JP2004082914A - 電動パワーステアリング装置の減速機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】ラトル音の発生を防止することができる低コストな電動パワーステアリング装置の減速機構を提供すること。
【解決手段】ウォーム軸19を回転自在に支持するインナーケース14と、ギヤケース10に形成し、インナーケース14を挿入する組み付け穴13と、組み付け穴13に先端を臨ませ、インナーケース14に弾性力を付与する付勢手段34と、ギヤケース10に対するインナーケース14の移動を弾性的に規制する弾性保持手段27とを備え、インナーケース14に電動モータMを固定し、その出力軸17をウォーム軸19に連結する一方、調節ボルト25の組み付け穴13内への挿入量によって、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節可能とし、インナーケース14に組み込んだウォーム軸19に設けたウォーム22を、インナーケース14に形成した開口部30を介してウォームホィール23にかみ合わせた。
【選択図】 図1
【解決手段】ウォーム軸19を回転自在に支持するインナーケース14と、ギヤケース10に形成し、インナーケース14を挿入する組み付け穴13と、組み付け穴13に先端を臨ませ、インナーケース14に弾性力を付与する付勢手段34と、ギヤケース10に対するインナーケース14の移動を弾性的に規制する弾性保持手段27とを備え、インナーケース14に電動モータMを固定し、その出力軸17をウォーム軸19に連結する一方、調節ボルト25の組み付け穴13内への挿入量によって、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節可能とし、インナーケース14に組み込んだウォーム軸19に設けたウォーム22を、インナーケース14に形成した開口部30を介してウォームホィール23にかみ合わせた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング装置の減速機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3に示した従来例は、ギヤケース1に電動モータMを固定するとともに、この電動モータMの出力軸2にカップリング3を介してウォーム軸4を連結している。このウォーム軸4は、ギヤケース1内に組み込んだベアリング5,6によって回転自在に支持されていて、上記電動モータMの出力軸2とともに回転する。上記ウォーム軸4には、ウォーム7を一体形成するとともに、このウォーム7を、ギヤケース1内に組み込んだウォームホィール8にかみ合わせている。
なお、上記ベアリング5は、ギヤケース1に形成した段部1aとロックナットnとの間に挟み込むことによって固定されている。一方、ベアリング6は、ギヤケース1の組み付け凹部1bに圧入することにより固定されている。
【0003】
上記ウォームホィール8は、ピニオンシャフト9の外周に固定されている。このピニオンシャフト9には、図示していない操舵輪を連係し、このピニオンシャフト9の回転によって、操舵輪を転舵させるためのアシスト力を付与するようにしている。すなわち、電動モータMの出力軸2が回転すると、ウォーム軸4も回転する。ウォーム軸4が回転すると、ウォーム7にかみ合うウォームホィール8がピニオンシャフト9とともに回転する。ピニオンシャフト9が回転すると、このピニオンシャフト9に連係した操舵輪が転舵されることになる。
【0004】
ところで、上記電動モータMの出力は、ウォーム7とウォームホィール8のかみ合い部分を介してピニオンシャフト9に伝達されるが、これらウォーム7とウォームホィール8とのかみ合い部分には、バックラッシュがある。このバックラッシュというのは小さければ小さいほどよい。なぜなら、バックラッシュが大きくなると、かみ合い部分の隙間が大きくなるため、その部分で音が発生することがあるからである。例えば、ステアリングホィールを中立位置に保っている状態で、操舵輪を介してピニオンシャフト9に外力が作用すると、このピニオンシャフト9がウォームホィール8とともにバックラッシュの分だけ回転する。そして、このウォームホィール8がウォーム7にぶつかることによって音が発生する。この音はラトル音と呼ばれ異音とみなされ、商品価値を損なうという問題がある。
【0005】
そこで、バックラッシュの寸法を厳密に管理することで、ラトル音の発生を防止することが考えられる。ただし、上記バックラッシュというのは、ウォーム7やウォームホィール8の加工精度だけでなく、それを組み込むギヤケース1の加工精度及びこれら部品の組み付け精度に依存している。したがって、バックラッシュの寸法を厳密に管理しようとすると、コストが非常に高くなってしまう。
【0006】
そこで、公知の技術として、各部品を組み付けた後、ウォーム軸4のみを動かして、バックラッシュを調節する手段がある。ただし、この場合には、電動モータMの出力軸2を動かさずに、ウォーム軸4のみを動かすために、カップリング3の部分に無理な力が作用する。そのため、作動上支障をきたすおそれがある。カップリング3に無理な力が作用しないようにするために、弾性体によってウォームと出力軸とを連結することも考えられる。このようにすれば、弾性体によってウォーム軸4と出力軸2とのずれが吸収されるため、無理な力が作用しない。
【0007】
ところが、弾性体を用いた場合には、この弾性体の部分で伝達効率が低下するため、応答遅れが生じたり、この弾性体の部分が発振することで目標とする制御特性が得られなくなるという不都合が生じる。このような不都合があるので、従来は、バックラッシュをある程度の較差を持たせて設定している。ただし、バックラッシュがマイナスになると、ウォーム7とウォームホィール8とのかみ合いが渋くなってしまうので、バックラッシュの較差はプラス側に設定している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、ウォーム7とウォームホィール8との間のバックラッシュの較差をプラス側に設定しているので、バックラッシュが大きくなる場合がある。バックラッシュが大きくなると、上記したようにラトル音が発生するという問題がある。
