JP2004035984A - 印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

印刷版用アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電解エッチング処理工程において表面に未エッチング部分が少なく、粗大化したピットが生じないような印刷用アルミニウム合金板を提供する。また、表面部分のCu含有量の低い印刷用アルミニウム合金板を提供する。
【解決手段】Feを0.1〜0.5重量%、Siを0.01〜0.2重量%及びCuを0.001〜0.05重量%含む組成を有し、かつ表面のCu濃度(X)と中心部のCu濃度(Y)との比(X/Y)が5.0以下であるアルミニウム合金板とした。製造方法としては、熱間圧延を施した後、冷間圧延途中又は最終冷間圧延終了後に表面を一定量エッチングする。
【選択図】     なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷に用いるPS版用等のアルミニウム合金板に関し、特に電解エッチングによる粗面の均一性に優れたアルミニウム合金板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平版印刷は、アルミニウム合金板からなる支持体上にジアゾ化合物等の感光物を含有する感光層を塗設し、PS版(Presensitized Plate )に画像露光、現像等の製版処理を行って画像部を形成した平版印刷版を印刷機の円筒状版胴に巻付け、非画像部に付着した湿し水の存在のもとにインキを画像部に付着させてこのインキをゴム製ブランケットに転写、紙面に印刷するものである。
【0003】
PS版においては、感光膜の密着性及び非画像部における保水性の点から、支持体の表面を粗面化することが必要である。
従来、支持体表面の粗面化処理方法として、ボール研磨法又はブラシ研磨法等の機械的処理法が使用されていたが、最近では塩酸若しくはこれを主成分とする電解液、又は硝酸を主成分とする電解液を使用して、支持体であるアルミニウム板の表面を電気化学的に粗面化する電解粗面化処理法、又は前記機械的処理法と前記電解粗面化処理法とを組み合わせた処理方法が主に採用されている。これは、電解粗面化処理法によって得られた粗面板が製版に適しており、また印刷性能にも優れているからである。更に、電解粗面化処理法では、アルミニウム合金板をコイル状にして連続処理する場合に適しているからである。
前述のようにして、粗面化されるアルミニウム合金板には、その粗面化処理によって均一な凹凸が形成されることが要求される。均一な凹凸が形成された印刷版用アルミニウム合金板においては、感光膜との密着性及び保水性が向上すると共に、優れた画像鮮明性及び耐刷性を得ることができる。また、最近では粗面化処理コストを低減させるため、より短時間又は低通電量で均一な凹凸を形成することができる材料の開発が強く求められている。
【0004】
PS版の支持体として用いられるアルミニウム合金としては、当初、JIS1050(純度99.5%以上の純Al)が用いられ、最近ではJIS1100(Al−(0.05〜0.20)%Cu合金)、JIS3003(Al−(0.05〜0.20)%Cu−1.5%Mn合金)等のCu系合金あるいはCu−Mn系アルミニウム合金が主に用いられるようになってきた。
【0005】
通常、アルミニウム合金板はアルミニウム合金スラブを均熱処理した後、熱間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延の工程を経て製造される。アルミニウム合金材料を熱間圧延する過程で表面に不均一な酸化膜が形成される。この酸化膜は350℃以上の高温に曝されると急激に成長するようになる。また、一連の圧延工程で印刷板以外のアルミニウム合金板を圧延した際に圧延油中に混入する異種材質のアルミニウム合金粉や異物などが表面に付着し、そのまま圧延されることがある。あるいは雰囲気中の異物が圧延板の表面に付着してそのまま圧延されることがある。上記のような原因に起因して、圧延板表面には“コーティング層”が形成され、この“コーティング層”は印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において未エッチング部分を形成し易い。アルミニウム合金板の表面の未エッチング部分は、外観不良となるばかりでなく耐刷性等の印刷性能の劣化を引き起こし、鮮明な印刷像が得られないので問題となっている。
