JP2004052128A - 横型熱処理炉 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】熱処理室内の温度分布の均一性を向上でき、安定した熱処理を行うことができるようになるばかりか、エネルギーコストを低減できる、特に炭素繊維を製造するときの耐炎化炉として好適な横型熱処理炉を提供する。
【解決手段】横型の炉体と、この炉体内に形成された熱処理室内に被処理物を出し入れするための開口部と、熱処理室内を炉体の長さ方向に走行せしめられる被処理物の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズルおよびその熱風を吸い込むための吸込ノズルとを有する横型熱処理炉であって、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルを、走行する被処理物の弛みに応じて下方に傾斜させた。
【選択図】 図4
【解決手段】横型の炉体と、この炉体内に形成された熱処理室内に被処理物を出し入れするための開口部と、熱処理室内を炉体の長さ方向に走行せしめられる被処理物の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズルおよびその熱風を吸い込むための吸込ノズルとを有する横型熱処理炉であって、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルを、走行する被処理物の弛みに応じて下方に傾斜させた。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の前駆体繊維を耐炎化処理するための耐炎化炉として好適な横型熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維の前駆体繊維、たとえばポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を耐炎化処理するための熱処理炉、すなわち耐炎化炉としては、従来、図1に示すようなものが知られている。
【0003】
この従来の耐炎化炉は、横型の炉体1と、この炉体1内に形成された熱処理室2内に前駆体繊維を繰り返し出し入れするための開口部7a〜7fと、熱処理室2内を全体として水平方向に走行する前駆体繊維5の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズル3a〜3dと、熱風を吸い込むための吸込ノズル4a〜4dとを有している。熱処理室2内は、吹出ノズル3a〜3dから供給される加熱された酸化性気体(一般的には空気)によって200〜300℃の温度に維持されており、一方、炉体1の長手方向両側には開口部7a〜7fの位置に対応してガイドロール6a〜6dが設けられていて、前駆体繊維5はガイドロール6a〜6dによって走行方向を変えられながら熱処理室2内に繰り返し通され、その間に耐炎化処理が行われるようになっている。吹出ノズル3a〜3dや吸込ノズル4a〜4dは、熱処理室2内の温度分布が一様になるように、熱処理室2内を走行する前駆体繊維5を挟むように上下方向に多段(この例では各4段)に設けられており、吸込ノズル4a〜4dで吸い込まれた熱風は、熱風循環用ファン9、ヒータ8を有するダクト10に集められ、ヒータ8によって所望の温度に加熱された後再び吹出ノズル3s〜3dに供給されるようになっている。
【0004】
このような耐炎化炉においては、吹出ノズルから熱処理室内に吹き出された熱風の随伴効果により、常温の外気が熱処理室内に流入し、吸込ノズル側から熱処理室内の熱風が外気中に流出する。また、前駆体繊維は、出入りに伴って冷却、加熱が繰り返されることになるため、出入りの回数が増えれば増えるほど熱処理効率が低下する。熱処理効率を向上させるためには、図1における炉体長Lを長くして出入りの回数を減らすことが考えられるが、そのようにしても熱処理効率は期待するほど向上しない。
【0005】
すなわち、炉体長を長くすればするほど、図1に示すガイドロール間の距離Sも大きくなり、重力による前駆体繊維の撓み量も大きくなる。前駆体繊維の撓み量δmaxは、ガイドロール間距離をS(m)、前駆体繊維にかかる張力をT(g)、前駆体繊維の単位長さあたりの重量をρ(g)とするとき、式、
δmax=T/ρ[cosh{−((S×ρ)/(2×T))−1]
で表されるが、吹出ノズルや吸込ノズルは、この撓み量に応じた配置が必要となってくる。
【0006】
