【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インクを用いたインクジェット記録において、記録媒体の前処理に用いられる水性プレコート液及び該水性プレコート液を用いたインクジェット記録方法に関し、詳しくは、プラスチック基材の表面やオフセット印刷物の印字部分（油性インク層）の表面のような撥水性を有する面に、良好なインクジェット画像を形成し得る水性プレコート液及びインクジェット記録方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、記録ヘッドの微小なノズルからインクの液滴を吐出させるインクジェット方式により、紙等の記録媒体にインクを付着させて印字を行う印刷方式である。インクジェット記録用のインクとしては、染料や顔料等の色材を水性媒体中に溶解又は分散させた水性インクが一般的であり、染料インクと顔料インクに大別される。これまで、色再現性や吐出安定性等に優れる染料インクが多用されてきたが、インクジェット記録技術のデジタル写真サービスや商業印刷等への用途拡大により、記録画像の長期保存性が重要視されるようになってきており、染料インクに比して耐水性や耐光性等に優れる顔料インクが使用されるようになってきている。
【０００３】
顔料インクを用いたインクジェット記録に関する改良技術として、特開平１０−１２０９５６号公報には、顔料インクによるインクジェット記録に先立って、記録ヘッドより金属塩（反応剤）を含有する水性の反応液を吐出させて、記録媒体に付着させることにより、発色性の向上、カラーブリード（カラー画像において、異色の境界部分で色が滲んだり不均一に混ざり合ったりする現象）や印刷ムラ（記録媒体表面の填料やサイズ剤等の不均一な分布に起因すると考えられる画像濃度の不均一性）の防止などを図る方法が開示されている。この方法は、記録媒体上で顔料インクと接触した反応剤が、インク成分の分散状態を破壊して凝集物を形成し、色材（顔料）が記録媒体中に浸透するのを抑制すると共に、未反応の反応液成分が、記録媒体上で皮膜を形成して色材の記録媒体への定着を促進することにより、高い色濃度で、カラーブリードや印刷ムラのない高品位のインクジェット画像を実現するものと考えられている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載の反応液のような記録媒体の前処理液、いわゆるプレコート液を用いたインクジェット記録方法では、プレコート液を記録ヘッドから安定的に吐出させ、記録媒体の被記録面に均一な塗布量で付着させることが重要となる。しかし、従来のプレコート液は、普通紙や塗工紙などの吸水性を有する記録媒体に塗布されることを前提にしており、撥水性を有する面、例えば、ポリエチレン等の樹脂製フィルムあるいはシートのようなプラスチック基材の表面に対しては、はじきや滲みが発生して均一に塗布することができず、適用範囲に限界があった。
【０００５】
また、チラシや雑誌などの印刷物を大量に作製する商業印刷分野では、オフセット印刷法やグラビア印刷法などが主流となっているが、最近では、インクジェット記録方法を一部に採り入れた新たな印刷形態も検討されている。この印刷形態は、記録媒体上に形成しようとする画像のうち、全てあるいはかなりの数の印刷物間で共通する部分をオフセット印刷法やグラビア印刷法などにより形成し、少ロット毎に記録パターンが異なる部分をインクジェット記録方法により形成するというものである。
【０００６】
例えば、ビンなどの容器に貼り付ける印刷ラベルを大量に作製する場合、先ず、容器の内容物の名称（商品名）や製造・販売会社名などのようなほぼ全ての印刷ラベルに共通する情報をラベルにオフセット印刷して、オフセット印刷物を大量に作製しておき、次いで、これらのオフセット印刷物に対し、インクジェット記録方法により、ロット番号や製造工場名などのような少数の印刷物間でのみ共通する情報をそれぞれ印刷して、目的とする印刷ラベルを作製する。このように、高速印刷性に優れたオフセット印刷法と、記録パターンの融通性が大きくオンデマンド少ロットの印刷需要に対応可能なインクジェット記録方法とをうまく組み合わせることにより、印刷作業を一層効率良く行うことができると共に、ページバリアブル対応も可能となる。
【０００７】
上記のような印刷形態におけるインクジェット記録についても、通常のインクジェット記録と同様に、高画質・高品位で長期保存が可能なインクジェット画像の出力が求められており、上述のプレコート液及び顔料インクを使用したインクジェット記録方法はその達成手段として好適である。しかし、従来のこの種のプレコート液は、オフセット印刷物のうち、油性インクであるオフセット印刷インクが付着していない非印刷部分には塗布できるが、該インクが付着し乾燥して油性インク層を形成している印刷部分の表面には、上述したプラスチック基材と同様に、はじきや滲みが発生して均一に塗布できないため、上記のような印刷形態においてインクジェット画像の画質や保存性の改善を図るには限界があった。
【０００８】
従って、本発明の目的は、紙などの吸水性のある記録媒体は勿論のこと、撥水性を有する面、例えば、プラスチック基材の表面や、オフセット印刷物やグラビア印刷物の印字部分のような油性インク層の表面などにも均一に塗布することができ、記録媒体の種類に拘わらず、高発色でインク滲みなどの無い高画質・高品位のインクジェット画像を提供することができる水性プレコート液及び該水性プレコート液を用いたインクジェット記録方法を提供することにある。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、顔料インク凝集剤として作用する金属塩を含有する水性プレコート液について種々検討した結果、更に非イオン性界面活性剤を含有し且つ該非イオン性界面活性剤のグリフィンの式により求められるＨＬＢ値と含有量（重量％）との積が特定範囲にあり、且つ表面張力が特定範囲にある水性プレコート液が、上記目的を達成し得ることを知見した。この種の水性プレコート液に界面活性剤を含有させて、一定レベルの吐出安定性や紙等の吸水性のある記録媒体上における乾燥性等を確保することは従来から知られているが、含有する非イオン性界面活性剤の上記ＨＬＢ値と含有量との積が特定範囲にあり且つ表面張力が特定範囲にある水性プレコート液が、プラスチック基材の表面や油性インク層の表面のような撥水性を有する面に均一に塗布できるという知見は未だ知られていない。
【００１０】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、撥水性を有する面にインクジェット方式により水性顔料インクを付着させてインクジェット画像を形成する前に、該面にインクジェット方式により塗布される水性プレコート液であって、金属塩及び非イオン性界面活性剤を含有し且つ該非イオン性界面活性剤のグリフィンの式により求められるＨＬＢ値と含有量（重量％）との積が０．２以上であり、且つ表面張力が２５ｍＮ／ｍ以下であることを特徴とする水性プレコート液、又は金属塩及び非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルを含有し且つ該ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルの含有量が０．０１〜５重量％であり、且つ表面張力が２５ｍＮ／ｍ以下であることを特徴とする水性プレコート液を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【００１１】
また、本発明は、撥水性を有する面に、上記水性プレコート液をインクジェット方式により塗布する前処理工程と、該面の該水性プレコート液が塗布された部分に、水性顔料インクを吐出して記録を行うインクジェット記録工程とを備えたことを特徴とするインクジェット記録方法を提供するものである。
【００１２】
【発明の実施の形態】
以下、先ず、本発明の水性プレコート液について説明する。
【００１３】
本発明の水性プレコート液は、水性顔料インクを用いたインクジェット記録において、記録媒体（被記録面）の前処理に用いられるもので、水以外の必須成分として金属塩及び非イオン性界面活性剤を含有する。
【００１４】
上記金属塩は、被記録面上に付着したインクジェット記録用の水性顔料インクを該被記録面上にて凝集させる性質（顔料インク凝集能）を有している。この「顔料インク凝集能」には、いわゆる自己分散型の顔料系色材を使用した水性顔料インクに対して、該顔料系色材自体に直接作用してこれを凝集させる性質も含まれるし、また、自己分散型ではない通常の顔料系色材を分散剤の作用により系中に分散させている水性顔料インクに対して、該分散剤を凝集させる結果として該顔料系色材を凝集させる性質も含まれる。要は、水性顔料インクの種類や組成に拘わらず、結果として印字後に顔料系色材を記録媒体上で凝集させることができれば、上記顔料インク凝集能を有していると言える。
【００１５】
金属塩としては、金属イオンと、これに結合する陰イオンとから構成され、水に可溶なものが好ましく用いられる。
【００１６】
上記金属イオンとしては、例えば、Ｋ＋、Ｎａ＋、Ｌｉ＋、Ｃａ２＋、Ｃｕ２＋、Ｎｉ２＋、Ｍｇ２＋、Ｚｎ２＋、Ｂａ２＋、Ｆｅ２＋、Ｚｒ２＋、Ａｌ３＋、Ｆｅ３＋、Ｃｒ３＋、Ｚｒ３＋、Ｚｒ４＋等が挙げられる。
