JP2004043582A - インキ組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】印鑑やスタンプ台に使用可能で、通常では普通のインキとの見分けがつきにくく、インキの安定性および印字物の発光強度および耐光性が良好で、ブラックライトの光を当てるなど簡易的な方法で検出可能な印字物を得られる蛍光発光インキの開発。
【解決手段】一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)を含有することを特徴とするインキ組成物。
【化1】
【解決手段】一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)を含有することを特徴とするインキ組成物。
【化1】
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印鑑やスタンプに使用可能なインキ組成物で、ブラックライトの光を当てて簡易的に発光を検出できる蛍光発光インキに関する。更に詳しくは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好な蛍光発光インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するための処置は様々な方法が検討されている。その中で例えば特殊インキを使用する方法としては、不正を防止したい文字、数字情報などを着色剤および蛍光顔料または染料を使用したインキを用いて印刷し、ブラックライトにより紫外線を照射して蛍光を検出することによって印刷物の真偽を判定することが出来る方法などがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでの特殊インキは検出時の感度を十分に得ようとすると蛍光を阻害しないような無色や薄い色が主流となり、光の吸収や隠蔽性の大きい着色顔料を使用することが難しく、自由にインキ色を設定するのが難しかった。これらを回避するために特開平10−7956はインキの材料中にブリードアウトしやすい成分を入れて文字等の線の周囲に蛍光物質をしみださせ、その発光を検出する方法が提案されている。しかしこの方法では印刷部のまわりにしみだした蛍光物質の色が検出時以外でも目立ってしまうことがあり、改ざん防止という目的を考えると印刷用紙の色を限定せざるを得ないという問題があった。
さらに、印鑑やスタンプに使用する場合は、通常の印刷やコーティングと違い塗布量がかなり少ないため、目視で簡易的に判定しようとすると十分な発光を得るのは難しかった。十分な発光を得るために蛍光物質の量を増やすと、蛍光物質の色によって本来のインキの色とは違う色になってしまうなどの問題もあり、改良が望まれていた。さらに蛍光物質も様々なものがある中で、十分な印刷物の耐光性を得るためにいまだ様々な検討がされており、課題として残っている状況である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記したような問題点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成させた。即ち本発明は、
(1)一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)を含有することを特徴とするインキ組成物、
【化2】
(R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を、n1およびn3は0から4の整数を、n2は0から2の整数をあらわし、n1、n2およびn3がそれぞれ2個以上の場合は、それぞれのR1、R2およびR3は同一であっても異なっていても良く、また、それぞれの置換基は隣接する基どうしが互いに連結して環を形成してもよい)
(2)R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、ニトロ基、もしくは置換または非置換のアミノ基である(1)に記載のインキ組成物、
(3)R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン原子またはヒドロキシル基である(1)に記載のインキ組成物、
(4)R1、R2及びR3がそれぞれ独立に(C1−C4)アルキル基、塩素原子またはヒドロキシル基である(1)に記載のインキ組成物、
(5)n1、n2およびn3全てが0である(1)に記載のインキ組成物、
(6)植物油脂(C)を含有する(1)から(5)のいずれか一項に記載のインキ組成物、
(7)植物油脂(C)がヨウ素価100以下の不乾性油である(6)に記載のインキ組成物、
(8)着色顔料(B)の色が、一般式(1)で表される化合物(A)に紫外線を照射したときの発光色とは異なることを特徴とする(1)から(7)のいずれか一項に記載のインキ組成物、
(9)(1)から(8)のいずれか一項に記載のインキ組成物で着色された着色体、
に関する。
【0005】
本発明は、印鑑やスタンプに使用可能で、ブラックライトの光を当てて簡易的に発光を検出できる蛍光発光インキの組成物である。さらに詳しくは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好な蛍光発光インキである。
【0006】
本発明で使用する、一般式(1)で表される化合物(A)について説明する。
【化3】
