JP2004080261A - 弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる2個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを、正確に一致させることが可能な、弾性表面波素子片の製造方法を提供する。
【解決手段】低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数が、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器A,Bの電極を形成した上で、各共振器A,Bの電極を陽極酸化して、共振器AのS0モード周波数および共振器BのA0モード周波数を一致させる構成とした。
【選択図】 図1
【解決手段】低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数が、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器A,Bの電極を形成した上で、各共振器A,Bの電極を陽極酸化して、共振器AのS0モード周波数および共振器BのA0モード周波数を一致させる構成とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通信機器等では、様々な周波数の電気信号から所定周波数の電気信号を取り出すため、弾性表面波フィルタが利用されている。弾性表面波フィルタは、弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装したものであり、その弾性表面波素子片は、図3(1)に示すように、少なくとも電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT(Interdigital Transducer)電極11と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極12とを、圧電体平板の表面に形成したものである。さらに、共振子型の弾性表面波フィルタでは、IDT電極10から漏出した弾性表面波をIDT電極側に反射して共振を発生させるため、IDT電極10の外側に反射器電極20を形成している。ここで、圧電体平板上に形成されたIDT電極10および反射器電極20は、弾性表面波共振器を構成する。
【0003】
図11に、共振子型の弾性表面波フィルタにおける周波数特性のグラフを示す。共振子型の弾性表面波フィルタとして、縦2重モード弾性表面波フィルタが開発されている。この縦2重モード弾性表面波フィルタは、図11において破線で示すように、基本波対称縦モードS0(以下、S0モードと呼ぶ)、および基本波斜対称縦モードA0(以下、A0モードと呼ぶ)と呼ばれる、2つの縦共振モードを利用するものである。この縦2重モード弾性表面波フィルタでは、図11の実線で示すようにインピーダンス整合を行うことにより、両共振モードの共振周波数の間が通過帯域となる。
【0004】
通過帯域の幅は、弾性表面波フィルタを使用する通信機器等に対応して、様々に設定される。その通過帯域幅を広くするには、IDT電極の対数を少なくする必要がある。一方で、圧電体平板として使用される水晶平板は、周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。そのため、弾性表面波フィルタの挿入損失を小さくするには、IDT電極の対数を多くする必要がある。かかる事情により、1個の縦2重モード弾性表面波共振器からなる弾性表面波フィルタにおいて、通過帯域幅を広くするには限界があった。
【0005】
そこで、図4に示すように、2個の縦2重モード弾性表面波共振器A,Bにつき、相互に位相を反転させ、電気的に並列接続して構成された、弾性表面波フィルタが開発されている。図1(2)に、この弾性表面波フィルタの周波数特性を示す。この弾性表面波フィルタでは、各共振器における中心周波数をそれぞれ異なる値に設定している。さらに、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数と、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数とを一致させている。これにより、低周波側の共振器におけるA0モード周波数から、高周波側の共振器におけるS0モード周波数までの間を、弾性表面波フィルタの通過帯域とすることができる。
【0006】
ここで、各共振器の中心周波数を異なる値に設定するには、図4に示すように、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチλa、λbを、それぞれ異なる幅に形成することによって行っている。さらに、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数と、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数とを一致させるには、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチλa、λbを、それぞれ所定の幅に正確に形成することによって行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電体平板の表面に各電極を形成するには、まず圧電体平板の表面全体に電極膜を形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布する。そして、電極パターンが描画されたフォトマスクを介してレジストの露光を行い、さらに現像して電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。その後、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングすれば、圧電体平板の表面に各電極が形成される。
【0008】
ここで、上述したフォトマスクに電極パターンを描画するには、パターン描画装置を使用する。パターン描画装置は、格子状の画素を単位として、電子線を偏向させて照射することによりパターンを描画する。そのため、格子状の画素より小さい単位で、フォトマスクにおける電極パターンの位置を微調整することができない。したがって、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチの微調整に限界が生じる。これにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モードの周波数とを、正確に一致させることが困難になるという問題がある。
【0009】
なお、両共振モード周波数が一致していないと、通過帯域の中心周波数付近におけるリップルが大きくなる。そのため、弾性表面波フィルタとして良好な周波数特性を発揮することができなくなる。
【0010】
本発明は上記問題点に着目し、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、正確に一致させることが可能な、弾性表面波素子片の製造方法の提供を目的とする。また本発明は、その方法を使用して製造した弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、縦2重モード弾性表面波共振器の電極を陽極酸化した場合に、S0モードおよびA0モードの周波数の低下率が異なるという知見に基づいている。図2に、陽極酸化電圧と共振モード周波数との関係図を示す。なお同図では、1個の縦2重モード弾性表面波共振器の電極を陽極酸化している。また、同図において陽極酸化電圧が0Vの場合とは、陽極酸化を行っていない場合を示している。同図に示すように、陽極酸化を行うと、S0モードおよびA0モードの周波数はいずれも低下する。これは、陽極酸化により電極の表面に酸化膜が形成され、電極膜厚を厚くした場合と同様の効果が得られるからであると考えられる。また、陽極酸化電圧の上昇に比例して、両モードの周波数は低下する。これは、陽極酸化電圧の上昇により酸化膜の膜厚が増加するからであると考えられる。
【0012】
