JP2004016734A - サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置 - Google Patents

サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2004016734A
JP2004016734A JP2002180229A JP2002180229A JP2004016734A JP 2004016734 A JP2004016734 A JP 2004016734A JP 2002180229 A JP2002180229 A JP 2002180229A JP 2002180229 A JP2002180229 A JP 2002180229A JP 2004016734 A JP2004016734 A JP 2004016734A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
metabolic function
metabolic
measured
parameters
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002180229A
Other languages
English (en)
Inventor
Kokutai Ko
江 国泰
Shigo Sho
尚 志剛
Norio Umekawa
梅川 記生
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEC Avio Infrared Technologies Co Ltd
Original Assignee
NEC Avio Infrared Technologies Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEC Avio Infrared Technologies Co Ltd filed Critical NEC Avio Infrared Technologies Co Ltd
Priority to JP2002180229A priority Critical patent/JP2004016734A/ja
Publication of JP2004016734A publication Critical patent/JP2004016734A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Measuring And Recording Apparatus For Diagnosis (AREA)

Abstract

【課題】代謝機能指数を非採血的に測定するサーモグラフィシステムと糖尿病のサーモグラフィ臨床診断用ルーラ(Ruler )の表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】物体表面温度分布のデジタルデータを収録するサーモグラフィ装置を使って、特定環境条件に置いた生体末梢循環部位に冷水負荷を掛ける前後でのサーモグラフィ画像を複数枚取り、幾つかの仮設条件で生体伝熱理論から体内代謝状況と血流状況を推測し、空間領域と時間領域での生体末梢部の伝熱方程式を解析することにより生体内部代謝系の働きを表現する一連のパラメータを算出し、システム同定技術で末梢部の有効熱伝導率と代謝生熱率と言う代謝系における重要な二つのパラメータを持って代謝機能指数を測定し、モニタ画面上に統計的な方法で糖尿病臨床診断用の代謝機能指数を表示する二次元非線形的なルーラを提供する。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置に係わり、特に非採血的な方法で代謝系の働きを表現する一連のパラメータを測定して、糖尿病のサーモグラフィ臨床診断用のルーラを得て、代謝機能を表示する表示装置及び表示方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
糖尿病の臨床診断は従来から、血糖値を計測している。糖尿病は代表的な代謝系の病気である。代謝は生体が活きる上で不可欠的な重要の機能である。特に膵臓はインスリンを分泌し、血液や体液中に放出する。
【0003】
このインスリンはさらに葡萄糖を分解して、生体の生命活動に要するエネルギーを供給する。分解されない葡萄糖は血液や尿のなかに残り、体外に排出される。血液のなかの葡萄糖の量は血糖値と言う。普通、血糖値で分類する糖尿病には主に1型糖尿病と2型糖尿病と言う2種類があり、1型糖尿病はインスリンが絶対的に不足であり、2型糖尿病はインスリンが相対的に不足している。この分類法は本質的に膵臓のインスリン分泌能力を評価している。体内にインスリンが不足すると、各種の器官的な或いは組織的な病気に罹り易く、各種の糖尿病の併発症が起こる。
【0004】
実際に臨床上で使用している糖尿病の血糖値の診断では血糖値を通して、間接的にインスリンを測定することに過ぎないため、また血糖値が食事や生理状態や運動など左右されているため、血糖値で血液中のインスリン量を評価する精度が低く、糖尿病の血糖値診断法の正確率は低い。
