JP2004128171A - 電波吸収体 - Google Patents

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Kazuyuki Kashiwabara
柏原 一之
Nozomi Fujita
藤田 望
Kazuhiko Kanemitsuya
金光谷 和彦
Katsunobu Hosoya
細谷 勝宣
Toshio Kudo
工藤 敏夫
Hitoshi Sato
佐藤 仁
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CI Kasei Co Ltd
Mitsubishi Cable Industries Ltd
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CI Kasei Co Ltd
Mitsubishi Cable Industries Ltd
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Abstract

【課題】量産性に優れ、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有する電波吸収体の提供。
【解決手段】カルボニル鉄を還元した鉄粉をバインダー中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される紫外線吸収層とを備えてなる電波吸収体。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、量産性に優れ、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有する電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)に代表される交通インフラの情報化に伴い、例えば、ETC(Electronic Toll Collection=ノンストップ自動料金収受)システムやレーダや衛星通信等によるDSRC(Dedicated Short Range Communication:狭域通信)システム、AHS(Advanced cruise−assist Highway System:走行支援道路システム)、双方向道路情報システムなど、様々な波長域(例えば、ミリ波、マイクロ波等)の電波を使用した無線通信技術を応用したシステムの導入が拡大している。また、将来的には、自動車自動走行システムの導入も想定されている。
【0003】
しかし、ETC、DSRC、AHS等のシステムに使用される電波が路面、壁面あるいは車両ルーフ等で反射されて不要電波(以下にノイズという場合もある)となり、そのノイズがシステムの誤作動を引き起こし、例えば、ノンストップ自動料金収受システムでは多重課金、狭域通信システムでは正常な情報伝達が行われなかったり、走行支援道路システムでは自動車の誤動作等を引き起こす恐れがある。
【0004】
従って、当該分野では、このような、ノイズによるシステム誤作動を防ぐ手段として、広範囲の角度で入射する電波に対して高い電波吸収特性を有し、ノイズの反射を抑制する電波吸収体が要求されてきた。例えば、マイクロ波帯域に対応したマイクロ波用電波吸収体が挙げられる(特許文献1参照。)。このマイクロ波用電波吸収体は、導電性ゴム体と、フェライトゴム体と、金属反射板とからなる。該導電性ゴム体には、マイクロ波の波長に対応する内径からなる多数の孔が所定の開口率で形成されており、該フェライトゴム体は、該導電性ゴム体に対して誘電体層を設けて配置された、フェライト粉を所定の含有率で含有する少なくとも2層のフェライトゴムシートと、これらのフェライトゴムシート間に位置し、マイクロ波の波長に対応する内径からなる多数の孔が所定の開口率で形成された開口フェライトゴムシートとを積層したものである。
【0005】
上記特許文献1に記載の電波吸収体の構造は複雑であるため、その製造工程が煩雑となり、電波吸収体の量産性は低い。また、この電波吸収体の構造が複雑であるが故に、布設箇所での取り付け作業に時間を要する。そこで、構造が単純であり、短時間で簡単に製造可能なシート状の電波吸収体が開発されている。例えば、電波損失材としてFe系の軟磁性粉末をバインダーを介して結合してなる電波吸収体が挙げられる(特許文献2参照。)。この電波吸収体には、バインダーとして塩素含有ポリマーを使用しており、さらに、ブロム系の難燃剤をバインダー中に混入して電波吸収体の難燃性を向上させている。また、電波損失材として、例えば、Fe−Si−Al系、Fe−Cr−Al系等の軟磁性粉末をバインダーを介して結合してなる電波吸収体が開発されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
しかし、上記シート状の電波吸収体では、「MHz」の周波数域においては高い電波吸収特性が得られるものの、「GHz」の周波数域(すなわち、「ミリ波」、「マイクロ波」)においては良好な電波吸収特性を得ることが困難であるといった欠点があった。また、「GHz」の周波数域において良好な電波吸収特性を得るためには、軟磁性粉末を多量にバインダー中に含有させなければならないので、耐曲げ割れ性が低くなり、製造歩留りや、布設箇所が限定されるといった問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明者らは、ナノメートル(nm)サイズでかつ硬磁性を有する磁性粉末を電波損失材としてバインダー中に含ませることによって、シート状に加工することができ、かつ、周波数が「GHz」域の電波を20dB以上吸収する(減衰させる)電波吸収体を開発した(特許文献4参照。)。