この点について説明するに、図2において、隣り合う吹出ノズル3c、3d間に形成される前駆体繊維5の走行経路の高さHsは、前駆体繊維5が下側の吹出ノズル3cに接触しないよう、吹出ノズル3cの長さLn間における前駆体繊維5の撓み量δnよりも大きくしなければならない。すなわち、炉体長Lを長くして撓み量δnが大きくなればそれに応じて走行経路の高さHsも大きくする必要がある。しかしながら、そうすると、開口部7eから流入する常温の外気の量が多くなり、熱処理室2内の温度分布の均一性が低下する。熱処理室内の温度分布の均一性が低下すると、耐炎化処理が均一に行われなくなり、糸切れやガイドロールへの巻き付きといった不都合が生ずるようになる。図2においては、吹出ノズルについて説明したが、吸込ノズルについても同様である。
【0007】
図3は、走行経路の高さHsを大きくすると開口部から熱処理室内に流入する大気の量が多くなる理由を説明するものである。図3において、吹出ノズル3c、3dから熱風Vnが吹き出すと、その随伴作用によって、開口部7eから常温の外気Vsが吹出ノズル3c、3d間を通って熱処理室2内に流入してくる。吹出ノズル3c、3dから吹き出される熱風Vnの風速が早くなればなるほど随伴作用も顕著になるため、外気Vsの流入量も多くなるが、走行経路の高さHsを大きくすると、熱処理室2内を所望の風速に保つためには熱風Vnの風速を速くしなければならず、これにより外気Vsの流入量も大きくなり、熱処理室2内で熱風Vnと外気Vsとが複雑な挙動を示すようになるため、熱処理室2内の温度分布の均一性が低下してしまうのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の横型熱処理炉の上記問題点を解決し、熱処理室内の温度分布の均一性を向上させることができ、安定した熱処理を行うことができるようになるばかりか、エネルギーコストを低減することができる、特に炭素繊維を製造するときの耐炎化炉として好適な横型熱処理炉を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、横型の炉体と、この炉体内に形成された熱処理室内に被処理物を出し入れするための開口部と、熱処理室内を炉体の長さ方向に走行せしめられる被処理物の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズルおよびその熱風を吸い込むための吸込ノズルとを有する横型熱処理炉であって、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルを、走行する被処理物の弛みに応じて下方に傾斜させた横型熱処理炉を特徴とするものである。本発明は、炉体長が少なくとも15mであるような大型の熱処理炉として特に適している。また、吹出ノズルおよび/または吸引ノズルは、炉体長をL(m)とし、水平方向に対する吹出ノズルおよび/または吸込ノズルの傾斜角度をθ(°)としたとき、不等式、
0.02L≦θ≦0.07L
を満足するように設置されているのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図4は、本発明の一実施形態に係る熱処理炉を炭素繊維の製造に用いる耐炎化炉について示すもので、図1に示した従来の熱処理炉と同じ部分には同一符号が付されている。この本発明の熱処理炉が図1に示した従来の熱処理炉と異なるのは、熱風の吹出ノズル3a〜3dと吸込ノズル4a〜4dが、図5に示すように、前駆体繊維5の弛みに応じて、一点鎖線で示す、前駆体繊維5に弛みが全くなかった場合の走行経路、すなわち水平方向に対して角度θだけ下方に傾斜せしめられていることである。このように吹出ノズル3a〜3dと吸込ノズル4a〜4dを下方に傾斜せしめることにより、図2で説明した吹出ノズル3c、3d間の走行経路の高さHsを拡げる必要がなくなり、熱処理室2内への外気Vs(図3)の流入を抑制することができるようになって熱処理室2内の温度分布の均一性が向上し、前駆体繊維5の安定した熱処理を行うことができるようになる。また、熱処理室2内への常温の外気の流入を抑制することができるため、熱処理室2内を所望の温度に維持するためのエネルギーも少なくてすむようになる。
【0011】
上述した形態は、前駆体繊維の弛みが大きくなる、特に炉体長L(図1)が15m以上であるような大型の熱処理炉に適用するとき、より大きな効果が期待できる。明らかなように、吹出ノズルと吸込ノズルの双方を傾斜させるるのが好ましいが、それが困難な場合には、いずれか一方のみを傾斜させるることも可能である。また、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルの傾斜角度θは、前駆体繊維と各ノズルのノズル軸とが略平行になるような角度とするのが最も好ましいが、炉体長をLとして、不等式、
0.02L≦θ≦0.07L