また、上記陰イオンとしては、Ｃｌ−、ＮＯ３ −、Ｉ−、Ｂｒ−、ＣｌＯ３ −、ＣＨ３ＣＯＯ−、Ｆ−、ＳＯ４ ２−、ＳＯ３ ２−等が挙げられる。
【００１７】
上記カルボン酸イオン（陰イオン）としては、炭素数１〜６の飽和脂肪族モノカルボン酸及び炭素数６〜１０の炭素環式モノカルボン酸からなる群から選ばれる１種又は２種以上のカルボン酸から誘導されるものが好ましい。
炭素数１〜６の飽和脂肪族モノカルボン酸の好ましい例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ビバル酸、ヘキサン酸等が挙げられる。特に蟻酸、酢酸が好ましい。この炭素数１〜６の飽和脂肪族モノカルボン酸の飽和脂肪族炭化水素基上の水素原子は、水酸基で置換されていてもよく、そのようなカルボン酸の好ましい例としては、乳酸が挙げられる。
また、炭素数６〜１０の炭素環式モノカルボン酸の好ましい例としては、安息香酸、ナフトエ酸等が挙げられ、より好ましくは安息香酸である。
【００１８】
本発明で使用する金属塩は、無水物であろうと水和物であろうと構わない。金属塩として特に好ましいものとしては、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムが挙げられる。これらは、単独で用いることもできるし、２種以上を混合して用いることもできる。
【００１９】
金属塩の含有量は、使用する金属塩の種類などを考慮して、所定の顔料インク凝集効果が得られるように適宜調整すればよく、特に限定されないが、多すぎると水性プレコート液の吐出信頼性に劣るおそれがある。従って、金属塩の含有量は、水性プレコート液中、１〜２０重量％が好ましく、２〜８重量％が更に好ましい。
【００２０】
一方、非イオン性界面活性剤は、水性プレコート液に良好な吐出安定性、乾燥性及び濡れ性等を付与するために添加されるものである。本発明で用いられる非イオン性界面活性剤は、水溶液中で電離しない界面活性剤であり、該界面活性剤は、通常の界面活性剤である親水基と親油基をもった両親媒性物質に限定されるものではなく、低濃度で著しい表面活性（２相間の表面張力あるいは界面張力が大きく低下する現象をいう。界面活性ともいう）を示す物質であれば良い。
【００２１】
本発明の水性プレコート液は、上記非イオン性界面活性剤を含有し且つ該非イオン性界面活性剤のグリフィンの式により求められるＨＬＢ（親水親油バランス）値と含有量（重量％）との積Ａが０．２以上であり、且つ表面張力Ｂが２５ｍＮ／ｍ以下であることを特徴とする。積Ａ及び表面張力Ｂをそれぞれこのような範囲にすることにより、最低限必要な吐出安定性を確保しつつ、従来のこの種のプレコート液では不可能であったプラスチック基材の表面や油性インク層の表面のような撥水性を有する面への均一塗布が可能となり、プレコート液を使用するインクジェット記録方法の適用範囲を広げることができる。
【００２２】
上記グリフィンの式は、下記（式１）により、界面活性剤のＨＬＢ値を算出する。
【００２３】
【数１】
【００２４】
尚、水性プレコート液中に２種以上の非イオン性界面活性剤を含有させる場合は、下記（式２）により算出される平均ＨＬＢ値を、上記ＨＬＢ値として用いる。
【００２５】
【数２】
【００２６】
積Ａは、上記のように０．２以上が好ましいが、この値が大きすぎると、撥水面への濡れ性の改善にそれほど大きな効果が観られないばかりか、水性プレコート液が泡立ち易くなり、いわゆる誘発抜け（クリーニング動作中にノズルに気泡を巻き込み、ノズルから液が吐出されなくなる現象。ノズル抜けなどとも呼ばれる）を起こすなど、却って弊害が出る場合もあるので、好ましくは０．２〜３０、更に好ましくは０．７〜１５である。また、表面張力Ｂは、上記のように２５ｍＮ／ｍ以下が好ましいが、この値が小さすぎると、インクジェットヘッドのノズル開口から水性プレコート液を吐出させた時に、該ノズル開口の周縁部に濡れムラが生じ易くなり、液滴の飛翔方向が該濡れムラ部分側に偏向するいわゆる飛行曲がりを起こす場合もあるので、好ましくは２０〜２５ｍＮ／ｍである。表面張力Ｂの調整は、非イオン性界面活性剤や後述する湿潤剤、浸透剤などの各種添加剤の種類や含有量を適宜調整することにより行うことができる。
【００２７】
非イオン性界面活性剤の選択は、上記グリフィンの式より求められるＨＬＢ値を基準に、その含有量との積Ａが上記範囲となるように行う。該ＨＬＢ値は、好ましくは４〜１５である。
【００２８】
上記ＨＬＢ値が４〜１５である非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリシロキサン（上記ＨＬＢ値５〜７。該ＨＬＢ値はエーテル鎖やシロキサン鎖の長さによって変化する）、ポリオキシエチレンラウリルエーテル（上記ＨＬＢ値９．５。オキシエチレン単位の繰り返し数４）、ソルビタンモノラウレート（上記ＨＬＢ値８．６）、プロピレングリコールモノラウレート（上記ＨＬＢ値４．５）、ジエチレングリコールモノラウレート（上記ＨＬＢ値６．１）、ポリオキシエチレンノニルフェノール（上記ＨＬＢ値１３．０。オキシエチレン単位の繰り返し数９）等の他、エタノール（上記ＨＬＢ値７．９）、メタノール（上記ＨＬＢ値８．４）、ｎ−プロパノール（上記ＨＬＢ値７．４）等の水溶性低級アルコール等が挙げられ、何れも本発明において好ましく用いることができる。尚、カッコ内のＨＬＢ値は、辻薦著／乳化可溶化の技術／工学図書（株）刊行の第１２頁の記載から抜粋したものである。
【００２９】
上記の非イオン性界面活性剤のうち、特にポリエーテル変性ポリシロキサンは、少量添加で十分な効果が得られ、泡立ちも少ないため、好ましい。
【００３０】
また、非イオン性界面活性剤の含有量は、上記ＨＬＢ値との積Ａが上記範囲となるように調整すればよく特に限定されないが、一定量以上含有させても撥水面への塗布性などの改善効果に乏しく、あまりに含有量が多すぎると誘発抜けなどの弊害が発生するおそれがある。このような観点から、非イオン性界面活性剤の含有量は０．０１〜１０重量％とすることが好ましく、該非イオン性界面活性剤の臨界ミセル濃度（ＣＭＣ）が１０重量％未満である場合は、該臨界ミセル濃度を上限とすることが好ましい。ＣＭＣは、界面活性剤水溶液中において、ミセルと呼ばれる凝集した界面活性剤分子が現れ始める界面活性剤の濃度である。
【００３１】
ところで、フッ素系の非イオン性界面活性剤のように、非イオン性界面活性剤の中には上記グリフィンの式によりＨＬＢ値を算出できないもの（以下、ＨＬＢ値算出不可界面活性剤という）があるが、このようなＨＬＢ値算出不可界面活性剤の中にも、本発明で好適に使用できるものがある。例えば、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルは、水に可溶で少量添加で撥水面の塗布性改善に効果があり且つ泡立ちも少ないため、本発明に係る非イオン性界面活性剤として好適に使用できる。ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルの水性プレコート液中の含有量は、吐出安定性、撥水面への塗布性等のバランスの観点から、０．０１〜５重量％とする。また、ポリオキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルを含有する水性プレコート液の表面張力は２５ｍＮ／ｍ以下とし、好ましくは２０〜２５ｍＮ／ｍとする。
【００３２】
また、水性プレコート液の主溶媒となる水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水を用いることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
【００３３】
水性プレコート液には、吐出安定性や乾燥性等を一層高める観点から、上記の金属塩、非イオン性界面活性剤及び水以外に、添加剤として下記の湿潤剤及び／又は浸透剤の１種又は２種以上を含有させることができる。
【００３４】
上記湿潤剤としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、１，３−プロパンジオール、１，４−ブタンジオール、１，２−ヘキサンジオール、１，５−ペンタンジオール１，６−ヘキサンジオール、１，２，６−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール等の多価アルコール類；２−ピロリドン、Ｎ−メチル−２−ピロリドン、ε−カプロラクタム等のラクタム類；尿素、チオ尿素、エチレン尿素、１，３−ジメチルイミダゾリジノン類等の尿素類；マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトン、マルトース等の糖類等が挙げられる。
【００３５】
湿潤剤の含有量は、水性プレコート液中、好ましくは１〜５０重量％、更に好ましくは５〜３０重量％である。
【００３６】
上記浸透剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等が挙げられる。
【００３７】
浸透剤の含有量は、水性プレコート液中、好ましくは１〜５０重量％、更に好ましくは５〜３０重量％である。
【００３８】
水性プレコート液に含有させることができるその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、ｐＨ調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【００３９】
