JP2003221258A - 導電性ガラス及びその製造方法 - Google Patents

導電性ガラス及びその製造方法

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JP2003221258A
JP2003221258A JP2002020699A JP2002020699A JP2003221258A JP 2003221258 A JP2003221258 A JP 2003221258A JP 2002020699 A JP2002020699 A JP 2002020699A JP 2002020699 A JP2002020699 A JP 2002020699A JP 2003221258 A JP2003221258 A JP 2003221258A
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film
thin film
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Application number
JP2002020699A
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English (en)
Inventor
Kazufumi Ogawa
小川  一文
Norihisa Mino
規央 美濃
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来の有機導電膜よりも高い導電性を有し、好
ましくは金属よりも高い導電性を有し、かつガラスの透
明性を損なわない導電性ガラスとその製造方法を提供す
る。 【解決手段】有機分子の一方の末端が基材(1)表面また
は基材上に形成した下地層(2)表面と共有結合し、前記
有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重合し
た共役結合基を含み、前記有機分子は配向しており、か
つ、前記共役結合基は他の分子の共役結合基と重合して
導電ネットワーク(34)を形成している。導電ネットワー
ク(34)は、ポリピロール、ポリチェニレン、ポリアセチ
レン、ポリジアセチレンまたはポリアセンで形成され
る。最外層にはフルオロカーボン基からなる防汚性、撥
水撥油性の保護膜を形成してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、導電性ガラス及び
その製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ガ
ラス表面に形成した導電性を有する単分子膜または単分
子累積膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、金属製透明電極はインジウム
−錫酸化物合金(ITO)をはじめとして多くのものが
提案され、実用化されている。しかし、金属製の電極
は、完全な透明ではなく、人間の目で視て判別できる程
度に半透明である。この結果、透明性の高いガラスの性
質を犠牲にせざるを得なかった。
【0003】また、従来から有機導電膜については様々
な提案がある。本出願人は、すでにポリアセチレン、ポ
リジアセチレン、ポリアセン(Polyacene)、ポリフェニ
レン、ポリチェニレン、ポリピロール、ポリアニリンな
どの導電性共役基を含む導電膜を提案している(特開平2
(1990)-27766号公報、USP5,008,127、EP-A-0385656、EP
-A-0339677,EP-A-0552637、USP5,270,417、特開平5(19
93)-87559号公報、特開平6(1994)-242352号公報)。
【0004】前記従来の有機系導電膜は、導電性が金属
に比較すると低いという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来の
問題を解決するため、従来の有機導電膜よりも高い導電
性を有し、好ましくは金属よりも高い導電性を有し、か
つガラスの透明性を損なわない導電性ガラスとその製造
方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の導電性ガラスは、ガラス基材表面またはガ
ラス基材上に形成した下地層表面と共有結合した末端結
合基と、共役結合基と、前記末端結合基と前記共役結合
基との間の部分は活性水素を含まない有機基を含む有機
分子で構成され、前記有機分子は配向しており、かつ、
前記共役結合基は他の分子の共役結合基と重合して導電
性有機薄膜を形成していることを特徴とする。
【0007】次に本発明の導電性ガラスの製造方法は、
有機分子の一方の末端がガラス基材表面またはガラス基
材上に形成した下地層表面と共有結合可能な末端官能基
と、前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子
と重合可能な共役結合可能基と、前記末端結合基と前記
共役結合基との間の部分は、活性水素を含まない有機基
を含む化合物を、前記ガラス基材表面またはガラス基材
上に形成した下地層表面に接触させ、脱離反応により共
有結合させて有機薄膜を成膜し、前記有機薄膜を構成す
る有機分子を所定の方向に配向させるか、または重合工
程で配向させながら重合し、重合工程においては、前記
共役結合可能基同士を電解酸化重合、触媒重合およびエ
ネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つの
重合法により共役結合させて導電性有機薄膜を形成する
ことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、有機薄膜が導電
性を有するのは、有機分子の集合群を構成する分子相互
が共役結合してポリマー化していることによる。ここ
に、導電性有機薄膜(以下「導電ネットワーク」ともい
う。)は、電気伝導に関与する共役結合で結合した有機
分子の集合体であり、共役結合鎖(共役系)を有するポ
リマーで形成されている。また、導電ネットワークは電
極間の方向に形成されている。この共役結合鎖ポリマー
は厳密に1方向に連なるものではなく、様々な方向のポ
リマー鎖が形成されていればよい。
【0009】本発明においては、導電性有機薄膜の電導
度(ρ)は、1S/cm以上、好ましくは1×103
/cm以上、さらに好ましくは5.5×105S/cm
以上、最も好適には1×107S/cm以上である。前
記の値はすべて室温(25℃)、相対湿度60%におけ
るドーパントなしの場合である。
【0010】前記重合した共役結合基は、ポリピロー
ル、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレ
ンおよびポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役
結合基であることが好ましい。とくに共役結合が、ポリ
ピロールまたはポリチェニレンであり、電解酸化重合さ
せた薄膜は高い電導度を有する。
【0011】前記末端結合基は、シロキサン(−SiO
−)およびSiN−結合から選ばれる少なくとも一つの
結合であることが好ましい。
【0012】前記末端結合基は、脱塩化水素反応、脱ア
ルコール反応および脱イソシアネート反応から選ばれる
少なくとも一つの脱離反応によって形成されている。例
えば分子末端の官能基が-SiCl3,-Si(OR)3(但しRは炭素
数1-3のアルキル基),または-Si(NCO)3の場合、基材表面
または基材の上に形成した下地層表面に-OH基,-CHO基,-
COOH基,-NH2基,>NH基等に含まれる活性水素が存在する
と、脱塩化水素反応、脱アルコール反応または脱イソシ
アネート反応が起こり、化学吸着分子を基材表面または
基材の上に形成した下地層表面に共有結合させる。
【0013】この方法によって形成される分子膜は、当
業界では”化学吸着膜”または”セルフ アセンブリン
グ フィルム(self assembling film)”と言われている
が、本発明においては”化学吸着膜”と呼ぶ。また、そ
の形成方法を”化学吸着法”と呼ぶ。
【0014】本発明において、分子の配向は、ラビング
による配向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共
有結合した後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の
照射処理、および重合工程における分子のゆらぎによる
配向から選ばれる少なくとも一つによって形成されてい
ることが好ましい。
【0015】前記導電性有機薄膜は可視領域の波長を有
する光に対して透明である。これは、膜厚がナノメータ
ーレベル(通常10nm以下、分子修飾しても50nm
以下)であり、可視光線の波長領域(300nm〜80
0nm)よりはるかに薄いからである。
【0016】前記導電性有機薄膜を形成している分子ユ
ニットは例えば下記式(A)で示されることが好まし
い。
【0017】
【化5】
【0018】(但し、Bは水素、炭素数1〜10のアル
キル基を含む有機基、活性水素導入可能基またはその残
基、Aはピロール基、チェニレン基、アセチレン基及び
ジアセチレン基から選ばれる少なくとも一つの共役結合
基、Zはエステル基(−COO−)、オキシカルボニル
基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)及びカー
ボネイト(−OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基か
ら選ばれる少なくとも一つの官能基または化学結合
(−)、m,nは整数でありm+nは2以上25以下、
Yは酸素(O)または窒素(N)、Eは水素または炭素
数1−3のアルキル基、pは1,2又は3の整数であ
る。)さらに具体的には下記化学式(E)〜(H)で示
される分子ユニットが好ましい。
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
【化8】
【0022】
【化9】
【0023】(但し、前記化学式(G)−(H)におい
て、Xは水素または不飽和基を含む有機基、qは0〜1
0の整数、Zはエステル基(−COO−)、オキシカル
ボニル基(−OCO−)、カルボニル基(−CO−)、
カーボネイト(−OCOO−)基、アゾ基(−N=N
−)または化学結合(−)、Eは水素または炭素数1−
3のアルキル基、m、nは整数でありm+nは2以上2
5以下、好ましくは10以上20以下の整数、pは整数
であり、1、2又は3である。)前記導電性有機薄膜を
形成するための化合物は、下記化学式(C)で示される
ことが好ましい。
【0024】
【化10】
【0025】(但し、Bは水素、炭素数1〜10のアル
キル基を含む有機基または活性水素導入可能基、Aはピ
ロール基、チェニレン基、アセチレン基及びジアセチレ
ン基から選ばれる少なくとも一つの共役結合基、Zはエ
ステル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OC
O−)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト
(−OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれ
る少なくとも一つの官能基または化学結合(−)、m,
nは整数でありm+nは2以上25以下、Dはハロゲン
原子、イソシアネート基及び炭素数1−3のアルコキシ
ル基から選ばれる少なくとも一つの反応基、Eは水素ま
たは炭素数1−3のアルキル基、pは1,2又は3の整
数である。) さらに具体的には、下記化学式(I)で示されるピロリ
ル化合物、下記化学式(J)で示されるチェニル化合
物、下記化学式(K)で示されるエチニル化合物(アセ
チレン基を含む化合物ともいう)、下記化学式(L)で
示されるジエチニル化合物(ジアセチレン基を含む化合
物ともいう)が好ましい。
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
【化13】
【0029】
【化14】
【0030】(但し、前記式(I)−(L)において、
Xは水素または不飽和基を含む有機基、qは0〜10の
整数、Dはハロゲン原子、イソシアネート基または炭素
数1−3のアルコキシル基、Eは水素または炭素数1−
3のアルキル基、nは2以上25以下の整数、pは整数
であり1、2または3である。) 前記有機分子は単分子層状に形成されていることが好ま
しい。
【0031】また、前記単分子層形成工程を複数回繰り
返すことにより、単分子層を積層させて単分子累積膜を
形成しても良い。
【0032】前記化学式Cにおいて、Xがビニル結合な
どの不飽和基を含む場合は、例えば水分の存在する雰囲
気中で電子線またはX線などのエネルギー線を照射する
ことにより水酸基(−OH)を導入でき、また、過マン
ガン酸カリウム水溶液に浸漬することにより−COOH
を導入できる。他の方法として、酸素プラズマ処理、U
V/オゾン処理、コロナ処理、または濃硫酸と重クロム
酸カリウムの混合溶液に浸漬する方法(クロム混酸液処
理)などもある。このようにすると、活性水素を導入で
きるので、さらに単分子膜を累積結合させることができ
る。
【0033】また、前記単分子層形成工程と前記傾斜処
理(配向)工程とを交互に繰り返し行った後、前記導電
ネットワーク形成工程で、単分子累積膜の各単分子層内
に導電ネットワークを一括形成することにより、導電性
単分子累積膜を形成しても良い。
【0034】また、前記単分子層形成工程、前記傾斜処
理工程および前記導電ネットワーク形成工程よりなる一
連の工程を繰り返し行うことにより、導電性単分子累積
膜を形成しても良い。
【0035】重合方法としては、電解酸化重合、触媒重
合およびエネルギー線照射重合から選ばれる少なくとも
一つの重合方法がある。前記電解酸化による導電ネット
ワークを形成する前に、触媒重合およびエネルギー線照
射重合から選ばれる少なくとも一つの予備重合を行って
も良い。
【0036】前記エネルギー線は、紫外線、遠紫外線、
X線および電子線から選ばれる少なくとも一つであるこ
とが好ましい。
【0037】前記エネルギー線は、偏光した紫外線、偏
光した遠紫外線および偏光したX線から選ばれる少なく
とも一つであり、前記傾斜配向処理と前記導電ネットワ
ーク形成とを同時に行っても良い。
【0038】有機分子が有極性の官能基を含むことによ
り、印加された電界に対する感度が高く、応答速度が高
速となる。したがって、有機薄膜の導電性を高速に変化
させることができる。電界が印加された際、前記有機薄
膜の導電性の変化は、有極性の官能基が電界に応答し、
その応答による影響が前記導電ネットワークの構造に波
及されたため、生じたと考えられる。
【0039】また、ドーピングにより導電ネットワーク
に電荷移動性のドーパント物質の組み込めば、さらに導
電率を向上することも可能である。このドーパント物質
として、ヨウ素、BF-イオン、Na,K等のアルカリ
金属、Ca等のアルカリ土類金属等の任意のドーパント
物質が利用できる。さらに有機膜形成工程の溶液に含ま
れる微量成分やガラス容器などから不可避的に混入され
るコンタミネーションによるドーパント物質を含んでい
