JP2004106034A - シート状金属の加工装置および加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シート状金属コイルを酸化させること無く、熱間で高品質に加工できる加工装置および加工方法を提供する。
【解決手段】雰囲気制御できる室内に、通電加熱装置を備えた加工装置を設置し、シート状金属を加熱した直後に加工を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】雰囲気制御できる室内に、通電加熱装置を備えた加工装置を設置し、シート状金属を加熱した直後に加工を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状の金属が酸化を受けやすい温間から熱間において、精度良い加工が迅速にでき、かつ高温でもスケールの発生が防止できるシート状金属の加工装置および加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シート状の金属は、自動車などのボディーや電化製品等日常の様々なものに使われ、その形状は複雑多伎にわたる。これらの製品は、通常鉄板やアルミおよびその合金などが使われるが、特に加工性や強度を持たせる場合には、シート状金属を一定温度以上に加熱してから加工を行う場合がある。
【0003】
通常、シート状金属の加熱は、加熱炉でガスや重油用のバーナーを用いた燃焼ガスや電気ヒーターによる輻射加熱によることが多い。シート状金属は、酸化雰囲気で加熱されることが多く、あるいは、非酸化雰囲気で加熱していてもプレスなどの加工を行う場合には炉外へ出され大気にさらされた状態で加工を行うことになる。そのため、加工されるまでに加熱されたシート状金属は、放散熱によりシート内で温度偏差がつき、温度偏差によりシート内に強度のばらつきが生じるため加工精度を悪化させる原因の一つになっている。
【0004】
また、高温で大気にさらされたシート状金属は、表面に酸化スケールが発生するため、スケール除去のための後処理が必要となり、スケール除去のための設備、処理費用、時間がかかる。
【0005】
そのため、たとえば、熱間加工する物体に不活性ガスを吹き付けて、酸化を防止する方法が公開されている(特許文献1参照)。また、鋼板表面にアルミをメッキし、鋼板の酸化を防止するとともに、高温に加熱した時にアルミが溶融しないように徐々に加熱し鉄との合金化を進める方法などが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−309426号公報
【特許文献2】
特開2000−38640号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の方法では不活性ガスを吹き付ける時、まわりの空気を巻き込むため酸素濃度を下げることができず、効果的な酸化防止にはならないという問題がある。また、加熱した金属をガスで冷やすことにもなり、加熱効果が薄れるとともに、温度偏差を増長し、加工精度の悪化にもつながる可能性がある。また、後者の方法では、メッキのための設備が必要であり製造コストの増加が避けられない。
【0008】
本発明は、シート状金属の温間加工あるいは熱間加工で問題となる金属の酸化を防止するとともに、温度分布に起因する加工精度、品質の悪化を防止するための効果的な解決方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記の通りである。
(1)非酸化性雰囲気に制御可能な機能を有する空間内に、シート状金属の加熱装置と該シート状金属の加工装置を設けたことを特徴とするシート状金属の加工装置。
(2)シート状金属の加熱装置を直接通電加熱装置としたことを特徴とする前記(1)記載のシート状金属の加工装置。
(3)シート状金属の加工装置において、シート状金属と対面する様に移動可能な防熱板を設けたことを特徴とする前記(2)記載のシート状金属の加工装置。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の装置を用いて、非酸化性雰囲気でシート状金属を加熱した後、該シート状金属の加工を行うことを特徴とするシート状金属の加工方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明による通電加熱装置を用いたシート状金属の加工装置を示す断面模式図である。加工はプレスを例に説明する。シート状金属を加工する場合、複雑な形状に加工する場合や冶金的な効果を与えるため、加工時にシート状金属を加熱する場合がある。シート状金属1を大気中で加熱すると、たとえ短時間で加熱を行っても表面の酸化は避けられず、通常は、加工後酸洗などして表面からスケールを除去している。
【0011】