を満足する範囲であれば実用上の支障はほとんどない。なお、上記形態においては、前駆体繊維が熱処理室内を3回通過する形態を示したが、通過回数は、前駆体繊維の走行速度、炉体長等に応じて必要な処理時間を確保できるよう、任意に設定できることはいうまでもない。また、炭素繊維の製造に用いる耐炎化炉を例示したが、本発明の熱処理炉は、熱処理を伴う他の用途、たとえば、各種の糸条や布帛等の熱処理にも適用できることはいうまでもない。
【0012】
【実施例および比較例】
(実施例)
図4、図5に示した熱処理炉を耐炎化炉として用い、炭素繊維の前駆体繊維であるPAN系繊維(単糸繊度:1.1dtex、単糸数:12,000本)を耐炎化処理した。炉体長Lは20m、炉体幅は2.5m、PAN系繊維を出入りさせる開口部の幅は2,000mm、吹出ノズル間および吸込ノズル間に形成される走行経路の高さHsは30mmであり、PAN系繊維の走行速度は3m/分とした。また、吹出ノズルおよび吸込ノズルの段数はそれぞれ6段とし、傾斜角度θは1°とした。吹出ノズルおよび吸込ノズルの段数が6段であることから、PAN系繊維は熱処理室に7回出入りすることになる。また、熱処理室内の平均温度は250℃、熱風の平均循環速度は3m/秒に設定した。
【0013】
上記熱処理炉の吹出ノズルのノズル口から1mの位置に、炉体の幅方向に5個の熱電対を等配し、熱処理室内の温度分布を測定したところ、手前から順に251℃、251℃、250℃、249℃、248℃であり、最高温度と最低温度との差は3℃であった。
【0014】
また、得られた耐炎化糸を窒素雰囲気中にて1,400℃で炭化処理し、炭素繊維を得た。炭素繊維の炭化収率は53%であり、引張強度は4,500MPaであった。
(比較例1)
吹出ノズルおよび吸込ノズルを傾斜配置せず(θ=0°)、そのほかは実施例と全く同様にしてPAN系繊維を耐炎化処理した。
【0015】
実施例と同様に熱処理室内の温度を測定したところ、手前から順に252℃、251℃、250℃、249℃、248℃であり、最高温度と最低温度との差は4℃であった。
【0016】
また、実施例と同様にして得た炭素繊維の炭化収率は54%であり、引張強度は4,300MPaであった。
【0017】
この例においては、熱処理中にPAN系繊維と吹出ノズルや吸込ノズルとがたびたび接触したため、耐炎化糸は実施例のものにくらべて毛羽の多いものであった。また、毛羽の多発によるガイドロールへの巻き付きも頻発した。得られた炭素繊維も、やはり毛羽が多かった。
(比較例2)
吹出ノズルおよび吸込ノズルを傾斜配置せず(θ=0°)、かつ、走行経路の高さHsを60mmとしたほかは実施例と全く同様にしてPAN系繊維を耐炎化処理した。
【0018】
実施例と同様に熱処理室内の温度を測定したところ、手前から順に258℃、255℃、251℃、247℃、245℃であり、最高温度と最低温度との差は実に13℃にも達していた。
【0019】
また、実施例と同様にして得た炭素繊維の炭化収率は54%であり、引張強度は4,200MPaであった。
【0020】
この例においては、温度が258℃、255℃と高かった手前付近では、蓄熱による糸切れや毛羽多発によるガイドロールへの巻き付きが頻繁に発生した。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、実施例と比較例との対比からも明らかなように、熱処理室内の温度分布の均一性を向上させることができ、安定した熱処理を行うことができるようになるばかりか、熱処理室内への常温の外気の流入を抑制することができるため、熱処理室内を所望の温度に維持するためのエネルギーコストも低減することができるようになる。そのため、本発明の熱処理炉は、特に炭素繊維を製造する際の耐炎化炉として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の熱処理炉の概略縦断面図である。
【図2】図1に示した熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【図3】図1に示した熱処理炉における熱風の挙動を説明するための、熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【図4】本発明の一形態に係る熱処理炉の概略縦断面図である。
【図5】図4に示した熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 :炉体
2 :熱処理室
3a:吹出ノズル
3b:吹出ノズル
3c:吹出ノズル
3d:吹出ノズル
4a:吸込ノズル
4b:吸込ノズル
4c:吸込ノズル
4d:吸込ノズル
5 :炭素繊維の前駆体繊維(被処理物)
6a:ガイドロール
6b:ガイドロール
6c:ガイドロール
6d:ガイドロール