この発明の目的は、ラトル音の発生を防止することができ、しかも、低コストで上記様々な不都合も防止することのできる電動パワーステアリング装置の減速機構を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ギヤケースと、このギヤケースに回転自在に組み込んだピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに固定したウォームホィールと、このウォームホィールにかみ合うウォームと、このウォームを固定したウォーム軸と、このウォーム軸に出力軸を連結した電動モータとを備え、上記電動モータの出力軸の回転を、ウォームを介してウォームホィールに伝達して、ピニオンシャフトを回転させる電動パワーステアリング装置の減速機構において、上記ウォーム軸を回転自在に支持するインナーケースと、ギヤケースに形成するとともに、上記インナーケースを挿入する組み付け穴と、上記組み付け穴に先端を臨ませるとともに、インナーケースに弾性力を付与する付勢手段と、ギヤケースに対するインナーケースの移動を弾性的に規制する弾性保持手段とを備え、上記インナーケースに電動モータを固定するとともに、この電動モータの出力軸をウォーム軸に連結する一方、上記調節ボルトの組み付け穴内への挿入量によって、ギヤケースに対するインナーケースの位置を調節可能とし、しかも、インナーケースに組み込んだウォーム軸に設けたウォームを、インナーケースに形成した開口部を介してウォームホィールにかみ合わせたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、組み付け穴の内周に、インナーケースに接する一対のガイド面を設けるとともに、これらガイド面によって、インナーケースがピニオンシャフトの軸線方向に移動することを規制する構成にしたことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、ギヤケースとインナーケースとをピンによって連結し、インナーケースが上記ピンを中心に回動する構成にしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1,2にこの発明の一実施形態を示す。
図1に示すように、ギヤケース10内には、大径孔11を形成するとともに、この大径孔11にピニオンシャフト12を回転自在に挿入している。このピニオンシャフト12は、その一端にウォームホィール23を固定するとともに、その他端側に図示していないロッド等を介して操舵輪を連係している。
【0013】
また、上記ギヤケース10には、上記大径孔11に連通する組み付け穴13を形成するとともに、この組み付け穴13にインナーケース14を挿入している。このインナーケース14は、図2に示すように、その外形を円形にしている。これに対して上記組み付け穴13の内形は、ほぼ楕円形にしている。そのため、組み付け穴13の内側にインナーケース14を組み込むと、これら両者間には隙間ができる。ただし、組み付け穴13の内面には、平らにしたガイド面15、15を形成して、これらガイド面15,15にインナーケース14の外周を、移動できる隙間を残した状態で接触させている。したがって、インナーケース14と組み付け穴13との隙間は、組み付け穴13の長軸側にのみに形成される。また、上記ガイド面15,15にインナーケース14を接触させることによって、このインナーケース14が上記ピニオンシャフト12の軸線方向に移動しないようにしている。
【0014】
上記のように組み付け穴13に組み込んだインナーケース14は、図1に示すように、その一方の支持部14aを、ピンPを介してギヤケース10側に連結している。そのため、このインナーケース14は、ピンPを支点にして上記隙間の分だけ組み付け穴13内を移動することができる。
【0015】
上記のように移動可能に組み込んだインナーケース14には、電動モータMの本体16を固定するとともに、その出力軸17をインナーケース14内に臨ませている。そして、この電動モータMの出力軸17にカップリング18を介してウォーム軸19を連結している。このウォーム軸19は、インナーケース14内に組み込んだベアリング20,21によって回転自在に支持されている。なお、上記ベアリング20は、インナーケース14に形成した段部31とこのインナーケース14に固定したロックナットnとで挟み込んで固定されている。また、ベアリング21は、インナーケース14の挿入方向先端側に圧入することによって固定している。
【0016】
上記ウォーム軸19には、ウォーム22を一体形成している。そして、このウォーム22を、インナーケース14に形成した開口部30を介してウォームホィール23にかみ合わせている。
したがって、電動モータMの出力軸17が回転すれば、それに伴ってウォーム軸19も回転し、このウォーム軸19のウォーム22にかみ合うウォームホィール23が、ピニオンシャフト12とともに回転する。
【0017】
また、上記ギヤケース10には、組み付け穴13に連通する貫通孔24を形成している。この貫通孔24には、図2に示すように、調節ボルト25を螺合するとともに、この調節ボルト25よりも内側の組み付け穴13内に付勢部材32を摺動自在に組み込んでいる。そして、これら調節ボルト25と付勢部材32との間に、コイルスプリング34を介在させることによって、その弾性力を付勢部材32に付与している。
このようにした付勢部材32は、その先端をインナーケース14に押し付けている。したがって、インナーケース14にも、コイルスプリング34の弾性力が作用することになる。
なお、図中符号35は、調節ボルト25の回転を規制するロックナットである。
また、上記調節ボルト25と付勢部材32とコイルスプリング34とによって、この発明の付勢手段を構成している。
【0018】
上記のようにインナーケース14に作用する弾性力は、調節ボルト25の位置によって調節することができる。そして、この弾性力を利用して、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節できるようにしている。また、インナーケース14の位置を調節すれば、このインナーケース14に組み込んだウォーム軸19の位置を調節することができる。
【0019】
なお、上記インナーケース14は、組み付け穴13内を移動する際、ピンPを支点にして回動するが、このインナーケース14には、電動モータMを固定している。したがって、インナーケース14に設けたウォーム軸19と、電動モータMの出力軸17との軸心は常に一致した状態に保たれている。つまり、インナーケース14を動かしても、電動モータMの出力軸17とウォーム軸19との軸心がずれることはない。
【0020】
