JP2004104864A - 鏡像力を使う静電発電方法及び装置 - Google Patents

鏡像力を使う静電発電方法及び装置 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の静電発電機においては発生した電荷を電荷搬送体に乗せてより高電位に搬送するために機械的なエネルギーを必要とした。
【解決手段】CNTを表面に有する電荷発生電極、電荷搬送体が通り抜けられる孔を有する電界形成電極、電荷発生電極よりも電気的にエネルギーの高い電荷回収電極をこの順に並べた静電発電装置で、電荷発生電極より離れた位置で電荷搬送体がCNTより電界放出された電子を受け取り、電界による静電力で、電荷回収電極の近くで電荷発生電極と同電位の位置に来た時、電荷搬送体の電荷に作用してこれを押し戻そうとする電界による静電力よりも、該電荷と電荷回収電極間に働く鏡像力の方が大きく、電荷搬送体が電荷回収電極に到達できるように、電界の強さや、電荷搬送体が電荷発生電極より電荷を受け取る位置や、その電荷量を適正に設定する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
この発明は、静電発電方法、特に帯電した電荷搬送体を電界による静電力に抗して電気的によりエネルギーの高い位置に搬送する方法に、なかんずくその搬送力に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電発電方法の基本原理は非常に単純で、電荷を、静電的にエネルギーの低い位置よりより高い位置に運ぶだけである。これは、物体、たとえば、水がより高いところに持ち上げられると位置エネルギーを持つのと同じことである。高いところに持ち上げられた水は、低いところに戻る時、その有する位置エネルギーを運動エネルギーに変えて、たとえば水車を回して仕事をすることができる。
【0003】
静電発電の場合は、たとえば、1クーロンの電荷を0ボルトの位置より1ボルト電位の高い位置に運ぶと1ジュールの電気的エネルギーが発生する。これを1秒間で行うと1ワットの発電効率となる。
【0004】
電荷(電子またはイオン)それ自体を、特に、大気中で搬送することは大変難しいので、今までに発明されたすべての静電発電機で、電荷は電荷搬送体に乗せられて、電荷搬送体が機械的に搬送されることで電荷が運ばれた。
【0005】
従来の静電発電機に使用された電荷搬送体としては、ベルト、チェーン、粉末、水滴等があり、ベルトやチェーンは、モーターによって直接に、粉末や水滴は、ポンプによってそれらを囲む空気を移動させることで間接的に搬送された。
その中から、ベルトを使う方式と、水滴を使う方式を代表例として紹介する。
【0006】
図10に、コロナ放電で得た電荷を絶縁性のベルトに載せてモーターでベルトを回して超高電位の電荷回収部まで搬送する超高電圧用として実用化されているファンデグラーフ型静電発電機の概要を示す。(電気工学ポケットブック(第四版)電気学会編 オーム社 P.1124 より)
【0007】
図中、12がコロナ放電針で13が高圧電源である。高電界になった針先周囲でコロナ放電が起こりその結果発生した正イオンは絶縁性ベルト14に帯電する。正イオンを乗せたベルト14はモータ17で機械的に図のように回転され、その結果、正イオンは超高電位の電荷回収用コロナ放電針15の直下に至り、コロナ放電で該針電極15に回収される。
【0008】
図11には、コロナ放電電荷(イオン)をその流れと直行する導電性の水滴群に乗せて電荷回収電極まで搬送する静電発電機の概要を示す。(「静電気ハンドブック」1981年版p.xxx)導電性の小球を電荷の搬送体とし電荷回収電極と接触させて電荷を回収する点はこれから説明する本発明と同じである。
【0009】
図中、12は図10と同じくコロナ放電針で、13は同じく高圧電源である。ただし、図10ではコロナ放電針12に高電圧が印加されていたが、ここでは逆に、環状対抗電極18に高電圧が印加され、コロナ放電針12は接地されている。どちらの場合でも針先近傍が高電界となりここでコロナ放電が発生する。
