JP2004045254A - 核種変換方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】相対的に小規模な装置で確実に核種変換を行う。
【解決手段】核種変換を施す物質を含む酸性溶液中の陰性度の高い元素の陰イオンを、イオン交換樹脂を使用してあらかじめ除去しておき、この核種変換を施す物質を含み、かつ陰イオンを含まない酸性溶液を電解浴として、電着により構造体のパラジウム表面に核種変換を施す物質を沈着させておく。
構造体の一方の表面側を加圧或いは電気分解等により重水素の圧力が高い領域とし、他方の表面側を真空排気等により重水素の圧力が低い領域とすることで構造体内に重水素の流れを生成させ、重水素と核種変換を施す物質とを反応させることによって核種変換を行う。
【選択図】 なし
【解決手段】核種変換を施す物質を含む酸性溶液中の陰性度の高い元素の陰イオンを、イオン交換樹脂を使用してあらかじめ除去しておき、この核種変換を施す物質を含み、かつ陰イオンを含まない酸性溶液を電解浴として、電着により構造体のパラジウム表面に核種変換を施す物質を沈着させておく。
構造体の一方の表面側を加圧或いは電気分解等により重水素の圧力が高い領域とし、他方の表面側を真空排気等により重水素の圧力が低い領域とすることで構造体内に重水素の流れを生成させ、重水素と核種変換を施す物質とを反応させることによって核種変換を行う。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば長寿命の放射性廃棄物を短寿命核種或いは安定核種に変換する消滅処理や自然界に豊富な元素から希少な元素を生成する技術等に係る核種変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば使用済み核燃料を再処理する際や、重イオン加速器を用いた核融合反応による重元素合成等のように、微量の核種を核種変換する方法に対して、例えば高レベル放射性廃棄物等に含まれる多量の長寿命放射性核種を短時間のうちに効率的かつ効果的に核種変換する方法として、いわゆる消滅処理が知られている。
消滅処理は、高レベル放射性廃棄物に含まれるNP、Am、Cm等のマイナーアクチナイドや、Tc−99及びI−129等の長寿命核***生成物や、発熱性のSr−90、Cs−137やRh、Pd等の有用な白金族元素を、各元素の特性に応じて分離(群分離)した後に、半減期の長いマイナーアクチナイド及び核***生成物に対して中性子等を照射して核反応を発生させて、短寿命又は非放射性の核種に変換する核種変換処理であり、高レベル放射性廃棄物中に含まれる有用元素や長寿命放射性核種を分離及び回収して有用元素の有効利用をはかると共に、長寿命放射性核種を短寿命或いは安定な核種に変換する。
【0003】
消滅処理では、高速増殖炉等の原子炉やアクチノイド専焼炉での中性子照射によるアクチノイド等の消滅処理と、加速器での陽子照射によるアクチノイド等の核破砕処理と、加速器でのガンマ線照射による例えばセシウム、ストロンチウム等の消滅処理との3種類の方法が知られている。
原子炉等での中性子照射では、中性子反応断面積が大きいマイナーアクチナイドを合理的に処理することができ、特に、高速の中性子を照射することで核***が起こりにくい超ウラン元素を直接核***させることができる。
ただし、原子炉等の中性子照射では消滅しにくい長寿命核***生成物、例えば中性子反応断面積が小さいSr−90、Cs−137等については、加速器を利用した消滅処理が適用される。
【0004】
加速器による消滅処理では、原子炉と異なって未臨界で運転できるため、臨界に関わる安全性に優れていること、設計上の自由度が大きい等の利点があり、陽子加速器と電子線加速器が利用される。
陽子加速器を用いる消滅処理では、例えば500MeV〜2GeV程度の高エネルギー陽子を照射して標的核を破砕する核破砕反応を利用しており、核破砕反応を直接利用して核種変換を起こすと共に、標的核の破砕に伴って発生する多数の中性子を標的核周りの未臨界ブランケットに投入して核***反応を発生させたり、中性子の捕獲反応によって核種変換反応を発生させる。これにより、例えばネプツニウム、アメリシウム等の超ウラン元素及び長寿命核***生成物を消滅することができ、しかも、未臨界ブランケットで発生した熱を回収して発電を行い、陽子加速器の運転に必要な電力を自給することができる。
【0005】
また、電子線加速器を用いる消滅処理では、例えば電子線の制動輻射で発生するガンマ線や、例えば電子蓄積リングと光キャビティーを組み合わせて逆コンプトン散乱により発生させたガンマ線等による光核反応、例えば(γ、N)反応や(γ、核***)反応等の巨大共鳴を利用することによって、例えばストロンチウム、セシウム等の長寿命核***生成物や超ウラン元素等を消滅処理する。
【0006】
ところで、上記従来技術の一例による消滅処理のように、原子炉や加速器を利用して核種変換を行う場合、大規模かつ高価な装置を用いなければならず、核種変換に要する費用が嵩むという問題がある。
しかも、例えば長寿命核***生成物であるCs−137を処理する場合において、100万KW程度の原子力発電所から放出されるCs−137を加速器を利用して他の核種に変換する場合に、必要な電力は数100万KWに達してしまい、高強度かつ大電流の加速器が必要になって効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、例えば軽水炉等の原子炉では熱中性子束が1×1014/cm2 /sec程度であるのに対して、中性子反応断面積が小さいCs−137の核種変換に必要な中性子束は1×1017〜1×1018/cm 2/sec程度となり、必要な中性子束を得ることができないという問題がある。
【0008】
本出願人は先に上記の問題を解決して加速器や原子炉等の大規模な装置を使用することなしに、相対的に小規模な装置で核種変換を行うことが可能な核種変換方法として、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面上に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させることを特徴とする核種変換方法を提案した(特願2001−201875参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
使用済み核燃料を再処理する際には、先ず硝酸(NHO3 )溶液中に使用済み核燃料を溶解させ、ウラン(U)ぱプルトニウム(Pu)を分離する。するとセシウム137( 137Cs)やストロンチウム90(90Sr)等が含まれる酸性廃液が残るが、たとえば地層埋設処分等これをどうやって処分するかが検討課題となっている。簡便で小規模な装置を利用して核種を変換して処理する手段として、前述の重水素と核種変換を施す物質とを反応させる方法がある。
ところが重水素と反応させて核種変換させる方法においては、処理溶液中に塩素イオン等の電気陰性度の高い元素の陰イオン(負イオン)が含まれていると、核種変換効率が低いという問題がある。
本発明は処理溶液中に含まれている陰イオンを除去し、小規模な装置で高効率に核種変換を行う方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明ではイオン分離能を持つ物質で塩素イオン等の電気陰性度の高い元素の陰イオンと核種変換を施す物質とを分離した溶液を作成し、この溶液を使用して核種変換を施す方法を採用する。
イオン分離能を持つ物質としては、例えば陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を使用することができる。
