JP2004107782A - 防食方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を全く使用することなく、冷却水系における金属材料の腐食を効果的に防止することができる防食方法を提供する。
【解決手段】冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/L、ランジェリア指数をE、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
(1)2.4logA + logB ≧ 6.4 及び C ≧ 50、
(2)logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33、又は、
(3)logB + logC ≧ 3.4 及び E ≧ 1.5
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法。
【選択図】 なし
【解決手段】冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/L、ランジェリア指数をE、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
(1)2.4logA + logB ≧ 6.4 及び C ≧ 50、
(2)logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33、又は、
(3)logB + logC ≧ 3.4 及び E ≧ 1.5
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、防食方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を全く使用することなく、冷却水系における金属材料の腐食を効果的に防止することができる防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷却水系においては、熱交換器、配管などに炭素鋼が用いられており、腐食による障害が発生する。炭素鋼の腐食は、その表面に生ずる局部電池のアノードから鉄がイオンとして溶出し、カソードで酸素の還元反応により電子の受容が行われる電気化学的な現象と考えられる。冷却水系において腐食が起こると、腐食生成物による伝熱阻害、冷却水流路阻害、チューブ閉塞などの障害が生じ、機器の寿命が短くなり、さらに腐食により穴が開くと、製品の漏洩や冷却水による製品の汚染が起こる。
また、熱交換器の伝熱チューブでは、補給水の濃縮に伴い、あるいは、補給水中の成分とリン酸、ホスホン酸、亜鉛系インヒビターのと反応生成物により、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどのスケールが付着し、伝熱阻害を引き起こす。
冷却水系においては、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜鉛系防食剤、あるいは、水溶性ポリマーの添加により、防食とスケール防止が図られている。冷却水系においては、濃縮を制御するために冷却水のブローがなされているが、富栄養化などの環境問題に伴い、リン系薬剤と亜鉛系薬剤の冷却水系への添加が制限されるようになった。しかし、リンと亜鉛を含まない薬剤による水処理では、炭素鋼材質に対する防食性が劣り、特に低流速での炭素鋼伝熱チューブの腐食を十分に抑制することができない。このために、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を用いることなく、炭素鋼の腐食を効果的に防止することができる防食方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を全く使用することなく、冷却水系における金属材料の腐食を効果的に防止することができる防食方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、冷却水に炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオン、マグネシウムイオンなどを添加し、Mアルカリ度、カルシウム硬度、シリカ濃度、マグネシウム硬度、ランジェリア指数が特定の関係を有する過飽和状態の水質に調整することにより、優れた防食効果が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/Lとしたとき、
2.4logA + logB ≧ 6.4
C ≧ 50
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(2)冷却水系において、冷却水のシリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/Lとし、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(3)冷却水系において、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、ランジェリア指数をEとしたとき、
logB + logC ≧ 3.4
E ≧ 1.5
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(4)水溶性アニオンポリマーを添加する第1項記載の防食方法、
(5)水溶性アニオンポリマーを添加する第2項記載の防食方法、及び、
(6)水溶性アニオンポリマーを添加する第3項記載の防食方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の防食方法の第一の態様においては、冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/Lとしたとき、
2.4logA + logB ≧ 6.4
C ≧ 50
を満たす水質に調整する。冷却水に、炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオンを添加することにより、上記の条件を満たし、炭酸カルシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加する炭酸イオン源に特に制限はなく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。添加するカルシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。
本発明の防食方法の第二の態様においては、冷却水系において、冷却水のシリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/Lとし、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33
を満たす水質に調整する。冷却水にケイ酸イオン、マグネシウムイオンを添加することにより、上記の条件を満たし、ケイ酸マグネシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。添加するマグネシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどを挙げることができる。
本発明の防食方法の第三の態様においては、冷却水系において、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、ランジェリア指数をEとしたとき、
logB + logC ≧ 3.4
E ≧ 1.5
を満たす水質に調整する。冷却水にカルシウムイオン、ケイ酸イオンを添加することにより、上記の条件を満たし、炭酸カルシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加するカルシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0006】
