JP2003511623A - 弁制御室内に突入したノズルニードルを備えた、内燃機関に用いられる燃料噴射システムのためのインジェクタ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ノズルニードル（２１）へ作用するハイドロリック力の少なくとも部分的な補償を行う、燃料噴射システムのためのインジェクタが提案される。さらに、制御されるべき燃料容量が減じられるので、短い制御時間が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 背景技術 本発明は、ノズルニードルを制御する弁制御室を備えた、内燃機関に用いられ
る燃料噴射システムのためのインジェクタから出発する。

【０００２】 電磁弁またはピエゾアクチュエータにより制御されるインジェクタは公知であ
る。制御形式とは無関係に、インジェクタの制御時間を減少させることにより、
内燃機関などのエミッション特性および消費特性ならびに騒音発生に関する改善
を達成することができる。減じられた制御時間は、噴射量の調量が一層正確に行
われ、かつ噴射特性曲線が一層自由に形成され得ることを意味する。さらに、最
新の内燃機関および自動車では、スペース事情がますます狭められており、これ
により、コンパクトな構造を有するインジェクタが必要とされる。

【０００３】 したがって、本発明の課題は、制御時間が減じられると共に、外側寸法が特に
コンパクトであるような、内燃機関に用いられる燃料噴射システムのためのイン
ジェクタを提供することにある。

【０００４】 この課題は本発明によれば、ノズルニードルを制御する弁制御室を備えた、内
燃機関に用いられる燃料噴射システムのためのインジェクタにおいて、弁制御室
がノズルニードルの一方の端面によって仕切られていることにより解決される。

【０００５】 本発明によるインジェクタには、次のような利点がある。すなわち、長尺の圧
力ロッドと弁ピストンとが不要となることにより、インジェクタの構成部分点数
や、運動させられる構成部分の慣性を減少させることができる。これにより、短
い制御時間が可能となる。さらに、弁制御室を一層、噴射ノズルの近くにまで近
付けることができる。これにより、一層細いノズルニードルも可能となる。この
効果はインジェクタ内部の、運動させられる質量を一層減少させるために役立つ
。

【０００６】 複数の構成部分が不要となり、かつ残りの構成部分の小型化が可能となること
に基づき、本発明によるインジェクタの構成寸法の著しい減少が得られる。本発
明によるインジェクタの直径比は、ほぼ公知先行技術による噴射ノズルの直径比
に相当する。

【０００７】 さらに、インジェクタの本発明による１構成では、閉鎖された状態で漏れが発
生し得ず、したがって、漏れオイル流出部を設ける必要もない。

【０００８】 本発明のさらに別の構成では、弁制御室が弁体内に配置されているので、弁制
御室は簡単かつ安価に製造可能である。

【０００９】 本発明のさらに別の構成では、弁体が圧力室内に突入しているので、インジェ
クタのコンパクトな構造が得られ、かつシール部の数も少なく保持される。

【００１０】 本発明のさらに別の有利な構成では、圧力室が流入通路を介して高圧燃料アキ
ュムレータもしくは高圧燃料蓄え器に接続されており、弁制御室が流入絞りを介
して高圧燃料蓄え器に少なくとも間接的に接続されており、弁制御室が流入絞り
を介して圧力室に接続されている。これにより、弁制御室と圧力室と高圧燃料蓄
え器との間に必要となる、ハイドロリック的な接続もしくは液圧的な接続が簡単
に実現可能となる。

【００１１】 本発明のさらに別の有利な構成では、弁制御室が流出通路と、流出絞りと、制
御弁、特に２ポート２位置制御弁または２ポート３位置制御弁とを介して、燃料
戻し路に接続可能である。これにより、制御弁の開放によって弁制御室内の圧力
を減少させることができる。その結果、ノズルニードルがシールシートを解放し
、噴射が開始される。

【００１２】 本発明のさらに別の有利な構成では、流出通路と流出絞りとが弁体内に配置さ
れているので、所要のスペースの一層の削減が得られる。

【００１３】 本発明のさらに別の有利な構成では、圧力室内に、弁体に支持されかつ、少な
くとも間接的にノズルニードルに支持された閉鎖ばねが設けられており、この閉
鎖ばねが、ノズルニードルに設けられた段部に支持されているか、または弁制御
室内に、インジェクタとノズルニードルとに支持された閉鎖ばねが設けられてい
る。これにより、燃料の圧力が存在しない場合にインジェクタは常に閉じられ、
したがって、燃焼室内への燃料のコントロールされない流出が阻止される。

【００１４】 本発明のさらに別の有利な構成では、ノズルニードルの前記端面の直径が、ノ
ズルニードルとノズルニードルシートとの間のシール線の直径よりも大きく形成
されているので、弁制御室と圧力室とに等しい圧力が存在している場合には、ハ
イドロリック的な合成力に基づき、常にインジェクタの閉鎖が行われる。

