JP2004000026A - ヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドの製造方法および該ポリペプチドを利用したヒアルロン酸の製造方法 - Google Patents

ヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドの製造方法および該ポリペプチドを利用したヒアルロン酸の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドの製造方法および該ポリペプチドを利用したヒアルロン酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域とそのC末端側に隣接する直近の膜貫通領域とからなるヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
【選択図】図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド、該ポリペプチドを発現するためのベクターおよび該ベクターで形質転換された形質転換体より該ポリペプチドを製造する方法に関する。また、本発明はヒアルロン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒアルロン酸(以下、「HA」ともいう)は、高分子量のグルコサミノグリカンであり、グルクロン酸がβ1,3結合でN−アセチルグルコサミンに結合した二糖単位(GlcAβ1−3GlcNAc:GlcAはグルクロン酸を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを表す)のβ1,4結合による繰り返しからなる直鎖状の多糖である。HAは、脊椎動物において、硝子体、皮膚、靭帯など様々な組織の細胞外マトリックス成分として幅広く存在することが知られている。HAは、他の細胞外マトリックス成分とともに3次元構造の形成に働き、組織の水分保持や柔軟性の維持のような構造物として機能ばかりでなく、HA結合蛋白質とともに細胞表面受容体との相互作用により、細胞の接着、遊走、分化などの細胞の挙動を調節するとともに、形態形成、創傷治癒、癌の浸潤、転移などの現象にも関与している。
【0003】
ヒアルロン酸の生合成に関しては、原核生物であるストレプトコッカス属菌を用いた研究が広く行われており、Streptococcus pyogenesからはじめてヒアルロン酸合成酵素遺伝子が単離された(DeAngelis, P. L. et al., J. Biol. Chem., 268, 19181 (1993))。その後、真核生物である哺乳動物からもヒアルロン酸合成酵素(以下、「HAS」ともいう)遺伝子が単離された。最初、HAS1(Itano, N. etal., J. Biol. Chem., 271, 9875 (1996)、Itano, N. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 222, 816 (1996)、特開平9−224674号、WO97/38113号、WO97/40174号)が単離され、その後HAS2(Watanabe, K.et al., J. Biol. Chem., 271, 22945 (1996)、Spicer, A. P. et al., J. Biol. Chem., 271, 23400 (1996)、WO98/00551号)、HAS3(Spicer, A. P. et al., J. Biol. Chem., 272, 8957 (1997)、WO98/00551号)が次々に単離された。これらは相同性が高く、ファミリーを形成していると考えられている。また、これら以外にもStreptococcus equisimilis(Kumari, K. et al., J. Biol. Chem., 272, 32539 (1997)、WO99/23227号)やPasteurella multocida(DeAngelis, P. L. et al., J. Biol. Chem., 273, 8454 (1998)、WO99/51265号)などからもHAS遺伝子がクローニングされた。さらに、既知の遺伝子の中にも上記HASと相同性の高いものが存在し、アフリカツメガエルのDG42(DeAngelis, P. L. et al., J. Biol. Chem., 271, 23657 (1996))あるいはクロレラ様の緑藻に感染するPBCV−1ウィルスのA98R(DeAngelis, P. L. et al., Science, 278, 1800 (1997))にHAS活性があることが報告されている。
【0004】
これまでにクローニングされたHASは、そのアミノ酸配列と生化学的解析から、少なくとも2種の異なったHASのクラスに分類することができると推定されている(DeAngelis, P. L. et al., Cell. Molec. Life Sci., 56, 670 (1999))。それによると、クラス2に含まれるHASはPasteurella multocida由来のものだけであり、それ以外はクラス1に分類されている。クラス1に属するHASは細胞質膜に存在し、そのトポロジカルな特徴として、N末端側、C末端側の双方に複数の膜貫通領域を有しており、中間の部分は細胞質側にループ状で存在するとされている。また、細胞質側のループ状の部分にヒアルロン酸合成に必要なN−アセチルグルコサミン転移酵素およびグルクロン酸転移酵素活性を有する領域が存在していることがマウス由来のHAS1を例に報告されている(Yoshida, M. et al., J. Biol. Chem., 275, 497 (2000))。また、特開2000−4886号ではマウス由来HAS1、2、3のN末端領域、内部領域、C末端領域をそれぞれ適当に組み合わせることにより、HAS活性が変化したキメラ蛋白質を作製できることを開示している。しかし、その際内部領域以外の領域にどのような機能があるかについては何ら考察されていない。
