JP2004034169A - 脚式移動ロボット装置及び脚式移動ロボット装置の移動制御方法 - Google Patents
脚式移動ロボット装置及び脚式移動ロボット装置の移動制御方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる脚式移動ロボット装置を提供する。
【解決手段】脚部ユニット3A,3B,3C,3Dの接地面側先端には、軸7A、7B,7C,7Dを中心に回転する車輪4A,4B,4C,4Dが取りつけられている。各車輪4A,4B,4C,4Dは、回転駆動手段であるモータ5A,5B,5C,5Dの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。
【選択図】 図2
【解決手段】脚部ユニット3A,3B,3C,3Dの接地面側先端には、軸7A、7B,7C,7Dを中心に回転する車輪4A,4B,4C,4Dが取りつけられている。各車輪4A,4B,4C,4Dは、回転駆動手段であるモータ5A,5B,5C,5Dの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも二つの脚部にて歩行する脚式移動ロボット装置及び脚式移動ロボット装置の移動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の”ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0003】
最近では、イヌやネコ、クマのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトやサルなどの2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作を模した「人間形」若しくは「人間型」のロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットの構造やその安定歩行制御に関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。これら脚式移動ロボットは、クローラ式ロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段の昇降や障害物の乗り越えなど、柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々のサービスを提供することができる。
【0005】
脚式移動ロボットの用途の1つとして、産業活動・生産活動等における各種の難作業の代行が挙げられる。例えば、原子力発電プラントや火力発電プラント、石油化学プラントにおけるメンテナンス作業、製造工場における部品の搬送・組立作業、高層ビルにおける清掃、火災現場その他における救助といったような危険作業・難作業の代行などである。
【0006】
また、脚式移動ロボットの他の用途として、上述の作業支援というよりも、生活密着型、すなわち人間との「共生」あるいは「エンターティンメント」という用途が挙げられる。この種のロボットは、ヒトあるいはイヌ(ペット)、クマなどの比較的知性の高い脚式移動動物の動作メカニズムや四肢を利用した豊かな感情表現を忠実に再現する。また、あらかじめ入力された動作パターンを単に忠実に実行するだけではなく、ユーザ(あるいは他のロボット)から受ける言葉や態度(「褒める」とか「叱る」、「叩く」など)に対して動的に対応した、生き生きとした応答表現を実現することも要求される。
【0007】
このような脚式移動ロボットとしては、図33に示すような脚機構を持つものが知られている。このロボット装置1は、4足歩行の脚式移動ロボットであり、胴体部ユニット2の前後左右にそれぞれ脚部ユニット3A,3B,3C,3Dが連結されると共に、胴体部ユニット2の前端部に頭部ユニット44が連結されている。
【0008】
また、移動する機構のみを考えた場合には、図34に示すような車輪による移動機構を持つ、自動車のようなメカニズムが考えられる。この自動車250における移動機構は、車体251に取付られた4つの車輪252A,252B,252C,252Dの回転駆動により車体を接地面上前後、又は左右カーブを切るように移動させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記図33に示した脚式移動ロボットの脚機構は、歩行をするためのものであり、方向転換や、直進/並進移動するときには、各脚の胴体部との連結部や、他の連結部のアクチュエータの動きを制御しなければならないため、素早い動作が困難であり、機動性という面で問題があった。
【0010】
また、前記図34に示したような車輪による移動機構のみをロボットに取りつけた場合には、段差を乗り越えるときの段差の高さによっては乗り越えができなかったり、また脚部を動かすことなく車輪だけを動かすので表現力が乏しくなることがある。
【0011】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる脚式移動ロボット装置の提供を目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる脚式移動ロボット装置の制御方法の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る脚式移動ロボット装置は、前記課題を解決するために、胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段と、前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かし、また前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する制御手段とを備える。
【0014】
このような構成を採ることにより、脚式移動ロボット装置は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができる。
【0015】
本発明に係る脚式移動ロボット装置の移動制御方法は、前記課題を解決するために、胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段とを備えてなる脚式移動ロボット装置の移動制御方法であって、前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かす第1の工程と、前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する第2の工程とを備える。
【0016】
このような脚式移動ロボット装置の移動制御方法によれば、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。先ず、第1の実施の形態は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータにより駆動される4本の脚を備える図1に示す脚式移動ロボット装置1である。例えば、エンターテインメントロボット装置として使われる。
【0018】
この脚式移動ロボット装置1は、胴体部ユニット2の前後左右にそれぞれ脚部ユニット3A,3B,3C,3Dが連結されると共に、胴体部ユニット2の前端部に頭部ユニット44が連結されて構成されている。
【0019】
脚部ユニット3A,3B,3C,3Dは、それぞれ例えば3自由度を有する。脚部ユニット3Aを例にとると、図2に示すように、胴体部2側の上部10Aは胴体部2との連結部11Aにおいて胴体部2に対して前後方向に回転する。また胴体部2に対して開脚するようにも回転する。また、前記上部10Aに対する下部8Aは、上部10Aとの連結部9Aにて前後方向に回転する。したがって、脚部ユニット3Aは3自由度を有することになる。他の脚部ユニット3B,3C,3Dも同様であり、上部10B、10C、10Dは胴体部2との連結部11B、11C、11Dにおいて胴体部ユニット2に対して前後方向に回転する。また胴体部ユニット2に対して開脚するようにも回転する。また、前記上部10B、10C、10Dに対する下部8B、8C、8Dは、上部10B、10C、10Dとの連結部9B、9C、9Dにて前後方向に回転する。
【0020】
また、脚部ユニット3A,3B,3C,3Dの接地面側先端には、軸7A、7B,7C,7Dを中心に回転する車輪4A,4B,4C,4Dが取りつけられている。この各車輪は、プラスチック材、ゴム材など材質は問わない。各車輪4A,4B,4C,4Dは、回転駆動手段であるモータ5A,5B,5C,5Dの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。
【0021】
なお、各脚部ユニット3A〜3Dの前記接地面側先端にあって、前記各車輪4A,4B,4C,4Dの縦方向の例えば後ろには、接地面との接触によって脚部を接地面上に固定することができる踵部を設けてもよい。もちろん、この踵部を接地面に接触させるには、各脚部毎に備えられる3自由度を用いて脚部の接地面側先端の接地場所を車輪側ではなく踵部側にする必要がある。
【0022】
また、この脚式移動ロボット装置1は、モータ5A,5B,5C,5Dの回転数のコントロールが可能である。例えば各車輪4A,4B,4C,4Dの向きが同一の状態で回転数を等しくすればロボット装置1はまっすぐ進むことになる。各モータ5A,5B,5C,5D毎の回転数を変化させれば曲がることも可能である。もちろん、モータ5A,5B,5C,5Dへのバッテリーからの電力供給はコントロール部によって制御され、回転方向の正逆方向への切り替えも可能とされる。
【0023】
図3は、脚部ユニット3Aの上部10Aに連結部9Aを介して連結されている下部8Aの拡大図、及び車輪4Aの取付部の拡大分解図である。下部8Aの先に車輪取付部6Aが設けられ、そこに設けられたモータ取付部にモータ5Aを固定する。また、車輪取付部6Aの先端に設けられた軸受け穴に、車輪4Aに通した車軸7Aを通し、車輪がモータによって回転するようにしている。
【0024】
例えば、車輪4Aは、図4(a)、(b)、(c)に示すように、接地面に接地する位置L1、L2、L3によって車輪の中心からの回転半径が変化する形状をしてなる。モータ5Aが同速にて回転駆動しているのであれば、前記接地位置L1よりもL2での回転半径は小さいので、接地位置L2での車輪の回転による脚部ユニット3Aのみの移動速度は、接地位置L1での移動速度よりも遅くなる。また、接地位置L3での車輪の回転による脚部ユニット3Aのみの移動速度は、接地位置L2よりも回転半径が大きいので、接地位置L2での移動速度よりも速くなる。車輪4B〜4Dについても同様の形状をしており、同様の作用がある。各車輪と、各脚部を用いての移動制御については詳細を後述する。
【0025】
胴体部ユニット2には、図5に示すように、CPU110、DRAM(Dynamic Random Access Memory)111、フラッシュROM(Read 0nly Memory)112、PC(Personal Computer)カードインターフェース回路113及び信号処理回路114が内部バス115を介して相互に接続されることにより形成されたコントロール部116と、このロボット装置1の動力源としてのバッテリー117とが収納されている。もちろん、このバッテリー117は前記各モータ5A,5B,5C,5Dの動力源となっている。
【0026】
また、胴体部ユニット2には、脚式移動ロボット装置1の向きや動きの加速度を検出するための角速度センサ118及び加速度センサ119なども収納されている。
【0027】
また、頭部ユニット44には、外部の状況を撮像するとともに、周囲の明るさを検出するためのCMOSカメラ20と、前後に倒すといった使用者からの物理的な働きかけを検出するためのタッチセンサ21と、前方に位置する物体までの距離を測定するための距離センサと、外部音を集音するためのマイクロホンと、各種音声を出力するためのスピーカと、頭部ユニット44内に格納可能とされたヘッドライト25と、ロボット装置1の「目」に相当するLED(Light Emitting Diode)(図示せず)などがそれぞれ所定位置に配置されている。なお、ロボット装置1においては、タッチセンサ21以外にも、胴体部ユニット2及び頭部ユニット44の所定位置に複数のタッチセンサが配置されている。例えば頭部に付いているタッチセンサを、ユーザが撫でたときには、頭部センサを撫でられたという内部状況が評価される。
【0028】
さらに、各脚部ユニット3A〜3Dの関節部(連結部)分や各脚部ユニット3A〜3D及び胴体部ユニット2の各連結部分、並びに頭部ユニット44及び胴体部ユニット2の連結部分などにはそれぞれ前述した自由度数分のアクチュエータ及びポテンショメータが配設されている。例えば、アクチュエータ261〜26nはサーボモータを構成として有している。サーボモータの駆動により、脚部ユニット3A〜3Dが制御されて、目標の姿勢或いは動作に遷移する。もちろん、歩行動作もサーボモータの駆動により制御された脚部ユニット3A〜3Dの接地面に対する自在な動きにより成される。特に、このロボット装置1では、脚部ユニット3A〜3Dの各アクチュエータによって、各脚部ユニット毎に3自由度の範囲内で各脚部ユニットを動かして、各車輪4A〜4Dの接地位置を例えば前記図4に示したように変えることができる。
【0029】
そして、これら角速度センサ118、加速度センサ119、タッチセンサ21、距離センサ22、マイクロホン23、スピーカ24、及び各ポテンショメータ271〜27nなどの各種センサ並びにヘッドライト25、LED及び各アクチュエータ261 〜26nは、それぞれ対応するハブ281〜28nを介してコントロール部16の信号処理回路114と接続され、CMOSカメラ20及びバッテリー117は、それぞれ信号処理回路114と直接接続されている。
【0030】
信号処理回路1l4は、上述の各センサから供給されるセンサデータや画像データ及び音声データを順次取り込み、これらをそれぞれ内部バス115を介してDRAM111内の所定位置に順次格納する。また信号処理回路114は、これと共にバッテリー117から供給されるバッテリー残量を表すバッテリー残量データを順次取り込み、これをDRAM111内の所定位置に格納する。
【0031】
このようにしてDRAM111に格納された各センサデータ、画像データ、音声データ及びバッテリー残量データは、この後CPU110がこの脚式移動ロボット装置1の動作制御を行う際に利用される。
【0032】
実際上CPU110は、脚式移動ロボット装置1の電源が投入された初期時、胴体部ユニット2の図示しないメモリカードスロットに装填されたメモリカード29又はフラッシュROM112に格納された、行動制御プログラムや、本発明の脚式移動ロボット装置の移動制御方法の具体例である移動制御プログラムをメモリカードインターフェース回路113を介して又は直接読み出し、これをDRAM111に格納する。これらの制御プログラムをCPU110がDRAM111を作業領域として実行する。すると、脚式移動ロボット装置は、接地面の状態や障害物などの周囲の外部環境や、ユーザによるコマンド、或いは内部環境に応じて、自律的に行動を選択し、その選択した行動の動作や表現の意味に基づいた動作や表現の実行命令を生成し、例えば頭部ユニットや、脚部ユニットのモジュールの動きを制御する。または外部のPCなどからの有線、または無線でこのCPU110に指令をあたえて同様に頭部、脚部などの制御を行う。
また、CPU110は、信号処理回路114よりDRAM111に順次格納される各センサデータ、画像データ、音声データ及びバッテリー残量データに基づいて自己及び周囲の状況や、使用者からの指示及び働きかけの有無などを判断する。
【0033】
したがって、脚式移動ロボット装置1は、CPU110により前記行動制御プログラムや、移動制御プログラムを実行することにより、頭部ユニット44を上下左右に振らせたり、脚部ユニットによる歩行移動、車輪による車輪移動、及び歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動を行うことができる。特に、歩行移動、車輪移動、ハイブリッド移動は、連結部の必要なアクチュエータ261〜26n、各モータ5A〜5Bを駆動させ、各脚部ユニット3A〜3D、各車輪4A〜4Dを駆動させることによって行われる。
【0034】
また、この際CPU110は、必要に応じて音声データを生成し、これを信号処理回路114を介して音声信号としてスピーカ24に与えることにより当該音声信号に基づく音声を外部に出力させたり、上述のLEDを点灯、消灯又は点滅させる。また、CPU110は、後述するように、CMOSカメラ20を用いて周囲の明るさを検出させ、その検出結果に応じてヘッドライト25を点灯させる。
【0035】
このようにしてこの脚式移動ロボット装置1においては、自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指示及び働きかけに応じて自律的に行動し得るようになされている。
【0036】
特に、この脚式移動ロボット装置1は、内部状況及び外部状況、あるいはユーザからの指示及び働きかけに応じて、前記歩行移動、車輪移動、ハイブリッド移動を切り替えて行うことができる。例えば、ユーザにより、「こっちに早く来て」という命令には、車輪移動により迅速な移動を行う。また、階段を上る必要があるときには、歩行移動を行う。また、「踊って」という命令や、「回って」という命令に対しては、ハイブリッド移動を行う。
【0037】
次に、第1の実施の形態である、脚式移動ロボット装置1の各種移動について説明する。
【0038】
この脚式移動ロボット装置1は、脚部ユニット3A〜3Dのみを用いて歩行移動を行う。また脚部ユニット3A〜3Dの各3自由度によって各車輪が接地面に接地する位置を変化させることにより、各車輪の中心からの回転半径を異ならせ、あるいは異ならせずに各車輪4A〜4Dを用いて車輪移動を行う。さらに、この脚式移動ロボット装置1は、前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0039】
先ず、歩行移動について簡単に説明する。歩行移動は、従来より行われている4つの脚部ユニット3A〜3Dを用いた動作である。各脚部ユニット3A〜3Dの関節(連結)部分や各脚部ユニット3A〜3D及び胴体部ユニット2の各連結部分に配設された、前述した自由度数分のポテンショメータを用いた位置制御を行いながら、サーボモータを構成しているアクチュエータによって4脚部ユニット3A〜3Dを接地面に対して自在に動かすことによりなされる。
【0040】
ここでいう自在に動かすとは、前進歩行移動であれば、例えば左前脚部4Aを前に進め、その直後に対向する右後脚部4Dを前に進め、続いて右前脚部4Bを前に進め、その直後に対向する左脚部4Cを前に進めるような、モデルとする犬、猫等の動物の歩行移動に基づくように4つの脚部ユニットを動かすことである。この前進歩行移動のとき、前記車輪4A〜4Dは、各モータ5A〜5Dにより回転駆動されておらず、接地面に接触しても回転しないようにされている。
【0041】
また、4脚部ユニット3A〜3Dを接地面に対して自在に動かすことによる後進移動であれば、例えば左後脚部4Cを後に進め、その直後に対向する右前脚部4Bを後に進め、続いて右後脚部4Dを後に進め、その直後に対向する左前脚部4Aを後に進めることによる。このときも、前記車輪4A〜4Dは、各モータ5A〜5Dにより回転駆動されておらず、接地面に接触しても回転しないようにされている。
【0042】
