JP2004003042A - カバリング糸及びその織編物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芯糸と捲回糸で構成されるカバリング糸であって、該芯糸が潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸であり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであるカバリング糸、及びそのカバリング糸を用いた編織物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバリング糸並びに編織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
平滑な表面を有するストレッチ性織物を得る方法として、特許第3119389号に代表されるように、潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を撚糸した織物が知られているが、表面の平滑性並びにストレッチ性がさらに優れた編織物が要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる要求に応えた編織物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸を用いた複合糸の構造と、編織物の表面の平滑性並びにストレッチ性との関連について、鋭意検討した結果、特定の潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸を用いた特定の構造の複合糸とすることで本発明の目的が達成されることを究明した。
即ち、本発明は、芯糸と捲回糸で構成されるカバリング糸であって、該芯糸が潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸であり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とするカバリング糸である。
【0005】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明においては、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートである潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸を芯糸に用いたカバリング糸であることが必要である。該カバリング糸を用いることにより、表面が平滑でストレッチ性に優れた編織物が得られる。
芯糸に用いる潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメントは、無撚で用いても充分な表面平滑性とストレッチ性を持つ編織物が得られるが、有撚糸とした方がより優れた表面平滑性とストレッチ性を持つ編織物が得られるので好ましい。
芯糸を有撚糸とするときの撚係数{=撚数(T/m)×√芯糸の総繊度(dtex)}は、好ましくは3000〜32000、より好ましくは7000〜25000、さらに好ましくは7500〜21200である。
撚係数が32000超では撚糸切れ等から加撚困難である。
また、加撚方向は捲回糸の捲回方向と反対方向であることが好ましく、同方向では、編織物表面の平滑性が悪くなることがある。又、芯糸に仮撚加工糸を用いる場合は、仮撚方向と逆方向に加撚することが好ましい。
【0006】
芯糸は、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸を一本又は二本以上引揃えたり合撚したりしても良いし、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸以外の他の繊維素材と引き揃えたり合撚したりしても良い。
引揃える糸条は、無撚糸でも撚係数7000未満、好ましくは5000以下で下撚されていても良い。撚方向は、芯糸の合撚方向や捲回糸の捲回方向と同方向でも反対方向でもよい。
【0007】
本発明のカバリング糸は、芯糸の周囲に捲回糸を一重で捲回するシングルカバリング糸、あるいは逆方向に二重に捲回するダブルカバリング糸のいずれであってもよい。
捲回糸の捲回数は、所望するカバリング糸の形態や風合いを考慮して適宜選定すればよいが、捲回糸の捲回係数{=捲回数(T/m)×√カバリング糸の総繊度(dtex)}が1000〜32000の範囲が好ましく、1500〜25000がより好ましい。
また、芯糸が有撚糸の場合は、芯糸との撚バランスを考慮して適宜選定すればよいが、捲回糸の捲回係数は芯糸の撚係数×(1.2〜0.5)、好ましくは芯糸の撚係数×(1.1〜0.7)が撚バランスの上で好ましい。
【0008】
カバリング糸を製造する方法としては特に限定されるものではなく、一般的なカバリング機で製造すればよい。
芯糸が有撚糸の場合は、例えばイタリー撚糸機で芯糸を製造し、次いで、カバリング機で捲回して製造すればよい。
また、必要に応じて撚止めセットをしても良いが、撚止めセットをしないほうがストレッチ性に優れており好ましい。
【0009】
本発明における潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸とは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的にはサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。
二種のポリエステル成分の複合比(一般的には質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。
又、総繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが好ましく用いられるがこれに限定されるものではない。
【0010】
本発明のカバリング糸の芯糸は、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメントであって、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることに特徴がある。
具体的には、特開2001−40537号公報に開示されているようなポリトリメチレンテレフタレートを一成分とするものがある。
即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維である。
サイドバイサイド型の場合は、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのアルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。
【0011】
具体的なポリマーの組合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリフブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1,4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0012】
このように本発明のカバリング糸の芯糸は、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント繊維を構成するポリエステル成分の少なくとも一方がポリトリメチレンテレフタレートであるものである。