一般式(1)においてR1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基をあらわす。置換基としてアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、ニトロ基、置換および非置換のアミノ基などを表し、好ましくはアルキル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基である。更に好ましくは(C1−C4)アルキル基、塩素原子およびヒドロキシル基が挙げられる。n1およびn3は0から4の整数、n2は0から2の整数をあらわし、n1、n2およびn3がそれぞれ2個以上の複数の場合はR1、R2およびR3は同一であっても異なっていても良い。さらにそれぞれの置換基は隣接する基どうしが互いに連結して環を形成してもよい。
【0007】
一般式(1)の好ましい化合物としてはn1,n2およびn3全てが0であり、置換基を有さないものであるかまたは置換基R2が窒素原子のメタ位にヒドロキシル基を有するもの、またはR3に1から4個の塩素原子を有するものなどが挙げられる。更に好ましい化合物としてはn1,n2およびn3全てが0であり、置換基を有さないものが挙げられる。一般式(1)で表される化合物(A)を合成する方法としては、特開2000−160043に記載の方法により合成することができる。
一般式(1)の化合物の好適な例として、以下のような構造式のものが挙げられる。
【0008】
【化4】
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
一般式(1)で表される化合物(A)の使用量は、得られる印刷物の発光強度や粘度などを考慮すると、インク組成物の全質量に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である
。
【0012】
本発明で使用する着色剤(B)は、一般的に用いられる有機顔料や無機顔料を特に制限なく用いることが出来る。
有機顔料は例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、ベンゾイミダゾロン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系等の顔料;酸性染料、塩基性染料、直接染料等をそれぞれの沈澱剤で不溶化したレーキ顔料、染付けレーキ顔料が使用できる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
また、無機顔料の例としては、複合金属酸化物顔料、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、鉄黒、鉛丹、硫化亜鉛、カドニウムエロー、カドニウムレッド、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の金属酸化物、金属硫化物、硫酸塩、金属水酸化物、金属炭酸塩等が挙げられる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、本発明の用途には着色顔料(B)の色は、一般式(1)で表される化合物(A)に紫外性を照射したときの発光色とは異なることがより好ましい。発光色と着色顔料(B)の色が異なる方が、ブラックライトにより紫外線を照射したときの発光が検出器を使わずとも、目視で容易に蛍光を検出することができる為である。
着色剤(B)の使用量はインク組成物の全質量に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。
【0014】
本発明で使用する植物油脂(C)は、アマニ油、エノ油、キリ油などの乾性油、ゴマ油、ナタネ油、綿実油、大豆油などの半乾性油、ツバキ油、オリーブ油、ヒマシ油などの不乾性油のいずれも使用できる。その中でも本発明の用途では転写性、乾燥性などのインキ適性の点でヨウ素価100以下の不乾性油が適している。
植物油脂(C)の使用量はインク組成物の全質量に対し、通常40〜99質量%、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは60〜98質量%の範囲である。
【0015】
さらに、本発明のインキ組成物には、必要に応じて、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、タルク、クレイ、カオリン、コロイダルシリカ、金属粉末等の無機粉末やこれらの無機粉末を表面処理した神酒無機フィラーや、スチレンマイクロボール、ポリスチレン樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、尿素−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、アスパラギン酸エステル誘導体、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アマイド、エポキシ樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、芳香族ポリエステル等の有機フィラーを併用することができる。また、ポリマー、消泡剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤やヒンダードアミンライトスタビライザーなどの光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤などの添加剤を、種類、使用量を適宜選択して併用することができる。
