JP2004018389A - グリセリル(メタ)アクリレートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】チタン化合物および/または錫化合物の存在下で、ケタール化されたグリセロールとアルキル(メタ)アクリレートとを反応させ、ケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造し、これと水とをカチオン交換樹脂の存在下で反応させ、グリセリル(メタ)アクリレートを製造する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリセリル(メタ)アクリレートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート等のグリセリンのモノ(メタ)アクリレートは、末端の隣り合った2つの炭素原子の各々に水酸基をもつエステル残基を有する(メタ)アクリレートであり、コンタクトレンズ材料、水系塗料などの合成原料として有用である。
【0003】
また、特開2000−248224号公報には、アルキル(メタ)アクリレート単量体から選ばれる少なくとも1種(a−1)60〜97重量%、グリセロール(メタ)アクリレート3〜25重量%、不飽和カルボン酸単量体(a−3)0〜5重量%、モノヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート単量体(a−4)0〜20重量%およびその他共重合可能な単量体0〜10重量%を含有するモノマー混合物(但し、モノマー全体の合計は100重量%とする)を共重合して得られるアクリル系ポリマー(A)100重量部に対して、沸点が150℃以上の有機溶剤(B)を150〜2000重量部含有することを特徴とするアクリル系バインダー樹脂組成物が開示されている。同公報には、グリセロール(メタ)アクリレートを用いた上記のアクリル系バインダー樹脂組成物は、従来のアクリル系バインダー樹脂では得ることができなかった高粘性と耐糸引き性の相反する性能を両立することが可能となり、かつ良好な熱分解性を有するものであることが記載されている。さらに、同公報には、450℃以下の低温焼成においても熱分解残渣が少なくなるので、電子材料用等の高純度の品質が必要な部分にも使用できることが記載されている。
【0004】
電子材料用など、高純度の品質が求められる用途が期待されるようになったことに伴い、より高純度、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートが求められるようになってきている。
【0005】
グリセリル(メタ)アクリレートの製造方法としては、例えば、
(A) 硫酸、硝酸等の酸触媒の存在下、グリシジル(メタ)アクリレートと水とを反応させ、反応終了後にアルカリ水溶液を加えて酸価を0.3〜0.8に調整し、10〜40℃の低温で減圧下に脱水する方法(特開昭60−215650号公報)、
(B) 硫酸触媒の存在下、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートと水とを反応させた後、水酸化バリウム(固体)を加えて硫酸を中和して沈殿を濾過し、濾液から塩析によって生成物を分離した後、ベンゼンまたはエーテルでグリセリルメタクリレートを抽出し、減圧下で溶媒を除去する方法(米国特許3957362号、特開平6−116254号公報)、
(C)カチオン交換樹脂の存在下、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートと水とを反応させる方法(特開平11−322675号公報)
が報告されている。
【0006】
上記(A)の方法では、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを用いている。しかし、一般に入手できるグリシジル(メタ)アクリレートは塩素系不純物を含有している場合が多い。
【0007】
例えば、特開平7−2818号公報には、低塩素含量かつ高純度のグリシジルメタクリレートの製造法として、反応系内の水分濃度を600〜1600ppmに調整してメタクリル酸のアルカリ金属塩とエピクロルヒドリンとを第4級アンモニウム塩および重合防止剤の存在下に反応させてグリシジルメタクリレートを製造し、得られた反応液を希水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧下に加熱して未反応のエピクロルヒドリンを留去した後、減圧加熱下に水蒸気を吹き込み、残りのエピクロルヒドリンをグリシジルメタクリレートと共に初留として留出せしめ、次いで、水蒸気の吹き込みを止め、減圧加熱下に蒸留することによりグリシジルメタクリレートを主留として得る方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られるグリシジルメタクリレートは、例えば、グリシジルメタクリレート99.2%、エピクロルヒドリン33ppm、塩素分0.10%からなり、電子材料などの高純度の品質が求められる用途においては塩素系不純物の含有量が十分に低いとは必ずしも言えない。
【0008】
上記の特開平7−2818号公報に記載されているような、特殊な精製工程を経たグリシジル(メタ)アクリレートであってもなお1000ppm以上の塩素系不純物を含有し、しかも、これらの塩素系不純物は蒸留、溶媒洗浄といった公知の精製手段では分離困難である。そのため、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを用いる上記(A)のグリセリル(メタ)アクリレートの製造方法では、塩素系不純物の含有量が少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することは困難である。
【0009】
