JP2003327814A - 相溶性樹脂組成物 - Google Patents

相溶性樹脂組成物

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JP2003327814A
JP2003327814A JP2002134686A JP2002134686A JP2003327814A JP 2003327814 A JP2003327814 A JP 2003327814A JP 2002134686 A JP2002134686 A JP 2002134686A JP 2002134686 A JP2002134686 A JP 2002134686A JP 2003327814 A JP2003327814 A JP 2003327814A
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poly
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Yoshio Inoue
義夫 井上
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Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 互いに混和しないポリ(ε−カプロラクト
ン)(PCL)とポリ(乳酸)(PLA)の混合樹脂か
ら破断伸度で代表される柔軟性及び引張強度で代表され
る機械的性質の改善された相溶性樹脂組成物を提供する
こと。 【解決手段】 ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ε−カ
プロラクトン)(PCL)及び相溶化剤としてポリ(ε
−カプロラクトン)−ポリ(エチレングリコール)ブロ
ック共重合体を含んでなる相溶性樹脂組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、相溶性を有する樹
脂組成物に関する。より詳しくは、互いに混和しない2
種類の特定樹脂と特定ブロック成分を含む共重合体の相
溶化剤とからなる相溶性樹脂組成物に関する。その樹脂
組成物の各構成樹脂は生分解性を有し、樹脂組成物は改
善された機械的特性を有する。
【0002】
【従来の技術】最近、生分解性ポリマーの研究及び開発
への時代的要請が増大し、生分解性を有する多種の新規
なポリマーが入手可能となっている。現在市販の生分解
性ポリマーの殆どは脂肪族ポリエステル、ポリエーテ
ル、ポリ(ビニルアルコール)、天然多糖類に限られて
いる。これらの中で最も重要な生分解性ポリマーは、脂
肪族ポリエステルであり、例えばポリ乳酸(PLA)、
ポリ(3−ヒドロキシブチレート)(PHB)、ポリ
(ε−カプロラクトン)(以下、「PCL」と略称する
ことがある。)、ポリグリコライド、及びポリ(コハク
酸ブチル)等、およびそれらの共重合体は、地球環境に
おいてと同様に人体において生物分解可能であるため多
くの注意を引いてきた。
【0003】現在までに、多くの研究、報告が、これら
のポリエステルの特性および用途についてなされてい
る。しかしながら、これらのポリエステルの多くの特性
は、可能な用途に必要な特性に到達していない。これら
の重合体の特性は、ポリマーブレンドおよび共重合体を
含むいくつかの方法で改善され得る。共重合体合成と比
較すると、ポリマーブレンドが比較的単純でてっとり速
い方法であるために、生医学的および環境的用途の観点
から、生体適合性で生物分解可能な重合体のブレンドに
多くの注目が集中した。
【0004】ポリ乳酸(PLA)は集中的に研究され
て、その高い生体適合性、良い生物分解性および物理的
特性のため、この種の用途のために広く使われてきた。
しかし、PLAの一つの主要な欠点は、物理的エイジン
グに伴なう伸張下での延性破壊から脆性破壊への変化で
ある。対照的に、PCLは高い柔軟性を有するが、その
強度が比較的低く、かつその融点は60℃であり、種々
の実用にはあまりに低く過ぎる。従って、PCLとPL
Aのブレンドが各々の構成成分と比較すると、柔軟性の
向上か強度の増加をもたらし得ると期待されるのは、全
く尤もなことである。
【0005】近年、PCLのようにより柔軟で生物分解
可能な重合体とPLAのブレンドが開発され研究されて
いる。これらの2つの重合体のブレンドが組成にかかわ
らず非混和性であるため所望の特性を示すことがで出来
なかったにもかかわらず、興味深く、注目すべき若干の
結果がある。ヤン等(Yang, J.-M.; Chen, H.-L.; You,
J.-W.; Hwang, J.-C., Polym. J. 1997, 29, 657)は、
示差走査熱量計(DSC)および光学的顕微鏡検査を用
いることにより、ポリ(L−乳酸)(PLLA)/PC
L系が溶融状態で相分離を呈したにもかかわらず、PL
LAの結晶化率はPCLをブレンドすることによって増
加させることができ、また、これらの2つの重合体間の
部分的な混和性がPLLAの結晶化を促進させることを
報告した。動的機械的熱分析(DMTA)および走査型
電子顕微鏡(SEM)測定を用いて、Dell'Erbaら(Del
l'Erba, R.; Groeninckx, G.; Maglio, G.; Malinconic
o,M.; Migliozzi, A. Polym., 2000, 42, 7831)は、ま
た、PLLAおよびPCLが非混和性であっても、高い
非相溶性ではないと報告している。前述したように、P
CLは、機械的強度が比較的低く、融点は60℃付近で
加工温度としては低すぎるが、高い柔軟性を有してい
る。これらのPLAとPCLをポリマーブレンドによ
り、それぞれの成分に比してより改善された柔軟性、機
械的強度を有する樹脂組成物を得ようとする試みがなさ
れたが、両樹脂は混和しないため、単なる両樹脂のブレ
ンドのみでは、望まれた性能を有するには至っていな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、互い
に混和しないPCLとPLAの混合樹脂から破断伸度で
代表される柔軟性及び引張強度で代表される機械的性質
