JP2004141158A - プライマーの伸長反応検出方法、塩基種判別方法、塩基種判別装置、ピロリン酸の検出装置、核酸の検出方法および試料溶液導入チップ - Google Patents

プライマーの伸長反応検出方法、塩基種判別方法、塩基種判別装置、ピロリン酸の検出装置、核酸の検出方法および試料溶液導入チップ Download PDF

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Abstract

【課題】核酸の塩基配列中の塩基種を判別する簡便な技術を提供する。
【解決手段】核酸と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、前記試料溶液を前記プライマーの伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、および工程(e)の検出結果に基づいて前記核酸の塩基配列中の塩基種を判別する工程(f)を含む。
【選択図】図5

Description

 本発明は、プライマーの伸長反応を検出する伸長反応検出方法、核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別方法、核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別装置、ピロリン酸の検出装置、核酸の検出方法および試料溶液導入チップに関する。
 (第1の従来技術)
 特定の塩基配列を有する核酸の有無を調べる技術は非常に重要な技術である。例えば、遺伝病の診断、細菌およびウイルス等による食品の汚染検査、細菌およびウイルス等の人体への感染検査などにおいて必須の技術である。
 重症複合型免疫不全症、家族性高コレステロール血症等の遺伝病は、特定の遺伝子の欠損が原因で起こることが明らかになっている。このため、上記遺伝病の原因となる特定の塩基配列を有する遺伝子の有無を調べることによって、遺伝病の有無を診断できる。
 近年、大腸菌O157等による食品汚染が社会的問題となっている。このような細菌およびウイルス等による食品の汚染検査は、汚染が疑われる細菌あるいはウイルスに特有のDNAまたはRNAの塩基配列の有無を解析することによって、汚染の有無を判断することができる。人体への感染検査に関しても同様である。
 通常、上述のような特定の核酸の塩基配列の検出技術では、試料である特定の塩基配列を含む核酸が微量である場合が多いので、検出感度が非常に高いことが求められる。現在、最も一般的に用いられている検出技術は、標的塩基配列を有する核酸の増幅法を利用する技術である。例えば、PCR法、ICAN法、LCR法、SDA法、LAMP法等が挙げられる。これらの核酸の増幅法によって、試料中の標的塩基配列を有する核酸を大量に増幅し、標的塩基配列を有する核酸を検出する。上記の増幅法は、容易に標的塩基配列を有する核酸を増幅できる。しかし、増幅された標的塩基配列を有する核酸を検出する方法には幾つか不具合がある。
 増幅された標的塩基配列を有する核酸を検出するための最も汎用的な方法の1つは、増幅された標的塩基配列を有する核酸を電気泳動によって分離した後、臭化エチジウム等の蛍光インターカレート剤を用いる方法である。この方法は簡便である一方で、蛍光インターカレート剤が発ガン物質であるため、取り扱いには非常に注意を要する。
 また他の方法としてはドットブロット法が挙げられる。ドットブロット法は、まず増幅された標的塩基配列を有する二本鎖のDNAまたはRNAを、熱処理によって一本鎖のDNAまたはRNAに変性させ、ナイロン等のメンブレンに固定する。続いて、放射性標識あるいは蛍光標識がなされ、かつ上記一本鎖のDNAまたはRNAに特異的に反応する核酸プローブをメンブレン上でハイブリダイズさせる。最後に、放射性標識あるいは蛍光標識の検出を行なうことによって増幅された標的塩基配列を有する二本鎖のDNAまたはRNAの検出を行なう。しかしこの方法では、放射性標識された核酸プローブを用いる場合、通常1〜5日程度の日数がかかる。また、蛍光標識された核酸プローブを用いる場合でも数時間〜十数時間を要する。さらに、増幅された標的塩基配列を有する核酸のそれぞれに対して、標識された核酸プローブを調製する必要があるため、非常に煩雑である。
 PCR法は、通常DNAポリメラーゼを用いてプライマーからのDNA伸長反応(以下、プライマー伸長反応と称する)を繰り返しながら標的塩基配列を有する核酸を増幅する技術である。プライマー伸長反応を用いた応用は、標的塩基配列を有する核酸の検出に限られない。
 近年では、いわゆるSNP(Single Nucleotide Polymorphism:一塩基多型)と呼ばれる塩基配列中のわずか1塩基対の多型が糖尿病や高血圧等の疾患に対するなりやすさや、あるいは薬の効きやすさ等に影響を与えていることが明らかになってきている。従って、各個人のSNPパターンを解析する、いわゆるSNPタイピング技術が非常に重要視されている。また、ゲノムDNAにおける塩基配列中のたった1塩基対の置換が重篤な疾病の原因となる例が知られている。従って、このような1塩基対の置換の有無を解析することもまた非常に重要になってきている。SNPタイピング技術は、このような1塩基対の置換の有無の判別においても有効な技術である。
 現在、様々なSNPタイピング技術が開発あるいは既に実施されている。それらの技術のうち、最も簡便な技術の1つでは、プライマー伸長反応を利用する。この技術では、プライマー伸長反応が起こるか否かを判定することによって、SNPタイピングを行なう。
 現在、プライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術は、大きく二種類に分けられる。一方は、4種類のdNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を用いるプライマー伸長反応を利用する方法であり、もう一方は、一種類のdNTPあるいはddNTPのみを用いるプライマー伸長反応を利用する方法である。
 4種類のdNTPを用いてプライマー伸長反応を利用する方法を図19および図20を参照しながら説明する。この方法では、標的DNAのSNP部位に隣接する塩基配列に対して相補的な塩基配列を有し、標的DNAのSNP部位の塩基種に応じて伸長反応の進行に差を生じさせるプライマー(以下、タイピングプライマーと称する)を用いる。具体的には、以下に説明する工程を実施する。
 まず、図19(a)に示す工程で、SNP部位S1を有する標的のDNA1を含む試料溶液を調製する。同様に、図20(a)に示す工程で、SNP部位S2を有する標的のDNA2を含む試料溶液を調製する。
 次に、図19(b)に示す工程で、DNA1を熱変性などによって一本鎖DNA3および4とする。同様に、図20(b)に示す工程で、DNA2を熱変性などによって一本鎖DNA5および6とする。
 次に、図19(c)に示す工程で、一本鎖DNA3および4を含む試料溶液に、タイピングプライマー7、DNAポリメラーゼ8および4種類のdNTPを添加する。同様に、図20(c)に示す工程で、一本鎖DNA5および6を含む試料溶液に、タイピングプライマー7、DNAポリメラーゼ8および4種類のdNTPを添加する。ここで、タイピングプライマー7は、その3’末端の塩基(ここでは、チミン(以下Tと記す))以外は、一本鎖DNA4および6のSNP部位よりも3’末端側の領域と完全にハイブリダイズするように設計されている。
 図19(c)に示す工程で、SNP部位S1がアデニン(以下Aと記す)である一本鎖DNA4にタイピングプライマー7は完全にハイブリダイズする。このため、図19(d)に示す工程で、プライマー伸長反応が起こり、DNAポリメラーゼ8によってdNTPが消費される。
 一方、図20(c)に示す工程で、SNP部位S2がグアニン(以下Gと記す)である一本鎖DNA6にタイピングプライマー7の3’末端の塩基(T)のみハイブリダイズできない。このため、図20(d)に示す工程で、正常なプライマー伸長反応が起こりにくい。従って、dNTPはほとんど消費されない。
 従って、これらの伸長反応の進行の差を解析することによってSNP部位の塩基の判別ができる。このように、プライマー伸長反応が起こるか否かによってSNP部位の塩基の判別を行なう。この方法では、SNP部位の塩基が3種類あるいは4種類の可能性がある場合にも、それぞれに対応したタイピングプライマーを用意すれば同様に解析できる。
 タイピングプライマーに関しては、上述のような3’末端塩基を、DNAのSNP部位の塩基と対応させたプライマー以外のものも開発されている。例えば、東洋紡績(株)によって開発されたASP(Allele Specific Primer)が挙げられる(非特許文献1を参照)。ASPは、その3’末端から2番目の塩基がSNP部位に対応しており、さらにその3’末端から3番目の塩基が標的の塩基に対して必ず非相補的であるように設計されているプライマーである。
 ASPを、校正活性の強いα型DNAポリメラーゼとともに用いることによって、上述の図19および図20に示した方法よりも正確なSNP部位の塩基種の判別が可能となると報告されている。すなわち、SNP部位がASPの3’末端から2番目の塩基と相補的である場合には良好に伸長反応が起き、相補的でない場合は正常に伸長反応が起きない。また、伸長反応が起きた場合と起きない場合とにおける伸長反応の進行の差が、上記図19および図20に示した方法に比べて大きいと報告されている。
 次に、1種類のdNTP(またはddNTP)を用いてプライマー伸長反応を利用する方法を図21および図22を参照しながら説明する。この方法では、標的の一本鎖DNAにおいてSNP部位に隣接した領域とハイブリダイズするように設計されたプライマーを用いて伸長反応を行なう。すなわちプライマー配列中にSNP部位に対応する部位は存在しない。具体的には、以下に説明する工程を実施する。
 まず、図21(a)に示す工程で、SNP部位S1を有する標的のDNA1を含む試料溶液を調製する。同様に、図22(a)に示す工程で、SNP部位S2を有する標的のDNA2を含む試料溶液を調製する。
 次に、図21(b)に示す工程で、DNA1を熱変性などによって一本鎖DNA3および4にする。同様に、図22(b)に示す工程で、DNA2を熱変性などによって一本鎖DNA5および6にする。
 次に、図21(c)に示す工程で、一本鎖DNA3および4を含む試料溶液に、プライマー9、DNAポリメラーゼ8およびdCTP(またはddCTP)を添加する。同様に、図22(c)に示す工程で、一本鎖DNA5および6を含む試料溶液に、プライマー9、DNAポリメラーゼ8およびdCTP(またはddCTP)を添加する。ここで、プライマー9は、一本鎖DNA4および6のSNP部位よりも3’末端側に隣接する領域と完全にハイブリダイズするように設計されている。従って、一本鎖DNA4,6にプライマー9は完全にハイブリダイズする。
 次に、図21(d)に示す工程で、一本鎖DNA4のSNP部位S1がAであり、dCTP(またはddCTP)しか供給されていないので、プライマー伸長反応は起こらない。このため、DNAポリメラーゼ8によってdCTP(またはddCTP)がほとんど消費されない。
 一方、図22(d)に示す工程で、一本鎖DNA6のSNP部位S2がGであるため、dCTP(またはddCTP)の供給によって正常なプライマー伸長反応が起こる。従って、DNAポリメラーゼ8によってdCTP(またはddCTP)が消費される。
 なお、SNP部位の塩基が三種類あるいは四種類の可能性がある場合は、それぞれに対応したdNTPあるいはddNTPを用いることによって同様に解析できる。
 このように、1種類のdNTPあるいはddNTPのみを用いる方法では、上記の4種類全てのdNTPを用いる方法とは異なり、dNTPを用いる場合は通常1〜数塩基程度、ddNTPを用いる場合は1塩基しかプライマーに付加されない。従って、伸長反応の進行の差を検出することが非常に困難である。そこで、以下に示す特許文献1および2では、伸長反応の進行の差を検出するために、プライマー伸長反応の進行に伴って生成されるピロリン酸をATPに変換し、その後ルシフェラーゼ反応を利用してピロリン酸の量を測定する方法を用いている。1種類のdNTPのみを用いる方法の利点としては、プライマーの設計の仕方によって、図21あるいは図22に示す各工程に準ずる工程を繰り返すことによって、SNP部位だけでなく、SNP部位近辺の塩基配列を判別することも可能であるという点が挙げられる。