また、前進歩行移動において、左側の前後脚部4A、4Cの移動距離よりも右側の前後脚部4B、4Dの移動距離を大きくすれば左側に曲がって前進することができる。このとき、左側の前後脚部4A、4Cの移動距離と右側の前後脚部4B、4Dの移動距離の差を大きくすれば左側へより速く方向転換をすることができる。右側に曲がって前進するときは右側の前後脚部4B、4Dの移動距離よりも左側の前後脚部4A、4Cの移動距離を大きくすればよい。後進歩行移動においても、連結部のサーボモータの回転を逆回転にし、同様に各脚部を正転のときとは逆の動きで動かせば後ろに進みながら左側に曲がったり、右側に曲がったりできる。
【0043】
次に、車輪移動について説明する。
先ず、車輪を用いての直線的な前進又は後進移動について説明する。4つの脚部ユニット3A〜3Dを図6及び図7に示すように真上から見て左右対称となるように接地面に向かってやや斜め方向に伸ばし、各車輪4A〜4Dの接地位置を、各車輪4A〜4Dの中心からの回転半径が等しくなるようにして直線的に前進又は後進移動する。この場合、モータ5A〜5Dの回転速度を全て等しくすれば、脚式移動ロボット装置1は、接地面上を図6及び図7に記す矢印のように直線的に移動する。前進、後進はモータ5A〜5Dの回転方向を逆転させることによる。4つの脚部ユニット3A〜3Dの脇の角度を広げたり狭めたりすると、ロボット装置の体高を変えて前進、後退移動ができる。また、タイヤの接地部が変化するので、モーターの回転速度が同じであっても、ロボットの移動速度を変化させることができる。
【0044】
次に、車輪を用いた左右への直線的な移動について説明する。4つの脚部ユニット3A〜3Dの上部10A〜10Dを図8及び図9に示すように真上から見て左右対称となるように接地面と平行に開き、下部8A〜8Dを内側に”くの字形”に折りたたみ、車輪4A〜4Dの向きを胴体部ユニット2の長手方向に対して直角になるようにして図中矢印で示すように左右方向に直線的に移動する。車輪4A〜4Dを前記向きにするには、各脚部ユニットと胴体部との連結部11A〜11Bの2自由度により、車輪4A〜4Dを胴体部ユニット2の長手方向に対して直角になるように上部10A〜10Dを接地面に平行に曲げ、さらに各脚部ユニットの上部と下部との連結部9A〜9Dの1自由度により下部8A〜8Dを折り曲げる。もちろん、連結部11A〜11Dと、連結部9A〜9Dは前記ポテンショメータからの位置データを基にアクチュエータが動かす。この場合も、モータ5A〜5Dの回転方向を逆転させることによる左、又は右への直線移動が可能となる。
【0045】
次に、車輪を用いたその場での旋回移動について説明する。前脚部ユニット3A、3Bを図10〜図12に示すように、胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”になるように折り曲げ、車輪4A、4Bが胴体部ユニット2の長手方向に対して各45度で閉じるようにする。また、後脚部ユニット3C、3Dを図10〜図12に示すように、胴体部ユニット2の長手方向(頭部側を前とした場合)に対して”逆ハの字形”になるように折り曲げ、車輪4C、4Dが胴体部ユニット2の長手方向に対して45度で開くようにする。もちろん、連結部11A〜11Dと、連結部9A〜9Dを前記ポテンショメータからの位置データを基にアクチュエータで動かすことによる。この場合、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを正回転、モータ5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを逆回転にすると右旋回となり、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3Aを逆回転、5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを正回転にすると左旋回となる。
【0046】
次に、車輪を用いた、ある場所を回転中心とした左回転移動について説明する。図13〜図15に示すように、左前脚部ユニット3Aの上部11A、人間でいうところの肘を胴体部ユニット2に、脇を締めるように付け、さらに下部8Aを折りたたんで、車輪4Aを接地させる。この車輪4Aを回転中心とする。この状態で、左後脚部ユニット3Cを車輪4Cを含めどこも接地面に接触させることなく持ち上げる。また、右側の前脚部ユニット3Bを胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”の片側になり、車輪の向きが車輪4Aの回転中心に対して接線方向になるように、また後脚部ユニット3Dを前述した”逆ハの字形”の片側になり、車輪の向きが車輪4Aの回転中心に対して接線方向になるように折り曲げる。この状態で、モータ5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを正回転にすると、左前脚部ユニット3Aを中心Cとした、図中矢印方向の点左回転移動をする。なお、この移動では、回転中心と回転するポイントを変更すれば、回転半径を変えることが可能である。
【0047】
次に、車輪を用いた、ある場所を回転中心とした右回転移動について説明する。図16〜図18に示すように、右前脚部ユニット3Bの上部11Bを胴体部ユニット2に、脇を締めるように付け、さらに下部8Bを折りたたんで、車輪4Bを接地する。この車輪4Bを回転中心とする。この状態で、右後脚部ユニット3Dを前述したように持ち上げる。また、左側の前脚部ユニット3Aを胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”の片側になり、車輪4Bの回転中心に対して車輪の向きが接線方向になるように、また後脚部ユニット3Cを前述した”逆ハの字形”の片側になり車輪4Bの回転中心に対して車輪の向きが接線方向になるように折り曲げる。この状態で、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3A、後ろ脚部ユニット3Cを正回転にすると、右前脚部ユニット3Bを中心Cとした、図中矢印方向の点右回転移動をする。
【0048】
次に、車輪を用いた左回転移動について説明する。図19及び図20に示すように、右側の前脚部ユニット3B、後脚部ユニット3Dを胴体部ユニット2からほぼ垂直に接地面に伸ばし、左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを胴体部ユニット2から斜めに接地面に向かってやや開いて接地させる。すると、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは、図4の(a)を準用して示すように略垂直に接地面に接地する。これに対して左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは図4の(b)を準用して示すように接地位置L2で接地する。これらのことからも分かる通り、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dよりも回転半径が短くなる。各モータ5A〜5Dは同じ回転数で各車輪4A〜4Dを回しているので、回転半径の長い右側の車輪4B及び車輪4Dが、回転半径の短い左側の車輪4A及び車輪4Cよりも接地面に対して速く移動することになる。またこのとき、各車輪の向きは旋回の回転中心に対して接線方向になるようにする。このようにすると、図19及び図20に示すように、脚式移動ロボット装置1は、図中の矢印で示すように左回転移動を行う。
【0049】
次に、車輪を用いた右回転移動について説明する。図21及び図22に示すように、左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを胴体部ユニット2からほぼ垂直に接地面に伸ばし、右側の前脚部ユニット3B、後脚部ユニット3Dを胴体部ユニット2から斜めに接地面に向かってやや開いて接地させる。すると、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは、図4の(a)を適用して示すように略垂直に接地面に接地する。これに対して右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは図4の(b)を準用して示すように接地位置L2で接地する。これらのことからも分かる通り、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cよりも回転半径が短くなる。各モータ5A〜5Dは同じ回転数で各車輪4A〜4Dを回しているので、回転半径の長い右側の車輪4A及び車輪4Cが、回転半径の短い左側の車輪BA及び車輪4Dよりも接地面に対して速く移動することになる。またこのとき、各車輪の向きは旋回の回転中心に対して接線方向になるようにする。このようにすると、図21及び図22に示すように、脚式移動ロボット装置1は、図中の矢印で示すように右回転移動を行う。
【0050】
これらの車輪を用いた左、右回転移動において、左側脚部及び右側脚部の接地位置を各連結部の自由度の範囲内で変更し、左側車輪4A及び4Cと、右側車輪4B及び4Dの接地面に対する位置の差が大きくなるように変更すれば、回転半径を変更しながら、左右に回転することができる。
【0051】
以上が、車輪移動についての説明であるが、車輪を用いての直線的な前進又は後進移動や、車輪を用いた左右への直線的な移動では、各脚部ユニット3A〜3Dを開脚しながら行うこともできる。開脚した場合、車輪4A〜4Dの接地位置によっては、車輪の回転半径が前記図6及び図7や、図8及び図9に示したときよりも短くなることがあるので、移動速度は遅くなる。
【0052】
また、車輪を用いたその場での旋回移動や、ある場所を回転中心とした左右回転移動や、左右回転移動は、特に車輪自体にステアリング機構を付けてはおらず、各脚部の自由度を用いたステアリング機構や、タイヤの接地位置を変化させることによるステアリング機構により、達成されている。
【0053】
次に、ハイブリッド移動について説明する。前述したように、このハイブリッド移動は、前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたものである。ここでは、図示を省略して説明する。
【0054】
先ず、フォワード加速移動について説明する。歩行移動により前に歩きながら、車輪を前に回転させれば、脚式移動ロボット装置1は接地面に対して加速して前進するいわゆるフォワード加速移動を行う。
【0055】
次に、バック加速移動について説明する。前記フォワード加速移動とは逆に、歩行移動により後ろに歩きながら、車輪を後ろに回転させれば、脚式移動ロボット装置1は接地面に対して加速して後進するいわゆるバック加速移動を行う。
【0056】
次に、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動について説明する。歩行移動により後ろに歩きながら、車輪を前に回転させる。このとき、前への車輪移動の速度が後ろに歩く速度よりも速いと脚部ユニット3A〜3Dは後ろに歩いているように動いているが実際には前に進んでいるという移動となる。
【0057】
次に、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動について説明する。歩行移動により前に歩きながら、車輪を後ろに回転させる。このとき、後ろへの車輪移動の速度が前に歩く速度よりも速いと脚部ユニット3A〜3Dは前に歩いているように動いているが実際には後ろに進んでいるという移動となる。
【0058】
次に、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないという動きについて説明する。歩行移動により前及び後ろに歩きながら車輪を歩く方向と逆に回転させ、その速度を合わせると、歩行移動は行っているように見えるが、実際には移動はしていない動きとなる。
【0059】
さらに、まっすぐ歩行しているときに、車輪を右側または左側だけ回転させると、左旋回、または右旋回ができる。旋回歩行をしているときに、同様に片側だけ車輪を動かせば、より急激な旋回が可能である。
【0060】
これらの歩行移動、車輪移動、さらにはハイブリッド移動を組み合わせ行うことにより、脚式移動ロボット装置1は、機動性を発揮して目的位置へ迅速に移動することができる。また、表現力を豊かに移動することができる。
【0061】
また、車輪移動において、前後への直進移動時や、左右への直進移動時には、脚部ユニット3A〜3Dにより、胴体部ユニット2の接地面からの高さを自由に変えることができる。これにより、さらに機動性が増す。
【0062】
また、車輪移動において、その場で左右に回転するときにも、脚部ユニット3A〜3Dにより、胴体部ユニット2の接地面からの高さを自由に変えることができる。
【0063】
また、歩行移動と車輪移動を使い分けることにより、例えば平坦地においては車輪移動により高速に移動し、段差部では歩行移動により段差を乗り越えることができるので、さらに機動性を高めることができる。
【0064】
また、前述したように、車輪移動や、ハイブリット移動においては、タイヤの接地位置を変えることにより、車輪の回転数を変えることなく、移動速度を変えることができ、各車輪の駆動コントロール部を簡易化できる。また、同様に左右のタイヤの接地位置を変えることにより、移動速度を変えることができ、左又は右旋回を可能とする。
【0065】
また、車輪移動においては、旋回するときに生じる内輪差を歩行機構を用い車輪を持ち上げることにより解消することができる。
【0066】
次に、図23〜図28を用いて脚式移動ロボット装置1のソフトウェア構成について説明する。脚式移動ロボット装置1におけるソフトウェア構成は、図23に示すようになる。この図23において、デバイス・ドライバ・レイヤ30は、この前記移動制御プログラムの最下位層に位置し、複数のデバイス・ドライバからなるデバイス・ドライバ・セット31から構成されている。この場合、各デバイス・ドライバは、CMOSカメラ20(図5)やタイマ等の通常のコンピュータで用いられるハードウェアに直接アクセスすることを許されたオブジェクトであり、対応するハードウェアからの割り込みを受けて処理を行う。
【0067】
また、ロボティック・サーバ・オブジェクト32は、デバイス・ドライバ・レイヤ30の上位に位置し、例えば上述の各種センサやアクチュエータ251〜25n等のハードウェアにアクセスするためのインターフェースを提供するソフトウェア群でなるバーチャル・ロボット33と、電源の切換えなどを管理するソフトウェア群でなるバワーマネージャ34と、他の種々のデバイス・ドライバを管理するソフトウェア群でなるデバイス・ドライバ・マネージャ35と、脚式移動ロボット装置1の機構を管理するソフトウェア群でなるデザインド・ロボット36とから構成されている。
【0068】
マネージャ・オブジェクト37は、オブジェクト・マネージャ38及びサービス・マネージャ39から構成されている。オブジェクト・マネージャ38は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32、ミドル・ウェア・レイヤ40、及びアプリケーション・レイヤ41に含まれる各ソフトウェア群の起動や終了を管理するソフトウェア群であり、サービス・マネージャ39は、メモリカード29(図5)に格納されたコネクションファイルに記述されている各オブジェクト間の接続情報に基づいて各オブジェクトの接続を管理するソフトウェア群である。
【0069】
ミドル・ウェア・レイヤ40は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32の上位層に位置し、画像処理や音声処理などのこのロボット装置1の基本的な機能を提供するソフトウェア群から構成されている。
【0070】
また、アプリケーション・レイヤ41は、ミドル・ウェア・レイヤ40の上位層に位置し、当該ミドル・ウェア・レイヤ40を構成する各ソフトウェア群によって処理された処理結果に基づいてロボット装置1の行動を決定するためのソフトウェア群から構成されている。
【0071】
なお、ミドル・ウェア・レイヤ40及びアプリケーション・レイヤ41の具体なソフトウェア構成をそれぞれ図24、図25に示す。
【0072】
ミドル・ウェア・レイヤ40は、図24に示すように、騒音検出用、温度検出用、明るさ検出用、音階認識用、距離検出用、姿勢検出用、タッチセンサ用、動き検出用及び色認識用の各信号処理モジュール50〜58並びに入力セマンティクスコンバータモジュール59などを有する認識系60と、出力セマンティクスコンバータモジュール68並びに姿勢管理用、トラッキング用、モーション再生用、歩行用、転倒復帰用、ライト点灯用及び音再生用の各信号処理モジュール61〜67などを有する出力系69とから構成されている。
【0073】
認識系60の各信号処理モジュール50〜58は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33によりDRAM111(図5)から読み出される各センサデータや画像データ及び音声データのうちの対応するデータを取り込み、当該データに基づいて所定の処理を施して、処理結果を入力セマンティクスコンバータモジュール59に与える。ここで、例えば、バーチャル・ロボット33は、所定の通信規約によって、信号の授受或いは変換をする部分として構成されている。
【0074】
入力セマンティクスコンバータモジュール59は、これら各信号処理モジュール50〜58から与えられる処理結果に基づいて、「うるさい」、「暑い」、「明るい」、「ボールを検出した」、「転倒を検出した」、「撫でられた」、「叩かれた」、「ドミソの音階が聞こえた」、「動く物体を検出した」又は「障害物を検出した」などの自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指令及び働きかけを認識し、認識結果をアプリケーション・レイヤ41(図24)に出力する。
【0075】
アプリケーション・レイヤ4lは、図25に示すように、行動モデルライブラリ70、行動切換モジュール71、学習モジュール72、感情モデル73及び本能モデル74の5つのモジュールから構成されている。
【0076】
行動モデルライブラリ70には、図26に示すように、「バッテリー残量が少なくなった場合」、「転倒復帰する」、「障害物を回避する場合」、「感情を表現する場合」、「ボールを検出した場合」などの予め選択されたいくつかの条件項目にそれぞれ対応させて、それぞれ独立した行動モデル701〜70nが設けられている。もちろん、「歩行移動する」、「車輪移動する」、「ハイブリッド移動する」という行動モデルも設けられることになる。
【0077】
そして、これら行動モデル701〜70n等は、、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときや、最後の認識結果が与えられてから一定時間が経過したときなどに、必要に応じて後述のように感情モデル73に保持されている対応する情動のパラメータ値や、本能モデル74に保持されている対応する欲求のパラメータ値を参照しながら続く行動をそれぞれ決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。
【0078】
なお、この実施の形態の場合、各行動モデル701〜70nは、次の行動を決定する手法として、図27に示すような1つのノード(状態)NODE0〜NODEnから他のどのノードNODE0〜NODEnに遷移するかを各ノードNODE0〜NODEnに間を接続するアークARC1〜ARCnに対してそれぞれ設定された遷移確率P1〜Pnに基づいて確率的に決定する有限確率オートマトンと呼ばれるアルゴリズムを用いる。
【0079】
具体的に、各行動モデル701〜70nは、それぞれ自己の行動モデル701〜70nを形成するノードNODE0〜NODEnにそれぞれ対応させて、これらノードNODE0〜NODEnごとに図28に示すような状態遷移表80を有している。
【0080】
