JP2004012280A - 光ファイバ振動センサ及び振動測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】特定の周波数領域で高感度が得られると共に装置の小型化が可能であり、しかも複数の測定位置でのセンシングを簡単なシステム構成で行うことを可能とする。
【解決手段】ブラッグ格子光ファイバGを挟んだ両側に光ファイバケーブル11に対して張力を付加するための固定部12A,12Bを設け、この固定部間の光ファイバケーブル11自体に錘13を固定した。これにより、光ファイバケーブル11に検出部となるブラッグ格子光ファイバGを形成し、ブラッグ格子光ファイバGによる反射光の波長シフトによって振動を検知する。
【選択図】 図1
【解決手段】ブラッグ格子光ファイバGを挟んだ両側に光ファイバケーブル11に対して張力を付加するための固定部12A,12Bを設け、この固定部間の光ファイバケーブル11自体に錘13を固定した。これにより、光ファイバケーブル11に検出部となるブラッグ格子光ファイバGを形成し、ブラッグ格子光ファイバGによる反射光の波長シフトによって振動を検知する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラッグ格子光ファイバ(FBG)を用いた光ファイバ振動センサ及びこの光ファイバ振動センサを用いた振動測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、構造物等に作用する振動(加速度)を測定する手段としては、構造物自体又はその周辺に各種方式の振動センサを設置する方法が採用されている。ここで用いられる振動センサは、電磁式或いは歪みゲージ式等、振動の大きさを電気信号として取り出す方式のものが一般に用いられている。電磁式は、磁界中に置かれた振り子のコイルが振動に応じた相対変位によって磁束を切るとコイルに振動速度に比例する誘導起電力が生じることを利用して振動を電気的に測定するものであり、歪みゲージ式は、片持ち梁の板バネの先端に錘を取り付け、振動に応じて板バネに生じる歪みを歪みゲージで電気抵抗変化として検出するものである。
【0003】
このような電気式の振動センサは、強力な電界や磁界の近傍に置くと振動に対応した電気信号が得られなくなるので、正常な測定ができなくなるという欠点を有しており、モニタリング対象物の付設状況に応じては採用することができないという問題がある。このような問題に対処するために、電界や磁界の影響を受けない光ファイバ方式の振動センサが多数提案されている。その中でも、ブラッグ格子光ファイバを用いたものは、精度が高く、一本の光ファイバケーブルに複数のセンサを多重化して設置できる等の優れた特性を有するため、簡単なシステム構成で、広範囲に付設されたモニタリング対象物に対して複数の測定位置で同時に振動測定ができるものとして注目されている。
【0004】
図10は、特開2000−337955号公報に示される従来の光ファイバ振動センサを示す説明図である(同図(b)は同図(a)のA部拡大図を示している。)。この光ファイバ振動センサは、ブラッグ格子Gを有する光ファイバ1Aからなる光ファイバケーブル1の一端を支持体2で支持し、ブラッグ格子Gを挟んだ光ファイバケーブル1の他端(作用点5)に自由端に錘6を固定した振動体3を取り付け、この振動体3を支点4で支持体2に支持させたものである。このような光ファイバ振動センサでは、支持体2に対して図中の矢印a方向に振動が加わると、錘6に慣性力が作用して振動体3の作用点5が矢印b方向に揺動する。この作用点5の揺動によって光ファイバ1Aには応力が作用して、ブラッグ格子Gの間隔に歪みが生じ、その歪みに応じてブラッグ反射光の波長にシフトが生じる。このブラッグ反射光の波長シフトを検知してその時間的な変化を解析することにより、支持体2に加わる振動が測定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような光ファイバ振動センサでは、錘6が振動(加速度)の作用によって生じる慣性力で変位するマス部となり、このマス部が振動体3と光ファイバケーブル1とからなるバネ要素によって支持された構成になっており、振動によってバネ要素内に生じる応力を応力検出手段であるブラッグ格子光ファイバで検出して振動を測定している。
【0006】
これによると、光ファイバ振動センサの感度はマス部である錘6の変位に対するブラッグ格子光ファイバの歪み量で決まり、システムの固有振動数は振動体3の機械的な構造によって決まることになる。したがって、高感度化を図るために作用点5の揺動を大きくしようとすると、振動体3の機構が複雑になってコストアップを招くか、或いは装置全体の大型化を招き、逆に装置を小型化すると、固有振動数が低下し、感度が下がってしまうという問題がある。
【0007】
また一方で、地中埋設構造物に関するヘルスモニタリングへの適用等を考慮した場合には、検知したい振動の周波数は既知であって、特に20〜100Hz程度の低周波数に対して高感度が得られる振動センサが求められている。そして、地下埋設構造物に沿って振動センサを設置する際には、設置の容易性、設置スペースの確保等の観点から装置の小型化に対して高い要求がある。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであって、特定の周波数領域で高感度が得られると共に装置の小型化が可能であり、しかも複数の測定位置でのセンシングを簡単なシステム構成で行うことが可能であって、特に、地下埋設構造物のモニタリングに適した光ファイバ振動センサ及び振動測定方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を具備するものである。まず、光ファイバ振動センサの特徴としては、第1に、光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする。
