JP2004035360A - GaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るGaN単結晶基板11は、研磨された表面が、少なくともNH3ガスを含む混合ガス雰囲気中、基板温度990℃以上1010℃以下で熱処理されて、表面に複数の孔13が形成されている。この基板11表面に化合物半導体層12を適当な成長条件でエピタキシャル成長させた場合、基板11から半導体層12への貫通転位の伝搬が抑制されつつ基板11表面の孔13が埋まって、当該基板表面が平坦化される。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光デバイス等に利用するためのGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
窒化物系化合物半導体を用いた発光デバイスは、紫外光から青緑色の領域といった短波長の発光が得られるため、近年注目されている。これら発光ダイオードやレーザダイオードといったデバイスは、照明や表示装置、また次世代DVD用光源として期待されている。これら発光デバイスに用いられる基板としては、主要な窒化物系化合物半導体層であるGaN層と、格子定数の一致するGaN単結晶基板を用いることが好ましい。しかしながら、従来、GaN単結晶基板の製造は困難であると考えられていた。
【0003】
したがって、通常、GaNに格子定数が近似し、化学的にも安定なサファイア基板が用いられる。このようなサファイア基板上にGaN層をエピタキシャル成長させる方法としては、通常OMVPE法が用いられる。このOMVPE法では、H2ガス雰囲気中でサファイア基板の基板温度を1050℃程度に保持して表面のクリーニングをした後、基板温度450〜600℃程度でGaNまたはAlNのバッファ層を成長させ、その後1000℃以上の高温でGaN層を成長させる。
【0004】
しかし、サファイア基板を使用することには以下のような問題がある。まず、サファイア基板は、GaN層と格子定数が近似するものの一致してはいないため、サファイア基板とGaN層の界面で格子不整合による転位等の多数の欠陥が導入される。この欠陥は、成長方向に伸びて、エピタキシャル層表面に多数の貫通欠陥として現出すると共に、レーザダイオード等の発光デバイスの特性や寿命を著しく劣化させる。また、サファイア基板の熱膨張係数とGaN層の熱膨張率とは大きく異なるため、エピタキシャル成長後の基板には大きな反りが発生してしまう。さらに、サファイア基板は劈開性がないため、劈開面を反射面とするレーザダイオードの作製が極めて困難である。
【0005】
このような状況に鑑み、窒化物系化合物半導体層の形成に適する単結晶GaN基板が実現された(国際公開番号WO99/23693号公報)。この方法によれば、GaAs基板上にストライプや円形の形状をしたマスクを形成し、その上にGaN層を気相成長させた後、GaAs基板を除去することでGaN基板を得ることができる。また、この方法により、GaN基板上にさらにGaN層を成長させてインゴットを作製し、インゴットからGaN基板を切り出すことにより、GaN基板を量産することができる。すなわち、これらの新しい方法により、GaN単結晶基板の量産化が可能となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述した従来のGaN基板には、次のような課題が存在している。すなわち、作製したGaN単結晶基板上にエピタキシャル層を形成するためには、基板表面を機械的に研磨して平坦にする必要があるが、GaN単結晶基板は化学的に非常に安定なため、他の半導体用基板に使われているような化学的機械研磨法(CMP)で研磨することが難しい。したがって、機械研磨後の基板表面をエピタキシャル成長に適するほど平坦にすることが難しく、典型的な機械研磨後の基板表面のRms(平均二乗平方根粗さ)は1.0nm程度である。このように、表面が粗い基板上にエピタキシャル層を形成した場合には、凹凸部でのランダムな核発生による3次元成長が起きてしまうため、平坦な表面を得ることは難しい。また、このような成長モードでは、生成した成長核同士が合体する際に、核間に存在する微少な結晶の方位ズレに起因して転位等の結晶欠陥が発生してしまい結晶性劣化の原因となる。すなわち、GaN単結晶基板上に、より良質の半導体装置を形成するためには、表面加工に伴う欠陥(例えば、傷、歪等)を除去することが必要となってくる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、エピタキシャル層表面の平坦化及び当該エピタキシャル層内の結晶欠陥の低減が可能なGaN単結晶基板、窒化物系化合物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るGaN単結晶基板は、研磨された表面が、少なくともNH3ガスを含むガス雰囲気中、基板温度990℃以上1010℃以下で熱処理されて、表面に複数の孔が形成されたことを特徴とする。
