JP2004034743A - スタッドレスタイヤおよびトレッドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】粘着摩擦を損なわずに掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上させた氷雪上性能に優れたスタッドレスタイヤを提供する。
【解決手段】ジエン系ゴムに、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維をトレッド厚さ方向に配向するように分散させてなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ。前記短繊維は、平均繊維径が1〜100μm、平均長さが0.1〜5mmであることが好ましい。また、前記トレッドは、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率E1とタイヤ周方向の複素弾性率E2の比が、
1.1≦E1/E2≦4
であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ジエン系ゴムに、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維をトレッド厚さ方向に配向するように分散させてなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ。前記短繊維は、平均繊維径が1〜100μm、平均長さが0.1〜5mmであることが好ましい。また、前記トレッドは、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率E1とタイヤ周方向の複素弾性率E2の比が、
1.1≦E1/E2≦4
であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、とくに雪上および氷上性能に優れたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、氷雪路を走行するタイヤとして、スパイクのないスタッドレスタイヤが普及している。このスタッドレスタイヤでは、氷上性能を向上させるために、路面掘り起こし摩擦や粘着摩擦を増加させる必要があり、従来から、トレッドゴムの氷路面に対する摩擦係数を上げる種々の研究が試みられている。
【0003】
一方で、タイヤの強度、剛性、耐摩耗性などを向上するため、短繊維を配合した短繊維配合ゴムをトレッドゴムに使用するものが知られている。しかし、該トレッドゴムをカレンダーロールや押出し機によって押出し成形すると、配合された短繊維は、押し出し方向、すなわちタイヤトレッド周方向に沿って配向する。その結果、路面に接地するトレッドゴムの大部分は、短繊維がタイヤ周方向に配向するため、引っ掻き効果が有効に機能せず、高い掘り起こし摩擦が必要なスタッドレスタイヤへの採用はほとんど行なわれていなかった。
【0004】
これに対し、前記短繊維の引っ掻き効果を高め、短繊維配合ゴムをスタッドレスタイヤに採用するものとして、特許第2637887号に開示されているように、短繊維として、直径0.1〜0.3mmでアスペクト比が低い太短の繊維を用いることが提案されている。この場合は、押出し工程において、短繊維が配向しにくくなるため、タイヤ周方向に配向する従来のものに比べて、短繊維の端部が路面と接触する機会が増え、引っ掻き効果はある程度向上する。しかし、引っ掻き効果の向上は、短繊維の配向性が喪失した分に止まるため、充分に満足し得る氷上性能を得るには至っていない。
【0005】
また、特開平2−274602号公報には、棒状の粒子形状を有する、比較的大きい粒子の粉体または短繊維を、トレッドの周方向ではなく厚さ方向に配向させたスタッドレスタイヤとその製造方法の技術が開示されている。これは氷雪路面を粒子粉体、短繊維による引っ掻き、掘り起こし摩擦を向上させる技術であるが、掘り起こし効果のために短繊維、粒子粉体をトレッドゴム表面より突出させる必要がある。開示されている実施例では鋼短繊維を使用しているが、金属のように硬い短繊維を配合した場合には、ゴムが硬くなると同時に耐摩耗性がゴムと金属で大幅に異なり、突出した金属短繊維が路面とのゴムの接触を妨げることによる接触面積の低下により、粘着、凝着摩擦力の減少を引き起こし、氷雪路性能が劣ることになる。
【0006】
このように、氷雪路面での粘着摩擦と掘り起こし摩擦、引っ掻き摩擦を同時に向上、あるいはバランスさせた氷雪上性能に優れたタイヤは未だ存在しないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、粘着摩擦を損なわずに、掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上させた氷雪上性能に優れたスタッドレスタイヤおよびトレッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、入れる材料と配向度合いに着案し、研究を積み重ねた。その結果、炭化ケイ素短繊維および/または炭素繊維の前駆体短繊維を、トレッドゴムの中に分散させ、トレッドゴムの厚さ方向に配向させることで、粘着摩擦を失うことなく引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)の向上に多大な効果を上げることができ、氷雪上性能を大幅に向上し得ることを見いだし、本発明に達した。
