JP2004142165A - 圧縮成形用材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性に優れ且つ強度、弾性率等の物性が高く異方性のない繊維強化熱可塑性樹脂からなる圧縮成形材料を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂と強化繊維により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、強化繊維の体積含有率が30%から60%であり、強化繊維の平均繊維長が20mmから100mmであり、任意の断面における同一繊維軸方向を有する最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本以上、10000本以下とする。また、強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、面内の弾性波の伝播速度が3000m/sec以上4500m/sec以下であり、その角度依存による標準偏差が100m/sec以下とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂と強化繊維により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、強化繊維の体積含有率が30%から60%であり、強化繊維の平均繊維長が20mmから100mmであり、任意の断面における同一繊維軸方向を有する最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本以上、10000本以下とする。また、強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、面内の弾性波の伝播速度が3000m/sec以上4500m/sec以下であり、その角度依存による標準偏差が100m/sec以下とする。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は生産性に優れ且つ強度・弾性率が高く成形性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる圧縮成形用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、射出成形用材料やスタンパブルシ−トの様な圧縮成形用材料がある。
【0003】
この中で、スタンパブルシ−トは射出成形用材料と比較して強化繊維長を長くすることができるため、強度・弾性率が高く、これらの温度依存性が少ないことから、自動車用材料、土木建築材料、安全用具等の産業資材として広く用いられている。
【0004】
スタンパブルシ−トの製造方法としては、1)乾式分散法:不連続繊維と熱可塑性樹脂粒子を気相中で分散させて不織布状の堆積物(ウエブ)を形成し、これを加熱加圧してシ−ト状に固化させることにより、スタンパブルシ−トを製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、2)湿式分散法:抄紙技術を応用したスタンパブルシ−トの製造方法であり、不連続繊維と熱可塑性樹脂粒子を液相中で分散させて不織布状の堆積物(ウエブ)を形成し、これを加熱加圧してシ−ト状に固化させる方法(例えば、特許文献2参照。)、3)フィルムラミネ−ト法:樹脂シ−トと長繊維を加熱積層(例えば、特許文献3参照。)、4)スワ−ルマット法:熱可塑性樹脂板と強化材である例えばスワ−ル状(うずまき状)のガラス繊維マットとを積層し、加熱して前記熱可塑性樹脂を溶融し、加圧してガラス繊維マット中へ前記溶融樹脂を含浸させ、加圧したまま冷却固化させる方法(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
【0005】
近年ではそれぞれの特徴と生かして、a)表面装飾:スタンパブルシ−トの表面性を上げるもしくは、自動車用内装材として用いるために表皮一体成形を行う特許が出願されている(例えば、特許文献5参照。)。また最近では難燃処方を施したフィルムを張り合わせ、スタンパブルシ−トを難燃化する特許なども出願されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
しかし、これらの材料はその製造方法から強化繊維の含有率を高くすることが出来ず、強化繊維の持つ強度・弾性率を十分に生かすことが出来ないため、シ−ト本来の強度・弾性率が低いという欠点を有する。この欠点を補うために次のような技術が開発されている。
【0007】
主に主に自動車バンパ−のバンパ−ビ−ムとして用いるため、スタンパブルシ−トの片面、もしくは両面に一方向強化材を貼り合わせた特許が出願されている(例えば、特許文献7参照。)。これにより、一方向強化材の繊維軸方向では著しく強度・弾性率が向上し、スタンパブルシ−トを補強することができる。
【0008】
軽量で高剛性の製品を得るために、スタンピング成形時に金型を完全に閉じることなく圧縮を行い、内部に空洞を存在させて板厚を増し、曲げモ−メントを大きくする手法の特許が出願されている(例えば、特許文献8参照。)。
これらの検討は、先に述べたように高い強度・弾性率を有する強化繊維を多く含有することが出来ないと言う材料本来の持つ欠点を改善するには至っていない。圧縮成形材料の強度・弾性率は強化繊維の含有率に大きく依存するため、圧縮成形材料に含まれる強化繊維の含有率を上げ、本来の強度・弾性率の向上を目的とした検討もなされている。
【0009】
また、溶融粘度が1000〜15000ポイズの範囲にある熱可塑性樹脂が一方向に引き揃えられた補強繊維に含浸した短冊状片を散布し、加熱。溶融して得られた面内において疑似等方性の板が開示されている(特許文献9参照。)。この様な短冊状片は、ガラス繊維束に樹脂を被覆し、被覆繊維束を得た後に切断して得られたと記載されている。この短冊状片は、(a) 厚みが0.2mm以下の範囲にあり、(b) 補強繊維の方向に対して直交する方向における長さが2〜25mmの範囲にあり、(c) 補強繊維の方向における長さが5〜30mmの範囲にあり、(d)アスペクト比が0.15〜1.5の範囲であることを特徴とすることが記載されている。その実施例にはガラス繊維の含有率が40体積%であるナイロン6被覆ガラス繊維が記載されており、このテ−プ形状は幅6mm、厚み0.09mmであったと記載されている。ガラス繊維の単糸数は記載されていないが、575tex(1600fil)を仮定し、その繊維体積含有率から計算を行うと幅6mm、厚さ0.0943mmとなる。また別の実施例にはポリブチレンテレフタレ−トの被覆糸も記載されているが、形状は同じである。
【0010】
更に、強化繊維が無撚であり、少なくとも70%が熱可塑性樹脂で濡らされ、熱可塑性樹脂中に強化繊維が均一に分散した繊維強化熱可塑性樹脂シ−トが開示されている(特許文献10参照。)。その実施例には、ガラスの体積含有率が45%である幅10mm、厚さ0.1mmのテ−プ状材料が記載されている。この強化繊維と熱可塑性樹脂が一体化されたテ−プを切断し、これを散布、加熱・溶融、冷却・固化することによりシ−ト状物を得ると記載されている。特許文献10にもガラス繊維束中の単糸本数は具体的に記載されていないが、1150tex(2000fil)を仮定し、その体積含有率から計算を行うと幅10mm、厚さ0.100mmとなる。
【0011】
また、連続に引き揃えられた強化繊維に樹脂を含浸し切断した薄片を無方向で二次元に配向堆積させ加熱・溶融、冷却・固化した長繊維強化熱可塑性樹脂シ−トが示されている(特許文献11参照。)。 本件は樹脂の含浸を促進するために開繊された繊維を用いることが有効であるとしている。このためシ−ト中の繊維重量含有率のばらつきが小さく、スプリングバックを生じさせる弾性歪みの蓄積が小さく、クリ−プや寸法安定性に優れることを開示している。しかしながら、特許文献11には強化繊維の配向による物性の変化を検討するには至っていない。
【0012】
また、200〜2000本の単糸を集束した繊維束の外周に熱可塑性樹脂をコ−ティングしてこれを切断してロッド状片を得た後に、これをランダムに撒布、堆積させ、加熱・加圧してシ−ト状物を得る方法が開示されている(特許文献12参照。)。このロッド状片は周方向の90%以上が熱可塑性樹脂によって覆われていると共に、ロッド内への樹脂の含浸度は70%以下であると規定している。しかし、この様に繊維間の樹脂含浸が悪いと、繊維間にボイド残りやすく、強化繊維同士の接着性が悪いためにロッド状片から強化繊維が抜け落ち、繊維の含有率に斑ができやすくなると同時に抜け落ちた強化繊維が空中に飛散するなどして作業環境を著しく悪化させるなどの欠点を有する。
【0013】
また、100から2000本の単糸を集束した繊維束に熱可塑性樹脂を95%以上含浸し、これを円形又は楕円形に近い平均径が0.1から1.5mmのロッド状とした物が開示されている(特許文献13参照。)。しかし、単糸の本数が2000本を越えると、繊維束が太くなるため、粘度の高い熱可塑性樹脂が単糸間に均一に含浸することが困難であるという欠点を有する。
【0014】
【特許文献1】
特開平2−169632号公報(第4〜6頁)
【特許文献2】
特公昭55−9119号公報(第1頁)
【特許文献3】
特公昭63−15135号公報(第1〜2頁)
【特許文献4】
特開昭60−36127号公報(第1頁)
【特許文献5】
特開平8−230114号公報(第2頁)
【特許文献6】
特開平11−105196号公報(第2頁)
【特許文献7】
特開平9−216225号公報(第2頁)
【特許文献8】
特開昭60−179234号公報(第1〜2頁)
【特許文献9】
特許第2507565号公報(第1頁)
【特許文献10】
特許第2885038号公報(第1頁)
【特許文献11】
特許第2877052号公報(第1〜2頁)
【特許文献12】
特開平10−16103号(第2頁)
【特許文献13】
特開2000−141502号公報(第2頁)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従来のスタンパブルシ−トは強化繊維の体積含有率が低いため、その材料固有の強度・弾性率が不足するという欠点を有する。繊維体積含有率を高くするには、粘度の高い熱可塑性樹脂を強化繊維間に隙間無く浸透(含浸)させる必要がある。含浸を良好にするには、樹脂の粘度を下げるか、樹脂に高圧を掛けるか、浸透させる距離を短くするために強化繊維を十分に開繊する必要がある。
樹脂の粘度は、分子量を下げるか、溶融温度を高くすることによって可能であるが、分子量を下げると強度の低下を招き、溶融温度を高くすると樹脂の劣化を招く。
【0016】
強化繊維一本一本の単糸レベルまで開繊を行うには限界があり、樹脂に高圧を掛けて含浸すると含浸装置の強化繊維の導入口/出口からの樹脂漏れが著しく発生するなど製造設備の問題から困難である。
よって、従来の手法では、単糸が2000本以下の細いガラス繊維束を用いて樹脂が繊維間に浸透する距離を短くすることにより、強化繊維間への樹脂の含浸性を確保していた。
【0017】
従来の技術で用いられている2000本以下という本数はガラス繊維束の標準の銘柄からも制限されている。例えば一般的に用いられるガラスロ−ビングはJIS R 3412にその番手(単位長さ当たりの重さ)が定められている。また単糸径も銘柄によりほぼ規格化されており、13、 17μmが一般的である。番手と単糸径が決まれば構成される単糸の本数は一意に決定される。
市販されているガラスロ−ビングは、例えば、575texは1600本、1150texは2000本、2310texは4000本のガラス単糸から構成されている。先に述べたように従来の技術は575texもしくは1150texを用いており、全て1本のガラスロ−ビングを用いた検討からなされているといえる。
【0018】
しかし、この様な1本のガラスロ−ビングを供給する方法では生産性が向上せず、コストが高くなると言う欠点を有する。つまり市販のガラス繊維束はある一定重量であるため、単位時間内に生産性を上げるには多数本供給を行うことが最も好ましい。単純に加工速度を同一とすればガラスロ−ビング1本供給を行うよりも2本供給することによって単位時間内の生産量は倍増する。
