JP2004066402A - 切削工具及びこれを備えた切削装置 - Google Patents

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Toshiro Kobayashi
小林 敏郎
Toyoaki Yasui
安井 豊明
Katsuyasu Hananaka
花中 勝保
Yukio Kigami
樹神 幸夫
Motofumi Kuroda
黒田 基文
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Abstract

【課題】高温下でもすくい角を正角にできる切刃を備える切削工具及びこれを備えた切削装置を提供こと。
【解決手段】アークイオンプレーティングを行ってターゲットに、Al、Cr、Siからなるコーティング層を得た。ここで、Siの役割に着目すると、Siは結晶の微細化の点で密着性に対し大きく影響を与え、金属成分のみの原子%でいうと1%以上30%以下で効果を発揮する。1%未満であると、密着性が不十分であり、30%を超えると被膜がもろくなり、衝撃に対し弱くなる。さらに、Cr量については、金属成分のみの原子%で20%以上75%以下で効果を発揮する。当該コーティングは、上記のような特性を有するので、各元素を適当な割合で選択し、切削工具に適用すれば、高切削速度下でも耐チッピング性、耐摩耗性に優れた切削工具、又はこれを備えた切削装置を構成することができる。
【選択図】   図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、切削工具及びこれを備えた切削装置に関し、更に詳しくは、すくい角を正角にできる特性を有する切刃を備える切削工具及びこれを備えた切削装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来から使用されている一般的なエッジミラーを示す側面図である。また、図10は、同エッジミラーを示す平面図である。ここでは、切削速度の極めて高い加工が要求される切削装置の例としてエッジミラー50について説明する。エッジミラー50は、鋼材圧延に付随する端部加工を施す切削装置である。
【0003】
エッジミラー50の構成を具体的に説明すると、まず、切削ヘッド57には水平方向に対して斜めにカッター52が取り付けられる。カッター52は、帯状の鋼板51の両端部を加工するために紙面垂直方向に2対設けられる。切削ヘッド57の内方側には、上下方向に対をなす複数対のサポートロール53が鋼板51の走行方向に沿って配列設置される。なお、切削ヘッド57は、ベッド62によって摺動可能に支持されたスライドベース58上に固定される。
【0004】
左右のスライドベース58の下面側には、モータに連結されたボールねじ60が鋼板51の走行方向に直交する方向に設けられる。左右のカッター52の上流側および下流側には、それぞれ門形の支持フレーム63が立設される。各カッター52の上流側に位置された支持フレーム63の対間には、上ロール54aおよび下ロール54bからなる一対のピンチロール54が差し渡され、下流側も同様にピンチロール54が設けられる。
【0005】
同図において、鋼板51は、紙面右から左に流れるが、まずピンチロール54に挟まれる。下ロール54bおよび上ロール54aは、支持フレーム63に固定された軸受け64、65によって回転自在に支持されるので、鋼板51を挟みながら上流から下流に送る。なお、支持フレーム63の上部に設けられた加圧シリンダ66によって上ロール54aが下方に付勢されるので、鋼板51の上面および下面には、加圧力が作用する。
【0006】
ピンチロール54を通り過ぎた鋼板51は、その端部位置が位置ヘッド55で検出され、それに対応した位置にカッター52がボールねじ60によって位置決めされる。なお、左右のサポートロール53群は、それぞれ走行する鋼板51の左右の端部を上下方向にクランプして、切削時における鋼板51の振動および座屈を防止する。このような構成により、エッジミラー50におけるカッター52は、鋼板51の左右両端部を切削加工し、不揃いな端部を仕上げる。
【0007】
図11は、カッターと鋼板の関係を示した説明図である。上記のようにカッター52は、水平方向からω70送り方向に傾けて設置される。こうすることによって、カッター52の切刃71は、一部のみが鋼板51に当たるのではなく、当該切刃71の広範囲にわたり鋼板51に当たるようになる。これにより、当該切刃71の寿命が延びる。また、上記切刃71は、カッター52本体に対してω72だけ傾けて設けられる。これは、一般的なフライス刃と同様に適切な切りこを形成させ、加工精度を向上させるため等の理由による。
【0008】
一般的に、上記カッター52の切刃71は、スローアウェイチップによって構成される。具体的には、複数のチップが一列に並設され、それらが一条の切刃71を形成する。一つのカッター52は一般的に数十条の切刃71で構成され、回転により全ての切刃71で鋼板の端部を切削する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のカッター52の切刃71は、エッジミラー50のように大きな切削速度で加工しなければならない場合、刃先が極めてチッピング(欠け)しやすく、すくい角を負角にして対処せざるを得なかった。すくい角を負角にすると、鋼板51に対して食いつきが悪くなるため、必然的にバリが発生し、加工精度延いては品質が低下してしまう。