 以上のようにプライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術は幾つかの種類があるが、いずれのSNP部位の塩基種の判別技術においても、プライマー伸長反応の進行の差を解析してSNP部位の塩基種の判別を行なうという点は共通している。
 このようなSNP部位の塩基種の判別技術は、いわゆるSNP部位のみならず所望の特定塩基の判別にも応用が可能である非常に有用な技術である。近い将来、大小様々な規模の病院で日常的に利用される可能性が高い。従って、より安全かつ正確にプライマー伸長反応の差を解析できる方法が必要とされている。
 (第2の従来技術)
 ピロリン酸は、細胞内における酵素反応に深く関与していることが知られている。例えば、タンパク質の合成過程において、アミノ酸がアミノアシルアデニル酸を経由してアミノアシルtRNAを形成する反応においてピロリン酸が生成される。また、例えば、植物などに見られるデンプン合成の過程では、グルコース−1−リン酸とATPとの反応によってADP−グルコースが生成される際に、ピロリン酸が生成される。これら以外にも、種々の酵素反応においてピロリン酸が関与していることが知られている。従って、ピロリン酸を定量的に検出する技術は、細胞状態、あるいは上記の酵素反応等を解析する上で重要な技術である。
 特許文献3では、酵素を利用した三種類のピロリン酸検出方法が開示されている。それらに関して以下に説明する。
 第1の方法は、ピロリン酸をホスホエノ−ルピルビン酸およびアデノシン一リン酸の存在下で、ピルベートオルソホスフェートジキナーゼを作用させる方法である。この反応によってビルビン酸が生成されるので、ピルビン酸の量を測定することによってピロリン酸の量を算出することができる。なお、ピルビン酸の量を測定する方法は二種類の方法が提案されている。1つは、ラクテートデヒドロゲナーゼの触媒作用を利用してピルビン酸をNADHで還元する際に、NADHの減少を比色定量する方法である。もう1つは、生成したピルビン酸にピルベートオキシダーゼを作用させて生成する過酸化水素を色素に導くことによって比色定量する方法である。
 第2の方法は、ピロリン酸をシチジン二リングリセロールの存在下でグリセロール−3−ホスフェートシチジルトランスフェラーゼに作用させる方法である。この反応によってグリセロール三リン酸が生成される。従って、グリセロール三リン酸の生成量を測定することでピロリン酸の量を算出することができる。グリセロール三リン酸の量を測定する方法は二種類の方法が提案されている。1つは、グリセロール−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼの触媒作用を利用してグリセロール三リン酸をNAD(P)で酸化する際に、NAD(P)Hの増加を比色定量する方法である。もう1つは、生成したグリセロール三リン酸にグリセロール−3−ホスフェートオキシダーゼを作用させて生成する過酸化水素を色素に導きこれを比色定量する方法である。
 第3の方法は、ピロリン酸をシチジン二リン酸リビトールの存在下でリビトール−5−ホスフェートシチジルトランスフェラーゼを作用させる方法である。この反応によってD−リビトール−5−リン酸が生成されるため、その生成量を測定することでピロリン酸量を測定することができる。D−リビトール−5−リン酸を測定する方法は、NAD(またはNADP)の存在下でリビトール−5−ホスフェートデヒドロゲナーゼを作用させてNADH(またはNADPH)の増加を比色定量する方法が提案されている。
東洋紡績(株)ウェブサイト、平成14年10月1日検索、URL(http://www.toyobo.co.jp/seihin/xr/product/custom/snps/snps.html) WO98/28440号(要約の欄) WO98/13523号(要約の欄) 特開昭61−12300号公報
 上記第1の従来技術で述べたように、プライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術は幾つかの種類があり、いずれのSNP部位の塩基種の判別技術においても、プライマー伸長反応の進行の差を解析してSNP部位の塩基種の判別を行なうという点で共通している。
 プライマー伸長反応の差を解析する方法は2種類ある。1つは、PCR法、ICAN法、LCR法、SDA法、LAMP法等の標的塩基配列の増幅法と、核酸検出技術を利用する技術である。つまり、プライマーの1つとして上記のタイピングプライマーを用いてSNP部位を含む塩基配列の増幅を行なう。その結果、タイピングプライマーの3’末端塩基が解析対象SNP部位と相補的である場合、標的塩基配列を有する核酸が良好に増幅されるが、相補的でない場合、核酸が増幅されにくい。従って、蛍光インターカレート剤等の標識物質を用いて、目的の塩基配列断片の量を測定することでSNP部位の塩基種の判別ができる。しかし既に述べたように、蛍光インターカレート剤が発ガン物質であるため非常に危険な操作が必要となる不具合がある。
 もう1つは、PCR法、ICAN法、LCR法、SDA法、LAMP法等の標的塩基配列の増幅法と、ピロリン酸検出技術を利用する技術である。つまり、プライマーの1つとして上記のタイピングプライマーを用いてSNP部位を含む塩基配列の増幅を行なうことに関しては上記の技術と同様であるが、この方法では核酸を検出するのではなく、プライマー伸長に伴って生成されるピロリン酸を検出することで標的塩基配列の増幅量の解析、すなわちSNP部位の塩基種の判別を行う。この場合に用いられるピロリン酸検出方法としては、ピロリン酸をATPに変換し、その後ルシフェラーゼ反応を利用する方法が知られている。しかし、プライマー伸長反応においてdATPを用いる場合、dATPはATPと同様にルシフェラーゼ反応の基質になる。このため、正確なSNP部位の塩基種の判別ができない。従って、dATPの代わりにDNAポリメラーゼの基質として作用し、且つルシフェラーゼ反応の基質としては作用しない特殊なdATPアナログを用いる必要があるという不具合がある。なおこの方法の場合、上記方法とは異なり、タイピングプライマーのみを用いて、そこからのプライマー伸長反応を解析することで、SNP部位の塩基種を判別することも可能である。
 また、上記第2の従来技術で述べたように、他のピロリン酸の検出技術においても、複数種の酵素、試薬などを必要とし、コストが増大し、工程が複雑化してしまうという不具合がある。
 本発明は上記不具合を解決するためになされたものであり、プライマーの伸長反応を検出する簡便な技術、核酸の塩基配列中の塩基種を判別する簡便な技術、ならびに核酸の検出技術を提供する。
 本発明のプライマーの伸長反応を検出する伸長反応検出方法は、核酸と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、前記試料溶液を前記伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、および工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、を含む。
 本発明の核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別方法は、核酸と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、前記試料溶液を前記プライマーの伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、および工程(e)の検出結果に基づいて前記核酸の塩基配列中の塩基種を判別する工程(f)、を含む。
  核酸の塩基配列中の塩基種を判別する方法として、例えば、判別したい塩基の3’末端側に隣接する塩基配列に対して完全に相補的な配列を有するプライマーと、判別したい塩基の予想される塩基種に対して相補的であるdNTPとを用いてプライマー伸長反応を行なった場合に、プライマー伸長反応の進行の程度によって、判別したい塩基の塩基種を判別する方法がある。また、判別したい塩基を含む塩基配列に対して相補的な塩基配列を有し、且つ4種類のdNTPを同時に用いてプライマー伸長反応を行なった場合に、判別したい塩基の塩基種に依存してプライマー伸長反応の進行の程度に差が生じるプライマーを用いる方法もある。いずれの方法も、プライマー伸長反応の進行の程度によって、特定の塩基の塩基種を判別する点が共通している。プライマー伸長反応が起こると、ピロリン酸が生成する。本発明では、プライマー伸長反応によって生成するピロリン酸を検出することによって、プライマー伸長反応の進行の程度を解析することができる。従って、核酸の塩基配列中の塩基種を判別することが可能である。本明細書でいう「核酸の塩基配列中の塩基種の判別」とは、例えばDNAのSNP部位が特定の塩基であるか否かの判別、SNP部位の塩基種の決定、突然変異部位の存在の有無の判別、突然変異部位の決定および突然変異部位の塩基種の決定が挙げられる。
 自然界では、H+−ピロホスファターゼは、そのピロリン酸を加水分解する活性部位が液胞膜の外側(表面側)に露出するように液胞膜に保持されており、1分子のピロリン酸から2分子のリン酸を生成する加水分解反応に伴って、液胞膜の外側から液胞膜の内側(裏面側)に向けてH+を輸送する性質を有する。このため、H+−ピロホスファターゼの酵素反応によって、液胞膜の内部ではH+濃度が増大し、液胞膜の外部ではH+濃度が減少する。本発明によれば、H+−ピロホスファターゼのピロリン酸を加水分解する活性部位が露出している第1領域に、伸長反応が進行した場合にピロリン酸を含むことになる試料溶液を貯留することによって、伸長反応が進行した場合には第1領域から第2領域へH+が輸送され、液胞膜の表面側と裏面側のH+濃度が変化する。このため、表面側および裏面側のいずれか一方のH+濃度を測定することによって、試料溶液中のピロリン酸の量を検出することができる。したがって、プライマーの伸長反応に伴って生成されるピロリン酸を検出することにより、核酸の塩基配列中の塩基種を判別する本発明の方法によると、ピロリン酸の検出に複数種の酵素、試薬などが不要であり、工程も単純で、コストが低減される。
  例えば、工程(d)では、前記表面側の溶液のH濃度と、工程(b)後であって工程(c)前の前記試料溶液のH濃度との差を測定する。また、工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出する。前記塩基種の判別が、SNP部位の塩基種の判別である場合、前記対照値は、前記核酸として前記SNP部位が変異していない核酸を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果とすることができる。
 また、例えば、工程(d)において、前記裏面側の溶液のH濃度を検出し、工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出することができる。前記塩基種の判別が、SNP部位の塩基種の判別である場合、工程(a)において、前記ヌクレオチドとして1種類のヌクレオチドを用い、前記対照値は、前記核酸として前記SNP部位の塩基種が異なる核酸を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果とすることができる。
 工程(d)では、Hの濃度を光学的に測定してもよい。この場合、例えば、前記表面側の溶液および前記裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、pH感受性色素または膜電位感受性色素を添加し、前記色素の光学的応答性を測定することにより、H濃度を測定することができる。前記pH感受性色素としては、例えば、アクリジンオレンジが挙げられる。前記膜電位感受性色素としては、例えばオクソールVが挙げられる。
 工程(d)では、H濃度を電気的に測定してもよい。
 伸長反応は、例えば、PCR法に従った伸長反応としてもよい。
 本発明の核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別装置は、プライマーの伸長反応に必要な温度調節を行う反応部と、前記プライマー伸長反応に伴って生成されるピロリン酸を検出するピロリン酸検出部とを備え、前記反応部は、溶液を貯留する反応用貯留領域を備え、前記ピロリン酸検出部は、溶液を貯留する検出用貯留領域と、前記検出用貯留領域を第1領域と第2領域とに分離するH難透過性膜と、第1領域および第2領域の少なくともいずれか一方の領域に貯留された溶液のH濃度を測定する測定手段とを備え、前記H難透過性膜は、表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有し、前記ピロリン酸検出部において、前記反応部から送出される反応溶液は、第1領域に貯留される構成である。