【0005】
これまでの生化学的な解析はこのループ状の部分について行われたものばかりであり、それ以外の部分については行われていない。上記ループ状の部分にN−アセチルグルコサミン転移酵素およびグルクロン酸転移酵素活性があることは確認されているが、ヒアルロン酸の合成はこの部分のみで十分なのかそれとも他の部分も必要なのかは全くわかっていない。もしヒアルロン酸合成酵素蛋白質中でヒアルロン酸合成酵素活性発現に必要最小限の領域が明らかになれば、ヒアルロン酸の生合成機構解明に大いに役立つ。
【0006】
さらに、哺乳動物由来のHASとしてはDG42が酵母で発現されている以外はCOS−1細胞などの動物細胞による発現しか行われておらず、大量生産に有利な大腸菌などの微生物、特に原核生物での発現はこれまでのところ報告されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的は、ヒアルロン酸合成酵素におけるヒアルロン酸合成に必要な領域を解明するとともに、上記領域を有するポリペプチドを大量に安価に製造する方法を提供すること、また、該ポリペプチドを用いたヒアルロン酸の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討した結果、ヒアルロン酸合成酵素が非常に速い速度で高分子量のヒアルロン酸を合成できるためには、単にヒアルロン酸合成酵素蛋白質中にN−アセチルグルコサミン転移酵素活性とグルクロン酸転移酵素活性が存在するだけでは不充分で、同じヒアルロン酸を基質とし、ヒアルロン酸の加水分解作用以外に糖転移作用も有するヒアルロニダーゼ(Saitoh, H. et al., J. Biol. Chem., 270, 3741 (1995))と共通する領域があるのではないかという仮説をたて、数種類のヒアルロニダーゼとヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2をマルチプルアラインメントにより解析した。その結果、ヒアルロン酸合成酵素における細胞質内ループ状部分のC末端側部分とそれに隣接する直近の膜貫通領域にヒアルロニダーゼと相同性の高い領域があることを発見した。さらに、本発明者らは、細胞質内ループ状部分のみを有するポリペプチドと、細胞質内ループ状部分と上記膜貫通部分からなるポリペプチドを、遺伝子組換え技術を利用して調製して解析した。その結果、細胞質内ループ状部分のみからなるポリペプチドにはHAS活性がないが、細胞質内ループ状部分と上記膜貫通部分からなるポリペプチドにHAS活性があり、ヒアルロン酸合成活性には少なくとも細胞質内ループ状部分とそれに隣接するC末端側直近の膜貫通領域が必要であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
【0010】
項1:ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域とそのC末端側に隣接する直近の膜貫通領域とからなるヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
【0011】
項2:(A)N−アセチルグルコサミン転移酵素活性及びグルクロン酸転移酵素活性を有する、ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域と、(B)オリゴ糖伸長作用を有する、(A)のC末端側に隣接する直近の膜貫通領域からなる、項1記載のヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
【0012】
項3:ヒアルロン酸合成酵素が哺乳動物由来のヒアルロン酸合成酵素である項1又は2のいずれかに記載のポリペプチド。
【0013】
項4:ヒアルロン酸合成酵素がヒアルロン酸合成酵素−2である項3記載のポリペプチド。
【0014】
項5:ヒアルロン酸合成酵素−2がヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2である項4記載のポリペプチド。
【0015】
項6:配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
【0016】
項7:配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる、N−アセチルグルコサミン転移酵素活性及びグルクロン酸転移酵素活性を有し、かつオリゴ糖伸長作用を有するポリペプチド。
【0017】
項8:配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて少なくとも1つのアミノ酸が、置換、挿入、削除、又は付加されている請求項6又は7のいずれかに記載のポリペプチド。
【0018】
項9: 項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドと異種蛋白質との融合蛋白質。
【0019】
項10: 異種蛋白質が糖結合蛋白質である項9に記載の融合蛋白質。
【0020】
項11: 糖結合蛋白質がマルトース結合蛋白質である項10に記載の融合蛋白質。
【0021】
項12: 項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドあるいは項9〜11のいずれかに記載の融合蛋白質をコードする遺伝子。
【0022】
項13: 項12に記載の遺伝子を発現可能に含んでなる発現ベクター。
【0023】