の改善された相溶性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するためには、ポリマーブレンド調製の際、ポリ
マー同士の混和性を考慮することが重要であるとの認識
に基づき鋭意検討した。そして前記状況から、これらの
二成分系のブレンドがかなり良好な分散性の、ある種の
ドメインを有することができること、及びそのドメイン
分布がそれらの組成に関係していることが考えられる。
実際に、特に反応的に相溶化されたブレンドには、ある
種の相乗効果がある組成(PLA/PCL=80/2
0,20/80)で存在することがワング等(Wang, L.;
Ma, W.; Gross, R. A.; McCathy, S. P. Polym. Degra
d. Stab., 1998,59, 161)によって示された。PLA/
PCLブレンドの物理的特性を効果的に改善するために
は、相挙動のブレンド組成依存性についての詳細な検討
が必要とされる。ブレンドの混和性を改良するための方
法として、我々は相間接着力、すなわち、相溶化を増す
方法を検討した。(Shuai, X.; He, Y.; Na, Y.-H.; Ino
ue, Y. J. Appl. Polym. Sci., 2001, 80, 2600) 相溶化の効果的方法の1つは、その各々がブレンド構成
成分の1つと混和できるブロックからなるブロック共重
合体を予め製造し、添加することである。これらのいわ
ゆる相溶化剤と呼ばれているものは、しばしばエマルシ
ョン化剤のように界面に集まる傾向があるが、ある種の
非混和性のブレンドを相溶性に変えている。本発明者ら
は、混和性、相挙動および熱特性についてPCL−ポリ
(エチレングリコール)ブロック共重合体(PCL−b
−PEG)とPLAブレンド又はPCL−モノメトキシ
−ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体(PC
L−b−MPEG)とPLAブレンドについて検討し、
PCL/PLAブレンドの機械的特性に対する相溶化剤
としてのPCL−b−PEG等の効果を検討した。ま
た、ブレンド組成比および熱履歴の相挙動に対する効果
をPLA/PCLブレンドについて検討した。その結
果、混和しない二つの樹脂成分である(PCL)及び
(PLA)のそれぞれと混和性があるセグメントを有す
る特定のブロック共重合体を用いることにより前記問題
点を解決し得ることを見い出し、本発明を完成するに至
った。
【0008】すなわち本発明によれば、ポリ(乳酸)、
ポリ(ε−カプロラクトン)及び相溶化剤としてポリ
(ε−カプロラクトン)−ポリ(エチレングリコール)
ブロック共重合体を含んでなる相溶性樹脂組成物を提供
する。前記発明において、ポリ(乳酸)(PLA)がポ
リ(L−乳酸)(PLLA)である相溶性樹脂組成物が
提供される。また、ポリ(乳酸)(PLA)とポリ(ε
−カプロラクトン)(PCL)の混合割合が重量で
((PLA)/(PCL))=1/99〜99/1(両
者の合計は100重量%)である前記いずれかの発明の
相溶性樹脂組成物が提供される。またポリ(乳酸)(P
LA)とポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)の混合
樹脂100重量部に対してポリ(ε−カプロラクトン)
−ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体1〜1
00重量部からなる前記いずれかの発明の相溶性樹脂組
成物が提供される。また、ブロック共重合体を構成する
(ε−カプロラクトン)単量体単位と(エチレングリコ
ール)単量体単位が重量で(ε−カプロラクトン)単位
/(エチレングリコール)単位=99/1〜40/60
(両者の合計は100重量%)である前記いずれかの発
明の相溶性樹脂組成物が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。純PCLはPLAとは混和しない。このような非
混和性ブレンドにおいて個々のブレンド成分相間の接着
性を改善するプロセスを相溶化と呼ぶ。本発明では、P
CL、PLA及びポリ(ε−カプロラクトン)−ポリ
(エチレングリコール)ブロック共重合体(以下、「P
CL−b−PEG」と略称することもある)からなる樹
脂組成物の破断伸度及び引張強度の両方が、PCL及び
PLAの各ポリマーを単純にブレンドした場合のブレン
ド物と比較して、より改善されていれば本発明の相溶性
樹脂組成物であるとする。
【0010】本発明でポリマーブレンドに用いるポリ
(乳酸)(PLA)としては、例えば、PLLA、ポリ
(D)乳酸、ポリ(DL−乳酸)(PDLLA)等があ
り、或いはこれらの混合物が含まれる。PLAの選択に
当たって、特に制限はないが、入手が容易でありかつ本
発明の効果をより発揮させ得る観点からPLLAであ
る。また分子量(数平均分子量Mn、以下同じ)は1
0,000以上、更には40,000以上であることが
好ましい。なお、本発明におけるPLAに代わり、また
はPLAと共にポリグリコール酸(PGA)を用いても
本発明と同様の効果が期待される。また、ポリマーブレ
ンドに用いるもう一方のポリマーであるポリ(ε−カプ
ロラクトン)(PCL)は、ポリマーブレンド物に機械
的強度、及び柔軟性を付与する意味で重要であるが、選
択に当たっての特段の制限はない。数平均分子量は1
0,000以上、更には50,000以上であることが
好ましい。なお、PCLにはε−カプロラクトンを主体
とし本発明の効果を阻害しない範囲で、他のラクトン類
と共重合したものも含まれる。PLAとPCLのブレン
ド割合(PLA/PCL)は、目的とするポリマーブレ
ンドに要求される機能により決定され、特に制限はない
が、重量で1/99〜99/1(両者の合計は100重
量%)、更には20/80〜80/20が好ましい。
【0011】本発明で用いるポリ(ε−カプロラクト
ン)−ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体
(PCL−b−PEG)は、ポリ(ε−カプロラクト
ン)(PCL)とポリ(エチレングリコール)(PE
G)又はモノメトキシ−ポリ(エチレングリコール)