そのため、本発明ではスケールの発生を防止するため、図1に示す様に、シート状金属の加熱装置と加工装置を、ガスの吸気口8とガスの排出口9を有する壁7で外気と隔てられた雰囲気制御可能な空間11に設置し、シート状金属1を雰囲気制御しながら加熱を行う。雰囲気ガスは、酸化を防止するためだけであれば、安価な窒素を用いれば良いが、窒化等の反応により窒素を嫌う場合には、アルゴンや水素などを単独あるいは混合して用いればよい。
【0012】
シート状金属1の加熱装置としては、ラジアントチューブなどを用いた雰囲気制御できるガス炉や電気ヒーター炉などの間接加熱による装置を用いても良いし、あるいは誘導加熱炉などを用いても良い。
さらに本発明では、より効果的に加工を行うため、通電加熱装置を用い、直接シート状金属1を加熱する。
【0013】
すなわち、ガス炉や電気ヒーター炉などの間接加熱装置、あるいは誘導加熱炉を使う場合、炉の設置スペースが余分に要ること、また、これらの加熱方法では、シート状金属を炉で加熱した後炉外に取り出し、その後加工装置にセットしなければならず、シート状金属の様に薄く面積が広い物体では、炉外に出した途端急速に冷却されるため、加工時に所定の温度に保つことがやや難しい。
【0014】
そのため、所定の温度にするためには必要な温度以上に過加熱する必要があり過剰なエネルギーの投入をする必要が生じる可能性もあり、場合によっては冶金上好ましくない温度域に加熱される懸念もある。また、仮に過加熱して加工直前にシート状金属の温度を平均的に所望の温度にしたとしても、放散熱によりシート状金属内にやや温度分布が生じ、強度ばらつきや寸法精度の低下を招いてしまう可能性がある。
【0015】
それに対し、通電加熱装置を用いると、シート状金属1は、最低の投入パワーで所望の温度に加熱することが可能になるとともに、投入パワーを制御する事により加熱速度を自在に制御することができる様になるため好ましい。すなわち、効率的にシート状金属1を加熱するためには、たとえば図1に示すように加工装置の直下に加熱装置を設け、加熱終了と同時に加工を行えばよい。
【0016】
図1の様に、加工装置6の直下にシート状金属1を置き、その両端を、電力ケーブル3で接続された電極2,2′でクランプし、電流を通じることによりシート状金属1を所望の温度に所望の時間で加熱を行い、加熱されたシート状金属1は、直ちに加工装置で加工を行えば良い。図1では、プレス装置6と金型5との間でシート状金属1を加熱し、そのまま加熱されたシート状金属1をプレス装置6と金型5とでプレスする。ここで、図中4は、電源を示す。
【0017】
このとき、図1に示すように、プレス装置6および金型5とシート状金属1との間に防熱板10を設けるとさらに好ましい。この防熱板10は、加熱中のシート状金属1からの放散熱を防止するためのものであり、特に冷えたプレス装置6や金型5や周辺の加工装置部材との熱の授受を防ぎ、シート状金属1の温度低下を防止したり、逆に金型や加工装置部材の温度が上昇し変形するのを防止するために用いる。
【0018】
以上の様にすることにより、シート状金属1は、加工する場所から移動する必要が無く、加熱終了後直ちに加工することができる。そのため、余分なエネルギーを投入する必要もなく、加熱終了と同時に最短の時間で加工をすることができる。さらに、電気加熱であるため投入パワーにより自在に加熱速度を制御できることから、冶金的特性を効果的に発現させることもできる。
【0019】
図1で本発明の作用を説明する。外気を壁7により遮断し、非酸化性雰囲気をガスの吸気口8から導入しガスの排出口9から排出する事により雰囲気を非酸化性ガスに制御した中に置かれたシート状金属の加工装置プレス装置6及び金型5に対し、加工しようとするシート状金属1は、図1の紙面上から下あるいは下から上に向かってコンベア等で送られ、プレス装置6と金型5の間に配置する。
【0020】
その後、シート状金属1は電極2および2′により両端をクランプする。電極2,2′はケーブル3で電源4に接続され、シート状金属に電流を通じ所望の温度まで加熱を行う。加熱温度は、放射温度計などで実測しても良いし、シート状金属1の寸法、種類がわかればあらかじめ通電電流と時間との関係を求めたテーブルを作成しておいて求めてもよく、通電時間は、実測温度で制御しても良いし、タイマー、プログラマー等で制御しても良い。
【0021】
予測されるシート状金属1の加熱終了時間に対し、プレス装置6の移動と電流停止のタイミングは、プレス装置6がシート状金属1に接触する前に通電停止になるようにシーケンスを組めばよい。この様にシーケンスを組めば、昇温終了とほぼ同時に加工をすることが可能になり、無駄な電力投入をせずに、温度低下を最小に抑えた均一なシート状金属1の加工ができる。
【0022】
