JP2003293039A - 粗大結晶粒の含有を抑制し、低温靱性に優れた高強度鋼板および鋼管の製造方法 - Google Patents
粗大結晶粒の含有を抑制し、低温靱性に優れた高強度鋼板および鋼管の製造方法Info
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Abstract
とにより結晶粒の細粒化をおこない、シェルフエネルギ
ーで200J以上の低温靱性が得られる、低温靱性に優
れた引張強度が900MPa以上の超高強度鋼板及び鋼
管の製造方法を提供する。 【解決手段】 所定成分を含有し、鋳造組織がベイナイ
ト及びマルテンサイト主体の連続鋳造鋳片を再加熱後、
再結晶域圧延における圧延温度が900℃以上、かつ各
圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上、および/ま
たは、各圧延パス時間が3秒以上で熱間圧延を行う引張
り強度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度
鋼板の製造方法。
Description
S)が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度熱
間圧延鋼板及び鋼管の製造方法に関するものである。こ
のような超高強度熱間圧延鋼は、さらに、加工、溶接さ
れて、天然ガス・原油輸送用のラインパイプ、圧力容
器、溶接構造物などの溶接性鋼材として広く用いられ
る。
(例えばペンストック)または圧力容器用鋼板では、高強
度化および高低温靱性化の需要が増えてきている。ライ
ンパイプ用鋼板では、例えば、引張強度が950MPa
(API規格でX100)以上の超高強度鋼板の製造に
関して、既に多くの研究が行われている(PCT/JP
96/00155、00157)。このようなラインパ
イプ用鋼板などとして使用する超高強度鋼板では、高い
強度のみならず良好な低温靱性が要求されることが多
く、例えば、ラインパイプ用鋼板では、シェルフエネル
ギーで200J以上の低温靱性が求められている。
高強度レベルの鋼では、鋼成分としてMn、Ni、Cu
等の焼き入れ性が高い合金元素量を比較的多く添加する
必要があるため、このような鋼を連続鋳造などで製造す
る場合には、その鋳造組織中のフェライト生成が抑制さ
れ、鋳片の鋳造組織としてベイナイト及びマルテンサイ
トの混合組織が90%以上含有し、それらの結晶粒径が
旧オーステナイト粒径で1mm以上の粗大なベイナイト
及びマルテンサイト単相(ここでのべイナイト組織とマ
ルテンサイト組織は、何れもラス構造の組織であり、光
学顕微鏡では区別が困難な組織であるため「単相」とい
う表現を用いた。以下、同様である。)または主体組織
となる。このような鋳造組織を有する鋳片を用いて熱間
圧延を行うための再加熱を行う場合には、ベイナイトお
よびマルテンサイト組織がオーステナイトに変態した後
も、その結晶粒径は、鋳造組織の結晶粒径(旧オーステ
ナイト粒径)とほぼ同じ程度に粗大となり、その後、通
常の熱間圧延をおこなっても再結晶が十分促進されず、
鋼板にも粗大な結晶粒が残存しやすかった。鋼板中の一
部に粗大結晶粒が存在する場合には、それが破壊の発生
点となり上部シェルフ域でもシャルピーエネルギーが低
下するため、これが引張り強度が900MPa以上の超
高強度熱間圧延鋼の低温靱性を低下させる原因となって
いる。
化を抑制することにより引張り強度が900MPa以上
の超高強度鋼板の低温靱性を向上させる方法としては、
例えば、特開平11−140580号公報には、連続鋳
造時の冷却速度を制御して、鋳造組織に粒内変態フェラ
イトを10%以上含有させた鋳片を製造し、この鋳片を
用いて熱間圧延するための再加熱におけるオーステナイ
ト変態によりフェライトの界面からオーステナイトが多
く生成させ、結晶粒を整粒、微細化する方法が開示され
ている。しかしながら、この方法では、鋳造組織中に粒
内フェライトを10%以上生成させるためにAl含有量
を0.004%未満に低減させると共に、連続鋳造時の
冷却速度を制御させる必要があるために、精錬および鋳
造の時間が長くなり、コストが高くなる等の生産性およ
び経済性の点で不利な面があった。
ト再結晶を用いて引張り強度が900MPa以上の超高
強度鋼板の低温靱性を向上させる方法としては、例え
ば、特表2001−511482号公報では、熱間圧延
のオーステナイト再結晶温度域での圧下率およびオース
テナイト未再結晶温度域での圧下率を規定することによ
り鋼板の低温靱性を向上させる方法が知られているが、
オーステナイト再結晶粒域の圧延パス間時間や1パス当
たりの圧下率などの再結晶条件は考慮させていないた
め、ベイナイト・マルテンサイト主体の超高強度鋳片を
