JP2004028017A - スクロール型圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】背圧機構部を複数の小径背圧室19と小径シールリング18とで構成した。
これにより、シールリング自身の熱膨張や樹脂であれば冷媒による膨潤等での変形や剛性低下を極小とできる。また、運転時に旋回スクロール6との摺動部で問題となるシールリングの変形やねじれもほとんど生じない。そのうえ、旋回スクロール6側に生じる歪に対しても個々の小径シールリング18が追従して吸収できるため、歪による面圧上昇で摺動損失が大きくなることがなく、二酸化炭素等の高圧冷媒においてもシール性が確保できる。これらのことより、シールリングでの摺動損失および背圧漏れを軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スクロール型圧縮機に係り、特に、スクロール型圧縮機のスラス卜荷重を支持する背圧室に設けるのに適したシール手段に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平2−176178号広報に記載されているように、スクロール型圧縮機においては、旋回スクロールを駆動して流体を圧縮する際に、圧縮反力によって旋回スクロールを固定のハウジング側へ押圧するスラスト荷重が発生する。
【0003】
このスラスト荷重を支持するために、旋回スクロールの端板部の背面と、それに対向するハウジング側の面との間に、例えば、コバルト又はニッケルを基本組成として、これにモリブデン・クローム・珪素・炭素等の副成分を含有させた部材や、カーボン繊維をエポキシ樹脂によって固めたような耐磨耗性のある材料からなる環状のスラスト荷重支持部材が使用される。
【0004】
しかしながら、こめような構成ではスラスト荷重支持部材の表面と相手方の面との間に摺動による摩擦熱が発生すると共に摩耗も進行するので、この従来技術においては環状のスラスト荷重支持部材に溝を設けて、冷却水を供給することにより摩擦熱を吸収するという対策を講じている。
【0005】
このようにして発生するスラスト荷重支持部における摩擦熱や摩耗を抑制するために、発明者が先に提案した実開平9−310687号公報に記載されている発明のように、スクロール型圧縮機において、旋回スクロールの端板部の背面に窪み空間としての背圧室を形成し、この背圧室へ吐出側から圧縮された流体を導入して背圧を発生させることにより旋回スクロールを軸線方向に付勢して、圧縮反力によって発生するスラスト荷重により旋回スクロールの背面とハウジング側の平坦面との間に作用する大きな接触荷重を軽減する手段が知られている。
【0006】
前述のような従来技術を実施する場合は、圧縮される流体が冷凍サイクルの冷媒として一般的に使用されているフロンのように作動圧力が低いものであれば、圧縮反力によって発生するスラスト荷重が1000N前後であるために、旋回スクロールの背面の背圧室へ導入する流体の圧力が小さくてよいから、背圧室内の圧力を保持するためにシール材を使用しても、シール材に作用する荷重はさほど大きくはならない。
【0007】
また、シール材の摺動面の潤滑状態は接触荷重が小さいことから流体潤滑域にあるものと堆定されるので、シール材と摺動接触するハウジング側の面には油膜が確実に形成されていて、低い摩擦係数の下で摺動接触が行われているものと考えられる。従って、シール材の摺動による機械損失を低く抑えることができる。
【0008】
しかしながら、二酸化炭素(CO2)のようないわゆる超臨界圧流体を冷媒として使用する冷凍サイクルにおいて、前述の従来技術に示されたスクロール型圧縮機によってその冷媒を圧縮する揚合には、旋回スクロールに作用するスラスト荷重が、フロンのような作動圧の低い冷媒を使用した場合の約7倍の7000Nにも達することから、背圧室へ導入する流体の圧力も同様に7倍前後の高圧になるので、その高圧がシール材に作用することになる。
【0009】
更に、シール材に作用する荷重が高いことから、シール材の摺動面の潤滑状態は流体潤滑域になく、摩擦係数が大きい混合潤滑域あるいは境界潤滑域にあるものと考えられる。従って、シール材の摺動による機械損失が大きくなり、それが圧縮機の効率低下をもたらすことが問題になる。
【0010】
