JP2004023486A - ヘッドホンによる再生音聴取における音像頭外定位方法、及び、そのための装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】適宜のオーディオ機器によって再生される左,右チャンネルのステレオオーディオ信号を入力信号として夫々2系統に分岐し、直接音と、仮想反射音と、仮想クロストーク音に形成するため、前記一方の系統の信号をそのまま用いるか遅延処理して仮想スピーカの直接音信号に形成し、この直接音信号を遅延処理して仮想スピーカの反射音信号に形成し、前記他方の系統の信号を複数の周波数帯域の信号に分割し、各帯域の信号を位相制御して遅延処理することにより前記仮想スピーカのクロストーク音信号に形成し、左右チャンネルの直接音信号と反射音信号とクロストーク音信号を、各チャンネル用ミキサーで混合し、前記左,右チャンネルのミキサーの夫々の出力を、ヘッドホンの左右耳用のスピーカに夫々に供給する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オーディオ機器から出力されるオーディオ信号をヘッドホンにより聴取するとき、受聴者の頭外に定位される音像を、更に拡大した頭外位置での音像として定位させる方法と、そのための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ヘッドホンにより音楽等の再生音を聴取するとき、その音像を聴取者の頭外に定位させる技術については、様々な提案がなされている。
【0003】
即ち、ヘッドホンにより音楽等の再生音を聴取すると、受聴者の頭部の中に音像が形成されるため、リスニングルームなどの実際の音響空間に置かれたスピーカを駆動して聴く音楽等の音像とは全く程異なった聴感しか得られないという点を改善する目的で、ヘッドホンによる受聴においても、例えば外部スピーカによる再生音レベルでの聴感が得られるように、受聴者の頭外にヘッドホンによる音像を定位させる技術について、様々な研究,提案がなされている。
【0004】
しかし、従来提案されている頭外音像定位の手法は、実スピーカに再生される音のリスニングルームにおける反射や頭部による回析などを忠実にシミュレートすることにより、仮想的にスピーカから発されていると聴感できる音を再現するため、大がかりなハード構成を不可欠とするのみならず、このために膨大な量の演算処理を行い、また、処理したデータの蓄積のために大容量のメモリを不可欠とするなど、低コスト,省電力などを旨とする携帯機器や小型機器には不向きな内容であった。
【0005】
本発明の発明者は上記の問題点に鑑み、人間の聴覚解析に基づいた適切な信号処理を効率よく実行することにより、音質の低下がなく少ない演算量で頭外で音場を定位させ、あたかも通常の実在スピーカによるリスニングポイントで音を聴取しているかのような聴感を得ることができるヘッドホン受聴における頭外音像定位の方法と、この方法を実施するための装置を、特願平10−291348号として提案している。
【0006】
本発明の発明者が先に提案した頭外音像定位の方法は、適宜のオーディオ機器によって再生される左,右チャンネルのオーディオ信号を入力信号として、この左,右チャンネルの入力信号を夫々に少なくとも2系統に分岐し、左,右チャンネルの各系統の信号を少なくとも2つの周波数帯域に分割し,それぞれに処理,制御して、ヘッドホン着用者の頭部を基準にして仮想する適宜の音場空間に仮想した左,右のスピーカによる直接音と、その左,右の仮想スピーカから発された直接音の前記仮想音場空間における仮想反射音とを表わす信号に形成し、このようにして形成した左,右チャンネルの直接音信号と反射音信号を、左チャンネル用ミキサーと右チャンネル用ミキサーにおいて混合し、前記左,右ミキサーの夫々の出力を、ヘッドホンの左右耳用のスピーカに、夫々に供給することにを、主要な構成とするものであった。
【0007】