コロナ放電針12先端付近で発生したコロナイオンは電界の向きに沿って環状対抗電極18に流れる。その途中、コロナイオンの流れを左から右に横切る水滴20に吸着してこれを帯電させる。
【0010】
帯電した水滴20には、電界の向きに環状対抗電極18に向かう静電力が作用するが、それよりも水滴20を囲む空気の流れ、風力19の方が強いので水滴20は環状対抗電極18の輪をくぐり抜けて網状電荷回収電極21に向かう。この間でも、帯電した水滴には環状対抗電極18に引き戻そうとする静電力が働くが強い風力がこの静電力に勝って水滴20を網状電荷回収電極21まで搬送する。
網状電荷回収電極21と接触した水滴20はその搬送してきた電荷をここで網状電荷回収電極21に引き渡す。その電荷が抵抗22を流れる時その両端に電位差(電圧)を形成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の静電発電機では、電界に抗して、電荷搬送体を機械的な力で搬送していた。そのため、モーターやポンプ等が必須で、高電圧が得られるが、発生する電気エネルギー以上の電気エネルギーが必要になり、また、装置も大きく、重たく、コストも高くなり、廃棄にも問題があった。従って、本発明は、このような従来の静電発電機の欠点のない静電発電方法とその装置を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明では電荷搬送体を駆動する力として、電荷がそれ自身で自然に有している鏡像力(影像力)を使用するので外部からの電気的なエネルギーの供給が不要になる。
鏡像力(影像力)は実電荷とそのまわりの導体との間に、その間の距離の二乗に逆比例して働く力である。(静電気ハンドブック1998年版、
p.1194)
本発明では、鏡像力をより有効に活用するために、電荷搬送体となる導電性
の小円板は電荷発生源(電極)より離れたところで電荷を受け取り、電荷回収電極に鏡像力で十
分引かれたのち、ここに接触して電荷を放出させるようにしている。
鏡像力は、静電気の分野で昔からよく知られた力ではあるが、空気清浄機に一部使われているだけで産業的にはほとんど使われなかった。その理由は、その力が非常に小さいためである。しかしながら、電極のごく近傍ではその力は大きくなり、特に電極に近づいた場合には、電界がその電荷に及ぼす静電力よりも強くなるので本発明のようにして使うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
具体的には、電界形成電極または、エレクトレットフイルムと接地された電荷発生源(対抗電極)
でその間に電界電子放出電界、またはコロナ放電開始電界に近いがそれ以下の電界を形成
し、導電性小円板を電荷発生源(対抗電極)に接近させてその間の電界を電界電子放出またはコロナ
放電開始電界以上にしてその間に電子またはコロナイオンを発生させ、発生した電子またはコロナ
イオンで帯電した導電性小円板を電界形成電極またはエレクトレットフイルムと電荷発生源(対抗電極)間の電
界が該小円板に作用する静電力を利用して電荷回収電極近傍まで
搬送させ、導電性小円板の実電荷と接近した電荷回収電極に静電誘導された電荷との間に働く鏡像力で、
帯電した該小円板を電界に抗して電気的にエネルギーの高い電荷回収電極まで搬送する静電発電機である。
実施例の前にまずこの原理を図1、図2で説明する。
【0014】
図1の上方に、本発明で使用される3つの電極、電荷発生電極1、電界形成電極2、電荷回収電極3が模式的に示されている。以下、それぞれ、発生電極1、形成電極2、回収電極3と短縮して呼ぶ。形成電極2の真中には小さな孔が空いていて、電荷搬送体4がここを通り抜けられるようになっている。
【0015】
図1の下側には、発生電極1から回収電極3までの空間の電位が実線で示されている。