【0009】
このGaN単結晶基板において、基板表面には、ガス雰囲気中における所定の熱処理によって複数の孔が形成されている。この基板表面に化合物半導体層を適当な成長条件でエピタキシャル成長させた場合、基板から半導体層への貫通転位の伝搬が抑制されつつ基板表面の孔が埋まって、当該化合物半導体層表面が平坦化される。
【0010】
また、孔は、逆多角錐形状であってもよい。一般に、エピタキシャル成長には(0001)面に平行な表面を有するGaNが利用される。そして、GaNは六方晶系に属するため、(0001)面においては(0001)方向に垂直な60度毎の結晶軸、もしくはそれらから30度ずれた軸を含むようにファセット面が出現しやすい。従って、これらのファセット面の組み合わせで構成される多角形の孔が形成され易い。
【0011】
また、孔は、逆六角錐形状若しくは逆三角錐形状であってもよい。このような形状の孔は、六方晶の結晶構造を有するGaN単結晶においては、基板表面に容易に形成される。
【0012】
本発明に係るGaN単結晶基板は、研磨された表面に逆多角錐形状の孔が複数形成されていることを特徴とする。
【0013】
このGaN単結晶基板においては、基板表面には、逆多角錐形状の孔が複数形成されている。この基板表面に化合物半導体層を適当な成長条件でエピタキシャル成長させた場合、基板から半導体層への貫通転位の伝搬が抑制されつつ基板表面の孔が埋まって、当該化合物半導体層表面が平坦化される。
【0014】
本発明に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板は、上記GaN単結晶基板と、表面の孔を埋めるように気相成長された窒化物系化合物半導体層とを備えることを特徴とする。
【0015】
この窒化物系半導体エピタキシャル基板においては、表面に孔が形成されたGaN単結晶基板上に窒化物系化合物半導体層がエピタキシャル成長されているため、基板表面の孔が埋まって窒化物系化合物半導体層表面は平坦化される。その際、基板内の貫通転位は、エピタキシャル成長の進行に伴ってその伝搬方向を基板に水平な方向に変えるため、GaN単結晶基板から窒化物系化合物半導体層への貫通転位の伝搬が抑制される。
【0016】
また、上記エピタキシャル成長により、窒化物系化合物半導体層表面の平均自乗平方根粗さは0.25nm以下となる。
【0017】
また、窒化物系化合物半導体層は、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)であることが好ましい。
【0018】
本発明に係るGaN単結晶基板の製造方法は、表面が研磨されたGaN基板を、少なくともNH3ガスを含むガス雰囲気中、基板温度990℃以上1010℃以下で熱処理することにより、前記表面に複数の孔を形成することを特徴とする。
【0019】
このGaN単結晶基板の製造方法においては、まず、GaN基板の表面を、例えば、研磨材等を用いて機械研磨する。次に、その研磨した基板表面を、ガス雰囲気中において所定の熱処理を施す。それにより、基板表面には、複数の孔が形成される。このようにして形成した基板表面に、化合物半導体層を適当な成長条件でエピタキシャル成長させた場合、基板表面の孔が次第に埋まって、化合物半導体層表面が平坦化されると共に、基板から半導体層への貫通転位の伝搬が抑制される。
【0020】
また、孔は、逆多角錐形状であってもよい。一般に、エピタキシャル成長には(0001)面に平行な表面を有するGaNが利用される。そして、GaNは六方晶系に属するため、(0001)面においては(0001)方向に垂直な60度毎の結晶軸、もしくはそれらから30度ずれた軸を含むようにファセット面が出現しやすい。従って、これらのファセット面の組み合わせで構成される多角形の孔が形成され易い。
【0021】
また、孔は、逆六角錐形状若しくは逆三角錐形状であってもよい。このような形状の孔は、六方晶の結晶構造を有するGaN単結晶においては、基板表面に容易に形成される。
【0022】
また、ガスには、H2ガスが含まれることが好ましい。つまり、NH3ガスの分解によって生じるH2ガスが不足する場合に、不足するH2ガスが補充されることとなる。
【0023】
本発明に係るGaN単結晶基板の製造方法は、研磨された表面に逆多角錐形状の孔を複数形成することを特徴とする。