用いて加熱−熱間圧延する際にシェルフエネルギーで2
00J以上の低温靱性の優れた鋼板を安定して製造する
ことは困難であった。
オーステナイト結晶粒の粗大化が発生しやすいベイナイ
ト及びマルテンサイト単相または主体組織の超高強度連
続鋳片を用いて熱間圧延する際の圧延条件、特にγ再結
晶域圧延の各圧延1パス当たりの平均圧下率および各圧
延パス時間を規定してオーステナイト再結晶をより促進
させることにより結晶粒の細粒化をおこない、シェルフ
エネルギーで200J以上の低温靱性が得られる、低温
靱性に優れた引張強度が900MPa以上の超高強度鋼
板及び鋼管の製造方法を提供するものである。
課題を解決するものであり、その発明の要旨とするとこ
ろは、以下のとおりである。 (1)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:
0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、P:
0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:0.
1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、Nb:
0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.03
0%、Al:0.001〜0.040%、N:0.00
01〜0.006%を含み、さらに、B:0.0001
〜0.003%、V:0.01〜0.10%、Cu:
0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、C
a:0.0001〜0.01%、REM:0.0001
〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄および
不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト及
びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片を
再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃以
上、かつ各圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上で
熱間圧延を行うことを特徴とする引張り強度が900M
Pa以上の低温靱性に優れた超高強度鋼板の製造方法。 (2)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:
0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、P:
0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:0.
1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、Nb:
0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.03
0%、Al:0.001〜0.040%、N:0.00
01〜0.006%を含み、さらに、B:0.0001
〜0.003%、V:0.01〜0.10%、Cu:
0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、C
a:0.0001〜0.01%、REM:0.0001
〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄および
不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト及
びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片を
再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃以
上、かつ各圧延パス時間が3秒以上で熱間圧延を行うこ
とを特徴とする引張り強度が900MPa以上の低温靱
性に優れた超高強度鋼板の製造方法。 (3)質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:
0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、P:
0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:0.
1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、Nb:
0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.03
0%、Al:0.001〜0.040%、N:0.00
01〜0.006%を含み、さらに、B:0.0001
〜0.003%、V:0.01〜0.10%、Cu:
0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、C
a:0.0001〜0.01%、REM:0.0001
〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006%
のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄および
不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト及
びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片を
再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃以
上、各圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上、かつ
各圧延パス時間が3秒以上で熱間圧延を行うことを特徴
とする引張り強度が900MPa以上の低温靱性に優れ
た超高強度鋼板の製造方法。 (4)前記連続鋳造鋳片の再加熱において、該鋳片を加
熱炉へ挿入する際の温度が400℃以下であることを特
徴とする上記(1)から(3)の何れか1項に記載の引
張り強度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強
度鋼板の製造方法。 (5)前記連続鋳造鋳片の再加熱において、該鋳片の加
熱温度が1100〜1250℃であることを特徴とする
上記(1)から(4)の何れか1項に記載の引張り強度
が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度鋼板の
製造方法。 (6)さらに、未再結晶域圧延における圧延温度がAr
3またはBs〜850℃、かつ、累積圧下率が60%以上
であることを特徴とする上記(1)から(5)の何れか
1項に記載の引張り強度が900MPa以上の低温靱性
に優れた超高強度鋼板の製造方法。 (7)上記(1)から(6)の何れか1項に記載の鋼板
の製造方法により製造した鋼板を管状に冷間成形後、突
き合わせ部にシーム溶接を行うことを特徴とする引張り
強度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度鋼
管の製造方法。
に説明する。
元素の含有量が比較的少ない連続鋳造鋳片の鋳造組織
は、フェライトとベイナイトあるいはフェライトとパー
ライトの混合組織である。この鋳片を熱間圧延のために
再加熱した場合には、主にフェライト粒界から新たなオ
ーステナイトが多く生成し、加熱温度がAc3点直上の
950℃付近では平均結晶粒径が20μm程度の整粒オ
ーステナイトになる。そして、その後、熱間圧延により
鋼板を製造する場合には、再結晶によって、さらに細粒
化されて平均オーステナイト粒径が5μm程度のほぼ均
一な整粒組織になる。
元素量の含有量が比較的多い引張強度が900MPa以
上の超高強度鋼用連続鋳造鋳片のミクロ組織は、ベイナ
イト及びマルテンサイトの混合組織が90%以上でその
結晶粒径が旧オーステナイト粒径で1mm以上の粗大な
ベイナイトおよびマルテンサイト単相または主体組織で
ある。
熱した場合には、オーステナイトは旧オーステナイト粒
界からも一部生成するが、結晶粒(旧オーステナイト
粒)内に多く存在する残留オーステナイトが容易に合体
・成長することにより、結果的に再加熱温度が900〜
1000℃では、鋳片の結晶粒(旧オーステナイト粒)
径とほぼ同じ1mm以上の粗大なオーステナイト粒にな
ることがある。これを異常フェライト・オーステナイト
変態と呼ぶ。
ト粒が鋼中に生成すると、その後の熱間圧延で再結晶し
にくくなり、最終成品の組織中に粒径が50〜100μ
mの粗大な結晶粒が残存し、これが低温靱性を低下させ
る原因となる。
・オーステナイト変態によって結晶粒の粗大化が発生し
やすいベイナイト及びマルテンサイト単相または主体組
織の連続鋳造鋳片を用いて、再加熱、熱間圧延した場合
でも、熱間圧延におけるオーステナイト再結晶の促進に
より結晶粒を細粒化し低温靱性を向上できる鋼板の製造
方法について鋭意検討した。
の促進のための熱間圧延条件について、種々の実験をお
こなって検討した結果、圧延条件の中で、特に所定温度
のオーステナイト再結晶域圧延における各圧延パスの平
均圧下率または各圧延パス間時間がオーステナイト再結