提案した上記の頭外音像定位の方法によると、小規模なハード構成で、また少ない演算量によって仮想スピーカによる頭外音像の聴感を得ることが確認された。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、本発明者が先に提案しているヘッドホンによる頭外音像定位手法による効果を、更に拡大,充実させることにより、ヘッドホンであり乍ら疲労感を伴うことのない頭外音像の定位手法とのための装置を提供することを、課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明方法の構成は、適宜のオーディオ機器によって再生される左,右チャンネルのオーディオ信号を入力信号として2系統に分岐し、両チャンネルの各系統の信号を、ヘッドホンを着用する受聴者の頭部を基準にした仮想音場空間に仮想した左,右のスピーカによる直接音と、その直接音の前記仮想音場空間における仮想反射音と、前記受聴者の両耳における仮想クロストーク音に形成するため、前記一方の系統の信号をそのまま用いるか又は遅延処理して前記仮想スピーカの直接音信号に形成し、この直接音信号を遅延処理して前記仮想スピーカの反射音信号に形成すると共に、前記他方の系統の信号を複数の周波数帯域の信号に分割し、分割された各帯域の信号を位相制御して遅延処理することにより前記仮想スピーカのクロストーク音信号に形成し、このようにして形成した左,右チャンネルの直接音信号と反射音信号とクロストーク音信号を、夫々の各チャンネル用ミキサーにおいて混合し、前記左,右チャンネルのミキサーの夫々の出力を、ヘッドホンの左右耳用のスピーカに、夫々に供給することにを特徴とするものである。
【0010】
上記方法において、本発明では、適宜のオーディオ機器により再生されるオーディオ信号から、左,右チャンネルの仮想スピーカによる直接音と、該両チャンネルの直接音の仮想反射音を形成するため、前記オーディオ信号を2系統に分け、その一方系統の信号を遅延処理するか又はしないで前記仮想スピーカの直接音信号とすると共に、該直接音信号を分岐して遅延処理することにより、前記仮想スピーカの反射音信号とする。また、2系統に分けた他方の系統の左,右両チャンネルの信号を、各チャンネルごと低中域と高域、又は、低域と中高域、若しくは、低域と中域と高域の周波数帯域に分け、少なくとも低周波数帯域又は各周波数帯域について、位相制御と遅延処理或は少なくとも遅延処理を、夫々に行うことにより、前記仮想スピーカのクロストーク音信号とすることができる。
【0011】
上記の本発明方法を実行するための本発明装置の構成は、任意の仮想音場空間内に仮想した左,右スピーカの位置に対応するヘッドホンを使用する受聴者の外耳道入口までの頭部伝達関数による前記仮想スピーカの直接音の信号処理部と、前記音場空間に仮想設定した反射特性による前記直接音の前記伝達関数による前記仮想スピーカの反射音の信号処理部と、前記受聴者の両耳における仮想クロストーク音の信号処理部と、前記各信号処理部から出力される処理信号を適宜音量差を付けて混合する左,右チャンネル用のミキサーとを具備し、この左,右チャンネル用のミキサーの出力によりヘッドホンの左,右耳用のスピーカを駆動するようにしたこをと特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態例について説明するが、それに先立ち本発明の前提となる再生音の聴取により人の聴感として形成される音場について説明する。
2チャンネルスピーカによりリスニングルームのような実空間で音楽再生を行う場合、聴取者の左耳には左側のスピーカから出た音のほかに、右スピーカから出た音も到達する。右耳についても同様である。この際、スピーカと同じ側の耳と逆側の耳では、スピーカからの距離が異なるため、スピーカから出た音は聴取者の耳に到達したときに左右の音で時間差(ITD:Inter−aural Time Difference)や音圧差(ILD:Inter−aural Level Difference)を生じる。人間の脳は主にこの左右の耳に到達する音に時間差や音圧差を手掛かりとして、音像の定位位置を判断する。