一方、上記ギヤケース10に対するインナーケース14の移動は、固定ボルト27を締め付けることによって規制できるようにしている。すなわち、インナーケース14の支持部14bには、長孔33を形成するともに、この長孔33に固定ボルト27を貫通させている。上記長孔33は、インナーケース14の回動方向に合わせて形成している。そして、固定ボルト27の先端側を、ギヤケース10に形成した図示していない取付穴に挿入している。
したがって、固定ボルト27を締め付けると、この固定ボルト27によってギヤケース10に支持部14bが挟みつけられて、インナーケース14の移動が規制される。
【0021】
ただし、上記固定ボルト27の外周には、図示していないラバーブッシュを取り付けている。そして、このラバーブッシュの変形量分だけ、ギヤケース10に対してインナーケース14が移動できるようにしている。このようにしたのは、ギヤケース10に対するインナーケース14の移動を弾性的に規制しながら、ある程度の移動を許容するためであるが、その詳しい理由については後で説明する。
なお、上記固定ボルト27と、その外周に取り付けたラバーブッシュがこの発明の弾性保持手段に相当する。
【0022】
一方、図1における符号28は、シール部材であり、このシール部材28によって組み付け穴13にゴミや水などが侵入しないようにしている。
また、符号sはカシメリングであり、このカシメリングsをウォーム軸19に形成した溝にカシメ込んでいる。そして、このカシメリングsと拡径部19aとの間に上記ベアリング20を挟み込むことによって、ウォーム軸19の軸線方向の位置を規制している。なお、上記カシメリングsの代わりにスナップリングを用いてもよい。
さらに、符号29は、電動モータMの出力軸17を回転自在に支持するベアリングである。
【0023】
次に、この実施形態の作用を説明する。
上記電動モータMの作動により、その出力軸17が回転すると、それに伴ってウォーム軸19が回転する。ウォーム軸19が回転すると、このウォーム軸19に一体形成したウォーム22も回転するので、それにかみ合うウォームホィール23がピニオンシャフト12とともに回転する。このようにピニオンシャフト12が回転すると、このピニオンシャフト12に連係した図示していない操舵輪が転舵することになる。
【0024】
上記のように、電動モータMの出力は、ウォーム22とウォームホィール23とを介して伝達されるが、これらウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分のバックラッシュは、次のようにして調節する。
まず、固定ボルト27を緩めて、ギヤケース10に対してインナーケース14を回動自在にする。このようにしたら、調節ボルト25の挿入量を調節して、付勢部材32に作用するコイルスプリング34の弾性力を調整する。すなわち、調節ボルト25を一方に回して、その挿入量を増やすと、コイルスプリング34が撓むので、その弾性力が強くなる。このようにコイルスプリング34の弾性力が強くなると、付勢部材32の先端が、インナーケース14の押し付け面26に強く押し付けられるので、ピンPを支点にしてインナーケース14が反時計回りに回動する。
【0025】
このようにインナーケース14が反時計回りに回動すると、このインナーケース14内に組み込んだウォーム軸19が、ウォームホィール23側に移動する。これによって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い量が多くなる。つまり、バックラッシュが小さくなる。
【0026】
上記と反対方向に調節ボルト25を回して、調節ボルト25の挿入量を少なくすると、コイルスプリング34が伸びるので、その分、弾性力も弱くなる。コイルスプリング34の弾性力が弱くなると、付勢部材32がインナーケース14を押す力も弱くなるので、このインナーケース14を図中時計回りに回動させることができる。インナーケース14を時計回りに回動させると、それに伴ってウォーム軸19がウォームホィール23から離れる方向に移動する。ウォーム軸19からウォームホィール23が離れる方向に移動すれば、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い量が少なくなる。つまり、バックラッシュが大きくなる。
【0027】
上記のようにして、ウォーム22とウォームホィール23とのバックラッシュを適切な大きさに設定したら、固定ボルト27を締め付けるのと同時に、調整ボルト25をロックナット35で締め付けて固定し、インナーケース14の移動を規制する。このようにすれば、バックラッシュを最適の大きさに設定することができる。つまり、いわゆるラトル音の発生を防止することができる。
しかも、この実施形態では、各部品を組み付けた後で、バックラッシュを調節することができるので、各部品の加工精度や組み付け精度を厳密に管理する必要がない。したがって、加工精度や組み付け精度を厳密に管理する場合に比べて、コストアップを安く抑えることができる。
【0028】
また、この実施形態によれば、ウォーム軸19を支持したインナーケース14に、電動モータMを固定しているので、ギヤケース10に対してインナーケース14を動かしたとしても、ウォーム軸19の軸心と電動モータMの出力軸17の軸心とを常に一致させた状態に保つことができる。つまり、電動モータMの出力軸17とウォーム軸19との軸心のずれが生じない。
したがって、ウォーム軸19と電動モータMの出力軸17とを連結するカップリング18に無理な力が作用することもない。
【0029】
さらに、この実施形態によれば、コイルスプリング34の弾性力を利用して、インナーケース14の位置を決めているので、次の利点もある。
例えば、長期間の使用によって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分が摩耗してくると、通常であれば、摩耗した分だけバックラッシュが大きくなる。バックラッシュが大きくなると、ラトル音が発生する可能性が高くなる。
そこで、この実施形態では、上記のようにコイルスプリング34の弾性力を、付勢部材32を介してケーシング14に常時作用させることで、このケーシング14に設けたウォーム軸22を、摩耗に合わせて追従させるようにしている。すなわち、かみ合い部分の摩耗によって、バックラッシュが大きくなると、上記コイルスプリング34の弾性力によって、インナーケース14とともにウォーム軸22がウォームホィール23側に積極的に移動できるようにしている。このようにすれば、バックラッシュの増加を防ぐことができ、ラトル音の発生を長期間防止することができる。
【0030】