項14: 項13に記載の発現ベクターにより宿主細胞を形質転換した形質転換細胞。
【0024】
項15: 項14に記載の形質転換細胞を培養し、該培養物からヒアルロン酸合成活性を有するポリペプチドを採取することを特徴とする組換えポリペプチドの製造方法。
【0025】
項16: ウリジン−5’−ジホスホ−N−アセチルグルコサミンおよびウリジン−5’−ジホスホグルクロン酸共存下、項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドあるいは項9〜11のいずれかに記載の融合蛋白質を作用させることにより、ヒアルロン酸を製造する方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0027】
ポリペプチド
本発明のポリペプチドは、ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域と、そのC末端側に隣接する直近の膜貫通領域とからなるポリペプチドである。
【0028】
本発明におけるヒアルロン酸合成酵素は、ヒアルロン酸合成活性を有し、N末端側およびC末端側にそれぞれ複数の膜貫通領域を有し、その中間に細胞質内ループを形成する領域を有するものであれば、特に限定されないが、哺乳動物由来のものが好ましく、例えば、キセノポス ラエビス(Xenopus laevis)由来ヒアルロン酸合成酵素DG42、マウス由来ヒアルロン酸合成酵素1、2又は3、又は、ヒト由来ヒアルロン酸合成酵素1、2又は3などが挙げられる。
【0029】
中でもヒアルロン酸合成酵素2が好ましい。さらに、ヒト由来のヒアルロン酸合成酵素2が好ましい。
【0030】
ヒアルロン酸合成活性とは、ウリジン−5’−ジホスホ−N−アセチルグルコサミン(以下、UDP−GlcNAcと略することがある)およびウリジン−5’−ジホスホグルクロン酸 (以下、UDP−GlcAと略することがある)を糖供与体として、グルクロン酸がβ1,3結合でN−アセチルグルコサミンに結合した二糖単位(GlcAβ1−3GlcNAc:GlcAはグルクロン酸を、GlcNAcはN−アセチルグルコサミンを表す)のβ1,4結合による繰り返し構造を有する多糖あるいはオリゴ糖を合成する能力をいう。
【0031】
もう一つの本発明のポリペプチドは、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであるが、該ポリペプチドは配列番号4を有するヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2においてアミノ酸番号67〜414で示されるポリペプチドに相当し、該ポリペプチドの少なくとも1つのアミノ酸が、置換、挿入、削除、又は付加されていても構わない。
【0032】
また、本発明のポリペプチドは上記直近の膜貫通領域にさらにC末端側に存在する複数の膜貫通領域の一部、例えば2番目の膜貫通領域など、が付加されていても構わない。
【0033】
ヒアルロン酸合成酵素のトポロジーは、例えばKyteとDoolittleの方法によるハイドロパシープロットにより推定できる。
【0034】
配列番号4に示されるアミノ酸配列を有するヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2において、N末端側の膜貫通領域と細胞質内ループを形成する領域との境はアミノ酸番号60〜70付近、細胞質内ループを形成する領域とC末端側の膜貫通領域との境はアミノ酸番号381〜387付近、最初の膜貫通領域と次の膜貫通領域との境はアミノ酸番号396〜405付近にあると推定される。
【0035】
また、マウス由来ヒアルロン酸合成酵素−1では、それぞれアミノ酸配列のN末端から69番目〜76番目付近、409番目〜417番目付近、426番目〜434番目付近に存在すると推定される。
【0036】
マウス由来ヒアルロン酸合成酵素−3では、それぞれアミノ酸配列のN末端から59番目〜68番目付近、385番目〜391番目付近、400番目〜409番目付近に存在すると推定される。
【0037】
ヒアルロン酸合成酵素において、細胞質内ループを形成する領域のC末端付近からそれに隣接する直近の膜貫通領域にかけ、ヒアルロニダーゼと相同性の高い領域が存在する(図1)。
【0038】
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を加水分解する酵素であるが、ヒアルロン酸オリゴマーを糖供与体とする糖転移反応も触媒する機能も有する。
【0039】
細胞質内ループ部分のみを有するポリペプチドでは、ヒアルロン酸合成活性はないが、細胞質内ループ部分にこの相同性の高い領域が加わったポリペプチドでは、ヒアルロン酸合成活性が発現する。
【0040】
従って、この相同性の高い領域は、細胞質内ループ部分で合成されたヒアルロン酸オリゴマーを、さらにヒアルロニダーゼと同様の糖転移作用により、より鎖長の長いヒアルロン酸を合成する機能を有していると考えられる。また、ヒアルロン酸は細胞質内で生合成された後、細胞外へ排出されることが知られており、この領域がヒアルロン酸の細胞外への輸送に直接関わる、あるいは輸送に関わる蛋白質と相互作用を持つことによって間接的に関わることにより、合成されたヒアルロン酸をスムーズに排出し、ヒアルロン酸の合成を促進しているとも考えられる。さらに、この領域にはヒアルロン酸と結合する部位が存在し、合成されつつあるヒアルロン酸と結合することによりヒアルロン酸合成酵素とより長時間緊密に合成途上のヒアルロン酸が接触し、N−アセチルグルコサミン転移反応やグルコサミン転移反応が同一基質上でより高度に繰り返し進行し、高分子量のヒアルロン酸を合成されるとも考えられる。
【0041】
融合蛋白質