発生電極1と回収電極3は接地され、形成電極2には、V0 ボルトの電圧が印加されている。発生電極1と形成電極2間の距離はL0メートルで、形成電極2と回収電極3間の距離は0.5L0メートルに保たれている。そのため、形成電極2と発生電極1間には、V0/L0=E0ボルト/メートルの電界が、形成電極2と回収電極3間には、V0/(0.5L0)=2E0ボルト/メートルの電界が形成される。
【0016】
この電界中で、導電性の電荷搬送体4(仮にその大きさをゼロとする。)を、発生電極1と形成電極2の間で、発生電極1からd0メートルの位置(ポイントAとする。)に置くと、該電荷搬送体4には、発生電極1より+qクーロンの電荷が与えられる。(この詳細は、後ほど、実施例中で説明する。)
なお、電荷搬送体4が置かれる前のポイントAの電位はVS=E0/d0ボルトである。
【0017】
この電荷搬送体4上の正電荷+qには、電界により、形成電極2向き(右向き)に、静電力fe=qEニュートンの力が働き、逆に、発生電極1向き(左向き)に鏡像力fi=kq*q/d0*d0ニュートンの力が働く。この時、静電力feの方が、鏡像力fiよりも僅かでも大きければ、該電荷搬送体4は、形成電極2に向かって動き始め、発生電極1と形成電極2間の電界E0が該電荷搬送体4上の電荷に作用する静電力で加速されながら形成電極2に到達しその孔を抜ける。
【0018】
その後は、形成電極2と回収電極3間に形成されている逆向きの電界2E0が該電荷に作用する静電力で減速されながら、回収電極3に向かう。この時、該電荷に作用する力が電界による静電力のみであれば、すなわち、鏡像力も、重力も、空気抵抗力も働かないとすれば、電位がVSボルトのポイントAより加速運動を始めた該電荷搬送体4は、形成電極2の孔を抜けた後減速されつつ同一電位のポイントBに到達した時、その速度がゼロとなりそれ以上先に行くことはけしてない。これが物理の原則である。
【0019】
なお、ポイントBと回収電極3間の距離dは、形成電極2と回収電極3間の電界が2E0で、ポイントBの電位がVS=E0/d0なので、d=VS/2E0=(E0/d0)/2E0=0.5d0となる。この結果、ポイントBで、該帯電体4上の電荷と、回収電極3間に作用する鏡像力は、距離の自乗に反比例するため、fi=4kq*q/d0*d0と、ポイントAで発生電極1との間に働く鏡像力の4倍になる。一方、電界が、該電荷に与える静電力は、電界に比例するためfe=2qEと2倍になるだけである。
【0020】
この結果、仮に、ポイントAでの、静電界にとる静電力fe=qEと鏡像力fi=kq2/d02が等しかったとすると、ポイントBでは、f=2qE=2kq*q/d0*d0の力が、回収電極1向きに(右向きに)働くことになる。この力を受けて、該電荷搬送体4はポイントBで止まらずに、逆に、この前から加速されて、回収電極3に衝突する。そこで、このエネルギーを有効に利用して、該電荷を、その発生元の、発生電極1の電位(0ボルト)と同じ回収電極3よりもさらに遠くの、さらに電位の高いところまで搬送すれば、発電の完成となる。
【0021】
その方法を、図2を使って説明する。
まず、回収電極3を、形成電極2との間の電界が変わらないように右に0.2d0メートル移動させる。この時、新回収電極3の電位はVg=2E0*0.2d0=0.4VSとなり、電荷が最初に発生した発生電極1の電位0ボルトよりも0.4VSボルト高くなる。故に、+qクーロンの電荷をここまで搬送すれば、0.4VS*qジュールの電気的エネルギーが得られる、発電されることになる。
【0022】
この時、ポイントBと新回収電極3間の距離は0.5d0から0.7d0と延びるため、距離の自乗に反比例する鏡像力は4kq*q/d0*d0から2.04kq*q/d0*d0に減少する。しかしながら、ポイントAにおける静電力fe=qEが鏡像力fi=kq*q/d0*d0の1.01倍だったとすれば、ポイントBにおける静電力はfe=2qE=2.02kq*q/d0*d0で、この点における鏡像力fi=2.04kq*q/d0*d0よりも小さい。
【0023】