本発明方法においては、冷却水に、炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオン、マグネシウムイオンに加えて、水溶性アニオンポリマーを添加することが好ましい。水溶性アニオンポリマーを添加することにより、防食効果をさらに高めるとともに、過飽和の炭酸カルシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどの金属表面へのスケールとしての付着を防止することができる。
使用する水溶性アニオンポリマーに特に制限はなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アクリロキシ−1−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、それらの塩などのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。これらのモノマーと共重合させるコモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどを挙げることができる。これらの水溶性アニオンポリマーは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明方法によれば、冷却水を炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどの適度な過飽和の状態とし、これらの微細なスケールを金属表面に吸着させることにより、防食皮膜としての効果を発揮させることができる。
【0007】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
調製した試験水を貯槽に貯留し、この試験水をポンプにより、分極抵抗法による腐食計に通液して貯槽に戻す循環を行い、水温30℃で1日経過後の腐食速度を測定した。
試験水は、純水に塩化カルシウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液を添加して調製し、これにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体の水溶液及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体から選ばれる防食剤を添加して、あるいは添加せずに試験に供した。
比較例1
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度80mgCaCO3/L、シリカ濃度25mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数−0.4の試験水を調製した。この試験水のpHは、7.6であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、30mg・dm−2・day−1であった。
比較例2
比較例1で調製した試験水に、ヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛をそれぞれ100mgPO4 3−/Lと20mgZn/Lになるように添加した。試験水のpHは、6.3になった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.0mg・dm−2・day−1であった。
実施例1
Mアルカリ度300mgCaCO3/L、カルシウム硬度300mgCaCO3/L、シリカ濃度100mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.9の試験水を調製した。この試験水のpHは、8.8であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、8.2mg・dm−2・day−1であった。
実施例2
実施例1で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.0mg・dm−2・day−1であった。
実施例3
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度80mgCaCO3/L、シリカ濃度300mgSiO2/L、マグネシウム硬度200mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.1の試験水を調製した。この試験水のpHは、9.1であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、9.2mg・dm−2・day−1であった。
実施例4
実施例3で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.7mg・dm−2・day−1であった。
実施例5
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度300mgCaCO3/L、シリカ濃度300mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.6の試験水を調製した。この試験水のpHは、9.1であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、3.3mg・dm−2・day−1であった。
実施例6
実施例5で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.8mg・dm−2・day−1であった。
比較例1〜2及び実施例1〜6の試験水の水質、2.4logA+logB、logC+logD+2pH+8.51logt、logB+logCの値及び腐食速度を、第1表に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
第1表に見られるように、2.4logA+logBが6.47、logC+logD+2pH+8.51logtが30.8、logB+logCが3.30の試験水を用いた比較例1では、腐食速度が30mg・dm−2・day−1であり、非常に大きい。しかし、この試験水にヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛を添加した比較例2では、腐食速度は1.0mg・dm−2・day−1となり、飛躍的に下がっている。
2.4logA+logBが8.42、logC+logD+2pH+8.51logtが33.8、logB+logCが4.48の試験水を用いた実施例1では、腐食速度が8.2mg・dm−2・day−1であり、小さい。この試験水に水溶性ポリマー2種を添加した実施例2では、腐食速度は1.0mg・dm−2・day−1となり、ヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛を併用した比較例1と同じ値まで低下している。
2.4logA+logBが6.47、logC+logD+2pH+8.51logtが35.5、logB+logCが4.38の試験水を用いた実施例3、2.4logA+logBが7.04、logC+logD+2pH+8.51logtが34.8、logB+logCが4.95の試験水を用いた実施例5においても、腐食速度は小さく、これらの試験水に水溶性ポリマー2種を添加した実施例4と実施例6では、腐食速度はさらに低下している。
【0010】
【発明の効果】