【００１５】 本発明のさらに別の有利な構成では、前記制御弁がピエゾアクチュエータによ
り操作されるので、本発明によるインジェクタの制御時間が一層減じられる。

【００１６】 冒頭で挙げた課題は、高圧燃料ポンプと、ノズルニードルを制御する弁制御室
を備えた少なくとも１つのインジェクタとを有する、内燃機関に用いられる燃料
噴射システムにおいて、弁制御室がノズルニードルの一方の端面によって仕切ら
れていることを特徴とする、内燃機関に用いられる燃料噴射システムによっても
解決される。これにより、本発明による燃料噴射システムを、コンパクトな構造
ならびに極めて短い制御時間が必要となるような内燃機関において使用すること
ができる。

【００１７】 本発明による燃料噴射システムの有利な構成では、当該燃料噴射システムが高
圧燃料蓄え器を有しているので、本発明によるインジェクタにより得られる利点
がコモンレール式の燃料噴射システムにも有効となる。

【００１８】 本発明の別の利点および別の有利な構成は、以下の実施例の説明、図面および
請求の範囲に記載されている。

【００１９】 実施例の説明 以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。

【００２０】 図１には、本発明によるインジェクタの横断面図が示されている。燃料（図示
しない）は高圧接続部１を介して、流入通路３を通って噴射ノズル７の圧力室５
内へ導入される。燃料は高圧燃料蓄え器（コモンレール）（図示しない）からの
ものであって、この高圧燃料蓄え器の圧力を有している。圧力室５には、流入絞
り８を介して弁制御室９が接続されている。この弁制御室９は制御弁１１（概略
的にのみ図示する）を介して、無圧の燃料戻し路（図示しない）に接続され得る
。弁制御室９と制御弁１１との間には、流出通路１３と流出絞り１４とが配置さ
れている。

【００２１】 インジェクタのハウジング１５は袋ナット１６によってカバー１７に結合され
ている。このカバー１７はさらに、圧力室５内に突入した弁体１９を位置固定し
ている。弁体１９には、ノズルニードル２１のための直径ｄ_２を有する案内孔２
０が設けられている。弁体１９内に配置された弁制御室９はノズルニードル２１
の一方の端面２３によって仕切られている。

【００２２】 弁体１９とハウジング１５との間には、円錐状のシールシート２５が設けられ
ており、このシールシート２５は圧力室５を周辺環境に対してシールしている。
カバー１７と弁体１９との間に緊縮された皿ばね２６により、弁体１９は永続的
にかつ一定の力でシールシート２５に押圧されている。

【００２３】 ノズルニードル２１は、圧力下にある燃料が各噴射の間に噴射ノズル７から噴
射孔２７を通って燃焼室（図示しない）内へ流入することを阻止する。このこと
は、ノズルニードル２１がノズルニードルシート２９に圧入され、ひいては流入
通路３を燃焼室（図示しない）に対してシールすることにより行われる。その場
合、ノズルニードル２１とノズルニードルシート２９との間には、円形のシール
線が形成される。このシール線の直径はｄ_１で示されている。

【００２４】 ノズルニードル２１に設けられた段部３１と弁体１９との間には、閉鎖ばね３
３が設けられている。この閉鎖ばね３３の作用に基づき、ノズルニードル２１は
、燃料が過圧を有していない限りは常に閉鎖されているようになる。

【００２５】 制御弁１１が閉鎖された状態では、弁制御室９にも圧力室５にも、等しい圧力
が形成される。この圧力は端面２３を介して、ノズルニードルシート２９へ向か
う方向でノズルニードル２１に作用する液圧力もしくはハイドロリック力を加え
る。同じ圧力が、直径ｄ_１と直径ｄ_２とによって仕切られた環状面へ、反対方向
でノズルニードル２１に作用するハイドロリック力を加える。この合成力はノズ
ルニードルシート２９へ向かう方向でノズルニードル２１へ作用する。なぜなら
ば、端面２３が、直径ｄ_１と直径ｄ_２とによって仕切られた環状面よりも大きい
からである。

【００２６】 制御弁１１が開放され、その結果、弁制御室９内の圧力が減少すると、噴射ノ
ズル７が開放される。この場合には、ハイドロリック的な合成力が制御弁１１へ
向かう方向に作用して、ノズルニードル２１をノズルニードルシート２９から持
持ち上げる。これにより、燃料は圧力室５から噴射孔２７を介して燃焼室内へ流
入することができ、そして噴射が開始される。

【００２７】 ２ポート２位置制御弁または２ポート３位置制御弁として形成されていてよい
制御弁１１が再び閉じられると、弁制御室９内には再び圧力室５内の圧力に等し
い高圧が形成され、その結果、ハイドロリック合成力はノズルニードル２１を再
びノズルニードルシート２９に圧入して、噴射を終了させる。

