLactobacillus delbrueckii ssp.bulgaricusとの混合菌:協和ハイフーズ)、MG010(Leuconostoc mesenteroidesLactococcus lactis との混合菌:協和ハイフーズ)を用いた。これをパウチ袋に入れて脱気シールし、37℃で24時間インキュベートした。
【0079】
各サンプルを上述した希釈方法で10倍率まで希釈し、標準寒天培地、BCP加プレートカウントアガールを用いて一般生菌数および乳酸菌数を測定した。また、pHセンサー(堀場製作所)を用いてpHを測定した。乳酸量は、デタミナーLAキット(協和メディックス)を用いた比色法により測定した。
結果は表8に示される通りであった。
【0080】
【表8】
Figure 2004154122
【0081】
いずれの乳酸菌製剤を用いた系でも一般生菌数と乳酸菌数はほぼ同等であった。従って、パウチ袋で嫌気的に乳酸発酵させることにより、オカラに常在する耐熱性の好気性菌の増殖を防ぐことができる。また、いずれの乳酸菌製剤を用いた系でも大量の乳酸生成およびpHの大幅な低下が見られたが、Lactobacillus caseiを用いた系では、乳酸生成量が最も多く、pHの低下が最も大きかった。
【0082】
試験例5:各種植物細胞壁分解酵素による乳酸発酵効果の確認
乳酸菌製剤LBC81を乳酸発酵のスターターに使用し、乳酸発酵オカラを作成する際に植物細胞壁分解酵素をオカラの0.1%(v/w)となるように添加する以外は、試験例2に記載の方法に従って乳酸発酵オカラを製造した。試験例4と同様の方法により、一般生菌数、乳酸菌数、pH、乳酸量を測定した。植物細胞壁分解酵素は、ビスコザイムL(ノボザイムズ)、セルラーゼA「アマノ」3(天野エンザイム)、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム)を用いた。セルラーゼA「アマノ」3はエンド−β−グルカナーゼ、エキソ−β−グルカナーゼ、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼ等を含有し、セルラーゼT「アマノ」4はエキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナーゼ、キシラナーゼ、β−グルコシダーゼ等を含有する。
結果は表9に示される通りであった。
【0083】
【表9】
Figure 2004154122
【0084】
植物細胞壁分解酵素を用いた系で大量の乳酸生成および大幅なpHの低下が見られた。特に、ビスコザイムLを添加した系で乳酸生成量の劇的な増加が確認された。ビスコザイムLに含まれる少なくともアラバナーゼ、セルラーゼ、およびヘミセルラーゼが乳酸発酵の亢進に寄与しているものと思われる。
【0085】
試験例6:乳酸発酵オカラの安全性の確認
試験例2に記載した方法に従って乳酸発酵オカラを製造した。この乳酸発酵オカラを80℃の湯浴中で60分間殺菌し、次いで殺菌済みの乳酸発酵オカラを適した倍率に希釈し、一般生菌数を測定した。また、10倍希釈したものを用い、デゾキシコレート培地(日水製薬)にて大腸菌群、マンニット食塩培地(日水製薬)に卵黄を加えた卵黄加マンニット食塩培地にて黄色ブドウ球菌の生育の有無を確認した。さらにこれらを経日的に測定した。
結果は図1および2に示される通りであった。
【0086】
殺菌後は、菌数はもちろん、乳酸量およびpHにほとんど変化がなかった。また大腸菌群および黄色ブドウ球菌も検出されなかった。
以上より、乳酸発酵オカラは少なくとも8日間は食品衛生的に安全であることが明らかとなった。
【0087】
試験例7:乳酸発酵オカラの遺伝子解析
オカラを乳酸発酵させることにより接種した乳酸菌と常在菌がどのような挙動を示すか、また他の微生物による汚染はないか確認するため、D−Codeシステムを用いて、非発酵オカラ、試験例2に従って製造された常在菌発酵オカラ、および試験例2に従って製造された乳酸発酵オカラを遺伝子解析した。
【0088】
(1)乳酸発酵オカラ中の微生物のtotalDNAの単離
サンプルの10倍希釈溶液100μlを標準寒天培地にプレーティングし、37℃で24時間インキュベートした。プレートに滅菌水3mlを加え、コンラージ棒で菌体を掻きとり、エッペンドルフ管に移した。これを遠心分離機(日立製作所)を用いて12000rpm、3分間遠心分離した後、上清を取り除いた。菌体沈殿物をTE500μlで溶解し、20mg/mlプロテナーゼK(和光純薬工業)3μl、リゾチーム(和光純薬工業)2.5mgを加えた後、37℃で3時間インキュベートした。その後10%(w/w)SDS溶液50μlを加え、60℃で10分間インキュベートした後PCI、CIA処理を行い、エタノール沈殿することでtotalDNAを得た。これを0.8%(w/v)アガロースゲル電気泳動し、エチジウムブロマイドにより染色し、トランスイルミネーター(BIO−RAD)でバンドを確認した。
【0089】
(2)対照菌株からのtotalDNAの単離
対照として用いた乳酸菌株を表10に示す。
【表10】
Figure 2004154122
示した液体培地でそれぞれを各培養温度で24時間液体培養し、乳酸菌株については上述した方法で、その他の菌株についてはISOPLANT(ニッポンジーン)キットを用いてtotalDNAを単離した。その後、上述したように電気泳動でバンドを確認した。
【0090】
(3)PCRによる増幅
得られたtotalDNAより、16SrDNAの特定領域約600bpを、GCクランプを付加したプライマー341F(5’−CGCCCGCCGCGCGCGGCGGGCGGGGCGGGGGCACGGGGGGCCTACGGGAGGCAGCAG−3’(配列番号1))およびプライマー907R(5’−CCGTCAATTCCTTTRAGTTT−3’(配列番号2))を用いて増幅した。
TaqポリメラーゼはGene Taq(ニッポンジーン)を用い、非特異的な増幅を抑えるため、ホットスタート法により添加した。また、自動サーマルサイクラー(エムジェイ)を用い、95℃5分でのイニシャル変性後、80℃、1分での変性、55℃、1分でのアニーリングを1サイクル、その後54℃から50℃まで1℃ずつ下げ、それぞれ10サイクルずつ、計41サイクルのアニーリングを行った。それぞれのステップの間で72℃の伸長反応を行った。
反応後、1.8%(w/v)アガロースゲルで電気泳動を行い、エチジウムブロマイドでの染色後、トランスイルミネーターで増幅を確認した。
【0091】
(4)CDGEを用いた微生物の遺伝子解析
尿素とホルムアミドを変性剤とし、変性剤濃度55%(v/v)の6%ポリアクリルアミドゲルを作成した。これに上述した乳酸発酵オカラ中の微生物由来のPCR産物および標準菌株のPCRサンプルをアプライし、Dcodeシステム(BIO−RAD)を用いて65℃、100Vで20時間電気泳動した。その後、エチジウムブロマイドで染色し、トランスイルミネーターでバンドを確認した。
【0092】
(5)乳酸発酵過程におけるオカラ中での微生物の挙動
電気泳動写真を図3に示した。オカラのみの場合は複数のバンドが確認されることより、数種の微生物が存在していると思われた(レーン1および2)。その後乳酸発酵させることで、用いたL.caseiとオカラに常在すると思われるBacillus属のみに収束した(レーン3)。しかし、Bacillus属は好気性菌であることより、嫌気的状態にしたパウチ袋中では増殖することはできないと考えられる。また、発酵オカラ中には大腸菌群を含め、その他の微生物の遺伝子バンドも認められないことから、食中毒原因菌群の汚染による心配もないと思われる。
【0093】
【配列表】
Figure 2004154122
Figure 2004154122