ても良い。
【0040】導電単分子層を構成する有機分子はかなり
良く配向した状態にあるため、導電ネットワークの共役
結合鎖が特定平面内に存在する。したがって、単分子層
に形成された導電ネットワークは所定の方向に直線的に
連なる。その導電ネットワークの直線性により、高い導
電異方性を有する。また、その導電ネットワークの直線
性は、導電ネットワークを構成する各共役結合鎖(共役
系)が単分子層内の同一平面で略平行に配列しているこ
とを意味する。したがって、導電単分子層は、高い導電
率を有し、且つ、均一な導電率を有する。また、前記導
電ネットワークの直線性により、重合度の高い共役結合
鎖を単分子層に有する。
【0041】別の例によれば、膜厚が薄くても極めて良
好な導電性を有する導電性単分子膜および導電性単分子
累積膜を提供できる。
【0042】導電性単分子累積膜の場合、各導電性単分
子層に導電ネットワークが形成されているので、単分子
累積膜の導電ネットワークの導電率は、積層された単分
子膜の層数に依存する。したがって、導電単分子層の積
層数を変更することにより所望の導電率を有する導電性
有機薄膜を提供できる。例えば、同一の導電性単分子層
が積層された導電性累積膜であれば、それに含まれる導
電ネットワークの導電率はほぼ比例する。
【0043】導電性単分子累積膜において、すべての単
分子層に形成された導電ネットワークの方向が同一であ
る限り、各単分子層ごとに有機分子の配向の傾斜角が異
なっていてもよい。また、すべての単分子層を同一有機
分子から構成するものでなくとも良い。また、各導電性
単分子層ごとに異なる種類の有機分子から構成された導
電性単分子累積膜であってもよい。
【0044】また、導電性単分子累積膜の場合は、基材
に最近接する導電性単分子層が基材と化学結合で結合さ
れているので、耐剥離性等の耐久性に優れる。
【0045】傾斜処理工程における有機分子の傾斜方向
は、有機分子の長軸を基材表面に射影した線分の方向を
意味する。したがって、基材に対する傾斜角は同一角度
でなくてもよい。
【0046】単分子層を構成した有機分子の集合群を、
傾斜処理工程において、精度よく所定の方向に傾斜させ
ることができる。一般的には、単分子層を構成した分子
を配向させることができる。精度よく配向させることが
できるので、導電ネットワーク形成工程において、方向
性を有する導電ネットワークを簡便に形成できる。
【0047】また、単分子層内の配向した有機分子相互
を共役結合させると、重合度が高くかつ直線的に連なる
導電ネットワークが形成できる。また、導電ネットワー
クの直線性により、均質な導電性単分子層が形成でき
る。
【0048】別の例においては、前記偏光として可視光
領域の波長を有する偏光を用いる。この例によれば、有
機薄膜を構成した有機分子の剥離や、有機分子自体の破
壊等による有機薄膜の破壊を防止または抑制できる。
【0049】別の例によれば、ラビング処理を施した基
材表面に有機薄膜を成膜すると、その有機薄膜を構成し
た有機分子は所定の方向に傾斜した状態となる。一般的
には、ラビング処理におけるラビング方向と成膜された
有機分子の傾斜方向とは同一方向となる。
【0050】前記ラビング処理で用いるラビング布とし
て、ナイロン製またはレーヨン製の布を用いることがで
きる。前記の構成の如くナイロン製またはレーヨン製の
ラビング布を用いることが、配向の精度を向上させる目
的にとって適正である。
【0051】前記導電ネットワーク形成工程で1種以上
の重合法を適用し、前記有機薄膜を構成する分子相互を
重合によりまたは重合および該重合後の架橋により共役
結合させて導電ネットワークを形成しても良い。この例
によれば、有機分子の前記重合性基を共役結合で連結さ
せ電気伝導を可能にする導電ネットワークを形成でき
る。重合の種類としては電解酸化重合、触媒重合および
エネルギービームの照射重合から選ばれる少なくと一つ
の重合法が利用できる。とくに最終工程において、電解
酸化重合により導電ネットワークを完結させると、高い
導電性を得ることができる。
【0052】また、前記有機薄膜を形成する分子が共役
結合で結合する重合性基を複数有する場合、一方の重合
性基の重合で形成された高分子に対して、さらに架橋反
応を行い他方の重合性基を共役結合させることにより、
重合後の構造と異なる構造を有する導電ネットワークを
形成できる。この際、重合により形成された高分子の側
鎖にある前記他方の重合性基が架橋される。
【0053】例えば、ジアセチレン基を有する有機分子
の集合群からなる単分子膜を形成し、その単分子膜に触
媒重合を行い、更に、エネルギービーム照射重合により
架橋を行うと、極めて高い導電率を有するポリアセン型
共役系を含む導電ネットワークを形成することができ
る。
【0054】前記重合を行う工程で触媒重合法、電解重
合法、エネルギービーム重合法よりなる群から選択され
る重合法を適用してもよい。この例によれば、触媒重合
性を有する重合性基(以下、触媒重合性基ともいう)を
有する有機分子からなる有機薄膜には触媒重合法を適用
して、また、電解重合性を有する重合性基(以下、電解
重合性基とも略記する)を有する有機分子からなる有機
薄膜には電解重合法を適用して、また、エネルギービー
ムの照射により重合する重合性基(以下、エネルギービ
ーム重合性基ともいう)を有する有機分子からなる有機
薄膜にはエネルギービーム重合法を適用して、導電ネッ
トワークを形成することができる。効率よく導電ネット
ワークを形成するには、まず触媒重合法および/または
エネルギービーム重合を行い、最終工程で電解酸化重合
により反応を完結させる。
【0055】複数回の架橋工程を採用する場合は、異な
る作用による架橋工程の組合せでもよいが、同じ作用で
あるが反応条件が異なる工程の組合せも含む。例えば、
触媒作用による架橋工程後に第1の種類のエネルギービ
ーム照射による架橋工程を行い、さらに第2の種類のエ
ネルギービーム照射による架橋工程を行う等により導電
ネットワークを形成してもよい。
【0056】前記導電ネットワーク形成工程で重合法と
して前記触媒重合法を適用し、前記重合性基としてピロ
ール基、チェニレン基、アセチレン基またはジアセチレ
ン基を有する有機分子の集合群よりなる有機薄膜に導電
ネットワークを形成する。
【0057】例えば、ピロール基を含む有機分子を用い
てポリピロール型共役系を含む導電ネットワークを形成
でき、チェニレン基を含む有機分子を用いてポリチェニ
レン型共役系を含む導電ネットワークを形成できる。
【0058】前記導電ネットワーク形成工程で前記エネ
ルギービーム重合法を適用し、前記重合性基としてアセ
チレン基またはジアセチレン基を有する有機分子の集合
群からなる前記有機薄膜に導電ネットワークを形成する
こともできる。この例によれば、有機薄膜を構成する有
機分子として、アセチレン基を有する有機分子を用い
て、ポリアセチレン型共役系を含む導電ネットワークを
形成できる。また、ジアセチレン基を有する有機分子を
用いて、ポリジアセチレン型共役系またはポリアセン型
共役系を含む導電ネットワークを形成できる。
【0059】前記エネルギービームとして紫外線、遠紫
外線、X線または電子線を用いてもよい。この例によれ
ば、効率よく導電ネットワークを形成することができ
る。また、エネルギービーム照射重合性基の種類により
それぞれ吸収特性は異なるので、吸収効率の良いエネル
ギービームの種類およびエネルギーを選択すれば反応効
率を向上できる。更に、多くのエネルギービーム照射重
合性基がこれらのエネルギービームに対し吸収性を有す
るため、様々な種類のビーム照射重合性基を有する有機
分子からなる有機薄膜に適用できる。
【0060】また、前記エネルギービームとして偏光し
た紫外線、偏光した遠紫外線または偏光したX線を用
い、前記傾斜処理工程と前記導電ネットワーク形成工程
とを同時に行うこともできる。この例によれば、有機薄
膜を構成する有機分子を所定の方向に傾斜(配向)させ
るとともに、有機分子相互を共役結合させることができ
る。したがって、工程を簡素化できる。
【0061】本発明で用いるガラス基板は、表面に活性
水素を有するので、そのままでも使用できる。フロート
ガラスの錫面に接した面や、表面に活性水素が少ないガ
ラス基板の場合は、SiCl4 ,HSiCl3 ,SiCl3O-(SiCl2-O)n
-SiCl3(但し、nは0以上6以下の整数),Si(OCH3)4 ,HSi(OC
H3)3 ,Si(OCH3)3O-(Si(OCH3)2-O)n-Si(OCH3)3(但し、
nは0以上6以下の整数)などで処理する。前記化合物
も化学吸着法により形成でき、膜厚は1〜10nm程度
の薄膜で形成するのが透明性を損なわないので好まし
い。また、蒸着法を用いてシリカ膜、またはAl23
を形成しても良い。また、コロナ放電やプラズマ照射な
どで基材表面を活性化することにより活性水素を付与で
きる。
【0062】次に本発明においては、防汚性、撥水性及
び撥油性を付与するために、前記導電性有機薄膜の表面
に化学吸着法を用いてパーフルオロアルキル基を有する
分子膜からなる保護膜を形成することが好ましい。
【0063】前記保護膜としては、下記化学式(B)で
示される分子膜が好ましい。
【0064】
【化15】
【0065】(但し、aは2以上25以下の整数、bは
0以上10以下の整数、Yは酸素(O)または窒素
(N)、Eは水素または炭素数1−3のアルキル基、p
は整数であり、1、2又は3である。)より好ましく
は、前記化学式(B)は次の化学式(M)であることが
好ましい。
【0066】
【化16】
【0067】(但し、aは2以上25以下の整数、bは
0以上10以下の整数。)前記のような保護膜は、下記
化学式(D)のシラン化合物を用いることにより形成で
きる。
【0068】
【化17】
【0069】(但し、aは2以上25以下の整数、bは
0以上10以下の整数、Dはハロゲン原子、イソシアネ
ート基及び炭素数1−3のアルコキシル基から選ばれる
少なくとも一つの反応基、Eは水素または炭素数1−3
のアルキル基、pは整数であり、1、2又は3であ
る。)より好ましくは、前記化学式(D)は次の化学式
(N)であることが好ましい。
【0070】
【化18】
【0071】(但し、aは2以上25以下の整数、bは
0以上10以下の整数。)本発明の有機導電膜は、電導
度が高く、透明性も高い。この性質を利用して、単板ガ
ラス、合わせガラスまたはペアーガラスに形成するのが
好ましい。合わせガラスまたはペアーガラスの場合は、
ガラス板の内表面に有機導電膜を形成してもよいし、外
表面に形成してもよい。
【0072】また、前記導電性有機薄膜は、電波を受信
するアンテナ線として形成してもよい。本発明の導電性
有機薄膜は、人間の目では膜が形成されているか否かは
容易に判断できない程度に透明な導電膜であるので、例
えば自動車ガラスに形成されている電波受信アンテナ
は、従来のものとはまったく異なった外観となる。すな
わち、視覚的障害がまったくないアンテナ線とすること
ができる。
【0073】前記導電性有機薄膜は、自動車ガラスまた
は建築物用窓ガラスに全面または一部に形成してもよ
い。電磁波シールド膜として用いたり、寒冷地における
ヒーターまたは防曇膜などの面発熱膜として使用でき
る。鏡に適用した場合は防曇膜として使用できる。
【0074】(実施の形態1)本実施の形態1において
は、有機薄膜が単分子膜である場合を例にして、その製
造方法及びその構造を説明する。
【0075】まず、製造方法について説明する。共役重
合性官能基を有する有機分子を基材と接触させて、基材
上に単分子膜を形成する単分子層形成工程(有機薄膜形
成工程)を行い、次に、単分子膜を構成する分子相互が
共役結合で所定の方向に連なる導電ネットワークを有す
る導電領域を単分子膜の少なくとも一部に形成する導電
領域形成工程を行うことにより、導電領域を有する単分
子膜を形成できる。
【0076】前記の製造方法により形成された導電ネッ
トワークよりも、方向性に優れた導電ネットワークを形
成するためには、膜を構成する有機分子が所定の方向に
配向(傾斜)した単分子膜に対して、導電領域形成工程
を行うことが好ましい。また、配向した単分子膜に導電
領域形成工程を行うと、重合度及び導電率の高い導電領
域を形成できることとなる。
【0077】ここに、単分子膜及び単分子層において
は、所定の方向に傾斜させることは、単分子膜を構成す
る有機分子を配向させることを意味する。
【0078】このような配向した単分子膜を形成する方
法としては、単分子層形成工程前に基材表面をラビング
処理しておき(前処理工程)、ラビング処理済みの基材
表面に単分子膜を形成する方法や、単分子層形成工程後
に単分子膜に対して配向処理を施して(傾斜処理工
程)、配向した単分子膜を形成する方法等が適用でき
る。また、前処理工程と傾斜処理工程とを含む製造方法
であれば極めて直線性に優れた導電ネットワークを形成
できる。
【0079】前記の単分子層形成工程に引き続き、洗浄
工程を含む製造方法であれば、表面に汚れのない単分子
膜を形成することができる。また、電荷移動性のドーパ
ントをドーピングするドーピング工程を含む製造方法で
あれば、簡便に、導電領域の導電率を向上させることが
できる。また、導電領域形成工程後に、単分子膜上に絶
縁性の保護膜を形成する工程を含む製造方法であれば、
耐剥離性等の耐久性に優れる保護膜付き単分子膜を製造
できる。以下に、各工程について説明する。
【0080】単分子層形成工程では、膜材料分子を含む
有機溶液に基材を浸漬することにより単分子膜を形成し
てもよいし、有機溶液を基材上に塗布することにより単
分子膜を形成してもよい。また、膜材料分子を含むガス
中に基材を暴露することにより単分子膜を形成してもよ
い。
【0081】シラン系界面活性剤等のような、基材に化
学吸着する官能基を末端に有する有機分子を膜材料分子
として用いると、基材上に結合固定された耐剥離性等の
耐久性に優れた単分子膜を形成できる。2層目以降の積
層膜を形成する場合も、化学吸着法を適用できる。
【0082】また、単分子層形成工程は、基材の全面又
は一部の面に単分子膜を形成する工程であってもよい
し、基材に、所定のパターンに単分子膜を形成する工程
であってもよい。例えば、基材表面に単分子膜を形成す
るパターン以外の部位に被膜(レジストパターン)を形
成し、被膜の形成された基材と膜材料分子とを接触させ
て単分子膜を成膜した後、被膜を除去することにより所
定のパターンに単分子膜を形成することができる。
【0083】次に、洗浄工程では、単分子層形成工程後
に、単分子膜の形成された基材を洗浄用の非水系有機溶
媒に浸漬させて、未吸着の有機分子を洗浄除去すること
ができる。洗浄用の有機溶媒として非水系の有機溶媒を
用いることが好ましい。
【0084】次に、配向処理工程では、基材の表面を任
意の1方向にラビング処理する工程であってもよいし、
所定の部位ごとにラビング方向を異ならせる様にラビン
グ処理する工程であってもよい。ラビング処理方法につ
いては、下記の傾斜処理工程において説明する。配向処
理工程で用いるラビング装置と傾斜処理工程で用いるラ
ビング装置とは同一の装置であり、基材上に単分子膜が
形成されているか否かの違いである(図5A)。
【0085】以下に、所定の部位ごとにラビング方向を
異ならせる場合の前処理工程の例を説明する。基材表面