また、ピニオンシャフト12には、大きな外力が作用する場合があるが、このような場合に、インナーケース14の移動を許容すれば、ウォームホィール23とウォーム22とのかみ合い部分に大きな力が作用することを防止できる。
すなわち、付勢手段をギヤケース10の所定の位置に装着した際、コイルスプリング34の弾性力によって、付勢部材32と調節ボルト25との間に予め所定の隙間を形成しておけば、上記のような外力が作用した場合に、付勢部材32でその外力を吸収させることも可能となる。したがって、このような設定すると、外力によって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分に大きな力が作用するといった不都合が生じない。
以上のように、インナーケース14というのは、摩耗や外力に応じて移動する場合がある。そこで、この実施形態では、上記固定ボルト27の外周にラバーブッシュを設けることで、インナーケース14の移動を許容するようにしている。
【0031】
なお、この実施形態によれば、組み付け穴13の内周に形成したガイド面15,15によって、インナーケース14がピニオンシャフト12の軸線方向に移動することを規制しているが、これらガイド面15,15は、必須の構成要素ではない。すなわち、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い状態を調節した後で、その状態を保持することができる構造であれば、組み付け穴13を円形にしてもよい。
ただし、この実施形態のように、ウォーム22を形成したウォーム軸19とピニオンシャフト12との軸間距離の調整に関係のない方向のインナーケース14の移動を、ガイド面15,15によって予め規制しておけば、バックラッシュの調節がより容易にできる。
【0032】
また、この実施形態では、インナーケース14の保持部14a側を回動支点としているが、ピンPと固定ボルト27との位置を入れ替えて、インナーケース14の保持部14b側を回動支点としてもよい。このようにしても、上記と同様にインナーケース14の位置を調節することができる。
【0033】
さらに、この実施形態では、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節するために、ピンPを中心にインナーケース14を回動させる構成にしているが、インナーケース14をギヤケース10に対して平行移動させる構成にしてもよい。この場合には、保持部14aの部分に長孔を形成するとともに、この長孔に固定ボルト27を締め付けるようにすればよい。ただし、この場合には、ギヤケース10に対して両方の保持部14a,14bの位置がずれるので、インナーケース14の位置の特定に手間がかかり、その分、バックラッシュの調節も難しくなる。
これに対して上記実施形態のように、インナーケース14をピンPを中心に回動させる構成にすれば、保持部14aの位置調節が不要になるので、バックラッシュの調節も簡単である。
【0034】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ウォーム軸を回転自在に支持するインナーケースの位置を、調節ボルトの挿入量によって調節可能としたので、インナーケースの位置を調節することによって、ウォーム軸の位置を調節することができる。このようにウォーム軸の位置を調節すれば、ウォームとウォームホィールとの間のバックラッシュを調節することができる。つまり、各部品を組み付けた後で、バックラッシュを調節することができる。したがって、加工精度や組み付け精度を厳密に管理する場合に比べて、コストアップを安く抑えることができる。
【0035】
また、ウォーム軸を支持したインナーケースに、電動モータを固定しているので、上記のようにインナーケースを移動させたとしても、電動モータの出力軸とウォーム軸とがずれない。したがって、電動モータの出力軸とウォーム軸との連結部分に無理な力が作用することもない。
さらに、インナーケースに弾性力を付与しているので、ウォームホィールとウォームとのかみ合い部分に摩耗が生じた場合でも、摩耗した分だけウォームをウォームホィール側に追従させることができる。したがって、バックラッシュの増加を長期間防止することができ、ラトルも長期間防止することができる。
【0036】
また、インナーケースを常時移動可能にしておけば、外力が作用した場合でも、インナーケースを逃がすことによって、ウォーム等に大きな力が作用することを防ぐことも期待できる。
【0037】
第2の発明によれば、組み付け穴の内周に、インナーケースに接する一対のガイド面を設けるとともに、これらガイド面によって、インナーケースがピニオンシャフトの軸線方向に移動することを規制したので、インナーケースの位置調節が容易にできる。このようにインナーケースの位置調節が容易にできるので、バックラッシュの調節も簡単となる。
【0038】
第3の発明によれば、ギヤケースとインナーケースとをピンによって連結し、インナーケースが上記ピンを中心に回動にしたので、インナーケースの位置調節が容易にできる。このようにインナーケースの位置調節が容易にできるので、バックラッシュの調節も簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の断面図である。
【図2】調節ボルト25を組み付ける部分の拡大断面図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
10 ギヤケース
12 ピニオンシャフト
13 組み付け穴
14 インナーケース
15 ガイド面
17 電動モータの出力軸
19 ウォーム軸
22 ウォーム
23 ウォームホィール
25 この発明の付勢手段を構成する調節ボルト
27 この発明の弾性保持手段に相当する固定ボルト
30 インナーケースの開口部
32 この発明の付勢手段を構成する付勢部材
34 この発明の付勢手段を構成するコイルスプリング
M 電動モータ
P ピン
【発明の属する技術分野】
この発明は、電動パワーステアリング装置の減速機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3に示した従来例は、ギヤケース1に電動モータMを固定するとともに、この電動モータMの出力軸2にカップリング3を介してウォーム軸4を連結している。このウォーム軸4は、ギヤケース1内に組み込んだベアリング5,6によって回転自在に支持されていて、上記電動モータMの出力軸2とともに回転する。上記ウォーム軸4には、ウォーム7を一体形成するとともに、このウォーム7を、ギヤケース1内に組み込んだウォームホィール8にかみ合わせている。