ここで注目すべきは、S0モードおよびA0モードの周波数の低下率が異なる点である。すなわち、同じ陽極酸化電圧で陽極酸化した場合に、S0モード周波数の低下率は、A0モード周波数の低下率より大きくなっている。そこで、図1(1)に示すように、2個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の共振器におけるS0モード周波数が、高周波側の共振器におけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成する。その上で、各共振器の電極を所定の電圧で陽極酸化すれば、図1(2)に示すように、低周波側の共振器におけるS0モード周波数を、高周波側の共振器におけるA0モード周波数に、一致させることができるのである。
【0013】
なお、電極膜厚を変化させることによっても、周波数を変化させることは可能である。しかし、周波数温度特性における頂点温度が大幅に変化し、温度特性が著しく悪化するという問題がある。この点、電極の表面を陽極酸化する場合には、周波数温度特性における頂点温度がほとんど変化しないことが報告されている。すなわち、温度特性を悪化させることなく、両共振モード周波数を一致させることができるのである。
【0014】
上述した知見に基づいて、本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法は、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数が、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数より高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記各共振器の電極を陽極酸化して、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、を有する構成とした。
【0015】
陽極酸化電圧に比例して、各共振モード周波数は低下する。また、共振器における高周波側の共振モード周波数の低下率は、低周波側の共振モード周波数の低下率より大きくなる。したがって、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、正確に一致させることができる。
【0016】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程を有する構成とした。
【0017】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数が、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数より、高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記高周波側の共振器の電極のみを陽極酸化することにより、または前記高周波側の共振器を前記低周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、を有する構成とした。
【0018】
各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、一の共振器における共振モード周波数の低下率を、他の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、迅速に一致させることができる。
【0019】
一方、本発明に係る弾性表面波素子片は、請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性表面波素子片の製造方法を使用して製造した構成とした。これにより、上記効果を伴った弾性表面波素子片を提供することができる。
【0020】
一方、本発明に係る弾性表面波フィルタは、請求項4に記載の弾性表面波素子片をパッケージの内部に実装し、前記弾性表面波素子片の前記各IDT電極と前記パッケージの外部端子とを導通可能とした構成とした。これにより、上記効果を伴った弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0021】
一方、本発明に係る通信装置は、請求項5に記載の弾性表面波フィルタを使用して製造した構成とした。これにより、上記効果を伴った通信装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施の一形態にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
最初に、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る弾性表面波素子片は、いわゆる共振子型の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波素子片であって、圧電体平板の表面に2個の共振器を形成したものである。各共振器は、信号入力用の第1IDT電極と、信号出力用の第2IDT電極と、各IDT電極の外側に配置した反射器電極とによって構成する。
【0024】
圧電体平板には、STカット水晶平板や、タンタル酸リチウム(LiTaO3)平板などを使用することができる。このうち水晶は、周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。よって、水晶平板を使用した弾性表面波素子片において、電気・機械エネルギー相互間の変換効率を確保するには、IDT電極の対数を確保する必要がある。そのため、弾性表面波素子片が大型化するという問題がある。しかし、弾性表面波素子片の電極を陽極酸化すれば、図2(2)に示すように、挿入損失を増加させることなく共振モード周波数を変化させることができる。(なお図2(2)は、各電圧による陽極酸化後の周波数特性につき、S0モード周波数を一致させて記載している。)
【0025】
図3(1)に、共振器の代表的な電極パターンの平面図を示す。本実施形態における共振器では、電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極11と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極12とを、隣接して配置する。IDT電極10は、多数の電極指13を有する2個のすだれ状電極パターンにつき、それぞれの電極指を交互に平行に配置して構成する。また、IDT電極10から漏出した弾性表面波をIDT電極10側に反射する反射器電極20を、各IDT電極10の外側に配置する。各反射器電極20は、多数の導体ストリップ23を足掛かりとしたはしご状電極パターンにより構成する。なお、各電極はAlまたはAl合金で形成する。
【0026】
もっとも、弾性表面波素子片は、上記以外の電極パターンとすることも可能である。図3(2)から(4)には、他の電極パターンの平面図を示している。図3(2)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、励振された弾性表面波の振幅を制御する目的で、反射器電極32を配置したものである。また、図3(3)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、圧電体平板の上方における電磁波をシールドする目的で、交差導体34を配置したものである。さらに、図3(4)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、反射器電極32および交差導体34の両方を配置したものである。
【0027】
そして、図4に示すように、上述した縦2重モード弾性表面波共振器A,Bを横方向に並べて、圧電体平板の表面に配置することにより、本実施形態に係る弾性表面波素子片5を形成する。各共振器A,Bは、相互に位相を反転させた上で、電気的に並列接続する。具体的には、各IDT電極における一方のすだれ状電極をGND端子に接続する。さらに、入力用の各IDT電極11a,11bにおける他方のすだれ状電極を入力端子に接続し、出力用の各IDT電極12a,12bにおける他方のすだれ状電極を出力端子に接続する。これにより、2個の縦2重モード弾性表面波共振器が、電気的に並列接続された状態となる。また、共振器Aは、入力用のIDT電極11aのパターンと、出力用のIDT電極12aのパターンとが、中心点19aに対して点対称となるように形成する。一方の共振器Bは、入力用のIDT電極11bのパターンと、出力用のIDT電極12bのパターンとが、中心線19bに対して線対称となるように形成する。これにより、2個の縦2重モード弾性表面波共振器A,Bは、相互に位相を反転させて接続した状態となる。そして、後述するように共振器AのS0モード周波数と共振器BのA0モード周波数とを一致させれば、相互に同位相成分を合成することができる。