【0010】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、すくい角を正角にできる特性を有する切刃を備える切削工具及びこれを備えた切削装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1にかかる切削工具は、高速度鋼の基材にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相法)により成膜した切刃を有するようにしたものである。
【0012】
当該窒化物から成る皮膜はPVDによって高速度鋼と密着する。また、上記窒化物は、耐高温酸化性が飛躍的に向上した皮膜を形成して高速度鋼を覆うことになる。これによって、高速度鋼元来の性質に加え、高い硬度を保ちつつ耐摩耗性に優れるという性質を備えた切削工具を形成することができる。なお、ここでいう切削工具はバイト、フライス、ミル等をいう。
【0013】
また、請求項2にかかる切削工具は、請求項1に記載の切削工具において、前記切削工具の有する切刃のすくい角が正角度であるようにしたものである。
【0014】
請求項1に記載の切削工具は、高温下における耐摩耗性に優れるので高速切削においてもすくい角を正角にして用いることができる。すくい角を正角にできると、鋼板等の工作物に対する工具の切刃の食いつき・切れがよくなり、工作物表面のバリを防止することができる。したがって、この発明は、請求項1に記載の切削工具の性質に加えてバリの発生防止という性質が加わる。
【0015】
また、請求項3にかかる切削装置は、工具把持手段と、当該工具把持手段に把持され、切削対象を切削する請求項1または2のいずれか一つに記載の切削工具と、を備えるようにしたものである。
【0016】
切削装置には旋盤、平削り盤、形削り盤、フライス盤が含まれ、さらにフライス盤には用途に応じた名称を有するプロファイラー、中ぐり盤、プラノミラー等フライス加工(ミリング加工)を施す様々なタイプのものが含まれる。上述したように、これらに用いられる工具はバイト、フライス、またはミルと呼ばれ、これらを把持する手段としては刃物台、工具ホルダー等が挙げられる。
【0017】
請求項1または2のいずれか一つに記載された切削工具が上記把持手段によって把持されると、高速度鋼元来の性質に加え、高速切削における高温下でも高い硬度を保ちつつ耐摩耗性に優れるという性質を備えた切削工具によって切削対象を切削することになる。また、すくい角を正角とすれば、上記高温下でも切削対象に対して食いつき・切れがよくなる。
【0018】
また、請求項4にかかる切削装置は、切削対象の送り方向に対して直角方向となる端部を挟むように当該切削対象の両側に配置され、駆動手段によって回転させられる円筒状の工具本体と、前記工具本体の周面に取り付けられて、前記切削対象の両側端部を切削する請求項1または2のいずれか一つに記載の切削工具が有する切刃と、を備えるようにしたものである。
【0019】
工具本体は、切削対象の送り方向に対して直角方向となる端部を挟むように当該切削対象の両側に配置される。つまり、切削対象が南北方向に送られるとしたときの東西方向にある端部を挟むように当該工具本体が両側に配置される。また、工具本体は円筒状の形状を有し、モータ等の駆動手段によって回転させられる。請求項1または2のいずれか一つに記載の切削工具が有する切刃は、前記工具本体の周面に複数条の切刃として取り付けられ、前記切削対象の両側端部を切削する。このような切削装置の代表としてはエッジミラー装置がある。
【0020】
また、請求項5にかかる切削装置は、請求項4に記載の切削装置において、前記工具本体の回転軸が、前記切削対象が送られるベッドの上面に対して垂直方向となる軸から傾けて設けられるようにしたものである。
【0021】
工具本体は、その回転軸が前記切削対象の送られるベッドの上面に対して垂直方向となる軸から傾けて設置される。つまり、切削対象が送られる台座であるベッドが水平であれば、鉛直軸から傾いて設置される。これにより、高切削速度における高温下でも耐摩耗性に優れる切刃を広範囲に使って切削できる。換言すれば、切削対象が工具本体に対してヘリカル状に通過する。なお、上記工具本体の傾きは切削対象の送りに平行な向きに傾けるのが一般的である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
(実施の形態1)
はじめに、本発明に用いられるAl、Cr、Siを主成分とする窒化物の有用性をその創作経過とともに説明する。
【0024】
一般にTiAlN皮膜は、高温大気中で使用されると800℃程度で皮膜が酸化され皮膜強度及び密着性が低下する性質がある。この酸化状態を分析すると、皮膜成分のAl及びTiが酸化されており、特にTiの酸化物は非常にポーラスであるため酸素の進入が容易となり厚くなっている状態であることが判った。このために、上述の皮膜は、皮膜強度及び密着性が低下し、最終的に皮膜の剥離につながってしまう。
【0025】
一方、AlCrN皮膜はこの点を改善した皮膜であり、ポーラスで厚く形成するTi成分に代えCrとし、酸素の進入を防止し、酸化被膜を極薄く生成させ、この酸化層によってその後の酸化を防止することで耐酸化性が向上している。しかし、この被膜は、Al、Crの酸化物の密着性が低いため、高荷重が負荷する場合、例えば工具に使用した場合、剥離が生じ、耐摩耗性の点で問題がある。