なお、上記ベアリング5は、ギヤケース1に形成した段部1aとロックナットnとの間に挟み込むことによって固定されている。一方、ベアリング6は、ギヤケース1の組み付け凹部1bに圧入することにより固定されている。
【0003】
上記ウォームホィール8は、ピニオンシャフト9の外周に固定されている。このピニオンシャフト9には、図示していない操舵輪を連係し、このピニオンシャフト9の回転によって、操舵輪を転舵させるためのアシスト力を付与するようにしている。すなわち、電動モータMの出力軸2が回転すると、ウォーム軸4も回転する。ウォーム軸4が回転すると、ウォーム7にかみ合うウォームホィール8がピニオンシャフト9とともに回転する。ピニオンシャフト9が回転すると、このピニオンシャフト9に連係した操舵輪が転舵されることになる。
【0004】
ところで、上記電動モータMの出力は、ウォーム7とウォームホィール8のかみ合い部分を介してピニオンシャフト9に伝達されるが、これらウォーム7とウォームホィール8とのかみ合い部分には、バックラッシュがある。このバックラッシュというのは小さければ小さいほどよい。なぜなら、バックラッシュが大きくなると、かみ合い部分の隙間が大きくなるため、その部分で音が発生することがあるからである。例えば、ステアリングホィールを中立位置に保っている状態で、操舵輪を介してピニオンシャフト9に外力が作用すると、このピニオンシャフト9がウォームホィール8とともにバックラッシュの分だけ回転する。そして、このウォームホィール8がウォーム7にぶつかることによって音が発生する。この音はラトル音と呼ばれ異音とみなされ、商品価値を損なうという問題がある。
【0005】
そこで、バックラッシュの寸法を厳密に管理することで、ラトル音の発生を防止することが考えられる。ただし、上記バックラッシュというのは、ウォーム7やウォームホィール8の加工精度だけでなく、それを組み込むギヤケース1の加工精度及びこれら部品の組み付け精度に依存している。したがって、バックラッシュの寸法を厳密に管理しようとすると、コストが非常に高くなってしまう。
【0006】
そこで、公知の技術として、各部品を組み付けた後、ウォーム軸4のみを動かして、バックラッシュを調節する手段がある。ただし、この場合には、電動モータMの出力軸2を動かさずに、ウォーム軸4のみを動かすために、カップリング3の部分に無理な力が作用する。そのため、作動上支障をきたすおそれがある。カップリング3に無理な力が作用しないようにするために、弾性体によってウォームと出力軸とを連結することも考えられる。このようにすれば、弾性体によってウォーム軸4と出力軸2とのずれが吸収されるため、無理な力が作用しない。
【0007】
ところが、弾性体を用いた場合には、この弾性体の部分で伝達効率が低下するため、応答遅れが生じたり、この弾性体の部分が発振することで目標とする制御特性が得られなくなるという不都合が生じる。このような不都合があるので、従来は、バックラッシュをある程度の較差を持たせて設定している。ただし、バックラッシュがマイナスになると、ウォーム7とウォームホィール8とのかみ合いが渋くなってしまうので、バックラッシュの較差はプラス側に設定している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、ウォーム7とウォームホィール8との間のバックラッシュの較差をプラス側に設定しているので、バックラッシュが大きくなる場合がある。バックラッシュが大きくなると、上記したようにラトル音が発生するという問題がある。
この発明の目的は、ラトル音の発生を防止することができ、しかも、低コストで上記様々な不都合も防止することのできる電動パワーステアリング装置の減速機構を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ギヤケースと、このギヤケースに回転自在に組み込んだピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに固定したウォームホィールと、このウォームホィールにかみ合うウォームと、このウォームを固定したウォーム軸と、このウォーム軸に出力軸を連結した電動モータとを備え、上記電動モータの出力軸の回転を、ウォームを介してウォームホィールに伝達して、ピニオンシャフトを回転させる電動パワーステアリング装置の減速機構において、上記ウォーム軸を回転自在に支持するインナーケースと、ギヤケースに形成するとともに、上記インナーケースを挿入する組み付け穴と、上記組み付け穴に先端を臨ませるとともに、インナーケースに弾性力を付与する付勢手段と、ギヤケースに対するインナーケースの移動を弾性的に規制する弾性保持手段とを備え、上記インナーケースに電動モータを固定するとともに、この電動モータの出力軸をウォーム軸に連結する一方、上記調節ボルトの組み付け穴内への挿入量によって、ギヤケースに対するインナーケースの位置を調節可能とし、しかも、インナーケースに組み込んだウォーム軸に設けたウォームを、インナーケースに形成した開口部を介してウォームホィールにかみ合わせたことを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、組み付け穴の内周に、インナーケースに接する一対のガイド面を設けるとともに、これらガイド面によって、インナーケースがピニオンシャフトの軸線方向に移動することを規制する構成にしたことを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、ギヤケースとインナーケースとをピンによって連結し、インナーケースが上記ピンを中心に回動する構成にしたことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1,2にこの発明の一実施形態を示す。
図1に示すように、ギヤケース10内には、大径孔11を形成するとともに、この大径孔11にピニオンシャフト12を回転自在に挿入している。このピニオンシャフト12は、その一端にウォームホィール23を固定するとともに、その他端側に図示していないロッド等を介して操舵輪を連係している。
【0013】