【0005】
例えば、1985年に世界保健機構(WHO)は糖尿病の血糖値診断基準を提案したが、1997年にアメリカの糖尿病専門委員会はその修正案を提唱した。しかし、統計によると、二つの提案とも糖尿病診断の正確率は凡そ60%前後である。
【0006】
又、サーモグラフィ装置で生体温度を測定する方法は従来から種々提案されている。しかし、それらの測定方法は生体内部に腫瘍など単なる局所発熱機構異常の場合にサーモグラフィ画像のパターン処理によって直接的に判断する場合に利用される。
【0007】
生体の代謝系には葡萄糖の分解とともに熱が発生する。それによって、糖尿病診断にもサーモグラフィ装置を利用して、生体内部の代謝や末梢血管循環などの障害を診断することができる。
【0008】
従来技術に於いて、サーモグラフィ装置を用いた糖尿病診断では温度回復率を用いたものがある。温度回復率(TRと記す)は普通、下記(1)式のように計算する。
TR=(Ti −T1 )/(To −T1 )    (1)
ここにTo は温度負荷直前の定常状態温度であり、T1 は温度負荷直後の温度であり、Ti は温度負荷後i 時刻の温度である。
【0009】
生体内部の生熱機構はかなり複雑である。温度回復パターンのみでは簡単に内部状況を判断することができない。この様なTRの検査方法では糖尿病の正確な臨床診断ができず、代謝率などの測定もできない。従って、臨床上、糖尿病を診断するには多回採血して、血液中の血糖値の測定やインスリン抵抗試験などの生化学的な方法にたよっていのが現状である。
【0010】
また、物体表面の温度から物体内部の生熱機能を非接触的に診断するには数学的なモデルが必要であり、従来では逆問題解析用の数学的なモデルを作って、内部熱力学パラメータを計算していた。しかし、その逆問題解析法は色々問題があって、実用に至っていない。
【0011】
物体内部の熱力学方程式は理論上では種々作られている。生体の熱測定には従来ペネス(Pennes)の伝熱方程式が利用されている。Pennesの伝熱方程式の一般的な表現は次式(2)で示される。
ρc∂T/∂t=∇・(K∇T)+Wb b ρb (Ta −Tv )Qb +Qm                                 (2)
ここに、ρは物質比重、c は物質比熱、∂は微分子、Tは温度関数、∇は勾配子、Kは物質の伝熱率定数、Wb は血液注入率、Cb は血液比熱、ρb は血液比重、Ta は動脈血温度、Tv は静脈血温度、Qb は血流変数、Qm は代謝生熱率である。
【0012】
この方程式を解くには物体内部各位置の温度を計測することと各物質定数や変数などを算出することが必要であるが、生体内部の温度は非侵入的な手段で測定することが望ましいが、現状では生体内部に侵入的な温度計測方法を用いて、一つ一つの定数を計測しなければならない。又、Pennes伝熱方程式を用いてそのままで代謝生熱率などを計測することもできないし、生体代謝機能指数などの代謝系のパラメータを非侵入的な方法で指定することもできない。
【0013】
生体代謝率などを表示するのは数字的な表示方法とヒストグラフ的な表示方法があるが、本発明で作成した非線形的な表示手段(ルーラ)を用いた特殊な表示に基づいて直観的に表示する方法は提案されていない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術では上述の様に糖尿病を診断する場合に血糖値を使うので精度も低いし、採血を必要とし、診断結果の表示も直観的でない。生体代謝機能を表すこともできない。そのために精度が高く、採血も必要でなく、直観的に診断結果を表示する生体代謝機能指数を計測するシステムの開発が本発明の解決しようとする課題である。
【0015】
本発明はサーモグラフィ装置を利用し、代謝系にインスリンによる葡萄糖分解時に放出した熱量に注目して、非採血的なサーモグラフィ温度測定方法で、生体内部の代謝系の働きを表現する代謝機能指数と言うパラメータを測定し、糖尿病の臨床診断に新しい参照基準を提供し、表示手段の画面上に二次元の非線形的な糖尿病サーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数ルーラを作り、糖尿病の型分けと重症度を直観的に表示できるシステムを提供するものである。具体的に主に次の要件を解決する。
▲1▼ 糖尿病の型分けと重症度を直観的に表示する。
▲2▼ 生体内部代謝系の動きを強制的に誘発し、温度分布データとして記録する。
▲3▼ サーモグラフィのデータから生体代謝系における代謝機能指数を計測する。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は被測定対象物1からの赤外線をサーモグラフィ装置2を介して検出して、被測定対象物1から温度測定を行なって代謝機能を表示する代謝機能表示装置及び表示方法に於いて、座標軸上に血液注入率と代謝機能指数をパラメータとし、二次画面上に血糖値を中心とする糖尿病総合判定で得られた統計データに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を表示させて成ることを特徴とするサーモグラフィ装置による代謝機能表示装置及び表示方法としたものである。