本発明の防食方法によれば、冷却水に、防食的な水中成分であるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ケイ酸イオン、炭酸イオンを添加し、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムに対する過飽和な水質に調整することにより、リン系防食剤と亜鉛系防食剤を全く使用することなく、優れた防食効果を得ることができる。また、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムに対する過飽和な水に、水溶性ポリマーを添加することにより、防食効果をさらに増大するとともに、金属表面へのスケールの付着を防止することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、防食方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を全く使用することなく、冷却水系における金属材料の腐食を効果的に防止することができる防食方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷却水系においては、熱交換器、配管などに炭素鋼が用いられており、腐食による障害が発生する。炭素鋼の腐食は、その表面に生ずる局部電池のアノードから鉄がイオンとして溶出し、カソードで酸素の還元反応により電子の受容が行われる電気化学的な現象と考えられる。冷却水系において腐食が起こると、腐食生成物による伝熱阻害、冷却水流路阻害、チューブ閉塞などの障害が生じ、機器の寿命が短くなり、さらに腐食により穴が開くと、製品の漏洩や冷却水による製品の汚染が起こる。
また、熱交換器の伝熱チューブでは、補給水の濃縮に伴い、あるいは、補給水中の成分とリン酸、ホスホン酸、亜鉛系インヒビターのと反応生成物により、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどのスケールが付着し、伝熱阻害を引き起こす。
冷却水系においては、リン酸塩、ホスホン酸塩、亜鉛系防食剤、あるいは、水溶性ポリマーの添加により、防食とスケール防止が図られている。冷却水系においては、濃縮を制御するために冷却水のブローがなされているが、富栄養化などの環境問題に伴い、リン系薬剤と亜鉛系薬剤の冷却水系への添加が制限されるようになった。しかし、リンと亜鉛を含まない薬剤による水処理では、炭素鋼材質に対する防食性が劣り、特に低流速での炭素鋼伝熱チューブの腐食を十分に抑制することができない。このために、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を用いることなく、炭素鋼の腐食を効果的に防止することができる防食方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、リン系薬剤及び亜鉛系薬剤を全く使用することなく、冷却水系における金属材料の腐食を効果的に防止することができる防食方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、冷却水に炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオン、マグネシウムイオンなどを添加し、Mアルカリ度、カルシウム硬度、シリカ濃度、マグネシウム硬度、ランジェリア指数が特定の関係を有する過飽和状態の水質に調整することにより、優れた防食効果が得られることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/Lとしたとき、
2.4logA + logB ≧ 6.4
C ≧ 50
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(2)冷却水系において、冷却水のシリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/Lとし、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(3)冷却水系において、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、ランジェリア指数をEとしたとき、
logB + logC ≧ 3.4
E ≧ 1.5
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法、
(4)水溶性アニオンポリマーを添加する第1項記載の防食方法、
(5)水溶性アニオンポリマーを添加する第2項記載の防食方法、及び、
(6)水溶性アニオンポリマーを添加する第3項記載の防食方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の防食方法の第一の態様においては、冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/Lとしたとき、
2.4logA + logB ≧ 6.4
C ≧ 50
を満たす水質に調整する。冷却水に、炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオンを添加することにより、上記の条件を満たし、炭酸カルシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加する炭酸イオン源に特に制限はなく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどを挙げることができる。添加するカルシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。
本発明の防食方法の第二の態様においては、冷却水系において、冷却水のシリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/Lとし、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33
を満たす水質に調整する。冷却水にケイ酸イオン、マグネシウムイオンを添加することにより、上記の条件を満たし、ケイ酸マグネシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。添加するマグネシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどを挙げることができる。
本発明の防食方法の第三の態様においては、冷却水系において、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、ランジェリア指数をEとしたとき、
logB + logC ≧ 3.4
E ≧ 1.5
を満たす水質に調整する。冷却水にカルシウムイオン、ケイ酸イオンを添加することにより、上記の条件を満たし、炭酸カルシウムに対して過飽和な水質とすることができる。添加するカルシウムイオン源に特に制限はなく、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。添加するケイ酸イオン源に特に制限はなく、例えば、ケイ酸1号、ケイ酸2号、ケイ酸3号、メタケイ酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0006】
本発明方法においては、冷却水に、炭酸イオン、カルシウムイオン、ケイ酸イオン、マグネシウムイオンに加えて、水溶性アニオンポリマーを添加することが好ましい。水溶性アニオンポリマーを添加することにより、防食効果をさらに高めるとともに、過飽和の炭酸カルシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどの金属表面へのスケールとしての付着を防止することができる。
使用する水溶性アニオンポリマーに特に制限はなく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アクリロキシ−1−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、それらの塩などのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。これらのモノマーと共重合させるコモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチレンなどを挙げることができる。これらの水溶性アニオンポリマーは、1種を単独で用いることができ、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明方法によれば、冷却水を炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウムなどの適度な過飽和の状態とし、これらの微細なスケールを金属表面に吸着させることにより、防食皮膜としての効果を発揮させることができる。