本発明は従来技術では不可能であったガラス繊維束の多数本供給を可能にし、具体的には2000本以上の強化繊維を供給し、更に樹脂の劣化を起こさず、生産性を向上させ、安価に高強度・高弾性率の圧縮成形用材料を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、第1に強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、繊維体積含有率が30〜60%、平均繊維長が20〜100mm、任意の断面において強化繊維が同一の繊維軸方向を有する最小単位に含まれるガラス繊維の本数が2000本以上10000本以下であること、第2に面内の弾性波の伝播速度が3000m/sec以上4500m/sec以下であり、その角度依存による標準偏差が100m/sec以下であること、第3に熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱した際に、強化繊維のスプリングバックを生じないことを特徴とする圧縮成形用材料を提供するものである。
【0020】
任意の断面における最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本から10000本であることが好ましい。この最小単位は後述のようにして求めることができる。この最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本未満であると同一断面積にしめる最小単位が多くなり、最小単位が重なり合う確率が増加し、繊維の直進性が失われ特に弾性率が低下する。10000本以上になると逆に最小単位が少なくなり、シ−トの物性に異方性が生じやすくなる。
【0021】
ガラス繊維の繊維体積含有率が30〜60%であることが好ましい。体積含有率が30%未満になると最小単位間に樹脂溜まりが生じ強度の低下を招く。また体積含有率が60%よりも大きくなると、強化繊維間への樹脂含浸が困難になり、ボイドが発生しやすくなる。このボイドの発生により強度が低下する。
【0022】
強化繊維の平均繊維長は20〜100mmであることが好ましい。20mm未満では、強化繊維全表面積で生じる接着力よりも強化繊維の強度の方が高くなり、強化繊維の強度を十分に利用できない。100mmより長くなると分散性が悪くなり、強化繊維に方向性が出やすくなるため好ましくない。また、製造条件によっては、繊維軸方向に湾曲が発生し、撒布・堆積させた後にこの湾曲が残留歪みとなりスプリングバックを生じやすくなる。この繊維長の選択は本発明による圧縮用成形材料を用いて成形する製品の形状、大きさにより十分に吟味される必要がある。一般的にはより好ましくは30mmから60mmである。
【0023】
圧縮成形用材料の面内における弾性波の伝播速度は後述のようにして求めることができるが、この伝播速度は3000m/sec以上4500m/sec以下であることが好ましい。3000m/secより遅くなると強度・弾性率に優れる圧縮成形材料を得ることができない。また、4500m/secより早い場合は、強度・弾性率は増加するが、3000m/secから4500m/secに見られるほどの強度・弾性率の増加は認められない。
【0024】
伝播速度の板内での角度依存に対する標準偏差が100m/sec以下であることが好ましい。弾性波の伝播速度のばらつきが小さいと言うことは、強化繊維が均一分散しており、含浸状態も良好であり、強化繊維に局所的な配向が見られないことを示す。強化繊維が均一分散しているとは、シ−ト内で強化繊維の体積含有率にばらつきがないことを示す。含浸状態が良好であるため、強度のばらつきも小さい。更に強化繊維の局所的な配向が見られないことから、強度・弾性率のばらつきの少ないシ−トを得ることができる。
【0025】
例えば、不連続繊維であっても強化繊維に方向性があると繊維軸方向への伝播速度は速くなり、繊維軸垂直方向への伝播速度は伝播速度の遅い樹脂の影響を受け、伝播速度は小さくなる。結果としてシ−トの物性に角度依存、位置依存性が発生し、不均一な力学的挙動を示す。
【0026】
最後に熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱した際に、強化繊維のスプリングバックを生じないことが好ましい。ここで言うスプリングバックとは、シ−トから試験片を切り出し、その上下面と周辺から強化繊維が髭状に飛び出すことを言う。スプリングバックは残留歪みの蓄積を示すため長期に渡り使用する際に開放され、成形品の反り、歪みの原因となる。さらにスタンピング成形を行う場合、髭状の繊維束が飛び出したところは、付着している樹脂が外部加熱により昇華し、強化繊維の露出を生じる。樹脂の付着が認められない強化繊維の露出は、成形品表面の品位の悪化や、破壊の起点となり強度の低下を招くため避けなければならない。
【0027】
本発明で用いる強化繊維はガラス繊維が最も優れている。圧縮成形用材料に用いる強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維などの有機繊維等がある。ガラス繊維は、強度・弾性率と屈曲性に富み、表面の処理剤の最適化が容易で樹脂との接着性を良好で安価であることから、目的に合致している。ガラス繊維にはEガラス(電気用)、Cガラス(耐食用)、Sガラス、Tガラス(高強度・高弾性率)等があるが、このいずれでも良い。
【0028】
強化繊維束表面には、樹脂との接着性を良好にするためにカップリング剤や、集束性を上げるためのサイジング剤(集束剤)が塗布されていることが望ましい。また樹脂の種類によってこれらの成分を変える事が望ましい。
【0029】
本発明の圧縮成形用材料に用いられる熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン46に代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレ−トやポリブチレンテレフタレ−トなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。しかしながら耐熱性が要求される分野においては、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることが好ましい。特に耐熱性や機械的強度、クリ−プ特性、耐薬品性、耐油性が要求される分野では、ポリエチレンテレフタレ−トがより好ましい。また加水分解防止剤、熱劣化防止剤等の添加剤を目的に応じて添加することができる。
【0030】
更にコストや賦形時の流動性、耐水性、耐熱水性、耐化学薬品性が要求される分野には、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。更に好ましくは耐溶剤性能に優れること、プロセスウィンド−が広い事から、ポリプロピレンであることが望ましい。ポリプロピレンは、その本来持つ特性から強化繊維との接着性に乏しいことが欠点として挙げられていたが、近年、酸変性することにより接着性が改良された。そのため本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シ−トにポリプロピレンを用いる場合は、このような変性が成されていることが好ましい。摩耗性、耐油性、長期耐熱特性が必要な場合には、熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂であることが好ましい。吸湿が問題にならない分野では、更に好ましくはナイロン6であることが望ましい。この場合、例えば酸素雰囲気下で、加熱されると酸化劣化を起こすことがあるが、これを防止するために酸化劣化防止剤等を目的に応じて添加することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
まず、本願で言う最小単位とは、任意の断面において強化繊維単糸が同一の繊維軸方向を有する単糸集合体、即ち含浸繊維束の断面を言う。
最小単位は次のようにして求めることができる。シ−トの任意の断面から幅50mm以上の試験片を採取して、観察を容易にするために断面をアルミナスラリ−もしくはダイヤモンドスラリ−を用いて研磨した後に、単糸一本一本が確認できる75倍以上の拡大率を有する光学顕微鏡により研磨した断面を観察する。
【0032】
繊維軸方向が同一、即ち個々の繊維断面の形状が円形であるか、楕円であるか、楕円の場合には長軸と短軸の比がほぼ同一である最小単位が明確に観察できる。この様な最小単位、即ち繊維束は互いに同一の方向を取らない、即ち無配向(ランダム)に存在するほど、互いの最小単位の境界が明確になる。
【0033】
繊維体積含有率が低くなればなるほど、最小単位周辺に樹脂過剰の部分が存在し、最小単位の境界が明確となる。更にこの最小単位の形状が円形に近くなるほど境界は明確となる。
【0034】
次に、弾性波の伝播速度の求め方について述べる。基本的には、シ−トに弾性波を生じさせるパルサ−と伝播した弾性波を検出するセンサ−の組み合わせにより求めることができる。この測定には市販のアコ−スティックエミッション測定装置(以下AE装置)を用いることができる。
【0035】
シ−トの中央にパルサ−を配置し、これより単発のパルスを発生する。連続的にパルスを発生して計測することも可能であるが、その周期により、シ−ト内で弾性波が反射し、互いに干渉するので単発のパルスであることが好ましい。これを等距離においたゲインの等しい複数のセンサ−により検出する。センサ−が1本しか準備できない場合は、複数回に分けて測定することも可能である。このパルサ−からのトリガ−信号とセンサ−からの波形をストレッジオシロ等により検出し、トリガ−と波形の立ち上がりの時間差とパルサ−−センサ−間の距離により弾性波の伝播速度を算出する。
【0036】
シ−トの含浸状態が悪いと、弾性波の減衰が大きくなり、波形の立ち上がりの検出が困難になる。よって減衰率の大きな材料の場合は、パルサ−の振幅を大きくして検出を容易にする必要がある。
【0037】
本発明の圧縮成形用材料を製造する方法としては、1.複数本の連続強化繊維束を引き揃え開繊して熱可塑性樹脂を含浸し、所定の繊維長を有する小片に切断する工程と、2.裁断された小片を金型へ無配向、均一に撒布・堆積させる工程、3.撒布・堆積した小片を加熱・溶融、冷却・固化して圧縮成形用材料に成形する工程が必須である。以下にこれらの工程からなる方法が一例としてあげられる。
はじめに、連続強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸する工程について述べる。
【0038】
a)強化繊維の供給:強化繊維の供給は、ロ−ビングの内周から引き出す場合と、外周から繰り出して供給する場合が考えられる。強化繊維の供給で最も重要な技術のポイントは、無撚で供給することである。撚りが入ると強化繊維が開繊しないため、熱可塑性樹脂を含浸することが困難になる。
【0039】
ロ−ビングの内周から強化繊維を引き出して供給する場合(内取り解舒)は、周知のように解舒撚りが発生する。例えば、内径7インチ、高さ300mm、巻き係数4の場合、その最内周では1回/154mmの撚りが発生する。この様な撚りは工程の中に蓄積されるため、好ましくない。この撚りの発生は、解舒に同期させてロ−ビングを回転することにより、防ぐことができる。ロ−ビングには繊度の個体差が存在するため、完全に同期させることは困難である。ロ−ビングの回転数10回転に対し、撚り1回程度であれば、実用上問題はない。
【0040】
外周から繰り出して供給する場合(横取り解舒)は、例えば、クリルスタンドや、市販の解舒機を用いることができる。この場合でも、耳部(ロ−ビングの側面)には耳撚りと呼ばれる撚りが入ることがある。この撚りは、強化繊維を紡糸して巻き上げるときに入るため、これを防止することは不可能である。よって外側から繰り出して供給するときには後工程での細心の注意が必要である。
【0041】
更に外側から繰り出して供給する場合は、ロ−ビングからの解舒点に負荷がかかる。クリルスタンドを用いて解除する場合には、ロ−ビングが回転する回転モ−メントを強化繊維の引っ張り力によって与えなければならない。この張力により、解舒点の摩擦力が高くなり毛羽立ちが生じることがある。よってクリルスタンドにはベアリングを入れるなどして回転モ−メントを減少する対策が必要不可欠である。
【0042】
市販の解舒機を用いる場合でも、巻き上げる方向と解除する方向が逆になるため、解舒点において強化繊維束間で摩擦を生じる。この為、毛羽が立ちやすい等の不具合が起こる場合がある。この毛羽などは、紡糸のワインダ−を解舒機に改造してトラバ−スを通し、強化繊維に無理がないように解除することにより防止することができる。
【0043】
b)開繊工程:強化繊維間に樹脂含浸が容易になるようにするために集束されている強化繊維束を開繊する必要がある。開繊方法には周知のように、1)金属又はセラミックの棒に強化繊維を押しつけて開繊する方法(バ−開繊)、2)金属又はセラミックのロ−ラ−に沿わせて開繊する方法(ロ−ラ−開繊)、3)強化繊維を弛ませて、繊維軸に対して垂直方向から空気を吹き付けるもしくは吸引することにより強化繊維を拡幅し開繊する方法(空気開繊)などがある。
【0044】