【0017】
本発明のサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置によれば、表示手段の画面上に二次元パラメータを座標軸として作った糖尿病サーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数ルーラ(表示装置)によって臨床診断の主な目的である糖尿病の型分けと重症度を直観的に判断可能なものが得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、システムブロック及び計測時のフローチャートに基づいて本発明のサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置を図1及び図2に基づいて詳記する。
図1は本発明に用いるシステムブロック図、図2は計測時のフローチャートを示すものである。図1に於いて、1は被測定対象物であり、この被測定対象物1は所定の環境温度設定領域5に配された環境に於いて、測定が成される。
【0019】
被測定対象物1はサーモグラフィ装置2によって撮像されて、被測定対象物1から発する表面の赤外線温度を測定する。
【0020】
サーモグラフィ装置2内にはPCカード等の記憶手段6を有する。サーモグラフィ装置2で計測された温度データはコンピュータ・システム(以下CPUと記す)3に供給される。CPU3内には通常のLCD等の表示装置4やROM8、RAM9等の記憶手段を有し、計測された温度データはRAM9等に格納され、計測された温度データを基に解析、演算が行なわれる。
【0021】
環境温度設定領域5に配設された被測定対象物1は恒温冷水槽7中に配された所定温度の冷水に基づいて、冷水負荷を掛けることで被測定対象物1の内部温度を表面に誘出させる様な処理が行なわれる。
【0022】
次に図2に示すフローチャートに基づいて、本発明の概略的なプロセス動作を説明する。
図2に於いては、被測定対象物1を生体とし、糖尿病の型分けと重症度の判別をサーモグラフィ装置を用いて計測する場合について説明する。
【0023】
先ず、第1ステップS1 に示す様に被測定対象物1となる生体内部代謝系の動きを生体末梢部位に温度負荷を掛ける手段で強制的に体表面へ誘発する。但し、温度負荷用の冷水温度は外部環境温度に対しての差が最適値に成る様に選択して固定し、温度負荷の時間も固定する。体表面に出てくる温度情報は冷水負荷直前と冷水負荷後の多時刻に於いて、サーモグラフィ装置2で記録し、装置2内蔵のPCカード6に収容する。
【0024】
かくすれば第2ステップS2 に示す様に生体の例えば、手指中心温度が自動的に検出される。
【0025】
次の第3ステップS3 乃至第5ステップS5 では従来のPennes方程式に基づいて、幾つかの仮定条件をおいてから簡略した伝熱方程式を作る。さらに、伝熱方程式を空間領域と時間領域に分解して解析して各時刻に於ける空間上のパラメータの計算(第3ステップS3 )を行い、次に体表面の温度分布から体内の温度分布を推測する。具体的には指の平均温度の時間領域のパラメータの計算(第4ステップS4 )が行なわれる。また、システム同定技術で代謝機能指数と言う末梢部の有効熱伝導率と代謝生熱率とを計測(第5ステップS5 )する。
【0026】
次の第6ステップS6 では臨床で血糖値を中心とする糖尿病総合診断で得られた統計的なデータに基づいて表示装置4の画面上に二次元の非線形的な曲線で糖尿病のサーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数ルーラを作成する。このルーラを用いて、糖尿病の型分けと重症度を直観的に表示することで、サーモグラフィ装置を使って、代謝機能指数の非採血的な測定システムと糖尿病のサーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数ルーラ(表示装置)を提供可能となる。
【0027】
上述のフローチャートで説明したサーモグラフィ装置による代謝機能指数の測定方法と糖尿病用の代謝機能指数ルーラに依れば、
【0028】
▲1▼ 冷水負荷を掛けてから生体内部の熱環境を強制的に変更することで代謝機能と共に血流状況も温度刺激によって誘発され、代謝系の活動状況が容易に観測される。生体内部代謝機能が体表面温度状態に相関にがあれば、サーモグラフィ装置で非接触的に計測した体表面の温度情報は体内代謝機能情報が含まれている。本発明ではサーモグラフィ装置を使うので採血する必要がなく、サーモグラフィ装置で撮った温度分布データはデジタルでPCカード6に収容してあるから、CPU3での処理に便利である。また、冷水温度と環境温度の差及び温度負荷時間を固定することは夏も冬も同じ負荷量と考えることができる。
【0029】