【0010】
第2に、光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、前記光ファイバケーブルは測定対象に沿って付設され、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバが複数の測定位置に対応して配置され、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする。
【0011】
第3に、第1又は第2の特徴を前提として、前記張力は前記錘に作用する重力と同方向の垂直成分を有することを特徴とする。第4に、第1〜3の特徴を前提として、前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする。
【0012】
そして、このような光ファイバ振動センサを用いる振動測定方法の特徴としては、第1に、光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから振動を測定することを特徴とする。
【0013】
第2に、光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、測定対象に沿って光ファイバケーブルを付設し、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバを複数の測定位置に対応して配置させ、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから、前記各測定位置の振動を測定することを特徴とする。
【0014】
第3に、第1又は第2の特徴を前提として、前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する光ファイバ振動センサ及び振動測定方法は、以下の作用をなすものである。
【0016】
この光ファイバ振動センサは、検出部となるブラッグ格子光ファイバが形成された光ファイバケーブルのみが弾性要素となり、この光ファイバケーブルに固定された錘からなるマス部によって光ファイバケーブルに張力を付加するテンション構造となっている。このような光ファイバ振動センサによると、間接的な弾性要素を省いて簡単化した構造により、センサ自体の超小型化が可能になり、しかも、マス部の変位が直接的にブラッグ格子光ファイバの歪みに変換されるので、高感度の振動検知が可能になると同時に、ブラッグ格子光ファイバに常時大きな歪みレベルを印加する必要がないため、センサの耐久性を高めることができる。
【0017】
そして、システムの減衰を小さくして共振を抑えない構造にすることで、この共振を利用して、設定した固有周波数付近で高感度化を得ることが可能になり、対象とする振動の周波数領域に応じて、目標感度を設定することが可能になる。
【0018】
また、固定部間の光ファイバケーブルに付加される張力を水平成分のみとした場合には、検出される錘の変位からは加速度の向きに対する識別ができないが、固定部間の光ファイバケーブルに付加される張力が錘に作用する重力と同方向の垂直成分を有するテンション構造とすることにより、垂直方向の振動に対して検出されるブラッグ格子光ファイバの歪みと加振加速度が線形関係になり、振動センサとして有効に機能することが可能になる。そして、光ファイバケーブルに付加される張力を調整することによって、特別な補助治具を使用せずに、垂直方向にのみ感度が高く、ノイズとなる奥行き方向及び左右方向の振動に対して感度を低く設定することが可能である。ここでは、錘に重力が作用している場合について説明したが、他の静的な加速度が常時印加されている状況においては、この静的な加速度がバイアスとして作用する方向の振動を有効に検出することができる。
【0019】
このような光ファイバ振動センサを用いて、広範囲に付設された構造物を対象とする振動測定を行うには、反射光の波長が異なる複数のブラッグ格子光ファイバが複数形成された光ファイバケーブルを測定対象に沿って付設し、各ブラッグ格子光ファイバを測定位置に対応させて配置する。そして、この光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射して、各測定位置から反射されて戻ってくる異なる波長の反射光をモニタし、各反射光の波長シフトの時間的な変化によって各測定位置での振動を測定する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光ファイバ振動センサの基本構成を示す説明図である。この光ファイバ振動センサ10は、光ファイバケーブル11に検出部となるブラッグ格子光ファイバGを形成し、光ファイバケーブル11の一方から入射した広帯域の検出光に対してブラッグ格子光ファイバGによって反射された光を検知し、この反射光の波長シフトによって振動を測定するものである。そして、ブラッグ格子光ファイバGを挟んだ両側に、光ファイバケーブル11に対して張力を付加するための固定部12A,12Bが設けられ、この固定部12A,12B間の光ファイバケーブル11自体に錘13が固定されている。
【0021】
この光ファイバ振動センサ10では、光ファイバケーブル11に付加される張力Tは、錘13に作用する重力と同方向の垂直成分を有するものであり、これによって、ブラッグ格子光ファイバGに生じる歪みが錘3に作用する垂直方向の加速度の大きさと方向の両方に対応して変化する。つまり、垂直方向の振動成分をブラッグ格子光ファイバGの歪みに変換して検出することができる。
【0022】