【0013】
しかし、ヘッドホンにより音楽再生を行う場合、左右のヘッドホンから出る音はそれぞれ逆側の耳に届かず、音像の定位位置を判断する手掛かりが失われる。そのため、2チャンネルステレオ音をスピーカにより再生した場合、音像が頭の中に定位しているような聴感を覚えるという問題がある。ヘッドホンによる聴取では絶えずその音場に違和感があり、疲労感を伴うことになる。
【0014】
そこで、本発明では、本発明の発明者が先に提案した3次元音像定位手法を適用し、その音像の定位位置を拡充することにより、音場の違和感をなくし疲労を抑制する手法、即ち、頭外音場の拡大を図ろうとするもである。
【0015】
本発明では、音像定位処理の複雑さを低減することにより、演算量を削減するため、人間の聴覚を通して3次元音像定位を知覚するために必要となる基本的な要素にのみ着目した。即ち、聴取者の頭部や耳介による音の回析の影響の有無により、3次元音像定位に必要な要素は周波数帯域ごとに異なる。そこで本発明では、入力信号を以下に挙げる3つの周波数帯域に分割する。
(イ) 人間の頭部による回折の影響を受けにくく、平坦な周波数特性を示す低周波数帯域、
(ロ) 耳介による回折の影響を強く受け、串状の周波数特性を示す高周波数帯域、
(ハ) 低周波数帯域と高周波数帯域の中間に位置し、複雑な周波数特性を示す中間周波数帯域、
【0016】
本発明は、上記(イ),(ロ),(ハ)の各周波数帯域に対して、音像定位を行ううえで必要最低限の演算のみを実行することにより、従来法と比較して、演算量を大幅に削減することを可能とした。以下、各周波数帯域の特性について述べる。
【0017】
低周波数帯域では、人間の頭部による回折に着目した。即ち、人間の頭部の大きさに個人差はあるが、概ね直径が150〜200mm程度の球体とみなすことができる。
半波長がこの球体の直径よりも大きい音の場合、人間の頭部による音の反射及び回折いよる影響が少なく、無視することができる。そのため、半波長がこの直径よりも大きくなるような周波数帯域においては、音が音源から両耳に入る時間差及び音量差のみをパラメータとして入力信号を処理することで、音像定位が可能となる。したがって、低周波数帯域における頭部伝達関数の周波数特性は平坦な特性となる。この境界周波数(〓1)は音速(v)を340m/s,頭部の直径(d1)を150〜200mmとすると、〓1=2v/d1より850〜1.1kHz程度である。
【0018】
高周波数帯域では、人間の耳介による音の回折に着目した。人の耳介を円錐形とみなした場合、その底面の直径は概ね35〜55mm程度である。半波長がこの底辺の直径よりも小さい音の場合、耳介による音の回折を物理的要因とする影響が大きくなる。そのため、半波長がこの直径より小さくなるような周波数帯域において、外耳道入口に到達する音は、直接外耳道入口に到達する音と、耳介などにより回折し、遅延して外耳道入口に到達した音が重畳したものとなる。したがって、高周波数帯域における頭部伝達関数の周波数特性は串状になる。この耳介による影響を考慮する境界周波数(〓2)は、耳介底面の直径(d2)が35〜55mmであることから、3k〜5kHz程度である。
【0019】
中間周波数帯域は、低周波数帯域と高周波数帯域から決定される。この帯域では、頭部や耳介による回折の影響を考慮する必要があり、頭部伝達関数の周波数特性は複雑な特性となる。
【0020】
本発明は、各周波数帯域における上記のような特性に鑑み、以下に挙げる3つの音を合成することにより、人間が音像の定位位置を判断する手掛かりが得られると考え、頭外に定位させる音場の拡大処理を行うものである。この場合の3つの音とは、図1に示すスピーカSPから聴取者Mの左右の耳Re,Leに直接到達する“直接音”(Direct)Ds、壁面等で反射し聴取者の耳に到達する“反射音”(Reflected)Rs、聴取者の頭部により回折し、スピーカと逆側の耳に入る“クロストーク音”(Cross Talk)Csである。