7a:開口部
7b:開口部
7c:開口部
7d:開口部
7e:開口部
7f:開口部
8 :ヒータ
9 :熱風循環ファン
10 :ダクト
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の前駆体繊維を耐炎化処理するための耐炎化炉として好適な横型熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維の前駆体繊維、たとえばポリアクリロニトリル(PAN)系繊維を耐炎化処理するための熱処理炉、すなわち耐炎化炉としては、従来、図1に示すようなものが知られている。
【0003】
この従来の耐炎化炉は、横型の炉体1と、この炉体1内に形成された熱処理室2内に前駆体繊維を繰り返し出し入れするための開口部7a〜7fと、熱処理室2内を全体として水平方向に走行する前駆体繊維5の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズル3a〜3dと、熱風を吸い込むための吸込ノズル4a〜4dとを有している。熱処理室2内は、吹出ノズル3a〜3dから供給される加熱された酸化性気体(一般的には空気)によって200〜300℃の温度に維持されており、一方、炉体1の長手方向両側には開口部7a〜7fの位置に対応してガイドロール6a〜6dが設けられていて、前駆体繊維5はガイドロール6a〜6dによって走行方向を変えられながら熱処理室2内に繰り返し通され、その間に耐炎化処理が行われるようになっている。吹出ノズル3a〜3dや吸込ノズル4a〜4dは、熱処理室2内の温度分布が一様になるように、熱処理室2内を走行する前駆体繊維5を挟むように上下方向に多段(この例では各4段)に設けられており、吸込ノズル4a〜4dで吸い込まれた熱風は、熱風循環用ファン9、ヒータ8を有するダクト10に集められ、ヒータ8によって所望の温度に加熱された後再び吹出ノズル3s〜3dに供給されるようになっている。
【0004】
このような耐炎化炉においては、吹出ノズルから熱処理室内に吹き出された熱風の随伴効果により、常温の外気が熱処理室内に流入し、吸込ノズル側から熱処理室内の熱風が外気中に流出する。また、前駆体繊維は、出入りに伴って冷却、加熱が繰り返されることになるため、出入りの回数が増えれば増えるほど熱処理効率が低下する。熱処理効率を向上させるためには、図1における炉体長Lを長くして出入りの回数を減らすことが考えられるが、そのようにしても熱処理効率は期待するほど向上しない。
【0005】
すなわち、炉体長を長くすればするほど、図1に示すガイドロール間の距離Sも大きくなり、重力による前駆体繊維の撓み量も大きくなる。前駆体繊維の撓み量δmaxは、ガイドロール間距離をS(m)、前駆体繊維にかかる張力をT(g)、前駆体繊維の単位長さあたりの重量をρ(g)とするとき、式、
δmax=T/ρ[cosh{−((S×ρ)/(2×T))−1]
で表されるが、吹出ノズルや吸込ノズルは、この撓み量に応じた配置が必要となってくる。
【0006】
この点について説明するに、図2において、隣り合う吹出ノズル3c、3d間に形成される前駆体繊維5の走行経路の高さHsは、前駆体繊維5が下側の吹出ノズル3cに接触しないよう、吹出ノズル3cの長さLn間における前駆体繊維5の撓み量δnよりも大きくしなければならない。すなわち、炉体長Lを長くして撓み量δnが大きくなればそれに応じて走行経路の高さHsも大きくする必要がある。しかしながら、そうすると、開口部7eから流入する常温の外気の量が多くなり、熱処理室2内の温度分布の均一性が低下する。熱処理室内の温度分布の均一性が低下すると、耐炎化処理が均一に行われなくなり、糸切れやガイドロールへの巻き付きといった不都合が生ずるようになる。図2においては、吹出ノズルについて説明したが、吸込ノズルについても同様である。
【0007】
図3は、走行経路の高さHsを大きくすると開口部から熱処理室内に流入する大気の量が多くなる理由を説明するものである。図3において、吹出ノズル3c、3dから熱風Vnが吹き出すと、その随伴作用によって、開口部7eから常温の外気Vsが吹出ノズル3c、3d間を通って熱処理室2内に流入してくる。