すなわち、請求項1に記載の本発明は、イオン交換樹脂を使用して被処理物質中の陰イオンを吸着除去した後、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面上に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させる核種変換方法を採用した。
上記の方法によれば、反応を阻害する陰イオンが存在しないので核種変換を高効率のもとに進めることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、前記イオン交換樹脂として陰イオン交換樹脂を使用するものであり、請求項3に記載の本発明は、前記イオン交換樹脂として陽イオン交換樹脂を使用するものである。
いずれのイオン交換樹脂を使用しても核種変換を高効率のもとに進めることができるようになる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、前記核種変換を施す物質を付着させる手段として電着による方法を採用するものである。
この方法によれば簡単な操作で取扱い易い方法で核種変換に都合の良い試料を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の核種変換方法ついて添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る核種変換方法の原理を説明する図であり、図2は、本発明に係る核種変換方法にて使用される構造体11を示す断面構成図であり、図3は、本発明の核種変換装置30の構成図であり、図4は、図3に示す核種変換装置30での多層構造体32を示す断面構成図であり、図5は図2に示す構造体11を構成する混合層22の断面構成図であり、図6は構造体11に核種変換を施す物質を添加する電着装置60の構成を説明する図である。
【0014】
先ず、本発明の核種変換方法の原理について説明する。
本発明の核種変換方法を実現する装置10は、例えば図1に示すように、パラジウム(Pd)またはPdの合金、あるいはその他の水素を吸蔵する金属(例えば、Ti等)またはこれらの合金等からなる、略板状の構造体11と、この構造体11の両面のうち、一方の表面11A上に付着された核種変換を施す物質14とを備え、構造体11の一方の表面11A側が例えば加圧あるいは電気分解等により重水素の圧力が高い領域12とされ、他方の表面11B側が例えば真空排気等により重水素の圧力が低い領域13とされることで構造体11内に重水素の流れ15が生成され、重水素と核種変換を施す物質14とが反応することによって核種変換が行われる仕組みの装置である。
ここで、構造体11は、例えば図2に示すように、好ましくはPd基板23の表面上に、相対的に仕事関数が低い物質つまり電子を放出し易い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層22が形成され、この混合層22の表面上にPd層21が積層されて形成されている。
そしてこの構造体11のPd層21の表面に、さらに核種変換を施すべき物質(被核種変換物質)を付着させて多層構造体とした後、核種変換処理に付す。なお、多層構造体の形成方法については後述する。
【0015】
次に、本発明で使用する核種変換装置について説明する。
本発明で使用する核種変換装置30は、図3に示すように、内部が気密保持可能とされた吸蔵室31と、この吸蔵室31の内部にて被核種変換物質を含む多層構造体32を介して気密保持可能に設けられた放出室34と、バリアブルリークバルブ33を介して吸蔵室31内に重水素を供給する重水素ボンベ35と、放出室34内の真空度を検出する放出室真空計36と、多層構造体32から生成されるガス状の反応生成物を検出すると共に放出室34内の重水素量を計測することにより多層構造体32を透過する重水素の透過量を評価する質量分析器37と、放出室34内を常に真空状態に保つターボ分子ポンプ38と、放出室34及びターボ分子ポンプ38内を荒引きするためのロータリーポンプ39とを備えて構成されている。
【0016】
さらに、核種変換装置30は、例えばX線や電子線、粒子線等の照射により励起された多層構造体32の表面上の原子から放出される光電子やイオン等を検出する静電アナライザー40と、多層構造体32の両面のうち吸蔵室31内の重水素に曝される表面上にX線を照射するXPS(X−ray Photo−electron Spectrometry:X線照射光電子スペクトル分析)用のX線銃41と、内部に重水素が導入された吸蔵室31内の圧力を検出する圧力計42と、ベリリウム窓43を有する高純度ゲルマニウム検出器44からなるX線検出器と、吸蔵室31内の真空度を検出する吸蔵室真空計45と、重水素の導入以前等に吸蔵室31内を真空状態に保持する真空バルブ46と、吸蔵室31を真空状態にするターボ分子ポンプ47と、吸蔵室31及びターボ分子ポンプ47内を荒引きするためのロータリーポンプ48とを備えて構成されている。
【0017】
そして、多層構造体32の吸蔵室31側を相対的に重水素の圧力が高い状態とし、多層構造体32の放出室34側を相対的に重水素の圧力が低い状態として、多層構造体32の両面において重水素の圧力差を形成することで、吸蔵室31側から放出室34側へ重水素の流れを作り出す。
【0018】
ここで、多層構造体32は図4に示すように、Pd基板23の表面上に相対的に仕事関数が低い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層22が形成され、この混合層22の表面上にPd層21が積層され、さらに、Pd層21の表面上に核種変換を施す物質としてたとえばセシウム(Cs)層52等を付着させて構成されている。
【0019】
次に、核種変換装置に使用する多層構造体について説明する。
多層構造体を製作するには、先ず図2に示す構造体11を作成する。
先ず、図2に示すようにPd基板23(例えば、縦25mm×横25mm×厚さ0.1mm、純度99.5%以上)をアセトン中で所定時間に亘って超音波洗浄することにより脱脂する。そして、真空中(例えば、1.33×10−5Pa以下)において、900℃の温度で所定時間(例えば、10時間)に亘ってアニール(加熱処理)を行う。
次に、室温でアニール後のPd基板23を重王水により所定時間(例えば、100秒間)に亘ってエッチング処理を施して表面の不純物を除去する。
【0020】
次に、アルゴンイオンビームによるスパッター法を用いて、エッチング処理後のPd基板23上に成膜処理を施して混合層22とPd層21を形成し、構造体11を作成する。ここで、仕事関数の低い物質とPdとの混合層22は、例えば図5に示すように、厚さ100・10−10 mのCaO層57と、厚さ100・10−10 mのPd層56とを交互に積層して形成し、この混合層22の厚さを1000・10−10 mとする。そして、混合層22の表面上にPd層21を400・10−10 mで成膜することにより、構造体11を形成する。
【0021】
続いて上記構造体11のPd層21の表面に、さらに被核種変換物質を付着させて図4に示すような多層構造体32とする。
すなわち、核種変換を施すべき被核種変換物質としてCs−137を処理する場合には、CsNO3 のD2O 希薄溶液(CsNO3 /D2O 溶液)の電気分解により、核種変換を施す物質としてのCsを構造体11の成膜処理表面に沈着させる。