【0008】
しかし、上記シート状電波吸収体において磁性粉末の磁性特性が不均一となる場合があることが判った。特に、針状の磁性体粉末の場合、アトライタ処理後の磁性特性は不均一となる。結果、これらを用いて作製される電波吸収体の電波吸収特性は安定しないことが判った。すなわち、整合周波数の意図した周波数からのズレ、不安定な整合ピーク、高角度域での電波反射減衰量の低下が生じ、優れた電波吸収特性が得られないことが判った。さらに、このような磁性粉末を使用して電波吸収体を作製する場合、電波吸収体中の組成のばらつき、シート厚のばらつきが生じるためにロール圧延加工での作製は困難であり、プレス加工でしか作製することができず、その結果、電波吸収体の量産性が低くなることが判った。
【0009】
従って、当該分野では、優れた量産性を有し、安定して優れた電波吸収特性を有する電波吸収体の提供が望まれている。
【0010】
また、最近、5.8GHz付近の電磁波を吸収することができるシート状の電波吸収体も開発されている(例えば、特許文献5参照。)が、概して、電波吸収体は屋外に設置されることが多く、太陽光に含まれる紫外線による電波吸収体の劣化(例えば、変色、割れ、ヒビ、可撓性の低下等)が問題となる。加えてアスファルトで舗装された道路による紫外線の反射も含めるとその劣化速度は、単に太陽から直接発せられている紫外線だけによる劣化速度よりも速いことが判った。このような劣化にともなって、風雨などによる電波吸収体の損傷が激しくなると電波吸収特性の低下や不要電波による誤作動が起こる可能性が出てきた。
【0011】
紫外線による電波吸収体の劣化を防止するために、紫外線吸収剤および/または光安定剤等をバインダー中に添加することが考えられるが、これらの添加によって、誘電率が変化し、電波吸収体の電波吸収特性が低下する(すなわち、整合周波数が意図した周波数からずれる)ことが判った。また、これらの添加によって、製造されたシートが脆化し、可撓性が低下し、シートの加工性が低下することも判った。
【0012】
従って、当該分野では、量産性に優れ(すなわち、ロール圧延加工による量産が可能であり)、安定して優れた電波吸収特性を有するだけでなく、さらに、優れた耐紫外線性をも有する電波吸収体の開発が望まれている。
【0013】
【特許文献1】
特開2000−138491号公報
【特許文献2】
特開2000−151183号公報
【特許文献3】
特開2000−114767号公報
【特許文献4】
特願2001−82722号公報
【特許文献5】
特開2002−50506号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、量産性に優れ、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有する電波吸収体の提供である。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、カルボニル鉄を還元した鉄粉をバインダー中に分散させてなる電波吸収層を電波吸収体に適用することによって、当該電波吸収体の量産性が向上し、安定して優れた電波吸収特性が得られること、ならびに当該電波吸収層の一方の側に紫外線吸収層を配置することによって、当該電波吸収体が優れた耐紫外線性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
【0016】
〔1〕 カルボニル鉄を還元した鉄粉をバインダー中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される紫外線吸収層とを備えてなる電波吸収体。
〔2〕 紫外線吸収層の厚みが20〜150μmである上記〔1〕記載の電波吸収体。
〔3〕 紫外線吸収層が有機顔料および/または無機顔料の着色剤を含む上記〔1〕または〔2〕に記載の電波吸収体。
〔4〕 バインダーが塩素化ポリエチレンである上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の電波吸収体。
〔5〕 さらに、電波反射層として、金属箔、または防食層を有する金属箔を電波吸収層の他方の側に備える上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の電波吸収体。
〔6〕 ETCおよび/またはDSRCに使用される上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の電波吸収体。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す図であり、図1(a)は断面図、図1(b)は斜視図である。なお図1(a)は、図1(b)の切断面線IA−IAからみた断面である。本発明の電波吸収体1は、電波吸収層2と、電波吸収層2の一方の側(すなわち、電波の入射を意図する側であって、図1の例では、厚み方向一方Z1側)に配置された紫外線吸収層3とを基本的に備えるシート状物であり、さらに、電波吸収層2の他方の側(すなわち、電波吸収層2の電波の入射を意図しない側であって、図1に示す例のように厚み方向他方Z2側)に電波反射層4を備えていてもよい。図1には、厚み方向一方Z1側(電波の入射を意図する側)から厚み方向他方Z2側(電波の入射を意図しない側)へ向かって順に、紫外線吸収層3、電波吸収層2、電波反射層4が互いに隣接して配置されてなる例を示す。