1)の棒または2)のロ−ラ−の材質は強化繊維の種類に応じて十分に吟味する必要がある。硬すぎると、強化繊維表面が損傷して工程通過中に強化繊維が破断したり、必要な強度が得られないなどの不具合が生じる。柔らかすぎると、強化繊維の張力に耐えきれず、変形するなどの不具合が生じる。種々の検討の結果、ステンレスや、真鍮であればほぼ問題はない。
【0045】
強化繊維束を開繊する場合、これを加熱雰囲気下で行うと開繊性が良好になる。強化繊維束には樹脂との接着性を良好にすると共に、ハンドリングを良くするために、サイジング剤(集束剤)と呼ばれる糊が付着している。このサイジング剤の融点以上に加熱することにより、結合力が弱まり開繊性が向上する。サイジング剤の種類にもよるが、これの融点から融点+100℃に加熱することが好ましい。また、軟化したサイジング剤が、強化繊維束と開繊を行う棒/ロ−ラ−との間で潤滑剤の役割を果たす効果も得ることができる。
【0046】
強化繊維束を加熱する方法としては、開繊装置を直接加熱する方法と、輻射熱を利用する方法などがある。直接加熱する場合は、棒の中にヒ−タ−を鋳込む方法を採ることができる。ロ−ラ−の場合は、ロ−ラ−内を中空にして熱媒を通す方法や、ロ−ラ−の内側にヒ−タ−を挿入しておくなどの方法を採ることができる。輻射熱を利用する場合は、遠赤外ヒ−タ−などを設置して輻射熱を利用する方法がある。熱効率を考慮すると直接加熱の方が好ましい。
【0047】
開繊装置へ供給するテンションも非常に重要である。テンションが低いと、強化繊維を押し広げる駆動力が小さくなり、開繊性が悪化する。逆にテンションが高すぎると、棒やロ−ラ−に擦らせる場合に摩擦力が大きくなり、強化繊維束が損傷、最悪の場合破断することがある。通常は、強化繊維の破断強度に対して0.3%〜2%程度であればよい。例えばE−ガラス繊維の場合、その強度は0.0245N/dtexとされており、7.35E−5〜4.90E−4N/dtexの供給テンションが必要となる。
【0048】
供給テンションを与える方法としては、ダンサ−ロ−ラ−、フリクションテンサ−、磁気式テンサ−などがある。強化繊維束に損傷を与えなければ、いずれの場合でも良い。
【0049】
例えば、サイジング剤の融点に対し100℃に加熱した棒の開繊装置を用い、供給テンションを強化繊維の破断強度の1%とした場合、開繊前の強化繊維束の幅に対うる開繊後の繊維束の幅(開繊倍率)は5倍程度にすることができる。即ち厚みは1/5になり、含浸は容易となる。含浸を考慮した場合、開繊倍率は2倍から10倍であることが好ましい。
【0050】
強化繊維間に樹脂を含浸する方法としては、被覆含浸、溶融含浸などが考えられる。被覆含浸は溶融した樹脂を充填した樹脂浴に強化繊維を供給し、ダイスを通して引き抜く方法である。この場合、樹脂は強化繊維束の周辺部のみに付着している。繊維間への浸透は、後のシ−トにするプレス工程などで実現できる。被覆含浸は、樹脂浴中を通してダイスで引き抜く構造であるため、強化繊維間に含まれる空気の抜け道が存在しない為、含浸を良好にするのは困難である。
【0051】
溶融含浸は、キッスロ−ル、曲面形状のダイ、樹脂浴、ダイス、ニップロ−ラ−などの組み合わせにより、強化繊維間に樹脂を完全に浸透させる方法である。
【0052】
キッスロ−ルや曲面形状のダイは、強化繊維束の片側から樹脂を圧入するため、強化繊維間の空気が抜けやすく含浸性に優れるという特徴を有する。キッスロ−ルと曲面形状のダイを比較するとキッスロ−ルは、回転部分を含むため、その設備構造が複雑になりやすい。そして、強化繊維間への樹脂の浸透圧は、強化繊維のテンションのみによりほぼ決定されるため、樹脂を圧入し含浸を促進させるのは限界がある。その反面、曲面状のダイは曲面の一部分にスリットを有するだけであるので、構造が簡略化できる。またスリットから樹脂を吐出するため、吐出圧を制御することが可能で、キッスロ−ルよりも高圧で強化繊維間に樹脂を圧入し含浸を促進することができるため好ましい。
【0053】
曲面形状におけるスリットの形状は開繊した強化繊維束の幅に対し同等かやや狭い幅が好ましく、その高さは0.1〜0.3mmが好ましい。0.1mm以下は加工方法が無く、事実上困難である。0.3mmよりも高くなると、樹脂圧が低下して好ましくない。スリットの樹脂圧はスリット背圧で100KPaから2MPa程度が好ましい。
【0054】
強化繊維束は曲面形状のダイに接する前に含浸する樹脂の融点よりも高い温度に予熱されていることが好ましい。樹脂の融点よりも低い温度の強化繊維束が樹脂に接すると、強化繊維表面で樹脂が冷却され固化することがあり、強化繊維間への樹脂の浸透を促進することができなくなる。よって樹脂の融点から融点+100℃の間に予熱されていることが好ましい。
【0055】
強化繊維束は曲面形状のダイへ複数本供給する事が好ましい。前述のように、強化繊維の撚りはいかなる方法であっても完全に避けることはできない。撚りが入ると開繊性が悪くなり、曲面形状のダイにおいて強化繊維の幅が狭くなり、スリットからの樹脂漏れが発生する。樹脂漏れが発生すると強化繊維含有率にばらつきが生じ、好ましくない。多数本の強化繊維束を供給すると、撚りの発生による曲面形状のダイからの樹脂漏れを防止することができる。これは開繊された強化繊維束を重ね合わせることにより、個々の幅のばらつきを吸収することが可能になるためである。
【0056】
供給の本数は例えば575texのロ−ビングを用いる場合は、2本から8本、1150texであれば2本から6本、2310texであれば、2本から3本程度が好ましい。より好ましくは、ガラス繊維単糸本数が2000本から8000本になるように供給することである。
【0057】
曲面形状のダイで含浸した後に樹脂浴を通すことが好ましい。この樹脂浴で僅かに含浸が促進される。また、樹脂浴の出口にダイスを取り付け強化繊維束への樹脂付着量を調整することができるが、曲面形状のダイと樹脂浴、ダイスを用いることでこの付着量の調整が容易となる。
【0058】
強化繊維への樹脂付着量の調整を容易にするためにダイスを用いることが好ましい。ダイスの形状は特に規定しないが、ロッド状にする場合は、円形、正方形などが考えられる。より強化繊維間への樹脂の浸透が必要な場合は、ダイス内での樹脂の剪断応力が増加するように扁平化することが好ましい。この場合、楕円、もしくは幅の広いスリット形状が選択できる。
【0059】
ダイスの平行部の長さは、樹脂の粘度により異なるが、0.1mm以上、10mm以下であることが好ましい。0.1mm未満では強化繊維間への樹脂の浸透性に劣る。10mmより大きくなるとダイス壁面と樹脂の剪断粘度による引き抜き抵抗が強化繊維の破断強度よりも大きくなることがあり、強化繊維が切断され、操業が不可能である。
【0060】
ダイス直前での樹脂圧は100KPaから50MPaとする事が好ましい。この樹脂圧は、ダイスの形状、ダイスの平行部の長さ、樹脂の粘度により変動するので、幅の広いスリットを用いた場合は20MPaから50MPaとするのがより好ましい。
【0061】
この様なダイスの材質は、腐食を考慮してステンレス鋼や、硬度が必要な場合は合金工具鋼を用いることができる。必要に応じてこれらに焼き入れを行い、表面硬度をさらに高めることも有効である。また、耐摩耗性を重視するときは、タングステンカ−バイドなどのセラミックを溶射、焼結することによりさらに向上する。
【0062】
ダイスから引き抜いた樹脂が付着した強化繊維束(以下、含浸繊維束という)をニップロ−ラにより圧縮し、さらに強化繊維間への樹脂の浸透を良好にすることができる。ニップロ−ラ−はその設置位置が重要である。ダイスからニップロ−ラ−の距離が遠く、引き抜いた含浸繊維束の温度が低下するとニップロ−ラ−で押しつぶしても効果は見られない。また逆に距離が近く、含浸繊維束の温度が高いと樹脂の粘着力によって含浸繊維束がニップロ−ラ−に巻き付いて操業が困難である。明確な理由は不明であるが、ニップロ−ラ−の温度は70℃以下、ニップロ−ラ−に接する時の含浸繊維束の表面温度は樹脂の融点−20℃から融点+50℃が好ましい。ニップロ−ラ−の温度が70℃より高くなると含浸繊維束のニップロ−ラ−への巻き付きが増加する。含浸繊維束の表面温度が融点−20℃より低くなると、ニップロ−ラ−にかかる圧力を上げても含浸繊維束の形状は変化しない。融点+50℃を越えると急激に含浸繊維束のニップロ−ラ−への巻き付きが増加する。
【0063】
この様に種々の工程を経て含浸繊維束を得ることができるが、圧縮成形用材料において、ボイドがなく強化繊維間に樹脂が浸透して、良好な含浸状態が得られるならば、被覆含浸、溶融含浸いずれでも良い。
【0064】
得られた含浸繊維束は、イ−ストマンカッタ−や、ギロチンカッタ−、ペレタイザ−等の切断装置を用いて所定の長さに切断することができる。イ−ストマンカッタ−は、ドラムに外側に向けて刃が付いており、巻き付けた含浸繊維束の張力により切断されるため、張力の付与が重要である。ギロチンカッタ−は固定刃と移動刃の剪断で切断するため、このクリアランスが重要である。クリアランスを広く採ると切断不良が生じ、狭くすると移動刃が固定刃に擦って摩耗し、刃の耐久性が短くなる。含浸繊維束の切断状況を見ながらクリアランスを詰める必要がある。
【0065】
以上から得られた含浸繊維束を切断した小片を、金型へ無配向、均一に撒布・体積させる工程に投入する。小片などを撒布・堆積させる方法としては、例えば連続的に生産する場合は前記工程の長手方向の裁断した小片を直接高い位置から自然落下させ、ベルトコンベア−上に堆積させる方法や、落下経路にエア−を吹き込むか、もしくは邪魔板を取り付ける方法などが考えられる。しかしながら、落下経路にエア−を吹き込むと、含浸繊維束の小片がエア−により落下経路で互いにもしくは壁面に衝突して含浸繊維束小片が避けたり、含浸繊維束の樹脂含浸度が低いと強化繊維が抜け落ちる可能性がある。特に抜け落ちた強化繊維は風綿状の毛玉になり圧縮成形用材料の物性を悪化させたり、空中を飛散して作業環境を著しく悪化させる。
【0066】
金型へ無配向、均一に撒布・堆積させる方法としては、高所から振り落とす事が最も簡便で確実な方法である。しかしながら、無作為に撒布するだけでは、所望の圧縮成形用材料を得ることはできない。
【0067】
均一に撒布するには、振り落とす含浸繊維束小片を時間当たり一定量供給する必要がある。一定供給が可能な方法としては、含浸繊維束をイン・ラインで切断しそのまま振り落とす方法、ベルトコンベア−とかき上げ装置を用いて含浸繊維束小片の嵩密度を揃えて供給する方法などがある。
【0068】
時間当たりに振り落とす量は非常に重要である。金型に直接投入してバッチ成形を行う場合は、単位時間、単位面積当たりに振り落とす重量は0.020〜0.30Kg/(sec・m2)程度が好ましい。含浸繊維束小片を単位時間に振り落とす量が少ない、即ち0.020Kg/(sec・m2)より少なくなると工程速度が遅くなり生産性が悪くなる。逆に振り落とす量が多くなる、即ち0.30Kg/(sec・m2)より多くなると振り落とされた含浸繊維束小片が圧縮成形用材料の面外方向に配向してスプリングバックの原因となるため好ましくない。
【0069】
撒布・堆積させた含浸繊維束小片を加熱・溶融、冷却・固化する方法には、次のような方法がある。例えば、ベルトプレスにより加熱・溶融、冷却・固化を連続して行う方法や、プレスを用いるバッチ方式等を挙げることができる。
【0070】
プレスを用いたバッチ方式はベルトプレスによる方法よりも設備が安価であるため一般的に用いられている。熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と異なり、樹脂を加熱するだけではなく、冷却する事が必須である。本来、含浸繊維束小片のみを加熱・冷却することが理想であるが、技術的に困難であるため、従来は、1台のプレスを用い、金型に通す熱媒・冷媒を切り替えることにより圧力下で加熱・溶融、冷却・固化が行われてきた。 しかし、この方法では金型をも加熱・冷却する必要があるため、エネルギ−の損失が大きい。
【0071】
エネルギ−損失の回避は、加熱と冷却を分けて行うことにより実現することができる。つまり加熱用のプレスと冷却用のプレスの2台を用意し、撒布・堆積した含浸繊維束小片を加熱用から冷却用へ移動することにより、常に金型を一定温度に保つことができ、理想的な状態を得ることができる。
【0072】
ここで問題となるのは、加熱・溶融状態にある含浸繊維束小片は餅状であり、これを移動することが困難であることである。本発明では、まず、含浸繊維束小片をアルミの箱に撒布・堆積させ、蓋をして密封する。次いでアルミ箱ごと加熱プレスに投入し、圧力を掛けながら含浸繊維束小片を溶融して相互の間に含まれる空気を抜く。そしてアルミ箱ごと冷却プレスに移動して、加圧下で冷却・固化することにより溶融した含浸繊維束小片を移動することに成功した。