【0026】
上記の現象を基に本発明にかかる皮膜では、酸素の進入を防止するため、すなわち耐酸化性を高めるため、Al、Cr、Siの窒化物を用いた。これにより結晶の微細化を図り、高温酸化雰囲気に曝された場合、生成する酸化物がAl、Cr、Si複合酸化被膜となり酸素の進入を防止すると共に、非常に緻密な複合酸化被膜となることにより密着性が著しく向上する。
【0027】
図1は、耐酸化性・高耐摩耗性に優れ、かつ高硬度となる皮膜を基材表面に形成するためのアークイオンプレーティング装置を示す構成図である。このアークイオンプレーティング装置1は、大気と気密なケーシング2が設けられ、その天井部には、ターゲット3が配設される。ケーシング2の室内12にはテーブル状のホルダー7が配設される。ホルダー7は、回転軸9を介してモータ8と連結され、ホルダー7はその周方向に回転が可能である。そして、ターゲット3とホルダー7間には、直流電源11が接続され、電源11の+側にターゲット3、−側にホルダー7が接続される。
【0028】
ケーシング2の室内12には、室内12を真空にするための真空ポンプ4が制御バルブ13を介して接続される。また、室内12の不活性ガスを供給するためのアルゴンのガス源5が、制御バルブ14を介して接続される。さらに、室内12に窒素を供給するための窒素ガス源6も上記と同様に制御バルブ15を介して接続される。
【0029】
この実施の形態では、ターゲット3はAl、Cr、Siからなり、また、基板10は高速度鋼(JIS−SKH54)を用いた。そして、ホルダー7上に基板10を載置し、制御バルブ13〜15のうち、はじめに制御バルブ13、14を開き、室内12にアルゴンガスを供給すると共に、室内12を真空引きする。真空引きが完了し、室内12がアルゴン雰囲気になったら、モータ8によりホルダー7を回転させる。
【0030】
次の工程としては、制御バルブ13、14を閉じてターゲット3とホルダー7間に直流電圧を印加し、プラズマを発生させ、これにより室内12温度を上昇させる。室内12の温度が一定温度に達したときに、制御バルブ15を開き、窒素ガス源6から室内12へ窒素を供給してアーク放電を生じさせる。これにより、基板10の表面に耐高温酸化に優れた高耐摩耗性・高硬度皮膜が形成される。
【0031】
(実施例)
この実施例では、各種合金ターゲットを用いたアークイオンプレーティング装置により、高速度鋼(JIS−SKH54)基材上に膜厚4μmの被膜を成膜し、当該皮膜の硬度を計測した。具体的な皮膜生成条件は窒素ガス圧力2.7(Pa)、基板温度673(K)、バイアス電圧−40(V)である。また、生成した被膜の硬度としては、ヌープ硬度を採用し、室温の下、荷重0.245Nで測定した。
【0032】
また、白金上に上記と同じ窒素ガス圧力、基板温度、バイアス電圧で膜厚4μmの皮膜を成膜した。この皮膜を示差熱分析装置を用いて、空気気流中(1L/min.)、10K/min.の昇温速度で1200℃までの酸化による質量変化を測定し、被膜の酸化重量増加率を求めた。各実施例のAl,Cr、Siの組成と、比較例および従来例の測定結果は以下の通りである。
【0033】
【表1】
Figure 2004066402
【0034】
[実施例1]
表1は、上記の各実施例、比較例及び従来例の結果を示す表である。ターゲットに、Al:79%、Cr:20%、Si:1%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、図2に示すようなコーティング層a40を得た。コーティング層a40の酸化重量増加率は4%であり、硬さは2700(Hk)であった。
【0035】
[実施例2]
ターゲットに、Al:50%、Cr:20%、Si:30%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は2%であり、硬さは2750(Hk)であった。(図2参照)
【0036】
[実施例3]
ターゲットに、Al:24%、Cr:70%、Si:1%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は4%であり、硬さは2700(Hk)であった。(図2参照)
【0037】
[実施例4]
ターゲットに、Al:20%、Cr:75%、Si:5%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は2%であり、硬さは2700(Hk)であった。(図2参照)
【0038】
[実施例5]
ターゲットに、Al:30%、Cr:40%、Si:30%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は2%であり、硬さは2950(Hk)であった。(図2参照)
【0039】
[実施例6]
ターゲットに、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は2%であり、硬さは3000(Hk)であった。(図2参照)
【0040】
[実施例7]
ターゲットに、Al:85%、Cr:5%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は10%であり、硬さは2300(Hk)であった。(図2参照)
【0041】
[実施例8]