  特定の塩基の塩基種を判別する方法として、例えば、判別したい塩基の3’末端側に隣接する塩基配列に対して完全に相補的な配列を有するプライマーと、判別したい塩基の予想される塩基種に対して相補的であるdNTPとを用いてプライマー伸長反応を行なった場合に、プライマー伸長反応の進行の程度によって、判別したい塩基の塩基種を判別する方法がある。また、判別したい塩基を含む塩基配列に対して相補的な塩基配列を有し、且つ4種類のdNTPを同時に用いてプライマー伸長反応を行なった場合に、判別したい塩基の塩基種に依存してプライマー伸長反応の進行の程度に差が生じるプライマーを用いる方法もある。いずれの方法も、プライマー伸長反応の進行の程度によって、特定の塩基の塩基種を判別する点が共通している。プライマー伸長反応が起こると、ピロリン酸が生成する。本発明の塩基種判別装置によれば、プライマー伸長反応によって生成するピロリン酸を測定することによって、プライマー伸長反応の進行の程度を解析することができる。従って、特定の塩基の塩基種を判別することが可能である。
  また、試料溶液中に特定の塩基配列を有する核酸の有無を判別したい場合、プライマー伸長反応が進行していれば、溶液中に、プライマーに相補的な塩基配列を有する核酸が存在していることがわかる。逆に、プライマー伸長反応があまり進行していなければ、溶液中に、プライマーに相補的な塩基配列を有する核酸が存在していないことがわかる。このように、本発明の塩基種判別装置を用いて、試料溶液中の特定の塩基配列を有する核酸の有無を判別、すなわち、特定の核酸を検出することも可能である。
 前記測定手段は、例えばH濃度を光学的に測定する構成とすることができる。また、前記測定手段は、例えばH濃度を電気的に測定する構成とすることができる。
 前記塩基種判別装置は、前記反応部および前記ピロリン酸検出部を制御し、前記測定手段による測定結果を解析する解析手段をさらに備える構成としてもよい。
 前記塩基種判別装置は、前記反応用貯留領域および前記検出用貯留領域を具備したチップを挿入可能なスロットをさらに備える構成としてもよい。
 本発明のピロリン酸検出装置は、容器と、前記容器内を第1領域と第2領域とに分離するH難透過性膜と、第1領域に貯留される溶液に接触するように設けられた電極と、第2領域に貯留される溶液に接触するように設けられたH感受性電極とを備え、前記H難透過性膜は、その表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が第1領域に露出するように配置されたH−ピロホスファターゼを有する構成である。
 本発明の特定の塩基配列を有する核酸の検出方法は、試料と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、前記試料溶液を前記プライマーの伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、および工程(e)の検出結果に基づいて前記核酸を検出する工程(f)を含む。
 プライマーは、相補的な塩基配列を有する核酸にハイブリダイズし、プライマー伸長反応によって伸長する。プライマー伸長反応が起こると、ピロリン酸が生成する。本発明によれば、プライマー伸長反応の進行の程度を、すなわちピロリン酸の量を検出することによって、具体的にはH濃度を測定することによって解析することができる。プライマー伸長反応が進行していれば、試料溶液中に、プライマーに相補的な塩基配列を有する核酸が存在していることがわかる。逆に、プライマー伸長反応があまり進行していなければ、試料溶液中に、プライマーに相補的な塩基配列を有する核酸がほとんど存在していないことがわかる。このようにして、試料溶液中の特定の塩基配列を有する核酸の有無を判別することができる。
 例えば、工程(d)で、前記表面側の溶液のH濃度と、工程(b)後であって工程(c)前の前記試料溶液のH濃度との差を測定する。また、例えば、工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出する。このとき、前記対照値として、核酸を含まない前記試料を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果を使用することができる。
 工程(d)では、H濃度を光学的に測定してもよい。この場合、例えば、表面側の溶液および裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、pH感受性色素または膜電位感受性色素を添加し、前記色素の光学的応答性を測定することにより、H濃度を測定することができる。前記pH感受性色素としては、例えば、アクリジンオレンジが挙げられる。前記膜電位感受性色素としては、例えばオクソールVが挙げられる。
 また、工程(d)では、H濃度を電気的に測定してもよい。
 前記伸長反応は、例えば、PCR法に従った伸長反応としてもよい。
 本発明の試料溶液導入チップによれば、プライマーの伸長反応を行うための反応槽と、ピロリン酸を検出するためのピロリン酸検出槽と、前記反応槽と前記ピロリン酸検出槽とを接続する流路とを備えるように構成されている。
 また、前記流路は開閉可能に構成してもよい。この場合、反応槽とピロリン酸検出槽とを容易に分離することが可能である。従って、互いに反応温度条件が異なるプライマー伸長反応とピロリン酸の検出とを1つのチップ上で行うことができる。
 前記ピロリン酸検出槽は、H難透過性膜によって分離された第1領域および第2領域を有し、前記H難透過性膜は、その表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が第1領域に露出するように配置されたH−ピロホスファターゼを有し、前記ピロリン酸検出槽において、前記反応槽から前記流路を介して送出される反応溶液は、第1領域に貯留されるように構成されていることが好ましい。
 ピロリン酸検出槽内に試料溶液が注入されると、試料溶液中にピロリン酸が存在する場合、H−ピロホスファターゼの酵素反応が生じて、膜によって隔てられた第2領域ではH濃度が増大し、第1領域ではH濃度が減少する。このため、電極とH感受性電極とによって、電気的にH濃度を測定することができ、ピロリン酸の量を検出することができる。
 本発明によれば、プライマーの伸長反応を検出する簡便な技術、核酸の塩基配列中の塩基種を判別する簡便な技術、ピロリン酸を検出する簡便な技術および特定の塩基配列を有する核酸を検出する簡便な技術を提供することができる。
 以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書中に記載されているDNA、RNAなどの核酸は、特に指示のない限り二本鎖である。
 (実施形態1)
 本実施形態では、試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する方法を説明する。具体的には、4種類のdNTPを用いてプライマー伸長反応(例えば、PCR法、ICAN法、LCR法、SDA法、LAMP法等の増幅反応)を利用する方法を図1および図2を参照しながら説明する。図1および図2は、本実施形態の試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する方法を表す工程図である。
 本実施形態の方法では、標的DNAのSNP部位を含む塩基配列に対して実質的に相補的結合を行い、かつ標的DNAのSNP部位の塩基種に応じて伸長反応の進行に差を生じさせるプライマー(以下、タイピングプライマーと称する)を用いる。なお、本実施形態では、タイピングプライマーが作用する方の一本鎖状態の標的DNAにおけるSNP部位の塩基がAかGの可能性があり、Gの場合だとプライマー伸長反応は行われないが、Aの場合だと行われるように設計されたタイピングプライマーを用いる例を示す。
 まず、図1(a)に示す工程で、SNP部位S1を有する標的のDNA1、タイピングプライマー7、DNAポリメラーゼ8および4種類のdNTPを含む試料溶液を調製する。同様に、図2(a)に示す工程で、SNP部位S2を有する標的のDNA2、タイピングプライマー7、DNAポリメラーゼ8および4種類のdNTPを含む試料溶液を調製する。ここで、タイピングプライマー7は、その3’末端の塩基(ここでは、チミン(以下Tと記す))以外は、一本鎖DNA4および6のSNP部位よりも3’末端側の領域と完全にハイブリダイズするように設計されている。また、本実施形態で用いるDNAポリメラーゼ8は、一般にPCR等に用いられる耐熱性を有する公知の酵素である。
 次に、図1(b)に示す工程で、試料溶液を加温し、DNA1を熱変性させることによって一本鎖DNA3および4とする。同様に、図2(b)に示す工程で、試料溶液を加温し、DNA2を熱変性させることによって一本鎖DNA5および6とする。
 次に、図1(c)に示す工程で、試料溶液を冷却し、一本鎖DNA4に、タイピングプライマー7をハイブリダイズさせる。一本鎖DNA4のSNP部位S1がアデニン(以下Aと記す)であるため、タイピングプライマー7は一本鎖DNA4に完全にハイブリダイズする。同様に、図2(c)に示す工程で、試料溶液を冷却し、一本鎖DNA6に、タイピングプライマー7をハイブリダイズさせる。一本鎖DNA6のSNP部位S2がグアニン(以下Gと記す)であるため、タイピングプライマー7は一本鎖DNA4にその3’末端の塩基(T)のみハイブリダイズしない。
 次に、図1(d)に示す工程で、試料溶液の温度をプライマー伸長反応に最適な温度に調節する。タイピングプライマー7は一本鎖DNA4に完全にハイブリダイズしている。このため、プライマー伸長反応が起こり、DNAポリメラーゼ8によってdNTPが消費され、ピロリン酸が生成する。
 一方、図2(d)に示す工程でも、試料溶液の温度をプライマー伸長反応に最適な温度に調節する。しかしながら、タイピングプライマー7は、一本鎖DNA6に、その3’末端の塩基(T)がハイブリダイズしていない状態にある。このため、正常なプライマー伸長反応が起こりにくい。従って、dNTPはほとんど消費されず、ピロリン酸はほとんど生成されない。
 続いて、以上に述べた図1(b)から(d)に示す工程、および図2(b)から(d)に示す工程を繰り返すことによって、プライマー伸長反応を繰り返す。このことによって、図1(d)および図2(d)に示すプライマー伸長反応の進行の差が顕著に現れる。
 なお、本実施形態の方法に代えて、タイピングプライマー7をPCR反応時に使用する2本のプライマーのうちの1本として用い、もう1本のプライマーと共に用いることによってPCR反応を行なってもよい。このことによって、プライマー伸長反応の進行の差は指数関数的に広がっていく。また、PCR法以外の増幅反応を適用することも可能である。
 最後に、図1(d)および図2(d)に示すプライマー伸長反応の進行の差を、ピロリン酸の定量検出によって解析する。このことによって、SNP部位の塩基種の判別ができる。次に、本実施形態のピロリン酸の定量検出方法を図3を参照しながら説明する。
 本実施形態では、ピロリン酸を検出するために、H+−ピロホスファターゼを用いる。H+−ピロホスファターゼは通常、植物の液胞膜等に存在する膜タンパク質である。図3は、植物の液胞膜に内在された状態のH+−ピロホスファターゼを模式的に表す図である。
 図3に示すように、H+−ピロホスファターゼ11は、1分子のピロリン酸10から2分子のリン酸12を生成する加水分解反応に伴って、H+を通さない、あるいは通しにくい液胞膜13の外側(表面13a側)から液胞膜13の内側(裏面13b側)に向けてH+を輸送する性質を有する。このため、H+−ピロホスファターゼの酵素反応によって、液胞膜の内部ではH+濃度が増大し、液胞膜の外部ではH+濃度が減少する。