【0073】
ここで用いるアルミ箔は離型処理がなされていることが望ましい。離型剤はシリコン系など一般に市販されている物で十分である。
【0074】
プレス成形を行う場合、重要なポイントは、金型温度、圧力、保持時間、圧縮速度の4点である。加熱プレスの金型温度は、樹脂の融点から融点+70℃の範囲にあることが好ましい。樹脂の融点より低くても高圧下であれば、含浸繊維束小片相互の結合を得ることもできるが、融点以上にすることで樹脂が溶融状態となり、含浸繊維束小片間に存在する空気を排出する駆動力を得ることができる。融点+70℃を越えると、保持時間にもよるが、樹脂の劣化が進み好ましくない。
【0075】
圧力は撒布・堆積させた含浸繊維束小片間に含まれる空気を排出する駆動力になるため、重要である。含浸繊維束小片における樹脂含浸が良好であれば低圧で成形することができる。含浸が不良であれば、高圧が必要となる。前述のアルミ箱に詰めアルミ箱ごと成形すれば、金型のクリアランスから樹脂が流出することもなく高い圧力を掛けることができる。加熱時の圧力を300KPaから5MPaにする事が好ましい。
【0076】
加熱保持時間は、30秒以上、20分以下であることが好ましい。加熱する量にもよるが、30秒以下では含浸繊維束小片の樹脂が十分に溶融しないため、シ−トの含浸が悪くなる。20分以上になると金型に接している樹脂が劣化し、例えばポリプロピレンであれば黄変したり、ポリアミド6なら着色したりして品位が劣るため好ましくない。生産性を鑑み、より好ましくは1分以上、10分以下である。
【0077】
加熱プレスによる圧縮速度は1mm/minから50mm/minが好ましい。圧縮速度が速いと含浸繊維束小片の樹脂が溶融する前にこれらが押しつぶされるため、強化繊維に歪みが蓄積されやすく、結果としてスプリングバックを生じる。1mm/minよりも遅くなると加熱・溶融した樹脂が含浸繊維束小片間に含まれる空気によって酸化劣化を生じることがあるため好ましくない。
【0078】
冷却プレスの温度は融点より低い温度であれば、特に問題はないが、好ましくは室温から150℃が好ましい。150℃より高くなると、金型内で固化していても取り出した後、室温との温度差が大きいため、反りなどを発生することがある。室温より低いと、別途金型冷却用に冷媒が必要となり、設備が大掛かりになるため好ましくない。より好ましくは50℃から120℃である。
【0079】
溶融時に十分に圧縮され、空気が抜けた状態であれば、冷却時の圧力は特に規定しないが、装置などの能力により300KPaから5MPaであればよい。
冷却時間も特に規定しないが、生産性との兼ね合いから、加熱時間よりも短時間であれば特に問題ない。
【0080】
冷却プレスによる圧縮速度は速ければ早いほうが好ましい。溶融状態にある樹脂が融点よりも低い温度の金型に接すると固化が開始する。金型が閉まるのが遅いと、固化が進み、搬送中に生じるシ−トの撓みなどが保持されるため好ましくない。圧縮速度は10mm/min以上100mm/minが好ましい。またこの範囲であれば、平面性に優れた圧縮成形材料を得ることができる。
【0081】
アルミ箱に詰めている場合、四辺を切断するなどして圧縮成形用材料を取り出す必要がある。
【0082】
以上のようにして得られた圧縮成形用材料は含浸性に優れ、面内に異方性が無く、スプリングバックを生じにくい特徴を持つ。
【0083】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお各評価については以下の通りに行った。曲げ弾性率、曲げ強度はJIS K 7055に従い測定を行った。強化繊維の体積含有率は、まず、JIS K 7052に準じ、厚さ3.5mm、500mm角の圧縮成形材料の四隅と中央の5点から切り出した2g以上の試験片を電子天秤を使用して1mgまで正確に測定し、これを電気炉中で雰囲気温度625℃で、時間加熱した。炭素質が完全になくなってからデシケ−タに移して室温になるまで冷却し、焼成後の質量を1mgまで測定した。焼成前後の質量からガラス繊維の重量含有率を算出した。この重量含有率と強化繊維、樹脂の密度から複合則により体積含有率を算出した。なお、JIS K 7053に従い、圧縮成形用材料の空洞率を測定したところ、すべての材料で1%以下であった。
【0084】
(実験例1)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を横取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を10mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が30%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅25mm、厚さ0.12mmのテ−プ状樹脂含浸繊維束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長25mmの短冊状の小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.027Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0085】
(実験例2)
繊維体積含有率が40%であること並びに撒布速度が0.030Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅22mm、厚さ0.10mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0086】
(実験例3)
繊維体積含有率が45%並びに撒布速度が0.032Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.10mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0087】
(実験例4)
繊維体積含有率が50%並びに撒布速度が0.033Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.09mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0088】
(実験例5)
繊維体積含有率が60%並びに撒布速度が0.037Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.07mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0089】
(実験例6)
繊維体積含有率が70%となるようにダイスリットの調整を行い含浸繊維束の製造を試みたが、ダイスリットで含浸繊維束が擦られて破断し、含浸繊維束を得ることができなかった。
【0090】
(実験例7)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を内取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅20mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長10mmの小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.10Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0091】
(実験例8)
含浸繊維束小片の繊維長が35mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0092】
(実験例9)
含浸繊維束小片の繊維長が50mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0093】
(実験例10)
含浸繊維束小片の繊維長が100mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束小片は僅かに繊維軸方向に湾曲が認められ、撒布・堆積後の嵩密度が大きくなる傾向が見られた。その評価結果を表1に示す。
【0094】
(実験例11)
含浸繊維束小片の繊維長が150mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束小片は繊維軸方向に湾曲しており、撒布・堆積後の嵩密度が大きく著しく作業性が悪化した。その評価結果を表2に示す。
【0095】
(実験例12)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−575、繊維本数1600本)1本を外取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅6mm、厚さ0.08mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。この場合、解舒時の耳部で発生する耳撚りの影響を受け、開繊したガラス繊維束幅に斑が生じ、ダイスリットで樹脂漏れを発生し、操業性が悪化した。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長35mmの小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから離型性を向上させるために敦賀フィルム株式会社製ポリプロピレンフィルム(厚さ50μm)を予め投入しておいた520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.20Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。ポリプロピレンフィルムの効果によりアルミ箔を除去するときの離型性は良好であった。その評価結果を表2に示す。
【0096】
(実験例13)
供給するEガラス繊維束がER−1150、繊維本数2000本、1本であること以外は実験例12同様の方法で、幅10mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この場合も実験例12の場合と同様にダイスリットで樹脂漏れを発生したが、実験例12との相対比較を行うと繊維本数が多いだけ幾分改善された。その評価結果を表2に示す。
【0097】
(実験例14)
供給するEガラス繊維束がER−1150、4本であること以外は実験例13同様の方法で、幅35mm、厚さ0.10mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に示す。
【0098】
(実験例15)
供給するEガラス繊維束がER−575、6本であること以外は実験例13同様の方法で、幅30mm、厚さ0.090mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に示す。
【0099】
(実験例16)
供給するEガラス繊維束がER−1150、6本であること以外は実験例13同様の方法で、幅50mm、厚さ0.11mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束は幅が大きく、搬送、撒布時に裂けることがあり、裂けた破面からガラス短繊維が脱落し、作業環境を悪化させた。評価結果を表2に示す。
【0100】
(実験例17)
市販の粉末含浸のスタンパブルシートを用いて検討を行った。評価結果を表2に示す。
【0101】
(実験例18)
市販の抄紙法のスタンパブルシートを用いて検討を行った。評価結果を表2に示す。
【0102】
(実験例19)
Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を内取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これにポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅20mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長35mmの小片を得た。この含浸繊維束小片を全て繊維軸方向が同方向となるように手並べでアルミ箔の箱に敷き詰め、蓋をした後、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に、伝播速度の角度依存性を図2に示す。この圧縮成形材料は強化繊維に方向性があるため、曲げ物性に異方性が生じた。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【発明の効果】
