JP2004044909A - 熱交換器用アルミニウム製フィン材、フィン及びフィンチューブ型熱交換器 - Google Patents
熱交換器用アルミニウム製フィン材、フィン及びフィンチューブ型熱交換器 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】銅管の内周溝形状を複雑化せず、Al製フィンのオフセットの幅、数及びシフト段数を特別に変更する必要がなく、フィンピッチを狭くせずに熱交換効率を向上させ得るAl製フィン材、フィン及び熱交換器を提供する。
【解決手段】Al又はAl合金板よりなる熱交換器用Al製フィン材において、上記板の表面の粗度係数を100以上とする。上記板の表面は、電気化学的エッチング処理又はレーザーショット加工処理を含む電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段による処理により粗面化することができる。また、この板の表面に皮膜の形成処理を施して粗面化してもよい。このフィン材の表面に少なくとも耐食性の表面処理皮膜を形成させることが好ましい。上記フィン材を成形加工して熱交換器用Al製フィン1を製作する。そして、このフィン1を組み込んでフィンチューブ型熱交換器を製作する。
【選択図】 図1
【解決手段】Al又はAl合金板よりなる熱交換器用Al製フィン材において、上記板の表面の粗度係数を100以上とする。上記板の表面は、電気化学的エッチング処理又はレーザーショット加工処理を含む電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段による処理により粗面化することができる。また、この板の表面に皮膜の形成処理を施して粗面化してもよい。このフィン材の表面に少なくとも耐食性の表面処理皮膜を形成させることが好ましい。上記フィン材を成形加工して熱交換器用Al製フィン1を製作する。そして、このフィン1を組み込んでフィンチューブ型熱交換器を製作する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の熱交換器に好適な熱交換効率を向上させた熱交換器用アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称してアルミニウムという)製フィン材、これを成形加工して製作したフィン及びこのフィンを組み込んだフィンチューブ型熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は従来のルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機用熱交換器を示す図である。微小間隔をおいて互いに平行に配設される平板状のアルミニウム製フィン1に直交するように、内部流体通過用の銅又は銅合金製管体(以下、総称して銅管という)2とが挿通され、両者が機械的拡管等により接合されている。このようなタイプの熱交換器を一般的にプレートフィンチューブタイプ熱交換器という。
【0003】
プレートフィンチューブタイプ熱交換器においては、前記アルミニウム製フィン同士の間隙に空気等の外部流体を通過させ、この外部流体の流れに対して交差する方向に前記銅管を配設し、この銅管内をフロン等冷媒の内部流体を通過させることにより、外部流体と内部流体との間で熱交換を行わせている。
【0004】
近年、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機における省エネルギー化、省スペース化及び低騒音化の要求に対しては、圧縮機と共に空調機の主要な構成部品である熱交換器に課せられた課題は極めて大きく、熱交換器の熱交換効率の向上が図られている。
【0005】
上記構成の熱交換器において、高温側流体の減少熱量に対する低温側流体の取得熱量の割合で定義される熱交換効率は、これらの流体間における全熱抵抗に大きく依存し、この全熱抵抗は下記の各熱抵抗からなり、その構成比率は概略下記のとおりである。
外部流体とアルミニウム製フィンとの間における熱抵抗:約75%
アルミニウム製フィンと銅管との間における熱抵抗 :約 5%
銅管と内部流体との間における熱抵抗 :約20%
合計 :100%
なお、上記各所における熱伝達率は対応する各熱抵抗の逆数である比熱抵抗に依存する。従って、各熱抵抗が小さい条件下にある場合の方が各熱伝達率は高くなるので、熱交換効率が高くなり熱交換器の熱交換性能は向上する。
【0006】
このように、全熱抵抗のうち外部流体とアルミニウム製フィンとの間における熱抵抗がかなり大きな部分を占めているので、熱交換器の熱交換効率の向上を図るためには、アルミニウム製フィンと外部流体間の熱抵抗を小さくしてその間の熱伝達率を向上させることが、熱交換器の熱交換効率向上に対して大きく寄与する(例えば、中田春男:機械の研究、p.1005乃至1011、第41巻、第9号(1989))。
【0007】
そこで従来、熱交換器の熱交換効率を向上させるために、例えば次のような方法が試みられている。即ち、
(1)銅管の内周面に螺旋状の溝を形成し、銅管内周面の表面積を大きくすることにより、内部流体である冷媒と銅管との間の熱伝達率を向上させる方法(以下、「従来技術1」という)であり、銅管に所謂内面溝付き管を使用する。
(2)アルミニウム製フィンに多数の切り起こし(以下、オフセットと称す)を設け、アルミニウム製フィンと空気等の外部流体との間の熱伝達率を向上させる方法(以下、「従来技術2」という)であり、例えば▲1▼田口哲夫、田中順一郎:冷凍、p.472乃至475、第63巻第727号(1988)、▲2▼茂木仁:第33回伸銅技術研究会講演概要集、p.34乃至36(1993)に開示されている。更に、
(3)熱交換器の熱交換効率に寄与する割合の大きいアルミニウム製フィンと外部流体間との熱伝達率を増加させるため、アルミニウム製フィン同士の相互間隔(以下、フィンピッチという)を狭くすることにより、熱交換器として同一体積内のアルミニウム製フィン枚数を増加させ、アルミニウム製フィンの表面積を増加させる方法(以下、「従来技術3」という)が試みられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術1の銅管に所謂内面溝付き管を使用して、内部流体と銅管との間の熱伝達率を向上させる方法では、銅管の内周面に螺旋状の溝を形成して、銅管内周面の表面積を大きくしようとすればするほど、内周溝の形状が複雑になるため、かえって内部流体の流れが阻害されて熱交換効率が低下するという問題が生じる。また、このように内周溝の形状が複雑になると、圧力損失が増大する。従って、内周溝の形状を変えることによる熱交換効率の向上には一定の限界がある。しかも、内周溝形状が複雑になると、溝の加工性が悪くなり、加工コストが上昇するという問題も生じる。
【0009】
従来技術2のアルミニウム製フィンに多数のオフセットを設け、アルミニウム製フィンと外部流体との間の熱伝達率を向上させる方法では、オフセットの幅を減少させることによりオフセット数を増加させ、更にそのシフト段数を増やすことにより熱伝達率の向上を図るものである。しかし、これにより通風抵抗が増加するという弊害が生じるので、一定の通風抵抗当たりの熱伝達率という観点からこの方法をみると、オフセット幅の減少、オフセット数の増加及びシフト段数の増加には限界がある。この状況については、例えば中田春男:機械の研究、p.1005乃至1011、第41巻、第9号(1989)に記載されている。
【0010】
また、ルームエアコン室内器の夏季冷房運転中には、熱交換器が蒸発運転状態にあり、銅管中の冷媒の蒸発熱により銅管及びフィンが冷却されてアルミニウム製フィンの表面に凝縮水が生じる。この凝縮水は、オフセットを有しないフィン(即ち、フラット形状のフィン)の場合には、フィン表面を伝わり容易に熱交換器下部方向に落下するので問題ないが、オフセットを有するフィンの場合には、オフセット部に水滴となって溜まり、この水滴が落下してファンに付着し、その後ファンからエアコンの空気噴き出し口を通り室内へ飛散するという問題点、即ちエアコン室内器ユニットから室内への凝縮水の吹き出しという問題点があり、オフセット数を増加させると、上記凝縮水がオフセット部に一層溜まり易くなり、上述した室内への凝縮水の吹き出し問題が一層ひどくなる。また、昨今問題となっている例えばパラフィン及びステアリン酸等の室内環境浮遊汚染物質が、アルミニウム製フィンへ付着してこれを撥水化させるという問題が、オフセット数の増加により一層大きな問題となっている。そこで、エアコンメーカーではオフセットを簡略化する傾向がある。なお、このような凝縮水の溜まり易さの傾向及びフィン表面の撥水化(「水飛び」という)の増大は「水飛び不具合」と呼ばれる。また、エアコン室外器における除霜運転時においても、オフセット部により融解した霜の下方向への落下が妨げられ、除霜時間が長くなるという問題点が生じる。
