JP2004002739A - 木質化粧用アクリル樹脂フィルム及びそれの木質化粧体への適用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散した事実上無色透明のアクリル系樹脂からなり、50μm以上500μm以下の厚みを有する木質化粧用アクリル樹脂フィルム1が提供される。このアクリル樹脂フィルム1の片面に、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルム2を積層して、木質化粧フィルム3とされ、さらにその木材フィルム2側に熱可塑性樹脂5を積層して、木質化粧成形体7とされる。木質化粧成形体7は、木質化粧フィルム3を射出成形金型内に配置し、木材フィルム2側から溶融熱可塑性樹脂を射出して、成形と同時に木質化粧フィルム3を成形品の最表面に一体貼合する方法により、有利に製造される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルムと貼合され、木質模様の化粧体に用いられるアクリル樹脂フィルムに関するものである。本発明はまた、かかるアクリル樹脂フィルムと上記木材フィルムとが積層された木質化粧フィルム、その木質化粧フィルムで表面が加飾された木質化粧成形体及びその製造方法にも関係している。
【0002】
【従来の技術】
近年、高級家具材料や高級自動車用内装材として、表面に木質模様を有する成形品を用いる場合が多くなりつつあるが、木質材料を最表層とすることは、表面に傷や汚れがつきやすいことから、適当でない。そこで通常は、透明なポリエステル系樹脂によりクリア塗装され、表面に耐傷つき性や耐汚れ付着性を付与するとともに、意匠性を高めた木質化粧板としている。
【0003】
しかし、このような従来の木質化粧板では、塗装時に大量の溶剤を使用するため、乾燥工程からの排出溶剤量が多く、環境面やコスト面で問題があった。そこで近年では、例えば、特開平 6−293083号公報(特許文献1)や特開平 11−280228号公報(特許文献2)に記載されるように、透明樹脂フィルムを最表層に配置し、表面の耐傷つき性や耐汚れ付着性、さらには意匠性を高める手法が用いられている。このために用いる透明樹脂フィルムには、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性をはじめ、木質材料の視認性など、多くの要件を満たすことが望まれるが、透明樹脂フィルムにおいて、これらの要件を満たすための必要な手段について、前記各公報にはなんら記載されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平 6−293083号公報
【特許文献2】特開平 11−280228号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性及び木質材料の視認性に優れ、また高い意匠性を与える木質化粧フィルム又はそれを用いた木質化粧成形体を効率的に製造し得る技術を開発すべく、研究を行った結果、特定のアクリル系樹脂からなるフィルムを用い、それを木材フィルムの片面に配置すれば、意匠性に優れるとともに、その他の物性にも優れた木質化粧フィルム及び木質化粧成形体が容易に製造できることを見出した。
【0006】
したがって本発明の目的は、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性及び木質材料の視認性に優れ、また高い意匠性を与える木質化粧体に用いられるアクリル樹脂フィルムを提供することにある。本発明のもう一つの目的は、かかるアクリル樹脂フィルムと、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルムとが積層された木質化粧フィルムを提供することにある。本発明のさらにもう一つの目的は、この木質化粧フィルムで表面が加飾された木質化粧成形体を提供し、さらにはそれを有利に製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散した事実上無色透明のアクリル系樹脂からなり、50μm以上500μm以下の厚みを有する木質化粧用アクリル樹脂フィルムが提供される。
【0008】
この木質化粧用アクリル樹脂フィルムは、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルムを片面に積層して、木質化粧フィルムとすることができる。さらにこの木質化粧フィルムは、その木材フィルム側に熱可塑性樹脂を積層して、木質化粧成形体とすることができる。これらの木質化粧フィルム及び木質化粧成形体は、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性及び木質材料の視認性に優れ、また高い意匠性を示すものとなる。
【0009】
