JP2004083482A - リグノセルロースの有効利用方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リグノセルロースを分解試薬を用いて加溶媒分解し、分解物を水で処理した後、水可溶部と水不溶部に分画し、水可溶部からレブリン酸エステル又はレブリン酸を分離するとともに、水不溶部からポリオール化合物を分離するリグノセルロースの有効利用方法。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリグノセルロースを分解して有用化学原料であるレブリン酸若しくはレブリン酸エステル及びポリオール化合物を製造するリグノセルロースの有効利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
木材、樹皮、古紙等の木質系物質や、稲わら、もみ、バガス等の農産物及びそれらの廃棄物等の主としてリグノセルロースで構成される植物系の資源(リグノセルロースと総称される)の有効利用法の開発が期待されている。近年特に廃棄物のリサイクル推進の観点から、建築廃材や古紙等のリグノセルロースの有効利用法の開発が急がれている。その一つとして、それらリグノセルロースを有機溶媒中で分解処理し、有効利用する試みがある。リグノセルロースを有機溶媒中で処理すると、使用した有機溶媒はリグノセルロースと結合しながらそれを分解してゆくので、この分解反応を加溶媒分解と称している。
【0003】
リグノセルロースの加溶媒分解は、主として木材のパルプ化技術に用いられている。パルプ化は木材等のリグノセルロースよりリグニンを分離し、製紙原料であるセルロースを得る技術である。この際、リグニンを分解及び溶出する工程に加溶媒分解反応が用いられる。これらのパルプ化技術は、オルガノソルブパルプ化、ソルベントパルプ化、もしくはソルボリシスパルプ化と呼ばれている。この種の加溶媒分解反応を用いたパルプ化の歴史は古く、1930年代にアルコール系のパルプ化が検討されていることを始め、種々の検討がなされてきた(米国特許3585104号明細書、米国特許4100016号明細書等)。佐野らは高沸点有機溶剤の水性溶媒を用いて処理し、パルプを得る技術を開発している(特開2001−89986号公報)。これらの既存の技術に見られるようなパルプ化におけるリグノセルロースの加溶媒分解は、リグニンを効率的に加溶媒分解して分離し、セルロースは分解せずにパルプとして取得する技術であり、セルロースまでも加溶媒分解し、最終的にレブリン酸を製造するものではない。
【0004】
レブリン酸はグルコース等の6単糖類を酸性下で分解することにより得られる有機化合物である。古くはTollensらが1875年に糖類が酸分解によりレブリン酸を生成することを報告している。レブリン酸はグルコース骨格の連なった高分子であるセルロースやスターチを酸加水分解し、グルコースを経て更に酸性下で加熱分解することにより製造可能である。これら糖類の酸加水分解に関するレブリン酸製造法は、昭和24年の清水らの蔗糖を原料としたレブリン酸の製造の報告にもみられる(清水ら、農芸化学誌、第23号)。最近では、Fitzpatrickがリグノセルロース等の糖類含有物質から高収率でレブリン酸を製造する装置を開発している(米国特許第5608105号明細書)。しかし、これらの酸加水分解処理を用いてレブリン酸を得る技術においては、木材等のリグノセルロースを原料として用いた場合に副産するリグニンは、化成品として利用し難い性状を有しており、利用が困難であるため焼却して熱源とする以外の利用報告はない。
【0005】
糖類以外を原料とするレブリン酸合成手法もあり、例えばファルンライトナーらはアセチルコハク酸エステルを水性鉱酸でけん化することにより貯蔵安定性のあるレブリン酸を製造している(日本特許第2844382号公報)。しかしながら産業的には生物資源としての量が多大なリグノセルロースを原料とした方が経済的に有利と考えられている。
【0006】