また、防熱板10が有る場合には、当然ながら防熱板10の待避が必要であり、その待避を考慮してシーケンスを組めばよい。本発明で用いる電源4は、直流でも交流でもよくパルス的な電流でも良く、特に制限は無い。高い温度の均一性が求められる場合には、直流を用いれば良いし、安価な電源を求める場合には交流を用いれば良く、電源本体は、ケーブル3の電流損失や設備費が問題にならなければ、壁7の外に置くと、加工装置を置く雰囲気制御室のスペース計画がしやすくなるとともに、電源のメンテナンスなどの面でも都合がよい。
【0023】
電極は、特に制限するものではないが、水冷した銅板にメッキや溶射などでシート状金属1が溶着しにくくしたものや炭素板や金属含浸した炭素材などを用いれば良い。
【0024】
防熱板10は、熱伝導率が小さく比熱の小さいアルミナやシリカなどからなるセラミックスファイバーや断熱ボードを用いればよく、更に効果的に熱損失を抑えるためには、シート状金属1に対面する側に熱の反射板を設けると良い。反射板は、金属に金の蒸着したものやメッキなどしたもの、ステンレスを鏡面化したものなど、熱を反射しやすいものを防熱板の表面に設ければ良い。
【0025】
【実施例】
本発明の有効性を確認するため実験を行った。実験は、小型プレス装置で板厚0.4mm、幅200mm、長さ400mmの冷延鋼板を各処理方法で600℃まで加熱した後、プレスしたときの表面性状(スケール発生、形状異常の有無)、プレス時の平均温度および最大温度偏差で評価した。温度は、熱電対による実測温度で放射率を補正した赤外線映像装置で測定を行った。
【0026】
実験は、プレス器全体を小型の雰囲気制御可能な部屋に入れ、窒素ガスで充分に置換し、プレス装置上で直流電源により5分で加熱した後直ちにプレスした本発明による実施例1、プレス装置と鋼板との間に金メッキをした厚み1mmの銅板を貼り付けた10mmの断熱ボードからなる防熱板を入れて加熱しプレスした本発明による実施例2、大気雰囲気下にプレス装置を置き、炉内を窒素雰囲気にして電気ヒーターで加熱した後炉外に鋼板を取り出しプレスを行った比較例1、比較例1と同様に加熱した後窒素ガスをノズルで吹き付けながらプレス装置に運びセットした後プレスを行った比較例2について上記項目に従い比較した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明による実施例1及び実施例2は、ともに全く酸化することもまた、表面にしわなどが発生することもなくきわめて良好なプレスができた。実施例1に比較し実施例2では通電電流で約15%低減する事ができた。
【0029】
一方、比較例1は無酸化雰囲気の炉内ではスケールも発生することはなかったが、炉外に取り出したとたん酸化が始まると同時にプレス装置にセットする間に冷却が進行し温度偏差も生じた。酸化を抑える目的で窒素ガスを吹き付けた比較例2では、酸化抑制効果は全くなく、それ以上に窒素ガスによる冷却が進み局部的に冷却されることにより温度偏差が大きくつくとともに、プレス後の鋼板にしわの発生が見られた。
【発明の効果】
本発明によるシート状金属の加工装置及び加工方法を用いれば、スケールの発生する温度域でも全くスケールを発生することなくシート状金属を加工することができることから、スケール発生に伴うスケール除去処理のための設備、行程が不要となる。また、板厚が薄く温度偏差が生じやすいシート状金属を均一な温度に加熱できることから、加工時の強度分布も均一にでき、加工精度を向上させることができる。
【0030】
さらに、加工装置の近傍で加熱ができ、加熱速度も自在に制御できることから、無駄な加熱エネルギーを投入する必要が無く、最短の時間で加工ができることから省エネ上も有利でありかつ生産の自由度が増し、生産性も大きく向上できる。冶金的にも、自在な加熱速度で正確な温度に温度偏差小さく加熱できることから、品質の優れた加工をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による、シート状金属の加工装置を説明する正面模式図である。
【符号の説明】
1:シート状金属
2,2′:電極
3:ケーブル
4:電源
5:金型
6:プレス装置
7:壁
8:ガスの吸気口
9:ガスの排出口
10:防熱板
11:空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、シート状の金属が酸化を受けやすい温間から熱間において、精度良い加工が迅速にでき、かつ高温でもスケールの発生が防止できるシート状金属の加工装置および加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シート状の金属は、自動車などのボディーや電化製品等日常の様々なものに使われ、その形状は複雑多伎にわたる。これらの製品は、通常鉄板やアルミおよびその合金などが使われるが、特に加工性や強度を持たせる場合には、シート状金属を一定温度以上に加熱してから加工を行う場合がある。
