JP2004011479A - 重油燃料を利用する内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温高圧水により重油中の金属を除去し、ディーゼルエンジンに供することにより、排ガス中の酸化金属を低減し、金属溶融塩による機器腐食を防ぐ。
【解決手段】超臨界水と重質油と酸化剤を混合し反応させ、金属を脱離反応させる反応器と、脱離した金属を捕捉剤により液体中から除去する捕捉器から構成される油改質器を、ディーゼルエンジン燃料供給系統の上流に設置する。
【効果】高温高圧水と酸化剤により、重質油から金属を脱離させ、捕捉剤により捕捉する。金属を除去した重油を、ディーゼルエンジンに送ることにより、排ガス中の酸化金属を低減し、機器腐食を防ぐことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】超臨界水と重質油と酸化剤を混合し反応させ、金属を脱離反応させる反応器と、脱離した金属を捕捉剤により液体中から除去する捕捉器から構成される油改質器を、ディーゼルエンジン燃料供給系統の上流に設置する。
【効果】高温高圧水と酸化剤により、重質油から金属を脱離させ、捕捉剤により捕捉する。金属を除去した重油を、ディーゼルエンジンに送ることにより、排ガス中の酸化金属を低減し、機器腐食を防ぐことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油精製プロセスに関し、特に重質油の脱金属技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶などに用いるディーゼルエンジンは、燃料としてA重油、あるいは船舶種によってはC重油あるいはさらに重質な油燃料を使用し、自動車用ディーゼルエンジンに用いる軽油燃料と比べて、燃料中に多様な金属を含んだ燃料を使用する。重油は軽油に比べ安価なため、燃料コスト、すなわち輸送コストが低減できるため、大出力の船舶用ディーゼルには適した燃料である。
【0003】
図2は従来の重油燃料によるディーゼルエンジンの系統を示している。重油3は、自動車用ディーゼルエンジンの軽油よりも重質な重油であり、これをディーゼルエンジン13に噴射するには液化、あるいは気化が必要となる場合がある。そのため、燃料を加熱する加熱器19が取りつけられている場合がある。加熱された燃料20は、ディーゼルエンジン13に噴射され、空気12と混合,圧縮,爆発させることにより、動力を取り出す。エンジン13から排出された排ガス
14は、排ガス冷却器15によって降温され、冷却排ガス18として、煙突などから排出される。
【0004】
一方、重油には前記のように多種の金属類が含まれており、例えば硫黄は、燃焼排ガス中に硫黄酸化物として排出される。これまで、発電設備,自動車などには排出ガス中の硫黄酸化物に規制がかけられていたが、船舶については厳しい規制はなかった。しかし、近年、船舶についても排出ガス規制の動きが出ており、法制化の可能性が高まっている。このような硫黄規制に対しては、C重油を直接脱硫した、低S重油が商品化されており、低S重油への燃料切り替えで対応することも可能である。しかしながら、燃料切り替えは燃料価格を引き上げ、大量の燃料を使用する船舶では、輸送コストの増大に繋がる。また、重油を使用する際、硫黄のほか、バナジウム,ニッケル,ナトリウム,カリウムなどの金属類は、排出ガスによる大気汚染のほかに、機器腐食の原因ともなっている。これらの金属は、燃焼時に溶融塩を生成し、500℃以上の温度で液化,機器材料に付着し高温腐食を引き起こす。すなわち、エンジン排気バルブから、ガス冷却,煙突など排出口にいたる過程で材料腐食を招き、機器の寿命短縮,信頼性の低下を招くこととなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水熱処理技術を用いて、重油中のバナジウム等の金属を除去する方法を提供することにある。本発明の方法を採ることにより、ディーゼルエンジン内の燃焼において、大気汚染、あるいは機器腐食性溶融塩の原因となる、重油中の金属類を、燃料供給前に除去し、汚染防止と機器寿命延長を同時に実現するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、超臨界水と重油を混合し、超臨界水の有機物溶媒としての特性と、加水分解剤としての特徴を利用し、重質油中の除去対象物質を、重質油中の環状炭化水素分子あるいはポルフィリン構造中より脱離させる反応を起こす脱金属方法および装置を提供する。このとき、金属除去反応を進行させるため、酸化剤を添加することが特徴である。