【0018】
本発明における「電波吸収層」は、カルボニル鉄を還元した鉄粉(以下、「カルボニル還元鉄粉」という場合もある)をバインダー中に分散させてなるものである。
【0019】
本発明で使用する「バインダー」としては、例えば、天然ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ブチルゴム、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル、EVA(エチレンビニルアセテート)、EEA(エチレンエチルアクリレート)、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0020】
電波吸収層のバインダーとして塩素化ポリエチレンが好ましい。塩素化ポリエチレンを使用することによって、高充填の電波吸収層(たとえば、充填密度が20vol%〜60vol%程度)を形成することができる。従って、充填可能な鉄粉量の幅を広くとることが可能となり、その結果、鉄粉量を調整することで様々な周波数(1GHz〜110GHz)に対応する電波吸収体を作製することができる。
【0021】
本発明で使用する「カルボニル鉄を還元した鉄粉(カルボニル還元鉄粉)」とは、カルボニル法にて生産された高純度(純度:97重量%以上)の鉄粉(カルボニル鉄粉)を還元して得られた球状の鉄粉を指す。なお当該「カルボニル還元鉄粉」、「カルボニル鉄粉」の名称は、生産工程中の中間体である「ペンタカルボニル鉄」に由来するものであり、カルボニル基を有する訳ではない。本発明で使用するカルボニル還元鉄粉の形状は球状であるため、バインダー(特に、塩素化ポリエチレン)への分散性が良好であり、組成のばらつきを抑えることができる。また、カルボニル還元鉄粉をバインダー中に配合させてなる混合物は、鉄粉が配向することなく容易にシート状にロール圧延加工することができ、その結果、シート厚のばらつきを抑えることができる。なお本明細書中において、カルボニル還元鉄粉の形状に関して「球状」とはアスペクト比が1〜5であるものを指す。カルボニル還元鉄粉の「アスペクト比」とは、上記鉄粉粒子を電子顕微鏡にて測定した最小長さに対する最大長さの比である。量産性の観点から、カルボニル還元鉄粉のアスペクト比は4以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に使用するカルボニル還元鉄粉末は、平均粒径が1μm〜10μmであるのが好ましく、3μm〜7μmであるのがより好ましい。カルボニル還元鉄粉末の平均粒径が1μm未満であると、バインダー中での分散性が低下する傾向にあるためであり、またカルボニル還元鉄粉末の平均粒径が10μmを超えると、電波吸収特性が低下する傾向にあるためである。
【0023】
上記平均粒径は、たとえば以下の手順にて測定できる。
測定対象(カルボニル還元鉄の粉末)を水またはエタノールなどの有機液体に投入し、35kHz〜40kHz程度の超音波を付与した状態にて約2分間分散処理して得た分散液を用い、かつその場合の粒状物の量は該分散液のレーザ透過率(入射光量に対する出力光量の比)が70%〜95%となる量とし、次いで該分散液について、マイクロトラック粒度分析計にかけてレーザー光の散乱により個々の粒状物の粒径(D1、D2、D3・・・)、および各粒径ごとの存在個数(N1、N2、N3・・・)を計測する(個々の粒状物の粒径(D)は、マイクロトラック粒度分析計によれば種々の形状の粒状物ごとに球相当径が自動的に測定される。)。
【0024】
視野内に存在する個々の粒子の個数(N)と各粒径(D)とから、下記式(1)にて平均粒径を算出する。
平均粒径=(ΣND/ΣN)1/3     (1)
【0025】
カルボニル還元鉄粉は、従来公知の種々の手法にて得ることができる。
球状のカルボニル還元鉄粉は、たとえば、図2のフローチャートに簡略化して示すような工程を包含する方法にて製造することができる。本手法によれば、まず、カルボニル法により鉄からカルボニル鉄粉を得る(鉄(Fe)に一酸化炭素を反応させてペンタカルボニル鉄(Fe(CO))を得た後、これを蒸留し、次いで、熱分解してカルボニル鉄粉とする)。得られたカルボニル鉄粉を水素還元して、カルボニル還元鉄粉とする。
【0026】
上記平均粒径を有するようなカルボニル還元鉄粉は、上記で適宜得られたカルボニル還元鉄粉を、気流により分級するなどして取得することができる。
【0027】
カルボニル還元鉄粉は、市販のもの、たとえば、BASF Japan社製の球状のカルボニル鉄粉(純度:97重量%)や、ISP Japan社製の球状のカルボニル鉄粉(純度:97重量%以上、好ましくは97.5重量%)を使用してもよい。
【0028】
本発明の電波吸収層において、上記カルボニル還元鉄粉は、バインダー100重量部に対し、10重量部〜1000重量部配合されているのが好ましく、200重量部〜900重量部配合されるのがより好ましい。カルボニル還元鉄粉の配合がバインダー100重量部に対し10重量部未満であると、充分な電波吸収特性が得られにくい傾向にあるため好ましくない。また、カルボニル還元鉄粉の配合がバインダー100重量部に対し1000重量部を超えると、電波吸収層を層状(シート状)に成形することが困難となる傾向にあるため好ましくない。
【0029】