▲2▼ 生体伝熱理論に基づいた熱方程式により、生体内部の熱変化を体表面の温度変化から推測することができる。空間領域における熱方程式の解析により、生体内部の代謝系の働きを表現する一連のパラメータを算出することができる。システム同定は最小二乗誤差法で代謝機能指数としての末梢部の有効熱伝導率と代謝生熱率とのパラメータを測定することができる。
【0030】
▲3▼ 更に、表示装置4の画面上に二次元パラメータを座標軸として作成した糖尿病サーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数ルーラにより、臨床診断の主な目的である糖尿病の型分けと重症度を直観的に判断することができる。
【0031】
以下、本発明の一形態例を図3乃至図11によって詳記する。
まず本発明を実施する一般的な外部条件と環境温度について説明する。
サーモグラフィ装置で温度を測定する場合、一般的な外部条件が必要である。
例えば、図3に示す検査室10内で測定する場合に厚い黒色カーテンで屋外の赤外線を遮断して、ドアを閉め、室内の環境温度が目標値に達したら、クーラ11や赤外線を発するランプなどを切り、人が移動しないようにしてから測定を開始する。図3は測定室の配置を示している。被測定対象物1の生体を心身ともに安定させる状態で、まず15分前後の環境温度に順化させる。それから両手13が心臓と略等しい高さの手置台12に置き、真上から手背に対してサーモグラフィ装置2で一枚の温度画像を撮影する。続いて両手を恒温冷水槽7の冷水に1分間沈めて温度負荷を掛ける。それから数分ごとに各一枚の温度画像を撮影する。
【0032】
環境温度については夏と冬に対応し易くするために、通常状態の22℃年平均室温に対する計測室の環境温度を夏は25±2℃に冬は20±2℃とに設定し、計測中の開始時刻と終了時刻の温度変動差は夏と冬で共に±0. 5℃以内に収める。測定対象物の生体の温度順化時間は夏は10分間であり、冬は20分間である。
【0033】
温度負荷用の冷水温度の最適値は環境温度と15℃の差を採り、夏に10±1℃であり、冬に5±1℃に設定する。但し、実用上、厳密に上述で決めた環境温度を守ることは難しいので、温度補償を付けてパラメータを計算する。この場合には大きな誤差が出るから、できれば厳密に決めた環境条件で始めからやり直す。
【0034】
次にサーモグラフィ装置2で代謝機能指数を測定する原理とその熱伝達方程式について説明する。
生体代謝系の膵臓はインスリンを分泌し、血液や体液の中に放出する。このインスリンはさらに葡萄糖を分解し、葡萄糖の分解に伴い熱を生成し、この生成された熱が体表面へ伝達し、体表面の温度として現れる。人体の局所温度は主に血流や局所代謝によるものである。全身代謝による熱エネルギーは血流によって末梢部位の温度に影響し、末梢循環の局所代謝もその部位の温度に影響する。
【0035】
そして人体内部の、特に微循環部の代謝機能は末梢部位である手の指でその局所温度を判断できる。手の指はサイズが小さく、円柱体モデルとして最適である。
【0036】
従って測定実施部位には手の指を選び、手の背部位の温度を測定する。手の指内には動静脈が並設している、血流や代謝の動的な状態情報が含まれている。温度測定点は手の背部位の中指の指先中心から手の背部位中央部まで計測する。図4には人の中指14のサーモグラフィ上の温度計測部位を示している。
【0037】
熱伝達方程式を作成するために人の手の指の組織を図5の円柱体モデルで考える。この中指モデルで中指14の中心線15の複数個所のポイントP1 〜P6 で測定を行なう。手の指の温度分布(T) は空間位置の関数であり、経時的に変化する時間の関数である。手の指の温度は心臓から血液注入した熱エネルギーと末梢循環の代謝によって発生した熱エネルギーで生成したものである。また、環境との熱交換で皮膚表面の熱放射により熱エネルギーは発散するものもあり、生体の内部温度と動的な平衡状態になる。
【0038】
上述の中指モデルの末指部位の中指14に対して、Pennes方程式は血流による熱伝達と組織の熱伝達とを一括的に考えて、有効熱伝導率Keff を定義し、以下の仮設条件が置かれ、θ次元の解析を省略し、円柱座標系で表現すると(3)式の簡略的な方程式が立てられる。
【0039】
(a)指組織は均等媒質と等方向熱特性を持つ物質であり、∂T/∂θ=0であり、Keff とQm は空間的な定数である。
(b)体内の中心温度は定数である。
Figure 2004016734
ここにρとCはそれぞれ指組織の物質比重と比熱であり、Keff は有効熱伝導率であり、Qm は末梢部の代謝生熱率である。
【0040】
(3) 式の空間領域での図5の指の径方向(r)の一般解が(4) 式であり、体表面の境界条件を入れると(5) 式が得られる。
Figure 2004016734
【0041】
(5) 式により、定常状態の指の径r方向の温度分布は距離の自乗に比例することを利用して、(6) 式も成り立つ。
T(r)=a0 +a1 r+a2 2    (6)
【0042】