水性プレコート液の表面張力は上述した通りであるが、その他の物性値については、インクジェット方式による塗布時の吐出安定性、取扱性、塗布性、レベリング性等を十分なものとする観点から、下記の範囲にあることが好ましい。
・液温２０℃における粘度；２〜５ｍＰａ・ｓ
・ｐＨ；６．５〜１０
上記各物性値の調整は、上述した各成分の含有量の調整等により行うことができる。
【００４０】
本発明の水性プレコート液は、上述したように記録媒体の前処理に使用されるもので、普通紙、再生紙、インクジェット記録用紙、アート紙、コート紙などの吸水性のある一般印刷用紙の前処理液としても勿論用いることができるが、特に、プラスチック基材の表面や油性インク層の表面などのような、撥水性を有する面に対する前処理液として有効である。この「撥水性を有する面」とは、水接触角が２０度以上の面をいう。この水接触角は、市販の接触角計を用い、純水を測定サンプルの表面に滴下して１０秒後に該接触角計を用いて測定されるものである。１試料にたいして測定を１０回行い、１回の測定毎に純水で表面が濡れていない未測定の測定サンプルに交換して測定される接触角の平均値を水接触角とする。水接触角の測定に使用可能な市販の接触角計の例として協和界面科学（株）製、型式ＣＡ−Ｄが挙げられる。
【００４１】
上記プラスチック基材としては、例えば、ポリプロピレン（ＰＰ）、ポリエチレン（ＰＥ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）等の樹脂製のフィルムやシート、合成紙の他、樹脂被覆紙（レジンコート紙）などを用いることができる。上記プラスチック基材として使用可能な市販の合成紙としては、例えば、ユポ（王子油化製）やピーチコート（東洋紡製）などが挙げられる。尚、上記プラスチック基材の透明性は特に限定されず、透明でも不透明でもよい。
【００４２】
また、上記油性インク層とは、油性インクが紙やフィルムなどの記録用紙に付着し、乾燥して該記録用紙上に固着することにより形成されるもので、印刷物の画像形成部分（印刷部分）である。油性インクは、ケトン類やアルコール類や酢酸エチルなどの有機溶剤に染料や顔料を溶解又は分散させたインクであり、オフセット印刷やグラビア印刷などで印刷インクとして使用されているが、本発明の適用範囲はオフセット印刷物及びグラビア印刷物に限定されるものではない。また上記記録用紙は、油性インクによる印字が可能なものであれば良く、特に限定されない。
【００４３】
次に、上記水性プレコート液を用いた本発明のインクジェット記録方法について説明する。
【００４４】
本発明のインクジェット記録方法は、上記のプラスチック基材の表面や油性インク層の表面などのような撥水性を有する面（以下、撥水面ともいう）、即ち、上記水接触角が２０度以上の面に、上記水性プレコート液をインクジェット方式により塗布する前処理工程と、該撥水面の該水性プレコート液が塗布された部分に、水性顔料インクを吐出して記録を行うインクジェット記録工程とを備える。
【００４５】
上記前処理工程において、水性プレコート液の塗布は、水性顔料インクの吐出と同様に、公知のインクジェット方式の記録装置（インクジェットプリンタ）を用いてインクジェット方式により行われる。インクジェット方式による塗布は、低塗布量のコントロールが容易、塗布パターンや塗布量の融通性が高いといった特長があり、この種の水性プレコート液の塗布に最適である。インクジェットプリンタのインク吐出制御方式には、圧電素子を用いて電圧により制御する方式や、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、本発明の水性プレコート液は何れの方式でも使用できる。
【００４６】
水性プレコート液は、次のインクジェット記録工程でプラスチック基材等に打ち込まれる水性顔料インクを、該プラスチック基材等上にて凝集させるためのものであるから、少なくとも水性顔料インクを付着させる部分（インクジェット画像を形成する部分）に塗布する必要がある。塗布量は、水性顔料インクの付着量に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、固形分換算で０．５〜２ｇ／ｍ２程度が好ましい。
【００４７】
上記インクジェット記録工程は、通常のインクジェット記録と同様に、公知のインクジェットプリンタを用いて行うことができる。インクジェットプリンタには、ノズルから一定時間間隔でインクを吐出し続け、吐出されたインク液滴を偏向させることにより画像を形成するコンティニュアス方式のものと、画像データに対応してインクを吐出させるオンデマンド方式のものがあり、何れの方式でもよいが、細かい打ち込み制御が可能、廃液量が少ない等の点で、オンデマンド方式が好ましい。また、インク吐出制御方式には、圧電素子を用いて電圧により制御する方式や、発熱抵抗素子を用いて熱エネルギーにより制御する方式等があるが、特に制限されない。
【００４８】
上記インクジェット記録工程で使用する水性顔料インクは、水に顔料系色材を含有させた水性インクであり、通常、保湿や浸透調整等のため、各種有機溶剤や界面活性剤等が更に含有されている。顔料系色材は、界面活性剤等の分散剤が無添加あるいはごく少量添加の水性媒体中に分散及び／又は溶解が可能ないわゆる自己分散型顔料（表面改質顔料などとも呼ばれる）でも良く、自己分散型ではない通常の顔料でも良い。また、カラー画像を形成する場合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの減法混色の３原色の水性顔料インク、あるいはこれにブラックその他の色を加えた４色以上の水性顔料インクを用いる。
【００４９】
本発明のインクジェット記録方法は、例えば、次のようにして実施することができる。
【００５０】
図１は、本実施形態のインクジェット記録方法の実施に使用するインクジェットプリンタの要部の斜視図である。図１に示すプリンタ１０は、紙送りモータ１１で駆動されるプラテンローラ１２によりプラスチックフィルムＦを矢標Ａ方向に搬送し、キャリッジ１３上に搭載された記録ヘッド２０が、プラスチックフィルムＦの被記録面に、インクタンク３０から供給される水性プレコート液及び各色水性顔料インクをそれぞれ吐出した後、これを搬出するようになしてある。キャリッジ１３は、キャリッジベルト１４を介してキャリッジモータ１５に連結されており、ガイドレール１６上を摺動して、矢標Ａ方向と直交する矢標Ｂ１又はＢ２方向に往復走査するようになっている。
【００５１】
図２は、記録ヘッド２０のノズル開口面２０ａの概略正面図である。記録ヘッド２０は、複数のインクジェットヘッドを主走査方向に並列に配置して一体化させたマルチヘッドである。図２中、２１及び２６は水性プレコート液を吐出するノズル列であり、２２，２３，２４，２５は、それぞれ、イエロー（Ｙ）、マゼンタ（Ｍ）、シアン（Ｃ）、ブラック（Ｋ）の顔料インクを吐出するノズル列である。このように、主走査方向の両端のノズル列を水性プレコート液用とすることで双方向（Ｂ１及びＢ２）印字が可能となり、印字高速性が上がる。
【００５２】
このような構成のプリンタ１０において、記録ヘッド２０は、矢標Ｂ１方向に走査される場合は、プラスチックフィルムＦの被記録面に対し、先ず、ノズル列２１より水性プレコート液をベタ打ちして帯状の前処理領域を形成していき（前処理工程）、続いて、該前処理領域に対して、受信した画像データに基づき、ノズル列２２，２３，２４，２５よりＹ、Ｍ、Ｃ、Ｋの各色水性顔料インクを順次打ち込んでインクジェット記録を行う（インクジェット記録工程）。矢標Ｂ１方向に走査される場合は、ノズル列２６は使用しない。記録ヘッド２０は、記録領域の矢標Ｂ１方向の終端に到達し、プラスチックフィルムＦが前処理領域の幅に略等しい送り量でプラテンローラ１２により矢標Ａ方向に搬送された後、矢標Ｂ２方向に走査される。この場合、先ず、ノズル列２６より水性プレコート液をベタ打ちして帯状の前処理領域を形成していき（前処理工程）、続いて、該前処理領域に対して、ノズル列２５，２４，２３，２２よりＫ、Ｃ、Ｍ、Ｙの各色顔料インクを順次打ち込んでインクジェット記録を行う（インクジェット記録工程）。矢標Ｂ２方向に走査される場合は、ノズル列２１は使用しない。このような記録ヘッド２０の双方向（Ｂ１及びＢ２方向）走査、及び紙送り動作が繰り返されることにより、目的とする記録物が得られる。
【００５３】
尚、本発明のインクジェット記録方法は、上記撥水面に、上記水性プレコート液をインクジェット方式により塗布する前処理工程と、該撥水面の該水性プレコート液が塗布された部分に、水性顔料インクを吐出して記録を行うインクジェット記録工程とを備えていればよく、使用する水性顔料インクの種類や数、水性プレコート液の塗布（打ち込み）パターン、インクの吐出順序等は、上記実施形態に制限されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、本発明の実施形態は、図１に示す如き構成のインクジェットプリンタを用いたものに限定されるものではない。
【００５４】
【実施例】
以下に、本発明の実施例及び本発明の効果を示す試験例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、斯かる実施例により何等制限されるものではない。
【００５５】