すなわち、この状態では、加速運動のスタート地点、ポイントAと同電位のポイントBに戻った該電荷搬送体4には、わずかではあるが、右向きの、回収電極3向きの力が作用するため、ここで止まることなく、ここから再度加速されて(この点を越えれば、後は鏡像力がどんどんスカイロケット的に強くなるので急激に加速される。後で、実施例で示す。)0.4VSボルトの電位を持つ回収電極3に到達することができる。
【0024】
これが、本発明の、電荷を、その発生点よりより電気的にエネルギーの高い地点に鏡像力で搬送して発電させる原理である。
【0025】
原理はこのように簡単で明瞭であるが、実際には、いくつかの問題点や疑問も生じる。たとえば、ポイントAで発生電極1よりどのように電荷を受け取れるのかである。また、上記の原理の説明では、電荷搬送体4上の電荷が一点に集中しているものと仮定して鏡像力fi=kq*q/d0*d0の公式を使って計算したが、実際には、電荷搬送体4はある大きさをもち、導体であるため、電荷はその表面に分布し、その分布の状態は、周りの電界や、近くの電極までの距離によって変化するため、この公式は適応できない。
【0026】
そこで、下記に示す実施例では、電荷搬送体4の表面の電界からその表面の電荷密度を求め、電荷密度にその表面の面積をかけて、その表面の電荷量を算出し、さらにその電荷量にその表面の電界をかけてその表面に作用する静電力を求めた。この静電力は、上記の説明で言う、電界による静電力と鏡像力の両方を含んでいる。
【0027】
電荷搬送体4表面の電界は、電荷搬送体4及びそれを取り巻く空間を細かく分割し、その分割点の電位を軸対象三次元(数学的には二次元)差分法で求めて算出した。以下、実施例で具体的に説明する。
【0028】
【実施例1】
本発明をより詳細に説述するために、添付の図面に従ってこれを説明す
る。
図3に、実施例の電極の配置を示す。発生電極1と、回収電極3は、半径150μmの円板で、形成電極2は、その中心に、半径25μmの孔のある、半径150μmの有孔円板である。該三電極は、その中心をZ軸に置いて、図のように配置される。すなわち、発生電極1と、形成電極2の距離は250μm、形成電極2と回収電極3の距離はその半分の125μmである。
【0029】
該3電極により、直径300μm、高さ375μmの円筒が形成されるが、図3はZ軸の片側の一断面を示すものである。この断面は、5μmピッチで、Z方向が75分割、r方向が30分割される。その結果、この断面は2250個に分割される。この2250個の小正方形は格子と呼ばれ、その四隅の交差点は格子点と呼ばれる。
このすべての格子を表示すると煩雑になるので、その一部、左下隅を拡大して図4に示す。図4には、電荷搬送体4も示されているが、これに関しては後で述べる。
【0030】
図3において、発生電極1の電位を0ボルト、形成電極2の電位を+307.5ボルト(注、原理の説明では、搬送される電荷の極性は正としたが、実施例では後で述べる理由により負電荷が発生し搬送されるので、形成電極2に印加される電圧の極性は正になる。)、回収電極3の電位を−6.0ボルトとして、全2356格子点の電位を、2356個の連立一次方程式を解いて求めた
【0031】
その詳細は専門的になるのでここでは割愛する。ただし、下記の文献に具体的なプログラム付きでそのやり方が紹介されているので、そのとおりに行えば、誰でも同じ結果を得ることができる。
静電気学会誌, 16,  6 (1992) 530−538  実験講座 電界計算の手ほどき
第3講 差分法による石油タンク内部の電界計算 松原美之
なお、連立一次方程式の解は上記文献の逐次代入法に代えて本特許ではガウスの消去法で求めた。そのため、得られた結果において多少の差が生じることは有りえる。
【0032】
この結果、格子点75、151の電位は+6.14ボルトになった。発生電極1に含まれる格子点76、152の電位は0ボルトで、格子の縦横とも5μmなので、発生電極1上部の電界Egは1.23*e+6(10の6乗を示す、以下同じ)V/mとなる。
【0033】