一方、上記(B)の方法および(C)の方法では、原料として2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを用いている。しかし、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートは、一般的に、グリシジル(メタ)アクリレートとアセトンとから製造される。一般に入手できる2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートは、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する塩素系不純物を含有している場合が多い。そのため、(B)の方法および(C)の方法でも、(A)の方法と同様、塩素系不純物の含有量が少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することは困難である。塩素系不純物の含有量が少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造するためには、塩素系不純物の含有量が少ない2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート等のケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造することが求められる。
【0010】
ところで、上記特開平11−322675号公報には、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートの製造方法として、メチル(メタ)アクリレートと1,3−ジオキソラン構造を有するアルコールをナトリウムメチラート触媒の存在下にエステル交換させる方法(米国特許2,877,215号)が記載されている。この方法によれば、塩素系不純物の含有量が少ない2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを得ることができる。しかし、この方法では、マイケル付加物が多く副生する。しかも、このエステル交換反応で生成したマイケル付加物は、蒸留や抽出ではグリセリル(メタ)アクリレートと分離することが困難である。そのため、低純度の2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートしか得られない。この方法で製造した2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを原料として用い、上記(B)の方法および(C)の方法でグリセリル(メタ)アクリレートを製造した場合、原料が不純物としてマイケル付加物を含有しているため、やはり高純度、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することは困難である。
【0011】
また、上記(B)の方法は、触媒として硫酸等の無機酸を使用しているため、反応終了後にアルカリを加えて中和する必要があり、以後の精製工程において一部の水酸基がエステル化されたグリセロール−1,3−ジ(メタ)アクリレート等のジエステルが副生し、目的生成物であるグリセリル(メタ)アクリレートの純度が低下する場合がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、塩素系不純物やマイケル付加物等の含有量が少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造する方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、以下の本発明により達成できる。
(i)チタン化合物および/または錫化合物の存在下で、下記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールと、下記一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートとを反応させ、下記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造する方法。
【0014】
【化5】
【0015】
(式(1)中、R2、R3はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアラルキル基を示す。)
【0016】
【化6】
【0017】
(式(2)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0018】
【化7】
【0019】
(式(3)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2、R3はそれぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアラルキル基を示す。)
(ii)前記チタン化合物の使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.01〜0.1モルである前記(i)の方法。
(iii)前記錫化合物の使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.0005〜0.2モルである前記(i)の方法。
(iv)上記一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートの使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して1.5〜20モルである前記(i)〜(iii)のいずれかの方法。
(v)反応温度が−30〜150℃である前記(i)〜(iv)のいずれかの方法。(vi)前記(i)〜(v)のいずれかの方法により上記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造する第一工程と、
カチオン交換樹脂の存在下で、上記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートと水とを反応させ、下記一般式(4)で示されるグリセリル(メタ)アクリレートを製造する第二工程と