また、上記ギヤケース10には、上記大径孔11に連通する組み付け穴13を形成するとともに、この組み付け穴13にインナーケース14を挿入している。このインナーケース14は、図2に示すように、その外形を円形にしている。これに対して上記組み付け穴13の内形は、ほぼ楕円形にしている。そのため、組み付け穴13の内側にインナーケース14を組み込むと、これら両者間には隙間ができる。ただし、組み付け穴13の内面には、平らにしたガイド面15、15を形成して、これらガイド面15,15にインナーケース14の外周を、移動できる隙間を残した状態で接触させている。したがって、インナーケース14と組み付け穴13との隙間は、組み付け穴13の長軸側にのみに形成される。また、上記ガイド面15,15にインナーケース14を接触させることによって、このインナーケース14が上記ピニオンシャフト12の軸線方向に移動しないようにしている。
【0014】
上記のように組み付け穴13に組み込んだインナーケース14は、図1に示すように、その一方の支持部14aを、ピンPを介してギヤケース10側に連結している。そのため、このインナーケース14は、ピンPを支点にして上記隙間の分だけ組み付け穴13内を移動することができる。
【0015】
上記のように移動可能に組み込んだインナーケース14には、電動モータMの本体16を固定するとともに、その出力軸17をインナーケース14内に臨ませている。そして、この電動モータMの出力軸17にカップリング18を介してウォーム軸19を連結している。このウォーム軸19は、インナーケース14内に組み込んだベアリング20,21によって回転自在に支持されている。なお、上記ベアリング20は、インナーケース14に形成した段部31とこのインナーケース14に固定したロックナットnとで挟み込んで固定されている。また、ベアリング21は、インナーケース14の挿入方向先端側に圧入することによって固定している。
【0016】
上記ウォーム軸19には、ウォーム22を一体形成している。そして、このウォーム22を、インナーケース14に形成した開口部30を介してウォームホィール23にかみ合わせている。
したがって、電動モータMの出力軸17が回転すれば、それに伴ってウォーム軸19も回転し、このウォーム軸19のウォーム22にかみ合うウォームホィール23が、ピニオンシャフト12とともに回転する。
【0017】
また、上記ギヤケース10には、組み付け穴13に連通する貫通孔24を形成している。この貫通孔24には、図2に示すように、調節ボルト25を螺合するとともに、この調節ボルト25よりも内側の組み付け穴13内に付勢部材32を摺動自在に組み込んでいる。そして、これら調節ボルト25と付勢部材32との間に、コイルスプリング34を介在させることによって、その弾性力を付勢部材32に付与している。
このようにした付勢部材32は、その先端をインナーケース14に押し付けている。したがって、インナーケース14にも、コイルスプリング34の弾性力が作用することになる。
なお、図中符号35は、調節ボルト25の回転を規制するロックナットである。
また、上記調節ボルト25と付勢部材32とコイルスプリング34とによって、この発明の付勢手段を構成している。
【0018】
上記のようにインナーケース14に作用する弾性力は、調節ボルト25の位置によって調節することができる。そして、この弾性力を利用して、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節できるようにしている。また、インナーケース14の位置を調節すれば、このインナーケース14に組み込んだウォーム軸19の位置を調節することができる。
【0019】
なお、上記インナーケース14は、組み付け穴13内を移動する際、ピンPを支点にして回動するが、このインナーケース14には、電動モータMを固定している。したがって、インナーケース14に設けたウォーム軸19と、電動モータMの出力軸17との軸心は常に一致した状態に保たれている。つまり、インナーケース14を動かしても、電動モータMの出力軸17とウォーム軸19との軸心がずれることはない。
【0020】
一方、上記ギヤケース10に対するインナーケース14の移動は、固定ボルト27を締め付けることによって規制できるようにしている。すなわち、インナーケース14の支持部14bには、長孔33を形成するともに、この長孔33に固定ボルト27を貫通させている。上記長孔33は、インナーケース14の回動方向に合わせて形成している。そして、固定ボルト27の先端側を、ギヤケース10に形成した図示していない取付穴に挿入している。
したがって、固定ボルト27を締め付けると、この固定ボルト27によってギヤケース10に支持部14bが挟みつけられて、インナーケース14の移動が規制される。
【0021】
ただし、上記固定ボルト27の外周には、図示していないラバーブッシュを取り付けている。そして、このラバーブッシュの変形量分だけ、ギヤケース10に対してインナーケース14が移動できるようにしている。このようにしたのは、ギヤケース10に対するインナーケース14の移動を弾性的に規制しながら、ある程度の移動を許容するためであるが、その詳しい理由については後で説明する。
なお、上記固定ボルト27と、その外周に取り付けたラバーブッシュがこの発明の弾性保持手段に相当する。
【0022】
一方、図1における符号28は、シール部材であり、このシール部材28によって組み付け穴13にゴミや水などが侵入しないようにしている。
また、符号sはカシメリングであり、このカシメリングsをウォーム軸19に形成した溝にカシメ込んでいる。そして、このカシメリングsと拡径部19aとの間に上記ベアリング20を挟み込むことによって、ウォーム軸19の軸線方向の位置を規制している。なお、上記カシメリングsの代わりにスナップリングを用いてもよい。
さらに、符号29は、電動モータMの出力軸17を回転自在に支持するベアリングである。
【0023】
次に、この実施形態の作用を説明する。
上記電動モータMの作動により、その出力軸17が回転すると、それに伴ってウォーム軸19が回転する。ウォーム軸19が回転すると、このウォーム軸19に一体形成したウォーム22も回転するので、それにかみ合うウォームホィール23がピニオンシャフト12とともに回転する。このようにピニオンシャフト12が回転すると、このピニオンシャフト12に連係した図示していない操舵輪が転舵することになる。
【0024】
上記のように、電動モータMの出力は、ウォーム22とウォームホィール23とを介して伝達されるが、これらウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分のバックラッシュは、次のようにして調節する。