レブリン酸は様々な化合物へ変換可能な有用化学原料である。Leonardはレブリン酸が化学原料として、種々の化合物に変換できることを報告している(Industrial and Engineering Chemistry, Vol 48, No 8, 1330−1341, 1956)。最近では、米国エネルギー省の国立再生産可能エネルギー研究所のBozellらがリグノセルロース系資源の有効利用法の観点から取り組んだレブリン酸の有用化学原料としての利用報告がある。このように、レブリン酸利用の化学は注目されている(Resources, Conservation and Recycling, 28, 227−239, 2000)。レブリン酸を原料として誘導することができるアミノレブリン酸に関しては多くの報告なされている(日本特許第3124692号公報、日本特許第2994949号公報等)。5−アミノレブリン酸は生物活性のある薬剤として除草剤の成分に利用する報告がある(日本特許第2623312号公報)。以上、レブリン酸の利用法に関する報告はあるが、加溶媒分解反応を用いてレブリン酸を製造し、同時にリグニンを有用化学原料として利用する報告はみられない。
【0007】
環状カーボネート類を木質系物質に作用させる報告に、当発明者らの出願した公開特許がある(特開平11−80367号公報)。ここでは環状炭酸類(環状カーボネートに相当する)を用いてリグノセルロースを処理し、樹脂原料組成物を得る技術を記載している。また、日本特許3012296号公報にはリグノセルロースへ多価アルコール類を作用させることにより液状溶液とし、樹脂原料を調製する技術が記載されている。しかしながらこれらの技術はリグノセルロース全体を液状化することを目的とし、生成物を樹脂原料として成型物や接着剤等の樹脂原料として応用するものであり、レブリン酸のような有用化合物の単離法に関するものではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、リグノセルロースを加溶媒分解してレブリン酸エステル及びレブリン酸を製造するとともに、化成品原料として応用可能な性質を有するポリオール化合物を製造し、リグノセルロースを有効利用する技術を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、リグノセルロースを分解試薬を用いて加溶媒分解し、分解物を水で処理した後、水可溶部と水不溶部に分画し、水可溶部からレブリン酸エステル又はレブリン酸を分離するとともに、水不溶部からポリオール化合物を分離することを特徴とするリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、リグノセルロースを酸と分解試薬を用いて加溶媒分解する前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、加溶媒分解に用いる分解試薬が環状カーボネート類及びアルコール類から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、分解試薬の融点以上沸点以下の温度範囲で加熱することにより加溶媒分解する前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、アルコール類が沸点100〜400℃の二価アルコールである前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、環状カーボネート類がエチレンカーボネートである前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、水可溶部からレブリン酸を分離する際、分解試薬とレブリン酸をイオン交換樹脂を用いて分離する前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
本発明は、また、水可溶部中の分解試薬を回収し、再びリグノセルロースの加溶媒分解に用いる前記のリグノセルロースの有効利用方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は本発明のリグノセルロースの有効利用方法の製造工程を示す説明図である。
本発明においては、リグノセルロースよりレブリン酸を製造する手法として、加溶媒分解反応を用いる。加溶媒分解反応を通じて、リグノセルロース中のセルロースを始めとする糖成分はすみやかにレブリン酸エステルに変換される。加溶媒分解反応では、使用した分解試薬はリグノセルロースと結合しながら同時にそれを分解してゆくので、加溶媒分解物は分解試薬により大きく変性される。この変性がリグニン利用にとって大きな利点となる。すなわち、従来法の酸加水分解処理では高度に縮合し、活性の低いリグニンが産出されるのに対し、本発明における加溶媒分解反応ではリグニン中に分解試薬に由来するアルコール性水酸基が多数導入されるため、低縮合度でかつ活性の高いリグニンの生成がレブリン酸又はレブリン酸エステル取得と同時に達成される。アルコール性水酸基の導入はリグニン自体が高次に酸縮合し、低活性の物質になることを防ぎ、化成品原料として有用なポリオール化合物が得られる。従って本発明では加水分解系の技術で産出していたような利用の難しいリグニン由来残渣は産出されず、リグノセルロースを有効に利用することができる。更に、レブリン酸の分離精製工程得られた分解試薬は回収されて加溶媒分解反応に再利用することができる。