 本実施形態では、H−ピロホスファターゼの上記性質および膜タンパク質であるという形態を利用して、ピロリン酸の検出を行う。すなわち、H−ピロホスファターゼを保持する膜で領域を分離し、少なくともいずれか一方のH濃度の変化を測定することにより、H−ピロホスファターゼが加水分解に寄与したピロリン酸の量を検出することができる。このように、本実施形態の方法では、H−ピロホスファターゼの作用に直接的にかかわったHの濃度変化を検出することにより、ピロリン酸の検出を行うので、簡便かつ高感度の検出が可能である。また、上述の検出を行うためには、Hの輸送元の領域と、Hの輸送先の領域との分離が必須要件となるが、H−ピロホスファターゼが膜タンパク質であることにより、その形態を領域の分離に利用することができる。このことは、検出の簡便化に寄与する。
 本実施形態では、ピロリン酸を含む試料溶液を、植物細胞等から単離してきた液胞膜に内在している状態のH+−ピロホスファターゼに接触させる。この後、液胞膜の内側あるいは液胞膜の外側のH+濃度の変化を測定する。液胞膜の内側あるいは液胞膜の外側のH濃度の変化は、実施例に後述するように、試料溶液中のピロリン酸の量と相関関係があるので、H濃度の変化を測定することによって、試料溶液中のピロリン酸の量を検出する。ピロリン酸の量の多い方の試料溶液がプライマーの伸長反応が進行した試料溶液であり、ピロリン酸の量の少ない方の試料溶液がプライマーの伸長反応が進行しにくかった試料溶液である。すなわち、プライマーの伸長反応の進行の差によって、SNP部位の塩基種を判別する。例えば、図1(d)と図2(d)の溶液を比較した場合、図1(d)の方が図2(d)よりピロリン酸の量が多く検出される。この結果に基づいて、DNA4のSNP部位S1は、プライマー7の3’末端の塩基Tに相補的な塩基Aであると判別される。そして、DNA6のSNP部位S2は、プライマー7の3’末端の塩基Tに相補的な塩基Aでないと判別される。本実施形態では、SNP部位の塩基がAかGであることがわかっているので、DNA6のSNP部位S2はGであると決定される。
  なお、Hの濃度の変化が所定値に達したか否かによって、ピロリン酸の有無を決定し、ピロリン酸の有無に応じてプライマー伸長反応の進行の有無を決定しても良い。本明細書においては、H濃度の変化が所定値に達したか否かによってピロリン酸の有無を決定する検出を、ピロリン酸の定性検出という。これに対し、ピロリン酸の量の値(例えば濃度)の検出を、ピロリン酸の定量検出というという。
 プライマーの伸長反応の進行の有無、すなわちピロリン酸の定性検出によって、試料中に含まれるSNP部位が使用したプライマーに対応する塩基種か否か判別する場合について説明する。例えば、図1(d)については、プライマー伸長反応が進行したと判別され、SNP部位が使用したプライマーの3’末端の塩基Tに相補的な塩基Aであると決定される。図2(d)については、プライマー伸長反応が進行しなかったと判別され、SNP部位が使用したプライマーの3’末端の塩基Tに相補的な塩基Aではないと判別される。本実施形態においては、上述のように、SNP部位の塩基がAかGの可能性があることがわかっているので、図2(d)において、SNP部位の塩基がAでないと判別されると、残る可能性はGということになり、SNP部位の塩基種が決定される。
  尚、本実施形態のように、SNP部位の塩基種が予め2種類に特定されていなくても、上述する、プライマーの伸長反応の進行の有無の判別によって、試料中に含まれるSNP部位が使用したプライマーに対応する塩基種か否か判別する操作を複数種のプライマーを用いて行うことにより、最終的にSNP部位の塩基種を決定することができる。
  本明細書における「核酸の塩基配列中の塩基種の判別」は、SNP部位の塩基種が特定の塩基種であるか否かの判別およびSNP部位の塩基種の決定、いずれをも含む。
 H+濃度の変化を測定する方法としては、H+濃度の変化を光学的変化に変換して測定する方法と、電気的に測定する方法が挙げられる。H+濃度の変化を光学的変化に変換して測定する方法としては、pH試験紙やpH感受性色素、膜電位感受性色素等を用いる方法が挙げられる。電気的に測定する方法としては、金属電極法(水素電極法、キンヒドロン電極法、アンチモン電極法等)、ガラス電極法、ISFET電極法、パッチクランプ法、LAPS法(Light−Addressable Potentiometric Sensor)等が挙げられる。
 上記のH+濃度の変化を測定する方法と、上記のH+−ピロホスファターゼの反応を併用することによって、試料溶液中のピロリン酸を光学的シグナルあるいは電気的シグナルに変換して測定することができる。
 なお、H+濃度の変化を測定する方法は、上記の測定方法に限られず、H+濃度の変化を光学的変化あるいは電気的変化に変換し、その光学的変化あるいは電気的変化を検知できる方法であればよい。
 次に、本実施形態のピロリン酸の検出方法を図4および図5を参照しながら説明する。図4および図5は、ピロリン酸の検出方法を表す図である。
 図4に示すように、H+−ピロホスファターゼが膜に内在し、内部にpH感受性色素または膜電位感受性色素を含む膜小胞33が懸濁された溶液を反応容器31中に注いでおき、次いで、反応容器31の中に図1(d)または図2(d)で得られる試料溶液32を添加する。このとき、H+−ピロホスファターゼのピロリン酸を加水分解する活性部位は、膜小胞(H難透過性膜)33の外部に露出している。膜小胞33の内部に含まれる溶液はH−ピロホスファターゼの輸送によるH濃度の変化の検出を阻害するものでなければ、特に限定されない。尚、膜小胞33の外面33aを表面とし、内面33bを裏面とする。pH感受性色素または膜電位感受性色素は、試料溶液32に添加されていても良い。
 試料溶液32中にピロリン酸が存在する場合、H+−ピロホスファターゼの酵素反応が生じて、膜小胞33の内部ではH+濃度が増大し、膜小胞33の外部ではH+濃度が減少する。このため、膜小胞33の内部のH+濃度の増大によって、pH感受性色素または膜電位感受性色素の蛍光強度が変化する。この蛍光強度の変化を光学的に測定することによって、ピロリン酸の定性検出及び定量検出を行うことができる。
 膜小胞33としては、細胞から単離された液胞から調製されたものを用いることができる。また、膜小胞33として、H+−ピロホスファターゼを単離および精製した後、人工的に形成した脂質二重層膜やLB膜などのH+を通さない、あるいは通しにくい膜内に内在するように再構築することによって形成されたものを用いてもよい。
 なお、ピロリン酸を加水分解する活性部位が、内部に露出しているH+−ピロホスファターゼが膜小胞33に含まれていてもよい。但し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が内部に露出しているH+−ピロホスファターゼが含まれている膜小胞33を用いる場合、膜小胞33の内部のピロリン酸の濃度は、膜小胞33の外部のピロリン酸の濃度よりも低くしておくことが好ましく、膜小胞33の内部にはピロリン酸を含まないことが最も好ましい。このことによって、膜小胞33の内部から外部へのH+の輸送が減少あるいは停止し、膜小胞33の外部から内部へのH+の輸送が優勢となって、膜小胞33の外部および内部のH+濃度の変化が、試料溶液32中に含まれるピロリン酸によるものにほぼ限定される。従って、試料溶液32中に含まれるピロリン酸の量を正確に見積もることができる。
 また、膜小胞33の膜には、H+−ピロホスファターゼ以外のタンパク質が含まれていてもよい。但し、これらのタンパク質は、ピロリン酸と反応しない、あるいは反応性の低いタンパク質であることが好ましい。すなわち、ピロリン酸が膜小胞33の膜中にあるH+−ピロホスファターゼ以外のタンパク質と反応する場合、H+−ピロホスファターゼと反応するピロリン酸の量が減少し、それに伴ってH+の輸送量が減少するからである。また、ピロリン酸とは反応せず、且つピロリン酸以外の物質との反応によってH+を輸送するタンパク質が膜小胞33の膜に含まれている場合、そのタンパク質が反応する物質が試料溶液32中にほとんど含まれていないことが好ましい。具体的には、膜小胞33の膜には、ピロリン酸とほとんど反応せず、且つATPとの反応によってH+を輸送するタンパク質であるATPaseが含まれている場合、試料溶液32中にATPをほとんど含まないようにすることが好ましい。
 なお、pH感受性色素としては、アクリジンオレンジが挙げられる。また、膜電位感受性色素としては、オクソールVが挙げられる。いずれも、微少なpHまたは膜電位の変化に対して非常に鋭敏な色素である。このため、ピロリン酸の検出を高感度で行なうことが可能である。
 また、図5に示すピロリン酸検出装置を用いてもよい。図5に示すように、ピロリン酸検出装置50は、容器34と、電極35と、容器34内に設けられた内部槽36とを備える。内部槽36には、H+−ピロホスファターゼが内在している膜(H難透過性膜)37が形成されており、内部槽36の底部には、H+感受性電極38が設けられている。このとき、H+−ピロホスファターゼのピロリン酸を加水分解する活性部位は、内部槽36の外部に露出している。膜37は、その上面37aを表面とし、下面37bを裏面とする。
 容器34内に試料溶液32が注入されると、試料溶液32中にピロリン酸が存在する場合、H+−ピロホスファターゼの酵素反応が生じて、膜37によって隔てられた内部槽36の内部領域(第2領域)39の溶液ではH+濃度が増大し、内部槽36の外部ではH+濃度が減少する。このため、電極35とH+感受性電極38とを用いて、電気的にH+濃度の変化を測定することによって、ピロリン酸を定性的または定量的に検出することができる。本実施形態では、予め容器34および内部領域39内に、pHが測定可能であるバッファーなどの溶液を貯留した後、容器34内に試料溶液32を注入するが、これに限定されない。例えば、膜37を予め内部槽36内のH+感受性電極38上に配置しておき、試料溶液32を容器34中に添加してもよい。このことによって、容器34内に試料溶液32を注入すると、試料溶液32のうちの膜37を透過する成分(つまりピロリン酸を含まない溶液)が内部領域39を満たし、電極35とH+感受性電極38とを用いて、電気的にH+濃度の変化を測定することが可能になる。
 なお、ピロリン酸を加水分解する活性部位が、内部領域39に露出しているH+−ピロホスファターゼが膜37に含まれていてもよい。但し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が内部領域39に露出しているH+−ピロホスファターゼが含まれている膜37を用いる場合、内部領域39のピロリン酸の濃度は、内部槽36の外部のピロリン酸の濃度よりも低くしておくことが好ましく、内部領域39にはピロリン酸を含まないことが最も好ましい。このことによって、内部領域39から内部槽36の外部へのH+の輸送が減少あるいは停止し、内部槽36の外部から内部領域39へのH+の輸送が優勢となって、内部槽36の外部および内部領域39のH+濃度の変化が、試料溶液32中に含まれるピロリン酸によるものにほぼ限定される。従って、試料溶液32中に含まれるピロリン酸の量を正確に見積もることができる。
 また、膜37には、H+−ピロホスファターゼ以外のタンパク質が含まれていてもよい。但し、これらのタンパク質は、ピロリン酸と反応しない、あるいは反応性の低いタンパク質であることが好ましい。すなわち、ピロリン酸が膜37中にあるH+−ピロホスファターゼ以外のタンパク質と反応する場合、H+−ピロホスファターゼと反応するピロリン酸の量が減少し、それに伴ってH+の輸送量が減少するからである。また、ピロリン酸とは反応せず、且つピロリン酸以外の物質との反応によってH+を輸送するタンパク質が膜37に含まれている場合、そのタンパク質が反応する物質が試料溶液32中にほとんど含まれていないことが好ましい。具体的には、膜37に、ピロリン酸とほとんど反応せず、且つATPとの反応によってH+を輸送するタンパク質であるATPaseが含まれている場合、試料溶液32中にATPをほとんど含まないようにすることが好ましい。
 また、ピロリン酸検出装置50では、電極35とH+感受性電極38とによって、電気的にピロリン酸の量を測定しているが、これに限定されない。例えば、pH感受性色素または膜電位感受性色素を含む溶液を内部槽の内部領域39に添加してもよい。このことによって、内部のH+濃度の増大に伴ってpH感受性色素または膜電位感受性色素の蛍光強度が変化する。この蛍光強度の変化を光学的に測定することによって、ピロリン酸の量を測定することができる。
 以上に述べたように、ピロリン酸を検出するために用いるH+−ピロホスファターゼが内在している膜の形状は、球状であっても、平面状であっても構わない。つまり、H+−ピロホスファターゼが内在している膜により隔てられた2つの領域の間のH+の移動の全て、あるいはほとんどが、H+−ピロホスファターゼによって行なわれる条件を構築すればよい。