〔実施例１〜６及び比較例１〜４〕
複数の水性プレコート液を調製し、それぞれ実施例１〜６及び比較例１〜４のサンプルとした。各サンプルの組成及び物性を下記に示す。尚、下記カッコ内のＨＬＢ値は、上記（式１）により算出した値である。
【００５６】
実施例１は、積Ａ＝６．９×０．１２＝０．８２８、表面張力Ｂは２２．５ｍＮ／ｍであった。
【００５７】
実施例２は、積Ａ＝６．９×０．０８＝０．５５２、表面張力Ｂは２１．４ｍＮ／ｍであった。
【００５８】
実施例３は、積Ａ＝７．９×３．０＝２３．７、表面張力Ｂは２３．７ｍＮ／ｍであった。
【００５９】
実施例４は、積Ａ＝６．９×５．０＝３４．５、表面張力Ｂは２０．９ｍＮ／ｍであった。
【００６０】
実施例５は、積Ａ＝６．９×０．１２＝０．８２８、表面張力Ｂは１９．７ｍＮ／ｍであった。
【００６１】
実施例６は、積Ａは算出不可、表面張力Ｂは２１．２ｍＮ／ｍであった。
【００６２】
比較例１は、積Ａ＝６．９×０．０１＝０．０６９、表面張力Ｂは２４．８ｍＮ／ｍであった。
【００６３】
比較例２は、積Ａ＝６．９×０．０５＝０．３４５、表面張力Ｂは２７．９ｍＮ／ｍであった。
【００６４】
比較例３は、積Ａは算出不可（非イオン性界面活性剤含有せず）、表面張力Ｂは２５．５ｍＮ／ｍであった。
【００６５】
比較例４は、積Ａは算出不可、表面張力Ｂは２３．７ｍＮ／ｍであった。
【００６６】
実施例１〜６及び比較例１〜４の各水性プレコート液を用いて、下記の手順で、各水性プレコート液につき３種類の記録物Ａ〜Ｃを作製した。
【００６７】
（記録物の作製手順）
インクジェットプリンタ（「ＥＭ９３０Ｃ」セイコーエプソン製）のシアンインクと水性プレコート液とを入れ替えたものを用いて、下記の３種の記録媒体Ａ〜Ｃそれぞれの被記録面の全面に、水性プレコート液を、シアン１００％となるベタパターンで乾燥後の塗布量が１．１ｇ／ｍ２となるように打ち込んで塗布した（前処理工程）。次いで、６色顔料インクジェットプリンタ（「ＭＣ２０００」セイコーエプソン製）を用いて、水性プレコート液が塗布された記録媒体Ａ〜Ｃの各被記録面に、ＣＭＹＫ各色の１００％カラーパッチを印刷し（インクジェット記録工程）、記録媒体の異なる３種類の記録物Ａ〜Ｃを作製した。
【００６８】
・記録媒体Ａ：インクジェット記録用紙「ＰＭ写真用紙」セイコーエプソン製
・記録媒体Ｂ：下記手順で作製したオフセットベタ印刷物
・記録媒体Ｃ：ＰＥＴフィルム（コロナ放電処理無し）
オフセット印刷物の作製手順；マンローランド社製２色オフセット印刷機を用いて、記録用紙（「ＯＫトップコートＮ」坪量１２８ｇ／ｍ２、王子製紙製）の被記録面に対して、油性インク（「ハイエコー シアン」東洋インキ製）を塗布量１．２ｇ／ｍ２でベタ印刷して、オフセットベタ印刷物を作製した。
【００６９】
上記の各記録物Ａ〜Ｃについて、発色性及びカラーブリードを下記の方法で評価した。尚、前処理工程を行わない（水性プレコート液を塗布しない）以外は上記（記録物の作製手順）と同様にして、記録媒体の異なる３種類の記録物Ａ〜Ｃを作製し、これらをブランクとして同様に評価した。
また、実施例１〜６及び比較例１〜４の各水性プレコート液について、吐出安定性及び抑泡性を下記の方法で評価した。
これらの結果を下記表１に示す。
【００７０】
（発色性の評価方法）
記録物のＣＭＹＫの各カラーパッチについて、グレタグマクベス社製のスペクトロリーノＳＰＭ−５０を用い、視野角２度、光源Ｄ５０、フィルター無しの条件で反射光学濃度（ＯＤ値）を測定し、下記評価基準により評価した。
評価基準
Ａ：ＣＭＹＫの４色のＯＤ値の合計が７．５を超える。発色性良好。
Ｂ：４色のＯＤ値の合計が７．５〜６．０。実用上問題なし。
Ｃ：４色のＯＤ値の合計が６．０未満（平均でＯＤ値１．５未満）。実用不可。
【００７１】
（カラーブリードの評価方法）
記録物について、イエロー領域とブラック領域とが隣接する部分（画質低下が最も判別し易い領域）をそれぞれ目視により観察し、それらの色境界での不均一な色混じりの程度を下記評価基準により評価した。
評価基準
Ａ：色混じりの無い、良好な画像が得られた。
Ｂ：色混じりが僅かに生じた。実用上問題なし。
Ｃ：色の境界がはっきりしないほど色混じりが起こった。実用不可。
【００７２】
（吐出安定性の評価方法）
インクジェットプリンタＭＣ２０００のインクジェットヘッドの主走査方向両端に位置するインクカートリッジ内のインクと水性プレコート液とを入れ替えて、図２に示すようなノズル配置とした後、ＣＭＹＫの４色を用いたコンポジットパターン上に水性プレコート液を打ち込む印字パターンで、ＯＫトップコートＮを１０００枚印字してこれらの印字面を目視で観察し、下記評価基準により評価した。
評価基準
Ａ：水性プレコート液の誘発抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が５箇所以内であり、吐出不良を起こした際にクリーニング動作３回以内で復帰した。吐出安定性に優れる。
Ｂ：水性プレコート液の誘発抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が５箇所以内であり、吐出不良を起こした際にクリーニング動作５回以内で復帰した。実用上問題なし。
Ｃ：水性プレコート液の誘発抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が５箇所を超えており、吐出不良を起こした際にクリーニング動作５回超で復帰した。実用限界。
Ｄ：水性プレコート液の誘発抜けや飛行曲がりの発生が認められた箇所が５箇所を超えており、吐出不良を起こした際にクリーニング動作５回超でも復帰しない。実用不可。
【００７３】
（抑泡性の評価方法）
透明なガラス製容器（半径２ｃｍの円筒形状）に水性プレコート液を所定量収容し、これを平らな場所に置いて、液面高さＨ０（ｃｍ）を測定した。次に、この容器をよく振って水性プレコート液を十分に攪拌した後、再び平らな場所に置いて１分間静置し、泡立ち部分も含めた液面高さＨ１（ｃｍ）を測定した。そして、Ｈ０及びＨ１より、発泡率（％）〔＝（Ｈ１／Ｈ０）×１００〕を求め、下記評価基準により評価した。
評価基準
Ａ：発泡率１００％且つ液面に泡が全く観られない。抑泡性良好。
Ｂ：発泡率１００％であるが、直径数ミリの大きな泡が液面にいくつか観られる。実用上問題なし。
Ｃ：発泡率１００％超１０１％以下。実用限界。
Ｄ：発泡率が１０１％を超え、液面の全面に泡が発生している。実用不可。
【００７４】
【表１】
【００７５】
【発明の効果】
本発明の水性プレコート液は、紙などの吸水性のある記録媒体は勿論のこと、撥水性を有する面、例えば、プラスチック基材の表面や、オフセット印刷物やグラビア印刷物の印字部分のような油性インク層の表面などにも均一に塗布することができ、記録媒体の種類に拘わらず、高発色でインク滲みなどの無い高画質・高品位のインクジェット画像を提供することができる。また、このプレコート液は、インクジェット方式による塗布時の吐出安定性にも優れており、ノズルの目詰まり、誘発抜け、飛行曲がりなどを起こすおそれがない。
【００７６】
また、本発明のインクジェット記録方法によれば、上記水性プレコート液と、耐水性や耐光性等に優れた顔料インクとを用いてインクジェット画像を形成するので、画質面のみならず保存性の点でも優れた記録物を得ることができる。また、このインクジェット記録方法は、比較的簡易な工程から構成されており、作業性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明のインクジェット記録方法の一実施形態に使用するインクジェットプリンタの要部の斜視図である。
【図２】図１に示すインクジェットプリンタにおける記録ヘッドのノズル開口面の概略正面図である。
【符号の説明】
１０ インクジェットプリンタ
１１ 紙送りモータ
１２ プラテンローラ
１３ キャリッジ
１４ キャリッジベルト
１５ キャリッジモータ
１６ ガイドロール
２０ 記録ヘッド
２０ａ ノズル開口面
２１〜２６ ノズル
３０ インクタンク
Ｆ プラスチックフィルム[0001]
TECHNICAL FIELD OF THE INVENTION
The present invention relates to an aqueous precoat liquid used for pretreatment of a recording medium and an ink jet recording method using the aqueous precoat liquid in inkjet recording using an aqueous pigment ink, and more particularly, to the surface of a plastic substrate or an offset printed matter. The present invention relates to an aqueous precoat liquid capable of forming a good ink jet image on a surface having water repellency such as a surface of a printed portion (oil-based ink layer) and an ink jet recording method.