次に、図4に示すように、半径5μm、高さ10μmの導電性円板を電荷搬送体4として、発生電極1から10μm上方に置いた。(注、そのセンターの位置は、発生電極1の15μm上で、格子点73になる。)同様に、該電荷搬送体4を含む全格子点の電位を、搬送体4の帯電量は0クーロン、搬送体4に含まれる格子点の電位はすべて等しいと言う条件で求めたら、格子点75、151の電位は、それぞれ、+6.14Vより、+8.39V、+8.10Vに高くなった。その結果、発生電極1上部の電界Egは1.23*e+6 V/mより1.65*e+6 V/mと高くなった。なお、このときの、電荷搬送体4の電位は+17.91Vであった。
【0034】
発生電極1の表面はカーボンナノチューブ(CNT)で覆われているため、その表面の電界が、1.23*e+6 V/mより1.65*e+6 V/mと高くなると、電界電子放出の閾値を越えて、多量の電子が、
CNTの先端より飛び出し、10μmのギャップ(注、CNTの電界電子放出のため、この領域全体が真空にひかれている。)を越えて、電荷搬送体4に当たりこれを帯電させる。
【0035】
下記文献に記載された、電界が、1.23*e+6 V/mと1.65*e+6 V/mの時の、CNTの放出電流密度はそれぞれ、2.0*e−11A/cm*cmと2.0*e−4A/cm*cmである。すなわち、電界が1.34倍になるだけで、電流は7桁も増大するのである。
「化学気相成長法によるカーボンナノコイルの大量合成」 大阪府立大学 中山
喜萬 工業材料 2001年10月号(Vol.49 No.10) p74−77
【0036】
この電流密度が286μsec間継続すると、該電荷搬送体4の帯電量は、−4.50*e−14 クーロン(C)になる。実際に、この条件で電界放出がどのくらい継続するかは不明であるが、もし286μsec間継続しなくとも問題はない。何とならば、CNTの放出電流密度はCNTの製法の改良にともなって年々急激に増大しているからである。最近では、上記の100倍を越える放出電流密度も報告されているので、そのCNTを使用すれば、数μsec間継続すると該電荷搬送体の帯電量は、−4.50*e−14 クーロン(C)になる。近い将来には、nsecオーダーでこの帯電量に達すると期待できる。
【0037】
これが、発生電極1より離れた地点で電荷搬送体4が発生電極1より電荷を受け取る方法である。
【0038】
次に、電荷搬送体4の電荷が−4.50*e−14 クーロン(C)と言う条件で、同様に全格子点の電位を求め、その電位から先に記した手順で、電荷搬送体4に加わるf1、f2、f3、f4、(図4参照)を求めた。その結果、f1=8.24*e−8ニュートン(N)、f4=8.15*e−8ニュートン(N)となった。上向きに働く静電力f1の方が下向きに働く静電力f4よりもわずかに大きいので、電荷搬送体4はこの逆方向に働く二つの力の差の力f=8.75*e−10ニュートン(N)を受けて、上方へ、形成電極2方向へ動き始める。
【0039】
なお、円周方向に働く静電力f2、f3は、180度反対方向の力が同じで逆方向に働くので結局ゼロとなり電荷搬送体4を移動させる力にはならない。
【0040】
次に、該電荷搬送体4を5μm上方に移動させて、すなわち、その中心点を格子73より格子72に移して同様に、f1、f2、f3、f4を求めた。その結果f1は8.24*e−8ニュートン(N)より8.97*e−8ニュートン(N)に増加し、f4は8.15*e−8ニュートン(N)より6.37*e−8ニュートン(N)に減少し、二つの力の差の力はf=8.75*e−10ニュートン(N)、からf=2.59*e−8ニュートン(N)に増加した。
【0041】
帯電した電荷搬送体4が、その中心が、格子点73より格子点72に移動する間には、先に求めた上下静電力の差の力の平均の力が、すなわち、f=8.75*e−10ニュートン(N)とf=2.59*e−8ニュートン(N)の平均の力が働くものとして、この間を移動する電荷搬送体4の位置と速度を nsecごとに運動方程式を解いて求めた。
【0042】