(以下、「MPEG」と略称することもある。)とのブ
ロック共重合体であり、好ましくは前者であり、相溶化
剤として用いる。該ブロック共重合体の一方のブロック
を構成するPCL単位としては、特に制限はないが、P
CLブロックの平均の分子量は1,000以上、更に1
0,000以上であることが好ましい。ブロック共重合
体のPCLブロック単位の平均の分子量は、該ブロック
重合体を合成するときのブロック共重合の反応条件(例
えば、ε−カプロラクトン単量体の仕込み割合、反応温
度等)でコントロールできる。なお、PCLブロックに
は、ε−カプロラクトンのみからなる場合の他、ε−カ
プロラクトンを主体とし本発明の効果を阻害しない範囲
で、他のラクトン類と共重合したものも含まれる。ま
た、該ブロック共重合体の他方のブロックを構成するP
EG又はMPEGとしては、特段の制限はないが、PE
Gブロックの平均の分子量は500〜300,000、
更には、1,000〜100,000が好ましい。又は
MPEGブロックの平均の分子量は500〜300,0
00、更には500〜100,000が好ましい。PE
G又はMPEGブロック単位の分子量が小さすぎたり、
或いは大きすぎると、相溶化効果が発現し難くなる。P
CL−b−PEGの数平均分子量は1,500以上、更
には10,000以上であることが好ましい。数平均分
子量が1,000に満たないと機械的強度、柔軟性など
の相溶化効果が発現し難くなるので、ブレンドに用いる
PLA及びPCLの分子量も考慮に入れて適宜決めると
よい。なお、本発明で使用するポリ(ε−カプロラクト
ン)−ポリ(エチレングリコール)ブロック共重合体に
おいて、ポリ(エチレングリコール)ブロックの代り
に、ポリ(プロピレングリコール)ブロック又はポリ
(エチレングリコール・プロピレングリコール)ランダ
ムブロックを用いたブロック共重合体も同様に使用する
ことができる。
【0012】ブロック共重合体を構成する(ε−カプロ
ラクトン)単量体単位と(エチレングリコール)単量体
単位の割合は特に制限はないが、重量で(PCL/PE
G)=99/1〜40/60(両者の合計は100重量
%)、更には98/2〜50/50が好ましい。
【0013】前記ブロック共重合体は、特開2002−
69279号公報又はShuai, X.; He, Y.; Na, Y.-H.;
Inoue, Y., J. Appl. Polym. Sci., 2001, 80, 2600.記
載の方法に準じ、下記スキーム1に示す通り合成でき
る。すなわち、窒素封入下に、予めPEG又はMPEG
の入った撹拌器を装着した反応容器にε−カプロラクト
ンを重合開始剤と共に注入し、反応温度を110〜12
0℃で、15〜25時間反応させ、反応後、生成物をク
ロロホルムに溶解し、次いでメタノールを加えて沈殿さ
せて精製することによって得ることができる。得られる
ブロック共重合体は、式(1)及び(2)で表される。
例えば、事前に秤量し、乾燥した分子量20,000の
ポリ(エチレングリコール)(PEG20000)又は
分子量750のモノメトキシ−ポリ(エチレングリコー
ル)(MPEG750)の中に計算量のカプロラクタム
及びオクチル第二錫をそれぞれ加えることによりポリ
(エチレングリコール)(PEG)とPCLのブロック
共重合体を合成できる。
【0014】
【化1】 (n,mは1以上の整数)
【0015】このようにして得たブロック共重合体(P
CL−b−PEG)は、(PLA)/(PCL)の混合
樹脂100重量部に対して1〜100重量部、更には、
5〜20重量部添加することが好ましい。添加量が1重
量部に満たないとブロック共重合体の相溶化剤としての
効果が発現しない。また、100重量部を越えると、相
溶化剤であることの意義を失うため好ましくない。
【0016】(PLA)、(PCL)及び(PCL−b
−PEG)は、予め(PLA)/(PCL)の混合樹脂
を調製しておき、これに(PCL−b−PEG)を所定
量添加してもよいし、各樹脂を同時に混合してもよい。
混合は公知の方法で行うことができる。混合装置に関し
ては特に限定されるものではないが、例えば、押出機を
用いて混合する方法(溶融混練法)が短時間で連続的に
処理できる点で工業的には推奨される。混合時の温度は
180〜210℃の範囲が好ましい。共通溶媒に三者を
同時に溶解後、溶媒を除去する方法によっても相溶性樹
脂組成物を調製できる。また、本発明の相溶性樹脂組成
物には、本発明の効果を損なわない範囲で改質剤、充填
剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、
着色剤、各種フィラー、静電気防止剤、離型剤、可塑
剤、香料、抗菌剤等の各種添加剤の他に、エステル交換
触媒、各種モノマー、カップリング剤、末端処理剤、そ
の他の樹脂、木粉、でんぷん等を加えることができる。
【0017】本発明の相溶性樹脂組成物は、適度な破断
伸張性、引張強度、生分解性を有するので、例えば、射
出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形等により成形
し、農業分野、漁業分野、食品分野、衣料分野、医療分
野、包装材料分野で広く用いることができる。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、
分析及び評価は以下のように行った。H NMR測定
は、JOEL(日本)社製GSX−270分光計にて2
70MHz、25℃、CDCl3溶液中で行った。分子
量は、東ソー SC−8010コントローラー及び屈折
検出器(refractive detector)を具備した東ソーHL
C−8020のGPCシステム(トーソー、日本)によ
って測定した。溶離液としてクロロホルムを用い、標準
として狭い分子量分布を有するポリスチレン・サンプル
を使用した。示差走査熱量計(DSC)分析は、セイコ
ーDSC200Uシステム(セイコーインスツルメンツ
(日本))で行った。先ず、サンプルは、20℃/分の
昇温レートで−100℃から195℃に昇温した。次い
で急冷の後、サンプルを再び−100℃から195℃ま
で10℃/分の昇温レートで加熱した。セカンドヒート
ランで得たDSCスキャン図の熱容量変化の中心点をガ