ターゲットに、Al:10%、Cr:80%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は15%であり、硬さは2200(Hk)であった。(図2参照)
【0042】
[実施例9]
ターゲットに、Ti:53%、Al:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40の酸化重量増加率は22%であり、硬さは2700(Hk)であった。(図2参照)
【0043】
ここで、Siの役割に着目すると、Siは結晶の微細化の点で密着性に対し大きく影響を与え、金属成分のみの原子%でいうと1%以上30%以下で効果を発揮する。1%未満であると、密着性が不十分であり、30%を超えると被膜がもろくなり、衝撃に対し弱くなる。これは剥離の原因となる。さらに、Cr量については、金属成分のみの原子%で20%以上75%以下で効果を発揮する。20%未満であると硬さが低下し、75%を超えると耐酸化性が劣化する。よって、上記各実施例1〜6において、本発明で利用される被膜は耐酸化性に優れ、硬さも高いことが判明した。
【0044】
次に、他の実施例として、上記のアークイオンプレーティング装置により、各種ターゲットを用い、超硬(TH―10)基材上に膜厚4(μm)成膜した。成膜条件は表1に示すとおりとした。基材/コーティング層間の窒化物皮膜の膜厚は1.0(μm)とした。したがって、総厚は5(μm)である。その後、アルミナボール(φ6)を使用したボールオンディスク摩耗試験を実施し耐摩耗性を評価した。
【0045】
上記摩耗試験の試験条件は、荷重5(N)、すべり速度100(m/s)、摺動距離300(m)室温、無潤滑とした。摩耗量の測定は、摩耗試験後のコーティング層の摩耗深さおよび摩耗幅を測定することにより行った。各実施例の各種合金ターゲットの組成(原子%)は以下の通りである。なお、下記の実施例16〜19及び実施例22、23は、2種の2層以上の被膜(コーティング層)を作成し、実施例20、22はTi窒化物の皮膜を基材10表面に形成させてからコーティング層を形成した。また、実施例21、23は、Cr窒化物の皮膜を基材10の表面に形成させてからコーティング層を形成した。
【0046】
[実施例10]
ターゲットに、Al:79%、Cr:20%、Si:1%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、コーティング層a40を得た。コーティング層a40の摩耗深さは0.25(μm)であり、摩耗幅は0.25(μm)であった。(図2参照)
【0047】
[実施例11]
ターゲットに、Al:50%、Cr:20%、Si:30%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.22(μm)であり、摩耗幅は0.26(μm)であった。(図2参照)
【0048】
[実施例12]
ターゲットに、Al:24%、Cr:70%、Si:1%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.23(μm)であり、摩耗幅は0.25(μm)であった。(図2参照)
【0049】
[実施例13]
ターゲットに、Al:20%、Cr:75%、Si:5%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.23(μm)であり、摩耗幅は0.25(μm)であった。(図2参照)
【0050】
[実施例14]
ターゲットに、Al:30%、Cr:40%、Si:30%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.20(μm)であり、摩耗幅は0.22(μm)であった。(図2参照)
【0051】
[実施例15]
ターゲットに、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.19(μm)であり、摩耗幅は0.20(μm)であった。(図2参照)
【0052】
[実施例16]
図3に示すように、第1番目の層を層a40として、ターゲットに、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:53%、Al:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。a層40とb層41は各々1層である。その結果、摩耗深さは0.25(μm)であり、摩耗幅は0.24(μm)であった。なお、2種のコーティング層を2層以上に形成する場合は、a層40を最外層に配置する。(以下、同様)
【0053】
[実施例17]
図4に示すように、第1番目の層として層a40に、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:53%、Al:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。a層40と層b41は各々互い違いに5層ずつ、合わせて10層形成した。その結果、摩耗深さは0.23(μm)であり、摩耗幅は0.24(μm)であった。
【0054】
[実施例18]
第1番目の層として層a40に、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:75%、Al:25%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。層a40と層b41は各々互い違いに5層ずつである。その結果、摩耗深さは0.20(μm)であり、摩耗幅は0.21(μm)であった。(図4参照)