まず、固定ボルト27を緩めて、ギヤケース10に対してインナーケース14を回動自在にする。このようにしたら、調節ボルト25の挿入量を調節して、付勢部材32に作用するコイルスプリング34の弾性力を調整する。すなわち、調節ボルト25を一方に回して、その挿入量を増やすと、コイルスプリング34が撓むので、その弾性力が強くなる。このようにコイルスプリング34の弾性力が強くなると、付勢部材32の先端が、インナーケース14の押し付け面26に強く押し付けられるので、ピンPを支点にしてインナーケース14が反時計回りに回動する。
【0025】
このようにインナーケース14が反時計回りに回動すると、このインナーケース14内に組み込んだウォーム軸19が、ウォームホィール23側に移動する。これによって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い量が多くなる。つまり、バックラッシュが小さくなる。
【0026】
上記と反対方向に調節ボルト25を回して、調節ボルト25の挿入量を少なくすると、コイルスプリング34が伸びるので、その分、弾性力も弱くなる。コイルスプリング34の弾性力が弱くなると、付勢部材32がインナーケース14を押す力も弱くなるので、このインナーケース14を図中時計回りに回動させることができる。インナーケース14を時計回りに回動させると、それに伴ってウォーム軸19がウォームホィール23から離れる方向に移動する。ウォーム軸19からウォームホィール23が離れる方向に移動すれば、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い量が少なくなる。つまり、バックラッシュが大きくなる。
【0027】
上記のようにして、ウォーム22とウォームホィール23とのバックラッシュを適切な大きさに設定したら、固定ボルト27を締め付けるのと同時に、調整ボルト25をロックナット35で締め付けて固定し、インナーケース14の移動を規制する。このようにすれば、バックラッシュを最適の大きさに設定することができる。つまり、いわゆるラトル音の発生を防止することができる。
しかも、この実施形態では、各部品を組み付けた後で、バックラッシュを調節することができるので、各部品の加工精度や組み付け精度を厳密に管理する必要がない。したがって、加工精度や組み付け精度を厳密に管理する場合に比べて、コストアップを安く抑えることができる。
【0028】
また、この実施形態によれば、ウォーム軸19を支持したインナーケース14に、電動モータMを固定しているので、ギヤケース10に対してインナーケース14を動かしたとしても、ウォーム軸19の軸心と電動モータMの出力軸17の軸心とを常に一致させた状態に保つことができる。つまり、電動モータMの出力軸17とウォーム軸19との軸心のずれが生じない。
したがって、ウォーム軸19と電動モータMの出力軸17とを連結するカップリング18に無理な力が作用することもない。
【0029】
さらに、この実施形態によれば、コイルスプリング34の弾性力を利用して、インナーケース14の位置を決めているので、次の利点もある。
例えば、長期間の使用によって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分が摩耗してくると、通常であれば、摩耗した分だけバックラッシュが大きくなる。バックラッシュが大きくなると、ラトル音が発生する可能性が高くなる。
そこで、この実施形態では、上記のようにコイルスプリング34の弾性力を、付勢部材32を介してケーシング14に常時作用させることで、このケーシング14に設けたウォーム軸22を、摩耗に合わせて追従させるようにしている。すなわち、かみ合い部分の摩耗によって、バックラッシュが大きくなると、上記コイルスプリング34の弾性力によって、インナーケース14とともにウォーム軸22がウォームホィール23側に積極的に移動できるようにしている。このようにすれば、バックラッシュの増加を防ぐことができ、ラトル音の発生を長期間防止することができる。
【0030】
また、ピニオンシャフト12には、大きな外力が作用する場合があるが、このような場合に、インナーケース14の移動を許容すれば、ウォームホィール23とウォーム22とのかみ合い部分に大きな力が作用することを防止できる。
すなわち、付勢手段をギヤケース10の所定の位置に装着した際、コイルスプリング34の弾性力によって、付勢部材32と調節ボルト25との間に予め所定の隙間を形成しておけば、上記のような外力が作用した場合に、付勢部材32でその外力を吸収させることも可能となる。したがって、このような設定すると、外力によって、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い部分に大きな力が作用するといった不都合が生じない。
以上のように、インナーケース14というのは、摩耗や外力に応じて移動する場合がある。そこで、この実施形態では、上記固定ボルト27の外周にラバーブッシュを設けることで、インナーケース14の移動を許容するようにしている。
【0031】
なお、この実施形態によれば、組み付け穴13の内周に形成したガイド面15,15によって、インナーケース14がピニオンシャフト12の軸線方向に移動することを規制しているが、これらガイド面15,15は、必須の構成要素ではない。すなわち、ウォーム22とウォームホィール23とのかみ合い状態を調節した後で、その状態を保持することができる構造であれば、組み付け穴13を円形にしてもよい。
ただし、この実施形態のように、ウォーム22を形成したウォーム軸19とピニオンシャフト12との軸間距離の調整に関係のない方向のインナーケース14の移動を、ガイド面15,15によって予め規制しておけば、バックラッシュの調節がより容易にできる。
【0032】
また、この実施形態では、インナーケース14の保持部14a側を回動支点としているが、ピンPと固定ボルト27との位置を入れ替えて、インナーケース14の保持部14b側を回動支点としてもよい。このようにしても、上記と同様にインナーケース14の位置を調節することができる。
【0033】
さらに、この実施形態では、ギヤケース10に対するインナーケース14の位置を調節するために、ピンPを中心にインナーケース14を回動させる構成にしているが、インナーケース14をギヤケース10に対して平行移動させる構成にしてもよい。この場合には、保持部14aの部分に長孔を形成するとともに、この長孔に固定ボルト27を締め付けるようにすればよい。ただし、この場合には、ギヤケース10に対して両方の保持部14a,14bの位置がずれるので、インナーケース14の位置の特定に手間がかかり、その分、バックラッシュの調節も難しくなる。