被核種変換物質を構造体11の表面に沈着させる方法としては、例えば図6に示すような電着装置60を使用して、1mmolのCsNO3/D2O溶液を電解液63として、直流電源61の陽極に白金陽極62を接続し、陰極に構造体11を接続して、例えば1Vの電圧で10秒間に亘って電気分解を行い、構造体11のPd層21の表面上で下記化学式(1)に示す反応を発生させてCs層52を沈着させて、図4に示す多層構造体32を形成する。
【0022】
Cs+ + e− → Cs ・・・(1)
【0023】
この際、電解液として使用するCsNO3 のD2O 希薄溶液中に塩素イオン(もしくはハロゲン元素イオン)等の陰性度の高い陰イオンが含まれていると、多層構造体にも陰性度の高い陰イオンが取り込まれて、後工程の核種変換処理において高い核種変換効率が得られなくなる。したがって、陰イオンを含まないCsNO3 のD2O 希薄溶液を使用しなければならない。通常放射性廃棄物等は酸洗処理して回収されるが、その際ハロゲン元素等の陰性度の高い元素は酸に溶解して洗浄液中に含まれてくる。そこでこれら陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離しておかなければならない。
次に、陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離する方法について説明する。
【0024】
本発明においては、イオン交換樹脂を使用して陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離する方法を採用した。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂のいずれも使用可能である。
【0025】
(第1の実施形態)
イオン交換樹脂を使用した陰性度の高い元素と被核種変換物質との分離方法の第1の実施形態として、イオン交換樹脂を使用する例を説明する。
図7は、本発明の方法で使用するイオン分離装置の構成を説明する図である。図に示すようにイオン分離装置70のガラス管73内には、陽イオン交換樹脂72が1cc程度詰められており、ガラスウール71により、ガラス管内に保持された状態になっていて、上部から溶液を注入すると、75で示した液の流れを通して容器74に回収されるような構造になっている。陽イオン交換樹脂は通常最初はNa型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がNa+ イオンで占められている状態になっているが、使用するためにH型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がH+ イオンで占められている状態にする必要があるので、イオン分離装置70に濃度1mol/lのHCl溶液1mlを150回繰り返して流す。
陽イオン交換樹脂72は下記化学式(2)の反応式でNa型からH型に変わる。
【0026】
R−Na+ + H+ → R−H++Na+(R:樹脂)・・・(2)
【0027】
上記のステップで陽イオン交換樹脂をH型にするための操作は終了したので、次に陽イオン交換樹脂に含まれる溶液中の塩素イオンを除去するために、濃度1mol/lのHNO3 溶液1mlを繰り返し10回、H2O 1mlを繰り返し10回イオン分離装置70に流す。
以上に処理でイオン分離装置を使用する条件が整ったので、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1mol/lHCl混合溶液1mlをイオン分離装置70に流す。核種変換を施すCsは化学式(3)に従って、陽イオン交換樹脂に捕捉される一方、塩素イオンは流路75に従って、容器74に回収される。従って、この過程で核種変換を施す物質と塩素イオンとは分離される。さらに陽イオン交換樹脂72が含んでいる溶液中の塩素イオンを除去するために、H2O 1mlを繰り返し10回イオン分離装置70に流す。
【0028】
R−H++ Cs+ → R−Cs++H+(R:樹脂)・・・(3)
【0029】
次に容器74を交換し、空の新しい容器74’を設置する。3mol/lDNO3 1mlを繰り返し5回イオン分離装置70に流す。すると化学式(4)に従って捕捉されていたCs+ が遊離して容器74’に回収される。本操作で元の濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1mol/lHCl混合溶液が、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −3mol/lDNO3 混合溶液となる。
【0030】
R−Cs++H+ → R−H++ Cs+(R:樹脂)・・・(4)
【0031】
次に、容器4’中の濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −3mol/lDNO3 混合溶液を蒸発乾固させると、化学式(5)に従って、D2O , DNO3 が蒸発し、CsNO3 結晶が残る。
【0032】
CsNO3 /D2 O・DNO3 → CsNO3結晶 ・・・(5)
【0033】
残った結晶に適当量のD2O を加えることにより、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O 溶液を得る。
【0034】
このようにして得られた陰イオンを含まない濃度1mmol/lのCsNO3/D2 O溶液を電解浴として用いて、図6で示すような方法で構造体11のPd層21の表面に、核種変換を施す物質を沈着させて、図4に示すような積層構造体32とする。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、イオン交換樹脂を使用した陰性度の高い元素と被核種変換物質との分離方法の第2の実施形態として、陰イオン交換樹脂を使用する例を説明する。
第2の実施形態が先の第1の実施形態と異なる点は、図7に示すイオン分離装置においてガラス管3内に陽イオン交換樹脂に変わって陰イオン交換樹脂76が1cc程度詰められている点である。陰イオン交換樹脂は通常最初はCl型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がCl− イオンで占められている状態になっているが、使用するためにはOH型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がOH− イオンで占められている状態にする必要があるので、まず濃度1mol/lのNaOH溶液1mlを繰り返し150回イオン分離装置70に流す。下記化学式6の反応式でCl型からOH型に変わる。
【0036】
R−Cl− + OH− → R−OH− + Cl− (R:樹脂)・・・(6)
【0037】
陰イオン交換樹脂76をOH型にするための操作が終了したならば、次に陰イオン交換樹脂76が含んでいる溶液中のNaを除去するために、H2O 1mlを繰り返し20回イオン分離装置70に流す。
【0038】
以上のようにしてイオン分離装置70を使用する条件が整ったならば、容器74を交換し、空の新しい容器74’を設置する。そして1mmol/lCsNO3 /D2O − 0.1mol/lHCl混合溶液 1mlをイオン分離装置70に流す。核種変換を施す被各変換物質Csは、流路75に従って容器74’に回収される。一方、塩素イオンは化学式(7)に従って、陰イオン交換樹脂に捕捉される。従って、この過程で核種変換を施す物質と塩素イオンは分離され、容器74’には陰イオンを含まないCsOH/H2O 溶液となって回収されている。
【0039】
R−OH− + Cl− → R−Cl− + OH−(R:樹脂)・・・(7)
【0040】