に所定の第1のパターン状に被膜を形成し(レジストパ
ターン)、被膜の形成されていない基材表面を所定の第
1のラビング方向にラビングし、ラビング処理後に被膜
を除去する。その後、基材表面に第1のパターンと異な
る第2のパターン状に被膜(レジストパターン)を形成
し、被膜の形成されていない基材表面を所定の第2のラ
ビング方向にラビングし、ラビング処理後に被膜を除去
する。これにより、第1のラビング方向にラビング処理
した部位と、第2のラビング方向にラビング処理した部
位とを形成できる。更に、これをラビング方向を異なら
せて繰り返すことにより、複雑なラビングパターンを形
成することもできる。
【0086】次に、配向処理工程(傾斜処理工程)で
は、ラビング配向法、光配向法、液切り配向法等を適用
して、単分子膜を構成する有機分子を所定の方向に配向
させることができる。図5A−Cは、有機薄膜を構成す
る分子を傾斜(配向)させる配向法を説明するための模
式的斜視図であり、図5Aはラビング配向法、図5Bは
光配向法、図5Cは液切り配向法である。
【0087】ラビング配向法は、図5Aに示したよう
に、単分子膜4の形成された基材1を所定の方向(基板
搬送方向)Cに搬送しながら、単分子膜4と接触するラ
ビング布41の巻き付けられたラビングロール42を回
転方向Aに回転させて、ラビング布41で単分子膜4の
表面を擦ることにより、単分子膜4を構成する有機分子
をラビング方向Bに配向させる方法である。これによ
り、基材1上に、ラビング方向Bに配向した単分子膜4
を形成することができる。
【0088】光配向法は、図5Bに示したように、透過
軸方向Dを有する偏光板43に紫外線または可視光線4
5を照射し、偏光46により単分子膜4を構成する有機
分子を偏光方向Eに配向させる方法である。偏光として
は直線偏光が好ましい。これにより、基材1上に、偏光
方向に配向した単分子膜4を形成することができる。
【0089】また、液切り配向法は、図5Cに示したよ
うに、洗浄用の有機溶媒44の液面に対して所定の傾斜
角度を保ちつつ引き上げ方向Fに基材1を引き上げ、単
分子膜4を構成する有機分子を液切り方向Gに配向させ
る方法である。これにより基材1上に、配向した単分子
膜4を形成することができる。
【0090】さらに図示していないが、触媒重合、電解
酸化重合時の溶液中における分子のゆらぎによっても配
向させることができる。
【0091】液切り配向法、ラビング配向法、光配向
法、重合時の溶液中における分子のゆらぎによる配向い
ずれか1つの方法を適用する工程であってもよいし、複
数種の配向法を組み合わせて順次適用する工程であって
もよい。異なる配向方法を組み合わせて、精度よく配向
した状態にある配向した単分子膜を形成する際には、ラ
ビング方向や偏光方向や液切り方向が同一方向になるよ
うにすることが好ましい。
【0092】また、全体的又は部分的に単分子膜を一方
向に配向させる工程であってもよいし、所定の部位ごと
に配向方向を異ならせて配向させる工程であってもよ
い。所定の部位ごとに配向方向を異ならせる場合、ラビ
ング配向法又は光配向法を適用することが好ましい。ラ
ビング配向法を適用して所定の部位ごとに配向方向を異
ならせることもできる。
【0093】また、光配向法を適用して所定の部位ごと
に配向方向を異ならせて配向させる場合には、例えば、
所定のパターンを形成した第1のフォトマスクを介し
て、第1の偏光を照射した後、第1のフォトマスクのパ
ターンと異なる所定のパターンを形成した第2のフォト
マスクを介して、第1の偏光の偏光方向と異なる偏光方
向を有する第2の偏光を照射すればよい。更に、パター
ンが互いに異なる複数のフォトマスクと偏光方向の互い
に異なる複数種の偏光とを用いれば、複雑な配向パター
ンを形成することができる。
【0094】また、偏光方向を変化させながら、単分子
膜に偏光をスキャン照射すれば、直線的に連なる導電ネ
ットワークばかりでなく、曲線的に連なる導電ネットワ
ークを形成することが可能である。
【0095】次に、導電領域形成工程では、単分子膜を
構成する分子相互を重合又は架橋させて共役系を形成す
ることができる。重合や架橋を行う重合法として触媒重
合法、電解重合法、エネルギービーム照射重合法等を適
用することができる。
【0096】重合又は架橋させる工程を複数回行うこと
により、導電ネットワークを形成してもよい。例えば、
膜材料分子として、共役重合性官能基(共役結合で重合
する重合性官能基)を複数有する有機分子を用いた場
合、単分子層内に含まれる複数の平行な平面それぞれに
共役系(共役結合鎖)を形成することができる。
【0097】更に、重合又は架橋を複数回行う際、各回
ごとに重合法あるいは重合条件が異なっていてもよい。
ここで、重合条件とは、同一の重合法を用いた場合の反
応条件を意味する。例えば、触媒重合において触媒の種
類や反応温度等が異なる場合、また、電解重合において
印加電圧等が異なる場合、また、エネルギービーム照射
重合においてビームの種類やビームのエネルギーやビー
ムの照射強度等が異なる場合である。
【0098】また、単分子膜の全部又は1部に導電領域
を形成する工程であってもよいし、電気的に互いに絶縁
された複数の導電領域を単分子膜に形成する工程であっ
てもよい。以下に、膜材料分子に含まれる共役重合性官
能基が触媒重合性官能基の場合、電解重合性官能基であ
る場合、エネルギービーム照射重合性官能基である場合
について説明する。
【0099】第1に、単分子膜を構成する有機分子が触
媒重合性官能基を有する場合について説明する。単分子
膜と触媒とを接触させることにより導電ネットワークを
形成できる。したがって、触媒を含む溶液に単分子膜を
浸漬してもよいし、触媒を含む溶液を単分子膜に塗布し
てもよく、また、触媒を含むガス雰囲気中に単分子膜を
暴露してもよいし、触媒を含むガスを単分子膜に吹き付
けてもよい。
【0100】また、前記配向処理工程(傾斜処理工程)
を行わない場合、触媒を含む溶液を単分子膜表面に対し
て一定方向に流すことにより、又は、触媒を含むガスを
単分子膜表面に対して一定方向に吹き付けることによ
り、単分子膜を配向させると共に導電ネットワークを形
成することが可能である。したがって、配向処理工程を
省略して、所定の方向に連なる導電ネットワークを含む
導電領域を形成できる。
【0101】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、単分子膜上に所定のパターンの
被膜(レジストパターン)を形成した後、触媒と接触さ
せることにより、被膜の形成されていない部位に導電領
域を形成することができる。不要であれば被膜を除去す
ればよい。
【0102】第2に、単分子膜を構成する有機分子が電
解重合性官能基を有する場合について説明する。単分子
膜に電位差のある1対の電極を接触させることにより、
所定の方向に連なる導電ネットワークを形成できる。し
たがって、単分子膜の表面又は側面に接触しかつ互いに
離隔した1対の電解重合用の電極を形成し、形成した1
対の電極間に電圧を印加してもよいし、単分子膜の表面
又は側面に1対の外部電極を互いの電極が離隔するよう
に接触させ、一対の外部電極間に電圧を印加してもよ
い。
【0103】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、複数対の電極を所定のパターン
に形成し、電極に所定の電位を与えることにより、電位
の異なる電極間に導電領域を形成できる。このとき2つ
の電極のみに電位を与えて導電領域を1つずつ形成して
もよいし、3つ以上の複数の電極に電位を与えて複数の
導電領域を同時に形成してもよい。
【0104】前記において、電極を形成して電解重合を
行うと端子付き導電領域を有する単分子膜を製造でき
る。不要であれば、これらの電極は除去する。
【0105】第3に、単分子膜を構成する有機分子がエ
ネルギービーム照射重合性官能基を有する場合について
説明する。単分子膜にエネルギービームを照射すること
により、導電ネットワークを形成することができる。エ
ネルギービームとしては光、X線、電子線等を用いるこ
とができる。好ましくは、エネルギービームとして偏光
又は偏光X線を用いる。
【0106】また、前記配向処理工程(傾斜処理工程)
を行わない場合であっても、偏光を照射することによ
り、単分子膜を配向させると共に、導電ネットワークを
形成することが可能である。したがって、配向処理工程
を省略して、所定の方向に連なる導電ネットワークを含
む導電領域を形成できる。
【0107】また、電気的に互いに絶縁された複数の導
電領域を形成する場合、所定のパターンを形成した第1
のフォトマスクを介して、エネルギービームを照射した
後、第1のフォトマスクのパターンと異なる所定のパタ
ーンを形成した第2のフォトマスクを介して、エネルギ
ービームを照射する。
【0108】このとき、第1のフォトマスクを介して照
射されるエネルギービームと第2のフォトマスクを介し
て照射されるエネルギービームとは同じエネルギービー
ムでなくともよい。更に、エネルギービームとして偏光
又は偏光X線を用いる場合には、それらの偏光方向が同
じでなくともよい。例えば、パターンが互いに異なる複
数のフォトマスクと偏光方向の互いに異なる複数種の偏
光とを用いれば、導電ネットワークの方向が互いに異な
る導電領域を簡便に形成できる。
【0109】また、エネルギービームを単分子膜にスキ
ャン照射すれば、より簡便に電気的に互いに絶縁された
複数の導電領域を形成できる。このとき、エネルギービ
ームとして偏光又は偏光X線を用いれば、導電ネットワ
ークの方向が互いに異なる導電領域を簡便に形成するこ
とができる。更に、偏光方向とスキャン方向(エネルギ
ービームの進行方向)とを平行に保ちながらスキャン照
射すれば、曲線的に所定の方向に連なる導電ネットワー
クを形成できる。
【0110】前記導電ネットワークを効率よく形成する
ためには、触媒重合および/または光エネルギービーム
照射による重合をまず行い、最後に電解酸化重合により
ネットワークを完結させる手段がある。触媒重合および
/または光エネルギービーム照射による重合は重合速度
が速く、また電解酸化重合はそれほど速くはないが電流
を流しながら重合させるので、ネットワークが完結した
瞬間に大電流が流れるため、完結したい否かを容易に検
知できる。
【0111】次にドーピング工程では、電荷移動性のド
ーパントをドーピングすることにより、簡便に導電率を
向上させることができる。ドーパントとしてはヨウ素
(I2)、BF-イオン等のアクセプター・ドーパント
(電子受容体)であってもよいし、Li等のドナー・ド
ーパント(電子供与体)であってもよい。
【0112】次に、基材絶縁膜形成工程では、基板上に
シリカ膜又は酸化アルミニウム膜等の絶縁性の被膜を薄
く形成することができる。透明電極等に用いるためには
透明な被膜を形成する必要がある。また、絶縁性の被膜
として、膜構成分子が化学吸着しやすい被膜を形成する
と、基材の材質に依らず、単分子膜を形成できる。
【0113】最後に、保護膜形成工程では、単分子膜表
面にの絶縁性の保護膜を形成する。保護膜形成工程を行
えば、耐剥離性等の耐久性に優れた単分子膜を形成する
ことができる。また、ドーパントを含む単分子膜であれ
ば、脱ドーピングによるドーパントの蒸発を低減でき
る。また、透明電極等に用いるためには透明な保護膜を
形成する。とくに化学吸着法によりフルオロアルキル基
を含む分子を単分子膜として形成すると、撥水性、撥油
性および防汚性を付与できるので、汚れやすいガラスに
は好適である。
【0114】前記の製造方法により形成された導電領域
を有する単分子膜の構造例を図1A−Cに示す。図1A
−Cは、ガラス基材上に形成された、導電領域を有する
単分子膜を模式的に示す断面図である。図1Aはガラス
基材1の表面に単分子膜4が共有結合により固定されて
おり、共役重合性官能基9が重合されて導電領域6が全
領域に形成され、導電ネットワーク5が形成されている
状態を示す。図1Bは複数の部分領域(導電領域6,
6)に導電ネットワーク5が形成された単分子膜を示
す。図1Cは共役重合性官能基を内部に有する有機分子
からなり、複数の部分領域(導電領域6)に導電ネット
ワークの形成された単分子膜を示す。
【0115】図2は、単分子膜4中の導電ネットワーク
5の方向を説明するための模式的平面図である。なお、
図2以外の図面においては、蛇行した導電ネットワーク
を蛇行のない直線又は蛇行のない曲線として表す。
【0116】また、前記導電領域を有する単分子膜内に
おける、導電領域のパターン例を図3A−Dに示す。図
3A−Dは、基材上に形成された導電ネットワークを含
む単分子層の導電領域6のパターン構成例を模式的に示
す平面図である。図3Aは一方向に連なる導電ネットワ
ーク5が全領域に形成され単分子層4であり、図3B
は、各導電領域6に一方向に連なる導電ネットワーク5
の形成された、平行な導電領域6を有する単分子層4を
示し、図3Cは、各導電領域に一方向に連なる導電ネッ
トワーク6の形成された、マトリックス状に配列した導
電領域6を有する単分子層4を示し、図3Dは、各導電
領域に形成された導電ネットワークの方向が同じでな
く、かつ、各導電領域の形状も同じでない、任意のパタ
ーンに配列した導電領域6を有する単分子層4を示す。
【0117】また、ガラス基材上に形成される導電領域
を有する単分子膜の構成を図4A−Bに示す。図4A−
Bは、ガラス基材上に形成された、単分子膜の構造例を
模式的に示す断面図である。図4Aはガラス基材1の表
面にシリカ薄膜2を形成し、その表面に形成された単分
子膜4を示し、図4Bはガラス基材1上に単分子膜4が
形成され、その表面に保護膜3が形成された例を示す。
【0118】また、図6A−Bは、ガラス基材上の選択
的な部位に導電領域を形成した構成例を模式的に示す斜
視図である。図6Aはガラス基材1上の全面に形成され
た単分子膜4内に、複数の導電領域6が形成された構成
を示し、図6Bは全領域に導電領域6の形成された単分
子膜4を、ガラス基材1上に複数形成した構成を示す。
【0119】(実施の形態2)本実施の形態2において
は、導電領域を有する単分子累積膜の例を説明する。
【0120】単分子累積膜を形成する場合、第1層目は
化学吸着法により形成する。第2層目以降も化学吸着法
で形成する。また、配向処理工程(傾斜処理工程)を行
うことは実施の形態1においても説明したが、単分子累
積膜の場合は単分子膜の場合に比べその重要性が大き
い。以下においては、配向処理工程を含む製造方法につ
いて説明する。
【0121】本発明に係る導電領域を有する単分子累積
膜に製造方法おいては、単分子層形成工程と、導電領域
形成工程と、配向処理工程との様々な組合せ及び順序が
可能である。以下に、好ましい製造方法を製造方法1〜
5に説明する。
【0122】製造方法1は、単分子層形成工程を複数回
連続して行って単分子累積膜を形成した後、導電領域形
成工程を行うことにより、導電領域を有する単分子累積
膜を形成する製造方法である。
【0123】製造方法2は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)とを順次交互に複数回行って、
配向した単分子層を積層させた後、導電領域形成工程を
行うことにより、導電領域を有する単分子累積膜を形成
する製造方法である。