本発明により生産性に優れ且つ強度・弾性率が高く異方性のない、成形性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる圧縮成形用材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例における伝播速度の角度依存性である。
【発明の属する技術分野】
本発明は生産性に優れ且つ強度・弾性率が高く成形性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる圧縮成形用材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化熱可塑性樹脂複合材料は、射出成形用材料やスタンパブルシ−トの様な圧縮成形用材料がある。
【0003】
この中で、スタンパブルシ−トは射出成形用材料と比較して強化繊維長を長くすることができるため、強度・弾性率が高く、これらの温度依存性が少ないことから、自動車用材料、土木建築材料、安全用具等の産業資材として広く用いられている。
【0004】
スタンパブルシ−トの製造方法としては、1)乾式分散法:不連続繊維と熱可塑性樹脂粒子を気相中で分散させて不織布状の堆積物(ウエブ)を形成し、これを加熱加圧してシ−ト状に固化させることにより、スタンパブルシ−トを製造する方法(例えば、特許文献1参照。)や、2)湿式分散法:抄紙技術を応用したスタンパブルシ−トの製造方法であり、不連続繊維と熱可塑性樹脂粒子を液相中で分散させて不織布状の堆積物(ウエブ)を形成し、これを加熱加圧してシ−ト状に固化させる方法(例えば、特許文献2参照。)、3)フィルムラミネ−ト法:樹脂シ−トと長繊維を加熱積層(例えば、特許文献3参照。)、4)スワ−ルマット法:熱可塑性樹脂板と強化材である例えばスワ−ル状(うずまき状)のガラス繊維マットとを積層し、加熱して前記熱可塑性樹脂を溶融し、加圧してガラス繊維マット中へ前記溶融樹脂を含浸させ、加圧したまま冷却固化させる方法(例えば、特許文献4参照。)等が知られている。
【0005】
近年ではそれぞれの特徴と生かして、a)表面装飾:スタンパブルシ−トの表面性を上げるもしくは、自動車用内装材として用いるために表皮一体成形を行う特許が出願されている(例えば、特許文献5参照。)。また最近では難燃処方を施したフィルムを張り合わせ、スタンパブルシ−トを難燃化する特許なども出願されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0006】
しかし、これらの材料はその製造方法から強化繊維の含有率を高くすることが出来ず、強化繊維の持つ強度・弾性率を十分に生かすことが出来ないため、シ−ト本来の強度・弾性率が低いという欠点を有する。この欠点を補うために次のような技術が開発されている。
【0007】
主に主に自動車バンパ−のバンパ−ビ−ムとして用いるため、スタンパブルシ−トの片面、もしくは両面に一方向強化材を貼り合わせた特許が出願されている(例えば、特許文献7参照。)。これにより、一方向強化材の繊維軸方向では著しく強度・弾性率が向上し、スタンパブルシ−トを補強することができる。
【0008】
軽量で高剛性の製品を得るために、スタンピング成形時に金型を完全に閉じることなく圧縮を行い、内部に空洞を存在させて板厚を増し、曲げモ−メントを大きくする手法の特許が出願されている(例えば、特許文献8参照。)。
これらの検討は、先に述べたように高い強度・弾性率を有する強化繊維を多く含有することが出来ないと言う材料本来の持つ欠点を改善するには至っていない。圧縮成形材料の強度・弾性率は強化繊維の含有率に大きく依存するため、圧縮成形材料に含まれる強化繊維の含有率を上げ、本来の強度・弾性率の向上を目的とした検討もなされている。
【0009】
また、溶融粘度が1000〜15000ポイズの範囲にある熱可塑性樹脂が一方向に引き揃えられた補強繊維に含浸した短冊状片を散布し、加熱。溶融して得られた面内において疑似等方性の板が開示されている(特許文献9参照。)。この様な短冊状片は、ガラス繊維束に樹脂を被覆し、被覆繊維束を得た後に切断して得られたと記載されている。この短冊状片は、(a) 厚みが0.2mm以下の範囲にあり、(b) 補強繊維の方向に対して直交する方向における長さが2〜25mmの範囲にあり、(c) 補強繊維の方向における長さが5〜30mmの範囲にあり、(d)アスペクト比が0.15〜1.5の範囲であることを特徴とすることが記載されている。その実施例にはガラス繊維の含有率が40体積%であるナイロン6被覆ガラス繊維が記載されており、このテ−プ形状は幅6mm、厚み0.09mmであったと記載されている。ガラス繊維の単糸数は記載されていないが、575tex(1600fil)を仮定し、その繊維体積含有率から計算を行うと幅6mm、厚さ0.0943mmとなる。また別の実施例にはポリブチレンテレフタレ−トの被覆糸も記載されているが、形状は同じである。
【0010】
更に、強化繊維が無撚であり、少なくとも70%が熱可塑性樹脂で濡らされ、熱可塑性樹脂中に強化繊維が均一に分散した繊維強化熱可塑性樹脂シ−トが開示されている(特許文献10参照。)。その実施例には、ガラスの体積含有率が45%である幅10mm、厚さ0.1mmのテ−プ状材料が記載されている。この強化繊維と熱可塑性樹脂が一体化されたテ−プを切断し、これを散布、加熱・溶融、冷却・固化することによりシ−ト状物を得ると記載されている。特許文献10にもガラス繊維束中の単糸本数は具体的に記載されていないが、1150tex(2000fil)を仮定し、その体積含有率から計算を行うと幅10mm、厚さ0.100mmとなる。
【0011】
また、連続に引き揃えられた強化繊維に樹脂を含浸し切断した薄片を無方向で二次元に配向堆積させ加熱・溶融、冷却・固化した長繊維強化熱可塑性樹脂シ−トが示されている(特許文献11参照。)。 本件は樹脂の含浸を促進するために開繊された繊維を用いることが有効であるとしている。このためシ−ト中の繊維重量含有率のばらつきが小さく、スプリングバックを生じさせる弾性歪みの蓄積が小さく、クリ−プや寸法安定性に優れることを開示している。しかしながら、特許文献11には強化繊維の配向による物性の変化を検討するには至っていない。
【0012】
また、200〜2000本の単糸を集束した繊維束の外周に熱可塑性樹脂をコ−ティングしてこれを切断してロッド状片を得た後に、これをランダムに撒布、堆積させ、加熱・加圧してシ−ト状物を得る方法が開示されている(特許文献12参照。)。このロッド状片は周方向の90%以上が熱可塑性樹脂によって覆われていると共に、ロッド内への樹脂の含浸度は70%以下であると規定している。しかし、この様に繊維間の樹脂含浸が悪いと、繊維間にボイド残りやすく、強化繊維同士の接着性が悪いためにロッド状片から強化繊維が抜け落ち、繊維の含有率に斑ができやすくなると同時に抜け落ちた強化繊維が空中に飛散するなどして作業環境を著しく悪化させるなどの欠点を有する。
【0013】
また、100から2000本の単糸を集束した繊維束に熱可塑性樹脂を95%以上含浸し、これを円形又は楕円形に近い平均径が0.1から1.5mmのロッド状とした物が開示されている(特許文献13参照。)。しかし、単糸の本数が2000本を越えると、繊維束が太くなるため、粘度の高い熱可塑性樹脂が単糸間に均一に含浸することが困難であるという欠点を有する。
【0014】
【特許文献1】
特開平2−169632号公報(第4〜6頁)
【特許文献2】
特公昭55−9119号公報(第1頁)
【特許文献3】
特公昭63−15135号公報(第1〜2頁)
【特許文献4】
特開昭60−36127号公報(第1頁)
【特許文献5】
特開平8−230114号公報(第2頁)
【特許文献6】
特開平11−105196号公報(第2頁)
【特許文献7】
特開平9−216225号公報(第2頁)
【特許文献8】
特開昭60−179234号公報(第1〜2頁)
【特許文献9】
特許第2507565号公報(第1頁)
【特許文献10】
特許第2885038号公報(第1頁)
【特許文献11】
特許第2877052号公報(第1〜2頁)
【特許文献12】
特開平10−16103号(第2頁)
【特許文献13】
特開2000−141502号公報(第2頁)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
従来のスタンパブルシ−トは強化繊維の体積含有率が低いため、その材料固有の強度・弾性率が不足するという欠点を有する。繊維体積含有率を高くするには、粘度の高い熱可塑性樹脂を強化繊維間に隙間無く浸透(含浸)させる必要がある。含浸を良好にするには、樹脂の粘度を下げるか、樹脂に高圧を掛けるか、浸透させる距離を短くするために強化繊維を十分に開繊する必要がある。
樹脂の粘度は、分子量を下げるか、溶融温度を高くすることによって可能であるが、分子量を下げると強度の低下を招き、溶融温度を高くすると樹脂の劣化を招く。
【0016】
強化繊維一本一本の単糸レベルまで開繊を行うには限界があり、樹脂に高圧を掛けて含浸すると含浸装置の強化繊維の導入口/出口からの樹脂漏れが著しく発生するなど製造設備の問題から困難である。
よって、従来の手法では、単糸が2000本以下の細いガラス繊維束を用いて樹脂が繊維間に浸透する距離を短くすることにより、強化繊維間への樹脂の含浸性を確保していた。
【0017】
従来の技術で用いられている2000本以下という本数はガラス繊維束の標準の銘柄からも制限されている。例えば一般的に用いられるガラスロ−ビングはJIS R 3412にその番手(単位長さ当たりの重さ)が定められている。また単糸径も銘柄によりほぼ規格化されており、13、 17μmが一般的である。番手と単糸径が決まれば構成される単糸の本数は一意に決定される。
市販されているガラスロ−ビングは、例えば、575texは1600本、1150texは2000本、2310texは4000本のガラス単糸から構成されている。先に述べたように従来の技術は575texもしくは1150texを用いており、全て1本のガラスロ−ビングを用いた検討からなされているといえる。
【0018】
しかし、この様な1本のガラスロ−ビングを供給する方法では生産性が向上せず、コストが高くなると言う欠点を有する。つまり市販のガラス繊維束はある一定重量であるため、単位時間内に生産性を上げるには多数本供給を行うことが最も好ましい。単純に加工速度を同一とすればガラスロ−ビング1本供給を行うよりも2本供給することによって単位時間内の生産量は倍増する。
本発明は従来技術では不可能であったガラス繊維束の多数本供給を可能にし、具体的には2000本以上の強化繊維を供給し、更に樹脂の劣化を起こさず、生産性を向上させ、安価に高強度・高弾性率の圧縮成形用材料を提供しようとするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明は、第1に強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、繊維体積含有率が30〜60%、平均繊維長が20〜100mm、任意の断面において強化繊維が同一の繊維軸方向を有する最小単位に含まれるガラス繊維の本数が2000本以上10000本以下であること、第2に面内の弾性波の伝播速度が3000m/sec以上4500m/sec以下であり、その角度依存による標準偏差が100m/sec以下であること、第3に熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱した際に、強化繊維のスプリングバックを生じないことを特徴とする圧縮成形用材料を提供するものである。
【0020】
任意の断面における最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本から10000本であることが好ましい。この最小単位は後述のようにして求めることができる。この最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本未満であると同一断面積にしめる最小単位が多くなり、最小単位が重なり合う確率が増加し、繊維の直進性が失われ特に弾性率が低下する。10000本以上になると逆に最小単位が少なくなり、シ−トの物性に異方性が生じやすくなる。
【0021】
ガラス繊維の繊維体積含有率が30〜60%であることが好ましい。体積含有率が30%未満になると最小単位間に樹脂溜まりが生じ強度の低下を招く。また体積含有率が60%よりも大きくなると、強化繊維間への樹脂含浸が困難になり、ボイドが発生しやすくなる。このボイドの発生により強度が低下する。
【0022】