を有するグリセリル(メタ)アクリレートの製造方法。
【0020】
【化8】
【0021】
(式(4)中、R1は水素原子またはメチル基を示す。)
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明では、チタン化合物および/または錫化合物の存在下で上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールと上記一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートのエステル交換反応を行って上記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造し、この化合物をカチオン交換樹脂の存在下で水と反応させてグリセリル(メタ)アクリレートを製造する。
【0023】
本発明のグリセリル(メタ)アクリレートの製造方法では、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを用いていない。そのため、塩素系不純物の含有量が非常に少ない、具体的には、塩素系不純物の含有量が20ppm以下、さらには10ppm以下の高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0024】
また、本発明では、チタン化合物および/または錫化合物の存在下でエステル交換反応を行い、上記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造している(第一工程)。そのため、ナトリウムメチラート触媒を用いる従来の方法とは違い、マイケル付加物の含有量が少ない、高純度のケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートが得られる。これをカチオン交換樹脂存在下で水と反応させる(第二工程)ことにより、マイケル付加物の含有量が非常に少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することができる。
【0025】
本発明の製造方法により得られるグリセリル(メタ)アクリレートは高純度であり、電子材料などの高品質が要求される用途に対しても好適に使用することができる。
【0026】
なお、ここで「グリセリル(メタ)アクリレート」とは、「グリセリルメタクリレート」および「グリセリルアクリレート」を意味する。
【0027】
また、「マイケル付加物」とは、「(メタ)アクリル酸エステルにメタノールあるいは一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールがマイケル付加した化合物」のことをいう。このマイケル付加物は、前述の通り、エステル交換反応でいったん生成すると、蒸留や抽出で分離することが容易でなく、製品の純度を低下させる。
【0028】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0029】
本発明において反応原料として用いるケタール化されたグリセロールは、前記一般式(1)で示される化合物である。
【0030】
式(1)中のR2およびR3は、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基またはアラルキル基を示す。R2とR3は同一でも、異なっていてもよい。
【0031】
アルキル基、アルケニル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基は、置換基を有していてもよい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜4、アリール基の炭素数は好ましくは6〜10、アルケニル基の炭素数は好ましくは2〜10、アラルキル基の炭素数は好ましくは2〜10であるが、特に限定されず、適宜決めることができる。
【0032】
R2およびR3としては、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アリル基、フェニル基、ベンジル基などが挙げられる。中でも、R2およびR3が、それぞれ、メチル基またはエチル基であるものを用いて反応を行うと、よりよい結果が得られる。
【0033】
一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールは、公知の方法に従って製造することができる。例えば、Organic Synthesis Collective Volume 3, p.502には、グリセリンとアセトンとから製造する方法が記載されている。
【0034】
本発明において反応原料として用いるアルキル(メタ)アクリレートは、前記一般式(2)で示される化合物である。
【0035】
式(2)中のR1は水素原子またはメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0036】
一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートなどが挙げられる。中でも、R4がメチル基であるもの、すなわち、メチルアクリレートまたはメチルメタクリレートを用いて反応を行うと、よりよい結果が得られる。
【0037】
一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートは、公知の方法に従って製造することができる。
【0038】
本発明においては、まず、チタン化合物および/または錫化合物の存在下で、一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールと一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートのエステル交換反応を行い、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを得る(第一工程)。
【0039】