上記のアクリル樹脂フィルムを用いて木質化粧フィルムを製造するには、ラミネート法、熱プレス法などに代表される加工法が有利であり、またこの木質化粧フィルムの木材フィルム側に熱可塑性樹脂を配置して木質化粧成形体を製造するには、いわゆる射出成形同時貼合法を採用するのが有利である。そこで本発明によれば、上記のアクリル樹脂フィルムの片面に、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルムを積層して木質化粧フィルムとし、所望によってはこの木質化粧フィルムに熱成形等による予備賦形を施した後、その木質化粧フィルムを射出成形金型内に配置し、その木材フィルム側から溶融熱可塑性樹脂を射出して、成形と同時に木質化粧フィルムを成形品の最表面に一体貼合し、木質化粧成形体を製造する方法も提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明では、メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散した事実上無色透明のアクリル系樹脂からなるフィルムを、木質化粧に用いる。そして、このアクリル樹脂フィルムの片面に、木材をスライスしてフィルム状にした木質フィルムを積層して、木質化粧フィルムとする。さらにこの木質化粧フィルムの木材フィルム側に熱可塑性樹脂を積層して、木質化粧成形体とする。こうして木質化粧成形体となった状態の一例が、断面模式図で図1に示されている。すなわち、アクリル樹脂フィルム1の片面に木材フィルム2が積層されて、木質化粧フィルム3となり、さらにこの木質化粧フィルム3の木材フィルム2側に熱可塑性樹脂5が積層されて、木質化粧成形体7となる。以下、適宜この図面中の番号を参照しながら説明を進めていくこととする。
【0011】
本発明では、メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル系樹脂からなるフィルム1を、木質化粧に用いる。このアクリル樹脂フィルム1は、50μm以上500μm以下の厚みとする。フィルムの厚みをこの範囲とすることにより、フィルム自体の安定な生産性が確保されるとともに、その後のラミネート法やインサート成形法への応用などの二次加工時における取扱い性が良くなる。フィルムの厚みが50μmを下回ると、フィルム自体の生産性が低下するとともに、十分なフィルム強度が得られず、破れなどの取扱い不良を引き起こす可能性が高くなる。一方、その厚みが500μmを越えると、厚みによる耐溶剤性や意匠性の向上が認められにくく、コスト面での負荷が増加する。
【0012】
このアクリル樹脂フィルム1は、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルム2上に積層される。積層する方法としては、積層後に剥離等の不具合を起こさない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、接着層を介さずに熱融着してもよいし、接着層を介して積層してもよい。
【0013】
アクリル樹脂フィルム1を構成するメタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体や、それを主成分とする共重合体であることができる。メタクリル酸エステルとしては、通常メタクリル酸のアルキルエステルが用いられ、そのアルキル基は、炭素数1〜4程度でよい。共重合体とする場合は、メタクリル樹脂の共重合成分として有利であることが知られているアクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0014】
このメタクリル樹脂は、より具体的には、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体の重合により得られる熱可塑性重合体であるのが好ましい。ここで、アクリル酸エステルは、より好ましくは0.1〜50重量%の範囲、さらに好ましくは0.5〜50重量%の範囲で用いられ、したがって、メタクリル酸アルキルのより好ましい共重合割合は50〜99.9重量%の範囲、さらに好ましい共重合割合は50〜99.5重量%の範囲である。なお、本明細書において単に「単量体」というときは、ある単量体1種からなる場合のみならず、複数の単量体が混合された状態、いわゆる単量体混合物も包含するものとする。
【0015】
上記の熱可塑性重合体を構成するメタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。アクリル酸エステルとしては、通常アクリル酸のアルキルエステルが用いられ、そのアルキル基は、炭素数1〜8程度でよい。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。また、メタクリル酸アルキル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、従来からメタクリル樹脂の分野で知られている各種単量体が使用でき、例えば、スチレンのような芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。
【0016】
メタクリル樹脂は前述のとおり、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、より好ましくは50〜99.9重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%、より好ましくは0.1〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体を重合させて得られるものが好適であり、この範囲に入る重合体を単独で、又は2種以上の重合体の混合物として用いることができる。このメタクリル樹脂は、ガラス転移温度が40℃以上であるのが好ましく、さらには60℃以上のガラス転移温度を有するものが一層好ましい。メタクリル樹脂のガラス転移温度が40℃未満では、得られるフィルムの耐熱性が低くなるため、実用上好ましくない。ガラス転移温度は、メタクリル酸エステルと共重合される他の単量体の種類と量を変化させることにより、適宜設定できる。なお、メタクリル酸メチルの単独重合体のガラス転移温度は約106℃であるので、メタクリル酸エステルとしてメタクリル酸メチルを用いる場合、得られるメタクリル樹脂のガラス転移温度は、通常106℃以下となる。