【0024】
このGaN単結晶基板の製造方法においては、基板表面に、逆多角錐形状の孔が複数形成されたGaN単結晶基板が製造される。この基板表面に化合物半導体層を適当な成長条件でエピタキシャル成長させた場合、基板から半導体層への貫通転位の伝搬が抑制されつつ基板表面の孔が埋まって、当該化合物半導体層表面が平坦化される。
【0025】
本発明に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法は、上記GaN単結晶基板の製造方法によって製造したGaN単結晶基板上に、孔を埋めるように化合物半導体層を気相成長させることを特徴とする。
【0026】
この窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法において、複数の孔が形成された基板表面に、化合物半導体層を適当な成長条件でエピタキシャル成長させる。それにより、基板表面の孔が次第に埋まって、基板表面が平坦化されると共に、基板から半導体層への貫通転位の伝搬が抑制される。
【0027】
また、窒化物系化合物半導体層は、GaN単結晶基板の表面に垂直な方向の成長速度に比べて、当該GaN単結晶基板の表面の面方向の成長速度の方が高いことが好ましい。この場合、GaN単結晶基板の表面の孔が窒化物系化合物半導体層によって埋まりやすくなるため、GaN単結晶基板内の貫通欠陥をより低減することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明に係るGaN単結晶基板、窒化物系半導体エピタキシャル基板及びその製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る窒化物系半導体エピタキシャル基板の断面図である。この窒化物系半導体エピタキシャル基板(以下、「エピタキシャル基板」と称す。)10は、GaN単結晶基板(以下、「単結晶基板」と称す。)11と、OMVPE法によって単結晶基板11上にエピタキシャル成長させた窒化物系化合物半導体層(以下、「化合物半導体層」と称す。)12とを備えている。このエピタキシャル基板10は、発光ダイオードやレーザダイオード等の発光デバイスの製造中間体であり、この上に適当なpn接合、より好ましくはダブルヘテロ接合、さらにより好ましくは量子井戸構造を形成し、電流を供給するための電極を取り付けることにより発光デバイスが完成する。
【0030】
化合物半導体層12の材料は、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される2〜4元系の化合物半導体の中から選ばれる。その中でも、GaNは、単結晶基板11に直接ホモエピタキシャル成長できるため、単結晶基板11と化合物半導体層12との界面における欠陥の発生を抑制できる点で最も好ましい。
【0031】
次に、単結晶基板11及びエピタキシャル基板10の製造工程について説明する。
(A)まず、単結晶基板11を製造し、製造された単結晶基板11を研磨材を用いて表面研磨し、純水等を用いて液体洗浄する(単結晶基板製造工程)。
(B)次に、単結晶基板11を所定の混合ガスの雰囲気内に配置し、加熱する(表面熱処理工程)。
(C)しかる後、基板を加熱した状態で化合物半導体層12の原材料を当該表面に供給し、単結晶基板11上に化合物半導体層12をエピタキシャル成長させる(エピタキシャル成長工程)。
【0032】
以下、詳説する。
【0033】
単結晶基板製造工程では、製造された単結晶基板11は、研磨材を用いて表面研磨され、純水等を用いて液体洗浄される。この液体洗浄には、純水の他、有機溶剤、酸、アルカリ溶液を用いてもよい。製造された単結晶基板11の表面には、機械研磨ダメージによる加工変質層が存在するが、これは好適な表面処理によって除去される。この時点で、単結晶基板11の表面は平坦化され、鏡面状態になっているが、顕微鏡で観察してみると、単結晶基板11表面には機械研磨による細かな傷が確認された。代表的な例として、原子間力顕微鏡により観察した、研磨後の単結晶基板11の表面像を図2に示す。図に示すように、単結晶基板11表面には、研磨による微細な欠陥が多数観察される。この表面の平均二乗平方根粗さ(Rms)は、1.0nmであった。
【0034】
したがって、この程度の粗さの単結晶基板11表面に直接化合物半導体層12をエピタキシャル成長させた場合、傷等の段差部でランダムな結晶核が多数発生し、3次元的に結晶成長してしまうため、表面が平坦な化合物半導体層12を得ることは困難である。
【0035】
次に、表面熱処理工程について説明する。
【0036】