ラス転移温度(Tg)とした。セカンドヒートランの結
晶化発熱のピークトップ値を冷却−結晶化温度(Tc
c)とし、ファーストヒートランの溶融吸熱のピークト
ップを融点(Tm)とした。溶融エンタルピー(ΔH)
は、ファーストランDSC曲線の吸熱ピークの積分値か
ら算出した。機械的特性の測定は、EZ試験機((株)
島津製作所製、日本)を用いて3mm/分のクロスヘッ
ド速度で室温で行った。報告した値は、各々少なくとも
3個の試験片の平均値である。原子間力顕微鏡検査(A
FM)は、SPI3800/SPA400(セイコーイ
ンスツルメンツ社)によって観察した。14Nm−1
ばね定数の200μmの長さのマイクロカンチレバーに
据え付けたピラミッド−シリコン素子(シリコン製のピ
アゾ素子)をダイナミックフォース(タッピング)モー
ド実験に用いた。高さ及びデフレクションイメージを同
時に観察した。
【0019】使用原料は以下のようにした。ポリ(L−
乳酸)(PLLA)(Mw=1.38xl05,Mw/
Mn=1.65)、及びポリ(DL−乳酸)(PDLL
A)(Mw=1.06x105,Mw/Mn=2.4
5;アイソタックテイックダイアド画分[i]=0.5
0)は(株)島津製作所(日本)より入手した。これら
のサンプルは、使用前にクロロホルム溶液からエタノー
ル中に入れ、沈殿させて精製した。ポリ(ε−カプロラ
クトン)(PCL)は、ダイセル化学工業(株)製、セ
ルグリーンPH4(Mw=1.15x105,Mw/M
n=1.47)をそのまま用いた。分子量20000
(PEG20000、Mn=20000)のポリ(エチ
レングリコール)(Aldrichから入手)と分子量750
(MPEG750、Mn=750)のメトキシ−ポリ
(エチレングリコール)(Aldrichから入手)は、使用
前にテトラヒドロフラン(THF)溶液とし、これをヘ
キサン中で沈殿し、減圧下60℃で8時間乾燥し精製し
た。ε−カプロラクトン(Acrosから入手)はCaH2
存在下、真空蒸留により精製した。カプリル酸錫(II)
(Stannous(II) octoate)(和光純薬(株))は、入手
したままの状態で使用した。
【0020】(ポリ(ε−カプロラクトン)−ポリ(エ
チレングリコール)ブロック共重合体(PCL−b−P
EG)の製造) 乾燥窒素気流下に、ε−カプロラクトン15g(PEG
20000の場合)、又は195g(MPEG750の
場合)及びカプリル酸錫(II)0.002g(PEG
20000の場合)又は0.032g(MPEG750
の場合)を予め秤量し、乾燥したポリ(エチレングリコ
ール)(PEG20000を5g又はMPEG750を
3g)が入っているフラスコに注入した。フラスコを乾
燥窒素でパージし、密封した。次いで反応混合物を11
5℃に加熱し、オイルバス中この温度で24時間保持し
た。重合生成物は、クロロホルムに溶解させメタノール
中で沈殿させる操作を2度行い精製した。精製した重合
体は真空中40℃で恒量になるまで乾燥し、それぞれP
EG20000系(PCL−b−PEG)を12.43
g、及びMPEG750系(PCL−b−MPEG)を
161.75g得た。精製された共重合体はH NM
Rによって同定し、分子量はGPC測定によって推定し
た。その結果、Mw=1.15x105およびMw/M
n=1.86を有するPEG20000ベースのブロッ
ク共重合体およびMw=6.38x104およびMw/
Mn=1.45を有するMPEG750ベースのブロッ
ク共重合体が得られた。H NMRスペクトルはブロ
ック共重合体に由来する構造とよい一致を示し、すべて
の精製共重合体のGPCカーブは単一形態の分布を示し
た。従って、HNMR及びGPC測定からこの反応は
共重合反応であること、及びブロック共重合体の精製物
にはPEG及びPCLの痕跡量も残存しないことを確認
した。
【0021】ブレンドの調製 熱分析用に、以下のブレンドフィルムを調製した。 PLLAとPCL−b−PEGのブレンド PDLLAとPCL−b−PEGのブレンド PCL−b−PEGの有無のPLLAとPCLのブレン
ド PCL−b−PEGの有無のPDLLAとPCLのブレ
ンド ブレンドフィルムはテフロン(登録商標)製ペトリ皿に
2wt%クロロホルム溶液をキャストし、溶媒を一晩室
温で蒸発させることによって調製した。残留した溶媒を
除去するために室温で2週間、真空下で乾燥した後に、
キャストフィルムをラボプレス(ミニテストプレス−1
0、東洋精機社製、日本)を使用して5MPaの圧力
下、195℃、3分間、テフロン・シート間で圧縮成形
し、その後2枚の鉄プレートの間で室温まで急冷した。
【0022】PLA/PCLブレンド薄膜の調製 原子間力顕微鏡検査(AFM)用に、まず最初に以下の
PLA(PLLAおよびPDLLA)/PCLの二成分
系ブレンド薄膜をクロロホルム溶液から溶媒キャスト法
により調製した。PLLA/PCLの重量比は100/
0、90/10、80/20、70/30および50/
50であり、PDLLA/PCLのそれらは100/
0、80/20、70/30、50/50および30/
70であった。重合体溶液(1.0%(w/v))の1
0μL液滴をガラス・カバー・スリップ(基板寸法18
×18mm)に置き、溶液を広げるため他のカバー・ス
リップで挟んだ。それからカバー・スリップは互いにス
ライドされ、二成分系ブレンドの薄層が基板表面の上に
形成された。薄膜の厚みは、約100ナノメートルであ
った。室温で最初のAFM観察の後、基板上の薄膜を上
記ラボプレスの熱プレート上で、195℃で一分間加熱
し、それから取り出し、室温まで冷やし、5、15、2
5分間後に、再びAFM観察を行った。
【0023】PLLAとPEG20000ベースのPC
L−b−PEGのブレンドのDSC測定の結果を表1に
示す。
【0024】
【表1】 a Tcc及びTgは、それぞれ冷却−結晶化温度及び
ガラス転移温度である。PLLA部分のTcc値のみを
示した。Tm、ΔH、及びXcは、それぞれ融点、溶融
エンタルピー、及び結晶化度である。共重合体の溶融エ
ンタルピー(ブレンド中の成分の重量フラクションで規
格化したもの)も括弧内に示した。 b Cop1は、PEG20000ベースのPCL−b
−PEGブロック共重合体を示す。 c n.d.は、不検出を示す。