図2は、本発明の光ファイバ振動センサの特性を説明するための説明図である。同図を参照して、前述の構成から成る光ファイバ振動センサの特性を説明するために、y方向(垂直方向)の運動について運動方程式を立てて検討すると、加速度が1galかかる時のブラッグ格子光ファイバの歪み量,すなわち感度κは、以下のようになる。
【0023】
【数1】
【0024】
また、固有振動数ωは、ω=(K/m)1/2で与えられるから、光ファイバの自然長L0を小さくすることで固有振動数を高くすることができ、感度κは初期変位y0に比例し、マス部となる錘13を装着する前の光ファイバの歪みΔLが小さいほど高くできることが分かる。図3は、マス部を付加しない状態の光ファイバの歪みΔLに対する感度κをシュミレーションしたグラフである。ΔLを大きくするほど感度κが低下しており、前述の導出結果と一致する。以上から明らかなように、この光ファイバ振動センサを設計する際には、錘13を付加しない状態では光ファイバに歪みを与えないことで感度を最大にすることができる。
【0025】
図4は、錘13の質量と固定部12A,12B間の光ファイバ長さLとセンサの各特性との関係を示したグラフである(同図(a)は質量又はLと共振周波数の関係、同図(b)は質量又はLと感度との関係を示している。)。各グラフから明らかなように、錘13の質量を大きくするとLに無関係に感度が上がり、Lを大きくすると、感度が変わらないにもかかわらず共振周波数が非常に小さくなる。本発明の光ファイバ振動センサ10は、従来の加速度センサが固有振動数より低い振動数領域でのフラットな特性を利用して安定した測定を行うものであるのに対して、共振特性を生かして高感度化を図ることができるものであるから、Lと錘13の質量を調整することにより、対象とする振動の周波数領域と目標感度を設定することができ、特に、低周波数領域で高感度のセンサ特性を得ることができる。
【0026】
このように、共振特性を生かして高感度化を図る本発明の光ファイバ振動センサにおいては、装置の寿命を考慮した場合、必要に応じて振動系に適当な減衰要素を付加することも有効である。図5は、減衰要素の減衰特性(減衰比)変化に対する感度の変化を示す特性図である。この図から明らかなように、減衰要素を付加することで感度が大きく変化する。固有周波数付近での感度を有効に利用するためには、装置の寿命との関係を考慮して、臨界減衰比より小さい減衰比の範囲で適当な減衰比を設定する必要がある。
【0027】
[実施例]図6は、本発明に係る光ファイバ振動センサの具体的な装置構成の一例を示す説明図である。同図(a)が平面図、同図(b)が側面図を示している。この実施例では、支持台14上の一端側に光ファイバ固定台15を固定し、他端側に光ファイバ固定台16を位置調整可能に装着しており、調整ネジ17によって光ファイバ固定台15,16間の距離を調整できるようにしている。そして、光ファイバ固定台15,16には、溝部15a,16aが形成されており、その中に光ファイバケーブル11を接着或いは固定具等により固定して固定部12A,12Bを形成している。溝部15a,16aに光ファイバケーブル11を固定した後、調整ネジ17により光ファイバ固定台15,16間の距離を調整して、錘13を装着する前の光ファイバケーブル11の歪みを調整する。錘13は、後付ができるように二つ割れ等の構造とし、内部に光ファイバケーブル11を嵌着する溝が形成されている。更に、この実施例では錘13と支持台14との間に減衰機構(ダンパ)18を設けている。
【0028】
図7は光ファイバケーブル11に対して錘13を固定するための構造の一例を示す説明図である。この例では、光ファイバケーブル11の表面(被覆層)に錘13の直径に応じた間隔を離した突部11a,11aを設け、その間で二つ割れの錘13を結合して固定している。この例に限らず、接着剤等によって錘13を光ファイバケーブル11に固定することもできる。
【0029】
本実施例における各部のパラメータ及びこのパラメータから設計される垂直方向動作の固有振動数及び感度は、以下のとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
このような実施形態における光ファイバ振動センサ10を用いた振動測定方法について図8を参照しながら説明する。先ず、光ファイバケーブル11の一端から同図(a)に示されるように広帯域の波長特性を有する検出光Iを入射する。この検出光Iは、前述の光ファイバ振動センサ10のブラッグ格子光ファイバGを通過すると、同図(c)に示されるようにブラッグ反射光Rの波長成分(λG)のみが反射され、同図(b)に示されるようにその他の波長成分が透過光I’となって通過することになる。そして、この反射光Rを検知してその時間的な変化をモニタリングすることで振動を測定する。つまり、光ファイバ振動センサ10を測定位置に設置してセンサが振動を検出すると、この振動がブラッグ格子光ファイバGの歪みに変換されるので、同図(c)に示されるような波長のシフトした反射光R’が検出されることになる。この反射光の波長シフトの時間的変化を解析して測定位置での振動を測定することができる。
【0032】
図9は、本発明の光ファイバ振動センサ10を用いて広範囲に付設された構造物(導管)に対して振動を測定するシステムを示す説明図である。このシステムにおいては、地中に埋設されている導管20に沿ってセンサ内蔵管21を付設し、そのセンサ内蔵管21の中に複数の光ファイバ振動センサ10を構成する光ファイバケーブル11を配備している。ここで光ファイバ振動センサ10におけるブラッグ格子光ファイバGn等は複数の測定位置Pn等に対応した位置にそれぞれ配置されており、各々のブラッグ格子光ファイバGn等が異なる反射波長を有するように設定されている。
【0033】