そこで、発明者がその後に提案して、特開2000−249086号公報に記載されている従来技術では、超臨界圧流体を冷媒として圧縮するスクロール型圧緒機において、その旋回スクロールの背圧室にシール材を設けると共に、作動室内で未だ充分に高圧まで圧縮されていない比較的低圧の冷媒を取り出して、逆止弁を介してそれを背圧室へ供給することにより、背圧室から高圧の冷媒が多量に漏れ出るのを未然に防止すると共に、シール材の摩耗や機械損失が増大するのを抑制している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このように、スクロール型圧縮機においてスラスト荷重を支持するために旋回スクロールの端板部の背後に背圧室を設けることや、圧縮された流体力が背圧室から漏洩するのを防止するために背圧室にシール材を設けることは、超臨界圧流体を圧縮するスクロール型圧縮機においても公知の事項に属するけれども、どのような形状のシール材を、どのようにして背圧室に設けるかという具体的な問題は未だ十分に研究されてはいない。
【0012】
前述の従来技術を提案した発明者のその後の研究によって、背圧室のシール材として内燃機関用のピストンリングのような、いわゆる「合い口」を有するものを使用すると、背圧室へ供給される高圧の流体が合い口から大量に漏洩するという問題を生じることが判った。
【0013】
また、合い口のない径の大きな連続状のシールリングを使用すると、シールリング自身の熱膨張や、樹脂であれば冷媒による膨潤等で変形したり剛性が低下したりし、運転時に旋回スクロールとの摺動部に微小な変形やねじれが生じる。これにより、特に二酸化炭素を始めとする高圧冷媒においては、発生する高圧力差に打ち勝つだけのシール性が確保できないと共に、変形による面圧上昇で摺動損失が大きく発生し、圧縮機効率が低下するという問題がある。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールリングでの摺動損失および背圧漏れを軽減して圧縮機効率を向上することのできるスクロール型圧縮機を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明では以下の技術的手段を採用する。請求項1記載の発明では、作動室(11)内の流体の圧縮圧力が上昇するのに伴って旋回スクロール(6)に作用するシャフト(2)の軸線方向のスラスト荷重を支持するために、旋回スクロール(6)の背後にハウジング(1)の一部として設けられたミドルハウジング(4)と、旋回スクロール(6)の端板部(6a)の背面と、それに対向してそれを支持しているミドルハウジング(4)の表面とのいずれか一方に形成された複数の小径背圧室(19)と、各小径背圧室(19)内へ高圧の流体を導入するための流体導入路(19a)と、各小径背圧室(19)の中に移動可能に組み付けられた複数の小径シールリング(18)とを備えていることを特徴とする。
【0016】
図6(a)は従来の大径のシールリングを表す斜視図であり、(b)は本発明の小径シールリング(18)の配置を表す斜視図と小径シールリング(18)単品の拡大斜視図である。このように、背圧機構部を複数の小径背圧室(19)と小径シールリング(18)とで構成することにより、シールリング自身の熱膨張や樹脂であれば冷媒による膨潤等での変形や剛性低下を極小とできる。また、運転時に旋回スクロール(6)との摺動部で問題となるシールリングの変形やねじれもほとんど生じない。
【0017】
そのうえ、旋回スクロール(6)側に生じる歪に対しても個々の小径シールリング(18)が追従して吸収できるため、歪による面圧上昇で摺動損失が大きくなることがなく、二酸化炭素等の高圧冷媒においてもシール性が確保できる。これらにより、シールリングでの摺動損失および背圧漏れを軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0018】
請求項2記載の発明では、小径シールリング(18)の側面と小径背圧室(19)の側面との間をシールするように装着された弾性のある環状のシール部材(20)を備えていることを特徴とする。また、請求項3記載の発明では、シール部材(20)はゴム製のOリングであることを特徴とする。
【0019】
本発明のスクロール型圧縮機においては、小径背圧室(19)の中に小径シールリング(18)を設けて、相手方の面に向かって移動可能とすると共に、その側面と、それに対向している小径背圧室(19)の側面との間にOリングのような弾力のある環状のシール部材(20)を設けて、その部分をシールしている。これにより小径シールリング(18)での背圧漏れを軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0020】