【0025】典型例として、図1および2は、それぞ
れ、ファーストヒートスキャンおよびセカンドヒートス
キャンよって記録された、PLLA、PCL−b−PE
Gおよびそれらの様々な成分組成のブレンドのDSCト
レースを示す。
【0026】ブレンド内のPCL−b−PEGの溶融エ
ンタルピーは、ブレンド含有量にかかわりなくブレンド
フィルム中のPLLAのガラス転移エンタルピー(ΔH
g=4.9J/g)が一定であるという仮定の下に算出
した。ブレンド内のPLLAの結晶度(Xc)は、完全
な結晶PLLAの溶解エンタルピーが93J/gである
と仮定することによって算出した。Tgの顕著な変化
は、ブレンド中のPLLAリッチ相で認められた。PL
LAリッチ相のTgは、61℃(PLLA100%)か
ら38℃(50/50の混合)まで低下する。その上、
PCL−b−PEG共重合体の他の一連のTgは一定で
あり、比較的高い共重合体含有量では純粋なPCLのそ
れ(60℃)に近かった。一方、前出のヤン等の報告な
どによりPLLA/PCLブレンド系は非混和性であ
り、他方、PLLAはPEGと混和性であることが報告
されている。DSCによるTg測定、及び、上記報告を
考慮すると、PLLAの不定形領域がPCL−b−PE
GのPEGドメインのそれと混和性であること及び結晶
相や非晶相を含む分離したPCLドメインがブレンド中
に存在することが結論づけられる。それゆえ、PCL−
b−PEGのPCL鎖以外のPEG鎖がPLLA非晶領
域の中に浸透することがPLLA相のTg低下の原因に
なったことは明らかである。現時点では、PCLブロッ
クとPEGブロックの接合部に近い短いPCL鎖の小部
分が、PLLA非晶領域に入り込んでいるのかどうかは
明らかではない。しかし、ホモPCLがPLLAと非混
和性であるように(J. Appl. Polym. Sci., 2001, 80, 2
600)、PCL−b−PEGのPCLセグメント相は、概
してPLLAとなお非混和性であることは確かである。
PLLA成分の融解ピークの温度は、ブレンド中のその
含有量の増加とともに173℃(170℃)から162
℃(約10℃の減少であること)まで変化した。この結
果は、PLLAの結晶化がPCL−b−PEGの添加に
よって大きく影響されることを示した。この種の結果
は、PCL−b−PEG共重合体がPLLAの希釈剤と
して作用し得ること、及び、2つの構成成分が溶融相に
おいて相溶性であることを示す。このことは、また、純
粋なPLLAの冷却−結晶化温度(Tcc)が121℃
で観察されるが、これらのブレンド内のPLLAの冷却
−結晶化温度はPLLAのそれより低いという点にも示
されている。PLLAの結晶化は、PCL−b−PEG
とブレンドするとより容易になるようである。ブレンド
内のPLLAの補正ΔH値および結晶化度(Xc)のわ
ずかな増加は、PLLA結晶の完成度向上に関係してい
るかも知れない。実際、PLLAがPCL−b−PEG
にブレンドされるときに、結晶PLLA相内の重合体鎖
の再組織化が純粋なホモポリマーの場合より高いTm−
Tccの差によって容易になる。前記Dell'Ebra等の報
告によれば、PCLの存在がPLLA/PCLブレンド
内のPLLAの結晶化率を向上させ、そして、これはた
ぶん核形成率の増加によって起こる。相分離したドメイ
ンの境界領域が、結晶化に有利な核形成サイトを提供す
ることができ、そして、それ故に、構成成分の非混和性
のために、PLLAの結晶化速度は純粋な溶融PLLA
のそれより低い核形成障壁によって促進される。他の理
由としては、PEGとPLLA内の混和性の結果とし
て、PEGの可塑化作用が働き、PEGドメインの存在
がPLLAの結晶化度を高めたことが考えられる。これ
らの結果から、共重合体のPEG鎖がPLLAの非晶領
域に混入されるときに、PLLA鎖からは自由な孤立し
たPCLドメインがまだPCL−b−PEG共重合体お
よびPLLAのブレンド内に存在することは確かであ
る。PCL−b−PEGの熱挙動については、PCL−
b−PEGのTmが68℃周辺で不変のままであるが、
PLLA含有量の増加に伴ないブレンド内の共重合体に
帰属する溶融エンタルピーが著しく減少する。上記の考
察と同様に、PCL−b−PEGのPEGセグメントの
結晶化がPLLAを添加するとかなり抑制され、その一
方で、共重合体のPCLセグメントの結晶化は少しも影
響を受けなかったと考えるのが合理的である。
【0027】表2は、PLLAとMPEG750ベース
のPCL−b−MPEG共重合体のブレンドの熱特性を
示す。
【0028】
【表2】 a Tcc及びTgは、それぞれ冷却−結晶化温度及び
ガラス転移温度である。PLLA部分のTcc値のみを
示した。Tm、ΔH、及びXcは、それぞれ融点、溶融
エンタルピー、及び結晶化度である。共重合体の溶融エ
ンタルピー(ブレンド中の成分の重量フラクションから
規格化した)も括弧内に示した。 b Cop2は、MPEG750ベースのPCL−b−
MPEGブロック共重合体を示す。 c n.d.は、不検出を示す。
【0029】MPEG750ベースの共重合体を含むブ
レンドの熱特性とPEG20000ベースの共重合体を
含むブレンドのそれとを比較すると以下の興味深い点が
分かる。PLLAの融点Tmは、PLLA/PCL−b
−PEGブレンドのそれらより低下が少なく、PCL−
b−MPEG共重合体のPCLセグメント内の結晶相の
融点Tmは、ブレンド組成に伴って顕著な変化を示さな
い。ブレンド内のPCLセグメント相のガラス転移点T
gは、純粋なPCLのそれとほとんど同じものと考える
ことができる。共重合体含有量の増加に伴うPLLAリ
ッチな不定形相に帰属されるガラス転移点Tgの減少
は、共重合体のPEG鎖がPLLAの不定形領域に深く
入りこんでいることを示している。しかし、MPEG7
50ベースの共重合体のPEGセグメントは、これらの
ブレンド内で非常に不足している。換言すれば、MPE
G750ベースの共重合体を含むブレンドのPEG含有
量が、PLLA/PCL−b−PEGブレンドの同じ組
成においてさえ、PEG20000ベースの共重合体を
含むブレンドのそれよりかなり低い。それ故、MPEG
750ベースの共重合体とブレンドする際のPLLA相