晶の促進のために重要であることがわかった。
ト再結晶粒域圧延における1パス当たりの平均圧下率お
よび圧延パス間時間と、粒径が10μm以上の粗大オー
ステナイト結晶粒の分率との関係を示す。
パス当たりの平均圧下率が5%以上、または、オーステ
ナイト再結晶粒域圧延における圧延パス間時間が3秒以
上の何れかの条件で、鋼板組織中で破壊の発生点となる
粒径:10μm以上の粗大オーステナイト結晶粒の割合
が20%以下と少なくなり、再加熱時に異常フェライト
・オーステナイト変態によって粗大化された結晶粒を熱
間圧延のオーステナイト再結晶により微細化することが
できる。また、オーステナイト再結晶粒域圧延における
圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上、かつオース
テナイト再結晶粒域圧延における圧延パス間時間が3秒
以上の条件では、粒径:10μm以上の粗大オーステナ
イト結晶粒の割合が10%以下とさらに少なくなり、熱
間圧延のオーステナイト再結晶の更なる促進により結晶
粒の微細化ができることがわかった。図2に粒径:10
μm以上の粗大オーステナイト結晶粒の分率と−40℃
でのシャルピー吸収エネルギーとの関係を示す。−40
℃でのシャルピー吸収エネルギーが200J以上の優れ
た低温靱性を安定して得るためには、鋼板組織中で破壊
の発生点となる粒径:10μm以上の粗大オーステナイ
ト結晶粒の割合が20%未満とする必要がある。
基に、再加熱時に異常フェライト・オーステナイト変態
によって粗大化された結晶粒を熱間圧延のオーステナイ
ト再結晶を行うことにより微細化し、鋼板組織中で破壊
の発生点となる粒径:10μm以上の粗大オーステナイ
ト結晶粒の残存量を減少させることによって、−40℃
でのシャルピー吸収エネルギーが200J以上の優れた
低温靱性を安定して得るために、オーステナイト再結晶
粒域圧延における1パス当たりの平均圧下率を5%以
上、または、オーステナイト再結晶粒域圧延における圧
延パス間時間が3秒以上の何れかの条件で行う。また、
本発明では、−40℃でのシャルピー吸収エネルギーが
230J以上のより優れた低温靱性を安定して得るため
にはオーステナイト再結晶粒域圧延における1パス当た
りの平均圧下率を5%以上、かつ、オーステナイト再結
晶粒域圧延における圧延パス間時間が3秒以上とする。
延温度が900℃未満になると、オーステナイトの十分
な再結晶化が図れず、圧延1パス当たりの平均圧下率お
よび圧延パス間時間を不当増大しなければ、−40℃で
のシャルピー吸収エネルギーが200J以上の十分高い
低温靱性を得ることができず、設備・操業制約および生
産性低下の原因となるため、上記再結晶域圧延の圧延温
度を900℃以上とする。
ための製造条件として、特に、上記のように再結晶域圧
延における圧延温度、各圧延1パス当たりの平均圧下
率、および、各圧延パス時間を上記範囲に規定すること
が重要であるが、さらに、鋼板組織を整粒化し組織中の
粗大結晶粒の残留を抑制してさらに安定して低温靱性を
向上するために、以下のように加熱炉への鋳片の挿入温
度、加熱温度、未再結晶域圧延における圧延温度を規定
する。
る。
よって製造される連続鋳造鋳片を対象とするが、この鋳
片を加熱炉で再加熱する場合、この鋳片を加熱炉へ挿入
する際の温度、つまり、鋳片の加熱炉挿入温度によっ
て、再加熱時のオーステナイト変態挙動が変化する。
状態での鋳造組織はまだベイナイトまたはマルテンサイ
ト変態が十分に進んでなく、旧オーステナイト粒界内に
同一結晶方位の残留オーステナイトが多く存在してい
る。同一結晶方位の残留オーステナイトは、Ac3直上
の温度で容易に合体・成長しやすい性質を有するため、
再加熱過程では粒界内に多く存在する残留オーステナイ
トが合体・成長する結果、旧オーステナイトの粒径とほ
ぼ同等程度まで粗大化したオーステナイトとなりやすい
(これを異常フェライト・オーステナイト変態と呼
ぶ)。したがって、本発明では、再加熱過程での異常フ
ェライト・オーステナイト変態による粗大オーステナイ
トの生成を抑制するために鋳片の加熱炉挿入温度を40
0℃以下とし、鋳片を加熱炉に挿入するまでに鋳片を冷
却してその鋳造組織を残留オーステナイトが少なくベイ
ナイト及びマルテンサイトが90%以上含有するベイナ
イト・マルテンサイト主体組織とする。
よりも高い1100℃以上とすることにより、再加熱時
での異常フェライト・オーステナイト変態によって生じ
た粗大オーステナイトの生成が抑制され、オーステナイ
ト結晶粒がほぼ整粒化することができる。これは、再加
熱過程で鋳造組織中のマルテンサイトがAc1点以下の
温度でセメンタイトに分解され、旧オーステナイト粒界
内のラス界面に多くの塊状セメンタイトを形成し、さら