【0016】
本発明のインキ組成物を製造するには、例えば次のようにすればよい。すなわち、一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)、植物油脂(C)と、必要に応じてその他の添加剤を公知の攪拌機により均一に混合する。また、必要に応じてボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の公知の分散機により分散させる。その際、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤など一般的に知られている各種分散剤や界面活性剤を併用することも可能である。
このようにして得られたインキ組成物は経時的に安定である。
【0017】
このインキ組成物で印字する方法としては、オフセット印刷や凸版印刷、フレキソ印刷など、印刷機を用いる公知の印刷方法が挙げられる。また、本発明のインク組成物をガーゼ・スポンジなどに含浸させて作製したスタンプ台または朱肉を用いて印鑑やゴム印などで押す方法、印鑑に内蔵したインクと多孔質ゴムの印判により朱肉を使用せずに印字する方法、インキ組成物を含浸させた多孔質ゴムロールを使用してオフセット方式で印判に転写して印字する方法などに特に適している。
【0018】
本発明の着色体を得るには、証明書類、有価証券類、小切手などの書類の不正を防止したい文字、数字情報などを本発明のインキ組成物を用いて、上記のような方法にて印字すればよい。
【0019】
また、本発明のインキ組成物を使用した印字物の発光を検出する方法としては市販のブラックライトの光を当てて目視で確認する。本発明のインキは自由にインキ色を選んでも、検出時には市販のブラックライトで十分な発光強度が得られ目視で簡易的に判定ができる。尚、検出器を用いて確認できることはもちろんである。
【0020】
本発明のインキで印字した印字物は、通常の状態では普通のインキの印字物と何ら変わりはなく、特殊な性能を隠しておくと言う意味で改ざん防止という目的に適している。コピーで複写して改ざんした場合には、本来発光があるはずの部分に発光は検出されず、真偽を容易に判定することが可能である。また、従来の一般的な蛍光染料などを使用したインキに比べて耐光性などの保存性が良好で実用的である。
【0021】
本発明のインキ組成物は安定性が良好であり、発光強度が強く、耐光性も強いため、朱肉やスタンプ台用のインクとして有用である。更にその印字物はブラックライトの光を当てたときの発光を容易に検出できるため、本発明のインキ組成物は、証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するためのインキとして有用である。
【0022】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。尚、実施例において部は質量部を意味する。
【0023】
【0024】
上記の成分を混合した後、ペイントシェーカーにて1時間混合分散して本発明のインキ組成物を得た。このインキを折りたたんだガーゼに含浸させた。これを簡易的にスタンプ台として使用して印鑑で上質紙に印字(押印)し、本発明のインキ組成物の印字物を得た。
【0025】
実施例2
実施例1において赤色着色剤のかわりに青色着色剤(イルガライトブルーGLO;チバスペシャルティケミカルズ製)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明のインキ組成物および印字物を得た。
【0026】
実施例3
実施例1において分散剤(フローレンG−600;共栄社化学製)のかわりに分散剤(ブラウノンBR−26;青木油脂工業製)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明のインキ組成物および印字物を得た。
【0027】
比較例1
化合物例(1)の化合物の代わりに蛍光染料(カヤライトB;日本化薬製)(特開平10−7956 実施例に使用されている蛍光染料)を使用した以外は実施例1と同様にして比較用のインキ組成物および印字物を得た。
【0028】
標準インキ赤
化合物例(1)の化合物を使用しない以外は実施例1と同様にして標準インキ赤のインキ組成物および印字物を得た。
【0029】
標準インキ青
化合物例(1)の化合物を使用しない以外は実施例2と同様にして標準インキ青のインキ組成物および印字物を得た。
【0030】
この様にして得られたインキ組成物および印字物の評価を行い、それぞれの結果を表1、表2に示した。また、評価基準は以下に述べるものを採用した。
【0031】
【0032】
【0033】
(1)インキの安定性
得られたインク組成物を室温にて3日放置し、目視で観察することにより安定性を評価した。
○:溶解または分散の均一な状態で安定している。
△:沈降物がみられるが、再分散性は良好であり、攪拌すれば均一な状態となる。
×:分離がみられ再分散性が不良である。あるいは変色する。
(2)印字物の色
実施例1、3、比較例1は先に挙げた標準インク赤と、実施例2は標準インキ青と通常の状態で比較した。
色の比較は印字直後と、印字物を室内で3ヶ月保管後の2回実施してそれぞれ結果を示した。
○:それぞれの標準インキと違いがなかった。
×:色の違いがあった。
【0034】
(3)発光強度