以下同様に、電荷搬送体4の中心が、5μm上に移動するごとに、全格子点の電位を求めなおし、その値から該電荷搬送体4に作用する静電力fを求めて、この間の位置と速度を計算した。その結果を図5に示す。
【0043】
図5に示されるように、発生電極1からそのセンターの位置で15μm離れた格子点73(前記原理説明のポイントAに相当する。)から上方に静電力で加速運動始めた該電荷搬送体4は、形成電極1の孔を通過する付近で最高速度5.26m/secに達し、その後は、向きが反転した静電力で減速されながら、回収電極3に接近する。
【0044】
ところが、その直前、該電荷搬送体4のセンター位置で、回収電極3の手前10μm、格子点3(前記原理説明のポイントBに相当する。)に到達した時、その速度は反転して1.15m/secより加速され、該電荷搬送体4は2.60m/secの速度で、回収電極3に到達する。
この時、該電荷搬送体4が運んだ−4.50*e−14 クーロン(C)の電荷が、電位が−6.0ボルト(V)の回収電極3にすべて回収されると、その発電量は、−2.70*e−13 ジュール(J)になる。
【0045】
該電荷搬送体4が存在しないとき、格子点73(ポイントA相当)の電位は、+18.42Vで、格子点3(ポイントB相当)の電位は、+18.97Vなので、鏡像力も、重力も、空気抵抗力も作用せず、電界による静電力のみが作用する場合は、格子点73(ポイントA相当)から出発した電荷搬送体4は格子点3(ポイントB相当)で速度を失うはずである。実際、鏡像力を除いて計算した場合は、図6に示されるように該電荷搬送体4は、回収電極3に到達することなく、格子点3(ポイントB相当)で失速する。
【0046】
これに対して、実際には、回収電極3に到達できたのは鏡像力によってである。それも、電極近傍で急激に大きくなる鏡像力を上手に使ったからである。図7に鏡像力のある場合と、無い場合の該電荷搬送体4に作用する静電力を並べて、表示するが、両者の差が鏡像力である。左側の発生電極1付近でも右側の回収電極3付近でもどちらの場合でも電極との距離が50μm以内になると鏡像力が目立ち始め、20μm以下で急激に大きくなることが分かる。
【0047】
本発明の特徴は、鏡像力が電界による静電力よりも僅かに小さい点、格子点73(ポイントA相当)、該電荷搬送体4のセンター位置で発生電極1より15μmの地点で電荷を受け取り、それを同一電位だが、5μm回収電極3に近く、格子点73(ポイントA相当)より電界が2倍で2倍の静電力を受けるが、鏡像力はそれをはるかに上回る、格子点3(ポイントB相当)まで主に電界の力で搬送させ、そこから回収電極3までを主に鏡像力で搬送させることにある。
【0048】
なお、電界中で、導体の電荷がすべて接触した電極に回収されることはない。たとえ、回数されたにしても、同極性(この場合はマイナス)の電荷が電界の強さに応じて瞬時に注入されるので、見かけ上、一部の電荷が回収されずに電荷搬送体4に残ることになる。残された電荷をすべて回収するためには、実質的に無電界の領域まで該電荷搬送体4をさらに移動させて、そこで第二の電荷回収電極7に接触させなければならない。
【0049】
また、1回の電荷の搬送で得られる電力はあまりにも少ないため、これを連続的に繰返す必要がある。そのためには、電荷を回収された電荷搬送体4を最初のスタート地点、すなわち、格子点73(ポイントA)まで戻す必要がある。
【0050】
該電荷搬送体は(第一の)回収電極3に、2.6m/secの速度を持って到達するが、この運動エネルギーを使って、該電荷搬送体4(注、以下の説明では、電荷搬送体4の形状は球を仮定している。)を、図8のように、無電界領域にある、第二回収電極7、第三回収電極9、さらには、出発点のポイントAまで移動させることができる。
【0051】
なお、図8において、第一の回収電極3は、下方から垂直に飛来した該電荷搬送体4の進路を90度右に曲げるため、45度傾けられている。また、図中、記号6は接地されたシールド電極で、この右側の空間の電界はほとんどゼロになる。(注、記号5は、速度の低下した電荷搬送体4が滑り落ちるための滑り台兼電荷搬送体4と、発生電極1間の距離を正確に維持するためのスペーサである。)