【0011】
本発明ではリグノセルロースの加溶媒分解に環状カーボネート類及びアルコール類から得らばれる少なくとも1種の化合物を分解試薬として用いることが好ましい。好ましくは酸と分解試薬を混合して用い、好ましくは、分解試薬の融点以上、沸点以下の温度下で加熱し、リグノセルロースを加溶媒分解する。その際、リグノセルロース中のセルロース成分が十分に分解し、レブリン酸エステルとなるまで反応を継続させることが望ましい。この段階でのセルロースの分解の度合いは、少なくとも水可溶なグリコシド類に分解されるまで十分に行う必要がある。分解試薬として環状カーボネート類を使用するとセルロースの分解とレブリン酸エステルの生成が促進される。レブリン酸は生成したレブリン酸エステルより遊離可能であるが、レブリン酸エステルの状態でも化学原料として取得することが可能である。加溶媒分解反応中に環状カーボネートの一部は脱炭酸して分解し、アルコール系物質となる。
【0012】
本発明においては、加溶媒分解処理で得られた加溶媒分解物を水で処理した後、水可溶部と水不溶部に分画する。
【0013】
リグニン成分は主として水不溶部に分画される。また、フラン骨格を経て自己縮合もしくは分解試薬と反応した糖由来の分解物も水不溶部に分画される。水不溶部は、分解試薬に由来する活性な水酸基を多数有しており、それを反応点とした樹脂の製造に応用可能なポリオール化合物が得られる。水不溶部はメタノール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン等の汎用有機溶媒に溶解する性質をもっている。触媒として添加した酸成分は水可溶部として流出しているため、ポリオール化合物を原料として樹脂化を行うに際して中和処理は必要とされない。
【0014】
水可溶部は、レブリン酸エステルが含有されており、水の沸点以下の温度内で加熱すると、レブリン酸エステルよりレブリン酸が遊離する。水可溶部は加溶媒分解処理時に添加した酸を含んでいるため、新たに酸触媒の添加は必要とされない。加溶媒分解処理で生成したレブリン酸エステルは分解試薬とレブリン酸がエステル結合した化合物であり、このエステル結合を水中で分解することによりレブリン酸を遊離することが可能となる。レブリン酸エステルを目的物質として取得する場合は、この処理を省略することができる。レブリン酸遊離後の水溶液は、エーテルやクロロホルム等の水不溶性の有機溶剤を用いて抽出する。この際、有機層にレブリン酸と分解試薬の一部が分画される。一方、水層には、加溶媒分解に用いた分解試薬の大部分と触媒として用いた酸が分画される。これらは回収して再びリグノセルロースの加溶媒分解に用いることができる。
レブリン酸を含有する有機層に水を加え、有機溶剤を減圧して除去するとレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液が得られる。
【0015】
このレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液をイオン交換樹脂を用いて処理し、分解試薬を分離回収すると同時にレブリン酸を精製する。イオン交換樹脂は塩基性を有する陰イオン交換樹脂が用いられる。精製工程は次のような順序で行われる。最初にレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液を陰イオン交換樹脂に接触せしめ、レブリン酸を吸着させる。続いて、蒸留水で樹脂を洗浄し、分解試薬を完全に洗い流す。なお、洗い流した分解試薬は回収し、再びリグノセルロースの加溶媒分解に用いることができる。次に、1規定塩酸のような酸水溶液を用いてレブリン酸を樹脂より遊離させ、酸水溶液として溶出させる。この際、酸水溶液のかわりに水酸化ナトリウム水溶液のようなアルカリ水溶液を用いることもできる。レブリン酸は、溶出した水溶液を蒸留することにより取得するか、もしくは酢酸エチル等の有機溶剤を用いて水溶液より抽出される。