一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートの使用量は適宜決めることができるが、一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して1.5モル以上が好ましく、2モル以上がより好ましい。また、一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートの使用量は、一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して20モル以下が好ましく、6モル以下がより好ましい。
【0040】
触媒であるチタン化合物としては、具体的には、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラステアリルオキシチタンなどが挙げられる。
【0041】
触媒である錫化合物としては、ジ−n−ブチルスズオキシド、ジ−n−オクチルスズオキシド、ジ−n−ブチルスズジメトキシド、ジ−n−ブチルスズジアクリレート、ジ−n−ブチルスズジメタクリレート、ジ−n−ブチルスズジラウレートなどが挙げられる。
【0042】
触媒は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。つまり、触媒として、1種または2種以上のチタン化合物を用いても、1種または2種以上の錫化合物を用いても、1種以上のチタン化合物および1種以上の錫化合物を用いてもよい。
【0043】
また、これらのチタン化合物および/または錫化合物を担体に担持させた固体触媒を用いてもよい。
【0044】
本発明の第一工程であるエステル交換反応において、米国特許2,877,215号に記載されているナトリウムメチラート等の均一系アルカリ金属触媒や、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、酸化カリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の固体塩基化合物なども使用できる。しかし、これらの触媒を用いた場合、マイケル付加物が副生する傾向があり、好ましくない。
【0045】
触媒の使用量は、反応温度、原料濃度、触媒活性などの様々な条件に依存するので、それらに応じて適宜決めればよい。
【0046】
通常、触媒としてチタン化合物を使用する場合、その使用量は、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.01モル以上が好ましく、0.02モル以上がより好ましい。また、触媒としてチタン化合物を使用する場合、その使用量は、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.1モル以下が好ましく、0.05モル以下がより好ましい。
【0047】
原料であるケタール化されたグリセロールは、未反応原料あるいは副生物としてポリオールを含有している傾向がある。そのため、エステル交換反応の触媒としてチタン化合物を使用する場合は、触媒添加前に反応器内の脱水を行っても、前記ポリオールによるチタン化合物の失活が起こることがある。充分に実用的な反応速度を得るためには、触媒であるチタン化合物の使用量は多めにすることが好ましい。具体的には、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対してチタン化合物を0.01モル以上、特に0.02モル以上使用することが好ましい。
【0048】
触媒として錫化合物を使用する場合、その使用量は、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.0005モル以上が好ましく、0.001モル以上がより好ましい。また、触媒として錫化合物を使用する場合、その使用量は、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.2モル以下が好ましく、0.1モル以下がより好ましい。
【0049】
触媒としてチタン化合物と錫化合物とを併用する場合、チタン化合物と錫化合物との合計使用量は、原料である一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.01〜0.2モルが好ましい。
【0050】
エステル交換反応においては、原料や生成物である(メタ)アクリレートの重合を防止するために、反応液に重合防止剤を添加することが好ましい。
【0051】
エステル交換反応において用いる重合防止剤は特に限定されない。重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、パラメトキシフェノール等のフェノール系化合物、N,N’−ジイソプロピルパラフェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルパラフェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)パラフェニレンジアミン等のアミン系化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、あるいは、下記一般式(5)で示されるN−オキシル系化合物などが挙げられる。
【0052】
【化9】
【0053】
(式(5)中、R11、R12はともに水素原子を示すか、または、R11、R12の一方が水素原子を示し、他方がメチル基を示す。R13、R14、R15、R16はそれぞれ直鎖状あるいは分岐状のアルキル基を示す。R17は水素原子または(メタ)アクリロイル基を示す。nは1〜18の整数である。)
重合防止剤の使用量は適宜決めればよいが、重合防止の点から、ケタール化されたグリセロールに対して100ppm以上が好ましく、500ppm以上がより好ましい。また、重合防止剤の使用量は、コスト等の点から、ケタール化されたグリセロールに対して10000ppm以下が好ましく、3000ppm以下がより好ましい。
【0054】