【0028】
また、共振器Aの中心周波数が、共振器Bの中心周波数より低周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。具体的には、共振器AのIDT電極11a,12aにおける電極指ピッチλaが、共振器BのIDT電極11b,12bにおける電極指ピッチλbより広くなるように、各IDT電極を形成する。さらに、図1(1)に示すように、低周波側の共振器Aにおける高周波側のS0モード周波数が、高周波側の共振器Bにおける低周波側のA0モード周波数より、高周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。
【0029】
一方、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法では、後述するように各電極の表面を陽極酸化する。図5に、IDT電極の電極指の断面図を示す。各電極の表面を陽極酸化することにより、圧電体平板6上の電極指13の表面に酸化膜15を形成する。各電極をAlで構成した場合には、Al2O3の酸化膜を形成する。なお、陽極酸化電圧を上昇させれば、酸化膜の膜厚も増加する。一方、反射器電極の導体ストリップの表面にも、同様に酸化膜を形成する。
【0030】
次に、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法について説明する。弾性表面波素子片は、圧電体ウエハにおいて複数個を同時に製造する。概略的には、圧電体ウエハの表面に共振器の各電極を形成し、各電極の表面を陽極酸化し、さらに圧電体ウエハから各弾性表面波素子片を分離して、弾性表面波素子片を形成する。
【0031】
最初に、圧電体ウエハの表面に共振器の各電極を形成する。具体的には、まず圧電体ウエハの表面全体に、蒸着法やスパッタ法を用いて電極膜を形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。そして、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングし、電極形成部分以外の部分の電極膜を除去する。その後、残したレジストを除去すれば、圧電体ウエハの表面に各電極が形成される。なお、図6に示すように、圧電体ウエハ4の表面には、IDT電極10および反射器電極20の他に、これらと導通するターミナル電極30を形成しておく。
【0032】
次に、各電極の表面を陽極酸化する。図6に陽極酸化装置の説明図を示す。陽極酸化装置40には、酸化液槽41および電源44が設けられている。酸化液槽41には、酸化液42として、リン酸塩やホウ酸塩などの水溶液が満たされている。なお、ほぼ中性のクエン酸塩やアジピン酸塩などの水溶液を、酸化液42として使用してもよい。一方、電源44は、電圧の調整手段を有している。また、電源44の陰極端子には、電流計48を介して陰極電極板47が接続されている。一方、電源44の陽極端子には、金属クリップ46が接続されている。なお、電源44の両端子間には、電圧計49が接続されている。
【0033】
ここで、陽極酸化電圧を設定する。具体的には、図2(1)に示すグラフを参考にして、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数を、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数に一致させることが可能な、陽極酸化電圧を求める。そして、電源44により印加する電圧を、上記で求めた陽極酸化電圧に設定する。なお、陽極酸化電圧を変化させると、弾性表面波フィルタの中心周波数も変化することになる。そこで、その中心周波数の変化量を見込んで、IDT電極の電極指ピッチおよび電極膜厚を設定しておく。
【0034】
その後、電源44の陽極端子に接続された金属クリップ46に、圧電体ウエハ4のターミナル電極30を接続する。次に、電源44の陰極端子に接続された陰極電極板47とともに、圧電体ウエハ4を酸化液42中に浸漬する。そして、電源44により陽極酸化電圧を印加する。すると、ターミナル電極30と導通するIDT電極10および反射器電極20が陽極酸化され、各電極の表面に酸化膜が形成される。なお、陽極酸化時間を変化させた場合にも、陽極酸化電圧を変化させた場合と同様に、共振器の共振モード周波数を変化させることができる。しかし、陽極酸化時間を延長すると製造効率が悪化するので、本実施形態では陽極酸化時間を絶縁性が十分に保てる膜が生成できる一定の短時間とし、陽極酸化電圧のみを設定の対象とする。
【0035】
次に、圧電体ウエハを弾性表面波素子片の個片に分離する。その分離はダイシング等によって行う。以上により、本実施形態に係る弾性表面波素子片が完成する。
次に、上記のように形成した弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装して、弾性表面波フィルタを形成する。図7に、本実施形態に係る弾性表面波フィルタの側面断面図を示す。同図に示すように、パッケージ130のベース部132におけるキャビティ内部に、接着剤128を介して、上記のように形成した弾性表面波素子片5を実装する。
【0036】
一方、ベース部132の底面には、外部端子134が形成されている。また、ベース部132におけるキャビティの側壁は階段状に形成され、その中段部上面に、外部端子134と導通するボンディング用パッド136が形成されている。一方、弾性表面波素子片5の表面には、IDT電極10の形成と同時に、これと導通するボンディング用パッド110を形成しておく。そして、弾性表面波素子片5に形成されたボンディング用パッド110と、ベース部132に形成されたボンディング用パッド136との間を、ワイヤ129により連結する。これにより、ベース部132の外部端子134と、弾性表面波素子片5のIDT電極10とが導通可能となる。さらに、ベース部132の上面開口部にリッド138を装着し、必要に応じてパッケージ130の内部を窒素雰囲気等に気密封止する。以上により、本実施形態に係る弾性表面波フィルタ100が完成する。ここで、弾性表面波素子片をフリップチップ実装する場合も同様に弾性表面波フィルタ100を形成できる。
さらに、上記のように形成した弾性表面波フィルタ100を、図8に示すように使用することにより、スーパーヘテロダイン受信機などの通信装置を形成することができる。
【0037】
以上に詳述した第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法を使用することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを、正確に一致させることができる。この点従来は、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチをそれぞれ所定幅に形成することにより、両共振モード周波数を一致させようとしていた。しかし、IDT電極の形成に使用するフォトマスクに電極パターンを描画するパターン描画装置は、格子状の画素を単位としてパターンを描画する。そのため、IDT電極の電極指ピッチの微調整に限界があり、両共振モード周波数を正確に一致させることができないという問題があった。
【0038】
そこで、第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、低周波側の共振器におけるS0モード周波数が、高周波側の共振器におけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成した上で、各共振器の電極を陽極酸化して、両共振モード周波数を一致させる構成とした。陽極酸化電圧に比例して、両共振モード周波数は低下する。また、S0モード周波数の低下率は、A0モード周波数の低下率より大きくなる。したがって、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを、正確に一致させることができる。
【0039】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを一致させるものである。なお、第1実施形態と同じ構成となる部分については、その説明を省略する。