【0016】
本発明の出発原料物質であるリグノセルロースは限定されるものではないが、木粉、おが屑、木材チップ、樹皮、古紙等の木質系物質や、稲わら、バガス等の農産系物質、また糖類、穀類、スターチ等の植物系物質が用いられる。
【0017】
本発明の加溶媒分解に用いる分解試薬は環状カーボネート類としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどがあり、アルコール類としては、ブチルアルコール、ベンジルアルコールなどの脂肪族、芳香族の一価のアルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族、芳香族の二価のアルコール類、グリセリン等の脂肪族、芳香族の三価のアルコール類、ペンタエリスリトールなどの四価のアルコール類などが用いられる。上記の分解試薬は単独あるいは混合して用いることができる。
環状カーボネート類としては、好ましくは、エチレンカーボネートが用いられ、アルコールとしては、好ましくは沸点100〜400℃の二価のアルコール、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が用いられる。
分解試薬はリグノセルロース100重量部に対して、好ましくは300〜3,000重量部使用する。
【0018】
本発明の加溶媒分解で触媒として用いる酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸などの鉱酸や、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸のようなブレンステッド酸及び三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化第二スズのようなルイス酸あるいはそれらのエーテル、アルコール、フェノール錯体等が挙げられる。使用割合は分解試薬100重量部に対して好ましくは0.1〜10重量部使用する。
【0019】
本発明の加溶媒分解に用いる反応装置としては耐酸性の常圧用反応容器を用いることができる。加溶媒分解反応を均一にするため攪拌装置が付帯していることが望ましい。加溶媒分解はリグノセルロースがレブリン酸エステルに分解するまで好ましくは120〜180℃で、好ましくは10〜180分間行う。反応条件は分解試薬の組成に依存し、環状カーボネート類の使用量が多い場合、レブリン酸エステルの生成を促進するので反応条件は緩やかなものとすることができる。
【0020】
加溶媒分解後、水不溶部として分画されたポリオール化合物は、乾燥後、化成品原料として用いることができる。水不溶部にはアルコール性水酸基が多数導入されているため、イソシアネート類、エポキシ類との反応性を持ち、それらとの反応生成物は触媒または加熱により高分子樹脂物質となる性質を有しており、成型物、接着剤等の原料として利用することができる。このポリオール化合物の水酸基価は、好ましくは100〜1,000KOHmg/g、重量平均分子量は好ましくは1,000〜100,000である。
【0021】
レブリン酸遊離工程でのレブリン酸の遊離処理は耐酸性の常圧用反応容器を用いることができ、加溶媒分解に使用した反応容器をそのまま用いて差し支えない。レブリン酸の遊離処理は水の融点以上沸点以下の温度範囲内で行うが、反応容器の上部に冷却装置を取り付けて煮沸することが望ましい。温度は好ましくは80〜100℃、で好ましくは10〜120分間レブリン酸の遊離処理を行う。レブリン酸遊離後の水溶液は有機溶剤を用いて抽出する。抽出用の有機溶剤は、ジエチルエーテル、クロロホルム等の極性の低い水不溶性溶剤を用いることができる。
【0022】
分離精製工程で使用するイオン交換樹脂は塩基性を有する陰イオン交換樹脂であれば特に限定されないが、次のような製品があげられる。アンバーライト(ローム・アンド・ハース社製)のIRA−400、IRA−410、IRA−96SB等の陰イオン交換樹脂。ダイヤイオン(三菱化学株式会社製)のSAシリーズ、PAシリーズ、HPAシリーズ、WAシリーズ等のアニオン交換樹脂。デュオライト(ローム・アンド・ハース社製)の陰イオン交換樹脂シリーズ等が用いられる。
【0023】