【0011】
従来技術3のフィンピッチを狭くすることにより、熱交換器として同一体積内のアルミニウム製フィンの枚数を増加させ、アルミニウム製フィンの表面積を増加させるという方法では、フィンピッチが狭いことにより、フィン間に凝縮水及び融解した霜が溜まり易くなるため、上述したオフセットフィンと同様に、水飛び不具合の発生及びエアコン室外器の除霜時間が長くなる等の問題点がある。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、銅管の内周溝形状を複雑化せず、例えば、管軸方向に所定幅で数種類の凹凸溝を形成させ、その溝ピッチ及び溝寸法等の各要素の諸元が夫々異なる複数種の溝を形成させたり、又は管軸に対して斜めに交差する方向の螺旋状溝とこの螺旋状溝と交差して管軸方向に複数の直線状の突条部を設け、この突条部には溶接ビードで形成させた突条部を含ませ、この突条部の幅及び高さを所定値に規定する等といった内周溝の形状の複雑化をすることなく、またアルミニウム製フィンのオフセットの幅、数及びシフト段数を従来技術に対して変更する必要なく、且つ、フィンピッチを狭くせずに、熱交換器の熱交換効率を向上させることができるアルミニウム製フィン材、これを用いたフィン及びこのフィンを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金板よりなる熱交換器用アルミニウム製フィン材において、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数が、100以上であることを特徴とする。前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、電気化学的エッチング処理又はレーザーショット加工処理を含む電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段による処理により粗面化することができる。また、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、この表面に対して皮膜の形成処理を施すことにより粗面化されていてもよい。前記フィン材の表面には、少なくとも耐食性を有する表面処理皮膜が形成されていることが好ましい。
【0014】
一方、本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィンは、上述した熱交換器用アルミニウム製フィン材を成形加工したものであることを特徴とする。そして、本発明に係るフィンチューブ型熱交換器は、このような熱交換器用アルミニウム製フィンが組み込まれていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、アルミニウム製フィンと外部流体との間の伝熱抵抗が熱交換器の熱交換効率に及ぼす影響が極めて大きいことに注目し、アルミニウム製フィンの大きさで決まる見かけの表面積を大きくすることなく、アルミニウム製フィンの表面の粗度係数が100以上となるように粗面化して、実際の表面積を見かけの表面積に対して著しく大きくしたものである。これにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間で熱交換が行われる面積を増加させることにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間の熱伝達率を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材は、その表面に微細な凹凸を形成させ、その表面の粗度係数が100以上になるように粗面化することにより表面積を増加させる。この表面の粗面化手段として、▲1▼アルミニウム又はアルミニウム合金板自身を粗面化する方法と、▲2▼アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、表面が粗面化した皮膜を形成させる方法とに分けることができる。
【0017】
上記▲1▼項のアルミニウム又はアルミニウム合金板自身を粗面化する方法として、本発明においては電気化学的エッチング処理、レーザーショット加工処理若しくはその他の電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段を利用する。電気化学的エッチング処理として、電解エッチング又は化学エッチング(湿式エッチング)等の方法を用いることができる。例えば化学エッチングにおいては、エッチング剤としてフッ酸、塩酸又は水酸化ナトリウム等の上記アルミニウム又はアルミニウム合金を腐食する薬剤をエッチング液として使用し、適切な濃度、温度及び処理時間を選定し、また、電解エッチングにおいては、エッチング剤として硝酸、塩酸又は硫酸等の上記アルミニウム又はアルミニウム合金を腐食する薬剤をエッチング液として使用し、適切な濃度、温度、処理時間及び電解条件を選定し、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に多数の凹凸及び/又は孔等を生じさせて粗面化し、アルミニウム製フィン材の表面積を増加させる。この後で、このアルミニウム製フィン材を用いてフィン成形を行ない、アルミニウム製フィンを製作する。なお、フィン成形を行なった後のアルミニウム製フィンに電解エッチング又は化学エッチングを施し、アルミニウム製フィンの表面積を増加させてもよい。また、電気的微粒子の照射手段としては、レーザーショット加工処理、イオンスパッタリング又はプラズマ照射等を、また物理的微粒子の照射手段としては、サンドブラスト等を適宜使用することができる。
【0018】
上記▲2▼項のアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、表面が微細に粗面化した皮膜を形成させることにより、アルミニウム製フィン材の表面積を増加させる。このような微細に粗面化した皮膜を設ける方法としては、この板に化成処理を施すために例えば、(1)水ガラス又はコロイダルシリカ等の無機化合物とアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂とを配合した薬剤を塗布し、焼付け乾燥する方法、又は(2)ポリビニルアルコール系樹脂とポリアルキレンオキサイド系樹脂との組合わせのように複数の水溶性樹脂を配合した薬剤を塗布し、焼付け乾燥する方法等を用いることができる。この後で、このアルミニウム製フィン材を用いてフィン成形を行ないアルミニウム製フィンを製作する。ここで形成された表面処理皮膜の熱伝導率は、この皮膜と接触する流体、一般的には空気の熱伝導率である約0.025W/mKよりも十分に大きいことが好ましい。従って、例えばこの表面処理皮膜の熱伝導率は0.1W/mK以上、好ましくは1W/mK以上であり、更に一層好ましくは10W/mK以上である。
【0019】
上記▲1▼項又は▲2▼項の方法で形成されたアルミニウム製フィン材の表面の粗面化の度合いについては、板の見かけの表面積に対して、粗面化されたために増大した後の実際の板の表面積が大きいほど、フィンとして熱交換器に組み込まれて使用されたときにフィンの表面と流体、一般的には空気との接触面積が大きくなるので好ましい。本発明においては、見かけの表面積に対するこの増大後の表面積の比率を、下記に定義する表面の粗度係数rで表す。即ち、表面の粗度係数r=Ar/Aa、但し、Ar:実表面積、Aa:見かけの表面積とし、実表面積ArはJIS B 0601「製品の幾何特性仕様」の3.1.3で定義されている「実表面(real surface)」に基づき、物体の境界であって周囲の空間から分離する表面の面積を指すものである。例えば、1辺が10cmの正方形の板状試験片について、見かけの表面積Aaは、10cm×10cm=100cm2であるのに対して、実際の試験片の表面には微細な凹凸が多数存在するため、実表面積Arは、100cm2よりも大きくなる。そして、実表面積を測定する方法としては、大きさが既知のガス分子を試料表面に吸着させ、その吸着量より試料表面積を求めるガス吸着法の1測定方法である「流動法」等を用いて行うことができる。
【0020】
上記▲1▼項又は▲2▼項の方法で形成されたアルミニウム製フィン材の表面の粗面化の度合いとして、表面の粗度係数rが100以上になるような条件で各処理方法を実施することが必要である。
【0021】
この発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の凹凸は、上記▲1▼項又は▲2▼項の方法により形成する場合に限らず、種々の方法により形成できる。例えば、所定の板厚に上記アルミニウム又はアルミニウム合金板に圧延する冷間圧延工程の特に仕上げ圧延工程において、表面に大きな凹凸を持つ圧延ロールを用い、この圧延によりこのアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に凹凸を付与し、この板の表面積を増加させる。このように、圧延時にロール目をこの板表面に転写するという方法でもよい。ここで、圧延ロール表面に大きな凹凸を形成させる方法として、例えばレーザーショット加工処理等による。