【図面の簡単な説明】
【図1】乳酸発酵オカラ中の微生物量の経日変化を示した図である。□:殺菌後の乳酸菌数、黒四角:殺菌後一般生菌数、○:未殺菌乳酸菌数、●:未殺菌一般生菌数。
【図2】乳酸発酵オカラ中の乳酸量およびpHの経日変化を示した図である。□:殺菌後の乳酸量、黒四角:殺菌後pH、○:未殺菌乳酸量、●:未殺菌pH。
【図3】乳酸発酵オカラを遺伝子解析した結果を示した図である。レーン1:オカラのみ、レーン2:常在菌発酵オカラ、レーン3:乳酸発酵オカラ、レーン4:LBC81、レーン5:乳酸菌標準マーカー(上からBacillus coagulansLactococcus lactisLactobacillus lactisLactobacillus plantarum)、レーン6:Arthrobacter sp.、レーン7:Bacillus amyloliquefaciens、レーン8:Klebsie ra pneumoniae、レーン9:Pseudomonas putida、レーン10:Echericia coli

Claims (14)

  1. オカラを植物細胞壁分解酵素の存在下で乳酸発酵してなる乳酸発酵オカラ。
  2. オカラが、大豆から豆腐を製造する際の豆乳の絞り滓である、請求項1に記載の乳酸発酵オカラ。
  3. オカラが、豆腐用オカラ、油揚げ生地用オカラ、高野豆腐用オカラ、飲用豆乳用オカラ、および乾燥オカラから選択される、請求項1に記載の乳酸発酵オカラ。
  4. 植物細胞分解酵素が、グルカナーゼ、アラバナーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の乳酸発酵オカラ。
  5. 乳酸菌が、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バチルス属(Bacillus)に属するホモ型、ビフィズス型、またはヘテロ型乳酸発酵を行う細菌である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳酸発酵オカラ。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸発酵オカラを含んでなる、血清コレステロール低下剤。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の乳酸発酵オカラを含有する、食品。
  8. 血清コレステロール低下に用いられる、請求項7に記載の食品。
  9. 密封可能な容器内に充填されたオカラに乳酸菌を接種した後、容器を密封し、オカラの乳酸発酵を行う乳酸発酵工程と、必要であれば容器に密封されたオカラを殺菌する殺菌工程とを含んでなる、乳酸発酵オカラの製造法。
  10. オカラが、豆腐用オカラ、油揚げ生地用オカラ、高野豆腐用オカラ、飲用豆乳用オカラ、および乾燥オカラから選択される、請求項9に記載の製造法。
  11. 乳酸菌が、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ロイコノストック属(Leuconostoc)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、バチルス属(Bacillus)に属するホモ型、ビフィズス型、またはヘテロ型乳酸発酵を行う細菌である、請求項9または10に記載の製造法。
  12. 密封可能な容器が、真空ヒートシーラーにより密封可能なナイロン袋である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の製造法。
  13. 乳酸発酵が植物細胞壁分解酵素の存在下で行われる、請求項9〜12のいずれか一項に記載の製造法。
  14. 植物細胞分解酵素が、グルカナーゼ、アラバナーゼ、キシラナーゼ、グルコシダーゼ、ガラクトシラーゼ、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項13に記載の製造法。
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