そして、この光ファイバケーブル11の入射端に図8(a)に示すような波長特性を示す光源22を接続すると共に、各ブラッグ格子光ファイバGn等で反射された反射光を取り出すためのカプラ23を設け、このカプラ23の出力端に波長検出器24を接続している。この波長検出器24で検出された反射光の検出信号は演算制御部25に送られ、そこで各ブラッグ格子光ファイバGn等で反射された反射光毎に解析がなされる。
【0034】
このようなシステムを用いた振動の測定方法について説明すると、光源22からの検出光Iを光ファイバケーブル11に入射して、各測定位置Pn等に配置されたブラッグ格子光ファイバGn等から反射されて戻ってくる異なる波長の反射光Rn等を波長検出器24で各波長毎に検出する。そして、各々の光ファイバ振動センサ10が振動を検知すると、それに対応した反射光Rn等が波長シフトを生じるので、この波長シフトの時間的な変化を解析して各測定位置での振動を測定する。
【0035】
このようなシステムによると、一本の光ファイバケーブル11を複数の測定位置に亘って引き回すだけで、個々の測定位置に対応した異なる波長の反射光を用いた多重化センサを構成することができる。したがって、広域付設構造物の複数箇所を同時に測定する場合にも、配線の手間やケーブルの径大化の問題が生じない。また、光ファイバ振動センサ10の単体は、前述したように、光ファイバケーブル11に直接錘13を固定した簡単な構造であるため超小型の光ファイバ振動センサを構成することが可能になる。そして、これによるとセンサ内蔵管21を極細くすることができるので、付設スペースを確保するための問題も生じない。
【0036】
更には、前述したように光ファイバ振動センサ10は低周波領域で高感度が得られる設計が可能であるから、特に20〜100Hzの低周波振動を測定対象とする地下埋設構造物等のモニタリングに適している。
【0037】
なお、前述の実施形態或いは実施例においては、錘を固定部間の中心に配置した左右対称の構造を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、左右非対称位置に錘を固定したものや、複数の錘を装着したものであってもよく、これらも前述の例と同様の特徴を示す光ファイバ振動センサとなり得る。
【0038】
【発明の効果】
本発明はこのように構成されるので、以下に示すような効果を奏する。
(1)バネ要素を使用せず、ブラッグ格子光ファイバ(FBG)を形成した光ファイバケーブル自身をバネ要素として用いているので、従来提案されたFBGを利用した光ファイバ方式の振動センサと比較して、小型で且つ高感度な振動センサを実現することができる。
(2)共振特性を利用しており(減衰機構を有するものでは減衰比を意図的に低くすることによって)、固有振動数近辺の感度を大幅に高めることができる。したがって、予め振動数の帯域が判明している測定対象を極めて高精度に計測することができる。
(3)光ファイバケーブルのFBGを挟んだ両端部に固定部を設け、その間に錘を固定するのみの簡単な構成で振動センサとして機能するので、省スペース且つ極めて低コストなセンサシステムを実現できる。
(4)本発明の光ファイバ振動センサは高感度であり、従来のFBGを利用した光ファイバ振動センサに比較してFBG部に常時大きな歪みレベルを印加する必要がないので、センサの耐久性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ振動センサの基本構成を示す説明図である。
【図2】本発明の光ファイバ振動センサの特性を説明するための説明図である。
【図3】本発明において、マス部を付加しない状態の光ファイバの歪みΔLに対する感度κをシュミレーションしたグラフである。
【図4】本発明において、錘の質量と固定部間の光ファイバ長さLとセンサの各特性との関係を示したグラフである。
【図5】本発明において、減衰要素の減衰特性(減衰比)変化に対する感度の変化を示す特性図である。
【図6】本発明に係る光ファイバ振動センサの具体的な装置構成の一例を示す説明図である。同図(a)が平面図、同図(b)が側面図を示している。
【図7】本発明において、光ファイバケーブルに対して錘を固定するための構造の一例を示す説明図である。
【図8】光ファイバ振動センサを用いた振動測定方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明の光ファイバ振動センサを用いたシステムを示す説明図である。
【図10】従来の光ファイバ振動センサを示す説明図である(同図(b)は同図(a)のA部拡大図を示している。)。
【符号の説明】
10 光ファイバ振動センサ
11 光ファイバケーブル
12A,12B 固定部
13 錘
14 支持台
15,16 光ファイバ固定台
17 調整ネジ
18 減衰機構
20 導管
21 センサ内蔵管
22 光源
23 カプラ
24 波長検出器
25 演算制御部
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラッグ格子光ファイバ(FBG)を用いた光ファイバ振動センサ及びこの光ファイバ振動センサを用いた振動測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、構造物等に作用する振動(加速度)を測定する手段としては、構造物自体又はその周辺に各種方式の振動センサを設置する方法が採用されている。ここで用いられる振動センサは、電磁式或いは歪みゲージ式等、振動の大きさを電気信号として取り出す方式のものが一般に用いられている。電磁式は、磁界中に置かれた振り子のコイルが振動に応じた相対変位によって磁束を切るとコイルに振動速度に比例する誘導起電力が生じることを利用して振動を電気的に測定するものであり、歪みゲージ式は、片持ち梁の板バネの先端に錘を取り付け、振動に応じて板バネに生じる歪みを歪みゲージで電気抵抗変化として検出するものである。