【0055】
[実施例19]
第1番目の層として層a40に、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:25%、Al:75%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。層a40と層b41は各々互い違いに5層ずつである。その結果、摩耗深さは0.21(μm)であり、摩耗幅は0.22(μm)であった。(図4参照)
【0056】
[実施例20]
図5に示すように、予め基材10にTi窒化物42を形成した後、ターゲットに、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.20(μm)であり、摩耗幅は0.23(μm)であった。
【0057】
[実施例21]
予め基材10にCr窒化物43を形成した後、ターゲットに、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.20(μm)であり、摩耗幅は0.23(μm)であった。(図5参照)
【0058】
[実施例22]
図6に示すように、予め基材10にTi窒化物44を形成した後、第1番目の層として層a40に、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:53%、Al:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。層a40と層b41は各々互い違いに5層ずつである。その結果、摩耗深さは0.15(μm)であり、摩耗幅は0.19(μm)であった。
【0059】
[実施例23]
予め基材10にCr窒化物45を形成した後、第1番目の層として層a40に、Al:44%、Cr:46%、Si:10%のものを用い、第2番目の層として層b41に、Ti:53%、Al:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。層a40と層b41は各々互い違いに5層ずつである。その結果、摩耗深さは0.17(μm)であり、摩耗幅は0.19(μm)であった。(図6参照)
【0060】
[比較例24]
ターゲットに、Al:85%、Cr:5%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.60(μm)であり、摩耗幅は0.50(μm)であった。
【0061】
[比較例25]
ターゲットに、Al:10%、Cr:80%、Si:10%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.70(μm)であり、摩耗幅は0.52(μm)であった。
【0062】
[比較例26]
ターゲットに、Al:51%、Cr:48%、Si:0.5%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.50(μm)であり、摩耗幅は0.38(μm)であった。
【0063】
[比較例27]
ターゲットに、Al:30%、Cr:35%、Si:35%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.80(μm)であり、摩耗幅は0.55(μm)であった。
【0064】
[従来例28]
ターゲットに、Al:45%、Cr:55%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.50(μm)であり、摩耗幅は0.32(μm)であった。
【0065】
[従来例29]
ターゲットに、Al:53%、Cr:47%のものを用い、アークイオンプレーティングを行った。その結果、摩耗深さは0.80(μm)であり、摩耗幅は0.40(μm)であった。
【0066】
【表2】
Figure 2004066402
【0067】
【表3】
Figure 2004066402
【0068】
【表4】
Figure 2004066402
【0069】
表2から表4は、各実施例10〜23と各比較例24〜27及び従来例28、29の結果を示す表である。この結果により一見して本発明にかかる皮膜は耐摩耗性に優れていることが判る。
【0070】
密着性向上のためには、上記の窒化物の金属成分のみの原子%でCrが20%以上75%以下、Siが1%以上30%以下残りAlから成る層a40と、TiとAlの窒化物の金属成分のみの原子%でAlが25%以上75%以下、残りTiである層b41を交互に一層以上被覆し、最外層が40層aである皮膜とすると効果が大きい。ここで、層b41のAlが25%未満及び75%を超える場合は硬さ低下による皮膜剥離の問題が生じる。さらに、上記皮膜と基材との間にTiまたはCrの窒化物層を設けると密着性は格段に向上する。
【0071】
なお、本発明にかかる皮膜は、以上の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。例えば、上記コーティング層の形成に当たっては、PVD(Physical Vapor Deposition:物理蒸着法)が適用され、その金属蒸発方法である電子銃によるもの、ホロカソードによるもの、スパッタリングによるもの、アーク放電によるもの等があるが、これらの方法に制約はない。