【0022】
本発明において、熱交換器用アルミニウム製フィン材として、上記▲1▼項の方法で表面の粗度係数rを100以上としたアルミニウム又はアルミニウム合金板を使用する理由は、次のとおりである。アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数rを大きくしたフィン材を使用することにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間での伝熱効率の向上効果が得られる。しかし、その粗度係数rが100より小さい場合には、アルミニウム製フィンと外部流体との間での伝熱効率の向上効果が小さく、熱交換器の熱交換効率の優れた向上効果は得られない。粗度係数rが100以上のアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるフィン材を成形加工したフィンを組み込んだフィンチューブ型熱交換器においては、アルミニウム製フィンと外部流体との間で優れた伝熱効率の向上効果が得られる。従って、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数rは、100以上とする。なお、ここで優れた伝熱効率の向上効果とは、後の実施例において述べる熱交換性能評価試験において定義する熱交換性能評価パラメータが、101.0以上のときをいい、この場合は熱交換性能が優れており良好である。
【0023】
また、本発明において、熱交換器用アルミニウム製フィン材として、上記▲2▼項の方法で、表面の粗度係数rを100以上とした微細な凹凸を形成させた表面皮膜の形成処理を施したアルミニウム又はアルミニウム合金板を使用する理由は、次のとおりである。表面の粗度係数rが100以上に粗面化された皮膜が表面に形成されているアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるアルミニウム製フィン材は、上記▲1▼項の方法で表面の粗度係数rを100以上としたアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるアルミニウム製フィン材と同じように、それを成形加工したアルミニウム製フィンと外部流体との間で優れた伝熱効率の向上効果が得られるからである。なお、ここでも優れた伝熱効率の向上効果とは、後の実施例において述べる熱交換性能評価試験において定義する熱交換性能評価パラメータが、101.0以上のときをいい、この場合は熱交換性能が優れており良好である。
【0024】
なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材又はフィンは、その表面に耐食性及び親水性等を有する表面処理皮膜が形成されていることが好ましく、この皮膜は熱交換器用アルミニウム製フィンに対して通常求められる熱伝導性を満足できる構成を有するものであれば、どのような表面処理皮膜であってもよく、特に限定するものではない。その材質として例えば、水ガラス、コロイダルシリカ、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリアルキレンオキサイド等が望ましい。但し、この表面処理皮膜は、熱交換器用アルミニウム製フィン材又はフィンの表面の粗面形状に沿った凹凸を有する厚さが均一な皮膜でなければならず、アルミニウム製フィン材又はフィンの表面の粗度係数を減少させるような形態であってはならない。
【0025】
本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材に使用するアルミニウム又はアルミニウム合金板の材質は、従来の熱交換器用アルミニウム製フィン材と同一材質のアルミニウム又はアルミニウム合金であればよく、例えばJIS A1200、JIS A1100、JIS A1050及びAA 3102等に規定されたものを用いることができる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0027】
「実施例1」
(1.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム材を、レーザーショット加工によりJIS B 0601 4.2.1項に規定されている算術平均粗さRaが20μmに調製された表面粗さを有する圧延ロールを用いて、冷間仕上げ圧延をすることにより、圧延ロール目が転写された算術平均粗さRa=10μmの板の表面積を増加させた板厚0.1mmの熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このアルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=120であった。
【0028】
(1.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。表1に上記アルミニウム製フィン及び銅管の主な仕様諸元を示し、表2に上記熱交換器の主な仕様諸元を示す。なお、熱交換器の製作においては、フィンに挿入された銅管とこのフィンとの接触部の伝熱有効面積を確保するために、この接触部の銅管をこの銅管の外径を基準として拡管率105%の拡管をした。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
(1.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器の熱交換性能の評価試験として、JIS C9612に規定されているルームエアコンディショナー性能評価方法に準じて、凝縮運転時及び蒸発運転時の各時期において、銅管内冷媒として表3に示したR410Aを使用し、表3に示す空気側及び冷媒側の各測定条件下において、熱交換器入り側空気と出側空気とのエンタルピー差、及び熱交換器入り側冷媒と出側冷媒とのエンタルピー差を求めることにより交換熱量を測定し、熱交換器の上記各運転時期における熱交換性能を評価した。評価方法は、後述する比較例1における熱交換性能の評価試験である本発明の範囲外のアルミニウム製フィン材を製作し、これから製作されたフィンを組み込んだ熱交換器における試験で得られた交換熱量を100とし、これに対する評価対象試験における交換熱量の比率(%)、即ち{(評価対象試験における交換熱量)/(比較例1における交換熱量)}×100(%)を熱交換性能の評価パラメータ(この明細書で「熱交換性能評価パラメータ」という)とし、熱交換性能評価パラメータが101.0以上の場合を、熱交換性能が好ましく良好であると判定した。表4に、凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
「実施例2」
(2.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板に電解エッチング処理を施し、このアルミニウム板の表面に多数の微細な凹凸を形成して粗面化することにより、その表面積を増加させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。電解液として温度が25℃で濃度が2質量%の塩酸を使用し、電解条件として電流密度が100A/dm2の交流電流による直接通電法で30秒間の電解エッチングを行い、その後室温で30%硝酸に10秒間浸漬した後、室温で5質量%化成ソーダに10秒間浸漬してデスマット処理を行った。こうして製作された熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=200であった。
【0035】
(2.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0036】
(2.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例2で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0037】
「実施例3」
(3.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板に化学エッチング処理を施し、このアルミニウム板の表面に多数の微細な凹凸を形成し粗面化することにより、その表面積を増加させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。化学エッチング条件は、電解液として温度が70℃で濃度が2質量%のフッ酸を使用し、60秒間化学エッチングを行った。こうして製作された熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=140であった。