【0017】
メタクリル樹脂の重合方法は特に限定されず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。また、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適なフィルムへの成形性を示す粘度を得るために、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類及び組成に応じて、適宜決定すればよい。
【0018】
このようなメタクリル樹脂にゴム粒子を分散させるのであるが、このゴム粒子は、その平均粒子径が0.05μm以上0.3μm以下の範囲にあるのが好まく、さらには、0.05μm以上0.2μm以下の平均粒子径であるものがより好ましい。ゴム粒子の平均粒子径がこの範囲にあると、フィルムの製膜性が安定するとともに、フィルム自体の柔軟性や取扱い性の面で優れる。ゴム粒子の平均粒子径があまり小さいと、フィルムに必要な柔軟性が欠如し、取扱い性が低下する傾向になり、一方、その平均粒子径があまり大きいと、表面平滑性が低下して透明感が損なわれ、意匠性の低下を招く結果になる。
【0019】
また、このゴム粒子は、アクリル系のものが好ましく、より具体的には、アクリル酸アルキル50〜99.9重量%と、これに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体の重合で得られる弾性共重合体の層を有する重合体100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなり、前記弾性共重合体層の平均粒子径が0.05μm以上0.3μm以下のゴム含有重合体が有利に用いられる。この重合の際、反応条件を調節して、弾性共重合体層の平均粒子径が0.05μm以上0.3μm以下となるようにする。
【0020】
このゴム粒子は、例えば、弾性共重合体用の上記成分を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させて弾性共重合体を得、この弾性共重合体の存在下、上記したメタクリル酸エステルを含む単量体を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させて製造することができる。このような複数段階の重合により、後段で用いるメタクリル酸エステルを含む単量体は弾性共重合体にグラフト共重合され、グラフト鎖を有する架橋弾性共重合体が生成する。すなわち、このゴム粒子は、アクリル酸アルキルをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体となる。なお、弾性共重合体の重合を二段以上で行う場合、又はその後のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体の重合を二段以上で行う場合には、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が上記範囲内にあればよい。
【0021】
上記のゴム粒子において、弾性共重合体を構成するために用いるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜8のものが挙げられる。なかでも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのような、アルキル基の炭素数4〜8のものが好ましい。
【0022】
弾性共重合体を構成するために所望に応じて用いられ、アクリル酸アルキルに共重合可能な他のビニル単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を1個有する単官能の化合物であり、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが、好適なものとして挙げられる。
【0023】
弾性共重合体を構成するために用いる共重合性の架橋性単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。なかでも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましい。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、又は必要により2種以上組み合わせて使用することができる。
【0024】
以上のような、アクリル酸アルキルを主体とする単量体の重合により得られる弾性共重合体には、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体をグラフトさせる。弾性共重合体にグラフトさせる単量体の主成分であるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸のアルキルエステルが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。任意に用いられるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのような、アクリル酸のアルキルエステルが挙げられ、またメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能で、任意に用いられる他のビニル単量体としては、例えば、スチレンのような芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。