【0072】
以上実施例を添えて説明した通り、本発明にかかる皮膜は高温での耐酸化性が優れており、かつ密着性が良好であるため耐摩耗性も極めて良好であり、高速度鋼基材に被覆すれば、高速度鋼元来の性質に加え、高い硬度を保ちつつ耐摩耗性に優れるという性質を備えた切削工具を形成できる。より具体的には、上記皮膜が成膜された切刃を有する切削工具は、高速切削速度が要求され、切刃が高温となる加工においてもチッピングがなく、摩耗寿命に優れるという性質を有する。
【0073】
また、すくい角を調整すれば、上記高温下での薄板の仕上げ加工においてもバリの発生を防止できる。これによって工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルが長期化する。なお、切削工具の切刃とは、切刃部分だけスローアウェイチップ化したものでもよいし、ろう付け工具の切刃でもよい。
【0074】
次に、上記のように窒化物が被覆された切削工具の切刃で切削対象の端部を切削した試験結果について説明する。当該試験は、まず上記切刃が3条分だけ取り付けられた円筒状切削工具を縦型円筒中ぐり盤に装着して行った。試験結果の評価は、切削途中、または終了時に刃先を工具顕微鏡で観察し、逃げ面摩耗幅VB(mm)を測定することにより行った。
【0075】
試験条件としては、カッター直径400(mm)、刃数36(条)、切削速度350(m/min.)、切り込み2(mm)、一刃あたりの送り0.2(mm/刃)とし、被削材として厚さ2.6(mm)のSS400(冷間材)を用いて、切削油を使用しない乾式切削で行った。
【0076】
図7は、切刃の刃先の摩耗を示すイメージ図、および切削距離と逃げ面摩耗との関係を示すグラフ図である。同図上部のイメージ図は、刃先の摩耗が進行していく様子を表しており、(a)は実験前の刃先、(b)は実験途中の刃先、(c)は実験終了後の刃先であって使用に耐えないまでに摩耗した状態を示している。また、上記グラフ図は縦軸に逃げ面摩耗幅VB(mm)、横軸に切削距離(m)をとったものである。
【0077】
同グラフ図において、点線で表したデータ50は、実験途中で急激に逃げ面摩耗が増えており、実験途中に刃先がチッピング(欠け)を起こしたときのイメージを示している。また、一点鎖線で表したデータ51は、逃げ面摩耗が許容値53を超えたときに切削距離が十分でなく、耐摩耗性不良と評価されるときのイメージを示している。また、実線で表したデータ52は、逃げ面摩耗が許容値53を超えたときに切削距離が十分であり、耐摩耗性が良好であるとみなせるものである。
【0078】
データ52におけるP点での摩耗状態は上記(b)に相当し、θ点での摩耗状態は上記(c)に相当している。耐摩耗性が十分であるか否かは、上記試験条件にて、逃げ面摩耗幅VBが0.25(mm)となる切削距離Lにより評価した。すなわち、L≦1000(m)のときは×、1000(m)<L<1500(m)のときは△、1500(m)≦L≦2500(m)のときは○、およびL≧2500(m)のとき◎とした。
【0079】
また、チッピングを起こしたか否かは、顕微鏡で確認することにした。具体的には、刃先のチッピングが進むと振動、騒音が発生し、切削部にむしれ、バリが発生することから、切削途中にそのような現象が認められた場合には、直ちに実験を停止し、工具顕微鏡で刃先を観察する。また、必要に応じて走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、チッピング現象を特定した。
【0080】
上記試験では、切削工具の切刃のすくい角も考慮にいれたので、ここで、切削工具の切刃のすくい角について説明しておく。図8は、二次元切削におけるすくい角の正負を示した説明図であり、(a)はすくい角が負の場合、(b)はすくい角が正の場合である。
【0081】
すくい角とは、二次元切削における送り方向に直角となる面と工具刃先すくい面とのなす角度をいう。同図を見るとわかるように、すくい角を正にした方が刃先の食いつき・切れが良い。すくい角を負にすると、切削対象がむしれることによりバリが発生してしまうという特徴がある。なお、(a)の場合の刃先角度は85度程度、(b)の場合は、65〜80度程度が一般的である。また、当然のことながら切削工具本体の傾きが変われば、それに応じてすくい角も変わってくる。
【0082】
【表5】
Figure 2004066402
【0083】
【表6】
Figure 2004066402
【0084】
表5は、本発明にかかる切削工具の切削試験結果を示す表である。表6は、本発明にかかる切削工具の切削試験結果の比較例を示す表である。表5において、本発明1は4種類の高速度鋼(JIS SKH53、55、57)を用いて、それぞれ、すくい角、逃げ角および刃先角度を変えて切削したときの結果である。試験結果は被削材のバリ発生、刃先のチッピング、および刃先の摩耗で評価している。
【0085】
本発明1にかかる切削工具は、靭性に優れ、チッピングの起こり難い高速度鋼を母材とし、バリが発生しないように刃角を鋭角としてすくい角を正にし、さらに高温下における耐摩耗性に優れるAlCrSiN膜をPVD法によりコーティングしたことにより、被削物表面のバリに関してa〜fまですべて○という評価になった。これに対し、表6における比較1では、超硬(JIS P20)にTiCN等をCVDコーティングしたものを用いているが、超硬は脆く、すくい角が正角ではチッピングが発生するため、すくい角を負角にしなければならないという事情が存在し、必然的にバリが発生してしまっている。