請求項4記載の発明では、シール部材(20)が、小径シールリング(18)の側面とそれに対向する小径背圧室(19)の側面のいずれか一方に形成された、例えば、環状の溝や切り欠きのような形のシール部材支持部(18a)によって所定の位置に支持されていることを特徴とする。これにより、Oリングのような環状のシール部材(20)を所定の位置に安定に支持することができる。
【0021】
請求項5記載の発明では、小径シールリング(18)の主成分がカーボン・金属・合成樹脂およびセラミックスの中から選択されることを特徴とする。これにより、小径シールリング(18)は優れた自己潤滑性と高い硬度とを備えたものとすることができる。
【0022】
しかしながら、それによって相手方との摺動接触面における耐摩耗性を高めることができる反面、小径シールリング(18)と、それを受け入れている小径背圧室(19)の側面との間のシール性能が低下する可能性があるが、Oリングのような環状のシール部材(20)がその部分におけるシール性能を補足するので、全体として高いシール性能が得られる。
【0023】
請求項6記載の発明では、小径シールリング(18)は、小径背圧室(19)の反対面を摺動面(18b)とし、その摺動面(18b)の中央部に背圧空間(18c)と、背圧室(19)の圧力を背圧空間(18c)に連通させる連通路(18d)とを備えることを特徴とする。これにより、小径シールリング(18)の両面に同じ圧力が作用して相手方の面に向かう押圧荷重を軽減できることから、シールリングでの摺動損失を軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0024】
請求項7記載の発明では、小径シールリング(18)の摺動面(18b)側に摺動面積を拡大する鍔部(18e)を形成したことを特徴とする。これにより、シール面積が増加して面圧を低下させることが可能になるので、摺動摩擦による摩耗を低減することができる。また、小径シールリング(18)を相手方の面に向かって押圧するために、高圧の流体を小径シールリング(18)の所定の面に確実に作用させることができる。
【0025】
請求項8記載の発明では、背圧空間(18c)の面積をAとし、小径背圧室(19)の面積をBとし、鍔部(18e)の外周部までの面積をCとした場合、A<B<Cとしたことを特徴とする。これによる効果を、図3〜5を用いて説明する。図3は本発明の要部を拡大して示す断面図であり、図4・図5は図3の本発明に対応して異なる寸法関係をとった場合の説明図である。
【0026】
背圧室(19)には圧縮された後の背圧(Pc)が掛かっており、シールリング(18)の外周には圧縮される前の吸入圧(Ps)が掛かっている。シールリング(18)の外周面はシール部材(20)によって背圧(Pc)と吸入圧(Ps)とが仕切られているが、摺動面(18b)においては背圧(Pc)から吸入圧(Ps)への直線的な圧力勾配が生じる。
【0027】
図4のように、背圧空間(18c)の面積Aと、小径背圧室(19)の面積Bを同じとし(図中では各部の外径φA・φB・φCで表す)、鍔部(18e)外周までの面積Cをそれらより大きくした場合(φA=φB<φC)、張り出した鍔部(18e)の図中上面には吸入圧(Ps)が掛かり、図中下面の摺動面(18b)には背圧(Pc)と吸入圧(Ps)との中間圧が掛かることより、シールリング(18)には図中上方の非接触方向へ向かう荷重が発生する。
【0028】
また、図5のように、小径背圧室(19)の面積Bと、シールリング(18)外周までの面積Cを同じとし、背圧空間(18c)の面積Aをそれらより小である場合(φA<φB=φC)、摺動面(18b)の図中上面には背圧(Pc)が掛かり、図中下面の摺動面(18b)には背圧(Pc)と吸入圧(Ps)との中間圧が掛かることより、シールリング(18)には図中下方の接触方向へ向かう荷重が発生する。
【0029】
よって、図3のように、これらの中間状態である背圧空間(18c)の面積Aより小径背圧室(19)の面積Bが大きく、その小径背圧室(19)の面積Bより鍔部(18e)外周までの面積Cが大きい条件A<B<C(φA<φB<φC)の中に、シールリング(18)に働く図中上方への荷重と図中下方への荷重とがバランスして中立状態となる条件があることとなる。