【0021】
本発明では、上記3つの音Ds,Rs,Csを入力信号を処理,制御して実現するため、図2の模式図に示すような処理を左右のチャンネルに対して行う。ここで、直接音Dsおよび反射音Rsについては、位相の周波数による変化は考慮せず、遅延制御(Delay)のみを行う。一方、クロストーク音Csについては、位相の周波数による変化を考慮する。その理由は、クロストーク音Csは周波数が高くなるにつれ、頭部による回折の影響を受けやすく、その周波数−位相特性は理想的には図3のようになると考えられているからである。
【0022】
そこで、本発明では、左右チャンネルの入力信号を、夫々に3つの周波数帯域に分割(Frequency Division)し、それぞれの周波数帯域ごとに選択的にパラメトリックイコライザ(PEQ)および遅延器(Delay)を位相器として採用することにより、低次のIIRフィルタでクロストーク音をCs再現することを可能とした。最後に、両チャンネルごとに直接音Ds,反射音Rs,クロストーク音Csの音量を調整し、ミキシング(Mixing)を行うことで出力を得るようにした。
【0023】
上記の手法を実現するフィルタ構成図を、片チャンネルについて図4に示す。まず、ステレオの入力信号Siを2系統に分け、その一方を帯域分割フィルタFdにおいてクロストーク音用の周波数帯域分割を行い、各帯域ごと位相器Psと遅延器Deを用いることによりクロストーク音信号を生成する。この際、周波数分割フィルタFdにはFIRフィルタを利用するが、これにより、信号に遅延が生じる。そこで、本発明では、2系統に分けた他方の入力信号による直接音に遅延器Deによる遅延を与えることによりFIRフィルタによる遅延の影響を除去するようにした。また、その遅延を与えた前記信号に対して、さらに遅延器Deによる遅延を与えることにより反射音を生成する。最後に、直接音,反射音、およびクロストーク音の各帯域の信号をミキサーMxでミキシングすることにより、頭外へ音場を拡大したステレオ音を得ることが出来るのである。
【0024】
以下に、フィルタ各部の詳細について説明する。
まず、図5に示すBand Division Filterにおいて、クロストーク音の信号を生成するため一方の系統の入力信号の周波数帯域分割を行う。ここで、周波数に対して直線位相であり、その後の音場拡大処理で位相調整の必要がないため、FIRフィルタを周波数分割フィルタとして使用する。また、遮断した周波数帯域での音量レベルが透過した周波数帯域に影響を及ぼさないような減衰量である40dB/octを確保するため、フィルタの次数を33次とした。このことから、本発明では、図3に示すように、入力信号x[n]を33次ローパスFIRフィルタ,33次バンドパスFIRフィルタ,33次ハイパスFIRフィルタを用いて、低周波数帯域信号x1[n],中間周波数帯域xi[n],高周波数帯域xh[n]に分割する。
【0025】
また、効果的な音場拡大を実現するためには、精度の高い周波数帯域分割が必要不可欠である。このような場面では、図6に示すように、中間周波数帯域分割処理で用いられているバンドパスFIRフィルタを、ハイパスFIRフィルタとローパスFIRフィルタのシーケンス処理とする構成を用いる。このような処理をすると、図7に示すように、2つのFIRフィルタを組み合わせることで、1つのバンドパスFIRフィルタ処理と比較して、両遮断周波数帯域で急峻なカットオフ特性を実現可能である。これにより、高精度な頭部伝達関数近似を実現でき、フィルタの係数ならびに係数の窓関数を適切に設定することで、さまざまな仮想リスニングルームや仮想スピーカ配置の設定が可能となる。
【0026】
クロストーク音の各周波数帯域に対し適切な周波数特性を得るために、図4に示す位相器(IIR Phase Shifter)を用いる。位相器は操作性のよいPEQを用いて実現する。したがって、次式で表される2次IIRフィルタを用いる。