電波吸収層は、例えば、バインダー中にカルボニル還元鉄粉を混合し、後述するような添加剤を必要に応じて適宜混合した後、均一に分散するよう70℃〜130℃で10分間〜1時間程度混練した後、当該混合物を公知の手法にてシート状に成型することによって形成される。成型方法としては、従来公知のロール圧延加工およびプレス加工が挙げられるが、生産効率が良好である点からロール圧延加工によってシート状に成型するのが好ましい。ロール圧延加工の場合、たとえば、100℃〜150℃のロール温度、0.1MPa〜2MPaの圧力で行えばよい。
【0030】
電波吸収層は、通常、概ね均一な厚みを有するように形成され、その厚みは、対象とする電波の周波数に応じて適宜選択する。例えば、周波数が5.8GHz帯域(ETCおよびDSRC等で使用される周波数域)の電波を対象電波とする場合、電波吸収層の厚みを1.5mm〜2.1mm(1.8mm±0.3mm)とすることで優れた電波吸収特性が得られる。この場合、電波吸収層の厚みが1.5mm〜2.1mmの範囲を外れると、この周波数域での電波吸収特性は低下する傾向にある。また、電波吸収層の厚みが均一である場合、具体的には、電波吸収層の厚みが任意の20箇所において目標値±5%以内である場合、整合周波数(5.8GHz帯域)からのズレは小さくなるのでさらに好ましい電波吸収特性を得ることができる。
【0031】
本発明における「紫外線吸収層」は、太陽光から照射される紫外線およびアスファルトから反射された紫外線から電波吸収層を保護するために設けられるものであって、具体的には、該紫外線吸収層を設けた電波吸収体にJIS A 1415「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」に基づいて紫外線を照射した後のサンプルおよび紫外線照射前のサンプルを用い、JIS K 6251に基づく引張試験による紫外線照射後のサンプルの伸びが紫外線照射前のサンプルの伸びの80%以上となるように、紫外線への耐性を電波吸収体に付与し得る紫外線吸収特性を有する層を指す。該紫外線吸収層は電波吸収層の一方の側(すなわち、電波の入射を意図した側)に配置される。
【0032】
紫外線吸収層は、通常、概ね均一な厚みを有するように形成される。紫外線吸収層の厚みは、好ましくは20μm〜150μmであり、より好ましくは30μm〜60μmである。20μm未満であると十分な耐紫外線性を得ることができず、150μmを超すと電波吸収体の電波吸収特性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明で使用する紫外線吸収層は、上記の紫外線への耐性を付与し得るものであれば特に制限はないが、ベース樹脂に紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有してなる層状物として実施されるのが好ましい。
【0034】
「ベース樹脂」としては、当業者に公知のベース樹脂を使用することができ、例えば、アクリル系樹脂や塩化ビニル等が挙げられる。耐候性および難燃性の観点から塩化ビニルが好ましい。
【0035】
「紫外線吸収剤」としては、当業者に公知の紫外線吸収剤を使用することができ、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤等が挙げられる(ゴム・プラスチック配合薬品、ラバーダイジェスト社編を参照のこと)。
【0036】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニル サリシレート、p−tert−ブチルフェニル サリシレート等のサリチル酸誘導体等が挙げられる。
【0037】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンと他の4置換ベンゾフェノンとの混合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン 3水和物、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−n−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン等が挙げられる。
【0038】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール(BTA)、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3’,5’−ジ−tert−アミル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられる。
【0039】
上記以外の紫外線吸収剤としては、例えば、シュウ酸アニリド誘導体、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−エチル・ヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニル・アクリレート、1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルアクリレート、1,3−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−2−プロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、o−ベンゾイル安息香酸メチル、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニル・アクリレート、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラト)]−n−ブチルアミン・ニッケルII、[2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラト)]−2−エチルヘキシルアミン・ニッケルII、ジブチル・ジチオカルバミン酸ニッケル、ニッケル・チオビスフェノール複合体等が挙げられる。