また、重合を防止するために、反応液中に空気等の酸素含有ガスをバブリングすることが好ましい。反応液中に導入する空気等の酸素含有ガスの量は、所望の重合防止効果が得られるように適宜決めることができる。例えば、酸素含有ガスとして空気を用いる場合、空気は(メタ)アクリロイル基含有化合物1モルに対して0.5〜3ml/minでバブリングすることが好ましい。
【0055】
特に、反応液に重合防止剤を添加し、併せて反応液中に空気等の酸素含有ガスを導入しながら反応を行うことが好ましい。
【0056】
反応は、通常、バッチ式反応器で触媒を含む反応液を攪拌し、好ましくは生成物(生成エステル)または副生物(副生アルコール)を反応器外に除去しながら行う。また、連続式反応器で反応を行うこともできる。
【0057】
エステル交換反応を行う際の反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施することができる。
【0058】
反応温度は適宜決めることができるが、通常、−30〜150℃である。副生するアルコール(R4−OH)を除き、より高い反応速度を得る点から、反応温度は60〜150℃がより好ましい。
【0059】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、2〜10時間程度とすることができる。
【0060】
エステル交換反応は平衡反応であるため、反応を進行させるために生成物(生成エステル)または副生物(副生アルコール)を系外に除去しながら反応を行うことが好ましく、特に副生物(副生アルコール)を系外に除去しながら反応を行うことが好ましい。
【0061】
このようにしてエステル交換反応を行うことにより、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートが得られる。エステル交換反応終了後は、減圧蒸留などによって未反応原料、不純物などを除去してもよい。これにより、目的生成物をさらに高純度で単離することができる。
【0062】
次に、以上の第一工程で得られた一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートと水とをカチオン交換樹脂の存在下で反応させ、一般式(4)で示されるグリセリル(メタ)アクリレートを得る(第二工程)。
【0063】
このケタールの脱ケトン反応は、例えば、特開平11−322675号公報に記載されている方法により実施することができる。
【0064】
ケタールの脱ケトン反応において、水は反応原料として添加するが、希釈溶媒も兼ねており、反応終了時には目的生成物である1,2−ジオール構造を有する(メタ)アクリレートの水溶液が得られる。
【0065】
水の使用量は適宜決めることができるが、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレート1モルに対して2モル以上が好ましく、5モル以上がより好ましい。また、水の使用量は、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレート1モルに対して100モル以下が好ましく、20モル以下がより好ましい。
【0066】
ケタールの脱ケトン反応において用いるカチオン交換樹脂としては、強酸性イオン交換樹脂が好ましい。カチオン交換樹脂としては、具体的には、RCP−160M、RCP−150H、RCP−170H、PK−216(以上、三菱化学社製)、アンバーリスト15WET、アンバーリスト15W(IR−200CH)(以上ローム&ハース社製)、ダウエックス50W(ダウケミカル社製)などが挙げられる。カチオン交換樹脂は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
【0067】
カチオン交換樹脂の使用量は、反応温度、原料濃度、触媒活性などの様々な条件に依存するので、それらに応じて適宜決めればよい。通常、カチオン交換樹脂の使用量は、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレート1モルに対して湿潤状態で8ml以上が好ましく、30ml以上がより好ましい。また、カチオン交換樹脂の使用量は、一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレート1モルに対して湿潤状態で200ml以下が好ましく、100ml以下がより好ましい。
【0068】
ケタールの脱ケトン反応においては、原料や生成物である(メタ)アクリレートの重合を防止するために、反応液に重合防止剤を添加することが好ましい。
【0069】
ケタールの脱ケトン反応において用いる重合防止剤は特に限定されず、公知のものいずれも用いることができる。重合防止剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。重合防止剤としては、エステル交換反応において用いる重合防止剤と同様のものが挙げられる。
【0070】
重合防止剤の使用量は適宜決めればよいが、重合防止の点から、ケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートに対して2ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましい。また、重合防止剤の使用量は、コスト等の点から、ケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートに対して5000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましい。
【0071】
また、重合を防止するために、反応液中に空気等の酸素含有ガスをバブリングすることが好ましい。反応液中に導入する空気等の酸素含有ガスの量は、所望の重合防止効果が得られるように適宜決めることができる。例えば、酸素含有ガスとして空気を用いる場合、空気は(メタ)アクリロイル基含有化合物1モルに対して0.5〜3ml/minでバブリングすることが好ましい。
【0072】