上記特開2001−40537号公報以外にも、例えば、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。
特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレートの組合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0013】
更に、本発明において、編織物表面の平滑性とストレッチ性から最適な例としては、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、より好ましくは20〜30cN/dtex、さらに好ましくは20〜27cN/dtexである。なお、10cN/dtex未満のものは製造困難である。
また、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、さらに好ましくは10〜80%、より好ましくは10〜60%である。
更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、さらに好ましくは85〜100%、より好ましくは85〜97%である。
さらに、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4cN/dtex、さらに好ましくは0.1〜0.3cN/dtexである。
100℃における熱収縮応力は、布帛の精錬、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。即ち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、100℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%、さらに好ましくは180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
【0014】
このような特性を有する潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸としては、固有粘度の異なる2種類のポリトリメチレンテレフタレートが互いにサイドバイサイド型に複合された単糸から構成された複合繊維が挙げられる。
2種類のポリトリメチレンテレフタレートの固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.35(dl/g)、さらに好ましくは0.15〜0.35(dl/g)である。
例えば、高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。
なお、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、より好ましくは0.85〜1.0(dl/g)、さらに好ましくは0.9〜1.0(dl/g)である。
また、この複合繊維自体の固有粘度即ち平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。
特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)がよい。
【0015】
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸した糸の粘度を指す。
この理由は、ポリトリメチレンテレフタレートの特徴として、ポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0016】
ここで、ポリトリメチレンテレフタレートは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰返単位とするポリエステルであり、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。
従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらには20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。
この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしても良いし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンド(ポリトリメチレンテレフタレートが50質量%以上でブレンド)したりしても良い。
【0018】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。
また、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
さらに、二酸化チタン等の艶消剤、リン酸等の安定剤、ヒドロキシベンゾフェノン誘導体等の紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、アエロジル等の易滑剤、ヒンダードフェノール誘導体等の抗酸化剤、難燃剤、制電剤、顔料、蛍光増白剤、赤外線吸収剤、消泡剤等が含有されていてもよい。
【0019】
本発明において、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の紡糸については、上記の各種特開に開示されており、例えば、3000m/分以下の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法が好ましいが、紡糸−延撚工程を直結した直延法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)を採用してもよい。
【0020】
また、繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、マルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等があるが、本発明においては、かかる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の仮撚加工糸を用いると、さらに優れた効果が得られる。
【0021】
仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率は好ましくは70〜300%、特に100〜300%、更に120〜300%がよい。
又、顕在捲縮弾性率は好ましくは80〜100%、特に82〜100%、さらに85〜100%がよい。また、この仮撚加工糸の捲縮伸長率は100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%である。
捲縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、より好ましくは90〜100%である。
【0022】
仮撚加工糸を得るための仮撚方法としては、ピンタイプ、フリクションタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよいが、好ましくはピンタイプ、ニップベルトタイプである。
又、仮撚加工糸は、いわゆる2ヒーターの仮撚加工糸(セットタイプ)よりも、いわゆる1ヒーターの仮撚加工糸(ノンセットタイプ)を用いる方が、本発明の目的達成上好ましい。
