JP2004091398A - プロテアソーム活性促進用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ケールおよび/またはその抽出物を含む組成物は、プロテアソーム活性を促進することにより、異常タンパク質の蓄積により引き起こされる種々の疾病、例えば、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、高血圧、糖尿病および動脈硬化症などの生活習慣病、しわ、しみなどの皮膚老化の予防および改善に有用で、安全性、安定性に優れ、安価な食品、化粧料、医薬。
【選択図】なし
Description
【発明が属する技術分野】本発明は、加齢および紫外線や酸化などのストレスにより、生体内に蓄積した異常タンパク質を除去するためのプロテアソーム活性促進用組成物およびプロテアソーム活性の低下による異常タンパク質の蓄積を伴う疾病を予防および改善する組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】異常タンパク質は年齢とともに増加し、生体内に蓄積した異常タンパク質がアルツハイマー病、糖尿病、白内障、動脈硬化症、皮膚におけるしわなどの多くの疾病に関与することが明らかになってきた(BIO Clinica、11巻、第5号、1996年)。現在では、生体内における異常タンパク質の蓄積に起因する疾病の予防および改善が大きな課題となっているが、従来、異常タンパク質の蓄積防御に関しては、タンパク質の酸化修飾を防御する研究がなされてきた。すなわち、酸化ストレスにより生体内に発生した活性酸素を抗酸化物質の摂取により消去し、タンパク質の酸化を抑制するという試みである。代表的な抗酸化物質としては、トコフェロール類、カロテノイド類およびフラボノイド類などがある。
【0003】
しかしながら、抗酸化物質の摂取は、生体内で発生する活性酸素の消去には関与するが、既に蓄積している異常タンパク質の除去には全く関与しない。したがって、老化に伴って生体内に蓄積した異常タンパク質が関与する種々の疾病の予防および改善には異常タンパク質の除去が必須となる。生体内の異常タンパク質を除去する酵素として、プロテアソームが知られている。プロテアソームは複雑な分子構成をした巨大な多成分複合体であり、近年その生体内における生理機能の研究が注目されている。プロテアソームは、タンパク質が立体構造を形成する過程で正常な折り畳みや分子集合に支障をきたした異常タンパク質の除去を行い、タンパク質の品質管理の役割を担うとともに、紫外線や酸化ストレスなどにより、変性や傷害を受けたタンパク質を除去することにより、ストレス応答にも密接に関係している(蛋白質 核酸 酵素,第44巻,第6号,1999年)。このように、プロテアソームは異常タンパク質を除去することにより、細胞の恒常性を維持、監視する中心的役割を担う分子である。
【0004】
以上のようなことから、生体内のプロテアソーム活性を促進し、種々の疾病を予防および改善する組成物が開発されている。例えば、マンネンタケの抽出物を含むプロテアソーム活性促進剤(特開2002−29996)、特定のペプチド化合物を含むプロテアソーム作用増強剤(国際公開番号WO00/04042)およびプロテアソーム活性促進作用をもつ大豆サポニンを含む異常タンパク質除去用組成物(特願2001−186180)が開発されている。
【0005】
ところで、ケールは地中海地方原産のアブラナ科の野菜で、キャベツの原種であると言われている。ビタミン、ミネラルが豊富で、葉緑素や食物繊維を多く含み、栄養豊富な植物である。ケールには種々の作用が知られており、ケールを単独あるいは種々の有用成分と組み合わせた組成物が開発されている。例えば、ビフィズス菌増殖促進剤(特開平11−266860号公報)、アレルギー予防ないし改善用組成物(特開2000−169382)、活性酸素除去用組成物(特開2001−299305)、ケール由来のS−メチルシステインスルフォキシドを含む血中コレステロール値低下作用を有する組成物(特開2002−68979)、ケールに乳糖および糖アルコールを含有させたカルシウム吸収改善剤(特開2002−142721)などが開発されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、ケールには種々の作用が知られているが、これまでプロテアソーム活性を促進する作用は知られていなかった。したがって、ケールのプロテアソーム活性促進作用を調べ、異常タンパク質の蓄積により引き起こされる種々の疾病の予防および改善に有効な組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ケールおよび/またはその抽出物について、生体内の異常タンパク質を除去する酵素として働くプロテアソームの活性を促進する作用を調べた。その結果、ケールおよび/またはその抽出物がプロテアソーム活性を有意に促進させることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.ケールおよび/またはその抽出物を含むプロテアソーム活性促進用組成物、
2.ケールおよび/またはその抽出物を含む異常タンパク質の蓄積により引き起こされる疾病の予防または治療用組成物、
3.抗老化作用を有する1記載の組成物、
4.ケールおよび/またはその抽出物を含む異常タンパク質除去用組成物、
5.食品の形態である1〜4のいずれか記載の組成物、
6.化粧料の形態である1〜4のいずれか記載の組成物、
7.医薬の形態である1〜4のいずれか記載の組成物、
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明で使用されるケール(Brassica oleracea var. acephala DC.)は、アブラナ科の植物でもともと南ヨーロッパ原産の野菜であり、キャベツの原種といわれている。本発明においては、キッチンケール、マローケール、ブッシュケール、ツリーケール、コラードおよび緑葉カンランなどの種々のケールを用いることができる。本発明におけるケールは、通常食用として供されている葉または茎、花、根などのすべての部位が適用できる。栽培方法や栽培地も特に限定されない。