 また、本実施形態の、試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する方法を応用して、試料中の塩基配列中の突然変異部位の存在の有無の判別、突然変異部位の決定および突然変異部位の塩基種の決定を行うことができる。突然変異部位の存在の有無の判別は、突然変異部位を有さない目的の塩基配列と完全に相補的なプライマーを用いてプライマー伸長反応を行い、反応によって生成したピロリン酸の量が、目的の塩基配列を含有する試料と、該目的の塩基配列に完全に相補的なプライマーを用いてプライマー伸長反応を行った場合に生成するピロリン酸の量(対照値)と同程度であるかあるいは少ないかによって、試料中の塩基配列中の突然変異部位の存在の有無を判別する。すなわち、基準値と同程度であると判別される場合は、突然変異部位が存在しないと判別し、基準値より少ないと判別される場合は、突然変異部位が存在すると判別する。
 突然変異部位の決定の場合、1塩基ずつずらして設計した複数のプライマーを用いてプライマー伸長反応を行い、生成したピロリン酸の量を測定し、ピロリン酸の量が最小となるプライマーの3’末端に対応する部位を特定することによって突然変異部位を決定することができる。
 突然変異部位の塩基種の決定は、突然変異部位の決定の後、上述のSNP部位の塩基種の決定と同様の方法により決定することができる。
  本明細書における核酸の「塩基配列中の塩基種の判別」は、塩基配列中の突然変異部位の存在の有無の判別、突然変異部位の決定および突然変異部位の塩基種の決定、いずれをも含む。
 次に、試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する装置を説明する。図6は、本実施形態の塩基種判別装置を表す模式図である。
 図6に示すように、塩基種判別装置60は、プライマー伸長反応を行なう反応部51aおよびピロリン酸を検出するピロリン酸検出部51bを備える反応手段51と、反応部51aとピロリン酸検出部51bとを制御し、得られた結果を解析する解析手段52とを備える。また、反応手段51は、試料溶液を導入するためチップ53を挿入可能なスロットを有する。
 反応部51aは、プライマー伸長反応に必要な温度調節を行なうことが可能な構成であればよい。例えば、プライマー伸長反応としてPCR法を用いる場合、反応部51aは、試料溶液導入チップ53内の試料溶液を、核酸の変性、プライマーのアニーリング、およびポリメラーゼによるプライマー伸長反応のそれぞれに適した温度を、それぞれ設定した時間で制御できるヒーター部およびプログラム温度制御部を備える構成であることが好ましい。また、ICAN法およびLAMP法などの等温反応を用いる場合、反応部51aは、一定の温度(例えば65℃)で保持することができるヒーター部および温度制御部を備える構成であることが好ましい。なお、本実施形態では、PCR法に用いるサーマルサイクラーと同じ構成となっている。
 ピロリン酸検出部51bの構成は、H+濃度の変化を測定する測定手段によって異なる。上述の図4に示すように、pH感受性色素または膜電位感受性色素のような色素を用いてH+濃度の変化を光学的に測定する場合、ピロリン酸検出部51bは、蛍光色素を励起するための光源部、発生した蛍光の強度を測定する蛍光強度測定部を備える構成であることが好ましい。
 また、上述の図5に示すように、電極を用いてH+濃度の変化を電気的に測定する場合、ピロリン酸検出部51bは、電極35およびH+感受性電極38のそれぞれに電気的に接続することが可能な接点部または端子と、電極35およびH+感受性電極38との間の電位差を測定することができる電位差測定部とを備える構成であることが好ましい。
 試料溶液を導入するためチップ53は、PCR槽(反応用貯留領域)73と、上述の図5に示すピロリン酸検出装置(検出用貯留領域を含む)50と、PCR槽73とピロリン酸検出装置50とを接続する流路74cとを備える。
 PCR槽73は、精製されたDNA、タイピングプライマー、DNAポリメラーゼおよび4種類のdNTPを含む試料溶液において、PCR(プライマー伸長反応)を行なうための槽である。なお、PCR槽73には、それぞれ必要な試薬を、予め入れておいてもよいし、塩基種判別装置60に挿入する直前に導入してもよい。
 ピロリン酸検出装置50は、上記説明の通りの構成であるので、ここでは説明を省略する。なお、ピロリン酸検出装置50の代わりに、H+濃度の変化を光学的変化あるいは電気的変化に変換し、その光学的変化あるいは電気的変化を検知できる装置を用いることが可能である。
 流路74cには、開閉部材が設けられており、開閉部材の開状態においては、流路74cにおける流体の流通が許容され、開閉部材の閉状態においては、流路74cにおける流体の流通が阻止される。このような構成により、PCR槽73と、ピロリン酸検出装置50とがそれぞれ隔離される構造となっている。開閉部材は、上記塩基種判別装置60の反応手段51により開閉できる構成となっている。尚、チップ53において、流路74cは必ずしも開閉部材を備えた構成である必要はなく、PCR反応の工程においては、PCR槽73に反応溶液が保持されるとともに、外部からの溶液の流入が阻止され、ピロリン酸の検出工程においては、ピロリン酸検出装置50内に反応後の溶液が保持されるとともに、外部からの溶液の流入が阻止される構成であれば良い。
 また、解析手段52は、反応手段51に接続されており、具体的にはパーソナルコンピュータ(PC)等である。
 塩基種判別装置60の動作は以下の通りである。
 まず、SNP部位を有する標的のDNA、タイピングプライマー、DNAポリメラーゼおよび4種類のdNTPを含む試料溶液をPCR槽73に導入したチップ53を用意する。
 次に、チップ53を反応手段51のスロットに挿入する。図6に示すように、チップ53が反応手段51のスロットに挿入されると、PCR槽73が反応部51a内に(PCR槽73と反応部51aとを合わせて反応部ともいう)、ピロリン酸検出装置50がピロリン酸検出部51b内に(ピロリン酸検出装置50とピロリン酸検出部51bとを合わせてピロリン酸検出部ともいう)それぞれ位置するように、チップ53は反応手段51内に配置される。
 次に、反応手段51は反応部51aにおいて、上記図1(b)から(d)に示す工程、および図2(b)から(d)に示す工程を繰り返し行ない、チップ53のPCR槽73に導入されている試料溶液中でプライマー伸長反応を生じさせる。なお、上記図1(b)から(d)に示す工程、および図2(b)から(d)に示す工程を繰り返す回数は、解析手段52に設定しておく。
 次に、上記図1(b)から(d)に示す工程、および図2(b)から(d)に示す工程が終了すると、チップ53の流路74cが反応手段51により開放され、ピロリン酸検出装置50内に試料溶液が導入される。ピロリン酸検出部51bは、プライマー伸長反応により生じたピロリン酸の量を検出する。具体的な検出方法は、上述した通りであるので、ここでは説明を省略する。
 次に、解析手段52は、ピロリン酸検出部51bから得られる結果を解析し、試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する。ここでいう塩基種の判別とは、特定の塩基種であるか否かの判別および塩基種の決定いずれをも含む。また、図6に示す塩基種判別装置60を用いて、塩基配列中の突然変異部位の存在の有無の判別、突然変異部位の決定、および突然変異部位の塩基種の決定を行うこともできる。この場合、解析手段52において、ピロリン酸検出部51bから得られる結果を解析し、突然変異部位の存在の有無の判別、突然変異部位の決定、および突然変異部位の塩基種の決定を行う。
 次に、チップ53の代わりに用いることができる別のチップ53aを説明する。図7(a)は、本実施形態の別のチップを模式的に表す上面図であり、図7(b)は、図7に示したX−X線に沿った断面図である。
 図7(a)および(b)に示すように、チップ53aは、サンプル注入口70と、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、PCR槽73と、ピロリン酸検出装置(検出用貯留領域を含む)50と、DNA抽出槽71とDNA精製槽72とを接続する流路74aと、DNA精製槽72とPCR槽73とを接続する流路74bと、PCR槽(反応用貯留領域)73とピロリン酸検出装置50とを接続する流路74cとを備える。つまり、チップ53aは、図6に示したチップ53にさらに、サンプル注入口70と、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、流路74aおよび74bとが設けられた構成となっている。
 サンプル注入口70は、外部とDNA抽出槽71とを繋いでいる。サンプル注入口70からDNA抽出槽71へ、血液、唾液、毛髪および毛根などを必要に応じて薬液処理した試料溶液が注入される。
 DNA精製槽72は、DNAを精製し、不純物を除去するための薬液処理を行なう槽である。勿論、DNAを精製するためのカラムが設けられている構成であってもよい。
 PCR槽73は、DNA精製槽72において精製されたDNA、タイピングプライマー、DNAポリメラーゼおよび4種類のdNTPを含む試料溶液において、PCR(プライマー伸長反応)を行なうための槽である。
 なお、DNA抽出槽71、DNA精製槽72およびPCR槽73には、それぞれ必要な試薬を予め入れておいてもよいし、塩基種判別装置60に挿入する直前に導入してもよい。
 ピロリン酸検出装置50は、上記説明の通りの構成であるので、ここでは説明を省略する。なお、ピロリン酸検出装置50の代わりに、H+濃度の変化を光学的変化あるいは電気的変化に変換し、その光学的変化あるいは電気的変化を検知できる装置を用いることが可能である。
 流路74a、74bおよび74cには、開閉部材75が設けられており、それぞれの開閉部材75が持ち上がると、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、PCR槽73と、ピロリン酸検出装置50とがそれぞれ密閉される構造となっている。開閉部材75は、上記塩基種判別装置60の解析手段52により開閉できる構成となっている。
 なお、開閉部材75の代わりに、例えば、逆流防止弁等を流路74a、74bおよび74cに設けてもよい。また、ピロリン酸検出装置50に通じる脱気孔を設け、サンプル注入口70に排気ポンプを、上記脱気孔に吸気ポンプを取り付けることにより、試料溶液を、DNA抽出槽71、DNA精製槽72、PCR槽73、ピロリン酸検出装置50の各部に輸送する構成としてもよい。さらに、上記排気ポンプおよび吸気ポンプを、試料溶液と混合しない油を排出および吸引するポンプとしてもよい。いずれの構成にせよ、上記塩基種判別装置60の反応手段51において、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、PCR槽73と、ピロリン酸検出装置50とをそれぞれ隔離することが可能であればよい。ここでいう「隔離」とは、各槽71,72,73における処理中に、各槽71,72,73に処理対象の溶液が保持され、他の溶液の流入が阻止される状態をいう。したがって、各槽71,72,73の隔離が可能な構成であれば、開閉部材等を設けなくても達成することができる。たとえば、各槽71,72,73が流路74a,74b,74cより一段くぼんでおり、各槽71,72,73に溶液が保持された状態においては、送液手段等を動作させない限り溶液の流出入がない状態が確保される構成等が可能である。このことによって、互いに酵素の反応条件(例えば、至適温度など)が異なるプライマー伸長反応とピロリン酸の検出とを1つのチップ上で行なうことができる。
 また、本実施形態のチップ53aでは、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、PCR槽73とが個別の槽に分離されているが、DNAの抽出、DNAの精製およびPCRを1つの槽で行なう構成としてもよい。
 図8は、本実施形態の別のチップを模式的に表す上面図である。