本発明のポリペプチドは上記ポリペプチドと異種蛋白質との融合蛋白質でもある。一般に、遺伝子組換え手法を利用して、ポリペプチドを生産するときには、その発現に適した発現ベクターを利用するが、利用する発現ベクターによっては、意図したポリペプチドは発現ベクターに応じて異種蛋白質との融合蛋白質の形で発現されることがしばしばある。これは、発現したポリペプチドがインクルージョンボディになるのを防いだり、発現したポリペプチドの検出や精製を容易にするためである。該異種蛋白質は、上記ポリペプチドのN末端側、C末端側いずれに適当なペプチドあるいは蛋白質が連結されていても構わないが、好ましくはN末端側に連結されたものであり、さらに好ましくは異種蛋白質と上記ポリペプチドとの融合部位に酵素学的または化学的手段により容易に切断できる構造を有するものである。
【0042】
異種蛋白質は時としてペプチドであるときもしばしばある。異種蛋白質としては、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(Glutathion−S−transferase)、グリーン蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein)、チオレドキシン(Thioredoxin)、糖結合蛋白質、また次のアミノ酸配列で表されるペプチドHis−His−His−His−His−His(アミノ酸一文字表記でHHHHHH)、Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys(DYKDDDDK)、Glu−Gln−Lys−Leu−Ile−Ser−Glu−Glu−Asp−Leu(EQKLISEEDL)、Met−Lys−Ala−Glu−Phe−Arg−Arg−Gln−Glu−Ser−Asp−Arg(MKAEFRRQESDR)、Met−Arg−Asp−Ala−Leu−Asp−Arg−Leu−Asp−Arg−Leu−Ala(MRDALDRLDRLA)、Met−Lys−Asp−Gly−Glu−Glu−Tyr−Ser−Arg−Ala−Phe−Arg(MKDGEEYSRAFR)、Tyr−Pro−Tyr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Ala(YPYDVPDYA)、Cys−Thr−Pro−Thr−Asp−Val−Pro−Asp−Tyr−Ala−Ser−Leu(CTPTDVPDYASL)、Glu−Glu−Glu−Glu−Tyr−Met−Pro−Met−Glu(EEEEYMPME)、Thr−Asp−Phe−Tyr−Leu−Lys(TDFYLK)、Pro−Pro−Glu−Pro−Glu−Thr(PPEPET)、Met−Ala−Ser−Met−Tyr−Gly−Gly−Gln−Gln−Met−Gly(MASMTGGQQMG)、Gly−Lys−Pro−Ile−Pro−Asn−Pro−Leu−Leu−Gly−Leu−Asp−Ser−Thr(GKPIPNPLLGLDST)、Tyr−Thr−Asp−Ile−Glu−Met−Asn−Arg−Leu−Gly−Lys(YTDIEMNRLGK)などが挙げられる。中でも糖結合蛋白質が好ましい。
【0043】
糖結合蛋白質とは、単糖類並びに糖残基を有する少糖類および多糖類に対する高親和性を保持する蛋白質であって、例えば、各種レクチン、マルトース結合蛋白質、セルロース結合蛋白質、キチン結合蛋白質などが例示できる。好ましくは、マルトース結合蛋白質、セルロース結合蛋白質、キチン結合蛋白質等であり、より好ましくは、マルトース結合蛋白質(以下MBPと省略することがある。)である。
【0044】
糖結合蛋白質は、いかなる生物種由来のものであってもよいが、好ましくは細菌などの原核生物由来であり、より好ましくは大腸菌由来である。また、該MBPは、マルトースまたはマルトース残基を有する少糖類(例えば、マルトトリオース等)もしくは多糖類(例えば、アミロース等)に対して特異的親和性を有する部位を有する限り、必ずしも全配列を含む必要はなく、該配列の一部を含むものであってもよい。
【0045】
ポリペプチド又は融合蛋白質の製造方法
本発明において、上記ポリペプチドあるいは融合蛋白質は、上記ポリペプチドあるいは融合蛋白質をコードするDNAが、上記性質を有する形で転写・翻訳されるように挿入された発現ベクターで、宿主を形質転換し、得られた形質転換体を適当な培地中で培養し、得られた培養物より採取することにより、得ることができる。
【0046】
宿主細胞としては、大腸菌、酵母、細菌などの微生物細胞、昆虫細胞、COS−1細胞、CHO細胞などの動物細胞やアラビドプシス細胞などの植物細胞などが挙げられる。ポリペプチドの場合には、宿主細胞として動物細胞を用いることが好ましく、上記融合蛋白質の場合、宿主としては大腸菌などの微生物細胞が好ましい。
【0047】
ベクターとしては、形質転換する宿主に応じて、種々のものが利用できる。例えば、大腸菌では、pMAL−p2、pUC19など、酵母では、pYEUra3TMなど、昆虫細胞では、pBLUE Bac4など、COS−1細胞ではpSVK3、pFLAG−CMV−2、pcDNA3.1、pRc/CMV2など、アラビドプシス細胞ではpBIなどが挙げられる。
【0048】
上記ポリペプチドをコードするDNAは、公知のヒアルロン酸合成酵素遺伝子の配列(例えば、ヒトHAS2の場合Watanabe, K.et al., J. Biol. Chem., 271, 22945 (1996)) に基づいて、公知のいかなる手法によっても調製することができる。例えば、公知のヒアルロン酸合成酵素をコードする領域の全部または一部をカバーする適当なオリゴヌクレオチドプライマー対を合成し、ヒアルロン酸合成能を有する細胞あるいは組織より得られたcDNAライブラリーを鋳型にPCRを行うことによりクローニングできる。このとき、その後のベクターヘのクローニングを容易にするために、用いるオリゴプライマーの末端に適当な制限酵素認識配列を付加することもできる。