次に、容器74’中のCsOH/H2O 溶液を蒸発乾固させると、化学式(8)に従ってH2O が蒸発し、CsOH結晶が残る。残った結晶に適当量D2O を加える事により、1mmol/lCsNO3 /D2O 溶液を得る。この溶液にはもはや陰イオンは含まれていない。
【0041】
CsOH/H2O → CsOH結晶・・・(8)
【0042】
残ったCsOH結晶に適当量のD2O を加えることにより、陰イオンを含まない濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O 溶液を得る。
このようにして得られた濃度1mmol/lのCsNO3 /D2 O溶液を電解浴として用いて、図6で示すような方法で構造体11のPd層21の表面に、核種変換を施す物質を沈着させて、図4に示すような積層構造体32とする。
【0043】
以上、第1の実施形態又は第2の実施形態によって得られた多層積層体32を図3に示した核種変換装置30に装着して核種変換処理を行う。
すなわち、図3において多層構造体32のCs層52を吸蔵室31側に向けて、多層構造体32を介在させて吸蔵室31と放出室34とをそれぞれ気密状態に閉塞して、先ず、放出室34をロータリーポンプ39およびターボ分子ポンプ38により真空排気する。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じ、真空バルブ46を開いて吸蔵室31をロータリーポンプ48およびターボ分子ポンプ47により真空排気する。
次に、吸蔵室31の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体32の表面上に存在する元素を分析する。すなわち、X線銃41からのX線を多層構造体32の表面に照射して、このX線の照射により励起された多層構造体32の表面上の原子から放出される光電子のエネルギーを静電アナライザー40により検出する。これにより、多層構造体32の吸蔵室31側の表面上に存在する元素を同定する。
【0044】
次に、多層構造体32を、加熱装置(図示略)により例えば70℃の温度で加熱した後、真空バルブ46を閉じて吸蔵室31の真空排気を停止して、バリアブルリークバルブ33を開いて吸蔵室31内に所定のガス圧力で重水素ガスを導入して、核種変換の処理を開始する。ここで、重水素ガスを導入する際の所定のガス圧力は、例えば1.01325×105 Pa(いわゆる1気圧)とする。
そして、放出室34の質量分析器37でガス状の反応生成物(例えば、質量数A=1〜140)の測定を行い、多層構造体32を透過して放出室34内に放出された重水素の拡散挙動の評価を行う。また、多層構造体32の吸蔵室31側の高純度ゲルマニウム検出器44によりX線の測定を行う。
なお、多層構造体32を透過して放出室34内に放出された重水素量は、例えば放出室真空計36により検出される放出室34内の真空度と、ターボ分子ポンプ38の排気速度とに基づいて算出する。
【0045】
吸蔵室31内に重水素ガスの導入を開始してから所定時間(例えば数十時間)後に、多層構造体32の温度を常温に戻す。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じて吸蔵室31内への重水素ガスの導入を停止して、さらに、真空バルブ46を開いて吸蔵室31を真空排気して核種変換の処理を終了する。
そして、吸蔵室31内の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体32の表面上に存在する元素を分析して生成物の測定を行う。
そして、上述した処理を繰り返して、核種変換反応の時間変化を測定して処理終了を決定する。
【0046】
【実施例】
(実施例1,実施例2)
原子炉から発生する使用済み核燃料を硝酸(HNO3 )溶液で溶解し、ウラン(U)やプルトニウム(Pu)を分離する再処理をおこなって、セシウム137( 137Ce)を含む酸性廃液を得た。この酸性溶液中には塩素イオンが含まれていた。
このセシウム137を含む酸性廃液を上記の手順に従って陽イオン交換樹脂(実施例1)又は陰イオン交換樹脂(実施例2)を使用して処理し、塩素イオンを除去した。
しかる後、この塩素イオンを除去した酸性廃液を電解浴として使用し、前述のごとくPd層表面に電着させ、図3に示した核種変換装置に装着して前述の手順で核種変換処理を行った。
【0047】
核種変換処理終了後、積層構造体を取り外しHNO3 で表面を溶解し、その溶液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で成分分析し、核種変換反応の結果として生成された物質としてプラセオジム(Pr)を定量した。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例)
比較のためイオン交換樹脂を使用した塩素イオンの除去処理を省略して、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1molHCl混合溶液とし、この溶液を電解浴として使用し、実施例と同様にしてPd層表面に電着させ、図3に示した核種変換装置に装着して実施例と同様の手順で核種変換処理を行った。
核種変換処理終了後、積層構造体を取り外しHNO3 で表面を溶解し、その溶液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で成分分析し、核種変換反応の結果として生成された物質としてプラセオジム(Pr)を定量した。結果を表1に併記して示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から、比較例ではPrは検出限界(0.3ng)以下であるのに対して、実施例1ではPrは7.1ng検出され、実施例2ではPrは25ng検出された。
【0051】
以下で、この検出されたPrが不純物に由来したものではない事を考察する。核種変換処理を行う前の積層構造体の表面をHNO3 で溶解し、その溶液についてICP−MSでPrの定量分析を行ったところ、検出限界(0.3ng)以下であった。また、今回の処理で使用するHNO3 やH2O をICP−MSで分析したところ、Prは検出限界以下であった。すなわち、核種変換処理を行う前の段階では、Prはどこにも存在していなかったことは明らかである。
従って実施例で検出されたPrは核種変換反応の結果として生成した物であると結論できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の方法によれば、重水の濃度差を利用した拡散法による核種変換方法において、核種変換を施す物質が含まれている溶液中の電気陰性度の高い元素の陰イオンを除去することにより、再現性良く核種変換反応を生起させることができる。
したがって、小規模な装置でも有効に核種変換を行うことが可能となり、放射性廃棄物の処理にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる核種変換方法の原理を説明する図である。
【図2】本発明の核種変換方法で使用する構造体の断面図である。
【図3】本発明の核種変換方法で使用する核種変換装置の構成を示す図である。
【図4】図3に示す核種変換装置で使用する多層構造体の断面図である。
【図5】図2に示す構造体の混合層の詳細を示す図である。
【図6】本発明の核種変換方法で使用する、構造体に核種変換を施す物質を付与する装置の構成を示す図である。
【図7】イオン分離装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