【0040】
第2実施形態に係る弾性表面波素子片は、第1実施形態と同様に、図4に示す構造とする。また、第1実施形態と同様に、共振器Aの中心周波数を、共振器Bの中心周波数より低周波側に位置させる。そのため、共振器AのIDT電極11a,12aにおける電極指ピッチλaを、共振器BのIDT電極11b,12bにおける電極指ピッチλbより広く設定する。ただし、第2実施形態では、図9(1)に示すように、高周波側の共振器Bにおける低周波側のA0モード周波数が、低周波側の共振器Aにおける高周波側のS0モード周波数より、高周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。
【0041】
また、圧電体ウエハの表面には、図10に示すように、共振器AのIDT電極10aおよび反射器電極20aと導通するターミナル電極30a、および共振器BのIDT電極10bおよび反射器電極20bと導通するターミナル電極30bを形成しておく。
【0042】
次に、陽極酸化電圧を設定する。第2実施形態では、高周波側の共振器Bのみを陽極酸化することにより、または高周波側の共振器Bを低周波側の共振器Aより高電圧で陽極酸化することにより、共振器BのA0モード周波数を共振器AのS0モード周波数に一致させる。これを実現することが可能な陽極酸化電圧を、図2(1)に示すグラフを参考にして求める。そして、求めた電圧を電源44により印加して、共振器Bの電極のみを陽極酸化し、または共振器Aの電極および共振器Bの電極を順次陽極酸化する。
【0043】
上述したように、第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、各共振器をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを一致させる構成とした。具体的には、高周波側の共振器における低周波側のA0モード周波数が、低周波側の共振器における高周波側のS0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成した上で、高周波側の共振器のみを陽極酸化することにより、または高周波側の共振器を低周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、両共振モード周波数を一致させる構成とした。これにより、第1実施形態と同様に、両共振モード周波数を正確に一致させることができる。これに加えて第2実施形態では、高周波側の共振器における共振モード周波数の低下率を、低周波側の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、第1実施形態に比べて迅速に、両共振モード周波数を一致させることができる。
【0044】
なお、上記以外にも、低周波側の共振器における高周波側のS0モード周波数が、高周波側の共振器における低周波側のA0モード周波数より高周波側に位置するように、各弾性表面波素子片の電極を形成した上で、低周波側の共振器のみを陽極酸化することにより、または低周波側の共振器を高周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、両共振モード周波数を一致させる構成としてもよい。この場合には、低周波側の共振器における共振モード周波数の低下率を、高周波側の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、第1実施形態に比べて迅速に、両共振モード周波数を一致させることができる。
【0045】
【発明の効果】
相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数が、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数より高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記各共振器の電極を陽極酸化して、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程とを有する構成としたので、両共振モード周波数を正確に一致させることができる。
【0046】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記各共振器をそれぞれ異なる陽極酸化電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程を有する構成としたので、両共振モード周波数を迅速に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法における周波数特性の変化の説明図であり、(1)は陽極酸化前の周波数特性のグラフであり、(2)は陽極酸化後の周波数特性のグラフである。
【図2】1個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、(1)は陽極酸化電圧を変化させた場合のS0モードおよびA0モードの周波数変化を示すグラフであり、(2)は陽極酸化電圧を変化させた場合の周波数特性のグラフである。
【図3】(1)は共振器の代表的な電極パターンの平面図であり、(2)ないし(4)は他の電極パターンの平面図である。
【図4】2個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、相互に位相を反転させ電気的に並列接続して構成した弾性表面波素子片の説明図である。
【図5】IDT電極の電極指および反射器電極の導体ストリップの断面図である。
【図6】陽極酸化装置の説明図である。
【図7】弾性表面波フィルタの側面断面図である。
【図8】通信装置のブロック図である。
【図9】第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法における周波数特性の変化の説明図であり、(1)は陽極酸化前の周波数特性のグラフであり、(2)は陽極酸化後の周波数特性のグラフである。
【図10】第2実施形態おける陽極酸化用のターミナル電極の説明図である。
【図11】1個の縦2重モード弾性表面波共振器の周波数特性と通過帯域との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A………低周波側の共振器、B………高周波側の共振器、4………圧電体ウエハ、5………弾性表面波素子片、6………圧電体平板、10,11,12………IDT電極、13………電極指、15………酸化膜、19a………中心点、19b………中心線、20………反射器電極、23………導体ストリップ、30………ターミナル電極、32………反射器電極、34………交差導体、40………陽極酸化装置、41………酸化液層、42………酸化液、44………電源、46………金属クリップ、47………陰極電極板、48………電流計、49………電圧計、100………弾性表面波フィルタ、110………ボンディング用パッド、128………接着剤、129………ワイヤ、130………パッケージ、132………ベース部、134………外部端子、136………ボンディング用パッド、138………リッド。
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通信機器等では、様々な周波数の電気信号から所定周波数の電気信号を取り出すため、弾性表面波フィルタが利用されている。弾性表面波フィルタは、弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装したものであり、その弾性表面波素子片は、図3(1)に示すように、少なくとも電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT(Interdigital Transducer)電極11と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極12とを、圧電体平板の表面に形成したものである。さらに、共振子型の弾性表面波フィルタでは、IDT電極10から漏出した弾性表面波をIDT電極側に反射して共振を発生させるため、IDT電極10の外側に反射器電極20を形成している。ここで、圧電体平板上に形成されたIDT電極10および反射器電極20は、弾性表面波共振器を構成する。
【0003】