d[n]=x[n]+a1d[n−1]+a2d[n−2]
y[n]=bod[n]+b1d[n−1]+b2d[n−2]
ここで、x[n]・y[n]・d[n]は、それぞれ入力,出力,遅延信号を、a0〜a2・b0・b1は利得を表す。
上式から本発明方法で用いる2次IIRフィルタは図9に示すような構成を採る。また、精度や汎用性よりも演算量の少なさが要求される場合、周波数−位相応答を線形近似し、遅延処理のみにより位相の変化を再現することで、演算量を削減することが可能である。このような場合、図4のIIR Phase Shifterを省略した構成が選択される。
【0027】
直接音と反射音およびクロストーク音の伝達時間差を先に述べた図4に示す遅延制御バッファ(Delay)により制御する。本発明方法では、周波数分割処理にFIRフィルタを用いているため、クロストーク音のそれぞれの帯域信号に遅延が生じる。この遅延による影響を補正するため、図4に示すように、直接音に遅延を与える。さらに、補正した直接音の信号を2つに分け、その一方に遅延を与えることにより反射音を生成するようにしている。一方、クロストーク音は、位相制御処理の後、3つの周波数帯域による左右の伝達時間差,音源から左右の耳に到達する音の伝達時間差,各帯域のフィルタ処理による時間差を考慮し、遅延を与えることにより生成する。
【0028】
しかし、一般的にいうと、音源から左右の耳に到達する音の伝達時間差などによって生じる遅延は、周波数分割処理のためのFIRフィルタによって生じる遅延に比べて大きいので、クロストーク音に対する遅延を調整することで、FIRによって生じる遅延を補正できる。このことから、本発明では音源から左右の耳に到達する音の伝達時間差が小さい場合を無視することにより直接音に対する遅延器を省略することが可能である。
【0029】
最後に、各周波数帯域で音像定位処理された信号を1つに重ね合わせるミキシング処理を行う。このミキシング処理では、図10に示すように、直接音x[n],反射音xr[n]、およびクロストーク音の低周波数,中間周波数,高周波数帯域処理信号x1[n]・xi[n]・xh[n]に利得ad・ar・al・ai・ahをそれぞれ掛けたものの総和をとることにより、周波数帯域ごとの音量を調整する。従って、出力y[n]は、
y[n]−adx[n]+arxr[n]+aixi[n]+ahxh[n]
となる。
【0030】
また、図11に示すように、遅延制御とミキシング処理を一つにまとめ、1つの遅延制御バッファに値を加算することによりミキシングを行うことで、遅延制御用のメモリを削減できる。ただし、このような構成には、ミキシングのゲインや遅延時間の設定を変更する際、正しくミキシングが行われないという難点がある。
【0031】
以上により、ヘッドホンの左右スピーカの音を、受聴者の頭外であって、より拡大された範囲に音像定位するには、入力するオーディオ信号から、仮想スピーカによる仮想の直接音と、仮想音場における前記スピーカ音の反射音と、受聴者の両耳におけるクロストーク音を、異なる要素により制御して生成すると共に、クロストーク音については、演算量を削減する目的で入力信号を複数の帯域に分割して各帯域ごとに制御することによって実現可能であることが、裏付けられた。
【0032】
【発明の効果】
本発明は以上の通りであって、オーディオ機器に再生されたオーディオ信号を、ヘッドホンに入力する手前において、2系統に分岐し、一方の系統の信号を仮想の直接音と仮想の反射音を生成するために処理すると共に、他方の系統の信号を複数の帯域に分割して各帯域ごとに処理をしてクロストーク音の信号を生成し、各信号を、それぞれの音の量の比率を制御してミキサーにより混合することによって、ヘッドホンの左,右スピーカ用のオーディオ信号に形成するので、ヘッドホン受聴における従来の頭外定位音像に比べより拡大された頭外位置に明瞭に定位される音像による再生音を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法におけるヘッドホン受聴者と仮想音場,仮想スピーカの位置関係と受聴者の耳に入る3つの音を説明するための模式的平面図。