【0006】
また、Cuを含んだアルミニウム合金は強度が高くなり支持担体としての平坦性は向上するものの、アルミニウム合金板中に含まれる銅(Cu)成分は、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程においてピットを粗大化させる作用があるので、均一な凹凸を形成することができなくなるという問題点がある。この原因はアルミニウム合金板中に含まれるCu成分が、電解エッチング表面を不動態化するためである。
【0007】
電解処理の際にピットの粗大化を防ぐ対策として、Cu含有量を低く抑える試みがなされている。たとえば、特開昭58−221254号公報には、Si;0.02〜0.15%、Fe;0.1〜1.0%、Cu;0.003%以下、残部Alおよび不可避的不純物からなるオフセット印刷用アルミニウム合金板が開示されている。しかしながらCuの含有量を低くすると硬さが低下して印刷板としての剛性が確保できなくなるので、目的を果たすまでには至っていない。   また、圧延工程中の高温領域でCuが熱拡散し、材料表面にCuが濃縮されるため、Cuの平均含有量の低い材料を使用しても材料表面部ではCu濃度が高くなってしまうからである。この対策として、Cuの拡散を抑制するような比較的低い温度で熱間圧延や熱処理をする方法も試みられているが、熱間圧延温度を低くすると圧延性が悪くなり、所定の板厚まで圧延するのに要するパス回数が増加してしまう。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、表面に未エッチング部分が少なく、鮮明な印刷像が得られる印刷用アルミニウム合金板を提供しようとするものである。また、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において粗大化したピットが生じないような、表面部分のCu含有量の低い印刷用アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の印刷版用アルミニウム合金板においてはFeを0.1〜0.5重量%、Siを0.01〜0.2重量%及びCuを0.001〜0.05重量%含む組成を有し、かつ表面のCu濃度(X)と中心部のCu濃度(Y)との比(X/Y)が5.0以下であるアルミニウム合金板とした。
本発明の印刷版用アルミニウム合金板においては、上記組成にさらにニッケル(Ni)を0.005〜0.05重量%含む組成のアルミニウム合金であっても良い。
内部の平均組成はCu含有量が高いが表面部においてCu含有量を低くしておけば、印刷板として必要な剛性を具備し、同時に電解エッチング処理工程において粗大化したピットの発生を抑制できるようになる。
【0010】
また、本発明の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法は、熱間圧延を施した後、冷間圧延途中又は最終冷間圧延終了後のいずれかで表面をエッチングする製造方法を採用した。
この方法においては表面部分をエッチングして除去するので、表面に付着したまま圧延された酸化膜等の異物や、Cu含有量の高い部分が除去されるので、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において未エッチング部分が発生したり、粗大化したピットが発生することもなく、均一な凹凸を有する粗面を得ることができるようになる。
【0011】
本発明においては、表面からのエッチングする厚さを0.5〜20μmとすることが好ましい。
この程度の厚さを除去すれば、圧延工程で表面部に熱拡散したCu成分をほとんど除去することができるので、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において粗大化したピットの発生を抑制することができる。
エッチング処理板厚が厚い場合は表面に付着している異物や濃縮したCu量が多いので、表面からのエッチングする厚さを以下のような関係のもとに行うのが好ましい。すなわち、アルミニウム合金板の板厚をL(mm)、表面からのエッチング深さをD(μm)としたときに表面のエッチング量を下記(1)式の関係を満足する条件とする。