10・・・・・核種変換を実現する装置、11・・・・・構造体、21・・・・・Pd層、22・・・・・混合層、 23・・・・・Pd基板、30・・・・・核種変換装置、31・・・・・吸蔵室、32・・・・・多層構造体、34・・・・・放出室、52・・・・・Cs層、60・・・・・電着装置、63電解浴、70・・・・・イオン分離装置、72(76)・・・・・イオン交換樹脂
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば長寿命の放射性廃棄物を短寿命核種或いは安定核種に変換する消滅処理や自然界に豊富な元素から希少な元素を生成する技術等に係る核種変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば使用済み核燃料を再処理する際や、重イオン加速器を用いた核融合反応による重元素合成等のように、微量の核種を核種変換する方法に対して、例えば高レベル放射性廃棄物等に含まれる多量の長寿命放射性核種を短時間のうちに効率的かつ効果的に核種変換する方法として、いわゆる消滅処理が知られている。
消滅処理は、高レベル放射性廃棄物に含まれるNP、Am、Cm等のマイナーアクチナイドや、Tc−99及びI−129等の長寿命核***生成物や、発熱性のSr−90、Cs−137やRh、Pd等の有用な白金族元素を、各元素の特性に応じて分離(群分離)した後に、半減期の長いマイナーアクチナイド及び核***生成物に対して中性子等を照射して核反応を発生させて、短寿命又は非放射性の核種に変換する核種変換処理であり、高レベル放射性廃棄物中に含まれる有用元素や長寿命放射性核種を分離及び回収して有用元素の有効利用をはかると共に、長寿命放射性核種を短寿命或いは安定な核種に変換する。
【0003】
消滅処理では、高速増殖炉等の原子炉やアクチノイド専焼炉での中性子照射によるアクチノイド等の消滅処理と、加速器での陽子照射によるアクチノイド等の核破砕処理と、加速器でのガンマ線照射による例えばセシウム、ストロンチウム等の消滅処理との3種類の方法が知られている。
原子炉等での中性子照射では、中性子反応断面積が大きいマイナーアクチナイドを合理的に処理することができ、特に、高速の中性子を照射することで核***が起こりにくい超ウラン元素を直接核***させることができる。
ただし、原子炉等の中性子照射では消滅しにくい長寿命核***生成物、例えば中性子反応断面積が小さいSr−90、Cs−137等については、加速器を利用した消滅処理が適用される。
【0004】
加速器による消滅処理では、原子炉と異なって未臨界で運転できるため、臨界に関わる安全性に優れていること、設計上の自由度が大きい等の利点があり、陽子加速器と電子線加速器が利用される。
陽子加速器を用いる消滅処理では、例えば500MeV〜2GeV程度の高エネルギー陽子を照射して標的核を破砕する核破砕反応を利用しており、核破砕反応を直接利用して核種変換を起こすと共に、標的核の破砕に伴って発生する多数の中性子を標的核周りの未臨界ブランケットに投入して核***反応を発生させたり、中性子の捕獲反応によって核種変換反応を発生させる。これにより、例えばネプツニウム、アメリシウム等の超ウラン元素及び長寿命核***生成物を消滅することができ、しかも、未臨界ブランケットで発生した熱を回収して発電を行い、陽子加速器の運転に必要な電力を自給することができる。
【0005】
また、電子線加速器を用いる消滅処理では、例えば電子線の制動輻射で発生するガンマ線や、例えば電子蓄積リングと光キャビティーを組み合わせて逆コンプトン散乱により発生させたガンマ線等による光核反応、例えば(γ、N)反応や(γ、核***)反応等の巨大共鳴を利用することによって、例えばストロンチウム、セシウム等の長寿命核***生成物や超ウラン元素等を消滅処理する。
【0006】
ところで、上記従来技術の一例による消滅処理のように、原子炉や加速器を利用して核種変換を行う場合、大規模かつ高価な装置を用いなければならず、核種変換に要する費用が嵩むという問題がある。
しかも、例えば長寿命核***生成物であるCs−137を処理する場合において、100万KW程度の原子力発電所から放出されるCs−137を加速器を利用して他の核種に変換する場合に、必要な電力は数100万KWに達してしまい、高強度かつ大電流の加速器が必要になって効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、例えば軽水炉等の原子炉では熱中性子束が1×1014/cm2 /sec程度であるのに対して、中性子反応断面積が小さいCs−137の核種変換に必要な中性子束は1×1017〜1×1018/cm 2/sec程度となり、必要な中性子束を得ることができないという問題がある。
【0008】
本出願人は先に上記の問題を解決して加速器や原子炉等の大規模な装置を使用することなしに、相対的に小規模な装置で核種変換を行うことが可能な核種変換方法として、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面上に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させることを特徴とする核種変換方法を提案した(特願2001−201875参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
使用済み核燃料を再処理する際には、先ず硝酸(NHO3 )溶液中に使用済み核燃料を溶解させ、ウラン(U)ぱプルトニウム(Pu)を分離する。するとセシウム137( 137Cs)やストロンチウム90(90Sr)等が含まれる酸性廃液が残るが、たとえば地層埋設処分等これをどうやって処分するかが検討課題となっている。簡便で小規模な装置を利用して核種を変換して処理する手段として、前述の重水素と核種変換を施す物質とを反応させる方法がある。
ところが重水素と反応させて核種変換させる方法においては、処理溶液中に塩素イオン等の電気陰性度の高い元素の陰イオン(負イオン)が含まれていると、核種変換効率が低いという問題がある。
本発明は処理溶液中に含まれている陰イオンを除去し、小規模な装置で高効率に核種変換を行う方法を提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明ではイオン分離能を持つ物質で塩素イオン等の電気陰性度の高い元素の陰イオンと核種変換を施す物質とを分離した溶液を作成し、この溶液を使用して核種変換を施す方法を採用する。
イオン分離能を持つ物質としては、例えば陽イオン交換樹脂や陰イオン交換樹脂等のイオン交換樹脂を使用することができる。
すなわち、請求項1に記載の本発明は、イオン交換樹脂を使用して被処理物質中の陰イオンを吸着除去した後、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面上に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させる核種変換方法を採用した。
上記の方法によれば、反応を阻害する陰イオンが存在しないので核種変換を高効率のもとに進めることができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の本発明は、前記イオン交換樹脂として陰イオン交換樹脂を使用するものであり、請求項3に記載の本発明は、前記イオン交換樹脂として陽イオン交換樹脂を使用するものである。
いずれのイオン交換樹脂を使用しても核種変換を高効率のもとに進めることができるようになる。
【0012】
請求項4に記載の本発明は、前記核種変換を施す物質を付着させる手段として電着による方法を採用するものである。