中心軸15方向には主に心臓からの血液が末梢へ注入され、皮膚表面に注目し、定常状態の温度分布のみ考えると、中心軸15方向Xの温度分布として(7) 式が導かれる。
T(x)=Kx +d    (7)
【0043】
冷水負荷を掛けると、末梢部の温度が降下し、血管が収縮し、血液注入が減少する。それで、末梢部の温度バランスは崩れ、体温を維持するためには代謝が活発化し、血液の注入も時間的に段々回復し、(3) 式中のKeff とQm も変化する。
【0044】
そして、冷水負荷の終了後に末梢部の温度T はKeff とQm の変化によって調節される。この場合、解析を簡略するために中指14の中心軸15のX軸方向の温度分布が線形的な変化である(7) 式から分るように、径方向のT(r,t)のみ考えばよい。すると、(3) 式のKeff とQm と(6) 式のパラメータaも時間的な関数として考えれば良い。
【0045】
従って、最終的には体表面の温度分布に対して、(8)式が得られる。
Figure 2004016734
さらに、(8) 式は体表面と周囲環境の熱交換を考えると、(9) 式が得られる。
Figure 2004016734
(9) 式ではαが体表面と周囲環境の熱交換係数であり、Ta が環境温度であり、Aが放射面積であり、εが放射率であり、σがボルツマン定数である。
【0046】
(8) 式と(9) 式を時間的に離散化すれば(10)式と(11)式になる。
Figure 2004016734
Figure 2004016734
それで、サーモグラフィ装置2で冷水負荷前後における生体末梢部位の各時刻の温度を記録し、環境温度と体温を測定しておけばKeff とQm が求められる。
【0047】
実測の結果を見ると、冷水負荷後に末梢部の代謝生熱率Qmは(12)式のような関数で表現できる。
ae−bt =Qm0−Qm (t)   (12)
(12)式のaは定常時の代謝率Qm0及び冷水負荷直後の代謝率Qm で決定され、bは冷水負荷撤去後の定常状態に回復する速さを表現している。
【0048】
eff はQm と同じような傾向にある。(3) 式のKeff の定義からも分るように冷水負荷後の末梢部の熱源は代謝と血液注入の二つであり、Keff は血液注入率を表現し、全身の代謝による生熱効率も表現する。すると、aとbが代謝系の働きを表すパラメータである。これで、システム同定技術により、最小二乗法で(12)式のパラメータaとbを求めるために(12)式を(13)式に変形する。
lna−bt=ln〔Qm0−Qm (t)〕   (13)
即ち:Y(t)=A+Bt   (14)
ここに、Y(t)=ln〔Qm0−Qm (t)〕、A= lna、B =lnbであり、ここでAとBを代謝機能指数と定義する。
【0049】
また、本発明では上式で求めた代謝機能指数a及びbを座標軸とし、表示手段4の画面上に表現し、臨床で血糖値を中心とする糖尿病総合診断で得られた統計的なデータに基づいて非線形的な曲線でルーラ(Ruler )を作成し、実測のa とb の座標値を位置付ければ生体の代謝機能が観測され、糖尿病の臨床診断に糖尿病の型分けと重症度を直観的に判断することができる。
【0050】
上述の(6)式の指の中心軸の二次元的な分布T(r)を証明するためにPennesが人の前腕で実測した実測値(℃)と、本発明の(7)式の同定値と計算値とを比較すると下記の表1に示す結果が得られた。図6に表1のデータを縦軸に温度(℃)を横軸に測定点半径rをプロットしたものである。
【0051】
【表1】
Figure 2004016734
【0052】
また、本発明に依り、臨床的に収集した糖尿病患者のデータを用いて、図7に示してある冷水負荷後の温度回復曲線T(r)も二次元的な分布を証明している。
【0053】
図7(A)、(B)は縦軸に温度(℃)を、横軸に冷水負荷時間をとったもので図7(A)は冷水負荷状態を示す曲線を、図7(B)は冷水負荷後の所定時間経過時の統計的な経時温度分布を示し、曲線16は二次元的分布を示している。
【0054】
また、臨床的に実測した一人の糖尿病患者のデータを用いて、本発明の有効熱伝導率Kerr と代謝生熱率Qm を所定時刻毎に実測した結果を下表2に示す。図8はこれらのデータのグラフを示している。
【0055】
【表2】
Figure 2004016734
【0056】
表2に於いて、時刻0−は冷水負荷前の時刻であり0+は冷水負荷後の時刻を表す。また、図8(A)は縦軸に温度(℃)を横軸に温度負荷前後の時刻(分)をとったものであり、図8(B)は縦軸にKeff を、図8(C)は縦軸にQm をとっている。これらのT,Keff 及びQm の曲線17,18,19は常に一定の傾向の曲線を示し、サーモグラフィ装置で糖尿病を診断できるパラメータは代謝機能指数の有効熱伝導率や代謝生熱率を用い得ることを示している。
【0057】