【0007】
重油中の金属、例えばバナジウムは、図3に例示するように、酸化バナジウムを中心とするポルフィリン形態、あるいは環状有機分子鎖のなかに存在する
(Fish,R. H.,Komlenic,J. J.,Anal. Chem.1984,56(3),p510−517)。高温,高圧水は有機分子を溶媒中に分散させ、かつ加水分解作用により有機分子鎖を分解する作用がある。しかし、高温,高圧水のみの作用では、有機分子中の金属化合物を分解する作用は得られない。類似の有機化合物の分解方法として、有機硫黄を、アルカリ金属を添加した超臨界水により分解する手法が知られているが、バナジウム等の金属はアルカリ添加によっても分解されることは無い。
【0008】
我々は、高温,高圧水と重質油を混合し、ここに酸化剤を添加することにより、バナジウム等の金属が有機分子中から分解,除去される反応が進行することを確認した。図4は、重質油,水,過酸化水素水を、高温,高圧状態で反応させたときの、バナジウム除去率を示したものである。温度の上昇とともにバナジウム除去率は向上する。この反応は図5に示したように、(1)有機炭化水素の部分酸化と、(2)COと水のシフト反応による水素発生、(3)COの有機分子中酸素への攻撃、(4)水素分子、および水の有機分子鎖開裂作用、(5)酸化剤によるバナジウム酸化作用、等が同時進行するものと考えられる。この反応により、有機分子中のバナジウムは分解除去され、酸化バナジウム分子として遊離する。
【0009】
さらに、上記の反応により分解した酸化バナジウム等の金属を、吸着,反応により原料油中から除去する。金属を吸着する方法としては、請求項3に記載のように、活性炭などによる物理吸着、あるいは触媒製造などにも用いられる無機化合物による化学吸着がある。また、酸化金属、例えば酸化バナジウムや酸化ニッケル,ナトリウム,カリウムは、カルシウム,鉄などの金属と複合酸化物を生成するため、これらの金属を重質油中から金属を除去する捕捉材として使用することができる。さらに、原料油の一部より精製できる固形炭素(コーク)に金属を捕捉する方法も可能である。この捕捉剤の使用により、除去対象物質を捕捉し、固体の形で系外に排出することが可能になる。系外に取り出した捕捉材を処理することにより金属を単離し再生使用することも可能になる効果も得られる。
【0010】
本発明はまた、上記した手段において、反応に使用する高温高圧水を、ディーゼルエンジンの排熱によって生成することを特徴とする。これにより、高温高圧水を生成するエネルギーを外部より新たに与える必要が無くなり、エンジンの効率を高めることができる。
【0011】
本発明は、前記した改質装置を有するディーゼルエンジンを搭載した船舶をも提供する。これにより、排出ガス中への金属酸化物の放出を抑制すると共に、長寿命のエンジンを実現しながら、従来の安価な重油を使用でき、輸送コストを低減できる船舶を提供できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本実施例は発明の具体的構成の一例を示しており、本発明全体が本実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明を適用したディーゼルエンジンの一形態を示した。ディーゼルエンジン13の燃料供給系統には油改質工程が設置されている。油改質工程の反応器1の入口には、高温高圧水2と酸化剤4と金属を含有する重油3を取り入れる供給部が設置される。超臨界水の溶媒作用により水と重質油,酸化剤が混合した液体が反応器1内で脱金属反応を起こす。高温高圧水2と重油3と酸化剤4との混合は、単純合流のほか、旋回流形成、あるいは対向流による衝突を利用して、混合を促進する方法も有効である。反応器1では図5に示した反応により、重質油中のバナジウム等の金属が有機分子中から脱離する反応が進行する。脱離反応を進行させるためには、反応器1出口までに、系が必要な温度,圧力条件になっていることが必要であり、本実施例のように予め高温高圧水を供給する構成の他にも、水と重質油を反応器1に供給した後に加熱することで、昇温,昇圧させる構成も取り得る。反応器1で脱金属改質された燃料と脱離した金属を含有する改質中間油5は、金属を分離するために設置された捕捉器6に送られる。図1に示された、反応器1と捕捉器6をつなぐ連結管が省略され、反応器1と捕捉器6が連続した構成も、もちろん取り得る。