 図8に示すように、チップ53bは、図7に示すチップ53aと同様に、サンプル注入口70と、DNA抽出槽71と、DNA精製槽72と、PCR槽(反応用貯留領域)73と、ピロリン酸検出装置(検出用貯留領域を含む)50と、DNA抽出槽71とDNA精製槽72とを接続する流路74aと、DNA精製槽72とPCR槽73とを接続する流路74bと、PCR槽73とピロリン酸検出装置50とを接続する流路74cとを備えている。特に、流路74bが二股に別れており、PCR槽73と、ピロリン酸検出装置50と、PCR槽73とピロリン酸検出装置50とを接続する流路74cが2つずつ設けられている。
 チップ53bを用いて、2つのPCR槽73にそれぞれ異なるタイピングプライマーを導入することによって、同時に2つのSNP部位の塩基種を判別することが可能である。また、1つのSNP部位について、同時に2種のタイピングプライマーを導入することができ、SNP部位の塩基種の決定に有用である。
 図9は、本実施形態の更に別のチップ(縦型チップ)を模式的に表す斜視図である。
 図9に示すように、チップ90は、サンプル導入部91と、DNA精製部92と、PCR部93と、ピロリン酸検出装置50とを備えている。
 サンプル導入部91は、サンプル導入槽91aとDNA抽出カラム91bとを有する。血液、唾液、毛髪および毛根などを必要に応じて薬液処理した試料溶液は、サンプル導入槽91aに注入され、DNA抽出カラム91bを通過する。なお、血液、唾液などの液体は、薬液処理せずにサンプル導入槽91aに注入してもよい。
 DNA精製部92は、DNA精製槽92aとDNA精製カラム92bとを有する。DNA抽出カラム91bを通過した試料溶液は、DNA精製槽92aに導入され、続いてDNA精製カラム92bを通過する。
 PCR部93は、PCR槽(反応用貯留領域)93aと隔離部材93bとを有する。DNA精製カラム92bを通過することによって精製されたDNAを含む試料溶液は、PCR槽93aに導入され、DNA、タイピングプライマー、DNAポリメラーゼおよび4種類のdNTPを添加される。このことによって、PCR(プライマー伸長反応)が起こる。
 隔離部材93bは、上記塩基種判別装置60の反応手段51により開閉できる構成となっている。PCR槽93aにおいてPCRが終了すると、反応手段51は、隔離部材93bを開放し、試料溶液をピロリン酸検出装置(検出用貯留領域を含む)50に通過させる。
 尚、上記チップ53a,53b,90においては、DNA精製槽72または92aを備える構成としたが、ここでは試料溶液中にPCR反応の阻害物が含まれないように、またはPCR反応の阻害物を不活性とするように試料溶液が処理されれば十分である。
 ピロリン酸検出装置50は、上記説明の通りの構成であるので、ここでは説明を省略する。なお、ピロリン酸検出装置50の代わりに、H+濃度の変化を光学的変化あるいは電気的変化に変換し、その光学的変化あるいは電気的変化を検知できる装置を用いることが可能である。
 本実施形態では、ピロリン酸の量を検出することによって、プライマー伸長反応の進行の差を解析したが、勿論、プライマー伸長反応に限られず、試料溶液中に存在するピロリン酸の量を正確に測定することができる。
 また特に、プライマー伸長反応においては、H+−ピロホスファターゼは、ATPおよびdATPが阻害剤となるため、試料溶液中にATPまたはdATPが存在し、且つピロリン酸の量が少ない場合、H+濃度はほとんど変化しない。逆にプライマー伸長反応によって試料溶液中のdATPが消費され、且つピロリン酸の量が多い場合、H+濃度は大きく変化する。つまり、プライマー伸長反応の進行の差を、より大きな差として測定することが可能になる。従って、高精度で塩基種を判別することができる。
 (実施形態2)
 本実施形態では、試料中に特定の塩基配列を有するDNAが含まれるか否かを判別する方法、すなわち、特定の塩基配列を有するDNAの検出方法を説明する。具体的には、4種類のdNTPを用いてプライマー伸長反応(例えば、PCR法、ICAN法、LCR法、SDA法、LAMP法等の増幅反応)を利用する方法を図10を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の試料中に特定の塩基配列を有するDNAが含まれるか否かを判別する方法を表す工程図である。
 本実施形態の方法では、特定の塩基配列を有するDNAに相補的に結合可能な塩基配列を有するプライマーを用いる。
 まず、図10(a)に示す工程で、特定の塩基配列を有するDNAが含まれるか否かを判別したい溶液に、特定の塩基配列を有するDNAに相補的に結合可能な塩基配列を有するプライマー101、DNAポリメラーゼ8および4種類のdNTPを添加し、試料溶液100を調製する。なお、プライマー101は、特定の塩基配列を有する一本鎖DNAに完全にハイブリダイズするように設計されている。
 次に、図10(b)に示す工程で、試料溶液100の熱処理を行なう。このことによって、試料溶液100中に含まれているほとんどのDNAを一本鎖DNAとする。
 次に、図10(c)に示す工程で、試料溶液100を冷却する。このことによって、試料溶液100中に、特定の塩基配列を有するDNAから生成した一本鎖DNA102が存在する場合、一本鎖DNA102にプライマー101がハイブリダイズする。
 次に、図10(d)に示す工程で、試料溶液100の温度をプライマー伸長反応に最適な温度に調節する。一本鎖DNA102が存在する場合、一本鎖DNA102にプライマー101がハイブリダイズするので、プライマー伸長反応が起こる。このため、DNAポリメラーゼ8によってdNTPが消費され、ピロリン酸が生成する。
 なお、このとき、特定の塩基配列を有する一本鎖DNA102が存在しない場合、プライマー101はハイブリダイズできない。このため、プライマー伸長反応は起こらない。従って、dNTPはほとんど消費されず、ピロリン酸はほとんど生成されない。
 次に、ピロリン酸を定性的に検出することによって、プライマー伸長反応の進行の有無を判別する。ピロリン酸が存在すると判別された場合は、プライマーの伸長反応が進行したと判別する。そして、試料中に特定の塩基配列を有するDNAが存在したと判別する。一方、ピロリン酸が存在しないと判別された場合は、プライマーの伸長反応が進行しなかったと判別する。そして、試料中に特定の塩基配列を有するDNAが存在しなかったと判別する。すなわち、特定の塩基配列を有するDNAの有無を判別できる。なお、本実施形態のピロリン酸の定性検出方法は、上記実施形態1と全く同様であり、ここでは説明を省略する。
 以上に述べたように、試料中の特定の塩基配列を有する核酸の増幅法において生成されるピロリン酸を、H+−ピロホスファターゼを用いてH+濃度変化を解析することによって、試料中における特定の塩基配列を有する核酸の有無を判別することができる。また、本実施形態の方法を応用して、ある特定の塩基配列を有する核酸に相補的なプライマーを用いてプライマーの伸長反応を行い、反応によって生成したピロリン酸の量を基準となる配列のプライマーを用いてプライマーの伸長反応を行った場合に生成したピロリン酸の量と比較することにより、ある特定の塩基配列の基準となる塩基配列に対する相対的定量を行うこともできる。
 なお、本実施形態で説明した特定の塩基配列を有する核酸の有無を判別する方法は、上記実施形態1で説明したピロリン酸検出装置50、塩基種判別装置60、ならびにチップ53a、53bまたは90を用いて実施することが可能である。
 上記実施形態1および2では、4種類のdNTPを用いてプライマー伸長反応を利用する方法を説明したが、勿論、従来の技術で図21および22を参照しながら説明した、1種類のdNTP(またはddNTP)を用いるプライマー伸長反応を利用することも可能である。また、タイピングプライマーを含む2種類以上のプライマーを用いるPCR法等の特定の塩基配列を有する核酸の増幅法を併用してもよい。また、タイピングプライマーについても、3’末端がSNP部位に対応し、SNP部位に隣接する塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列を有するプライマーに限定されることはなく、プライマー伸長反応の進行の程度によって塩基種を判別できるプライマーであればよい。たとえば、3’末端がSNP部位に対応し、SNP部位に隣接する塩基配列に対して1塩基を除いて完全に相補的な塩基配列を有するプライマー、3’末端に隣接する部位がSNP部位に対応するプライマー等の公知のプライマーを用いることもできる。つまり、解析対象となるSNP部位を含む塩基配列を有する核酸の増幅をH+−ピロホスファターゼを用いて解析し、SNP部位の塩基種の判別を行えばよい。
 勿論、上記実施形態1の方法によれば、SNP部位の塩基種の判別だけでなく、特定の塩基配列を判別することも可能である。
 また、上記実施形態1および2では、DNAの塩基配列中の塩基種の判定およびDNAの検出について説明したが、勿論、DNAに限られず、RNAの塩基配列中の塩基種の判定およびRNAの検出も同様に行なうことができる。さらに、試料として、一本鎖DNA、二本鎖DNAに関わらず用いることが可能である。
 (ピロリン酸の検出実験1)
 本実施例を、Shizuo Yoshidaらの方法(Masayoshi Maeshima and Shizuo Yoshida、1989年、J.Biol.Chem.、264(33)、20068−20073ページ)に準じて以下に示すように行なった。
 まず、ヤエナリ由来の液胞膜からなる膜小胞をTris/Mesバッファー(濃度5mM、pH7.0)、sorbitol(濃度0.25M)、DTT(濃度2mM)からなる溶液中に溶かし液胞膜からなる膜小胞の懸濁液とした。
 次に、この懸濁液を、MgSO4(濃度1mM)、KCl(濃度50mM)、sorbitol(濃度0.25M)、アクリジンオレンジ(pH感受性色素、濃度3μM)、Hepes/Bristris propane(濃度25mM、pH7.2)からなる反応液中に混合し、H+−ピロホスファターゼ液とした。
 次に、このH+−ピロホスファターゼ液を4本のチューブに均等に分注し、これらに対してピロリン酸ナトリウムの各最終濃度がそれぞれ10μM、20μM、40μM、60μM、80μMおよび100μMとなるようにピロリン酸ナトリウム溶液を添加し、ピロリン酸のH+−ピロホスファターゼによる加水分解反応を開始した。
 本実施例では、上記の各反応液に493nmの励起光を照射し、ピロリン酸ナトリウム溶液を添加する前後における540nmの蛍光強度の変化を解析した。その結果を図11に示す。
 図11は、ピロリン酸ナトリウムの濃度と、540nmの蛍光強度の変化との関係を表すグラフである。ここでは、540nmの蛍光強度の変化を、各ピロリン酸ナトリウム濃度に対応する反応液における単位秒当たりの消光率で表している。なお、ピロリン酸ナトリウムの最終濃度が100μMの反応液における単位秒当たりの消光率を100%として、各ピロリン酸ナトリウム濃度に対応する反応液における単位秒当たりの消光率を換算している。
 図11に示すように、ピロリン酸ナトリウムの濃度に依存してアクリジンオレンジの1秒当たりの消光率がほぼ双曲線関数の関係で変化するという結果が得られた。このことから、アクリジンオレンジの1秒当たりの消光率を測定することにより、ピロリン酸を定量的に検出できることがわかる。
  (ピロリン酸の検出実験2)
 本実施例を、Masasuke Yoshida等の方法(MasaH.Sato、Masahiko Kasahara、Noriyuki Ishii、Haruo Homareda、Hideo MatsuiおよびMasasuke Yoshida、1994年、J.Biol.Chem.、269(9)、6725−6728ページ)に準じて以下に示すように行なった。
 まず、カボチャの種から液胞膜H+−ピロホスファターゼの精製を行なった。
 続いて、大豆のホスファチジルコリンとコレステロールとから調製した脂質混合液に、精製して得られた液胞膜H+−ピロホスファターゼを添加し、液胞膜H+−ピロホスファターゼのプロテオリポソーム液を調製した。このプロテオリポソーム液を、sorbitol(濃度0.25M)、Tricine−Na(濃度10mM、pH7.5)、EGTA(濃度0.1mM)、KCl(濃度50mM)、オクソノールV(膜電位感受性色素、濃度0.2μM)からなる反応液中に混合した後、5本のチューブに均等に分注した。
 続いて、5本のチューブにピロリン酸ナトリウムの最終濃度がそれぞれ10μM、20μM、40μM、60μM、80μMおよび100μMとなるようにピロリン酸ナトリウム溶液を添加し、ピロリン酸のH+−ピロホスファターゼによる加水分解反応を開始した。