【0025】
グラフトさせる単量体は、前記弾性共重合体の層が表面となった重合体100重量部に対して、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは20重量部以上、またより好ましくは200重量部以下の割合で使用し、一段以上の反応で重合することができる。ここで、グラフトさせる単量体の使用量を10重量部以上とすることにより、弾性共重合体の凝集が生じにくくなり、フィルムとした際の透明性が良好となる。また、グラフトさせる単量体の量があまり多くなると、ゴム粒子を分散させた樹脂全体の流動性の低下が起こり、フィルム成膜が困難となることから、前記弾性共重合体の層が表面となった重合体100重量部あたり、好ましくは400重量部以下、より好ましくは200重量部以下とする。
【0026】
前記弾性共重合体層の内側に、メタクリル酸エステルを主体とする硬質重合体層を設けて、少なくとも3層からなる多層構造のゴム粒子とすることもできる。この場合には、最内層を構成する硬質層の単量体を最初に重合させ、得られる硬質重合体の存在下で、上記の弾性共重合体を構成する単量体を重合させ、さらに得られる弾性共重合体の存在下で、上記のメタクリル酸エステルを主体とし、グラフトされる単量体を重合させればよい。
【0027】
ここで、最内層となる硬質重合体層は、メタクリル酸エステル70〜100重量%と、それに共重合可能な他のビニル単量体0〜30重量%とからなる単量体を重合させたものが好ましい。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸のアルキルエステル、特にメタクリル酸メチルが有利である。任意に用いられる他のビニル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸エステル、スチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などが挙げられる。また他のビニル単量体の一つとして、共重合性の架橋性単量体を用いるのも有効である。架橋性単量体としては、先に弾性共重合体を構成する成分として例示したのと同様の、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物を用いることができる。
【0028】
硬質重合体を最内層とし、弾性共重合体を中間層とし、そして硬質のグラフト重合体を最外層とする3層構造のゴム粒子は、例えば、特公昭 55−27576号公報(= USP 3,793,402)に開示されている。特に、同公報の実施例3に記載のものは、好ましい組成の一つである。このような少なくとも3層からなる多層構造のゴム粒子とする場合、最外層としてグラフトさせるメタクリル酸エステル主体の単量体の量10〜400重量部は、最内層となる硬質重合体及び中間層となる弾性共重合体の合計100重量部を基準とすればよい。
【0029】
本発明において、ゴム粒子の平均粒子径は、重合開始剤の種類や量、また重合時間などを調節することによって、0.05μm以上0.3μm以下、好ましくは0.05μm以上0.2μm以下の範囲内で、適当な値に設定すればよい。なお、ゴム粒子の平均粒子径は、そのゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムによるゴム成分の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された粒子外層部の直径から求めることができる。すなわち、アクリル酸アルキルを主成分とする弾性共重合体層を含むゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、ゴム粒子の最外層にメタクリル酸エステル主体の硬質層がある場合はその硬質層も母体樹脂と混和して染色されず、アクリル酸アルキルを主成分とする弾性共重合体層のみが染色されるので、こうして染色され、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される部分の直径から、粒子径を求めることができる。弾性共重合体層の内側に硬質重合体層が存在する場合は、最内層の硬質重合体も染色されず、その外側の弾性重合体層が染色された2層構造の状態で観察されることになるが、この場合のゴム粒子の平均粒子径は、2層構造の外側、すなわち弾性重合体層の外径で考えればよい。
【0030】
メタクリル樹脂中にゴム粒子を分散させてアクリル樹脂フィルム1とするのであるが、両者の割合は、メタクリル樹脂を50〜95重量部、そしてゴム粒子を5〜95重量部の範囲で用いるのが好ましい。ゴム粒子の量が少なすぎると、フィルム化するのが困難になり、またその量が多すぎると、適当な表面硬度が得られにくくなる。
【0031】
このゴム粒子は、その中に占める前記したアクリル酸エステル主体の弾性共重合体が、全ての成分、すなわち、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部を基準に、5〜35重量部となるようにするのが好ましい。さらには、この弾性共重合体は、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部を基準に10重量部以上、また25重量部以下となるようにするのがより好ましい。メタクリル樹脂とゴム粒子の合計100重量部あたり弾性共重合体の量が5重量部以上となるようにすれば、フィルムが脆くなることなく、製膜性を向上させることができる。一方、弾性共重合体の量があまり多くなると、フィルムの透明性や表面硬度が失われる傾向となる。