得られた印字物にハンディーUVランプ(井内盛栄堂製 SLUV−6)で254nmおよび365nmのUV光を照射し、印字部の発光を目視で確認した。
発光の確認は印字直後と、印字物を室内で3ヶ月保管後と、印字物をEYE SUPER UV TESTER SUV−W11(岩崎電気製)にて60℃、60%RHの条件で1時間耐光試験を行った後の、計3回実施してそれぞれ結果を示した。
○:いずれの波長のUV光でも目視で容易に判定できる発光があった。
△:少なくとも一方の波長のUV光で弱い発光があるが、明るい室内では目視で容易に判定するのは難しい状態だった。
×:発光が目視で確認できなかった
【0035】
(4)スタンプ台の保存性
得られたインキを簡易的にガーゼに含浸させたスタンプ台を室内に放置し、1週間後に同様の方法で印字評価を行なった。
○:問題なく印字でき、色、発光ともに変化がなかった。
×:印字できなかった。あるいは色の変化、発光強度の低下があった。
【0036】
表1、2から明らかなように、本発明のインキは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわからず、検出時には発光強度が高く普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好であった。さらにスタンプとして使用する場合にインクの乾きもなく安定して印字可能であることが確認できた。
【0037】
【発明の効果】
本発明のインキ組成物は安定性が良好であり、印鑑や朱肉、スタンプ台に有用であり、その印字物はブラックライトの光を当てたときの発光強度が強く、目視にて容易に発光を検出できる。さらに可視光下では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすい為、本発明のインキ組成物を不正を防止したい文字、数字情報などを印刷するインキに使用したり、書類の一部分に判子で文字や模様を押したりすることによって、本物と、コピーなどで偽造された書類の真偽を、目視で簡易的に判定することが出来る。さらに耐光性も強いため、本発明のインキ組成物は証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するためのインキとして有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印鑑やスタンプに使用可能なインキ組成物で、ブラックライトの光を当てて簡易的に発光を検出できる蛍光発光インキに関する。更に詳しくは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好な蛍光発光インキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するための処置は様々な方法が検討されている。その中で例えば特殊インキを使用する方法としては、不正を防止したい文字、数字情報などを着色剤および蛍光顔料または染料を使用したインキを用いて印刷し、ブラックライトにより紫外線を照射して蛍光を検出することによって印刷物の真偽を判定することが出来る方法などがある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでの特殊インキは検出時の感度を十分に得ようとすると蛍光を阻害しないような無色や薄い色が主流となり、光の吸収や隠蔽性の大きい着色顔料を使用することが難しく、自由にインキ色を設定するのが難しかった。これらを回避するために特開平10−7956はインキの材料中にブリードアウトしやすい成分を入れて文字等の線の周囲に蛍光物質をしみださせ、その発光を検出する方法が提案されている。しかしこの方法では印刷部のまわりにしみだした蛍光物質の色が検出時以外でも目立ってしまうことがあり、改ざん防止という目的を考えると印刷用紙の色を限定せざるを得ないという問題があった。
さらに、印鑑やスタンプに使用する場合は、通常の印刷やコーティングと違い塗布量がかなり少ないため、目視で簡易的に判定しようとすると十分な発光を得るのは難しかった。十分な発光を得るために蛍光物質の量を増やすと、蛍光物質の色によって本来のインキの色とは違う色になってしまうなどの問題もあり、改良が望まれていた。さらに蛍光物質も様々なものがある中で、十分な印刷物の耐光性を得るためにいまだ様々な検討がされており、課題として残っている状況である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記したような問題点を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成させた。即ち本発明は、
(1)一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)を含有することを特徴とするインキ組成物、
【化2】
(R1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基を、n1およびn3は0から4の整数を、n2は0から2の整数をあらわし、n1、n2およびn3がそれぞれ2個以上の場合は、それぞれのR1、R2およびR3は同一であっても異なっていても良く、また、それぞれの置換基は隣接する基どうしが互いに連結して環を形成してもよい)
(2)R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、ニトロ基、もしくは置換または非置換のアミノ基である(1)に記載のインキ組成物、
