JP2004138467A - 紫外線吸収式測定装置および測定試料の処理方法 - Google Patents
紫外線吸収式測定装置および測定試料の処理方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定が可能な紫外線吸収式測定装置および測定試料の処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とする。特に、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合などに非常に有効である。また、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように共存NOの影響を排除する手段としても適用可能である。
【選択図】 図1
【解決手段】1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とする。特に、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合などに非常に有効である。また、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように共存NOの影響を排除する手段としても適用可能である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収式測定装置に関するもので、特に、同一元素からなる異なった化合物を測定する場合や測定試料中の共存成分の干渉影響が無視できない場合の測定装置および測定試料の処理方法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、同一元素からなる異なった化合物の測定、例えば、自動車等移動排出源からの排気ガスや煙道等固定排出源からの排ガス中のNOx測定技術は、「JIS法(B7982など)」により概略が示され、一般には排出ガス(試料)中の窒素酸化物(以下「NOx」という。)のように、一酸化窒素(以下「NO」という。)と二酸化窒素(以下「NO2 」という。)との混成物の場合には、共存するNO2 をNOに変換してトータルNOxとして、非分散紫外線吸収法(以下「NDUV法」という。)や化学発光法(以下「CLD法」という。)、非分散赤外線吸収法(以下「NDIR法」という。)で測定する方法が利用される。
【0003】
図8に固定排出源からの排ガス中のNOx計測器の構成例を示す(例えば非特許文献1参照)。煙道入口や脱硝装置前後のダクト内の排ガス流に挿入された採取管51から吸引採取された試料ガスは、1次フィルタ52でダストをほぼ取り除き、導管53(加熱配管)、試料導入口54を経由して計測装置55に導入される。吸引採取は、一般には計測装置内に設けられた吸引ポンプ56によって行われる。計測装置内では、校正ガスとの切換を行う切換弁57を介して試料ガスを常温に戻し、配管等で発生したドレンをセパレータ(図示せず)で気液分離し、除湿器58にて一定温度まで露点を下げた状態で、2次フィルタ59で清浄にした後試料中のNO2 をNOに変換するコンバータ60を経て、絞り弁61によって所定流量に制御して分析計63に導入する。制御された流量は流量計によって、確認することができる。分析計63に導入されない試料ガスはバイパスへ流出され、分析計63を通過した後必要な処理、例えばCLD法の場合は残留オゾンを分解処理する、等を行ったガスとともに排気ダクトなどに排出される。分析計63の出力は記録指示計64によって明示される。
【0004】
逆に、NOをNO2 に変換してトータルNOxとして、NDUV法やNDIR法で測定する方法が利用されることもある。例えば、NOを含む試料を、オゾン発生器を介して測定セルに導入するラインを設け、オゾンによりNO2 に変換した試料の吸光度と変換しない試料の吸光度の差から、試料中のNO濃度を測定する方法が提案されている(例えば特許文献1等)。
【0005】
むろん、NDUV法やNDIR法については、複数の波長域を用いて場合、NOとNO2 を別個に測定する方法も採用されている。例えば、図9に示すように、光源部1から照射された紫外線が、試料セル2を通過して検出器3に到達し、試料セル2を導入された試料中に測定成分が存在する場合には、その吸収量分だけ検出器3に到達する紫外線が低下し、その差を検出することで測定成分の濃度を測定することができる。ここで、NOの吸収波長である226nmおよびNO2 の吸収波長である380nmをそれぞれ中心とする上記波長域を選択的透過するバンドパスフィルタ(以下「BPF」という。)と呼ばれる光学フィルタ4、4’を機械的に切換えて、各波長域での吸光度から、試料セルに導入された試料中のNOおよびNO2 の濃度を測定するNDUV法が挙げられる。
【0006】
また、NDUV法やNDIR法による各種試料中の特定成分の測定においては、試料中に共存する他の成分による干渉影響が無視できない場合が多く、通常、測定部において複数の検出器によって各成分を測定して相互に補正しあう方法や、何らかのスクラバーなどによって除去処理を行ってから測定部に試料に導入する方法などが用いられる。
【0007】
前者の代表例としては、上記の図に示すような構成で、一方の波長域を干渉成分の吸収波長を含む光学フィルタを用いる方法が採られ、このときの出力を測定成分の吸収波長用光学フィルタでの出力から減算することで、干渉影響の少ない測定ができることとなる。
【0008】
後者の代表例としては、試料中の水分について、上記のように電子冷却器を使用して約2〜10℃飽和で一定濃度にして実質的に影響がない条件を作る方法や、半透膜除湿器を用いて約−20〜30℃飽和まで除去する方法も多く利用されている。また、温暖化ガスの1つといわれる酸化亜窒素(以下「N2 O」という。)の大気中の濃度測定において、干渉影響が大きく、かつ、濃度変動も大きい一酸化炭素(以下「CO」という。)や二酸化炭素(以下「CO2 」という。)については、補正が難しいことから、COは鉄−マンガン系化合物、CO2 はアルカリ酸化物やアルカリ水酸化物を用いて除去する方法などが知られている。
【0009】
【非特許文献1】