この状態遷移表80では、そのノードNODE0〜NODEnにおいて遷移条件とする入力イベント(認識結果)が「入力イベント名」の列に優先順に列記され、その遷移条件についてのさらなる条件が「データ名」及び「データ範囲」の列における対応する行に記述されている。
【0081】
したがって、図28の状態遷移表80で表されるノードNODE100では、「ボールを検出(BALL)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果と共に与えられるそのボールの「大きさ(SIZE)」が「0から1000」の範囲であることや、「障害物を検出(OBSTACLE)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果と共に与えられるその障害物までの「距離(DISTANCE)」が「0から100」の範囲であることが他のノードに遷移するための条件となっている。
【0082】
また、このノードNODE100では、認識結果の入力がない場合においても、行動モデル701〜70nが周期的に参照する感情モデル73及び本能モデル74にそれぞれ保持された各情動及び各欲求のパラメータ値のうち、感情モデル73に保持された「喜び(joy)」、「驚き(surprise)」若しくは「悲しみ(SUDNESS)」のいずれかのパラメータ値が「50から100」の範囲であるときには他のノードに遷移することができるようになっている。
【0083】
また、状態遷移表80では、「他のノードヘの遷移確率」の欄における「遷移先ノード」の行にそのノードNODE0〜 NODEnから遷移できるノード名が列記されていると共に、「入力イベント名」、「データ値」及び「データの範囲」の列に記述された全ての条件が揃ったときに遷移できる他の各ノードNODE0〜NODEnへの遷移確率が「他のノードヘの遷移確率」の欄内の対応する箇所にそれぞれ記述され、そのノードNODE0〜NODEnに遷移する際に出力すべき行動が「他のノードヘの遷移確率」の欄における「出力行動」の行に記述されている。なお、「他のノードヘの遷移確率」の欄における各行の確率の和は100[%]となっている。
【0084】
したがって、図28の状態遷移表80で表されるノードNODE100では、例えば「ボールを検出(BALL)」し、そのボールの「SIZE(大きさ)」が「0から1000」の範囲であるという認識結果が与えられた場合には、「30[%]」の確率で「ノードNODE120(node 120)」に遷移でき、そのとき「ACTION1」の行動が出力されることとなる。
【0085】
各行動モデル701〜70nは、それぞれこのような状態遷移表80として記述されたノードNODE0〜 NODEnがいくつも繋がるようにして構成されており、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときなどに、対応するノードNODE0〜NODEnの状態遷移表を利用して確率的に次の行動を決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力するようになされている。
【0086】
図25に示す行動切換モジュール71は、行動モデルライブラリ70の各行動モデル701〜70nからそれぞれ出力される行動のうち、予め定められた優先順位の高い行動モデル701〜70n等から出力された行動を選択し、当該行動を実行すべき旨のコマンド(以下、これを行動コマンドという。)をミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68に送出する。なお、この実施の形態においては、図26において下側に表記された行動モデル701〜70nほど優先順位が高く設定されている。
【0087】
また、行動切換モジュール71は、行動完了後に出力セマンティクスコンバータモジュール68から与えられる行動完了情報に基づいて、その行動が完了したことを学習モジュール72、感情モデル73及び本能モデル74に通知する。
【0088】
一方、学習モジュール72は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果のうち、「叩かれた」や「撫でられた」など、使用者からの働きかけとして受けた教示の認識結果を入力する。
【0089】
そして、学習モジュール72は、この認識結果及び行動切換モジュール71からの通知に基づいて、「叩かれた(叱られた)」ときにはその行動の発現確率を低下させ、「撫でられた(誉められた)」ときにはその行動の発現確率を上昇させるように、行動モデルライブラリ70における対応する行動モデル701〜70nの対応する遷移確率を変更する。
【0090】
他方、感情モデル73は、「喜び(joy)」、「悲しみ(sadness)」、「怒り(anger)」、「驚き(surprise)」、「嫌悪(disgust)」及び「恐れ(fear)」の合計6つの情動について、各情動ごとにその情動の強さを表すパラメータを保持している。そして、感情モデル73は、これら各情動のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる「叩かれた」及び「撫でられた」などの特定の認識結果と、経過時間及び行動切換モジュール71からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0091】
具体的には、感情モデル73は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果と、そのときのロボット装置1の行動と、前回更新してからの経過時間などに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその情動の変動量を△E[t]、現在のその情動のパラメータ値をE[t]、その情動の感度を表す係数をkeとして、(1)式によって次の周期におけるその情動のパラメータ値E[t+1]を算出し、これを現在のその情動のパラメータ値E[t]と置き換えるようにしてその情動のパラメータ値を更新する。また、感情モデル73は、これと同様にして全ての情動のパラメータ値を更新する。
【0092】
【数1】
【0093】
なお、各認識結果や出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知が各情動のパラメータ値の変動量△E[t]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば「叩かれた」といった認識結果は「怒り」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与え、「撫でられた」といった認識結果は「喜び」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与えるようになっている。
【0094】
ここで、出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知とは、いわゆる行動のフィードバック情報(行動完了情報)であり、行動の出現結果の情報であり、感情モデル73は、このような情報によっても感情を変化させる。これは、例えば、「吠える」といった行動により怒りの感情レベルが下がるといったようなことである。なお、出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知は、上述した学習モジュール72にも入力されており、学習モジュール72は、その通知に基づいて行動モデル701〜70nの対応する遷移確率を変更する。
【0095】
なお、行動結果のフィードバックは、行動切換モジュレータ71の出力(感情が付加された行動)によりなされるものであってもよい。
【0096】
一方、本能モデル74は、「運動欲(exercise)」、「愛情欲(affection)」、「食欲(appetite)」及び「好奇心(curiosity)」の互いに独立した4つの欲求について、これら欲求ごとにその欲求の強さを表すパラメータを保持している。そして、本能モデル74は、これらの欲求のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果や、経過時間及び行動切換モジュール71からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0097】
具体的には、本能モデル74は、「運動欲」、「愛情欲」及び「好奇心」については、認識結果、経過時間及び出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知などに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその欲求の変動量をΔI[k]、現在のその欲求のパラメータ値をI[k]、その欲求の感度を表す係数kiとして、所定周期で(2)式を用いて次の周期におけるその欲求のパラメータ値I[k+1]を算出し、この演算結果を現在のその欲求のパラメータ値I[k]と置き換えるようにしてその欲求のパラメータ値を更新する。また、本能モデル74は、これと同様にして「食欲」を除く各欲求のパラメータ値を更新する。
【0098】
【数2】
【0099】
なお、認識結果及び出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知などが各欲求のパラメータ値の変動量△I[k]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知は、「疲れ」のパラメータ値の変動量△I[k]に大きな影響を与えるようになっている。
【0100】
なお、このロボット装置1においては、各情動及び各欲求(本能)のパラメータ値がそれぞれ0から100までの範囲で変動するように規制されており、また係数ke、kiの値も各情動及び各欲求ごとに個別に設定されている。
【0101】
一方、ミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68は、図24に示すように、上述のようにしてアプリケーション・レイヤ41の行動切換モジュール71から与えられる「前進」、「喜ぶ」、「鳴く」又は「トラッキング(ボールを追いかける)」といった抽象的な行動コマンドを出力系69の対応する信号処理モジュール61〜67に与える。
【0102】
そしてこれら信号処理モジュール61〜67は、行動コマンドが与えられると当該行動コマンドに基づいて、その行動を行うために対応するアクチュエータ251〜25n(図5)に与えるべきサーボ指令値や、スピーカ24(図5)から出力する音の音声データ及び又は「目」のLEDに与える駆動データを生成し、これらのデータをロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33及び信号処理回路14(図5)を順次介して対応するアクチュエータ251〜25n又はスピーカ24又はLEDに順次送出する。
【0103】
以上に説明した、ミドル・ウェア・レイヤ40と、アプリケーション・レイヤ41と、バーチャルロボット33により、本発明の実施の形態の脚式移動ロボット装置1が実行する移動制御プログラムが構築される。
【0104】
ミドル・ウェア・レイヤ40内の認識系60の騒音検出用、温度検出用、明るさ検出用、音階認識用、距離検出用、姿勢検出用、タッチセンサ用、動き検出用及び色認識用の各信号処理モジュール50〜58は、処理結果を入力セマンティクスコンバータモジュール59に与える。
【0105】
入力セマンティクスコンバータモジュール59は、これら各信号処理モジュール50〜58から与えられる処理結果に基づいて、「うるさい」、「暑い」、「明るい」、「ボールを検出した」、「転倒を検出した」、「撫でられた」、「叩かれた」、「ドミソの音階が聞こえた」、「動く物体を検出した」又は「障害物を検出した」などの自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指令及び働きかけを認識し、認識結果をアプリケーション・レイヤ41(図24)に出力する。
【0106】
行動モデルライブラリ70は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときに、必要に応じて感情モデル73に保持されている対応する情動のパラメータ値や、本能モデル74に保持されている対応する欲求のパラメータ値を参照しながら続く行動をそれぞれ決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。具体的に、各行動モデル701〜70nは、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときなどに、対応するノードNODE0〜NODEnの状態遷移表を利用して確率的に次の行動を決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。
【0107】
行動切換モジュール71は、行動モデルライブラリ70の各行動モデル701〜70nからそれぞれ出力される行動のうち、予め定められた優先順位の高い行動モデル701〜70nから出力された行動を選択し、当該行動を実行すべき旨のコマンド(行動コマンド又は動作・表現実行指定)をミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68に送出する。
【0108】
出力セマンティクスコンバータモジュール68は、行動制御システム100の動作・表現実行管理部103に相当する。アプリケーション・レイヤ41の行動切換モジュール71から与えられる「前進」、「喜ぶ」、「鳴く」又は「トラッキング(ボールを追いかける)」といった前記動作・表現実行指令を、前記制御指令に分解して出力系69の対応する信号処理モジュール61〜67に与える。
【0109】
これら信号処理モジュール61〜67は、前記動作・表現実行指令から分解された制御指令に基づいて、その行動を行うために対応するアクチュエータ251〜25n(図5)に与えるべきサーボ指令値や、スピーカ24(図5)から出力する音の音声データ及び又は「目」のLEDに与える駆動データを生成し、これらのデータをロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33及び信号処理回路14(図5)を順次介して対応するアクチュエータ251〜25n又はスピーカ24又はLEDに順次送出する。
【0110】
次に、本発明が適用できるいくつかの他の実施の形態について説明する。
【0111】
先ず、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、図29に示す脚式移動ロボット装置220である。バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータにより駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、それら4本の脚部に備えられた4つの車輪による車輪移動と、さらに歩行移動と車輪移動を組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0112】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して連結部221A、221B、221C、221Dで連結している。そして、前記4本の脚部ユニットは、連結部221A、221B、221C、221Dにより、胴体部の長手方向に前後する自由度を有している。また、各脚部ユニットはその上部と下部とを、連結部222A、222B、222C、222Dにより連結している。この連結部222A、222B、222C、222Dは、胴体部を接地面に対して上下することのできる自由度を有している。また、前記4本の脚部ユニットの接地面側先端には車輪224A、224B、224C、224Dが取りつけられている。これら、車輪224A、224B、224C、224Dは、プラスチック材でも、ゴム材等でもよく、特に材料は問わない。各車輪224A,224B,224C,224Dは、回転駆動手段である4つのモータの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。さらに、各脚部ユニットにおいて、連結部222A〜222Dと車輪224A〜224Dとの間には、図示した矢印L(左回り)、R(右回り)方向に、サーボモータであるアクチュエータによって回転される回転部223A〜223Dが備えられている。
【0113】
この脚式移動ロボット装置220は、連結部221A〜221Dをアクチュエータによって駆動することによって歩行移動を行うことができる。また、車輪224A〜224Dを各モータにより回転駆動することによって車輪移動を行うことができる。この車輪移動の最中、連結部222A〜222Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができる。また、回転部223A〜223Dを、各車輪224A〜224Dのステアリング機構として使うことができる。
【0114】
したがって、この脚式移動ロボット装置220によれば、歩行移動はもちろん、前後方向、左右方向への直線移動や、その場での旋回、左右回転移動も可能である。
【0115】
さらに、車輪移動に際しては、連結部222A〜222Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができるので、胴体部の高さに障害物を発見したときは胴体部を持ち上げて障害物を跨ぐことができる。また、連結部222A〜222Dをアクティブサスペンションとして働かせ、路面に凹凸があってもその高さの違いを吸収し、ロボット装置本体の姿勢を水平に保つことが可能となる。斜面を移動するときには、胴体部を水平面に対して平行に保って移動することができる。
【0116】
また、この脚式移動ロボット装置220にあっても、歩行移動と車輪移動とを組み合わせることにより、前述したような、フォワード加速移動、バック加速移動、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないというようなハイブリッド移動も可能である。
【0117】
次に、第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態は、図30に示す脚式移動ロボット装置225である。バッテリーから電力の供給を受けたモータによって駆動される、4本の脚部に備えられた4つの車輪による車輪移動を行うことができる。この車輪移動の際には、脚部ユニットの動きと車輪移動を組み合わせたユニークな動きをすることができる。
【0118】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、接地面に対して逆L字型に形成されている。これらの4本の脚部ユニットは、胴体部に対して連結部226A、226B、226C、226Dで連結している。そして、前記4本の脚部ユニットは、連結部226A、226B、226C、226Dにより、胴体部を接地面に対して上下に位置させることができる。また、前記4本の脚部ユニットの接地面側先端には車輪228A、228B、228C、228Dが取りつけられている。これら、車輪228A、228B、228C、228Dは、プラスチック材でも、ゴム材等でもよく、特に材料は問わない。各車輪228A,228B,228C,228Dは、回転駆動手段である4つのモータの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。さらに、各脚部ユニットにおいて、車輪228A〜228Dの上には、図示した矢印L(左回り)、R(右回り)方向に、サーボモータであるアクチュエータによって回転される回転部227A〜227Dが備えられている。