【0086】
また、比較例2のように上記超硬工具が無理矢理すくい角を正角にして使用されると、必然的にチッピングが起こり△または×という評価になる。すくい角を正負の境界である0度にした場合では、やはりバリの発生が認められる。したがって、これらの比較例1や2の条件では、厚板の粗加工ではなんとか使用できるときがあっても、加工が難しい薄板の仕上げ加工ではどれも使用に耐えないということができる。一方、本発明にかかる切削工具では、いずれの条件でも薄板の仕上げ加工が可能になるという結果を得た。
【0087】
表5に戻って、本発明2、3、4ではコーティング膜をAlCrN、TiAlCrN、およびTiAlNと3種類変えてみたが、いずれもバリ発生等の評価に対して良好な結果を得た。一方、表6の比較例3〜6のコーティング方法およびコーティング膜種類の組み合わせでは、摩耗、チッピングという点で問題が残る。総合的に見ると、従来はすくい角を正角にできるほど、耐チッピング性、耐摩耗性に優れた切削工具はなく、高温下でもろいが、耐熱性があるという特徴を有する超硬材料にTiCNやAl2O3等の皮膜をCVD(Chemical Vapor Deposition)で成膜し、すくい角を負角にすることによって対応していたといえる。
【0088】
一方、本発明にかかる切削工具によれば、高速度鋼の基材にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVDにより成膜し、すくい角を正角とできるので、チッピングがなく、摩耗寿命に優れるばかりでなく、さらに切削対象表面のバリの発生を防止できる。バリの発生を防止できるか否かは、特に高速切削速度が要求される薄板の仕上げ加工において重要なファクターであるので、この点においても有利である。また、当該切削工具を利用すれば、工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルを長期化できるという効果を有する。
【0089】
(実施の形態2)
この実施の形態2は、実施の形態1にかかる切削工具をエッジミラー装置に代表される切削装置に適用するものである。エッジミラー装置の例でいうと、その特徴としては、切削対象の送り方向に対して直角方向となる端部を挟むように当該切削対象の両側に配置され、駆動手段によって回転させられる円筒状の工具本体と、前記工具本体の周面に取り付けられて、前記切削対象の両側端部を切削する切削工具の切刃とを備えていることが挙げられる。
【0090】
工具本体は、切削対象の送り方向に対して直角方向となる端部を挟むように当該切削対象の両側に配置される。つまり、切削対象が南北に送られるとしたときの東西方向にある端部を挟むように当該工具本体が両側に配置される。また、工具本体は円筒状の形状を有し、モーター等の駆動手段によって回転させられる。実施の形態1で説明した切削工具の切刃は、前記工具本体の周面に複数条の切刃として取り付けられ、前記切削対象の両側端部を切削する。
【0091】
この発明にかかる切削装置によれば、当該装置の有する切削工具の高速度鋼基材からなる切刃にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVDにより成膜したので、高切削速度において切刃が高温になってもチッピングがなく、摩耗寿命が向上する。また、すくい角を正角とすれば、切削対象表面のバリの発生を防止できる。バリの発生を防止できるか否かは、また、当該切削工具を利用すれば、工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルを長期化できるので、切削装置全体としても優れた効果を有するといえる。
【0092】
なお、前記工具本体の回転軸が、前記切削対象が送られるベッドの上面に対して垂直方向となる軸から傾けて設置されると、高切削速度における高温下でも耐摩耗性に優れる切刃を広範囲に使って切削できるようになる。これにより、切刃の一部だけを用いて切削対象を切削する場合に比べて、さらに工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルを長期化できるという効果を有する。
【0093】
(実施の形態3)
この発明にかかる切削工具の切刃は、高切削速度においてもチッピングせず、優れた耐摩耗性を有するので、年々切削高速化が進む切削装置(工作機械)においても適用可能である。切削装置には、旋盤、平削り盤、形削り盤、フライス盤等があり、フライス盤には用途に応じた名称を有するプロファイラー、中ぐり盤、プラノミラー等フライス加工(ミリング加工)を施す様々なタイプのものがある。これらに用いられる工具本体はバイト、フライス、またはミルと呼ばれ、これが把持される手段には刃物台、工具ホルダー等がある。
【0094】
実施の形態2でも述べたように、本発明にかかる切削工具は、高速度鋼元来の性質に加え、高速切削における高温下でも高い硬度を保ちつつ耐摩耗性に優れるという性質を備えた切刃を有する。当該切削工具は、上記工具把持手段によって把持され、切削に付される。このときに、すくい角を正角とすれば、上記高温下でも切削対象に対して食いつき・切れがよくなる。
【0095】