遊離したレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液をイオン交換樹脂へ導入する方法は特に限定されるものではないが、イオン交換樹脂を充填したカラムにレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液を通過させる方法、また、レブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液にイオン交換樹脂を浸漬する方法等がとられる。レブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液をイオン交換樹脂へ導入することにより、遊離しているレブリン酸をイオン交換樹脂に吸着せしめる。イオン交換樹脂の汚れを予防するため、イオン交換樹脂に導入する前にレブリン酸と微量の分解試薬を含む水溶液を活性炭で処理し、極性の低い成分を除去することができる。
【0024】
吸着後のイオン交換樹脂は蒸留水を用いて洗浄する。洗浄液中には加溶媒分解に用いた分解試薬が流出しており、濃縮後、再びリグノセルロースの加溶媒分解試薬として利用することができる。次いでイオン交換樹脂を0.1〜5規定の塩酸等の酸溶液で洗浄し、イオン交換樹脂に吸着したレブリン酸を遊離する。この際に使用される酸は特に限定されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の鉱酸溶液が用いられる。
【0025】
イオン交換樹脂を洗浄した酸溶液から遊離したレブリン酸を抽出する際に用いる有機溶剤は酢酸エチル、クロロホルム、ジエチルエーテル等が用いられる。水層中に残った酸成分は回収し、イオン交換樹脂からレブリン酸を遊離する際に再び用いることができる。イオン交換樹脂は0.1〜1規定の水酸化ナトリウム溶液と接触させて再生し、再びレブリン酸精製工程に用いることができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
加溶媒分解反応装置として攪拌装置、冷却管、温度計の付いた300ml容量の3口フラスコを用いた。加溶媒分解試薬として炭酸エチレン40g、エチレングリコール10gを混合し、フラスコ中に充填した。触媒として濃硫酸1.5gをフラスコ中に導入し、攪拌して上記分解試薬と混合した。次に乾燥したスギ木粉10gを量り取り、定量的にフラスコ中に挿入した後、攪拌してよく混合した。加溶媒分解反応はフラスコをオイルバスに浸漬し、140℃で攪拌しながら30分間行った。反応後フラスコを水に浸漬することにより反応を停止した。
フラスコ中の生成物を蒸留水で洗い出し、定量的にグラスフィルター(アドバンテック社製、GA100)を備え付けたファンネル内に移し出し、水不溶部を濾過した。水不溶部は乾燥後秤量し、4.87gの水不溶部を得た。水不溶部は水酸基価310KOHmg/g、重量平均分子量21,000のポリオール化合物であり、ポリウレタン樹脂のような樹脂の合成原料に用いることができる。
【0028】
水可溶部は冷却管を備え付けた500ml容量の三角フラスコに移しとり、マグネチックスターラー付きのホットプレートを用い、100℃で90分間攪拌しながら加熱した。次に、三角フラスコ中の水溶液を分液ロートに移し、300mlのクロロホルムを加えて水層と有機層に分離する作業を数回繰り返した。水層には分解試薬の大部分と酸が分画されており、再び加溶媒分解に用いるため濃縮後保存した。クロロホルム層に200mlの蒸留水を加えた後、ロータリーエヴァポレーターでクロロホルムを回収し、遊離レブリン酸を含む水溶液を得た。
イオン交換樹脂としてローム・アンド・ハース社製の陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA96SBAGを用いた。イオン交換樹脂を1規定の塩酸で逆再生した後1規定の水酸化ナトリウム水溶液でOH形に再生した。この操作は樹脂の初回使用の時のみ行われる。OH形としたイオン交換樹脂を円筒形のカラムに充填した後、上記の遊離レブリン酸を含む水溶液をカラムに導入し、2時間静置した。その後、蒸留水でカラムを洗浄した後、洗浄液を濃縮し、分解試薬を回収した。これも再び加溶媒分解に使用するため上記の水層と混合して保存した。次にカラムに1規定の塩酸を導入し、イオン交換樹脂に吸着していたレブリン酸を遊離した。カラムは1規定の水酸化ナトリウム溶液で処理して再生し、次の使用に備えた。溶出したレブリン酸の塩酸溶液は分液ロートに移しとり、酢酸エチルを加えて水層と酢酸エチル層に分画した。水層は回収し、1規定塩酸として再びイオン交換樹脂用溶媒とした。酢酸エチル層は、酢酸エチルを除去後、減圧蒸留して1.09gのレブリン酸を得た。