[0002]
[Prior art]
The ink jet recording method is a printing method in which ink is attached to a recording medium such as paper to perform printing by an ink jet method in which ink droplets are ejected from minute nozzles of a recording head. Ink jet recording inks are generally aqueous inks in which coloring materials such as dyes and pigments are dissolved or dispersed in an aqueous medium, and are broadly classified into dye inks and pigment inks. Until now, dye inks with excellent color reproducibility and ejection stability have been frequently used, but long-term storability of recorded images is regarded as important due to the expanded use of inkjet recording technology in digital photography services and commercial printing. As a result, pigment inks having better water resistance and light resistance than dye inks have been used.
[0003]
As an improved technique relating to ink jet recording using pigment ink, Japanese Patent Application Laid-Open No. H10-120956 discloses that an aqueous reaction liquid containing a metal salt (reactant) is ejected from a recording head prior to ink jet recording using pigment ink. By adhering to the recording medium, the coloring property is improved, color bleeding (a phenomenon in which the color bleeds or mixes unevenly at the boundary between different colors in a color image) and printing unevenness (filler or A method for preventing image density non-uniformity, which is considered to be caused by non-uniform distribution of a sizing agent or the like, is disclosed. According to this method, the reactant in contact with the pigment ink on the recording medium destroys the dispersed state of the ink components to form aggregates, and suppresses the penetration of the coloring material (pigment) into the recording medium. Unreacted reaction liquid components form a film on the recording medium to promote fixation of the coloring material to the recording medium, resulting in high-quality, high-quality inkjet images without color bleed or print unevenness. It is thought to be.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
In an ink jet recording method using a pretreatment liquid for a recording medium such as a reaction liquid described in the above-mentioned publication, a so-called precoat liquid, the precoat liquid is stably discharged from a recording head, and a uniform coating is performed on a recording surface of the recording medium. It is important to deposit in quantity. However, the conventional precoat liquid is premised on being applied to a water-absorbing recording medium such as plain paper or coated paper, and has a water-repellent surface, for example, a resin film or sheet of polyethylene or the like. Repelling and bleeding occur on the surface of such a plastic substrate, making it impossible to apply the resin uniformly, which limits the range of application.
[0005]
In the commercial printing field, where large volumes of printed materials such as flyers and magazines are produced, offset printing and gravure printing are the mainstream, but recently, a new printing form that partially adopted the inkjet recording method Are also being considered. In this printing mode, of the images to be formed on the recording medium, a part common to all or a considerable number of printed materials is formed by an offset printing method, a gravure printing method, or the like, and the recording pattern differs for each small lot. The portion is formed by an inkjet recording method.
[0006]
For example, when producing a large number of printed labels to be attached to containers such as bottles, first, information common to almost all printed labels, such as the name of the contents of the container (product name) and the name of the manufacturing and sales company. Offset printing is performed on labels to produce a large number of offset printed materials, and then these offset printed materials are subjected to an inkjet recording method, such as information common to only a small number of printed materials, such as lot numbers and manufacturing factory names. Are printed, respectively, to produce a desired printed label. As described above, the printing operation is more efficiently performed by successfully combining the offset printing method having excellent high-speed printability and the ink jet recording method capable of responding to the demand for printing on a small lot on demand with a large recording pattern flexibility. And page variable support.
[0007]
As for the inkjet recording in the above-described printing mode, similarly to ordinary inkjet recording, output of an inkjet image capable of long-term storage with high image quality, high quality is required, and the above-described precoat liquid and pigment ink are used. The ink jet recording method described above is suitable as a means for achieving this. However, this kind of conventional precoat liquid can be applied to the non-printed portion of the offset printed matter where the offset printing ink, which is an oil-based ink, is not attached, but the ink is attached and dried to form an oil-based ink layer. As in the case of the above-mentioned plastic base material, repelling and bleeding occur on the surface of the printed portion and cannot be applied uniformly, so that the image quality and storability of the inkjet image are improved in the printing form as described above. Had limitations.
[0008]
Accordingly, an object of the present invention is to provide a recording medium having water absorbency, such as paper, as well as a surface having water repellency, for example, a surface of a plastic substrate, or an oil-based ink such as a printed portion of an offset print or a gravure print. Aqueous precoat liquid and an aqueous precoat liquid that can be applied evenly on the surface of a layer and can provide a high-quality, high-quality inkjet image free of ink bleeding and the like regardless of the type of recording medium. An object of the present invention is to provide an ink jet recording method using a precoat liquid.
[0009]
[Means for Solving the Problems]
The present inventors have conducted various studies on an aqueous precoat liquid containing a metal salt that acts as a pigment ink coagulant, and as a result, furthermore, a nonionic surfactant is contained and the nonionic surfactant is obtained by the griffin formula. It has been found that an aqueous precoat liquid having a product of the obtained HLB value and the content (% by weight) in a specific range and a surface tension in a specific range can achieve the above object. It is conventionally known that a surfactant is contained in this type of aqueous precoat liquid to ensure a certain level of ejection stability and drying property on a water-absorbing recording medium such as paper. The aqueous precoat liquid in which the product of the above-mentioned HLB value and the content of the nonionic surfactant is in a specific range and the surface tension is in a specific range may cause repellency such as the surface of a plastic substrate or the surface of an oil-based ink layer. The knowledge that it can be uniformly applied to a water-based surface has not yet been known.
[0010]
The present invention has been made based on the above findings, and before forming an inkjet image by attaching an aqueous pigment ink to the surface having water repellency by an inkjet method, an aqueous precoat liquid applied to the surface by an inkjet method. A metal salt and a nonionic surfactant, wherein the product of the HLB value and the content (% by weight) of the nonionic surfactant determined by the Griffin formula is 0.2 or more; and An aqueous precoat liquid characterized by having a surface tension of 25 mN / m or less, or containing a metal salt and polyoxyethylene perfluoroalkyl ether as a nonionic surfactant, and containing the polyoxyethylene perfluoroalkyl ether Wherein the amount is 0.01 to 5% by weight and the surface tension is 25 mN / m or less. By providing Rekoto solution is obtained by achieving the above object.
[0011]
Further, the present invention provides a pretreatment step of applying the aqueous precoat liquid on a surface having water repellency by an inkjet method, and recording by discharging an aqueous pigment ink on a portion of the surface where the aqueous precoat liquid is applied. And an ink jet recording step of performing the above.
[0012]
BEST MODE FOR CARRYING OUT THE INVENTION
Hereinafter, the aqueous precoat liquid of the present invention will be described first.
[0013]
The aqueous precoat liquid of the present invention is used for pretreatment of a recording medium (recording surface) in inkjet recording using an aqueous pigment ink, and contains a metal salt and a nonionic surfactant as essential components other than water. contains.
[0014]
The metal salt has a property of aggregating the aqueous pigment ink for inkjet recording adhered on the recording surface on the recording surface (pigment ink aggregation ability). This `` pigment ink aggregating ability '' includes the property of directly acting on the pigment-based coloring material itself to aggregate the aqueous pigment ink using a so-called self-dispersion type pigment-based coloring material, In addition, for a water-based pigment ink in which a normal non-self-dispersing pigment-based colorant is dispersed in a system by the action of a dispersant, the property of aggregating the pigment-based colorant as a result of aggregating the dispersant. Is also included. In short, regardless of the type and composition of the water-based pigment ink, if the pigment-based coloring material can be agglomerated on the recording medium after printing, it can be said that the pigment ink has the above-described pigment ink aggregating ability.
[0015]
As the metal salt, those which are composed of a metal ion and an anion bonded thereto and are soluble in water are preferably used.
[0016]
Examples of the metal ion include K+, Na+, Li+, Ca2+, Cu2+, Ni2+, Mg2+, Zn2+, Ba2+, Fe2+, Zr2+, Al3+, Fe3+, Cr3+, Zr3+, Zr4+And the like.