【0049】
あるいは、公知のヒアルロン酸合成酵素遺伝子配列をもとに適当なオリゴヌクレオチドプローブを合成し、これを用いてヒアルロン酸合成酵素を発現する細胞または組織から常法により調製したcDNAライブラリーをプラーク(またはコロニー)ハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることによってもクローニングすることができる。
【0050】
さらに、ヒアルロン酸合成酵素をコードするDNAは、部分または完全精製されたヒアルロン酸合成酵素の全部または一部を抗原として常法により抗体を作製し、これを用いてヒアルロン酸合成酵素を発現する細胞または組織から常法により調製したcDNAライブラリーを抗体スクリーニングすることによってもクローニングすることができる。
【0051】
あるいは、当該DNAは、公知のヒアルロン酸合成酵素遺伝子配列をもとにDNA/RNA自動合成機を用いて、センス鎖の部分配列とアンチセンス鎖の部分配列を一部がオーバーラップするように合成し、PCR法によってより長い部分配列を二本鎖DNAとして得るという操作を繰り返すことによって、所望のDNA配列を得ることもできる。
【0052】
本発明において、上記ポリペプチドと融合蛋白質を形成する適当なペプチドあるいは蛋白質をコードするDNAは、上述のペプチドあるいは蛋白質をコードするDNAが例示され、好ましくは上述の各種糖結合蛋白質をコードするDNAが例示される。
【0053】
各種糖結合蛋白質をコードするDNAとしては、マルトース結合蛋白質、セルロース結合蛋白質またはキチン結合蛋白質をコードするDNAが例示され、好ましくは、マルトース結合蛋白質をコードするDNAである。また、該DNAは、いかなる生物種由来のものであってもよいが、好ましくは細菌などの原核生物由来であり、より好ましくは大腸菌由来である。
【0054】
また、該MBPをコードするDNAは、マルトースまたはマルトース残基を有する少糖類(例えば、マルトトリオース等)もしくは多糖類(例えば、アミロース等)に対して特異的親和性を有する翻訳産物をコードする限り、必ずしもコード領域の全部を含む必要はなく、該コード領域の一部を含むものであってもよい。同様に、糖結合蛋白質は、結合する糖に対して特異的親和性を有する翻訳産物をコードする限り、必ずしもコード領域の全部を含む必要はなく、該コード領域の一部を含むものであってもよい。例えば、MBPをコードする遺伝子としてpMAL−p2あるいはpMAL−c2(共にNew England Biolabs社製)に由来するものを使用することができる。
【0055】
例えば、公知のヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2遺伝子の配列をもとに、該酵素をコードする領域全てをカバーでき、かつその末端に制限酵素認識配列を有する配列番号5および6で示されるオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、ヒト小腸由来大腸菌組換え型cDNAライブラリーより抽出したプラスミドを鋳型にPCRを行うことにより、ヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2をコードするcDNAを得る。次いで、配列番号7および8に示されるオリゴヌクレオチドを合成し、該cDNAをサブクローニングしたプラスミドを鋳型にPCRを行い、目的とするポリペプチドをコードするcDNAを得る。このcDNAをpMAL−p2に挿入することにより、目的とする融合蛋白質の発現ベクターを得ることができる。
【0056】
発現ベクターの宿主細胞への導入は、遺伝子工学分野で通常用いられる方法で行うことができる。例えば、リポフェクション法、DEAE−デキストラン法、塩化カルシウム法、プロトプラスト法、コンピテント法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
【0057】
本発明のポリペプチドあるいは融合蛋白質は、上述の方法で得られた形質転換体を、適当な培地中で培養し、得られる培養物より採取することにより得ることができる。
【0058】
例えば、上述のpMAL−p2から得られた発現ベクターで形質転換した大腸菌JM109株の場合、用いられる培地としては、炭素源としてグルコース、フルクトース、グリセロール、スターチなどの炭水化物を含有するものが好適であり、無機もしくは有機窒素源(例えば硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,カゼインの加水分解物,酵母抽出物,ポリペプトン,パクトトリプトン,ビーフ抽出物等)を含んでいてもよい。これらの炭素源および窒素源は、純粋な形で使用する必要はなく、純度の低いものも微量の生育因子や無機栄養素を豊富に含んでいるので有利である。さらに所望により、他の栄養源[例えば、無機塩(例えば、二リン酸ナトリウムまたは二リン酸カリウム,リン酸水素二カリウム,塩化マグネシウム,硫酸マグネシウム,塩化カルシウム)、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、抗生物質(例えば、アンピシリン,カナマイシン)など]を培地中に添加してもよい。
【0059】
形質転換体の培養は、通常pH5.5〜8.5、好適にはpH6〜8、通常18〜40℃、好適には20〜35℃で、1〜150時間行われるが、これらは培養条件および培養規模によって適宜変更することができる。
【0060】