図11に、共振子型の弾性表面波フィルタにおける周波数特性のグラフを示す。共振子型の弾性表面波フィルタとして、縦2重モード弾性表面波フィルタが開発されている。この縦2重モード弾性表面波フィルタは、図11において破線で示すように、基本波対称縦モードS0(以下、S0モードと呼ぶ)、および基本波斜対称縦モードA0(以下、A0モードと呼ぶ)と呼ばれる、2つの縦共振モードを利用するものである。この縦2重モード弾性表面波フィルタでは、図11の実線で示すようにインピーダンス整合を行うことにより、両共振モードの共振周波数の間が通過帯域となる。
【0004】
通過帯域の幅は、弾性表面波フィルタを使用する通信機器等に対応して、様々に設定される。その通過帯域幅を広くするには、IDT電極の対数を少なくする必要がある。一方で、圧電体平板として使用される水晶平板は、周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。そのため、弾性表面波フィルタの挿入損失を小さくするには、IDT電極の対数を多くする必要がある。かかる事情により、1個の縦2重モード弾性表面波共振器からなる弾性表面波フィルタにおいて、通過帯域幅を広くするには限界があった。
【0005】
そこで、図4に示すように、2個の縦2重モード弾性表面波共振器A,Bにつき、相互に位相を反転させ、電気的に並列接続して構成された、弾性表面波フィルタが開発されている。図1(2)に、この弾性表面波フィルタの周波数特性を示す。この弾性表面波フィルタでは、各共振器における中心周波数をそれぞれ異なる値に設定している。さらに、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数と、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数とを一致させている。これにより、低周波側の共振器におけるA0モード周波数から、高周波側の共振器におけるS0モード周波数までの間を、弾性表面波フィルタの通過帯域とすることができる。
【0006】
ここで、各共振器の中心周波数を異なる値に設定するには、図4に示すように、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチλa、λbを、それぞれ異なる幅に形成することによって行っている。さらに、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数と、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数とを一致させるには、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチλa、λbを、それぞれ所定の幅に正確に形成することによって行っている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、圧電体平板の表面に各電極を形成するには、まず圧電体平板の表面全体に電極膜を形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布する。そして、電極パターンが描画されたフォトマスクを介してレジストの露光を行い、さらに現像して電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。その後、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングすれば、圧電体平板の表面に各電極が形成される。
【0008】
ここで、上述したフォトマスクに電極パターンを描画するには、パターン描画装置を使用する。パターン描画装置は、格子状の画素を単位として、電子線を偏向させて照射することによりパターンを描画する。そのため、格子状の画素より小さい単位で、フォトマスクにおける電極パターンの位置を微調整することができない。したがって、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチの微調整に限界が生じる。これにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モードの周波数とを、正確に一致させることが困難になるという問題がある。
【0009】
なお、両共振モード周波数が一致していないと、通過帯域の中心周波数付近におけるリップルが大きくなる。そのため、弾性表面波フィルタとして良好な周波数特性を発揮することができなくなる。
【0010】
本発明は上記問題点に着目し、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、正確に一致させることが可能な、弾性表面波素子片の製造方法の提供を目的とする。また本発明は、その方法を使用して製造した弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、縦2重モード弾性表面波共振器の電極を陽極酸化した場合に、S0モードおよびA0モードの周波数の低下率が異なるという知見に基づいている。図2に、陽極酸化電圧と共振モード周波数との関係図を示す。なお同図では、1個の縦2重モード弾性表面波共振器の電極を陽極酸化している。また、同図において陽極酸化電圧が0Vの場合とは、陽極酸化を行っていない場合を示している。同図に示すように、陽極酸化を行うと、S0モードおよびA0モードの周波数はいずれも低下する。これは、陽極酸化により電極の表面に酸化膜が形成され、電極膜厚を厚くした場合と同様の効果が得られるからであると考えられる。また、陽極酸化電圧の上昇に比例して、両モードの周波数は低下する。これは、陽極酸化電圧の上昇により酸化膜の膜厚が増加するからであると考えられる。
【0012】
ここで注目すべきは、S0モードおよびA0モードの周波数の低下率が異なる点である。すなわち、同じ陽極酸化電圧で陽極酸化した場合に、S0モード周波数の低下率は、A0モード周波数の低下率より大きくなっている。そこで、図1(1)に示すように、2個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の共振器におけるS0モード周波数が、高周波側の共振器におけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成する。その上で、各共振器の電極を所定の電圧で陽極酸化すれば、図1(2)に示すように、低周波側の共振器におけるS0モード周波数を、高周波側の共振器におけるA0モード周波数に、一致させることができるのである。
【0013】
なお、電極膜厚を変化させることによっても、周波数を変化させることは可能である。しかし、周波数温度特性における頂点温度が大幅に変化し、温度特性が著しく悪化するという問題がある。この点、電極の表面を陽極酸化する場合には、周波数温度特性における頂点温度がほとんど変化しないことが報告されている。すなわち、温度特性を悪化させることなく、両共振モード周波数を一致させることができるのである。
【0014】
上述した知見に基づいて、本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法は、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数が、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数より高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記各共振器の電極を陽極酸化して、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、を有する構成とした。
【0015】
陽極酸化電圧に比例して、各共振モード周波数は低下する。また、共振器における高周波側の共振モード周波数の低下率は、低周波側の共振モード周波数の低下率より大きくなる。したがって、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、正確に一致させることができる。
【0016】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程を有する構成とした。