【0030】
このような寸法関係の設定により、シールリング(18)が相手方の面に向かう押圧荷重を軽減できることから、シールリング(18)での摺動損失を軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。また、φBを中心にφAからφCまで摺動面(18b)を広く取れることからシール性も確保できる。
【0031】
請求項9記載の発明では、シャフト(2)は、ハウジング(1)に直接に取り付けられたモータ(3)によって回転駆動されるように構成されていることを特徴とする。また、請求項10記載の発明では、シャフト(2)は、車両に搭載された内燃機関のような外部の原動機によって回転駆動されるように横成されていることを特徴とする。このように、いわゆるモータ直結型として構成しても良いし、いわゆる外部駆動型として構成してもよい。
【0032】
請求項11記載の発明では、圧縮すべき流体は冷凍サイクル内を流れる冷媒であり、しかも、圧縮された後の冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力以上の圧力となるように設定されていることを特徴とする。このように、いわゆる冷媒圧縮機、特に、圧縮された後の冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力以上の圧力となるように設定されているものに適用するのが本発明のスクロール型圧縮機の好適な用途の一つである。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。冷凍サイクルは図1に模式図で示し、100は本発明に係るスクロール型圧縮機であり、200は圧縮機100から吐出する高温高圧の冷媒から放熱するための放熱器である。300は放熱器200から流出した冷媒を減圧する減圧器であり、400は減圧器300にて減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器である。
【0034】
次に、圧縮機100の構造を、断面図を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態におけるスクロール型圧縮機100の縦断面図である。圧縮機100は、鉄管で作った円筒ハウジング1aの両端に、同じく鉄等金属製の上部ハウジング1bと下部ハウジング1cとを溶接で接合してハウジング(耐圧密閉容器)1を形成している。
【0035】
2はシャフトであって、その下端には軸心に対して所定量だけ偏心したクランク部2aが形成されている。2bはバランサであって、シャフト2に固定されているか、或いはクランク部2aの偏心量を増減させることができるように、シャフト2に対して半径方向に僅かに移動可飴に嵌合されている。3はモータであって、電力の供給を受けた時にシャフト2を回転駆動する。本実施形態の場合は、一体化されたハウジング1の内部にモータ3と圧縮機部分とが構成されている。
【0036】
5aはモータ3の上部に取り付けられたフロントラジアル軸受であって、同じく下部に取り付けられたリアラジアル軸受5bと共に、シャフト2を回転可能に支持している。なお、本発明はモータ一体型のスクロール型圧縮機に限って適用される訳ではなく、シャフト2を回転駆動する動力源が、例えば車両に搭載されている内燃機関のように、圧縮機本体とは別体のものであってもよい。
【0037】
6は旋回スクロールであって、概ね円板状の端板部6aと、それから軸線方向に突出するように形成された渦巻き形の羽根部6bと、端板部6aの背面に形成された円筒状のボス部6c等からなっている。スクロール6の全体は、ボス部6cに圧入して取り付けられている旋回スクロール軸受5cを介して、シャフト2のクランク部2aによって回転可能に支持されていて、シャフト2の中心軸線の回りに公転運動をする。7は旋回スクロール6の公転運動のみを許す稜数個の自転防止ピンであって、旋回スクロール6の自転運動を阻止する。
【0038】
8は固定スクロールであって、旋回スクロール6と同様な端板部8aと、渦巻き形の羽根部8bを備えていて、旋回スクロール6と噛み合うように組み付けられている。固定スクロール8は、モータ3と同様にハウジング1の中に挿入されている。固定スクロール8の渦巻き形の羽根部8bと旋回スクロール6の渦巻き形の羽根部6bが噛み合うことによって、それらの羽根部6b及び8bの問に軸線方向に見た時に三日月形に見える作動室11が複数個形成される。