【0038】
(3.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1及び2と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1及び2と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0039】
(3.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1及び2におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例3で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0040】
「実施例4」
(4.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板をアルカリ脱脂した後、クロム付着量が20mg/m2となる処理条件下でリン酸クロメート処理を施し、その表面に、水ガラス(ケイ酸ソーダ3号)とポリアクリル酸とを配合した塗料を塗布し、焼付け乾燥し、更に水洗し乾燥することにより、上記アルミニウム板の表面に、表面が微細に粗面化された平均膜厚2μmの化成処理による表面処理皮膜を形成した。こうして、アルミニウム板の表面積よりも表面積が増加した化成処理表面皮膜をこのアルミニウム板に形成させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このようにして製作された化成処理表面皮膜が形成されている熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=180であった。
【0041】
(4.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、この化成処理皮膜が形成されたアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至3と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至3と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0042】
(4.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至3におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例4で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0043】
「実施例5」
(5.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板をアルカリ脱脂した後、クロム付着量が20mg/m2となる処理条件下でリン酸クロメート処理を施し、その表面にポリビニールアルコールとポリエチレングリコールとを主成分として配合した塗料を塗布し、焼付け乾燥し、更に水洗し乾燥することにより、上記アルミニウム板の表面に、表面が微細に粗面化された平均膜厚3μmの化成処理による表面処理皮膜を形成した。こうして、アルミニウム板の表面積よりも表面積が増加した化成処理表面皮膜を、このアルミニウム板に形成させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このようにして製作された化成処理表面皮膜が形成されている熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=105であった。
【0044】
(5.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、この化成処理皮膜が形成されたアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至4と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至4と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0045】
(5.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至4におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例5で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0046】
「比較例1」
本発明の範囲外にある比較例として、板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板で、その表面の算術平均粗さRaが0.1μmの表面粗さを有するアルミニウム製フィン材を製作した。この熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=2であった。この熱交換器用アルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至5と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至5と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0047】
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至5におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この比較例1で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0048】
「比較例2」
本発明の範囲外にある他の比較例として、板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板で、その表面の算術平均粗さRaが15μmの表面粗さを有するアルミニウム製フィン材を製作した。この熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=90であった。この熱交換器用アルミニウム製フィン材から比較例1と同じようにしてアルミニウム製フィンを成形し、銅管と組み合わせることにより熱交換器を製作し、熱交換性能試験を実施した。この比較例2で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0049】
以上の結果より、実施例1乃至5はいずれも、本発明の熱交換器用アルミニウム製フィン材を熱交換器用フィンに成形加工し、これを組み入れてフィンチューブ型熱交換器を製作したので、本発明の範囲外の熱交換器用アルミニウム製フィン材を使用したフィンチューブ型熱交換器である比較例1及び2に比べて、凝縮運転及び蒸発運転における交換熱量が1%以上増加しており、熱交換効率が向上することがわかる。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、銅管の内周溝形状を複雑化させることなく、アルミニウム製フィンのオフセットの幅、数及びシフト段数を格別従来品から変更する必要もなく、且つ、フィンピッチを狭くすることもなく、従来品に比して高温側流体と低温側流体との間の熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィンチューブ型熱交換器の構成概略図である。
【符号の説明】
1;アルミニウム製フィン
2;銅管
【発明の属する技術分野】
本発明は、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の熱交換器に好適な熱交換効率を向上させた熱交換器用アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、総称してアルミニウムという)製フィン材、これを成形加工して製作したフィン及びこのフィンを組み込んだフィンチューブ型熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は従来のルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機用熱交換器を示す図である。微小間隔をおいて互いに平行に配設される平板状のアルミニウム製フィン1に直交するように、内部流体通過用の銅又は銅合金製管体(以下、総称して銅管という)2とが挿通され、両者が機械的拡管等により接合されている。このようなタイプの熱交換器を一般的にプレートフィンチューブタイプ熱交換器という。