【0040】
「光安定剤」としては、当業者に公知の光安定剤を使用することができ、例えば、ニッケル含有有機光安定剤、バリウム、ナトリウム、リン含有の有機・無機複合体、セミカルバゾン系光安定剤、酸化亜鉛系紫外線安定剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
【0041】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4.5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
【0042】
上記紫外線吸収剤および/または光安定剤は、それぞれ2種以上用いてもよい。
【0043】
上記紫外線吸収剤および/または光安定剤の添加量(紫外線吸収剤および光安定剤を添加する場合には、その合計量)は、ベース樹脂との組み合わせなどによって適宜選択すればよく、特に制限はないが、十分な耐紫外線性を付与するためには、ベース樹脂100重量部に対して0.05重量部〜10重量部であるのが好ましく、0.5重量部〜5重量部であるのがより好ましい。
【0044】
必要に応じて、さらに、紫外線吸収層のベース樹脂に「着色剤」を添加してもよい。
【0045】
従来の電波吸収体は、ゴムフェライト系電波吸収体であるか、またはバインダー中に電波損失材を配合してなるものであるため、電波吸収体の表面(即ち、電波の入射を意図した側の面)は、黒色もしくは灰色であり、色による電波吸収体の識別、管理は困難であったが、紫外線吸収層のベース樹脂に着色剤を添加することによって、電波吸収特性の異なる製品の色による識別および製品管理などが容易となり、さらに、色別に布設年数を示すことで布設期間が明確になり、張替え作業が容易となる等の利点が生じる。
【0046】
着色剤として、当業者に公知の有機顔料および/または無機顔料を使用することができる。耐熱性および耐光性が優れている点で無機顔料が好ましい。
【0047】
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、塩基系染料系レーキ、フタロシアニン顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。上記有機顔料を2種以上用いてもよい。
【0048】
アゾ顔料(アゾ基を有する赤色〜黄色系顔料)としては、例えば、パーマネント レッド 4R、パラレッド、パーマネント レッド F5R、ブリリアント ボルドー10B、ブリリアント カーミン 6B、ブリリアント カーミン3B、ボルドー 5B、パーマネント カーミン FB、リソール レッド R、リソール レッド B、ブリリアント ファスト スカーレット、ピラゾロン レッド、ファイアレッド(以上、赤色)、ファストエロー G、ファストエロー 10G、ジスアゾエロー GR(以上、黄色)、ジスアゾ オレンジ、ピラゾロン オレンジ、ブリリアント スカーレット G、レーキ レッド C、レーキ レッド D(以上、橙赤色)等が挙げられる。
【0049】
ニトロソ顔料(ニトロソ基を有する緑色系レーキ顔料)としては、例えば、ナフトール グリーンB等が挙げられる。
【0050】
ニトロ顔料(ニトロ基を有する黄色系の顔料)としては、例えば、ナフトールエロー S(黄色)等が挙げられる。
【0051】
塩基系染料系レーキとしては、例えば、ローダミン Bレーキ、ローダミン 6Gレーキ(以上、赤紫色)等が挙げられる。
【0052】
フタロシアニン顔料としては、例えば、フタロシアニン ブルー、フタロシアニン グリーン、ファスト スカイ ブルー、アニリン ブラック等が挙げられる。
【0053】
ジオキサジン系顔料としては、例えば、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0054】
無機顔料としては、例えば、白色では、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、沈降性シリカ等が適用される。黒色では、カーボンブラック、ランプブラック、合成鉄黒等が適用される。灰色では亜鉛末、亜鉛化鉛、スレート粉等が適用される。赤色ではカドミウム赤、カドミウム水銀赤、銀朱、ベンガラ、モリブデン赤、鉛丹等が適用される。褐色ではアンバー、酸化鉄茶等が適用される。黄色ではカドミウム黄、亜鉛黄、黄土、黄色酸化鉄、黄鉛、チタン黄等が適用される。緑色では酸化クロム緑、コバルト緑、クロム緑等が適用される。青色では群青、紺青・鉄青、コバルト青等が適用される。上記無機顔料を2種以上用いてもよい。
【0055】
着色剤の添加量は、通常、ベース樹脂100重量部に対して0.005〜10重量部である。
【0056】
紫外線吸収層の作製方法は、紫外線吸収剤および/または光安定剤、必要に応じて着色剤が添加されたベース樹脂を射出成形した後に厚みを矯正するためにロール圧延加工を施して作製する方法やスピンコーティングによって作製する方法等が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収層を電波吸収層と接着させる技術としては、熱圧着法、接着剤層を介して接着する方法等が挙げられる。また、接着剤層を介して、紫外線吸収層と電波吸収層とを接着する場合、接着剤としては当業者に公知ものを使用することができ、例えば、アクリル系接着剤またはウレタン系接着剤を用いることができる。接着剤層の厚みは、20〜40μmであることが好ましい。20μmより薄いと十分な接着性が得られず、40μmより厚いと電波吸収特性が低下する傾向にある。また、接着剤層にも接着性を阻害しない範囲で上記の紫外線吸収剤および/または光安定剤を含有させることが好ましい。