Further, as the anion, Cl is used.−, NO3 −, I−, Br−, ClO3 −, CH3COO−, F−, SO4 2-, SO3 2-And the like.
[0017]
As the carboxylate ion (anion), one or more carboxylic acids selected from the group consisting of saturated aliphatic monocarboxylic acids having 1 to 6 carbon atoms and carbocyclic monocarboxylic acids having 6 to 10 carbon atoms Those derived from acids are preferred.
Preferred examples of the saturated aliphatic monocarboxylic acid having 1 to 6 carbon atoms include formic acid, acetic acid, propionic acid, butyric acid, isobutyric acid, valeric acid, isovaleric acid, bivalic acid, hexanoic acid and the like. Particularly, formic acid and acetic acid are preferred. The hydrogen atom on the saturated aliphatic hydrocarbon group of the saturated aliphatic monocarboxylic acid having 1 to 6 carbon atoms may be substituted with a hydroxyl group. Preferred examples of such a carboxylic acid include lactic acid. .
Preferred examples of the carbocyclic monocarboxylic acid having 6 to 10 carbon atoms include benzoic acid and naphthoic acid, and more preferably benzoic acid.
[0018]
The metal salt used in the present invention may be anhydrous or hydrate. Particularly preferred metal salts include magnesium chloride, magnesium sulfate, magnesium nitrate, magnesium acetate, magnesium bromide, calcium nitrate, calcium acetate, aluminum chloride, and aluminum nitrate. These can be used alone or as a mixture of two or more.
[0019]
The content of the metal salt may be appropriately adjusted in consideration of the type of the metal salt to be used and the like so as to obtain a predetermined pigment ink aggregation effect, and is not particularly limited. It may be inferior in property. Therefore, the content of the metal salt in the aqueous precoat liquid is preferably 1 to 20% by weight, more preferably 2 to 8% by weight.
[0020]
On the other hand, the nonionic surfactant is added to impart good ejection stability, drying property, wettability and the like to the aqueous precoat liquid. The nonionic surfactant used in the present invention is a surfactant that does not ionize in an aqueous solution, and the surfactant is an amphiphilic substance having a hydrophilic group and a lipophilic group, which are ordinary surfactants. The substance is not limited to this, and any substance may be used as long as it exhibits a remarkable surface activity at a low concentration (a phenomenon in which the surface tension or interfacial tension between two phases is greatly reduced; also referred to as surface activity).
[0021]
The aqueous precoat liquid of the present invention contains the above nonionic surfactant, and is the product of the HLB (hydrophilic lipophilic balance) value and the content (% by weight) of the nonionic surfactant obtained by the Griffin formula. A is 0.2 or more and surface tension B is 25 mN / m or less. By setting the product A and the surface tension B in such ranges respectively, the minimum required ejection stability can be ensured, and the surface of a plastic substrate or oil-based ink which cannot be obtained with a conventional precoat liquid of this type. Uniform application to a water-repellent surface such as the surface of a layer becomes possible, and the application range of an ink jet recording method using a precoat liquid can be expanded.
[0022]
The Griffin formula calculates the HLB value of the surfactant by the following (Formula 1).
[0023]
(Equation 1)
[0024]
When two or more nonionic surfactants are contained in the aqueous precoat liquid, the average HLB value calculated by the following (Equation 2) is used as the above HLB value.
[0025]
(Equation 2)
[0026]
The product A is preferably 0.2 or more as described above. However, if this value is too large, not only a large effect is not observed in improving the wettability to the water-repellent surface, but also the aqueous precoat liquid tends to foam, In some cases, adverse effects may occur, such as so-called induced omission (a phenomenon in which bubbles are caught in the nozzles during the cleaning operation and the liquid is not discharged from the nozzles; this is also referred to as nozzle omission). More preferably, it is 0.7 to 15. As described above, the surface tension B is preferably 25 mN / m or less. If the value is too small, when the aqueous precoat liquid is discharged from the nozzle opening of the inkjet head, the peripheral edge of the nozzle opening has uneven wetting. Is more likely to occur, so that the flight direction of the droplet may be deflected to the uneven wetting portion side, that is, a so-called flight bend may occur. Therefore, it is preferably 20 to 25 mN / m. The surface tension B can be adjusted by appropriately adjusting the types and contents of various additives such as a nonionic surfactant and a wetting agent and a penetrant described later.
[0027]
The selection of the nonionic surfactant is performed such that the product A of the nonionic surfactant and the content thereof is in the above range based on the HLB value obtained from the above Griffin equation. The HLB value is preferably from 4 to 15.
[0028]
Examples of the nonionic surfactant having an HLB value of 4 to 15 include polyether-modified polysiloxane (the HLB value of 5 to 7; the HLB value changes depending on the length of an ether chain or a siloxane chain), Polyoxyethylene lauryl ether (the above HLB value: 9.5; number of repeating oxyethylene units: 4), sorbitan monolaurate (the above HLB value: 8.6), propylene glycol monolaurate (the above HLB value: 4.5), diethylene glycol In addition to monolaurate (having an HLB value of 6.1), polyoxyethylene nonylphenol (having an HLB value of 13.0, and the number of oxyethylene units repeated 9), ethanol (having an HLB value of 7.9), and methanol (having an HLB value of) Water soluble lower alcohols such as 8.4) and n-propanol (the above HLB value of 7.4). And the like, all of which it can be used preferably in the present invention. The HLB values in parentheses are excerpted from the description on page 12 of Recommended by Tsuji / Emulsion solubilization technology / Kogaku Tosho Co., Ltd.
[0029]
Among the above nonionic surfactants, polyether-modified polysiloxanes are particularly preferable because a sufficient effect can be obtained by adding a small amount thereof and foaming is small.
[0030]
The content of the nonionic surfactant is not particularly limited as long as the product A of the nonionic surfactant and the HLB value is within the above range. Is insufficient, and if the content is too large, adverse effects such as induced omission may occur. From such a viewpoint, the content of the nonionic surfactant is preferably 0.01 to 10% by weight, and when the critical micelle concentration (CMC) of the nonionic surfactant is less than 10% by weight. Preferably, the upper limit is the critical micelle concentration. CMC is the concentration of surfactant in an aqueous surfactant solution at which aggregated surfactant molecules called micelles begin to appear.
[0031]
Incidentally, some nonionic surfactants, such as fluorine-based nonionic surfactants, for which the HLB value cannot be calculated by the above-mentioned Griffin formula (hereinafter referred to as HLB value non-calculable surfactants). However, some of such surfactants whose HLB value cannot be calculated can be suitably used in the present invention. For example, polyoxyethylene perfluoroalkyl ether is soluble in water, has a small amount of addition, is effective in improving the coating properties of the water-repellent surface, and has little foaming. Therefore, it can be suitably used as the nonionic surfactant according to the present invention. . The content of the polyoxyethylene perfluoroalkyl ether in the aqueous precoat liquid is set to 0.01 to 5% by weight from the viewpoint of the balance between the ejection stability and the applicability to the water-repellent surface. The surface tension of the aqueous precoat liquid containing polyoxyethylene perfluoroalkyl ether is 25 mN / m or less, preferably 20 to 25 mN / m.
[0032]
In addition, it is preferable to use pure water such as ion-exchanged water, ultrafiltration water, reverse osmosis water, or distilled water or ultrapure water as the main solvent of the aqueous precoat liquid. In addition, water sterilized by ultraviolet irradiation, addition of hydrogen peroxide, or the like is preferable in that mold and bacteria are prevented from being generated and long-term storage is possible.
[0033]
In order to further enhance the ejection stability and drying properties, etc., the aqueous precoat liquid contains one of the following wetting agents and / or penetrants as additives in addition to the above-mentioned metal salt, nonionic surfactant and water. Alternatively, two or more kinds can be contained.
[0034]
Examples of the wetting agent include glycerin, ethylene glycol, diethylene glycol, triethylene glycol, tetraethylene glycol, polyethylene glycol, propylene glycol, dipropylene glycol, polypropylene glycol, 1,3-propanediol, 1,4-butanediol, Polyhydric alcohols such as 1,2-hexanediol, 1,5-pentanediol 1,6-hexanediol, 1,2,6-hexanetriol, thioglycol and hexylene glycol; 2-pyrrolidone, N-methyl- Lactams such as 2-pyrrolidone and ε-caprolactam; ureas such as urea, thiourea, ethylene urea, and 1,3-dimethylimidazolidinone; saccharides such as maltitol, sorbitol, gluconolactone, and maltose; It is below.
[0035]
The content of the wetting agent is preferably 1 to 50% by weight, more preferably 5 to 30% by weight in the aqueous precoat liquid.