日本工業規格「JIS B7982−1995」
【特許文献1】
特開昭52−119988号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記試料処理方法では、以下のような課題が生じることがある。
【0011】
例えば、同一元素からなる異なった化合物の測定例としてNO2 をNOに変換して測定する場合、NO2 −NOコンバータが不可欠であり、変換効率の維持や温度管理(一般に高温条件で使用する。)など、試料の性状によっては保守等に負荷がかかる場合もある。また、図10に代表的なNOx測定法であるCLD法の測定器の一例を示すが、試料中の共存成分による測定誤差要因としては、上記の共存成分による干渉影響以外にクェンチングつまり励起分子が他の分子に衝突することによってエネルギーを失う減光現象による影響とがあることが知られている。具体的には、共存する二酸化炭素(以下「CO2 」という。)による影響であり、上記のような試料の処理ではこれを除去することはできず、大きな誤差要因となりうる。さらに、オゾン発生器65やオゾン分解器66、或いは検出部での流量影響を防止するために精度の高い流量制御部67、67’ や圧力調整器68,68’ が必要となる点においても簡便性に欠ける場合がある。
【0012】
また、NOをNO2に変換して測定する場合にあっても、従来は、試料を別途オゾン発生器や酸化器を通過させて変換処理を行った後、測定部であるNDUV法やNDIR法に導入して測定する方法が採られることから、かかる処理部の設置に伴うコストアップや保守等煩雑な作業が必要となる。
【0013】
さらに、こうした前処理をせずに、複数の波長域を利用するNDUV法やNDIR法の場合にあっては、例えば光学フィルタの切換えのための機構が必要となり、測定器の光学系が複雑なものとなり高度な調整を必要とする場合が多い。また、コストアップの要因となる。
【0014】
一方、試料中に共存する他の成分による干渉影響を複数の検出器によって補正しあうNDUV法やNDIR法の場合にあっては、検出器の数が増えれば増えるだけ光学系の複雑化を招くことになる。また、NDUV法やNDIR法のように吸光度を測定する方法では、濃度が大きく異なる共存成分が存在する場合には、検出器の各成分に対する直線性の相違により補正精度が非常に悪くなることがある。
【0015】
また、スクラバーなどによって妨害成分を除去処理した後、NDUV法やNDIR法によって測定する場合にあっては、別途こうした処理部を必要とするとともに、設置に伴うコストアップや保守等煩雑な作業が必要となる。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定が可能な紫外線吸収式測定装置および測定試料の処理方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す試料処理方法および試料処理ユニットにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0018】
本発明は、1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とし、特に、上記特定成分の変化後の物質の紫外線吸収量から、試料中の測定成分濃度を検出する場合に有効である。こうした測定装置または試料の処理方法によって、NDUV法における光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。例えば、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易に行うことができるとともに、高い測定精度も確保することができる。
【0019】
また、本発明は、上記特定成分が、測定成分に対して妨害成分となる場合にも適用が可能である。例えば、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の妨害成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、共存成分の影響を受けずに、測定器としての所定の精度を確保することができる。
【0020】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることを特徴とする。こうした測定装置によって、試料中の共存成分の変動に対応した妨害成分の除去を可能とするとともに、妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。
【0021】
本発明は、上記試料セルに導入する前段で、試料中の特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする。例えば、NOをNO2 に変換させるためには、光源部からの紫外線に加え酸素(以下「O2 」という。)が不可欠であるが、試料中に存在しない場合や濃度変動の激しい場合には、所定量添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。
【0022】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明は、1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とする。特に、本発明は、上記測定対象成分がNOxであり上記特定成分がNOの場合や、上記測定対象成分がSO2であり上記特定成分が妨害成分の1つであるNOである場合に好適である。
【0024】
以下、具体的な実施態様の1つとして、測定対象成分がNOxであり、測定成分の1つであるNOをNO2 に変換し、試料中に元来存在するNO2 とともに、NOxをNO2 としてNDUV法で測定する場合について説明する。
【0025】
図1に、本発明が適用されるNDUV法に係る測定装置の一例を示す。
(1)試料を処理部6に導入する
(2)光源部1の一の面から紫外線を照射する
(3)試料中のO2 の一部をO3 に変換する
O2 + hν → O2 + [O]
(4)変換したO3 がNOと反応して、試料中のNOがNO2 に変換する