【0119】
この脚式移動ロボット装置225は、車輪228A〜228Dを各モータにより回転駆動することによって車輪移動を行うことができる。この車輪移動の最中、連結部226A〜226Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができる。また、回転部227A〜227Dを、各車輪228A〜228Dのステアリング機構として使うことができる。
【0120】
したがって、この脚式移動ロボット装置225によれば、前後方向、左右方向への直線移動や、その場での旋回、左右回転移動も可能である。
【0121】
さらに、車輪移動に際しては、連結部226A〜226Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができるので、胴体部の高さに障害物を発見したときは胴体部を持ち上げて障害物を跨ぐことができる。また、連結部226A〜226Dをアクティブサスペンションとして働かせ、路面に凹凸があってもその高さの違いを吸収し、ロボット装置本体の姿勢を水平に保つことが可能となる。斜面を移動するときには、胴体部を水平面に対して平行に保って移動することができる。
【0122】
次に、第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態は、図31の(a)に示す脚式移動ロボット装置230である。
【0123】
この脚式移動ロボット装置230は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータによって駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、前記4本の脚部の内の後ろ側の2本の脚部に備えられた二つの駆動輪と,前側の2本の脚部に備えられた二つの従動輪とによる車輪移動と、さらに歩行移動と車輪移動を組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0124】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して連結部231A、231B、231C、231Dで連結している。また、各脚部ユニットは、上部と下部とをアクチュエータによって駆動される連結部233A、233B、233C、233Dによって連結している。したがって、これらの連結部231A〜231D、233A〜233Dを用いることにより、脚式移動ロボット装置230は歩行移動を行うことができる。
【0125】
また、4本の脚部ユニットの接地面側先端には、車輪234A〜234Dが取りつけられている。この内、後ろ側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪234Cと234Dは、図示しないそれぞれ近傍に取りつけられたモータからの駆動力によって回転駆動される駆動輪となる。前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪234Aと234Bは従動輪となる。さらに前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットの連結部231A、231Bと、連結部233Aと233Bとの間には、前記従動輪234Aと234Bを図中の矢印L、R方向に回転させるためのステアリング機構である回転部232A、232Bが設けられている。
【0126】
したがって、4つの脚部ユニットが接地状態にあれば、後ろの左右の脚部ユニットの先端に取りつけられた駆動輪234C、234Dによる駆動にて、前進、後進の直線移動が可能となる。また、回転部232A、232Bのステアリング機構により前の左右脚部ユニットの下部が進む方向に向けられるので、脚式移動ロボット装置230は例えば左又は右方向への回転、旋回が可能となる。
【0127】
さらに、この脚式移動ロボット装置230は、尻尾の先にも従動輪となる車輪35が取りつけられているので、後ろの左右脚部ユニットにて立ち上がったときには、図31の(b)に示すように、車輪35が従動輪となったいわゆるお座り状態での車輪移動が可能となる。
【0128】
もちろん、この脚式移動ロボット装置230においても、歩行移動と車輪移動とを組み合わせることにより、前述したような、フォワード加速移動、バック加速移動、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないというようなハイブリッド移動も可能である。
【0129】
次に、第5の実施の形態について説明する。この第5の実施の形態は、図32に示す脚式移動ロボット装置240である。
【0130】
この脚式移動ロボット装置240は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータによって駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、前記4本の脚部の内の後ろ側の2本の脚部に備えられた二つの駆動輪と,前側の2本の脚部に備えられた二つの従動輪とによる車輪移動を行う。
【0131】
ただし、この脚式移動ロボット装置40は、前記二つの駆動輪244C、244Dと二つの従動輪244A、244Bとをこれまでに説明した実施の形態のように接地側先端に取りつけているのでなく、4つの脚部ユニットの上部と下部とを連結している連結部243A〜243Dの直ぐ下に取りつけている。
【0132】
以下、詳細に説明する。4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して2自由度を持つ連結部241A、241B、241C、241Dで連結している。また、各脚部ユニットは、上部と下部とを1自由度を持つ連結部243A、243B、243C、243Dによって連結している。したがって、これらの連結部241A〜241D、243A〜243Dを用いることにより、脚式移動ロボット装置240は自由度3を有する歩行移動を行うことができる。
【0133】
また、4本の脚部ユニットの上部と下部との連結部243A〜243Dの近傍には、車輪244A〜244Dが取りつけられている。この内、後ろ側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪244Cと244Dは、図示しないそれぞれ近傍に取りつけられたモータからの駆動力によって回転駆動される駆動輪となる。前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪244Aと244Bは従動輪となる。
【0134】
したがって、脚式移動ロボット装置240は、足先を用いた歩行移動と、脚部を曲げた状態での車輪移動ができる。特に、この脚式移動ロボット装置240は、足先に車輪を付けていないので、その足先にセンサや、ハンドリング機構を配置することができる。
【0135】
なお、これまで説明した第1の実施の形態から第5の実施の形態までの各脚式移動ロボット装置においては、駆動輪となる車輪は、近傍に取りつけられたモータによって他の車輪と同じ回転数にて回転駆動するだけでさまざまな移動が可能となっている。つまり、前述したコントロール部による各モータ毎の回転数の制御は行わなくてもよい。
【0136】
もちろん、各車輪の回転数を、例えばエンコーダや、タコジェネレータなどで測定しながら、各モータ毎に回転駆動力を制御することにより、より細やかな車輪移動のための制御を行うことも可能である。
【0137】
また、前記各実施の形態は、全て4足移動ロボット装置であったが、本発明は2足歩行ロボット装置に適用されてもよい。
【0138】
また、前記移動制御プログラムは、脚式移動ロボット装置1等の外部状況や、内部状況、あるいはユーザによるコマンドに応じて自律的に実行されるという内容の説明を行ったが、もちろん、オペレータによる遠隔操作にて実行されてもよい。
【0139】
また、自律的に実行するときには、接地面の状態を判断して一番適切な移動を行う。
【0140】
また、被写体に近づきながらカメラによる撮影が指示されたときには、胴体部ユニットや、頭部ユニットが縦、横にぶれたりすることがない、車輪移動を自律的に判断することも可能である。
【0141】
また、斜面を移動するときにも、前記サスペンション機構を適用して、胴体部を水平に保つように移動を制御することも可能である。
【0142】
また、前記各実施の形態では、自由度は3又は2として説明したが、連結部の多いロボット装置であれば、さらに自由度が多くなるので、本発明を適用することにより、さらに機動性を向上し、表現力を高めることができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明に係る脚式移動ロボット装置は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができるので、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる。
【0144】
本発明に係る脚式移動ロボット装置の移動制御方法は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができるので、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の外観斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の要部を露出した外観斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の要部の拡大分解図である。
【図4】車輪の形状を説明するための図である。
【図5】脚式移動ロボット装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】脚式移動ロボット装置の直線的な前進又は後進移動を説明するための斜視図である。
【図7】脚式移動ロボット装置の直線的な前進又は後進移動を説明するための平面図である。
【図8】脚式移動ロボット装置の左右への直線的移動を説明するための平面図である。
【図9】脚式移動ロボット装置の左右への直線的移動を説明するための斜視図である。
【図10】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための斜視図である。
【図11】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための側面図である。
【図12】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための平面図である。
【図13】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための斜視図である。
【図14】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための背面図である。
【図15】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための平面図である。
【図16】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための斜視図である。
【図17】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための背面図である。
【図18】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための平面図である。
【図19】脚式移動ロボット装置の左回転移動を説明するための斜視図である。
【図20】脚式移動ロボット装置の左回転移動を説明するための平面図である。
【図21】脚式移動ロボット装置の右回転移動を説明するための斜視図である。
【図22】脚式移動ロボット装置の右回転移動を説明するための平面図である。
【図23】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図24】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成におけるミドル・ウェア・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図25】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成におけるアプリケーション・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図26】同アプリケーション・レイヤの行動モデルライブラリの構成を示すブロック図である。
【図27】脚式移動ロボット装置の行動決定のための情報となる有限確率オートマトンを説明するために使用した図である。
【図28】有限確率オートマトンの各ノードに用意された状態遷移表を示す図である。
【図29】本発明の第2の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図30】本発明の第3の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図32】本発明の第5の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図33】従来の4足移動ロボット装置の斜視図である。
【図34】従来の車輪型移動装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 脚式移動ロボット装置、2 胴体部、3A,3B,3C,3D 脚部ユニット、4A,4B,4C,4D 車輪、5A,5B,5C,5D モータ、9A,9B,9C,9D 連結部(肘関節に相当)、11A,11B,11C,11D 連結部(肩、股関節に相当)
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも二つの脚部にて歩行する脚式移動ロボット装置及び脚式移動ロボット装置の移動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気的若しくは磁気的な作用を用いて人間の動作に似せた運動を行う機械装置のことを「ロボット」という。ロボットの語源は、スラブ語の”ROBOTA(奴隷機械)”に由来すると言われている。わが国では、ロボットが普及し始めたのは1960年代末からであるが、その多くは、工場における生産作業の自動化・無人化などを目的としたマニピュレータや搬送ロボットなどの産業用ロボット(industrial robot)であった。
【0003】
最近では、イヌやネコ、クマのように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模したペット型ロボット、あるいは、ヒトやサルなどの2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作を模した「人間形」若しくは「人間型」のロボット(humanoid robot)など、脚式移動ロボットの構造やその安定歩行制御に関する研究開発が進展し、実用化への期待も高まってきている。これら脚式移動ロボットは、クローラ式ロボットに比し不安定で姿勢制御や歩行制御が難しくなるが、階段の昇降や障害物の乗り越えなど、柔軟な歩行・走行動作を実現できるという点で優れている。
【0004】
アーム式ロボットのように、ある特定の場所に植設して用いるような据置きタイプのロボットは、部品の組立・選別作業など固定的・局所的な作業空間でのみ活動する。これに対し、移動式のロボットは、作業空間は非限定的であり、所定の経路上または無経路上を自在に移動して、所定の若しくは任意の人的作業を代行したり、ヒトやイヌあるいはその他の生命体に置き換わる種々のサービスを提供することができる。
【0005】
脚式移動ロボットの用途の1つとして、産業活動・生産活動等における各種の難作業の代行が挙げられる。例えば、原子力発電プラントや火力発電プラント、石油化学プラントにおけるメンテナンス作業、製造工場における部品の搬送・組立作業、高層ビルにおける清掃、火災現場その他における救助といったような危険作業・難作業の代行などである。
【0006】
また、脚式移動ロボットの他の用途として、上述の作業支援というよりも、生活密着型、すなわち人間との「共生」あるいは「エンターティンメント」という用途が挙げられる。この種のロボットは、ヒトあるいはイヌ(ペット)、クマなどの比較的知性の高い脚式移動動物の動作メカニズムや四肢を利用した豊かな感情表現を忠実に再現する。また、あらかじめ入力された動作パターンを単に忠実に実行するだけではなく、ユーザ(あるいは他のロボット)から受ける言葉や態度(「褒める」とか「叱る」、「叩く」など)に対して動的に対応した、生き生きとした応答表現を実現することも要求される。
【0007】
このような脚式移動ロボットとしては、図33に示すような脚機構を持つものが知られている。このロボット装置1は、4足歩行の脚式移動ロボットであり、胴体部ユニット2の前後左右にそれぞれ脚部ユニット3A,3B,3C,3Dが連結されると共に、胴体部ユニット2の前端部に頭部ユニット44が連結されている。
【0008】
また、移動する機構のみを考えた場合には、図34に示すような車輪による移動機構を持つ、自動車のようなメカニズムが考えられる。この自動車250における移動機構は、車体251に取付られた4つの車輪252A,252B,252C,252Dの回転駆動により車体を接地面上前後、又は左右カーブを切るように移動させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記図33に示した脚式移動ロボットの脚機構は、歩行をするためのものであり、方向転換や、直進/並進移動するときには、各脚の胴体部との連結部や、他の連結部のアクチュエータの動きを制御しなければならないため、素早い動作が困難であり、機動性という面で問題があった。
【0010】
また、前記図34に示したような車輪による移動機構のみをロボットに取りつけた場合には、段差を乗り越えるときの段差の高さによっては乗り越えができなかったり、また脚部を動かすことなく車輪だけを動かすので表現力が乏しくなることがある。
【0011】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる脚式移動ロボット装置の提供を目的とする。
【0012】
また、本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる脚式移動ロボット装置の制御方法の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る脚式移動ロボット装置は、前記課題を解決するために、胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段と、前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かし、また前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する制御手段とを備える。
【0014】
このような構成を採ることにより、脚式移動ロボット装置は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができる。
【0015】
本発明に係る脚式移動ロボット装置の移動制御方法は、前記課題を解決するために、胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段とを備えてなる脚式移動ロボット装置の移動制御方法であって、前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かす第1の工程と、前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する第2の工程とを備える。