また、融合蛋白質の発現が誘導蛋白質遺伝子のプロモーター系によって制御されるので、誘導物質を添加する必要がある。添加時期は培養開始時でもよいが、対数増殖期初期が好ましい。誘導物質の添加濃度は、培養条件、培養規模、誘導物質の種類などによって適宜変更することができる。
【0061】
本発明の融合蛋白質は、得られた菌体をリゾチーム処理、超音波破砕などの方法により破砕し、遠心分離することにより無細胞抽出液を得、さらに無細胞抽出液を超遠心分離することにより、膜画分として得ることができる。
【0062】
また、得られた膜画分より、ジキトキニンやCHAPS(3−[(3−cholamidopropyl)dimethylammonio]−1−propanesulfonic acid)などの界面活性剤を用いて、可溶化し、通常の精製方法により精製することもできる。精製方法としては、例えば硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムなどによる塩析、遠心分離、透析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法などが挙げられ、これらを適当に組み合わせることにより精製することができる。
【0063】
本発明のポリペプチドは、ヒアルロン酸合成酵素活性に必要な最小限の領域からなるものであって、全長のヒアルロン酸合成酵素と比べて、ポリペプチドのサイズが小さく、特に疎水性の高い領域が減少している。これにより、ポリペプチドの製造におけるインクルージョンボディ(生理活性のない不溶性タンパク質)の形成が抑えられ、再生用緩衝液での希釈工程や、活性を有する立体構造に再び戻すリフォールディング工程における生産効率の低下が抑制される。また、プラスミドへの挿入サイズが小さくなるので、全体としての発現プラスミドのサイズが小さくなり、細胞内での安定性が高まって、発現効率も向上する。
【0064】
本発明によって、ヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチドが、効率よく、大量に取得できる。
【0065】
ヒアルロン酸製造方法
本発明において、ヒアルロン酸は上述の方法により製造された本発明のポリペプチドあるいは融合蛋白質を適当な緩衝液中、10〜50℃、好ましくは20〜40℃で、1〜120時間、好ましくは5〜72時間、UDP−GlcNAcおよびUDP−GlcAと接触させることにより製造される。用いることのできる緩衝液としては中性付近、好ましくはpHが6〜9、さらに好ましくはpHが7〜8に調整し得るものであれば特に制限はないが、例えばTris−HCl緩衝液などが挙げられる。また、反応液中にマグネシウムイオン、マンガンイオンなどの2価金属イオンや反応液を還元的な雰囲気に保つためにジチオスレイトールや2−メルカプトエタノールなどのチオール化合物を加えても構わない。さらに、反応液中にGlcNAc、GlcAあるいはヒアルロン酸オリゴマーを受容体として加えても構わない。合成されたヒアルロン酸は一般的な分離精製方法、例えば、透析、ゲルろ過クロマトグラフィーを含む各種カラムクロマトグラフィーなど、により単離することができる。
【0066】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにかかる実施例により限定されるものではない。
【0067】
実施例1 ヒト由来HAS2をコードするcDNAの取得
ヒト小腸由来大腸菌組換え型cDNAライブラリー(宝酒造社製)を約5000個ずつ96穴マイクロプレートに培養し、各ウェルのプラスミドをアルカリSDS法により抽出した。既に報告されている配列番号3記載のヒトヒアルロン酸合成酵素2(human HAS2:Watanabe, K.et al., J. Biol. Chem., 271, 22945 (1996))cDNAの塩基配列をもとに、配列番号5、及び6に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。配列番号5に示す塩基配列は配列番号3に示される塩基配列中1〜28で示される塩基配列の5’末端にBamHI認識部位が付加された配列を含み、配列番号6に示す塩基配列は配列番号3に示される塩基配列中1645〜1656で示される塩基配列の3’末端にHindIII認識部位が付加された配列に相補的な配列を含む。これらオリゴヌクレオチドをプライマーに用い、上記プラスミドを鋳型に、Extaq DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてPCR反応を行い、目的とするサイズのPCR産物を有するウェルを選取した。更に同様の操作により大腸菌のシブリングセレクションを3回行い、最終的に50クローンより成るプラスミドに絞りこんだ。該プラスミドを鋳型に、配列番号5および6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとし、Extaq DNA polymeraseを用いて、30サイクルのPCR反応を行い、PCR産物を得た。PCR産物であるDNA断片のヌクレオチド配列を常法により決定したところ、配列番号3で示される配列を含んでいることが確認された。PCR産物を制限酵素BamHI及びHindIIIで切断し、切断断片をアガロース電気泳動により精製した。
一方、プラスミドpMAL−p2x(New England Biolabs社製)も制限酵素BamHI及びHindIIIで切断し、切断断片をアガロース電気泳動により精製した。これら断片をライゲーションさせ、プラスミドphHAS2ORFMALp2xを得た。
【0068】
実施例2 human HAS2の細胞内ループ部分および膜貫通部分からなるポリペプチド断片をコードするcDNAの取得