2720D−1000L≧1160・・・・・・(1)
このような関係式を満足するようにエッチングをすれば、表面に付着した酸化物膜や異物をほとんど取り除くことができるので、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において未エッチング部分が発生するのを防ぐことが可能となる。
【0012】
本発明においては前記エッチングをアルカリエッチングで第1段を行い、次いで酸エッチングで第2段の2段階で行うことが好ましい。酸化膜はアルカリエッチングで除去されやすく、異物は酸エッチングで除去されやすいからである。
そして前記第1段のアルカリエッチングを30℃〜70℃で1〜20%の苛性ソーダ溶液(NaOH)中で行い、第2段の酸エッチングは10℃〜70℃で1〜30%の硝酸(HNO )中で行うことができる。
このような2段階のエッチングにより、表面に付着した酸化膜や異物を効果的に除去することができる。
【0013】
さらに本発明においては、前記エッチング後の中間焼鈍条件を、温度;300℃〜550℃、時間;10分以下で、かつ最高到達温度(T;℃)と350℃以上の滞留時間(t;min)との間の関係を、下記(2)式を満足する条件下で行うことが好ましい。
t+0.006T≦4.2・・・・・・(2)
中間焼鈍中にCu成分が表面に拡散して表面部分のCu濃度が再び高くなるのを防ぐためである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下本発明の成分、その他限定理由を説明する。
Feは、Al−Fe系金属間化合物を形成し、電解エッチングによる粗面均一性を向上するとともに、耐疲労強度を向上する。しかし、0.1%未満ではこの効果が不十分であり、また0.5%を超えると金属間化合物の粗大化により電解エッチングによる粗面の均一性を害する傾向にあるので、0.1〜0.5%の範囲とする。より望ましいFeの含有量は、0.2〜0.4%である。
【0015】
SiはAl−Fe−Si系の金属間化合物を形成し、熱間圧延時の再結晶粒の微細化を促す。0.01%未満ではこの効果が不足して粗大な結晶粒が生じてしまい、電解エッチングによる粗面の均一性を阻害したり、ストリークと呼ばれる軽い未エッチング部を生じさせる。一方、0.2%を超えると、Al−Fe−Si系の金属間化合物が粗大化し、電解エッチングによる粗面の均一性を阻害する。したがって、Siは0.01〜0.2%とした。さらに望ましいSiの含有量は、0.04〜0.08%である。
【0016】
Cuはアルミニウム合金中に固溶状態で存在し、材料の硬さを向上させる。さらに、アルミニウムマトリクスと金属間化合物との間の電位差を調整し、電解粗面を均一化する効果を有する。Cu含有量が、0.001%未満では、アルミニウムマトリクスの硬度が不足する。また、電位調整効果が不十分であるため、電解粗面が不均一となる。一方、Cu含有量が0.05%を超えると、アルミニウム合金板の表面に粗大化したピットを生じ易くなる。従って、Cuの適正含有量は0.001%〜0.05%とする。
【0017】
特に、本発明のアルミニウム合金板では表面部のアルミニウム濃度を低く抑えることが重要である。すなわち、内部はCu濃度を有る程度高くして材料の剛性を確保した上で、表面部のCu含有量を低く抑えて電解エッチング工程で粗大化したピットの発生を防止する。粗大ピットの発生状況を調べた結果、表面部のCu濃度を(X)、中心部のCu濃度を(Y)とした時に、X/Yの比が5.0以下となるようにすれば、粗大ピットの発生を抑制できることが判明した。
【0018】
ここで表面部のCu濃度(X)と内部のCu濃度との比較は、X線光電子分光分析(XPS)によりCuの深さ分析(デプスプロファイル測定)を行い、表面の最もCu濃度の高いピーク高さ(X)と、内部のアルミ地中のCuからのピーク高さ(Y)との比により求められる。また、オージェ電子分光分析(Auger)、グロー放電発光分析(GD−MS)、2次イオン質量分析(SIMS)等によっても同様に深さ分析をすることにより求められる。ようするに、表面のCuによる検出ピーク(X)と、内部のアルミ地中のCuによる検出ピーク(Y)の比(X/Y)を求めればよい。