強化繊維の平均繊維長は20〜100mmであることが好ましい。20mm未満では、強化繊維全表面積で生じる接着力よりも強化繊維の強度の方が高くなり、強化繊維の強度を十分に利用できない。100mmより長くなると分散性が悪くなり、強化繊維に方向性が出やすくなるため好ましくない。また、製造条件によっては、繊維軸方向に湾曲が発生し、撒布・堆積させた後にこの湾曲が残留歪みとなりスプリングバックを生じやすくなる。この繊維長の選択は本発明による圧縮用成形材料を用いて成形する製品の形状、大きさにより十分に吟味される必要がある。一般的にはより好ましくは30mmから60mmである。
【0023】
圧縮成形用材料の面内における弾性波の伝播速度は後述のようにして求めることができるが、この伝播速度は3000m/sec以上4500m/sec以下であることが好ましい。3000m/secより遅くなると強度・弾性率に優れる圧縮成形材料を得ることができない。また、4500m/secより早い場合は、強度・弾性率は増加するが、3000m/secから4500m/secに見られるほどの強度・弾性率の増加は認められない。
【0024】
伝播速度の板内での角度依存に対する標準偏差が100m/sec以下であることが好ましい。弾性波の伝播速度のばらつきが小さいと言うことは、強化繊維が均一分散しており、含浸状態も良好であり、強化繊維に局所的な配向が見られないことを示す。強化繊維が均一分散しているとは、シ−ト内で強化繊維の体積含有率にばらつきがないことを示す。含浸状態が良好であるため、強度のばらつきも小さい。更に強化繊維の局所的な配向が見られないことから、強度・弾性率のばらつきの少ないシ−トを得ることができる。
【0025】
例えば、不連続繊維であっても強化繊維に方向性があると繊維軸方向への伝播速度は速くなり、繊維軸垂直方向への伝播速度は伝播速度の遅い樹脂の影響を受け、伝播速度は小さくなる。結果としてシ−トの物性に角度依存、位置依存性が発生し、不均一な力学的挙動を示す。
【0026】
最後に熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱した際に、強化繊維のスプリングバックを生じないことが好ましい。ここで言うスプリングバックとは、シ−トから試験片を切り出し、その上下面と周辺から強化繊維が髭状に飛び出すことを言う。スプリングバックは残留歪みの蓄積を示すため長期に渡り使用する際に開放され、成形品の反り、歪みの原因となる。さらにスタンピング成形を行う場合、髭状の繊維束が飛び出したところは、付着している樹脂が外部加熱により昇華し、強化繊維の露出を生じる。樹脂の付着が認められない強化繊維の露出は、成形品表面の品位の悪化や、破壊の起点となり強度の低下を招くため避けなければならない。
【0027】
本発明で用いる強化繊維はガラス繊維が最も優れている。圧縮成形用材料に用いる強化繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維などの有機繊維等がある。ガラス繊維は、強度・弾性率と屈曲性に富み、表面の処理剤の最適化が容易で樹脂との接着性を良好で安価であることから、目的に合致している。ガラス繊維にはEガラス(電気用)、Cガラス(耐食用)、Sガラス、Tガラス(高強度・高弾性率)等があるが、このいずれでも良い。
【0028】
強化繊維束表面には、樹脂との接着性を良好にするためにカップリング剤や、集束性を上げるためのサイジング剤(集束剤)が塗布されていることが望ましい。また樹脂の種類によってこれらの成分を変える事が望ましい。
【0029】
本発明の圧縮成形用材料に用いられる熱可塑性樹脂としては、ナイロン6、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン46に代表されるポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレ−トやポリブチレンテレフタレ−トなどのポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエ−テルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。しかしながら耐熱性が要求される分野においては、熱可塑性樹脂がポリエステル系樹脂であることが好ましい。特に耐熱性や機械的強度、クリ−プ特性、耐薬品性、耐油性が要求される分野では、ポリエチレンテレフタレ−トがより好ましい。また加水分解防止剤、熱劣化防止剤等の添加剤を目的に応じて添加することができる。
【0030】
更にコストや賦形時の流動性、耐水性、耐熱水性、耐化学薬品性が要求される分野には、熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。更に好ましくは耐溶剤性能に優れること、プロセスウィンド−が広い事から、ポリプロピレンであることが望ましい。ポリプロピレンは、その本来持つ特性から強化繊維との接着性に乏しいことが欠点として挙げられていたが、近年、酸変性することにより接着性が改良された。そのため本発明の繊維強化熱可塑性樹脂シ−トにポリプロピレンを用いる場合は、このような変性が成されていることが好ましい。摩耗性、耐油性、長期耐熱特性が必要な場合には、熱可塑性樹脂がポリアミド系樹脂であることが好ましい。吸湿が問題にならない分野では、更に好ましくはナイロン6であることが望ましい。この場合、例えば酸素雰囲気下で、加熱されると酸化劣化を起こすことがあるが、これを防止するために酸化劣化防止剤等を目的に応じて添加することができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
まず、本願で言う最小単位とは、任意の断面において強化繊維単糸が同一の繊維軸方向を有する単糸集合体、即ち含浸繊維束の断面を言う。
最小単位は次のようにして求めることができる。シ−トの任意の断面から幅50mm以上の試験片を採取して、観察を容易にするために断面をアルミナスラリ−もしくはダイヤモンドスラリ−を用いて研磨した後に、単糸一本一本が確認できる75倍以上の拡大率を有する光学顕微鏡により研磨した断面を観察する。
【0032】
繊維軸方向が同一、即ち個々の繊維断面の形状が円形であるか、楕円であるか、楕円の場合には長軸と短軸の比がほぼ同一である最小単位が明確に観察できる。この様な最小単位、即ち繊維束は互いに同一の方向を取らない、即ち無配向(ランダム)に存在するほど、互いの最小単位の境界が明確になる。
【0033】
繊維体積含有率が低くなればなるほど、最小単位周辺に樹脂過剰の部分が存在し、最小単位の境界が明確となる。更にこの最小単位の形状が円形に近くなるほど境界は明確となる。
【0034】
次に、弾性波の伝播速度の求め方について述べる。基本的には、シ−トに弾性波を生じさせるパルサ−と伝播した弾性波を検出するセンサ−の組み合わせにより求めることができる。この測定には市販のアコ−スティックエミッション測定装置(以下AE装置)を用いることができる。
【0035】
シ−トの中央にパルサ−を配置し、これより単発のパルスを発生する。連続的にパルスを発生して計測することも可能であるが、その周期により、シ−ト内で弾性波が反射し、互いに干渉するので単発のパルスであることが好ましい。これを等距離においたゲインの等しい複数のセンサ−により検出する。センサ−が1本しか準備できない場合は、複数回に分けて測定することも可能である。このパルサ−からのトリガ−信号とセンサ−からの波形をストレッジオシロ等により検出し、トリガ−と波形の立ち上がりの時間差とパルサ−−センサ−間の距離により弾性波の伝播速度を算出する。
【0036】
シ−トの含浸状態が悪いと、弾性波の減衰が大きくなり、波形の立ち上がりの検出が困難になる。よって減衰率の大きな材料の場合は、パルサ−の振幅を大きくして検出を容易にする必要がある。
【0037】
本発明の圧縮成形用材料を製造する方法としては、1.複数本の連続強化繊維束を引き揃え開繊して熱可塑性樹脂を含浸し、所定の繊維長を有する小片に切断する工程と、2.裁断された小片を金型へ無配向、均一に撒布・堆積させる工程、3.撒布・堆積した小片を加熱・溶融、冷却・固化して圧縮成形用材料に成形する工程が必須である。以下にこれらの工程からなる方法が一例としてあげられる。
はじめに、連続強化繊維束に熱可塑性樹脂を含浸する工程について述べる。
【0038】
a)強化繊維の供給:強化繊維の供給は、ロ−ビングの内周から引き出す場合と、外周から繰り出して供給する場合が考えられる。強化繊維の供給で最も重要な技術のポイントは、無撚で供給することである。撚りが入ると強化繊維が開繊しないため、熱可塑性樹脂を含浸することが困難になる。
【0039】
ロ−ビングの内周から強化繊維を引き出して供給する場合(内取り解舒)は、周知のように解舒撚りが発生する。例えば、内径7インチ、高さ300mm、巻き係数4の場合、その最内周では1回/154mmの撚りが発生する。この様な撚りは工程の中に蓄積されるため、好ましくない。この撚りの発生は、解舒に同期させてロ−ビングを回転することにより、防ぐことができる。ロ−ビングには繊度の個体差が存在するため、完全に同期させることは困難である。ロ−ビングの回転数10回転に対し、撚り1回程度であれば、実用上問題はない。
【0040】
外周から繰り出して供給する場合(横取り解舒)は、例えば、クリルスタンドや、市販の解舒機を用いることができる。この場合でも、耳部(ロ−ビングの側面)には耳撚りと呼ばれる撚りが入ることがある。この撚りは、強化繊維を紡糸して巻き上げるときに入るため、これを防止することは不可能である。よって外側から繰り出して供給するときには後工程での細心の注意が必要である。
【0041】
更に外側から繰り出して供給する場合は、ロ−ビングからの解舒点に負荷がかかる。クリルスタンドを用いて解除する場合には、ロ−ビングが回転する回転モ−メントを強化繊維の引っ張り力によって与えなければならない。この張力により、解舒点の摩擦力が高くなり毛羽立ちが生じることがある。よってクリルスタンドにはベアリングを入れるなどして回転モ−メントを減少する対策が必要不可欠である。
【0042】
市販の解舒機を用いる場合でも、巻き上げる方向と解除する方向が逆になるため、解舒点において強化繊維束間で摩擦を生じる。この為、毛羽が立ちやすい等の不具合が起こる場合がある。この毛羽などは、紡糸のワインダ−を解舒機に改造してトラバ−スを通し、強化繊維に無理がないように解除することにより防止することができる。
【0043】
b)開繊工程:強化繊維間に樹脂含浸が容易になるようにするために集束されている強化繊維束を開繊する必要がある。開繊方法には周知のように、1)金属又はセラミックの棒に強化繊維を押しつけて開繊する方法(バ−開繊)、2)金属又はセラミックのロ−ラ−に沿わせて開繊する方法(ロ−ラ−開繊)、3)強化繊維を弛ませて、繊維軸に対して垂直方向から空気を吹き付けるもしくは吸引することにより強化繊維を拡幅し開繊する方法(空気開繊)などがある。
【0044】
1)の棒または2)のロ−ラ−の材質は強化繊維の種類に応じて十分に吟味する必要がある。硬すぎると、強化繊維表面が損傷して工程通過中に強化繊維が破断したり、必要な強度が得られないなどの不具合が生じる。柔らかすぎると、強化繊維の張力に耐えきれず、変形するなどの不具合が生じる。種々の検討の結果、ステンレスや、真鍮であればほぼ問題はない。
【0045】
強化繊維束を開繊する場合、これを加熱雰囲気下で行うと開繊性が良好になる。強化繊維束には樹脂との接着性を良好にすると共に、ハンドリングを良くするために、サイジング剤(集束剤)と呼ばれる糊が付着している。このサイジング剤の融点以上に加熱することにより、結合力が弱まり開繊性が向上する。サイジング剤の種類にもよるが、これの融点から融点+100℃に加熱することが好ましい。また、軟化したサイジング剤が、強化繊維束と開繊を行う棒/ロ−ラ−との間で潤滑剤の役割を果たす効果も得ることができる。
【0046】
強化繊維束を加熱する方法としては、開繊装置を直接加熱する方法と、輻射熱を利用する方法などがある。直接加熱する場合は、棒の中にヒ−タ−を鋳込む方法を採ることができる。ロ−ラ−の場合は、ロ−ラ−内を中空にして熱媒を通す方法や、ロ−ラ−の内側にヒ−タ−を挿入しておくなどの方法を採ることができる。輻射熱を利用する場合は、遠赤外ヒ−タ−などを設置して輻射熱を利用する方法がある。熱効率を考慮すると直接加熱の方が好ましい。
【0047】
開繊装置へ供給するテンションも非常に重要である。テンションが低いと、強化繊維を押し広げる駆動力が小さくなり、開繊性が悪化する。逆にテンションが高すぎると、棒やロ−ラ−に擦らせる場合に摩擦力が大きくなり、強化繊維束が損傷、最悪の場合破断することがある。通常は、強化繊維の破断強度に対して0.3%〜2%程度であればよい。例えばE−ガラス繊維の場合、その強度は0.0245N/dtexとされており、7.35E−5〜4.90E−4N/dtexの供給テンションが必要となる。