表面熱処理工程では、単結晶基板製造工程で製造した単結晶基板11を、基板温度990℃以上1010℃以下、NH3ガスとH2ガスとの混合ガス中で熱処理する。なお、混合ガス中にH2ガスを含むことにより、NH3ガスの分解によって生じるH2ガスが不足した場合において、H2ガスの不足分を補うことができる。それにより、単結晶基板11表面の研磨傷が消失すると共に、この単結晶基板11表面に多数の微細なピット(孔)13が形成される。すなわち、熱処理後の単結晶基板11表面を原子間力顕微鏡で観察すると、図3に示すように多数の微細なピット13が確認される。
【0037】
図4(a)は、図3のGaN単結晶基板表面の原子間力顕微鏡像を示した図であり、図4(b)は、そのA−A´線断面図及びB−B´線断面図を示した図である。図4(b)に示すように、ピット13の底部は尖形形状をしており、深くなるに従って細くなっている。また、このピット13の深さは、約10nm程度である。さらに、ピット13の縁の形状は、六角形又は三角形で近似される形状であり、ピット13は、略逆六角錐形状又は略逆三角錐形状となっている。このように、結晶構造が六方晶であるGaN単結晶基板11であって、エピタキシャル成長に多用される(0001)表面を有するGaN単結晶基板11においては、(0001)方向に垂直な60度毎の結晶軸、もしくはそれらから30度ずれた軸を含むようにファセット面が出現しやすいため、ピット13が略逆六角錐形状又は略逆三角錐形状になりやすい。なお、ピット13の形状は逆六角錐形状や逆三角錐形状だけでなく、例えば逆十二角錐形状などの逆多角錐形状であってもよい。このような場合、上述したファセット面の組み合わせで構成される逆多角錐形状となる。また、ピット13の縁を円で近似した場合、その円の直径は約5μmである。
【0038】
エピタキシャル成長工程では、気相成長法により、基板を加熱した状態で、表面に多数の微細なピット13を有する単結晶基板11上に化合物半導体層12の原材料を供給する。このとき、単結晶基板11表面のピットを埋めるように化合物半導体層12をエピタキシャル成長させることにより、単結晶基板11から伝搬する貫通転位を低減することができる。この過程について、図5を用いて説明する。
【0039】
熱処理後の単結晶基板11表面には、図5(a)のようにピット13が形成されている。また、単結晶基板11中には、結晶成長中に導入された貫通転位14が存在している。この単結晶基板11の貫通転位密度は106〜107cm−2である。この単結晶基板11表面に化合物半導体層12をエピタキシャル成長させるとピット13が埋まっていく(図5(b)参照)。なお、エピタキシャル成長の際、基板11表面に垂直な方向(図の矢印A方向)の化合物半導体層12の成長速度に比べて、基板11表面の面方向(図の矢印B方向)の化合物半導体層12の成長速度を速くすると、ピット13が化合物半導体層12で埋まり易いと共に、この化合物半導体層12の表面が平坦化され易いことを発明者らは見出した。
【0040】
化合物半導体層12によってピット13が埋まる際、ピット13が形成されていない部分の単結晶基板11の貫通転位14は、化合物半導体層12内を貫通する貫通転位14Aとして引き継がれる。ただし、ピット13が形成された部分の貫通転位14は、斜面の成長に伴って基板11に平行な方向(図中の矢印B方向)へと伝搬することとなる。そして、この基板11に平行な方向の転位14Bは、成長が進行するにつれてピット13に集合し、集合した転位14Bは垂直方向に伝搬方向を変える。符号14Cは、この垂直方向に伝搬方向を変えた後の転位である。なお、集合する際に、バーガーズベクトルが逆である転位14B,14B同士が出会うと、両転位14B,14Bとも消滅する。したがって、化合物半導体層12内の貫通転位密度は、単結晶基板11の貫通転位密度より低くなる。
【0041】
そして、単結晶基板11上に、さらに化合物半導体層12をエピタキシャル成長させると、単結晶基板11表面のピット13が化合物半導体層12によって埋められると共に、化合物半導体層12の表面が平坦となる(図5(c)参照)。このとき、化合物半導体層12表面を原子間力顕微鏡で観察すると、図6に示したように、1平方ミクロンの範囲では貫通転位は観察されず、1原子層に対応したステップが観察された。すなわち、貫通転位密度は1×106cm−2以下である。
【0042】