【0010】
本発明に用いるケールおよびその抽出物としては、ケール乾燥粉末、ケールの細片化物およびその乾燥粉末、ケールの搾汁およびその乾燥粉末、ケールの抽出物およびその乾燥粉末などが挙げられる。ケールの抽出物には、水またはアルコール、エーテル、アセトンなどの有機溶媒により抽出した粗抽出物、および粗抽出物を分配、カラムクロマトなどの各種クロマトグラフィーなどで段階的に精製して得られた抽出物画分などが含まれる。これらは単独で用いても良く、2種以上混合して用いても良い。
【0011】
本発明における異常タンパク質の蓄積により引き起こされる疾病には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症などに代表される神経変性疾患、自己免疫疾患、多発性硬化症、高血圧症、糖尿病、動脈硬化症、皮膚老化などがある(細胞工学、20巻、第11号、2001年11月号;細胞工学、21巻、第4号、2002年4月号;実験医学増刊、19巻、第2号、2001年)。ケールおよび/またはその抽出物を含む本発明の組成物は、プロテアソーム活性を促進することにより、前述のような異常タンパク質の蓄積により引き起こされるアルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病、プリオン病、筋萎縮性側索硬化症などに代表される神経変性疾患、自己免疫疾患、多発性硬化症、高血圧症、糖尿病、動脈硬化症、皮膚老化などの種々の疾病を予防および改善することができる。
【0012】
異常タンパク質は、酸化、糖化又はアルデヒド修飾などを受けたタンパク質であり、タンパク質の正常な折りたたみ、分子集合に支障をきたしている。
【0013】
ケールおよび/またはその抽出物を含む本発明の組成物は、経口用の食品、非経口用の化粧料、経口用あるいは非経口用の医薬として製造することができる。
【0014】
食品としては、ケールの乾燥物またはその抽出物などを直接、または種々の栄養成分を添加して使用できる。例えば、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸などの適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して健康補助食品、保健機能食品などとして、食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用してもよく、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0015】
化粧料としては、ケールの乾燥物および/またはその抽出物を直接または小麦胚芽油あるいはオリーブ油などに添加して、化粧料成分として使用し、化粧料を製造することができる。
【0016】
医薬としての適用方法は、経口投与または非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体または液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。
【0017】
ケールおよび/またはその抽出物の有効投与量は、患者の年齢、体重、症状、患者の程度、投与経路、投与スケジュール、製剤形態などにより、適宜決定することができる。例えば、ケール抽出物の経口投与の場合、乾燥重量として、通常成人換算で0.1g/体重kg以上である。1日に数回に分けて投与してもよい。
【0018】
ケールおよび/またはその抽出物の本発明の組成物への有効配合量は、成分の調製法、製剤の形態などにより、適宜選択、決定され、特に限定されないが、乾燥重量として0.001〜60重量%が適当である。
【0019】
本発明の組成物には、適用形態に応じて、適宜、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0020】
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類が挙げられる。
【0021】
炭化水素類としては、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0022】
高級脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0023】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0024】
シリコーンとして、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
【0025】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0026】
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0027】
両性界面活性剤として、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0028】
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0029】
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
【0030】
高分子として、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、等を挙げることができる。
【0031】
増粘剤として、例えば、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト等を挙げることができる。
【0032】
粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料を挙げることができる。