NO + [O] → NO2
(5)この状態で、試料を試料セル2に導入する
(6)試料に、光源部1の他の面からの紫外線を照射する
(7)試料セル2中のNO2 によって紫外線の一部が吸収される
(8)試料セル2からの紫外線を検出器3で検出する
ことで、別途検出器や処理部材を設置することなく、NOとNO2 が混在した試料中のNOx測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。また、このとき、検出器3は同時に反応のための照射紫外線量を監視することができるため、別個モニター用検出器を設ける必要がなく、測定精度の保持・管理にとっても非常に有効である。
【0026】
ここで、試料は、自動車排気ガス測定や固定排出源排ガス測定においては、約0.1〜3l/minを導入するのが一般的であるが、本願では、紫外線による反応を考慮すると約100〜500ml/minが好適である。ただし、これに限定されるものではなく、試料セルの温度低下による影響のない範囲であれば、さらに大量に導入することも多い。
【0027】
また、(2)において照射する紫外線は、波長185nm近傍を含むものが好適で、試料中のO2 を有効にO3 に変換することができる。また、紫外線光源としては、一般に、重水素ランプ、キセノンランプ、水銀ランプ等が使用されるが、変調可能な光源として測定装置に用いられる場合には、印加電流の調整が容易で応答の速い重水素ランプやキセノンランプが好適である。また、光源部1と処理部6との境界には、通常石英やサファイアまたはフッ化カルシウムのような光学結晶5が設けられて光源部1を保護している。
【0028】
試料セル2は、通常、加工性および強度面を考慮して石英やガラス或いはステンレス鋼やアルミニウムといった金属管を使用することが多い。形状は、測定成分の濃度に合わせてセル長が決定され、1〜500mm程度の円筒形が一般的であるが、内面にミラーを設けて多重反射を利用した実質長光路セルなども多く利用されている。セル径も同様で、多種多様な工夫が可能である。
【0029】
図2は、NO、NO2 、SO2 という代表的な成分についての紫外線吸収スペクトルを示すもので、(6)において照射される紫外線は、通常、他の共存成分の吸収が殆どなく、NO2 の吸収の大きな350〜400nmの波長域を利用する。従って、本発明に用いる光源部1は、(2)におけるO3 への変換に必要な波長域である185nm近傍および350〜400nmを照射できる素子でなければならないが、上記重水素ランプ等で十分対応可能である。多くの紫外線ランプは連続的に両者を含む紫外線を発光することが可能であるが、むろん非連続であっても使用上問題とはならない。通常、試料セル2と検出器3の境界に、光学結晶5とともに上記波長域を選択的透過するバンドパスフィルタ(以下「BPF」という。)と呼ばれる光学フィルタ4が設けられ、試料から検出器3を保護する役割をも果たしている。
【0030】
また、紫外線検出用の検出器3としては、光電子倍増管やシリコンフォトセル或いはシリコンフォトダイオードが使用可能であるが、光電子増倍管は一般に高感度であるが高価であり、昨今はフォトセルやフォトダイオードが多く用いられている。
【0031】
ただし、図1のような試料セル2が1本の検出部を用いて非常に低濃度の成分を測定する場合には、通常の光源部1の安定性では、測定精度を確保することが難しいため、図3のような2つの波長域を検出するタイプを用いることがある。つまり、光学フィルタ4をNO2 の吸収がある350〜400nmの波長域BPF、光学フィルタ4’ をNO2 や他の共存成分の紫外線吸収が殆どない250nmを中心とする波長域BPFとして使用し、検出器3からの測定信号を、検出器3’ からの基準信号によって補正を行うことで、光源部1等の不安定要因に基づく出力誤差を低減している。
【0032】
表1に、BPFとして380〜400nmのフィルタを用いたときの各種成分による検出感度を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
さらに、光源部1を一定周期でON−OFFを繰り返す、いわゆる「変調」手段が採られることがある。つまり、光源部1からのすべての紫外線の内、実際に試料セル2で吸収され、測定に関与する割合は非常に少なく、検出器3が受光する絶対光量の微小変化が指示に影響する。しかし、光源OFF状態とON状態を繰り返すと、OFF状態を基準に両者の差を常に絶対光量として捉えることができ、検出器3のゼロ点変化や試料セル部2の汚れ或いは光源部1の光量変化などの影響を含めた、検出器3’ からの信号を使って検出器3の信号を補正することが可能である。つまり、図4(A)および(B)のように、試料セル部2の汚れ或いは光源部1の光量変化などによって、OFF状態での検出器出力が変化しても、c=(b−a)/bなる式に、基準信号b、b’ 、b” および測定信号a、a’ a” を挿入し、測定成分の紫外線吸収に関係する出力c、c’ 、c” を得ることができる。
【0035】
本願では、さらに、図5のように、光源部1を試料セル2内に設け、試料セル2の一端に測定用検出器3基準用検出器3’ を設ける構成を採ることで、光源部1の一面側の試料セル2の入口に近い空間2’ での約185nmの紫外線による反応を確保しつつ、反応後の試料ガスを光源部1の他面側のセル空間2” に導入し、試料の吸収量を測定することができる。
【0036】
図6は、いわゆる流体変調とよばれる測定方法を示し、基準ガス(測定成分ゼロ)と試料ガスを一定周期で交互に試料セル2に導入し、その変調周期の交流信号を取り出すことで、直接試料ガス中の成分濃度をえることができる。基準となる検出器3’ や光学フィルタ4’ が不要となるとともに、測定器のゼロ点が、試料ガス中の測定成分がゼロの状態の測定値であることから、理論的にゼロ点の変動がない点非常に優れた特性を有している。
【0037】
以上と同様の構成は、試料中の塩素(以下「Cl2 」という。)の測定にも適用が可能である。つまり、Cl2 は水素(以下「H2 」という。)の存在の下で以下の反応により塩化水素(以下「HCl」という。)に変換する。従って、HClとCl2 が共存する場合に塩化物として測定する場合に有効である。ただし、本反応は、Cl成分についての等モル反応ではないため塩化物のモル濃度の変化分を別途補正する必要がある。