【0124】製造方法3は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)と導電領域形成工程を順次行う
一連の工程を複数回行うことにより、導電領域を有する
単分子累積膜を形成する製造方法である。
【0125】製造方法4は、単分子層形成工程と配向処
理工程(傾斜処理工程)と導電領域形成工程を順次行っ
て導電領域を有する単分子膜を形成した後、単分子層形
成工程を複数回連続して行い、その後、導電領域形成工
程を行うことにより、導電領域を有する単分子累積膜を
形成する製造方法である。
【0126】製造方法5は、前処理工程を行った後、単
分子層形成工程を複数回連続して行い、その後、導電領
域形成工程を行うことにより、導電領域を有する単分子
累積膜を形成する製造方法である。また、前処理工程を
行った後、前記製造方法1〜製造方法5のいずれかの製
造方法を行う製造方法であっても好ましい。
【0127】前記の製造方法1〜5を用いた場合であっ
ても、導電領域を有する単分子累積膜にどの様な導電領
域のパターンを形成するか、また、配向処理工程でどの
様な配向方法を適用するか、導電領域形成工程でどの様
な重合方法を適用するか、等によりその優位性は製造方
法ごとに異なる。したがって、所望の導電領域を有する
単分子累積膜を形成するために最適な製造方法を選択す
ることが重要である。
【0128】前記製造方法1〜5は、更に、基材絶縁膜
形成工程、洗浄工程、ドーピング工程、保護膜形成工程
のいずれか1つ又は複数の工程を含む製造方法であって
もよい。単分子層形成工程、導電領域形成工程、前処理
工程、配向工程、基材絶縁膜形成工程、洗浄工程、ドー
ピング工程及び保護膜形成工程の各々についての詳細
は、前記実施の形態1を参照することとし、以下におい
て、有機薄膜が単分子膜であるか、又は単分子累積膜で
あるかによって生じる各工程の相違点について述べる。
【0129】各単分子層形成工程において、同一の膜材
料分子を用いて、1種の有機分子からなる単分子累積膜
を形成してもよいし、異なる膜材料分子を用いて、単分
子層ごとに構成分子の異なる単分子累積膜を形成しても
よい。
【0130】次に、配向処理工程におけるラビング配向
法及び光配向法の適用性について説明する。ここに、ラ
ングミュアーブロジェット法を適用した単分子層形成工
程で、基材は膜構成分子を含む溶液中から所定の角度、
通常は溶液面に対して垂直で引き上げられるため、単分
子形成工程で液切り配向が行われていることになる。
【0131】ラビング配向法は、膜表面をラビングする
ことにより、膜を構成する有機分子を配向させる方法で
あるため、積層数の多い単分子累積膜に対して適用した
場合、基材側下層の単分子層を十分に配向させることが
できなくなる。したがって、ラビング配向は、製造方法
2〜4を適用する場合に適している。なお、製造方法1
を適用して積層数の少ない単分子累積膜を形成する場合
であれば、ラビング配向法を用いることができる。
【0132】一方、光配向法は、積層数の多い単分子累
積膜に対しも適用できるので、製造方法1〜5のいずれ
に対しても適している。ただし、過度に積層数が多くな
り、光透過性が劣化する場合においては、基材側下層の
単分子層を十分に配向させることができなくなる。
【0133】次に、導電領域形成工程で触媒重合法、電
解重合法、エネルギービーム照射重合法を適用する場合
について、好ましい製造方法を重合法ごとに説明する。
【0134】触媒重合法は、単分子累積膜の表面と触媒
とを接触させて重合反応を誘起する方法であるので、基
材側下層の単分子層内に十分に重合した導電ネットワー
クを形成することが困難となる。したがって、触媒重合
法を適用する場合は、前記製造方法4が適している。積
層数が極めて少ない単分子累積膜を形成する場合には、
前記製造方法1又は製造方法2であってもよい。
【0135】また、電解重合法を適用する場合、単分子
累積膜表面に接触した一対の電極に電圧を印加すると基
材側下層の単分子層内に十分に重合した導電ネットワー
クを形成することが困難となるので、単分子累積膜の側
面部に接触した電極に電圧を印加することが好ましい。
このように、側面部に接触した電極に電圧を印加すれ
ば、前記製造方法1〜5のいずれの製造方法を適用して
も単分子累積膜の各単分子層に導電ネットワークを形成
することができる。更に、電解重合法は、単分子累積膜
の全面に導電領域を形成する場合や単分子累積膜を貫通
する導電領域を形成する場合に適する。
【0136】また、エネルギービーム照射重合法は、積
層数の多い単分子累積膜に対しも適用できるので、製造
方法1〜5のいずれに対しても適している。ただし、過
度に積層数が多くなり、エネルギービームの透過性が劣
化する場合においては、基材側下層の単分子層を十分に
配向させることができなくなる。
【0137】次に、洗浄工程は、基材側最下層の単分子
層形成後のみに行うことが好ましい。単分子層を積層後
に洗浄工程を行うと、積層された単分子層が剥離してし
まうからである。また、化学吸着法を適用して最下層の
単分子層を形成した場合、洗浄工程は行うことが好まし
い。
【0138】次に、ドーピング工程は、導電ネットワー
クの形成された単分子層に対して個々に行うことが好ま
しい。したがって、ドーピング工程を行う際には、前記
製造方法3を適用することが好ましく、前記製造方法3
の各導電領域形成工程後に行うことが好ましい。
【0139】前記の製造方法により形成される、単分子
累積膜の導電領域の構造例を図7A−Dに示し、また、
導電領域を有する単分子累積膜の各単分子層の導電領域
のパターンは全ての各単分子層で同一であることが好ま
しい。図7A−Cは、基材1上に形成された、単分子累
積膜の積層構造例を模式的に示す断面図であり、図7A
は各単分子層4の配向方向を同一方向とするX型の単分
子累積膜を示し、図7Bは各単分子層4ごとに配向方向
を異にするX型の単分子累積膜であり、図7Cは各単分
子層4ごとに2つの配向方向のいずれかに配向したX型
の単分子累積膜である。
【0140】また、図4及び図6における単分子膜の代
わりに、単分子累積膜を備えた構造とすることもでき
る。
【0141】(実施の形態3)本発明の導電性有機薄膜
は、自動車の防曇膜、面発熱膜、アンテナ線、建物の電
磁波シールド窓ガラス、防曇鏡等に適用できる。
【0142】例えば、図8は自動車のフロントガラス
(前方ガラス)50の内面に適用したもので、単分子膜
に形成された導電領域51を示している。導電領域51
には任意の位置に電力線が接続されている。導電領域の
面積抵抗は室温(25℃)で約100Ω/□程度(ジー
メンス:電導度(ρ)は10〜100S/cm程度)が
好ましい。
【0143】導電領域51が形成されていない余白領域
52は、前方から到来する電波が通過し、リアーガラス
(後方ガラス)に形成されたアンテナ線の利得のディッ
プを補償するため、設けることが好ましい。アンテナ線
の電導度(ρ)は、好ましくは5.5×105S/cm
以上、さらに好適には1×107S/cm以上である。
【0144】次に図9は、自動車のリアーガラス(後方
ガラス)53に形成した導電領域54とアンテナ線55
を示している。アンテナ線55はテレビやラジオ、電
話、位置情報、ナビゲーションシステムなどの信号受信
に使用する。導電領域54とアンテナ線55とは容量結
合させ、信号受信力を高めることもできる。
【0145】前記図8−9においては、導電領域のパタ
ーンを示しているが、実際には人間の視力ではその存在
が判別つかない程度に透明である。
【0146】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に
説明する。下記の実施例において、単に%と表示してい
るのは質量%を意味する。
【0147】(実施例1) [1]合成工程1. 11−(1−ピロリル)−1−ウ
ンデセンの合成 下記化学式(O1)に示す反応式1に従って、アルゴン
気流下、2Lの反応容器にピロ−ル 38.0g(0.
567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)20
0mlを仕込み、5℃以下に冷却した。
【0148】これに1.6M n-ブチルリチウムヘキサ
ン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下で滴
下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルスルホ
キシドを600ml加えてTHFを加熱留去して溶媒置
換した。次に、11―ブロモ−1−ウンデセン 14
5.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴下
後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0149】次に、前記反応混合物に水600molを加
え、ヘキサン抽出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグ
ネシウムにて乾燥後、溶媒留去した。
【0150】さらに、残渣を、ヘキサン/酢酸エチル=
50/1にてシリカゲルカラムで精製して113.2g
の11−(1−ピロリル)−1−ウンデセンを得た。
【0151】
【化19】
【0152】収率は91.2%であった。
【0153】なお、ここで、ピロリル基の3位をアルキ
ル基、または末端にビニル基やエチニル基のような不飽
和基を含む下記式12の(a)−(g)で示される基で
置換した原料を用いても、分子修飾された11−(1−
ピロリル)−1−ウンデセンがそれぞれ得られた。
【0154】
【化20】
【0155】[2]合成工程2. 11−(1−ピロリ
ル)−ウンデセニルトリクロロシランの合成 下記化学式(O2)に示す反応式2に従って、(1)〜(8)
の反応をそれぞれ行った。
【0156】
【化21】
【0157】(1) 50mlキャップ付き耐圧試験管
に、11−(1−ピロリル)−1−ウンデセン2.0
g、(9.1×10-3mol)、トリクロロシラン 2.0
g(1.48×10-2mol)、AIBN 0.015gを仕込
み80℃で5時間反応させた。
【0158】その後、NMRにて反応チェックしたとこ
ろ、ほとんど未反応であった。
【0159】さらにトリクロロシラン 2.0g(1.4
8×10-2mol)、AIBN 0.015gを加え、100℃
で22時間反応させた。反応チェックすると、50%程
度反応が進行していた。 (2) 50mlキャップ付き耐圧試験管に、11−(1
−ピロリル)−1−ウンデセン2.0g(9.1×10-3
mol)、トリクロロシラン 2.0g(1.48×10-2m
ol)、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピルアルコ−ル溶
液0.01gを仕込み50℃で9時間反応させた。NMRに
て反応チェックしたところ、50%程度反応が進行して
いた。
【0160】その後、一夜同温度にて反応させたが反応
は進行しなかった。 (3) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた30ml反
応容器に、11−(1−ピロリル)−1−ウンデセン
2.0g(9.1×10-3mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%イ
ソプロピルアルコ−ル溶液0.01gを仕込み、70℃
に加熱した。これにトリクロロシラン 1.49g(1
0×10-2mol)を60〜70℃で2時間かけて滴下し
た。
【0161】その後2時間同温度で反応させた。
【0162】NMRにて反応チェックしたところ、50%
程度反応が進行していた。
【0163】その後、一夜同温度にて反応させたが反応
は進行しなかった。 (4) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(1−ピロリル)−1−ウンデセン1
0.0g(4.57×10-2mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%
イソプロピルアルコ−ル溶液0.05gを仕込み、70
℃に加熱した。これにトリクロロシラン7.45g(5.
50×10-2mol)を60〜70℃で4時間かけて滴下
した。
【0164】その後、6時間同温度で反応させた。NMR
にて反応チェックしたところ、50%程度反応が進行し
ていた。
【0165】その後、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピ
ルアルコ−ル溶液0.05g加えて一夜同温度にて反応
させたが反応は進行しなかった。
【0166】これにトリクロロシラン7.45g(5.5
0×10-2mol)を60〜70℃で2時間かけて滴下し
た。このとき、トリクロロシランが還流するため内温5
0℃に下がった。なお、滴下後6時間反応させて、反応
チェックしたところ反応は進行していなかった。
【0167】これを50mlキャップ付き耐圧試験管に
移し、100℃で一夜反応させたが、変化がなかった。
【0168】これを減圧蒸留して4.0gの11−(1
−ピロリル)−ウンデセニルトリクロロシランを得た。
【0169】このとき、得た物質のbpは119〜12
1℃/5.32Pa(0.04mmHg)であり、収率は24.
7%であった。 (5) 50mlキャップ付き耐圧試験管に、11−(1
−ピロリル)−1−ウンデセン10.0g(4.57×1
-2mol)、トリクロロシラン 10.0g(7.38×
10-2mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピルアルコ
−ル溶液0.05gを仕込み100℃で3時間反応させ
た。NMRにて反応チェックしたところ、50%程度反応
が進行していた。その後、一夜同温度にて反応させたが
反応は進行しなかった。 (6) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(1−ピロリル)−1−ウンデセン6
7.0g(3.06×10-1mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%
イソプロピルアルコ−ル溶液0.34gを仕込み、70
℃に加熱した。これにトリクロロシラン50.0g(3.
69×10-1mol)を60〜70℃で2時間かけて滴下
した。その後、3時間同温で反応させた。NMRにて反応
チェックしたところ、40%程度反応が進行していた。
その後、一夜同温度にて反応させたが反応は進行しなか
った。
【0170】前記(5)、(6)を合わせて減圧蒸留して、2
6.9gの11−(1−ピロリル)−ウンデセニルトリ
クロロシランを得た。このとき、得た物質のbpは12
1〜123℃/6.65Pa(0.05mmHg)であり、収
率は21.6%であった。 (7) 還流冷却管、滴下ロートを取り付けた50ml反
応容器に、11−(1−ピロリル)−1−ウンデセン8
0.0g(3.65×10-1mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%
イソプロピルアルコ−ル溶液0.41gを仕込み、70
℃に加熱した。これにトリクロロシラン60.0g(4.