【0003】
プレートフィンチューブタイプ熱交換器においては、前記アルミニウム製フィン同士の間隙に空気等の外部流体を通過させ、この外部流体の流れに対して交差する方向に前記銅管を配設し、この銅管内をフロン等冷媒の内部流体を通過させることにより、外部流体と内部流体との間で熱交換を行わせている。
【0004】
近年、ルームエアコン及びパッケージエアコン等の空調機における省エネルギー化、省スペース化及び低騒音化の要求に対しては、圧縮機と共に空調機の主要な構成部品である熱交換器に課せられた課題は極めて大きく、熱交換器の熱交換効率の向上が図られている。
【0005】
上記構成の熱交換器において、高温側流体の減少熱量に対する低温側流体の取得熱量の割合で定義される熱交換効率は、これらの流体間における全熱抵抗に大きく依存し、この全熱抵抗は下記の各熱抵抗からなり、その構成比率は概略下記のとおりである。
外部流体とアルミニウム製フィンとの間における熱抵抗:約75%
アルミニウム製フィンと銅管との間における熱抵抗 :約 5%
銅管と内部流体との間における熱抵抗 :約20%
合計 :100%
なお、上記各所における熱伝達率は対応する各熱抵抗の逆数である比熱抵抗に依存する。従って、各熱抵抗が小さい条件下にある場合の方が各熱伝達率は高くなるので、熱交換効率が高くなり熱交換器の熱交換性能は向上する。
【0006】
このように、全熱抵抗のうち外部流体とアルミニウム製フィンとの間における熱抵抗がかなり大きな部分を占めているので、熱交換器の熱交換効率の向上を図るためには、アルミニウム製フィンと外部流体間の熱抵抗を小さくしてその間の熱伝達率を向上させることが、熱交換器の熱交換効率向上に対して大きく寄与する(例えば、中田春男:機械の研究、p.1005乃至1011、第41巻、第9号(1989))。
【0007】
そこで従来、熱交換器の熱交換効率を向上させるために、例えば次のような方法が試みられている。即ち、
(1)銅管の内周面に螺旋状の溝を形成し、銅管内周面の表面積を大きくすることにより、内部流体である冷媒と銅管との間の熱伝達率を向上させる方法(以下、「従来技術1」という)であり、銅管に所謂内面溝付き管を使用する。
(2)アルミニウム製フィンに多数の切り起こし(以下、オフセットと称す)を設け、アルミニウム製フィンと空気等の外部流体との間の熱伝達率を向上させる方法(以下、「従来技術2」という)であり、例えば▲1▼田口哲夫、田中順一郎:冷凍、p.472乃至475、第63巻第727号(1988)、▲2▼茂木仁:第33回伸銅技術研究会講演概要集、p.34乃至36(1993)に開示されている。更に、
(3)熱交換器の熱交換効率に寄与する割合の大きいアルミニウム製フィンと外部流体間との熱伝達率を増加させるため、アルミニウム製フィン同士の相互間隔(以下、フィンピッチという)を狭くすることにより、熱交換器として同一体積内のアルミニウム製フィン枚数を増加させ、アルミニウム製フィンの表面積を増加させる方法(以下、「従来技術3」という)が試みられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術1の銅管に所謂内面溝付き管を使用して、内部流体と銅管との間の熱伝達率を向上させる方法では、銅管の内周面に螺旋状の溝を形成して、銅管内周面の表面積を大きくしようとすればするほど、内周溝の形状が複雑になるため、かえって内部流体の流れが阻害されて熱交換効率が低下するという問題が生じる。また、このように内周溝の形状が複雑になると、圧力損失が増大する。従って、内周溝の形状を変えることによる熱交換効率の向上には一定の限界がある。しかも、内周溝形状が複雑になると、溝の加工性が悪くなり、加工コストが上昇するという問題も生じる。
【0009】
従来技術2のアルミニウム製フィンに多数のオフセットを設け、アルミニウム製フィンと外部流体との間の熱伝達率を向上させる方法では、オフセットの幅を減少させることによりオフセット数を増加させ、更にそのシフト段数を増やすことにより熱伝達率の向上を図るものである。しかし、これにより通風抵抗が増加するという弊害が生じるので、一定の通風抵抗当たりの熱伝達率という観点からこの方法をみると、オフセット幅の減少、オフセット数の増加及びシフト段数の増加には限界がある。この状況については、例えば中田春男:機械の研究、p.1005乃至1011、第41巻、第9号(1989)に記載されている。
【0010】
また、ルームエアコン室内器の夏季冷房運転中には、熱交換器が蒸発運転状態にあり、銅管中の冷媒の蒸発熱により銅管及びフィンが冷却されてアルミニウム製フィンの表面に凝縮水が生じる。この凝縮水は、オフセットを有しないフィン(即ち、フラット形状のフィン)の場合には、フィン表面を伝わり容易に熱交換器下部方向に落下するので問題ないが、オフセットを有するフィンの場合には、オフセット部に水滴となって溜まり、この水滴が落下してファンに付着し、その後ファンからエアコンの空気噴き出し口を通り室内へ飛散するという問題点、即ちエアコン室内器ユニットから室内への凝縮水の吹き出しという問題点があり、オフセット数を増加させると、上記凝縮水がオフセット部に一層溜まり易くなり、上述した室内への凝縮水の吹き出し問題が一層ひどくなる。また、昨今問題となっている例えばパラフィン及びステアリン酸等の室内環境浮遊汚染物質が、アルミニウム製フィンへ付着してこれを撥水化させるという問題が、オフセット数の増加により一層大きな問題となっている。そこで、エアコンメーカーではオフセットを簡略化する傾向がある。なお、このような凝縮水の溜まり易さの傾向及びフィン表面の撥水化(「水飛び」という)の増大は「水飛び不具合」と呼ばれる。また、エアコン室外器における除霜運転時においても、オフセット部により融解した霜の下方向への落下が妨げられ、除霜時間が長くなるという問題点が生じる。
【0011】
従来技術3のフィンピッチを狭くすることにより、熱交換器として同一体積内のアルミニウム製フィンの枚数を増加させ、アルミニウム製フィンの表面積を増加させるという方法では、フィンピッチが狭いことにより、フィン間に凝縮水及び融解した霜が溜まり易くなるため、上述したオフセットフィンと同様に、水飛び不具合の発生及びエアコン室外器の除霜時間が長くなる等の問題点がある。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、銅管の内周溝形状を複雑化せず、例えば、管軸方向に所定幅で数種類の凹凸溝を形成させ、その溝ピッチ及び溝寸法等の各要素の諸元が夫々異なる複数種の溝を形成させたり、又は管軸に対して斜めに交差する方向の螺旋状溝とこの螺旋状溝と交差して管軸方向に複数の直線状の突条部を設け、この突条部には溶接ビードで形成させた突条部を含ませ、この突条部の幅及び高さを所定値に規定する等といった内周溝の形状の複雑化をすることなく、またアルミニウム製フィンのオフセットの幅、数及びシフト段数を従来技術に対して変更する必要なく、且つ、フィンピッチを狭くせずに、熱交換器の熱交換効率を向上させることができるアルミニウム製フィン材、これを用いたフィン及びこのフィンを用いた熱交換器を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材は、アルミニウム又はアルミニウム合金板よりなる熱交換器用アルミニウム製フィン材において、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数が、100以上であることを特徴とする。前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、電気化学的エッチング処理又はレーザーショット加工処理を含む電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段による処理により粗面化することができる。また、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、この表面に対して皮膜の形成処理を施すことにより粗面化されていてもよい。前記フィン材の表面には、少なくとも耐食性を有する表面処理皮膜が形成されていることが好ましい。
【0014】
一方、本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィンは、上述した熱交換器用アルミニウム製フィン材を成形加工したものであることを特徴とする。そして、本発明に係るフィンチューブ型熱交換器は、このような熱交換器用アルミニウム製フィンが組み込まれていることを特徴とする。
【0015】