捕捉器6中には金属を捕捉する捕捉剤7が充填され、流通する液体中に含有されたバナジウム等の金属を、吸着あるいは反応により捕捉する。捕捉器6に捕捉剤7を滞留させる方法としては、目皿状の固定材により捕捉剤7を固定層として留まらせる方法の他に、捕捉剤を粒状とし、粒径を液体の線速度以上の終端速度をもつ大きさにすることで、流動層として留まらせる方法も取り得る。また、捕捉剤を成形して、板状あるいはハニカム状とし、隙間を液体が流通する方法も取り得る。捕捉剤7は、除去対象物質の捕捉を連続した結果、捕捉能力が飽和にいたるが、このような使用済み捕捉剤を排捕捉剤9として取り出す系統、あるいは新捕捉剤8を補給する系統が設けられた構成も取り得る。また、捕捉器6を複数配置し、順次使用する捕捉器を切り替え、あるいは一定時間毎に捕捉器の一部を停止する運転も可能であり、燃料流通を停止した捕捉器中の捕捉剤を交換する構成と運転方法も取り得る。捕捉器6で金属を除去された油は、捕捉剤、他の粒子を取り除く固液分離器10を通過し、改質油11として搬送される。金属を取り除いた油を、ディーゼルエンジン13に供給し、燃焼させ動力を取り出す工程は、図2に示した従来のディーゼルエンジンと同様である。改質油11は、高温高圧水の溶媒効果により水油が分子レベルで混合した後であり、温度・圧力を下げても、良く混合されたエマルジョン状態となっている。そのため、エンジン入口に、改質油を減圧,冷却する工程を取りつけ、水油エマルジョンとしてエンジンに供給する構成も取りうる。その際、水油を分離する分離器を設置し、油のみをエンジンに供給してももちろん良い。一方、高温高圧水の熱エネルギーをエンジンで回収するため、減圧,冷却工程を設置しない、図1に示す系統も、エンジンの効率向上には有効である。エンジンの排ガス14は、汚染物質の金属が除去されているため、そのまま排出しても良い。また、図に示すように熱交換器15にポンプ17によって水16を供給し、高温高圧水2を排ガス14の熱より生成すれば、系統全体の熱効率を向上させることが可能となる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、重油燃料を使用するディーゼルエンジンの燃料から、大気汚染物質であり、かつ機器腐食原因である、金属類を除去することができる。重油からの金属除去に要する、高温高圧水は、エンジン排ガスから熱を取り出すことで生成可能であり、外部からエネルギーを新たに加えることなく、燃料中の金属を除去可能となる。このディーゼルエンジンを船舶などに搭載すれば、従来の安価な重油をそのまま使用しながら、排ガスの規制への対応と、機器の長寿命化が可能となる。従来の輸送コストを上昇させずに環境負荷を低減し、船舶の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディーゼルエンジンの一実施形態を示す概略図。
【図2】従来のディーゼルエンジンの概略図。
【図3】重質油中のバナジウム化合物形態の一例を示す図。
【図4】重質油中バナジウム除去反応実験の結果の一例を示す図。
【図5】重質油中のバナジウム除去反応機構予想図。
【符号の説明】
1…反応器、2…高温高圧水、3…重油、4…酸化剤、5…改質中間油、6…捕捉器、7…捕捉剤、8…新捕捉剤、9…排捕捉剤、10…改質油、12…空気、13…ディーゼルエンジン、14…エンジン排ガス、15…排ガス熱交換器、16…水、17…水ポンプ、18…冷却排ガス、19…燃料加熱器、20…加熱燃料。
【発明の属する技術分野】
本発明は、石油精製プロセスに関し、特に重質油の脱金属技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶などに用いるディーゼルエンジンは、燃料としてA重油、あるいは船舶種によってはC重油あるいはさらに重質な油燃料を使用し、自動車用ディーゼルエンジンに用いる軽油燃料と比べて、燃料中に多様な金属を含んだ燃料を使用する。重油は軽油に比べ安価なため、燃料コスト、すなわち輸送コストが低減できるため、大出力の船舶用ディーゼルには適した燃料である。
【0003】
図2は従来の重油燃料によるディーゼルエンジンの系統を示している。重油3は、自動車用ディーゼルエンジンの軽油よりも重質な重油であり、これをディーゼルエンジン13に噴射するには液化、あるいは気化が必要となる場合がある。そのため、燃料を加熱する加熱器19が取りつけられている場合がある。加熱された燃料20は、ディーゼルエンジン13に噴射され、空気12と混合,圧縮,爆発させることにより、動力を取り出す。エンジン13から排出された排ガス