特に、反応液に重合防止剤を添加し、併せて反応液中に空気等の酸素含有ガスを導入しながら反応を行うことが好ましい。
【0073】
反応は、バッチ式反応器で行ってもよいし、カチオン交換樹脂をカラムに充填した連続式の固定床反応器で行ってもよい。通常、バッチ式反応器で反応を行う場合、カチオン交換樹脂を含む反応液を攪拌しながら行う。また、連続式の固定床反応器で反応を行う場合、反応液の流通方法は、ワンパスに限られず、循環させてもよい。
【0074】
ケタールの脱ケトン反応を行う際の反応圧力は特に制限されず、減圧、常圧、加圧いずれの圧力下においても実施することができる。
【0075】
反応温度は適宜決めることができるが、通常、0〜100℃である。重合や副反応を抑制する点から、反応温度は50℃以下がより好ましく、30℃以下が特に好ましく、また、反応温度は2℃以上がより好ましく、4℃以上が特に好ましい。
【0076】
反応時間は適宜決めればよいが、通常、1〜50時間程度とすることができる。
【0077】
このようにしてケタールの脱ケトン反応を行うことにより、一般式(4)で示されるグリセリル(メタ)アクリレートが得られる。反応終了後、バッチ式反応器で反応を行った場合には、反応液とカチオン交換樹脂とを濾過等の分離手段によって分離する。
【0078】
反応終了後、反応液に未反応のケタール化されたグリセロールのモノ(メタ)アクリレートが残存している場合がある。その場合、残存するケタール化されたグリセロールのモノ(メタ)アクリレートをヘキサン等の非極性溶媒で抽出除去することができる。
【0079】
目的生成物であるグリセリル(メタ)アクリレートは、そのまま濃縮によって水を除去することにより得ることができる。また、酢酸エチル等の適当な極性を有する抽出溶媒でグリセリル(メタ)アクリレートを反応液から有機層に抽出し、減圧下で抽出溶媒を留去することにより得ることもできる。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
実施例において、分析はガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーにより行い、相対面積純度および相対面積濃度は次のようにして算出した。
【0082】
相対面積純度(%)=A/B×100
相対面積濃度(%)=C/B×100
ここで、Aは目的生成物のピーク面積、Bは全物質の合計ピーク面積、Cは対象物質のピーク面積を表す。
【0083】
また、実得収率は次のようにして算出した。
【0084】
実得収率(%)=D/E×100
ここで、Dは得られた目的生成物のモル数、Eは原料の仕込みモル数を表す。
【0085】
得られたグリセリルメタクリレートの全塩素含有量の測定は、以下のようにして行った。
【0086】
三菱化学製試料燃焼装置QF02で試料(得られたグリセリルメタクリレート)を900℃で燃焼した後、生成ガスを0.3%過酸化水素水20mlに吸収させ、この吸収液についてイオンクロマトグラフィーで塩素の定量を行った。ブランクとして試料なしのものも同様に測定した。
【0087】
<実施例1>
(第一工程:2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの合成)
3Lの4つ口フラスコに、2,3−O−イソプロピリデングリセロール(純度99.7%)397.7g(3mol)、メチルメタクリレート1501g(15mol)、式(5)においてn=6、R11=R12=H、R13=R14=R15=R16=CH3であるN−オキシル系化合物1.9g、テトラメトキシチタン(純度70%)18.4g(0.075mol)を仕込んだ。そして、反応液を撹拌し、液中に30ml/minで空気を導入しながら、105〜110℃で2.5時間エステル交換反応を行った。
【0088】
反応終了後、減圧蒸留を行い、98〜100℃/800Paの留分を分取することにより2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート537gを得た。
【0089】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は99.0%であり、また、不純物であるマイケル付加物は検出されなかった。
【0090】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートにパラメトキシフェノール100ppmを添加し、これを次の第二工程において使用した。
【0091】
(第二工程:グリセリルメタクリレートの合成)
3L4つ口フラスコに、水451g(25mol)、カチオン交換樹脂RCP160M(三菱化学製)142ml(湿潤状態)、第一工程で得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート(純度99.0%、パラメトキシフェノール100ppm含有、2.5mol)505.8gを仕込んだ。そして、反応液を攪拌し、液中に5ml/minで空気を導入しながら、24℃で27時間ケタールの脱ケトン反応を行った。
【0092】
反応終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、目的生成物であるグリセリルメタクリレートと原料である2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの相対面積比は93.6:6.4であった。
【0093】
反応液からカチオン交換樹脂を濾別し、濾別したカチオン交換樹脂は水125gで洗浄し、この洗浄液と濾別した反応液とを合わせて均一な無色の液を得た。この液をヘキサン500mlで6回洗浄して未反応の原料を除いた後、水層に酢酸エチル1000mlを加えて生成物であるグリセリルメタクリレートを抽出した。そして、この酢酸エチル抽出液に重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.025gを添加し、減圧下(800Pa)、40℃以下で酢酸エチルおよび水を留去し、グリセリルメタクリレート346gを得た。
【0094】