本発明においては、アルミニウム製フィンと外部流体との間の伝熱抵抗が熱交換器の熱交換効率に及ぼす影響が極めて大きいことに注目し、アルミニウム製フィンの大きさで決まる見かけの表面積を大きくすることなく、アルミニウム製フィンの表面の粗度係数が100以上となるように粗面化して、実際の表面積を見かけの表面積に対して著しく大きくしたものである。これにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間で熱交換が行われる面積を増加させることにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間の熱伝達率を向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材は、その表面に微細な凹凸を形成させ、その表面の粗度係数が100以上になるように粗面化することにより表面積を増加させる。この表面の粗面化手段として、▲1▼アルミニウム又はアルミニウム合金板自身を粗面化する方法と、▲2▼アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、表面が粗面化した皮膜を形成させる方法とに分けることができる。
【0017】
上記▲1▼項のアルミニウム又はアルミニウム合金板自身を粗面化する方法として、本発明においては電気化学的エッチング処理、レーザーショット加工処理若しくはその他の電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段を利用する。電気化学的エッチング処理として、電解エッチング又は化学エッチング(湿式エッチング)等の方法を用いることができる。例えば化学エッチングにおいては、エッチング剤としてフッ酸、塩酸又は水酸化ナトリウム等の上記アルミニウム又はアルミニウム合金を腐食する薬剤をエッチング液として使用し、適切な濃度、温度及び処理時間を選定し、また、電解エッチングにおいては、エッチング剤として硝酸、塩酸又は硫酸等の上記アルミニウム又はアルミニウム合金を腐食する薬剤をエッチング液として使用し、適切な濃度、温度、処理時間及び電解条件を選定し、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に多数の凹凸及び/又は孔等を生じさせて粗面化し、アルミニウム製フィン材の表面積を増加させる。この後で、このアルミニウム製フィン材を用いてフィン成形を行ない、アルミニウム製フィンを製作する。なお、フィン成形を行なった後のアルミニウム製フィンに電解エッチング又は化学エッチングを施し、アルミニウム製フィンの表面積を増加させてもよい。また、電気的微粒子の照射手段としては、レーザーショット加工処理、イオンスパッタリング又はプラズマ照射等を、また物理的微粒子の照射手段としては、サンドブラスト等を適宜使用することができる。
【0018】
上記▲2▼項のアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、表面が微細に粗面化した皮膜を形成させることにより、アルミニウム製フィン材の表面積を増加させる。このような微細に粗面化した皮膜を設ける方法としては、この板に化成処理を施すために例えば、(1)水ガラス又はコロイダルシリカ等の無機化合物とアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の水溶性樹脂とを配合した薬剤を塗布し、焼付け乾燥する方法、又は(2)ポリビニルアルコール系樹脂とポリアルキレンオキサイド系樹脂との組合わせのように複数の水溶性樹脂を配合した薬剤を塗布し、焼付け乾燥する方法等を用いることができる。この後で、このアルミニウム製フィン材を用いてフィン成形を行ないアルミニウム製フィンを製作する。ここで形成された表面処理皮膜の熱伝導率は、この皮膜と接触する流体、一般的には空気の熱伝導率である約0.025W/mKよりも十分に大きいことが好ましい。従って、例えばこの表面処理皮膜の熱伝導率は0.1W/mK以上、好ましくは1W/mK以上であり、更に一層好ましくは10W/mK以上である。
【0019】
上記▲1▼項又は▲2▼項の方法で形成されたアルミニウム製フィン材の表面の粗面化の度合いについては、板の見かけの表面積に対して、粗面化されたために増大した後の実際の板の表面積が大きいほど、フィンとして熱交換器に組み込まれて使用されたときにフィンの表面と流体、一般的には空気との接触面積が大きくなるので好ましい。本発明においては、見かけの表面積に対するこの増大後の表面積の比率を、下記に定義する表面の粗度係数rで表す。即ち、表面の粗度係数r=Ar/Aa、但し、Ar:実表面積、Aa:見かけの表面積とし、実表面積ArはJIS B 0601「製品の幾何特性仕様」の3.1.3で定義されている「実表面(real surface)」に基づき、物体の境界であって周囲の空間から分離する表面の面積を指すものである。例えば、1辺が10cmの正方形の板状試験片について、見かけの表面積Aaは、10cm×10cm=100cm2であるのに対して、実際の試験片の表面には微細な凹凸が多数存在するため、実表面積Arは、100cm2よりも大きくなる。そして、実表面積を測定する方法としては、大きさが既知のガス分子を試料表面に吸着させ、その吸着量より試料表面積を求めるガス吸着法の1測定方法である「流動法」等を用いて行うことができる。
【0020】
上記▲1▼項又は▲2▼項の方法で形成されたアルミニウム製フィン材の表面の粗面化の度合いとして、表面の粗度係数rが100以上になるような条件で各処理方法を実施することが必要である。
【0021】
この発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の凹凸は、上記▲1▼項又は▲2▼項の方法により形成する場合に限らず、種々の方法により形成できる。例えば、所定の板厚に上記アルミニウム又はアルミニウム合金板に圧延する冷間圧延工程の特に仕上げ圧延工程において、表面に大きな凹凸を持つ圧延ロールを用い、この圧延によりこのアルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に凹凸を付与し、この板の表面積を増加させる。このように、圧延時にロール目をこの板表面に転写するという方法でもよい。ここで、圧延ロール表面に大きな凹凸を形成させる方法として、例えばレーザーショット加工処理等による。
【0022】
本発明において、熱交換器用アルミニウム製フィン材として、上記▲1▼項の方法で表面の粗度係数rを100以上としたアルミニウム又はアルミニウム合金板を使用する理由は、次のとおりである。アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数rを大きくしたフィン材を使用することにより、アルミニウム製フィンと外部流体との間での伝熱効率の向上効果が得られる。しかし、その粗度係数rが100より小さい場合には、アルミニウム製フィンと外部流体との間での伝熱効率の向上効果が小さく、熱交換器の熱交換効率の優れた向上効果は得られない。粗度係数rが100以上のアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるフィン材を成形加工したフィンを組み込んだフィンチューブ型熱交換器においては、アルミニウム製フィンと外部流体との間で優れた伝熱効率の向上効果が得られる。従って、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数rは、100以上とする。なお、ここで優れた伝熱効率の向上効果とは、後の実施例において述べる熱交換性能評価試験において定義する熱交換性能評価パラメータが、101.0以上のときをいい、この場合は熱交換性能が優れており良好である。
【0023】
また、本発明において、熱交換器用アルミニウム製フィン材として、上記▲2▼項の方法で、表面の粗度係数rを100以上とした微細な凹凸を形成させた表面皮膜の形成処理を施したアルミニウム又はアルミニウム合金板を使用する理由は、次のとおりである。表面の粗度係数rが100以上に粗面化された皮膜が表面に形成されているアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるアルミニウム製フィン材は、上記▲1▼項の方法で表面の粗度係数rを100以上としたアルミニウム又はアルミニウム合金板よりなるアルミニウム製フィン材と同じように、それを成形加工したアルミニウム製フィンと外部流体との間で優れた伝熱効率の向上効果が得られるからである。なお、ここでも優れた伝熱効率の向上効果とは、後の実施例において述べる熱交換性能評価試験において定義する熱交換性能評価パラメータが、101.0以上のときをいい、この場合は熱交換性能が優れており良好である。
【0024】