【0038】
Cl2 + H2 → 2HCl
【0039】
次に、他の実施態様の1つとして、測定対象成分がSO2 であり、妨害成分の1つであるNOをNO2 に変換し、干渉影響の少ない条件下で、SO2 をNDUV法で測定する場合について説明する。
【0040】
試料中のNOをNO2 に変換する方法は上記と同様であるが、大気中のSO2 測定装置のような極低濃度(例えば10ppb程度)の測定については、紫外線吸収の波長域をSO2 の選択性の高い260〜320nmだけでなく240nm以下の吸収も利用する必要があり、空気中のNO(約100ppb)の干渉が無視できなくなる場合がある。また、240nm以下の吸収波長域ではNOに比べNO2 の方が干渉影響が少ないことから、NOをNO2 に変換して、260〜320nmおよび240nm以下の吸収波長域を利用することで、測定精度を高めることができる。
【0041】
また、燃焼炉の排ガス中のSO2 測定装置として、測定部にNDUV法を用いた場合、図2に示すように、Cl2 とSO2 と吸収スペクトルの重複が見られ、干渉影響を受ける。このとき、Cl2 と水分またはH2 が共存する試料に紫外線を照射すると、下式4のような反応が起こり、干渉影響の大きいCl2 が影響の少ないHClに変換され、干渉影響の少ない計測が可能となる。特に、ごみ焼却炉などでは、Cl2 が大量に共存する場合があり、本発明の適用は非常に有効である。
【0042】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることを特徴とする。NDUV法のような汎用型分析法に関しては、非常に幅広い測定成分や測定濃度に対応する必要があるとともに、干渉成分の濃度も大きく異なる場合がある。こうしたときに、一般には試料セルの長さを変更するが、ある範囲内であれば妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。光量の変更は、印加電力の変更のみならず、図5のような構成の場合には、光源部1の配置を試料セル内の最適位置に変更することも、試料流量によって変化する反応空間を調節するのに好適である。
【0043】
本発明は、上記試料セルに導入する前段で、試料中の特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする。例えば、NOをNO2 に変換させるために必要なO2 が試料中に存在しない場合やO2 濃度の変動が激しい場合には、安定した反応が確保できず測定精度が維持できない場合がある。このとき、図7のように、切換弁7を介して試料ガスに所定量のO2 を添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。O2 が不要な場合には、切換弁7を切換えて代わりに窒素(以下「N2 」という。)を添加することで同じ希釈率を確保して測定精度に影響を与えないようにしている。
【0044】
また、本発明は、上記のような気体の測定だけでなく、液体等の成分測定や、また、各種測定原理にも適用の可能性があり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うため、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。
【0046】
特に、例えば、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易に行うことができるとともに、高い測定精度も確保することができる。
【0047】
また、例えば、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の妨害成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、共存成分の影響を受けずに、測定器としての所定の精度を確保することができる。
【0048】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることによって、試料中の共存成分の変動に対応した妨害成分の除去を可能とするとともに、妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。
【0049】
また、例えば、NOをNO2 に変換させるためには、O2 が不可欠であるが、試料中に存在しない場合や濃度変動の激しい場合には、所定量添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の構成例を示す説明図
【図2】紫外線吸収スペクトル例を示す説明図
【図3】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図4】本発明の実施態様の一例であるNDUV法における検出器出力を示す説明図
【図5】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図6】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図7】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図8】従来技術の実施例である排気ガス測定装置の構成例を示す説明図
【図9】従来技術の実施例であるNDUV式測定装置の構成例を示す説明図
【図10】従来技術の実施例であるCLD式測定装置の構成例を示す説明図
【符号の説明】
1 光源部
2 試料セル
3、3’ 検出部
4 光学フィルタ
5 光学結晶
6 処理部