【0032】
メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル樹脂フィルム1は、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。なかでも紫外線吸収剤は、耐候性を高めるうえで好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として具体的には、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールなどが例示される。2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−クロロベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示される。また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤として具体的には、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが例示される。
【0033】
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。紫外線吸収剤を配合する場合、その量は、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部を基準に、通常0.1重量部以上であり、好ましくは0.3重量部以上、また好ましくは2重量部以下である。
【0034】
以上説明したメタクリル樹脂及びゴム粒子を混合し、必要に応じてその他の添加剤を配合した混合物をフィルム化することにより、アクリル樹脂フィルムが製造される。フィルム化には、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法など、いずれの方法を用いてもよい。なかでも、上記混合物を例えばTダイから溶融押出しし、得られるフィルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触させて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得られる点で好ましい。とりわけ、フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点からは、上記混合物を溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロール又はベルトは、いずれも金属製であるのが好ましい。またロールは、その表面が鏡面となっているものが好ましい。したがって、好ましい形態として、上記メタクリル樹脂及びゴム粒子を含有するアクリル系樹脂をTダイから溶融押出しした後、少なくとも1本の鏡面ロールに接触させて、より好ましくは2本の鏡面ロールに接触させて挟み込んだ状態で、製膜する方法が挙げられる。
【0035】
こうして得られるアクリル樹脂フィルム1は、事実上無色透明であって、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って測定される全光線透過率が80%以上、また黄色度が3以下となるようにすることができる。さらに、全光線透過率が90%以上で、かつ黄色度が2以下となるようにすることもでき、このように高い全光線透過率及び低い黄色度のものは一層好ましい。全光線透過率が80%を下回ると、その下層に位置する木材フィルム2の意匠性を損なう。また、黄色度が3より大きくなると、アクリル樹脂フィルム1を通して見る木材フィルム2の色合いが黄色味を帯びて、その風合いが損なわれることとなる。
【0036】
また、このアクリル樹脂フィルム1は、JIS K 7113「プラスチックの引張試験方法」に従って測定される引張降伏強さが、40MPa以下であるのが好ましく、30MPa以下であるのがより好ましい。引張降伏強さが40MPaを上回ると、アクリル樹脂フィルム1を木材フィルム2に熱プレス法により積層して木質化粧フィルム3を得る場合、積層後にアクリル樹脂フィルム1の収縮に起因して、積層界面での剥離が生じやすかったり、木質化粧成形体7のアクリル樹脂フィルム1側表面にハードコート層を設ける場合、成形体7の製造時に生じたアクリル樹脂フィルム1内のひずんだ箇所にハードコート剤中の有機溶剤が触れる為、アクリル樹脂フィルム1の表面に微小なひび割れ(ソルベントクラック)などの不良現象が生じやすかったりする。なお、このように剥離やひび割れが生じやすいのは、木材フィルム2は繊維方向に剛性が大きく、その表裏に配置されるアクリル樹脂フィルム1や熱可塑性樹脂5に比べて、熱による寸法変化が小さい為である。また、引張降伏強さは10MPa以上であるのが好ましく、あまり小さいとフィルムとして必要な剛性が欠如し、取り扱いが困難になることがある。
【0037】