【0052】
実施例のレイアウトでは、電荷搬送体が鏡像力より得た運動エネルギーを、その進路を変更するために、衝突によりムダに失うので、電荷搬送体が、どこにも衝突せずに、直進できるレイアウトをを図9に示す。
【0053】
図9において、記号10は接地されたシールド電極で、該シールド電極10とその上の回収電極3間の電界を実質的にゼロにする役割を持つ。なお、これを第一電荷回収電極10とし、その上の第二回収電極3と同電位、実施例の場合は−6Vを印加しておいてもよい。
その下の回収電極3で、搬送してきた電荷をすべて回収された電荷搬送体4が、ほとんど速度を失うことなく、発生電極1の孔を抜けて、発生電極1の上方に出てくる。この時、発生電極1の孔径や電荷搬送体4の形状等を適切に設定すると、孔を抜けて少し上昇した地点(ポイントA)で、発生電極1の表面の電界が、CNTの電界電子放出閾値を越えて、電子が放出され、電荷搬送体4が帯電される。
【0054】
帯電した該電荷搬送体4は実施例と同様に、形成電極2の孔を抜けて上昇し、その後は、減速されるが、ポイントAと同電位のポイントB付近から再び加速されて、シールド電極10の孔を抜けて、回収電極3と接触して、すべての電荷を放出してさらに、その上の発生電極1に向かう。回収電極3の孔を抜けるとき、速度を失うことなく、電荷を放出できるように、やや大きめの回収電極3の孔の内側には、柔らかい導電性糸が無数に植えられている。
【0055】
なお、この場合、電荷搬送体4を軽い細い棒で連結することによってその間隔を縮めて効率を上げることができる。
【0056】
また、実施例において、電界の形成は、電界形成電極2に電圧を印加して行った。この場合、電源が必要になるため、せっかく、小さく、安く、軽量で、安全にできる鏡像力を使う静電発電機の特徴が損なわれる。そこで、これをエレクトレットで置き換えると、金属電極とその配線及び電源をなくして、小さく、安く、軽量で、安全な電源にできる。
【0057】
エレクトレットは、高絶縁性のプラスチックフイルム、たとえば4弗化樹脂フイルムの内部に特定の極性の電荷を半永久的に封じ込めたものである。製法は簡単で、プラスチックフイルムをそのガラス転移点以上に熱した状態でコロナ放電で帯電し、急冷することでできる。最近の改良されたエレクトレットは100年以上電荷を保持できると言われている。
【0058】
なお、以上すべて、真空中で電荷発生電極の表面にCNTがあり、電荷搬送体の接近によって電荷発生電極表面の電界がCNTの電界電子放出の閾値を越えてCNTの先端より電子の放出が起きる場合で説明したが、大気中で電荷発生電極表面に、先端が数μmの導電性の金属線や金属糸を植え込み、その先端の電界をコロナ放電開始電界以上にして、コロナ放電を発生させてもまったくどうように本発明の原理で鏡像力による静電発電をすることができる。
【0059】
たとえば、先端を5μmに尖らせたタングステン線の場合、コロナ放電開始電界は、1.6*e+6 V/mなので、実施例でCNTに代えて、該タングステン線を電荷発生電極に埋め込んでおけば、ほとんど同じ条件で使用可能である。
コロナ放電は大気中(減圧してもよい)で行われるので、電荷搬送体が空気抵抗を受ける分、真空中で行われるCNTの電界電子放出より不利ではあるが、1回の放電で発生する電荷量は大変大きいのでその分CNTより有利である。
【発明の効果】
以上説明したように本発明の静電発電方法及び装置では、帯電した電荷搬送部材を静電界が該電荷に作用する静電力で電荷回収電極の近くまで搬送し、搬送工程の最期を搬送された電荷自身が発する鏡像力で行うので外部エネルギーの補給が不要である。
また、特に電界形成部材としてエレクトレットを使用した時は、大変、小型、軽量、安価、高耐久、無公害の静電発電機になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電荷発生(対向)電極、電界形成電極、電荷回収電極および電荷搬送体と、各電極間の電位を示を示す模式図である。