【0016】
このような脚式移動ロボット装置の移動制御方法によれば、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。先ず、第1の実施の形態は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータにより駆動される4本の脚を備える図1に示す脚式移動ロボット装置1である。例えば、エンターテインメントロボット装置として使われる。
【0018】
この脚式移動ロボット装置1は、胴体部ユニット2の前後左右にそれぞれ脚部ユニット3A,3B,3C,3Dが連結されると共に、胴体部ユニット2の前端部に頭部ユニット44が連結されて構成されている。
【0019】
脚部ユニット3A,3B,3C,3Dは、それぞれ例えば3自由度を有する。脚部ユニット3Aを例にとると、図2に示すように、胴体部2側の上部10Aは胴体部2との連結部11Aにおいて胴体部2に対して前後方向に回転する。また胴体部2に対して開脚するようにも回転する。また、前記上部10Aに対する下部8Aは、上部10Aとの連結部9Aにて前後方向に回転する。したがって、脚部ユニット3Aは3自由度を有することになる。他の脚部ユニット3B,3C,3Dも同様であり、上部10B、10C、10Dは胴体部2との連結部11B、11C、11Dにおいて胴体部ユニット2に対して前後方向に回転する。また胴体部ユニット2に対して開脚するようにも回転する。また、前記上部10B、10C、10Dに対する下部8B、8C、8Dは、上部10B、10C、10Dとの連結部9B、9C、9Dにて前後方向に回転する。
【0020】
また、脚部ユニット3A,3B,3C,3Dの接地面側先端には、軸7A、7B,7C,7Dを中心に回転する車輪4A,4B,4C,4Dが取りつけられている。この各車輪は、プラスチック材、ゴム材など材質は問わない。各車輪4A,4B,4C,4Dは、回転駆動手段であるモータ5A,5B,5C,5Dの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。
【0021】
なお、各脚部ユニット3A〜3Dの前記接地面側先端にあって、前記各車輪4A,4B,4C,4Dの縦方向の例えば後ろには、接地面との接触によって脚部を接地面上に固定することができる踵部を設けてもよい。もちろん、この踵部を接地面に接触させるには、各脚部毎に備えられる3自由度を用いて脚部の接地面側先端の接地場所を車輪側ではなく踵部側にする必要がある。
【0022】
また、この脚式移動ロボット装置1は、モータ5A,5B,5C,5Dの回転数のコントロールが可能である。例えば各車輪4A,4B,4C,4Dの向きが同一の状態で回転数を等しくすればロボット装置1はまっすぐ進むことになる。各モータ5A,5B,5C,5D毎の回転数を変化させれば曲がることも可能である。もちろん、モータ5A,5B,5C,5Dへのバッテリーからの電力供給はコントロール部によって制御され、回転方向の正逆方向への切り替えも可能とされる。
【0023】
図3は、脚部ユニット3Aの上部10Aに連結部9Aを介して連結されている下部8Aの拡大図、及び車輪4Aの取付部の拡大分解図である。下部8Aの先に車輪取付部6Aが設けられ、そこに設けられたモータ取付部にモータ5Aを固定する。また、車輪取付部6Aの先端に設けられた軸受け穴に、車輪4Aに通した車軸7Aを通し、車輪がモータによって回転するようにしている。
【0024】
例えば、車輪4Aは、図4(a)、(b)、(c)に示すように、接地面に接地する位置L1、L2、L3によって車輪の中心からの回転半径が変化する形状をしてなる。モータ5Aが同速にて回転駆動しているのであれば、前記接地位置L1よりもL2での回転半径は小さいので、接地位置L2での車輪の回転による脚部ユニット3Aのみの移動速度は、接地位置L1での移動速度よりも遅くなる。また、接地位置L3での車輪の回転による脚部ユニット3Aのみの移動速度は、接地位置L2よりも回転半径が大きいので、接地位置L2での移動速度よりも速くなる。車輪4B〜4Dについても同様の形状をしており、同様の作用がある。各車輪と、各脚部を用いての移動制御については詳細を後述する。
【0025】
胴体部ユニット2には、図5に示すように、CPU110、DRAM(Dynamic Random Access Memory)111、フラッシュROM(Read 0nly Memory)112、PC(Personal Computer)カードインターフェース回路113及び信号処理回路114が内部バス115を介して相互に接続されることにより形成されたコントロール部116と、このロボット装置1の動力源としてのバッテリー117とが収納されている。もちろん、このバッテリー117は前記各モータ5A,5B,5C,5Dの動力源となっている。
【0026】
また、胴体部ユニット2には、脚式移動ロボット装置1の向きや動きの加速度を検出するための角速度センサ118及び加速度センサ119なども収納されている。
【0027】
また、頭部ユニット44には、外部の状況を撮像するとともに、周囲の明るさを検出するためのCMOSカメラ20と、前後に倒すといった使用者からの物理的な働きかけを検出するためのタッチセンサ21と、前方に位置する物体までの距離を測定するための距離センサと、外部音を集音するためのマイクロホンと、各種音声を出力するためのスピーカと、頭部ユニット44内に格納可能とされたヘッドライト25と、ロボット装置1の「目」に相当するLED(Light Emitting Diode)(図示せず)などがそれぞれ所定位置に配置されている。なお、ロボット装置1においては、タッチセンサ21以外にも、胴体部ユニット2及び頭部ユニット44の所定位置に複数のタッチセンサが配置されている。例えば頭部に付いているタッチセンサを、ユーザが撫でたときには、頭部センサを撫でられたという内部状況が評価される。
【0028】
さらに、各脚部ユニット3A〜3Dの関節部(連結部)分や各脚部ユニット3A〜3D及び胴体部ユニット2の各連結部分、並びに頭部ユニット44及び胴体部ユニット2の連結部分などにはそれぞれ前述した自由度数分のアクチュエータ及びポテンショメータが配設されている。例えば、アクチュエータ261〜26nはサーボモータを構成として有している。サーボモータの駆動により、脚部ユニット3A〜3Dが制御されて、目標の姿勢或いは動作に遷移する。もちろん、歩行動作もサーボモータの駆動により制御された脚部ユニット3A〜3Dの接地面に対する自在な動きにより成される。特に、このロボット装置1では、脚部ユニット3A〜3Dの各アクチュエータによって、各脚部ユニット毎に3自由度の範囲内で各脚部ユニットを動かして、各車輪4A〜4Dの接地位置を例えば前記図4に示したように変えることができる。
【0029】
そして、これら角速度センサ118、加速度センサ119、タッチセンサ21、距離センサ22、マイクロホン23、スピーカ24、及び各ポテンショメータ271〜27nなどの各種センサ並びにヘッドライト25、LED及び各アクチュエータ261 〜26nは、それぞれ対応するハブ281〜28nを介してコントロール部16の信号処理回路114と接続され、CMOSカメラ20及びバッテリー117は、それぞれ信号処理回路114と直接接続されている。
【0030】
信号処理回路1l4は、上述の各センサから供給されるセンサデータや画像データ及び音声データを順次取り込み、これらをそれぞれ内部バス115を介してDRAM111内の所定位置に順次格納する。また信号処理回路114は、これと共にバッテリー117から供給されるバッテリー残量を表すバッテリー残量データを順次取り込み、これをDRAM111内の所定位置に格納する。
【0031】
このようにしてDRAM111に格納された各センサデータ、画像データ、音声データ及びバッテリー残量データは、この後CPU110がこの脚式移動ロボット装置1の動作制御を行う際に利用される。
【0032】
実際上CPU110は、脚式移動ロボット装置1の電源が投入された初期時、胴体部ユニット2の図示しないメモリカードスロットに装填されたメモリカード29又はフラッシュROM112に格納された、行動制御プログラムや、本発明の脚式移動ロボット装置の移動制御方法の具体例である移動制御プログラムをメモリカードインターフェース回路113を介して又は直接読み出し、これをDRAM111に格納する。これらの制御プログラムをCPU110がDRAM111を作業領域として実行する。すると、脚式移動ロボット装置は、接地面の状態や障害物などの周囲の外部環境や、ユーザによるコマンド、或いは内部環境に応じて、自律的に行動を選択し、その選択した行動の動作や表現の意味に基づいた動作や表現の実行命令を生成し、例えば頭部ユニットや、脚部ユニットのモジュールの動きを制御する。または外部のPCなどからの有線、または無線でこのCPU110に指令をあたえて同様に頭部、脚部などの制御を行う。
また、CPU110は、信号処理回路114よりDRAM111に順次格納される各センサデータ、画像データ、音声データ及びバッテリー残量データに基づいて自己及び周囲の状況や、使用者からの指示及び働きかけの有無などを判断する。
【0033】
したがって、脚式移動ロボット装置1は、CPU110により前記行動制御プログラムや、移動制御プログラムを実行することにより、頭部ユニット44を上下左右に振らせたり、脚部ユニットによる歩行移動、車輪による車輪移動、及び歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動を行うことができる。特に、歩行移動、車輪移動、ハイブリッド移動は、連結部の必要なアクチュエータ261〜26n、各モータ5A〜5Bを駆動させ、各脚部ユニット3A〜3D、各車輪4A〜4Dを駆動させることによって行われる。
【0034】
また、この際CPU110は、必要に応じて音声データを生成し、これを信号処理回路114を介して音声信号としてスピーカ24に与えることにより当該音声信号に基づく音声を外部に出力させたり、上述のLEDを点灯、消灯又は点滅させる。また、CPU110は、後述するように、CMOSカメラ20を用いて周囲の明るさを検出させ、その検出結果に応じてヘッドライト25を点灯させる。
【0035】
このようにしてこの脚式移動ロボット装置1においては、自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指示及び働きかけに応じて自律的に行動し得るようになされている。
【0036】
特に、この脚式移動ロボット装置1は、内部状況及び外部状況、あるいはユーザからの指示及び働きかけに応じて、前記歩行移動、車輪移動、ハイブリッド移動を切り替えて行うことができる。例えば、ユーザにより、「こっちに早く来て」という命令には、車輪移動により迅速な移動を行う。また、階段を上る必要があるときには、歩行移動を行う。また、「踊って」という命令や、「回って」という命令に対しては、ハイブリッド移動を行う。
【0037】
次に、第1の実施の形態である、脚式移動ロボット装置1の各種移動について説明する。
【0038】
この脚式移動ロボット装置1は、脚部ユニット3A〜3Dのみを用いて歩行移動を行う。また脚部ユニット3A〜3Dの各3自由度によって各車輪が接地面に接地する位置を変化させることにより、各車輪の中心からの回転半径を異ならせ、あるいは異ならせずに各車輪4A〜4Dを用いて車輪移動を行う。さらに、この脚式移動ロボット装置1は、前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0039】
先ず、歩行移動について簡単に説明する。歩行移動は、従来より行われている4つの脚部ユニット3A〜3Dを用いた動作である。各脚部ユニット3A〜3Dの関節(連結)部分や各脚部ユニット3A〜3D及び胴体部ユニット2の各連結部分に配設された、前述した自由度数分のポテンショメータを用いた位置制御を行いながら、サーボモータを構成しているアクチュエータによって4脚部ユニット3A〜3Dを接地面に対して自在に動かすことによりなされる。
【0040】
ここでいう自在に動かすとは、前進歩行移動であれば、例えば左前脚部4Aを前に進め、その直後に対向する右後脚部4Dを前に進め、続いて右前脚部4Bを前に進め、その直後に対向する左脚部4Cを前に進めるような、モデルとする犬、猫等の動物の歩行移動に基づくように4つの脚部ユニットを動かすことである。この前進歩行移動のとき、前記車輪4A〜4Dは、各モータ5A〜5Dにより回転駆動されておらず、接地面に接触しても回転しないようにされている。
【0041】
また、4脚部ユニット3A〜3Dを接地面に対して自在に動かすことによる後進移動であれば、例えば左後脚部4Cを後に進め、その直後に対向する右前脚部4Bを後に進め、続いて右後脚部4Dを後に進め、その直後に対向する左前脚部4Aを後に進めることによる。このときも、前記車輪4A〜4Dは、各モータ5A〜5Dにより回転駆動されておらず、接地面に接触しても回転しないようにされている。
【0042】
また、前進歩行移動において、左側の前後脚部4A、4Cの移動距離よりも右側の前後脚部4B、4Dの移動距離を大きくすれば左側に曲がって前進することができる。このとき、左側の前後脚部4A、4Cの移動距離と右側の前後脚部4B、4Dの移動距離の差を大きくすれば左側へより速く方向転換をすることができる。右側に曲がって前進するときは右側の前後脚部4B、4Dの移動距離よりも左側の前後脚部4A、4Cの移動距離を大きくすればよい。後進歩行移動においても、連結部のサーボモータの回転を逆回転にし、同様に各脚部を正転のときとは逆の動きで動かせば後ろに進みながら左側に曲がったり、右側に曲がったりできる。
【0043】
次に、車輪移動について説明する。
先ず、車輪を用いての直線的な前進又は後進移動について説明する。4つの脚部ユニット3A〜3Dを図6及び図7に示すように真上から見て左右対称となるように接地面に向かってやや斜め方向に伸ばし、各車輪4A〜4Dの接地位置を、各車輪4A〜4Dの中心からの回転半径が等しくなるようにして直線的に前進又は後進移動する。この場合、モータ5A〜5Dの回転速度を全て等しくすれば、脚式移動ロボット装置1は、接地面上を図6及び図7に記す矢印のように直線的に移動する。前進、後進はモータ5A〜5Dの回転方向を逆転させることによる。4つの脚部ユニット3A〜3Dの脇の角度を広げたり狭めたりすると、ロボット装置の体高を変えて前進、後退移動ができる。また、タイヤの接地部が変化するので、モーターの回転速度が同じであっても、ロボットの移動速度を変化させることができる。
【0044】
次に、車輪を用いた左右への直線的な移動について説明する。4つの脚部ユニット3A〜3Dの上部10A〜10Dを図8及び図9に示すように真上から見て左右対称となるように接地面と平行に開き、下部8A〜8Dを内側に”くの字形”に折りたたみ、車輪4A〜4Dの向きを胴体部ユニット2の長手方向に対して直角になるようにして図中矢印で示すように左右方向に直線的に移動する。車輪4A〜4Dを前記向きにするには、各脚部ユニットと胴体部との連結部11A〜11Bの2自由度により、車輪4A〜4Dを胴体部ユニット2の長手方向に対して直角になるように上部10A〜10Dを接地面に平行に曲げ、さらに各脚部ユニットの上部と下部との連結部9A〜9Dの1自由度により下部8A〜8Dを折り曲げる。もちろん、連結部11A〜11Dと、連結部9A〜9Dは前記ポテンショメータからの位置データを基にアクチュエータが動かす。この場合も、モータ5A〜5Dの回転方向を逆転させることによる左、又は右への直線移動が可能となる。
【0045】
次に、車輪を用いたその場での旋回移動について説明する。前脚部ユニット3A、3Bを図10〜図12に示すように、胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”になるように折り曲げ、車輪4A、4Bが胴体部ユニット2の長手方向に対して各45度で閉じるようにする。また、後脚部ユニット3C、3Dを図10〜図12に示すように、胴体部ユニット2の長手方向(頭部側を前とした場合)に対して”逆ハの字形”になるように折り曲げ、車輪4C、4Dが胴体部ユニット2の長手方向に対して45度で開くようにする。もちろん、連結部11A〜11Dと、連結部9A〜9Dを前記ポテンショメータからの位置データを基にアクチュエータで動かすことによる。この場合、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを正回転、モータ5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを逆回転にすると右旋回となり、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3Aを逆回転、5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを正回転にすると左旋回となる。
【0046】
次に、車輪を用いた、ある場所を回転中心とした左回転移動について説明する。図13〜図15に示すように、左前脚部ユニット3Aの上部11A、人間でいうところの肘を胴体部ユニット2に、脇を締めるように付け、さらに下部8Aを折りたたんで、車輪4Aを接地させる。この車輪4Aを回転中心とする。この状態で、左後脚部ユニット3Cを車輪4Cを含めどこも接地面に接触させることなく持ち上げる。また、右側の前脚部ユニット3Bを胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”の片側になり、車輪の向きが車輪4Aの回転中心に対して接線方向になるように、また後脚部ユニット3Dを前述した”逆ハの字形”の片側になり、車輪の向きが車輪4Aの回転中心に対して接線方向になるように折り曲げる。この状態で、モータ5B及び5Dにより右側の前脚部ユニット3B、後ろ脚部ユニット3Dを正回転にすると、左前脚部ユニット3Aを中心Cとした、図中矢印方向の点左回転移動をする。なお、この移動では、回転中心と回転するポイントを変更すれば、回転半径を変えることが可能である。
【0047】
次に、車輪を用いた、ある場所を回転中心とした右回転移動について説明する。図16〜図18に示すように、右前脚部ユニット3Bの上部11Bを胴体部ユニット2に、脇を締めるように付け、さらに下部8Bを折りたたんで、車輪4Bを接地する。この車輪4Bを回転中心とする。この状態で、右後脚部ユニット3Dを前述したように持ち上げる。また、左側の前脚部ユニット3Aを胴体部ユニット2の長手方向(頭部ユニット44側を前とした場合)に対して”ハの字形”の片側になり、車輪4Bの回転中心に対して車輪の向きが接線方向になるように、また後脚部ユニット3Cを前述した”逆ハの字形”の片側になり車輪4Bの回転中心に対して車輪の向きが接線方向になるように折り曲げる。この状態で、モータ5A及び5Cにより左側の前脚部ユニット3A、後ろ脚部ユニット3Cを正回転にすると、右前脚部ユニット3Bを中心Cとした、図中矢印方向の点右回転移動をする。
【0048】