なお、本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材又はフィンは、その表面に耐食性及び親水性等を有する表面処理皮膜が形成されていることが好ましく、この皮膜は熱交換器用アルミニウム製フィンに対して通常求められる熱伝導性を満足できる構成を有するものであれば、どのような表面処理皮膜であってもよく、特に限定するものではない。その材質として例えば、水ガラス、コロイダルシリカ、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂及びポリアルキレンオキサイド等が望ましい。但し、この表面処理皮膜は、熱交換器用アルミニウム製フィン材又はフィンの表面の粗面形状に沿った凹凸を有する厚さが均一な皮膜でなければならず、アルミニウム製フィン材又はフィンの表面の粗度係数を減少させるような形態であってはならない。
【0025】
本発明に係る熱交換器用アルミニウム製フィン材に使用するアルミニウム又はアルミニウム合金板の材質は、従来の熱交換器用アルミニウム製フィン材と同一材質のアルミニウム又はアルミニウム合金であればよく、例えばJIS A1200、JIS A1100、JIS A1050及びAA 3102等に規定されたものを用いることができる。
【0026】
【実施例】
次に、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
【0027】
「実施例1」
(1.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム材を、レーザーショット加工によりJIS B 0601 4.2.1項に規定されている算術平均粗さRaが20μmに調製された表面粗さを有する圧延ロールを用いて、冷間仕上げ圧延をすることにより、圧延ロール目が転写された算術平均粗さRa=10μmの板の表面積を増加させた板厚0.1mmの熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このアルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=120であった。
【0028】
(1.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。表1に上記アルミニウム製フィン及び銅管の主な仕様諸元を示し、表2に上記熱交換器の主な仕様諸元を示す。なお、熱交換器の製作においては、フィンに挿入された銅管とこのフィンとの接触部の伝熱有効面積を確保するために、この接触部の銅管をこの銅管の外径を基準として拡管率105%の拡管をした。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
(1.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器の熱交換性能の評価試験として、JIS C9612に規定されているルームエアコンディショナー性能評価方法に準じて、凝縮運転時及び蒸発運転時の各時期において、銅管内冷媒として表3に示したR410Aを使用し、表3に示す空気側及び冷媒側の各測定条件下において、熱交換器入り側空気と出側空気とのエンタルピー差、及び熱交換器入り側冷媒と出側冷媒とのエンタルピー差を求めることにより交換熱量を測定し、熱交換器の上記各運転時期における熱交換性能を評価した。評価方法は、後述する比較例1における熱交換性能の評価試験である本発明の範囲外のアルミニウム製フィン材を製作し、これから製作されたフィンを組み込んだ熱交換器における試験で得られた交換熱量を100とし、これに対する評価対象試験における交換熱量の比率(%)、即ち{(評価対象試験における交換熱量)/(比較例1における交換熱量)}×100(%)を熱交換性能の評価パラメータ(この明細書で「熱交換性能評価パラメータ」という)とし、熱交換性能評価パラメータが101.0以上の場合を、熱交換性能が好ましく良好であると判定した。表4に、凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を示す。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
「実施例2」
(2.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板に電解エッチング処理を施し、このアルミニウム板の表面に多数の微細な凹凸を形成して粗面化することにより、その表面積を増加させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。電解液として温度が25℃で濃度が2質量%の塩酸を使用し、電解条件として電流密度が100A/dm2の交流電流による直接通電法で30秒間の電解エッチングを行い、その後室温で30%硝酸に10秒間浸漬した後、室温で5質量%化成ソーダに10秒間浸漬してデスマット処理を行った。こうして製作された熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=200であった。
【0035】
(2.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0036】
(2.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例2で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0037】
「実施例3」
(3.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板に化学エッチング処理を施し、このアルミニウム板の表面に多数の微細な凹凸を形成し粗面化することにより、その表面積を増加させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。化学エッチング条件は、電解液として温度が70℃で濃度が2質量%のフッ酸を使用し、60秒間化学エッチングを行った。こうして製作された熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=140であった。
【0038】
(3.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、このアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1及び2と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1及び2と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0039】
(3.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1及び2におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例3で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0040】
「実施例4」
(4.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板をアルカリ脱脂した後、クロム付着量が20mg/m2となる処理条件下でリン酸クロメート処理を施し、その表面に、水ガラス(ケイ酸ソーダ3号)とポリアクリル酸とを配合した塗料を塗布し、焼付け乾燥し、更に水洗し乾燥することにより、上記アルミニウム板の表面に、表面が微細に粗面化された平均膜厚2μmの化成処理による表面処理皮膜を形成した。こうして、アルミニウム板の表面積よりも表面積が増加した化成処理表面皮膜をこのアルミニウム板に形成させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このようにして製作された化成処理表面皮膜が形成されている熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=180であった。
【0041】
(4.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、この化成処理皮膜が形成されたアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至3と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至3と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0042】
(4.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至3におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例4で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0043】
「実施例5」