に、Ac3点以下の高温においてこの塊状セメンタイト
からオーステナイトが核生成する。粒界内の塊状セメン
タイトから生成したオーステナイトは、残留オーステナ
イトよりもC含有量が高く、かつ結晶方位と異なるた
め、残留オーステナイトに吸収合体されず、単独で成長
しようとする。さらに、2次再結晶の作用も加わってオ
ーステナイトが整粒化されると考えられる。このオース
テナイトの整粒化は、加熱温度がある程度高くなるほど
その効果も大きくなるが、加熱温度が1250℃を越え
ると、オストワルド成長によるオーステナイトの吸収合
体、粒成長が急激に起きてオーステナイトは粗大化され
る。
よりオーステナイトが整粒化を促進し、かつ、オストワ
ルド成長によるオーステナイトの粗大化を抑制させるた
めに、再加熱時の加熱温度を1100〜1250℃に規
定する。
する。
ナイト粒界以外に変形帯も多く導入し結晶粒径をさらに
微細化するために、圧下温度を850℃以下とし、か
つ、累積圧下率を60%以上とする。なお、未再結晶域
圧延の圧延温度が、Ar3点またはBs点未満と過度に
低い温度で累積圧下率を60%以上の高圧下圧延をした
場合には、加工組織が生成し低温靱性を劣化させるた
め、未再結晶域圧延の圧延温度の下限値をAr3点また
はBs点温度とする。
上、低温靱性:シェルフエネルギーで200J以上など
の目的とする特性を得るためには、上述した製造条件と
ともに熱間圧延に用いる鋳片の成分を規定する必要があ
る。
の塊状セメンタイトから核生成したオーステナイトを2
次再結晶によって粒成長を促進させ、異常フェライト・
オーステナイト変態を抑制させるためには、加熱温度を
より高くする必要があるが、温度が高くなるに伴いオス
トワルド成長によるオーステナイトの吸収合体、粒成長
が起きるため、加熱温度の高温化は好ましくない。本発
明では、2次再結晶によるオーステナイトの整粒化をよ
り低温域の加熱温度で行わせるためには、炭化物あるい
は窒下物等の介材物を減少させ、それによるピニング作
用を抑制させることが有効であるとの知見に基づき、炭
化物あるいは窒下物を形成するNb、V、Ti等の元素
をできる限り低減することを特徴とする。
する。
より鋼の強度向上および焼き入れ性を向上させるために
極めて有効であり、本発明のベイナイトおよびマルテン
サイト主体組織および目標強度を得るために、その含有
量の下限を0.03%とした。一方、C含有量が多すぎ
ると、鋼材および溶接HAZ部の低温靱性が低下した
り、溶接後の低温割れの発生などの現地溶接性が著しく
劣化するため、その含有量の上限を0.10%とした。
更に低温靱性向上のためには、C含有量の上限を0.0
7%とするのが好ましい。
し、その効果を得るために0.01%以上添加する。一
方、多く添加し過ぎると、溶接HAZ靱性や現地溶接性
を著しく劣化させるので、その含有量の上限を0.6%
とした。なお、本発明鋼におけるAlおよびTiもSi
と同様に脱酸作用を有するため、Si含有量は、Alお
よびTiの含有量により調整するのが好ましい。
トおよびマルテンサイト主体の組織とし、強度および低
温靱性の良好なバランスを確保するために不可欠な元素
であり、その含有量の下限を1.7%とする。一方、M
nを多く添加し過ぎると、焼き入れ性が増加して溶接H
AZ靱性や現地溶接性を劣化させるだけでなく、連続鋳
造鋼片中の中心偏析を助長して鋼材の低温靱性を劣化さ
せるためその含有量の上限を2.5%とした。
は連続鋳造鋼片の中心偏析を助長するとともに、粒界破
壊により低温靱性を向上させ、Sは熱間圧延で延伸化す
る鋼中のMnSにより延性および靱性を低下させる。従
って、本発明では、母材およびHAZの低温靱性をより
一層向上させるために、P、Sのそれぞれの含有量の上
限を0.015%、0.003%として制限する。
ることなく本発明の低炭素鋼の特性を向上させるために
添加する。つまり、Niは、MnやCr、Moと比較し
て熱間圧延の組織(特に連続鋳造鋼片の中心偏析帯)中に
低温靱性に有害な硬化組織の形成を比較的少なくできる
とともに、0.1%以上の微量添加により溶接HAZ靱
性の向上に有効であるため、Ni含有量の下限を0.1
%とした。さらに、溶接HAZ靱性の向上のためには、
Ni含有量の下限を0.3%以上とするのが好ましい。
一方、Ni含有量が多すぎると、Niが高価であること
による経済性の悪化だけでなく、溶接HAZ靱性や現地
溶接性を劣化させるため、その含有量の上限を2.0%
とした。
圧延におけるCu起因の表面割れの防止にも有効であ
る。この目的に添加する場合は、Ni含有量をCu含有
量の1/3以上添加するのが好ましい。
とするベイナイトおよびマルテンサイト主体の組織を得
るために添加する。特に、B添加鋼の場合には、Mo添
加による焼き入れ性向上の効果は顕著となる。また、M