【0017】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数が、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数より、高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記高周波側の共振器の電極のみを陽極酸化することにより、または前記高周波側の共振器を前記低周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、を有する構成とした。
【0018】
各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、一の共振器における共振モード周波数の低下率を、他の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを、迅速に一致させることができる。
【0019】
一方、本発明に係る弾性表面波素子片は、請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性表面波素子片の製造方法を使用して製造した構成とした。これにより、上記効果を伴った弾性表面波素子片を提供することができる。
【0020】
一方、本発明に係る弾性表面波フィルタは、請求項4に記載の弾性表面波素子片をパッケージの内部に実装し、前記弾性表面波素子片の前記各IDT電極と前記パッケージの外部端子とを導通可能とした構成とした。これにより、上記効果を伴った弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0021】
一方、本発明に係る通信装置は、請求項5に記載の弾性表面波フィルタを使用して製造した構成とした。これにより、上記効果を伴った通信装置を提供することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施の一形態にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0023】
最初に、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る弾性表面波素子片は、いわゆる共振子型の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波素子片であって、圧電体平板の表面に2個の共振器を形成したものである。各共振器は、信号入力用の第1IDT電極と、信号出力用の第2IDT電極と、各IDT電極の外側に配置した反射器電極とによって構成する。
【0024】
圧電体平板には、STカット水晶平板や、タンタル酸リチウム(LiTaO3)平板などを使用することができる。このうち水晶は、周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。よって、水晶平板を使用した弾性表面波素子片において、電気・機械エネルギー相互間の変換効率を確保するには、IDT電極の対数を確保する必要がある。そのため、弾性表面波素子片が大型化するという問題がある。しかし、弾性表面波素子片の電極を陽極酸化すれば、図2(2)に示すように、挿入損失を増加させることなく共振モード周波数を変化させることができる。(なお図2(2)は、各電圧による陽極酸化後の周波数特性につき、S0モード周波数を一致させて記載している。)
【0025】
図3(1)に、共振器の代表的な電極パターンの平面図を示す。本実施形態における共振器では、電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極11と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極12とを、隣接して配置する。IDT電極10は、多数の電極指13を有する2個のすだれ状電極パターンにつき、それぞれの電極指を交互に平行に配置して構成する。また、IDT電極10から漏出した弾性表面波をIDT電極10側に反射する反射器電極20を、各IDT電極10の外側に配置する。各反射器電極20は、多数の導体ストリップ23を足掛かりとしたはしご状電極パターンにより構成する。なお、各電極はAlまたはAl合金で形成する。
【0026】
もっとも、弾性表面波素子片は、上記以外の電極パターンとすることも可能である。図3(2)から(4)には、他の電極パターンの平面図を示している。図3(2)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、励振された弾性表面波の振幅を制御する目的で、反射器電極32を配置したものである。また、図3(3)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、圧電体平板の上方における電磁波をシールドする目的で、交差導体34を配置したものである。さらに、図3(4)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、反射器電極32および交差導体34の両方を配置したものである。
【0027】
そして、図4に示すように、上述した縦2重モード弾性表面波共振器A,Bを横方向に並べて、圧電体平板の表面に配置することにより、本実施形態に係る弾性表面波素子片5を形成する。各共振器A,Bは、相互に位相を反転させた上で、電気的に並列接続する。具体的には、各IDT電極における一方のすだれ状電極をGND端子に接続する。さらに、入力用の各IDT電極11a,11bにおける他方のすだれ状電極を入力端子に接続し、出力用の各IDT電極12a,12bにおける他方のすだれ状電極を出力端子に接続する。これにより、2個の縦2重モード弾性表面波共振器が、電気的に並列接続された状態となる。また、共振器Aは、入力用のIDT電極11aのパターンと、出力用のIDT電極12aのパターンとが、中心点19aに対して点対称となるように形成する。一方の共振器Bは、入力用のIDT電極11bのパターンと、出力用のIDT電極12bのパターンとが、中心線19bに対して線対称となるように形成する。これにより、2個の縦2重モード弾性表面波共振器A,Bは、相互に位相を反転させて接続した状態となる。そして、後述するように共振器AのS0モード周波数と共振器BのA0モード周波数とを一致させれば、相互に同位相成分を合成することができる。
【0028】
また、共振器Aの中心周波数が、共振器Bの中心周波数より低周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。具体的には、共振器AのIDT電極11a,12aにおける電極指ピッチλaが、共振器BのIDT電極11b,12bにおける電極指ピッチλbより広くなるように、各IDT電極を形成する。さらに、図1(1)に示すように、低周波側の共振器Aにおける高周波側のS0モード周波数が、高周波側の共振器Bにおける低周波側のA0モード周波数より、高周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。
【0029】
一方、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法では、後述するように各電極の表面を陽極酸化する。図5に、IDT電極の電極指の断面図を示す。各電極の表面を陽極酸化することにより、圧電体平板6上の電極指13の表面に酸化膜15を形成する。各電極をAlで構成した場合には、Al2O3の酸化膜を形成する。なお、陽極酸化電圧を上昇させれば、酸化膜の膜厚も増加する。一方、反射器電極の導体ストリップの表面にも、同様に酸化膜を形成する。
【0030】
次に、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法について説明する。弾性表面波素子片は、圧電体ウエハにおいて複数個を同時に製造する。概略的には、圧電体ウエハの表面に共振器の各電極を形成し、各電極の表面を陽極酸化し、さらに圧電体ウエハから各弾性表面波素子片を分離して、弾性表面波素子片を形成する。
【0031】
最初に、圧電体ウエハの表面に共振器の各電極を形成する。具体的には、まず圧電体ウエハの表面全体に、蒸着法やスパッタ法を用いて電極膜を形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。そして、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングし、電極形成部分以外の部分の電極膜を除去する。その後、残したレジストを除去すれば、圧電体ウエハの表面に各電極が形成される。なお、図6に示すように、圧電体ウエハ4の表面には、IDT電極10および反射器電極20の他に、これらと導通するターミナル電極30を形成しておく。