【0009】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴムに、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維がトレッド厚さ方向に配向するように分散されてなるトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【0010】
前記短繊維は、平均繊維径が1〜100μm、平均長さが0.1〜5mmであることが好ましい。
【0011】
前記トレッドは、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率E1とタイヤ周方向の複素弾性率E2の比が、
1.1≦E1/E2≦4
であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をシート状に押し出し成形する工程および該シートを押し出し方向に対して垂直にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法、および
炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をチューブ状に押し出す工程、該チューブ状ゴム組成物の側壁の一ヵ所を押し出し方向にカットしてシートを成形する工程および該シートを押し出し方向に対して平行にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のスタッドレスタイヤは、ジエン系ゴムに、特定の種類の短繊維がトレッド厚さ方向に配向するように分散されてなるトレッドを有する。
【0014】
前記トレッドにおけるジエン系ゴムは、通常使用されているゴムが使用できる。具体例としては、たとえば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などがあげられ、これらは単独で、または2種類以上を混練して用いられる。
【0015】
前記トレッドに分散する短繊維は、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種である。
【0016】
炭化ケイ素短繊維とは、プレセラミックスを湿式紡糸し、窒素中で焼成して得られる、元素として炭素とケイ素を含有する繊維のことである。
【0017】
前記炭化ケイ素短繊維の製造方法は、ケイ素を含む高分子(前駆体高分子)を熱処理して無機化することで、セラミックを合成する(前駆体法)。従来の粘土やセラミック粉末を加熱成形する手法と異なり、直径10μmレベルのセラミック連続繊維が得られる。
【0018】
前記炭化ケイ素短繊維のほかの製造方法は、化学気相成長法(CVD法)と呼ばれる、気体原料から化学反応を経て、固体材料を合成する。該方法によれば、高純度の炭化ケイ素材料が得られる。なお、得られる繊維の直径は、50〜500μmである。
【0019】
本発明に使用される炭化ケイ素短繊維の製造方法は、直径10μmレベルの繊維が得られる点で前駆体法が好ましい。一方、CVD法で得られるものは50μm以上であるため、ゴム硬度が硬くなり、粘着摩擦の低下を招く傾向がある。
【0020】
前記炭化ケイ素短繊維に含まれる元素としては、炭素、ケイ素以外にも、酸素、チタンなどが含まれていてもよい。
【0021】
かかる炭化ケイ素短繊維としては、たとえば、宇部興産(株)製の商品名チラノ繊維(炭化ケイ素系繊維)、日本カーボン(株)製の商品名ニカロン(炭化ケイ素連続繊維)などがあげられる。
【0022】
炭化ケイ素短繊維は、ヤング率が100〜300GPaで、非常に高い値を示す。このことからも分かるように、炭化ケイ素短繊維は非常に高い剛性を有するため、たとえばガラス繊維(ヤング率:70〜90GPa)と比較しても高い引っ掻き効果を示す。また、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの有機短繊維と比較しても、炭化ケイ素短繊維は強度が非常に高いので、摩滅しにくい点でも有利である。
【0023】
炭素繊維の前駆体短繊維とは、炭素繊維の原料となる有機物短繊維である。
【0024】
前記有機物短繊維としては、とくに限定されず、たとえばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、酸化ポリアクリロニトリル、石油ピッチ繊維、石炭ピッチ繊維、レーヨン樹脂などがあげられる。なかでも、高い強度を有するという点からフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、酸化ポリアクリロニトリルが好ましい。
【0025】
かかる有機物短繊維としては、たとえば、日本カイノール(株)製の商品名カイノール(ノボロイド繊維)、東邦テナックス(株)製の商品名パイロメックス(酸化ポリアクリロニトリル)などがあげられる。
【0026】