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線吸収式測定装置に関するもので、特に、同一元素からなる異なった化合物を測定する場合や測定試料中の共存成分の干渉影響が無視できない場合の測定装置および測定試料の処理方法として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、同一元素からなる異なった化合物の測定、例えば、自動車等移動排出源からの排気ガスや煙道等固定排出源からの排ガス中のNOx測定技術は、「JIS法(B7982など)」により概略が示され、一般には排出ガス(試料)中の窒素酸化物(以下「NOx」という。)のように、一酸化窒素(以下「NO」という。)と二酸化窒素(以下「NO2 」という。)との混成物の場合には、共存するNO2 をNOに変換してトータルNOxとして、非分散紫外線吸収法(以下「NDUV法」という。)や化学発光法(以下「CLD法」という。)、非分散赤外線吸収法(以下「NDIR法」という。)で測定する方法が利用される。
【0003】
図8に固定排出源からの排ガス中のNOx計測器の構成例を示す(例えば非特許文献1参照)。煙道入口や脱硝装置前後のダクト内の排ガス流に挿入された採取管51から吸引採取された試料ガスは、1次フィルタ52でダストをほぼ取り除き、導管53(加熱配管)、試料導入口54を経由して計測装置55に導入される。吸引採取は、一般には計測装置内に設けられた吸引ポンプ56によって行われる。計測装置内では、校正ガスとの切換を行う切換弁57を介して試料ガスを常温に戻し、配管等で発生したドレンをセパレータ(図示せず)で気液分離し、除湿器58にて一定温度まで露点を下げた状態で、2次フィルタ59で清浄にした後試料中のNO2 をNOに変換するコンバータ60を経て、絞り弁61によって所定流量に制御して分析計63に導入する。制御された流量は流量計によって、確認することができる。分析計63に導入されない試料ガスはバイパスへ流出され、分析計63を通過した後必要な処理、例えばCLD法の場合は残留オゾンを分解処理する、等を行ったガスとともに排気ダクトなどに排出される。分析計63の出力は記録指示計64によって明示される。
【0004】
逆に、NOをNO2 に変換してトータルNOxとして、NDUV法やNDIR法で測定する方法が利用されることもある。例えば、NOを含む試料を、オゾン発生器を介して測定セルに導入するラインを設け、オゾンによりNO2 に変換した試料の吸光度と変換しない試料の吸光度の差から、試料中のNO濃度を測定する方法が提案されている(例えば特許文献1等)。
【0005】
むろん、NDUV法やNDIR法については、複数の波長域を用いて場合、NOとNO2 を別個に測定する方法も採用されている。例えば、図9に示すように、光源部1から照射された紫外線が、試料セル2を通過して検出器3に到達し、試料セル2を導入された試料中に測定成分が存在する場合には、その吸収量分だけ検出器3に到達する紫外線が低下し、その差を検出することで測定成分の濃度を測定することができる。ここで、NOの吸収波長である226nmおよびNO2 の吸収波長である380nmをそれぞれ中心とする上記波長域を選択的透過するバンドパスフィルタ(以下「BPF」という。)と呼ばれる光学フィルタ4、4’を機械的に切換えて、各波長域での吸光度から、試料セルに導入された試料中のNOおよびNO2 の濃度を測定するNDUV法が挙げられる。
【0006】
また、NDUV法やNDIR法による各種試料中の特定成分の測定においては、試料中に共存する他の成分による干渉影響が無視できない場合が多く、通常、測定部において複数の検出器によって各成分を測定して相互に補正しあう方法や、何らかのスクラバーなどによって除去処理を行ってから測定部に試料に導入する方法などが用いられる。
【0007】
前者の代表例としては、上記の図に示すような構成で、一方の波長域を干渉成分の吸収波長を含む光学フィルタを用いる方法が採られ、このときの出力を測定成分の吸収波長用光学フィルタでの出力から減算することで、干渉影響の少ない測定ができることとなる。
【0008】
後者の代表例としては、試料中の水分について、上記のように電子冷却器を使用して約2〜10℃飽和で一定濃度にして実質的に影響がない条件を作る方法や、半透膜除湿器を用いて約−20〜30℃飽和まで除去する方法も多く利用されている。また、温暖化ガスの1つといわれる酸化亜窒素(以下「N2 O」という。)の大気中の濃度測定において、干渉影響が大きく、かつ、濃度変動も大きい一酸化炭素(以下「CO」という。)や二酸化炭素(以下「CO2 」という。)については、補正が難しいことから、COは鉄−マンガン系化合物、CO2 はアルカリ酸化物やアルカリ水酸化物を用いて除去する方法などが知られている。
【0009】
【非特許文献1】
日本工業規格「JIS B7982−1995」
【特許文献1】
特開昭52−119988号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記試料処理方法では、以下のような課題が生じることがある。
【0011】
例えば、同一元素からなる異なった化合物の測定例としてNO2 をNOに変換して測定する場合、NO2 −NOコンバータが不可欠であり、変換効率の維持や温度管理(一般に高温条件で使用する。)など、試料の性状によっては保守等に負荷がかかる場合もある。また、図10に代表的なNOx測定法であるCLD法の測定器の一例を示すが、試料中の共存成分による測定誤差要因としては、上記の共存成分による干渉影響以外にクェンチングつまり励起分子が他の分子に衝突することによってエネルギーを失う減光現象による影響とがあることが知られている。具体的には、共存する二酸化炭素(以下「CO2 」という。)による影響であり、上記のような試料の処理ではこれを除去することはできず、大きな誤差要因となりうる。さらに、オゾン発生器65やオゾン分解器66、或いは検出部での流量影響を防止するために精度の高い流量制御部67、67’ や圧力調整器68,68’ が必要となる点においても簡便性に欠ける場合がある。
【0012】
また、NOをNO2に変換して測定する場合にあっても、従来は、試料を別途オゾン発生器や酸化器を通過させて変換処理を行った後、測定部であるNDUV法やNDIR法に導入して測定する方法が採られることから、かかる処理部の設置に伴うコストアップや保守等煩雑な作業が必要となる。
【0013】