【0033】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、等を挙げることができる。
【0034】
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0035】
保湿剤として、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0036】
薬効成分としては、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類を挙げることができる。
【0037】
プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ブナノキエキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【0038】
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ブナノキエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を挙げることができる。
【0039】
非経口適用の組成物は、例えば水溶液、油剤、乳液、懸濁液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤、粉末、顆粒、カプセル、マイクロカプセル、固形等の固形剤の形態で適用可能である。従来から公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾール剤、坐剤、注射剤、粉末剤等の種々の剤型とすることができる。これらを身体に塗布、貼付、噴霧等により適用することができる。特にこれら剤型の中で、ローション剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾール剤等が皮膚外用剤に適している。化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状又はクリーム状あるいは軟膏型のファンデーション、口紅、アイカラー、チークカラーといったメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料等とすることができる。
【0040】
本発明のケールおよび/またはその抽出物は、天然物であるためその毒性は低く、有害な副作用など報告されていない。また、ケールは栽培により入手できる野菜類であるため、価格面においても優れたものである。
【0041】
【実施例】以下に実施例を挙げて具体的に説明するが、これに限定されるものではない。
[ケールの抽出]
ケールの葉を90℃で乾燥させた後、粉砕した。その粉砕物4kgを電熱式水浴機で加熱還流しながら、99.5%エタノール(和光純薬工業)20Lを用いて抽出を行い、ケール抽出物80gを得た。
【0042】
[肝細胞の培養]
本実験では株化したラット肝細胞(Clone 9)を用いた。細胞は、牛胎児血清を10%(容量/容量)の濃度で含む培地{F−12K Nutrient Mixture(Kaighn’s Modification)(GIBCO−BRL)}を用いて、37℃−5%CO2インキュベーターにて培養し、増殖させた。細胞に薬剤を処理する場合は、血清の影響を最小限に抑えるために血清を0.5%(容量/容量)の濃度で含む培地を使用した。
【0043】
[ケール抽出物のプロテアソーム活性促進作用の測定]
細胞を24穴プレートに5×104個/ウェルで播種し、24時間培養した。ケール抽出物を最終濃度が0.1、1.0、10.0、100.0μg/mlとなるように添加し、24時間培養後、公知の方法(Hayashi,et al.,Mechanisms of aging and development,Vol.102,p55−66,1998)により細胞から抽出したプロテアソーム溶液を試料として用いた。
【0044】
トリプシン様プロテアソーム活性を測定するための基質として、t−ブチルオキシカルボニル−L−ロイシル−L−アルギニル−L−アルギニル−4−メチル―クマリル―7−アミド(ペプチド研究所)を用い、キモトリプシン様プロテアソーム活性を測定するための基質として、サクシニル−L−ロイシル−L−ロイシル−L−バリル−L−チロシル−4−メチル―クマリル―7−アミド(ペプチド研究所)を用いた。0.1Mトリス緩衝液(pH8.0)で調製した100μMの基質溶液10.5μlに、50mMトリス緩衝液(pH7.5)で調製したプロテアソーム溶液39.5μlを加えて、37℃、1時間反応させた。遊離した7−アミノ−4−メチルクマリンの蛍光強度を励起波長(Ex)380nm、吸収波長(Em)440nmで測定した。結果はケール抽出物を各濃度で処理した3試料の測定値から、平均±標準誤差を計算し、グラフ化した。
【0045】
トリプシン様プロテアソーム活性を測定した結果を図1に、キモトリプシン様プロテアソーム活性を測定した結果を図2に示す。ケール抽出物は、トリプシン様プロテアソーム活性およびキモトリプシン様プロテアソーム活性のいずれにおいても濃度依存的にプロテアソーム活性を促進した。
【0046】
[老化抑制試験]
生体内における老化の指標の一つとして知られているカルボニル化タンパク質を測定することにより、老化抑制の効果を試験することができる(治療学,第32巻,第4号,58〜61頁,1998年)。例えば、酸化ストレスを与えたラット由来の肝臓抽出物中のカルボニル化タンパク質量を公知の方法(Nakamura,et al.,Journal of biochemistry,Vol.199,p768−774,1996)により測定することにより、老化抑制の効果を試験することができる。
【0047】