【0058】
本発明における「電波反射層」は、入射して電波吸収層を通過してきた電波を反射して、新たに入射してきた電波を相殺するために設けられる層であって、導電性を有し、電波吸収層の終端インピーダンスが0(ゼロ)となるものであれば、特に制限なく使用できる。このような電波反射層としては、たとえば、アルミニウム、銅、鉄などの金属箔、および防食層を有する上記金属箔が適用される。図1に示す例のように、電波反射層4は、電波吸収層2の厚み方向他方Z2側に設けられているならば、接着剤層等の層が介在されていてもよいが、優れた電波吸収特性を有する電波吸収体を実現し得る観点からは、図1に示す例のように、電波吸収層2の電波の入射を意図しない側(厚み方向他方Z2側)に隙間なく隣接させて設けるのが好ましい。上記接着剤層等の層を設ける場合には、その厚み(電波吸収層2と電波反射層4との間隔)は、100μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましい。
【0059】
図1に示すように、電波反射層4として、金属箔5の片面に防食層6を形成したもの(金属ラミネート箔)を用いる場合、防食層6を形成した側が電波吸収層2の電波の入射を意図しない側(厚み方向他方Z2側)に配置されるように設けるのが好ましい。金属ラミネート箔の金属箔5として、上記と同様にアルミニウム、銅、鉄などの金属箔を使用することができ、なかでも、高い導電率、高周波での表皮効果のために金属箔を非常に薄くできること、およびコストの観点からアルミニウム箔が好ましい。防食層6の形成材料としては、公知の樹脂を用いればよく、具体的には、ポリエステル樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。本発明で使用する金属ラミネート箔としては、導電率、厚みおよびコストの観点からアルミニウムラミネート箔が好ましい。特に、アルミニウム箔と、ポリエステル樹脂とからなるアルミニウムラミネート箔が好ましい。アルミニウムラミネート箔を電波吸収層2の電波の入射を意図しない側にアルミニウム箔を電波吸収層2と隣接させて接着する。この際、アルミニウムラミネート箔と電波吸収層との間隔は、通常10〜100μm、好ましくは15〜25μmである。
【0060】
また、電波吸収層の電波の入射を意図する側とは反対側の面に導電性塗料を塗布して反射層を形成することもできる。導電性塗料を塗布する場合、例えば、スプレー方式で塗料を噴霧させて電波吸収層に塗布する方法や電波吸収層を回転させて塗料を均一の厚みとなるように塗布する方法等が挙げられる。
【0061】
上記防食層を金属箔と接着する方法としては、たとえば熱圧着法による接着や公知の接着剤(例えば、ポリエステル系接着剤等)を介しての接着等が挙げられる。
【0062】
電波反射層は、概ね均一な厚みを有するように形成されるのが好ましい。電波反射層の厚みは、特に制限はないが、たとえば、図1のように金属ラミネート箔で実現する場合には、金属箔の厚みが10μm〜100μm程度であり、防食層の厚みが10μm〜200μm程度であるのが好ましい。
【0063】
電波反射層4を電波吸収層2と接着させる手段としては、シート状に成型した電波吸収層2に、金属箔5を隣接させるようにして電波反射層4を載置し、たとえば、100℃〜150℃、0.1MPa〜2MPaの条件でプレスを施して熱圧着する方法や、弾性系接着剤、熱硬化性樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤、瞬間系接着剤、無機系接着剤など公知の接着剤を使用して接着する方法が挙げられる。上記電波吸収層に隙間なく接着させて電波反射層を設けることができる点から、熱圧着法によりこれらを接着せるのが好ましい。なお、上記の紫外線吸収層3と電波反射層4は、どちらを先に電波吸収層2に設けてもよく、また同時に設けてもよい。
【0064】
上述の通り、本発明の電波吸収体は、カルボニル鉄を還元した鉄粉をバインダー中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される紫外線吸収層とを基本的に備える。本発明の電波吸収体は、さらに、当該電波吸収層の他方の側に電波反射層を備えていてもよい。本発明において、電波吸収体がこのような構成を備えることで、当該電波吸収体は、優れた量産性、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有する。
【0065】
本発明において「優れた量産性」とは、組成のばらつきがなく、均一な厚みを有するシート状の電波吸収層をロール圧延加工によって安定して容易に生産できることをいう。
【0066】
本発明において「安定して優れた電波吸収特性(電波吸収能)」とは、
▲1▼整合周波数からのズレが小さいこと
〔整合周波数(5.8GHz帯域)からのズレは電波吸収層の厚みの均一性に起因するため、シート状電波吸収層の任意の20箇所における厚みが目標値±5%以内であることは、結果的に整合周波数からのズレが小さいことを示す〕、