配列番号7に示した塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、配列番号8に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。前者は配列番号1に示される塩基配列中1〜28(配列番号3に示される塩基配列中199〜226に相当する)で示される塩基配列の5’末端にBamHI認識部位が付加された配列を含み、後者は配列番号1に示される塩基配列中1032〜1044(配列番号3に示される塩基配列中1230〜1242に相当)で示される塩基配列の3’末端にHindIII認識部位が付加された配列に相補的な配列を含むように調整した。これらのオリゴヌクレオチドを用いて、実施例1で得たプラスミドphHAS2ORFMALp2xを鋳型にPCR反応を行った。得られたPCR産物であるDNA断片のヌクレオチド配列を常法により決定したところ、配列番号1で示される塩基配列中1〜1044(配列番号3で示される塩基配列中199〜1242に相当)で示される塩基配列を含んでいることが確認された。
【0069】
実施例3 human HAS2の細胞内ループ部分からなるポリペプチド断片をコードするcDNAの取得
配列番号7に示した塩基配列を有するオリゴヌクレオチドと、配列番号9に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。後者は配列番号1に示される塩基配列中921〜933(配列番号3に示される塩基配列中1119〜1131に相当)で示される塩基配列の3’末端にHindIII認識部位が付加された配列に相補的な配列を含む。これらのオリゴヌクレオチドを用いて、実施例1で得たプラスミドphHAS2ORFMALp2xを鋳型にPCR反応を行った。得られたPCR産物であるDNA断片のヌクレオチド配列を常法により決定したところ、配列番号1で示される塩基配列中1〜933(配列番号3で示される塩基配列中199〜1131に相当)で示される塩基配列を含んでいることが確認された。
【0070】
実施例4 発現ベクターphHAS2PSMALp2xの構築
実施例2で得たPCR産物を制限酵素BamHI及びHindIIIで切断し、切断断片をアガロース電気泳動により精製した。一方、プラスミドpMAL−p2x(New England Biolabs社製)も制限酵素BamHI及びHindIIIで切断し、切断断片をアガロース電気泳動により精製した。これら断片をライゲーションさせ発現ベクターphHAS2PSMALp2xを得た。
【0071】
実施例5 発現ベクターphHAS2CataMALp2xの構築
実施例3で得たPCR産物を用いて、実施例4と同様にして、発現ベクターphHAS2CataMALp2xを得た。
【0072】
実施例6 融合蛋白質の調製
常法に従い、実施例1、4あるいは5で得た発現ベクターphHAS2ORFMALp2x、phHAS2PSMALp2x及びphHAS2CataMALp2xで大腸菌JM109株をそれぞれ形質転換した。形質転換体を0.2% glucoseおよび100μg/ml Ampicillinを含むLB培地5mlの入った試験管に一白金耳植菌し、37℃で一晩振とう培養した。得られた培養液0.75mlを上記培地75mlの入った坂口フラスコに植菌した。37℃で振とう培養し、培養液の600nmにおける吸光度が0.6−0.8に達した時点で、終濃度100μMのイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を添加し、さらに37℃で4時間培養を続けた。
【0073】
菌体を遠心分離により集め、2mlの30mM Tris−HCl(pH8.0、20%ショ糖、1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)で菌体を懸濁し、リゾチーム処理し、10,000rpmで30分間遠心分離し、沈殿を集めた。沈殿を上記緩衝液2mlで懸濁し、超音波にて細胞壁を破砕した後、10,000rpmで30分間遠心分離し、上清を得た。上清をさらに、43,000rpm (100,000×g)で1時間超遠心を行い、融合蛋白質が局在する膜画分を集め、0.2mlの50mM Tris−HCl (pH7.4)に懸濁した。得られた膜画分をSDS−PAGE電気泳動およびウェスタンブロッティングを行うことによって目的物であるMBP融合蛋白質の発現の確認を行った。目的融合蛋白質は、SDS−PAGE電気泳動ではクマシーブリリアントブルー染色にて、ウェスタンブロッティングは一次抗体として抗MBPウサギ抗血清、二次抗体にはペルオキシダーゼ標識抗ウサギヤギIgGを使用し、コニカイムノステイニングキット(コニカ社製)により検出した。形質転換体E. coli JM109 (phHAS2PSMALp2x)および形質転換体E. coli JM109 (phHAS2CataMALp2x)から得られた膜画分には目的とする融合蛋白質が発現していることが確認されたが、形質転換体E. coli JM109 (phHAS2ORFMALp2x)から得られた膜画分には発現は確認されなかった。超音波破砕後の細胞破砕液を用いて同様に融合蛋白質の発現を調べたが、発現は認められなかった。発現ベクターの欠落あるいは挿入断片の欠落など細胞内での発現ベクタアーの安定性に問題があったものと考えられる。形質転換体E. coli JM109 (phHAS2PSMALp2x)から得られた膜画分を膜画分A、形質転換体E. coli JM109 (phHAS2CataMALp2x)から得られた膜画分を膜画分Bとした。膜画分に含まれる蛋白質量は、牛血清アルブミンを標準として、BCA Protein Assay Reagent(PIERCE社製)により測定した。
【0074】
実施例7 ヒアルロン酸合成酵素活性の測定
