JP2004064669A - 系列推定装置および系列推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合や伝送路変動が速い場合であっても、優れた特性を実現可能な系列推定装置を得ること。
【解決手段】本発明の系列推定装置は、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定回路4と、伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ2と、を備える構成とした。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の系列推定装置は、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定回路4と、伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ2と、を備える構成とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信で用いられる受信機内の系列推定装置および系列推定方法に関するものであり、特に、移動環境下において、ビタビアルゴリズムに基づいて送信データ系列を推定する系列推定装置および系列推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来の系列推定装置について説明する。ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置としては、たとえば、“Trellis coded modulations with improved non−coherent detection for personal and mobile satellite communications”, in Proc. of International Journal of Satellite Communications, vol. 11, pp.253−269, Nov. 1993に記載されたものがある。
【0003】
図9は、ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置の構成例を示す図である。図9において、200は受信信号であり、201はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した枝メトリックを求める枝メトリック作成回路であり、202は枝メトリックに基づいてACS処理(ACS:Add, Compare, Select)を行うACS処理回路であり、203は過去の送信データ系列の候補のパスに含まれる枝メトリックの総和を保存するパスメトリックメモリであり、204は過去の送信データ系列の候補のパスを保存するパスメモリであり、205はパスメモリ204の出力とACS処理回路202より出力される生き残りパスメトリックに基づいて送信データを判定する判定回路であり、206は判定データである。
【0004】
また、図10は、上記枝メトリック作成回路201の内部構成例を示す図である。図10において、211は受信信号200の複素共役を演算する複素共役演算器であり、212は複素共役演算器211の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、213は遅延器212の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、214は受信信号200と遅延器212の出力とを乗算して1シンボル遅延検波結果231を出力する乗算器であり、215は受信信号200と遅延器213の出力とを乗算して2シンボル遅延検波結果232を出力する乗算器であり、233はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した送信データの候補であり、216は送信データの候補233の複素共役を演算する複素共役演算器であり、217は1シンボル遅延検波結果231と複素共役演算器216の出力とを乗算する乗算器であり、218は複素共役演算器216の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、219は複素共役演算器216の出力と遅延器218の出力とを乗算する乗算器であり、220は2シンボル遅延検波結果232と乗算器219の出力とを乗算する乗算器であり、221は乗算器217の出力と乗算器220の出力とを加算する加算器であり、222は加算器221の出力の実部を演算して枝メトリックを出力する実部演算器である。
【0005】
また、図11は、ビタビアルゴリズムにおけるトレリス図の例を示す図である。白丸(○)で示したものは「状態」を表している。状態は、過去の送信データの組を表現するものである。たとえば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調方式では、送信データが0と1の2通りであるため、ビタビアルゴリズムのメモリ長(記憶する過去の送信データの長さ)を2とすると、状態数は4となる。ここでは、BPSK変調方式でかつビタビアルゴリズムのメモリ長が2の場合のトレリス図の例を示す。図11において、縦方向は上から順に4つの状態A,B,C,Dとし、横方向は時刻の変化を表している。また、各状態(○)から次の時刻の2つの状態に線が引かれているが、この線は時刻の変化に伴う状態の変化を示す「枝」と呼ばれるものである。時刻の変化とともに、状態が変化し、枝を辿っていくが、この軌跡は「パス」と呼ばれる(図11における太線)。受信側でこのパスが決定できれば、送信データ系列を判定できることになる。
【0006】
上記のように構成される従来の系列推定装置は、受信信号を過去の複数シンボルにわたって遅延検波することにより送信データ系列を推定する「多シンボル遅延検波器」である。
【0007】
ここで、図9、図10および図11を用いて従来の系列推定装置(多シンボル遅延検波器)の動作原理について説明する。なお、説明を簡単にするため、受信信号は差動符号化BSPK変調方式により変調されているものとする。
【0008】
枝メトリック作成回路201では、受信信号200を用いて、トレリス図における各枝に対応した2V通りの枝メトリックEn(k)(k=1,2,…,2V)を求める。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長であり、図11では2としている。
【0009】
図10を用いて枝メトリック作成回路201の動作を具体的に説明する。ここでは、説明を簡単にするため、V=2とする。多シンボル遅延検波器では、受信信号の過去Vシンボルにわたって遅延検波を行い、本結果に基づいて送信データ系列を推定する。ここでは、V=2としているため、過去2シンボルにわたって遅延検波を行うことになる。
【0010】
受信信号200をrn(nは時刻を表す)とすると、枝メトリック作成回路201では、複素共役演算器211,遅延器212,遅延器213,乗算器214,乗算器215を用いて、1シンボル遅延検波結果231を式(1)のように、また、2シンボル遅延検波結果232を式(2)のように、それぞれ演算する。
Rn(1)=rnr* n−1 …(1)
Rn(2)=rnr* n−2 …(2)
なお、A*はAの複素共役を表す。
【0011】
つぎに、各枝に対応した送信データの候補233をJnとし、複素共役演算器216では、送信データの候補233の複素共役J* nを演算する。そして、遅延器218が、J* nを1シンボルだけ遅延したJ* n−1を演算する。ただし、J* nとJ* n−1の組は、各枝に対応して異なるものとなる。
【0012】
乗算器219では、J* nとJ* n−1を乗算してJ* n×J* n−1を演算する。そして、乗算器217,乗算器220,加算器221,実部演算器222を用いて、枝メトリックEn(k)を式(3)のように演算する。
En(k)=Re[Rn(1)×J* n]+Re[Rn(2)×J* n×J* n−1] …(3)
【0013】
一般的なVに関しても、同様の概念で枝メトリックEn(k)は演算でき、式(4)のように表される。
【0014】
【数1】
【0015】
ACS処理回路202では、各時刻において、トレリス図上の各状態(白丸)へ入るパスを選択する。状態の個数がNS(=2V−1)であれば、各状態に対応してNS個のパスを各時刻において選択する。NS個の選択したパスは「生き残りパス」と呼ばれ、これらはパスメモリ204に保存される。ただし、パスメモリ204には、生き残りパスとして、その生き残りパスに対応したU時刻過去までの送信データの系列の候補が保存される。また、Uをパスメモリ長と呼ぶ。また、生き残りパスに含まれる全ての枝の枝メトリックの総和は「生き残りパスメトリック」と呼ばれ、パスメトリックメモリ203に保存される。
【0016】
ACS処理回路202では、各状態に対応した処理を行うが、ここでは、たとえば、状態m(m=1,2,…,NS)に対応した処理を示す。ACS処理回路202では、状態mに繋がる2つの枝に対応した枝メトリックEn(p),En(q)を枝メトリック作成回路201から受け取る。また、状態mに繋がる2つの枝によって結ばれる1時刻過去の2つの状態i,j、に対応した1時刻過去の生き残りパスメトリックPMn−1(i),PMn−1(j)を、パスメトリックメモリ203から受け取る。また、状態mに繋がる2つの枝によって結ばれる1時刻過去の2つの状態i,j、に対応した1時刻過去の生き残りパスPTn−1(i),PTn−1(j)をパスメモリ204から受け取る。そして、枝メトリックEn(p),En(q)と生き残りパスメトリックPMn−1(i),PMn−1(j)とをそれぞれ加算し、比較し、大きい方を状態mに対応した現時刻の生き残りパスメトリックPMn(m)として選択する。すなわち、PMn(m)は式(5)で表わされる。
PMn(m)=max{En(p)+PMn−1(i),
En(q)+PMn−1(j)} …(5)
【0017】
更新された現時刻の生き残りパスメトリックPMn(m)は、パスメトリックメモリ203に保存される。また、上記En(p)+PMn−1(i)とEn(q)+PMn−1(j)との比較では、たとえば、En(p)+PMn−1(i)が大きい場合にはPTn−1(i)を選択し、一方、En(q)+PMn−1(j)が大きい場合にはPTn−1(j)を選択する。そして、選択された1時刻過去の生き残りパスから最も古い送信データの候補を除き、上記比較結果で選択されるパスで決定される現時刻の送信データの候補を付加した新たな送信データの系列の候補を、状態mに対応した現時刻の生き残りパスPTn(m)とする。更新された現時刻の生き残りパスPTn(m)は、パスメモリ204に保存される。
【0018】
判定回路205では、パスメモリ204に保存された各状態に対応した生き残りパスのうち、最尤の状態の生き残りパス(最尤パスと呼ぶ)の最も古い送信データの候補を送信データと判定し、判定結果を判定データ206として出力する。なお、最尤の状態とは、ACS処理回路202から出力される各状態に対応した生き残りパスメトリックPMn(m)(m=1,2,…,NS)のうち、最も値の大きい生き残りパスメトリックPMn(m1)で定められた状態m1のことをいう。図11では、判定時刻nにおける最尤パスを太線で示している。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上記、従来の系列推定装置においては、多シンボル遅延検波を行うことにより複数シンボルにわたって雑音を平均化するため、通常の遅延検波に比べて静特性が優れている。しかしながら、搬送波周波数が高い移動体通信や、低いシンボルレートで伝送を行う移動体通信などにおいては、移動環境におけるフェージングでの最大ドップラー周波数が高くなる傾向にあり、伝送路の変動が速くなる。そのため、複数シンボルを参照する多シンボル遅延検波は、遅延検波に比べて伝送路変動に対する追随性が劣り、特性が劣化する、という問題があった。
【0020】
一方、多シンボル遅延検波においても、伝送路変動に対する追随性を重視した方式も提案されており、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000で開示されている。しかしながら、伝送路変動に対する追随性を重視することにより、雑音の影響を受けやすくなるため、低いS/N(信号電力対雑音電力比)環境での特性や、伝送路変動が遅い場合の特性が劣化する、という問題があった。
【0021】
このように、従来の系列推定装置では、あらゆる環境において、優れた特性を実現することが困難である。
【0022】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合や伝送路変動が速い場合であっても、優れた特性を実現可能な系列推定装置および系列推定方法を得ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定手段と、前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のトレリスの各状態に対応して設けられ、当該トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて伝送路推定処理を行う複数の伝送路推定手段と、同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、を備え、前記伝送路推定手段は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0025】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを採用し、複数のステップサイズパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0026】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムを採用し、複数の忘却係数を用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0027】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする。
【0028】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段、を備え、前記並列ビタビプロセッサ手段では、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする。