仮撚加工時の熱固定温度は150℃〜200℃の範囲とすることが好ましい。
仮撚数(T1)は次式で計算される仮撚数の係数K1の値が21000〜33000であることが好ましく、更に好ましくは25000〜32000の範囲である。
T1(T/m)=K1/√原糸の繊度(dtex)
【0023】
なお、本発明の目的を損なわない範囲内で通常50重量%以下の範囲内で天然繊維、合成繊維等他の繊維、例えば、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、例えば沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸、又は、例えば沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との混繊や交撚、仮撚(伸度差仮撚、POYの延伸仮撚における複合等)、2フィード空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0024】
芯糸を構成する素材並びに捲回する素材としては、かかる潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸同士(上記した各種の潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の同種又は異種の組み合わせを含む)が最適であるが、希望に応じて、綿、羊毛、麻、絹等の天然繊維、キュプラ、ビスコース、ポリノジック、精製セルロース、アセテート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維(6000m/分以上の巻取り速度で紡糸されたいわゆるスピンテイクアップ糸、5000m/分以上の巻取り速度で紡糸されたいわゆるスピンドローテイクアップ糸を含む)、ナイロン、アクリル等の各種人造繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)を用いてもよい。
【0025】
また、その繊維形態は紡績糸、マルチフィラメント原糸、嵩高加工糸、捲縮加工糸等があり、さらにはこれらの繊維(潜在捲縮発現性ポリエステル繊維を含む)を混紡(コアヤーン、サイロスパンやサイロフィル、ホロースピンドル等)、カバリング(シングル、ダブル)、交撚したもの、沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸又は沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸との紡糸又は後混繊糸、糸長方向に部分的に未延伸部を有するようないわゆるシックアンドシン糸、仮撚(伸度差仮撚、例えばポリエステル高配向未延伸糸(POY)のような高伸度糸と、例えばポリエステルのレギュラー糸、カチオン可染糸や6000m/分以上の巻取り速度で紡糸されたスピンテイクアップ糸のような低伸度糸との引き揃え交絡仮撚糸、位相差仮撚によるスラブヤーン等の意匠糸や、鞘芯構造加工糸等、並びにこれらの撚糸物)、2フィード空気噴射加工糸でもよい。
【0026】
本発明では、かかるカバリング糸を用いて編織物を構成するものであるが、例えば織物では経糸及び/又は緯糸に用いてもよいし、カバリング糸以外の単糸(無撚糸、有撚糸等)や諸撚糸と1本〜3本交互、好ましくは1本〜2本交互に用いてもよい。
又、カバリング糸を経糸及び/又は緯糸に用いるに際し、捲回の撚方向が同じものを用いてもよいが、異なる撚方向(S撚、Z撚)のものを1本〜3本交互、好ましくは1本〜2本交互に用いた方が好ましい。
又、カバリング糸と単糸や諸撚糸を組み合わせる場合でも、撚方向(諸撚糸の場合は上撚方向)が同じものを用いてもよいが、撚方向が異なる(S撚、Z撚)ものを1本〜3本交互、好ましくは1本〜2本交互に用いた方が好ましい。
また、単糸や諸撚糸の素材や、カバリング糸を織物の経糸又は緯糸の一方に用いる場合に他方に用いる素材は、上記した芯糸の素材として列記したものを、希望する織物風合いに応じて適宜選定すればよい。
【0027】
織物の組織については、平、綾、朱子及びこれら変化組織がある。
生機密度の好適な範囲は、経130〜200本/2.54cm、好ましくは150〜180本/2.54cm、緯50〜90本/2.54cm、好ましくは60〜80本/2.54cmであり、仕上げ密度の好適な範囲は、経150〜220本/2.54cm、好ましくは170〜200本/2.54cm、緯60〜100本/2.54cm、好ましくは70〜90本/2.54cmである。
製織後、常法に従い染色仕上げ加工される。
本発明で得られる織物の表面平滑性は、KESの表面粗さの平均偏差が1〜10μmの範囲が好ましい。
また、織物伸長率は15%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における評価は以下の方法により測定した。
(1) 固有粘度:
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
(式中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。)
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0029】
(2) 初期引張抵抗度:
JIS−L−1013、化学繊維フィラメント糸試験方法による。
初期引張抵抗度の試験方法に準じ、試料の単位繊度当たり0.882mN/dtexの初荷重を掛けて引張試験を行い、得られた荷重−伸長曲線から初期引張抵抗度(cN/dtex)を算出し、10回の平均値を求めた。
(3) 伸縮伸長率、伸縮弾性率:
JIS−L−1090 合成繊維フィラメントかさ高加工糸試験方法による。伸縮性試験方法(A法)に準じて測定を行い、伸縮伸長率(%)、伸縮弾性率(%)を算出し、10回の平均値を求めた。顕在捲縮の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、巻取りパッケージから解舒した試料を、温度20±2℃、湿度65±2%の環境下で24時間放置後に測定を行った。
熱水処理後の伸縮伸長率および伸縮弾性率は、無荷重で98℃の熱水中に30分間浸漬した後、無荷重で24時間自然乾燥した試料を用いた。
【0030】
(4) 熱収縮応力:
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用い、試料を20cmの長さに切り取り、両端を結んで輪を作って測定装置に装填し、初荷重0.044cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で収縮応力を測定し、得られた温度に対する熱収縮応力の変化曲線から100℃における熱収縮応力を読み取った。
(5) 織物の平滑性:
加工技術者10人により、下記基準により点数評価し、その合計点で評価した。
3:平滑性に優れている
2:シボ感がみられる
1:強いシボ感がある
【0031】
(6) 織物伸長率:
JIS−L−1096の伸長率A法(定速伸長法)に従って測定した。
(7) 仮撚加工糸の顕在捲縮伸長率及び顕在捲縮弾性率:
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ間隔10cmにて仮撚加工糸を初荷重0.0009cN/dtexで取り付けたのち、引張速度10cm/minで伸長し、0.0882cN/dtexの応力に達したときの伸び(%)を顕在捲縮伸長率とした。