【0048】
供給テンションを与える方法としては、ダンサ−ロ−ラ−、フリクションテンサ−、磁気式テンサ−などがある。強化繊維束に損傷を与えなければ、いずれの場合でも良い。
【0049】
例えば、サイジング剤の融点に対し100℃に加熱した棒の開繊装置を用い、供給テンションを強化繊維の破断強度の1%とした場合、開繊前の強化繊維束の幅に対うる開繊後の繊維束の幅(開繊倍率)は5倍程度にすることができる。即ち厚みは1/5になり、含浸は容易となる。含浸を考慮した場合、開繊倍率は2倍から10倍であることが好ましい。
【0050】
強化繊維間に樹脂を含浸する方法としては、被覆含浸、溶融含浸などが考えられる。被覆含浸は溶融した樹脂を充填した樹脂浴に強化繊維を供給し、ダイスを通して引き抜く方法である。この場合、樹脂は強化繊維束の周辺部のみに付着している。繊維間への浸透は、後のシ−トにするプレス工程などで実現できる。被覆含浸は、樹脂浴中を通してダイスで引き抜く構造であるため、強化繊維間に含まれる空気の抜け道が存在しない為、含浸を良好にするのは困難である。
【0051】
溶融含浸は、キッスロ−ル、曲面形状のダイ、樹脂浴、ダイス、ニップロ−ラ−などの組み合わせにより、強化繊維間に樹脂を完全に浸透させる方法である。
【0052】
キッスロ−ルや曲面形状のダイは、強化繊維束の片側から樹脂を圧入するため、強化繊維間の空気が抜けやすく含浸性に優れるという特徴を有する。キッスロ−ルと曲面形状のダイを比較するとキッスロ−ルは、回転部分を含むため、その設備構造が複雑になりやすい。そして、強化繊維間への樹脂の浸透圧は、強化繊維のテンションのみによりほぼ決定されるため、樹脂を圧入し含浸を促進させるのは限界がある。その反面、曲面状のダイは曲面の一部分にスリットを有するだけであるので、構造が簡略化できる。またスリットから樹脂を吐出するため、吐出圧を制御することが可能で、キッスロ−ルよりも高圧で強化繊維間に樹脂を圧入し含浸を促進することができるため好ましい。
【0053】
曲面形状におけるスリットの形状は開繊した強化繊維束の幅に対し同等かやや狭い幅が好ましく、その高さは0.1〜0.3mmが好ましい。0.1mm以下は加工方法が無く、事実上困難である。0.3mmよりも高くなると、樹脂圧が低下して好ましくない。スリットの樹脂圧はスリット背圧で100KPaから2MPa程度が好ましい。
【0054】
強化繊維束は曲面形状のダイに接する前に含浸する樹脂の融点よりも高い温度に予熱されていることが好ましい。樹脂の融点よりも低い温度の強化繊維束が樹脂に接すると、強化繊維表面で樹脂が冷却され固化することがあり、強化繊維間への樹脂の浸透を促進することができなくなる。よって樹脂の融点から融点+100℃の間に予熱されていることが好ましい。
【0055】
強化繊維束は曲面形状のダイへ複数本供給する事が好ましい。前述のように、強化繊維の撚りはいかなる方法であっても完全に避けることはできない。撚りが入ると開繊性が悪くなり、曲面形状のダイにおいて強化繊維の幅が狭くなり、スリットからの樹脂漏れが発生する。樹脂漏れが発生すると強化繊維含有率にばらつきが生じ、好ましくない。多数本の強化繊維束を供給すると、撚りの発生による曲面形状のダイからの樹脂漏れを防止することができる。これは開繊された強化繊維束を重ね合わせることにより、個々の幅のばらつきを吸収することが可能になるためである。
【0056】
供給の本数は例えば575texのロ−ビングを用いる場合は、2本から8本、1150texであれば2本から6本、2310texであれば、2本から3本程度が好ましい。より好ましくは、ガラス繊維単糸本数が2000本から8000本になるように供給することである。
【0057】
曲面形状のダイで含浸した後に樹脂浴を通すことが好ましい。この樹脂浴で僅かに含浸が促進される。また、樹脂浴の出口にダイスを取り付け強化繊維束への樹脂付着量を調整することができるが、曲面形状のダイと樹脂浴、ダイスを用いることでこの付着量の調整が容易となる。
【0058】
強化繊維への樹脂付着量の調整を容易にするためにダイスを用いることが好ましい。ダイスの形状は特に規定しないが、ロッド状にする場合は、円形、正方形などが考えられる。より強化繊維間への樹脂の浸透が必要な場合は、ダイス内での樹脂の剪断応力が増加するように扁平化することが好ましい。この場合、楕円、もしくは幅の広いスリット形状が選択できる。
【0059】
ダイスの平行部の長さは、樹脂の粘度により異なるが、0.1mm以上、10mm以下であることが好ましい。0.1mm未満では強化繊維間への樹脂の浸透性に劣る。10mmより大きくなるとダイス壁面と樹脂の剪断粘度による引き抜き抵抗が強化繊維の破断強度よりも大きくなることがあり、強化繊維が切断され、操業が不可能である。
【0060】
ダイス直前での樹脂圧は100KPaから50MPaとする事が好ましい。この樹脂圧は、ダイスの形状、ダイスの平行部の長さ、樹脂の粘度により変動するので、幅の広いスリットを用いた場合は20MPaから50MPaとするのがより好ましい。
【0061】
この様なダイスの材質は、腐食を考慮してステンレス鋼や、硬度が必要な場合は合金工具鋼を用いることができる。必要に応じてこれらに焼き入れを行い、表面硬度をさらに高めることも有効である。また、耐摩耗性を重視するときは、タングステンカ−バイドなどのセラミックを溶射、焼結することによりさらに向上する。
【0062】
ダイスから引き抜いた樹脂が付着した強化繊維束(以下、含浸繊維束という)をニップロ−ラにより圧縮し、さらに強化繊維間への樹脂の浸透を良好にすることができる。ニップロ−ラ−はその設置位置が重要である。ダイスからニップロ−ラ−の距離が遠く、引き抜いた含浸繊維束の温度が低下するとニップロ−ラ−で押しつぶしても効果は見られない。また逆に距離が近く、含浸繊維束の温度が高いと樹脂の粘着力によって含浸繊維束がニップロ−ラ−に巻き付いて操業が困難である。明確な理由は不明であるが、ニップロ−ラ−の温度は70℃以下、ニップロ−ラ−に接する時の含浸繊維束の表面温度は樹脂の融点−20℃から融点+50℃が好ましい。ニップロ−ラ−の温度が70℃より高くなると含浸繊維束のニップロ−ラ−への巻き付きが増加する。含浸繊維束の表面温度が融点−20℃より低くなると、ニップロ−ラ−にかかる圧力を上げても含浸繊維束の形状は変化しない。融点+50℃を越えると急激に含浸繊維束のニップロ−ラ−への巻き付きが増加する。
【0063】
この様に種々の工程を経て含浸繊維束を得ることができるが、圧縮成形用材料において、ボイドがなく強化繊維間に樹脂が浸透して、良好な含浸状態が得られるならば、被覆含浸、溶融含浸いずれでも良い。
【0064】
得られた含浸繊維束は、イ−ストマンカッタ−や、ギロチンカッタ−、ペレタイザ−等の切断装置を用いて所定の長さに切断することができる。イ−ストマンカッタ−は、ドラムに外側に向けて刃が付いており、巻き付けた含浸繊維束の張力により切断されるため、張力の付与が重要である。ギロチンカッタ−は固定刃と移動刃の剪断で切断するため、このクリアランスが重要である。クリアランスを広く採ると切断不良が生じ、狭くすると移動刃が固定刃に擦って摩耗し、刃の耐久性が短くなる。含浸繊維束の切断状況を見ながらクリアランスを詰める必要がある。
【0065】
以上から得られた含浸繊維束を切断した小片を、金型へ無配向、均一に撒布・体積させる工程に投入する。小片などを撒布・堆積させる方法としては、例えば連続的に生産する場合は前記工程の長手方向の裁断した小片を直接高い位置から自然落下させ、ベルトコンベア−上に堆積させる方法や、落下経路にエア−を吹き込むか、もしくは邪魔板を取り付ける方法などが考えられる。しかしながら、落下経路にエア−を吹き込むと、含浸繊維束の小片がエア−により落下経路で互いにもしくは壁面に衝突して含浸繊維束小片が避けたり、含浸繊維束の樹脂含浸度が低いと強化繊維が抜け落ちる可能性がある。特に抜け落ちた強化繊維は風綿状の毛玉になり圧縮成形用材料の物性を悪化させたり、空中を飛散して作業環境を著しく悪化させる。
【0066】
金型へ無配向、均一に撒布・堆積させる方法としては、高所から振り落とす事が最も簡便で確実な方法である。しかしながら、無作為に撒布するだけでは、所望の圧縮成形用材料を得ることはできない。
【0067】
均一に撒布するには、振り落とす含浸繊維束小片を時間当たり一定量供給する必要がある。一定供給が可能な方法としては、含浸繊維束をイン・ラインで切断しそのまま振り落とす方法、ベルトコンベア−とかき上げ装置を用いて含浸繊維束小片の嵩密度を揃えて供給する方法などがある。
【0068】
時間当たりに振り落とす量は非常に重要である。金型に直接投入してバッチ成形を行う場合は、単位時間、単位面積当たりに振り落とす重量は0.020〜0.30Kg/(sec・m2)程度が好ましい。含浸繊維束小片を単位時間に振り落とす量が少ない、即ち0.020Kg/(sec・m2)より少なくなると工程速度が遅くなり生産性が悪くなる。逆に振り落とす量が多くなる、即ち0.30Kg/(sec・m2)より多くなると振り落とされた含浸繊維束小片が圧縮成形用材料の面外方向に配向してスプリングバックの原因となるため好ましくない。
【0069】
撒布・堆積させた含浸繊維束小片を加熱・溶融、冷却・固化する方法には、次のような方法がある。例えば、ベルトプレスにより加熱・溶融、冷却・固化を連続して行う方法や、プレスを用いるバッチ方式等を挙げることができる。
【0070】
プレスを用いたバッチ方式はベルトプレスによる方法よりも設備が安価であるため一般的に用いられている。熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と異なり、樹脂を加熱するだけではなく、冷却する事が必須である。本来、含浸繊維束小片のみを加熱・冷却することが理想であるが、技術的に困難であるため、従来は、1台のプレスを用い、金型に通す熱媒・冷媒を切り替えることにより圧力下で加熱・溶融、冷却・固化が行われてきた。 しかし、この方法では金型をも加熱・冷却する必要があるため、エネルギ−の損失が大きい。
【0071】
エネルギ−損失の回避は、加熱と冷却を分けて行うことにより実現することができる。つまり加熱用のプレスと冷却用のプレスの2台を用意し、撒布・堆積した含浸繊維束小片を加熱用から冷却用へ移動することにより、常に金型を一定温度に保つことができ、理想的な状態を得ることができる。
【0072】
ここで問題となるのは、加熱・溶融状態にある含浸繊維束小片は餅状であり、これを移動することが困難であることである。本発明では、まず、含浸繊維束小片をアルミの箱に撒布・堆積させ、蓋をして密封する。次いでアルミ箱ごと加熱プレスに投入し、圧力を掛けながら含浸繊維束小片を溶融して相互の間に含まれる空気を抜く。そしてアルミ箱ごと冷却プレスに移動して、加圧下で冷却・固化することにより溶融した含浸繊維束小片を移動することに成功した。
【0073】
ここで用いるアルミ箔は離型処理がなされていることが望ましい。離型剤はシリコン系など一般に市販されている物で十分である。
【0074】
プレス成形を行う場合、重要なポイントは、金型温度、圧力、保持時間、圧縮速度の4点である。加熱プレスの金型温度は、樹脂の融点から融点+70℃の範囲にあることが好ましい。樹脂の融点より低くても高圧下であれば、含浸繊維束小片相互の結合を得ることもできるが、融点以上にすることで樹脂が溶融状態となり、含浸繊維束小片間に存在する空気を排出する駆動力を得ることができる。融点+70℃を越えると、保持時間にもよるが、樹脂の劣化が進み好ましくない。
【0075】
圧力は撒布・堆積させた含浸繊維束小片間に含まれる空気を排出する駆動力になるため、重要である。含浸繊維束小片における樹脂含浸が良好であれば低圧で成形することができる。含浸が不良であれば、高圧が必要となる。前述のアルミ箱に詰めアルミ箱ごと成形すれば、金型のクリアランスから樹脂が流出することもなく高い圧力を掛けることができる。加熱時の圧力を300KPaから5MPaにする事が好ましい。
【0076】
加熱保持時間は、30秒以上、20分以下であることが好ましい。加熱する量にもよるが、30秒以下では含浸繊維束小片の樹脂が十分に溶融しないため、シ−トの含浸が悪くなる。20分以上になると金型に接している樹脂が劣化し、例えばポリプロピレンであれば黄変したり、ポリアミド6なら着色したりして品位が劣るため好ましくない。生産性を鑑み、より好ましくは1分以上、10分以下である。
【0077】
加熱プレスによる圧縮速度は1mm/minから50mm/minが好ましい。圧縮速度が速いと含浸繊維束小片の樹脂が溶融する前にこれらが押しつぶされるため、強化繊維に歪みが蓄積されやすく、結果としてスプリングバックを生じる。1mm/minよりも遅くなると加熱・溶融した樹脂が含浸繊維束小片間に含まれる空気によって酸化劣化を生じることがあるため好ましくない。