42×10-1mol)を60〜70℃で2時間かけて滴下
した。その後一夜同温にて反応させた。NMRにて反応チ
ェックしたところ、30%程度反応が進行していた。
【0171】これを減圧蒸留して、17.0gの11−
(1−ピロリル)−ウンデセニルトリクロロシランを得
た。このとき、得た物質のbpは129〜132℃/3
3.25Pa(0.25mmHg)であり、収率は13.1%であ
った。 (8) 100mlキャップ付き耐圧試験管に、11−
(1−ピロリル)−1−ウンデセン45.0g(2.05
×10-1mol)、トリクロロシラン 25.0g(1.8
5×10-1mol)、H2PtCl6・6H2Oの5%イソプロピルア
ルコ−ル溶液0.23gを仕込み100℃で12時間反
応させた。NMRにて反応チェックしたところ、50%程
度反応が進行していた。
【0172】これを減圧蒸留して、14.7gの11−
(1−ピロリル)−ウンデセニルトリクロロシランを得
た。このとき、得た物質のbpは124〜125℃/1
3.3Pa(0.1mmHg)であり、収率は22.4%であっ
た。
【0173】なお、ここで反応(7)、(8)では回収した原
料を用いて反応させた。
【0174】以上、工程2の合成方法として8種の合成
条件を検討したが、どれも収率20〜25%程度であっ
た。ただし、回収原料を使って、トリクロロシラン滴下
法では13%と低くなってしまった。また、滴下法はス
ケ−ルが大きくなると反応率が低下するようである。
【0175】以上の結果から、仕込量、反応時間等を考
慮すると、反応条件(2)か(8)の方法が適当と思われる。
【0176】ここで、ピロリル基の3位をアルキル基、
または末端にビニル基やアセチレン基のような不飽和基
を含むアルキル基で置換した合成工程1.で得られたア
ルキル化、あるいはアルキル化された11−(1−ピロ
リル)−ウンデセンを原料として用いても、アルキル
化、あるいはアルキル化された11−(1−ピロリル)
−ウンデセニルトリクロロシランがそれぞれ得られた。
【0177】前記反応式2(化学式(O2))で得られ
た下記化学式(O3)に示す11−(1−ピロリル)−
ウンデセニルトリクロロシランを脱水したジメチルシリ
コーン溶媒で1%に薄めて化学吸着液を調製した。
【0178】
【化22】
【0179】図11Aに示すように、予め厚み5mmの
ガラス基板1を前記の化学吸着溶液に浸漬して、その表
面に化学吸着分子を化学吸着させた(単分子層形成工
程)。単分子層形成工程後、ガラス基板1をクロロホル
ム溶液に浸漬して、残留する未反応の膜材料分子を洗浄
除去した。これにより、表面に汚れのない単分子膜14
を形成した。
【0180】このとき、ガラス基板1の表面には、活性
水素を含む水酸基が多数存在するので、それらの水酸基
と化学吸着分子の−SiCl結合基との脱塩素反応によ
り共有結合で化学結合して、化学式(O4)に示す化学
吸着分子で構成された単分子膜14が形成されている。
ただし、化学式(O4)において、化学吸着分子中の全
ての−SiCl結合基がガラス基板1の表面と反応した
場合を示したが、少なくとも1つの−SiCl結合基が
ガラス基板1の表面と反応していればよい。
【0181】
【化23】
【0182】次に、形成した単分子膜14の表面に、液
晶配向膜の作製に使用するラビング装置(図5A)を使
用してラビング処理を行い、単分子膜14を構成する化
学吸着分子を配向させた(傾斜処理工程)(図10
B)。ラビング処理においてレーヨン製のラビング布4
1を巻き付けた直径7.0cmのラビングロール42を
用い、押し込み深さ0.3mm、ニップ幅11.7m
m、回転数1200回転/s、テーブルスピード(基板
走行速度)40mm/sの条件でラビングを行った。こ
のとき、ラビング方向と略平行に配向(傾斜)した単分
子膜24となった。
【0183】次に、真空蒸着法、フォトリソグラフィ法
及びエッチング法を適用して、単分子膜24の表面に、
長さ50mmの一対の白金電極17を5mm隔てて蒸着
形成した後、室温下で超純水中に浸漬し、かつ、一対の
白金電極17間に8Vの電圧を6時間印加して、電解酸
化重合を行った(導電領域形成工程)。これにより、下
記化学式(O5)を重合単位とする、所定の方向(ラビ
ング方向)に連なる導電性のポリピロール型共役系を含
む導電ネットワークを有する導電領域16を一対の白金
電極17間に形成できた(導電領域形成工程)(図10
D)。
【0184】
【化24】
【0185】得られた有機導電膜の膜厚は約2.0n
m、ポリピロール部分の厚さは約0.2nmであった。
【0186】前記の一対の白金電極17間に有機導電膜
を介して8Vの電圧印加で1mAの電流を流すことがで
きた。したがって、ドナーやアクセプタ等の不純物をド
ープしなくとも、導電ネットワークの導電率が約103
S/cmの導電領域を有する単分子膜34が得られた。
【0187】上記のようにして形成された導電領域の導
電率は金属の1/10〜1/100程度であるので、防
曇膜、面発熱膜、電磁波シールド膜、アンテナ線として
利用できる。
【0188】なお、上記の本実施例ではガラス基板1を
そのまま用いたが、その表面にシリカ膜を設けたり、基
板表面に酸化処理を施すことにより、より普選し密度の
高い導電領域を有する単分子膜が得られる。
【0189】また、上記の本実施例の傾斜処理工程でラ
ビング配向法を適用したが、単分子層形成工程前に、シ
リカ膜を設けたガラス基板の表面にラビング処理を施
し、その後、同様の方法で単分子膜を形成すればラビン
グ方向に配向した単分子膜を形成することができ、更に
その後、同様の方法で導電領域を形成すると、同様な導
電特性の導電領域を有する単分子膜が得られた。
【0190】また、上記の本実施例の傾斜処理工程でラ
ビング配向法を適用したが、図5Bに示す如く、偏光板
43を介して紫外線を照射しても、単分子膜14を構成
する化学吸着分子22が偏光方向と略平行に配向した単
分子膜24を形成する(光配向法)ことができ、その
後、上記と同じ方法で導電領域を形成すると、より導電
性に優れた導電領域を有する単分子膜34が得られた。
なお、光配向法で用いる光としては、上記の偏光紫外線
のみに限らず、単分子膜34が吸収する波長の光であれ
ば用いることができた。
【0191】また、上記の本実施例の洗浄工程におい
て、洗浄用のクロロフォルム溶液からガラス基板1を引
き上げる際に、図5Cに示す如く、ガラス基板1の表面
を洗浄用のクロロフォルム溶液44の液面にして、略垂
直に引き上げて液切りを行っても、単分子膜を構成する
化学吸着分子22が液切り方向と略平行に配向した単分
子膜24を形成できた(液切り配向法)。これにより、
洗浄工程と傾斜処理工程とを同時に行うことができる。
更に、液切り配向処理を行った単分子膜に光配向処理を
施し、その後、上記と同じ方法で導電領域を形成する
と、導電率104S/cmの導電領域を有する単分子膜
34が得られた。
【0192】得られた膜は、防曇膜、面発熱膜、電磁波
シールド膜、アンテナ線等として利用できる。
【0193】(実施例2)実施例1と同様の方法で合成
した下記化学式(P1)に示す3−ヘキシル−1−ピロ
リルオクタデセニルトリクロロシランを用い、脱水した
ジメチルシリコーンの有機溶媒で1%に薄めて化学吸着
液Pを調製した。
【0194】
【化25】
【0195】一方、厚み5mmのガラス基板101の表面
に厚み2nmのシリカ下地層102を形成した(図11
A)。このシリカ下地層102は、テトラクロロシラン
(SiCl4)を、脱水したジメチルシリコーンの有機
溶媒で1%に薄めて化学吸着下地層溶液を調製し、この
化学吸着下地層溶液をガラス基板101の片面にコーティ
ングし、テトラクロロシラン(SiCl4)とガラス基板101の
表面の水酸基(-OH)との間で脱塩化水素反応を起こさ
せ、次いでクロロホルムで洗浄除去して未反応物を除去
し、トリクロロシラノール(Cl3Si-O-)からなる単分子膜
を形成した。次に水と反応させ、(OH)3Si-O-膜に置換
し、水酸基を導入してシリカ下地層102を形成した。
【0196】次に、前記シリカ下地層102の表面に前記
化学吸着液Pをコーティングして、化学吸着反応を行
い、さらに表面に残った未反応の前記物質をクロロホル
ムで洗浄除去して、前記物質よりなる単分子膜103を形
成した(図11B)。
【0197】このとき、シリカ下地層102には活性水素
を含む水酸基が多数存在するので、前記物質(P1)の
−SiCl基が水酸基と脱塩化水素反応を生じて基板表
面に共有結合した下記化学式(P2)で示される分子で
構成された単分子膜103が形成された。
【0198】
【化26】
【0199】その後、図11Cに示したように、液晶配
向膜作製に使用するラビング装置104を使用し、レーヨ
ン製布105(吉川加工(株)製:YA−20−R)で、
押し込み深さ0.3mm、ニップ幅11.7mm、回転
数1200回転、テーブルスピード40mm/secの
条件で電極ギャップとほぼ垂直方向にラビング処理する
と、単分子膜を構成する分子がラビング方向とほぼ並行
に配向した単分子膜103'が得られた(図11D)。
【0200】次に、前記単分子膜表面に長さ50mmの
白金電極(ソース、ドレーン電極)106,106'を5mm間
隔で1対を蒸着形成し、超純水中で室温(25℃)下で
6時間この電極間に8Vの直流電界を印加してピロリル
基107の電解酸化重合を行った。その結果、図11Eと
下記化学式(P3)で示されるような前記電極間を導電
性のポリピロリル基107'(共役結合基)で接続され、室
温(25℃)での導電度が4×103S/cm(この単
分子膜の場合、8Vの電界印加で、4mAの電流を流す
ことができた)の導電性単分子膜108が得られた(図1
1F)。
【0201】
【化27】
【0202】得られた膜は、防曇膜、面発熱膜、電磁波
シールド膜、アンテナ線等として利用できる。
【0203】なお、より大きな電流容量が必要な場合に
は、前記物質の代わりに末端アルキル基を不飽和炭化水
素基、たとえばビニル基やアセチレン基を組み込んだ物
質を用い、化学吸着反応させた後、重合後または重合前
に酸化して水酸基(−OH)に変換し、この−OH部に
次層の単分子膜を累積する工程を繰り返して単分子膜を
累積形成すれば導電性の単分子累積膜を形成できた。
【0204】この導電度は、金属の1/10〜1/10
0程度であり、膜厚がナノメーターレベルできわめて薄
いため、可視光の波長の光をほとんど吸収せず、透過す
る。このため、ガラス基板の透明性をそのまま維持でき
る。
【0205】なお、図5Aに示すように、単分子膜を構
成する分子を配向させる際、偏光板43を介して紫外線
45を照射すると、単分子膜を構成する分子4が偏光方
向Dとほぼ並行E方向に配向した単分子膜が得られ、そ
の後、前記と同様の方法で重合するとより導電性に優れ
た導電性単分子膜が得られた。
【0206】なお、光配向に用いる光として、単分子膜
が吸収する波長の光であれば、紫外光あるいは可視光領
域の偏光を用いて光配向を行うことが可能であった。
【0207】また、同単分子膜を形成後、図5Cに示す
ように洗浄液44のクロロフォルムに浸漬し、同様の洗
浄を行い、さらに基板を立てながら引き上げて液切りを
行うと、単分子膜を構成する分子が液切り方向Gとほぼ
並行に配向した単分子膜4が得られ、その後、前記と同
様の方法で電解酸化重合すると、室温(25℃)で10
4S・cmの導電性単分子膜が得られた。この膜も、防
曇膜、面発熱膜、電磁波シールド膜、アンテナ線等とし
て利用できる。
【0208】また、基板を立てながら引き上げて液切り
を行う工程を光配向の前に行うとさらに配向性を向上で
きた。
【0209】なお、この様な被膜は、液晶表示素子(L
CD)、電界発光素子(EL)や太陽電池で用いられて
いるインジウム錫酸化物合金(ITO)製透明電極の代
わりの透明電極としても利用可能であった。
【0210】また、層内の複数の導電性共役結合基が特
定の方向に配向した単分子膜状または単分子累積膜状の
被膜で、導電度が103S/cm以上の被膜を作成すると、
面発熱膜、アンテナ線、電磁波シールド膜などにも利用
可能であった。
【0211】(実施例3)実施例2において、化学吸着
分子の末端基CH3(CH2)5-をCH2=CH-CH2-に代えた以外
は、同様に実験し、単分子層からなる導電性有機薄膜を
形成した。
【0212】次に、水分の存在する雰囲気中で電子線ま
たはX線などのエネルギー線を照射処理、過マンガン酸
カリウム水溶液に浸漬処理、酸素プラズマ処理、UV/
オゾン処理、コロナ処理、または濃硫酸と重クロム酸カ
リウムの混合溶液に浸漬する処理(クロム混酸液処理)
のいずれかの処理により、−OHまたは−COOHの活
性水素を導入した。例えば、飽和水蒸気の雰囲気で、電
子線をエネルギー密度100mJ/cm2で全面に照射