【0032】
次に、各電極の表面を陽極酸化する。図6に陽極酸化装置の説明図を示す。陽極酸化装置40には、酸化液槽41および電源44が設けられている。酸化液槽41には、酸化液42として、リン酸塩やホウ酸塩などの水溶液が満たされている。なお、ほぼ中性のクエン酸塩やアジピン酸塩などの水溶液を、酸化液42として使用してもよい。一方、電源44は、電圧の調整手段を有している。また、電源44の陰極端子には、電流計48を介して陰極電極板47が接続されている。一方、電源44の陽極端子には、金属クリップ46が接続されている。なお、電源44の両端子間には、電圧計49が接続されている。
【0033】
ここで、陽極酸化電圧を設定する。具体的には、図2(1)に示すグラフを参考にして、低周波側の共振器AにおけるS0モード周波数を、高周波側の共振器BにおけるA0モード周波数に一致させることが可能な、陽極酸化電圧を求める。そして、電源44により印加する電圧を、上記で求めた陽極酸化電圧に設定する。なお、陽極酸化電圧を変化させると、弾性表面波フィルタの中心周波数も変化することになる。そこで、その中心周波数の変化量を見込んで、IDT電極の電極指ピッチおよび電極膜厚を設定しておく。
【0034】
その後、電源44の陽極端子に接続された金属クリップ46に、圧電体ウエハ4のターミナル電極30を接続する。次に、電源44の陰極端子に接続された陰極電極板47とともに、圧電体ウエハ4を酸化液42中に浸漬する。そして、電源44により陽極酸化電圧を印加する。すると、ターミナル電極30と導通するIDT電極10および反射器電極20が陽極酸化され、各電極の表面に酸化膜が形成される。なお、陽極酸化時間を変化させた場合にも、陽極酸化電圧を変化させた場合と同様に、共振器の共振モード周波数を変化させることができる。しかし、陽極酸化時間を延長すると製造効率が悪化するので、本実施形態では陽極酸化時間を絶縁性が十分に保てる膜が生成できる一定の短時間とし、陽極酸化電圧のみを設定の対象とする。
【0035】
次に、圧電体ウエハを弾性表面波素子片の個片に分離する。その分離はダイシング等によって行う。以上により、本実施形態に係る弾性表面波素子片が完成する。
次に、上記のように形成した弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装して、弾性表面波フィルタを形成する。図7に、本実施形態に係る弾性表面波フィルタの側面断面図を示す。同図に示すように、パッケージ130のベース部132におけるキャビティ内部に、接着剤128を介して、上記のように形成した弾性表面波素子片5を実装する。
【0036】
一方、ベース部132の底面には、外部端子134が形成されている。また、ベース部132におけるキャビティの側壁は階段状に形成され、その中段部上面に、外部端子134と導通するボンディング用パッド136が形成されている。一方、弾性表面波素子片5の表面には、IDT電極10の形成と同時に、これと導通するボンディング用パッド110を形成しておく。そして、弾性表面波素子片5に形成されたボンディング用パッド110と、ベース部132に形成されたボンディング用パッド136との間を、ワイヤ129により連結する。これにより、ベース部132の外部端子134と、弾性表面波素子片5のIDT電極10とが導通可能となる。さらに、ベース部132の上面開口部にリッド138を装着し、必要に応じてパッケージ130の内部を窒素雰囲気等に気密封止する。以上により、本実施形態に係る弾性表面波フィルタ100が完成する。ここで、弾性表面波素子片をフリップチップ実装する場合も同様に弾性表面波フィルタ100を形成できる。
さらに、上記のように形成した弾性表面波フィルタ100を、図8に示すように使用することにより、スーパーヘテロダイン受信機などの通信装置を形成することができる。
【0037】
以上に詳述した第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法を使用することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを、正確に一致させることができる。この点従来は、各共振器におけるIDT電極の電極指ピッチをそれぞれ所定幅に形成することにより、両共振モード周波数を一致させようとしていた。しかし、IDT電極の形成に使用するフォトマスクに電極パターンを描画するパターン描画装置は、格子状の画素を単位としてパターンを描画する。そのため、IDT電極の電極指ピッチの微調整に限界があり、両共振モード周波数を正確に一致させることができないという問題があった。
【0038】
そこで、第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、低周波側の共振器におけるS0モード周波数が、高周波側の共振器におけるA0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成した上で、各共振器の電極を陽極酸化して、両共振モード周波数を一致させる構成とした。陽極酸化電圧に比例して、両共振モード周波数は低下する。また、S0モード周波数の低下率は、A0モード周波数の低下率より大きくなる。したがって、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを、正確に一致させることができる。
【0039】
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを一致させるものである。なお、第1実施形態と同じ構成となる部分については、その説明を省略する。
【0040】
第2実施形態に係る弾性表面波素子片は、第1実施形態と同様に、図4に示す構造とする。また、第1実施形態と同様に、共振器Aの中心周波数を、共振器Bの中心周波数より低周波側に位置させる。そのため、共振器AのIDT電極11a,12aにおける電極指ピッチλaを、共振器BのIDT電極11b,12bにおける電極指ピッチλbより広く設定する。ただし、第2実施形態では、図9(1)に示すように、高周波側の共振器Bにおける低周波側のA0モード周波数が、低周波側の共振器Aにおける高周波側のS0モード周波数より、高周波側に位置するように、各共振器の電極指ピッチを設定する。
【0041】
また、圧電体ウエハの表面には、図10に示すように、共振器AのIDT電極10aおよび反射器電極20aと導通するターミナル電極30a、および共振器BのIDT電極10bおよび反射器電極20bと導通するターミナル電極30bを形成しておく。
【0042】
次に、陽極酸化電圧を設定する。第2実施形態では、高周波側の共振器Bのみを陽極酸化することにより、または高周波側の共振器Bを低周波側の共振器Aより高電圧で陽極酸化することにより、共振器BのA0モード周波数を共振器AのS0モード周波数に一致させる。これを実現することが可能な陽極酸化電圧を、図2(1)に示すグラフを参考にして求める。そして、求めた電圧を電源44により印加して、共振器Bの電極のみを陽極酸化し、または共振器Aの電極および共振器Bの電極を順次陽極酸化する。
【0043】
上述したように、第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、各共振器をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、低周波側の共振器におけるS0モード周波数と、高周波側の共振器におけるA0モード周波数とを一致させる構成とした。具体的には、高周波側の共振器における低周波側のA0モード周波数が、低周波側の共振器における高周波側のS0モード周波数より高周波側に位置するように、各共振器の電極を形成した上で、高周波側の共振器のみを陽極酸化することにより、または高周波側の共振器を低周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、両共振モード周波数を一致させる構成とした。これにより、第1実施形態と同様に、両共振モード周波数を正確に一致させることができる。これに加えて第2実施形態では、高周波側の共振器における共振モード周波数の低下率を、低周波側の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、第1実施形態に比べて迅速に、両共振モード周波数を一致させることができる。