[0036]
Examples of the penetrant include ethylene glycol monomethyl ether, ethylene glycol monobutyl ether, diethylene glycol monoethyl ether, diethylene glycol monobutyl ether, triethylene glycol monomethyl ether, triethylene glycol monoethyl ether, triethylene glycol monobutyl ether, propylene glycol monobutyl ether And alkyl ethers of polyhydric alcohols such as dipropylene glycol monobutyl ether.
[0037]
The content of the penetrant in the aqueous precoat liquid is preferably 1 to 50% by weight, more preferably 5 to 30% by weight.
[0038]
Other additives that can be included in the aqueous precoat liquid include, for example, ultraviolet absorbers, light stabilizers, quenchers, antioxidants, waterproofing agents, fungicides, preservatives, thickeners, fluidity Examples include improvers, pH adjusters, defoamers, foam inhibitors, leveling agents, antistatic agents and the like.
[0039]
The surface tension of the aqueous precoat liquid is as described above, but for the other physical property values, from the viewpoint of sufficient ejection stability at the time of application by the inkjet method, handleability, applicability, leveling property, etc., the following Is preferably within the range.
・ Viscosity at a liquid temperature of 20 ° C .; 2 to 5 mPa · s
PH: 6.5 to 10
The adjustment of each physical property value can be performed by adjusting the content of each component described above.
[0040]
The aqueous precoat liquid of the present invention is used for pretreatment of a recording medium as described above, and is used before a general absorbent paper such as plain paper, recycled paper, ink jet recording paper, art paper, and coated paper. Although it can be used of course as a treatment liquid, it is particularly effective as a pretreatment liquid for a water-repellent surface such as the surface of a plastic substrate or the surface of an oil-based ink layer. The “surface having water repellency” refers to a surface having a water contact angle of 20 degrees or more. This water contact angle is measured using a commercially available contact angle meter, and after 10 seconds from dropping pure water onto the surface of the measurement sample, using the contact angle meter. The measurement is performed ten times for one sample, and the average value of the contact angles measured by exchanging the unmeasured sample whose surface is not wetted with pure water for each measurement is defined as the water contact angle. An example of a commercially available contact angle meter that can be used for measuring the water contact angle includes Model CA-D manufactured by Kyowa Interface Science Co., Ltd.
[0041]
As the plastic substrate, for example, resin-coated paper (resin-coated paper) or the like is used in addition to resin films and sheets such as polypropylene (PP), polyethylene (PE), and polyethylene terephthalate (PET), and synthetic paper. Can be. Examples of commercially available synthetic paper usable as the plastic substrate include YUPO (manufactured by Oji Yuka) and Peachcoat (manufactured by Toyobo). The transparency of the plastic substrate is not particularly limited, and may be transparent or opaque.
[0042]
The oil-based ink layer is formed by attaching oil-based ink to recording paper such as paper or film, drying and fixing the recording medium on the recording paper. It is. Oil-based ink is an ink obtained by dissolving or dispersing a dye or pigment in an organic solvent such as ketones, alcohols, and ethyl acetate, and is used as a printing ink in offset printing, gravure printing, and the like. The range is not limited to offset prints and gravure prints. The recording paper is not particularly limited as long as it can be printed with oil-based ink.
[0043]
Next, the inkjet recording method of the present invention using the aqueous precoat liquid will be described.
[0044]
In the ink jet recording method of the present invention, a surface having water repellency (hereinafter, also referred to as a water repellent surface) such as the surface of the plastic substrate or the surface of the oil-based ink layer, that is, the water contact angle is 20 degrees or more. A pretreatment step of applying the aqueous precoat liquid to the surface by an ink jet method; and an ink jet recording step of discharging an aqueous pigment ink onto a portion of the water-repellent surface where the aqueous precoat liquid is applied to perform recording.
[0045]
In the pretreatment step, the application of the aqueous precoat liquid is performed by an inkjet method using a known inkjet recording apparatus (inkjet printer), similarly to the ejection of the aqueous pigment ink. The application by the ink jet method has features such as easy control of a low application amount and high flexibility of an application pattern and an application amount, and is most suitable for application of such an aqueous precoat liquid. The ink discharge control method of an ink jet printer includes a method of controlling by voltage using a piezoelectric element, a method of controlling by thermal energy using a heating resistor element, and the like. Can be used.
[0046]
The aqueous precoat liquid is for aggregating, on the plastic substrate or the like, the aqueous pigment ink to be injected into a plastic substrate or the like in the next inkjet recording step. (The part where an image is formed). The coating amount may be appropriately adjusted according to the amount of the aqueous pigment ink attached, and is not particularly limited, but is 0.5 to 2 g / m 2 in terms of solid content.2The degree is preferred.
[0047]
The ink-jet recording step can be performed using a known ink-jet printer as in the case of ordinary ink-jet recording. Ink jet printers continuously eject ink from nozzles at regular time intervals and deflect the ejected ink droplets to form an image by deflecting the ink droplets, and eject ink in accordance with image data There is an on-demand system, and any system may be used. However, the on-demand system is preferable in that fine driving control is possible and the amount of waste liquid is small. Examples of the ink ejection control method include a method of controlling by voltage using a piezoelectric element and a method of controlling by thermal energy using a heating resistor element, but are not particularly limited.
[0048]
The aqueous pigment ink used in the inkjet recording step is an aqueous ink containing a pigment-based coloring material in water, and usually contains various organic solvents and surfactants for moisture retention and permeation adjustment. I have. The pigment-based coloring material may be a so-called self-dispersion pigment (also referred to as a surface-modified pigment) that can be dispersed and / or dissolved in an aqueous medium to which no or a small amount of a dispersant such as a surfactant is added, Ordinary pigments that are not self-dispersing may be used. When a color image is formed, an aqueous pigment ink of three primary colors of subtractive color mixture of yellow, magenta and cyan, or an aqueous pigment ink of four or more colors obtained by adding black and other colors thereto is used.
[0049]
The inkjet recording method of the present invention can be carried out, for example, as follows.
[0050]
FIG. 1 is a perspective view of a main part of an ink jet printer used for carrying out the ink jet recording method of the present embodiment. A printer 10 shown in FIG. 1 transports a plastic film F in a direction indicated by an arrow A by a platen roller 12 driven by a paper feed motor 11, and a recording head 20 mounted on a carriage 13 performs recording on the plastic film F. After the aqueous precoat liquid and the aqueous pigment ink of each color supplied from the ink tank 30 are respectively ejected onto the surface, they are carried out. The carriage 13 is connected to a carriage motor 15 via a carriage belt 14, slides on a guide rail 16, and reciprocates in the direction of arrow B1 or B2 orthogonal to the direction of arrow A. I have.
[0051]
FIG. 2 is a schematic front view of the nozzle opening surface 20a of the recording head 20. The recording head 20 is a multi-head in which a plurality of inkjet heads are arranged in parallel in the main scanning direction and integrated. In FIG. 2, reference numerals 21 and 26 denote nozzle arrays for discharging the aqueous precoat liquid, and 22, 23, 24 and 25 denote yellow (Y), magenta (M), cyan (C) and black (K), respectively. This is a nozzle row for discharging pigment ink. As described above, by using the nozzle rows at both ends in the main scanning direction for the aqueous precoat liquid, bidirectional (B1 and B2) printing can be performed, and the printing speed is improved.
[0052]
In the printer 10 having such a configuration, when the recording head 20 is scanned in the direction of the arrow B1, the recording surface of the plastic film F is first solid-filled with the aqueous precoat liquid from the nozzle row 21 to form a band. (Pre-processing step), and then, based on the received image data, the nozzle arrays 22, 23, 24, and 25 form Y, M, C, and K for the pre-processing area. Ink-jet recording is performed by sequentially ejecting the aqueous pigment ink of each color (ink-jet recording step). When scanning is performed in the direction of arrow B1, the nozzle row 26 is not used. The recording head 20 reaches the end of the recording area in the direction of the arrow B1. After the plastic film F is conveyed in the direction of the arrow A by the platen roller 12 with a feed amount substantially equal to the width of the pre-processing area, the recording head 20 moves to the arrow B2. Scan in the direction. In this case, first, the aqueous precoat liquid is solid-filled from the nozzle row 26 to form a band-shaped pretreatment area (pretreatment step). Then, the nozzle rows 25, 24, K, C, M, and Y color pigment inks are sequentially ejected from 23 and 22 to perform ink jet recording (ink jet recording step). When scanning is performed in the direction of the arrow B2, the nozzle row 21 is not used. By repeating such bidirectional (B1 and B2) scanning of the recording head 20 and the paper feeding operation, a desired recorded matter is obtained.