(5.1)アルミニウム製フィン材の製作及びその表面の粗度係数
板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板をアルカリ脱脂した後、クロム付着量が20mg/m2となる処理条件下でリン酸クロメート処理を施し、その表面にポリビニールアルコールとポリエチレングリコールとを主成分として配合した塗料を塗布し、焼付け乾燥し、更に水洗し乾燥することにより、上記アルミニウム板の表面に、表面が微細に粗面化された平均膜厚3μmの化成処理による表面処理皮膜を形成した。こうして、アルミニウム板の表面積よりも表面積が増加した化成処理表面皮膜を、このアルミニウム板に形成させた熱交換器用アルミニウム製フィン材を製作した。このようにして製作された化成処理表面皮膜が形成されている熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=105であった。
【0044】
(5.2)アルミニウム製フィンの製作及び熱交換器の製作
次いで、この化成処理皮膜が形成されたアルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至4と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至4と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0045】
(5.3)熱交換器の熱交換性能評価試験及び結果
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至4におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この実施例5で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0046】
「比較例1」
本発明の範囲外にある比較例として、板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板で、その表面の算術平均粗さRaが0.1μmの表面粗さを有するアルミニウム製フィン材を製作した。この熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=2であった。この熱交換器用アルミニウム製フィン材から成形加工によりアルミニウム製フィンを製作し、更にこのアルミニウム製フィンと所定の銅管とを組み合わせることにより熱交換器を製作した。製作したアルミニウム製フィン及び使用した銅管の仕様諸元は実施例1乃至5と同じで、表1に示したとおりであり、また熱交換器の製作方法及び仕様諸元も実施例1乃至5と同じであり、その仕様諸元は表2に示したとおりである。
【0047】
上記のとおり製作された熱交換器について、熱交換性能の評価試験を行い、その性能を評価した。その評価試験方法及び評価方法は実施例1乃至5におけると同じであり、その評価試験における測定条件は表3に示したとおりである。この比較例1で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0048】
「比較例2」
本発明の範囲外にある他の比較例として、板厚が0.1mmに圧延された材質がJIS A1200 H24に相当するアルミニウム板で、その表面の算術平均粗さRaが15μmの表面粗さを有するアルミニウム製フィン材を製作した。この熱交換器用アルミニウム製フィン材の表面の粗度係数rを流動法により測定した結果、r=90であった。この熱交換器用アルミニウム製フィン材から比較例1と同じようにしてアルミニウム製フィンを成形し、銅管と組み合わせることにより熱交換器を製作し、熱交換性能試験を実施した。この比較例2で得られた凝縮運転時及び蒸発運転時の夫々の交換熱量の測定値並びに熱交換性能評価パラメータ及びその性能の判定結果を、前記表4に示す。
【0049】
以上の結果より、実施例1乃至5はいずれも、本発明の熱交換器用アルミニウム製フィン材を熱交換器用フィンに成形加工し、これを組み入れてフィンチューブ型熱交換器を製作したので、本発明の範囲外の熱交換器用アルミニウム製フィン材を使用したフィンチューブ型熱交換器である比較例1及び2に比べて、凝縮運転及び蒸発運転における交換熱量が1%以上増加しており、熱交換効率が向上することがわかる。
【0050】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、銅管の内周溝形状を複雑化させることなく、アルミニウム製フィンのオフセットの幅、数及びシフト段数を格別従来品から変更する必要もなく、且つ、フィンピッチを狭くすることもなく、従来品に比して高温側流体と低温側流体との間の熱交換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フィンチューブ型熱交換器の構成概略図である。
【符号の説明】
1;アルミニウム製フィン
2;銅管
Claims (6)
- アルミニウム又はアルミニウム合金板よりなる熱交換器用アルミニウム製フィン材において、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面の粗度係数が、100以上であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム製フィン材。
- 前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、電気化学的エッチング処理又はレーザーショット加工処理を含む電気的微粒子の照射手段又は物理的微粒子の照射手段による処理により粗面化されたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム製フィン材。
- 前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面は、この表面に対して皮膜の形成処理を施すことにより粗面化されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器用アルミニウム製フィン材。
- 前記フィン材の表面に、少なくとも耐食性を有する表面処理皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム製フィン材。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱交換器用アルミニウム製フィン材を成形加工したものであることを特徴とする熱交換器用アルミニウム製フィン。
- 請求項5に記載の熱交換器用アルミニウム製フィンが組み込まれていることを特徴とするフィンチューブ型熱交換器。
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JP2002203154A JP2004044909A (ja) | 2002-07-11 | 2002-07-11 | 熱交換器用アルミニウム製フィン材、フィン及びフィンチューブ型熱交換器 |
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JP2002203154A JP2004044909A (ja) | 2002-07-11 | 2002-07-11 | 熱交換器用アルミニウム製フィン材、フィン及びフィンチューブ型熱交換器 |
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Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009250562A (ja) * | 2008-04-09 | 2009-10-29 | Panasonic Corp | 熱交換器 |
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JP2015135208A (ja) * | 2014-01-17 | 2015-07-27 | 株式会社ティラド | 熱交換器 |
JP2016099101A (ja) * | 2014-11-26 | 2016-05-30 | 三菱アルミニウム株式会社 | 熱交換器、及び熱交換器の製造方法 |
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CN110332843A (zh) * | 2019-07-09 | 2019-10-15 | 泰州市恒阳液压机械制造有限公司 | 冷却器 |
-
2002
- 2002-07-11 JP JP2002203154A patent/JP2004044909A/ja active Pending
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