得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、相対面積純度は98.6%であり、グリセロール−1,3−ジメタクリレートは検出されなかった。また、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートに対するグリセリルメタクリレートの実得収率は86.4%であった。
【0095】
得られたグリセリルメタクリレートについて全塩素含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0096】
なお、得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、マイケル付加物由来の不純物は検出されなかった(0.1%以下であった。)。
【0097】
<実施例2>
(第一工程:2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの合成)
テトラメトキシチタン(純度70%)18.4g(0.075mol)の代わりに、触媒としてジブチルスズオキシド18.7g(0.075mol)を使用した以外は実施例1と同様にして第一工程を実施し、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート544.4gを得た。
【0098】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は99.2%であり、また、不純物であるマイケル付加物は検出されなかった。
【0099】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートにパラメトキシフェノール100ppmを添加し、これを次の第二工程において使用した。
【0100】
(第二工程:グリセリルメタクリレートの合成)
実施例2における第一工程で得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを使用した以外は実施例1と同様にして第二工程を実施し、グリセリルメタクリレート388.0gを得た。
【0101】
得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、相対面積純度は99.1%であり、グリセロール−1,3−ジメタクリレートは検出されなかった。また、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートに対するグリセリルメタクリレートの実得収率は89.0%であった。
【0102】
得られたグリセリルメタクリレートについて全塩素含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0103】
なお、得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、マイケル付加物由来の不純物は検出されなかった(0.1%以下であった。)。
【0104】
<比較例1>
(第一工程:2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの合成)
3L4つ口フラスコに、アセトン455.9g(7.85mol)、ヘキサン500gを入れて混合し、15℃以下に冷却した後、硫酸(純度98%)を滴下した。引き続き、釜内温を40〜45℃に保ちながら、グリシジルメタクリレート(純度98.5%、パラメトキシフェノール50ppm含有、5mol)721.6gを2時間かけて滴下した。滴下終了後、1.5時間釜内温を40〜45℃に保ち、反応を完結させた。
【0105】
反応終了後、反応液を10%苛性ソーダ水溶液750gで3回、水750gで2回洗浄し、触媒および水溶性不純物を水層に除去した。有機層に4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル1.34gを加えて減圧蒸留を行い、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート690.7gを得た。
【0106】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は96.5%であった。
【0107】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートにパラメトキシフェノール100ppmを添加し、これを次の第二工程において使用した。
【0108】
(第二工程:グリセリルメタクリレートの合成)
比較例1における第一工程で得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート519g(純度96.5%、パラメトキシフェノール100ppm含有、2.5mol)を使用した以外は実施例1と同様にして第二工程を実施し、グリセリルメタクリレート359.3gを得た。
【0109】
得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、相対面積純度は98.2%であり、グリセロール−1,3−ジメタクリレートは0.13%であった。また、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートに対するグリセリルメタクリレートの実得収率は88.2%であった。
【0110】
得られたグリセリルメタクリレートについて全塩素含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0111】
<比較例2>
3L4つ口フラスコに、水900.5g(50mol)、カチオン交換樹脂RCP160M(三菱化学製)1060ml(湿潤状態)を仕込んだ。そして、反応液を攪拌し、内温を30℃に保ちながら、グリシジルメタクリレート(純度98.5%、パラメトキシフェノール100ppm含有、5mol)721.4gを1時間かけて滴下した。滴下終了後、約2時間内温を30℃に保ち、反応を完結させた。
【0112】