次に、(14)式で定義した血液注入率と代謝機能指数のパラメータAとBを座標軸として画面上にベゼール関数で臨床的に血糖値を中心とする糖尿病総合診断で得られた統計的なデータに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を図9及び図10の様に、表示手段の表示パターン曲線20〜23となるルーラを作成する。曲線20から右側の領域が糖尿病の無い健常者の分布領域を示し、曲線21乃至23間が2型糖尿病患者の分布領域を示し、曲線23から左側領域が1型糖尿病患者の分布領域を示している。又、24は左側に行くに従って糖尿病が重くなる重症度合いを示す矢印である。
【0058】
従って、本発明のサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその装置に依れば被検者の血液注入率と代謝機能指数を測定、演算して、図9に示す表示手段のルーラ上にCPUのキーボード等の入力手段を介して入力させることで、二次元非線形的な糖尿病分類尺度から直観的に糖尿病の類型と健常者を見分けることが可能となる。
【0059】
図10は15人の健常者と94名の糖尿病患者の測定結果をルーラ上にプロットしたもので、健常者が二次元非線形的な曲線20〜23に入ることはないことが証明されている。
【0060】
図11の直線25は縦軸に実測血糖値を横軸に代謝機能指数の自乗和をとった場合の相関関係を示すものであり、これらは血糖値の側面から、本発明の有効性を実証していることが解る。
【0061】
【発明の効果】
本発明のサーモグラフィ装置の代謝機能表示方法及びその装置によればサーモグラフィを使っているので、採血する必要がなく、サーモグラフィ装置が取得した温度分布データはコンパクトなPCカード(CFメモリカード)にデジタル記録してあるので、コンピュータで簡単に処理することができる。また冷水負荷により、生体内部の熱環境を強制的に変更し、代謝機能と血流状況が温度刺激によって誘発され、代謝系の活動状況が容易に観測される。生体伝熱理論に基づいた伝熱方程式により、末梢循環部位で内部の熱状況が体表面の温度状況と繋がり、体表面の温度から体内の生熱状況を推測することができる。空間領域と時間領域における伝熱方程式の解析により、生体内部の代謝系の働きを表現する一連のパラメータを算出することができる。更にシステム同定は代謝機能指数としての末梢部の有効熱伝導率と代謝生熱率とのパラメータを測定することもできる。またモニタ画面上に二次元パラメータを座標軸として作成した糖尿病のサーモグラフィ臨床診断用の代謝機能指数を表示するルーラにより、臨床診断の主な目的である糖尿病の型分けと重症度を直観的に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーモグラフィ装置の代謝機能表示装置のシステムブロック図である。
【図2】本発明のサーモグラフィ装置の代謝機能表示装置の表示の為のフローチャート図である。
【図3】本発明に用いる測定室の略線的配置図である。
【図4】本発明のサーモグラフィ装置の代謝機能表示装置による温度計測部位の平面図である。
【図5】本発明のサーモグラフィ装置の被測定対象物となる人体の手の指の円柱形モデルを示す図である。
【図6】前腕の実測温度と最小自乗法での温度の同定値計算温度との関係を示す曲線図である。
【図7】冷水負荷後の温度回復曲線を示す図である。
【図8】実測した糖尿病患者の熱パラメータの分布曲線図である。
【図9】本発明の糖尿病の診断用スケールとなるルーラの表示パターンである。
【図10】糖尿病診断結果の分布図である。
【図11】代謝機能指数自乗和と実測血糖値との相関を示す図である。
【符号の説明】
1‥‥被測定対象物、2‥‥サーモグラフィ装置、3‥‥コンピュータ(CPU)、4‥‥表示装置、6‥‥PCカード(記憶手段)、7‥‥恒温冷水槽、8‥‥ROM、9‥‥RAM

Claims (4)

  1. 被測定対象物からの赤外線をサーモグラフィ装置を介して検出して、該被測定対象物から温度測定を行なって代謝機能を表示する代謝機能表示方法に於いて、
    座標軸上に血液注入率と代謝機能指数をパラメータとし、二次画面上に血糖値を中心とする糖尿病総合判定で得られた統計データに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を表示させて成ることを特徴とするサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法。
  2. 被測定対象物から赤外線をサーモグラフィ装置を介して検出して、該被測定対象物から温度測定を行なって代謝機能を表示する代謝機能表示装置に於いて、
    座標軸上に血液注入率と代謝機能指数をパラメータとし、二次画面上に血糖値を中心とする糖尿病総合判定で得られた統計データに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を表示させて成ることを特徴とするサーモグラフィによる代謝機能表示装置。
  3. 被測定対象物からの赤外線をサーモグラフィ装置を介して検出して、該被測定対象物の温度測定を行なって代謝機能を表示する代謝機能表示方法に於いて、
    上記被測定対象物に温度負荷を掛ける前後の時刻に上記サーモグラフィ装置で撮像した温度画像データを記憶手段に格納させるステップと、