のガラス転移点Tgの低下は、PEG20000ベース
の共重合体とブレンドする場合に比べてかなり少ない。
その上、ブレンド系内のPLLAおよびPCL−b−M
PEGの見かけの溶融エンタルピーは特徴的な傾向を持
たず、ほとんど同じである。よく分離したPLLAおよ
びPCL相がこれらのブレンド内に存在し、PCL−b
−MPEGの溶融エンタルピーは、PEGセグメント相
によるよりむしろPCLセグメント相により大部分寄与
されており、それはブレンドする際にPLLAに影響さ
れうると考えられる。純粋なPLLAでは121℃で冷
却結晶化発熱が観察され、そして、この発熱は10wt
%PCL−b−MPEGとブレンドする際に、98℃に
シフトし、この共重合体組成物内でさらに共重合体量を
増加させてもこの発熱の位置にほとんど影響を及ぼさな
い。この結晶化挙動は、ブレンド組成に伴う冷却結晶化
ピークの段階的なシフトを示すPLLA/PCL−b−
PEGブレンド系のそれと異なる。PLLA/PCL−
b−PEGブレンドでは、結晶化挙動は、比較的長い鎖
長の混和性のあるPEGを加えることによりPLLAの
不定形相内の鎖可動性の増加と関連がある。PEGセグ
メントの鎖長がPLLA/PCL−b−PEGブレンド
におけるよりむしろPLLA/PCL−b−MPEGブ
レンドにおいてかなり短いため、そのガラス状態からの
PLLAの結晶化は、好ましい核形成サイトを提供する
PEGセグメントを加えるよりも、PCLセグメントを
加えることにより主として促進されうることが明らかで
あろう。
【0030】PDLLAおよびPCL−b−PEGの混
和性について検討した結果を表3に示す。
【0031】
【表3】 a Tcc及びTgは、それぞれ冷却−結晶化温度及び
ガラス転移温度である。PDLLA部分のTcc値のみ
を示した。Tm、及びΔHは、それぞれ融点、及び溶融
エンタルピーである。共重合体の溶融エンタルピー(ブ
レンド中の成分の重量フラクションから規格化した)も
括弧内に示した。 b Cop1は、PEG20000ベースのPCL−b
−PEGブロック共重合体を示す。 c n.d.は、不検出を示す。
【0032】表3に示されるように、PDLLAは54
℃でガラス転移点Tgを有する完全に不定形なポリマー
である。PEG20000ベースのPCL−b−PEG
にブレンドすると、PDLLA相のガラス転移点Tg
は、かなり低くなった。ブレンド組成に関係するガラス
転移点Tgおよび融点Tmの変化は、PLLA/PCL
−b−PEGのブレンド内に見られるそれらと似てい
る。それ故、不定形相及び結晶性相から成る孤立したP
CLセグメントドメインがこれらのブレンド内に存在
し、一方、共重合体のPEGセグメント相は不定形領域
内でPDLLAと混じっていると結論される。一般に、
非混和性で部分的に混和性であるブレンドの張力特性
は、2つの相互関係のある要因、すなわち2相間の接着
および分散している構成成分のドメイン・サイズに依存
し、両方とも界面張力によって主に制御される。一般
に、相溶化されたポリマーブレンドは、対応する相溶化
されていないブレンドのそれよりより細かい相ドメイン
サイズ、より大きい界面接触面積およびより高い界面接
着力を有する。効果的な相溶化剤は、むしろ界面に沿っ
て存在する。
【0033】ブロック共重合体を加えた場合及び加えな
い場合のPCL/PLA(PLLAおよびPDLLA)
ブレンドフィルムの応力、張力および弾性率を表4〜6
に示した。
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
【表6】
【0037】表4に示したPLLA/PCL 80/2
0ブレンドの場合、破断時の張力および弾性率はPCL
−b−PEG共重合体の10重量%の含有量で段階的に
増加した。但し、最大応力は僅かに減少した。
【0038】図3に見られるように、10%のPCL−
b−PEG(重量含有量)を含むPLLA/PCL 8
0/20ブレンド・フィルムは、ブロック共重合体を含
んでいないブレンド・フィルムと比較すると、約400
MPaの弾性率の増加および約20%の伸長の増加を示
した。しかし、15%のPCL−b−PEGを含むPL
LA/PCL 80/20フィルムについては全ての機
械的特性は減少し、このことは相溶化効果が最大になる
最適の共重合体濃度があることを示している。
【0039】表6に示すように、張力特性の改良は、P
DLLA/PCL 80/20ブレンドにおいても示さ
れている。すなわち、PCL−b−PEG共重合体を含
むPDLLA/PCL 80/20ブレンドでは、張力
特性の傾向は、PCL−b−PEG共重合体を含むPL
LA/PCL 80/20ブレンドのそれと類似してい
る。対照的に、MPEG750ベースのPCL−b−M
PEG共重合体を含むPLLA/PCLブレンドは、破
壊時の張力および弾性率の両方で顕著な増加を示してい
ない(表5)。これらの結果は、DSC測定値によって
明らかになったPLLA/PCL−b−PEG、PLL
A/PCL−b−MPEGおよびPDLLA/PCL−
b−PEGブレンドの相構造と整合している。PCL−
b−PEGのPEGセグメント相はPLAと混和性があ
るが、共重合体のPCLセグメント相はPLAと非混和
性であるため、ブレンドに加えられるブロック共重合体
はPCLおよびPLA間の境界領域において主に接続さ
れている筈である。それ故、PCLおよびPLA間の界
面接着力は強化されたのである。MPEG750ベース
のブロック共重合体を相溶化剤として用いた例では、P
EGセグメントはPLLAおよびPCLの界面間を連結
するにはあまりに短いかも知れない。従って、PLLA
/PCLブレンドフィルムの機械特性はPCL−b−M
PEGを加えても顕著に改善されなかった。ここで、表
4〜6の結果が、ブロック共重合体の有る場合及び無い
場合のPLLA/PCL 80/20ブレンドおよびP
DLLA/PCL 80/20のそれらと比較して、ブ
ロック共重合体の有る場合及び無い場合のPLLA/P
CL50/50ブレンドおよびPDLLA/PCL 3
0/70ブレンドのほとんどにおいて張力特性の低下を
示していることは、注目に値する。その上、これらのブ
レンドについては相溶化剤としてブロック共重合体を加