▲2▼整合ピークが安定して高いこと
〔5.8GHz帯域の電波を入射角40°で入射させたときの電波反射減衰量が20dB以上であること〕、および
▲3▼高角度域までの電波反射減衰量特性(斜入射特性)が良好であること
〔電波反射減衰量が0°<θ≦50°の範囲の入射角において20dB以上であること〕を意味する。
【0067】
本発明において「優れた耐紫外線性」とは、紫外線による電波吸収体の劣化の程度が小さいという性質であって、具体的には、JIS A 1415「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」に基づいて、紫外線を1000時間照射した後のサンプルおよび紫外線照射前のサンプルを用いて、JIS K 6251に基づく引張試験による紫外線照射後のサンプルの伸びが紫外線照射前のサンプルの伸びの80%以上であることを指す。
【0068】
なお、本発明における電波吸収層には、電波吸収特性を劣化させない範囲で、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤などの添加剤が適宜添加されていてもよい。
【0069】
難燃剤が添加される場合、たとえば、バインダー100重量部あたり有機臭化物系難燃剤と亜鉛系難燃剤との混合物が50重量部〜400重量部配合されているのが好ましく、100重量部〜300重量部配合されているのがより好ましい。このような難燃剤混合物の添加により、電波吸収体の難燃性が向上する。上記難燃剤混合物がバインダー100重量部あたり50重量部未満であると、難燃性の向上がみられない傾向にあり、また上記難燃剤混合物がバインダー100重量部あたり400重量部を超すと、難燃性は向上する反面、電波吸収能が低下する傾向にある。
【0070】
上記難燃剤の混合物が添加される場合、有機臭化物系難燃剤と亜鉛系難燃剤との混合割合は、95:5〜60:40であるのが好ましく、90:10〜70:30であるのがより好ましい。
【0071】
有機臭化物系難燃剤としては、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモジフェニル、2,2−ビス(3−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパンなどを用いることができる。
【0072】
亜鉛系難燃剤としては、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化亜鉛などを用いることができる。
【0073】
また必要に応じて、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの上記以外の難燃剤を併用することもできる。さらに難燃助剤を添加してもよい。
【0074】
電波吸収層に添加してもよい可塑剤としては、たとえば、ジオクチルフタラート(DOP)やジブチルフタラート(DBP)などのフタル酸エステル系のもの、ジオクチルアジペート(DOA)などのアジピン酸エステル系のもの、ジオクチルセバケート(DOS)などのセバシン酸エステル系のもの、トリメリット酸オクチルエステルなどのトリメリット酸系エステル、ピロメリット酸エステル、ポリエステル系、エポキシ化大豆油などが挙げられる。可塑剤は、通常、バインダー100重量部あたり5重量部以下添加することができる。
【0075】
電波吸収層に添加してもよい充填剤としては、従来公知の種々の有機系、無機系の充填剤を使用することができるが、電波吸収特性を損なうことなく圧延加工性を向上できることから、無機系の充填剤を配合するのが好ましい。
【0076】
有機系の充填剤としては、例えば、再生ゴム、ゴム粉末、エボナイト粉末、セラック、米粉、ココナットヤシ殻粉、コルク粉、セルロースパウダ、木材パルプ、紙布等が挙げられる。
【0077】
無機系の充填剤としては、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。シリカとしては、具体的には、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダル・シリカ、噴霧状シリカなどが例示される。炭酸カルシウムとしては、具体的には、沈降性炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、胡粉などが例示される。クレーとしては、具体的には、含水ケイ酸アルミニウムを主成分とし、カオリン質クレー(カオリンナイト、ハロサイト)、パイロフェライト質クレー、セリサイト質クレー、またはカオリナイトを600℃で焼成した焼成クレーなどが例示される。タルクとしては、含水ケイ酸マグネシウムを主成分としたものなどが例示される。カーボンとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどが例示される。なかでも、圧延成形後の電波吸収層の表面形状が良好である点で、平均粒径が5μm以下のカーボンを配合するのが特に好ましい。上記カーボンの平均粒径は、上述したカルボニル還元鉄と同様にして測定できる。
【0078】
充填剤の添加量は、バインダー100重量部に対して50〜300重量部である。
【0079】
電波吸収層に添加してもよい酸化防止剤としては、従来公知のフェノール系の酸化防止剤、チオエーテル系の酸化防止剤など、従来公知の種々のものが挙げられる。酸化防止剤は、通常、バインダー100重量部あたり3重量部以下添加することができる。
【0080】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0081】