14は、排ガス冷却器15によって降温され、冷却排ガス18として、煙突などから排出される。
【0004】
一方、重油には前記のように多種の金属類が含まれており、例えば硫黄は、燃焼排ガス中に硫黄酸化物として排出される。これまで、発電設備,自動車などには排出ガス中の硫黄酸化物に規制がかけられていたが、船舶については厳しい規制はなかった。しかし、近年、船舶についても排出ガス規制の動きが出ており、法制化の可能性が高まっている。このような硫黄規制に対しては、C重油を直接脱硫した、低S重油が商品化されており、低S重油への燃料切り替えで対応することも可能である。しかしながら、燃料切り替えは燃料価格を引き上げ、大量の燃料を使用する船舶では、輸送コストの増大に繋がる。また、重油を使用する際、硫黄のほか、バナジウム,ニッケル,ナトリウム,カリウムなどの金属類は、排出ガスによる大気汚染のほかに、機器腐食の原因ともなっている。これらの金属は、燃焼時に溶融塩を生成し、500℃以上の温度で液化,機器材料に付着し高温腐食を引き起こす。すなわち、エンジン排気バルブから、ガス冷却,煙突など排出口にいたる過程で材料腐食を招き、機器の寿命短縮,信頼性の低下を招くこととなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水熱処理技術を用いて、重油中のバナジウム等の金属を除去する方法を提供することにある。本発明の方法を採ることにより、ディーゼルエンジン内の燃焼において、大気汚染、あるいは機器腐食性溶融塩の原因となる、重油中の金属類を、燃料供給前に除去し、汚染防止と機器寿命延長を同時に実現するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、超臨界水と重油を混合し、超臨界水の有機物溶媒としての特性と、加水分解剤としての特徴を利用し、重質油中の除去対象物質を、重質油中の環状炭化水素分子あるいはポルフィリン構造中より脱離させる反応を起こす脱金属方法および装置を提供する。このとき、金属除去反応を進行させるため、酸化剤を添加することが特徴である。
【0007】
重油中の金属、例えばバナジウムは、図3に例示するように、酸化バナジウムを中心とするポルフィリン形態、あるいは環状有機分子鎖のなかに存在する
(Fish,R. H.,Komlenic,J. J.,Anal. Chem.1984,56(3),p510−517)。高温,高圧水は有機分子を溶媒中に分散させ、かつ加水分解作用により有機分子鎖を分解する作用がある。しかし、高温,高圧水のみの作用では、有機分子中の金属化合物を分解する作用は得られない。類似の有機化合物の分解方法として、有機硫黄を、アルカリ金属を添加した超臨界水により分解する手法が知られているが、バナジウム等の金属はアルカリ添加によっても分解されることは無い。
【0008】
我々は、高温,高圧水と重質油を混合し、ここに酸化剤を添加することにより、バナジウム等の金属が有機分子中から分解,除去される反応が進行することを確認した。図4は、重質油,水,過酸化水素水を、高温,高圧状態で反応させたときの、バナジウム除去率を示したものである。温度の上昇とともにバナジウム除去率は向上する。この反応は図5に示したように、(1)有機炭化水素の部分酸化と、(2)COと水のシフト反応による水素発生、(3)COの有機分子中酸素への攻撃、(4)水素分子、および水の有機分子鎖開裂作用、(5)酸化剤によるバナジウム酸化作用、等が同時進行するものと考えられる。この反応により、有機分子中のバナジウムは分解除去され、酸化バナジウム分子として遊離する。
【0009】
さらに、上記の反応により分解した酸化バナジウム等の金属を、吸着,反応により原料油中から除去する。金属を吸着する方法としては、請求項3に記載のように、活性炭などによる物理吸着、あるいは触媒製造などにも用いられる無機化合物による化学吸着がある。また、酸化金属、例えば酸化バナジウムや酸化ニッケル,ナトリウム,カリウムは、カルシウム,鉄などの金属と複合酸化物を生成するため、これらの金属を重質油中から金属を除去する捕捉材として使用することができる。さらに、原料油の一部より精製できる固形炭素(コーク)に金属を捕捉する方法も可能である。この捕捉剤の使用により、除去対象物質を捕捉し、固体の形で系外に排出することが可能になる。系外に取り出した捕捉材を処理することにより金属を単離し再生使用することも可能になる効果も得られる。
【0010】
本発明はまた、上記した手段において、反応に使用する高温高圧水を、ディーゼルエンジンの排熱によって生成することを特徴とする。これにより、高温高圧水を生成するエネルギーを外部より新たに与える必要が無くなり、エンジンの効率を高めることができる。