oがNbと共存することにより、制御圧延時にオーステ
ナイトの再結晶化を抑制し、オーステナイト組織を微細
化する効果がある。これらのMo添加による効果を得る
ために、その含有量の下限を0.01%とした。一方、
その含有量が0.60%を超えて過剰に添加すると、製
造コストが高くなるとともに、溶接HAZ靱性や現地溶
接性が劣化するためにその含有量の上限を0.60%と
した。
ステナイトの再結晶化を抑制するとともに、炭窒化物の
析出によりオーステナイト組織を微細化し、また、焼入
れ性向上にも寄与するため、鋼を強靱化するために添加
する。特に、Nb添加による焼入れ性向上効果は、Bと
共存する場合に相乗的に高まる。これらのNi添加によ
る効果は、その含有量が0.001%未満では得られな
いため、その含有量の下限を0.001%とした。一
方、その添加量が多過ぎると、溶接HAZ靱性や現地溶
接性が劣化するとともに再加熱時に異常フェライト・オ
ーステナイト変態を高温域側まで引きずるためにその含
有量の上限を0.10%とした。なお、これらの効果向
上の点からその含有量の上限を0.04%とするのが好
ましい。
加熱時にオーステナイトの粗大化を抑制するとともに、
B添加鋼の場合の焼入れ性向上に対して有害な固溶Nを
低減し焼入れ性をより向上させる。また、Al含有量が
0.005%以下と少ない場合には、Tiは鋼中で酸化
物を形成し、溶接HAZにおいて粒内変態生成核として
作用し、溶接HAZの組織を微細化する効果も有する。
これらのTi添加による効果は、その含有量が0.00
1%未満では得られないため、Ti含有量の下限を0.
001%とした。なお、窒化物の形成および固溶Nの固
定による効果を安定して得るためには、Ti含有量の下
限を、N含有量との関係から3.4Nとすることが好ま
しい。一方、Tiの添加が多過ぎると、窒化物の粗大化
や炭化物の析出硬化により、低温靱性が劣化するのに加
えて、再加熱時に異常フェライト・オーステナイト変態
を高温域側まで引きずるためにその含有量の上限を0.
030%とした。
組織の微細化の作用も有するため、その効果を得るため
に、Al含有量の下限を0.001%とする。一方、A
l含有量が0.040%を越えると、酸化Al系の非金
属介在物が増加して鋼の清浄度を害し鋼材および溶接H
AZ靱性を劣化するため、その含有量の上限を0.06
%とした。なお、本発明鋼におけるSiおよびTiもA
lと同様に脱酸作用を有するため、Al含有量は、Si
およびTiの含有量により調整するのが好ましい。
形成し、再加熱時の鋼材または溶接HAZにおいて粒内
変態核となりオーステナイトの粗大化を抑制し低温靱性
を向上する作用があるため、この作用効果を得るために
その含有量の下限を0.0001%とした。一方、鋼中
に多く添加し過ぎると、鋼片の表面疵の発生や固溶Nに
よる溶接HAZ靱性の劣化させ、B添加鋼の場合にはB
の焼入れ性向上効果を阻害するため、その含有量の上限
を0.006%とした。
として含有するが、本発明鋼の優れた特徴を損なうこと
なく、さらに、強度および靱性の一層の向上や製造可能
な鋼材サイズの拡大を図るために、B、V、Cu、C
r、Ca、REMおよびMgのうちの1種または2種以
上を以下の含有量で添加する。
飛躍的に高めるため、本発明鋼の目的とするベイナイト
およびマルテンサイト主体の組織を得るために、有効な
元素である。また、Bは、本発明鋼のMoの焼入れ性の
向上効果を顕著にすると共に、Nbとの共存によって相
乗的に焼入れ性の向上効果を促進する。これらの効果は
その含有量が0.0001%未満では得られないため、
B含有量の下限を0.0001%とした。一方、Bを過
剰に添加すると、Fe23(C,B)6等の脆性粒子の形
成を促進し、低温靱性を劣化させるだけでなく、かえっ
てBの焼入れ性向上効果を消失せしめることもあるの
で、その含有量の上限を0.0030%とした。
効果はNbと比較して弱いが、本発明鋼におけるNbと
の共存により、鋼の強靱化効果をさらに顕著なものとす
る。その効果は、V含有量が0.001%未満では得ら
れないため、その含有量の上限を0.001%とした。
一方、その添加量が多過ぎると、溶接HAZ靱性や現地
溶接性が劣化するとともに再加熱時に異常フェライト・
オーステナイト変態を高温域側まで引きずるためにその
含有量の上限を0.10%とした。これらV添加による
効果を安定して得るためには、その含有量を0.03〜
0.08%にするのが好ましい。
の強度を向上させる効果を得るために、それぞれ0.0
1%以上含有させる。一方、その含有量が多すぎると、
溶接HAZ靱性や現地溶接性を著しく劣化させるため、
CuおよびCrの含有量のそれぞれの上限を1.0%、
0.6%とした。
S)の形態を制御し、鋼の低温靱性(シャルピー試験の