蛋白質として0.5mg含む実施例6で得た膜画分AあるいはB、1mMジチオスレイトール、20mM塩化マグネシウム、1mMエチレングリコールビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N,N−テトラ酢酸、15%グリセロール、0.5mMウリジン−5’−ジホスホグルクロン酸(以下、UDP−GlcUAと略する)、0.5mMウリジン−5’−ジホスホ−N−アセチルグルコサミン(以下、UDP−GlcNAcと略する)、0.1μM UDP−[14C]GlcUA、0.24μM UDP−[H]GlcNAc、グルクロン酸125μgを含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)0.2mlを37℃で1時間インキュベーションすることにより反応させた。反応後、反応液を10分間煮沸させることにより反応を停止させた。反応液を二分して、片方に0.5単位のストレプトコッカス ジスガラクティアーゼ(Streptococcus dysgalactiae)由来ヒアルロニダーゼ(生化学工業社製)を添加し、30℃で4時間さらにインキュベーションした。10分間煮沸させることによりヒアルロニダーゼを失活させた。反応液をSuperdex Peptide HR10/30 (アマシャムファルマシア社製) カラムクロマトグラフィー(溶出液:0.2M酢酸アンモニウム)で、0.5mlずつ分画し、各画分の放射活性を測定した。結果は図2に示した。その結果、膜画分Aを用いた反応液からは、ヒアルロニダーゼで低分子化される産物が観察され、ヒアルロン酸合成活性があることが確認された。一方、膜画分Bを用いた反応液からはそのような産物は観察されず、ヒアルロン酸合成活性は確認されなかった。
【0075】
【発明の効果】
上述したように、本発明によりヒアルロン酸合成活性を有したヒアルロン酸合成酵素断片であるポリペプチドを得ることができ、該ポリペプチドはヒアルロン酸合成機構の解明に有用である。また、本発明により前記ポリペプチドの発現ベクターおよび該発現ベクターにより形質転換された形質転換体を得ることができ、これらを利用することにより、ヒアルロン酸合成活性を有したポリペプチドを安価に大量に得ることができる。また、該ポリペプチドを利用してヒアルロン酸を容易に得ることができる。
【0076】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、ヒト由来HAS2と各種ヒアルロニダーゼとをマルチプルアライメント(multiple alignment)を行ったときの、相同性が高い部分として得られた領域を示す図面である。
【図2】
図2は、膜画分Aの反応液のクロマトグラムの測定結果を示す図面である。

Claims (16)

  1. ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域とそのC末端側に隣接する直近の膜貫通領域とからなるヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
  2. (A)N−アセチルグルコサミン転移酵素活性及びグルクロン酸転移酵素活性を有する、ヒアルロン酸合成酵素の細胞質内ループを形成する領域と、(B)オリゴ糖伸長作用を有する、(A)のC末端側に隣接する直近の膜貫通領域からなる、請求項1記載のヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
  3. ヒアルロン酸合成酵素が哺乳動物由来のヒアルロン酸合成酵素である請求項1又は2のいずれかに記載のポリペプチド。
  4. ヒアルロン酸合成酵素がヒアルロン酸合成酵素−2である請求項3記載のポリペプチド。
  5. ヒアルロン酸合成酵素−2がヒト由来ヒアルロン酸合成酵素−2である請求項4記載のポリペプチド。
  6. 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるヒアルロン酸合成酵素活性を有するポリペプチド。
  7. 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる、N−アセチルグルコサミン転移酵素活性及びグルクロン酸転移酵素活性を有し、かつオリゴ糖伸長作用を有するポリペプチド。
  8. 配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドにおいて少なくとも1つのアミノ酸が、置換、挿入、削除、又は付加されている請求項6又は7のいずれかに記載のポリペプチド。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドと異種蛋白質との融合蛋白質。
  10. 異種蛋白質が糖結合蛋白質である請求項9に記載の融合蛋白質。
  11. 糖結合蛋白質がマルトース結合蛋白質である請求項10に記載の融合蛋白質。
  12. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドあるいは請求項9〜11のいずれかに記載の融合蛋白質をコードする遺伝子。
  13. 請求項12に記載の遺伝子を発現可能に含んでなる発現ベクター。
  14. 請求項13に記載の発現ベクターにより宿主細胞を形質転換した形質転換細胞。
  15. 請求項14に記載の形質転換細胞を培養し、該培養物からヒアルロン酸合成活性を有するポリペプチドを採取することを特徴とする組換えポリペプチドの製造方法。
  16. ウリジン−5’−ジホスホ−N−アセチルグルコサミンおよびウリジン−5’−ジホスホグルクロン酸共存下、請求項1〜8のいずれかに記載のポリペプチドあるいは請求項9〜11のいずれかに記載の融合蛋白質を作用させることにより、ヒアルロン酸を製造する方法。
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