これに対して上記実施形態のように、インナーケース14をピンPを中心に回動させる構成にすれば、保持部14aの位置調節が不要になるので、バックラッシュの調節も簡単である。
【0034】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ウォーム軸を回転自在に支持するインナーケースの位置を、調節ボルトの挿入量によって調節可能としたので、インナーケースの位置を調節することによって、ウォーム軸の位置を調節することができる。このようにウォーム軸の位置を調節すれば、ウォームとウォームホィールとの間のバックラッシュを調節することができる。つまり、各部品を組み付けた後で、バックラッシュを調節することができる。したがって、加工精度や組み付け精度を厳密に管理する場合に比べて、コストアップを安く抑えることができる。
【0035】
また、ウォーム軸を支持したインナーケースに、電動モータを固定しているので、上記のようにインナーケースを移動させたとしても、電動モータの出力軸とウォーム軸とがずれない。したがって、電動モータの出力軸とウォーム軸との連結部分に無理な力が作用することもない。
さらに、インナーケースに弾性力を付与しているので、ウォームホィールとウォームとのかみ合い部分に摩耗が生じた場合でも、摩耗した分だけウォームをウォームホィール側に追従させることができる。したがって、バックラッシュの増加を長期間防止することができ、ラトルも長期間防止することができる。
【0036】
また、インナーケースを常時移動可能にしておけば、外力が作用した場合でも、インナーケースを逃がすことによって、ウォーム等に大きな力が作用することを防ぐことも期待できる。
【0037】
第2の発明によれば、組み付け穴の内周に、インナーケースに接する一対のガイド面を設けるとともに、これらガイド面によって、インナーケースがピニオンシャフトの軸線方向に移動することを規制したので、インナーケースの位置調節が容易にできる。このようにインナーケースの位置調節が容易にできるので、バックラッシュの調節も簡単となる。
【0038】
第3の発明によれば、ギヤケースとインナーケースとをピンによって連結し、インナーケースが上記ピンを中心に回動にしたので、インナーケースの位置調節が容易にできる。このようにインナーケースの位置調節が容易にできるので、バックラッシュの調節も簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の断面図である。
【図2】調節ボルト25を組み付ける部分の拡大断面図である。
【図3】従来例の断面図である。
【符号の説明】
10 ギヤケース
12 ピニオンシャフト
13 組み付け穴
14 インナーケース
15 ガイド面
17 電動モータの出力軸
19 ウォーム軸
22 ウォーム
23 ウォームホィール
25 この発明の付勢手段を構成する調節ボルト
27 この発明の弾性保持手段に相当する固定ボルト
30 インナーケースの開口部
32 この発明の付勢手段を構成する付勢部材
34 この発明の付勢手段を構成するコイルスプリング
M 電動モータ
P ピン
Claims (3)
- ギヤケースと、このギヤケースに回転自在に組み込んだピニオンシャフトと、このピニオンシャフトに固定したウォームホィールと、このウォームホィールにかみ合うウォームと、このウォームを固定したウォーム軸と、このウォーム軸に出力軸を連結した電動モータとを備え、上記電動モータの出力軸の回転を、ウォームを介してウォームホィールに伝達して、ピニオンシャフトを回転させる電動パワーステアリング装置の減速機構において、上記ウォーム軸を回転自在に支持するインナーケースと、ギヤケースに形成するとともに、上記インナーケースを挿入する組み付け穴と、上記組み付け穴に先端を臨ませるとともに、インナーケースに弾性力を付与する付勢手段と、ギヤケースに対するインナーケースの移動を弾性的に規制する弾性保持手段とを備え、上記インナーケースに電動モータを固定するとともに、この電動モータの出力軸をウォーム軸に連結する一方、上記調節ボルトの組み付け穴内への挿入量によって、ギヤケースに対するインナーケースの位置を調節可能とし、しかも、インナーケースに組み込んだウォーム軸に設けたウォームを、インナーケースに形成した開口部を介してウォームホィールにかみ合わせたことを特徴とする電動パワーステアリング装置の減速機構。
- 上記組み付け穴の内周に、インナーケースに接する一対のガイド面を設けるとともに、これらガイド面によって、インナーケースがピニオンシャフトの軸線方向に移動することを規制する構成にしたことを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置の減速機構。
- ギヤケースとインナーケースとをピンによって連結し、インナーケースが上記ピンを中心に回動する構成にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の電動パワーステアリング装置の減速機構。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002248299A JP2004082914A (ja) | 2002-08-28 | 2002-08-28 | 電動パワーステアリング装置の減速機構 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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KR20150047300A (ko) * | 2013-10-24 | 2015-05-04 | 현대모비스 주식회사 | 전동 조향장치의 안티 래틀 장치 |
JP2016120749A (ja) * | 2014-12-24 | 2016-07-07 | 株式会社ショーワ | パワーステアリング装置およびその予圧調整方法 |
-
2002
- 2002-08-28 JP JP2002248299A patent/JP2004082914A/ja active Pending
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KR102080454B1 (ko) | 2013-10-24 | 2020-02-24 | 현대모비스 주식회사 | 전동 조향장치의 안티 래틀 장치 |
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