また、化合物半導体層12の表面粗さは、平均自乗平方根粗さ(Rms)で0.22nm程度に抑えられている。このように表面が平坦なエピタキシャル基板10は、一般にサファイア基板等で必要な低温バッファ層が不要であり、その上に直接化合物半導体層を形成することができる。すなわち、単結晶基板11表面に、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表される2〜4元系の化合物半導体を直接エピタキシャル成長でき、レーザダイオード等の発光デバイスの構造の作製に非常に適しているといえる。なぜなら、平坦な化合物半導体層12表面では、1原子層に対応するテラスとステップが規則正しく配列しており、格子定数の近い窒化物系化合物半導体層であれば、容易にステップフロー成長することが可能だからである。
【0043】
以上、詳細に説明したように、エピタキシャル基板10は、所定の熱処理によって表面にピット13が形成された単結晶基板11上に、このピット13を埋めるように化合物半導体層12が形成されているため、単結晶基板11から化合物半導体層12への貫通転位14の伝搬が抑制されつつ、単結晶基板11表面が平坦化される。
【0044】
【実施例】
エピタキシャル成長に用いられる成長方法としては、有機金属気相成長法(OMVPE法)、ハイドライド気相成長法(HVPE法)、分子線エピタキシー法(MBE法)等から選択することができる。いずれを選択した場合でも、成長する装置内で単結晶基板11の熱処理をおこない、その後、GaN単結晶基板11を外部に取り出すことなく、そのまま化合物半導体層12をエピタキシャル成長することにより基板11表面が汚染されない。したがって、表面が酸化又は汚染された場合に必要な表面処理工程が必要なく、容易に高品質なエピタキシャル基板を製造することができる。
【0045】
単結晶基板11をOMVPE装置内で各種条件で熱処理した。さらに、同じ装置内で化合物半導体層12をエピタキシャル成長した。使用したOMVPE装置は、図7に模式的に示すように、基板面に対して垂直方向から原料ガスを噴射する縦型の成長炉である。この成長炉20は、原料供給口21a及び排気口21bが設けられた水冷外壁21と、この水冷外壁21内に配置され、設置される基板11を回転する試料台22と、下方から試料台を加熱するヒータ23とから構成されている。なお、符号24は、原料ガスが基板11に到達するまでに加熱されて反応してしまうのを防ぐために、原料ガスを冷却するための水冷ジャケットである。
【0046】
単結晶基板11は、SiCコートしたカーボン製の試料台23にセットされ、この試料台23を約1000rpmで高速回転させる。熱処理時のNH3は、11slm、H2あるいはN2は5slmとした。化合物半導体層12の成長時の条件は、基板温度が1000℃、アンモニア11slm、H25slm、トリメチルガリウム180〜400μmol/min、圧力は約27kPa(すなわち、200Torr)とした。なお、基板11表面に垂直な方向の化合物半導体層12の成長速度に比べて、基板11表面の面方向の化合物半導体層12の成長速度を高くするために、トリメチルガリウムの流量を調整した。比較例として、基板にサファイアを用い、予めGaN層を成長させておいたGaN/サファイア基板を同時に成長させた。
【0047】
熱処理後に単結晶基板11表面を原子間力顕微鏡で観察した結果を表1に示し、化合物半導体層12を2μm成長させた試料を原子間力顕微鏡、X線回折により評価した結果を表2に示す。X線回折はc軸のゆらぎを示す(0002)反射と、c軸とa軸の両方のゆらぎを示す(10−11)反射のωスキャンの半値幅で評価した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
表1から、基板温度が990℃より低温である場合及び基板温度が1010℃より高温である場合における熱処理では、ピット13が形成されないことがわかる。また、NH3とH2の混合ガス雰囲気中、基板温度を990℃以上1010℃以下で15分程度の熱処理をすると、前述したようなピット13が単結晶基板11表面に形成されることがわかる。
【0051】
また、表2から、サファイア上の比較例は、表面粗さ、X線回折の半値幅の両者とも大きい。一方、GaN単結晶基板11を用いると表面粗さ及びX線回折の半値幅が改善される。特に、NH3とH2との混合ガス雰囲気中、基板温度を990℃以上1010℃以下で15分間の熱処理を施したGaN単結晶基板11から製造されたエピタキシャル基板10では、いずれも表面粗さが0.25nm以下となっており、平坦化されている。また、このような熱処理を施したGaN単結晶基板11においては、(0002)反射の半値幅は88秒、(10−11)反射の半値幅は64秒と良好である。すなわち、エピタキシャル基板10の結晶性が良好である。さらに、実際に原子間力顕微鏡像で観察して貫通転位密度を求めると、サファイア基板上に成長したエピタキシャル層では108〜109個cm−2程度であったが、単結晶基板11上に成長した化合物半導体層12では、多くの試料で106個cm−2以下と良好であった。