次に、車輪を用いた左回転移動について説明する。図19及び図20に示すように、右側の前脚部ユニット3B、後脚部ユニット3Dを胴体部ユニット2からほぼ垂直に接地面に伸ばし、左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを胴体部ユニット2から斜めに接地面に向かってやや開いて接地させる。すると、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは、図4の(a)を準用して示すように略垂直に接地面に接地する。これに対して左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは図4の(b)を準用して示すように接地位置L2で接地する。これらのことからも分かる通り、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dよりも回転半径が短くなる。各モータ5A〜5Dは同じ回転数で各車輪4A〜4Dを回しているので、回転半径の長い右側の車輪4B及び車輪4Dが、回転半径の短い左側の車輪4A及び車輪4Cよりも接地面に対して速く移動することになる。またこのとき、各車輪の向きは旋回の回転中心に対して接線方向になるようにする。このようにすると、図19及び図20に示すように、脚式移動ロボット装置1は、図中の矢印で示すように左回転移動を行う。
【0049】
次に、車輪を用いた右回転移動について説明する。図21及び図22に示すように、左側の前脚部ユニット3A、後脚部ユニット3Cを胴体部ユニット2からほぼ垂直に接地面に伸ばし、右側の前脚部ユニット3B、後脚部ユニット3Dを胴体部ユニット2から斜めに接地面に向かってやや開いて接地させる。すると、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cは、図4の(a)を適用して示すように略垂直に接地面に接地する。これに対して右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは図4の(b)を準用して示すように接地位置L2で接地する。これらのことからも分かる通り、右側の前脚部ユニット3B及び後脚部ユニット3Dの車輪4B及び車輪4Dは、左側の前脚部ユニット3A及び後脚部ユニット3Cの車輪4A及び車輪4Cよりも回転半径が短くなる。各モータ5A〜5Dは同じ回転数で各車輪4A〜4Dを回しているので、回転半径の長い右側の車輪4A及び車輪4Cが、回転半径の短い左側の車輪BA及び車輪4Dよりも接地面に対して速く移動することになる。またこのとき、各車輪の向きは旋回の回転中心に対して接線方向になるようにする。このようにすると、図21及び図22に示すように、脚式移動ロボット装置1は、図中の矢印で示すように右回転移動を行う。
【0050】
これらの車輪を用いた左、右回転移動において、左側脚部及び右側脚部の接地位置を各連結部の自由度の範囲内で変更し、左側車輪4A及び4Cと、右側車輪4B及び4Dの接地面に対する位置の差が大きくなるように変更すれば、回転半径を変更しながら、左右に回転することができる。
【0051】
以上が、車輪移動についての説明であるが、車輪を用いての直線的な前進又は後進移動や、車輪を用いた左右への直線的な移動では、各脚部ユニット3A〜3Dを開脚しながら行うこともできる。開脚した場合、車輪4A〜4Dの接地位置によっては、車輪の回転半径が前記図6及び図7や、図8及び図9に示したときよりも短くなることがあるので、移動速度は遅くなる。
【0052】
また、車輪を用いたその場での旋回移動や、ある場所を回転中心とした左右回転移動や、左右回転移動は、特に車輪自体にステアリング機構を付けてはおらず、各脚部の自由度を用いたステアリング機構や、タイヤの接地位置を変化させることによるステアリング機構により、達成されている。
【0053】
次に、ハイブリッド移動について説明する。前述したように、このハイブリッド移動は、前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたものである。ここでは、図示を省略して説明する。
【0054】
先ず、フォワード加速移動について説明する。歩行移動により前に歩きながら、車輪を前に回転させれば、脚式移動ロボット装置1は接地面に対して加速して前進するいわゆるフォワード加速移動を行う。
【0055】
次に、バック加速移動について説明する。前記フォワード加速移動とは逆に、歩行移動により後ろに歩きながら、車輪を後ろに回転させれば、脚式移動ロボット装置1は接地面に対して加速して後進するいわゆるバック加速移動を行う。
【0056】
次に、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動について説明する。歩行移動により後ろに歩きながら、車輪を前に回転させる。このとき、前への車輪移動の速度が後ろに歩く速度よりも速いと脚部ユニット3A〜3Dは後ろに歩いているように動いているが実際には前に進んでいるという移動となる。
【0057】
次に、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動について説明する。歩行移動により前に歩きながら、車輪を後ろに回転させる。このとき、後ろへの車輪移動の速度が前に歩く速度よりも速いと脚部ユニット3A〜3Dは前に歩いているように動いているが実際には後ろに進んでいるという移動となる。
【0058】
次に、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないという動きについて説明する。歩行移動により前及び後ろに歩きながら車輪を歩く方向と逆に回転させ、その速度を合わせると、歩行移動は行っているように見えるが、実際には移動はしていない動きとなる。
【0059】
さらに、まっすぐ歩行しているときに、車輪を右側または左側だけ回転させると、左旋回、または右旋回ができる。旋回歩行をしているときに、同様に片側だけ車輪を動かせば、より急激な旋回が可能である。
【0060】
これらの歩行移動、車輪移動、さらにはハイブリッド移動を組み合わせ行うことにより、脚式移動ロボット装置1は、機動性を発揮して目的位置へ迅速に移動することができる。また、表現力を豊かに移動することができる。
【0061】
また、車輪移動において、前後への直進移動時や、左右への直進移動時には、脚部ユニット3A〜3Dにより、胴体部ユニット2の接地面からの高さを自由に変えることができる。これにより、さらに機動性が増す。
【0062】
また、車輪移動において、その場で左右に回転するときにも、脚部ユニット3A〜3Dにより、胴体部ユニット2の接地面からの高さを自由に変えることができる。
【0063】
また、歩行移動と車輪移動を使い分けることにより、例えば平坦地においては車輪移動により高速に移動し、段差部では歩行移動により段差を乗り越えることができるので、さらに機動性を高めることができる。
【0064】
また、前述したように、車輪移動や、ハイブリット移動においては、タイヤの接地位置を変えることにより、車輪の回転数を変えることなく、移動速度を変えることができ、各車輪の駆動コントロール部を簡易化できる。また、同様に左右のタイヤの接地位置を変えることにより、移動速度を変えることができ、左又は右旋回を可能とする。
【0065】
また、車輪移動においては、旋回するときに生じる内輪差を歩行機構を用い車輪を持ち上げることにより解消することができる。
【0066】
次に、図23〜図28を用いて脚式移動ロボット装置1のソフトウェア構成について説明する。脚式移動ロボット装置1におけるソフトウェア構成は、図23に示すようになる。この図23において、デバイス・ドライバ・レイヤ30は、この前記移動制御プログラムの最下位層に位置し、複数のデバイス・ドライバからなるデバイス・ドライバ・セット31から構成されている。この場合、各デバイス・ドライバは、CMOSカメラ20(図5)やタイマ等の通常のコンピュータで用いられるハードウェアに直接アクセスすることを許されたオブジェクトであり、対応するハードウェアからの割り込みを受けて処理を行う。
【0067】
また、ロボティック・サーバ・オブジェクト32は、デバイス・ドライバ・レイヤ30の上位に位置し、例えば上述の各種センサやアクチュエータ251〜25n等のハードウェアにアクセスするためのインターフェースを提供するソフトウェア群でなるバーチャル・ロボット33と、電源の切換えなどを管理するソフトウェア群でなるバワーマネージャ34と、他の種々のデバイス・ドライバを管理するソフトウェア群でなるデバイス・ドライバ・マネージャ35と、脚式移動ロボット装置1の機構を管理するソフトウェア群でなるデザインド・ロボット36とから構成されている。
【0068】
マネージャ・オブジェクト37は、オブジェクト・マネージャ38及びサービス・マネージャ39から構成されている。オブジェクト・マネージャ38は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32、ミドル・ウェア・レイヤ40、及びアプリケーション・レイヤ41に含まれる各ソフトウェア群の起動や終了を管理するソフトウェア群であり、サービス・マネージャ39は、メモリカード29(図5)に格納されたコネクションファイルに記述されている各オブジェクト間の接続情報に基づいて各オブジェクトの接続を管理するソフトウェア群である。
【0069】
ミドル・ウェア・レイヤ40は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32の上位層に位置し、画像処理や音声処理などのこのロボット装置1の基本的な機能を提供するソフトウェア群から構成されている。
【0070】
また、アプリケーション・レイヤ41は、ミドル・ウェア・レイヤ40の上位層に位置し、当該ミドル・ウェア・レイヤ40を構成する各ソフトウェア群によって処理された処理結果に基づいてロボット装置1の行動を決定するためのソフトウェア群から構成されている。
【0071】
なお、ミドル・ウェア・レイヤ40及びアプリケーション・レイヤ41の具体なソフトウェア構成をそれぞれ図24、図25に示す。
【0072】
ミドル・ウェア・レイヤ40は、図24に示すように、騒音検出用、温度検出用、明るさ検出用、音階認識用、距離検出用、姿勢検出用、タッチセンサ用、動き検出用及び色認識用の各信号処理モジュール50〜58並びに入力セマンティクスコンバータモジュール59などを有する認識系60と、出力セマンティクスコンバータモジュール68並びに姿勢管理用、トラッキング用、モーション再生用、歩行用、転倒復帰用、ライト点灯用及び音再生用の各信号処理モジュール61〜67などを有する出力系69とから構成されている。
【0073】
認識系60の各信号処理モジュール50〜58は、ロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33によりDRAM111(図5)から読み出される各センサデータや画像データ及び音声データのうちの対応するデータを取り込み、当該データに基づいて所定の処理を施して、処理結果を入力セマンティクスコンバータモジュール59に与える。ここで、例えば、バーチャル・ロボット33は、所定の通信規約によって、信号の授受或いは変換をする部分として構成されている。
【0074】
入力セマンティクスコンバータモジュール59は、これら各信号処理モジュール50〜58から与えられる処理結果に基づいて、「うるさい」、「暑い」、「明るい」、「ボールを検出した」、「転倒を検出した」、「撫でられた」、「叩かれた」、「ドミソの音階が聞こえた」、「動く物体を検出した」又は「障害物を検出した」などの自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指令及び働きかけを認識し、認識結果をアプリケーション・レイヤ41(図24)に出力する。
【0075】
アプリケーション・レイヤ4lは、図25に示すように、行動モデルライブラリ70、行動切換モジュール71、学習モジュール72、感情モデル73及び本能モデル74の5つのモジュールから構成されている。
【0076】
行動モデルライブラリ70には、図26に示すように、「バッテリー残量が少なくなった場合」、「転倒復帰する」、「障害物を回避する場合」、「感情を表現する場合」、「ボールを検出した場合」などの予め選択されたいくつかの条件項目にそれぞれ対応させて、それぞれ独立した行動モデル701〜70nが設けられている。もちろん、「歩行移動する」、「車輪移動する」、「ハイブリッド移動する」という行動モデルも設けられることになる。
【0077】
そして、これら行動モデル701〜70n等は、、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときや、最後の認識結果が与えられてから一定時間が経過したときなどに、必要に応じて後述のように感情モデル73に保持されている対応する情動のパラメータ値や、本能モデル74に保持されている対応する欲求のパラメータ値を参照しながら続く行動をそれぞれ決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。
【0078】
なお、この実施の形態の場合、各行動モデル701〜70nは、次の行動を決定する手法として、図27に示すような1つのノード(状態)NODE0〜NODEnから他のどのノードNODE0〜NODEnに遷移するかを各ノードNODE0〜NODEnに間を接続するアークARC1〜ARCnに対してそれぞれ設定された遷移確率P1〜Pnに基づいて確率的に決定する有限確率オートマトンと呼ばれるアルゴリズムを用いる。
【0079】
具体的に、各行動モデル701〜70nは、それぞれ自己の行動モデル701〜70nを形成するノードNODE0〜NODEnにそれぞれ対応させて、これらノードNODE0〜NODEnごとに図28に示すような状態遷移表80を有している。
【0080】
この状態遷移表80では、そのノードNODE0〜NODEnにおいて遷移条件とする入力イベント(認識結果)が「入力イベント名」の列に優先順に列記され、その遷移条件についてのさらなる条件が「データ名」及び「データ範囲」の列における対応する行に記述されている。
【0081】
したがって、図28の状態遷移表80で表されるノードNODE100では、「ボールを検出(BALL)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果と共に与えられるそのボールの「大きさ(SIZE)」が「0から1000」の範囲であることや、「障害物を検出(OBSTACLE)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果と共に与えられるその障害物までの「距離(DISTANCE)」が「0から100」の範囲であることが他のノードに遷移するための条件となっている。
【0082】
また、このノードNODE100では、認識結果の入力がない場合においても、行動モデル701〜70nが周期的に参照する感情モデル73及び本能モデル74にそれぞれ保持された各情動及び各欲求のパラメータ値のうち、感情モデル73に保持された「喜び(joy)」、「驚き(surprise)」若しくは「悲しみ(SUDNESS)」のいずれかのパラメータ値が「50から100」の範囲であるときには他のノードに遷移することができるようになっている。
【0083】
また、状態遷移表80では、「他のノードヘの遷移確率」の欄における「遷移先ノード」の行にそのノードNODE0〜 NODEnから遷移できるノード名が列記されていると共に、「入力イベント名」、「データ値」及び「データの範囲」の列に記述された全ての条件が揃ったときに遷移できる他の各ノードNODE0〜NODEnへの遷移確率が「他のノードヘの遷移確率」の欄内の対応する箇所にそれぞれ記述され、そのノードNODE0〜NODEnに遷移する際に出力すべき行動が「他のノードヘの遷移確率」の欄における「出力行動」の行に記述されている。なお、「他のノードヘの遷移確率」の欄における各行の確率の和は100[%]となっている。
【0084】
したがって、図28の状態遷移表80で表されるノードNODE100では、例えば「ボールを検出(BALL)」し、そのボールの「SIZE(大きさ)」が「0から1000」の範囲であるという認識結果が与えられた場合には、「30[%]」の確率で「ノードNODE120(node 120)」に遷移でき、そのとき「ACTION1」の行動が出力されることとなる。
【0085】
各行動モデル701〜70nは、それぞれこのような状態遷移表80として記述されたノードNODE0〜 NODEnがいくつも繋がるようにして構成されており、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときなどに、対応するノードNODE0〜NODEnの状態遷移表を利用して確率的に次の行動を決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力するようになされている。
【0086】
図25に示す行動切換モジュール71は、行動モデルライブラリ70の各行動モデル701〜70nからそれぞれ出力される行動のうち、予め定められた優先順位の高い行動モデル701〜70n等から出力された行動を選択し、当該行動を実行すべき旨のコマンド(以下、これを行動コマンドという。)をミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68に送出する。なお、この実施の形態においては、図26において下側に表記された行動モデル701〜70nほど優先順位が高く設定されている。
【0087】
また、行動切換モジュール71は、行動完了後に出力セマンティクスコンバータモジュール68から与えられる行動完了情報に基づいて、その行動が完了したことを学習モジュール72、感情モデル73及び本能モデル74に通知する。
【0088】
一方、学習モジュール72は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果のうち、「叩かれた」や「撫でられた」など、使用者からの働きかけとして受けた教示の認識結果を入力する。
【0089】
そして、学習モジュール72は、この認識結果及び行動切換モジュール71からの通知に基づいて、「叩かれた(叱られた)」ときにはその行動の発現確率を低下させ、「撫でられた(誉められた)」ときにはその行動の発現確率を上昇させるように、行動モデルライブラリ70における対応する行動モデル701〜70nの対応する遷移確率を変更する。
【0090】
他方、感情モデル73は、「喜び(joy)」、「悲しみ(sadness)」、「怒り(anger)」、「驚き(surprise)」、「嫌悪(disgust)」及び「恐れ(fear)」の合計6つの情動について、各情動ごとにその情動の強さを表すパラメータを保持している。そして、感情モデル73は、これら各情動のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる「叩かれた」及び「撫でられた」などの特定の認識結果と、経過時間及び行動切換モジュール71からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0091】
具体的には、感情モデル73は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果と、そのときのロボット装置1の行動と、前回更新してからの経過時間などに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその情動の変動量を△E[t]、現在のその情動のパラメータ値をE[t]、その情動の感度を表す係数をkeとして、(1)式によって次の周期におけるその情動のパラメータ値E[t+1]を算出し、これを現在のその情動のパラメータ値E[t]と置き換えるようにしてその情動のパラメータ値を更新する。また、感情モデル73は、これと同様にして全ての情動のパラメータ値を更新する。
【0092】
【数1】
【0093】
なお、各認識結果や出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知が各情動のパラメータ値の変動量△E[t]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば「叩かれた」といった認識結果は「怒り」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与え、「撫でられた」といった認識結果は「喜び」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与えるようになっている。