【0039】
そして、冷凍サイクルから戻って来て吸入ポート9からモータ3内を通過して吸入室10内へ導入される気体冷媒のような流体を、外周において作動室11が吸入室10に向かって開いた時に作動室11の内部へ吸入し、旋回スクロール6が公転をする間に旋回スクロール6および固定スクロール8の中心部に向かって作動室11が半径方向に移動しながら縮小することによって流体を圧縮する。
【0040】
最後に作動室11が中心部の作動室に向かって開いた時に、吐出圧に達した冷媒が固定スクロール8の端板部8aに設けられた吐出孔8cを通過して、端板部8aとプレート14とで形成された吐出室13内へ吐出される。12は吐出弁であって、吐出室13内の冷媒が吐出孔8cを介して逆流しないように端板部8a上に装着されている。吐出室13内へ吐出された高圧の冷媒は、吐出室13から外部へ連通させた吐出ポート16から圧縮機外部の冷凍サイクル(放熱器200)へ向けて吐出される。
【0041】
次に、本発明の特徴に対応する本実施形態の構造部分について説明する。図2は本発明の要部である図1中H部を拡大して示す断面図であり、図3は図2中の要部を更に拡大して示す断面図である。4は、作動室11内の流体の圧縮圧力が上昇するのに伴って旋回スクロール6に作用するシャフト2の軸線方向のスラスト荷重を支持するために、旋回スクロール6の背後にハウジング1の一部として設けられたミドルハウジングである。
【0042】
19は、旋回スクロール6の端板部6aの背面と、それに対向してそれを支持しているミドルハウジング4の表面とのいずれか一方に形成された複数の小径背圧室であり、ミドルハウジング4の中心の周りに配置されている。尚、本実施形態ではミドルハウジング4側に小径背圧室4を形成した例で説明する。19aは、各小径背圧室19内へ高圧の冷媒を導入するための流体導入路であり、図1に示すように吐出ポート15から出た高圧の冷媒が、絞り弁500を介して所定の圧力の背圧Pcとして供給される。
【0043】
各小径背圧室19の中には、移動可能に組み付けられた複数の小径シールリング18が備えられていて、旋回スクロール6の端板部6aの面と対向して摺動状態で接触しており、小径背圧室19に上記の背圧Pcを加えることによりミドルハウジング4を足掛かりとして旋回スクロール6の端板部6aを固定スクロール8に向かって押圧する。尚、図に示すように端板部6aの摺動面には、高炭素鋼で形成した摺動板17が一体にして構成されている。
【0044】
本実施形態のスクロール型圧縮機はこのような構造を有するから、旋回スクロール6が公転をする運転状態においては、複数個の三日月形の作動室11内で圧縮される冷媒の圧力と吸入室10内の圧力Psとの差圧によって、旋回スクロール6の端板歩6aには図3において上方向にスラスト荷重が作用する。
【0045】
圧縮反力に基づくこのスラスト荷重によって、端板部6aはミドルハウジング4の面に強く押し付けられて、旋回スクロール6の公転力に対して大きな摩擦力を発生するところであるが、小径背圧室19内へ所定の背圧Pcの流体が導かれているために、小径背圧室19内の背圧Pcと吸入室10内の吸入圧Psとの差圧によって、上向きのスラスト荷重と同じ大きさの下向きのスラスト荷重を発生させることができる。
【0046】
これにより、方向が反対の2つのスラスト荷重が相殺することによって、端板部6aとミドルハウジング4との間の接触力は、小径背圧室19の背圧Pcと吸入室10の吸入圧Psとの差圧により、例えば、小径シールリング18に軸線方向に作用する荷重だけできる。
【0047】
また、この背圧機構部を複数の小径背圧室19と小径シールリング18とで構成することにより、シールリング自身の熱膨張や樹脂であれば冷媒による膨潤等での変形や剛性低下を極小とできる。また、運転時に旋回スクロール6との摺動部で問題となるシールリングの変形やねじれもほとんど生じない。
【0048】
そのうえ、旋回スクロール6側に生じる歪に対しても個々の小径シールリング18が追従して吸収できるため、歪による面圧上昇で摺動損失が大きくなることがなく、二酸化炭素等の高圧冷媒においてもシール性が確保できる。これらにより、シールリングでの摺動損失および背圧漏れを軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0049】