    上記記憶手段に格納した温度画像データから上記被測定対象物の内部発熱状態を伝熱方程式を用いて推測し、該伝熱方程式を分解、解析して代謝系の働きを表現する一連のパラメータをコンピュータを介して算出する演算ステップと、
    上記演算ステップで得た上記内部発熱分布から代謝機能指数パラメータとなる有効熱伝導率と代謝生熱率とを計測するステップとから成り、
    上記代謝機能指数と血液注入率とをパラメータとし、二次画面上に血糖値を中心とする糖尿病総合判定で得られた統計データに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を表示させて成ることを特徴とするサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法。
  4. 被測定対象物からの赤外線をサーモグラフィ装置を介して検出して、該被測定対象物の温度測定を行なって代謝機能を表示する代謝機能表示装置に於いて、
    上記被測定対象物に温度負荷を掛ける前後の時刻に上記サーモグラフィ装置で撮像した温度画像データを格納させる記憶手段と、
    上記記憶手段に格納した温度画像データから上記被測定対象物の内部発熱状態を伝熱方程式を用いて推測し、該伝熱方程式を分解、解析して代謝系の働きを表現する一連のパラメータをコンピュータを介して算出する演算手段と、
    上記演算手段で得た上記内部発熱分布から代謝機能指数パラメータとなる有効熱伝導率と代謝生熱率とを計測する計測手段とを具備し、
    上記代謝機能指数と血液注入率とをパラメータとし、二次画面上に血糖値を中心とする糖尿病総合判定で得られた統計データに基づいて糖尿病を型分けした非線形的な曲線を表示させて成ることを特徴とするサーモグラフィ装置による代謝機能表示方法。
JP2002180229A 2002-06-20 2002-06-20 サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置 Pending JP2004016734A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002180229A JP2004016734A (ja) 2002-06-20 2002-06-20 サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002180229A JP2004016734A (ja) 2002-06-20 2002-06-20 サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004016734A true JP2004016734A (ja) 2004-01-22

Family

ID=31177419

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002180229A Pending JP2004016734A (ja) 2002-06-20 2002-06-20 サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004016734A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012050495A1 (en) * 2010-10-14 2012-04-19 Performance In Cold Ab Method and device for examining the surface temperature of a body part
JP2015226793A (ja) * 2007-06-25 2015-12-17 リアル イメージング リミテッド 画像分析のための方法、装置およびシステム
JP2017000443A (ja) * 2015-06-10 2017-01-05 花王株式会社 皮膚の紫外線に対する反応性の推定方法
JP2017006554A (ja) * 2015-06-25 2017-01-12 花王株式会社 経表皮水分蒸散量の変化量の推定方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015226793A (ja) * 2007-06-25 2015-12-17 リアル イメージング リミテッド 画像分析のための方法、装置およびシステム
WO2012050495A1 (en) * 2010-10-14 2012-04-19 Performance In Cold Ab Method and device for examining the surface temperature of a body part
CN103338694A (zh) * 2010-10-14 2013-10-02 冷性能公司 用于检查身体部分的表面温度的方法和装置
CN103338694B (zh) * 2010-10-14 2016-02-10 冷性能公司 用于检查身体部分的表面温度的方法和装置