その後再び同じ速度でつかみ間隔10cmまで収縮させたのち、再度応力−歪み曲線を描き、初荷重の応力が発現するまでの伸度を残留伸度(B)とする。
顕在捲縮弾性率は以下の式によって求めた。
顕在捲縮弾性率=〔(10−B)/10〕×100(%)
(8) 仮撚加工糸の捲縮伸長率、捲縮弾性率:
巻き取りパッケージから解じょした仮撚加工糸を無荷重下で98℃の熱水中に20分浸漬した後、無荷重下で24時間乾燥した試料を用いた以外は、顕在捲縮伸度及び顕在捲縮弾性率の測定と同様の方法にて測定し、それぞれを捲縮伸長率、捲縮弾性率とした。
【0032】
<潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の製造>
下記繊維の物性値は表1に示す。
固有粘度の異なるサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを以下の製造例1〜4により製造した。
{製造例1}
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率1:1でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が56dtexとなるように設定して延撚し、56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。
得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.90、低粘度側が[η]=0.70であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0033】
{製造例2}
上記製造例1と同様の方法で84dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.88、低粘度側が[η]=0.70であった。
初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
{製造例3}
上記製造例1とは固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用い、上記製造例1と同様の方法で56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。
得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.86、低粘度側が[η]=0.69であった。初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0034】
{製造例4}
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを用いて56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを得た。得られた複合マルチフィラメントの固有粘度は高粘度側が[η]=0.66、低粘度側が[η]=0.50であった。
初期引張抵抗度、顕在捲縮の伸縮伸長率/伸縮弾性率、熱水処理後の伸縮伸長率/伸縮弾性率、100℃における熱収縮応力を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【実施例1】
カバリング機を用いて、上記製造例1の56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントを芯糸(無撚)として、同じ複合マルチフィラメントを用いてZ方向に捲回数1000T/m(捲回係数10583)で捲回したカバリング糸(A)、同様にS方向に捲回数1000T/mで捲回したカバリング糸(B)を作成した。
経糸に56dtex/12fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(一成分糸)を用い、緯糸にカバリング糸(A)とカバリング糸(B)を一本交互に用いて、平織物(経110本/2.54cm、緯80本/2.54cm)を製織した後、オープンソーパーで拡布精練し、染色、仕上げ加工を行った。
織物の仕上げ後の織密度は、経160本/2.54cm、緯90本/2.54cmであった。
得られた織物の平滑性は26点、緯方向の織物伸長率は15%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0037】
【実施例2】
イタリー撚糸機を用いて、上記製造例1の56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントに1500T/m(撚係数11225)のS撚を加えて芯糸を作成し、次いで同じ複合マルチフィラメントを用いてZ方向に捲回数1000T/m(捲回係数10583)で捲回したカバリング糸(C)を作成し、同様に芯糸がZ撚、捲回がS方向のカバリング糸(D)を作成した。
得られたカバリング糸(C)、(D)を織物の緯糸に用いた以外は、実施例1と同様に製織、染色、仕上げ加工を行って織物を得た。
得られた織物の平滑性は28点、緯方向の織物伸長率は20%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0038】
【比較例1】
リング撚糸機を用いて、上記製造例1の56dtex/12fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメント糸2本を引き揃えて、Z方向に1000T/m(撚係数=10583)の撚を施し、70℃×40分間のスチームセットにより撚止めセットした合撚糸を作成した。得られた合撚糸を織物の緯糸に用いた以外は、実施例1と同様に製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は21点、緯方向の織物伸長率は15%以上と、実施例1対比平滑性に劣ったものであった。
【0039】
【比較例2】
実施例1において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに、56dtex/12fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(一成分糸)を芯糸並びに捲回する糸条に用いてカバリング糸を作成した以外は、実施例1と同様に製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は22点、緯方向の織物伸長率は3%程度と、実施例1対比平滑性とストレッチ性に劣ったものであった。
【0040】
【比較例3】
実施例2において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに、56dtex/12fのポリトリメチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(一成分糸)を芯糸並びに捲回する糸条に用いてカバリング糸を作成した以外は、実施例2と同様に製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は25点、緯方向の織物伸長率は5%程度と、実施例1及び2対比、ストレッチ性に劣ったものであった。
【0041】
【実施例3〜4】