(実施例)
実施例1
電波吸収層:塩素化ポリエチレン100重量部に対して、カルボニル還元鉄粉(ISP社製 S−1641;純度97.5重量%、平均粒径4μm、アスペクト比1.2)を740重量部配合し、120℃で1時間混練した樹脂組成物を130℃/1.2MPaの条件でロール圧延加工を施し、厚さ2mm±5%のシート状電波吸収層を作製した。
紫外線吸収層:塩化ビニル100重量部に対し、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が1重量部、着色剤(青色)として紺青・鉄青(フェロシアン化第二鉄)が5重量部添加されたものを射出成形し、厚さ50μmにロール圧延加工を施したもの。
電波反射層:10μm厚のアルミニウム箔に防食層(ポリエステル樹脂:25μm厚)をポリエステル系接着剤で接着して作製したもの。
紫外線吸収層/電波吸収層/電波反射層(アルミニウム箔が電波吸収層に隣接する)の順に積層させて、熱圧着法によって一体化して電波吸収体を作製し、
300mm(幅)×300mm(長さ)×2.1mm(厚さ)のサンプルを得た。
【0082】
(比較例)
比較例1
紫外線吸収層を設けない点を除いて実施例1のサンプルと同様に電波吸収体サンプルを作製した。
比較例2
電波吸収層:塩素化ポリエチレン100重量部に対し、アトライタ処理によりアスペクト比13のカルボニル還元鉄粉を740重量部配合し、実施例1と同じ条件でロール圧延加工を実施したが、均一な厚み(2mm±5%以内)の電波吸収層は作製できなかった。
【0083】
〔電波吸収特性の試験および評価〕
▲1▼整合周波数(5.8GHz帯域)からのズレ(電波吸収層の厚みの均一性)の評価
整合周波数が5.8GHz帯域(ETCおよびDSRC等で使用される周波数域)の場合、実施例1、比較例1および比較例2において得られたシート状電波吸収層の任意の20箇所の厚みが2.0mm±5%以内にロール圧延加工されていれば○と評価し、2.0mm±5%より外れていたら×と評価した。
▲2▼整合ピークの安定性の評価
実施例1および比較例1の電波吸収体サンプルに5.8GHz帯域の円偏波を入射角40°で入射させたときの電波反射減衰量が20dB以上であるものは○と評価し、20dB未満であると×と評価した。
▲3▼斜入射特性の評価
実施例1および比較例1の電波吸収体サンプルにアーチ法にて0°<θ≦50°の範囲で円偏波を入射し、その電波反射減衰量が20dB以上であるものは○と評価し、20dB未満は×と評価した。
【0084】
〔耐紫外線性の試験および評価〕
市販のサンシャインカーボンアーク灯式の促進劣化装置を用い、JIS A 1415「高分子系建築材料の実験室光源による暴露試験方法」に基づいて、実施例1および比較例1の電波吸収体サンプル(3号型ダンベル形状)に紫外線を1000時間照射した。次いで、各サンプルの紫外線照射による劣化をJIS K 6251に基づく引張試験によって測定した。
紫外線照射後のサンプルの伸びが紫外線照射前のサンプルの伸びの80%以上であるものを○と評価し、80%未満であるもの×と評価した。
【0085】
【表1】
Figure 2004128171
【0086】
以上のことから、本発明の電波吸収体は、量産性に優れ、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有することが判る。
【0087】
【発明の効果】
本発明によれば、量産性に優れ、安定して優れた電波吸収特性および優れた耐紫外線性を有する電波吸収体を提供することができる。また、当該紫外線吸収層に有機顔料および/または無機顔料等の着色剤を添加することによって、電波吸収体の色による識別、管理が容易となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す図であって、図1(a)は電波吸収体1の断面図であって、電波吸収体1の構造を模式的に示しており、各層の厚みは実際の層の比とは異なっている。図1(b)は電波吸収体1の斜視図である。
【図2】本発明に使用するカルボニル還元鉄粉を製造する方法の一例を簡略化して示すフローチャートである。
【図3】電波吸収体の斜入射特性を示すグラフであって、円偏波(5.8GHz)の入射角(0°<θ≦50°)に対する電波反射減衰量(dB)を示す。−□−は実施例1の電波吸収体を示し、−◆−は比較例1の電波吸収体を示す。
【符号の説明】
1  電波吸収体
2  電波吸収層
3  紫外線吸収層
4  電波反射層
5  金属箔
6  防食層

Claims (6)

  1. カルボニル鉄を還元した鉄粉をバインダー中に分散させてなる電波吸収層と、当該電波吸収層の一方の側に配置される紫外線吸収層とを備えてなる電波吸収体。
  2. 紫外線吸収層の厚みが20〜150μmである請求項1記載の電波吸収体。
  3. 紫外線吸収層が有機顔料および/または無機顔料の着色剤を含む請求項1または2に記載の電波吸収体。
  4. バインダーが塩素化ポリエチレンである請求項1〜3のいずれかに記載の電波吸収体。
  5. さらに、電波反射層として、金属箔、または防食層を有する金属箔を電波吸収層の他方の側に備える請求項1〜4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. ETCおよび/またはDSRCに使用される請求項1〜5のいずれかに記載の電波吸収体。
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