理想的にはCu含有量を低く抑え、XとYの比(X/Y)が1であることが好ましいが、熱間圧延工程や中間焼鈍工程で300℃以上に加熱されるため、Cu原子が表面部に向かって熱拡散するので、X/Yは1よりも大きくなる。多くの材料について検査したところ、X/Yの値が5.0を越えると電解エッチング工程で粗大化したピットが発生するようになる傾向が認められた。したがって、X/Yの値を5.0以下にする必要がある。
【0019】
その他の添加元素としてはニッケル(Ni)を使用することができる。NiはAl−Fe系金属間化合物に取り込まれてAl−Fe−Ni系金属間化合物となり、溶解均一性を向上させる効果を有する。しかし、0.005%未満ではこの効果が不足して電解エッチングによる粗面均一性向上が十分ではない。一方、0.05%を超えるとAl−Fe−Ni系金属間化合物が粗大化して電解エッチングによる粗面を不均一にしてしまう。したがって、本発明の望ましいNiの含有量は0.005%〜0.05%が適当である。より好ましくは0.005〜0.03%である。
【0020】
次に、本発明の印刷板用アルミニウム合金板の製造方法について説明する。
本発明の印刷板用アルミニウム合金板はアルミニウム合金スラブを均熱処理した後、熱間圧延、中間焼鈍及び冷間圧延の工程を経て製造する。
鋳造;スラブの鋳造は、本発明の平板印刷版用アルミニウム合金板を製造する上で特に限定されるものではなく、例えばDC鋳造法等従来公知の鋳造法を適用することができる。
均質化処理;一般的には、鋳造により得られた鋳塊に450〜600℃の温度範囲で均質化熱処理を施す。この均質化熱処理によりFeの一部が固溶するとともに、Al−Fe系金属間化合物が均一微細に分散する。均質化熱処理を終えたスラブは熱間圧延を行う。
【0021】
本発明の印刷板用アルミニウム合金板の製造方法は、熱間圧延を施した後、冷間圧延途中又は最終冷間圧延終了後のいずれかで表面をエッチングする方法である。
【0022】
エッチング処理;エッチング処理は熱間圧延直後に行うこともできるし、熱間圧延後冷間圧延を施した後に行うこともできるし、最終冷間圧延後に行うこともできる。材料の生産性の観点からエッチング処理は板厚の厚い段階で行う方が処理面積が少ないので、熱間圧延を終了した段階でエッチング処理を行うのが効率的である。この場合、エッチング処理後に中間焼鈍を加える必要がある場合があるが、高温長時間の熱処理を行うと一端は除去されたCuが再び表面に拡散して濃縮されるので、後述するような配慮が必要となる。
エッチング方法としては、アルカリエッチング又は酸エッチングが利用できる。アルカリエッチングでは表面の酸化物を除去することができ、酸エッチングでは異物を溶解除去することができる。
アルカリエッチングには水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)あるいは珪酸塩等が利用できる。これらのうち酸化膜の除去にはアルカリエッチングが有効で、特に酸化膜の溶解性が高いNaOHが最適である。アルカリエッチングの処理条件としては、濃度1〜20%で温度30〜70℃のNaOHが適する。さらに好ましくは、濃度5〜15%で温度40〜60℃である。 酸エッチングには硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸あるいはリン酸等が利用できる。中でもCu、Zn、Mn等の異種材質の異物溶解性に優れた硝酸が最適である。酸エッチングの条件は、濃度1〜30%、温度10〜70℃であり、より好ましくは濃度5〜15%、温度40〜60℃である。
【0023】
エッチング処理はアルカリエッチングで第1段エッチングを行い、次いで酸エッチングで第2段エッチングをする2段階で行うことが好ましい。
エッチング性能や液の劣化、あるいは取り扱い性を考慮すると、NaOHでエッチング処理した後、中和を兼ねてHNO (硝酸)酸エッチングするのが好ましい。各エッチングの条件を例示すれば、たとえば第1段のアルカリエッチングは30℃〜70℃で1〜20%の苛性ソーダ溶液(NaOH)中で行い、第2段の酸エッチングは10℃〜70℃で1〜30%の硝酸(HNO )中で行うことができる。
【0024】
エッチング処理による表面のエッチング量は0.5〜20μmとすることができる。0.5μm未満ではCu濃縮層の除去が充分でない。逆に20μmを越えてもCu濃縮層の除去による改善効果は少なく、コストアップするのみとなる。表面からこの程度の厚さを除去すれば、熱処理工程での拡散に起因するアルミニウム合金板表面の高Cu濃度の部分を除くことができる。