(3)R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン原子またはヒドロキシル基である(1)に記載のインキ組成物、
(4)R1、R2及びR3がそれぞれ独立に(C1−C4)アルキル基、塩素原子またはヒドロキシル基である(1)に記載のインキ組成物、
(5)n1、n2およびn3全てが0である(1)に記載のインキ組成物、
(6)植物油脂(C)を含有する(1)から(5)のいずれか一項に記載のインキ組成物、
(7)植物油脂(C)がヨウ素価100以下の不乾性油である(6)に記載のインキ組成物、
(8)着色顔料(B)の色が、一般式(1)で表される化合物(A)に紫外線を照射したときの発光色とは異なることを特徴とする(1)から(7)のいずれか一項に記載のインキ組成物、
(9)(1)から(8)のいずれか一項に記載のインキ組成物で着色された着色体、
に関する。
【0005】
本発明は、印鑑やスタンプに使用可能で、ブラックライトの光を当てて簡易的に発光を検出できる蛍光発光インキの組成物である。さらに詳しくは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好な蛍光発光インキである。
【0006】
本発明で使用する、一般式(1)で表される化合物(A)について説明する。
【化3】
一般式(1)においてR1、R2及びR3はそれぞれ独立に置換基をあらわす。置換基としてアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、ニトロ基、置換および非置換のアミノ基などを表し、好ましくはアルキル基、ハロゲン原子およびヒドロキシル基である。更に好ましくは(C1−C4)アルキル基、塩素原子およびヒドロキシル基が挙げられる。n1およびn3は0から4の整数、n2は0から2の整数をあらわし、n1、n2およびn3がそれぞれ2個以上の複数の場合はR1、R2およびR3は同一であっても異なっていても良い。さらにそれぞれの置換基は隣接する基どうしが互いに連結して環を形成してもよい。
【0007】
一般式(1)の好ましい化合物としてはn1,n2およびn3全てが0であり、置換基を有さないものであるかまたは置換基R2が窒素原子のメタ位にヒドロキシル基を有するもの、またはR3に1から4個の塩素原子を有するものなどが挙げられる。更に好ましい化合物としてはn1,n2およびn3全てが0であり、置換基を有さないものが挙げられる。一般式(1)で表される化合物(A)を合成する方法としては、特開2000−160043に記載の方法により合成することができる。
一般式(1)の化合物の好適な例として、以下のような構造式のものが挙げられる。
【0008】
【化4】
【0009】
【化5】
【0010】
【化6】
【0011】
一般式(1)で表される化合物(A)の使用量は、得られる印刷物の発光強度や粘度などを考慮すると、インク組成物の全質量に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である
。
【0012】
本発明で使用する着色剤(B)は、一般的に用いられる有機顔料や無機顔料を特に制限なく用いることが出来る。
有機顔料は例えば、アントラキノン系、フタロシアニン系、ベンゾイミダゾロン系、キナクリドン系、アゾキレート系、アゾ系、イソインドリン系、イソインドリノン系、ピランスロン系、インダスロン系、アンスラピリミジン系、ジブロモアンザンスロン系、フラバンスロン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系等の顔料;酸性染料、塩基性染料、直接染料等をそれぞれの沈澱剤で不溶化したレーキ顔料、染付けレーキ顔料が使用できる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
また、無機顔料の例としては、複合金属酸化物顔料、カーボンブラック、黒色低次酸窒化チタン、酸化チタン、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、ベンガラ、群青、紺青、酸化クロム、アンチモン白、鉄黒、鉛丹、硫化亜鉛、カドニウムエロー、カドニウムレッド、亜鉛、マンガン紫、コバルト紫、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム等の金属酸化物、金属硫化物、硫酸塩、金属水酸化物、金属炭酸塩等が挙げられる。これらの顔料は、必要に応じて単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、本発明の用途には着色顔料(B)の色は、一般式(1)で表される化合物(A)に紫外性を照射したときの発光色とは異なることがより好ましい。発光色と着色顔料(B)の色が異なる方が、ブラックライトにより紫外線を照射したときの発光が検出器を使わずとも、目視で容易に蛍光を検出することができる為である。
着色剤(B)の使用量はインク組成物の全質量に対し、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%の範囲である。
【0014】
本発明で使用する植物油脂(C)は、アマニ油、エノ油、キリ油などの乾性油、ゴマ油、ナタネ油、綿実油、大豆油などの半乾性油、ツバキ油、オリーブ油、ヒマシ油などの不乾性油のいずれも使用できる。その中でも本発明の用途では転写性、乾燥性などのインキ適性の点でヨウ素価100以下の不乾性油が適している。