【0029】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、前記並列ビタビプロセッサ手段における複数のパラメータとして、S/N環境や伝送路変動に応じた複数の重み付け係数を用いることを特徴とする。
【0030】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに基づいて、前記最尤の状態を決定することを特徴とする。
【0031】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに特定の重み付け処理を行い、当該重み付け処理結果に基づいて前記最尤の状態を決定することを特徴とする。
【0032】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0033】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて、所定数のトレリスの各状態に対応して個別に伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、を含み、前記各伝送路推定処理は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0034】
つぎの発明にかかる系列推定方法において、前記伝送路推定ステップでは、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする。
【0035】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップ、を含み、前記系列判定ステップでは、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる系列推定装置および系列推定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0037】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる系列推定装置の実施の形態1の構成例を示す図である。図1において、1は受信信号であり、2は受信信号1とP通りの伝送路推定値5からビタビアルゴリズムに基づいて送信データを判定し、判定データ7を出力するとともに、伝送路推定のための仮判定データ6を出力する並列ビタビプロセッサであり、3は並列ビタビプロセッサ2が仮判定データ6を出力するまでの遅延時間分だけ受信信号1を遅延させる遅延器であり、4は遅延後の受信信号8と仮判定データ6からP通りのパラメータにより伝送路を推定する伝送路推定回路である。
【0038】
また、図2は、上記並列ビタビプロセッサ2の内部構成例を示す図である。図2において、11−1〜Pは、P通りの伝送路推定値5に基づいて、個別に、ビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した枝メトリックを求めるP個の枝メトリック作成回路であり、12−1〜Pは、枝メトリック作成回路11−1〜P出力の枝メトリックに基づいて、個別にACS処理を行うP個のACS処理回路であり、13は生き残りパスメトリックを保存するパスメトリックメモリであり、14は生き残りパスを保存するパスメモリであり、15はパスメモリ14出力の生き残りパスとACS処理回路12−1〜P出力の生き残りパスメトリックに基づいて送信データを判定し、判定データ7と仮判定データ6とを出力する判定回路である。
【0039】
また、図3は、上記伝送路推定回路4の内部構成例を示す図である。図3において、21は仮判定データ6が順次入力される(V−1)段のシフトレジスタであり、22−1〜Vは、仮判定データ6とシフトレジスタ21出力に対して、推定した伝送路推定値であるタップ係数B1,B2,…,BVを個別に乗算する乗算器であり、23は乗算器22−1〜V出力を加算する加算器であり、24は加算器23出力と遅延付加後の受信信号8との誤差を求め、これに基づいてタップ係数B1,B2,…,BVを更新し、その更新結果を伝送路推定値5として出力するタップ係数更新回路である。
【0040】
つぎに、図1〜図3を用いて本実施の形態の系列推定装置の動作を説明する。なお、説明の便宜上、変調方式をBPSKと仮定する。また、ここでは、伝送路においてV波の遅延波が存在する場合を示す。遅延波がない場合には、V=1とする。
【0041】
伝送路推定回路4では、V波の遅延波に対応したVタップ分のチャネルインパルス応答(CIR)C1,C2,…,CVを逐次推定する。本実施の形態では、CIRの推定にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムと呼ばれる適応アルゴリズムを用いる。
【0042】
ここで、伝送路推定回路4の動作を詳細に説明する。まず、伝送路推定回路4に入力される仮判定データ6は、受信信号(遅延器3にて遅延付加後の受信信号)8に対応した送信データの判定結果である。そして、受信信号8(=rn)は、送信データInをマルチパス伝送路を介して受け取った信号であり、式(6)で表わされる。
【0043】
【数2】
【0044】
加算器23では、式(6)で表わされた受信信号8(=rn)を推定し、その推定結果をrn´と表記する。加算器23出力rn´は、受信信号8(=rn)に対応した仮判定データ6(=In´),シフトレジスタ21出力In−1´,In−2´,…,In−(V−1)´および推定したCIRであるタップ係数B1,B2,…,BVを用いて、式(7)で表わされる。
【0045】
【数3】
【0046】
タップ係数更新回路24では、式(6)で表わされる受信信号8(=rn)と式(7)で表わされる加算器23出力rn´との誤差enを式(8)により計算する。
en=rn−rn´ …(8)
【0047】
そして、この誤差enを用いて推定CIRであるタップ係数B1,B2,…,BVを式(9)により更新する。
B(n+1)=B(n)+μenIn´ …(9)
なお、B(n)は更新前のタップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)を表し、B(n+1)は更新後のタップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)を表し、μはステップサイズパラメータを表し、In´は仮判定データベクトル(In´,In−1´,…,In−(V−1)´)を表す。タップ係数更新回路24では、更新されたタップ係数B1,B2,…,BVを伝送路推定値5として出力する。
【0048】
たとえば、上記のCIR推定においては、ステップサイズパラメータμが小さいほど雑音を軽減できるが、伝送路変動に対する追随性が損なわれる。一方、ステップサイズパラメータμが大きいほど伝送路変動に対する追随性は向上するが、雑音の影響を受けやすくなる。本実施の形態では、ステップサイズパラメータμとしてP通りを準備し、それぞれに対して上記の式(7)〜(9)を実行してP通りの伝送路推定値5を出力する。
【0049】
並列ビタビプロセッサ2では、受信信号1と上記P通りの伝送路推定値5からビタビアルゴリズムに基づいて送信データを判定し、判定データ7を出力するとともに、伝送路推定のための仮判定データ6を出力する。図4は、並列ビタビプロセッサ2におけるトレリス図の一例を示す図である。ここでは、上記P通りの伝送路推定値5に対してトレリスを準備する。また、図4は、P=2の例であり、2通りの伝送路推定値5に対して2個のトレリスを準備しており、それぞれパラメータA,パラメータBとしている。
【0050】
ここで、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作を詳細に説明する。まず、枝メトリック作成回路11−1〜Pは、P個のトレリスに対応して設けられている。枝メトリック作成回路11−1〜Pでは、P通りの伝送路推定値5に個別に対応し、受信信号1からビタビアルゴリズムのトレリスにおける各枝に対応した2V通りの枝メトリックを求め、出力する。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長であり、上記伝送路推定回路4におけるタップ数とは独立に設定してもよい。
【0051】
また、枝メトリック作成回路11−1〜Pからは、全トレリスに対応したP×2V通りの枝メトリックが出力される。なお、枝メトリックを、En(k,p)と表記する(k=1,2,…,2V、p=1,2,…,P)。
【0052】
以下、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作については、入力される伝送路推定値5の値が異なるだけであるので、ここでは、説明の便宜上、p番目の枝メトリック作成回路11−p(p=1,2,…,P)の動作を説明する。
【0053】
枝メトリック作成回路11−pでは、P通りの伝送路推定値5のうちのp番目の伝送路推定値を用いて枝メトリックを作成する。まず、p番目の伝送路推定値であるVタップ分の推定CIR、すなわち、タップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)と、枝によって決定される送信データ系列の候補(Jn,Jn−1,…,Jn−(v−1))から受信信号のレプリカを計算する。ここで、送信データ系列の候補(Jn,Jn−1,…,Jn−(v−1))は各枝に対応して(0,0,…,0)から(1,1,…,1)の2V通りの値をとる。k番目(k=1,2,…,2V)の枝に対応したレプリカRn(k)は式(10)により計算する。
【0054】
【数4】
【0055】
つぎに、受信信号1(=rn)と各枝に対応した2V通りのレプリカRn(k)から、各枝に対応した2V通りの枝メトリックEn(k,p)を式(11)により求める(k=1,2,…,2V)。
En(k,p)=−|rn−Rn(k)|2 …(11)
【0056】
ACS処理回路12−1〜Pは、P個のトレリスに対応して設けらており、各時刻において各状態(図4白丸)へ入るパスを選択する。このとき、各ACS処理回路において、入力される枝メトリックが異なる。
【0057】
ACS処理回路12−pには、p番目の枝メトリック作成回路11−pから出力された枝メトリックEn(k,p)が入力される。そして、全トレリスで選択した生き残りパスをパスメモリ14に保存する。また、生き残りパスに対応した生き残りパスメトリックを、パスメトリックメモリ13に保存する。ただし、パスメモリ14には生き残りパスとして、当該生き残りパスに対応したU時刻過去までの送信データの系列の候補が保存される。また、Uをパスメモリ長と呼ぶ。
【0058】
なお、ACS処理回路12−1〜P個々の詳細な動作については、従来技術におけるACS処理回路202と同様である。
【0059】
判定回路15では、パスメモリ14に保存された全P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パスと呼ぶ)の最も古い送信データの候補を送信データと判定し、判定データ7として出力する。また、最尤パスのD(D<U)時刻過去の送信データの候補を仮判定データ6として出力する。なお、最尤の状態とは、ACS処理回路12−1〜P出力の生き残りパスメトリックのうち、最も値の大きい生き残りパスメトリックで定められる状態のことをいう。すなわち、判定データ7および仮判定データ6は、P通りの伝送路推定値5のうち、最も正しいと推測される伝送路推定値に対応したデータとなる。
【0060】
図4では、判定時刻nでの最尤パスを太実線で示し、判定時刻n+1での最尤パスを太点線で示している。すなわち、判定時刻nにおいては、パラメータAで推定された伝送路推定値が正しい伝送路推定値であると推測され、判定時刻n+1においては、パラメータBで推定された伝送路推定値が正しい伝送路推定値であると推測されたことになり、各判定時刻で適切な伝送路推定値に基づいて判定処理が行われる。
【0061】
なお、本実施の形態の系列推定装置では、伝送路推定回路で伝送路を推定することとしたが、これに限らず、既知データ系列を用いた手法(伝送路推定方法)を併用することとしてもよい。たとえば、図5に示すように、予め送信データ系列の中に一定の間隔で既知データ系列300−1,300−2,300−3,…を挿入する。一方、系列推定装置においては、この既知データ系列を準備しておき、受信信号と既知データ系列の相関値を逐次計算する。そして、既知データ系列の挿入されている区間に対応した受信信号301−1,301−2,301−3,…を受信したタイミング(たとえば、図5の302で示すタイミング)から長さVの相関値の系列を抜き出す。適当な既知データ系列を用いることにより、長さVの相関値の系列は、Vタップ分の伝送路推定値B1,B2,…,BVとなる。このVタップ分の伝送路推定値を得た後、それを伝送路推定値の初期値とし、その後、受信信号を受け取る毎に、伝送路推定回路にて逐次伝送路を推定する。
【0062】
また、伝送路推定回路4では、LMSアルゴリズムを用いているが、これに限らず、RLS(Recursive Least squares)アルゴリズム等の、他の適応アルゴリズムを用いることとしてもよい。たとえば、RLSアルゴリズムを採用する場合には、複数の忘却係数によりP個の伝送路推定値を求める。
【0063】
また、本実施の形態の系列推定装置では、P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックを平等に比較し、最尤の状態を決定したが、これに限らず、トレリス毎に生き残りパスメトリックに特定の重み付けを行い、その上で比較し、最尤の状態を決定することとしてもよい。
【0064】
また、本実施の形態の系列推定装置では、変調方式をBPSKと仮定したが、他のディジタル変調方式に容易に拡張することもできる。また、変調側で差動符号化を行った場合であっても、ビタビアルゴリズムにおける送信データ系列の候補に差動符号化を行うことで容易に対応できる。
【0065】
このように、本実施の形態においては、伝送路推定回路が、複数のパラメータにより伝送路を推定し、並列ビタビプロセッサが、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定することとした。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態においては、各時刻で複数の伝送路推定値に基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる。
【0067】
実施の形態2.