【0094】
ここで、出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知とは、いわゆる行動のフィードバック情報(行動完了情報)であり、行動の出現結果の情報であり、感情モデル73は、このような情報によっても感情を変化させる。これは、例えば、「吠える」といった行動により怒りの感情レベルが下がるといったようなことである。なお、出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知は、上述した学習モジュール72にも入力されており、学習モジュール72は、その通知に基づいて行動モデル701〜70nの対応する遷移確率を変更する。
【0095】
なお、行動結果のフィードバックは、行動切換モジュレータ71の出力(感情が付加された行動)によりなされるものであってもよい。
【0096】
一方、本能モデル74は、「運動欲(exercise)」、「愛情欲(affection)」、「食欲(appetite)」及び「好奇心(curiosity)」の互いに独立した4つの欲求について、これら欲求ごとにその欲求の強さを表すパラメータを保持している。そして、本能モデル74は、これらの欲求のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール59から与えられる認識結果や、経過時間及び行動切換モジュール71からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0097】
具体的には、本能モデル74は、「運動欲」、「愛情欲」及び「好奇心」については、認識結果、経過時間及び出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知などに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその欲求の変動量をΔI[k]、現在のその欲求のパラメータ値をI[k]、その欲求の感度を表す係数kiとして、所定周期で(2)式を用いて次の周期におけるその欲求のパラメータ値I[k+1]を算出し、この演算結果を現在のその欲求のパラメータ値I[k]と置き換えるようにしてその欲求のパラメータ値を更新する。また、本能モデル74は、これと同様にして「食欲」を除く各欲求のパラメータ値を更新する。
【0098】
【数2】
【0099】
なお、認識結果及び出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知などが各欲求のパラメータ値の変動量△I[k]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば出力セマンティクスコンバータモジュール68からの通知は、「疲れ」のパラメータ値の変動量△I[k]に大きな影響を与えるようになっている。
【0100】
なお、このロボット装置1においては、各情動及び各欲求(本能)のパラメータ値がそれぞれ0から100までの範囲で変動するように規制されており、また係数ke、kiの値も各情動及び各欲求ごとに個別に設定されている。
【0101】
一方、ミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68は、図24に示すように、上述のようにしてアプリケーション・レイヤ41の行動切換モジュール71から与えられる「前進」、「喜ぶ」、「鳴く」又は「トラッキング(ボールを追いかける)」といった抽象的な行動コマンドを出力系69の対応する信号処理モジュール61〜67に与える。
【0102】
そしてこれら信号処理モジュール61〜67は、行動コマンドが与えられると当該行動コマンドに基づいて、その行動を行うために対応するアクチュエータ251〜25n(図5)に与えるべきサーボ指令値や、スピーカ24(図5)から出力する音の音声データ及び又は「目」のLEDに与える駆動データを生成し、これらのデータをロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33及び信号処理回路14(図5)を順次介して対応するアクチュエータ251〜25n又はスピーカ24又はLEDに順次送出する。
【0103】
以上に説明した、ミドル・ウェア・レイヤ40と、アプリケーション・レイヤ41と、バーチャルロボット33により、本発明の実施の形態の脚式移動ロボット装置1が実行する移動制御プログラムが構築される。
【0104】
ミドル・ウェア・レイヤ40内の認識系60の騒音検出用、温度検出用、明るさ検出用、音階認識用、距離検出用、姿勢検出用、タッチセンサ用、動き検出用及び色認識用の各信号処理モジュール50〜58は、処理結果を入力セマンティクスコンバータモジュール59に与える。
【0105】
入力セマンティクスコンバータモジュール59は、これら各信号処理モジュール50〜58から与えられる処理結果に基づいて、「うるさい」、「暑い」、「明るい」、「ボールを検出した」、「転倒を検出した」、「撫でられた」、「叩かれた」、「ドミソの音階が聞こえた」、「動く物体を検出した」又は「障害物を検出した」などの自己及び周囲の状況(内部状況及び外部状況)や、使用者からの指令及び働きかけを認識し、認識結果をアプリケーション・レイヤ41(図24)に出力する。
【0106】
行動モデルライブラリ70は、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときに、必要に応じて感情モデル73に保持されている対応する情動のパラメータ値や、本能モデル74に保持されている対応する欲求のパラメータ値を参照しながら続く行動をそれぞれ決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。具体的に、各行動モデル701〜70nは、入力セマンティクスコンバータモジュール59から認識結果が与えられたときなどに、対応するノードNODE0〜NODEnの状態遷移表を利用して確率的に次の行動を決定し、決定結果を行動切換モジュール71に出力する。
【0107】
行動切換モジュール71は、行動モデルライブラリ70の各行動モデル701〜70nからそれぞれ出力される行動のうち、予め定められた優先順位の高い行動モデル701〜70nから出力された行動を選択し、当該行動を実行すべき旨のコマンド(行動コマンド又は動作・表現実行指定)をミドル・ウェア・レイヤ40の出力セマンティクスコンバータモジュール68に送出する。
【0108】
出力セマンティクスコンバータモジュール68は、行動制御システム100の動作・表現実行管理部103に相当する。アプリケーション・レイヤ41の行動切換モジュール71から与えられる「前進」、「喜ぶ」、「鳴く」又は「トラッキング(ボールを追いかける)」といった前記動作・表現実行指令を、前記制御指令に分解して出力系69の対応する信号処理モジュール61〜67に与える。
【0109】
これら信号処理モジュール61〜67は、前記動作・表現実行指令から分解された制御指令に基づいて、その行動を行うために対応するアクチュエータ251〜25n(図5)に与えるべきサーボ指令値や、スピーカ24(図5)から出力する音の音声データ及び又は「目」のLEDに与える駆動データを生成し、これらのデータをロボティック・サーバ・オブジェクト32のバーチャル・ロボット33及び信号処理回路14(図5)を順次介して対応するアクチュエータ251〜25n又はスピーカ24又はLEDに順次送出する。
【0110】
次に、本発明が適用できるいくつかの他の実施の形態について説明する。
【0111】
先ず、第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態は、図29に示す脚式移動ロボット装置220である。バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータにより駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、それら4本の脚部に備えられた4つの車輪による車輪移動と、さらに歩行移動と車輪移動を組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0112】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して連結部221A、221B、221C、221Dで連結している。そして、前記4本の脚部ユニットは、連結部221A、221B、221C、221Dにより、胴体部の長手方向に前後する自由度を有している。また、各脚部ユニットはその上部と下部とを、連結部222A、222B、222C、222Dにより連結している。この連結部222A、222B、222C、222Dは、胴体部を接地面に対して上下することのできる自由度を有している。また、前記4本の脚部ユニットの接地面側先端には車輪224A、224B、224C、224Dが取りつけられている。これら、車輪224A、224B、224C、224Dは、プラスチック材でも、ゴム材等でもよく、特に材料は問わない。各車輪224A,224B,224C,224Dは、回転駆動手段である4つのモータの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。さらに、各脚部ユニットにおいて、連結部222A〜222Dと車輪224A〜224Dとの間には、図示した矢印L(左回り)、R(右回り)方向に、サーボモータであるアクチュエータによって回転される回転部223A〜223Dが備えられている。
【0113】
この脚式移動ロボット装置220は、連結部221A〜221Dをアクチュエータによって駆動することによって歩行移動を行うことができる。また、車輪224A〜224Dを各モータにより回転駆動することによって車輪移動を行うことができる。この車輪移動の最中、連結部222A〜222Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができる。また、回転部223A〜223Dを、各車輪224A〜224Dのステアリング機構として使うことができる。
【0114】
したがって、この脚式移動ロボット装置220によれば、歩行移動はもちろん、前後方向、左右方向への直線移動や、その場での旋回、左右回転移動も可能である。
【0115】
さらに、車輪移動に際しては、連結部222A〜222Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができるので、胴体部の高さに障害物を発見したときは胴体部を持ち上げて障害物を跨ぐことができる。また、連結部222A〜222Dをアクティブサスペンションとして働かせ、路面に凹凸があってもその高さの違いを吸収し、ロボット装置本体の姿勢を水平に保つことが可能となる。斜面を移動するときには、胴体部を水平面に対して平行に保って移動することができる。
【0116】
また、この脚式移動ロボット装置220にあっても、歩行移動と車輪移動とを組み合わせることにより、前述したような、フォワード加速移動、バック加速移動、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないというようなハイブリッド移動も可能である。
【0117】
次に、第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態は、図30に示す脚式移動ロボット装置225である。バッテリーから電力の供給を受けたモータによって駆動される、4本の脚部に備えられた4つの車輪による車輪移動を行うことができる。この車輪移動の際には、脚部ユニットの動きと車輪移動を組み合わせたユニークな動きをすることができる。
【0118】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、接地面に対して逆L字型に形成されている。これらの4本の脚部ユニットは、胴体部に対して連結部226A、226B、226C、226Dで連結している。そして、前記4本の脚部ユニットは、連結部226A、226B、226C、226Dにより、胴体部を接地面に対して上下に位置させることができる。また、前記4本の脚部ユニットの接地面側先端には車輪228A、228B、228C、228Dが取りつけられている。これら、車輪228A、228B、228C、228Dは、プラスチック材でも、ゴム材等でもよく、特に材料は問わない。各車輪228A,228B,228C,228Dは、回転駆動手段である4つのモータの回転駆動力をそれぞれ受け取り、それぞれ回転する。さらに、各脚部ユニットにおいて、車輪228A〜228Dの上には、図示した矢印L(左回り)、R(右回り)方向に、サーボモータであるアクチュエータによって回転される回転部227A〜227Dが備えられている。
【0119】
この脚式移動ロボット装置225は、車輪228A〜228Dを各モータにより回転駆動することによって車輪移動を行うことができる。この車輪移動の最中、連結部226A〜226Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができる。また、回転部227A〜227Dを、各車輪228A〜228Dのステアリング機構として使うことができる。
【0120】
したがって、この脚式移動ロボット装置225によれば、前後方向、左右方向への直線移動や、その場での旋回、左右回転移動も可能である。
【0121】
さらに、車輪移動に際しては、連結部226A〜226Dにより、胴体部を接地面に対して上下することができるので、胴体部の高さに障害物を発見したときは胴体部を持ち上げて障害物を跨ぐことができる。また、連結部226A〜226Dをアクティブサスペンションとして働かせ、路面に凹凸があってもその高さの違いを吸収し、ロボット装置本体の姿勢を水平に保つことが可能となる。斜面を移動するときには、胴体部を水平面に対して平行に保って移動することができる。
【0122】
次に、第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態は、図31の(a)に示す脚式移動ロボット装置230である。
【0123】
この脚式移動ロボット装置230は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータによって駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、前記4本の脚部の内の後ろ側の2本の脚部に備えられた二つの駆動輪と,前側の2本の脚部に備えられた二つの従動輪とによる車輪移動と、さらに歩行移動と車輪移動を組み合わせたハイブリッド移動を行う。
【0124】
4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して連結部231A、231B、231C、231Dで連結している。また、各脚部ユニットは、上部と下部とをアクチュエータによって駆動される連結部233A、233B、233C、233Dによって連結している。したがって、これらの連結部231A〜231D、233A〜233Dを用いることにより、脚式移動ロボット装置230は歩行移動を行うことができる。
【0125】
また、4本の脚部ユニットの接地面側先端には、車輪234A〜234Dが取りつけられている。この内、後ろ側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪234Cと234Dは、図示しないそれぞれ近傍に取りつけられたモータからの駆動力によって回転駆動される駆動輪となる。前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪234Aと234Bは従動輪となる。さらに前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットの連結部231A、231Bと、連結部233Aと233Bとの間には、前記従動輪234Aと234Bを図中の矢印L、R方向に回転させるためのステアリング機構である回転部232A、232Bが設けられている。
【0126】
したがって、4つの脚部ユニットが接地状態にあれば、後ろの左右の脚部ユニットの先端に取りつけられた駆動輪234C、234Dによる駆動にて、前進、後進の直線移動が可能となる。また、回転部232A、232Bのステアリング機構により前の左右脚部ユニットの下部が進む方向に向けられるので、脚式移動ロボット装置230は例えば左又は右方向への回転、旋回が可能となる。
【0127】
さらに、この脚式移動ロボット装置230は、尻尾の先にも従動輪となる車輪35が取りつけられているので、後ろの左右脚部ユニットにて立ち上がったときには、図31の(b)に示すように、車輪35が従動輪となったいわゆるお座り状態での車輪移動が可能となる。
【0128】
もちろん、この脚式移動ロボット装置230においても、歩行移動と車輪移動とを組み合わせることにより、前述したような、フォワード加速移動、バック加速移動、後ろに歩きながら車輪を前に回転させる移動、前に歩きながら車輪を後ろに回転させる移動、脚部ユニットは歩行しているように動いているが移動はしていないというようなハイブリッド移動も可能である。
【0129】
次に、第5の実施の形態について説明する。この第5の実施の形態は、図32に示す脚式移動ロボット装置240である。
【0130】
この脚式移動ロボット装置240は、バッテリーから電力の供給を受けたサーボモータによって駆動される4本の脚部を自在に駆動しての歩行移動と、前記4本の脚部の内の後ろ側の2本の脚部に備えられた二つの駆動輪と,前側の2本の脚部に備えられた二つの従動輪とによる車輪移動を行う。
【0131】
ただし、この脚式移動ロボット装置40は、前記二つの駆動輪244C、244Dと二つの従動輪244A、244Bとをこれまでに説明した実施の形態のように接地側先端に取りつけているのでなく、4つの脚部ユニットの上部と下部とを連結している連結部243A〜243Dの直ぐ下に取りつけている。
【0132】
以下、詳細に説明する。4本の脚部ユニット、すなわち左前脚部ユニット、右前脚部ユニット、左後脚部ユニット、左後脚部ユニットは、胴体部に対して2自由度を持つ連結部241A、241B、241C、241Dで連結している。また、各脚部ユニットは、上部と下部とを1自由度を持つ連結部243A、243B、243C、243Dによって連結している。したがって、これらの連結部241A〜241D、243A〜243Dを用いることにより、脚式移動ロボット装置240は自由度3を有する歩行移動を行うことができる。
【0133】
また、4本の脚部ユニットの上部と下部との連結部243A〜243Dの近傍には、車輪244A〜244Dが取りつけられている。この内、後ろ側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪244Cと244Dは、図示しないそれぞれ近傍に取りつけられたモータからの駆動力によって回転駆動される駆動輪となる。前側の左脚部ユニットと右脚部ユニットに取付けられている車輪244Aと244Bは従動輪となる。
【0134】
したがって、脚式移動ロボット装置240は、足先を用いた歩行移動と、脚部を曲げた状態での車輪移動ができる。特に、この脚式移動ロボット装置240は、足先に車輪を付けていないので、その足先にセンサや、ハンドリング機構を配置することができる。
【0135】