また、本発明のスクロール型圧縮機においては、小径背圧室19の中に小径シールリング18を設けて、相手方の面に向かって移動可能とすると共に、その側面と、それに対向している小径背圧室19の側面との間に装着されたゴム製のOリングのような弾力のある環状のシール部材20を設けて、その部分をシールしている。これにより小径シールリング18での背圧漏れを軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0050】
Oリングのような環状のシール部材20は、小径シールリング18の側面とそれに対向する小径背圧室19の側面のいずれか一方の所定の位置に、例えば、環状の溝や切り欠きのような形のシール部材支持部18aを形成して、所定の位置に安定に支持されている。尚、本実施形態では小径シールリング18側にシール部材支持部18aを形成した例を示す。
【0051】
また、小径シールリング18の主成分がカーボン・金属・合成樹脂およびセラミックスの中から選択されている。これにより、小径シールリング18は優れた自己潤滑性と高い硬度とを備えたものとすることができる。しかし、それによって相手方との摺動接触面における耐摩耗性を高めることができる反面、小径シールリング18と、それを受け入れている小径背圧室19の側面との間のシール性能が低下する可能性があるが、Oリングのような環状のシール部材20がその部分におけるシール性能を補足するので、全体として高いシール性能が得られる。
【0052】
また、小径シールリング18は、小径背圧室19の反対面を摺動面18bとし、その摺動面18bの中央部に背圧空間18cと、背圧室19の圧力を背圧空間18cに連通させる連通路18dとを備えている。これにより、小径シールリング18の両面に同じ圧力が作用して相手方の面に向かう押圧荷重を軽減できることから、シールリングでの摺動損失を軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。
【0053】
また、小径シールリング18の摺動面18b側に摺動面積を拡大する鍔部18eを形成している。これにより、シール面積が増加して面圧を低下させることが可能になるので、摺動摩擦による摩耗を低減することができる。また、小径シールリング18を相手方の面に向かって押圧するために、高圧の流体を小径シールリング18の所定の面に確実に作用させることができる。
【0054】
また、背圧空間18cの面積をAとし、小径背圧室19の面積をBとし、鍔部18eの外周部までの面積をCとした場合、A<B<Cとしている。このような寸法関係の設定により、シールリング18が相手方の面に向かう押圧荷重を軽減できることから、シールリング18での摺動損失を軽減することができ、圧縮機効率を向上することができる。また、φBを中心にφAからφCまで摺動面(18b)を広く取れることからシール性も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるスクロール型圧縮機の縦断面図である。
【図2】本発明の要部である図1中H部を拡大して示す断面図である。
【図3】図2中の要部を更に拡大して示す断面図である。
【図4】図3の本発明に対応して異なる寸法関係をとった場合の説明図である。
【図5】図3の本発明に対応して異なる寸法関係をとった場合の説明図である。
【図6】(a)は従来の大径のシールリングを表す斜視図であり、(b)は本発明の小径シールリングの配置を表す斜視図と小径シールリング単品の拡大斜視図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
2a クランク部
3 モータ
4 ミドルハウジング
6 旋回スクロール
6a 端板部
6b 渦巻き形の羽根部
8 固定スクロール
8a 端板部
8b 渦巻き形の羽根部
11 作動室
18 小径シールリング
18a シール部材支持部
18b 摺動面
18c 背圧空間
18d 連通路
18e 鍔部
19小径背圧室
19a 流体導入路
20 Oリング、シール部材
Claims (11)
- ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)によって軸支されると共に一部に偏心したクランク部(2a)を有するシャフト(2)と、