えているにもかかわらず張力特性の変化がなく、むし
ろ、それらは張力特性の低下を示す。すなわち、ソフト
なPCL成分の増加がブロック共重合体を加えることに
よりそのフィルムをより柔軟にすると期待されるが、P
LLA/PCL 50/50およびPDLLA/PCL
30/70ブレンド・フィルムは機械特性のいかなる
向上も示さなかった。
【0040】PLA/PCL/PCL−b−PEGブレ
ンドの相溶化に対するPLA/PCLの2成分系ブレン
ドの重量組成の効果を検討するために、PLA/PCL
の2成分系ブレンドの薄膜についてAFM観測を行っ
た。これらの2成分系ブレンド・フィルムのモルフォロ
ジーは、混合押出機の中におけるようなフローの影響無
しで、熱履歴に依存して大なり小なり変わっている筈で
ある。PLLA及びPCLの両者に対し混和性を有する
クロロホルム溶液からフィルムが調製されたので、両者
は走査電子顕微鏡の一般の解像度を少し越える範囲で混
合されているかも知れない。基板および薄膜の2次元構
造の若干の影響があるにもかかわらず、発明者らの実験
範囲においてはAFM観測が好ましいであろうと思われ
る。図4は、室温で、ガラス基板にキャストされた様々
な組成(100/0から50/50まで)を有するPL
LA/PCL薄膜の典型的AFMデフレクションイメー
ジ(deflection images)を示す。図4Aは、一つの均
一相であるように見え、4Bは表面(スポットは、PC
L小結晶か、濾過されてないかまたはサンプル調製の間
に空気から吸着される塵であろう)の小さな顕著な相分
離であるように見える。
【0041】図4Ci(中央左側の図)および4Ciiに
示すように、2つの異なるイメージが、同じブレンド比
率(PLLA/PCL=80/20)において観察され
た。図4Ciでは、PCL相は、球面形状に分散し、P
LLAマトリックスの球面包含物として、約5ナノメー
トルの深さおよび約100ナノメートルの幅で沈んでい
た。図4Ciiでは、表面の形状は、図4Aおよび4Bに
おけるそれらと類似している。それはわずかなPCL含
有量のPLLAブレンド(その中ではPCLドメインが
融合している。)から成っているかも知れない。図4D
および4Eは、分散したドメイン形状の球状から楕円で
細長い形への変化を示す。図4Dおよび4Eのドメイン
の沈んだ深さもまた、4Ci図のそれと比較して、それ
ぞれ20〜40ナノメートルおよび80〜110ナノメ
ートルまで増加した。図4は、PCL含有量20%未満
のPLLA/PCLブレンドがよく分散し、AFM観測
レベルにおいて相溶性を持つが、PCL含有量20%以
上のそれらは突然かたまりが生じることを示す。ドメイ
ン・サイズの及び球状から楕円形へ形状の転換は、これ
らの2成分系ブレンドではPCL含有量20%辺りで起
こり、分散相において明らかに粗くなり始める比率は、
おそらくPCL20%比率の位置であろうことを示して
いる。この転換は、また、ブレンド構成成分間の界面面
積変化と関係している。それで、上に示されたような、
最適の組成を有するあるブレンドの伸長特性の向上は、
(ソフトな)構成成分の増加およびPLA/PCLブレ
ンドの界面面積の減少による相乗的な効果の結果であ
る。このように、ある非混和性のブレンドの適切な組成
の最適化は、効果的に相溶化するのに必要である。
【0042】図5に、様々の組成(100/0から50
/50wt/wtまで)で、195℃で熱処理の後、室
温で観察したPLLA/PCL薄膜のAFMデフレクシ
ョンイメージを示す。これらは、PLLAリッチ相およ
びPCLリッチ相間の図4よりより粗く、より鋭い界面
を示す。図5Bに示されるフィルムは、ドメイン融合が
ないにもかかわらず様々な場所にゴツゴツした表面を示
している。図4Ciおよび4D(沈んだ包含物)に示さ
れるAFMイメージと比較して、PCLリッチ相は、図
5Ciおよび5Dの球状で表面にでた包含物として分散
している。特に図5Dで、PCLリッチ相の総面積は、
図4Dのそれと比較して減少しているようである。さら
に、図5EはPCL球顆の存在を示す。
【0043】MeredithおよびAmisは、PDLLA/PC
L2成分系ブレンドについて、86℃の臨界温度および
質量分率の臨界濃度36wt%PCLを持つより低い臨
界溶液温度(LCST)相境界があること、及びその形
態的な制御がプログラムされた温度のLCSTより上へ
のジャンプ及びPCLのTmの下への急冷によって可能
であることを報告した(J. Macromol. Chem. Phys., 200
0, 201, 733)。それで、PDLLA/PCLおよびPL
LA/PCLブレンド間の化学的類似性のために、PL
LA/PCLブレンドのモルフォロジー及び分布が温度
変化により影響されたと考えられる。図5に示すよう
に、これらの相挙動は、熱処理によるPLLA/PCL
ブレンドの相分離および結晶化を合理的に説明してい
る。
【0044】図6は、室温で、ガラス基板上にキャスト
した様々な組成(100/0、80/20、70/3
0、50/50および30/70)を有するPDLLA
/PCL薄膜のAFMデフレクションイメージを示す。
【0045】全体において、ブレンド組成に伴うイメー
ジ変化の傾向は、図4において観察されるそれと類似し
ている。図6Bmは、図4と同じ比率で図6Bを拡大し
たものである。PDLLA/PCL 80/20の相パ
ターンがPLLA/PCL 90/10(図4B、6B
および6Bm参照)のそれと類似していること、及び、
球状に分散する相パターンがPDLLA/PCLブレン
ドにおいて観察されないことは注目に値する。しかし、
PCLリッチ相であるPDLLA/PCL 70/30
および50/50のサイズおよび形状は、PLLA/P
CL 70/30および50/50のそれらについてと
同様である。さらに、PDLLA/PCLブレンドは、
PLLA/PCLブレンドよりシャープさはより少ない
が、滑らかな界面を有する粗いモルフォロジーを呈す
る。それは、PLLAおよびPDLLAが異なる立体規
則性を有するため、ブレンド組成に対する(非)相溶性
依存のなんらかの違いがPLLA/PCLおよびPDL
LA/PCLブレンドの間に存在することを示す。また