図6は、本発明にかかる系列推定装置の実施の形態2の構成例を示す図である。図6において、4−1,4−2,…4−Nはビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して設けられた伝送路推定回路であり、実施の形態1における図1と異なる箇所は、遅延器3がないこと、および伝送路推定回路4−1〜Nがビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して設けられていること、の2点である。なお、前述した実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
以下、図6を用いて本実施の形態の系列推定装置の動作を説明する。たとえば、伝送路の推定をP通りのパラメータで行う場合、並列ビタビプロセッサ2における全P個のトレリスの状態数は、P×2V−1となるため、伝送路推定回路の数Nは、P×2V−1となる。図6は、伝送路の推定処理をビタビアルゴリズムの各状態に対応して行う系列推定装置であり、基本動作(P=1の場合)に関しては、たとえば、“Adaptive maximum−likelihood sequence estimation by means of combined equalization and decoding in fading environments”, IEEE JSAC, pp. 102−109, 1995で開示されている。
【0069】
伝送路推定回路4−1〜Nは、それぞれ図3の伝送路推定回路4と同様の構成となるが、それぞれの動作では、1つのステップサイズパラメータμでのみ伝送路を推定する。ただし、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nのうち、同一のトレリスの各状態に対応した2V−1個の伝送路推定回路は、同一のステップサイズパラメータμで伝送路を推定し、異なったトレリスに対応した伝送路推定回路は、異なったステップサイズパラメータμで伝送路を推定する。すなわち、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nは、2V−1個ずつP個のグループに分類される。そして、各グループ内(同一のトレリスに対応しているグループ内)では、同一のステップサイズパラメータμを用い、異なったグループ間(異なったトレリスに対応しているグループ間)では、異なったステップサイズパラメータμを用いることとなる。最終的に、伝送路推定回路4−1〜Nからは、全P×2V−1通りの伝送路推定値5が出力される。
【0070】
並列ビタビプロセッサ2は、前述の実施の形態1における図1の並列ビタビプロセッサ2と基本的に同様の構成となるが、枝メトリック作成回路11−1〜Pにて受け取る伝送路推定値5と、伝送路推定回路4−1〜N毎に異なった仮判定データ6を出力する処理、が異なる。
【0071】
上記のように、伝送路推定回路4−1〜Nは、全P個のトレリスに対応して、P個のグループに分類されるが、p番目(p=1,2,…,P)のグループに属する、すなわち、p番目のトレリスに対応した2V−1個の伝送路推定回路から出力される2V−1通りの伝送路推定値5は、p番目の枝メトリック作成回路11−pへ入力される。そして、p番目の枝メトリック作成回路では、前記式(10)と式(11)により枝メトリックEn(k,p)を求める。なお、式(10)においては、各枝によって結ばれる1時刻過去の状態に対応した伝送路推定値5(Vタップ分の推定CIR)を用いる。1つのトレリスの状態数は2V−1であるので、p番目の枝メトリック作成回路で用いる伝送路推定値5も各状態に対応して2V−1通りとなる。
【0072】
判定回路15では、判定データ7を実施の形態1と同様に出力するが、仮判定データ6に関しては、パスメモリ14に保存された全P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスの最新の送信データの候補を、各状態に対応した伝送路推定回路4−1〜Nに出力する。
【0073】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定することとしたため、実施の形態1の構成を用いた場合よりも高速な伝送変動に対応することができる。
【0074】
実施の形態3.
つぎに、実施の形態3の系列推定装置について説明する。なお、実施の形態3における系列推定装置の構成は、先に説明した図6と同様である。本実施の形態では、伝送路推定回路4−1〜Nの内部構成と、枝メトリック作成回路11−1〜Pにおける枝メトリックの計算方法が、前述の実施の形態2と異なる。ここでは、前述した実施の形態2と異なる動作についてのみ説明する。
【0075】
図7は、実施の形態3における伝送路推定回路4−1〜Nの内部構成例を示す図である。図7において、31は受信信号8を仮判定データ6で除算する除算器であり、32は除算器31の出力を順次シフトするS段シフトレジスタであり、33−1,33−2,…,33−SはS段シフトレジスタ32の出力に特定の重み付け係数b1,b2,…,bSを乗算する乗算器であり、34は乗算器33−1〜S出力を加算する加算器である。なお、Sはビタビアルゴリズムのメモリ長V−1と独立に設定することも、あるいは、S=Vと設定することも、可能である。たとえば、S=Vとした場合には、M相PSK変調を仮定すると、多シンボル遅延検波と等価な処理となる。
【0076】
上記のように構成される実施の形態3の系列推定装置は、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に適用する。たとえば、差動符号化を行うディジタル変調と組み合わせることによって、遅延検波より優れ、かつ差動符号化同期検波に近い特性を、既知系列を用いることなく実現可能な系列推定装置(ブラインド系列推定装置)を構築できる。
【0077】
伝送路推定回路4−1〜Nでは、1つの重み付け係数の組b1,b2,…,bSでのみ伝送路を推定する。ただし、N=P×2V−1個ある伝送路推定回路4−1〜Nのうち、同一のトレリスの各状態に対応した2V−1個の伝送路推定回路は、同一の重み付け係数の組b1,b2,…,bSで伝送路を推定し、異なったトレリスに対応した伝送路推定回路は、異なった重み付け係数の組b1,b2,…,bSで伝送路を推定する。すなわち、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nは、2V−1個ずつP個のグループに分類される。そして、各グループ内(同一のトレリスに対応しているグループ内)では、同一の重み付け係数の組b1,b2,…,bSを用い、異なったグループ間(異なったトレリスに対応しているグループ間)では、異なった重み付け係数の組b1,b2,…,bSを用いることとなる。最終的に、伝送路推定回路4−1〜Nからは、全P×2V−1通りの伝送路推定値5が出力される。
【0078】
なお、重み付け係数の組b1,b2,…,bSの設定例として、式(12)や式(13)のように与える場合が考えられる。
b1=b2= … =bS=1/S …(12)
bi=(−1)i−1 SCi (ただし、i=1,2,…,S) …(13)
【0079】
たとえば、式(12)を用いる場合は、雑音の平均化効果が高まるため、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合に特性が優れる。一方、式(13)を用いる場合は、伝送路変動への追随性が高まるため、伝送路変動が速い場合に特性が優れる。この重み付け係数の設定については、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000に開示されている。本実施の形態では、両方の重み付け係数を用いて選択的に伝送路推定処理を行い、さらに、その処理結果である伝送路推定値を用いて並列ビタビプロセッサを動作させるため、あらゆる環境において優れた特性を実現できる。
【0080】
並列ビタビプロセッサ2は、実施の形態2と、枝メトリック作成回路11−1〜Pにおける枝メトリックの計算方法が異なる。
【0081】
前述のように、p番目(p=1,2,…,P)のグループに属する、すなわち、p番目のトレリスに対応した2V−1個の伝送路推定回路から出力される2V−1通りの伝送路推定値5(=B1)は、p番目の枝メトリック作成回路11−pへ入力される。そして、p番目の枝メトリック作成回路では、式(14)により枝メトリックEn(k,p)を求める。
En(k,p)=−|rn−B1Jn|2 (ただし、k=1,2,…,2V) …(14)
【0082】
なお、式(14)においては、各枝によって結ばれる1時刻過去の状態に対応した伝送路推定値5(=B1)を用いる。1つのトレリスの状態数は2V−1であるので、p番目の枝メトリック作成回路で用いる伝送路推定値5も各状態に対応して2V−1通りとなる。
【0083】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、さらに、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定することとしたため、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる。
【0084】
実施の形態4.