また、アルミニウム合金板表面に付着したまま圧延された酸化膜や異物を取り除くためには、板厚との関係を考慮する必要がある。種々の板厚のアルミニウム合金板について酸化膜や異物を取り除くため表面からの深さを調べたところ、エッチング処理前のアルミニウム合金板の板厚をL(mm)、表面からのエッチング深さをD(μm)としたときに表面のエッチング量を下記(1)式の関係を満足する条件下で行えば良いことが判明した。すなわち、
2720D−1000L≧1160・・・・・・(1)
このような条件下でエッチング処理すれば、圧延工程で生じた酸化物皮膜や付着したまま圧延された異物等をきれいに除去することができる。
【0025】
中間焼鈍;冷間圧延後に、歪みを除去して適度な強度及び伸びを板材に付与することを主目的として焼鈍を行う。焼鈍は300〜550℃の温度範囲で10分以内の条件下で行う。300℃未満では目的を達成することができず、550℃を超えると表面の酸化が著しくなり好ましくないからである。望ましい焼鈍温度は350〜500℃である。中間焼鈍は連続焼鈍炉、バッチ式焼鈍炉の何れであっても構わない。
【0026】
アルミニウム合金は350℃以上の温度に曝されると表面に急速に酸化膜が生成する。また、350℃以上の温度に長時間曝されるとCu成分が内部から表面部に向かって熱拡散する。前述の通り、アルミニウム合金板表面のCu含有量が高いと、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において粗大化したピットが発生する。したがって、過度の焼鈍は避けなければならない。実験の結果、適正な中間焼鈍条件は、温度;300℃〜550℃、時間;10分以下で、かつ最高到達温度(T;℃)と350℃以上の滞留時間(t;min)との間の関係を下記(2)式を満足する条件下で行うことが好ましいことが判明した。すなわち、
t+0.006T≦4.2・・・・・・(2)
ここで中間焼鈍を複数回行う場合には最高到達温度(T)および滞留時間(t)は(2)式を満足する条件で行い、滞留時間(t)は1回の処理時間とする。
【0027】
【実施例】
以下実施例を用いて説明する。
(実施例)
表1に示す組成を有するアルミニウム合金溶湯をスラブに鋳造し面削した後、560℃で6時間均質化処理を行った。次いで、厚さ7.0mmまで熱間圧延した。一部は熱間圧延後エッチング処理を行った。また、一部はさらに冷間圧延を施した後エッチング処理を行った。さらに実施例1では最終冷間圧延後にエッチング処理を行った。エッチング終了後10秒間スプレー水洗浄を施し、120℃で乾燥した。エッチング処理時の板厚(L;mm)、エッチング処理の条件、及び表面からのエッチング深さ(D;μm)を表1に示す。また、エッチング処理時の板厚(L;mm)とエッチング深さ(D;μm)との関係を図1に示した。全ての圧延を終了した後のアルミニウム合金板の、XPSによる表面のCu含有量(X)とXPSによるアルミニウム地金のCu含有量(Y)との比(X/Y値)を計算した。結果を表1に併記する。
【0028】
中間焼鈍は全て板厚1.0mmで行い、エッチングより後の工程で行ったものは表1にその条件を示した。
中間焼鈍を行った後、板厚0.2mmまで仕上げ冷間圧延を施して、印刷板用のアルミニウム合金板とした。
中間焼鈍の温度と時間との関係を(2)式に基づいて計算した値を表1に併記する。また、最高到達温度(T)と350℃以上の滞留時間(t)との関係を図2に●印で示した。
【0029】
このようにして得たアルミニウム合金板を200×300mmの大きさに切断し、25℃の2%塩酸溶液中に浸漬し、50Hzの電流を使用して80A/dm の電流密度で40秒間の電解エッチングをして粗面化処理を施した。粗面化処理終了後の試片表面を顕微鏡観察し、表面の未エッチング面積の割合を測定し、ピットの形態を観察した。
表面の未エッチング面積の割合は、未エッチングが全く認められない場合は◎印を、未エッチングの面積率が2%以下の場合は○印を、未エッチングの面積率が2%を超え5%以下の場合は△印を、そして未エッチングの面積率が5%を越える場合には×印を付して評価した。
【0030】
【表1】
Figure 2004035984
【0031】
(比較例)