[0053]
The inkjet recording method of the present invention includes a pretreatment step of applying the aqueous precoat liquid to the water-repellent surface by an inkjet method, and discharging an aqueous pigment ink to a portion of the water-repellent surface to which the aqueous precoat liquid has been applied. The type and number of the aqueous pigment ink to be used, the application (implantation) pattern of the aqueous precoat liquid, the ink ejection order, and the like are not limited to the above-described embodiment. Various changes can be made without departing from the spirit of the present invention. The embodiment of the present invention is not limited to the one using the ink jet printer having the configuration as shown in FIG.
[0054]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described more specifically with reference to examples of the present invention and test examples showing the effects of the present invention. However, the present invention is not limited to the examples.
[0055]
[Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 to 4]
A plurality of aqueous precoat liquids were prepared and used as samples of Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 to 4, respectively. The composition and physical properties of each sample are shown below. The HLB values in parentheses below are values calculated by the above (Equation 1).
[0056]
In Example 1, the product A = 6.9 × 0.12 = 0.828 and the surface tension B was 22.5 mN / m.
[0057]
In Example 2, the product A was 6.9 × 0.08 = 0.552, and the surface tension B was 21.4 mN / m.
[0058]
In Example 3, the product A = 7.9 × 3.0 = 23.7 and the surface tension B was 23.7 mN / m.
[0059]
In Example 4, the product A = 6.9 × 5.0 = 34.5 and the surface tension B was 20.9 mN / m.
[0060]
In Example 5, the product A = 6.9 × 0.12 = 0.828 and the surface tension B was 19.7 mN / m.
[0061]
In Example 6, the product A could not be calculated, and the surface tension B was 21.2 mN / m.
[0062]
In Comparative Example 1, the product A = 6.9 × 0.01 = 0.069, and the surface tension B was 24.8 mN / m.
[0063]
In Comparative Example 2, the product A = 6.9 × 0.05 = 0.345, and the surface tension B was 27.9 mN / m.
[0064]
In Comparative Example 3, the product A could not be calculated (without containing a nonionic surfactant), and the surface tension B was 25.5 mN / m.
[0065]
In Comparative Example 4, the product A could not be calculated, and the surface tension B was 23.7 mN / m.
[0066]
Using the aqueous precoat liquids of Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 to 4, three types of recorded matters A to C were prepared for each aqueous precoat liquid by the following procedure.
[0067]
(Recording procedure)
Using an ink-jet printer (“EM930C” manufactured by Seiko Epson) in which the cyan ink and the aqueous precoat liquid are replaced, an aqueous precoat liquid is applied to the entire surface of each of the following three types of recording media A to C, A 100% cyan solid pattern with an applied amount of 1.1 g / m after drying2And applied (pre-treatment step). Next, using a six-color pigment ink jet printer (“MC2000” manufactured by Seiko Epson), 100% color patches of each color of CMYK were printed on each recording surface of the recording media A to C to which the aqueous precoat liquid was applied (ink jet). Recording step), three types of recorded materials A to C having different recording media were produced.
[0068]
-Recording medium A: Inkjet recording paper "PM photo paper" manufactured by Seiko Epson
Recording medium B: Offset solid printed matter produced by the following procedure
・ Recording medium C: PET film (without corona discharge treatment)
Production procedure of offset printed matter: Recording paper (“OK Top Coat N” basis weight 128 g / m 2) using a two-color offset printing machine manufactured by Man Roland Co.2, Oji Paper Co., Ltd.) with an oil-based ink (“Hi-Echo @ Cyan” manufactured by Toyo Ink) at a coating amount of 1.2 g / m 2.2To produce an offset solid print.
[0069]
The coloring properties and color bleed of each of the recorded matters A to C were evaluated by the following methods. Except that the pretreatment step is not performed (the aqueous precoat liquid is not applied), three types of recordings A to C having different recording media are prepared in the same manner as in the above (recording production procedure), and these are blanked. Was similarly evaluated.
Further, for each of the aqueous precoat liquids of Examples 1 to 6 and Comparative Examples 1 to 4, the ejection stability and the foam suppressing property were evaluated by the following methods.
The results are shown in Table 1 below.
[0070]
(Evaluation method of coloring property)
For each CMYK color patch of the recorded matter, the reflection optical density (OD value) was measured using Spectrolino SPM-50 manufactured by Gretag Macbeth under the conditions of a viewing angle of 2 degrees, a light source of D50, and no filter. Was evaluated.
Evaluation criteria
A: The sum of the OD values of the four colors CMYK exceeds 7.5. Good color development.
B: The sum of the OD values of the four colors is 7.5 to 6.0. No problem in practical use.
C: The sum of the OD values of the four colors is less than 6.0 (the OD value is less than 1.5 on average). Not practical.
[0071]
(Color bleed evaluation method)
In the recorded matter, a portion where the yellow area and the black area are adjacent to each other (an area where the image quality is most easily discriminated) is visually observed, and the degree of uneven color mixing at the color boundary is evaluated according to the following evaluation criteria. did.
Evaluation criteria
A: A good image without color mixture was obtained.
B: Color mixture slightly occurred. No problem in practical use.
C: Color mixing occurred such that the boundaries of the colors were not clear. Not practical.
[0072]
(Method of evaluating discharge stability)
After replacing the ink in the ink cartridges located at both ends of the inkjet head of the inkjet printer MC2000 in the main scanning direction and the aqueous precoat liquid to form a nozzle arrangement as shown in FIG. 2, a composite pattern using four colors of CMYK is formed. A water-based pre-coating liquid was applied to the print pattern, and 1,000 sheets of OK Top Coat N were printed. These printed surfaces were visually observed and evaluated according to the following evaluation criteria.
Evaluation criteria
A: There were no more than 5 points where induced pre-wetting of the aqueous precoat liquid or occurrence of flight bend was observed, and when ejection failure occurred, it returned within 3 cleaning operations. Excellent discharge stability.
B: No more than five locations where induced loss of the aqueous precoat liquid or occurrence of flight bending were observed, and when ejection failure occurred, the cleaning operation was restored within five times. No problem in practical use.
C: There were more than five locations where the induced pre-wetting of the aqueous precoat liquid and the occurrence of flight bending were observed, and when the ejection failure occurred, the cleaning operation was returned more than 5 times. Practical limit.
D: The number of places where the induced loss of the aqueous precoat liquid or the occurrence of the bending of the flight is recognized is more than 5 places, and when the ejection failure occurs, it does not return even if the cleaning operation is performed more than 5 times. Not practical.
[0073]
(Evaluation method of foam control)
A predetermined amount of the aqueous precoat liquid is accommodated in a transparent glass container (cylindrical shape having a radius of 2 cm), and the liquid is placed on a flat surface, and the liquid level H0(Cm) was measured. Next, the container was shaken well, and the aqueous precoat liquid was sufficiently stirred. Then, the container was again placed on a flat surface and allowed to stand for 1 minute.1(Cm) was measured. And H0And H1From the foaming rate (%) [= (H1/ H0) × 100] and evaluated according to the following evaluation criteria.
Evaluation criteria
A: Foaming rate is 100% and no bubbles are observed on the liquid surface. Good foam control.
B: Although the foaming ratio is 100%, some large bubbles having a diameter of several millimeters are observed on the liquid surface. No problem in practical use.
C: Foaming rate is more than 100% and 101% or less. Practical limit.
D: The foaming ratio exceeds 101%, and bubbles are generated on the entire surface of the liquid. Not practical.
[0074]
[Table 1]
[0075]
【The invention's effect】
The aqueous precoat liquid of the present invention is not limited to a water-absorbing recording medium such as paper, but also has a water-repellent surface, such as a surface of a plastic substrate, or an oil-based ink such as a printed portion of an offset print or a gravure print. It can be applied evenly on the surface of the layer, and it is possible to provide a high-quality, high-quality inkjet image with high color development and no ink bleeding regardless of the type of recording medium. In addition, the precoat liquid is excellent in the ejection stability at the time of application by the ink jet method, and there is no possibility of causing nozzle clogging, induced omission and flight bending.
[0076]
Further, according to the inkjet recording method of the present invention, since an inkjet image is formed using the aqueous precoat liquid and a pigment ink having excellent water resistance and light resistance, not only in terms of image quality but also in terms of storability. An excellent recorded matter can be obtained. Further, this ink jet recording method is composed of relatively simple steps, and is excellent in workability.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a perspective view of a main part of an ink jet printer used in an embodiment of an ink jet recording method of the present invention.
FIG. 2 is a schematic front view of a nozzle opening surface of a recording head in the ink jet printer shown in FIG.
[Explanation of symbols]
10 inkjet printer
11 paper feed motor
12 platen roller
13 carriage
14 carriage belt
15 carriage motor
16mm guide roll
20mm recording head
20a nozzle opening surface
21-26mm nozzle
30 ink tank
F @ plastic film