【0003】
通常、シート状金属の加熱は、加熱炉でガスや重油用のバーナーを用いた燃焼ガスや電気ヒーターによる輻射加熱によることが多い。シート状金属は、酸化雰囲気で加熱されることが多く、あるいは、非酸化雰囲気で加熱していてもプレスなどの加工を行う場合には炉外へ出され大気にさらされた状態で加工を行うことになる。そのため、加工されるまでに加熱されたシート状金属は、放散熱によりシート内で温度偏差がつき、温度偏差によりシート内に強度のばらつきが生じるため加工精度を悪化させる原因の一つになっている。
【0004】
また、高温で大気にさらされたシート状金属は、表面に酸化スケールが発生するため、スケール除去のための後処理が必要となり、スケール除去のための設備、処理費用、時間がかかる。
【0005】
そのため、たとえば、熱間加工する物体に不活性ガスを吹き付けて、酸化を防止する方法が公開されている(特許文献1参照)。また、鋼板表面にアルミをメッキし、鋼板の酸化を防止するとともに、高温に加熱した時にアルミが溶融しないように徐々に加熱し鉄との合金化を進める方法などが提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−309426号公報
【特許文献2】
特開2000−38640号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前者の方法では不活性ガスを吹き付ける時、まわりの空気を巻き込むため酸素濃度を下げることができず、効果的な酸化防止にはならないという問題がある。また、加熱した金属をガスで冷やすことにもなり、加熱効果が薄れるとともに、温度偏差を増長し、加工精度の悪化にもつながる可能性がある。また、後者の方法では、メッキのための設備が必要であり製造コストの増加が避けられない。
【0008】
本発明は、シート状金属の温間加工あるいは熱間加工で問題となる金属の酸化を防止するとともに、温度分布に起因する加工精度、品質の悪化を防止するための効果的な解決方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は下記の通りである。
(1)非酸化性雰囲気に制御可能な機能を有する空間内に、シート状金属の加熱装置と該シート状金属の加工装置を設けたことを特徴とするシート状金属の加工装置。
(2)シート状金属の加熱装置を直接通電加熱装置としたことを特徴とする前記(1)記載のシート状金属の加工装置。
(3)シート状金属の加工装置において、シート状金属と対面する様に移動可能な防熱板を設けたことを特徴とする前記(2)記載のシート状金属の加工装置。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の装置を用いて、非酸化性雰囲気でシート状金属を加熱した後、該シート状金属の加工を行うことを特徴とするシート状金属の加工方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本発明による通電加熱装置を用いたシート状金属の加工装置を示す断面模式図である。加工はプレスを例に説明する。シート状金属を加工する場合、複雑な形状に加工する場合や冶金的な効果を与えるため、加工時にシート状金属を加熱する場合がある。シート状金属1を大気中で加熱すると、たとえ短時間で加熱を行っても表面の酸化は避けられず、通常は、加工後酸洗などして表面からスケールを除去している。
【0011】
そのため、本発明ではスケールの発生を防止するため、図1に示す様に、シート状金属の加熱装置と加工装置を、ガスの吸気口8とガスの排出口9を有する壁7で外気と隔てられた雰囲気制御可能な空間11に設置し、シート状金属1を雰囲気制御しながら加熱を行う。雰囲気ガスは、酸化を防止するためだけであれば、安価な窒素を用いれば良いが、窒化等の反応により窒素を嫌う場合には、アルゴンや水素などを単独あるいは混合して用いればよい。
【0012】
シート状金属1の加熱装置としては、ラジアントチューブなどを用いた雰囲気制御できるガス炉や電気ヒーター炉などの間接加熱による装置を用いても良いし、あるいは誘導加熱炉などを用いても良い。
さらに本発明では、より効果的に加工を行うため、通電加熱装置を用い、直接シート状金属1を加熱する。
【0013】
すなわち、ガス炉や電気ヒーター炉などの間接加熱装置、あるいは誘導加熱炉を使う場合、炉の設置スペースが余分に要ること、また、これらの加熱方法では、シート状金属を炉で加熱した後炉外に取り出し、その後加工装置にセットしなければならず、シート状金属の様に薄く面積が広い物体では、炉外に出した途端急速に冷却されるため、加工時に所定の温度に保つことがやや難しい。
【0014】