吹出ノズル3c、3dから吹き出される熱風Vnの風速が早くなればなるほど随伴作用も顕著になるため、外気Vsの流入量も多くなるが、走行経路の高さHsを大きくすると、熱処理室2内を所望の風速に保つためには熱風Vnの風速を速くしなければならず、これにより外気Vsの流入量も大きくなり、熱処理室2内で熱風Vnと外気Vsとが複雑な挙動を示すようになるため、熱処理室2内の温度分布の均一性が低下してしまうのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の横型熱処理炉の上記問題点を解決し、熱処理室内の温度分布の均一性を向上させることができ、安定した熱処理を行うことができるようになるばかりか、エネルギーコストを低減することができる、特に炭素繊維を製造するときの耐炎化炉として好適な横型熱処理炉を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、横型の炉体と、この炉体内に形成された熱処理室内に被処理物を出し入れするための開口部と、熱処理室内を炉体の長さ方向に走行せしめられる被処理物の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズルおよびその熱風を吸い込むための吸込ノズルとを有する横型熱処理炉であって、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルを、走行する被処理物の弛みに応じて下方に傾斜させた横型熱処理炉を特徴とするものである。本発明は、炉体長が少なくとも15mであるような大型の熱処理炉として特に適している。また、吹出ノズルおよび/または吸引ノズルは、炉体長をL(m)とし、水平方向に対する吹出ノズルおよび/または吸込ノズルの傾斜角度をθ(°)としたとき、不等式、
0.02L≦θ≦0.07L
を満足するように設置されているのが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図4は、本発明の一実施形態に係る熱処理炉を炭素繊維の製造に用いる耐炎化炉について示すもので、図1に示した従来の熱処理炉と同じ部分には同一符号が付されている。この本発明の熱処理炉が図1に示した従来の熱処理炉と異なるのは、熱風の吹出ノズル3a〜3dと吸込ノズル4a〜4dが、図5に示すように、前駆体繊維5の弛みに応じて、一点鎖線で示す、前駆体繊維5に弛みが全くなかった場合の走行経路、すなわち水平方向に対して角度θだけ下方に傾斜せしめられていることである。このように吹出ノズル3a〜3dと吸込ノズル4a〜4dを下方に傾斜せしめることにより、図2で説明した吹出ノズル3c、3d間の走行経路の高さHsを拡げる必要がなくなり、熱処理室2内への外気Vs(図3)の流入を抑制することができるようになって熱処理室2内の温度分布の均一性が向上し、前駆体繊維5の安定した熱処理を行うことができるようになる。また、熱処理室2内への常温の外気の流入を抑制することができるため、熱処理室2内を所望の温度に維持するためのエネルギーも少なくてすむようになる。
【0011】
上述した形態は、前駆体繊維の弛みが大きくなる、特に炉体長L(図1)が15m以上であるような大型の熱処理炉に適用するとき、より大きな効果が期待できる。明らかなように、吹出ノズルと吸込ノズルの双方を傾斜させるるのが好ましいが、それが困難な場合には、いずれか一方のみを傾斜させるることも可能である。また、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルの傾斜角度θは、前駆体繊維と各ノズルのノズル軸とが略平行になるような角度とするのが最も好ましいが、炉体長をLとして、不等式、
0.02L≦θ≦0.07L
を満足する範囲であれば実用上の支障はほとんどない。なお、上記形態においては、前駆体繊維が熱処理室内を3回通過する形態を示したが、通過回数は、前駆体繊維の走行速度、炉体長等に応じて必要な処理時間を確保できるよう、任意に設定できることはいうまでもない。また、炭素繊維の製造に用いる耐炎化炉を例示したが、本発明の熱処理炉は、熱処理を伴う他の用途、たとえば、各種の糸条や布帛等の熱処理にも適用できることはいうまでもない。
【0012】
【実施例および比較例】
(実施例)
図4、図5に示した熱処理炉を耐炎化炉として用い、炭素繊維の前駆体繊維であるPAN系繊維(単糸繊度:1.1dtex、単糸数:12,000本)を耐炎化処理した。炉体長Lは20m、炉体幅は2.5m、PAN系繊維を出入りさせる開口部の幅は2,000mm、吹出ノズル間および吸込ノズル間に形成される走行経路の高さHsは30mmであり、PAN系繊維の走行速度は3m/分とした。また、吹出ノズルおよび吸込ノズルの段数はそれぞれ6段とし、傾斜角度θは1°とした。吹出ノズルおよび吸込ノズルの段数が6段であることから、PAN系繊維は熱処理室に7回出入りすることになる。また、熱処理室内の平均温度は250℃、熱風の平均循環速度は3m/秒に設定した。
【0013】
上記熱処理炉の吹出ノズルのノズル口から1mの位置に、炉体の幅方向に5個の熱電対を等配し、熱処理室内の温度分布を測定したところ、手前から順に251℃、251℃、250℃、249℃、248℃であり、最高温度と最低温度との差は3℃であった。
【0014】