前記炭素繊維の前駆体短繊維は、ヤング率が3〜5GPaで、非常に低い値を示す。このことからも分かるように、前記炭素繊維の前駆体短繊維は、繊維自体が変形しやすく、通常走行でもゴムから脱落することなくゴム表面に残存している。それに対して、前記炭素繊維の前駆体短繊維よりもヤング率が高い、たとえばガラス繊維(ヤング率:70〜90GPa)は繊維自体が変形しにくいため、タイヤの通常走行において、該繊維が埋まっている土台の部分のゴムが変形し、短繊維がゴムから脱落しやすい状態となる。また、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの有機短繊維と比較すると、前記炭素繊維の前駆体短繊維は強度が非常に高いので、摩滅しにくい点でも有利である。
【0027】
前記トレッドに配合する短繊維の平均繊維径は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。短繊維の平均繊維径が1μmより小さい場合、曲げ強度が不充分であり路面引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が充分に期待できなくなる傾向がある。一方、100μmより大きい場合、ゴム硬度が硬くなり粘着摩擦の低下を招く傾向がある。
【0028】
短繊維の平均長さは0.1〜5mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることがより好ましい。短繊維の平均長さが0.1mmより繊維長が短い場合、ゴム表面への析出長さが短くなり路面の引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が不充分になる傾向にある。一方、5mmより長い場合、短繊維を分散および配向させにくくなり、ゴムの加工性が低下する傾向にある。
【0029】
前記トレッドにおける、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率Elとトレッドのタイヤ周方向の複素弾性率E2との比(E1/E2)は、1.1〜4が好ましく、1.2〜3.5がより好ましい。E1/E2の比が1.1より小さい場合、短繊維のトレッド厚さ方向への配向が得られず、氷上での摩耗性能が不充分となる傾向がある。また、El/E2が4より大きい場合、硬くなるため、加工性の問題が発生してくる傾向にある。
【0030】
前記短繊維は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、2〜50重量部であることが好ましく、3〜30重量部であることがより好ましい。前記短繊維の配合量が2重量部より小さい場合、トレッド表面に形成される短繊維の量が少なくなり、路面引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が充分に得られない傾向がある。一方、50重量部より大きい場合、トレッドブロック剛性が高くなりすぎて、トレッドゴム表面を氷雪路面に追随させることができなくなり、粘着、凝着摩擦が低下する傾向がある。
【0031】
本発明では、特定の種類の短繊維を、トレッドゴムに配合し、トレッド厚さ方向に配向するように分散させることで、粘着摩擦を損なうことなく、掘り起こし摩擦を向上させ、とくに、氷雪上走行性能が大幅に優れた空気入りタイヤが提供される。すなわち、短繊維をトレッド厚さ方向に配向させることにより、タイヤトレッドゴム表面は、短繊維の配向方向の影響がなくなり、路面の凹凸に追随する柔らかさを保ち粘着摩擦が改善される。また、タイヤ表面には厚さ方向に配向した短繊維により、局部的に接地圧が高い部分が作り出される。これにより、たとえばタイヤ空転時に凍結路面とタイヤ表面の間に発生する水膜を押しのけ、粘着摩擦を改善するとともに、掘り起こし、引っ掻き摩擦をも同時に向上させることを見いだした。
【0032】
トレッドの製造方法としては、通常用いられる押し出し方式が用いられる。単純に押し出して得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合には、図1(a)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド周方向となる。
【0033】
一方、図2に示すように、カレンダーロール4によって前記短繊維2を含有するゴム組成物を圧延加工し、得られたゴムシート3を押し出し方向Bに対して垂直にカットしてそれぞれ90度回転させて再び重ね合わせる方法により得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合には、図1(b)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド厚さ方向となる。
【0034】
または図3に示すように、前記短繊維2を含むトレッド用ゴム組成物をチューブ状に押し出したのち、該チューブ状のゴムシートの側壁の一ヵ所を押し出し方向にカットして(カット部分5)ゴムシート3を形成したのち、該シート3を押し出し方向Bに対して平行にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる方法により得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合にもまた、図1(b)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド厚さ方向となる。
【0035】