植物油脂(C)の使用量はインク組成物の全質量に対し、通常40〜99質量%、好ましくは50〜98質量%、より好ましくは60〜98質量%の範囲である。
【0015】
さらに、本発明のインキ組成物には、必要に応じて、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、タルク、クレイ、カオリン、コロイダルシリカ、金属粉末等の無機粉末やこれらの無機粉末を表面処理した神酒無機フィラーや、スチレンマイクロボール、ポリスチレン樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、尿素−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、アスパラギン酸エステル誘導体、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アマイド、エポキシ樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、芳香族ポリエステル等の有機フィラーを併用することができる。また、ポリマー、消泡剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤やヒンダードアミンライトスタビライザーなどの光安定化剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤などの添加剤を、種類、使用量を適宜選択して併用することができる。
【0016】
本発明のインキ組成物を製造するには、例えば次のようにすればよい。すなわち、一般式(1)で表される化合物(A)、着色顔料(B)、植物油脂(C)と、必要に応じてその他の添加剤を公知の攪拌機により均一に混合する。また、必要に応じてボールミル、ロールミル、サンドミル、ディゾルバー等の公知の分散機により分散させる。その際、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤など一般的に知られている各種分散剤や界面活性剤を併用することも可能である。
このようにして得られたインキ組成物は経時的に安定である。
【0017】
このインキ組成物で印字する方法としては、オフセット印刷や凸版印刷、フレキソ印刷など、印刷機を用いる公知の印刷方法が挙げられる。また、本発明のインク組成物をガーゼ・スポンジなどに含浸させて作製したスタンプ台または朱肉を用いて印鑑やゴム印などで押す方法、印鑑に内蔵したインクと多孔質ゴムの印判により朱肉を使用せずに印字する方法、インキ組成物を含浸させた多孔質ゴムロールを使用してオフセット方式で印判に転写して印字する方法などに特に適している。
【0018】
本発明の着色体を得るには、証明書類、有価証券類、小切手などの書類の不正を防止したい文字、数字情報などを本発明のインキ組成物を用いて、上記のような方法にて印字すればよい。
【0019】
また、本発明のインキ組成物を使用した印字物の発光を検出する方法としては市販のブラックライトの光を当てて目視で確認する。本発明のインキは自由にインキ色を選んでも、検出時には市販のブラックライトで十分な発光強度が得られ目視で簡易的に判定ができる。尚、検出器を用いて確認できることはもちろんである。
【0020】
本発明のインキで印字した印字物は、通常の状態では普通のインキの印字物と何ら変わりはなく、特殊な性能を隠しておくと言う意味で改ざん防止という目的に適している。コピーで複写して改ざんした場合には、本来発光があるはずの部分に発光は検出されず、真偽を容易に判定することが可能である。また、従来の一般的な蛍光染料などを使用したインキに比べて耐光性などの保存性が良好で実用的である。
【0021】
本発明のインキ組成物は安定性が良好であり、発光強度が強く、耐光性も強いため、朱肉やスタンプ台用のインクとして有用である。更にその印字物はブラックライトの光を当てたときの発光を容易に検出できるため、本発明のインキ組成物は、証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するためのインキとして有用である。
【0022】
【実施例】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。尚、実施例において部は質量部を意味する。
【0023】
【0024】
上記の成分を混合した後、ペイントシェーカーにて1時間混合分散して本発明のインキ組成物を得た。このインキを折りたたんだガーゼに含浸させた。これを簡易的にスタンプ台として使用して印鑑で上質紙に印字(押印)し、本発明のインキ組成物の印字物を得た。
【0025】
実施例2
実施例1において赤色着色剤のかわりに青色着色剤(イルガライトブルーGLO;チバスペシャルティケミカルズ製)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明のインキ組成物および印字物を得た。
【0026】
実施例3
実施例1において分散剤(フローレンG−600;共栄社化学製)のかわりに分散剤(ブラウノンBR−26;青木油脂工業製)を用いる以外は実施例1と同様にして本発明のインキ組成物および印字物を得た。
【0027】
比較例1
化合物例(1)の化合物の代わりに蛍光染料(カヤライトB;日本化薬製)(特開平10−7956 実施例に使用されている蛍光染料)を使用した以外は実施例1と同様にして比較用のインキ組成物および印字物を得た。