【0011】
本発明は、前記した改質装置を有するディーゼルエンジンを搭載した船舶をも提供する。これにより、排出ガス中への金属酸化物の放出を抑制すると共に、長寿命のエンジンを実現しながら、従来の安価な重油を使用でき、輸送コストを低減できる船舶を提供できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本実施例は発明の具体的構成の一例を示しており、本発明全体が本実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明を適用したディーゼルエンジンの一形態を示した。ディーゼルエンジン13の燃料供給系統には油改質工程が設置されている。油改質工程の反応器1の入口には、高温高圧水2と酸化剤4と金属を含有する重油3を取り入れる供給部が設置される。超臨界水の溶媒作用により水と重質油,酸化剤が混合した液体が反応器1内で脱金属反応を起こす。高温高圧水2と重油3と酸化剤4との混合は、単純合流のほか、旋回流形成、あるいは対向流による衝突を利用して、混合を促進する方法も有効である。反応器1では図5に示した反応により、重質油中のバナジウム等の金属が有機分子中から脱離する反応が進行する。脱離反応を進行させるためには、反応器1出口までに、系が必要な温度,圧力条件になっていることが必要であり、本実施例のように予め高温高圧水を供給する構成の他にも、水と重質油を反応器1に供給した後に加熱することで、昇温,昇圧させる構成も取り得る。反応器1で脱金属改質された燃料と脱離した金属を含有する改質中間油5は、金属を分離するために設置された捕捉器6に送られる。図1に示された、反応器1と捕捉器6をつなぐ連結管が省略され、反応器1と捕捉器6が連続した構成も、もちろん取り得る。捕捉器6中には金属を捕捉する捕捉剤7が充填され、流通する液体中に含有されたバナジウム等の金属を、吸着あるいは反応により捕捉する。捕捉器6に捕捉剤7を滞留させる方法としては、目皿状の固定材により捕捉剤7を固定層として留まらせる方法の他に、捕捉剤を粒状とし、粒径を液体の線速度以上の終端速度をもつ大きさにすることで、流動層として留まらせる方法も取り得る。また、捕捉剤を成形して、板状あるいはハニカム状とし、隙間を液体が流通する方法も取り得る。捕捉剤7は、除去対象物質の捕捉を連続した結果、捕捉能力が飽和にいたるが、このような使用済み捕捉剤を排捕捉剤9として取り出す系統、あるいは新捕捉剤8を補給する系統が設けられた構成も取り得る。また、捕捉器6を複数配置し、順次使用する捕捉器を切り替え、あるいは一定時間毎に捕捉器の一部を停止する運転も可能であり、燃料流通を停止した捕捉器中の捕捉剤を交換する構成と運転方法も取り得る。捕捉器6で金属を除去された油は、捕捉剤、他の粒子を取り除く固液分離器10を通過し、改質油11として搬送される。金属を取り除いた油を、ディーゼルエンジン13に供給し、燃焼させ動力を取り出す工程は、図2に示した従来のディーゼルエンジンと同様である。改質油11は、高温高圧水の溶媒効果により水油が分子レベルで混合した後であり、温度・圧力を下げても、良く混合されたエマルジョン状態となっている。そのため、エンジン入口に、改質油を減圧,冷却する工程を取りつけ、水油エマルジョンとしてエンジンに供給する構成も取りうる。その際、水油を分離する分離器を設置し、油のみをエンジンに供給してももちろん良い。一方、高温高圧水の熱エネルギーをエンジンで回収するため、減圧,冷却工程を設置しない、図1に示す系統も、エンジンの効率向上には有効である。エンジンの排ガス14は、汚染物質の金属が除去されているため、そのまま排出しても良い。また、図に示すように熱交換器15にポンプ17によって水16を供給し、高温高圧水2を排ガス14の熱より生成すれば、系統全体の熱効率を向上させることが可能となる。
【0014】
【発明の効果】
本発明によれば、重油燃料を使用するディーゼルエンジンの燃料から、大気汚染物質であり、かつ機器腐食原因である、金属類を除去することができる。重油からの金属除去に要する、高温高圧水は、エンジン排ガスから熱を取り出すことで生成可能であり、外部からエネルギーを新たに加えることなく、燃料中の金属を除去可能となる。このディーゼルエンジンを船舶などに搭載すれば、従来の安価な重油をそのまま使用しながら、排ガスの規制への対応と、機器の長寿命化が可能となる。従来の輸送コストを上昇させずに環境負荷を低減し、船舶の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のディーゼルエンジンの一実施形態を示す概略図。