トレッド用ゴム組成物を前記チューブ状に押し出す製造方法では、ゴムを口金より押し出すときに円盤に押し当てる。ゴムは円盤の中心から外側に向かって、円形となって広がっていく。そのとき、短繊維はゴムが外側へ進む力よりも円周方向に広がる力が強いため円周方向に配向する。そのゴムがチューブ状に押し出されることにより、チューブの円周方向に配向されて押し出されてくるというメカニズムにより、前記短繊維は、図3に記載のとおり、チューブの円周方向に配向されて押し出されてくる。
【0036】
なお、本発明のスタッドレスタイヤのトレッドにおいて、前記短繊維をトレッド厚さ方向に配向させる方法は、前述の方法に限定されず、前記短繊維を前記方向に配向させられるのであれば、ほかの方法を用いることもできる。
【0037】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例で使用した原料を、以下にまとめて示す。
(原料)
天然ゴム:RSS#3グレード
ハイシスポリブタジエン:宇部興産(株)製のウベポール(UBEPOL) BR150B
カーボンブラックN220:昭和キャッボット(株)製のショウブラックN220
シリカ:日本シリカ(株)製のニプシルVN3
シランカップリング剤:デグサ社のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トラスルフィド)
パラフインオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイル
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
ガラス短繊維:平均繊維径:11μm、カット長さ:3mm
ナイロン短繊維:平均繊維径:8μm、カット長さ:3mm
炭化ケイ素短繊維:平均繊維径:13μm、カット長さ:3mm
炭素繊維の前駆体短繊維:平均繊維径:12μm、カット長さ:3mm
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
【0039】
実施例1、2および比較例1〜4
(タイヤの成形方法)
表1の配合割合にしたがい、比較例1、2は、通常用いられる押し出し方式で短繊維をトレッド周方向に配向させたもの(図1(a))、また、実施例1、2および比較例3、4は、図2に示す方法で短繊維をトレッド厚さ方向に配向させたもの(図1(b))を作製した。得られたゴムシートをタイヤトレッドに使用して、通常の方法により各種供試タイヤを成形、作製した。得られたタイヤを用いて、以下に示す試験、評価を行なった。
【0040】
(複素弾性率)
温度25℃、測定周波数10Hz、初期歪み10%および動歪み1%の条件で、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて測定した。なお、サンプルは、厚さ1.0mm、幅4mm、長さ5mmの形状のゴム片を、タイヤトレッド部から切り出して測定に使用した。トレッド厚さ方向の複素弾性率をE1とし、タイヤ周方向の複素弾性率をE2とした。
【0041】
(氷上性能)
195/65R15サイズでタイヤを作成し、排気量2000ccの国産FR乗用車に装着し、時速30km/hからの氷盤上での制動停止距離を求めた。比較例1を基準として下記式にて求めた指数によって評価した。指数が大きいほど氷上性能に優れている。
(比較例1の制動停止距離)÷(制動停止距離)×100
なお、テスト実施前にタイヤの表面のならし走行を、おのおの200km実施した。
【0042】
(雪上性能)
雪上コースにおける前記乗用車による周回タイムを測定し、比較例1を基準として下記式にて求めた指数によって評価した。指数が大きいほど雪上性能に優れている。
(比較例1の周回タイム)÷(周回タイム)×100
なお、テスト実施前にタイヤの表面のならし走行を、おのおの200km実施した。
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例3、4および比較例5〜8
(タイヤの成形方法)
表2の配合割合にしたがい、比較例5、6は、通常用いられる押し出し方式で短繊維をトレッド周方向に配向させたもの(図1(a))、また、実施例3、4および比較例7、8は、図2に示す方法で短繊維をトレッド厚さ方向に配向させたもの(図1(b))を作製した。得られたゴムシートをタイヤトレッドに使用して、通常の方法により各種供試タイヤを成形、作製した。得られたタイヤを用いて、実施例1、2および比較例1〜4と同様の試験、評価を行なった。なお、実施例3、4および比較例5〜8の評価結果については、比較例5を基準として用いた。
結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
特許請求の範囲の短繊維を配合し、トレッド厚さ方向に短繊維を配向させた実施例1〜4は、トレッド周方向に短繊維を配向させた比較例1または5と比べて、氷雪上性能が優れていた。
【0047】
トレッドに短繊維を配合していない比較例2および6、トレッドに特定の種類の短繊維を配合していない比較例3、4、7および8、特定の種類の短繊維を用いているが、トレッドの厚さ方向に短繊維が配向していない比較例1および5では、氷雪上性能が実施例より劣っていることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、氷雪路面での粘着摩擦を損なうことなく、掘り起こし摩擦を向上させた、氷雪上性能に優れたスタッドレスタイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤトレッドの断面図である。