さらに、こうした前処理をせずに、複数の波長域を利用するNDUV法やNDIR法の場合にあっては、例えば光学フィルタの切換えのための機構が必要となり、測定器の光学系が複雑なものとなり高度な調整を必要とする場合が多い。また、コストアップの要因となる。
【0014】
一方、試料中に共存する他の成分による干渉影響を複数の検出器によって補正しあうNDUV法やNDIR法の場合にあっては、検出器の数が増えれば増えるだけ光学系の複雑化を招くことになる。また、NDUV法やNDIR法のように吸光度を測定する方法では、濃度が大きく異なる共存成分が存在する場合には、検出器の各成分に対する直線性の相違により補正精度が非常に悪くなることがある。
【0015】
また、スクラバーなどによって妨害成分を除去処理した後、NDUV法やNDIR法によって測定する場合にあっては、別途こうした処理部を必要とするとともに、設置に伴うコストアップや保守等煩雑な作業が必要となる。
【0016】
そこで、本発明は、上記問題点を解決し、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定が可能な紫外線吸収式測定装置および測定試料の処理方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す試料処理方法および試料処理ユニットにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0018】
本発明は、1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とし、特に、上記特定成分の変化後の物質の紫外線吸収量から、試料中の測定成分濃度を検出する場合に有効である。こうした測定装置または試料の処理方法によって、NDUV法における光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。例えば、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易に行うことができるとともに、高い測定精度も確保することができる。
【0019】
また、本発明は、上記特定成分が、測定成分に対して妨害成分となる場合にも適用が可能である。例えば、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の妨害成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、共存成分の影響を受けずに、測定器としての所定の精度を確保することができる。
【0020】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることを特徴とする。こうした測定装置によって、試料中の共存成分の変動に対応した妨害成分の除去を可能とするとともに、妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。
【0021】
本発明は、上記試料セルに導入する前段で、試料中の特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする。例えば、NOをNO2 に変換させるためには、光源部からの紫外線に加え酸素(以下「O2 」という。)が不可欠であるが、試料中に存在しない場合や濃度変動の激しい場合には、所定量添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。
【0022】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
本発明は、1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に関する発明であって、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うことを特徴とする。特に、本発明は、上記測定対象成分がNOxであり上記特定成分がNOの場合や、上記測定対象成分がSO2であり上記特定成分が妨害成分の1つであるNOである場合に好適である。
【0024】
以下、具体的な実施態様の1つとして、測定対象成分がNOxであり、測定成分の1つであるNOをNO2 に変換し、試料中に元来存在するNO2 とともに、NOxをNO2 としてNDUV法で測定する場合について説明する。
【0025】
図1に、本発明が適用されるNDUV法に係る測定装置の一例を示す。
(1)試料を処理部6に導入する
(2)光源部1の一の面から紫外線を照射する
(3)試料中のO2 の一部をO3 に変換する
O2 + hν → O2 + [O]
(4)変換したO3 がNOと反応して、試料中のNOがNO2 に変換する
NO + [O] → NO2
(5)この状態で、試料を試料セル2に導入する
(6)試料に、光源部1の他の面からの紫外線を照射する
(7)試料セル2中のNO2 によって紫外線の一部が吸収される
(8)試料セル2からの紫外線を検出器3で検出する
ことで、別途検出器や処理部材を設置することなく、NOとNO2 が混在した試料中のNOx測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。また、このとき、検出器3は同時に反応のための照射紫外線量を監視することができるため、別個モニター用検出器を設ける必要がなく、測定精度の保持・管理にとっても非常に有効である。
【0026】
ここで、試料は、自動車排気ガス測定や固定排出源排ガス測定においては、約0.1〜3l/minを導入するのが一般的であるが、本願では、紫外線による反応を考慮すると約100〜500ml/minが好適である。ただし、これに限定されるものではなく、試料セルの温度低下による影響のない範囲であれば、さらに大量に導入することも多い。
【0027】
また、(2)において照射する紫外線は、波長185nm近傍を含むものが好適で、試料中のO2 を有効にO3 に変換することができる。また、紫外線光源としては、一般に、重水素ランプ、キセノンランプ、水銀ランプ等が使用されるが、変調可能な光源として測定装置に用いられる場合には、印加電流の調整が容易で応答の速い重水素ランプやキセノンランプが好適である。また、光源部1と処理部6との境界には、通常石英やサファイアまたはフッ化カルシウムのような光学結晶5が設けられて光源部1を保護している。