して、−OHおよび−COOHの活性水素を導入した。
【0213】次いで、フッ素を含む界面活性剤(例えば
CF3-(CF2)7-(CH2)2-Si-Cl3)を、脱水したジメチルシリ
コーンの有機溶媒で1%に薄めて化学吸着保護層溶液を
調製し、この化学吸着保護層溶液を前記導電性有機薄膜
の表面に塗布した。
【0214】これにより、前記導電性有機薄膜の表面の
活性水素と前記化学吸着保護層溶液のクロル基との間で
脱塩化水素反応が起こり、CF3-(CF2)7-(CH2)2-Si(-O-)3
の単分子膜を形成した。保護膜で被われた前記導電性有
機薄膜は、耐電圧特性が0.5×1010V/cm〜1×
1010V/cmまで大幅に向上できた。その耐剥離強度
は、1トン/cm2程度になり、自動車の内面や建築物
の窓ガラスの防曇膜、面発熱膜、電磁波シールド膜、ア
ンテナ線等として利用できる。
【0215】さらに、フルオロアルキル基で被われた保
護層は、撥水性、撥油性および防汚性が高く、汚れやす
いガラス表面を有効に保護できた。汚れが付着した場合
でも、簡単に除去することができた。
【0216】(実施例4)実施例1と同様にして下記化
学式(Q1)に示す反応式により、11−(3−チェニ
ル)―1−ウンデセンを合成し、次に下記化学式(Q
2)に示す反応式により11−(3−チェニル)―1−
ウンデセニルトリクロロシランを合成した。
【0217】
【化28】
【0218】
【化29】
【0219】で得られた11−(3−チェニル)−ウン
デセニルトリクロロシランを脱水したジメチルシリコー
ン溶媒で1%に薄めて化学吸着液を調製した。この化学
吸着液を、厚み約3mmのガラス基板にコーティング
し、室温で3時間保持し、ガラス基板の表面に化学吸着
分子を化学吸着させた(単分子層形成工程)。単分子層
形成工程後、ガラス基板をクロロホルム溶液に浸漬し
て、残留する未反応の膜材料分子を洗浄除去した。これ
により、表面に汚れのない単分子膜が形成できた。
【0220】ガラス基板表面には、活性水素を含む水酸
基が多数存在するので、それらの水酸基と化学吸着分子
の−SiCl結合基との脱塩素反応により共有結合で化
学結合して、下記化学式(Q3)に示す化学吸着分子で
構成された単分子膜が形成されている。ただし、化学式
(Q3)において、化学吸着分子中の全ての−SiCl
結合基がガラス基板表面と反応した場合を示したが、少
なくとも1つの−SiCl結合基がガラス基板表面と反
応していればよい。
【0221】
【化30】
【0222】次に、形成した単分子膜の表面に、液晶配
向膜の作製に使用するラビング装置(図5A)を使用し
てラビング処理を行い、単分子膜を構成する化学吸着分
子を配向させた(傾斜処理工程)。ラビング処理におい
てレーヨン製のラビング布を巻き付けた直径7.0cm
のラビングロールを用い、押し込み深さ0.3mm、ニ
ップ幅11.7mm、回転数1200回転/s、テーブ
ルスピード(基板走行速度)40mm/sの条件でラビ
ングを行った。このとき、ラビング方向と略平行に配向
(傾斜)した単分子膜となった。
【0223】次に、真空蒸着法、フォトリソグラフィ法
及びエッチング法を適用して、単分子膜の表面に、長さ
50mmの一対の白金電極を5mm隔てて蒸着形成した
後、室温下で超純水中に浸漬し、かつ、一対の白金電極
間に8Vの電圧を6時間印加して、電解酸化重合を行っ
た(導電領域形成工程)。これにより、下記化学式
(S)を重合単位とする、所定の方向(ラビング方向)
に連なる導電性のポリピロール型共役系を含む導電ネッ
トワークを有する導電領域を一対の白金電極間に形成で
きた(導電領域形成工程)。
【0224】
【化31】
【0225】得られた有機導電膜の膜厚は約2.0n
m、ポリチェニレン部分の厚さは約0.2nmであっ
た。
【0226】前記の一対の白金電極間に有機導電膜を介
して8Vの電圧印加で1mAの電流を流すことができ
た。したがって、ドナーやアクセプタ等の不純物をドー
プしなくとも、導電ネットワークの導電率が約103
/cmの導電領域を有する単分子膜が得られた。得られ
た膜は、防曇膜、面発熱膜、電磁波シールド膜、アンテ
ナ線等として利用できる。
【0227】(実施例5)本実施例は、触媒重合により
形成された導電ネットワークを含む導電領域を有する単
分子膜についてである。
【0228】実施例2と同様に、ガラス基板の表面に絶
縁性のシリカ膜((OH)3Si-O-)を形成した後、シリカ膜
表面にラビング処理を施し(前処理工程)、ラビング処
理済みガラス基板を形成した。
【0229】共役重合性官能基であるアセチレン基(−
C≡C−)と、分子端に活性水素と反応するトリクロロ
シリル基(−SiCl3)とを含む化学式(R1)に示
す化学吸着分子を用い、脱水したジメチルシリコーンの
有機溶媒で1%に希釈して化学吸着溶液を調製した。
【0230】
【化32】
【0231】次に、ラビング処理済みガラス基板に化学
吸着溶液をコーティングして、シリカ膜の表面に化学吸
着分子を化学吸着させた(単分子層形成工程)。単分子
層形成工程後、ラビング処理済みガラス基板をクロロホ
ルム溶液に浸漬して、ガラス基板上に残留する未反応の
膜材料分子を洗浄除去した。これにより、表面に下記化
学式(R2)に示す汚れのない単分子膜が形成できた。
【0232】
【化33】
【0233】なお、ラビング処理済みガラス基板を用い
たため、形成された単分子膜を構成する化学吸着分子は
ラビング方向に配向していた。
【0234】次に、チグラー・ナッタ触媒(トリエチル
アルミニウムの5×10-2mol/リットル溶液とテトラ
ブチルチタネートの2.5×10-2mol/リットル溶液)
を含むトルエン溶媒中に単分子膜の形成されたガラス基
板を浸漬して、触媒重合を行った(導電領域形成工
程)。これにより、下記化学式(R3)に示すラビング
方向に連なるポリアセチレン型共役系を含む導電ネット
ワークを有する導電領域を形成できた。
【0235】
【化34】
【0236】次に、導電領域に電荷移動性の物質である
ヨウ素イオンのドーピングを行った。これにより、導電
率が約104S/cmの導電領域を形成できた。なお、
ドーピングを行わない場合、ポリアセチレン型共役系を
含む導電ネットワークを有する導電領域の導電率は、導
線、配線等の導電体として用いることができない程度で
あった。
【0237】ヨウ素イオンのドーピングして得られた膜
は、防曇膜、面発熱膜、電磁波シールド膜、アンテナ線
等として利用できる。
【0238】(実施例6)本実施例は、エネルギービー
ム照射重合により形成された導電ネットワークを含む導
電領域を有する単分子膜についてである。
【0239】予め、共役重合性官能基であるジアセチレ
ン基(−C≡C−C≡C−)と、分子端に活性水素と反
応するトリクロロシリル基(−SiCl3)とを含む下
記化学式(S1)に示す化学吸着分子を膜材料分子とし
て用い、脱水したジメチルシリコーンの有機溶媒で1%
に希釈して化学吸着溶液を調製した。
【0240】
【化35】
【0241】ジアセチレン基を含む化学吸着剤を用いる
こと以外は、前記実施例5と同様にして単分子膜を形成
した(単分子層形成工程)。次に、単分子膜の表面にラ
ビング処理(傾斜処理工程)を施した後、エネルギービ
ームである紫外線をエネルギー密度100mJ/cm2
で全面に照射して、エネルギー照射重合を行った(導電
領域形成工程)。これにより、ラビング方向に連なる下
記化学式(S2)に示すポリジアセチレン型共役系を含
む導電ネットワークを有する導電領域を形成できた。
【0242】
【化36】
【0243】また、前記の本実施例では、ジアセチレン
基を含む有機分子を膜材料分子Cとして用いたが、アセ
チレン基(−C≡C−)を含む分子を膜材料分子として
用い、不活性ガス雰囲気中において電子線を100mJ
/cm2で照射しても、ほぼ同じ導電率の導電領域を有
する単分子膜が得られた。
【0244】得られた膜は、防曇膜、面発熱膜、電磁波
シールド膜、アンテナ線等として利用できる。
【0245】(実施例7)本実施例は、触媒重合及びエ
ネルギービーム照射重合を適用し、2段階の重合反応に
より導電ネットワークを形成した、導電領域を有する単
分子膜についてである。
【0246】前記実施例6と同様にジアセチレン基を有
する有機分子を用いた場合において、ポリジアセチレン
型共役系を含む導電ネットワークを有する導電領域の形
成された単分子膜に、更に、エネルギービームであるX
線を照射して、エネルギービーム照射重合を行うと、ポ
リアセン型共役系を含む導電ネットワークを有する導電
領域が形成できた。
【0247】得られた膜は、防曇膜、面発熱膜、電磁波
シールド膜、アンテナ線等として利用できる。
【0248】(実施例8)まず、導電ネットワークが形
成可能な1−ピロリル基(C44N−)と、分極性の官
能基であるオキシカルボニル基(−OCO−)と、基板
表面の活性水素(例えば水酸基(−OH))と脱塩化水
素反応するトリクロロシリル基(−SiCl3)とを有
する下記化学式(T1)の物質(PEN:6-pyrrolylhe
xyl-12,12,12-trichloro-12-siladodecanoate)を下記
工程1〜5にしたがって合成した。
【0249】
【化37】
【0250】I.前記化学式(1)の物質(PEN)の
合成方法 工程1 6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘ
キサンの合成 500mlの反応容器に6-ブロモ-1-ヘキサノール197.8g(1.0
9mol)を仕込み、5℃以下に冷却した。これにジヒドロピ
ラン102.1g(1.21mol)を10℃以下の温度で滴下した。滴
下終了後、室温に戻して1時間攪拌させた。反応により
得られた残渣をヘキサン/IPE(ジイソプロピルエーテ
ル)=5/1にてシリカゲルカラム精製して263.4gの6-
ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを得
た。収率は90.9%であった。工程1の反応式を下記式
(T2)に示す。
【0251】
【化38】
【0252】工程2 N−[6−(テトラヒドロピラニ
ルオキシ)ヘキシル]ピロールの合成 アルゴン気流下、2リットルの反応容器にピロール38.0
g(0.567mol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)200m1
を仕込み、5℃以下に冷却した。これに1.6Mのn−ブチ
ルリチウムヘキサン溶液354ml(0.567mol)を10℃以下
で滴下した。同温度で1時間攪拌させた後、ジメチルス
ルホキシド600mlを加えてTHFを加熱留去して溶媒置
換した。次に、6-ブロモ-1-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサン165.2g(0.623mol)を室温にて滴下した。滴
下後、2時間、同温度で攪拌させた。
【0253】反応混合物に水600molを加え、ヘキサン抽
出し、有機層を水洗した。無水硫酸マグネシウムにて乾
燥後、溶媒留去した。残渣をヘキサン/酢酸エチル=4
/1にてシリカゲルカラム精製して107.0gのN−[6−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロールを
得た。収率75.2%であった。工程2の反応式を下記
式(T3)に示す。
【0254】
【化39】
【0255】工程3 N-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピ
ロールの合成 1リットルの反応容器に上記で得られたN-[6-(テト
ラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]ピロール105.0g
(0.418mol)、メタノール450ml、水225ml、濃
塩酸37.5mlを仕込み、室温にて6時間攪拌させ
た。反応混合物を飽和食塩水750mlに注加し、IP
E抽出した。有機層を飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグ
ネシウムにて乾燥させ、溶媒留去した。得られた残渣を
n−ヘキサン/酢酸エチル=3/1にてシリカゲルカラ
ム精製し、63.1gのN-(6-ヒドロキシヘキシル)-ピロー
ルを得た。収率90.3%であった。工程3の反応式を
下記式(T4)に示す。
【0256】
【化40】
【0257】工程4 N-[6-(10-ウンデセノイル
オキシ)ヘキシル]−ピロールの合成 2リットルの反応容器にN-(6-ヒドロキシヘキシル)-
ピロール62.0g(0.371mol)と、dryピリジン33.2
g(0.420mol)、dryトルエン1850ml
を仕込み、20℃以下で10-ウンデセノイルクロリド75.