【図2】本発明のトレッドの作製方法を示す説明図である。
【図3】本発明のトレッドの作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 タイヤトレッド
2 短繊維
3 ゴムシート
4 カレンダーロール
5 カット部分
A 短繊維の配向方向
B 押し出し方向
【発明の属する技術分野】
本発明は、とくに雪上および氷上性能に優れたタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、氷雪路を走行するタイヤとして、スパイクのないスタッドレスタイヤが普及している。このスタッドレスタイヤでは、氷上性能を向上させるために、路面掘り起こし摩擦や粘着摩擦を増加させる必要があり、従来から、トレッドゴムの氷路面に対する摩擦係数を上げる種々の研究が試みられている。
【0003】
一方で、タイヤの強度、剛性、耐摩耗性などを向上するため、短繊維を配合した短繊維配合ゴムをトレッドゴムに使用するものが知られている。しかし、該トレッドゴムをカレンダーロールや押出し機によって押出し成形すると、配合された短繊維は、押し出し方向、すなわちタイヤトレッド周方向に沿って配向する。その結果、路面に接地するトレッドゴムの大部分は、短繊維がタイヤ周方向に配向するため、引っ掻き効果が有効に機能せず、高い掘り起こし摩擦が必要なスタッドレスタイヤへの採用はほとんど行なわれていなかった。
【0004】
これに対し、前記短繊維の引っ掻き効果を高め、短繊維配合ゴムをスタッドレスタイヤに採用するものとして、特許第2637887号に開示されているように、短繊維として、直径0.1〜0.3mmでアスペクト比が低い太短の繊維を用いることが提案されている。この場合は、押出し工程において、短繊維が配向しにくくなるため、タイヤ周方向に配向する従来のものに比べて、短繊維の端部が路面と接触する機会が増え、引っ掻き効果はある程度向上する。しかし、引っ掻き効果の向上は、短繊維の配向性が喪失した分に止まるため、充分に満足し得る氷上性能を得るには至っていない。
【0005】
また、特開平2−274602号公報には、棒状の粒子形状を有する、比較的大きい粒子の粉体または短繊維を、トレッドの周方向ではなく厚さ方向に配向させたスタッドレスタイヤとその製造方法の技術が開示されている。これは氷雪路面を粒子粉体、短繊維による引っ掻き、掘り起こし摩擦を向上させる技術であるが、掘り起こし効果のために短繊維、粒子粉体をトレッドゴム表面より突出させる必要がある。開示されている実施例では鋼短繊維を使用しているが、金属のように硬い短繊維を配合した場合には、ゴムが硬くなると同時に耐摩耗性がゴムと金属で大幅に異なり、突出した金属短繊維が路面とのゴムの接触を妨げることによる接触面積の低下により、粘着、凝着摩擦力の減少を引き起こし、氷雪路性能が劣ることになる。
【0006】
このように、氷雪路面での粘着摩擦と掘り起こし摩擦、引っ掻き摩擦を同時に向上、あるいはバランスさせた氷雪上性能に優れたタイヤは未だ存在しないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、粘着摩擦を損なわずに、掘り起こし摩擦(引っ掻き効果)を向上させた氷雪上性能に優れたスタッドレスタイヤおよびトレッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、入れる材料と配向度合いに着案し、研究を積み重ねた。その結果、炭化ケイ素短繊維および/または炭素繊維の前駆体短繊維を、トレッドゴムの中に分散させ、トレッドゴムの厚さ方向に配向させることで、粘着摩擦を失うことなく引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)の向上に多大な効果を上げることができ、氷雪上性能を大幅に向上し得ることを見いだし、本発明に達した。
【0009】
すなわち、本発明は、ジエン系ゴムに、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維がトレッド厚さ方向に配向するように分散されてなるトレッドを有するスタッドレスタイヤに関する。
【0010】
前記短繊維は、平均繊維径が1〜100μm、平均長さが0.1〜5mmであることが好ましい。
【0011】
前記トレッドは、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率E1とタイヤ周方向の複素弾性率E2の比が、
1.1≦E1/E2≦4
であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をシート状に押し出し成形する工程および該シートを押し出し方向に対して垂直にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法、および
炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をチューブ状に押し出す工程、該チューブ状ゴム組成物の側壁の一ヵ所を押し出し方向にカットしてシートを成形する工程および該シートを押し出し方向に対して平行にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のスタッドレスタイヤは、ジエン系ゴムに、特定の種類の短繊維がトレッド厚さ方向に配向するように分散されてなるトレッドを有する。