吸収エネルギー等)を向上させる作用を有し、その作用
効果を得るためにCaおよびREMの含有量の下限を
0.0001%とした。一方、Ca量が0.006%、
REMが0.02%を越えて添加するとCaO−CaS
またはREM−CaSが大量に生成して大型クラスタ
ー、大型介在物となり、鋼の清浄度を害し、現地溶接性
を劣化させるため、CaおよびREMのそれぞれの含有
量の上限を0.006%、0.02%とした。なお、超
高強度ラインパイプとする場合には、鋼中のS、O含有
量をそれぞれ0.001%、0.002%以下にさらに
制限し、かつ、硫化系混在物の形状制御に関するインデ
ックスであるESSP(関係式:ESSP=(Ca)
〔1−124(O)〕/1.25S)を0.5〜10.
0の範囲内とするのが好ましい。
接HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制して低温靭
性を向上させる作用を有し、その作用効果を得るために
その含有量の下限を0.0001%とする。一方、その
含有量が0.006%を超えて添加すると、粗大酸化物
を生成し逆に靭性を劣化させるため、その含有量の上限
を0.006%とした。
および圧延条件で熱間圧延をすることにより低温靱性に
優れた超高強度鋼板を得ることができるが、この熱延鋼
板を、さらに管状に冷間成形後、突き合わせ部をシーム
溶接を行うことにより熱延鋼板と同様に低温靱性に優れ
た超高強度鋼管を製造することが可能となる。
板を管状に冷間成形後、突き合わせ部をシーム溶接する
ことで製造でき、製造条件は特に規定する必要はなく、
通常の条件で良い。
含有する鋼を連続鋳造した後、冷却によりそのミクロ組
織をベイナイトおよぶマルテンサイトに変態させて、厚
みが240mmの鋼片とし、この鋼片をさらに表3、表
4、表5(表4、表5は表3のつづき)に示す条件で再
加熱後、再結晶温度域圧延、さらに未再結晶域圧延を行
った後、水冷により450℃以下の温度まで冷却し鋼板
を製造した。
めの試験片を採取し、引っ張り試験およびシャルピー試
験を行った。鋼材の低温靱性は、シャルピー試験結果に
よりC方向でかつ、ノッチ位置が板厚方向における−4
0℃の吸収エネルギーを求めて評価した。
分含有量が本発明の範囲を満たした鋼であり、鋼E〜P
は、いずれかの成分の含有量が本発明の範囲からはずれ
ている。また、表2において試験No.1〜60は、鋼
成分および製造条件がともに本発明の範囲を満たした発
明例であり、試験No.61〜72は、製造条件が本発
明の範囲から外れた比較例であり、試験No.73〜7
5は、鋼成分が本発明の範囲から外れた比較例である。
No.1〜60の発明例は、いずれも母材の引っ張り強
度が900MPa以上で、かつ−40℃でのシャルピー
吸収エネルギーが200J以上の低温靱性に優れた超高
強度鋼板が得られている。
例は、少なくとも鋼成分の含有量が本発明範囲から外れ
ているために母材の引っ張り強度(TS)または−40
℃でのシャルピー吸収エネルギー(vE−40)が低下
した。また、試験No.73〜75は鋼成分の含有量は
本発明範囲内であるが、再結晶圧延条件が本発明の範囲
から外れているために、母材の−40℃でのシャルピー
吸収エネルギー(vE−40)が200J未満となり低
温靱性が低下した。
ーステナイト変態によりオーステナイト結晶粒の粗大化
が起きやすいベイナイト及びマルテンサイト単相または
主体組織の超高強度連続鋳片を用いて熱間圧延する際に
も、γ再結晶域圧延における各圧延1パス当たりの平均
圧下率および各圧延パス時間を適正に制御することによ
って結晶粒を微細化及び整粒化し、破壊の起点となる粗
大オーステナイト粒の鋼板組織中の残存量を極力低減
し、引張強度が900MPa以上で、かつ−40℃での
シャルピーエネルギーが200J以上の低温靱性に優れ
た超高強度鋼板および鋼管を製造することが可能とな
る。よって、天然ガス・原油輸送用のラインパイプ、揚
水用鋼板、圧力容器、溶接構造物などで使用される鋼構
造物の安全性を大幅に向上できる。
当たりの平均圧下率および圧延パス間時間と粒径が10
μm以上の粗大オーステナイト結晶粒の分率との関係を
示す図である。
粒の分率と−40℃でのシャルピー吸収エネルギーとの
関係を示す図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.03〜0.10%、
Si:0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:
0.1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、N
b:0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.