7g(0.373mol)のdryトルエン300m1溶液
を滴下した。滴下時間は30分であった。その後、同温
度にて1時間攪拌させた。反応混合物を氷水1.5リッ
トルに注加し、1N塩酸で酸性にした。酢酸エチル抽出
し、有機層を水洗、飽和食塩水洗浄し、無水硫酸マグネ
シウムにて乾燥させ、溶媒を除去し、128.2gの粗
体を得た。これをn−ヘキサン/アセトン=20/1に
てシリカゲルカラム精製し、99.6gのN-[6-(1
0-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロールを得
た。収率80.1%であった。工程4の反応式を下記式
(T5)に示す。
【0258】
【化41】
【0259】工程5 PENの合成 100mlキャップ付き耐圧試験管にN-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-ピロール2.0g
(6.0×10-3mo1)、トリクロロシラン0.98g
(7.23×10-3mol)、H2PtC16・6H20の5%イソ
プロピルアルコール溶液0.01gを仕込み、100℃
で12時間反応させた。この反応液を活性炭で処理した
後、2.66×103Pa(20Torr)の減圧下で低沸点成分を留去
した。2.3gのPENを得た。収率81.7%であっ
た。工程5の反応式を下記式(T6)に示す。
【0260】
【化42】
【0261】なお、末端のトリクロロシリル基をトリメ
トキシシリル基に置換するには、前記化学式1のPEN
を3モル倍のメチルアルコールと室温(25℃)で攪拌
し、脱塩化水素反応させる。必要に応じて前記塩化水素
は水酸化ナトリウムを加えて塩化ナトリウムとして分離
する。
【0262】得られたPENについて、図12にNMR
のチャート、図13にIRのチャートをそれぞれ示す。 (NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。 (赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定) II.分子膜の形成方法 前記化学式(T1)のPENを用い、脱水したジメチル
シリコーン溶媒で1wt%に薄めて化学吸着液Tを調製し
た。
【0263】次に、図14に示す厚み5mmのガラス基
板61の表面に厚み2nmのシリカ下地層62を形成し
た。このシリカ下地層62は、テトラクロロシラン(SiC
l4)を、脱水したジメチルシリコーンの有機溶媒で1%
に薄めて化学吸着下地層溶液を調製し、この化学吸着下
地層溶液をガラス基板61の片面にコーティングし、テ
トラクロロシラン(SiCl4)とガラス基板61の表面の水
酸基(-OH)との間で脱塩化水素反応を起こさせ、次いで
クロロホルムで洗浄除去して未反応物を除去し、トリク
ロロシラノール(Cl3Si-O-)からなる単分子膜を形成し
た。次に水と反応させ、(OH)3Si-O-膜に置換し、水酸基
を導入してシリカ下地層62を形成した。
【0264】次に、前記シリカ下地層62の表面に前記
化学吸着液Tをコーティングして、化学吸着反応を行
い、さらに表面に残った未反応の前記物質をクロロホル
ムで洗浄除去して、前記物質よりなる単分子膜103を形
成した(図15)。
【0265】このとき、シリカ下地層62には活性水素
を含む水酸基が多数存在するので、前記物質(T1)の
−SiCl基が水酸基と脱塩化水素反応を生じて基板表
面に共有結合した下記化学式(T7)で示される分子で
構成された単分子膜63aが形成された。
【0266】
【化43】
【0267】III.分子膜の配向方法 次に、単分子膜63aが形成されたガラス基板61を非
水クロロフォルム溶液で洗浄し、乾燥後、図5Aに示す
ラビング配向処理をして配向した単分子膜63bを形成
した(図16)。 IV.電極の形成方法 次に、単分子膜63bの両端の所定の部分にニッケル薄
膜を蒸着形成した。ギャップ間距離は10cm、長さが
30cmの第1の電極64と第2電極65とを形成し
た。 V.重合法 まず、光エネルギービーム重合をした。図5Bに示すよ
うに、第1の電極から第2の電極に向かう方向を偏光方
向とする偏光した可視光を500mJ/cm2程度照射
して、配向性させつつ、予備重合した。
【0268】その後、純水溶液中で、電極間に5V/c
mの電解を印加し電解酸化重合させた。電解酸化重合の
条件は、反応温度25℃、反応時間5時間であった。こ
れにより、電解重合して導電性有機薄膜63cを形成し
た。このとき、電界の方向に沿って共役結合が自己組織
的に形成されて行くので、完全に重合が終われば、第1
の電極64と第2の電極65とは導電ネットワーク66
で電気的に接続された(図17)。得られた有機導電膜
63Cの膜厚は約2.0nm、ポリピロール部分の厚さ
は約0.2nm、有機導電膜34Cの長さは10cm、
幅30cmであった。
【0269】下記化学式(T8)に得られた有機導電膜
ポリマーの1ユニットを示す。
【0270】
【化44】
【0271】VI.測定 得られた導電性有機薄膜63cを、市販の原子間力顕微
鏡(AFM)(セイコーインスツルメント社製、SAP
3800N)を用い、AFM−CITSモードで、電
圧:1mV、電流:160nAの条件における電導度ρ
は、室温(25℃)においてドープなしでρ>1×10
7S/cmであった。これは、前記電流計1×107S/
cmまでしか測定することができず、針がオーバーして
振り切れてしまったからである。電導度の良好な金属で
ある金は室温(25℃)において5.2×105S/c
m、銀は5.4×105S/cmであることからする
と、本実施例の有機導電膜の電導度ρは驚くべき高い導
電性である。ゆえに本発明の有機導電膜は、「超金属導
電膜」ということができる。
【0272】本発明において、有機導電膜の電導度ρを
下げることは、導電ネットワークを不完全なものとした
り、分子の配向度を低下させることにより、容易にでき
る。
【0273】得られた導電性有機薄膜63cは、自動車
窓ガラスの透明アンテナガラスとして有用であった。
【0274】前記実施例2〜3と同様に、前記化学式
(T1)の1−ピロリル基を有する物質(PEN)のピ
ロリル基の3位に、CH2=CH-CH2-を導入し、2重結合の
部分を酸化することにより水酸基(-OH) を導入し、次い
でフッ素を含む界面活性剤(例えばCF3-(CF2)7-(CH2)2-
Si-Cl3)を、脱水したジメチルシリコーンの有機溶媒で
1%に薄めて化学吸着保護層溶液を調製し、この化学吸
着保護層溶液を前記導電性有機薄膜の表面に塗布した。
【0275】これにより、前記導電性有機薄膜の表面の
活性水素と前記化学吸着保護層溶液のクロル基との間で
脱塩か水素反応が起こり、CF3-(CF2)7-(CH2)2-Si(-O-)3
の単分子膜を形成した。このフルオロアルキル基で被わ
れた保護層は、撥水性、撥油性および防汚性が高く、汚
れやすいガラス表面を有効に保護できた。汚れが付着し
た場合でも、簡単に除去することができた。
【0276】(実施例9)以下に示す合成工程によっ
て、下記化学式(U1)に示す[6-[(3-thienyl)hexyl-1
2,12,12-trichloro-12-siladodecanoate]](TEN)を
合成した。
【0277】
【化45】
【0278】(1)工程1 6−ブロモ−1−(テトラ
ヒドロピラニルオキシ)ヘキサンの合成 下記化学式(U2)に示す反応を行い6−ブロモ−1−
(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキサンを合成した。
まず、500mLの反応容器に6−ブロモ−1−ヘキサ
ノール197.8g(1.09mol)を仕込み、5℃
以下に冷却した後、これに、ジヒドロピラン102.1
g(1.21mol)を10℃以下で滴下した。滴下終
了後、室温に戻して1時間攪拌した。
【0279】
【化46】
【0280】得られた残渣をシリカゲルカラムに供し、
溶出溶媒としてヘキサン/ジイソプロピルエーテル(I
PE)混合溶媒(体積比5:1)を用いて精製し、26
3.4gの6−ブロモ−1(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキサンを得た。この際の収率は90.9%であっ
た。 (2)工程2 3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘ
キシル]チオフェンの合成 下記化学式(U3)に示す反応を行い3-[6-(テトラヒド
ロピラニルオキシ)ヘキシル]チオフェンを合成した。
【0281】
【化47】
【0282】まず、アルゴン気流下、2Lの反応容器に
削ったマグネシウム25.6g(1.06m。1)を仕
込み、さらに、6−ブロモ−1−(テトラヒドロピラニ
ル)ヘキサン140.2g(0.529mol)を含む
ドライテトラヒドロフラン(ドライTHF)溶液4Lを
室温で滴下した。この際の滴下時間は1時間50分であ
って、発熱反応を起した。その後、室温で1.5時間攪
拌して、グリニャール試薬を調製した。
【0283】つぎに、アルゴン気流下、新たな2L反応
容器に3−ブロモチオフェン88.2g(541mo
l)とジクロロビス(トリフェニルフォスフィン)ニッ
ケル(II)3.27gとを仕込み、前記調製したグリニ
ャール試薬全量を室温で滴下した。この際、前記反応容
器内の温度を室温(50℃以下)に保ち、滴下時間は、
30分とした。滴下後、室温で23時間攪拌した。
【0284】この反応混合物を、0℃に保った0.5N
HCl 1.3Lに添加し、IPE抽出を行った。得
られた有機層を水洗し、さらに飽和食塩水で洗浄した
後、無水硫酸マグネシウムを添加して乾燥させた。そし
て、溶媒を留去し、3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体199.5gを得
た。この粗体は、精製せずに次の工程3に供した。 (3)工程3 3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオ
フェンの合成 下記化学式(U4)に示す反応を行い3−(6−ヒドロ
キシヘキシル)−チオフェンを合成した。
【0285】
【化48】
【0286】1Lの反応容器に、前記工程2で得られた
未精製3-[6-(テトラヒドロピラニルオキシ)ヘキシル]−
チオフェン199.5g、メタノール450mL、水2
25mLおよび濃塩酸37.5mLを仕込み、室温で6
時間攪拌して反応させた。この反応混合物を飽和食塩水
750mLに添加し、IPE抽出を行った。そして、得
られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、さらに無水硫酸マ
グネシウムで乾燥させた後、溶媒留去して3−(6−ヒ
ドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体148.8
gを得た。この粗体をシリカゲルカラムに供し、溶出溶
媒としてn−へキサン/酢酸エチル混合溶媒(体積比
3:1)を用いて精製し、84.8gの3−(6−ヒド
ロキシヘキシル)−チオフェンを得た。この際の収率
は、工程2で得られた3-[6-(テトラヒドロピラニルオキ
シ)ヘキシル]−チオフェンを含む粗体に対して87.0
%であった。 (4) 3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チ
オフェンの合成 下記化学式(U5)に示す反応を行い3−(6−(10
−ウンデセノイルオキシ)ヘキシル)−チオフェンを合
成した。
【0287】
【化49】
【0288】2Lの反応容器に、工程3で得られた3−
(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗体8
4.4g(0.458mol)、ドライピリジン34.
9g(0.442mol)およびドライトルエン145
0mLを仕込み、20℃以下の状態で、さらに10−ウ
ンデセノイルクロリド79.1g(0,390mol)
を含有するドライトルエン溶液250mLを滴下した。
滴下時間は、30分とし、その後、同じ温度で23時間
攪拌して反応させた。得られた反応混合物を氷水2Lに
添加し、さらに1N塩酸75mLを加えた。この混合液
を酢酸エチル抽出して、得られた有機層を水洗し、さら
に飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを添
加して乾燥させる、溶媒を除去することにより、3-[6-
(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含
有する粗体161.3gを得た。この粗体をシリカゲル
カラムに供し、溶出溶媒としてn−ヘキサン/アセトン
混合溶媒(体積比20:1)を用いて精製し、157.
6gの3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオ
フェンを得た。この際の収率は、前記工程3で得られた
3−(6−ヒドロキシヘキシル)−チオフェンを含む粗
体に対して98.2%であった。 (5)工程5 TENの合成 下記化学式(14)に示す反応を行いTENを合成し
た。
【0289】
【化50】
【0290】(a)まず、100mLのキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10−ウンデセノイルオキシ)ヘ
キシル]-チオフェン10.0g(2.86×1012m
ol)、トリクロロシラン4.65g(3.43×10
4mol)およびH2PtC16・6H20を5重量%の
割合で含有するイソプロピルアルコール溶液0.05g
を仕込み、100℃で14時間反応させた。この反応液
を活性炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去し
た。減圧条件は、2.66×103Pa(20Torr)とした。
【0291】(b)同様に、100mLキャップ付き耐
圧試験管に、3-[6-(10-ウンデセノイルオキシ)ヘキシ
ル]-チオフェン39.0g(1.11×10-1mo
l)、トリクロロシラン18.2g(1.34×10-1
mol)、H2PtCl6・6H20を5重量%の割合で
含有するイソプロピルアルコール溶液0.20gを仕込
み、100℃で12時間反応させた。この反応液を活性
炭で処理した後、減圧下で低沸点成分を留去した。減圧
条件は前述のとおりである。
【0292】(a)と(b)で得られた残渣を混合し、
これにアルゴンガスを1時間通して塩酸ガスを除去する
ことによって、65.9gの目的物TENを得た。この
際のTENの収率は、前記工程4で得られた3-[6-(10-
ウンデセノイルオキシ)ヘキシル]-チオフェンを含む粗
体に対して97.2%であった。
【0293】得られたTENについて、IR分析および
NMR分析を行った。以下にその条件および結果を示
す。なお、図18にNMRのチャート、図19にIRの
チャートをそれぞれ示す。 (NMR) (1)測定機器:装置名AL300(日本電子株式会社
製) (2)測定条件:1H−NMR(300MHz)、サン
プル30mgをCDCl3に溶解し測定。 (赤外線吸収スペクトル:IR) (1)測定機器:装置名270−30型(株式会社日立
製作所製) (2)測定条件:neat(サンプルを2枚のNaCl板に挟み
測定) 得られたTENを用いて実施例1と同様にポリチェニレ
ンからなる導電性分子膜を電解重合法により形成した。
得られた有機導電膜の膜厚は約2.0nm、ポリチェニ
レン部分の厚さは約0.2nm、有機導電膜の長さは1
0mm、幅100μmであった。また、得られた有機導
電膜は可視光線のもとでは透明であった。
【0294】下記化学式(U7)に得られた有機導電膜
ポリマーの1ユニットを示す。
【0295】
【化51】
【0296】この有機導電膜を、実施例1と同様に、市
販の原子間力顕微鏡(AFM)(セイコーインスツルメ
ント社製、SAP 3800N)を用い、AFM−CI
TSモードで、電圧:1mV、電流:160nAの条件
で電導度を測定した。その結果、電導度ρは、室温(2
5℃)においてドープなしでρ>1×107S/cmで
あった。
【0297】本発明において、有機導電膜の電導度ρを
下げることは、導電ネットワークを不完全なものとした
り、分子の配向度を低下させることにより、容易にでき
る。
【0298】得られた導電性有機薄膜63cは、自動車
窓ガラスの透明アンテナガラスとして有用であった。
【0299】前記実施例2〜3と同様に、前記化学式
(U1)の3−チェニル基を有する物質(TEN)のチ
ェニル基の4位に、CH2=CH-CH2-を導入し、2重結合の
部分を酸化することにより水酸基(-OH) を導入し、次い
でフッ素を含む界面活性剤(例えばCF3-(CF2)7-(CH2)2-
Si-Cl3)を、脱水したジメチルシリコーンの有機溶媒で
1%に薄めて化学吸着保護層溶液を調製し、この化学吸
着保護層溶液を前記導電性有機薄膜の表面に塗布した。
【0300】これにより、前記導電性有機薄膜の表面の
活性水素と前記化学吸着保護層溶液のクロル基との間で
脱塩か水素反応が起こり、CF3-(CF2)7-(CH2)2-Si(-O-)3
の単分子膜を形成した。このフルオロアルキル基で被わ
れた保護層は、撥水性、撥油性および防汚性が高く、汚
れやすいガラス表面を有効に保護できた。汚れが付着し
た場合でも、簡単に除去することができた。
【0301】(実施例10)前記実施例1〜9おいて、
導電性分子が配向しているか否かは、図20に示すよう
な液晶セル170を形成し、偏光板177,178で挟み、裏面よ
り光を照射して180の位置から観察することにより確認
できる。液晶セル170は、導電性分子膜172,174がそれぞ
れ形成されたガラス板171,173の導電性分子膜を内側に
して、ギャップ間距離5〜6μmに保持して周囲を接着
剤175で封止し、内部に液晶組成物176(ネマチック液
晶、例えばチッソ社製”LC,MT−5087LA”)
を注入して作成した。 (1)偏光板177,178をクロスにした場合、導電性分子
膜172,174の配向方向を揃え、この方向と、一方の偏光
板を平行にし、他方の偏光板を直交させる。完全に配向
していれば液晶が配向して均一な黒色になる。均一な黒