【0003】
このような電気式の振動センサは、強力な電界や磁界の近傍に置くと振動に対応した電気信号が得られなくなるので、正常な測定ができなくなるという欠点を有しており、モニタリング対象物の付設状況に応じては採用することができないという問題がある。このような問題に対処するために、電界や磁界の影響を受けない光ファイバ方式の振動センサが多数提案されている。その中でも、ブラッグ格子光ファイバを用いたものは、精度が高く、一本の光ファイバケーブルに複数のセンサを多重化して設置できる等の優れた特性を有するため、簡単なシステム構成で、広範囲に付設されたモニタリング対象物に対して複数の測定位置で同時に振動測定ができるものとして注目されている。
【0004】
図10は、特開2000−337955号公報に示される従来の光ファイバ振動センサを示す説明図である(同図(b)は同図(a)のA部拡大図を示している。)。この光ファイバ振動センサは、ブラッグ格子Gを有する光ファイバ1Aからなる光ファイバケーブル1の一端を支持体2で支持し、ブラッグ格子Gを挟んだ光ファイバケーブル1の他端(作用点5)に自由端に錘6を固定した振動体3を取り付け、この振動体3を支点4で支持体2に支持させたものである。このような光ファイバ振動センサでは、支持体2に対して図中の矢印a方向に振動が加わると、錘6に慣性力が作用して振動体3の作用点5が矢印b方向に揺動する。この作用点5の揺動によって光ファイバ1Aには応力が作用して、ブラッグ格子Gの間隔に歪みが生じ、その歪みに応じてブラッグ反射光の波長にシフトが生じる。このブラッグ反射光の波長シフトを検知してその時間的な変化を解析することにより、支持体2に加わる振動が測定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような光ファイバ振動センサでは、錘6が振動(加速度)の作用によって生じる慣性力で変位するマス部となり、このマス部が振動体3と光ファイバケーブル1とからなるバネ要素によって支持された構成になっており、振動によってバネ要素内に生じる応力を応力検出手段であるブラッグ格子光ファイバで検出して振動を測定している。
【0006】
これによると、光ファイバ振動センサの感度はマス部である錘6の変位に対するブラッグ格子光ファイバの歪み量で決まり、システムの固有振動数は振動体3の機械的な構造によって決まることになる。したがって、高感度化を図るために作用点5の揺動を大きくしようとすると、振動体3の機構が複雑になってコストアップを招くか、或いは装置全体の大型化を招き、逆に装置を小型化すると、固有振動数が低下し、感度が下がってしまうという問題がある。
【0007】
また一方で、地中埋設構造物に関するヘルスモニタリングへの適用等を考慮した場合には、検知したい振動の周波数は既知であって、特に20〜100Hz程度の低周波数に対して高感度が得られる振動センサが求められている。そして、地下埋設構造物に沿って振動センサを設置する際には、設置の容易性、設置スペースの確保等の観点から装置の小型化に対して高い要求がある。
【0008】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものであって、特定の周波数領域で高感度が得られると共に装置の小型化が可能であり、しかも複数の測定位置でのセンシングを簡単なシステム構成で行うことが可能であって、特に、地下埋設構造物のモニタリングに適した光ファイバ振動センサ及び振動測定方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を具備するものである。まず、光ファイバ振動センサの特徴としては、第1に、光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする。
【0010】
第2に、光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、前記光ファイバケーブルは測定対象に沿って付設され、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバが複数の測定位置に対応して配置され、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする。
【0011】
第3に、第1又は第2の特徴を前提として、前記張力は前記錘に作用する重力と同方向の垂直成分を有することを特徴とする。第4に、第1〜3の特徴を前提として、前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする。
【0012】
そして、このような光ファイバ振動センサを用いる振動測定方法の特徴としては、第1に、光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから振動を測定することを特徴とする。
【0013】
第2に、光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、測定対象に沿って光ファイバケーブルを付設し、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバを複数の測定位置に対応して配置させ、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから、前記各測定位置の振動を測定することを特徴とする。
【0014】
第3に、第1又は第2の特徴を前提として、前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする。