また、得られた耐炎化糸を窒素雰囲気中にて1,400℃で炭化処理し、炭素繊維を得た。炭素繊維の炭化収率は53%であり、引張強度は4,500MPaであった。
(比較例1)
吹出ノズルおよび吸込ノズルを傾斜配置せず(θ=0°)、そのほかは実施例と全く同様にしてPAN系繊維を耐炎化処理した。
【0015】
実施例と同様に熱処理室内の温度を測定したところ、手前から順に252℃、251℃、250℃、249℃、248℃であり、最高温度と最低温度との差は4℃であった。
【0016】
また、実施例と同様にして得た炭素繊維の炭化収率は54%であり、引張強度は4,300MPaであった。
【0017】
この例においては、熱処理中にPAN系繊維と吹出ノズルや吸込ノズルとがたびたび接触したため、耐炎化糸は実施例のものにくらべて毛羽の多いものであった。また、毛羽の多発によるガイドロールへの巻き付きも頻発した。得られた炭素繊維も、やはり毛羽が多かった。
(比較例2)
吹出ノズルおよび吸込ノズルを傾斜配置せず(θ=0°)、かつ、走行経路の高さHsを60mmとしたほかは実施例と全く同様にしてPAN系繊維を耐炎化処理した。
【0018】
実施例と同様に熱処理室内の温度を測定したところ、手前から順に258℃、255℃、251℃、247℃、245℃であり、最高温度と最低温度との差は実に13℃にも達していた。
【0019】
また、実施例と同様にして得た炭素繊維の炭化収率は54%であり、引張強度は4,200MPaであった。
【0020】
この例においては、温度が258℃、255℃と高かった手前付近では、蓄熱による糸切れや毛羽多発によるガイドロールへの巻き付きが頻繁に発生した。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、実施例と比較例との対比からも明らかなように、熱処理室内の温度分布の均一性を向上させることができ、安定した熱処理を行うことができるようになるばかりか、熱処理室内への常温の外気の流入を抑制することができるため、熱処理室内を所望の温度に維持するためのエネルギーコストも低減することができるようになる。そのため、本発明の熱処理炉は、特に炭素繊維を製造する際の耐炎化炉として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の熱処理炉の概略縦断面図である。
【図2】図1に示した熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【図3】図1に示した熱処理炉における熱風の挙動を説明するための、熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【図4】本発明の一形態に係る熱処理炉の概略縦断面図である。
【図5】図4に示した熱処理炉の要部の概略縦断面図である。
【符号の説明】
1 :炉体
2 :熱処理室
3a:吹出ノズル
3b:吹出ノズル
3c:吹出ノズル
3d:吹出ノズル
4a:吸込ノズル
4b:吸込ノズル
4c:吸込ノズル
4d:吸込ノズル
5 :炭素繊維の前駆体繊維(被処理物)
6a:ガイドロール
6b:ガイドロール
6c:ガイドロール
6d:ガイドロール
7a:開口部
7b:開口部
7c:開口部
7d:開口部
7e:開口部
7f:開口部
8 :ヒータ
9 :熱風循環ファン
10 :ダクト
Claims (6)
- 横型の炉体と、この炉体内に形成された熱処理室内に被処理物を出し入れするための開口部と、熱処理室内を炉体の長さ方向に走行せしめられる被処理物の走行経路に沿って熱風を吹き出すための吹出ノズルおよびその熱風を吸い込むための吸込ノズルとを有する横型熱処理炉であって、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルを、走行する被処理物の弛みに応じて下方に傾斜させたことを特徴とする横型熱処理炉。
- 炉体長が少なくとも15mである、請求項1に記載の横型熱処理炉。
- 炉体長をL(m)とし、吹出ノズルおよび/または吸込ノズルの傾斜角度をθ(°)としたとき、吹出ノズルおよび/または吸引ノズルが、不等式、
0.02L≦θ≦0.07L
を満足するように設置されている、請求項1または2に記載の横型熱処理炉。 - 炭素繊維の前駆体繊維を耐炎化処理するための熱処理炉である、請求項1〜3のいずれかに記載の横型熱処理炉。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の横型熱処理炉を用いることを特徴とする炭素繊維の製造方法。
- 請求項5の方法によって製造された炭素繊維。
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