つぎに、実施の形態4の系列推定装置について説明する。なお、実施の形態4における系列推定装置の構成は、先に説明した図2と同様である。このように構成される実施の形態4の系列推定装置は、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波することにより送信データ系列を推定する、多シンボル遅延検波器である。ここでは、前述した実施の形態1〜3と異なる動作についてのみ説明する。
【0085】
本実施の形態における系列推定装置を構成する並列ビタビプロセッサは、先に説明した図2の並列ビタビプロセッサと基本的に同様の構成であるが、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作、具体的にいうと、伝送路推定値5と仮判定データ6を削除した点が異なる。
【0086】
枝メトリック作成回路11−1〜Pは、P個のトレリスに対応して個別に設けられている。なお、以下では、説明を簡単にするため、V=2とする。P個の枝メトリック作成回路11−1〜Pでは、P通りの重み付け係数B1,B2を用いて、受信信号1からビタビアルゴリズムのトレリスにおける各枝に対応した2V通りの枝メトリックを求める。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長である。
【0087】
そして、枝メトリック作成回路11−1〜Pからは、全P個のトレリスに対応したP×2V通りの枝メトリックが出力される。なお、枝メトリックをEn(k,p)と表記する(ただし、k=1,2,…,2V、p=1,2,…,P)。
【0088】
ここで、図8を用いて枝メトリック作成回路の動作を具体的に説明する。枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作は、重み付け係数B1,B2の値が異なるだけであるので、ここでは、p番目の枝メトリック作成回路11−p(p=1,2,…,P)についての動作を説明する。
【0089】
図8は、枝メトリック作成回路11−1〜Pの内部構成例を示す図である。図8において、41は受信信号1の複素共役を演算する複素共役演算器であり、42は複素共役演算器41の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、43は遅延器42の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、44は受信信号1と遅延器42の出力とを乗算して1シンボル遅延検波結果61を出力する乗算器であり、45は受信信号1と遅延器43の出力とを乗算して2シンボル遅延検波結果62を出力する乗算器であり、63はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した送信データの候補であり、46は送信データの候補63の複素共役を演算する複素共役演算器であり、47は1シンボル遅延検波結果61と複素共役演算器46の出力とを乗算する乗算器であり、48は複素共役演算器46の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、49は複素共役演算器46の出力と遅延器48の出力とを乗算する乗算器であり、50は2シンボル遅延検波結果62と乗算器49の出力とを乗算する乗算器であり、53,54は、乗算器47と乗算器50の出力に特定の重み付け係数B1,B2を乗算する乗算器であり、51は乗算器53の出力と乗算器54の出力とを加算する加算器であり、52は加算器51の出力の実部を演算して枝メトリックを出力する実部演算器である。
【0090】
たとえば、受信信号1をrn(nは時刻を表す)とすると、枝メトリック作成回路11−pでは、複素共役演算器41,遅延器42,遅延器43,乗算器44,乗算器45を用いて、1シンボル遅延検波結果61を前述の式(1)のように、また、2シンボル遅延検波結果62を前述の式(2)のように、それぞれ演算する。
【0091】
つぎに、各枝に対応した送信データの候補63をJnとし、複素共役演算器46では、送信データの候補63の複素共役J* nを演算する。そして、遅延器48が、J* nを1シンボルだけ遅延したJ* n−1を演算する。ただし、J* nとJ* n−1の組は、各枝に対応して異なるものとなる。
【0092】
乗算器49では、J* nとJ* n−1を乗算してJ* n×J* n−1を演算する。そして、乗算器47,乗算器50,乗算器53,乗算器54,加算器51,実部演算器52を用いて、枝メトリックEn(k)を式(15)のように演算する。
En(k,p)=B1×Re[Rn(1)×J* n]
+B2×Re[Rn(2)×J* n×J* n−1] …(15)
【0093】
一般的なVに関しても、同様の概念で枝メトリックEn(k,p)は演算でき、重み付け係数B1,B2,…,BVにより、式(16)のように表される。
【0094】
【数5】
【0095】
なお、重み付け係数の組B1,B2,…,BVの設定例としては、式(17)や式(18)が考えられる。
【0096】
【数6】
【0097】
【数7】
【0098】
たとえば、式(17)を用いる場合は、雑音の平均化効果が高まるため、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合に特性が優れる。一方、式(18)を用いる場合は、伝送路変動への追随性が高まるため、伝送路変動が速い場合に特性が優れる。この重み付け係数の設定については、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000に開示されている。本実施の形態では、両方の重み付け係数を用いて枝メトリックの作成を行い、さらに、当該枝メトリックを用いて並列ビタビプロセッサを動作させるため、あらゆる環境において優れた特性が実現できる。
【0099】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態1〜3と同様の効果が得られるとともに、さらに、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定することとしたため、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる。
【0100】
以上、この発明を実施の形態1〜4により説明したが、この発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これらを発明の範囲から排除するものではない。
【0101】
【発明の効果】
以上、説明したとおり、本発明によれば、伝送路推定手段が、複数のパラメータにより伝送路を推定し、並列ビタビプロセッサ手段が、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定する構成とした。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0102】
つぎの発明によれば、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定する構成としたため、さらに高速な伝送変動に対応することができる、という効果を奏する。
【0103】
つぎの発明によれば、伝送路推定処理にLMSアルゴリズムを採用し、複数のステップサイズパラメータを用いて伝送路を推定する構成としたため、より精度の高い伝送路推定値を得ることができる、という効果を奏する。
【0104】
つぎの発明によれば、伝送路推定処理にRLSアルゴリズムを採用し、複数の忘却係数を用いて伝送路を推定する構成としたため、より精度の高い伝送路推定値を得ることができる、という効果を奏する。
【0105】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0106】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0107】
つぎの発明によれば、並列ビタビプロセッサ手段における複数のパラメータとして、S/N環境や伝送路変動に応じた複数の重み付け係数を用いる構成としたため、あらゆる環境において高精度な枝メトリックを作成できる、という効果を奏する。
【0108】
つぎの発明によれば、すべての生き残りパスメトリックに基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、さらに優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0109】
つぎの発明によれば、すべての生き残りパスメトリックに特定の重み付け処理を行い、当該重み付け処理結果に基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、さらに優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0110】
つぎの発明によれば、伝送路推定ステップにて、複数のパラメータにより伝送路を推定し、系列判定ステップにおいては、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定する。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0111】
つぎの発明によれば、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定することとしたため、さらに高速な伝送変動に対応することができる、という効果を奏する。
【0112】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定することとした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0113】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる系列推定装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】並列ビタビプロセッサの内部構成例を示す図である。
【図3】伝送路推定回路の内部構成例を示す図である。
【図4】並列ビタビプロセッサにおけるトレリス図の一例を示す図である。
【図5】送信データ系列の中に一定の間隔で既知データ系列を挿入する場合を示す図である。
【図6】本発明にかかる系列推定装置の実施の形態2の構成例を示す図である。
【図7】実施の形態3における伝送路推定回路の内部構成例を示す図である。
【図8】枝メトリック作成回路の内部構成例を示す図である。
【図9】ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置の構成例を示す図である。
【図10】枝メトリック作成回路の内部構成例を示す図である。
【図11】ビタビアルゴリズムにおけるトレリス図の例を示す図である。
【符号の説明】
2 並列ビタビプロセッサ、3,42,43,48 遅延器、4,4−1,4−2,4−N 伝送路推定回路、11−1〜P 枝メトリック作成回路、12−1〜P ACS処理回路、13 パスメトリックメモリ、14 パスメモリ、15 判定回路、21 シフトレジスタ、22−1〜V,33−1,33−2,33−S,44,45,47,49,50,53,54 乗算器、23,34,51 加算器、24 タップ係数更新回路、31 除算器、32 S段シフトレジスタ、41,46 複素共役演算器、52 実部演算器。
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体通信で用いられる受信機内の系列推定装置および系列推定方法に関するものであり、特に、移動環境下において、ビタビアルゴリズムに基づいて送信データ系列を推定する系列推定装置および系列推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下、従来の系列推定装置について説明する。ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置としては、たとえば、“Trellis coded modulations with improved non−coherent detection for personal and mobile satellite communications”, in Proc. of International Journal of Satellite Communications, vol. 11, pp.253−269, Nov. 1993に記載されたものがある。
【0003】
図9は、ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置の構成例を示す図である。図9において、200は受信信号であり、201はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した枝メトリックを求める枝メトリック作成回路であり、202は枝メトリックに基づいてACS処理(ACS:Add, Compare, Select)を行うACS処理回路であり、203は過去の送信データ系列の候補のパスに含まれる枝メトリックの総和を保存するパスメトリックメモリであり、204は過去の送信データ系列の候補のパスを保存するパスメモリであり、205はパスメモリ204の出力とACS処理回路202より出力される生き残りパスメトリックに基づいて送信データを判定する判定回路であり、206は判定データである。