この方法によれば簡単な操作で取扱い易い方法で核種変換に都合の良い試料を得ることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の核種変換方法ついて添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る核種変換方法の原理を説明する図であり、図2は、本発明に係る核種変換方法にて使用される構造体11を示す断面構成図であり、図3は、本発明の核種変換装置30の構成図であり、図4は、図3に示す核種変換装置30での多層構造体32を示す断面構成図であり、図5は図2に示す構造体11を構成する混合層22の断面構成図であり、図6は構造体11に核種変換を施す物質を添加する電着装置60の構成を説明する図である。
【0014】
先ず、本発明の核種変換方法の原理について説明する。
本発明の核種変換方法を実現する装置10は、例えば図1に示すように、パラジウム(Pd)またはPdの合金、あるいはその他の水素を吸蔵する金属(例えば、Ti等)またはこれらの合金等からなる、略板状の構造体11と、この構造体11の両面のうち、一方の表面11A上に付着された核種変換を施す物質14とを備え、構造体11の一方の表面11A側が例えば加圧あるいは電気分解等により重水素の圧力が高い領域12とされ、他方の表面11B側が例えば真空排気等により重水素の圧力が低い領域13とされることで構造体11内に重水素の流れ15が生成され、重水素と核種変換を施す物質14とが反応することによって核種変換が行われる仕組みの装置である。
ここで、構造体11は、例えば図2に示すように、好ましくはPd基板23の表面上に、相対的に仕事関数が低い物質つまり電子を放出し易い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層22が形成され、この混合層22の表面上にPd層21が積層されて形成されている。
そしてこの構造体11のPd層21の表面に、さらに核種変換を施すべき物質(被核種変換物質)を付着させて多層構造体とした後、核種変換処理に付す。なお、多層構造体の形成方法については後述する。
【0015】
次に、本発明で使用する核種変換装置について説明する。
本発明で使用する核種変換装置30は、図3に示すように、内部が気密保持可能とされた吸蔵室31と、この吸蔵室31の内部にて被核種変換物質を含む多層構造体32を介して気密保持可能に設けられた放出室34と、バリアブルリークバルブ33を介して吸蔵室31内に重水素を供給する重水素ボンベ35と、放出室34内の真空度を検出する放出室真空計36と、多層構造体32から生成されるガス状の反応生成物を検出すると共に放出室34内の重水素量を計測することにより多層構造体32を透過する重水素の透過量を評価する質量分析器37と、放出室34内を常に真空状態に保つターボ分子ポンプ38と、放出室34及びターボ分子ポンプ38内を荒引きするためのロータリーポンプ39とを備えて構成されている。
【0016】
さらに、核種変換装置30は、例えばX線や電子線、粒子線等の照射により励起された多層構造体32の表面上の原子から放出される光電子やイオン等を検出する静電アナライザー40と、多層構造体32の両面のうち吸蔵室31内の重水素に曝される表面上にX線を照射するXPS(X−ray Photo−electron Spectrometry:X線照射光電子スペクトル分析)用のX線銃41と、内部に重水素が導入された吸蔵室31内の圧力を検出する圧力計42と、ベリリウム窓43を有する高純度ゲルマニウム検出器44からなるX線検出器と、吸蔵室31内の真空度を検出する吸蔵室真空計45と、重水素の導入以前等に吸蔵室31内を真空状態に保持する真空バルブ46と、吸蔵室31を真空状態にするターボ分子ポンプ47と、吸蔵室31及びターボ分子ポンプ47内を荒引きするためのロータリーポンプ48とを備えて構成されている。
【0017】
そして、多層構造体32の吸蔵室31側を相対的に重水素の圧力が高い状態とし、多層構造体32の放出室34側を相対的に重水素の圧力が低い状態として、多層構造体32の両面において重水素の圧力差を形成することで、吸蔵室31側から放出室34側へ重水素の流れを作り出す。
【0018】
ここで、多層構造体32は図4に示すように、Pd基板23の表面上に相対的に仕事関数が低い物質(例えば、仕事関数が3eV未満の物質)とPdとの混合層22が形成され、この混合層22の表面上にPd層21が積層され、さらに、Pd層21の表面上に核種変換を施す物質としてたとえばセシウム(Cs)層52等を付着させて構成されている。
【0019】
次に、核種変換装置に使用する多層構造体について説明する。
多層構造体を製作するには、先ず図2に示す構造体11を作成する。
先ず、図2に示すようにPd基板23(例えば、縦25mm×横25mm×厚さ0.1mm、純度99.5%以上)をアセトン中で所定時間に亘って超音波洗浄することにより脱脂する。そして、真空中(例えば、1.33×10−5Pa以下)において、900℃の温度で所定時間(例えば、10時間)に亘ってアニール(加熱処理)を行う。
次に、室温でアニール後のPd基板23を重王水により所定時間(例えば、100秒間)に亘ってエッチング処理を施して表面の不純物を除去する。
【0020】
次に、アルゴンイオンビームによるスパッター法を用いて、エッチング処理後のPd基板23上に成膜処理を施して混合層22とPd層21を形成し、構造体11を作成する。ここで、仕事関数の低い物質とPdとの混合層22は、例えば図5に示すように、厚さ100・10−10 mのCaO層57と、厚さ100・10−10 mのPd層56とを交互に積層して形成し、この混合層22の厚さを1000・10−10 mとする。そして、混合層22の表面上にPd層21を400・10−10 mで成膜することにより、構造体11を形成する。
【0021】
続いて上記構造体11のPd層21の表面に、さらに被核種変換物質を付着させて図4に示すような多層構造体32とする。
すなわち、核種変換を施すべき被核種変換物質としてCs−137を処理する場合には、CsNO3 のD2O 希薄溶液(CsNO3 /D2O 溶液)の電気分解により、核種変換を施す物質としてのCsを構造体11の成膜処理表面に沈着させる。
被核種変換物質を構造体11の表面に沈着させる方法としては、例えば図6に示すような電着装置60を使用して、1mmolのCsNO3/D2O溶液を電解液63として、直流電源61の陽極に白金陽極62を接続し、陰極に構造体11を接続して、例えば1Vの電圧で10秒間に亘って電気分解を行い、構造体11のPd層21の表面上で下記化学式(1)に示す反応を発生させてCs層52を沈着させて、図4に示す多層構造体32を形成する。
【0022】
Cs+ + e− → Cs ・・・(1)
【0023】
この際、電解液として使用するCsNO3 のD2O 希薄溶液中に塩素イオン(もしくはハロゲン元素イオン)等の陰性度の高い陰イオンが含まれていると、多層構造体にも陰性度の高い陰イオンが取り込まれて、後工程の核種変換処理において高い核種変換効率が得られなくなる。したがって、陰イオンを含まないCsNO3 のD2O 希薄溶液を使用しなければならない。通常放射性廃棄物等は酸洗処理して回収されるが、その際ハロゲン元素等の陰性度の高い元素は酸に溶解して洗浄液中に含まれてくる。そこでこれら陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離しておかなければならない。
次に、陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離する方法について説明する。
【0024】