【0015】
このような特徴を有する光ファイバ振動センサ及び振動測定方法は、以下の作用をなすものである。
【0016】
この光ファイバ振動センサは、検出部となるブラッグ格子光ファイバが形成された光ファイバケーブルのみが弾性要素となり、この光ファイバケーブルに固定された錘からなるマス部によって光ファイバケーブルに張力を付加するテンション構造となっている。このような光ファイバ振動センサによると、間接的な弾性要素を省いて簡単化した構造により、センサ自体の超小型化が可能になり、しかも、マス部の変位が直接的にブラッグ格子光ファイバの歪みに変換されるので、高感度の振動検知が可能になると同時に、ブラッグ格子光ファイバに常時大きな歪みレベルを印加する必要がないため、センサの耐久性を高めることができる。
【0017】
そして、システムの減衰を小さくして共振を抑えない構造にすることで、この共振を利用して、設定した固有周波数付近で高感度化を得ることが可能になり、対象とする振動の周波数領域に応じて、目標感度を設定することが可能になる。
【0018】
また、固定部間の光ファイバケーブルに付加される張力を水平成分のみとした場合には、検出される錘の変位からは加速度の向きに対する識別ができないが、固定部間の光ファイバケーブルに付加される張力が錘に作用する重力と同方向の垂直成分を有するテンション構造とすることにより、垂直方向の振動に対して検出されるブラッグ格子光ファイバの歪みと加振加速度が線形関係になり、振動センサとして有効に機能することが可能になる。そして、光ファイバケーブルに付加される張力を調整することによって、特別な補助治具を使用せずに、垂直方向にのみ感度が高く、ノイズとなる奥行き方向及び左右方向の振動に対して感度を低く設定することが可能である。ここでは、錘に重力が作用している場合について説明したが、他の静的な加速度が常時印加されている状況においては、この静的な加速度がバイアスとして作用する方向の振動を有効に検出することができる。
【0019】
このような光ファイバ振動センサを用いて、広範囲に付設された構造物を対象とする振動測定を行うには、反射光の波長が異なる複数のブラッグ格子光ファイバが複数形成された光ファイバケーブルを測定対象に沿って付設し、各ブラッグ格子光ファイバを測定位置に対応させて配置する。そして、この光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射して、各測定位置から反射されて戻ってくる異なる波長の反射光をモニタし、各反射光の波長シフトの時間的な変化によって各測定位置での振動を測定する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光ファイバ振動センサの基本構成を示す説明図である。この光ファイバ振動センサ10は、光ファイバケーブル11に検出部となるブラッグ格子光ファイバGを形成し、光ファイバケーブル11の一方から入射した広帯域の検出光に対してブラッグ格子光ファイバGによって反射された光を検知し、この反射光の波長シフトによって振動を測定するものである。そして、ブラッグ格子光ファイバGを挟んだ両側に、光ファイバケーブル11に対して張力を付加するための固定部12A,12Bが設けられ、この固定部12A,12B間の光ファイバケーブル11自体に錘13が固定されている。
【0021】
この光ファイバ振動センサ10では、光ファイバケーブル11に付加される張力Tは、錘13に作用する重力と同方向の垂直成分を有するものであり、これによって、ブラッグ格子光ファイバGに生じる歪みが錘3に作用する垂直方向の加速度の大きさと方向の両方に対応して変化する。つまり、垂直方向の振動成分をブラッグ格子光ファイバGの歪みに変換して検出することができる。
【0022】
図2は、本発明の光ファイバ振動センサの特性を説明するための説明図である。同図を参照して、前述の構成から成る光ファイバ振動センサの特性を説明するために、y方向(垂直方向)の運動について運動方程式を立てて検討すると、加速度が1galかかる時のブラッグ格子光ファイバの歪み量,すなわち感度κは、以下のようになる。
【0023】
【数1】
【0024】
また、固有振動数ωは、ω=(K/m)1/2で与えられるから、光ファイバの自然長L0を小さくすることで固有振動数を高くすることができ、感度κは初期変位y0に比例し、マス部となる錘13を装着する前の光ファイバの歪みΔLが小さいほど高くできることが分かる。図3は、マス部を付加しない状態の光ファイバの歪みΔLに対する感度κをシュミレーションしたグラフである。ΔLを大きくするほど感度κが低下しており、前述の導出結果と一致する。以上から明らかなように、この光ファイバ振動センサを設計する際には、錘13を付加しない状態では光ファイバに歪みを与えないことで感度を最大にすることができる。
【0025】
図4は、錘13の質量と固定部12A,12B間の光ファイバ長さLとセンサの各特性との関係を示したグラフである(同図(a)は質量又はLと共振周波数の関係、同図(b)は質量又はLと感度との関係を示している。)。各グラフから明らかなように、錘13の質量を大きくするとLに無関係に感度が上がり、Lを大きくすると、感度が変わらないにもかかわらず共振周波数が非常に小さくなる。本発明の光ファイバ振動センサ10は、従来の加速度センサが固有振動数より低い振動数領域でのフラットな特性を利用して安定した測定を行うものであるのに対して、共振特性を生かして高感度化を図ることができるものであるから、Lと錘13の質量を調整することにより、対象とする振動の周波数領域と目標感度を設定することができ、特に、低周波数領域で高感度のセンサ特性を得ることができる。
【0026】