さらに、このアクリル樹脂フィルム1は、JIS K 7133「プラスチック−フィルムおよびシート−加熱寸法変化測定方法」に従って測定される収縮率、すなわち標線間距離の変化が負の値であるときの絶対値が、100℃において20%以下であるのが好ましく、10%以下であるのがより好ましい。20%を上回ると、木質化粧フィルム3を加熱したとき、アクリル樹脂フィルム1の収縮に起因して、アクリル樹脂フィルム1と木材フィルム2との積層界面での剥離が生じやすい傾向となる。特にアクリル樹脂フィルム1が溶融押出法により製造されたものである場合、その押出方向の収縮率が上記範囲となるのが望ましい。
【0038】
アクリル樹脂フィルム1は、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルム2の片面に積層することにより、木質化粧フィルム3とすることができる。前述のとおり、積層する方法は、積層後に剥離等の不具合を起こさない方法であれば特に限定されるものでなく、例えば、ラミネート法や熱プレス法などが有利に採用される。また、接着層を介さずに両者を熱融着してもよいし、接着層を介して積層してもよい。接着層を介して積層する場合、接着剤は両者を接着できるものであれば特に限定されず、例えば、ウレタンアクリレート系、ゴム系、シリコーン系、シアノ系、シアノアクリレート系、エポキシ系、変性ポリオレフィン系などの接着剤や粘着剤を用いることができる。
【0039】
ここで用いる木材フィルム2は、その厚みが50μm以上500μm以下の範囲にあるのが好ましく、さらには100μm以上、また300μm以下であるのがより好ましい。木材フィルム2の厚みがあまり小さいものは、製造自体が困難となる。また、木材フィルム2の厚みがあまり大きいと、成形の際の形状追従性が低下して二次加工性が悪化し、さらには柔軟性に欠け、木質化粧フィルム3の取扱いが困難になる。
【0040】
木材フィルム2の材質は特に限定されるものでないが、表面の木目柄の美しいアメリカンウォールナット、ローズウッド、マホガニーなどが好ましいものとして挙げられる。また、木材フィルム2は不織布や金属薄板などで補強されていてもよい。
【0041】
本発明の木質化粧フィルム3を用いて、アクリル樹脂フィルム1を積層した面の反対面、すなわち木材フィルム2側に熱可塑性樹脂5を配置し、木質化粧成形体7とすることができる。木質化粧成形体7の製造にあたっては、別の熱可塑性樹脂5と一体成形することにより、アクリル樹脂フィルム1を積層した面が成形体7の最表面に配置される。一体成形には、木質化粧フィルム3を射出成形金型内に配置し、その木材フィルム2側から溶融熱可塑性樹脂を射出して、成形と同時に木質化粧フィルム3を成形品の最表面に一体貼合する、いわゆる射出成形同時貼合法が有利に採用される。
【0042】
具体的には例えば、上記の木質化粧フィルム3をそのまま射出成形金型に挿入し、その金型キャビティーに木材フィルム2側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に木質化粧フィルム3を貼合する方法(この方法を狭義の意味で射出成形同時貼合法と呼ぶこともある)や、木質化粧フィルム3を真空成形や圧空成形等で軽く予備賦形してから、アクリル樹脂フィルム1の面が金型に接するようにして射出成形金型内に挿入し、木材フィルム2側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に木質化粧フィルム3を貼合する方法(この方法をインサート成形法と呼ぶこともある)や、木質化粧フィルム3を射出成形金型内での真空成形や圧空成形等で軽く予備賦形した後、その木材フィルム2側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に木質化粧フィルム3を貼合する方法(この方法をインモールド成形法と呼ぶこともある)などが採用できる。いずれの場合も、木質化粧フィルム3は、木質化粧成形体7の表面に配置され、かつアクリル樹脂フィルム1が最表面となるように配置される。
【0043】
木質化粧成形体7の基材を構成する熱可塑性樹脂5は、一般的に用いられる熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものでないが、例えば、易成形性、硬度、価格などの面から、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などが好ましく用いられる。
【0044】
さらに、アクリル樹脂フィルム1が最表面となるように配置された木質化粧成形体7は、そのアクリル樹脂フィルム1上にハードコート処理をするのも有効である。ハードコート処理を施してハードコート層を設けることにより、表面硬度を向上させることができる。ハードコート法は特段限定されるものでないが、例えば、一般のハードコート液を用いたスプレーコーティング法やディッピング法などにより、行うことができる。
【0045】
こうして得られる木質化粧成形体7は、アクリル樹脂フィルム1が最表面に積層された状態となるので、外側から見た木材フィルム2の木目柄が視認性良く観察され、また深み感に優れ、高い意匠性が発揮されるとともに、耐候性、耐薬品性、表面硬度などにおいても、高い効果が発揮される。
【0046】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、ゴム粒子の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
【0047】
〔ゴム粒子の平均粒子径の測定〕
ゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、ゴム粒子部分(弾性共重合体部分)を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色されたゴム粒子部を選択し、その各々の粒子径を算出した後、その平均値を平均粒子径とした。
【0048】
実施例1
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8%及びアクリル酸メチル2.2%のモノマー組成からバルク重合法により得られた樹脂のペレット(ガラス転移温度103℃)を用いた。またゴム粒子としては、特公昭 55−27576号公報(= USP 3,793,402)の実施例3に準じて製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形3層構造であり、弾性共重合体層の平均粒子径が250nmのものを用いた。
【0049】
上に示したメタクリル樹脂ペレット70部とゴム粒子30部とをスーパーミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混錬して、ペレットとした。次いでこのペレットを、東芝機械(株)製の65mmφ一軸押出機を用い、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、ポリシングロールに両面が完全に接するようにして冷却し、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルムを得た。
【0050】
このアクリル樹脂フィルムに、アメリカンウォールナット社から入手した厚み200μmの木材フィルムをウレタンアクリレート系粘着剤で貼合し、木質化粧フィルムを得た。得られた木質化粧フィルムを、アクリル樹脂フィルムが金型面と接するように平板射出成形用金型内に配置し、ファナック社製の150T射出成形機を用いてABS樹脂の射出成形を行った。このとき、金型温度は50℃、ABS樹脂の射出圧力は1,150kg/cm2、溶融射出温度は230℃であった。
【0051】
実施例2
実施例1におけるゴム粒子を、それと基本的に同じ組成であるが、重合条件を変えて平均粒子径が140nmとなった球形3層構造のものに変更し、その他は実施例1と同様にして、厚さ250μmのアクリル樹脂フィルムを作製した。さらにこの樹脂フィルムを用いて、実施例1と同様の方法で加工を行い、木質化粧フィルム及び木質化粧成形体を作製した。
【0052】
比較例1
実施例1で用いたのと同じメタクリル樹脂ペレット70部及びゴム粒子30部に、さらに黄色有機染料として、住友化学工業(株)から入手した“SUMIKARON Yellow E−RPD”0.2部を加えてスーパーミキサーで混合し、二軸押出機で溶融混錬してペレットとした。次いでこのペレットを、東芝機械(株)製の65mmφ一軸押出機を用い、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、ポリシングロールに両面が完全に接するようにして冷却し、厚さ125μmのアクリル樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムを用いて、さらに実施例1と同様の方法で加工を行い、木質化粧フィルム及び木質化粧成形体を作製した。
【0053】
以上の実施例1及び2並びに比較例1において、アクリル樹脂フィルムの製膜性、全光線透過率及び黄色度を以下の方法で評価し、また木質化粧フィルムと木質化粧成形体の各々アクリル系樹脂側鉛筆硬度、さらに木質化粧フィルムと木質化粧成形体の間の意匠性の変化を、それぞれ以下の方法で評価し、結果を表1に示した。
【0054】
〔樹脂フィルムの製膜性〕
実施例1に準じた方法で製膜し、5時間以上フィルムの破断なく製膜が可能であったものを○、5時間で数回のフィルム破断が発生したものを△、5時間の間にフィルム破断が頻発し、収率が極めて低くなったものを×とした。
【0055】
〔樹脂フィルムの全光線透過率及び黄色度〕
JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って、全光線透過率及び黄色度(YI)を測定した。
【0056】
〔樹脂フィルムの引張降伏強さ〕
JIS K 7113「プラスチックの引張試験方法」に従って、引張降伏強さを測定した。
【0057】
〔樹脂フィルムの収縮率〕
JIS K 7133「プラスチック−フィルム及びシート−加熱寸法変化測定方法」に従って、100℃におけるフィルムの収縮率を、フィルム製造時の押出方向について測定した。
【0058】
〔鉛筆硬度〕
JIS K 5400に従って鉛筆引っかき値を測定した。
【0059】
〔木質化粧フィルムと木質化粧成形体の間の意匠性変化〕
木質化粧フィルム及びそれから作製した木質化粧成形体をそれぞれアクリル樹脂フィルム側から観察し、木材フィルムと木質積層体それぞれの木目柄の風合いを目視により観察し、評価した。目視観察上、風合いに変化がないものを○、風合いに変化があるものを×とした。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例3
新中村化学工業(株)から入手したハードコート液“NKハード M101”(多官能ウレタンアクリレートオリゴマー80%と光ラジカル重合開始剤を含む溶液)に1−メトキシ−2−プロパノールを加えて、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーが25%濃度となるように希釈し、これをハードコート剤とした。実施例1で得られた木質化粧フィルムのアクリル樹脂フィルム表面に、この25%濃度のハードコート剤を刷毛塗りした。次に40℃のオーブン中で10分間乾燥した後、400mJ/cm2の強度で紫外線を照射し、硬化させた。得られたハードコート層につき JIS K 5400に従って鉛筆引っかき値を測定したところ、鉛筆硬度は3Hに上がっていた。