【0044】
なお、上記以外にも、低周波側の共振器における高周波側のS0モード周波数が、高周波側の共振器における低周波側のA0モード周波数より高周波側に位置するように、各弾性表面波素子片の電極を形成した上で、低周波側の共振器のみを陽極酸化することにより、または低周波側の共振器を高周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、両共振モード周波数を一致させる構成としてもよい。この場合には、低周波側の共振器における共振モード周波数の低下率を、高周波側の共振器における共振モード周波数の低下率より、格段に大きくすることができる。したがって、第1実施形態に比べて迅速に、両共振モード周波数を一致させることができる。
【0045】
【発明の効果】
相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数が、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数より高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、前記各共振器の電極を陽極酸化して、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程とを有する構成としたので、両共振モード周波数を正確に一致させることができる。
【0046】
また、相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、前記各共振器をそれぞれ異なる陽極酸化電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程を有する構成としたので、両共振モード周波数を迅速に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法における周波数特性の変化の説明図であり、(1)は陽極酸化前の周波数特性のグラフであり、(2)は陽極酸化後の周波数特性のグラフである。
【図2】1個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、(1)は陽極酸化電圧を変化させた場合のS0モードおよびA0モードの周波数変化を示すグラフであり、(2)は陽極酸化電圧を変化させた場合の周波数特性のグラフである。
【図3】(1)は共振器の代表的な電極パターンの平面図であり、(2)ないし(4)は他の電極パターンの平面図である。
【図4】2個の縦2重モード弾性表面波共振器につき、相互に位相を反転させ電気的に並列接続して構成した弾性表面波素子片の説明図である。
【図5】IDT電極の電極指および反射器電極の導体ストリップの断面図である。
【図6】陽極酸化装置の説明図である。
【図7】弾性表面波フィルタの側面断面図である。
【図8】通信装置のブロック図である。
【図9】第2実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法における周波数特性の変化の説明図であり、(1)は陽極酸化前の周波数特性のグラフであり、(2)は陽極酸化後の周波数特性のグラフである。
【図10】第2実施形態おける陽極酸化用のターミナル電極の説明図である。
【図11】1個の縦2重モード弾性表面波共振器の周波数特性と通過帯域との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A………低周波側の共振器、B………高周波側の共振器、4………圧電体ウエハ、5………弾性表面波素子片、6………圧電体平板、10,11,12………IDT電極、13………電極指、15………酸化膜、19a………中心点、19b………中心線、20………反射器電極、23………導体ストリップ、30………ターミナル電極、32………反射器電極、34………交差導体、40………陽極酸化装置、41………酸化液層、42………酸化液、44………電源、46………金属クリップ、47………陰極電極板、48………電流計、49………電圧計、100………弾性表面波フィルタ、110………ボンディング用パッド、128………接着剤、129………ワイヤ、130………パッケージ、132………ベース部、134………外部端子、136………ボンディング用パッド、138………リッド。
Claims (6)
- 相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、中心周波数の異なる複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、
前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数が、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数より高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、
前記各共振器の電極を陽極酸化して、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、
を有することを特徴とする弾性表面波素子片の製造方法。 - 相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、
前記各共振器の電極をそれぞれ異なる電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程を有することを特徴とする弾性表面波素子片の製造方法。 - 相互に位相を反転させて電気的に並列接続した、複数の縦多重モード弾性表面波共振器につき、低周波側の前記共振器における高周波側の共振モード周波数と、高周波側の前記共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させて、弾性表面波素子片を製造する方法であって、
前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数が、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数より、高周波側に位置するように、前記各共振器の電極を形成する工程と、
前記高周波側の共振器の電極のみを陽極酸化することにより、または前記高周波側の共振器を前記低周波側の共振器より高電圧で陽極酸化することにより、前記低周波側の共振器における高周波側の共振モード周波数と、前記高周波側の共振器における低周波側の共振モード周波数とを一致させる工程と、
を有することを特徴とする弾性表面波素子片の製造方法。 - 請求項1ないし3のいずれかに記載の弾性表面波素子片の製造方法を使用して製造したことを特徴とする弾性表面波素子片。
- 請求項4に記載の弾性表面波素子片をパッケージの内部に実装し、前記弾性表面波素子片の前記各IDT電極と前記パッケージの外部端子とを導通可能としたことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
- 請求項5に記載の弾性表面波フィルタを使用して製造したことを特徴とする通信装置。
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JP2002236492A JP2004080261A (ja) | 2002-08-14 | 2002-08-14 | 弾性表面波素子片の製造方法、弾性表面波素子片、弾性表面波フィルタおよび通信装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007228013A (ja) * | 2006-02-21 | 2007-09-06 | Seiko Epson Corp | Fsk送受信装置 |
JP2009284554A (ja) * | 2009-09-03 | 2009-12-03 | Hitachi Media Electoronics Co Ltd | 弾性表面波装置、通信用フィルタ及び移動通信装置 |
-
2002
- 2002-08-14 JP JP2002236492A patent/JP2004080261A/ja active Pending
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