反応液からカチオン交換樹脂を濾別し、濾別したカチオン交換樹脂は水900.5gで洗浄し、この洗浄液と濾別した反応液とを合わせた。この液に酢酸エチル1585.8gを加えて生成物であるグリセリルメタクリレートを抽出し、酢酸エチル層を分離した。そして、この酢酸エチル抽出液に重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.033gを添加し、減圧下(800Pa)、40℃以下で酢酸エチルおよび水を留去し、グリセリルメタクリレート372.5gを得た。
【0113】
得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、相対面積純度は98.5%であり、グリセロール−1,3−ジメタクリレートは0.02%であった。また、グリシジルメタクリレートに対するグリセリルメタクリレートの実得収率は46%であった。
【0114】
得られたグリセリルメタクリレートについて全塩素含有量を測定した。その結果を表1に示す。
【0115】
【表1】
【0116】
ケタール化されたグリセロールとメチルメタクリレートのエステル交換反応により2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを合成し、これをカチオン交換樹脂存在下、水と反応させて脱ケタール化させる本発明の方法(実施例1および2)で製造されたグリセリルメタクリレートは、全塩素含有量が非常に少なく、ほとんどブランク値に近い結果となった。
【0117】
これに対して、原料としてグリシジルメタクリレートを用いる方法(比較例1および2)は、中間体であるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートおよび/または目的物であるグリセリル(メタ)アクリレートを蒸留、洗浄等しても塩素を除去しきれず、実施例1と比べて全塩素含有量が高かった。
【0118】
<比較例3>
(第一工程:2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの合成)
テトラメトキシチタン(純度70%)18.4g(0.075mol)の代わりに、触媒としてナトリウムメチラート4.1g(0.075mol)を使用した以外は実施例1と同様にして第一工程を実施し、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレート529.4gを得た。
【0119】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は85.0%であり、また、不純物であるマイケル付加物が14.0%生成していた。
【0120】
得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートにパラメトキシフェノール100ppmを添加し、これを次の第二工程において使用した。
【0121】
(第二工程:グリセリルメタクリレートの合成)
比較例3における第一工程で得られた2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートを使用した以外は実施例1と同様にして第二工程を実施し、グリセリルメタクリレート388.0gを得た。
【0122】
得られたグリセリルメタクリレートを高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、相対面積純度は78.0%であり、マイケル付加物由来の不純物は21.0%であった。グリセロール−1,3−ジメタクリレートは検出されなかった。また、2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートに対するグリセリルメタクリレートの実得収率は82.5%であった。
【0123】
<参考例1>
第一工程(2,3−O−イソプロピリデングリセリルメタクリレートの合成)において、触媒であるテトラメトキシチタン(純度70%)の使用量を3.7g(0.015mol)とした以外は実施例1と同様にしてエステル交換反応を試みた。しかし、触媒添加前に共沸脱水によって系内の水分量を10ppm以下にまで低減させたにもかかわらず、反応が開始しなかった。
【0124】
【発明の効果】
本発明によれば、塩素系不純物やマイケル付加物等の含有量が少ない、高品質のグリセリル(メタ)アクリレートを製造することができる。そのため、本発明の製造方法により得られたグリセリル(メタ)アクリレートを原料に使用したポリマーや組成物は、電子材料などの高品質が要求される用途に対しても好適に使用することができる。
Claims (6)
- チタン化合物および/または錫化合物の存在下で、下記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロールと、下記一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートとを反応させ、下記一般式(3)で示されるケタール化されたグリセロールの(メタ)アクリレートを製造する方法。
- 前記チタン化合物の使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.01〜0.1モルである請求項1に記載の方法。
- 前記錫化合物の使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して0.0005〜0.2モルである請求項1に記載の方法。
- 上記一般式(2)で示されるアルキル(メタ)アクリレートの使用量が、上記一般式(1)で示されるケタール化されたグリセロール1モルに対して1.5〜20モルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 反応温度が−30〜150℃である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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