【0028】
試料セル2は、通常、加工性および強度面を考慮して石英やガラス或いはステンレス鋼やアルミニウムといった金属管を使用することが多い。形状は、測定成分の濃度に合わせてセル長が決定され、1〜500mm程度の円筒形が一般的であるが、内面にミラーを設けて多重反射を利用した実質長光路セルなども多く利用されている。セル径も同様で、多種多様な工夫が可能である。
【0029】
図2は、NO、NO2 、SO2 という代表的な成分についての紫外線吸収スペクトルを示すもので、(6)において照射される紫外線は、通常、他の共存成分の吸収が殆どなく、NO2 の吸収の大きな350〜400nmの波長域を利用する。従って、本発明に用いる光源部1は、(2)におけるO3 への変換に必要な波長域である185nm近傍および350〜400nmを照射できる素子でなければならないが、上記重水素ランプ等で十分対応可能である。多くの紫外線ランプは連続的に両者を含む紫外線を発光することが可能であるが、むろん非連続であっても使用上問題とはならない。通常、試料セル2と検出器3の境界に、光学結晶5とともに上記波長域を選択的透過するバンドパスフィルタ(以下「BPF」という。)と呼ばれる光学フィルタ4が設けられ、試料から検出器3を保護する役割をも果たしている。
【0030】
また、紫外線検出用の検出器3としては、光電子倍増管やシリコンフォトセル或いはシリコンフォトダイオードが使用可能であるが、光電子増倍管は一般に高感度であるが高価であり、昨今はフォトセルやフォトダイオードが多く用いられている。
【0031】
ただし、図1のような試料セル2が1本の検出部を用いて非常に低濃度の成分を測定する場合には、通常の光源部1の安定性では、測定精度を確保することが難しいため、図3のような2つの波長域を検出するタイプを用いることがある。つまり、光学フィルタ4をNO2 の吸収がある350〜400nmの波長域BPF、光学フィルタ4’ をNO2 や他の共存成分の紫外線吸収が殆どない250nmを中心とする波長域BPFとして使用し、検出器3からの測定信号を、検出器3’ からの基準信号によって補正を行うことで、光源部1等の不安定要因に基づく出力誤差を低減している。
【0032】
表1に、BPFとして380〜400nmのフィルタを用いたときの各種成分による検出感度を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
さらに、光源部1を一定周期でON−OFFを繰り返す、いわゆる「変調」手段が採られることがある。つまり、光源部1からのすべての紫外線の内、実際に試料セル2で吸収され、測定に関与する割合は非常に少なく、検出器3が受光する絶対光量の微小変化が指示に影響する。しかし、光源OFF状態とON状態を繰り返すと、OFF状態を基準に両者の差を常に絶対光量として捉えることができ、検出器3のゼロ点変化や試料セル部2の汚れ或いは光源部1の光量変化などの影響を含めた、検出器3’ からの信号を使って検出器3の信号を補正することが可能である。つまり、図4(A)および(B)のように、試料セル部2の汚れ或いは光源部1の光量変化などによって、OFF状態での検出器出力が変化しても、c=(b−a)/bなる式に、基準信号b、b’ 、b” および測定信号a、a’ a” を挿入し、測定成分の紫外線吸収に関係する出力c、c’ 、c” を得ることができる。
【0035】
本願では、さらに、図5のように、光源部1を試料セル2内に設け、試料セル2の一端に測定用検出器3基準用検出器3’ を設ける構成を採ることで、光源部1の一面側の試料セル2の入口に近い空間2’ での約185nmの紫外線による反応を確保しつつ、反応後の試料ガスを光源部1の他面側のセル空間2” に導入し、試料の吸収量を測定することができる。
【0036】
図6は、いわゆる流体変調とよばれる測定方法を示し、基準ガス(測定成分ゼロ)と試料ガスを一定周期で交互に試料セル2に導入し、その変調周期の交流信号を取り出すことで、直接試料ガス中の成分濃度をえることができる。基準となる検出器3’ や光学フィルタ4’ が不要となるとともに、測定器のゼロ点が、試料ガス中の測定成分がゼロの状態の測定値であることから、理論的にゼロ点の変動がない点非常に優れた特性を有している。
【0037】
以上と同様の構成は、試料中の塩素(以下「Cl2 」という。)の測定にも適用が可能である。つまり、Cl2 は水素(以下「H2 」という。)の存在の下で以下の反応により塩化水素(以下「HCl」という。)に変換する。従って、HClとCl2 が共存する場合に塩化物として測定する場合に有効である。ただし、本反応は、Cl成分についての等モル反応ではないため塩化物のモル濃度の変化分を別途補正する必要がある。
【0038】
Cl2 + H2 → 2HCl
【0039】
次に、他の実施態様の1つとして、測定対象成分がSO2 であり、妨害成分の1つであるNOをNO2 に変換し、干渉影響の少ない条件下で、SO2 をNDUV法で測定する場合について説明する。
【0040】
試料中のNOをNO2 に変換する方法は上記と同様であるが、大気中のSO2 測定装置のような極低濃度(例えば10ppb程度)の測定については、紫外線吸収の波長域をSO2 の選択性の高い260〜320nmだけでなく240nm以下の吸収も利用する必要があり、空気中のNO(約100ppb)の干渉が無視できなくなる場合がある。また、240nm以下の吸収波長域ではNOに比べNO2 の方が干渉影響が少ないことから、NOをNO2 に変換して、260〜320nmおよび240nm以下の吸収波長域を利用することで、測定精度を高めることができる。
【0041】
また、燃焼炉の排ガス中のSO2 測定装置として、測定部にNDUV法を用いた場合、図2に示すように、Cl2 とSO2 と吸収スペクトルの重複が見られ、干渉影響を受ける。このとき、Cl2 と水分またはH2 が共存する試料に紫外線を照射すると、下式4のような反応が起こり、干渉影響の大きいCl2 が影響の少ないHClに変換され、干渉影響の少ない計測が可能となる。特に、ごみ焼却炉などでは、Cl2 が大量に共存する場合があり、本発明の適用は非常に有効である。