【0004】
また、図10は、上記枝メトリック作成回路201の内部構成例を示す図である。図10において、211は受信信号200の複素共役を演算する複素共役演算器であり、212は複素共役演算器211の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、213は遅延器212の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、214は受信信号200と遅延器212の出力とを乗算して1シンボル遅延検波結果231を出力する乗算器であり、215は受信信号200と遅延器213の出力とを乗算して2シンボル遅延検波結果232を出力する乗算器であり、233はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した送信データの候補であり、216は送信データの候補233の複素共役を演算する複素共役演算器であり、217は1シンボル遅延検波結果231と複素共役演算器216の出力とを乗算する乗算器であり、218は複素共役演算器216の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、219は複素共役演算器216の出力と遅延器218の出力とを乗算する乗算器であり、220は2シンボル遅延検波結果232と乗算器219の出力とを乗算する乗算器であり、221は乗算器217の出力と乗算器220の出力とを加算する加算器であり、222は加算器221の出力の実部を演算して枝メトリックを出力する実部演算器である。
【0005】
また、図11は、ビタビアルゴリズムにおけるトレリス図の例を示す図である。白丸(○)で示したものは「状態」を表している。状態は、過去の送信データの組を表現するものである。たとえば、BPSK(Binary Phase Shift Keying)変調方式では、送信データが0と1の2通りであるため、ビタビアルゴリズムのメモリ長(記憶する過去の送信データの長さ)を2とすると、状態数は4となる。ここでは、BPSK変調方式でかつビタビアルゴリズムのメモリ長が2の場合のトレリス図の例を示す。図11において、縦方向は上から順に4つの状態A,B,C,Dとし、横方向は時刻の変化を表している。また、各状態(○)から次の時刻の2つの状態に線が引かれているが、この線は時刻の変化に伴う状態の変化を示す「枝」と呼ばれるものである。時刻の変化とともに、状態が変化し、枝を辿っていくが、この軌跡は「パス」と呼ばれる(図11における太線)。受信側でこのパスが決定できれば、送信データ系列を判定できることになる。
【0006】
上記のように構成される従来の系列推定装置は、受信信号を過去の複数シンボルにわたって遅延検波することにより送信データ系列を推定する「多シンボル遅延検波器」である。
【0007】
ここで、図9、図10および図11を用いて従来の系列推定装置(多シンボル遅延検波器)の動作原理について説明する。なお、説明を簡単にするため、受信信号は差動符号化BSPK変調方式により変調されているものとする。
【0008】
枝メトリック作成回路201では、受信信号200を用いて、トレリス図における各枝に対応した2V通りの枝メトリックEn(k)(k=1,2,…,2V)を求める。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長であり、図11では2としている。
【0009】
図10を用いて枝メトリック作成回路201の動作を具体的に説明する。ここでは、説明を簡単にするため、V=2とする。多シンボル遅延検波器では、受信信号の過去Vシンボルにわたって遅延検波を行い、本結果に基づいて送信データ系列を推定する。ここでは、V=2としているため、過去2シンボルにわたって遅延検波を行うことになる。
【0010】
受信信号200をrn(nは時刻を表す)とすると、枝メトリック作成回路201では、複素共役演算器211,遅延器212,遅延器213,乗算器214,乗算器215を用いて、1シンボル遅延検波結果231を式(1)のように、また、2シンボル遅延検波結果232を式(2)のように、それぞれ演算する。
Rn(1)=rnr* n−1 …(1)
Rn(2)=rnr* n−2 …(2)
なお、A*はAの複素共役を表す。
【0011】
つぎに、各枝に対応した送信データの候補233をJnとし、複素共役演算器216では、送信データの候補233の複素共役J* nを演算する。そして、遅延器218が、J* nを1シンボルだけ遅延したJ* n−1を演算する。ただし、J* nとJ* n−1の組は、各枝に対応して異なるものとなる。
【0012】
乗算器219では、J* nとJ* n−1を乗算してJ* n×J* n−1を演算する。そして、乗算器217,乗算器220,加算器221,実部演算器222を用いて、枝メトリックEn(k)を式(3)のように演算する。
En(k)=Re[Rn(1)×J* n]+Re[Rn(2)×J* n×J* n−1] …(3)
【0013】
一般的なVに関しても、同様の概念で枝メトリックEn(k)は演算でき、式(4)のように表される。
【0014】
【数1】
【0015】
ACS処理回路202では、各時刻において、トレリス図上の各状態(白丸)へ入るパスを選択する。状態の個数がNS(=2V−1)であれば、各状態に対応してNS個のパスを各時刻において選択する。NS個の選択したパスは「生き残りパス」と呼ばれ、これらはパスメモリ204に保存される。ただし、パスメモリ204には、生き残りパスとして、その生き残りパスに対応したU時刻過去までの送信データの系列の候補が保存される。また、Uをパスメモリ長と呼ぶ。また、生き残りパスに含まれる全ての枝の枝メトリックの総和は「生き残りパスメトリック」と呼ばれ、パスメトリックメモリ203に保存される。
【0016】
ACS処理回路202では、各状態に対応した処理を行うが、ここでは、たとえば、状態m(m=1,2,…,NS)に対応した処理を示す。ACS処理回路202では、状態mに繋がる2つの枝に対応した枝メトリックEn(p),En(q)を枝メトリック作成回路201から受け取る。また、状態mに繋がる2つの枝によって結ばれる1時刻過去の2つの状態i,j、に対応した1時刻過去の生き残りパスメトリックPMn−1(i),PMn−1(j)を、パスメトリックメモリ203から受け取る。また、状態mに繋がる2つの枝によって結ばれる1時刻過去の2つの状態i,j、に対応した1時刻過去の生き残りパスPTn−1(i),PTn−1(j)をパスメモリ204から受け取る。そして、枝メトリックEn(p),En(q)と生き残りパスメトリックPMn−1(i),PMn−1(j)とをそれぞれ加算し、比較し、大きい方を状態mに対応した現時刻の生き残りパスメトリックPMn(m)として選択する。すなわち、PMn(m)は式(5)で表わされる。
PMn(m)=max{En(p)+PMn−1(i),
En(q)+PMn−1(j)} …(5)
【0017】
更新された現時刻の生き残りパスメトリックPMn(m)は、パスメトリックメモリ203に保存される。また、上記En(p)+PMn−1(i)とEn(q)+PMn−1(j)との比較では、たとえば、En(p)+PMn−1(i)が大きい場合にはPTn−1(i)を選択し、一方、En(q)+PMn−1(j)が大きい場合にはPTn−1(j)を選択する。そして、選択された1時刻過去の生き残りパスから最も古い送信データの候補を除き、上記比較結果で選択されるパスで決定される現時刻の送信データの候補を付加した新たな送信データの系列の候補を、状態mに対応した現時刻の生き残りパスPTn(m)とする。更新された現時刻の生き残りパスPTn(m)は、パスメモリ204に保存される。
【0018】
判定回路205では、パスメモリ204に保存された各状態に対応した生き残りパスのうち、最尤の状態の生き残りパス(最尤パスと呼ぶ)の最も古い送信データの候補を送信データと判定し、判定結果を判定データ206として出力する。なお、最尤の状態とは、ACS処理回路202から出力される各状態に対応した生き残りパスメトリックPMn(m)(m=1,2,…,NS)のうち、最も値の大きい生き残りパスメトリックPMn(m1)で定められた状態m1のことをいう。図11では、判定時刻nにおける最尤パスを太線で示している。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
上記、従来の系列推定装置においては、多シンボル遅延検波を行うことにより複数シンボルにわたって雑音を平均化するため、通常の遅延検波に比べて静特性が優れている。しかしながら、搬送波周波数が高い移動体通信や、低いシンボルレートで伝送を行う移動体通信などにおいては、移動環境におけるフェージングでの最大ドップラー周波数が高くなる傾向にあり、伝送路の変動が速くなる。そのため、複数シンボルを参照する多シンボル遅延検波は、遅延検波に比べて伝送路変動に対する追随性が劣り、特性が劣化する、という問題があった。
【0020】
一方、多シンボル遅延検波においても、伝送路変動に対する追随性を重視した方式も提案されており、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000で開示されている。しかしながら、伝送路変動に対する追随性を重視することにより、雑音の影響を受けやすくなるため、低いS/N(信号電力対雑音電力比)環境での特性や、伝送路変動が遅い場合の特性が劣化する、という問題があった。
【0021】
このように、従来の系列推定装置では、あらゆる環境において、優れた特性を実現することが困難である。
【0022】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合や伝送路変動が速い場合であっても、優れた特性を実現可能な系列推定装置および系列推定方法を得ることを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定手段と、前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、所定数のトレリスの各状態に対応して設けられ、当該トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて伝送路推定処理を行う複数の伝送路推定手段と、同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、を備え、前記伝送路推定手段は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0025】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを採用し、複数のステップサイズパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0026】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムを採用し、複数の忘却係数を用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0027】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記伝送路推定手段は、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする。
【0028】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する構成として、ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段、を備え、前記並列ビタビプロセッサ手段では、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする。
【0029】
つぎの発明にかかる系列推定装置にあっては、前記並列ビタビプロセッサ手段における複数のパラメータとして、S/N環境や伝送路変動に応じた複数の重み付け係数を用いることを特徴とする。
【0030】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに基づいて、前記最尤の状態を決定することを特徴とする。
【0031】
つぎの発明にかかる系列推定装置において、前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに特定の重み付け処理を行い、当該重み付け処理結果に基づいて前記最尤の状態を決定することを特徴とする。
【0032】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、を含むことを特徴とする。
【0033】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて、所定数のトレリスの各状態に対応して個別に伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、を含み、前記各伝送路推定処理は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする。