色にならない場合は配向不良である。 (2)偏光板177,178を平行にした場合、導電性分子膜1
72,174の配向方向を揃え、この方向と、両方の偏光板を
平行にする。完全に配向していれば液晶が配向して均一
な白色になる。均一な白色にならない場合は配向不良で
ある。
【0302】なお、裏側の基板が透明でない場合は、偏
光板は上側一枚とし、表面より光を照射して反射光で観
察する。
【0303】この方法により、前記実施例1〜9で得ら
れた導電性分子膜は配向していることが確認できた。
【0304】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、従来の
有機導電膜よりも高い導電性を有し、好ましくは金属よ
りも高い導電性を有し、かつガラスの透明性を損なわな
い導電性ガラスとその製造方法を提供できる。
【0305】また、本発明の導電性有機薄膜は、人間の
目では膜が形成されているか否かは容易に判断できない
程度に透明な導電膜であるので、例えば自動車ガラスに
形成されている電波受信アンテナは、従来のものとはま
ったく異なった外観となる。すなわち、視覚的障害がま
ったくないアンテナ線とすることができる。
【0306】前記導電性有機薄膜は、自動車ガラスまた
は建築物用窓ガラスに全面または一部に形成してもよ
く、電磁波シールド膜として用いたり、寒冷地における
ヒーターまたは防曇膜などの面発熱膜として使用でき
る。鏡に適用した場合は防曇膜として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た導電ネットワークを含む単分子膜を模式的に示す断面
図であり、Aは全領域に導電ネットワークの形成された
単分子膜、Bは複数の部分領域に導電ネットワークの形
成された単分子膜、Cは共役重合性官能基を内部に有す
る有機分子からなり、複数の部分領域に導電ネットワー
クの形成された単分子膜である。
【図2】本発明の実施形態1における導電ネットワーク
の方向を説明するための模式的平面図である。
【図3】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た導電ネットワークを含む単分子層の導電領域の構成例
を模式的に示す平面図であり、Aは一方向に連なる導電
ネットワークが全領域に形成され単分子層、Bは各導電
領域に一方向に連なる導電ネットワークの形成された平
行な導電領域を有する単分子層、Cは各導電領域に一方
向に連なる導電ネットワークの形成されたマトリックス
状に配列した導電領域を有する単分子層、Dは各導電領
域に形成された導電ネットワークの方向が同じで、か
つ、各導電領域の形状も同じでない、任意のパターンに
配列した導電領域を有する単分子層である。
【図4】本発明の実施形態1における基材上に形成され
た単分子膜の構造例を模式的に示す断面図であり、Aは
電気絶縁膜付き基材上に形成された単分子膜、Bは基材
上に形成され、かつ、表面に保護膜の形成された単分子
膜である。
【図5】本発明の実施形態1における有機薄膜を構成す
る分子を傾斜(配向)させる配向法を説明するための模
式的斜視図であり、Aはラビング配向法、Bは光配向
法、Cは液切り配向法である。
【図6】本発明の実施形態1における基材上の選択的な
部位に導電領域を形成した構成例を模式的に示す斜視図
であり、Aは基材上の全部位に形成された単分子膜内に
複数の導電領域が形成された構成を示し、Bは全領域に
導電領域の形成された単分子膜を、基材上に複数形成し
た構成を示す。
【図7】本発明の実施形態2における基材上に形成され
た単分子累積膜の積層構造例を模式的に示す断面図であ
り、Aは各単分子層の配向方向を同一方向とするX型の
単分子累積膜、Bは各単分子層ごとに配向方向を異にす
るX型の単分子累積膜、Cは各単分子層ごとに2つの配
向方向のいずれかに配向したX型の単分子累積膜であ
る。
【図8】本発明の実施形態3における自動車のフロント
ガラスの斜視図である。
【図9】本発明の実施形態3における自動車のリアガラ
スの斜視図である。
【図10】本発明の実施例1における導電領域を有する
単分子膜を製造する工程を説明するための断面図であ
り、Aは単分子層形成工程後における基材上に形成され
た単分子膜、Bは傾斜処理(配向処理)工程後における
配向した単分子膜、Cは重合電極形成工程で表面に形成
された一対の電極に電圧を印加する導電領域形成工程を
開始した直後の単分子膜、Dは導電領域形成工程後にお
ける導電ネットワークが形成された単分子膜である。
【図11】A〜Fは本発明の実施例2における有機導電
性膜の製造工程概念図である。
【図12】本発明の実施例8におけるピロリル化合物の
NMR分析チャートである。
【図13】本発明の実施例8におけるピロリル化合物の
IR分析チャートである。
【図14】本発明の実施例8におけるガラス基材の断面
図である。
【図15】本発明の実施例8における単分子膜の概念断
面図である。
【図16】本発明の実施例8における単分子膜を配向し
た概念断面図である。
【図17】本発明の実施例8における単分子膜を共役重
合した概念断面図である。
【図18】本発明の実施例9におけるチェニル化合物の
NMR分析チャートである。
【図19】本発明の実施例9におけるチェニル化合物の
IR分析チャートである。
【図20】本発明の実施例10における導電性分子の配
向を評価する方法を示す説明図。
【符号の説明】
1 ガラス基材(ガラス基板) 2 シリカ薄膜 3 保護被膜 4 単分子膜(単分子層) 5 共役系(共役結合鎖) 6 導電領域 7 金属接点(配線) 8 誘電体 9 共役重合性官能基 14 ピロール基を有する有機分子からなる単分子膜 16 ポリピロール型導電ネットワークを有する導電領
域 17 電解重合用の白金電極 24 ピロール基を有する有機分子が配向した単分子膜 34 ポリピロール型導電ネットワークを有する単分子
膜 41 ラビングロール 42 ラビング布 43 偏光板 44 洗浄用の有機溶液 50 フロント窓ガラス 51,54 導電性有機薄膜 53 リア窓ガラス 55 アンテナ線
フロントページの続き Fターム(参考) 4G059 AA08 AB05 AB09 AB11 AC12 FA05 FA07 FA22 FB05 5G307 FA01 FB03 FC09 FC10 5G323 BA04 BB04

Claims (37)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラス基材表面またはガラス基材上に形
    成した下地層表面と共有結合した末端結合基と、共役結
    合基と、前記末端結合基と前記共役結合基との間の部分
    は活性水素を含まない有機基を含む有機分子で構成さ
    れ、 前記有機分子は配向しており、かつ、前記共役結合基は
    他の分子の共役結合基と重合して導電性有機薄膜を形成
    していることを特徴とする導電性ガラス。
  2. 【請求項2】 重合が、電解酸化重合、触媒重合および
    エネルギービーム照射重合から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項1に記載の導電性ガラス。
  3. 【請求項3】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1S/cm以
    上である請求項1に記載の導電性ガラス。
  4. 【請求項4】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで1×103
    /cm以上である請求項3に記載の導電性ガラス。
  5. 【請求項5】 前記導電性有機薄膜の電導度(ρ)が、
    室温(25℃)においてドーパントなしで5.5×10
    5S/cm以上である請求項4に記載の導電性ガラス。
  6. 【請求項6】 前記重合した共役結合基が、ポリピロー
    ル、ポリチェニレン、ポリアセチレン、ポリジアセチレ
    ンおよびポリアセンから選ばれる少なくとも一つの共役
    結合基である請求項1に記載の導電性ガラス。
  7. 【請求項7】 前記末端結合基が、シロキサン(−Si
    O−)およびSiN−結合から選ばれる少なくとも一つ
    の結合(但し、SiおよびNには価数に相当する他の結
    合基があっても良い。)である請求項1に記載の導電性
    ガラス。
  8. 【請求項8】 前記分子の配向が、ラビングによる配向
    処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合した
    後の反応溶液からの液切り処理、偏光の照射処理、およ
    び重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれる少なく
    とも一つによって形成されている請求項1に記載の導電
    性ガラス。
  9. 【請求項9】 前記導電性有機薄膜は、可視領域の波長
    を有する光に対して透明である請求項1に記載の導電性
    ガラス。
  10. 【請求項10】 前記導電性有機薄膜を形成している分
    子ユニットが下記化学式(A)で示される請求項1に記
    載の導電性ガラス。 【化1】 (但し、Bは水素、炭素数1〜10のアルキル基を含む
    有機基、活性水素導入可能基またはその残基、Aはピロ
    ール基、チェニレン基、アセチレン基及びジアセチレン
    基から選ばれる少なくとも一つの共役結合基、Zはエス
    テル基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO
    −)、カルボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−
    OCOO−)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれる少
    なくとも一つの官能基または化学結合(−)、m,nは
    整数でありm+nは2以上25以下、Yは酸素(O)ま
    たは窒素(N)、Eは水素または炭素数1−3のアルキ
    ル基、pは1,2又は3の整数である。)
  11. 【請求項11】 前記導電性有機薄膜の表面にさらに保
    護膜を備えた請求項1に記載の導電性ガラス。
  12. 【請求項12】 前記保護膜が、パーフルオロアルキル
    基を含み、前記導電性有機薄膜と共有結合している請求
    項11に記載の導電性ガラス。
  13. 【請求項13】 前記保護膜が、下記化学式(B)であ
    る請求項12に記載の導電性ガラス。 【化2】 (但し、aは2以上25以下の整数、bは0以上10以
    下の整数、Yは酸素(O)または窒素(N)、Eは水素
    または炭素数1−3のアルキル基、pは1,2又は3の
    整数である。)
  14. 【請求項14】 前記導電性有機薄膜が、さらにドーパ
    ント物質を含む請求項1に記載の導電性ガラス。
  15. 【請求項15】 前記導電性有機薄膜が、単分子膜また
    は単分子累積膜である請求項1に記載の導電性ガラス。
  16. 【請求項16】 前記導電性ガラスが、単板ガラス、合
    わせガラス及びペアーガラスから選ばれる少なくとも一
    つである請求項1に記載の導電性ガラス。
  17. 【請求項17】 前記導電性有機薄膜が、電波を受信す
    るアンテナ線として形成されている請求項1に記載の導
    電性ガラス。
  18. 【請求項18】 前記導電性有機薄膜が、自動車ガラス
    または建築物用窓ガラスに形成されている請求項1に記
    載の導電性ガラス。
  19. 【請求項19】 前記導電性有機薄膜が、鏡に形成され
    ている請求項1に記載の導電性ガラス。
  20. 【請求項20】 前記導電性有機薄膜が、電磁波シール
    ド膜または面発熱膜として形成されている請求項1に記
    載の導電性ガラス。
  21. 【請求項21】 有機分子の一方の末端がガラス基材表
    面またはガラス基材上に形成した下地層表面と共有結合
    可能な末端官能基と、 前記有機分子のいずれかの部分に存在し、他の分子と重
    合可能な共役結合可能基と、 前記末端結合基と前記共役結合基との間の部分は、活性
    水素を含まない有機基を含む化合物を、 前記ガラス基材表面またはガラス基材上に形成した下地
    層表面に接触させ、脱離反応により共有結合させて有機
    薄膜を成膜し、 前記有機薄膜を構成する有機分子を所定の方向に配向さ
    せるか、または重合工程で配向させながら重合し、 重合工程においては、前記共役結合可能基同士を電解酸
    化重合、触媒重合およびエネルギービーム照射重合から
    選ばれる少なくとも一つの重合法により共役結合させて
    導電性有機薄膜を形成することを特徴とする導電性ガラ
    スの製造方法。
  22. 【請求項22】 前記末端官能基が、ハロゲン化シリル
    基、アルコシシリル基またはイソシアネート基であり、
    基材表面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反
    応および脱イソシアネート反応から選ばれる少なくとも
    一つの脱離反応によって共有結合を形成する請求項21
    に記載の導電性ガラスの製造方法。
  23. 【請求項23】 前記共役結合可能基が、ピロリル基、
    チェニル基、アセチレン基を含むエチニル基およびジア
    セチレン基を含むジエチニル基から選ばれる少なくとも
    一つの基である請求項21に記載の導電性ガラスの製造
    方法。
  24. 【請求項24】 前記分子の配向を、ラビングによる配
    向処理、脱離反応によって基材表面に分子を共有結合し
    た後の反応溶液からの傾斜液切り処理、偏光の照射処
    理、および重合時の分子のゆらぎによる配向から選ばれ
    る少なくとも一つの処理によって行う請求項21に記載
    の導電性ガラスの製造方法。
  25. 【請求項25】 前記有機分子が下記化学式(C)で示
    される請求項21に記載の導電性ガラスの製造方法。 【化3】 (但し、Bは水素、炭素数1〜10のアルキル基を含む
    有機基または活性水素導入可能基、Aはピロール基、チ
    ェニレン基、アセチレン基及びジアセチレン基から選ば
    れる少なくとも一つの共役結合基、Zはエステル基(−
    COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−)、カル
    ボニル基(−CO−)及びカーボネイト(−OCOO
    −)基、アゾ(−N=N−)基から選ばれる少なくとも
    一つの官能基または化学結合(−)、m,nは整数であ
    りm+nは2以上25以下、Dはハロゲン原子、イソシ
    アネート基及び炭素数1−3のアルコキシル基から選ば
    れる少なくとも一つの反応基、Eは水素または炭素数1
    −3のアルキル基、pは1,2又は3の整数である。)
  26. 【請求項26】 前記導電性有機薄膜は単分子層状に形
    成されている請求項21に記載の導電性ガラスの製造方
    法。
  27. 【請求項27】 前記導電性有機薄膜を形成した後、前
    記化学式(C)の不飽和基Bに活性水素を導入し、さら
    に単分子膜を積層させて単分子累積膜を形成する請求項
    25に記載の導電性ガラスの製造方法。
  28. 【請求項28】 前記エネルギービームが、紫外線、遠
    紫外線、X線および電子線から選ばれる少なくとも一つ
    である請求項21に記載の導電性ガラスの製造方法。
  29. 【請求項29】 前記エネルギービームが、偏光した紫
    外線、偏光した遠紫外線および偏光したX線から選ばれ
    る少なくとも一つであり、配向処理と導電性有機薄膜形
    成とを同時に行う請求項28に記載の導電性ガラスの製
    造方法。
  30. 【請求項30】 前記導電性有機薄膜形成中または形成
    後に、さらにドーパントを添加する請求項21に記載の
    導電性ガラスの製造方法。
  31. 【請求項31】 前記導電性有機薄膜を形成した後、前
    記化学式(C)の不飽和基Bに活性水素を導入し、さら
    に保護膜として、パーフルオロアルキル基を含み、末端
    にハロゲン化シリル基、アルコシシリル基またはイソシ
    アネート基を含むシリル化合物を前記導電性有機薄膜表
    面の活性水素と脱塩化水素反応、脱アルコール反応およ
    び脱イソシアネート反応から選ばれる少なくとも一つの
    脱離反応によって共有結合を形成する請求項25に記載
    の導電性ガラスの製造方法。
  32. 【請求項32】 前記保護膜が、下記化学式(D)であ
    る請求項12に記載の導電性ガラス。 【化4】 (但し、aは2以上25以下の整数、bは0以上10以
    下の整数、Dはハロゲン原子、イソシアネート基及び炭
    素数1−3のアルコキシル基から選ばれる少なくとも一
    つの反応基、Eは水素または炭素数1−3のアルキル
    基、pは1,2又は3の整数である。)
  33. 【請求項33】 前記導電性ガラスが、単板ガラス、合
    わせガラス及びペアーガラスから選ばれる少なくとも一
    つである請求項21に記載の導電性ガラスの製造方法。
  34. 【請求項34】 前記導電性有機薄膜を、電波を受信す
    るアンテナ線として所定のパターンに形成する請求項2
    1に記載の導電性ガラスの製造方法。
  35. 【請求項35】 前記導電性有機薄膜を、自動車ガラス
    または建築物用窓ガラスに形成する請求項21に記載の
    導電性ガラスの製造方法。
  36. 【請求項36】 前記導電性有機薄膜を、鏡に形成する
    請求項21に記載の導電性ガラスの製造方法。
  37. 【請求項37】 前記導電性有機薄膜を、電磁波シール
    ド膜または面発熱膜に形成する請求項21に記載の導電
    性ガラスの製造方法。
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