【００２８】 本発明によるインジェクタの特別な利点は、インジェクタが極めてコンパクト
に形成されることにある。本発明によるインジェクタの直径は、現時点での公知
先行技術による噴射ノズルに相当している。さらに、運動させられる構成部分の
質量も極めて少ない。なぜならば、弁ピストンと圧力ロッドとを不要にすること
ができ、かつノズルニードルが極めて小さな寸法しか有していないからである。
このことは、特にピエゾアクチュエータにより操作される制御弁１１と相まって
十分に利用することのできる、インジェクタの極めて小さな制御時間をもたらす
。たとえば、極めて少量のパイロット噴射量を実現することができる。構成部分
の点数が少ないことに基づき、製造時におけるコスト上の利点も得られる。さら
に漏れ損失も生じない。

【００２９】 上記説明、請求の範囲および図面に示された全ての特徴は、それぞれ単独の形
でも、互いに任意に組み合わされた形でも、本発明にとって重要となり得る。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明によるインジェクタの１実施例を示す横断面図である。

【符号の説明】

１ 高圧接続部、 ３ 流入通路、 ５ 圧力室、 ７ 噴射ノズル、 ８
流入絞り、 ９ 弁制御室、 １１ 制御弁、 １３ 流出通路、 １４ 流出
絞り、 １５ ハウジング、 １６ 袋ナット、 １７ カバー、 １９ 弁体
、 ２０ 案内孔、 ２１ ノズルニードル、 ２３ 端面、 ２５ シールシ
ート、 ２６ 皿ばね、 ２７ 噴射孔、 ２９ ノズルニードルシート、 ３
１ 段部、 ３３ 閉鎖ばね

Claims (15)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ノズルニードル（２１）を制御する弁制御室（９）を備えた
   、内燃機関に用いられる燃料噴射システムのためのインジェクタにおいて、弁制
   御室（９）が、ノズルニードル（２１）の一方の端面（２３）によって仕切られ
   ていることを特徴とする、内燃機関に用いられる燃料噴射システムのためのイン
   ジェクタ。
2. 【請求項２】 弁制御室（９）が、弁体（１９）内に配置されている、請求
   項１記載のインジェクタ。
3. 【請求項３】 前記弁体（１９）が、圧力室（５）内に突入している、請求
   項２記載のインジェクタ。
4. 【請求項４】 前記圧力室（５）が、流入通路（３）を介して高圧燃料蓄え
   器に接続されている、請求項１から３までのいずれか１項記載のインジェクタ。
5. 【請求項５】 弁制御室（９）が、流入絞り（８）を介して高圧燃料蓄え器
   に少なくとも間接的に接続されている、請求項１から４までのいずれか１項記載
   のインジェクタ。
6. 【請求項６】 弁制御室（９）が、流入絞り（８）を介して前記圧力室（５
   ）に接続されている、請求項１から５までのいずれか１項記載のインジェクタ。
7. 【請求項７】 弁制御室（９）が、流出通路（１３）と、流出絞り（１４）
   と、制御弁（１１）、特に２ポート２位置制御弁（１１）または２ポート３位置
   制御弁（１１）とを介して、燃料戻し路に接続可能である、請求項１から６まで
   のいずれか１項記載のインジェクタ。
8. 【請求項８】 前記流出通路（１３）と前記流出絞り（１４）とが、前記弁
   体（１９）内に配置されている、請求項１から７までのいずれか１項記載のイン
   ジェクタ。
9. 【請求項９】 前記圧力室（５）内に、前記弁体（１９）に支持されかつ、
   少なくとも間接的にノズルニードル（２１）に支持された閉鎖ばね（３３）が設
   けられている、請求項２から８までのいずれか１項記載のインジェクタ。
10. 【請求項１０】 前記閉鎖ばね（３３）が、ノズルニードル（２１）に設け
    られた段部（３１）に支持されている、請求項９記載のインジェクタ。
11. 【請求項１１】 弁制御室（９）内に、インジェクタとノズルニードル（２
    １）とに支持された閉鎖ばね（３３）が設けられている、請求項１から９までの
    いずれか１項記載のインジェクタ。
12. 【請求項１２】 ノズルニードル（２１）の前記端面（２３）の直径（ｄ_２ ）が、ノズルニードル（２１）とノズルニードルシート（２９）との間のシール
    線の直径（ｄ_１）よりも大きく形成されている、請求項１から１１までのいずれ
    か１項記載のインジェクタ。
13. 【請求項１３】 前記制御弁（１１）がピエゾアクチュエータにより操作さ
    れる、請求項１から１２までのいずれか１項記載のインジェクタ。
14. 【請求項１４】 高圧燃料ポンプと、ノズルニードル（２１）を制御する弁
    制御室（９）を備えた少なくとも１つのインジェクタとを有する、内燃機関に用
    いられる燃料噴射システムにおいて、弁制御室（９）がノズルニードル（２１）
    の一方の端面（２３）によって仕切られていることを特徴とする、内燃機関に用
    いられる燃料噴射システム。
15. 【請求項１５】 当該燃料噴射システムが高圧燃料蓄え器を有している、請
    求項１４記載の燃料噴射システム。