【0034】
つぎの発明にかかる系列推定方法において、前記伝送路推定ステップでは、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする。
【0035】
つぎの発明にかかる系列推定方法にあっては、ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための処理として、ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップ、を含み、前記系列判定ステップでは、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明にかかる系列推定装置および系列推定方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0037】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる系列推定装置の実施の形態1の構成例を示す図である。図1において、1は受信信号であり、2は受信信号1とP通りの伝送路推定値5からビタビアルゴリズムに基づいて送信データを判定し、判定データ7を出力するとともに、伝送路推定のための仮判定データ6を出力する並列ビタビプロセッサであり、3は並列ビタビプロセッサ2が仮判定データ6を出力するまでの遅延時間分だけ受信信号1を遅延させる遅延器であり、4は遅延後の受信信号8と仮判定データ6からP通りのパラメータにより伝送路を推定する伝送路推定回路である。
【0038】
また、図2は、上記並列ビタビプロセッサ2の内部構成例を示す図である。図2において、11−1〜Pは、P通りの伝送路推定値5に基づいて、個別に、ビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した枝メトリックを求めるP個の枝メトリック作成回路であり、12−1〜Pは、枝メトリック作成回路11−1〜P出力の枝メトリックに基づいて、個別にACS処理を行うP個のACS処理回路であり、13は生き残りパスメトリックを保存するパスメトリックメモリであり、14は生き残りパスを保存するパスメモリであり、15はパスメモリ14出力の生き残りパスとACS処理回路12−1〜P出力の生き残りパスメトリックに基づいて送信データを判定し、判定データ7と仮判定データ6とを出力する判定回路である。
【0039】
また、図3は、上記伝送路推定回路4の内部構成例を示す図である。図3において、21は仮判定データ6が順次入力される(V−1)段のシフトレジスタであり、22−1〜Vは、仮判定データ6とシフトレジスタ21出力に対して、推定した伝送路推定値であるタップ係数B1,B2,…,BVを個別に乗算する乗算器であり、23は乗算器22−1〜V出力を加算する加算器であり、24は加算器23出力と遅延付加後の受信信号8との誤差を求め、これに基づいてタップ係数B1,B2,…,BVを更新し、その更新結果を伝送路推定値5として出力するタップ係数更新回路である。
【0040】
つぎに、図1〜図3を用いて本実施の形態の系列推定装置の動作を説明する。なお、説明の便宜上、変調方式をBPSKと仮定する。また、ここでは、伝送路においてV波の遅延波が存在する場合を示す。遅延波がない場合には、V=1とする。
【0041】
伝送路推定回路4では、V波の遅延波に対応したVタップ分のチャネルインパルス応答(CIR)C1,C2,…,CVを逐次推定する。本実施の形態では、CIRの推定にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムと呼ばれる適応アルゴリズムを用いる。
【0042】
ここで、伝送路推定回路4の動作を詳細に説明する。まず、伝送路推定回路4に入力される仮判定データ6は、受信信号(遅延器3にて遅延付加後の受信信号)8に対応した送信データの判定結果である。そして、受信信号8(=rn)は、送信データInをマルチパス伝送路を介して受け取った信号であり、式(6)で表わされる。
【0043】
【数2】
【0044】
加算器23では、式(6)で表わされた受信信号8(=rn)を推定し、その推定結果をrn´と表記する。加算器23出力rn´は、受信信号8(=rn)に対応した仮判定データ6(=In´),シフトレジスタ21出力In−1´,In−2´,…,In−(V−1)´および推定したCIRであるタップ係数B1,B2,…,BVを用いて、式(7)で表わされる。
【0045】
【数3】
【0046】
タップ係数更新回路24では、式(6)で表わされる受信信号8(=rn)と式(7)で表わされる加算器23出力rn´との誤差enを式(8)により計算する。
en=rn−rn´ …(8)
【0047】
そして、この誤差enを用いて推定CIRであるタップ係数B1,B2,…,BVを式(9)により更新する。
B(n+1)=B(n)+μenIn´ …(9)
なお、B(n)は更新前のタップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)を表し、B(n+1)は更新後のタップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)を表し、μはステップサイズパラメータを表し、In´は仮判定データベクトル(In´,In−1´,…,In−(V−1)´)を表す。タップ係数更新回路24では、更新されたタップ係数B1,B2,…,BVを伝送路推定値5として出力する。
【0048】
たとえば、上記のCIR推定においては、ステップサイズパラメータμが小さいほど雑音を軽減できるが、伝送路変動に対する追随性が損なわれる。一方、ステップサイズパラメータμが大きいほど伝送路変動に対する追随性は向上するが、雑音の影響を受けやすくなる。本実施の形態では、ステップサイズパラメータμとしてP通りを準備し、それぞれに対して上記の式(7)〜(9)を実行してP通りの伝送路推定値5を出力する。
【0049】
並列ビタビプロセッサ2では、受信信号1と上記P通りの伝送路推定値5からビタビアルゴリズムに基づいて送信データを判定し、判定データ7を出力するとともに、伝送路推定のための仮判定データ6を出力する。図4は、並列ビタビプロセッサ2におけるトレリス図の一例を示す図である。ここでは、上記P通りの伝送路推定値5に対してトレリスを準備する。また、図4は、P=2の例であり、2通りの伝送路推定値5に対して2個のトレリスを準備しており、それぞれパラメータA,パラメータBとしている。
【0050】
ここで、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作を詳細に説明する。まず、枝メトリック作成回路11−1〜Pは、P個のトレリスに対応して設けられている。枝メトリック作成回路11−1〜Pでは、P通りの伝送路推定値5に個別に対応し、受信信号1からビタビアルゴリズムのトレリスにおける各枝に対応した2V通りの枝メトリックを求め、出力する。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長であり、上記伝送路推定回路4におけるタップ数とは独立に設定してもよい。
【0051】
また、枝メトリック作成回路11−1〜Pからは、全トレリスに対応したP×2V通りの枝メトリックが出力される。なお、枝メトリックを、En(k,p)と表記する(k=1,2,…,2V、p=1,2,…,P)。
【0052】
以下、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作については、入力される伝送路推定値5の値が異なるだけであるので、ここでは、説明の便宜上、p番目の枝メトリック作成回路11−p(p=1,2,…,P)の動作を説明する。
【0053】
枝メトリック作成回路11−pでは、P通りの伝送路推定値5のうちのp番目の伝送路推定値を用いて枝メトリックを作成する。まず、p番目の伝送路推定値であるVタップ分の推定CIR、すなわち、タップ係数ベクトル(B1,B2,…,BV)と、枝によって決定される送信データ系列の候補(Jn,Jn−1,…,Jn−(v−1))から受信信号のレプリカを計算する。ここで、送信データ系列の候補(Jn,Jn−1,…,Jn−(v−1))は各枝に対応して(0,0,…,0)から(1,1,…,1)の2V通りの値をとる。k番目(k=1,2,…,2V)の枝に対応したレプリカRn(k)は式(10)により計算する。
【0054】
【数4】
【0055】
つぎに、受信信号1(=rn)と各枝に対応した2V通りのレプリカRn(k)から、各枝に対応した2V通りの枝メトリックEn(k,p)を式(11)により求める(k=1,2,…,2V)。
En(k,p)=−|rn−Rn(k)|2 …(11)
【0056】
ACS処理回路12−1〜Pは、P個のトレリスに対応して設けらており、各時刻において各状態(図4白丸)へ入るパスを選択する。このとき、各ACS処理回路において、入力される枝メトリックが異なる。
【0057】
ACS処理回路12−pには、p番目の枝メトリック作成回路11−pから出力された枝メトリックEn(k,p)が入力される。そして、全トレリスで選択した生き残りパスをパスメモリ14に保存する。また、生き残りパスに対応した生き残りパスメトリックを、パスメトリックメモリ13に保存する。ただし、パスメモリ14には生き残りパスとして、当該生き残りパスに対応したU時刻過去までの送信データの系列の候補が保存される。また、Uをパスメモリ長と呼ぶ。
【0058】
なお、ACS処理回路12−1〜P個々の詳細な動作については、従来技術におけるACS処理回路202と同様である。
【0059】
判定回路15では、パスメモリ14に保存された全P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パスと呼ぶ)の最も古い送信データの候補を送信データと判定し、判定データ7として出力する。また、最尤パスのD(D<U)時刻過去の送信データの候補を仮判定データ6として出力する。なお、最尤の状態とは、ACS処理回路12−1〜P出力の生き残りパスメトリックのうち、最も値の大きい生き残りパスメトリックで定められる状態のことをいう。すなわち、判定データ7および仮判定データ6は、P通りの伝送路推定値5のうち、最も正しいと推測される伝送路推定値に対応したデータとなる。
【0060】
図4では、判定時刻nでの最尤パスを太実線で示し、判定時刻n+1での最尤パスを太点線で示している。すなわち、判定時刻nにおいては、パラメータAで推定された伝送路推定値が正しい伝送路推定値であると推測され、判定時刻n+1においては、パラメータBで推定された伝送路推定値が正しい伝送路推定値であると推測されたことになり、各判定時刻で適切な伝送路推定値に基づいて判定処理が行われる。
【0061】
なお、本実施の形態の系列推定装置では、伝送路推定回路で伝送路を推定することとしたが、これに限らず、既知データ系列を用いた手法(伝送路推定方法)を併用することとしてもよい。たとえば、図5に示すように、予め送信データ系列の中に一定の間隔で既知データ系列300−1,300−2,300−3,…を挿入する。一方、系列推定装置においては、この既知データ系列を準備しておき、受信信号と既知データ系列の相関値を逐次計算する。そして、既知データ系列の挿入されている区間に対応した受信信号301−1,301−2,301−3,…を受信したタイミング(たとえば、図5の302で示すタイミング)から長さVの相関値の系列を抜き出す。適当な既知データ系列を用いることにより、長さVの相関値の系列は、Vタップ分の伝送路推定値B1,B2,…,BVとなる。このVタップ分の伝送路推定値を得た後、それを伝送路推定値の初期値とし、その後、受信信号を受け取る毎に、伝送路推定回路にて逐次伝送路を推定する。
【0062】
また、伝送路推定回路4では、LMSアルゴリズムを用いているが、これに限らず、RLS(Recursive Least squares)アルゴリズム等の、他の適応アルゴリズムを用いることとしてもよい。たとえば、RLSアルゴリズムを採用する場合には、複数の忘却係数によりP個の伝送路推定値を求める。
【0063】
また、本実施の形態の系列推定装置では、P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックを平等に比較し、最尤の状態を決定したが、これに限らず、トレリス毎に生き残りパスメトリックに特定の重み付けを行い、その上で比較し、最尤の状態を決定することとしてもよい。
【0064】
また、本実施の形態の系列推定装置では、変調方式をBPSKと仮定したが、他のディジタル変調方式に容易に拡張することもできる。また、変調側で差動符号化を行った場合であっても、ビタビアルゴリズムにおける送信データ系列の候補に差動符号化を行うことで容易に対応できる。
【0065】
このように、本実施の形態においては、伝送路推定回路が、複数のパラメータにより伝送路を推定し、並列ビタビプロセッサが、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定することとした。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる。
【0066】
また、本実施の形態においては、各時刻で複数の伝送路推定値に基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる。
【0067】
実施の形態2.