比較のためエッチング条件と中間焼鈍条件を変えて、実施例と同様の試片を作成して同様の評価をした。結果を表2に示した。また、エッチング処理時の板厚(L;mm)とエッチング深さ(D;μm)との関係を図1に△印で示した。さらに、最高到達温度(T)と350℃以上の滞留時間(t)との関係を図2に△印で示した。
【0032】
【表2】
Figure 2004035984
【0033】
表1及び表2の結果から、本発明のアルミニウム合金板を使用した場合にはいずれも未エッチングの面積率が5%以下で、アルミニウム合金板表面に均一な凹凸の粗面が形成されていることが判る。
これに対して比較例では表面の未エッチングの面積率が5%を越え、均一な凹凸の粗面が形成されていない。
【0034】
【発明の効果】
本発明の印刷板用アルミニウム合金板を使用すれば、表面部分のCu含有量が低く、酸化物や異物も極めて少ないので、印刷板製造過程の電解エッチング処理工程において粗大化したピットや未エッチング部分が生じることはなく、未エッチング部分の少ない鮮明な印刷像が得られる印刷用アルミニウム合金板となる。また、本発明の印刷板用アルミニウム合金板の製造方法によれば、コイル状のまま連続処理により、確実に表面の酸化物や異物を除去することができ、Cu含有量を低くすることができるので、高品質の印刷板用アルミニウム合金板を効率よく提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】板厚とエッチング深さとの関係を示す図である。
【図2】中間焼鈍における最高到達温度と350℃以上の滞留時間との関係を示す図である。

Claims (8)

  1. 鉄(Fe)を0.1〜0.5重量%、シリコン(Si)を0.01〜0.2重量%及び銅(Cu)を0.001〜0.05重量%含む組成を有し、かつ表面の銅(Cu)濃度(X)と中心部の銅(Cu)濃度(Y)との比(X/Y)が5.0以下であることを特徴とする印刷版用アルミニウム合金板。
  2. 前記アルミニウム合金がさらにニッケル(Ni)を0.005〜0.05重量%含む組成を有することを特徴とする請求項1に記載の印刷版用アルミニウム合金板。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の印刷版用アルミニウム合金板を製造する方法において、熱間圧延を施した後、冷間圧延途中又は最終冷間圧延終了後のいずれかで表面をエッチングすることを特徴とする印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  4. 表面のエッチング量を0.5〜20μmとすることを特徴とする請求項3に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  5. アルミニウム合金板の板厚をL(mm)、表面からのエッチング深さをD(μm)としたときに、表面のエッチング量を下記(1)式の関係を満足する条件下で行うことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
    2720D−1000L≧1160・・・・・・(1)
  6. 前記エッチングをアルカリエッチングで第1段を行い、次いで酸エッチングで第2段の2段階で行うことを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  7. 前記第1段のアルカリエッチングを30℃〜70℃で1〜20%の苛性ソーダ溶液(NaOH)中で行い、第2段の酸エッチングは10℃〜70℃で1〜30%の硝酸(HNO )中で行うことを特徴とする請求項6に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
  8. 前記エッチングより後の工程で、中間焼鈍を温度;300℃〜550℃、時間;10分以下で、かつ最高到達温度(T;℃)と350℃以上の滞留時間(t;min)との間の関係を下記(2)式を満足する条件下で行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷版用アルミニウム合金板の製造方法。
    t+0.006T≦4.2・・・・・・(2)
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