【図2】電荷回収電極の位置を、図1の位置より右に移動した場合の電荷回収電極とその付近の電位を示す模式図である。
【図3】実施例に示す静電発電装置の立面図である。
【図4】実施例に示す静電発電装置内の電位を軸対象三次元の差分法でシミュレーションするためのメッシュ(格子図)の一部である。
【図5】電荷発生(対向)電極から、電荷回収電極に至る空間の電位と電界と、その間を移動する帯電した電荷搬送体に加わる静電力とその速度を示すグラフである。
【図6】図5において、鏡像力が存在しない場合を示したグラフである。
【図7】鏡像力がある場合と、無い場合で帯電した電荷搬送体に加わる静電力を示すグラフである。
【図8】電荷搬送体が搬送した電荷が無電界中で電荷回収電極に回収され、かつ電荷放出後の電荷搬送体が最初の位置に戻れるようにした静電発電装置の模式図である。
【図9】電荷搬送体が連続した静電発電ユニット中を衝突によりエネルギーをロスすることなく直線的に移動できるようにした静電発電装置の模式図である。
【図10】ファンデグラーフ型静電発電機の模式図である。
【図11】水滴を電荷搬送体とする静電発電機の模式図である。
【符号の説明】
1、電荷発生(対向)電極
2、電界形成電極
3、電荷回収電極
4、電荷搬送体
5、すべり台兼スペーサ
6、シールド電極
7、第二電荷回収電極
8、
9、第三電荷回収電極
10、シールド電極
11、
12、電荷発生用放電針
13、高圧電源
14、電荷搬送用絶縁性ベルト
15、電荷回収用放電針
16、回収電荷蓄積用コンデンサー
17、ベルト搬送モーター
18、高電位リング状電極
19、送風
20、水滴
21、電荷回収スクリーン
22、電位発生用抵抗

Claims (7)

  1. 電荷発生源より発生した電荷、または該電荷を乗せた電荷搬送体を、電荷発生源と同電位の地点より電気的にエネルギーの高い電荷回収電極に、両者間の電位差がこの間に形成する電界が、該電荷に作用する静電力に抗して搬送する力として、該電荷と回収電極またはその前に設けられたシールド電極との間に働く鏡像力を使うことを特徴とする静電発電方法。
  2. 請求項1において、電荷搬送体が電荷発生源より電荷を受け取る地点(以下ポイントAと呼ぶ)においては、該帯電電荷と電荷発生源間に働く鏡像力よりも、その周囲の電界が該電荷に作用する静電力の方が大きく、該電荷搬送体が、電荷回収電極またはその前のシールド電極に接近した時、ポイントAよりそれまでに、電界より受けた静電力、重力、空気抵抗力、電荷発生源、電荷回収電極またはその前のシールド電極、その他の電極との間に働く鏡像力の和でその速度がゼロになる地点(以下ポイントBと呼ぶ)では、その周囲の電界が該電荷に作用する静電力よりも、該電荷と電荷回収電極またはその前のシールド電極との間に働く鏡像力の方が大きいこと。
  3. その表面の電界が、コロナ放電開始の閾値、または電界電子放出の閾値を越えた時、その表面付近でコロナ放電が発生するか、またはその表面より電子が放出される電荷発生源と、該電荷発生源との間に、上記閾値を越えない電界を形成する電界形成部材と、発生したコロナイオン、または放出された電子を乗せて、静電気力で移動する電荷搬送体と、その電気的エネルギーが電荷発生源より高く、該電荷搬送体が搬送した電荷を回収することができる電荷回収電極より構成される静電発電装置。
  4. 請求項3において、該電荷回収電極が、該電界形成部材をはさんで電荷発生源と反対の位置にあり、該電界形成部材に、該電荷搬送体が通り抜けられる孔が開けられていること。
  5. 請求項3において、該電荷回収電極とは別に、第二、あるいは、第三の電荷回収電極を設けること。
  6. 請求項3、または請求項5において、該電荷回収電極の手前に、シールド電極を置くこと。
  7. 請求項4において、該電荷発生源と該電界形成部材間の距離の方が、該電界形成部材と該電荷回収電極間の距離よりも長いこと。
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