したがって、この発明にかかる切削装置によれば、当該装置の有する切削工具の高速度鋼基材からなる切刃にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVDにより成膜したので、高切削速度において切刃が高温になってもチッピングがなく、摩耗寿命が向上するという効果を有する。また、すくい角を正角とすれば、切削対象表面のバリの発生を防止できる切削装置となる。また、当該切削工具を利用すれば、工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルを長期化できるので、全体として優れた切削装置を構成することができる。
【0096】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明にかかる切削工具(請求項1)によれば、高速度鋼の基材にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVDにより成膜した切刃を有するので、高速切削速度が要求され、工具が高温となる加工においてもチッピングがなく、摩耗寿命に優れた切削工具を実現することができる。また、上記高温下での薄板の仕上げ加工においてもバリの発生を防止できる。これによって工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルが長期化する。
【0097】
また、この発明にかかる切削工具(請求項2)によれば、上記請求項1に記載の発明による効果に加え、すくい角を正角としたので、チッピングがなく、摩耗寿命に優れるばかりでなく、さらに切削対象表面のバリの発生を防止できるという効果を有する。バリの発生を防止できるか否かは、特に高速切削速度が要求される薄板の仕上げ加工において重要なファクターであるので、この点においても有利である。
【0098】
また、この発明にかかる切削装置(請求項3)によれば、当該装置の有する切削工具の高速度鋼基材からなる切刃にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVDにより成膜したので、高切削速度において切刃が高温になってもチッピングがなく、摩耗寿命が向上する。また、すくい角を正角とすれば、切削対象表面のバリの発生を防止できる。また、当該切削工具を利用すれば、工具寿命が増し、工具交換サイクル、チップ交換サイクルを長期化できるので、全体として優れた切削装置を構成できる。
【0099】
また、この発明にかかる切削装置(請求項4および5)によれば、耐チッピング性、耐摩耗性に優れた切削工具を有するので、特に高速切削速度が要求される薄板の仕上げ加工においても高い加工精度を有する切削装置を構成することができる。また、工具本体の回転軸が前記切削対象が送られるベッドの上面に対して垂直方向となる軸から傾けて設けられれば、高切削速度における高温下でも耐摩耗性に優れる切刃を広範囲に使って切削できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アークイオンプレーティング装置を示す構成図である。
【図2】コーティングの構成を示す説明図である。
【図3】コーティングの構成を示す説明図である。
【図4】コーティングの構成を示す説明図である。
【図5】コーティングの構成を示す説明図である。
【図6】コーティングの構成を示す説明図である。
【図7】切刃の刃先の摩耗を示すイメージ図、および切削距離と逃げ面摩耗との関係を示すグラフ図である。
【図8】二次元切削におけるすくい角の正負を示した説明図であり、(a)はすくい角が負の場合、(b)はすくい角が正の場合である。
【図9】従来から使用されている一般的なエッジミラーを示す側面図である。
【図10】エッジミラーを示す平面図である。
【図11】カッターと鋼板の関係を示した説明図である。
【符号の説明】
1     アークイオンプレーティング装置
40   層a
41   層b
50   エッジミラー
51   鋼板
52   カッター
54   ピンチロール
57   切削ヘッド
71   切刃
L     切削距離
VB   面摩耗幅

Claims (5)

  1. 高速度鋼の基材にAl、Cr、及びSiを主成分とする窒化物をPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相法)により成膜した切刃を有することを特徴とする切削工具。
  2. 前記切削工具が有する切刃は、すくい角が正角度であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
  3. 工具把持手段と、
    当該工具把持手段に把持され、切削対象を切削する請求項1または2のいずれか一つに記載の切削工具と、
    を備えたことを特徴とする切削装置。
  4. 切削対象の送り方向に対して直角方向となる端部を挟むように当該切削対象の両側に配置され、駆動手段によって回転させられる円筒状の工具本体と、
    前記工具本体の周面に取り付けられて、前記切削対象の両側端部を切削する請求項1または2のいずれか一つに記載の切削工具が有する切刃と、
    を備えたことを特徴とする切削装置。
  5. 前記工具本体の回転軸は、前記切削対象が送られるベッドの上面に対して垂直方向となる軸から傾けて設けられることを特徴とする請求項4に記載の切削装置。
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