図6は、本発明にかかる系列推定装置の実施の形態2の構成例を示す図である。図6において、4−1,4−2,…4−Nはビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して設けられた伝送路推定回路であり、実施の形態1における図1と異なる箇所は、遅延器3がないこと、および伝送路推定回路4−1〜Nがビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して設けられていること、の2点である。なお、前述した実施の形態1と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
以下、図6を用いて本実施の形態の系列推定装置の動作を説明する。たとえば、伝送路の推定をP通りのパラメータで行う場合、並列ビタビプロセッサ2における全P個のトレリスの状態数は、P×2V−1となるため、伝送路推定回路の数Nは、P×2V−1となる。図6は、伝送路の推定処理をビタビアルゴリズムの各状態に対応して行う系列推定装置であり、基本動作(P=1の場合)に関しては、たとえば、“Adaptive maximum−likelihood sequence estimation by means of combined equalization and decoding in fading environments”, IEEE JSAC, pp. 102−109, 1995で開示されている。
【0069】
伝送路推定回路4−1〜Nは、それぞれ図3の伝送路推定回路4と同様の構成となるが、それぞれの動作では、1つのステップサイズパラメータμでのみ伝送路を推定する。ただし、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nのうち、同一のトレリスの各状態に対応した2V−1個の伝送路推定回路は、同一のステップサイズパラメータμで伝送路を推定し、異なったトレリスに対応した伝送路推定回路は、異なったステップサイズパラメータμで伝送路を推定する。すなわち、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nは、2V−1個ずつP個のグループに分類される。そして、各グループ内(同一のトレリスに対応しているグループ内)では、同一のステップサイズパラメータμを用い、異なったグループ間(異なったトレリスに対応しているグループ間)では、異なったステップサイズパラメータμを用いることとなる。最終的に、伝送路推定回路4−1〜Nからは、全P×2V−1通りの伝送路推定値5が出力される。
【0070】
並列ビタビプロセッサ2は、前述の実施の形態1における図1の並列ビタビプロセッサ2と基本的に同様の構成となるが、枝メトリック作成回路11−1〜Pにて受け取る伝送路推定値5と、伝送路推定回路4−1〜N毎に異なった仮判定データ6を出力する処理、が異なる。
【0071】
上記のように、伝送路推定回路4−1〜Nは、全P個のトレリスに対応して、P個のグループに分類されるが、p番目(p=1,2,…,P)のグループに属する、すなわち、p番目のトレリスに対応した2V−1個の伝送路推定回路から出力される2V−1通りの伝送路推定値5は、p番目の枝メトリック作成回路11−pへ入力される。そして、p番目の枝メトリック作成回路では、前記式(10)と式(11)により枝メトリックEn(k,p)を求める。なお、式(10)においては、各枝によって結ばれる1時刻過去の状態に対応した伝送路推定値5(Vタップ分の推定CIR)を用いる。1つのトレリスの状態数は2V−1であるので、p番目の枝メトリック作成回路で用いる伝送路推定値5も各状態に対応して2V−1通りとなる。
【0072】
判定回路15では、判定データ7を実施の形態1と同様に出力するが、仮判定データ6に関しては、パスメモリ14に保存された全P個のトレリスの各状態に対応した生き残りパスの最新の送信データの候補を、各状態に対応した伝送路推定回路4−1〜Nに出力する。
【0073】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定することとしたため、実施の形態1の構成を用いた場合よりも高速な伝送変動に対応することができる。
【0074】
実施の形態3.
つぎに、実施の形態3の系列推定装置について説明する。なお、実施の形態3における系列推定装置の構成は、先に説明した図6と同様である。本実施の形態では、伝送路推定回路4−1〜Nの内部構成と、枝メトリック作成回路11−1〜Pにおける枝メトリックの計算方法が、前述の実施の形態2と異なる。ここでは、前述した実施の形態2と異なる動作についてのみ説明する。
【0075】
図7は、実施の形態3における伝送路推定回路4−1〜Nの内部構成例を示す図である。図7において、31は受信信号8を仮判定データ6で除算する除算器であり、32は除算器31の出力を順次シフトするS段シフトレジスタであり、33−1,33−2,…,33−SはS段シフトレジスタ32の出力に特定の重み付け係数b1,b2,…,bSを乗算する乗算器であり、34は乗算器33−1〜S出力を加算する加算器である。なお、Sはビタビアルゴリズムのメモリ長V−1と独立に設定することも、あるいは、S=Vと設定することも、可能である。たとえば、S=Vとした場合には、M相PSK変調を仮定すると、多シンボル遅延検波と等価な処理となる。
【0076】
上記のように構成される実施の形態3の系列推定装置は、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に適用する。たとえば、差動符号化を行うディジタル変調と組み合わせることによって、遅延検波より優れ、かつ差動符号化同期検波に近い特性を、既知系列を用いることなく実現可能な系列推定装置(ブラインド系列推定装置)を構築できる。
【0077】
伝送路推定回路4−1〜Nでは、1つの重み付け係数の組b1,b2,…,bSでのみ伝送路を推定する。ただし、N=P×2V−1個ある伝送路推定回路4−1〜Nのうち、同一のトレリスの各状態に対応した2V−1個の伝送路推定回路は、同一の重み付け係数の組b1,b2,…,bSで伝送路を推定し、異なったトレリスに対応した伝送路推定回路は、異なった重み付け係数の組b1,b2,…,bSで伝送路を推定する。すなわち、N=P×2V−1個の伝送路推定回路4−1〜Nは、2V−1個ずつP個のグループに分類される。そして、各グループ内(同一のトレリスに対応しているグループ内)では、同一の重み付け係数の組b1,b2,…,bSを用い、異なったグループ間(異なったトレリスに対応しているグループ間)では、異なった重み付け係数の組b1,b2,…,bSを用いることとなる。最終的に、伝送路推定回路4−1〜Nからは、全P×2V−1通りの伝送路推定値5が出力される。
【0078】
なお、重み付け係数の組b1,b2,…,bSの設定例として、式(12)や式(13)のように与える場合が考えられる。
b1=b2= … =bS=1/S …(12)
bi=(−1)i−1 SCi (ただし、i=1,2,…,S) …(13)
【0079】
たとえば、式(12)を用いる場合は、雑音の平均化効果が高まるため、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合に特性が優れる。一方、式(13)を用いる場合は、伝送路変動への追随性が高まるため、伝送路変動が速い場合に特性が優れる。この重み付け係数の設定については、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000に開示されている。本実施の形態では、両方の重み付け係数を用いて選択的に伝送路推定処理を行い、さらに、その処理結果である伝送路推定値を用いて並列ビタビプロセッサを動作させるため、あらゆる環境において優れた特性を実現できる。
【0080】
並列ビタビプロセッサ2は、実施の形態2と、枝メトリック作成回路11−1〜Pにおける枝メトリックの計算方法が異なる。
【0081】
前述のように、p番目(p=1,2,…,P)のグループに属する、すなわち、p番目のトレリスに対応した2V−1個の伝送路推定回路から出力される2V−1通りの伝送路推定値5(=B1)は、p番目の枝メトリック作成回路11−pへ入力される。そして、p番目の枝メトリック作成回路では、式(14)により枝メトリックEn(k,p)を求める。
En(k,p)=−|rn−B1Jn|2 (ただし、k=1,2,…,2V) …(14)
【0082】
なお、式(14)においては、各枝によって結ばれる1時刻過去の状態に対応した伝送路推定値5(=B1)を用いる。1つのトレリスの状態数は2V−1であるので、p番目の枝メトリック作成回路で用いる伝送路推定値5も各状態に対応して2V−1通りとなる。
【0083】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、さらに、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定することとしたため、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる。
【0084】
実施の形態4.