このように、共振特性を生かして高感度化を図る本発明の光ファイバ振動センサにおいては、装置の寿命を考慮した場合、必要に応じて振動系に適当な減衰要素を付加することも有効である。図5は、減衰要素の減衰特性(減衰比)変化に対する感度の変化を示す特性図である。この図から明らかなように、減衰要素を付加することで感度が大きく変化する。固有周波数付近での感度を有効に利用するためには、装置の寿命との関係を考慮して、臨界減衰比より小さい減衰比の範囲で適当な減衰比を設定する必要がある。
【0027】
[実施例]図6は、本発明に係る光ファイバ振動センサの具体的な装置構成の一例を示す説明図である。同図(a)が平面図、同図(b)が側面図を示している。この実施例では、支持台14上の一端側に光ファイバ固定台15を固定し、他端側に光ファイバ固定台16を位置調整可能に装着しており、調整ネジ17によって光ファイバ固定台15,16間の距離を調整できるようにしている。そして、光ファイバ固定台15,16には、溝部15a,16aが形成されており、その中に光ファイバケーブル11を接着或いは固定具等により固定して固定部12A,12Bを形成している。溝部15a,16aに光ファイバケーブル11を固定した後、調整ネジ17により光ファイバ固定台15,16間の距離を調整して、錘13を装着する前の光ファイバケーブル11の歪みを調整する。錘13は、後付ができるように二つ割れ等の構造とし、内部に光ファイバケーブル11を嵌着する溝が形成されている。更に、この実施例では錘13と支持台14との間に減衰機構(ダンパ)18を設けている。
【0028】
図7は光ファイバケーブル11に対して錘13を固定するための構造の一例を示す説明図である。この例では、光ファイバケーブル11の表面(被覆層)に錘13の直径に応じた間隔を離した突部11a,11aを設け、その間で二つ割れの錘13を結合して固定している。この例に限らず、接着剤等によって錘13を光ファイバケーブル11に固定することもできる。
【0029】
本実施例における各部のパラメータ及びこのパラメータから設計される垂直方向動作の固有振動数及び感度は、以下のとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
このような実施形態における光ファイバ振動センサ10を用いた振動測定方法について図8を参照しながら説明する。先ず、光ファイバケーブル11の一端から同図(a)に示されるように広帯域の波長特性を有する検出光Iを入射する。この検出光Iは、前述の光ファイバ振動センサ10のブラッグ格子光ファイバGを通過すると、同図(c)に示されるようにブラッグ反射光Rの波長成分(λG)のみが反射され、同図(b)に示されるようにその他の波長成分が透過光I’となって通過することになる。そして、この反射光Rを検知してその時間的な変化をモニタリングすることで振動を測定する。つまり、光ファイバ振動センサ10を測定位置に設置してセンサが振動を検出すると、この振動がブラッグ格子光ファイバGの歪みに変換されるので、同図(c)に示されるような波長のシフトした反射光R’が検出されることになる。この反射光の波長シフトの時間的変化を解析して測定位置での振動を測定することができる。
【0032】
図9は、本発明の光ファイバ振動センサ10を用いて広範囲に付設された構造物(導管)に対して振動を測定するシステムを示す説明図である。このシステムにおいては、地中に埋設されている導管20に沿ってセンサ内蔵管21を付設し、そのセンサ内蔵管21の中に複数の光ファイバ振動センサ10を構成する光ファイバケーブル11を配備している。ここで光ファイバ振動センサ10におけるブラッグ格子光ファイバGn等は複数の測定位置Pn等に対応した位置にそれぞれ配置されており、各々のブラッグ格子光ファイバGn等が異なる反射波長を有するように設定されている。
【0033】
そして、この光ファイバケーブル11の入射端に図8(a)に示すような波長特性を示す光源22を接続すると共に、各ブラッグ格子光ファイバGn等で反射された反射光を取り出すためのカプラ23を設け、このカプラ23の出力端に波長検出器24を接続している。この波長検出器24で検出された反射光の検出信号は演算制御部25に送られ、そこで各ブラッグ格子光ファイバGn等で反射された反射光毎に解析がなされる。
【0034】
このようなシステムを用いた振動の測定方法について説明すると、光源22からの検出光Iを光ファイバケーブル11に入射して、各測定位置Pn等に配置されたブラッグ格子光ファイバGn等から反射されて戻ってくる異なる波長の反射光Rn等を波長検出器24で各波長毎に検出する。そして、各々の光ファイバ振動センサ10が振動を検知すると、それに対応した反射光Rn等が波長シフトを生じるので、この波長シフトの時間的な変化を解析して各測定位置での振動を測定する。
【0035】
このようなシステムによると、一本の光ファイバケーブル11を複数の測定位置に亘って引き回すだけで、個々の測定位置に対応した異なる波長の反射光を用いた多重化センサを構成することができる。したがって、広域付設構造物の複数箇所を同時に測定する場合にも、配線の手間やケーブルの径大化の問題が生じない。また、光ファイバ振動センサ10の単体は、前述したように、光ファイバケーブル11に直接錘13を固定した簡単な構造であるため超小型の光ファイバ振動センサを構成することが可能になる。そして、これによるとセンサ内蔵管21を極細くすることができるので、付設スペースを確保するための問題も生じない。
【0036】
更には、前述したように光ファイバ振動センサ10は低周波領域で高感度が得られる設計が可能であるから、特に20〜100Hzの低周波振動を測定対象とする地下埋設構造物等のモニタリングに適している。
【0037】