US9918644B2 (en) 2010-10-14 2018-03-20 Performance In Cold Ab Method for examining the surface temperature of a body part
JP2017000443A (ja) * 2015-06-10 2017-01-05 花王株式会社 皮膚の紫外線に対する反応性の推定方法
JP2017006554A (ja) * 2015-06-25 2017-01-12 花王株式会社 経表皮水分蒸散量の変化量の推定方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Adam et al. Computer aided diagnosis of diabetic foot using infrared thermography: A review
Puri et al. StressCam: non-contact measurement of users' emotional states through thermal imaging
Adam et al. Automated characterization of diabetic foot using nonlinear features extracted from thermograms
Herrick et al. Quantifying digital vascular disease in patients with primary Raynaud’s phenomenon and systemic sclerosis
US8676284B2 (en) Method for non-invasive blood glucose monitoring
US10169860B2 (en) Grayscale thermographic imaging
CN101500475B (zh) 用于监测生理参数的方法和设备
US4428382A (en) Method for identifying the presence of abnormal tissue
JP2000262479A5 (ja)
Hong et al. Real-time stress assessment using thermal imaging
US11096607B2 (en) Systems and methods for thermoregulatory sweat testing
Liden et al. Accuracy and reliability of the SenseWear™ armband as an energy expenditure assessment device
KR20130142122A (ko) 생체(生體)의 온도분포를 디스플레이하기 위한 방법
Saxena et al. Active dynamic thermography to detect the presence of stenosis in the carotid artery
Kirimtat et al. A mini-review of biomedical infrared thermography (B-IRT)
Wang et al. Thermal analysis of blood flow alterations in human hand and foot based on vascular-porous media model
Shourav et al. Estimation of core body temperature by near-infrared imaging of vein diameter change in the dorsal hand
D’Alessandro et al. A Review of Techniques and Bio-Heat Transfer Models Supporting Infrared Thermal Imaging for Diagnosis of Malignancy
Kukreja et al. IoT based foot neuropathy analysis and remote monitoring of foot pressure and temperature
JP2004016734A (ja) サーモグラフィ装置による代謝機能表示方法及びその表示装置
CN108324283B (zh) 对于疼痛的记录方法
Li et al. Diagnosis of renal diseases based on machine learning methods using ultrasound images
KR101602716B1 (ko) 맥파, 조갑모세혈관폭, 및 조갑모세혈관 혈류속도에 기반하여 한열을 구분하는 장치 및 방법
Amri et al. Potentialities of dynamic breast thermography
JP3590049B1 (ja) 血糖値測定装置