030%、Al:0.001〜0.040%、N:0.
0001〜0.006%を含み、さらに、B:0.00
01〜0.003%、V:0.01〜0.10%、C
u:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、
Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.000
1〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006
%のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄およ
び不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト
及びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片
を再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃
以上、かつ各圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上
で熱間圧延を行うことを特徴とする引張り強度が900
MPa以上の低温靱性に優れた超高強度鋼板の製造方
法。 - 【請求項2】 質量%で、C:0.03〜0.10%、
Si:0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:
0.1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、N
b:0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.
030%、Al:0.001〜0.040%、N:0.
0001〜0.006%を含み、さらに、B:0.00
01〜0.003%、V:0.01〜0.10%、C
u:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、
Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.000
1〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006
%のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄およ
び不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト
及びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片
を再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃
以上、かつ各圧延パス時間が3秒以上で熱間圧延を行う
ことを特徴とする引張り強度が900MPa以上の低温
靱性に優れた超高強度鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 質量%で、C:0.03〜0.10%、
Si:0.01〜0.6%、Mn:1.7〜2.5%、
P:0.015%以下、S:0.003%以下、Ni:
0.1〜2.0%、Mo:0.01〜0.60%、N
b:0.001〜0.10%、Ti:0.001〜0.
030%、Al:0.001〜0.040%、N:0.
0001〜0.006%を含み、さらに、B:0.00
01〜0.003%、V:0.01〜0.10%、C
u:0.01〜1.0%、Cr:0.01〜0.6%、
Ca:0.0001〜0.01%、REM:0.000
1〜0.02%およびMg:0.0001〜0.006
%のうちの1種または2種以上を含有し、残部が鉄およ
び不可避的不純物からなり、かつ鋳造組織にベイナイト
及びマルテンサイトを90%以上含有する連続鋳造鋳片
を再加熱後、再結晶域圧延における圧延温度が900℃
以上、各圧延1パス当たりの平均圧下率が5%以上、か
つ各圧延パス時間が3秒以上で熱間圧延を行うことを特
徴とする引張り強度が900MPa以上の低温靱性に優
れた超高強度鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記連続鋳造鋳片の再加熱において、該
鋳片を加熱炉へ挿入する際の温度が400℃以下である
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の
引張り強度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高
強度鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 前記連続鋳造鋳片の再加熱において、該
鋳片の加熱温度が1100〜1250℃であることを特
徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の引張り強
度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度鋼板
の製造方法。 - 【請求項6】 さらに、未再結晶域圧延における圧延温
度がAr3またはBs〜850℃、かつ、累積圧下率が6
0%以上であることを特徴とする請求項1から5の何れ
か1項に記載の引張り強度が900MPa以上の低温靱
性に優れた超高強度鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 請求項1から6の何れか1項に記載の鋼
板の製造方法により製造した鋼板を管状に冷間成形後、
突き合わせ部にシーム溶接を行うことを特徴とする引張
り強度が900MPa以上の低温靱性に優れた超高強度
鋼管の製造方法。
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