 本実施例では、上記の各反応液に610nmの励起光を照射し、ピロリン酸ナトリウム溶液を添加する前後における639nmの蛍光強度の変化を測定することによって、ピロリン酸ナトリウム溶液の添加前後における各反応液に含まれるプロテオリポソームの膜電位変化について解析した。その結果を図12に示す。
 図12は、ピロリン酸ナトリウムの濃度と、639nmの蛍光強度の変化との関係を表すグラフである。ここでは、639nmの蛍光強度の変化を、各ピロリン酸ナトリウム濃度に対応する反応液における単位秒当たりの消光率で表している。なお、ピロリン酸ナトリウムの終濃度が100μMの反応液における単位秒当たりの消光率を100%として、各ピロリン酸ナトリウム濃度に対応する反応液における単位秒当たりの消光率を換算している。
 図12に示すように、ピロリン酸ナトリウムの濃度に依存してオクソノールVの1秒当たりの消光率がほぼ双曲線関数の関係で変化するという結果が得られた。このことから、オクソノールVの1秒当たりの消光率を測定することにより、ピロリン酸を定量的に検出できることがわかる。
  (ピロリン酸の検出実験3)
 本実施例は、特開平6−90736号公報に開示された方法に準じて行なった。
 まず、上記実施例2と同様にカボチャの種由来の液胞膜H+−ピロホスファターゼを用い、市販のISFET-pHセンサ上に液胞膜H+−ピロホスファターゼを含む脂質二重層を固定した。ただし、脂質二重層の外部はMgSO4(濃度1mM)、KCl(濃度50mM)、sorbitol(濃度0.25M)、Hepes/Bristris propane(濃度25mM、pH7.2)からなる反応溶液によって満たした。
 次に、上述した液胞膜H+−ピロホスファターゼを含む脂質二重層が固定されたISFET-pHセンサを用いて、上記反応溶液中のピロリン酸ナトリウムの最終濃度がそれぞれ20μM、40μM、60μM、80μMおよび100μMとなるようにピロリン酸ナトリウム溶液を添加した場合の各pH値を測定した。その結果を図13に示す。
 図13に示すように、ピロリン酸ナトリウムの濃度に依存してpH値が減少していく結果が得られた。このことから、pH値を測定することによって、ピロリン酸を定量的に検出できることがわかる。
 本実施例では、試料中におけるλDNA(λDNAの全塩基配列は、GenBankデータベースのAccession No.V00636、J02459、M17233、X00906を参照)の検出を行なった。
 まず、λDNA(宝酒造(株)製)が10ng/μLの濃度で蒸留水中に溶解されている試料液A、および蒸留水のみからなる試料液Bを用意した。また、図14(a)に示すように、λDNAの特定の塩基配列に完全にハイブリダイズし得る2種類のプライマーCおよびプライマーDをそれぞれ蒸留水に溶かしたプライマー溶液EおよびF(いずれも20μM)を用意した。
 上記試料液AおよびBそれぞれに、TaKaRa La Taq(5U/μL、宝酒造(株)製)、TaKaRa La Taqの専用バッファーである2×GC bufferI(宝酒造(株)製)、dNTP mixture(各濃度2.5mM、宝酒造(株)製)、ならびにプライマー溶液EおよびFを添加して、図14(b)に示す組成のPCR反応液GおよびHを調製した。
 次に、PCR反応液GおよびHのそれぞれについて、図14(c)に示す反応温度条件でPCR反応を行なった。
 PCR反応終了後、PCR反応液GおよびHのそれぞれを、上記実施例1に記載のH+−ピロホスファターゼ液と混合し反応させた。
 本実施例では、PCR反応液GおよびHのそれぞれについて、H+−ピロホスファターゼ液を混合する前後におけるアクリジンオレンジの蛍光強度変化について解析した。アクリジンオレンジの蛍光強度解析については、493nmの励起光を照射し540nmの蛍光強度について解析した。その結果を図15(a)に示す。
 図15(a)は、PCR反応液GおよびHのそれぞれに、H+−ピロホスファターゼ液を混合する前後における蛍光強度変化率を示している。なお、蛍光強度変化率は、図15(b)に示す式で表される。
 図15(a)に示すように、PCR反応液Gの方が、PCR反応液Hよりも明らかに蛍光強度変化率が大きい。すなわち、PCR反応液Gではピロリン酸が生成されており、プライマー伸長反応が進行したことがわかる。かかる結果に基づいて、PCR反応液Gには、標的核酸が存在していたと判別される。従って、アクリジンオレンジの蛍光強度を測定することにより標的核酸の検出ができることがわかる。
 本実施例では、λDNAの塩基配列内におけるある塩基を人為的に他の塩基に置換した変異型λDNAを作製し、通常のλDNAと変異型λDNAとを判別できるか否かについて検討した。
 まず、λDNA(宝酒造(株)製)を用いて変異型λDNAを作製した。変異型λDNAは、図16に示したλDNA(以下、通常のλDNAのことを野性型λDNAと記す)の二本鎖DNA配列内に存在するGC塩基対(図中の領域R1)を当業者に周知の方法で人為的にAT塩基対(図中の領域R2)に置換した。
 次に、野性型λDNAおよび変異型λDNAのそれぞれを最終濃度10ng/μLとなるように蒸留水に溶解したものをそれぞれ野性型λDNA液および変異型λDNA液とした。
 次に、上記の塩基の違いを判別するために、図16(a)に示すタイピングプライマーを用意した。続いて、タイピングプライマーを最終濃度20μMとなるように蒸留水に溶解したタイピングプライマー溶液を調製した。
 なお、図16(a)に示すタイピングプライマーは、野性型λDNAの下の段に記した一本鎖DNAに完全にハイブリダイズする。しかし、このタイピングプライマーの3’末端のGは、変異型λDNAの下の段に記した一本鎖DNAにハイブリダイズできない。従って、このタイピングプライマーを用いてプライマー伸長反応を行なうと、野性型λDNAの場合は良好に反応が進行するが、変異型λDNAの場合は反応があまり進行しない。
 また、上記実施例4で用いたプライマー溶液Fも用意した。
 次に、野性型λDNA液および変異型λDNA液のそれぞれについて、TaKaRa Taq(5U/μL、宝酒造(株)製)、およびTaKaRa Taq専用の10×PCR buffer(宝酒造(株)製)、およびdNTP mixture(各濃度2.5mM、宝酒造(株)製)、およびタイピングプライマー溶液およびプライマー溶液Fを用いて、図16(b)に示す組成のPCR反応液IおよびJを調製した。
 次に、PCR反応液IおよびJにおいて、それぞれ図16(c)に示す反応温度条件でPCR反応を行なった。
 PCR反応終了後、PCR反応液IおよびJを、それぞれH+−ピロホスファターゼ・リポソーム液と混合し反応させた。H+−ピロホスファターゼ・リポソーム液は、Masasuke Yoshida等の方法(MasaH.Sato、Masahiko Kasahara、Noriyuki Ishii、Haruo Homareda、Hideo Matsui and Masasuke Yoshida.、1994年、J.Biol.Chem.、269(9)、6725−6728ページ)に準じて調製した。
 具体的には、まず、カボチャの種から液胞膜H+−ピロホスファターゼの精製を行なった。続いて、大豆のホスファチジルコリンとコレステロールとから調製した脂質混合液に、精製して得られた液胞膜H+−ピロホスファターゼを添加し、液胞膜H+−ピロホスファターゼのプロテオリポソーム液を調製した。このプロテオリポソーム液を、sorbitol(濃度0.25M)、Tricine−Na(濃度10mM、pH7.5)、EGTA(濃度0.1mM)、KCl(濃度50mM)、オクソノールV(膜電位感受性色素、濃度0.2μM)からなる反応液中に混合し、これをH+−ピロホスファターゼ・リポソ−ム液とした。
 本実施例では、上記の各PCR反応液に610nmの励起光を照射し、ピロリン酸ナトリウム溶液を添加する前後におけるオクソノールVの639nmの蛍光強度の変化を測定することによって、各反応液に含まれるプロテオリポソームの膜電位変化について解析した。その結果を図17に示す。
 図17は、PCR反応液IおよびJのそれぞれの混合前後における蛍光強度変化率を示している。図17に示すように、PCR反応液Iの方が、変異型PCR反応液Jよりも明らかに蛍光強度変化率が大きい。これは、PCR反応液JではPCR反応が良好に進行しなかったが、PCR反応液Iは良好に進行し、その結果、生成されたピロリン酸がリポソームに存在するH+−ピロホスファターゼと反応し、リポソーム内にH+が輸送されたためと考えられる。
 従って、本実施例によれば、DNAの特定の塩基配列中の1塩基対の違いを判別できることがわかる。すなわち、本実施例の方法は、SNP部位の塩基種の判別、突然変異による1塩基対の変異など、特定の塩基種を判別するために非常に有効であることを示すものである。
 本実施例では、上記実施例5とは異なり、1塩基伸長反応とH+−ピロホスファターゼの反応とを組み合わせた方法で、野生型λDNAと変異型λDNAとの間の1塩基対の違いを判別できるか否かについて検討した。
 まず、上記実施例5で用いたものと同じ野性型λDNAおよび変異型λDNAをそれぞれ終濃度が5mMとなるように蒸留水に溶解した野性型λDNA(5mM)液および変異型λDNA(5mM)液を調製した。
 次に、図18(a)に示すプライマーを用意した。このプライマーは、実施例5で、図16(a)に示した野性型λDNAの下段側の一本鎖DNAに、5’末端のCを除く配列に対して完全にハイブリダイズし得る。すなわち、実施例5で示した変異型λDNA配列の下段側の一本鎖DNA配列においても同様に、5’末端のTを除く配列に対して完全にハイブリダイズし得る。
 次に、このプライマーを、最終濃度0.2mMとなるように蒸留水に溶かしたプライマー溶液Mを調製した。
 続いて、野性型λDNA(5mM)液および変異型λDNA(5mM)液それぞれについて、TaKaRa Taq(5U/μL、宝酒造(株)製)、およびTaKaRa Taq専用の10×PCR buffer(宝酒造(株)製)、および2.5mMのdATP溶液、およびプライマー溶液Mを用いて、図18(b)に示す組成の伸長反応液KおよびLを調製した。
 続いて、伸長反応液KおよびLのそれぞれについて、図18(c)に示す反応温度条件で1塩基伸長反応を行なった。
 1塩基伸長反応終了後、各伸長反応液をH+−ピロホスファターゼを固定した修飾ISFET電極に導入した。修飾ISFET電極は、上記実施例3で用いたものである。
 この修飾ISFET電極を用いて、各伸長反応液を添加した場合の各pH値を測定した。その結果、伸長反応液KのpHは6.89であったのに対し、伸長反応液LのpHは6.02であった。この結果は、野性型λDNAを含む伸長反応液Kでは伸長反応が起きなかったが、変異型λDNAを含む伸長反応液LではdATPによる1塩基伸長反応が起こり、その結果、生成されるピロリン酸が修飾ISFET電極上のH+−ピロホスファターゼと反応し、H+が修飾ISFET電極側に輸送されたためと考えられる。
 本方法によれば、標的核酸の塩基配列中の1塩基対の違いを判別できることがわかる。つまり、本方法はSNP部位の塩基種の判別、突然変異による1塩基対の置換など、特定の塩基配列を判別するための非常に有効な方法であることがわかる。
 本発明の塩基種判別方法および塩基種判別装置は、SNP部位の塩基種の判別に利用することができ、従ってSNPタイピングに基づいた薬の投与といったテーラーメード医療に有用である。また、本発明の塩基判別方法および塩基種判別装置は、DNAの塩基配列中の突然変異の解析に有用であり、かかる解析結果を創薬や臨床に利用することができる。
 本発明の核酸の検出方法は、遺伝病の診断、細菌およびウイルス等による食品の汚染検査、細菌およびウイルス等の人体への感染検査に有用である。