そのため、所定の温度にするためには必要な温度以上に過加熱する必要があり過剰なエネルギーの投入をする必要が生じる可能性もあり、場合によっては冶金上好ましくない温度域に加熱される懸念もある。また、仮に過加熱して加工直前にシート状金属の温度を平均的に所望の温度にしたとしても、放散熱によりシート状金属内にやや温度分布が生じ、強度ばらつきや寸法精度の低下を招いてしまう可能性がある。
【0015】
それに対し、通電加熱装置を用いると、シート状金属1は、最低の投入パワーで所望の温度に加熱することが可能になるとともに、投入パワーを制御する事により加熱速度を自在に制御することができる様になるため好ましい。すなわち、効率的にシート状金属1を加熱するためには、たとえば図1に示すように加工装置の直下に加熱装置を設け、加熱終了と同時に加工を行えばよい。
【0016】
図1の様に、加工装置6の直下にシート状金属1を置き、その両端を、電力ケーブル3で接続された電極2,2′でクランプし、電流を通じることによりシート状金属1を所望の温度に所望の時間で加熱を行い、加熱されたシート状金属1は、直ちに加工装置で加工を行えば良い。図1では、プレス装置6と金型5との間でシート状金属1を加熱し、そのまま加熱されたシート状金属1をプレス装置6と金型5とでプレスする。ここで、図中4は、電源を示す。
【0017】
このとき、図1に示すように、プレス装置6および金型5とシート状金属1との間に防熱板10を設けるとさらに好ましい。この防熱板10は、加熱中のシート状金属1からの放散熱を防止するためのものであり、特に冷えたプレス装置6や金型5や周辺の加工装置部材との熱の授受を防ぎ、シート状金属1の温度低下を防止したり、逆に金型や加工装置部材の温度が上昇し変形するのを防止するために用いる。
【0018】
以上の様にすることにより、シート状金属1は、加工する場所から移動する必要が無く、加熱終了後直ちに加工することができる。そのため、余分なエネルギーを投入する必要もなく、加熱終了と同時に最短の時間で加工をすることができる。さらに、電気加熱であるため投入パワーにより自在に加熱速度を制御できることから、冶金的特性を効果的に発現させることもできる。
【0019】
図1で本発明の作用を説明する。外気を壁7により遮断し、非酸化性雰囲気をガスの吸気口8から導入しガスの排出口9から排出する事により雰囲気を非酸化性ガスに制御した中に置かれたシート状金属の加工装置プレス装置6及び金型5に対し、加工しようとするシート状金属1は、図1の紙面上から下あるいは下から上に向かってコンベア等で送られ、プレス装置6と金型5の間に配置する。
【0020】
その後、シート状金属1は電極2および2′により両端をクランプする。電極2,2′はケーブル3で電源4に接続され、シート状金属に電流を通じ所望の温度まで加熱を行う。加熱温度は、放射温度計などで実測しても良いし、シート状金属1の寸法、種類がわかればあらかじめ通電電流と時間との関係を求めたテーブルを作成しておいて求めてもよく、通電時間は、実測温度で制御しても良いし、タイマー、プログラマー等で制御しても良い。
【0021】
予測されるシート状金属1の加熱終了時間に対し、プレス装置6の移動と電流停止のタイミングは、プレス装置6がシート状金属1に接触する前に通電停止になるようにシーケンスを組めばよい。この様にシーケンスを組めば、昇温終了とほぼ同時に加工をすることが可能になり、無駄な電力投入をせずに、温度低下を最小に抑えた均一なシート状金属1の加工ができる。
【0022】
また、防熱板10が有る場合には、当然ながら防熱板10の待避が必要であり、その待避を考慮してシーケンスを組めばよい。本発明で用いる電源4は、直流でも交流でもよくパルス的な電流でも良く、特に制限は無い。高い温度の均一性が求められる場合には、直流を用いれば良いし、安価な電源を求める場合には交流を用いれば良く、電源本体は、ケーブル3の電流損失や設備費が問題にならなければ、壁7の外に置くと、加工装置を置く雰囲気制御室のスペース計画がしやすくなるとともに、電源のメンテナンスなどの面でも都合がよい。
【0023】
電極は、特に制限するものではないが、水冷した銅板にメッキや溶射などでシート状金属1が溶着しにくくしたものや炭素板や金属含浸した炭素材などを用いれば良い。
【0024】
防熱板10は、熱伝導率が小さく比熱の小さいアルミナやシリカなどからなるセラミックスファイバーや断熱ボードを用いればよく、更に効果的に熱損失を抑えるためには、シート状金属1に対面する側に熱の反射板を設けると良い。反射板は、金属に金の蒸着したものやメッキなどしたもの、ステンレスを鏡面化したものなど、熱を反射しやすいものを防熱板の表面に設ければ良い。
【0025】
【実施例】
本発明の有効性を確認するため実験を行った。実験は、小型プレス装置で板厚0.4mm、幅200mm、長さ400mmの冷延鋼板を各処理方法で600℃まで加熱した後、プレスしたときの表面性状(スケール発生、形状異常の有無)、プレス時の平均温度および最大温度偏差で評価した。温度は、熱電対による実測温度で放射率を補正した赤外線映像装置で測定を行った。