本発明においては、イオン交換樹脂を使用して陰性度の高い元素と被核種変換物質とを分離する方法を採用した。イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂のいずれも使用可能である。
【0025】
(第1の実施形態)
イオン交換樹脂を使用した陰性度の高い元素と被核種変換物質との分離方法の第1の実施形態として、イオン交換樹脂を使用する例を説明する。
図7は、本発明の方法で使用するイオン分離装置の構成を説明する図である。図に示すようにイオン分離装置70のガラス管73内には、陽イオン交換樹脂72が1cc程度詰められており、ガラスウール71により、ガラス管内に保持された状態になっていて、上部から溶液を注入すると、75で示した液の流れを通して容器74に回収されるような構造になっている。陽イオン交換樹脂は通常最初はNa型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がNa+ イオンで占められている状態になっているが、使用するためにH型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がH+ イオンで占められている状態にする必要があるので、イオン分離装置70に濃度1mol/lのHCl溶液1mlを150回繰り返して流す。
陽イオン交換樹脂72は下記化学式(2)の反応式でNa型からH型に変わる。
【0026】
R−Na+ + H+ → R−H++Na+(R:樹脂)・・・(2)
【0027】
上記のステップで陽イオン交換樹脂をH型にするための操作は終了したので、次に陽イオン交換樹脂に含まれる溶液中の塩素イオンを除去するために、濃度1mol/lのHNO3 溶液1mlを繰り返し10回、H2O 1mlを繰り返し10回イオン分離装置70に流す。
以上に処理でイオン分離装置を使用する条件が整ったので、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1mol/lHCl混合溶液1mlをイオン分離装置70に流す。核種変換を施すCsは化学式(3)に従って、陽イオン交換樹脂に捕捉される一方、塩素イオンは流路75に従って、容器74に回収される。従って、この過程で核種変換を施す物質と塩素イオンとは分離される。さらに陽イオン交換樹脂72が含んでいる溶液中の塩素イオンを除去するために、H2O 1mlを繰り返し10回イオン分離装置70に流す。
【0028】
R−H++ Cs+ → R−Cs++H+(R:樹脂)・・・(3)
【0029】
次に容器74を交換し、空の新しい容器74’を設置する。3mol/lDNO3 1mlを繰り返し5回イオン分離装置70に流す。すると化学式(4)に従って捕捉されていたCs+ が遊離して容器74’に回収される。本操作で元の濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1mol/lHCl混合溶液が、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −3mol/lDNO3 混合溶液となる。
【0030】
R−Cs++H+ → R−H++ Cs+(R:樹脂)・・・(4)
【0031】
次に、容器4’中の濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −3mol/lDNO3 混合溶液を蒸発乾固させると、化学式(5)に従って、D2O , DNO3 が蒸発し、CsNO3 結晶が残る。
【0032】
CsNO3 /D2 O・DNO3 → CsNO3結晶 ・・・(5)
【0033】
残った結晶に適当量のD2O を加えることにより、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O 溶液を得る。
【0034】
このようにして得られた陰イオンを含まない濃度1mmol/lのCsNO3/D2 O溶液を電解浴として用いて、図6で示すような方法で構造体11のPd層21の表面に、核種変換を施す物質を沈着させて、図4に示すような積層構造体32とする。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、イオン交換樹脂を使用した陰性度の高い元素と被核種変換物質との分離方法の第2の実施形態として、陰イオン交換樹脂を使用する例を説明する。
第2の実施形態が先の第1の実施形態と異なる点は、図7に示すイオン分離装置においてガラス管3内に陽イオン交換樹脂に変わって陰イオン交換樹脂76が1cc程度詰められている点である。陰イオン交換樹脂は通常最初はCl型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がCl− イオンで占められている状態になっているが、使用するためにはOH型と呼ばれる、樹脂の末端の官能基がOH− イオンで占められている状態にする必要があるので、まず濃度1mol/lのNaOH溶液1mlを繰り返し150回イオン分離装置70に流す。下記化学式6の反応式でCl型からOH型に変わる。
【0036】
R−Cl− + OH− → R−OH− + Cl− (R:樹脂)・・・(6)
【0037】
陰イオン交換樹脂76をOH型にするための操作が終了したならば、次に陰イオン交換樹脂76が含んでいる溶液中のNaを除去するために、H2O 1mlを繰り返し20回イオン分離装置70に流す。
【0038】
以上のようにしてイオン分離装置70を使用する条件が整ったならば、容器74を交換し、空の新しい容器74’を設置する。そして1mmol/lCsNO3 /D2O − 0.1mol/lHCl混合溶液 1mlをイオン分離装置70に流す。核種変換を施す被各変換物質Csは、流路75に従って容器74’に回収される。一方、塩素イオンは化学式(7)に従って、陰イオン交換樹脂に捕捉される。従って、この過程で核種変換を施す物質と塩素イオンは分離され、容器74’には陰イオンを含まないCsOH/H2O 溶液となって回収されている。
【0039】
R−OH− + Cl− → R−Cl− + OH−(R:樹脂)・・・(7)
【0040】
次に、容器74’中のCsOH/H2O 溶液を蒸発乾固させると、化学式(8)に従ってH2O が蒸発し、CsOH結晶が残る。残った結晶に適当量D2O を加える事により、1mmol/lCsNO3 /D2O 溶液を得る。この溶液にはもはや陰イオンは含まれていない。
【0041】
CsOH/H2O → CsOH結晶・・・(8)
【0042】
残ったCsOH結晶に適当量のD2O を加えることにより、陰イオンを含まない濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O 溶液を得る。
このようにして得られた濃度1mmol/lのCsNO3 /D2 O溶液を電解浴として用いて、図6で示すような方法で構造体11のPd層21の表面に、核種変換を施す物質を沈着させて、図4に示すような積層構造体32とする。
【0043】
以上、第1の実施形態又は第2の実施形態によって得られた多層積層体32を図3に示した核種変換装置30に装着して核種変換処理を行う。
すなわち、図3において多層構造体32のCs層52を吸蔵室31側に向けて、多層構造体32を介在させて吸蔵室31と放出室34とをそれぞれ気密状態に閉塞して、先ず、放出室34をロータリーポンプ39およびターボ分子ポンプ38により真空排気する。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じ、真空バルブ46を開いて吸蔵室31をロータリーポンプ48およびターボ分子ポンプ47により真空排気する。