【0062】
【発明の効果】
本発明のアクリル樹脂フィルムを用い、木材フィルムと貼合して木質化粧フィルムとすれば、木材フィルムの木目模様が明瞭に観察されるものとなる。そしてこの木質化粧フィルムを、そのアクリル樹脂フィルムが最表面に配置されるようにして、その木材フィルム側に熱可塑性樹脂を一体貼合し、木質化粧成形体とすれば、耐候性、耐傷つき性、耐薬品性、成形性をはじめとする各種性能に優れ、木質材料の視認性も高く、意匠性に優れたものとなる。さらに、アクリル樹脂フィルム側にハードコート層を設ければ、耐傷つき性に一層優れる木質化粧成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る木質化粧成形体の層構成を示す断面模式図である。
【符号の説明】
1……アクリル樹脂フィルム、
2……木材フィルム、
3……木質化粧フィルム、
5……熱可塑性樹脂、
7……木質化粧成形体。
Claims (16)
- メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散した事実上無色透明のアクリル系樹脂からなり、50μm以上500μm以下の厚みを有することを特徴とする木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- メタクリル樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体の重合により得られる熱可塑性重合体である、請求項1記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- ゴム粒子は、0.05μm以上0.3μm以下の平均粒子径を有する請求項1又は2記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- ゴム粒子は、アクリル酸アルキル50〜99.9重量%と、これに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体の重合で得られる弾性共重合体の層を有する重合体100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなり、前記弾性共重合体層の平均粒子径が0.05μm以上0.3μm以下のゴム含有重合体である、請求項3記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- ゴム粒子は、弾性共重合体層の内側に硬質重合体層を含む多層構造のものである請求項4記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- メタクリル樹脂50〜95重量部、及びゴム粒子5〜50重量部を含有し、ゴム粒子中の前記弾性共重合体の量は、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部あたり10〜50重量部である、請求項4又は5記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- 全光線透過率が80%以上であり、かつ黄色度が3以下である請求項1〜6のいずれかに記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- 引張降伏強さが10MPa以上40MPa以下である請求項1〜7のいずれかに記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- 100℃におけるフィルムの収縮率が20%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の木質化粧用アクリル樹脂フィルム。
- メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散した事実上無色透明のアクリル系樹脂からなり、50μm以上500μm以下の厚みを有するアクリル樹脂フィルムの片面に、木材をスライスしてフィルム状にした木材フィルムを積層してなることを特徴とする木質化粧フィルム。
- 木材フィルム上にアクリル樹脂フィルムが接着層を介さずに熱融着している請求項10記載の木質化粧フィルム。
- 木材フィルム上にアクリル樹脂フィルムが接着層を介して積層されている請求項10記載の木質化粧フィルム。
- 木材フィルムが50μm以上500μm以下の厚みを有する請求項10〜12のいずれかに記載の木質化粧フィルム。
- 請求項10〜13のいずれかに記載の木質化粧フィルムの木材フィルム側に、熱可塑性樹脂が積層されていることを特徴とする木質化粧成形体。
- アクリル樹脂フィルムの木材フィルムと接する面と反対側の表面にハードコート層が設けられている請求項14記載の木質化粧成形体。
- 請求項10〜13のいずれかに記載の木質化粧フィルムを射出成形金型内に配置し、その木材フィルム側から溶融熱可塑性樹脂を射出して、成形と同時に上記木質化粧フィルムを成形品の最表面に一体貼合することを特徴とする木質化粧成形体の製造方法。
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