【0014】
前記トレッドにおけるジエン系ゴムは、通常使用されているゴムが使用できる。具体例としては、たとえば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)などがあげられ、これらは単独で、または2種類以上を混練して用いられる。
【0015】
前記トレッドに分散する短繊維は、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種である。
【0016】
炭化ケイ素短繊維とは、プレセラミックスを湿式紡糸し、窒素中で焼成して得られる、元素として炭素とケイ素を含有する繊維のことである。
【0017】
前記炭化ケイ素短繊維の製造方法は、ケイ素を含む高分子(前駆体高分子)を熱処理して無機化することで、セラミックを合成する(前駆体法)。従来の粘土やセラミック粉末を加熱成形する手法と異なり、直径10μmレベルのセラミック連続繊維が得られる。
【0018】
前記炭化ケイ素短繊維のほかの製造方法は、化学気相成長法(CVD法)と呼ばれる、気体原料から化学反応を経て、固体材料を合成する。該方法によれば、高純度の炭化ケイ素材料が得られる。なお、得られる繊維の直径は、50〜500μmである。
【0019】
本発明に使用される炭化ケイ素短繊維の製造方法は、直径10μmレベルの繊維が得られる点で前駆体法が好ましい。一方、CVD法で得られるものは50μm以上であるため、ゴム硬度が硬くなり、粘着摩擦の低下を招く傾向がある。
【0020】
前記炭化ケイ素短繊維に含まれる元素としては、炭素、ケイ素以外にも、酸素、チタンなどが含まれていてもよい。
【0021】
かかる炭化ケイ素短繊維としては、たとえば、宇部興産(株)製の商品名チラノ繊維(炭化ケイ素系繊維)、日本カーボン(株)製の商品名ニカロン(炭化ケイ素連続繊維)などがあげられる。
【0022】
炭化ケイ素短繊維は、ヤング率が100〜300GPaで、非常に高い値を示す。このことからも分かるように、炭化ケイ素短繊維は非常に高い剛性を有するため、たとえばガラス繊維(ヤング率:70〜90GPa)と比較しても高い引っ掻き効果を示す。また、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの有機短繊維と比較しても、炭化ケイ素短繊維は強度が非常に高いので、摩滅しにくい点でも有利である。
【0023】
炭素繊維の前駆体短繊維とは、炭素繊維の原料となる有機物短繊維である。
【0024】
前記有機物短繊維としては、とくに限定されず、たとえばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、酸化ポリアクリロニトリル、石油ピッチ繊維、石炭ピッチ繊維、レーヨン樹脂などがあげられる。なかでも、高い強度を有するという点からフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、酸化ポリアクリロニトリルが好ましい。
【0025】
かかる有機物短繊維としては、たとえば、日本カイノール(株)製の商品名カイノール(ノボロイド繊維)、東邦テナックス(株)製の商品名パイロメックス(酸化ポリアクリロニトリル)などがあげられる。
【0026】
前記炭素繊維の前駆体短繊維は、ヤング率が3〜5GPaで、非常に低い値を示す。このことからも分かるように、前記炭素繊維の前駆体短繊維は、繊維自体が変形しやすく、通常走行でもゴムから脱落することなくゴム表面に残存している。それに対して、前記炭素繊維の前駆体短繊維よりもヤング率が高い、たとえばガラス繊維(ヤング率:70〜90GPa)は繊維自体が変形しにくいため、タイヤの通常走行において、該繊維が埋まっている土台の部分のゴムが変形し、短繊維がゴムから脱落しやすい状態となる。また、ポリエステル繊維、ナイロン繊維などの有機短繊維と比較すると、前記炭素繊維の前駆体短繊維は強度が非常に高いので、摩滅しにくい点でも有利である。
【0027】
前記トレッドに配合する短繊維の平均繊維径は、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。短繊維の平均繊維径が1μmより小さい場合、曲げ強度が不充分であり路面引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が充分に期待できなくなる傾向がある。一方、100μmより大きい場合、ゴム硬度が硬くなり粘着摩擦の低下を招く傾向がある。
【0028】
短繊維の平均長さは0.1〜5mmであることが好ましく、0.1〜3mmであることがより好ましい。短繊維の平均長さが0.1mmより繊維長が短い場合、ゴム表面への析出長さが短くなり路面の引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が不充分になる傾向にある。一方、5mmより長い場合、短繊維を分散および配向させにくくなり、ゴムの加工性が低下する傾向にある。
【0029】
前記トレッドにおける、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率Elとトレッドのタイヤ周方向の複素弾性率E2との比(E1/E2)は、1.1〜4が好ましく、1.2〜3.5がより好ましい。E1/E2の比が1.1より小さい場合、短繊維のトレッド厚さ方向への配向が得られず、氷上での摩耗性能が不充分となる傾向がある。また、El/E2が4より大きい場合、硬くなるため、加工性の問題が発生してくる傾向にある。