【0078】
冷却プレスの温度は融点より低い温度であれば、特に問題はないが、好ましくは室温から150℃が好ましい。150℃より高くなると、金型内で固化していても取り出した後、室温との温度差が大きいため、反りなどを発生することがある。室温より低いと、別途金型冷却用に冷媒が必要となり、設備が大掛かりになるため好ましくない。より好ましくは50℃から120℃である。
【0079】
溶融時に十分に圧縮され、空気が抜けた状態であれば、冷却時の圧力は特に規定しないが、装置などの能力により300KPaから5MPaであればよい。
冷却時間も特に規定しないが、生産性との兼ね合いから、加熱時間よりも短時間であれば特に問題ない。
【0080】
冷却プレスによる圧縮速度は速ければ早いほうが好ましい。溶融状態にある樹脂が融点よりも低い温度の金型に接すると固化が開始する。金型が閉まるのが遅いと、固化が進み、搬送中に生じるシ−トの撓みなどが保持されるため好ましくない。圧縮速度は10mm/min以上100mm/minが好ましい。またこの範囲であれば、平面性に優れた圧縮成形材料を得ることができる。
【0081】
アルミ箱に詰めている場合、四辺を切断するなどして圧縮成形用材料を取り出す必要がある。
【0082】
以上のようにして得られた圧縮成形用材料は含浸性に優れ、面内に異方性が無く、スプリングバックを生じにくい特徴を持つ。
【0083】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお各評価については以下の通りに行った。曲げ弾性率、曲げ強度はJIS K 7055に従い測定を行った。強化繊維の体積含有率は、まず、JIS K 7052に準じ、厚さ3.5mm、500mm角の圧縮成形材料の四隅と中央の5点から切り出した2g以上の試験片を電子天秤を使用して1mgまで正確に測定し、これを電気炉中で雰囲気温度625℃で、時間加熱した。炭素質が完全になくなってからデシケ−タに移して室温になるまで冷却し、焼成後の質量を1mgまで測定した。焼成前後の質量からガラス繊維の重量含有率を算出した。この重量含有率と強化繊維、樹脂の密度から複合則により体積含有率を算出した。なお、JIS K 7053に従い、圧縮成形用材料の空洞率を測定したところ、すべての材料で1%以下であった。
【0084】
(実験例1)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を横取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を10mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が30%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅25mm、厚さ0.12mmのテ−プ状樹脂含浸繊維束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長25mmの短冊状の小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.027Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0085】
(実験例2)
繊維体積含有率が40%であること並びに撒布速度が0.030Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅22mm、厚さ0.10mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0086】
(実験例3)
繊維体積含有率が45%並びに撒布速度が0.032Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.10mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0087】
(実験例4)
繊維体積含有率が50%並びに撒布速度が0.033Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.09mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0088】
(実験例5)
繊維体積含有率が60%並びに撒布速度が0.037Kg/(sec・m2)であること以外は実験例1同様の方法で、幅20mm、厚さ0.07mm、繊維長25mmである含浸繊維束小片を撒布・堆積させた後に加熱・溶融、冷却・固化させて厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0089】
(実験例6)
繊維体積含有率が70%となるようにダイスリットの調整を行い含浸繊維束の製造を試みたが、ダイスリットで含浸繊維束が擦られて破断し、含浸繊維束を得ることができなかった。
【0090】
(実験例7)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を内取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅20mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長10mmの小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.10Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0091】
(実験例8)
含浸繊維束小片の繊維長が35mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0092】
(実験例9)
含浸繊維束小片の繊維長が50mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表1に示す。
【0093】
(実験例10)
含浸繊維束小片の繊維長が100mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束小片は僅かに繊維軸方向に湾曲が認められ、撒布・堆積後の嵩密度が大きくなる傾向が見られた。その評価結果を表1に示す。
【0094】
(実験例11)
含浸繊維束小片の繊維長が150mmであること以外は実験例7同様の方法で、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束小片は繊維軸方向に湾曲しており、撒布・堆積後の嵩密度が大きく著しく作業性が悪化した。その評価結果を表2に示す。
【0095】
(実験例12)
日本電気硝子社製Eガラス繊維束(ER−575、繊維本数1600本)1本を外取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これに株式会社グランドポリマー社製ポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅6mm、厚さ0.08mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。この場合、解舒時の耳部で発生する耳撚りの影響を受け、開繊したガラス繊維束幅に斑が生じ、ダイスリットで樹脂漏れを発生し、操業性が悪化した。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長35mmの小片を得た。小片をベルトコンベアとブレードでベルトコンベア上の目付を揃え、1mの高さから離型性を向上させるために敦賀フィルム株式会社製ポリプロピレンフィルム(厚さ50μm)を予め投入しておいた520mm四方の離型処理されたアルミ箱に0.20Kg/(sec・m2)振り落とし、均一に撒布・堆積させた後、蓋をして、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。ポリプロピレンフィルムの効果によりアルミ箔を除去するときの離型性は良好であった。その評価結果を表2に示す。
【0096】
(実験例13)
供給するEガラス繊維束がER−1150、繊維本数2000本、1本であること以外は実験例12同様の方法で、幅10mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この場合も実験例12の場合と同様にダイスリットで樹脂漏れを発生したが、実験例12との相対比較を行うと繊維本数が多いだけ幾分改善された。その評価結果を表2に示す。
【0097】
(実験例14)
供給するEガラス繊維束がER−1150、4本であること以外は実験例13同様の方法で、幅35mm、厚さ0.10mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に示す。
【0098】
(実験例15)
供給するEガラス繊維束がER−575、6本であること以外は実験例13同様の方法で、幅30mm、厚さ0.090mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に示す。
【0099】
(実験例16)
供給するEガラス繊維束がER−1150、6本であること以外は実験例13同様の方法で、幅50mm、厚さ0.11mmのテ−プ状樹脂含浸束を得、厚さ3.5mmの圧縮成形用材料を得た。この含浸繊維束は幅が大きく、搬送、撒布時に裂けることがあり、裂けた破面からガラス短繊維が脱落し、作業環境を悪化させた。評価結果を表2に示す。
【0100】
(実験例17)
市販の粉末含浸のスタンパブルシートを用いて検討を行った。評価結果を表2に示す。
【0101】
(実験例18)
市販の抄紙法のスタンパブルシートを用いて検討を行った。評価結果を表2に示す。
【0102】
(実験例19)
Eガラス繊維束(ER−1150、繊維本数2000本)2本を内取り解舒して真鍮製丸棒(φ10mm)7本に接触させ、繊維束を20mmに拡幅した。これにポリプロピレン(マレイン酸変性量0.1%)をR=30mmの曲面を有するダイのスリットから、ガラス繊維束と接触角90°を得るように供給した。その後、樹脂浴を通過させた後に矩形のダイスを通して樹脂付着量を繊維体積含有率が50%になるように揃えた後、賦形ロ−ラ−を通して幅20mm、厚さ0.09mmのテ−プ状樹脂含浸束を得た。これをイ−ストマンカッタ−を用いて切断し、繊維長35mmの小片を得た。この含浸繊維束小片を全て繊維軸方向が同方向となるように手並べでアルミ箔の箱に敷き詰め、蓋をした後、220℃に加熱された金型に投入し、圧力500KPaで5分間加熱・溶融した。その後、100℃に加熱された金型に移し、圧力2MPaで1分間、冷却・固化しアルミを取り除いて厚み3.5mmの圧縮成形用材料を得た。その評価結果を表2に、伝播速度の角度依存性を図2に示す。この圧縮成形材料は強化繊維に方向性があるため、曲げ物性に異方性が生じた。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
【発明の効果】
本発明により生産性に優れ且つ強度・弾性率が高く異方性のない、成形性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂からなる圧縮成形用材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例における伝播速度の角度依存性である。
Claims (4)
- 強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、繊維体積含有率が30〜60%、平均繊維長が20〜100mm、任意の断面において強化繊維が同一の繊維軸方向を有する最小単位に含まれる強化繊維の本数が2000本以上10000本以下であることを特徴とする圧縮成形用材料。
- 強化繊維と熱可塑性樹脂により構成される繊維強化熱可塑性樹脂複合材料であって、面内の弾性波の伝播速度が3000m/sec以上4500m/sec以下であり、その角度依存による標準偏差が100m/sec以下であることを特徴とする請求項1記載の圧縮成形用材料。
- 熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度に加熱した際に、強化繊維のスプリングバックを生じないことを特徴とする請求項1または2記載の圧縮成形用材料。
- 強化繊維がガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の圧縮成形用材料
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