なお、これまで説明した第1の実施の形態から第5の実施の形態までの各脚式移動ロボット装置においては、駆動輪となる車輪は、近傍に取りつけられたモータによって他の車輪と同じ回転数にて回転駆動するだけでさまざまな移動が可能となっている。つまり、前述したコントロール部による各モータ毎の回転数の制御は行わなくてもよい。
【0136】
もちろん、各車輪の回転数を、例えばエンコーダや、タコジェネレータなどで測定しながら、各モータ毎に回転駆動力を制御することにより、より細やかな車輪移動のための制御を行うことも可能である。
【0137】
また、前記各実施の形態は、全て4足移動ロボット装置であったが、本発明は2足歩行ロボット装置に適用されてもよい。
【0138】
また、前記移動制御プログラムは、脚式移動ロボット装置1等の外部状況や、内部状況、あるいはユーザによるコマンドに応じて自律的に実行されるという内容の説明を行ったが、もちろん、オペレータによる遠隔操作にて実行されてもよい。
【0139】
また、自律的に実行するときには、接地面の状態を判断して一番適切な移動を行う。
【0140】
また、被写体に近づきながらカメラによる撮影が指示されたときには、胴体部ユニットや、頭部ユニットが縦、横にぶれたりすることがない、車輪移動を自律的に判断することも可能である。
【0141】
また、斜面を移動するときにも、前記サスペンション機構を適用して、胴体部を水平に保つように移動を制御することも可能である。
【0142】
また、前記各実施の形態では、自由度は3又は2として説明したが、連結部の多いロボット装置であれば、さらに自由度が多くなるので、本発明を適用することにより、さらに機動性を向上し、表現力を高めることができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明に係る脚式移動ロボット装置は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができるので、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる。
【0144】
本発明に係る脚式移動ロボット装置の移動制御方法は、複数の自由度の範囲内で少なくとも二つの脚部を動かし、また左右一対の車輪を二つの駆動手段に駆動させるので、少なくとも二つの脚部による歩行移動と、少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動と、歩行移動と車輪移動とのハイブリッド移動とを行うことができるので、方向転換や、直進/並進移動するときの機動性を高め、かつ段差乗り越えを可能とし、さらに表現力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の外観斜視図である。
【図2】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の要部を露出した外観斜視図である。
【図3】第1の実施の形態の脚式移動ロボット装置の要部の拡大分解図である。
【図4】車輪の形状を説明するための図である。
【図5】脚式移動ロボット装置の回路構成を示すブロック図である。
【図6】脚式移動ロボット装置の直線的な前進又は後進移動を説明するための斜視図である。
【図7】脚式移動ロボット装置の直線的な前進又は後進移動を説明するための平面図である。
【図8】脚式移動ロボット装置の左右への直線的移動を説明するための平面図である。
【図9】脚式移動ロボット装置の左右への直線的移動を説明するための斜視図である。
【図10】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための斜視図である。
【図11】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための側面図である。
【図12】脚式移動ロボット装置のその場での旋回移動を説明するための平面図である。
【図13】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための斜視図である。
【図14】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための背面図である。
【図15】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした左回転移動を説明するための平面図である。
【図16】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための斜視図である。
【図17】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための背面図である。
【図18】脚式移動ロボット装置のある点を中心とした右回転移動を説明するための平面図である。
【図19】脚式移動ロボット装置の左回転移動を説明するための斜視図である。
【図20】脚式移動ロボット装置の左回転移動を説明するための平面図である。
【図21】脚式移動ロボット装置の右回転移動を説明するための斜視図である。
【図22】脚式移動ロボット装置の右回転移動を説明するための平面図である。
【図23】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図24】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成におけるミドル・ウェア・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図25】脚式移動ロボット装置のソフトウェア構成におけるアプリケーション・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図26】同アプリケーション・レイヤの行動モデルライブラリの構成を示すブロック図である。
【図27】脚式移動ロボット装置の行動決定のための情報となる有限確率オートマトンを説明するために使用した図である。
【図28】有限確率オートマトンの各ノードに用意された状態遷移表を示す図である。
【図29】本発明の第2の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図30】本発明の第3の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図31】本発明の第4の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図32】本発明の第5の実施の形態の脚式移動ロボット装置の概略図である。
【図33】従来の4足移動ロボット装置の斜視図である。
【図34】従来の車輪型移動装置の斜視図である。
【符号の説明】
1 脚式移動ロボット装置、2 胴体部、3A,3B,3C,3D 脚部ユニット、4A,4B,4C,4D 車輪、5A,5B,5C,5D モータ、9A,9B,9C,9D 連結部(肘関節に相当)、11A,11B,11C,11D 連結部(肩、股関節に相当)
Claims (40)
- 胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、
前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、
前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段と、
前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かし、また前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする脚式移動ロボット装置。 - 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部による歩行移動と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動とを切り替えることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、さらに前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動も、前記歩行移動、前記車輪移動の他に行うことができ、それらの移動を切り替えることを特徴とする請求項2記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、制御することを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での方向を統一し、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を同じにして前記胴体部及び脚部をその方向に直線的に移動させることを特徴とする請求項4記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを異ならせ、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を異ならせて前記胴体部及び脚部を左又は右に旋回移動させることを特徴とする請求項4記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、いずれか一方の脚部を軸にし、残りの脚部の車輪を前記駆動手段にて駆動することによって、前記胴体部を点回転移動させることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪は、接地する位置によって回転半径が変化する形状をしてなり、
前記制御手段は前記複数の自由度の範囲で前記少なくとも二つの脚部を動かして前記車輪の接地面上における回転半径を変化させながら前記二つの駆動手段によって前記二つの車輪を駆動させることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。 - 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部による歩行移動と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動とを切り替えることを特徴とする請求項8記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、さらに前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動も、前記歩行移動、前記車輪移動と切り替えることを特徴とする請求項9記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、制御することを特徴とする請求項2記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での方向を統一し、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を同じにして前記胴体部及び脚部をその方向に直線的に移動させることを特徴とする請求項11記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを異ならせ、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を異ならせて前記胴体部及び脚部を左又は右に旋回移動させることを特徴とする請求項11記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記制御手段は、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、いずれか一方の脚部を軸にし、残りの脚部の車輪を前記駆動手段にて駆動することによって、前記胴体部を点回転移動させることを特徴とする請求項2記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記移動制御手段は、前記二つの駆動手段の回転数を同じにすることを特徴とする請求項2記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記移動制御手段は、前記少なくとも二つの脚部の自由度の範囲内にて前記車輪の接地位置を異ならせて車輪の回転半径を異ならせ、左又は右方向へのカーブ移動制御を行うことを特徴とする請求項15記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記少なくとも二つの脚部に、前記胴体部を接地面に対して上下することのできる持ち上げ機構を備えることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記車輪を前記少なくとも二つの脚部の接地面側先端に取り付けることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記車輪を前記少なくとも二つの脚部の連結部近傍に取り付けることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 前記胴体部には尻尾が接続されており、その尻尾に車輪を取り付けることを特徴とする請求項1記載の脚式移動ロボット装置。
- 胴体部に対して複数の自由度を有して連結されて移動のために使われる少なくとも二つの脚部と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪と、前記車輪の内の左右一対をそれぞれ直接に回転駆動する二つの駆動手段とを備えてなる脚式移動ロボット装置の移動制御方法であって、
前記複数の自由度の範囲内で前記少なくとも二つの脚部を動かす第1の工程と、
前記左右一対の車輪を前記二つの駆動手段に駆動させることによって前記胴体部及び脚部の移動を制御する第2の工程と
を備えることを特徴とする脚式移動ロボット装置の移動制御方法。 - 前記第2の工程は、前記少なくとも二つの脚部による歩行移動と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動とを切り替えることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、さらに前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動も、前記歩行移動、前記車輪移動の他に行うことができ、それらの移動を切り替えることを特徴とする請求項22記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを、前記第1の工程に前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かさせて、制御することを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程によって、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での方向を統一し、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を同じにして前記胴体部及び脚部をその方向に直線的に移動させることを特徴とする請求項24記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを異ならせ、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を異ならせて前記胴体部及び脚部を左又は右に旋回移動させることを特徴とする請求項24記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、いずれか一方の脚部を軸にし、残りの脚部の車輪を前記駆動手段にて駆動することによって、前記胴体部を点回転移動させることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪は、接地する位置によって回転半径が変化する形状をしてなり、
前記第2の工程は、前記第1の工程により前記複数の自由度の範囲で前記少なくとも二つの脚部を動かして前記車輪の接地面上における回転半径を変化させながら前記二つの駆動手段によって前記二つの車輪を駆動させることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。 - 前記第2の工程は、前記少なくとも二つの脚部による歩行移動と、前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪による車輪移動とを切り替えることを特徴とする請求項28記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、さらに前記歩行移動と前記車輪移動とを組み合わせたハイブリッド移動も、前記歩行移動、前記車輪移動と切り替えることを特徴とする請求項29記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを、前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、制御することを特徴とする請求項22載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での方向を統一し、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を同じにして前記胴体部及び脚部をその方向に直線的に移動させることを特徴とする請求項31記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により前記少なくとも二つの脚部にそれぞれ取りつけられる車輪の接地面上での向きを異ならせ、かつ前記二つの駆動手段により各車輪の回転方向を異ならせて前記胴体部及び脚部を左又は右に旋回移動させることを特徴とする請求項31記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により前記少なくとも二つの脚部を複数の自由度の範囲内にて動かして、いずれか一方の脚部を軸にし、残りの脚部の車輪を前記駆動手段にて駆動することによって、前記胴体部を点回転移動させることを特徴とする請求項22記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記二つの駆動手段の回転数を同じにすることを特徴とする請求項22記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記第2の工程は、前記第1の工程により前記少なくとも二つの脚部の自由度の範囲内にて前記車輪の接地位置を異ならせて車輪の回転半径を異ならせ、左又は右方向へのカーブ移動制御を行うことを特徴とする請求項35記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記少なくとも二つの脚部に、前記胴体部を接地面に対して上下することのできる持ち上げ機構を備えることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記車輪を前記少なくとも二つの脚部の接地面側先端に取り付けることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記車輪を前記少なくとも二つの脚部の連結部近傍に取り付けることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
- 前記胴体部には尻尾が接続されており、その尻尾に車輪を取り付けることを特徴とする請求項21記載の脚式移動ロボット装置の移動制御方法。
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