【0028】
標準インキ赤
化合物例(1)の化合物を使用しない以外は実施例1と同様にして標準インキ赤のインキ組成物および印字物を得た。
【0029】
標準インキ青
化合物例(1)の化合物を使用しない以外は実施例2と同様にして標準インキ青のインキ組成物および印字物を得た。
【0030】
この様にして得られたインキ組成物および印字物の評価を行い、それぞれの結果を表1、表2に示した。また、評価基準は以下に述べるものを採用した。
【0031】
【0032】
【0033】
(1)インキの安定性
得られたインク組成物を室温にて3日放置し、目視で観察することにより安定性を評価した。
○:溶解または分散の均一な状態で安定している。
△:沈降物がみられるが、再分散性は良好であり、攪拌すれば均一な状態となる。
×:分離がみられ再分散性が不良である。あるいは変色する。
(2)印字物の色
実施例1、3、比較例1は先に挙げた標準インク赤と、実施例2は標準インキ青と通常の状態で比較した。
色の比較は印字直後と、印字物を室内で3ヶ月保管後の2回実施してそれぞれ結果を示した。
○:それぞれの標準インキと違いがなかった。
×:色の違いがあった。
【0034】
(3)発光強度
得られた印字物にハンディーUVランプ(井内盛栄堂製 SLUV−6)で254nmおよび365nmのUV光を照射し、印字部の発光を目視で確認した。
発光の確認は印字直後と、印字物を室内で3ヶ月保管後と、印字物をEYE SUPER UV TESTER SUV−W11(岩崎電気製)にて60℃、60%RHの条件で1時間耐光試験を行った後の、計3回実施してそれぞれ結果を示した。
○:いずれの波長のUV光でも目視で容易に判定できる発光があった。
△:少なくとも一方の波長のUV光で弱い発光があるが、明るい室内では目視で容易に判定するのは難しい状態だった。
×:発光が目視で確認できなかった
【0035】
(4)スタンプ台の保存性
得られたインキを簡易的にガーゼに含浸させたスタンプ台を室内に放置し、1週間後に同様の方法で印字評価を行なった。
○:問題なく印字でき、色、発光ともに変化がなかった。
×:印字できなかった。あるいは色の変化、発光強度の低下があった。
【0036】
表1、2から明らかなように、本発明のインキは安定性が良好で、通常では普通のインキとの違いがわからず、検出時には発光強度が高く普通のインキとの違いが目視で認識しやすく、耐光性が良好であった。さらにスタンプとして使用する場合にインクの乾きもなく安定して印字可能であることが確認できた。
【0037】
【発明の効果】
本発明のインキ組成物は安定性が良好であり、印鑑や朱肉、スタンプ台に有用であり、その印字物はブラックライトの光を当てたときの発光強度が強く、目視にて容易に発光を検出できる。さらに可視光下では普通のインキとの違いがわかりにくく、検出時には普通のインキとの違いが目視で認識しやすい為、本発明のインキ組成物を不正を防止したい文字、数字情報などを印刷するインキに使用したり、書類の一部分に判子で文字や模様を押したりすることによって、本物と、コピーなどで偽造された書類の真偽を、目視で簡易的に判定することが出来る。さらに耐光性も強いため、本発明のインキ組成物は証明書類、有価証券類、小切手などの書類の偽造や改ざんを防止するためのインキとして有用である。
Claims (9)
- R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アシル基、ニトロ基、もしくは置換または非置換のアミノ基である請求項1に記載のインキ組成物
- R1、R2及びR3がそれぞれ独立にアルキル基、ハロゲン原子またはヒドロキシル基である請求項1に記載のインキ組成物
- R1、R2及びR3がそれぞれ独立に(C1−C4)アルキル基、塩素原子またはヒドロキシル基である請求項1に記載のインキ組成物
- n1、n2およびn3全てが0である請求項1に記載のインキ組成物
- 植物油脂(C)を含有する請求項1から5のいずれか一項に記載のインキ組成物
- 植物油脂(C)がヨウ素価100以下の不乾性油である請求項6に記載のインキ組成物
- 着色顔料(B)の色が、一般式(1)で表される化合物(A)に紫外線を照射したときの発光色とは異なることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のインキ組成物
- 請求項1から8のいずれか一項に記載のインキ組成物で着色された着色体
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JP2002201175A JP2004043582A (ja) | 2002-07-10 | 2002-07-10 | インキ組成物 |
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JP2018095750A (ja) * | 2016-12-14 | 2018-06-21 | 大日本塗料株式会社 | インクジェットインク組成物、インクジェットインクセット、蛍光検出方法、蛍光検出センサー、及び対象物の識別方法 |
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- 2002-07-10 JP JP2002201175A patent/JP2004043582A/ja active Pending
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