それは、PLA/PCLブレンド系において適当なブレ
ンド比率を選ぶことによって相溶化に対するブレンド構
成成分の相乗効果が最大になり得ること意味する。図6
Eに示すように、PDLLA/PCL 30/70の相
パターンは、図6CのPDLLA/PCL 70/30
のでこぼこを逆さまにした相であるように見える。
【0046】基板上のPDLLA/PCL薄膜は、19
5℃のホットプレート上に1分間置いたのち、AFM観
察を室温で行った。結果を図7に示す。
【0047】図7Bおよび7Bmは、球状に分散した相
(図6Bに示される同じPDLLA/PCL組成比率を
有するサンプルのそれと異なる)を示す。上記したよう
に、この形態的な変化がPDLLA/PCLブレンドの
構成成分の混和性変化または結晶化から生じるのかは不
確かであるが、球状に分散したPCLリッチ相の存在は
相構造の変化によって生じたものと思われる。図7C、
7Dおよび7Eはマトリックス相のPCLの球顆を表
す、そして、図7Cの挿入画像はPCLの微細晶成長を
示す。人為的熱処理がPCL球顆の様々なサイズおよび
分布につながることは興味深い。MeredithおよびAmis
(前記)が示唆したように、PCL結晶配列と同様にP
DLLAおよびPCLドメイン・サイズの制御は、相分
離を結晶化ステップと結合させることによって成し遂げ
られるかも知れない。ソフトな構成成分の増加は、ブレ
ンドのより高い柔軟性につながる。非混和性のポリマー
・ブレンドの場合には、構成成分比率の増加も一般にド
メイン・サイズにつながり、次いで分散した粒子中で再
かたまり化(reagglomeration)または融合が続いて起こ
る。従って、機械特性及びモルフォロジー間の最適化
は、製品の最終的な特性に適応させなければならない。
【0048】PCLとPEGの共重合体を含むPLLA
とPDLLAブレンドの熱特性の分析により、ブロック
共重合体のPEG相はPLAと混和性があるが、PCL
相は概してなおPLAと非混和性であることを示した。
共重合体のPEG鎖がPLAの不定形領域に混入される
場合、ブレンド内にPLA鎖のないPCLドメインが分
離されることはもっともであり、それはPCL−b−P
EGの相溶化効果のあることを示している。
【0049】
【発明の効果】本発明により、混和しないPCLとPL
Aブレンドにおいて、PEG20000系及びMPEG
750系のブロック共重合体を相溶化剤として添加する
ことによりブロック共重合体を添加しないブレンドのみ
のときに比して、機械的強度、柔軟性が改善された相溶
性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】PLLA、及びPEG20000から調製され
たPCL−b−PEG共重合体のブレンドのファースト
ヒートスキャンにより測定されたDSCサーモダイヤグ
ラムである。
【図2】PLLA、及びPEG20000から調製され
たPCL−b−PEG共重合体のブレンドのセカンドヒ
ートスキャンにより測定されたDSCサーモダイヤグラ
ムである。
【図3】異なる相溶化剤含有量に対するPLA/PCL
ブレンドフィルムの破断伸長を示す。
【図4】室温でキャストした、(A)100/0、
(B)90/10、(Ci)80/20、(Cii)80
/20(分散ドメインを示さない)、(D)70/3
0、及び(E)50/50の種々のPLLA/PCLブ
レンド重量組成のPLLA/PCLブレンド薄膜のAF
Mデフレクションイメージを示す。
【図5】195℃で熱処理した、(A)100/0、
(B)90/10、(Ci)80/20、(Cii)80
/20(分散ドメインを示さない)、(D)70/3
0、及び(E)50/50の種々のPLLA/PCLブ
レンド重量組成のPLLA/PCLブレンド薄膜のAF
Mデフレクションイメージを示す。
【図6】室温でキャストした、(A)100/0、
(B)80/20、(C)70/30、(D)50/5
0、(E)30/70の種々のPDLLA/PCLブレ
ンド重量組成のPDLLA/PCLブレンド薄膜のAF
Mデフレクションイメージ、及び(Bm)80/20の
拡大図を示す。
【図7】195℃で熱処理した、(A)100/0、
(B)80/20、(C)70/30(挿入画像:PC
L結晶成長のイメージ)、(D)50/50、(E)3
0/70の種々のPDLLA/PCLブレンド重量組成
のPDLLA/PCLブレンド薄膜のAFMデフレクシ
ョンイメージ、及び(Bm)80/20の拡大図を示
す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(ε−カ
    プロラクトン)(PCL)及び相溶化剤としてポリ(ε
    −カプロラクトン)−ポリ(エチレングリコール)ブロ
    ック共重合体を含んでなる相溶性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 PLAがポリ(L−乳酸)(PLLA)
    である請求項1記載の相溶性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 PLAとPCLの混合割合が重量で
    ((PLA)/(PCL))=1/99〜99/1(両
    者の合計は100重量%)である請求項1又は2記載の
    相溶性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 PLAとPCLの混合樹脂100重量部
    に対してポリ(ε−カプロラクトン)−ポリ(エチレン
    グリコール)ブロック共重合体1〜100重量部からな
    る請求項1〜3のいずれかに記載の相溶性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 ブロック共重合体を構成する(ε−カプ
    ロラクトン)単量体単位と(エチレングリコール)単量
    体単位が重量で(ε−カプロラクトン)単位/(エチレ
    ングリコール)単位=99/1〜40/60(両者の合
    計は100重量%)である請求項1〜4のいずれかに記
    載の相溶性樹脂組成物。
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