【0030】
前記短繊維は、前記ジエン系ゴム100重量部に対して、2〜50重量部であることが好ましく、3〜30重量部であることがより好ましい。前記短繊維の配合量が2重量部より小さい場合、トレッド表面に形成される短繊維の量が少なくなり、路面引っ掻き効果(掘り起こし摩擦)が充分に得られない傾向がある。一方、50重量部より大きい場合、トレッドブロック剛性が高くなりすぎて、トレッドゴム表面を氷雪路面に追随させることができなくなり、粘着、凝着摩擦が低下する傾向がある。
【0031】
本発明では、特定の種類の短繊維を、トレッドゴムに配合し、トレッド厚さ方向に配向するように分散させることで、粘着摩擦を損なうことなく、掘り起こし摩擦を向上させ、とくに、氷雪上走行性能が大幅に優れた空気入りタイヤが提供される。すなわち、短繊維をトレッド厚さ方向に配向させることにより、タイヤトレッドゴム表面は、短繊維の配向方向の影響がなくなり、路面の凹凸に追随する柔らかさを保ち粘着摩擦が改善される。また、タイヤ表面には厚さ方向に配向した短繊維により、局部的に接地圧が高い部分が作り出される。これにより、たとえばタイヤ空転時に凍結路面とタイヤ表面の間に発生する水膜を押しのけ、粘着摩擦を改善するとともに、掘り起こし、引っ掻き摩擦をも同時に向上させることを見いだした。
【0032】
トレッドの製造方法としては、通常用いられる押し出し方式が用いられる。単純に押し出して得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合には、図1(a)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド周方向となる。
【0033】
一方、図2に示すように、カレンダーロール4によって前記短繊維2を含有するゴム組成物を圧延加工し、得られたゴムシート3を押し出し方向Bに対して垂直にカットしてそれぞれ90度回転させて再び重ね合わせる方法により得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合には、図1(b)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド厚さ方向となる。
【0034】
または図3に示すように、前記短繊維2を含むトレッド用ゴム組成物をチューブ状に押し出したのち、該チューブ状のゴムシートの側壁の一ヵ所を押し出し方向にカットして(カット部分5)ゴムシート3を形成したのち、該シート3を押し出し方向Bに対して平行にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる方法により得られるトレッドゴムシートからトレッドを形成した場合にもまた、図1(b)に示すように、前記短繊維2のトレッドにおける配向方向Aは、トレッド厚さ方向となる。
【0035】
トレッド用ゴム組成物を前記チューブ状に押し出す製造方法では、ゴムを口金より押し出すときに円盤に押し当てる。ゴムは円盤の中心から外側に向かって、円形となって広がっていく。そのとき、短繊維はゴムが外側へ進む力よりも円周方向に広がる力が強いため円周方向に配向する。そのゴムがチューブ状に押し出されることにより、チューブの円周方向に配向されて押し出されてくるというメカニズムにより、前記短繊維は、図3に記載のとおり、チューブの円周方向に配向されて押し出されてくる。
【0036】
なお、本発明のスタッドレスタイヤのトレッドにおいて、前記短繊維をトレッド厚さ方向に配向させる方法は、前述の方法に限定されず、前記短繊維を前記方向に配向させられるのであれば、ほかの方法を用いることもできる。
【0037】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例で使用した原料を、以下にまとめて示す。
(原料)
天然ゴム:RSS#3グレード
ハイシスポリブタジエン:宇部興産(株)製のウベポール(UBEPOL) BR150B
カーボンブラックN220:昭和キャッボット(株)製のショウブラックN220
シリカ:日本シリカ(株)製のニプシルVN3
シランカップリング剤:デグサ社のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トラスルフィド)
パラフインオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスオイル
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
ガラス短繊維:平均繊維径:11μm、カット長さ:3mm
ナイロン短繊維:平均繊維径:8μm、カット長さ:3mm
炭化ケイ素短繊維:平均繊維径:13μm、カット長さ:3mm
炭素繊維の前駆体短繊維:平均繊維径:12μm、カット長さ:3mm
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
【0039】
実施例1、2および比較例1〜4
(タイヤの成形方法)
表1の配合割合にしたがい、比較例1、2は、通常用いられる押し出し方式で短繊維をトレッド周方向に配向させたもの(図1(a))、また、実施例1、2および比較例3、4は、図2に示す方法で短繊維をトレッド厚さ方向に配向させたもの(図1(b))を作製した。得られたゴムシートをタイヤトレッドに使用して、通常の方法により各種供試タイヤを成形、作製した。得られたタイヤを用いて、以下に示す試験、評価を行なった。