【0026】
実験は、プレス器全体を小型の雰囲気制御可能な部屋に入れ、窒素ガスで充分に置換し、プレス装置上で直流電源により5分で加熱した後直ちにプレスした本発明による実施例1、プレス装置と鋼板との間に金メッキをした厚み1mmの銅板を貼り付けた10mmの断熱ボードからなる防熱板を入れて加熱しプレスした本発明による実施例2、大気雰囲気下にプレス装置を置き、炉内を窒素雰囲気にして電気ヒーターで加熱した後炉外に鋼板を取り出しプレスを行った比較例1、比較例1と同様に加熱した後窒素ガスをノズルで吹き付けながらプレス装置に運びセットした後プレスを行った比較例2について上記項目に従い比較した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明による実施例1及び実施例2は、ともに全く酸化することもまた、表面にしわなどが発生することもなくきわめて良好なプレスができた。実施例1に比較し実施例2では通電電流で約15%低減する事ができた。
【0029】
一方、比較例1は無酸化雰囲気の炉内ではスケールも発生することはなかったが、炉外に取り出したとたん酸化が始まると同時にプレス装置にセットする間に冷却が進行し温度偏差も生じた。酸化を抑える目的で窒素ガスを吹き付けた比較例2では、酸化抑制効果は全くなく、それ以上に窒素ガスによる冷却が進み局部的に冷却されることにより温度偏差が大きくつくとともに、プレス後の鋼板にしわの発生が見られた。
【発明の効果】
本発明によるシート状金属の加工装置及び加工方法を用いれば、スケールの発生する温度域でも全くスケールを発生することなくシート状金属を加工することができることから、スケール発生に伴うスケール除去処理のための設備、行程が不要となる。また、板厚が薄く温度偏差が生じやすいシート状金属を均一な温度に加熱できることから、加工時の強度分布も均一にでき、加工精度を向上させることができる。
【0030】
さらに、加工装置の近傍で加熱ができ、加熱速度も自在に制御できることから、無駄な加熱エネルギーを投入する必要が無く、最短の時間で加工ができることから省エネ上も有利でありかつ生産の自由度が増し、生産性も大きく向上できる。冶金的にも、自在な加熱速度で正確な温度に温度偏差小さく加熱できることから、品質の優れた加工をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による、シート状金属の加工装置を説明する正面模式図である。
【符号の説明】
1:シート状金属
2,2′:電極
3:ケーブル
4:電源
5:金型
6:プレス装置
7:壁
8:ガスの吸気口
9:ガスの排出口
10:防熱板
11:空間
Claims (4)
- 非酸化性雰囲気に制御可能な機能を有する空間内に、シート状金属の加熱装置と該シート状金属の加工装置を設けたことを特徴とするシート状金属の加工装置。
- シート状金属の加熱装置を直接通電加熱装置としたことを特徴とする請求項1記載のシート状金属の加工装置。
- シート状金属の加工装置において、シート状金属と対面する様に移動可能な防熱板を設けたことを特徴とする請求項2記載のシート状金属の加工装置。
- 請求項1〜3いずれかに記載の装置を用いて、非酸化性雰囲気でシート状金属を加熱した後、該シート状金属の加工を行うことを特徴とするシート状金属の加工方法。
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---|---|---|---|
JP2002274020A JP2004106034A (ja) | 2002-09-19 | 2002-09-19 | シート状金属の加工装置および加工方法 |
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JP2002274020A JP2004106034A (ja) | 2002-09-19 | 2002-09-19 | シート状金属の加工装置および加工方法 |
Publications (1)
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006289425A (ja) * | 2005-04-11 | 2006-10-26 | Nippon Steel Corp | 熱間プレス成形方法およびその装置 |
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- 2002-09-19 JP JP2002274020A patent/JP2004106034A/ja active Pending
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