端板部(6a)及び渦巻き形の羽根部(6b)を有し前記クランク部(2a)によって駆動されることにより公転運動をする旋回スクロール(6)と、
端板部(8a)及び前記旋回スクロール(6)と噛み合う渦巻き形の羽根部(8b)を有すると共に前記ハウジング(1)に固定された固定スクロール(8)とを備え、
前記旋回スクロール(6)が前記クランク部(2a)によって駆動されて公転運動をする時に、前記旋回スクロール(6)の羽根部(6b)と前記固定スクロールの羽根部(8b)との間に形成される複数個の作動室(11)が外周部から中心部に向かって移動する問に、前記作動室(11)の容積が連続的に縮小することにより前記作動室(11)内において流体を圧縮するスクロール型圧縮機であり、
前記作動室(11)内の流体の圧縮圧力が上昇するのに伴って前記旋回スクロール(6)に作用する前記シャフト(2)の軸線方向のスラスト荷重を支持するために、前記旋回スクロール(6)の背後に前記ハウジング(1)の一部として設けられたミドルハウジング(4)と、
前記旋回スクロール(6)の端板部(6a)の背面と、それに対向してそれを支持している前記ミドルハウジング(4)の表面とのいずれか一方に形成された複数の小径背圧室(19)と、
前記各小径背圧室(19)内へ高圧の流体を導入するための流体導入路(19a)と、
前記各小径背圧室(19)の中に移動可能に組み付けられた複数の小径シールリング(18)とを備えていることを特徴とするスクロール型圧縮機。 - 前記小径シールリング(18)の側面と前記小径背圧室(19)の側面との間をシールするように装着された弾性のある環状のシール部材(20)を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記シール部材(20)はゴム製のOリングであることを特徴とする請求項2に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記シール部材(20)が、前記小径シールリング(18)の側面とそれに対向する前記小径背圧室(19)の側面のいずれか一方に形成された環状のシール部材支持部(18a)によって所定の位置に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記小径シールリング(18)の主成分がカーボン・金属・合成樹脂およびセラミックスの中から選択されることを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載のスクロール型圧縮機。
- 前記小径シールリング(18)は、前記小径背圧室(19)の反対面を摺動面(18b)とし、その摺動面(18b)の中央部に背圧空間(18c)と、前記背圧室(19)の圧力を前記背圧空間(18c)に連通させる連通路(18d)とを備えることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記小径シールリング(18)の前記摺動面(18b)側に摺動面積を拡大する鍔部(18e)を形成したことを特徴とする請求項6に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記背圧空間(18c)の面積をAとし、前記小径背圧室(19)の面積をBとし、前記鍔部(18e)の外周部までの面積をCとした場合、A<B<Cとしたことを特徴とする請求項7に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記シャフト(2)は、前記ハウジング(1)に直接に取り付けられたモータ(3)によって回転駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
- 前記シャフト(2)は、車両に搭載された内燃機関のような外部の原動機によって回転駆動されるように横成されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
- 圧縮すべき前記流体は冷凍サイクル内を流れる冷媒であり、しかも、圧縮された後の前記冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力以上の圧力となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
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