【0029】
実施例2
実施例1において回収した分解試薬を利用して再びスギ木粉の加溶媒分解を行った。実施例1の場合と同様の3口フラスコに、実施例1より得られた回収分解試薬のうち30gと、20gの炭酸エチレンを混合分解試薬として用い、さらに0.6gの濃硫酸を加えて攪拌混合した。次に乾燥したスギ木粉10gを量り取り、定量的にフラスコ中に挿入した後、攪拌してよく混合した。加溶媒分解反応は140℃で30分間行った。加溶媒分解物を実施例1の場合と同様な処理で分画し、5.31gの樹脂原料として応用可能な水不溶部と1.31gのレブリン酸を得た。
【0030】
回収分解試薬にはレブリン酸に分解する前駆体としての糖成分や水溶性のリグニン成分が混合しているため、回収分解試薬を用いた場合の方が高い収率を示した。
【0031】
実施例3
実施例1の工程において、スギ木粉のかわりに短冊状に裁断した新聞古紙を用いて、同様の方法で加溶媒分解を行った。加溶媒分解物を実施例1と同様の方法で分画し、4.68gの水不溶部と1.04gのレブリン酸を得た。
【0032】
実施例4
実施例1の工程において、スギ木粉のかわりにセルロースパウダー(シグマ社製、アルファーセルロース)を用いて、同様の方法で加溶媒分解を行った。加溶媒分解物を実施例1と同様の方法で分画し、2.36gの水不溶部と1.84gのレブリン酸を得た。
【0033】
実施例5
実施例1の工程において、分解試薬に平均分子量400のポリエチレングリコール40gとエチレングリコール10gの混合物を用い、同様の方法でスギ木粉の加溶媒分解を行った。加溶媒分解反応温度は160℃とし、反応時間は60分とした。加溶媒分解物を実施例1と同様の方法で分画し、4.53gの水不溶部と1.01gのレブリン酸を得た。
【0034】
実施例6
実施例5において回収した分解試薬を利用して再びスギ木粉の加溶媒分解を行った。実施例1の場合と同様の3口フラスコに、実施例5より得られた回収分解試薬のうち30gと、16gの平均分子量400のポリエチレングリコール、4gのエチレングリコールとの混合物を分解試薬として用い、さらに0.6gの濃硫酸を加えて攪拌混合した。次に乾燥したスギ木粉10gを量り取り、定量的にフラスコ中に挿入した後、攪拌してよく混合した。加溶媒分解反応は160℃で60分間行った。加溶媒分解物を実施例1の場合と同様な処理で分画し、5.26gの樹脂原料として応用可能な水不溶部と1.22gのレブリン酸を得た。
【0035】
【発明の効果】
本発明では、有用化学原料であるレブリン酸又はレブリン酸エステルをリグノセルロースの加溶媒分解により製造し、同時に既存法では利用の困難であったリグニン由来物も樹脂原料として有用な高活性なポリオール化合物として供給できるので、リグノセルロースを有効に利用することができる。また、加溶媒分解に使用した分解試薬も回収使用が可能であるため、経済的にも有利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】リグノセルロースの有効利用方法の製造工程を示す説明図。
Claims (7)
- リグノセルロースを分解試薬を用いて加溶媒分解し、分解物を水で処理した後、水可溶部と水不溶部に分画し、水可溶部からレブリン酸エステル又はレブリン酸を分離するとともに、水不溶部からポリオール化合物を分離することを特徴とするリグノセルロースの有効利用方法。
- リグノセルロースを酸と分解試薬を用いて加溶媒分解する請求項1記載のリグノセルロースの有効利用方法。
- 加溶媒分解に用いる分解試薬が環状カーボネート類及びアルコール類から選ばれる少なくとも1種の化合物であり、分解試薬の融点以上沸点以下の温度範囲で加熱することにより加溶媒分解する請求項1又は2記載のリグノセルロースの有効利用方法。
- アルコール類が沸点100〜400℃の二価アルコールである請求項1〜3何れか記載のリグノセルロースの有効利用方法。
- 環状カーボネート類がエチレンカーボネートである請求項1〜3何れか記載のリグノセルロースの有効利用方法。
- 水可溶部からレブリン酸を分離する際、分解試薬とレブリン酸をイオン交換樹脂を用いて分離する請求項1〜5何れか記載のリグノセルロースの有効利用方法。
- 水可溶部中の分解試薬を回収し、再びリグノセルロースの加溶媒分解に用いる請求項1〜6何れか記載のリグノセルロースの有効利用方法。
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