【図2】本発明方法の概念的構成例を模式的に示すブロック図。
【図3】クロストーク音の周波数位相特性を模式的に表わした線図。
【図4】図2の本発明方法を片チャンネルについて表現した機能ブロック図。
【図5】周波数帯域分割フィルタの一例のブロック図。
【図6】高精度周波数帯域分割フィルタの一例のブロック図。
【図7】分割された各周波数帯の周波数特性を例示した線図。
【図8】低演算量周波数帯域分割フィルタの例のブロック図。
【図9】2次IIRフィルタの例のブロック図。
【図10】ミキサーの一例のブロック図。
【図11】遅延制御バッファを共有化したミキサーの例のブロック図。
【符号の説明】
M ヘッドホン受聴者
Li,Ri 左右チャンネルの入力信号
Dfl,Dfr 左右チャンネルの周波数帯域分割部
Csl,Csr 左右チャンネルのクロストーク音信号処理部
Dsl,Dsr 左右チャンネルの直接音信号処理部
Rsl,Rsr 左右チャンネルの反射音信号処理部
ML,MR 左右チャンネルのミキサー
Hp ヘッドホン
Claims (4)
- 適宜のオーディオ機器によって再生される左,右チャンネルのステレオオーディオ信号を入力信号として夫々2系統に分岐し、両チャンネルの各系統の信号を、ヘッドホンを着用する受聴者の頭部を基準にした仮想音場空間に仮想した左,右のスピーカによる直接音と、その直接音の前記仮想音場空間における仮想反射音と、前記受聴者の両耳における仮想クロストーク音に形成するため、前記一方の系統の信号をそのまま用いるか又は遅延処理して前記仮想スピーカの直接音信号に形成し、この直接音信号を遅延処理して前記仮想スピーカの反射音信号に形成すると共に、前記他方の系統の信号を複数の周波数帯域の信号に分割し、分割された各帯域の信号を位相制御して遅延処理することにより前記仮想スピーカのクロストーク音信号に形成し、このようにして形成した左,右チャンネルの直接音信号と反射音信号とクロストーク音信号を、夫々の各チャンネル用ミキサーにおいて混合し、前記左,右チャンネルのミキサーの夫々の出力を、ヘッドホンの左右耳用のスピーカに、夫々に供給することを特徴とするヘッドホンによる再生音聴取における音像頭外定位方法。
- 適宜のオーディオ機器により再生されるオーディオ信号から、左,右チャンネルの仮想スピーカによる直接音と、該両チャンネルの直接音の仮想反射音を形成するため、前記オーディオ信号を2系統に分け、その一方系統の信号を遅延処理するか又はしないで前記仮想スピーカの直接音信号とすると共に、該直接音信号を分岐して遅延処理することにより、前記仮想スピーカの反射音信号とする請求項1のヘッドホンによる再生音聴取における音像頭外定位方法。
- 2系統に分けた他方の系統の左,右両チャンネルの信号を、各チャンネルごと低中域と高域、又は、低域と中高域、若しくは、低域と中域と高域の周波数帯域に分け、少なくとも低周波数帯域又は各周波数帯域について、位相制御と遅延処理或は少なくとも遅延処理を、夫々に行うことにより、前記仮想スピーカのクロストーク音信号とする請求項1の音像頭外定位方法。
- 任意の仮想音場空間内に仮想した左,右スピーカの位置に対応するヘッドホンを使用する受聴者の外耳道入口までの頭部伝達関数による前記仮想スピーカの直接音の信号処理部と、前記音場空間に仮想設定した反射特性による前記直接音の前記伝達関数による前記仮想スピーカの反射音の信号処理部と、前記受聴者の両耳における仮想クロストーク音の信号処理部と、前記各信号処理部から出力される処理信号を適宜音量差を付けて混合する左,右チャンネル用のミキサーとを具備し、この左,右チャンネル用のミキサーの出力によりヘッドホンの左,右耳用のスピーカを駆動するようにしたことを特徴とするヘッドホンによる再生音聴取における頭外音像定位装置。
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