【図2】従来のディーゼルエンジンの概略図。
【図3】重質油中のバナジウム化合物形態の一例を示す図。
【図4】重質油中バナジウム除去反応実験の結果の一例を示す図。
【図5】重質油中のバナジウム除去反応機構予想図。
【符号の説明】
1…反応器、2…高温高圧水、3…重油、4…酸化剤、5…改質中間油、6…捕捉器、7…捕捉剤、8…新捕捉剤、9…排捕捉剤、10…改質油、12…空気、13…ディーゼルエンジン、14…エンジン排ガス、15…排ガス熱交換器、16…水、17…水ポンプ、18…冷却排ガス、19…燃料加熱器、20…加熱燃料。
Claims (5)
- A重油あるいはC重油等の重油を燃料に使用する内燃機関において、燃料供給系統に、重油と、超臨界水または亜臨界水と、酸化剤を混合して、該重油中に含まれている金属を遊離する反応器と、次いで遊離した金属を捕捉剤と接触させて、該金属を捕捉,除去する捕捉器とを有する改質装置を、備えたことを特徴とする内燃機関。
- 請求項1に記載の内燃機関において、重油と混合する超臨界水、あるいは亜臨界水を、内燃機関排出ガスの熱を回収する排熱回収器によって生成することを特徴とする内燃機関。
- 請求項1に記載の内燃機関において、捕捉剤として鉄または鉄化合物,カルシウムまたはカルシウム化合物、または活性炭、または、固体炭素、または、アルミニウム酸化物または珪素酸化物を含有する化合物、または金属および金属酸化物を使用し、該捕捉剤と、重油中のバナジウム,ナトリウム,カリウム,硫黄,ニッケルのうち少なくとも1種の金属を化合させ、捕捉することを特徴とする内燃機関。
- 請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関において、該内燃機関がディーゼルエンジンであることを特徴とする内燃機関。
- 請求項1から4のいずれかに記載の内燃機関を搭載し、動力に用いることを特徴とする船舶。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002163713A JP2004011479A (ja) | 2002-06-05 | 2002-06-05 | 重油燃料を利用する内燃機関 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002163713A JP2004011479A (ja) | 2002-06-05 | 2002-06-05 | 重油燃料を利用する内燃機関 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004011479A true JP2004011479A (ja) | 2004-01-15 |
Family
ID=30432060
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2002163713A Pending JP2004011479A (ja) | 2002-06-05 | 2002-06-05 | 重油燃料を利用する内燃機関 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004011479A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP5346420B1 (ja) * | 2012-09-25 | 2013-11-20 | 洋 角田 | 舶用c重油改質装置及び舶用c重油改質材の製造方法 |
JPWO2013118298A1 (ja) * | 2012-02-10 | 2015-05-11 | 株式会社愛康 | 作動流体供給装置及び流体供給システム |
CN104962311A (zh) * | 2015-06-09 | 2015-10-07 | 天津科技大学 | 一种氧气氧化柴油脱硫方法 |
JP7438371B2 (ja) | 2021-07-05 | 2024-02-26 | ローカーボン・カンパニー・リミテッド | 港湾用燃料油の脱硫剤混合システム |
-
2002
- 2002-06-05 JP JP2002163713A patent/JP2004011479A/ja active Pending
Cited By (4)
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