実施例1において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに上記製造例2〜3の複合マルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバリング糸を作成し、次いで製織、染色、仕上げ加工を行った。
即ち、実施例3では製造例2の複合マルチフィラメント糸を、実施例4では製造例3の複合マルチフィラメント糸を用い、捲回数は実施例1と同じとした。
実施例3、4で得られた織物は、平滑性は各々24点と26点、緯方向の織物伸長率は共に15%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0042】
【実施例5〜6】
実施例2において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに上記製造例2〜3の複合マルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバリング糸を作成し、次いで製織、染色、仕上げ加工を行った。
即ち、実施例5では製造例2の複合マルチフィラメント糸を、実施例6では製造例3の複合マルチフィラメント糸を用い、芯糸の撚数及び捲回数は実施例2と同じとした。 実施例5、6で得られた織物は、平滑性は各々26点と28点、緯方向の織物伸長率は共に20%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0043】
【比較例4】
実施例1において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに上記製造例4の複合マルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバリング糸を作成し、次いで製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は22点、緯方向の織物伸長率は5%程度と、実施例対比ストレッチ性が劣るものであった。
【比較例5】
実施例2において、上記製造例1の複合マルチフィラメント糸の代わりに上記製造例4の複合マルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバリング糸を作成し、次いで製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は26点、緯方向の織物伸長率は10%程度と、実施例対比ストレッチ性が劣るものであった。
【0044】
【実施例7】
実施例1において、捲回する糸条として84dtex/36fのキュプラマルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例1と同様にしてカバリング糸を作成した。次いで、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は25点、緯方向の織物伸長率は15%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0045】
【実施例8】
実施例2において、捲回する糸条として84dtex/36fのキュプラマルチフィラメント糸を用いた以外は、実施例2と同様にしてカバリング糸を作成した。次いで、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上げ加工を行った。
得られた織物の平滑性は27点、緯方向の織物伸長率は20%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0046】
【実施例9〜11、比較例6】
製造例1〜4で得られた複合フィラメントを用いて、石川製作所製IVF−338にて第1ヒーター温度170℃(比較例1のみ220℃)、撚方向はZ撚、仮撚数3200T/mで仮撚加工を行った。実施例1〜3の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率180〜200%、顕在捲縮弾性率85〜90%、捲縮伸長率200〜250%、捲縮弾性率85〜93%であったが、比較例1の仮撚加工糸は、顕在捲縮伸長率10%、顕在捲縮弾性率88%、捲縮伸長率130%、捲縮弾性率64%の仮撚加工糸を得た尚、製造例1が実施例9、製造例2が実施例10、製造例3が実施例11、製造例4が比較例6である。
得られたこれらの仮撚加工糸を芯糸に用いた以外、実施例1同様にしてカバリング糸(捲回係数10583)を作成した。次いで、実施例1と同様にして、製織、染色、仕上げ加工を行った。
実施例9〜11で得られた織物の平滑性は27点、緯方向の織物伸長率は30%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであったが、比較例6で得られた織物の平滑性は27点、緯方向の織物伸長率は13%程度と、実施例9〜11対比ストレッチ性に劣ったものであった。
【0047】
【実施例12〜14】
実施例9〜11で得られた仮撚加工糸を芯糸に用いた以外は、実施例2と同様にしてカバリング糸(芯糸の撚係数11225、捲回係数10583)を作成した。
次いで、実施例2と同様にして、製織、染色、仕上げ加工を行った。尚、仮撚加工糸は、Z仮撚加工糸とS仮撚加工糸を作製し、芯糸の加撚方向は仮撚方向と逆方向とした。
得られた織物の平滑性は27点、緯方向の織物伸長率は35%以上と、平滑性とストレッチ性に優れたものであった。
【0048】
【発明の効果】
本発明のカバリング糸を用いることにより、平滑な表面とストレッチ性を有する編織物が得られる。
Claims (5)
- 芯糸と捲回糸で構成されるカバリング糸であって、該芯糸が潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸であり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とするカバリング糸。
- 請求項1において、芯糸が撚係数(=撚数(T/m)×√芯糸の総繊度(dtex))3000〜32000の潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸の有撚糸であり、かつ捲回方向と反対方向に加撚されていることを特徴とするカバリング糸。
- 請求項1又は2において、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸が、仮撚加工糸であることを特徴とするカバリング糸。
- 請求項1〜3において、潜在捲縮発現性ポリエステルマルチフィラメント糸が、下記(a)〜(c)の特性を有することを特徴とするカバリング糸。
(a)初期引張抵抗度が10〜30cN/dtex
(b)顕在捲縮の伸縮伸長率が10〜100%、伸縮弾性率が80〜100%
(c)100℃での熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtex - 請求項1〜4のいずれかに記載のカバリング糸を用いたことを特徴とする編織物。
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- 2002-05-23 JP JP2002148551A patent/JP2004003042A/ja active Pending
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