具体的には、4週齢ウィスター系雄ラット(1群5匹)に、1日1回、酸化ストレスを与えるために塩化亜鉛(和光純薬)を最終濃度が50mg/kgになるように、背部皮下注射した後、試験試料としてケール溶液(ケールのエタノール抽出物を乾燥し、生理食塩水に溶解したもの)を最終濃度で250mg/kgとなるように1日2回に分けて10日間、胃ゾンデにより強制経口投与する。11日目に屠殺後、肝臓を摘出する。摘出した肝臓20mgに1mlの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5)を加えてホモジナイズし、15,000×gで30分間遠心し、その上清について解析を行う。カルボニル化タンパク質量の測定は、以下のとおりの方法で行える。本方法は、酸化傷害によりカルボニル化されたタンパク質のカルボニル基に特異的に結合する2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いて標識後、DNPHに特異的に結合する抗DNPH抗体を用いて、カルボニル化タンパク質を検出する方法である。
【0048】
サンプル中のタンパク質を公知の方法(Nakamura,et al.,Journal of biochemistry,Vol.199,p768−774,1996)によりDNPH化する。DNPH化したタンパク質をSDS−PAGEにより分離し、タンパク質転写装置を用いてポリフッ化ビニリデン膜に転写する。転写後の膜をブロッキング溶液(3%のスキムミルクを含むPBS)に浸し、室温で2時間ブロッキングする。洗浄液{0.1%のBSAおよび0.05%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS}で洗浄後、一次抗体溶液(洗浄液で1μg/mlに調製したDNPHに対する抗体)に浸し、室温で2時間反応させる。洗浄後、[125I]−プロテインA溶液に浸し、室温で2時間反応させる。洗浄後、イメージングプレートで感光させ、画像解析を行う。
【0049】
試験試料に代えて生理食塩水のみを投与した群のカルボニル化タンパク質量を対照とした。
【0050】
ケール抽出物を投与した群では、対照群と比較してカルボニル化タンパク質の生成量が低下する。このことにより、老化の抑制効果を有することがわかる。
【0051】
以下に処方例を示す。
[処方例1]ジュース
前述の抽出法により作製したケール抽出物(ケール濃度4g/L)を用いて、常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により、ジュースを製造した。
(1)冷凍濃縮温州みかん果汁 5.0
(2)果糖ブドウ糖液糖 11.0
(3)クエン酸 0.2
(4)L−アスコルビン酸 0.1
(5)香料 0.2
(6)色素 0.1
(7)ケール抽出物 1.0
(8)精製水 残余
【0052】
[処方例2]カプセル剤
前述の抽出法により作製したケール抽出物(ケール濃度4g/L)を用いて、常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により、カプセル剤を製造した。
(1)ケール抽出物 20.0
(2)乳糖 65.0
(3)コーンスターチ 14.0
(4)グアーガム 1.0
上記成分(1)〜(4)を混合し、ゼラチンおよびグリセリンを混合したカプセル基剤中に充填し、軟カプセルを得た。
【0053】
[処方例3]クリーム
前述の抽出法により作製したケール抽出物(ケール濃度4g/L)を用いて、常法に従って、下記の処方(単位は質量%)により、クリームを製造した。
上記成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し油相とする。成分(11)〜(13)を70℃に加熱溶解し水相とする。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。
【0054】
【発明の効果】ケールおよび/またはケール抽出物を含む本発明の組成物は、プロテアソーム活性を促進することにより、異常タンパク質の蓄積により引き起こされる種々の疾病、例えば、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、高血圧症、糖尿病および動脈硬化症などの生活習慣病、しわ、しみ、たるみなどの皮膚老化の予防および改善に有用である。したがって、本発明により上記疾患の予防または改善に有用な食品、化粧料、医薬が提供される。これらは、安全性、安定性に優れ、安価に提供されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラット株化肝細胞にケール抽出物を処理した場合のトリプシン様プロテアソーム活性を示す図である。
【図2】ラット株化肝細胞にケール抽出物を処理した場合のキモトリプシン様プロテアソーム活性を示す図である。
Claims (7)
- ケールおよび/またはその抽出物を含むプロテアソーム活性促進用組成物。
- ケールおよび/またはその抽出物を含む異常タンパク質の蓄積により引き起こされる疾病の予防または治療用組成物。
- 抗老化作用を有する請求項1記載の組成物。
- ケールおよび/またはその抽出物を含む異常タンパク質除去用組成物。
- 食品の形態である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
- 化粧料の形態である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
- 医薬の形態である請求項1〜4のいずれか記載の組成物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002255449A JP2004091398A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | プロテアソーム活性促進用組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
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