次に、吸蔵室31の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体32の表面上に存在する元素を分析する。すなわち、X線銃41からのX線を多層構造体32の表面に照射して、このX線の照射により励起された多層構造体32の表面上の原子から放出される光電子のエネルギーを静電アナライザー40により検出する。これにより、多層構造体32の吸蔵室31側の表面上に存在する元素を同定する。
【0044】
次に、多層構造体32を、加熱装置(図示略)により例えば70℃の温度で加熱した後、真空バルブ46を閉じて吸蔵室31の真空排気を停止して、バリアブルリークバルブ33を開いて吸蔵室31内に所定のガス圧力で重水素ガスを導入して、核種変換の処理を開始する。ここで、重水素ガスを導入する際の所定のガス圧力は、例えば1.01325×105 Pa(いわゆる1気圧)とする。
そして、放出室34の質量分析器37でガス状の反応生成物(例えば、質量数A=1〜140)の測定を行い、多層構造体32を透過して放出室34内に放出された重水素の拡散挙動の評価を行う。また、多層構造体32の吸蔵室31側の高純度ゲルマニウム検出器44によりX線の測定を行う。
なお、多層構造体32を透過して放出室34内に放出された重水素量は、例えば放出室真空計36により検出される放出室34内の真空度と、ターボ分子ポンプ38の排気速度とに基づいて算出する。
【0045】
吸蔵室31内に重水素ガスの導入を開始してから所定時間(例えば数十時間)後に、多層構造体32の温度を常温に戻す。そして、バリアブルリークバルブ33を閉じて吸蔵室31内への重水素ガスの導入を停止して、さらに、真空バルブ46を開いて吸蔵室31を真空排気して核種変換の処理を終了する。
そして、吸蔵室31内の真空度が充分安定した後(例えば、1×10−5Pa以下の状態)に、XPSにより吸蔵室31側の多層構造体32の表面上に存在する元素を分析して生成物の測定を行う。
そして、上述した処理を繰り返して、核種変換反応の時間変化を測定して処理終了を決定する。
【0046】
【実施例】
(実施例1,実施例2)
原子炉から発生する使用済み核燃料を硝酸(HNO3 )溶液で溶解し、ウラン(U)やプルトニウム(Pu)を分離する再処理をおこなって、セシウム137( 137Ce)を含む酸性廃液を得た。この酸性溶液中には塩素イオンが含まれていた。
このセシウム137を含む酸性廃液を上記の手順に従って陽イオン交換樹脂(実施例1)又は陰イオン交換樹脂(実施例2)を使用して処理し、塩素イオンを除去した。
しかる後、この塩素イオンを除去した酸性廃液を電解浴として使用し、前述のごとくPd層表面に電着させ、図3に示した核種変換装置に装着して前述の手順で核種変換処理を行った。
【0047】
核種変換処理終了後、積層構造体を取り外しHNO3 で表面を溶解し、その溶液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で成分分析し、核種変換反応の結果として生成された物質としてプラセオジム(Pr)を定量した。結果を表1に示す。
【0048】
(比較例)
比較のためイオン交換樹脂を使用した塩素イオンの除去処理を省略して、濃度1mmol/lのCsNO3 /D2O −0.1molHCl混合溶液とし、この溶液を電解浴として使用し、実施例と同様にしてPd層表面に電着させ、図3に示した核種変換装置に装着して実施例と同様の手順で核種変換処理を行った。
核種変換処理終了後、積層構造体を取り外しHNO3 で表面を溶解し、その溶液をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)で成分分析し、核種変換反応の結果として生成された物質としてプラセオジム(Pr)を定量した。結果を表1に併記して示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から、比較例ではPrは検出限界(0.3ng)以下であるのに対して、実施例1ではPrは7.1ng検出され、実施例2ではPrは25ng検出された。
【0051】
以下で、この検出されたPrが不純物に由来したものではない事を考察する。核種変換処理を行う前の積層構造体の表面をHNO3 で溶解し、その溶液についてICP−MSでPrの定量分析を行ったところ、検出限界(0.3ng)以下であった。また、今回の処理で使用するHNO3 やH2O をICP−MSで分析したところ、Prは検出限界以下であった。すなわち、核種変換処理を行う前の段階では、Prはどこにも存在していなかったことは明らかである。
従って実施例で検出されたPrは核種変換反応の結果として生成した物であると結論できる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の方法によれば、重水の濃度差を利用した拡散法による核種変換方法において、核種変換を施す物質が含まれている溶液中の電気陰性度の高い元素の陰イオンを除去することにより、再現性良く核種変換反応を生起させることができる。
したがって、小規模な装置でも有効に核種変換を行うことが可能となり、放射性廃棄物の処理にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる核種変換方法の原理を説明する図である。
【図2】本発明の核種変換方法で使用する構造体の断面図である。
【図3】本発明の核種変換方法で使用する核種変換装置の構成を示す図である。
【図4】図3に示す核種変換装置で使用する多層構造体の断面図である。
【図5】図2に示す構造体の混合層の詳細を示す図である。
【図6】本発明の核種変換方法で使用する、構造体に核種変換を施す物質を付与する装置の構成を示す図である。
【図7】イオン分離装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
10・・・・・核種変換を実現する装置、11・・・・・構造体、21・・・・・Pd層、22・・・・・混合層、 23・・・・・Pd基板、30・・・・・核種変換装置、31・・・・・吸蔵室、32・・・・・多層構造体、34・・・・・放出室、52・・・・・Cs層、60・・・・・電着装置、63電解浴、70・・・・・イオン分離装置、72(76)・・・・・イオン交換樹脂
Claims (4)
- イオン交換樹脂を使用して被処理物質中の陰イオンを吸着除去した後、パラジウム又はパラジウム合金或いはその他の水素を吸蔵する金属又はそれらの合金等からなる略板状の構造体の両面のうち、一方の表面上に核種変換を施す物質を付着させ、該核種変換を施す物質を付着させた構造体の表面側を重水素の圧力が高い領域とし、前記構造体の他方の表面側を重水素の圧力が低い領域として、前記構造体内に重水素の流れを生成させて重水素と核種変換を施す物質とを反応させることを特徴とする核種変換方法。
- 前記イオン交換樹脂が陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の核種変換方法。
- 前記イオン交換樹脂が陽イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の核種変換方法。
- 前記核種変換を施す物質を付着させる手段が電着によることを特徴とする請求項1に記載の核種変換方法。
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- 2002-07-12 JP JP2002203907A patent/JP2004045254A/ja not_active Withdrawn
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