【0052】
以上の測定結果から、NH3とH2との混合ガス雰囲気中、基板温度を990℃以上1010℃以下で15分間の熱処理を施したGaN単結晶基板11から製造されたエピタキシャル基板10では、表面粗さがいずれも0.25nm以下に抑制されてその表面が平坦となっていると共に、基板10表面の貫通転位が低減されていることが確認された。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、エピタキシャル層表面の平坦化及び当該エピタキシャル層内の結晶欠陥の低減が可能なGaN単結晶基板、窒化物系化合物半導体エピタキシャル基板およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るエピタキシャル基板の模式図である。
【図2】機械研磨後のGaN単結晶基板表面の原子間力顕微鏡写真である。
【図3】熱処理後のGaN単結晶基板表面の原子間力顕微鏡写真である。
【図4】図4(a)は図3のGaN単結晶基板表面の原子間力顕微鏡像を示した図であり、図4(b)はそのA−A´線断面図及びB−B´線断面図を示した図である。
【図5】表面熱処理工程における基板表面の平坦化過程を示す図である。
【図6】窒化物系化合物半導体層を積層した窒化物系半導体エピタキシャル基板の基板表面の原子間力顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例に使用されたOMVPE装置の成長炉の模式図である。
【符号の説明】
10…窒化物系半導体エピタキシャル基板、11…GaN単結晶基板、12…窒化物系化合物半導体層、13…ピット、14…貫通転位、20…OMVPE装置。
Claims (14)
- 研磨された表面が、少なくともNH3ガスを含むガス雰囲気中、基板温度990℃以上1010℃以下で熱処理されて、前記表面に複数の孔が形成されたことを特徴とするGaN単結晶基板。
- 前記孔は、逆多角錐形状であることを特徴とする請求項1記載のGaN単結晶基板。
- 前記孔は、逆六角錐形状若しくは逆三角錐形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載のGaN単結晶基板。
- 研磨された表面に逆多角錐形状の孔が複数形成されていることを特徴とするGaN単結晶基板。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板と、前記表面の前記孔を埋めるように気相成長された窒化物系化合物半導体層とを備えることを特徴とする窒化物系半導体エピタキシャル基板。
- 前記表面の平均自乗平方根粗さが0.25nm以下であることを特徴とする請求項5に記載の窒化物系半導体エピタキシャル基板。
- 前記窒化物系化合物半導体層は、AlxGayIn1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)であることを特徴とする請求項5又は6に記載の窒化物系半導体エピタキシャル基板。
- 表面が研磨されたGaN基板を、少なくともNH3ガスを含むガス雰囲気中、基板温度990℃以上1010℃以下で熱処理することにより、前記表面に複数の孔を形成することを特徴とするGaN単結晶基板の製造方法。
- 前記孔は、逆多角錐形状であることを特徴とする請求項8記載のGaN単結晶基板の製造方法。
- 前記孔は、逆六角錐形状若しくは逆三角錐形状であることを特徴とする請求項8又は9に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
- 前記ガスには、H2ガスが含まれることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
- 研磨された表面に逆多角錐形状の孔を複数形成することを特徴とするGaN単結晶基板の製造方法。
- 請求項8〜12のいずれか一項に記載のGaN単結晶基板の製造方法によって製造したGaN単結晶基板上に、前記孔を埋めるように化合物半導体層を気相成長させることを特徴とする窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法。
- 前記窒化物系化合物半導体層は、前記GaN単結晶基板の表面に垂直な方向の成長速度に比べて、当該GaN単結晶基板の表面の面方向の成長速度の方が高いことを特徴とする請求項13に記載の窒化物系半導体エピタキシャル基板の製造方法。
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