【0040】
(複素弾性率)
温度25℃、測定周波数10Hz、初期歪み10%および動歪み1%の条件で、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターを用いて測定した。なお、サンプルは、厚さ1.0mm、幅4mm、長さ5mmの形状のゴム片を、タイヤトレッド部から切り出して測定に使用した。トレッド厚さ方向の複素弾性率をE1とし、タイヤ周方向の複素弾性率をE2とした。
【0041】
(氷上性能)
195/65R15サイズでタイヤを作成し、排気量2000ccの国産FR乗用車に装着し、時速30km/hからの氷盤上での制動停止距離を求めた。比較例1を基準として下記式にて求めた指数によって評価した。指数が大きいほど氷上性能に優れている。
(比較例1の制動停止距離)÷(制動停止距離)×100
なお、テスト実施前にタイヤの表面のならし走行を、おのおの200km実施した。
【0042】
(雪上性能)
雪上コースにおける前記乗用車による周回タイムを測定し、比較例1を基準として下記式にて求めた指数によって評価した。指数が大きいほど雪上性能に優れている。
(比較例1の周回タイム)÷(周回タイム)×100
なお、テスト実施前にタイヤの表面のならし走行を、おのおの200km実施した。
結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例3、4および比較例5〜8
(タイヤの成形方法)
表2の配合割合にしたがい、比較例5、6は、通常用いられる押し出し方式で短繊維をトレッド周方向に配向させたもの(図1(a))、また、実施例3、4および比較例7、8は、図2に示す方法で短繊維をトレッド厚さ方向に配向させたもの(図1(b))を作製した。得られたゴムシートをタイヤトレッドに使用して、通常の方法により各種供試タイヤを成形、作製した。得られたタイヤを用いて、実施例1、2および比較例1〜4と同様の試験、評価を行なった。なお、実施例3、4および比較例5〜8の評価結果については、比較例5を基準として用いた。
結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
特許請求の範囲の短繊維を配合し、トレッド厚さ方向に短繊維を配向させた実施例1〜4は、トレッド周方向に短繊維を配向させた比較例1または5と比べて、氷雪上性能が優れていた。
【0047】
トレッドに短繊維を配合していない比較例2および6、トレッドに特定の種類の短繊維を配合していない比較例3、4、7および8、特定の種類の短繊維を用いているが、トレッドの厚さ方向に短繊維が配向していない比較例1および5では、氷雪上性能が実施例より劣っていることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、氷雪路面での粘着摩擦を損なうことなく、掘り起こし摩擦を向上させた、氷雪上性能に優れたスタッドレスタイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤトレッドの断面図である。
【図2】本発明のトレッドの作製方法を示す説明図である。
【図3】本発明のトレッドの作製方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 タイヤトレッド
2 短繊維
3 ゴムシート
4 カレンダーロール
5 カット部分
A 短繊維の配向方向
B 押し出し方向
Claims (5)
- ジエン系ゴムに、炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維がトレッド厚さ方向に配向するように分散されてなるトレッドを有するスタッドレスタイヤ。
- 前記短繊維の平均繊維径が1〜100μm、平均長さが0.1〜5mmである請求項1記載のスタッドレスタイヤ。
- 前記トレッドにおける、25℃で測定したトレッド厚さ方向の複素弾性率E1とタイヤ周方向の複素弾性率E2の比が、
1.1≦E1/E2≦4
である請求項1または2記載のスタッドレスタイヤ。 - 炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をシート状に押し出し成形する工程および該シートを押し出し方向に対して垂直にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法。
- 炭化ケイ素短繊維および炭素繊維の前駆体短繊維からなる群より選択された少なくとも1種の短繊維を含むトレッド用ゴム組成物をチューブ状に押し出す工程、該チューブ状ゴム組成物の側壁の一ヵ所を押し出し方向にカットしてシートを成形する工程および該シートを押し出し方向に対して平行にカットして、それぞれ90度回転させて再び重ね合わせる工程を含むトレッドの製造方法。
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-
2002
- 2002-06-28 JP JP2002190987A patent/JP2004034743A/ja active Pending
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