図1は、実施形態1の試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する方法を表す工程図である。 図2は、実施形態1の試料中の標的DNAのSNP部位の塩基種を判別する方法を表す工程図である。 図3は、H+−ピロホスファターゼを模式的に表す図である。 図4は、ピロリン酸の検出方法を表す図である。 図5は、ピロリン酸の検出装置を表す図である。 図6は、実施形態1の塩基種判別装置を表す模式図である。 図7(a)は、実施形態1のチップを模式的に表す上面図であり、図7(b)は、図7に示したX−X線に沿った断面図である。 図8は、実施形態1の別のチップを模式的に表す上面図である。 図9は、実施形態1の更に別のチップを模式的に表す斜視図である。 図10は、実施形態2の試料中に特定の塩基配列を有するDNAが含まれるか否かを検出する方法を表す工程図である。 図11は、ピロリン酸ナトリウムの濃度と、540nmの蛍光強度の変化との関係を表すグラフである。 図12は、ピロリン酸ナトリウムの濃度と、639nmの蛍光強度の変化との関係を表すグラフである。 図13は、ピロリン酸ナトリウムの濃度とpH値との関係を表すグラフである。 図14(a)は、λDNAの特定の塩基配列に完全にハイブリダイズし得る2種類のプライマーCおよびプライマーDを表す図であり、図14(b)は、PCR反応液GおよびHの組成を表す表であり、図14(c)は、PCR反応を行なった反応温度条件を表すフローチャートである。 図15(a)は、PCR反応液GおよびHのそれぞれに、H+−ピロホスファターゼ液を混合する前後における蛍光強度変化率を示すグラフであり、図15(b)は、蛍光強度変化率を示す式である。 図16(a)は、野性型λDNA、変異型λDNAおよびタイピングプライマーを表す図であり、図16(b)は、PCR反応液IおよびJの組成を表す表であり、図16(c)は、PCR反応を行なった反応温度条件を表すフローチャートである。 図17は、PCR反応液IおよびJのそれぞれの混合前後における蛍光強度変化率を示している。 図18(a)は、プライマーを表す図であり、図18(b)は、PCR反応液KおよびLの組成を表す表であり、図18(c)は、PCR反応を行なった反応温度条件を表すフローチャートである。 従来のプライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術を表す工程である。 従来のプライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術を表す工程である。 従来のプライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術を表す工程である。 従来のプライマー伸長反応を利用したSNP部位の塩基種の判別技術を表す工程である。
符号の説明
 1、2 DNA
 3、4、5、6 一本鎖DNA
 7 タイピングプライマー
 8 DNAポリメラーゼ
 10 ピロリン酸
 11 H+−ピロホスファターゼ
 12 リン酸
 13 液胞膜
 31 反応容器
 32 試料溶液
 33 膜小胞
 34 容器
 35 電極
 36 内部槽
 37 膜
 38 H+感受性電極
 39 内部領域(第2領域)
 50 ピロリン酸測定装置
 51 反応手段
 51a 反応部
 51b ピロリン酸測定部
 52 解析手段
 53、53a、53b、90 チップ
 60 塩基種判別装置
 70 サンプル注入口
 71 DNA抽出槽
 72 DNA精製槽
 73 PCR槽
 74a、74b、74c 流路
 75 開閉部材
 91 サンプル導入部
 91a サンプル導入槽
 91b DNA抽出カラム
 92 DNA精製部
 92a DNA精製槽
 92b DNA精製カラム
 93 PCR部
 93a PCR槽
 93b 隔離部材
 100 試料溶液
 101 プライマー
 102 一本鎖DNA

Claims (30)

  1.  プライマーの伸長反応を検出する伸長反応検出方法であって、該方法は以下の工程を包含する;
     核酸と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、
      前記試料溶液を前記伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、
      表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、
      前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、および
      工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)。
  2.  核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別方法であって、該方法は以下の工程を包含する;
     核酸と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、
      前記試料溶液を前記プライマーの伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、
      表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、
      前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、
      工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、および
      工程(e)の検出結果に基づいて前記核酸の塩基配列中の塩基種を判別する工程(f)。
  3.  工程(d)において、前記表面側の溶液のH濃度と、工程(b)後であって工程(c)前の前記試料溶液のH濃度との差を測定する、請求項2に記載の塩基種判別方法。
  4.  工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出する、請求項3に記載の塩基種判別方法。
  5.  前記塩基種の判別が、SNP部位の塩基種の判別であり、
     前記対照値は、前記核酸として前記SNP部位が変異していない核酸を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果である、請求項4に記載の塩基種の判別方法。
  6.  工程(d)において、前記裏面側の溶液のH濃度を検出し、
     工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出する、請求項2に記載の塩基種判別方法。
  7.  前記塩基種の判別が、SNP部位の塩基種の判別であり、
     工程(a)において、前記ヌクレオチドとして1種類のヌクレオチドを用い、
     前記対照値は、前記核酸として前記SNP部位の塩基種が異なる核酸を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果である、請求項6に記載の塩基種判別方法。
  8.  工程(d)では、前記H濃度を光学的に測定する、請求項2に記載の塩基種判別方法。
  9.  工程(d)では、前記表面側の溶液および前記裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、pH感受性色素または膜電位感受性色素が添加されている、請求項8に記載の塩基種判別方法。
  10.  工程(d)では、前記表面側の溶液および前記裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、アクリジンオレンジまたはオクソールVが添加されている、請求項9に記載の塩基種判別方法。
  11.  工程(d)では、前記H濃度を電気的に測定する、請求項2に記載の塩基種判別方法。
  12.  前記伸長反応は、PCR法に従った伸長反応である、請求項2に記載の塩基種判別方法。
  13.  核酸の塩基配列中の塩基種を判別する塩基種判別装置であって、
     プライマーの伸長反応に必要な温度調節を行う反応部と、
     前記プライマー伸長反応に伴って生成されるピロリン酸を検出するピロリン酸検出部とを備え、
     前記反応部は、溶液を貯留する反応用貯留領域を備え、
     前記ピロリン酸検出部は、溶液を貯留する検出用貯留領域と、前記検出用貯留領域を第1領域と第2領域とに分離するH難透過性膜と、第1領域および第2領域の少なくともいずれか一方の領域に貯留された溶液のH濃度を測定する測定手段とを備え、
     前記H難透過性膜は、その表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有し、
     前記ピロリン酸検出部において、前記反応部から送出される反応溶液は、第1領域に貯留される、塩基種判別装置。
  14.  前記測定手段は、H濃度を光学的に測定する、請求項13に記載の塩基種判別装置。
  15.  前記測定手段は、H濃度を電気的に測定する、請求項13に記載の塩基種判別装置。
  16.  前記反応部および前記ピロリン酸検出部を制御し、前記測定手段による測定結果を解析する解析手段をさらに備える、請求項13に記載の塩基種判別装置。
  17.  前記反応用貯留領域および前記検出用貯留領域を具備したチップを挿入可能なスロットをさらに備える、請求項13に記載の塩基種判別装置。
  18.  容器と、前記容器内を第1領域と第2領域とに分離するH難透過性膜と、第1領域に貯留される溶液に接触するように設けられた電極と、第2領域に貯留される溶液に接触するように設けられたH感受性電極とを備え、
     前記H難透過性膜は、その表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有する、ピロリン酸検出装置。
  19.  特定の塩基配列を有する核酸の検出方法であって、該方法は以下の工程を包含する;
     試料と、前記核酸に相補的に結合する相補結合領域を含む塩基配列を有するプライマーと、ヌクレオチドとを含む試料溶液を調製する工程(a)、
      前記試料溶液を前記プライマーの伸長反応が生じる条件下におき、前記伸長反応が生じた場合にピロリン酸を生成する工程(b)、
      表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有するH難透過性膜の表面に前記試料溶液を接触させる工程(c)、
      前記H−ピロホスファターゼを溶液に浸漬させた状態で、前記H難透過性膜の表面側の溶液もしくは前記H難透過性膜の裏面側の溶液の少なくともいずれか一方のH濃度を測定する工程(d)、
      工程(d)の測定結果に基づいて前記伸長反応を検出する工程(e)、および
      工程(e)の検出結果に基づいて前記核酸を検出する工程(f)。
  20.  工程(d)において、前記表面側の溶液のH濃度と、工程(b)後であって工程(c)前の前記試料溶液のH濃度との差を測定する、請求項19に記載の核酸の検出方法。
  21.  工程(e)において、工程(d)の測定結果を対照値と比較することにより前記伸長反応を検出する、請求項20に記載の核酸の検出方法。
  22.  前記対照値は、核酸を含まない前記試料を用いて工程(a)、(b)、(c)、(d)を行い、工程(d)で得られた測定結果である、請求項21に記載の核酸の検出方法。
  23.  工程(d)では、前記H濃度を光学的に測定する、請求項19に記載の核酸の検出方法。
  24.  工程(d)では、前記表面側の溶液および前記裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、pH感受性色素または膜電位感受性色素が添加されている、請求項23に記載の核酸の検出方法。
  25.  工程(d)では、前記表面側の溶液および前記裏面側の溶液のうち少なくともいずれか一方に、アクリジンオレンジまたはオクソールVが添加されている、請求項24に記載の核酸の検出方法。
  26.  工程(d)では、前記H濃度を電気的に測定する、請求項19に記載の塩基種判別方法。
  27.  前記伸長反応は、PCR法に従った伸長反応である、請求項19に記載の塩基種判別方法。
  28.  プライマーの伸長反応を行うための反応槽と、ピロリン酸を検出するためのピロリン酸検出槽と、前記反応槽と前記ピロリン酸検出槽とを接続する流路とを備える、試料溶液導入チップ。
  29.  前記流路は、開閉可能である、請求項28に記載の試料溶液導入チップ
  30.  前記ピロリン酸検出槽は、H難透過性膜によって分離された第1領域および第2領域を有し、
     前記H難透過性膜は、その表裏を貫通し、ピロリン酸を加水分解する活性部位が表面に露出しているH−ピロホスファターゼを有し、
     前記ピロリン酸検出槽において、前記反応槽から前記流路を介して送出される反応溶液は、第1領域に貯留される、請求項28に記載の試料溶液導入チップ。
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