つぎに、実施の形態4の系列推定装置について説明する。なお、実施の形態4における系列推定装置の構成は、先に説明した図2と同様である。このように構成される実施の形態4の系列推定装置は、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波することにより送信データ系列を推定する、多シンボル遅延検波器である。ここでは、前述した実施の形態1〜3と異なる動作についてのみ説明する。
【0085】
本実施の形態における系列推定装置を構成する並列ビタビプロセッサは、先に説明した図2の並列ビタビプロセッサと基本的に同様の構成であるが、枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作、具体的にいうと、伝送路推定値5と仮判定データ6を削除した点が異なる。
【0086】
枝メトリック作成回路11−1〜Pは、P個のトレリスに対応して個別に設けられている。なお、以下では、説明を簡単にするため、V=2とする。P個の枝メトリック作成回路11−1〜Pでは、P通りの重み付け係数B1,B2を用いて、受信信号1からビタビアルゴリズムのトレリスにおける各枝に対応した2V通りの枝メトリックを求める。なお、V−1はビタビアルゴリズムのメモリ長である。
【0087】
そして、枝メトリック作成回路11−1〜Pからは、全P個のトレリスに対応したP×2V通りの枝メトリックが出力される。なお、枝メトリックをEn(k,p)と表記する(ただし、k=1,2,…,2V、p=1,2,…,P)。
【0088】
ここで、図8を用いて枝メトリック作成回路の動作を具体的に説明する。枝メトリック作成回路11−1〜Pの動作は、重み付け係数B1,B2の値が異なるだけであるので、ここでは、p番目の枝メトリック作成回路11−p(p=1,2,…,P)についての動作を説明する。
【0089】
図8は、枝メトリック作成回路11−1〜Pの内部構成例を示す図である。図8において、41は受信信号1の複素共役を演算する複素共役演算器であり、42は複素共役演算器41の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、43は遅延器42の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、44は受信信号1と遅延器42の出力とを乗算して1シンボル遅延検波結果61を出力する乗算器であり、45は受信信号1と遅延器43の出力とを乗算して2シンボル遅延検波結果62を出力する乗算器であり、63はビタビアルゴリズムのトレリス図における各枝に対応した送信データの候補であり、46は送信データの候補63の複素共役を演算する複素共役演算器であり、47は1シンボル遅延検波結果61と複素共役演算器46の出力とを乗算する乗算器であり、48は複素共役演算器46の出力を1シンボル分遅延させる遅延器であり、49は複素共役演算器46の出力と遅延器48の出力とを乗算する乗算器であり、50は2シンボル遅延検波結果62と乗算器49の出力とを乗算する乗算器であり、53,54は、乗算器47と乗算器50の出力に特定の重み付け係数B1,B2を乗算する乗算器であり、51は乗算器53の出力と乗算器54の出力とを加算する加算器であり、52は加算器51の出力の実部を演算して枝メトリックを出力する実部演算器である。
【0090】
たとえば、受信信号1をrn(nは時刻を表す)とすると、枝メトリック作成回路11−pでは、複素共役演算器41,遅延器42,遅延器43,乗算器44,乗算器45を用いて、1シンボル遅延検波結果61を前述の式(1)のように、また、2シンボル遅延検波結果62を前述の式(2)のように、それぞれ演算する。
【0091】
つぎに、各枝に対応した送信データの候補63をJnとし、複素共役演算器46では、送信データの候補63の複素共役J* nを演算する。そして、遅延器48が、J* nを1シンボルだけ遅延したJ* n−1を演算する。ただし、J* nとJ* n−1の組は、各枝に対応して異なるものとなる。
【0092】
乗算器49では、J* nとJ* n−1を乗算してJ* n×J* n−1を演算する。そして、乗算器47,乗算器50,乗算器53,乗算器54,加算器51,実部演算器52を用いて、枝メトリックEn(k)を式(15)のように演算する。
En(k,p)=B1×Re[Rn(1)×J* n]
+B2×Re[Rn(2)×J* n×J* n−1] …(15)
【0093】
一般的なVに関しても、同様の概念で枝メトリックEn(k,p)は演算でき、重み付け係数B1,B2,…,BVにより、式(16)のように表される。
【0094】
【数5】
【0095】
なお、重み付け係数の組B1,B2,…,BVの設定例としては、式(17)や式(18)が考えられる。
【0096】
【数6】
【0097】
【数7】
【0098】
たとえば、式(17)を用いる場合は、雑音の平均化効果が高まるため、低いS/N環境や伝送路変動が遅い場合に特性が優れる。一方、式(18)を用いる場合は、伝送路変動への追随性が高まるため、伝送路変動が速い場合に特性が優れる。この重み付け係数の設定については、たとえば、“多重遅延検波の一般化とその高速時変伝送路への応用”,SITA2000, pp.299−302, Oct. 2000に開示されている。本実施の形態では、両方の重み付け係数を用いて枝メトリックの作成を行い、さらに、当該枝メトリックを用いて並列ビタビプロセッサを動作させるため、あらゆる環境において優れた特性が実現できる。
【0099】
このように、本実施の形態においては、前述した実施の形態1〜3と同様の効果が得られるとともに、さらに、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定することとしたため、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる。
【0100】
以上、この発明を実施の形態1〜4により説明したが、この発明の主旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これらを発明の範囲から排除するものではない。
【0101】
【発明の効果】
以上、説明したとおり、本発明によれば、伝送路推定手段が、複数のパラメータにより伝送路を推定し、並列ビタビプロセッサ手段が、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定する構成とした。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0102】
つぎの発明によれば、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定する構成としたため、さらに高速な伝送変動に対応することができる、という効果を奏する。
【0103】
つぎの発明によれば、伝送路推定処理にLMSアルゴリズムを採用し、複数のステップサイズパラメータを用いて伝送路を推定する構成としたため、より精度の高い伝送路推定値を得ることができる、という効果を奏する。
【0104】
つぎの発明によれば、伝送路推定処理にRLSアルゴリズムを採用し、複数の忘却係数を用いて伝送路を推定する構成としたため、より精度の高い伝送路推定値を得ることができる、という効果を奏する。
【0105】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0106】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0107】
つぎの発明によれば、並列ビタビプロセッサ手段における複数のパラメータとして、S/N環境や伝送路変動に応じた複数の重み付け係数を用いる構成としたため、あらゆる環境において高精度な枝メトリックを作成できる、という効果を奏する。
【0108】
つぎの発明によれば、すべての生き残りパスメトリックに基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、さらに優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0109】
つぎの発明によれば、すべての生き残りパスメトリックに特定の重み付け処理を行い、当該重み付け処理結果に基づいて決定した最尤の状態から、送信データを判定することとした。これにより、時間の経過によって伝送路の変動の速さが刻々と変化した場合であっても、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、さらに優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0110】
つぎの発明によれば、伝送路推定ステップにて、複数のパラメータにより伝送路を推定し、系列判定ステップにおいては、これら複数の伝送路推定値に基づいてビタビアルゴリズムを動作させ、送信データを判定する。これにより、低いS/N環境や、伝送路変動が遅い場合や、伝送路変動が速い場合といった、あらゆる環境において、適切な伝送路推定値により送信データを判定することができ、優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0111】
つぎの発明によれば、ビタビアルゴリズムのトレリスの各状態に対応して別個に伝送路を推定することとしたため、さらに高速な伝送変動に対応することができる、という効果を奏する。
【0112】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、有限時間過去の受信信号を用いて複数のパラメータにより1タップ分の伝送路を推定することとした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【0113】
つぎの発明によれば、伝送路において遅延波の遅延時間がシンボルに対して無視できる場合に、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、かつ、複数のパラメータにより枝メトリックを作成し、送信データを判定する構成とした。これにより、伝送路変動が遅い場合には同期検波に近い特性を実現することができ、伝送路変動が速い場合には遅延検波よりも優れた特性を実現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる系列推定装置の実施の形態1の構成例を示す図である。
【図2】並列ビタビプロセッサの内部構成例を示す図である。
【図3】伝送路推定回路の内部構成例を示す図である。
【図4】並列ビタビプロセッサにおけるトレリス図の一例を示す図である。
【図5】送信データ系列の中に一定の間隔で既知データ系列を挿入する場合を示す図である。
【図6】本発明にかかる系列推定装置の実施の形態2の構成例を示す図である。
【図7】実施の形態3における伝送路推定回路の内部構成例を示す図である。
【図8】枝メトリック作成回路の内部構成例を示す図である。
【図9】ビタビアルゴリズムに基づいた従来の系列推定装置の構成例を示す図である。
【図10】枝メトリック作成回路の内部構成例を示す図である。
【図11】ビタビアルゴリズムにおけるトレリス図の例を示す図である。
【符号の説明】
2 並列ビタビプロセッサ、3,42,43,48 遅延器、4,4−1,4−2,4−N 伝送路推定回路、11−1〜P 枝メトリック作成回路、12−1〜P ACS処理回路、13 パスメトリックメモリ、14 パスメモリ、15 判定回路、21 シフトレジスタ、22−1〜V,33−1,33−2,33−S,44,45,47,49,50,53,54 乗算器、23,34,51 加算器、24 タップ係数更新回路、31 除算器、32 S段シフトレジスタ、41,46 複素共役演算器、52 実部演算器。
Claims (13)
- ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する系列推定装置において、
所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定手段と、
前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、
を備えることを特徴とする系列推定装置。 - ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する系列推定装置において、
所定数のトレリスの各状態に対応して設けられ、当該トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて伝送路推定処理を行う複数の伝送路推定手段と、
同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段と、
を備え、
前記伝送路推定手段は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする系列推定装置。 - 前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを採用し、複数のステップサイズパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の系列推定装置。
- 前記伝送路推定手段は、伝送路推定処理にRLS(Recursive Least Square)アルゴリズムを採用し、複数の忘却係数を用いて伝送路を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の系列推定装置。
- 前記伝送路推定手段は、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする請求項2に記載の系列推定装置。
- ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定する系列推定装置において、
ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する並列ビタビプロセッサ手段、
を備え、
前記並列ビタビプロセッサ手段では、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする系列推定装置。 - 前記並列ビタビプロセッサ手段における複数のパラメータとして、S/N環境や伝送路変動に応じた複数の重み付け係数を用いることを特徴とする請求項6に記載の系列推定装置。
- 前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに基づいて、前記最尤の状態を決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の系列推定装置。
- 前記並列ビタビプロセッサ手段は、前記所定数のトレリスの各状態に対応した生き残りパスメトリックに特定の重み付け処理を行い、当該重み付け処理結果に基づいて前記最尤の状態を決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の系列推定装置。
- ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための系列推定方法において、
所定数のパラメータを用いて当該所定数分の伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、
前記伝送路推定値単位にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、
を含むことを特徴とする系列推定方法。 - ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための系列推定方法において、
トレリス単位に個別に用意されたパラメータを用いて、所定数のトレリスの各状態に対応して個別に伝送路推定処理を行う伝送路推定ステップと、
同一のパラメータにより推定された伝送路推定値毎にビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップと、
を含み、
前記各伝送路推定処理は、トレリス毎のグループに分類され、当該グループ毎に異なったパラメータを用いて伝送路を推定することを特徴とする系列推定方法。 - 前記伝送路推定ステップでは、パラメータとしてグループ毎に異なる重み付け係数を用い、さらに、過去複数シンボルにわたる受信信号を重み付け加算することによって伝送路を推定することを特徴とする請求項11に記載の系列推定方法。
- ビタビアルゴリズムを用いて送信データ系列を推定するための系列推定方法において、
ビタビアルゴリズムを並列実行し、その後、各判定時刻において、前記並列実行分に相当する所定数のトレリスの各状態に対応する生き残りパスのうち、最尤の状態に対応した生き残りパス(最尤パス)に基づいて、送信データ系列を判定する系列判定ステップ、
を含み、
前記系列判定ステップでは、受信信号を過去複数シンボルにわたって遅延検波して多シンボル遅延検波を行い、当該検波結果を用いて複数のパラメータにより枝メトリックを作成することを特徴とする系列推定方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009200839A (ja) * | 2008-02-21 | 2009-09-03 | Mitsubishi Electric Corp | 送信装置、受信装置および通信システム |
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2002
- 2002-07-31 JP JP2002223589A patent/JP2004064669A/ja active Pending
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