【0007】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
調製した試験水を貯槽に貯留し、この試験水をポンプにより、分極抵抗法による腐食計に通液して貯槽に戻す循環を行い、水温30℃で1日経過後の腐食速度を測定した。
試験水は、純水に塩化カルシウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液を添加して調製し、これにヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液、塩化亜鉛水溶液、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体の水溶液及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体から選ばれる防食剤を添加して、あるいは添加せずに試験に供した。
比較例1
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度80mgCaCO3/L、シリカ濃度25mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数−0.4の試験水を調製した。この試験水のpHは、7.6であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、30mg・dm−2・day−1であった。
比較例2
比較例1で調製した試験水に、ヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛をそれぞれ100mgPO4 3−/Lと20mgZn/Lになるように添加した。試験水のpHは、6.3になった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.0mg・dm−2・day−1であった。
実施例1
Mアルカリ度300mgCaCO3/L、カルシウム硬度300mgCaCO3/L、シリカ濃度100mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.9の試験水を調製した。この試験水のpHは、8.8であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、8.2mg・dm−2・day−1であった。
実施例2
実施例1で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.0mg・dm−2・day−1であった。
実施例3
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度80mgCaCO3/L、シリカ濃度300mgSiO2/L、マグネシウム硬度200mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.1の試験水を調製した。この試験水のpHは、9.1であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、9.2mg・dm−2・day−1であった。
実施例4
実施例3で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.7mg・dm−2・day−1であった。
実施例5
Mアルカリ度80mgCaCO3/L、カルシウム硬度300mgCaCO3/L、シリカ濃度300mgSiO2/L、マグネシウム硬度40mgCaCO3/L、ランジェリア指数1.6の試験水を調製した。この試験水のpHは、9.1であった。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、3.3mg・dm−2・day−1であった。
実施例6
実施例5で調製した試験水に、マレイン酸とイソブチレンとの共重合体及びアクリル酸とイソプレンスルホン酸と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体を、それぞれが濃度50mg/Lになるように添加した。
この試験水を用いて、24時間の通水試験を行った。腐食速度は、1.8mg・dm−2・day−1であった。
比較例1〜2及び実施例1〜6の試験水の水質、2.4logA+logB、logC+logD+2pH+8.51logt、logB+logCの値及び腐食速度を、第1表に示す。
【0008】
【表1】
【0009】
第1表に見られるように、2.4logA+logBが6.47、logC+logD+2pH+8.51logtが30.8、logB+logCが3.30の試験水を用いた比較例1では、腐食速度が30mg・dm−2・day−1であり、非常に大きい。しかし、この試験水にヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛を添加した比較例2では、腐食速度は1.0mg・dm−2・day−1となり、飛躍的に下がっている。
2.4logA+logBが8.42、logC+logD+2pH+8.51logtが33.8、logB+logCが4.48の試験水を用いた実施例1では、腐食速度が8.2mg・dm−2・day−1であり、小さい。この試験水に水溶性ポリマー2種を添加した実施例2では、腐食速度は1.0mg・dm−2・day−1となり、ヘキサメタリン酸ナトリウムと塩化亜鉛を併用した比較例1と同じ値まで低下している。
2.4logA+logBが6.47、logC+logD+2pH+8.51logtが35.5、logB+logCが4.38の試験水を用いた実施例3、2.4logA+logBが7.04、logC+logD+2pH+8.51logtが34.8、logB+logCが4.95の試験水を用いた実施例5においても、腐食速度は小さく、これらの試験水に水溶性ポリマー2種を添加した実施例4と実施例6では、腐食速度はさらに低下している。
【0010】
【発明の効果】
本発明の防食方法によれば、冷却水に、防食的な水中成分であるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、ケイ酸イオン、炭酸イオンを添加し、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムに対する過飽和な水質に調整することにより、リン系防食剤と亜鉛系防食剤を全く使用することなく、優れた防食効果を得ることができる。また、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムに対する過飽和な水に、水溶性ポリマーを添加することにより、防食効果をさらに増大するとともに、金属表面へのスケールの付着を防止することができる。
Claims (6)
- 冷却水系において、冷却水のMアルカリ度をAmgCaCO3/L、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/Lとしたとき、
2.4logA + logB ≧ 6.4
C ≧ 50
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法。 - 冷却水系において、冷却水のシリカ濃度をCmgSiO2/L、マグネシウム硬度をDmgCaCO3/Lとし、水素イオン指数をpH、水温をt℃としたとき、
logC + logD + 2pH + 8.51logt ≧ 33
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法。 - 冷却水系において、カルシウム硬度をBmgCaCO3/L、シリカ濃度をCmgSiO2/L、ランジェリア指数をEとしたとき、
logB + logC ≧ 3.4
E ≧ 1.5
を満たす水質に調整することを特徴とする防食方法。 - 水溶性アニオンポリマーを添加する請求項1記載の防食方法。
- 水溶性アニオンポリマーを添加する請求項2記載の防食方法。
- 水溶性アニオンポリマーを添加する請求項3記載の防食方法。
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