【0042】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることを特徴とする。NDUV法のような汎用型分析法に関しては、非常に幅広い測定成分や測定濃度に対応する必要があるとともに、干渉成分の濃度も大きく異なる場合がある。こうしたときに、一般には試料セルの長さを変更するが、ある範囲内であれば妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。光量の変更は、印加電力の変更のみならず、図5のような構成の場合には、光源部1の配置を試料セル内の最適位置に変更することも、試料流量によって変化する反応空間を調節するのに好適である。
【0043】
本発明は、上記試料セルに導入する前段で、試料中の特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする。例えば、NOをNO2 に変換させるために必要なO2 が試料中に存在しない場合やO2 濃度の変動が激しい場合には、安定した反応が確保できず測定精度が維持できない場合がある。このとき、図7のように、切換弁7を介して試料ガスに所定量のO2 を添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。O2 が不要な場合には、切換弁7を切換えて代わりに窒素(以下「N2 」という。)を添加することで同じ希釈率を確保して測定精度に影響を与えないようにしている。
【0044】
また、本発明は、上記のような気体の測定だけでなく、液体等の成分測定や、また、各種測定原理にも適用の可能性があり、上記に限定されるものでないことはいうまでもない。
【0045】
【発明の効果】
本発明は、光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行うため、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易にし、簡易な手段で共存成分の影響を受けない測定を可能とすることができる。
【0046】
特に、例えば、NOをNO2 に変換してNOxをNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の特定成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、同一元素からなる異なった化合物の測定を容易に行うことができるとともに、高い測定精度も確保することができる。
【0047】
また、例えば、干渉影響の大きいNOをNO2 に変換してSO2 をNDUV法で測定する場合のように、光源部からの紫外線を利用して試料中の妨害成分を変化させ、変化後の物質を測定することによって、別途検出器や処理部材を設置することなく、共存成分の影響を受けずに、測定器としての所定の精度を確保することができる。
【0048】
本発明は、上記試料セル部または検出部に対する光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることによって、試料中の共存成分の変動に対応した妨害成分の除去を可能とするとともに、妨害成分の除去に必要最小限の量の光の照射を行うことで、試料の組成変動や不要な物質の発生などを極力少なくすることができる。
【0049】
また、例えば、NOをNO2 に変換させるためには、O2 が不可欠であるが、試料中に存在しない場合や濃度変動の激しい場合には、所定量添加することで、非常に安定な反応が形成され、上記変換を安定した効率で行い高い測定精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の構成例を示す説明図
【図2】紫外線吸収スペクトル例を示す説明図
【図3】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図4】本発明の実施態様の一例であるNDUV法における検出器出力を示す説明図
【図5】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図6】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図7】本発明の実施態様の一例であるNDUV式測定装置の他の構成例を示す説明図
【図8】従来技術の実施例である排気ガス測定装置の構成例を示す説明図
【図9】従来技術の実施例であるNDUV式測定装置の構成例を示す説明図
【図10】従来技術の実施例であるCLD式測定装置の構成例を示す説明図
【符号の説明】
1 光源部
2 試料セル
3、3’ 検出部
4 光学フィルタ
5 光学結晶
6 処理部
Claims (5)
- 1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置であって、前記光源部からの光を試料に対し照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させる処理を行った後、前記特定成分の変化後の物質の紫外線吸収量から、前記試料中の測定成分濃度を検出することを特徴とする紫外線吸収式測定装置。
- 前記試料セル部または前記検出部に対する前記光源部からの光量を、独立的に調整可能とすることを特徴とする請求項1に記載の紫外線吸収式測定装置。
- 前記試料セルに導入する前段で、試料中の前記特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線吸収式測定装置。
- 1の光源部、1または2以上の試料セル部、1または2以上の検出部からなる紫外線吸収式測定装置に導入される試料に対し、前記光源部からの光を照射することによって、試料中の特定成分を異なった物質に変化させることを特徴とする測定試料の処理方法。
- 前記試料セルに導入する前段で、試料中の前記特定成分を変化させるために必要な物質を添加することを特徴とする請求項4に記載の測定試料の処理方法。
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