なお、前述の実施形態或いは実施例においては、錘を固定部間の中心に配置した左右対称の構造を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、左右非対称位置に錘を固定したものや、複数の錘を装着したものであってもよく、これらも前述の例と同様の特徴を示す光ファイバ振動センサとなり得る。
【0038】
【発明の効果】
本発明はこのように構成されるので、以下に示すような効果を奏する。
(1)バネ要素を使用せず、ブラッグ格子光ファイバ(FBG)を形成した光ファイバケーブル自身をバネ要素として用いているので、従来提案されたFBGを利用した光ファイバ方式の振動センサと比較して、小型で且つ高感度な振動センサを実現することができる。
(2)共振特性を利用しており(減衰機構を有するものでは減衰比を意図的に低くすることによって)、固有振動数近辺の感度を大幅に高めることができる。したがって、予め振動数の帯域が判明している測定対象を極めて高精度に計測することができる。
(3)光ファイバケーブルのFBGを挟んだ両端部に固定部を設け、その間に錘を固定するのみの簡単な構成で振動センサとして機能するので、省スペース且つ極めて低コストなセンサシステムを実現できる。
(4)本発明の光ファイバ振動センサは高感度であり、従来のFBGを利用した光ファイバ振動センサに比較してFBG部に常時大きな歪みレベルを印加する必要がないので、センサの耐久性を大幅に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ振動センサの基本構成を示す説明図である。
【図2】本発明の光ファイバ振動センサの特性を説明するための説明図である。
【図3】本発明において、マス部を付加しない状態の光ファイバの歪みΔLに対する感度κをシュミレーションしたグラフである。
【図4】本発明において、錘の質量と固定部間の光ファイバ長さLとセンサの各特性との関係を示したグラフである。
【図5】本発明において、減衰要素の減衰特性(減衰比)変化に対する感度の変化を示す特性図である。
【図6】本発明に係る光ファイバ振動センサの具体的な装置構成の一例を示す説明図である。同図(a)が平面図、同図(b)が側面図を示している。
【図7】本発明において、光ファイバケーブルに対して錘を固定するための構造の一例を示す説明図である。
【図8】光ファイバ振動センサを用いた振動測定方法を説明するための説明図である。
【図9】本発明の光ファイバ振動センサを用いたシステムを示す説明図である。
【図10】従来の光ファイバ振動センサを示す説明図である(同図(b)は同図(a)のA部拡大図を示している。)。
【符号の説明】
10 光ファイバ振動センサ
11 光ファイバケーブル
12A,12B 固定部
13 錘
14 支持台
15,16 光ファイバ固定台
17 調整ネジ
18 減衰機構
20 導管
21 センサ内蔵管
22 光源
23 カプラ
24 波長検出器
25 演算制御部
Claims (7)
- 光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、
前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする光ファイバ振動センサ。 - 光ファイバケーブルに検出部となるブラッグ格子光ファイバを形成し、該ブラッグ格子光ファイバによる反射光の波長シフトによって振動を検知する光ファイバ振動センサにおいて、
前記光ファイバケーブルは測定対象に沿って付設され、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバが複数の測定位置に対応して配置され、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の前記光ファイバケーブル自体に錘を固定したことを特徴とする光ファイバ振動センサ。 - 前記張力は前記錘に作用する重力と同方向の垂直成分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光ファイバ振動センサ。
- 前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光ファイバ振動センサ。
- 光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、
前記ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから振動を測定することを特徴とする振動測定方法。 - 光ファイバケーブルに広帯域の検出光を入射させ、該光ファイバケーブルに検出部として形成されたブラッグ格子光ファイバからの反射光を検知して該反射光の波長シフトの変化から振動を測定する振動測定方法において、
測定対象に沿って光ファイバケーブルを付設し、反射光の波長が異なる複数の前記ブラッグ格子光ファイバを複数の測定位置に対応して配置させ、前記各ブラッグ格子光ファイバを挟んだ両側に前記光ファイバケーブルに対して張力を付加するための固定部を設け、該固定部間の光ファイバケーブルに固定された錘の変位による前記波長シフトから、前記各測定位置の振動を測定することを特徴とする振動測定方法。 - 前記固定部間の光ファイバケーブル長さと錘の質量によって、測定対象の振動周波数領域と目標感度が設定されることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載の振動測定方法。
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JP5162275B2 (ja) | 振動検出器 |
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